グループ理念(人がいきいきとする環境を創造する)のもと、自由闊達・価値創造・伝統進化の3つの価値を“大成スピリット”として全役職員が共有し、自然との調和の中、安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組みます。
当社グループでは、中期経営計画(2021-2023)の反省を踏まえ、利益重視の経営方針を明確化するとともに、[TAISEI VISION 2030]の実現に向け、7年間で取り組んでいく方針と施策を整理した[TAISEI VISION 2030]達成計画を策定しました。
[TAISEI VISION 2030]達成計画は、「企業価値向上に向けた経営資源の配分方針(経営の基本方針)」、「事業基盤の整備方針」、「各事業セグメントの2030年度の目指すべき姿とその実現ストーリー(中長期事業戦略)」、「新たなビジネスモデルの方針」、「事業変革の進め方の方針」により構成されます。
中期経営計画(2024-2026)は、この達成計画に基づき、利益重視の経営数値目標を設定しました。また、投資計画は経営の基本方針(財務政策)に基づいて策定し、将来の成長基盤整備と事業収益獲得に向けた投資を実行してまいります。
[TAISEI VISION 2030]達成計画
■中長期事業戦略
中期経営計画(2024-2026)
■数値目標(2026年度)
■投資計画
(3) その他経営方針に関する事項
当社が施工中の(仮称)札幌北1西5計画における鉄骨建方等の精度不良や世田谷区本庁舎等整備工事における工程遅延の発生を受け、当社は以下の取り組みを開始いたしました。これらを着実に積み重ねることにより、お客様と社会からの信頼に繋げ、品質・工程という当社事業の礎をより強固なものにしてまいります。
2024年4月より建設業に適用された時間外労働の上限規制への対応は、当社グループのみならず、建設業全体の大きな課題であると認識しております。そのような状況のもと、当社は日本建設業連合会の一員として、業界全体における取り組みを推進するとともに、協力会社と協働して長時間労働の是正や建設技能労働者の処遇改善等に努め、魅力的な労働環境の提供に努めております。
また、当社は、「適正な事業量の確保と生産体制の立て直し」を経営課題の一つと認識しており、社員の労働環境を踏まえ、施工量と利益のバランスを見極めながら事業を進めております。加えて、「適正な要員配置と適正工期の確保」、「本社・支店の作業所支援体制の強化」及び「ICTの活用・DXの推進」等の施策を実施することにより、時間外労働の上限規制へ対応してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項については、「(1)共通 ①ガバナンス」に記載の推進体制のもと、取締役会等において合理的な根拠に基づく適切な検討を経たものであります。
(1) 共通
当社グループは、「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念、及びグループ理念を追求するための自由闊達・価値創造・伝統進化という3つの“大成スピリット”のもと、建設業を中核とした事業を通じてサステナビリティ課題の解決を図るというサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を実現し、人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献することをサステナビリティの基本方針としております。サステナビリティ課題の解決にあたっては、それがリスクの減少のみならず、新たな収益機会にもつながることを認識し、積極的・能動的に取り組むこととしております。
この方針のもと、当社グループは、サステナビリティ課題のうち、特に重要なものをマテリアリティ(重要課題)としており、2024年5月に見直し、改めて5つを特定しました。それぞれのマテリアリティについて、併せて策定した[TAISEI VISION 2030]達成計画の施策に織り込んだ上で、中期経営計画(2024-2026)においてKPI(重要業績評価指標)を定め、事業戦略と一体化して取り組みを進めております。
①ガバナンス
当社及び当社グループ全体のサステナビリティ経営の強化・推進を目的として、取締役会委員会である「サステナビリティ委員会」を設置しております。多様な視点を取り入れるために社外取締役を委員長とし、代表取締役社長を含む取締役5名(うち社外取締役2名)を委員として構成しており、サステナビリティ経営に関する重要な方針や施策の策定、運用等に関する事項を審議の上、取締役会に上程しております。
執行サイドでは、重要な環境・社会課題を審議し、サステナビリティ経営への取り組みに関する情報の共有、経営会議への提言を目的として、業務委員会である「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。
また、サステナビリティ課題に一元化して対応する業務執行部門として、2022年度よりサステナビリティ総本部を設置しております。サステナビリティ全般及びカーボンニュートラルに向けた課題解決に関する戦略機能を担う「サステナビリティ経営推進本部」と、クリーンエネルギー・環境関連の事業推進機能を担う「クリーンエネルギー・環境事業推進本部」の2つの本部が一体となって取り組みを推進しており、同総本部長を最高サステナビリティ責任者(CSuO)に選任し、業務執行の責任を明確化しております。
環境や人権等に関連する重要事項については、サステナビリティ推進委員会における審議を経て、定期的に経営会議、サステナビリティ委員会及び取締役会に付議しており、取締役会が適切な監督機能を果たすことにより、実効性を確保しております。取締役会で審議・決定された議案は、当社の各事業部門及びグループ各社に伝達され、それぞれの経営計画・事業運営に反映しております。
●当社グループのサステナビリティにおける主な議論
*:取締役会上程議題
②戦略
当社グループは、以下の戦略に基づき、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すサステナビリティ経営を推進しております。
●マテリアリティ
サステナビリティ基本方針に基づき、サステナビリティ課題のうち、特に重要なものをマテリアリティとして特定し、経営会議で審議の上、取締役会で決定しております。
[TAISEI VISION 2030]達成計画及び中期経営計画(2024-2026)の策定に合わせて、マテリアリティを事業活動を行うにあたっての基本姿勢として中長期の経営計画の上位概念に位置づけるとともに、最新のサステナビリティ課題を踏まえ、「環境・社会(ステークホルダー)が企業活動・企業財務に及ぼす影響(リスクと機会)」と「企業活動が環境・社会に及ぼす影響(リスクと機会)」の2つの側面から検討の上、2024年5月に見直しました。
<マテリアリティの特定プロセス>
マテリアリティの特定は、以下のプロセスで行いました。
1)経営企画部門とサステナビリティ部門に社外専門家を加えたワーキンググループにより、SDGsやSASB業種別マテリアリティマップ等から482項目のサステナビリティ課題を抽出し、類似項目を123項目に集約
2)ワーキンググループにより、自社及び社会にとってのリスクと機会の観点から、当社グループに重要となりうる検討課題を15項目に絞り込み
3)経営者インタビュー、当社及びグループ会社の社員へのアンケート、当社の基幹取引先へのアンケート、企業風土改革ワーキンググループの意見等の結果を踏まえ、全課題を包含するマテリアリティとして、以下の5項目を特定
4)経営会議における事前審議の上、取締役会において審議・決定
特定した各マテリアリティについては、[TAISEI VISION 2030]達成計画の施策に織り込んだ上で、中期経営計画(2024-2026)においてKPIを定め、事業戦略と一体化して取り組んでおります。
●[TAISEI VISION 2030]達成計画
当社グループは、2021年5月、グループ理念等に基づき、中長期的に目指す姿として[TAISEI VISION 2030]「進化し続けるThe CDE3(キューブ)カンパニー~人々が豊かで文化的に暮らせるレジリエントな社会づくりに貢献する先駆的な企業グループ~」を策定しました。
今般、[TAISEI VISION 2030]の第2フェーズとなる中期経営計画(2024-2026)のスタートに先立ち、[TAISEI VISION 2030]達成計画を新たに定め、2030年までの7年間で取り組むことを「経営の基本方針」、「事業基盤の整備方針」、「中長期事業戦略」、「新たなビジネスモデル」、「事業変革の進め方」に整理しました。
中期経営計画(2024-2026)では[TAISEI VISION 2030]達成計画に基づき、利益重視の数値目標を設定しております。
●リスクと機会
環境・エネルギー、人的資本、人権に関する「リスクと機会」については、後述の「(2)気候変動をはじめとした環境課題への対応」、「(3)人的資本関係」、「(4)人権尊重」をご参照ください。
③リスク管理
●全社的リスクマネジメントの推進
当社グループは、リスクマネジメント方針、リスクマネジメント基本規程のもと、全社的に体系化されたリスクマネジメントシステムを確立しております。社長を「最高責任者」、管理本部長を「CRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)」としたリスクマネジメント体制を敷き、事業運営に伴うリスクの適切な把握、管理及び対応に努めております。
全社的に重要なリスクの選定、対策の審議及びリスクマネジメント実施状況の確認を目的として、業務委員会のひとつに、CROを委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しております。リスクマネジメント委員会において、経営に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクについて、その対処方針を総合的に検討・審議の上、経営会議及び取締役会に付議しております。
後述の「3 事業等のリスク」に記載のとおり、「労働環境リスク」、「気候変動等環境課題に関するリスク」、「人権課題に関するリスク」をはじめとするサステナビリティ関連リスクを投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるリスクと認識し、発生の回避及び発生した場合の影響の軽減に努めるとともに、その実施状況をリスクマネジメント委員会で確認の上、定期的に取締役会に運用状況を報告して監督を受けることにより、実効性を確保しております。
<全社的リスクマネジメント推進体制図>
●KPIの進捗管理
マテリアリティのKPIの進捗状況については、経営企画部門とサステナビリティ部門が確認の上、サステナビリティ推進委員会、経営会議、サステナビリティ委員会で事前審議を行い、定期的に取締役会に報告して監督を受けております。KPIに対する未達が見込まれる場合には、原因を分析し、対策を講じた上で、必要に応じて取締役会に報告しており、その達成に努めております。
④指標及び目標
各マテリアリティに関するKPIは以下のとおりです。
※1 持続可能な環境配慮型社会の実現との共通KPI
※2 会社の事業活動において発生する事件・事故のうち、当社及びグループ会社の経営に重大な損失を生じる可能性のある事件・事故
※3 建築:BCS賞、日本建築学会 作品選奨、日本建築学会 作品選集、BELCA賞、日本建築構造技術者協会賞、電気設備学会賞技術部門、日本照明賞、カーボンニュートラル賞
土木:土木学会賞(技術賞、技術開発賞、田中賞)、日建連土木賞
※4 T-BasisX®及びT-iDigital® Fieldの累計導入作業所数
※5 数値は2022年度
※6 投資決定済含む
※7 (G)はグループ全体のKPI、その他は当社単体のKPI
このうち、建設工事作業所の「4週8閉所実施率」については、2024年5月の見直し以前のKPIとしても設定しており、「2023年度:100%実施」という高い目標を掲げて取り組みを進めてまいりましたが、大幅な未達となりました。かかる状況ではありますが、長時間労働の是正と休日の確保は当社グループのみならず、サプライチェーンを含む建設業界全体の喫緊の課題であり、4週8閉所の実施は、最も有効な対策のひとつであると認識しております。
今後も引き続き、100%実施という目標を掲げ、サプライチェーンと協働して生産性の向上及び機械化・自動化を含めた効率的な施工に努め、業界団体と連携してお客様にご理解をいただきながら、その達成に努めてまいります。
また、「2.持続可能な環境配慮型社会の実現」については、以下の「(2)気候変動をはじめとした環境課題への対応」に記載のとおり、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」において詳細な目標を定め、その達成に向けた取り組みを進めております。
なお、マテリアリティに関して、以下「(2)気候変動をはじめとした環境課題への対応」、「(3)人的資本関係」、「(4)人権尊重」に詳細を記載しております。
(2) 気候変動をはじめとした環境課題への対応
当社グループは「人がいきいきとする環境を創造する」を経営理念とする企業グループとして、気候変動をはじめとした環境課題への対応を重要な経営課題と捉え、マテリアリティ及び環境方針に「持続可能な環境配慮型社会の実現」を掲げ、その達成を目指しております。
●TAISEI Green Target 2050
2050年に向けて、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を定め、「3つの社会(脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会)」の実現と「2つの個別課題(森林資源・森林環境、水資源・水環境)」の解決に向けた取り組みを進めております。それぞれについての目標は以下のとおりです。
<3つの社会>
<2つの個別課題>
●統合的な環境経営情報の開示(TCFD、TNFDを含む)
当社グループは、2024年5月より「統合的な環境経営情報の開示」として、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱について、環境経営に関する情報を統合的に開示しております。
なお、脱炭素社会については「TCFDフレームワーク」など、循環型社会については経済産業省の「サーキュラーエコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」など、自然共生社会については「TNFDフレームワーク」などを参照しております。
詳細は当社ウェブサイトをご覧ください。
(https://www.taisei-sx.jp/esg_guide_line/tcfd/)
①ガバナンス
前述の「(1)共通 ①ガバナンス」をご参照ください。
②戦略
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」に関する「リスクと機会」には、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇を避けるための規制の強化や市場の変化といった「移行」に起因するものと、気温上昇や自然資本の棄損、資源の枯渇の結果として生じる急性・慢性的な異常気象や海面上昇といった「物理的変化」に起因するものが考えられます。
この環境・社会の変化に柔軟に対応した経営戦略を立案するため、2030年を想定して「リスクと機会」を抽出し、当社グループの事業への影響を評価しました。そこから取り組み方針及び対応策を立案し、[TAISEI VISION 2030]達成計画及び中期経営計画等に反映しております。
●リスクと機会
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」に関するリスクと機会及び対応策は以下のとおりです。
●環境・エネルギー関連投資
中期経営計画(2021-2023)においては、3ヵ年の環境関連投資額を600億円、そのうち420億円を、経済と環境の好循環により成長が期待される産業分野に貢献する技術開発及び競争優位性のある技術開発に投資することとしておりましたが、環境関連技術開発投資を拡充したため、期間中に約520億円の投資を実行しました。
中期経営計画(2024-2026)においては、3ヵ年の環境・エネルギー関連投資額を750億円、そのうち600億円を、社会・環境課題に対応する技術開発に投資することとしております。
③リスク管理
前述の「(1)共通 ③リスク管理」をご参照ください。
また、当社グループでは、「持続可能な環境配慮型社会の実現」に向けて、環境方針に基づく「環境デュー・ディリジェンス」の仕組みを構築し、継続的に実施しております。
当社グループの事業活動が環境に及ぼす影響について、「負の影響の特定・評価」、「負の影響の予防・軽減」、「対応の実効性の追跡調査」、「情報開示」といったPDCAサイクルを回し、適宜見直し・改善を図っております。その実施状況については、サステナビリティ推進委員会、経営会議、サステナビリティ委員会で事前審議の上、取締役会に報告して監督を受けております。
当社グループが負の影響の原因となった、あるいは助長したことが判明した場合には、適切な手段により速やかにその是正に取り組みます。
環境デュー・ディリジェンスの取り組みの詳細については、当社ウェブサイトをご覧ください。
(https://www.taisei-sx.jp/environment/duediligence.html)
<環境デュー・ディリジエンスの実施フロー>
④指標及び目標
当社グループでは[TAISEI VISION 2030]達成計画において、グループCO2排出量削減目標として、2026年度目標を新たに設定するとともに、これまでの2030年度目標を改訂いたしました。SBT(Science Based Targets)が求める1.5℃目標に則り、2022年度比で2030年度にスコープ1+2を42%削減、スコープ3(カテゴリ1+11)を25%削減することを目標としております。
●グループCO2排出量削減目標(2022年度比)
(原単位:t-CO2/億円|総排出量:千t-CO2)
なお、2023年度の実績値は、当社ウェブサイトに掲載いたします(2024年7月予定)。
●TNFDの中核開示指標
TNFD提言によると、まず自社にとっての優先地域を特定し、そのうえで当該特定地域に関する指標を開示することが求められています。当社は提言に則って優先地域の特定を進め、TNFDが求める指標の開示を検討してまいります。
なお、当社ウェブサイト内で以下の項目を含む環境データを開示しております。
(https://www.taisei-sx.jp/environment/material_flow.html)
(3) 人的資本関係
①ガバナンス
当社グループは、人材活用方針(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン方針)を定め、ダイバーシティ経営の実現に向けて、多様な能力を有する人財を採用するとともに、その能力が最大限発揮できる職場環境を一層整備すべく取り組んでおります。
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン、働き方改革、健康経営、エンゲージメント等に関わる重要事項については、業務委員会である人事委員会での事前審議を経て、経営会議及び取締役会で審議・決定しております。
②戦略
●[TAISEI VISION 2030]達成計画及び中期経営計画(2024-2026)
「人的資本」を経営の基本方針の一つとして定め、社員の能力を最大限に発揮できる魅力的な環境の整備、人的資本投資の拡充、社員の健康と幸福感、多様なキャリアパスの実現に取り組んでおります。
<基本方針>
●人財の採用
新卒採用、キャリア採用(中途採用)のいかんを問わず、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向・性自認、宗教・信条、価値観だけでなく、キャリアや経験、働き方などを含めて、多様な能力を有する人財を採用しております。
●社内環境整備
多様性を尊重し、社員一人ひとりが高いエンゲージメントを維持して活躍できるよう、社内環境の整備に取り組んでおります。
・人財育成
多様な人財が、ライフステージや能力、意欲に応じた活躍ができるよう、キャリア形成やスキルアップ、リスキリングを後押しする仕組みを構築する。
・人財配置
スキルの向上度合いや社員のキャリア志向・適性を把握し、計画的・効率的な配置を実施する。
・処遇
社員のキャリアパス、評価制度と連動した魅力的な報酬水準の確保に向けた給与制度の見直しを実施する。
・シニア活性化
シニア世代の社員の活性化のため、処遇改善・リスキリング・定年制度の見直しを実施する。
・職場環境
安心して持てる能力を最大限に発揮できるよう、多様な意見や働き方を受け入れ、自由闊達で風通しがよく、違いを認め合い、偏見のない、働きやすい職場環境を整備する。
●エンゲージメント
2022年度より当社及び主要グループ会社において、エンゲージメントサーベイを開始しました。過去3回のサーベイ結果より、全社的な課題として、経営層と社員の間においてエンゲージメントの状態に差が生じていることが認められました。相互の意思疎通を図ることを目的とした意見交換会を数多く実施し、経営方針の伝達や現場課題の共有を図るとともに、社員から寄せられた意見を会社施策に生かす取り組みを行っております。
また、組織毎にエンゲージメントの状態が大きく異なるため、各組織のサーベイ結果を読み解き、改善に向けた施策の立案と実行を行うことにより、「働きがい」「働きやすさ」を兼ね備えたエンゲージメントの高い組織を目指しております。
●リスクと機会
国内の少子高齢化により生産年齢人口は減少しており、働き手を確保し、企業の持続的成長を図るためには、女性や高齢者、外国籍人財等の活用が欠かせない状況になっております。女性をはじめとする多様な属性の社員の活躍を推進するための取り組みや、子育て・介護と仕事の両立支援など多様な働き方を推進する取り組みを経営に活かすことは、個人と組織のパフォーマンスを向上させ、事業の成長と企業価値向上につながります。
③リスク管理
前述の「(1)共通 ③リスク管理」をご参照ください。
④指標及び目標
「一人ひとりがいきいきと活躍できる社会・職場環境の実現」をマテリアリティとして掲げ、以下のKPIを設定しております。
※1 ㈱リンクアンドモチベーションのエンゲージメントサーベイを実施。指標は同社算定評価を採用(評価はAAA~DDの11段階としております)。
※2 上記KPIは、当社グループの主要な会社である当社の目標を掲げております。
なお、主要グループ会社の「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」、「労働者の男女の賃金の差異」は、
(4) 人権尊重
当社グループは、人権方針において、事業活動に関連して人権への負の影響を生じさせないよう、自主的・積極的・能動的に企業としての責任を果たすことにより、包摂的な社会の実現に貢献することを基本姿勢とし、人権尊重の取り組みを推進しております。
①ガバナンス
前述の「(1)共通 ①ガバナンス」をご参照ください。
②戦略
●マテリアリティ
当社グループ及び取引先の社員など、当社グループの仕事に携わる全ての人の人権を尊重し、自らのキャリアプランに合わせて最大限に能力を発揮できる環境をつくることを目指して、「一人ひとりがいきいきと活躍できる社会・職場環境の実現」をマテリアリティの一つに定めております。
●[TAISEI VISION 2030]達成計画
[TAISEI VISION 2030]の達成に向け、2024年5月に「事業基盤の整備方針」の一つとして「サステナビリティ戦略」を定め、人権については「当社グループの事業に携わる一人ひとりの人権を尊重する」を基本方針として取り組んでおります。
中長期においては企業活動に伴う人権尊重責任が高度化・厳格化されるとともに、働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)やエシカル消費の一層の高まりが想定されることから、2030年に向けて、以下の事項に重点的に取り組んでおります。
・人権デュー・ディリジェンスの継続的実施による啓発・浸透
・ステークホルダーとの対話の充実
・誰もが働きやすい快適な作業環境の確保、エシカル消費への対応
●リスクと機会
人権尊重のための取り組みが不十分な場合には、社員の健康障害、エンゲージメントの低下、被害者からの損害賠償請求等のリスクが生じます。
また、情報開示が不十分な場合には、競争力・ステークホルダーからの評価の低下や受注機会の減少といったリスクにつながります。
一方、人権尊重のための取り組みの推進は、社員のエンゲージメントの向上や組織の活性化につながります。それに伴い、競争優位性の確保、企業価値向上、ステークホルダーからの評価向上が見込まれます。
③リスク管理
前述の「(1)共通 ③リスク管理」をご参照ください。
また、人権尊重の責任を果たすため、「人権方針」に基づく「人権デュー・ディリジェンス」の仕組みを構築し、継続的に実施しております。
当社グループの事業活動が人権に及ぼす影響について、「負の影響の特定・評価」、「負の影響の予防・軽減」、「対応の実効性の追跡調査」、「情報開示」といったPDCAサイクルを回し、適宜見直し・改善を図っております。その実施状況については、サステナビリティ推進委員会、経営会議、サステナビリティ委員会で事前審議の上、取締役会に報告して監督を受けております。
当社グループが負の影響の原因となった、あるいは助長したことが判明した場合には、適切な手段により速やかにその救済・是正に取り組みます。また、救済・是正の実効性を高めるために、各種相談窓口を設けて社内外に周知し、対応体制を整備しております。
人権デュー・ディリジェンスの取り組みの詳細については、当社ウェブサイトをご覧ください。
(https://www.taisei-sx.jp/social/human_rights/duediligence.html)
④指標及び目標
「当社グループのサプライチェーンにおける人権侵害ゼロ」を長期目標として掲げるとともに、以下のKPIを設定しております。
(5) その他のサステナビリティ課題に関する考え方及び取り組み
その他のサステナビリティ課題に関する考え方及び取り組みについては、当社ウェブサイトをご覧ください。
(https://www.taisei-sx.jp/)
当社グループは、リスクマネジメント方針・リスクマネジメント基本規程のもと、品質・コンプライアンス・情報・安全・環境等のESGに関するリスクへ対応する全社的に体系化されたリスクマネジメントシステムを整備しております。
全社的リスクマネジメントを有効に機能させ、業務の適正性を保つため、社内規程やマニュアル等に定めた事前のリスク対策を実行し、リスク発生の回避に努めるとともに、万が一、リスクが顕在化した場合には、発生時のリスク対策を適宜実施することにより影響を最小限に抑え、事業の継続及び社会からの信頼の確保に努めております。
当社グループの事業に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、リスクが発生する可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、取締役会において、当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上のため、企業戦略等の大きな方向性を示し、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境を整備しております。事業の実行にあたっては、経営方針及び中期経営計画等を踏まえ設定した基準に基づき意思決定を行ったうえで、個別案件毎に、リスクとリターンについて定性的かつ定量的に時点評価を実施しております。
なお、事業環境に関するリスクの主な内容は以下のとおりであります。
当社グループの事業は国内建設事業の占める割合が高く、国内建設市場の急激な縮小や競争環境の激化が生じた場合には、建設事業の受注高・売上高・売上総利益が減少するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、リニューアル分野やエンジニアリング事業、開発事業に注力するとともに、O&M(オペレーション&メンテナンス)事業など施工領域の川上・川下における事業や、当社保有技術を活用した地域連携による市場開拓など新たなビジネスモデルの確立に向けた取り組みを実施しております。また、脱炭素などの環境・社会課題の解決に貢献する技術開発をはじめ、サステナビリティを踏まえた経営基盤の整備を進めております。
原材料の価格が高騰した際、請負代金に反映することが困難な場合には、工事収支が悪化するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、資材価格動向のモニタリングや予測及び予測精度向上に向けた取り組みを継続するとともに、集約購買・国際調達等による原価低減に努めております。また、発注者との契約締結に際しては、資材価格動向を踏まえた価格交渉、約定による物価スライドの採用等に努めております。
営業上の必要性から、市場価格に基づいて評価される不動産・有価証券等の資産(リスク資産)を保有しているため、時価の下落により、資産が毀損するリスクがあります。
このリスクに対応するため、統合リスク管理により、リスク資産残高を連結株主資本の一定の割合に抑制するとともに、経済合理性の観点から保有資産の見直しを定期的に実施することによりリスクの低減を図っております。
金利水準が急激に上昇した場合には、資金調達コストが増加するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、金利関連のデリバティブ等の金融商品を利用するとともに、年度ごとに資金の調達額や調達手段を見直すことによりリスクの低減を図っております。
当社グループは、PFI事業・レジャー事業をはじめとした土木事業・建築事業・開発事業に付帯関連する事業を営んでおります。これらの事業の多くは、事業期間が長期にわたるため、事業環境が大きく変化した場合には、事業収支が悪化するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、事業環境の変化に即した事業計画の見直しによりリスクの低減を図っております。
リスクマネジメント基本規程に基づき、経営に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクを選定し、全社的なリスク管理の対象としております。
なお、事業運営に関するリスクの主な内容は以下のとおりであります。
土木事業・建築事業の遂行は、建設業法・建築基準法・労働安全衛生法・公共工事入札契約適正化法・独占禁止法等による法的規制を受けております。
万一、これらの法律に対する違反が発生した場合には、速やかな情報収集と正確な状況把握に努め、適宜弁護士等の専門家の助言・指導等を仰ぎながら、適正に対応するとともに、再発防止策を策定し、周知・徹底いたします。また、実行者を懲戒処分規定に基づいて厳正に処分することとしております。
なお、当社グループにとって特に影響が大きいリスクは以下のとおりであります。
当社グループが、建設業法等に違反し、監督官庁による処分や指導を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、建設業法をはじめとした各種関連法令の事前確認を徹底するとともに、役職員及び専門工事業者に対して法令遵守の啓発活動及び遵守状況のモニタリングを実施しております。
当社グループは、「グループ行動指針」をはじめとするコンプライアンスに関する諸規程を整備し、その遵守を徹底しておりますが、担当者の錯誤等により独占禁止法に違反し、当社グループ又は役職員が刑事罰・行政処分を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、入札業務の適正確認手続きに関する社内規程や内部通報制度等を整備し、違反行為の抑止に努めております。
当社グループが知的財産権を有する施工技術や建物・設備に関する商品・サービス等が、他者に侵害された場合には、受注機会の逸失・訴訟コスト発生等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、専門部署間において特許関連情報を適時共有するとともに、社内研修の実施や知的財産関連情報の定期的な発信等の啓発活動を行っており、保有財産の保全監視に努めております。
なお、当社グループの権利が侵害された場合には、侵害者に対する警告を行い、必要に応じて法的措置を講じます。また、当社グループによる他者の知的財産権侵害が危惧される場合には、専門部署にて調査・判定を行う体制を整備しております。
当社グループは、財務報告の適正性を確保するために内部統制体制を整備しておりますが、担当者の錯誤等により、財務報告が適正に行われなかった場合には、上場廃止・青色申告取消し等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、規定・マニュアル等の整備、会計処理がマニュアルに則って適正に行われているかのモニタリング、正確な財務報告等に関する啓発教育を実施し、内部統制の実効性確保に努めております。
なお、不適切な財務報告が発生した場合には、速やかな情報収集と正確な状況把握に努めるとともに、不適切な財務報告事例等について管理部門をはじめ関連する部門に水平展開し、適正な財務報告の重要性を周知いたします。また、実行者を懲戒処分規定に基づいて厳正に処分することとしております。
建設作業所等において反社会的勢力からの接触を受け、錯誤等により何らかの取引を行ってしまった場合には、社会的信用の失墜と営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、反社会的勢力への対応マニュアルの整備や全役職員へのメール発信等により、反社会的勢力への対応方針を全役職員へ周知・啓発しております。
なお、反社会的勢力から不当要求を受けた場合には、速やかに警察等の外部機関に通報し、組織的に対応いたします。また、契約後に相手方が反社会的勢力であることが判明した場合には、必要に応じて警察と協議のうえ、速やかに契約を解除することとしております。
当社グループは、品質管理・施工技術に関する業務標準や業務フローを定め、品質マネジメントシステムを運用しておりますが、ルールの不徹底や技術者・作業員の錯誤等により、施工不良が発生し、適正な品質を確保できなかった場合には、手直し工事に伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、品質管理の統括・指導に特化した独立部門の設置をはじめとした品質管理体制の強化等、品質マネジメントシステムの確実な運用・徹底に努めております。また、品質に関するパトロールの実施や各種教育等により、役職員及び専門工事業者の品質管理力の強化を図っております。
当社グループは、設計管理要領・品質マニュアル等を策定し、設計関連のチェック体制を構築しておりますが、担当者の錯誤等により、設計不良が発生し、顧客の要求水準を充足できなかった場合には、設計や施工の手直しに伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、QMS(クオリティーマネジメントシステム)等の制定によって設計業務を体系化し、設計業務プロセスの監視を行っております。
建設事業では、事前の施工計画等の検討に基づき、適正工期による契約に努め、施工中は確実な工程管理を実施しておりますが、事故・トラブル及び労務不足や資機材調達遅延等により、建物等の引き渡しが遅延した場合には、工事促進に伴う追加コストや遅延損害金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的管理体制を構築し、労務状況の早期把握や関係本部のパトロールによる工程進捗状況の把握を徹底し、確実な工程管理に努めております。
当社グループの建設作業所において人身や施工物等に関わる重大な事故が発生した場合には、被災者への補償や追加工事費用発生等による工事収支の悪化、指名停止等による営業活動の制限等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、労働安全衛生マネジメントシステムに基づいた安全衛生管理体制を推進するとともに、役職員及び専門工事業者に対する安全衛生教育・指導等を実施することにより事故災害発生防止を図っております。
役職員のパソコン・スマートデバイス等の紛失・盗難、操作上の錯誤等の内部要因及びコンピュータウイルス感染やサイバー攻撃等の外部要因により、当社グループ及び顧客の個人情報等の流出やシステムダウンが発生した場合には、事後対応に要するコストの発生や損害賠償金の負担、業務の遅延・停滞等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、役職員及び専門工事業者に対して情報管理規程体系に基づく取扱ルール・ガイドライン・マニュアル等の遵守を徹底させるとともに、ウイルス対策ソフトの常時更新や信頼性の高いハードの導入、データバックアップ体制の整備を行っております。また、組織内CSIRT(Computer Security Incident Response Team:「シーサート」)を設置し、被害予防を図っております。
なお、情報漏洩・システムトラブルリスクが発生した場合には、情報を一元化して正確な状況把握に努め、適切に対応いたします。また、重大な電子情報セキュリティインシデント発生時には、組織内CSIRTにより被害の最小化と迅速な復旧を図ります。
大規模災害が発生した場合には、本社・支店の機能が麻痺し、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、BCP(事業継続計画)を策定しております。例えば、震度6弱以上の地震が発生した場合には、BCPを自動発動し、速やかに対策本部を立ち上げて、被災情報の収集や被災物件の復旧活動等を行うこととしております。
また、本社・支店の非常用電源や通信手段の確保、業界団体や専門工事業者等との連携体制の構築、大規模災害訓練の定期的な実施等によりリスクの低減に努めております。
当社グループにおいて、従業員の労働環境・労働条件に関する事業主の義務を十分に果たすことができず、不適切な労働管理、過重労働等が発生した場合には、従業員の健康被害やメンタル不全、エンゲージメントの低下、更には、法違反の責任追及、損害賠償請求、社会的信用の失墜等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、勤怠管理や健康管理を適正に行うための体制を整備しております。また、過重労働を防止するべく、適正な要員配置や業務内容・配分の見直し等の措置を講じるとともに、休暇取得の促進等を通じて総労働時間の適正化を図っております。これらに加えて、エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、職場環境の状況・課題を把握のうえ、継続的な改善活動に取り組んでおります。
当社グループの建設作業所等において環境関連法規に違反した場合には、刑事罰・行政処分・損害賠償請求等を受けるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、EMS(環境マネジメントシステム)を制定・運用するとともに、環境パトロールによりその遵守状況をチェックしております。
企業には事業を通じて気候変動問題等環境課題の解決に取り組むことが求められており、当社及びサプライチェーンでの取り組みや情報開示が不十分な場合には、企業競争力及びステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社グループは、環境方針に掲げる「持続可能な環境配慮型社会の実現」に基づき、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を定め、3つの社会(脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会)の実現と、2つの個別課題(森林資源・森林環境、水資源・水環境)の解決を目指しております。更に、環境方針に基づく環境デュー・ディリジェンスを実施し、当社グループの事業活動が環境に及ぼす負の影響、及び当社グループの事業活動が環境から受ける負の影響に対する予防・軽減等を、サプライチェーンも含め進めております。
最大の課題であるカーボンニュートラルの実現に向けては、グループ全体で環境負荷低減活動(TSA:TAISEI Sustainable Action)に取り組み、スコープ1・2のCO2排出量削減を進めております。加えて、グリーン調達の推進や環境配慮コンクリート、ZEB技術の開発・普及促進等によりスコープ3のCO2排出量削減に努め、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
これらの環境課題に対する取り組みについては、統合レポートやウェブサイト等で適切に情報開示しております。なお、気候変動についてはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に則り、シナリオ分析に基づく気候変動に係るリスク及び収益機会が事業活動に与える影響について情報開示しております。
企業にはステークホルダーの人権尊重に取り組むことが求められており、その取り組みや情報開示が不十分な場合には、ステークホルダーの人権を侵害してしまうリスクや、企業競争力及びステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、人権方針に基づく人権デュー・ディリジェンスを実施しており、当社グループの事業活動による人権への負の影響に対する予防・軽減、対策の実効性の評価、内部通報制度をはじめとした苦情処理メカニズムの整備及び取り組みに関する情報開示など、サプライチェーンも含めた人権尊重への取り組みを継続的に実施しております。
建設事業の工事代金を受領する前に取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収遅延・不能のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的なプロジェクトリスク管理体制を整備し、具体的根拠と客観的評価に基づいた与信管理の徹底に努めております。
当社グループの事業において、発注者や関係者の要求・担当者の契約約款に対する理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、不利益条項に対する審査ルールを徹底するとともに、必要に応じて外部の専門家に対応策の検証を依頼する等、営業段階から組織的な契約リスク管理体制を整備・運用しております。また、営業担当者に対して意思決定ルール等を周知教育するための社内研修を行い、リスクの抑止を図っております。
感染症の流行に伴い、役職員やその家族、専門工事業者の作業員等が感染し、就業不能となった場合には、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社では「感染症発生時における事業継続計画」を策定しております。また、役職員及び専門工事業者へ職場において感染者が発生した場合の対処等について啓発を行うとともに、消毒液・マスク・個人防護具の備蓄を行っており、速やかに感染防止対策を強化できる体制を整備しております。引き続き、事業継続に努め、社会資本整備の担い手として建設業に求められる社会的使命を果たします。
海外事業を行う国・地域において、テロ・戦争・暴動・政情悪化等が発生した場合には、当該地域での事業継続が困難となるリスクがあります。また、現地の法律・商習慣への理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
これらのリスクに対応するため、事業継続に関しては、役職員の安全を確保する手段や非常時の危機管理体制の確立に努めるとともに、必要に応じて日本政府・現地日本大使館・外部専門家等との連携を図っております。また、その国固有の法制度等に伴う契約上のリスクに対しては、審査ルールを徹底するとともに、契約後は契約条件の履行状況を継続的にチェックし、リスク低減を図っております。
なお、カントリーリスクが発生した場合には、情報を一元化して正確な状況把握に努め、適切に対応します。
海外の特定地域が抱える政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりにより、資材価格が高騰するリスクや物流混乱により納期が遅延するリスクがあります。
これらのリスクに対応するため、契約時における発注者との協議はもとより、資材価格の高騰については、メーカーヒアリングや市場調査等により価格動向を早期に把握し、必要に応じて早期調達や代替品への変更等の措置を講じております。また、物流混乱による納期遅延については、製作地や輸送経路の確認を行い、自然条件・社会条件・法的リスク等を検討するとともに、納期遅延を発生させないよう調達業務の進捗管理を行っております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
日本経済は、個人消費に足踏みがみられるものの、設備投資の持ち直しやインバウンド需要の拡大を背景として、緩やかな回復基調を継続しております。一方、先行き不透明な中国経済や中東情勢等を要因とする海外経済の減速が景気を下押しするリスクが依然として残る状況にあります。
建設市場においては、企業の設備投資意欲の高まりに伴う民間投資の持ち直しに加え、政府による防災・減災、国土強靭化対策等に牽引された堅調な公共投資により、建設投資全体は底堅く推移しております。しかしながら、建設資材価格の高止まりや労務需給の逼迫がコスト上昇圧力となっていることから、建設業界全体としては厳しい経営環境が続いております。
こうした状況のもと、当社グループの経営成績は次のとおりとなりました。
受注高は、土木事業で大型工事の受注が増加したことから、前連結会計年度比8.4%増の1兆9,624億円となりました。
売上高は、期首手持工事残高が増加し、また、工程も順調に進捗した国内土木事業の増加をはじめ、全ての報告セグメントで増加したことから、前連結会計年度比7.4%増の1兆7,650億円となりました。
営業利益は、国内建築事業において、以下を主因とした手持工事の利益率低下や工事損失引当金の計上等により、売上総利益が減益となったことから、前連結会計年度比51.6%減の264億円となりました。
・全体的な基調として、建設物価の上昇影響により、原価低減や追加工事の獲得による収支改善が進捗しなかったこと。
・見積提出後、契約・着工までに長期間を要し、建設物価の上昇影響を強く受けた一部の大型工事において、原価低減に寄与する資材調達交渉等が全ては完了しておらず、当連結会計年度末時点の収支状況に基づいた決算処理をせざるを得ないこと。
・一部の大型工事における工程逼迫への対応に伴い、収支が悪化する見込みとなったこと。
経常利益は、営業外損益が持分法による投資利益の増加等に伴い好転したものの、営業利益の減少により、前連結会計年度比38.4%減の389億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益の増加等に伴う特別損益の好転により、同14.5%減の402億円となりました。なお、ROE(自己資本当期純利益率)は、前連結会計年度比1.0%低下の4.6%となりました。
経営成績に重要な影響を与える主な要因としては、建設需要や建設コストの急激な変動等がもたらす経営環境の変化があります。
当連結会計年度における経営環境は、建設投資全体が底堅く推移する一方、建設資材価格の高止まりや労務需給の逼迫に伴うコスト上昇圧力により厳しい状況となりました。今後についても、当連結会計年度並みの建設需要が見込まれるものの、建設コストの高止まりや人手不足が引き続きリスク要因になることが想定されます。
なお、中長期的な外部環境及び対処すべき課題については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題」に記載のとおりであります。
報告セグメント等の経営成績並びに経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容を示すと次のとおりであります(報告セグメント等の業績につきましては、セグメント間の内部取引を含めて記載しております。)。
売上高は、期首手持工事残高が増加し、また、工程も順調に進捗したことに加え、当期に株式会社ピーエス三菱を連結子会社化したこと等により、前連結会計年度比19.3%増の5,403億円となりました。営業利益は、増収に加え、当期竣工及び竣工間近の大型工事における追加工事の獲得や工事進捗に伴う原価低減等による利益率好転により完成工事総利益が増加したことから、同28.5%増の614億円となりました。
売上高は、当期に株式会社ピーエス三菱を連結子会社化したこと等により、前連結会計年度比2.1%増の1兆1,409億円となりました。営業損益は、手持工事の利益率低下や工事損失引当金の計上等により、完成工事総利益が減少したことから、561億円の営業損失となりました(前連結会計年度は66億円の営業損失)。
不動産業界におきましては、ビル賃貸市場は、オフィス回帰の動きにより直近の空室率は低下しております。不動産販売市場は、投資家の旺盛な投資意欲のもと、堅調を維持しました。
当社グループにおきましては、売上高は、私募リートへの物件売却等により、前連結会計年度比10.3%増の1,382億円となりました。営業利益は、増収により開発事業総利益が増加したことから同37.7%増の233億円となりました。
売上高は、前連結会計年度比6.8%増の163億円、営業利益は同13.2%増の18億円となりました。
完成工事未収入金の増加等により、資産合計は前連結会計年度末比28.1%・5,669億円増の2兆5,836億円となりました。
資金調達に係る有利子負債の増加等により、負債合計は前連結会計年度末比37.2%・4,398億円増の1兆6,226億円となりました。
株式相場上昇に伴うその他有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末比15.2%・1,270億円増の9,610億円となりました。また、自己資本比率は前連結会計年度末比5.1%低下の36.0%となりました。
税金等調整前当期純利益を570億円獲得したこと等により、当連結会計年度収支は406億円の収入超となりました。(前連結会計年度は301億円の収入超)
前連結会計年度との比較では、仕入債務の増加等により工事関係収支が好転したこと等により105億円の好転となりました。
有形固定資産の取得等により、当連結会計年度収支は1,387億円の支出超となりました。(前連結会計年度は140億円の支出超)
前連結会計年度との比較では、有形固定資産の取得による支出の増加等により1,246億円の悪化となりました。
資金調達に係る有利子負債の増加等により、当連結会計年度収支は1,093億円の収入超となりました。(前連結会計年度は986億円の支出超)
前連結会計年度との比較では、ノンリコース長期借入れによる収入の増加等により2,080億円の好転となりました。
以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は4,307億円(前連結会計年度末比148億円増)となり、また、資金調達に係る有利子負債の残高は3,762億円(同1,745億円増)となりました。なお、当連結会計年度末の資金調達に係る有利子負債の残高のうちノンリコース債務は729億円であります。
資本の財源及び資金の流動性については、[TAISEI VISION 2030]達成計画における財務政策及び中期経営計画(2024-2026)における投資計画に則り、新たに生み出すキャッシュと最適資本構成の追求に向けたKPIに基づき調達された資金を主な原資として、株主還元(株主への利益配分)とのバランスを図りながら、成長投資へ優先的に配分してまいります。
(4)生産、受注及び販売の状況
(単位:百万円)
(単位:百万円)
(注) 1 受注実績、売上実績においては、セグメント間の取引を相殺消去しております。
2 当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
(参考) 提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
(注) 1 前期以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注高にその
増減額を含めております。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。また、前期以
前に外貨建で受注したもので、当期中の為替相場の変動により請負金額に変更のあるものについても同様
に処理しております。
2 次期繰越高の施工高は、支出金により手持高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
4 前期の土木事業及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々10.8%、△3.2%、当期の土木事業
及び建築事業の期中受注高のうち海外工事の割合は各々2.3%、5.9%であります。
② 受注工事高の受注方法別比率
建設事業の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 第163期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりであります。
2 第164期に完成した工事のうち主なものは、次のとおりであります。
3 第163期及び第164期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
④ 手持工事高(2024年3月31日)
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。
なお、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、2023年11月9日開催の取締役会において、株式会社ピーエス三菱(以下「対象者」という。)を当社の連結子会社とすることを目的として、株式会社東京証券取引所プライム市場に上場している対象者の普通株式を金融商品取引法による公開買付け(以下「本公開買付け」という。)により取得することを決議し、2023年11月10日より本公開買付けを実施しておりましたが、本公開買付けが2023年12月11日をもって終了いたしました。
なお、本公開買付けの結果、2023年12月18日付で、対象者は当社の連結子会社となりました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループは、中期経営計画のグループ基盤整備計画:技術開発において、「オープンイノベーションの活用を通じて、環境・社会課題の解決に向けた技術開発を推進する」ことを重点課題として特定し、「経済と環境の好循環により成長が期待される産業分野に貢献する技術開発」及び「競争優位性のある技術開発」を目指し、経営資源を戦略的に投入しております。
具体的には「洋上風力産業」、「物流・人流・土木インフラ産業」、「カーボンリサイクル産業」、「住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業」、「ライフスタイル関連産業」、「水素産業」、「原子力産業」、「食料・農林水産業」、「資源循環関連産業」の各分野において新技術の開発や効率化、低コスト化を推進しております。
また、「大型プロジェクト対応の特殊技術」、「高付加価値化・高品質化に資する技術」の開発も進めております。
当連結会計年度における研究開発費は
(土木事業)
施工の無人化・省力化による生産性及び安全性の向上と、燃費改善や施工時のCO2排出量削減による環境負荷低減を図るために、自動運転建設機械の制御技術の開発・高度化に加え、自動化施工の適用範囲拡大を積極的に進めており、以下のような成果をあげております。
・自動運転建機「T-iROBO® Bulldozer」の機能を拡張し、土砂山の位置・大きさ・形状などを検出して最適な押土経路を自ら決定することで、土砂の押出し・敷均し作業を自律制御可能なブルドーザを開発しました。
・自動運転リジッドダンプ「T-iROBO® Rigid Dump」を「成瀬ダム原石山採取工事」(秋田県東成瀬村)に導入し、積込機械(バックホウ)との協調運転による骨材原石運搬作業の自動化を実現しました。
引き続き建設機械における自動運転技術の更なる進化を目指してまいります。
(2) 発破掘削の装薬作業を高速化する爆薬装填装置「T-クイックショット®」を開発
山岳トンネル工事の発破掘削における切羽(トンネル最先端の掘削面)での装薬作業を高速化する爆薬装填装置「T-クイックショット®」を開発しました。従来の装薬方法では作業員が装薬孔に火薬類を人力で装填していたため、切羽から土砂や岩が剥がれ落ちる「肌落ち」による災害リスクの発生が懸念されておりました。また、トンネル断面が大きく地山が硬質になるほど使用する火薬量が多くなり、切羽直下での作業時間も長くなることから、短時間で安全に効率よく装薬可能な仕組みの導入が求められておりました。本装置を適用することにより、切羽から数m離れた場所より迅速な装薬が可能となり、切羽近傍での作業時間が短縮されるため安全性及び生産性の向上を図ることができます。今後、全国の山岳トンネル工事に展開し、装薬作業における安全性及び生産性の向上に努めてまいります。また、引き続き本装置の機能拡張にも着手し、将来的にはトンネル掘削サイクル全体の完全自動化を目指してまいります。
(3) シールドマシンのローラーカッター交換システムを開発
シールドマシンのカッタービット交換工法「THESEUS工法®」の機能を拡張し、シールド機内からロボットの遠隔操作によりローラーカッターを交換可能とするシステムを開発しました。本システムの適用により、1個当たりの重量が数百㎏と重量物であるローラーカッターを安全かつ迅速に交換することが可能となります。従来は、掘削対象地盤が硬質で切羽の安定が確保される場合は、シールド機外から人力でローラーカッターを交換しておりましたが、巨礫を含む礫地盤では切羽崩壊を防止するために交換用立坑の築造や地盤改良が別途必要となり、工費増大や工期延伸の要因となっておりました。今後、岩盤や巨礫を含む礫層の掘進に対して本システムの適用を進めるとともに、対象地盤に応じてカッター交換システムを使い分けることにより、本工法の適用範囲拡大を図ります。また、カッター交換作業の全自動化を目指して、更なる安全性及び生産性の向上に向けた技術開発に取り組んでまいります。
(4) 施工管理支援システム「T-iDigital® Field」の機能を拡張
「生産プロセスのDX」の一環として、施工時の膨大なデジタルデータを活用して施工管理業務を支援するシステム「T-iDigital® Field」において、山岳トンネルとダム関連に係る機能を拡張しました。
・山岳トンネル関連では、切羽(トンネル最先端の掘削面)作業に特化した総合管理基盤及び施工時に建設機械等から発生するCO2排出量を可視化する仕組みを構築しました。これにより、建設機械毎の稼動状況を可視化するなど工事関係者間で稼働状況をリアルタイムに把握することで、効率的な施工管理が可能となります。また、CO2排出量を可視化し、排出量の推移を表示するなど改善対象となる建設機械を常時把握することで、現場に配慮した建設機械の選定や即時の対策が可能となります。
・ダム関連では、コンクリート骨材やダム堤体材料の粒度を、連続撮影した画像からAI画像認識を駆使してリアルタイムかつ高精度に把握することができる粒度管理システム「T-iTsubumil」を開発しました。これにより、使用材料の粒度分布を高精度に測定できるとともに、計測結果はクラウド上に保存され、遠隔からも即時に確認可能となります。
引き続き土工事や橋梁工事など適用工種の拡大を図るとともに、建設現場での施工支援アプリケーションを追加開発し、現場での適用による蓄積データの検証・分析及び各種データに基づいた施工・安全に関する管理機能の拡張を行うことで、DX技術による建設現場の変革を推進してまいります。
大成ロテック㈱は、東洋建設㈱並びに㈱フェクトと協働し、陸上の鉄筋コンクリート構造物で施工実績のあるガラス質膜塗装を、港湾の鉄筋コンクリート構造物へ適合させた「港湾コンクリート構造物 高機能型塗装『ワンダーコーティングシステムW-MG(マリンガード)』」を開発しました。本塗料は、以下の特徴があります。
・遮塩性、遮気性及び遮水性に優れており、被膜層をコンクリート表面に形成することで、塩害等の著しい腐食環境下にある港湾構造物を保護します。また、ひび割れ追従性と耐候性にも優れており、長期的な保護効果が期待できます。
・無色透明かつ長期的に透明度を維持できるので、塗布後もコンクリート表面の劣化状況や変状の進行を早期に発見できます。
・塗り重ね時間が短いことから、作業期間を大幅に短縮でき、雨天待機が生じる港湾工事特有の海象による作業工程への影響を、最小限にすることができます。
今後、本塗料を通じ、インフラの長寿命化に貢献し、サステナブルな社会の実現に寄与してまいります。
㈱ピーエス三菱は、現在全国で進められている高速道路リニューアルプロジェクトの床版更新工事に対して、プレキャストPC床版設計の生産性向上を目的に、プレキャストPC床版の自動製図システムをJIPテクノサイエンス㈱と開発し、これまでの設計業務に使用し効果をあげてきました。床版更新工事の豊富な発注量を背景に、設計業務に対する生産性向上のニーズが高まっていることから、2023年5月から「PCaSlab-D」(プレキャストPC床版自動製図システム)としてJIPテクノサイエンス㈱より外部販売を開始しております。ソフトウェア開発に関する収益化の取り組みは同社として初めての試みとなります。今後も、成長分野に対する設計・施工のニーズを把握し技術開発を進めてまいります。
室外機や冷却塔など音を発する設備機器が多数設置される生産施設等の設計に際して、騒音を基準値以下に抑制するための最適な消音装置の組み合わせを、AIの一種である「進化計算」を用いて自動で選定するシステム「T-Optimus® Noise」を開発しました。本システムの適用により、設備機器の複合騒音を基準値以下に低減する消音装置の無数の組み合わせの中から、最小コストでの配置パターンを短時間で選定することができ、設備騒音の対策コストと設計時間の大幅な削減が可能となります。今後、生産施設やごみ処理施設等設備騒音が懸念される建物の新築・改修に際し、低コストで効果的な騒音低減対策の設計手法として、本システムを積極的に適用してまいります。
(2) コンクリート床仕上げロボット「T-iROBO® Slab Finisher」に新機能を搭載
2016年に開発したコンクリート床仕上げロボット「T-iROBO® Slab Finisher」に新機能を搭載し、コンクリート床仕上げの様々な施工局面において利用できるよう性能を向上させました。本ロボットが有するコテの回転方向を制御する機能や回転数・角度の可変機能を新たに搭載することで、コンクリートの硬化具合に応じた仕上げ作業を可能とし、その結果、本ロボットによる、コンクリート床の凹凸をなくし、コンクリート表面を密な仕上がりとする「アマ出し」作業及び徐々に硬化するコンクリートの表面を数回にわたりコテで均す「仕上げ」作業を実施可能としました。今後、建設現場への導入を随時進め、コンクリート床仕上げ作業の更なる省力化・効率化を図るとともに、建設現場の脱炭素化や労働環境の改善による建設業界のイメージアップにも活用してまいります。
災害発生時の施設内の状況をリアルに再現した3次元仮想空間内において、複数人が同時に避難行動などを体験可能な災害体験メタバースシステム「T-Meta JINRYU」を開発しました。従来のシステムはVRデバイスを装着した個人に限定された災害体験にとどまっており、複数の被災者が周囲とコミュニケーションを取りながら避難行動をとるといった実際の災害時に想定される状況を再現することは困難でした。本システムの適用により、臨場感のあるメタバース空間が再現でき、火災時の炎や煙の拡散、群集の動きなどのシミュレーション結果に基づく最適な避難計画や効果的な災害対策の検証だけでなく、平時の人流を考慮した施設計画の検討などに有効活用することが可能となります。今後、本システムを避難計画や動線計画の検討はもとより、様々な用途の施設での防災・減災対策をはじめ、施設自体の活性化にも役立ててまいります。将来的には多様な解析結果と連携させたメタバース空間を構築・活用することで、より安全性及び快適性に優れた魅力的な空間づくりを進めてまいります。
「生産プロセスのDX」の一環として、「建設承認メタバース-CONSTRUCTION CONTRACT(略称 C2QUEST)-」の開発を開始しました。今回の開発では、建築物の意匠・構造・設備などのデジタルデータが統合されたBIMを基に、クラウド上に建築物のメタバースを構築します。このメタバース上に発注者等への説明から仕様の決定といった承認までの情報をはじめ、プロジェクト関係者(発注者・設計者・施工者等)間での合意形成に必要なデータや建設承認に至る議事録など、あらゆる情報を一元管理し、施工現場における業務の効率化や働き方改革に貢献することを目指します。今後、BIMやメタバースに基づき、生成AIやゲームエンジン等の先進技術を活用した本システムの更なる技術開発を進め、施工現場での生産プロセスのDXを通じた建設業における次世代の業務スタイルへの変革に積極的に取り組んでまいります。
(土木事業・建築事業共通)
2050年のカーボンニュートラル実現に向けた技術開発・実施適用を強化しており、主に以下のような成果をあげております。
・建物で消費する年間のエネルギー収支がゼロとなるZEBを既に達成している「人と空間のラボ(ZEB実証棟)」に、高効率な発電による余剰電力の貯蔵が可能な「蓄エネルギーシステム」を新たに導入しました。低圧貯蔵が可能な水素吸蔵合金を用いた一連の水素変換設備と蓄電池を国内で初めて組み合わせて構築しており、石油など化石燃料由来の排出量の実質ゼロを達成することが可能となります。
・埼玉県幸手市に建設中の当社グループ次世代技術研究所において、2023年9月より国内初の「ゼロカーボンビル」となる研究管理棟の建設を開始しました。脱炭素化に向けた先進的な技術の導入などにより、設計レベルで建物のライフサイクルにおけるCO2収支をマイナスとするカーボン・ネガティブを実現しております。
・工場から排出されるCO2を資源化して利用することでCO2排出量収支がマイナスとなるカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を国内で初めて、建築物の構造部材として当社技術センターに建設した人道橋の基礎部に適用しました。
・日本海側東北地方CCS事業構想が独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の2023年度公募事業である「先進的CCS事業の実施に係る調査」に採択されました。素材産業をはじめとする電化及び水素化等のみでは脱炭素化の達成が困難と想定される産業等から排出されるCO2の分離回収・出荷・船舶輸送・貯留に係る共同事業化に向けたスタディを進めるとともに、国内におけるCO2貯留候補地の選定作業を実施してまいります。
(2) 「ネイチャーポジティブ評価手法」の開発に着手
活動がもたらす自然環境への影響を、自然によって生み出される資源のストックである「自然資本」への配慮や経済的要素などの観点から定量評価する「ネイチャーポジティブ(NP)評価手法」の開発に着手しました。建設事業に特化し客観的に実証された評価手法としての確立を目指しており、本評価手法により、事業におけるNP貢献度を可視化し、投資家をはじめとしたステークホルダーに対する情報開示を支援することで、投融資獲得につなげることが可能となります。また、建設事業全体が自然資本に与える影響を定量的に把握・評価することで、建設業におけるNP実現に向けた取り組みを強力に推進することが可能となります。今後、本評価手法を用いたNP評価の一部について一般公開を予定しており、建設事業による自然環境への影響評価のニーズがある顧客が利用できるツールとして提供し、持続可能な社会の構築に向けたNP実現及び顧客の経営基盤強化に貢献してまいります。
(3) 生成AIを用いた専門技術検索システムを開発
専門知識が必要な技術に関する質問に対して信頼性の高い情報を迅速に提供することができる「専門技術検索システム」を開発しました。本システムの適用により、膨大な社内書類の専門技術データ・資料の有効活用が実現し、大幅な業務効率化と生産性向上が可能となります。今後、様々な専門分野において社内書類の技術データ・資料を有効活用して本システムの適用領域を拡げ、更なる業務効率化と生産性向上に取り組んでまいります。
(4) 建設用3Dプリンティング技術の開発を促進
コンクリート構造物の新たな施工方法として建設用3Dプリンティング技術「T-3DP®(Taisei-3D Printing)」の開発を推進しており、主に以下のような成果をあげております。
・平滑な水平面上での造形を前提としている従来の3Dプリンティング技術に対し、斜面や曲面、凹凸面など任意の形状に沿わせてコンクリート構造物を構築できる業界初の技術を開発しました。
・多関節ロボットと建設用3Dプリンティング技術を融合した製造装置により、大型の鉄筋コンクリート部材の現場施工を可能にする移動式3Dプリンティング技術を開発しました。本技術の適用により、製作可能な部材の大型化が実現するとともに、プリント用ノズルの三次元的なアプローチによって適正な鉄筋かぶりでの造形が可能となり、建設工事の更なる生産性向上を図ることができます。
今後、本技術の建設現場での実証により、更なる生産性向上を図るとともに、3Dプリンティングで製作した構造体の力学特性や施工法などに関するノウハウを蓄積し、構造躯体への本格適用など本技術の実用化に向けた取り組みを進めてまいります。
(5) 自動運転社会の到来で変わる「まちづくり」をリード
自動運転の社会実装促進とまちの活性化を目指して、自動運転がもたらす「まちの付加価値向上」や「暮らしにおける新しい価値創出」に向けた取り組みを推進しております。当連結会計年度は、自動運転に必要なソフトウェア開発などに取り組むスタートアップに出資し、「西新宿エリアの魅力を高める新たなモビリティ」として、継続的な走行と自動運転サービス事業の持続可能性について検証する取り組みに参画しました。引き続き信号情報の連携、トンネル走行支援技術といった路車間連携技術を中心とした研究開発を推進し、建設と自動運転やまちづくりを手掛ける各社と協力しながら、自動運転社会の発展に貢献してまいります。