(1)変わることと変わらないこと
当社グループが変わらずに大切にしているものがあります。それは創業の精神である「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」からなる「三愛精神」です。三愛精神を根底とし、お客様の“はたらく”に寄り添い、“はたらく”を歓びに変えるお手伝いをする会社になるという姿勢をより明確にするため、2023年4月1日に企業理念であるリコーウェイを改定しました。「“はたらく”に歓びを」を「使命と目指す姿」と定め、“はたらく”に寄り添い変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくることを目指しています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。

(2) リコーの中期展望
当社グループは、2023年3月に、同年4月からスタートする第21次中期経営戦略(以下、21次中経)を発表しました。当社グループの使命と目指す姿である「“はたらく”に歓びを」の実現に向けて、中長期目標として「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供するデジタルサービスの会社」となることを目指しています。
当社グループが注力している領域は、働く人を単純作業から解放するビジネスプロセスオートメーション、創造性を高めるコミュニケーションサービス、ワークプレイスの基盤となる環境を構築するITサービスの3つです。この注力領域において、グローバルの顧客基盤や、顧客の課題把握力・提案力に優れた販売・サービス体制、そして魅力的な自社IP*といった強みを活かしながら、変容するワークプレイスにおいて一貫したサービスをグローバルに提供する「ワークプレイスサービスプロバイダー」を目指します。
*自社IP(Intellectual Property):企業が自らの努力で生み出した知的財産で、ライセンス使用料など収益の源泉となるなどの経済価値を有するもの


◆将来財務(ESG)の視点
ESGの取り組みは、将来の財務を生み出すために不可欠なものと位置づけ、「ESGグローバルトップ企業」を目指し、お客様や株主・投資家の皆様からの高まるESG要求に応えるべくバリューチェーン全体を俯瞰した活動を進めます。
21次中経では、事業を通じた4つの社会課題解決と、それを支える3つの経営基盤強化を合わせた7つのマテリアリティ(重要社会課題)に取り組んでいます。また、これら7つのマテリアリティに対する評価指標として16のESG目標(将来財務目標)を設定しています。マテリアリティとESG目標は、グローバルなESGの潮流への対応と経営戦略の実行力向上の観点で設定しており、16のESG目標は各ビジネスユニット、機能別組織にブレークダウンして展開しています。
「事業を通じた社会課題解決」では、お客様の“はたらく”を変革するデジタルサービスを提供し生産性向上と価値創造を支援しています。また、脱炭素社会、循環型社会の実現にも引き続き注力し、当社グループの強みである技術力と顧客接点力を活かし、地域・社会システムの維持発展、効率化に貢献しています。「経営基盤の強化」では、人権問題への対応の強化、デジタルサービスの会社への変革に向けたデジタル人材の量・質の確保、デジタルサービス関連特許の強化などに取り組んでいます。
また、社会課題解決に貢献する事業とその貢献金額を明確化し、2025年度までの売上高目標を設定しました。今後もESGと事業成長の同軸化の取り組みを加速させていきます。

◆21次中経基本方針
中長期目標を達成するために掲げた「①地域戦略の強化とグループ経営の進化」「②現場・社会の領域における収益の柱を構築」「③グローバル人材の活躍」という3つの基本方針は継続して取り組んでいます。
●21次中期経営戦略 基本方針
① 地域戦略の強化とグループ経営の進化
② 現場・社会の領域における収益の柱を構築
③ グローバル人材の活躍
基本方針① 地域戦略の強化とグループ経営の進化
オフィスプリンティング以外の収益を積み上げ高収益な体質に変革していくために、顧客接点における価値創造能力の向上、当社グループ内でのシナジー発揮、継続した収益改善のために環境変化への対応力をつけていくことを重視し取り組みを進めました。
この収益構造の変革に向けて、特に注力すべき価値提供領域を「ビジネスプロセスオートメーション」「コミュニケーションサービス」「ITサービス」と定めました。地域ごとの特性を重視しながらリソースを集中的に投下し、サービス分野のストック契約・売上を積み上げる戦略を実行しています。
基本方針② 現場・社会の領域における収益の柱を構築
デジタルサービスの領域を拡げ、より幅広いお客様に価値を提供していくため、「現場・社会」領域での収益の柱の構築を21次中経の基本方針として掲げています。商用印刷事業を中心に進捗しており、リコーグラフィックコミュニケーションズの当連結会計年度の業績は前年度比で増収増益となっています。
引き続き「現場・社会」領域での収益の柱の構築に取り組みます。同時に、事業ポートフォリオマネジメントを通じて注力する事業領域を見極め、出口プロセスへの移行を判断した事業については、適切な出口戦略を探索していきます。
基本方針③ グローバル人材の活躍
事業構造を変化させ、グローバルでの提供価値を拡大させるためには、社員の活躍が不可欠です。当社グループでは社員の能力やスキルを資本と捉え、人に対して積極的に投資をしていく人的資本戦略を策定しました。
◆企業価値向上プロジェクト
目指す姿の実現に向けて2023年4月から企業価値向上プロジェクトに取り組んでいます。株主・投資家・アナリストの皆様との対話や資本市場目線での分析など、様々な角度から企業価値向上に向けて当社グループが取り組むべき課題について検討を進めました。PBRが低い最大の要因は収益性の低さにあり、デジタルサービスの会社として成長を実現するためには、各事業のビジネスモデルに適合した収益構造の実現が必要であることから、抜本的な収益構造変革を推し進めています。
具体的には、① 本社改革、② 事業の「選択と集中」の加速、③ オフィスプリンティング事業の構造改革、④ オフィスサービス利益成長の加速 の4つの領域で収益構造の変革に取り組んでいます。

① 本社改革
R&D投資はデジタルサービスの会社と親和性の高いワークプレイス領域によりフォーカスしていきます。また、顧客接点でより多くの価値を創造するデジタルサービス型へリコーグループの経営体制をシフトしていきます。
② 事業の「選択と集中」の加速
デジタルサービスの会社への変革・資源配分の最適化に向けて、従前より進めていた事業ポートフォリオマネジメントの取り組みをさらに加速します。当社グループの強みが生きる「ワークプレイス」を注力領域として、リソースを戦略的に配分するとともに、事業ポートフォリオマネジメントで出口プロセスへの移行を判断した事業については出口戦略の検討を進めます。
③ オフィスプリンティング事業の構造改革
オフィスプリンティング市場は縮小するという認識のもと、売上高が減少したとしても収益を確保するための体質強化を進めます。東芝テック株式会社との合弁会社の組成やSCMの最適化など、バリューチェーン全体を俯瞰した取り組みを実施します。
④ オフィスサービス利益成長の加速
デジタルサービスのコアであるオフィスサービスについては、お客様におけるオフィスサービスの導入率・ストック売上成長率の向上による利益成長のメカニズムを意識しながら、継続的な収益性向上に取り組みます。
また、提供価値最大化のため、販売・サービスや支援業務についてはインサイドセールスなども活用しながら、顧客との関係性を重視した、デジタルサービスの会社として相応しい体制へと見直します。
前述のとおり、当社グループが中長期的に目指す姿はグローバルのワークプレイスサービスプロバイダーであり、収益構造変革の活動はその目指す姿への到達に向けた重要な取り組みです。2024年度はこの収益構造変革に最優先で取り組みます。デジタルサービスの会社としての利益成長を着実に進めるための継続的な収益改善とあわせ、中長期の視点を見据えた成長施策にも取り組むことで、継続的な企業価値向上を実現します。
◆成長を支える資本政策
当社グループは、ステークホルダーの皆様の期待に応えながら、株主価値・企業価値を最大化することを目指しています。専門家の意見も取り入れながら様々な手法・複数の視点で当社グループの資本コストを把握し、株主の皆様からお預かりした資本に対して、資本コストを上回るリターンの創出を目指します。

企業価値最大化の実現に向けて、グループ本部による厳正な事業ポートフォリオマネジメントのもとで、各ビジネスユニットを投下資本利益率(以下、ROIC)や市場性などで評価した上で、合理的な判断・意思決定を行い、経営資源配分の最適化に取り組んでいます。事業ポートフォリオマネジメントでは、収益性と市場性という従来型のポートフォリオの切り口に加えて、「デジタルサービス親和性」という観点からも評価を行っています。この3つの観点において、各ビジネスユニット・事業を客観的に評価し、成長加速、収益最大化、戦略転換、事業再生の4つに分類し、デジタルサービスの会社として必要な経営基盤の強化に努めています。
また、中長期的に目指す株主資本利益率(以下、ROE)10%超を継続できる資本収益性の実現に向け、資本コストを上回る収益性を追求するため、各ビジネスユニット・部門にてROICツリーを用いた施策管理を実施しています。さらに、それらの主要施策を全社のROICツリーに採用し、単純に財務数値化できないグループ本部の施策についてはKPIとして目指す内容を言語化した上で、「リコー版ROICツリー」として定期的にモニタリングし、財務目標と施策の関連、KGI*2とKPIマネジメントを実施しています。
なお、当連結会計年度のROIC*3は、3.3%となりました。
*2 KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標
*3 ROIC(投下資本利益率) = (営業利益-法人所得税費用+持分法による投資損益) / (親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債)
「リコー版ROICツリー」の概略
損益計算書(P/L)に加えて、貸借対照表(B/S)も意識したKPIを設定し、個々の組織と全社の両視点でKPIマネジメントを実施。

デジタルサービスの会社への変革に向けて、リスク評価に基づき適切な資本構成を目指し、投資の原資に借入れを積極的に活用しながら、負債と資本をバランスよく事業に投資していきます。オフィスプリンティング事業などの成熟し安定した収益を生む事業には負債を積極的に活用し、リスクの比較的高い成長事業には資本を中心に配分する考えです。
なお、2025年度に向けては、経営環境の不確実性が残る想定のもと、格付や資金調達リスクを鑑みた資本構成で、成長のための資本を確保します。2025年度以降は、成長投資領域の安定事業化とあわせ、新たな成長投資戦略に伴う事業構造変化を考慮し、柔軟に最適資本構成を調整していく考えです。
事業投資によって創出した営業キャッシュ・フローは、さらなる成長に向けた投資と株主還元に対して計画的に活用していきます。デジタルサービスの会社への変革に向けた成長投資については、20次中期経営計画発表時に掲げた5年間(2021~2025年度)の成長投資枠5,000億円から変更はありません。当連結会計年度はITサービス強化に向けたアイルランドのPFH Technology Group(以下、PFH)の買収や、オフィスサービス事業成長のための欧米におけるコミュニケーションサービスやアプリケーションサービス領域でのM&A投資など、事業成長のための投資を着実に進めています。翌連結会計年度においても財務規律を考慮しつつ企業価値最大化に向けた成長投資を継続します。投資原資は、営業キャッシュ・フローを中心に有利子負債も活用しながら戦略的に実施します。

株主還元方針については、引き続き総還元性向50%の方針を堅持していきます。総還元性向50%を目安とした上で、配当利回りを意識し毎年利益拡大に沿った継続的な増配を目指します。さらに、自己株式取得などの追加還元策は、経営環境や成長投資の進捗を踏まえながら、最適資本構成の考え方に基づき、機動的かつ適切なタイミングで実施し、TSR*の向上を実現していきます。
この株主還元方針を踏まえ、2024年2月に300億円の自己株式取得を決定し、2024年2月7日から2024年3月31日の期間に75億円の自己株式取得を実施しました。また、翌連結会計年度の配当見通しについては、当連結会計年度から1株当たり 2円増配し年間 38円を予定しています。
* TSR(Total Shareholder Return):株主総利回りは、キャピタルゲインと配当をあわせた、株主にとっての総合投資利回り

(3)翌連結会計年度の見通し
当連結会計年度は、国際情勢の緊迫化の継続、資源価格の高騰やインフレ、円安の進行などにより、グローバルビジネスにおける景気低迷が続き、先行きは依然として不透明な状況となっています。翌連結会計年度においてもこのような厳しい外部環境が続くと想定されますが、企業価値向上プロジェクトの活動を確実に実行し、デジタルサービスの会社として相応しい収益構造へと変革を進めます。
翌連結会計年度の業績見通しについては、連結売上高25,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は480億円としました。当社グループが成長事業としているオフィスサービス領域において引き続き堅実な成長を見込んでいることに加え、オフィスプリンティング領域の在庫過多の解消、リコーグラフィックコミュニケーションズの成長などを見込んでいます。2024年7月には東芝テック株式会社と開発・生産機能を統合する合弁会社を組成予定であり、両社の統合を確実かつ迅速に実行することなどにより、オフィスプリンティング領域の構造改革を推進していきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
基本的な考え方-ビジネスの力で持続可能な社会を実現
当社グループは、三愛精神に基づき、経済(Prosperity)・社会(People)・地球環境(Planet)の3つのPのバランスが保たれている目指すべき社会「Three Ps Balance」の実現に向け、「事業を通じた社会課題解決」「経営基盤の強化」と「社会貢献」の3つの活動に取り組み「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献していきます。
(1)ガバナンス
環境・社会・ガバナンス分野における課題を経営レベルで継続的に議論し、グループ全体の経営品質向上につなげる目的でESG委員会を設置しています。ESG委員会はCEOを委員長とし、社内取締役を含むGMC*1メンバーとビジネスユニットプレジデントから構成*2され、四半期に一度開催する意思決定機関です。
ESG委員会では、サステナビリティ領域における事業の将来のリスク・機会や、重要社会課題(マテリアリティ)の特定、ESG目標の設定等について審議しています。重要な審議内容については、取締役会の承認を経て決定しています。
また、ESGの取り組みや目標達成に対する経営責任を明確にするため、取締役や執行役員の報酬にESG指標を組み込んでいます。具体的には、DJSI年次レーティングを取締役・執行役員賞与フォーミュラに組み込んでいます。また、社内取締役及び執行役員が対象となる役員株式報酬制度の算定式の20%は「ESG目標の達成項目数」と連動しており、ESGの取り組みへのインセンティブとしています。役員株式報酬制度の詳細については
*1 GMC(グループマネジメントコミッティ):当社グループ全体の経営について全体最適の観点で審議及び意思決定を迅速に行うた
めに、取締役会から権限移譲された社長執行役員が主催する意思決定機関
*2 常勤監査役がオブザーバーとして参加
<当社グループのガバナンス体制>

(2)ESG戦略
当社グループでは、「ESGと事業成長の同軸化」を方針に掲げ、ESGを非財務ではなく、数年後の財務につながる「将来財務」と位置づけています。目指すべき持続可能な社会の姿「Three Ps Balance」の実現に向けて、当社グループは、中期経営戦略において特に重点的に取り組むマテリアリティを特定しました。
マテリアリティの特定及び改定は、社会動向、事業戦略、ステークホルダーの皆様の視点や各種ガイドラインを参照しながら、3年ごとの中期経営戦略単位でStep1からStep4(下図1)のプロセスで実施しています。マテリアリティを改定する場合はCEOを委員長としたESG委員会にて審議の上、中期経営戦略とともに取締役会で承認したうえで開示します。
21次中経では、事業活動を通じた4つの社会課題解決と、それを支える3つの経営基盤の強化をマテリアリティとして特定し、これら7つのマテリアリティに対して戦略的意義を定め(下図2)、評価指標として16のESG目標を設定しました。具体的には、世界共通の課題である気候変動や人権問題に関する目標や、デジタルサービスの会社への変革に必要となるデジタルサービス関連特許や情報セキュリティ、デジタル人材育成等の目標を設定しています。また、社会課題解決が事業成長につながることを示すため、4つのマテリアリティに対して社会課題解決型事業を特定し、2025年度までの売上高目標を設定しました(下図3)。今後もESGと事業成長の同軸化の取り組みを加速させていきます。
<図1 マテリアリティの特定及び改定プロセス>

<図2 7つのマテリアリティと戦略的意義>

<図3 21次中経の事業を通じた社会課題解決型事業売上高目標>

(3)リスク管理
当社グループのリスク管理は、経営に大きな影響を及ぼすリスクを「重点経営リスク」と位置づけその特性によって「戦略リスク」と「オペレーショナルリスク」に分けて管理しています。
サステナビリティに関するリスクは、企業の中長期的な成長に大きく影響を与えることから「ESG/SDGsへの対応」を戦略リスクの一つとして位置づけ、脱炭素、資源循環、生物多様性や人権に関するリスク管理を全社レベルで行っています。
リスクレベルは、影響度及び緊急度を基に算出し、全社リスクマネジメントの枠組みに則って評価されています。リスクマネジメント詳細については
(4)指標と目標
21次中経におけるESG目標の進捗は以下のとおりです。2025年度目標達成に向けて一部進捗に遅れがあるものの概ね順調に推移しています。
<7つのマテリアリティに紐づく16のESG目標と進捗>


社外からの評価
ESGへの取り組みが評価され、国内外のESGインデックスの組み入れ銘柄として採用されています。
*10 CDP:企業の環境分野の情報開示を促し、気候変動、水セキュリティ、フォレスト等の取り組みを評価する国際的な非営利
団体
*11 EcoVadis:企業の環境・社会・ガバナンス側面を評価する国際的な評価機関であり、多くのグローバル企業がサプライヤー
の選定に評価結果を活用
*12 Global 100:カナダのCorporate Knights社による、環境・社会・ガバナンスの側面について企業を評価し、持続可能な企
業
100社を選定する評価機関
*13 GPIF 6指数:MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)、FTSE Blossom Japan
Index、FTSE Blossom Japan Sector Relative Index、S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数、Morningstar
日本株式ジェンダー、ダイバーシティ・ティルト指数
(5)個別テーマへの対応-環境分野の取り組み
①環境分野のガバナンス及びリスク管理
当社グループでは、マテリアリティとして「脱炭素社会の実現」「循環型社会の実現」を定め、環境対応を経営課題の1つとして取り組んでいます。2050年を見据えた中長期の環境目標を設定するとともに、中期経営戦略においてもESG目標を設定し、目標達成に向けた具体的な施策を展開しています。ESG目標の進捗状況についてはESG委員会や取締役会を通じ、経営レベルで監督が行われています。また、当社グループの経営上重要なリスクとして設定している7つの重点経営戦略リスクの一つに環境分野への対応を据えてリスク管理を行っております。当社グループが取り組んでいる「脱炭素」「省資源」「生物多様性」における方針・戦略・リスクと機会・目標に対する進捗は以下のとおりです。
②脱炭素分野
<方針>
「脱炭素社会の実現」に向けて、パリ協定やIPCC等科学的知見に基づき2050年バリューチェーン全体の温室効果ガス(以下GHG)排出実質ゼロとすることを定めました。脱炭素方針に沿って中長期の環境目標(図1)や脱炭素ロードマップを策定し、全社で具体的な施策を展開しています。
1. 徹底的な省エネ・燃料転換の推進
2. 再生可能エネルギーの積極的な利活用
3. サプライチェーンにおけるGHG排出量の可視化と削減
<戦略>
2050年GHGスコープ1,2及び3(*1)のネットゼロ目標達成に向けてマイルストーンごとの野心的な削減目標を定め、2030年目標は気候変動の国際的イニシアチブSBTi(Science Based Targets initiative)から「SBT1.5℃」水準として認定されています。2030年目標達成に向けては、当社グループの事業規模・事業構成の変化や国内外の脱炭素政策に基づくエネルギー・素材のGHG排出原単位の変化見通し等も考慮した脱炭素ロードマップを策定し、具体的な削減施策を定め推進しています。目標については3年ごとに見直しを行いながら取り組んでいます。
また、2024年3月には、スコープ1,2のGHG実質排出ゼロの達成、事業活動における使用電力の100%再生可能エネルギーへの移行(RE100*2達成)を従来の2050年から10年前倒しする新たな2040年度目標を設定しました。スコープ1,2の2040年度目標に対しては、排出量を自助努力で基準年*3比90%削減し、残余排出量については、国際的に認められる方法*4でオフセットすることで実質ゼロを達成します。スコープ3についても対象範囲を従来のカテゴリー1(調達)、4(輸送)、11(使用)から全カテゴリーに拡大し、2040年度までに基準年比削減率65%を新たに設定し、対応を強化します。また、従来から設定している2050年のスコープ1,2及び3のネットゼロ目標についても、排出量を自助努力で基準年比90%削減する数値目標を追加設定しました。
*1 スコープ1:自社の工場・オフィス・車両等から直接排出されるGHG
スコープ2:自社が購入した熱・電力の使用に伴うGHG
スコープ3:企業活動のサプライチェーンの排出量(GHGスコープ1、2を除く)
*2 RE100:事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟する国際イニシアチブ
*3 2015年度
*4 2023年11月発行のISO14068ー1:2023に準ずる
<リコーグループ環境目標(脱炭素分野)>
2050年目標
・ GHGスコープ1,2,3:ネットゼロ(2015年度比90%削減、残余排出は国際的に認められる方法でオフセット)
2040年目標
・ GHGスコープ1,2:実質排出ゼロ(2015年度比90%削減、残余排出は国際的に認められる方法でオフセット)
・ GHGスコープ3:65%削減(2015年度比、全カテゴリー)
・ 再生可能エネルギー比率:100%
2030年目標
・ GHGスコープ1,2:63%削減(2015年度比)
・ GHGスコープ3:40%削減(2015年度比、調達・輸送・使用カテゴリー)
・ 再生可能エネルギー比率:50%
<図1 リコーグループ環境目標(脱炭素分野)>

<リスクと機会>
気候変動におけるリスクに関しては、TCFDフレームワークに沿ったシナリオ分析によりリスクを捉え、各リスクにおける影響度(財務影響)と緊急度(発現時期)について評価を行っています。評価にあたっては各リスクを全社のリスクマネジメントの枠組みに照らして、影響度・緊急度を具体的な金額や発生度合いが本格化する年限で示しています。年々増加する自然災害は、当社グループにとって喫緊の課題であり、特に自社拠点を含むサプライチェーンの寸断は大きな事業インパクトが発生しかねないリスクと捉え、毎年モニタリングしながら適切な対策を進めています。
また、気候変動は、事業リスクのみならず、自社製品・サービスの提供価値及び企業価値を高める機会につながると認識し、長年培ってきた脱炭素分野の活動成果を機会として示しています。
<脱炭素分野のリスク>

*1 2℃/1.5℃シナリオ:2100年までの平均気温上昇が2℃未満に抑えられている世界
*2 4℃シナリオ:2100年までの平均気温が4℃上昇する世界
<脱炭素分野の機会>

*1 スクラムアセット:日本で販売する中堅企業向けの課題適応型ソリューションモデル
*2 LCAW(Leading Change at Work):欧州で販売するパッケージ型ソリューション
<目標に対する進捗>
当連結会計年度は、脱炭素ロードマップに基づき、再エネ率向上につながるVPPA*の運用を開始しました。また、激甚化傾向にある自然災害に対しては、グローバル主要拠点における自然災害リスクの分析、リスク結果を踏まえた拠点改善活動を進めました。2030年目標に対する進捗は以下のとおりです。なお、スコープ3の算定については、見積もりを含むものであり、算定範囲や算定手法を見直しながら精度向上に努めています。
*VPPA(Virtual Power Purchase Agreement):仮想電力購入契約

③省資源分野
<方針>
当社グループは、1994年に循環型社会実現のコンセプトとして「コメットサークル」を制定し、製品のライフサイクル全体での資源の有効活用を推進しています。また、省資源方針やプラスチック方針に基づき、2030年、2050年の目標を設定し、新規資源使用量の削減や資源の循環利用、化石資源由来バージンプラスチックの削減・代替の取り組みを進めています。
◆省資源方針
1. 循環型社会の実現の為に、徹底的な資源の効率利用と循環に取り組む
2. 再生製品の提供を行い、環境負荷が低く、持続可能な資源への切替・積極利用に取り組む
◆プラスチック方針
1. 脱・化石資源由来バージンプラスチックの推進
2. 材料リサイクル可能な設計の推進

<戦略>
省資源分野の中長期目標として新規資源使用量や化石資源由来バージンプラスチックの削減目標を定め、製品の小型・軽量化、長期使用、再生製品の提供、再生材料の採用等の具体的な削減施策についてロードマップを策定し推進しています。また、設計から生産、販売まで一体となったサーキュラーエコノミーワーキンググループを設置し省資源に繋がる製品開発を展開しています。
<リコーグループ環境目標(省資源分野)>
2050年目標
・ 製品の新規資源使用率*1: 12%以下*2
2030年目標
・ 製品の新規資源使用率: 60%以下
プラスチックに関する目標
・ 画像製品におけるプラスチック回収材使用率50%以上(2030年)
・ 製品包装における「化石資源由来バージンプラスチック」使用量の2020年比50%以上削減(2030年)
・ プラスチック部品・包装材の材質表示と単一素材化完了(2025年)
*1 新規資源使用率:総投入資源量に対する新規資源使用量の割合
*2 独立行政法人 物質・材料研究機構発表文献引用「持続可能な資源利用には2000年当時の資源に対して資源使用総量の1/8化
が必要」との考えから設定
<リスクと機会>
当社グループが認識している省資源分野におけるリスク及び機会は以下のとおりです。国際社会でサーキュラーエコノミーへの移行が加速しており、資源循環への取り組みが十分でない場合、自社の企業価値を毀損するリスクとなる一方、取り組みを強化することによって事業活動の持続可能性を高めるとともに、中長期的な機会と競争力の獲得につなげることができます。
<省資源分野のリスク>

<省資源分野の機会>

<目標に対する進捗>
目標に対する進捗は以下のとおりです。

④生物多様性保全分野
<方針>
当社グループは、2009年に「生物多様性方針」を制定し、その方針に基づいて生物多様性保全活動に取り組んでいます。まずは生物多様性リスクを把握し、様々なステークホルダーと連携し事業活動に伴う環境負荷削減や生物多様性リスクを低減することで、生物多様性の損失を止め回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」と「森林破壊ゼロ」社会の実現を目指しています。
◆生物多様性方針(基本方針)
私たちは生き物の営みによる恩恵を得、生物多様性に影響を与えながら事業活動を行っているという事実を踏まえ、生物多様性への影響を削減するとともに生物多様性保全に貢献する活動を積極的に行う。
方針の詳細はこちら:
<戦略>
当社グループの事業活動と生態系との関係性を明確にするため、「企業と生物多様性の関係性マップ」を作成し評価しました。評価の結果、紙パルプ等の原材料の調達で生態系への影響・リスクが大きいことがわかりました。
森林破壊の予防と人権等社会面に配慮した原材料調達を行うため、「リコーグループ製品の原材料木材に関する規定」や「用紙調達方針」を定め事業活動を行っています。
また、生物多様性保全のみならず地球温暖化防止、持続可能なコミュニティ発展の観点からも森林保全が重要と考え、森を「守る」「増やす」両面から100万本の森づくりや環境省を含めた産民官17団体を発起人とする「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画し、自然共生サイト*認定取得を推進しています。
* 国が認定する、民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域
<生物多様性保全分野目標>
2030年までに100万本の植林*
* リコージャパン株式会社では、省エネMFP等1台販売について1本をインドネシア、フィリピンに植林
<リスク>
当社グループが認識している生物多様性分野におけるリスクは以下のとおりです。

<目標に対する進捗>
2020年から当連結会計年度までに累計45.3万本を植林
(6)個別テーマへの対応-人的資本・多様性への取り組み
当社グループの人的資本の考え方
当社グループの人的資本において、当社の目指す姿と使命である「“はたらく”に歓びを」につながるものとして、価値創造モデルと3つの柱からなる人的資本の考え方を定めています。
①人的資本の価値創造モデル
リコーらしい人的資本を形成する価値創造モデルを以下のように捉えています。
価値創造の根幹にあるのが、リコーカルチャーです。これは、ケイパビリティ(事業戦略の実行力)とマインドセットの結合によって作られます。そして、ケイパビリティとマインドセットそれぞれに、21次中経の時間軸において中核となるテーマを定義しています。これらのテーマに沿って人事施策が設計され、実行することで、最適化されたリコーカルチャーの醸成につながります。具体的な戦略・施策の実践を進めることで、社員の目標達成の成功体験が積み重ねられ、エンゲージメントがさらに強化されます。これがさらに新たなチェンジを生み出すエネルギーとなり、結果として当社グループが進化や変化をし続けるサイクルを生み出します。この循環の先には、「はたらく歓び」の実現があります。この「はたらく歓び」が、さらに社員一人ひとりの成長や達成、変革を促していきます。この循環を生み出すことが企業活動の成功の源泉になると考えています。
今後の注力テーマを、ケイパビリティについては成長と生産性の観点で5つ、マインドセットについては4つ、下の図に示すとおり定義しました。それぞれのテーマごとに、21次中経の3年間で具体的な人事施策を推進していきます。

②当社グループの人的資本の考え方:3つの柱
当社グループの人的資本施策として、「自律」「成長」「“はたらく”に歓びを」の3つの柱があり、社員が当社グループで働くことを通じて得られる体験を積み重ねることにより、社員の「“はたらく”に歓びを」と、事業成長の同時実現を目指すことを、当社グループの人的資本の考え方としています。

(ⅰ)自律:社員の潜在能力発揮を促す
一人ひとりの社員が、自分を活かすために主導権を握ること、会社が適所適材を実現すること、この2つが人的資本を活かす基本と考えています。この目的の実現のため、前連結会計年度には「リコー式ジョブ型人事制度」を導入し、社内公募制度を拡大しました。日々の働き方においても、リモートワークと出社の双方の良さを取り入れたハイブリッドワークを継続的に推進し、個人やチーム単位でのパフォーマンス最大化を図っています。これら自主自律のための環境整備に加え、当事者である社員とサポート役の上司への継続的な働きかけを積み重ね、個々のポテンシャル発揮につなげていきます。
(ⅱ)成長:個人の成長と事業の成長を同軸にする
当社グループは創業以来、お客様の“はたらく”に寄り添ってきました。私たちの目指すところは、デジタル技術の活用で業務の効率化や生産性向上を図り、働く人がより創造的な仕事に集中できるようなお手伝いをすることです。そのためには、社員自らが必要なデジタル技術を継続的に学び、業務に活用していくことが必須となります。このような社内実践で培った私たちの働き方をお客様に提案・提供することで、新しい明日の働き方につなげていきます。
(ⅲ)“はたらく”に歓びを:社員エクスペリエンスを“はたらく歓び”につなげる
お客様にはたらく歓びを感じていただくためには、まず、私たちがはたらく歓びを感じられるような経験を積むことが重要です。多様性と共創文化の中で能力を開花させ、はたらく歓びを感じること。これこそ、社員に体験してもらいたいことです。このような充実感・充足感のある「歓び」を生む社員エクスペリエンスは、私たちが直面する様々な変化に対応し、デジタルサービスの会社としての強固な文化を形づくるエンジンと言えます。
当社グループの人的資本戦略における主要指標は、前述の3つの柱に紐づいた「IDPに基づく異動率」「デジタル研修履修率」「社員エンゲージメント」「女性管理職比率」と定めています。
「IDPに基づく異動率」向上のために、当連結会計年度は今までの自身のキャリアを可視化する「キャリアシート」と今後の自律的な成長のための育成計画「IDP」の作成のためのシステム導入と展開を進めました。結果、キャリアシートの更新割合は全対象者に対して86%の社員が更新をしており、今後の自律的な成長のためのIDPの更新に関しては73%の社員が更新をしています。
「デジタル研修履修率」に関しましては、当連結会計年度は前述の価値創造モデルにおける戦略要素の一つである、「プロセスDXと高い生産性」に焦点を当て、全社員のプロセスDX人材の社内認定制度*取得を目指し、最終的に99.5%の社員が、プロセスDX人材のブロンズ認定を完了しました。
「社員エンゲージメント」は継続的に従業員の会社に対する信頼を見るのに重要な指標となります。前連結会計年度の結果を踏まえ、各極やBUごとにメッセージングの強化等を実施し、当連結会計年度の結果としては、前連結会計年度から0.06ポイントプラスとなり、2025年度の目標に向けて着実にエンゲージメントが上昇しています。
DEIの観点からも重要な多様性のある組織づくりに関しても、積極的な登用や育成を進めています。重要な指標となる「女性管理職比率」は、当連結会計年度の結果としては、前連結会計年度から0.6%プラスとなり、デジタルサービスへの変革に必要な多様性のある組織への変革を進めています。

* プロセスDX人材の社内制度認定:当社グループでは、デジタル技術を活用し仕事やプロセスのリデザインをする「プロセス
DX」の考え方や手法を学び、社内で認定を受ける制度を策定しています。この認定制度はブロンズ、シルバー、ゴールド、プ
ラチナの4種類のレベルがあり、ブロンズではプロセスDXを実践するための基本的な考え方や手法を理解している状態を認定
条件としています。
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)とワークライフ·マネジメント(WLM)
イノベーションは、多様な人材が個々の能力を活かし協働することで創出されます。そのためには、多様な社員それぞれが自身のパフォーマンスを最大限発揮して活躍できる環境が必要です。この実現に向け、「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン」と「ワークライフ・マネジメント」を経営戦略の1つと位置づけて取り組みを進めています。社員の多様性を尊重し、生き生きと働けるような環境整備を進めるべく、「リコーグループ企業行動規範」を企業カルチャーの基本として社員コミュニケーションを徹底しています。また、あらゆる多様性や価値観を互いに受け入れ、グローバルの社員が一つのチームとして働く決意を表す「グローバル DEIステートメント」を22言語、明確な行動規範として「グローバル DEI ポリシー」を17言語で定めています。個々人の多様性を認め、すべての人が敬意をもって尊重される環境で働けるよう取り組みを推進していきます。当連結会計年度からは、D&Iを一歩進め、「エクイティ(Equity:公平性)」という概念を加え、DEIとして一層取り組みを強化しており、エクイティの概念におけるトップからのメッセージの展開や国際女性デー(IWD)に合わせたグローバル全社でのイベントの開催等を実施しています。またWLMの観点から、すべての社員が働きやすい環境で勤務できるように、当社グループでは両立支援のための各種制度の整備に加え、ハイブリッドワークを実施しております。これにより、場所にとらわれることのない働き方を実現しつつも、必要に応じてオフィスでコミュニケーションもとれる形をとっており、新しい働き方を率先して実施しています。

(7)個別テーマへの対応-人権への取り組み
当社グループの人権尊重の原点は、創業の精神である三愛精神にある“人を愛し”にあります。グローバルにビジネスを展開している当社グループでは、各国の法令を遵守することはもちろんのこと国際的規範に準拠した人権尊重の実践に取り組んでいます。
2021年4月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「リコーグループ人権方針」を定めました。本方針は、日英含む10言語で国内外の主要グループ会社に周知しており、サプライヤー及びビジネスパートナーにも本方針を支持し実践いただくよう努めています。人権方針の策定後、2021~2022年度には、国内外当社グループ従業員を対象に人権教育を実施し、77,000人以上が受講しました(受講率:95%)。また、2023年には、リコーグループ企業行動規範を改訂し人権尊重に関する内容を拡充しました。新たな企業行動規範の周知を通じ国内当社グループ役員・社員一人ひとりが人権を踏まえた行動の重要性を十分に理解した上で遵守宣言を行いました。
人権デュー・ディリジェンス*1の一環として、当社グループにおける顕著な人権課題を再評価するため、2023年に国内外グループ各社を対象に人権影響評価を実施しました。人権課題の防止、軽減措置として、遵守すべき人権基準を定めた「リコーグループ人権尊重のためのガイド」を2024年に発行しました。また、一部の生産拠点においては、2年ごとに第三者監査(RBA VAP*2)を継続受審し、定期的に是正措置の有効性を評価しています。
今後も継続的な人権デュー・ディリジェンスの取り組みによって、人権リスクの未然防止・低減を図ります。
*1 人権に関する負の影響を認識し、それを防止・対処するために実施すべきプロセス
*2 Validated Assessment Program:RBA行動規範に対する準拠状況を第三者監査機関が確認するプログラム

事業の状況、業績の状況等に関する事項のうち、株主・投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりです。
(1) 当社グループの経営上重要なリスク(重点経営リスク)
(2) 事業領域固有の重要なリスク(ビジネスユニットリスク)
(3) その他各機能領域のリスク(グループ本部リスク)
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響があると経営者が認識しているリスクを以下で取り上げていますが、すべてのリスクを網羅している訳ではありません。当社グループの事業は、現時点で未知のリスク・重要と見なされていない他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、事業等のリスクは、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
■「重点経営リスク」の決定プロセス
GMCとリスクマネジメント委員会は、経営理念や事業目的等に照らし、利害関係者への影響を含めて、経営に大きな影響を及ぼすリスクを網羅的に識別した上で、重点経営リスクを決定し、その対応活動に積極的に関与しております。(図1:重点経営リスク決定プロセス)
・重点経営リスクは、その特性から「戦略リスク」と「オペレーショナルリスク」に分類し管理しております。戦略リスクについては、短期の事業計画達成に関わるリスクから中長期の新興リスクまで経営に影響を与えるリスクを幅広く網羅しております。
・リスクマネジメント委員会は、GMCの諮問機関として、より精度の高い重点経営リスク候補を提案するため、委員会メンバーそれぞれの専門領域の知見・経験則を活かし、十分な議論のもと、リスクの識別・評価を行っております。
なお、当社グループのリスクマネジメントシステムとリスクマネジメント委員会については、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 (Ⅹ) リスクマネジメントシステムとリスクマネジメント委員会」を参照ください。
図1:重点経営リスク決定プロセス

■事業等のリスク(詳細)
(1) 当社グループの経営上重要なリスク
(2) 事業領域固有の重要なリスク
(3) その他各機能領域のリスク
(1) 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、株式及び作成方法に関する規則」第93条の規定により国際会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」に記載しております。
(2) 経営成績
経営を取り巻く経済環境
当連結会計年度の世界経済は、欧米の高金利・高インフレの継続、中国の景気減速に加え、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の深刻化等もあり停滞感が強まりました。日本経済は、コロナ禍を乗り越え、企業業績が回復局面にある一方で、物価上昇に伴い消費や投資に力強さを欠く状況も見られます。また、日本を含む先進国においては人口の高齢化に伴って労働力の確保が課題となっており、賃金水準の上昇と価格転嫁による物価上昇が引き続き発生しています。
このような経済情勢の中で、当社グループのメイン市場であるワークプレイスにおいても、リモートワークをはじめとする新しい働き方は定着してきており、ITの進化に伴って業務プロセスも変化し続けています。それによる顧客課題・ニーズも時代とともに変化しており、デジタルサービスの需要はより高まっています。プリンティング需要はフラットな状態を維持しているものの、サービス・ソリューションの提供に不可欠となる人件費の上昇や、局所的な地政学リスクの高まりによる輸送費・部品費の高騰の継続など、事業環境は依然として不透明な状況にあります。
主要通貨の平均為替レートは、対米ドルが 144.53円(前連結会計年度に比べ 9.04円の円安)、対ユーロが 156.74円(同 15.83円の円安)となりました。
当連結会計年度の業績
当社グループは、当連結会計年度より21次中経をスタートしました。
当社グループの使命と目指す姿である「“はたらく”に歓びを」の実現に向けて、中長期目標として「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供するデジタルサービスの会社」となることを目指しています。また、当連結会計年度は、目指す姿の実現に向けて企業価値向上プロジェクトを開始しました。収益構造の変革を最重要課題とし、当社の強みである顧客基盤及び顧客接点を活かすことができるワークプレイス領域への戦略的な経営資源配分を進めます。
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度に比べ 10.1%増加し、23,489億円となりました。(為替影響を除くと 5.0%の増加)。前連結会計年度に影響を受けた商材の供給制約の解消に加え、日本でのスクラムシリーズの好調や欧米での買収効果等によりオフィスサービス事業を中心に売上が増加しました。また、2022年9月に実施した株式会社PFU(以下、PFU)の買収効果や円安の影響等もあり、増加しました。
地域別では、国内は、バックオフィス系DX等顧客課題に合わせたソリューション提供を行うスクラムシリーズが、法改正対応やセキュリティ関連の需要好調を背景に引き続き二桁成長し、オフィスサービス事業の売上が大きく増加しました。また、オフィスプリンティング事業のエッジデバイスの売上も増加しました。加えて、PFUの買収効果等もあり、前連結会計年度に比べ 7.7%の増加となりました。
海外では、米州において、A4複合機を中心とした供給不足の解消に伴いオフィスプリンティング事業のエッジデバイスの販売が増加しました。オフィスサービス事業でも、2022年9月に買収したCenero,LLC.(以下、Cenero)の貢献によるコミュニケーションサービス領域の成長やドキュメント関連業務のアウトソーシングサービスの堅調な伸長により売上が拡大しました。また、プロダクションプリンターの上位機種の市場稼働台数増加に伴う印刷量増加等により、ノンハードを中心に売上が増加しました。加えて、PFUの買収効果や円安の影響もあり、前連結会計年度比 9.8%の増加となりました(為替影響を除くと 3.2%の増加)。欧州・中東・アフリカにおいては買収企業を中心にアプリケーションサービスやITサービスが順調に成長しました。また2023年6月に実施したPFHの買収効果もあり、オフィスサービス事業を中心に売上が増加しました。加えて、円安の影響もあり、前連結会計年度に比べ 14.1%の増加となりました(為替影響を除くと 2.9%の増加)。その他の地域においては、中国でのインクジェットヘッドの販売増加等により売上が増加しました。円安の影響もあり前連結会計年度比 9.2%の増加となりました(為替影響を除くと 5.4%の増加)。
以上の結果、海外売上高全体では前連結会計年度に比べ 11.5%の増加となりました。なお、為替変動による影響を除いた試算では、海外売上高は前連結会計年度に比べ 3.4%の増加となります。
売上総利益は、前連結会計年度に比べ 10.0%増加し 8,200億円となりました。オフィスプリンティング事業の生産調整や複合機の製品ミックスの変動等による影響はあったものの、オフィスサービス事業の成長や継続した体質強化の効果に加えて、PFUの買収効果や円安の影響等により前連結会計年度に比べ利益が増加しました。
販売費及び一般管理費は、PFU等の買収、事業成長やインフレに伴う人件費等の経費の増加、拠点再編に伴う構造改革費用に加え、円安の影響等により前連結会計年度に比べ 11.9%増加し 7,698億円となりました。
その他の収益は、前連結会計年度に日本の土地売却益等の収益を計上しており、前連結会計年度に比べ 91億円減少しました。
営業利益は、売上総利益の増加に対しその他の収益の減少や販売費及び一般管理費の増加が上回り、前連結会計年度に比べて 167億円減少し 620億円となりました。
金融収益及び金融費用は、為替差益の増加等により、前連結会計年度に比べ金融収支が改善しました。持分法による投資損益は、持分法適用会社の利益減少により前連結会計年度に比べ減少しました。
税引前利益は 682億円となり、前連結会計年度に比べて 131億円減少しました。
法人所得税費用は税引前利益が減少したこと等により、前連結会計年度に比べて 17億円減少しました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は 441億円となり、前連結会計年度に比べて 101億円減少しました。
当期包括利益は、在外営業活動体の換算差額の増加等により、1,371億円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。 (単位:百万円)
a. デジタルサービス
当連結会計年度は、国内において、インボイス制度や2024年度に予定される法改正への対応をサポートするソリューションの販売増加等、中小企業を中心にスクラムパッケージが引き続き好調に推移しました。主に中堅企業向けにソリューション提案を行うスクラムアセットも、システム導入後の運用代行サービスやセキュリティ関連の需要好調により、高い伸び率で伸長しました。また、サイボウズ株式会社と共同開発のクラウド型の業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus」の契約数も順調に伸長しました。
米州においては、2022年9月に買収したCeneroによる当社グループ既存顧客へのソリューション導入が進み、ストック収益につながるマネージドAVサービス*の契約数の増加等、コミュニケーションサービスが順調に拡大しています。加えて、ドキュメント関連業務のアウトソーシングサービスも引き続き堅調に推移しています。
欧州・中東・アフリカにおいては、景気弱含みの影響により一部地域でICT商材投資を控える動きがみられるものの、アプリケーションサービスやITサービスが順調に成長を続けています。買収によるオフィスサービス事業の強化を継続しており、2023年6月にはアイルランドのITインフラ、クラウド、マネージドワークプレイスサービスのリーディングプロバイダーであるPFHの買収を完了しました。
デジタルサービスの売上高は、前連結会計年度に比べ 10.0%増加し 18,528億円となりました(為替影響を除くと 4.8%の増加)。
オフィスプリンティング事業では、主にA4複合機の供給不足の解消により、A3複合機を含めた一括商談の納入が進みました。コスト上昇に対する継続的な価格転嫁や付加価値販売等のプライシングコントロールを実施してきた効果もあり、エッジデバイスの売上高が前連結会計年度に比べ増加しました。オフィスサービス事業では、地域に応じた施策の展開により各地で増収となりました。事業成長やインフレ等に伴う経費の増加を吸収し、デジタルサービス全体の営業利益は前連結会計年度から 95億円増加し、408億円となりました。
* マネージドAVサービス: 企業や学校等において、マイク、スピーカー、プロジェクター、ビデオ会議システム等のオーディオ・ビジュアル(AV)機器と運営システムの提供・管理・運用を行うサービス
b. デジタルプロダクツ
当連結会計年度は、複合機の販売台数が計画を下回って推移したことで、上期を中心に当初計画以上の生産調整の影響を受けました。年度末に向けて需要変動に応じた生産・販売体制の連携を立て直し、下期には収益を回復しました。同時に、デジタルサービスを支えるエッジデバイスの製品群を強化しました。
複合機・プリンターでは、高生産性かつサステナビリティに貢献する製品を発売しました。本製品は本体樹脂総重量の約50%に再生プラスチックを使用し、省エネ性能に優れております。特に2024年1月に発売したA3フルカラー複合機「RICOH IM C7010」は、多彩なDX機能、また高速機種でありながら普及クラスに匹敵する省スペース性を兼ね備えた戦略機種となります。
デジタルプロダクツの売上高は、前連結会計年度に比べ 20.5%増加し 959億円となりました。またセグメント間売上高を含む売上高では 1.8%減少の 4,844億円となりました。PFUの買収効果はあったものの、A3複合機の販売在庫の適正化に向けた生産調整等により減収となりました。生産・開発の体質強化の継続による利益改善を進めているものの、前連結会計年度からのA4複合機の生産量回復による製品ミックスの変動や、A3複合機の生産調整により利益率が低下したこと等により、デジタルプロダクツ全体の営業利益は前連結会計年度に比べ 172億円減少し 173億円となりました。
c. グラフィックコミュニケーションズ
商用印刷市場においては、印刷物のデジタル化・ペーパーレス化による小ロットでの発注の増加や、より多様化する印刷物に対し複雑化する作業工程への対応が求められています。また、印刷現場における人手不足から、オペレーションの効率化に対する意識が高まっています。当連結会計年度は、このような多様化するニーズに対応するため、製品ラインアップを一新しました。
2023年8月、カラープロダクションプリンターの新製品として「RICOH Pro C9500」を発売しました。本製品は高画質と安定性に加え、用紙対応力と自動化・効率化機能を強化したフラッグシップモデルです。また、新たに開発した本体の制御システム「RICOH GC OS」により、様々な用紙の設定や調整、機器の利用状況やメンテナンスの管理に特別なスキルが不要となることで、作業工程の効率化・可視化を実現し、印刷オペレーターの負荷軽減や省人化に貢献します。
グラフィックコミュニケーションズの売上高は、前連結会計年度に比べ 11.6%増加し 2,621億円となりました(為替影響を除くと 4.9%の増加)。商用印刷事業では、米州を中心にプロダクションプリンターの販売が引き続き伸長しました。ノンハードの売上も、上位機種の市場稼働台数増加が印刷量増加に貢献し、伸長しました。産業印刷事業では、サイングラフィック向け等の需要が高まり、インクジェットヘッドの販売が好調で伸長しました。新製品発売による開発資産償却費等の増加に加え、拠点再編に伴う一過性の支出もあり費用が増加しましたが、円安効果もありグラフィックコミュニケーションズ全体の営業利益は前連結会計年度に比べ 9億円増加し 154億円となりました。
d. インダストリアルソリューションズ
当連結会計年度は、サーマル事業では、環境負荷を低減するラベルレスサーマルの事業拡大に向け、当社と中本パックス株式会社(以下、中本パックス)にて機能性包材の企画・開発・販売を行う合弁会社「RNスマートパッケージング株式会社」を2023年4月に設立しました。当社の強みであるサーマル技術と、中本パックスの強みである包材設計・機能性コーティング技術及び顧客基盤を組み合わせ、機能性包材市場に新しいパッケージソリューションを展開します。
産業プロダクツ事業では、2023年12月に、車両塗装外観検査装置「RICOH Visual Inspection System 5000」シリーズを発売しました。高い検査精度と生産性の向上により、自動車業界におけるお客様の現場のDXに貢献します。
インダストリアルソリューションズの売上高は、前連結会計年度に比べ 1.6%減少し 1,117億円となりました(為替影響を除くと 5.3%の減少)。サーマル事業では欧米での顧客の在庫調整や需要の低迷等により売上高が減少しました。産業プロダクツ事業では中国におけるプロジェクターの需要減等により産業用光学部品の売上高が減少しました。プライシングコントロールやコストダウン等で利益確保に努めましたが、インダストリアルソリューションズ全体の営業損益は、前連結会計年度に比べ 34億円減少し 3億円(損失)となりました。
なお、産業プロダクツ事業においては、2023年10月に車載ステレオカメラやプロジェクター用光学レンズモジュール等の開発・製造・販売を行うオプティカル事業を譲渡する株式譲渡契約を締結しております。
e. その他
その他の売上高は、前連結会計年度に比べ 21.0%増加し 263億円となりました(為替影響を除くと 17.2%の増加)。カメラ事業が好調で、増収増益となりました。一方で、新規事業創出のための先行投資により、その他全体の営業損益は 105億円(損失)となりました(前連結会計年度 営業損益 92億円(損失))
(注1)事業セグメントとしてのデジタルサービスはオフィスサービス事業及びオフィスプリンティングの販売を主とした事業に限定した事業セグメントであり、当社グループが目指す「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供するデジタルサービスの会社」への変革、として掲げるデジタルサービスすべてを網羅しているものではありません。当社グループが「デジタルサービスの会社」として掲げる「デジタルサービス」は、事業セグメントではデジタルサービスの他、すべてのセグメントの事業内容に含まれております。
(注2)当連結会計年度より、その他に含まれていたPFUの事業について、デジタルサービス及びデジタルプロダクツへ事業区分変更を行いました。この変更に関して、前連結会計年度についても遡及適用した数値で表示しております。
前連結会計年度及び当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。また、サービスに係る生産実績は含まれておらず、製造に係る生産実績としております。
2 当連結会計年度より、その他に含まれていたPFUの事業について、デジタルサービス及びデジタルプロダクツへ事業区分変更を行いました。この変更に関して、前連結会計年度についても遡及適用した数値で表示しております。
当社グループは見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。
前連結会計年度及び当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が10%以上の主要な相手先はありませんので、記載を省略しております。
3 当連結会計年度より、その他に含まれていたPFUの事業について、デジタルサービス及びデジタルプロダクツへ事業区分変更を行いました。この変更に関して、前連結会計年度についても遡及適用した数値で表示しております。
(3) 財政状態
資産合計は、前連結会計年度末に比べ 1,362億円増加し 22,861億円となりました。前連結会計年度末と比較して為替レートが円安となったことから海外資産の換算差額が発生し、資産が増加しました。為替影響を除いた試算では 60億円の減少となります。当連結会計年度の主要通貨の期末日レートは、対米ドルが 151.41円(前連結会計年度に比べ 17.88円の円安)、対ユーロが 163.24円(同 17.52円の円安)となりました。
資産の部では、前連結会計年度末に比べ、現金及び現金同等物が 448億円減少しました。また、生産調整等による在庫適正化により、棚卸資産が 137億円減少しました。一方で、当連結会計年度末にかけての売上高の増加や円安等により、営業債権及びその他の債権が 616億円増加しました。加えて、欧州での買収や円安等により、のれん及び無形資産が 460億円増加しました。
なお、2023年10月にオプティカル事業を譲渡する株式譲渡契約を締結したことに伴い、対象事業の資産及び負債を、売却目的で保有する資産及び売却目的で保有する資産に直接関連する負債に組替えています。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ 291億円増加し 12,210億円となりました。負債の部では、社債及び借入金が 133億円減少しました。一方で、買収や円安等によりその他の流動負債が 389億円増加しました。
資本合計は、前連結会計年度末から 1,070億円増加し、10,651億円となりました。資本の部では、当期利益の増加等により利益剰余金が 304億円増加し、また円安により在外営業活動体の換算差額が 836億円増加しました。他方で株主還元策として自己株式取得を行い、これにより 75億円資本が減少しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末に比べ 1,071億円増加し 10,387億円となりました。親会社所有者帰属持分比率は 45.4%となり、引き続き安全な水準を維持しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金収入が 589億円増加し 1,256億円の収入となりました。在庫適正化による棚卸資産の減少等により現金収入が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金支出が 361億円減少し 978億円の支出となりました。前連結会計年度においては、PFUの買収等により現金支出が増加しておりました。
以上の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計となるフリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金収入が 950億円増加し 277億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金支出が 1,183億円増加し 829億円の支出となりました。前連結会計年度においては借入債務の増加等により現金収入が増加しておりましたが、当連結会計年度においては借入債務の返済等により現金支出が増加しました。なお、前連結会計年度及び当連結会計年度において、株主還元策としてそれぞれ 300億円及び 75億円の自己株式の取得を実施しております。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ 412億円減少し 1,696億円となりました。
当社グループでは、事業投資によって創出した営業キャッシュ・フローは、さらなる成長に向けた投資と株主還元に対して計画的に活用していきます。資本政策の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) リコーの中期展望 ◆成長を支える資本政策」をご覧ください。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
親会社所有者帰属持分比率:親会社所有者帰属持分/資産合計
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計
債務償還年数:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/支払利息
※いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち社債及び借入金を対象としております。
当社グループの流動性と資金源泉は次のとおりです。
事業発展に充分な資金流動性を確保し、堅固な財務体質を維持することが当社グループの方針です。この方針に従って、当社グループはここ数年、連結子会社が保有する流動性資金残高の効率的運用に努めてまいりました。その方策のひとつとして実施しているのが、各地域及びグローバルにおけるキャッシュマネジメントシステムの推進です。各地域にキャッシュマネジメントの要として設置している金融子会社を中心に地域内外のグループ企業間で手元流動性を有効活用するグループ内の資金融通の制度を構築、推進しております。この一環として、グローバルキャッシュプーリングシステムを導入し、グローバルベースでの更なる資金効率向上を実現しました。
また、当社グループは資産並びに負債の管理においてデリバティブを締結しております。為替変動が外貨建て資産と負債に与える潜在的な悪影響をヘッジするため、為替予約等を設定しております。当社グループはリスクの低減を目的として、定められた方針に従ってデリバティブを利用しております。自己売買、あるいは投機目的でデリバティブを利用しておらず、またレバレッジを効かせたデリバティブ取引も行っておりません。
当社グループは主に手元資金及び現金同等物、様々な信用枠及び社債の発行を組み合わせて資金を調達しております。流動性と資金源泉の必要額を判断する際、連結キャッシュ・フロー計算書の現金及び現金同等物の残高、並びに営業活動によるキャッシュ・フローを重視しております。
当連結会計年度末において、現金及び現金同等物の残高は 1,696億円、信用枠は 3,878億円であり、そのうち未使用残高は 3,510億円でありました。当社は 1,500億円(信用枠 3,878億円の一部)のコミットメント・ラインを金融機関との間に設定しております。これらは信用枠の範囲内で、各国市場の金利で金融機関から借入が可能です。
当社及び一部の連結子会社は、銀行借入及び社債の発行により資金を調達しております。また、当社グループはグローバルでキャッシュマネジメントシステムを活用してグループ資金を効率的に管理しております。
当社は大手格付機関(スタンダード・アンド・プアーズ・レーティング・サービス(以下「S&P」)、及び格付投資情報センター(以下「R&I」))から格付を取得しております。2024年6月21日現在、当社の格付はS&Pが長期BBB及び短期A-2、R&Iが長期A+及び短期a-1となっております。
当社グループは現金及び現金同等物、営業活動により創出が見込まれる資金、並びに借入金・社債等の調達資金で少なくとも翌連結会計年度の必要資金を充分賄えると予想しております。お客様の需要が変動し、営業キャッシュ・フローが減少した場合でも、現在の手元資金、及び当社グループが満足できる信用格付けを持つ金融機関に設定している信用枠で少なくとも翌連結会計年度中は事業用資金を充分賄えると考えております。さらに、足元の業務にとって必要な資金、及び事業拡大並びに新規プロジェクトの開発に関連する投資に対し、充分な資金を金融市場又は資本市場から調達できると考えております。各国の経済動向等による金利の変動は、当社グループの流動性に悪影響を及ぼす可能性がありますが、手元の現金及び現金同等物は充分であり、営業活動からも持続的にキャッシュ・フローが創出されキャッシュマネジメントシステムを活用していることから、こうした影響はあまり大きくないと考えております。
(1) 技術の導入及び供与に関する契約等
(2) 事業統合契約及び吸収分割契約の締結
当社と東芝テック株式会社(以下、東芝テック)は、両社の複合機等の開発・生産に関する事業を統合(以下、本事業統合)するに当たっての諸条件を定めた契約、及び本事業統合に係る株主間契約を2023年5月19日に締結いたしました。
本事業統合を実施するため、当社は2024年2月6日に当社とリコーテクノロジーズ株式会社を母体とした複合機等の開発・生産を担う合弁会社(以下、本合弁会社)の間の吸収分割契約(以下、リコー吸収分割契約)を締結いたしました。また、東芝テックは、2024年2月6日、東芝テックと本合弁会社の間の吸収分割契約(以下、東芝テック吸収分割契約。リコー吸収分割契約とあわせて、以下、本吸収分割契約)を締結いたしました。
1.本事業統合及び本吸収分割の目的
当社は、使命と目指す姿に「“はたらく”に歓びを」を掲げ、持続的な成長とさらなる発展を目指してデジタルサービスの会社への変革に取り組んでいます。お客様に寄り添い、各種エッジデバイスと最適なアプリケーションを組み合わせてお客様の業務プロセスの変革と新たな価値創造に貢献しています。東芝テックは、経営理念である「ともにつくる、つぎをつくる。」を実践し、お客様やパートナーとともに新たな価値と社会課題解決のためのソリューションを共創するプラットフォーマーとして「グローバルトップのソリューションパートナー」になることを目指しております。
両社は、オフィスプリンティング市場の環境変化に対応するために、複合機等の開発・生産を担う合弁会社を組成し、オフィスプリンティング分野のものづくりの競争力・事業基盤の強化及び両社の技術・リソースを活用した新たな現場ソリューションの共同企画・開発を実現していきます。
両社は、共創により生み出した競争力のある高品質・高付加価値な製品を、それぞれのブランドで、それぞれの会社のユニークなユーザーエクスペリエンスを追求した製品として世界市場向けに提供します。それぞれの販売チャネルを通じて、様々なソフトウエアやサービスと組み合わせたソリューションとして提供し、顧客基盤や強みを生かしてお客様の業務ごとのニーズに寄り添ったデジタル化やワークフロー改善による生産性の向上に貢献します。そして、お客様が取り組むオフィスや現場のDX実現を支援することで、社会課題の解決に貢献します。
2.本事業統合及び本吸収分割の要旨
(1) 本事業統合及び本吸収分割の方式
本事業統合の範囲は、両社の国内・海外の複合機等の開発・生産に関する事業です。両社の対象事業を本合弁会社に承継させるため、主として吸収分割の方法により、本事業統合を実施します。当社の吸収分割は、当社を吸収分割会社、本合弁会社を吸収分割承継会社とする吸収分割です。東芝テックの吸収分割は、東芝テックを吸収分割会社、本合弁会社を吸収分割承継会社とする吸収分割です。
(2) 本吸収分割に係る割当の内容
本合弁会社は、当社の吸収分割の効力発生により承継する権利義務の対価として、当社に対して本合弁会社が新たに発行するその普通株式55株を、東芝テックの吸収分割の効力発生により承継する権利義務の対価として、東芝テックに対して本合弁会社が新たに発行するその普通株式45株を、それぞれ割当て交付します。
この結果、本事業統合後の本合弁会社への出資比率は、当社が85%、東芝テックが15%となります。
(3) 本事業統合及び本吸収分割の日程
3.本吸収分割に係る割当ての内容の根拠等
本吸収分割により当社及び東芝テックから分割される対象事業における収益の状況、将来の見通し等を総合的に勘案し、両社間で真摯に協議を重ねた結果、上記の本吸収分割に係る割当てを行うことで合意に至ったものです。
4.分割する事業内容
5.本吸収分割後の吸収分割承継会社(本合弁会社)の概要
(注)2024年3月31日現在の当該承継会社の概要は以下のとおりです。
名称 :リコーテクノロジーズ株式会社
所在地 :神奈川県海老名市泉二丁目7番1号
代表者の役職・氏名:代表取締役 田上亮
事業内容 :事務機器、光学機器、印刷機器等の周辺機器、消耗品等の開発・設計及び販売等
資本金 :10百万円
発行済株式数 :200株
当社グループは、使命と目指す姿を「“はたらく”に歓びを」と当連結会計年度に新たに制定しました。“はたらく”に寄り添い 変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくります。また、「デジタルサービスの会社」への実現に向けて抜本的な収益構造変革を行う「企業価値向上プロジェクト」をスタートいたしました。研究開発分野においてはデジタルサービスとの親和性が高い領域に選択と集中するとともに、イノベーション探索には上限を決めて進め、適正な投資配分を行います。
体制面では、社内外でのデジタルとデータを活用した基盤及び価値創出の機能を強化しております。お客様のカスタマーサクセスを当社グループの提供価値と定め、既存ビジネスの深化と新たな顧客価値の進化、及びこれらを持続的に可能にする社内外でのデータ活用基盤、機能を強化しております。グローバルに広がる約140万社の顧客基盤を生かし、デジタルサービスの会社としてさらなる拡大を目指しております。また、2021年度より社内カンパニー制を導入し、事業分野ごとに、将来に備えた中長期的な研究から直近の製品開発・設計・生産までを一貫として集約した体制で進めております。
本社での研究領域として、「RICOH Smart Integration(RSI)」 を支えるデジタル基盤技術の研究開発は「デジタル戦略部」にて進めております。AI/ICT技術の開発や”はたらく”をデジタル化する技術の開発、それらに携わるデジタル人材の育成・強化を担い、デジタルサービスの会社としての拡大を支えております。また、当社の中長期的な成長を支える研究開発と当社グループの共通基盤技術開発は「先端技術研究所」で進めております。
研究開発の進め方としては、グローバルに拠点間の連携を深めながらそれぞれの地域特性を活かした市場ニーズの調査・探索、技術開発を行っております。また、世界各地にテクノロジーセンターやカスタマーエクスペリエンスセンターを開設し、お客様のサポートを通じて直接把握したニーズを製品開発へフィードバックする仕組みにより、お客様と一体となった価値共創活動を展開しております。
オープンイノベーションにおいては、スタートアップ企業や社内外の起業家の成長を支援して事業共創を目指すアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」を2019年度より実施しております。5年目を迎えた当連結会計年度においては社外132件、社内52件、社内外の応募の中からコンテストを開催し、そこを通過したスタートアップ企業と社内テーマには当社グループ内に登録されている約300名のサポーターをはじめとした様々なリソースを活用可能とし、チャレンジする人の支援・育成、新規事業の創出を促進する文化のさらなる醸成を目指しております。加えてBtoB領域での最新のデジタルサービスを牽引するスタートアップへの戦略的な投資を実行するCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンド「リコーイノベーションファンド1号投資事業有限責任組合」を設立しました。
社内でのR&Dに加え外部企業との連携や協業を通じて研究開発の加速に取り組みます。
国際会計基準の適用に伴い、当社グループでは開発投資の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発投資は
(1) デジタルサービス
当社グループは、「企業価値向上プロジェクト」で、お客様の課題解決に対して当社の強みが活きる「ワークプレイス」へ戦略的にリソースを重点配分してまいります。その中でも「ビジネスプロセスオートメーション」、「コミュニケーションサービス」を注力領域と定め、リモートワーク等オフィスでの働き方が変容していくワークプレイスにおいて、一貫したサービスをグローバルで提供することが出来る「ワークプレイスサービスプロバイダー」への成長を加速します。
ビジネスプロセスオートメーション領域においては、これまで培ってきたドキュメントソリューション技術、ワークフロー・オートメーション技術に、当社独自のAI技術を活用することでお客様の定型業務をゼロに近づけるサービスの開発に取り組んでおり、各種サービスを提供しております。
コミュニケーションサービス領域においては、お客様にハイブリッドワークに最適な「働く空間」を提供してお客様の創造性発揮をサポートするサービスの開発に取り組んでおり、「RICOH Spaces」といったサービスを提供しております。
加えて、それらのサービスの提供価値を支えるデジタルサービス基盤「RICOH Smart Integration」の強化・拡張に取り組んでおります。ワークプレイスサービスプロバイダーとして、これらサービス/インフラを発展させ提供価値を強化することでお客様の事業成長・課題解決に貢献し続けます。
また、最新AI技術を活用したDX実現のための価値共創拠点「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO」をリニューアルオープンしました。RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYOでは、当社の強みである顧客接点力を活かした100以上ある各業種の顧客価値シナリオと、自然言語処理や空間認識分野に強みを持つ当社独自のAI技術を掛け合わせて、フラッグシップとなる価値提供事例をお客様と共創します。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
ビジネスプロセスオートメーション領域における、各種サービス提供
・「DocuWareバージョン 7.8 / 7.9」を提供開始、及びグローバルクラウド顧客1万社を達成。請求書処理プロセスにおける機能強化とユーザビリティの更なる向上と販売地域の拡大
・「Axon Ivyバージョン 11.2」を提供開始。ユーザーエクスペリエンス向上に向けた通知機能の再設計・及びプロセスエディターのUI改善
・「RICOH kintone plus」の新機能の提供、アプリストアの公開、β版モニター募集を開始。パートナーとのエコシステム強化、利用状況の可視化、アプリストアを活用したノウハウ共有によるお客様DX推進を加速
AI活用により、機器の保守サポート業務のプロセスDXを強化
~複合機・プリンターのダウンタイムを最小化するために、カスタマーエンジニアの業務効率を向上~
・お客様先で修復作業を行うCEがサービスマニュアルや過去の修復事例等の膨大なデータから適切な情報を検索する業務を効率化するための情報検索型AIボットを開発し、東日本地区での運用を開始
・当社が独自開発した大規模言語モデル(LLM)をベースに、当社グループに蓄積された修復事例やサービスマニュアルを学習させてカスタムした「保守ドメイン適応モデル」を適用した質問応答型AIチャットボットの検証を開始
「RICOH Spaces」の新機能提供及びユーザーエクスペリエンスの改善を継続的に実施
~働き方の変化やハイブリッドワークに対応し、シームレスな従業員エクスペリエンスを提供~
・スペースの自動キャンセル等、IoTセンサーで収集したデータの利活用強化により、スペースの利用効率を向上
・外出先からのオフィス利用状況の把握、QRコード対応等、モバイルデバイスを用いた利便性を向上
「RICOHスマート予約サービス for フリーアドレス」の提供を開始
~オフィス環境の効率的な活用や継続的な改善に活用できるクラウド型ソリューション~
・2023年8月より会議室予約管理システム「RICOH スマート予約サービス for 会議室」のシリーズ商品である「RICOHスマート予約サービス for フリーアドレス」の提供を開始
「RICOH Print Management Cloud」の新機能の提供を開始
~顧客環境の他社複合機も含めた共通の操作性を維持したスキャンデータの送信機能~
・2023年6月より、マルチベンダースキャン機能を追加したV3.34の提供を開始
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は
(2) デジタルプロダクツ
新型コロナウイルス感染症の流行、半導体や電子部品の供給ひっ迫等の物流問題等を経て、我々を取り巻く環境の変化は予測がさらに困難となっております。生成AIのビジネス活用の急速な拡大、地政学的不安による世界情勢の変化も無視できません。この変わりゆく状況の中で新たな開発・生産のあり方を追求しております。2023年5月に発表した東芝テック株式会社との合弁会社エトリア株式会社の設立方針はその大きな転換点であり、私たちは業界の垣根を越えた協業を始めようとしております。
当連結会計年度においては、前連結会計年度に刷新した主力A3カラー複合機のさらに高速モデル「RICOH IM C7010」及び、モノクロ複合機「RICOH IM 460F/370F」を発売し、設置場所を選ばないエッジデバイスとして、はたらく場所が多様化するお客様のDX支援に貢献しております。
オフィスプリンティング分野の生産においては、中期経営戦略で掲げた「レジリエントな生産供給体制の構築」のために重要機種やキーユニットの生産地を分散し、地政学的問題に左右されにくい安定部品調達ルートの構築を進めております。また、トナー生産の拠点統廃合も進め、当連結会計年度末時点で3拠点へ集約を完了しました。
プリンティング以外のエッジデバイスでは、大成建設株式会社との共同開発による「生産プロセスDX」の一環として、プロジェクションマッピングを利用した建設現場向けソリューションの高度化を果たしました。実際の建設現場に導入し、作業の効率化と生産性向上を実現しております。
また、2022年度に連結子会社となったPFUでは、新たな技術を搭載した新商品のリリースを加速しております。自動スキュー補正、ステープル原稿検知、厚みのある原稿にも対応するデュアルパス構造、進化した排紙制御機能等を備えたA3高速スキャナーを発売し、大量の紙原稿を集中スキャンするお客様の業務効率向上への貢献を加速しました。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
リコー初の70枚/分高速出力、高生産性かつ省スペースを実現したA3フルカラー複合機「RICOH IM C7010」を発売
~業務のDXのみならず優れた環境性能でサステナビリティに貢献~
・連続複写速度70枚/分、スリープ復帰11秒、ファーストコピータイムがフルカラー4.2秒の高速出力
・20枚~60枚/分出力機同等の大きさのコンパクトなデザインで、高速出力機ながら電源1口で利用が可能
・名刺や領収書等小サイズ原稿の1パス両面ADF(両面自動読み取り)での読み取りに対応
・世界基準に準拠した最新のセキュリティ機能を搭載
・本体樹脂総重量の約50%(重量比)に再生プラスチックを使用、低融点トナーの採用等、サステナビリティに貢献
モノクロA4複合機「RICOH IM 460F/370F」を発売
~ソリューション対応を強化したクラス最小*のA3対応モデルでお客様の業務効率化に貢献~
・A4複合機サイズのコンパクトな筐体で、デスクサイド設置が可能ながらA3出力に対応
・連続複写速度が前身機から向上し、省スペースかつスピーディーな対応が求められる店舗や窓口業務に貢献
・本体樹脂総重量の約17%に再生プラスチックを使用
*A3対応モノクロ複合機として。2023年7月現在。当社調べ
プロジェクションマッピングを利用した墨出し技術「T-iDigital MARKING」を高度化
~建設現場における墨出し作業を効率化し更なる生産性向上を実現~
・建設工事での「墨出し」作業を支援する大成建設様のソリューションを共同開発で高度化
・4K超単焦点プロジェクターにより投影誤差を2mm以内に抑え、投影面積を従前の3.5倍以上に拡大
[PFU]業務効率化を加速するA3高速イメージスキャナー「RICOH fi-8950」「RICOH fi-8930」「RICOH fi-8820」を発売
~fiシリーズ最速のA3大容量フラッグシップモデル~
・金融、公共、医療、BPO分野等の集中入力業務に最適な高速・大容量モデル
・シリーズ最速である毎分150枚/300面の読み取りスピードと、一度に750枚まで積載可能な大容量原稿トレイ
・傾いた原稿を1枚ずつまっすぐに整えてから給紙する「自動スキュー補正」や「ステープル原稿検知」機能を新搭載
・4.3インチの大型タッチパネルと、ネットワークインターフェイス(有線LAN接続)を搭載
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は
(3) グラフィックコミュニケーションズ
当社グループは、高品質で信頼性の高い製品とサービスの投入により、印刷現場のデジタル化を推進します。それにより、自動化・省人化とプロセスの可視化を実現し、お客様の収益力の向上に貢献します。加えて事業成長と社会課題解決の同軸化を図り、SDGsの達成に積極的に取り組みます。
商用印刷分野においては、印刷業のお客様に向けて、生産性向上に寄与する印刷機やゴールド、シルバー等高付加価値を可能にする特色トナー、上流から下流まで工程を統合的に管理するワークフローソリューションを組み合わせた提案を行っており、Offset to Digitalを加速して、お客様の現場プロセスのデジタル化を牽引していきます。
そのため、電子写真技術、サプライ技術、光学設計技術、画像処理技術、インクジェット技術、次世代作像エンジン要素技術、最先端ソフトウエア技術の開発を継続して行っております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
用紙対応力と自動化・効率化機能を強化したカラープロダクションプリンター「RICOH Pro C9500」と「RICOH Pro C7500」を新発売
・幅広い用紙厚(40~470g/㎡)に対応し、エンボス紙やクラフト紙といった凹凸紙・粗面紙への対応も強化
・「RICOH GC OS」により、様々な用紙の設定や調整、機器の利用状況やメンテナンスの管理に特別なスキルが不要
・RICOH Pro C9500では、「IQCT拡張ユニット」により、印刷中の色の調整/安定化やモニタリングに加え、画像品質/表裏見当/色変動の検査を自動で行うことができ、属人的で作業負荷の高かった色調整や検品業務の効率化、省人化が可能
・RICOH Pro C7500では、前身機に引き続き当社独自のスペシャルカラートナー(ホワイト、クリア、インビジブルレッド、ゴールド、シルバー、ネオンイエロー、ネオンピンク)が利用可能で、より豊かで鮮やかな色彩表現を実現
リコー初のB2サイズ対応枚葉インクジェット・プリンティング・システム「RICOH Pro Z75」を発売開始
~新開発の水性顔料インクと乾燥システムにより、低コストでの運用と高品質の両立を実現~
・自動両面印刷機能の搭載とシンプルな操作性により、生産性向上に大きく貢献、かつスキルレスでのオペレーションを実現し、人材不足や技能伝承問題を解決
・新しい水性顔料インクは少ない量で液滴を形成でき、ランニングコストを抑えた運用が可能
・新開発の乾燥システムにより紙の微妙な波うちを低減し、また乾燥待ち時間削減によりトータルでの業務効率化を実現
高速連帳インクジェット・プリンティング・システムの最上位機種「RICOH Pro VC80000」を発売
~印刷中の画質調整等の工程自動化による生産性の最大化を実現~
・最高速度が150m/分(1,200x600dpi)、最高解像度が1,200x1,200dpi(93m/分)となり、前身機に比べ1.5倍に向上
・新開発の水性顔料インクと最新のプリントヘッド、用紙搬送精度向上により、印刷したい位置に正確にインクを着弾
・標準搭載されたスキャナーやセンサーでインクの濃度、均一性をチェックし、リアルタイムに印刷精度を自動補正するため、画質調整でマシンを停止させる必要がなく、高品質かつ安定的な生産とオペレーターの負担軽減を実現
産業印刷分野においては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、製品ラインナップの拡充に取り組んでおります。MHシリーズヘッドは高耐久性と幅広いインク対応力でお客様よりご好評を頂いており、主にサイングラフィクス分野で使用されております。また、MEMS技術を活用した小型・高精細印刷に対応するTHシリーズヘッドも新規で採用いただけるお客様が増えております。さらに、プリンターとしては衣料印刷市場向けに新たに2つの機種を発表しました。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
ポリエステルへのプリントが可能なDirect-to-Garmentプリンター「RICOH Ri 4000」を発売
・これまでハイエンド領域の機器でしか対応できなかった、ポリエステルへのダイレクトプリントが可能となり、スポーツウェアでもソフトな感触かつ高品質・高耐久のプリントを実現
・必要な部分にのみ前処理剤を塗布する機構を内蔵することで、前処理プロセスが不要となり、作業の効率性を向上
リコーとして初のDirect-to-Filmシステム「RICOH Pro D1600」を発表
・最大1600mm幅のフィルムに対して20㎡/時を超える速度で印刷でき、かつパウダーシェーカーと乾燥ユニットを組み込んでいるため、トータルでの生産性が高く、デジタル印刷による衣類の大量生産が可能
・オーガニックテキスタイルの国際認証である「GOTS」を取得
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は
(4)インダストリアルソリューションズ
サーマル事業分野においては、世界で圧倒的なシェアを占める高付加価値サーマルペーパー(感熱紙)をはじめ、高い品質の製品・サービスを提供し、さらなるお客様の信頼獲得を目指しております。
高付加価値サーマルペーパーは、近年の環境意識の高まりから、社会課題解決型商品(発色材料の安全性を高めたフェノールフリーラベル)の販売を欧州市場、日本市場、北米市場で進め、グローバル展開しております。
また、デジタルサービスへのビジネス転換、環境負荷を低減する「ラベルレスサーマル」*をはじめとする機能性包材の企画・開発・販売を積極的に進めていくため、2023年4月に合弁会社「RNスマートパッケージング株式会社」を設立いたしました。当社の強みであるサーマル技術と、中本パックス株式会社の強みである包材設計・機能性コーティング技術、及び顧客基盤を組み合わせ、スマートパッケージングビジネスとして機能性包材市場に事業を展開し、2024年1月に「2023年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞」を受賞いたしました。
今後も新しいパッケージソリューションを幅広いパートナーとともにご提供することでパッケージ業界の変革に貢献します。
*ラベルレスサーマル:ラベルやリボンを利用せずに、印字機能を有する基材へ文字・コードの可変情報を直接印字することで、業務の効率化、コストダウンを可能にする当社の印字プロセス
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
当社と中本パックス株式会社、合弁会社「RNスマートパッケージング株式会社」を設立
~ラベルレスという新しい価値を持ってパッケージング業界へ参入~
・独自の機能性包材・オンデマンド印字ソリューションでお客様の生産性向上、脱炭素社会・循環型社会の実現に貢献
・パッケージの個品ID管理ソリューション等によりパッケージ業界のDXを実現
産業プロダクト事業分野においては、生産技術とIoT、AI、画像認識等の最先端技術を融合し、データ認識処理による 情報変換を通じた情報の見える化により、様々な産業設備のインテグレーション、車体・外装部品等の塗装外観を中心とした検査ラインソリューションを提供しております。成長著しい車載リチウムイオンバッテリー外観検査や車両塗装外観検査における安全・信頼性を高める検査ラインは現場における省人化、自動化に貢献しております。
2023年12月には長年にわたる塗装品の検査実績と独自の画像認識技術を結集し、従来は目視で行っていた自動車塗装の外観検査を、自動車の生産ラインを止めずに高い精度を維持しながら自動化する検査装置として、車両塗装外観検査装置「RICOH Visual Inspection System 5000」シリーズを発売いたしました。今後、これら検査設備等から得られるデータの活用により、お客様への新たな価値提案へと繋げていく予定です。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
車両塗装外観検査装置「RICOH Visual Inspection System 5000」シリーズを発売
~従来目視で行っている検査を自動化 高い検査精度で生産品質の向上に貢献~
・起伏の少ない側面にゲート式、高低差の大きい上面にロボット式を採用したハイブリッド構成とAI活用により
高精度な検査を実現
・標準で170mm/sec(42s/台・85台/h)のスピード、高速コンベアへの対応が可能
・車種変更・追加の際、少量のデータのみで調整できるため、短期間での量産立上げが実現可能
・固定ゲート式の側面ユニット、ロボット式の上面ユニットがそれぞれ分かれているため、部分設置としての導入も可能
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は
(5) その他事業
当社グループのもつ技術のさらなる活用と、オープンイノベーションを通じた新規事業創出により社会課題解決に取り組みます。同時に各事業の状況を見極め、メリハリのある経営資源配分と意思決定を行います。
■デジタルカメラ分野
デジタルカメラ分野を担うリコーイメージング株式会社では、PENTAXとGRの2つのブランド価値をより高め、"デジタル"手法を駆使してお客様とダイレクトにつながり、両ブランドの魅力をより一層研ぎ澄ませて深化しております。
当社グループでは、100年に及ぶカメラ開発の歴史で培われた、光学設計、光学部品加工技術を柱に、最先端のデジタル画像処理技術を搭載した画像処理エンジンPRIME VやGR ENGINE6と、高度なノイズ処理を実現するアクセラレーターユニットI, IIのコンビネーションにより、すべての感度域で優れた階調再現や質感描写を実現したデジタルカメラ製品の開発を行っております。また、これらの技術に加え、当社独自のボディ内手振れ補正機構SR(Shake Reduction)を搭載し、優れた手振れ補正性能を有するとともに、この機構を応用したローパスセレクター機能やリアルレゾリューション機能を開発しております。写真に拘りを持つユーザーの皆様へ、これらの技術を搭載したデジタルカメラを以下のシリーズで提供しております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
多様な特徴を持つ新製品を発売
・モノクローム専用イメージセンサーを新たに搭載したデジタル一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」
・塗装をメタリックウォームグレーの特別仕様としたハイエンドコンパクトデジタルカメラ「RICOH GR III Diary Edition」
・水深14mでの撮影が可能なコンパクトデジタルカメラ 「PENTAX WG-90」
・Kマウントデジタル一眼レフカメラ用単焦点レンズ「HD PENTAX‐FA 50mmF1.4」「smc PENTAX‐FA 50mmF1.4 Classic」
・大口径タイプのスポッティングスコープ(地上望遠鏡)「PENTAX PF-85EDA」
・本格性能と小型軽量を兼ね備えた双眼鏡「PENTAX A」シリーズの最新モデル2機種
■スマートビジョン分野
ワンショットで360度撮影ができるカメラ「RICOH THETA」を発売以降、360度画像・映像を活用した事業の幅を広げてきました。現在では、クラウドサービスと連携させることでワークフロー全体を効率化するソリューションを提供し、業務効率化と生産性の向上を実現するRICOH360プラットフォーム事業を展開・強化しており、建設業界をはじめとした業界のDX加速と「RICOH360」プラットフォーム事業のさらなる拡大を目的に、様々なパートナー企業と共創を始めております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
RICOH THETA本体及び360度画像をよりビジネスで使いやすく「RICOH360 プレミアムパッケージ」を提供開始
~新たなソリューションを共創するパートナーを募集~
・RICOH THETAの稼働状況を遠隔で把握できるデバイスマネジメント
・360度ビューワーや画像処理技術(メディアマネジメント)の提供
・RICOH THETA本体+専用三脚のセットの物損補償付きレンタルとサポート
■ヘルスケア分野
2022年度にバイオテクノロジーのベンチャー企業であるエリクサジェン・サイエンティフィック(eSci社)を子会社化しました。同社がもつ技術やノウハウと当社の技術や強み、リソースを掛け合わせることで、iPS細胞を活用した創薬支援事業の強化や、日本国内におけるmRNAを用いた治療薬製造基盤の整備·構築を進めております。人々の健康と安心への貢献はもとより、国内の経済安全保障の観点からも、医療用mRNAの製造能力のさらなる強化を目指し、ワクチンをはじめとするmRNA医薬品の創薬を支援していきます。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
リコー、ERS Genomics LimitedとCRISPR/Cas9ゲノム編集技術に関する非独占的ライセンス契約を締結
~CRISPR/Cas9ゲノム編集技術で疾患モデル構築の幅を広げて創薬支援に貢献~
・これまで培ってきたデジタル化技術やAI技術により、eSci社のコア技術の活用領域を拡大し、個別化医療や創薬・再生医療研究を加速
■社会インフラ分野
社会インフラの老朽化や自然災害の頻発化・激甚化が進み、インフラの効率的な維持管理が大きな社会課題となっております。当社は独自のカメラと解析AIによる道路・トンネル・のり面等への高精度かつ低コストなサービスを提供し、インフラ老朽化に対する効率的な維持管理・予防保全による安心安全な社会作りに貢献しております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
のり面モニタリングシステムが国土交通省の「土工構造物点検及び防災点検の支援技術性能カタログ」に掲載
~最適なカメラ・センサー類を搭載した走行型システムにより、点検を省力化~
・高画質な測定システムで広範囲にわたるのり面を一度で測定
・複数のラインセンサーカメラにより、のり面の全景画像を延長無制限で作成可能
・LiDARで、画像と同時にのり面の3次元形状を記録することで、平面画像からだけではわからない断面の形状も記録可能
・AIによって自動的に亀裂やはく離、ひび割れ等の変状を抽出
■環境分野
植物由来でコンポスタブルという特性を持つPLA(ポリ乳酸)を独自技術で発泡させた新素材の発泡PLAシート「PLAiR (プレアー)」で、化石資源由来プラスチックを代替し、新たなエコシステム構築を通じて環境負荷低減に貢献します。まずは、軽量で耐熱性をもつPLAiRの特徴を活かして食品容器に展開し、パートナーとの共創により事業拡大を目指します。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
植物由来の新素材「PLAiR」製食品容器が株式会社イトーヨーカ堂の実証実験に採用
・株式会社イトーヨーカ堂店舗で「PLAiR」の成型加工用シートを使用した容器に入った食品販売の実証実験
・当社独自の発泡制御技術で開発した成型加工用シートにより、自然由来99%の素材でありながら、優れた断熱性・耐熱性を実現
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は
(6) 基礎研究分野
当社グループではこれまで、商品の差別化につながる基礎研究分野として、お客様の業務の効率化や時間、場所に捉われない新しい働き方に貢献するためのデータ収集・解析技術、人工知能を応用したシステムソリューション開発を進めております。また、フォトニクス技術、MEMS、画像認識・画像処理技術を融合した高度なセンシング技術・エッジデバイス技術、分析・シミュレーション等の基盤技術や検証、シミュレーション等の技術、機能性材料、プリンティング技術の応用研究開発を進めております。
デジタル戦略部ではオフィス・現場・社会へと価値提供領域を拡大する中で、各領域においてAI活用が求められております。お客様の高度な業種・業務を支援するサービスを拡充すべく、当社独自開発の大規模言語モデル(LLM)等の技術開発を進めております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
日本語精度が高い130億パラメータの大規模言語モデル(LLM)を開発
・LLMは巨大な学習データと深層学習(ディープラーニング)を用いて構築された言語モデル。従来の言語モデルよりもデータ量が増大し精度が格段に向上したもの。当社は日本語処理精度が高いLLMを開発
・企業が持つデータを追加学習させることにより業種・業務に合わせたカスタマイズが可能。当社の顧客基盤における信頼を活かすことで企業保有データの活用を進める
・今後、音声認識技術を組み合わせたAIエージェントや、RAG(検索拡張生成:Retrieval Augmented Generation)機能の実装等を行い、活用範囲の拡大を狙う
企業独自のAIモデルを簡単に作成できるノーコード開発ツールのトライアル提供を開始
・業務の効率化や新たな価値の創造を支援する「仕事のAI」の新サービスとして、企業独自のAIモデルを簡単に作成し、学習推論できるノーコードツールを開発
・LLMを業務に活用するためには、企業固有の用語や言い回し等を学習させ、その企業独自のAIモデルを作成する必要があるが、専門の知識が必要で手間と時間がかかる
・本ツールでは、専門の知識が必要なく、企業固有の用語等を含めた分類情報のサンプルデータをExcelで作成、アップロードするだけで独自AIモデルを構築できる
先端技術研究所では、将来に向けてこれらの技術を核として、二つの提供価値領域にフォーカスして開発を行っております。
・HDT(Human Digital Twin at Work):ワークプレイスで働く人のデジタル化技術。行動センシングやバイタルセンシング等の技術と、認識やAI等の技術とを活用し、働く人の創造力発揮を支援する
・IDPS(Industrial Digital Printing System):インクの代わりに機能材料を吐出する産業用インクジェット技術を発展させ、製造・生産プロセスをデジタル化し、飛躍的な改善や廃棄物削減、省エネにつなげる。
分析・シミュレーション等の共通基盤技術は、引き続き当社グループの開発生産現場に展開し、さらなる効率化と品質向上を図っていきます。
協業パートナーとの共創も積極的に推進しており、当連結会計年度は、24%以上の開発テーマで協業パートナーと共同研究・開発を実施致しました。また、研究開発のグローバル化を推進しており、国内の先端技術研究所と東南アジアの企業・スタートアップ、研究機関等とを繋ぐイノベーションハブ拠点として、シンガポールにRICA(Ricoh Innovation Centre in Asia)を設立しました。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
HDTを実現する技術開発
・“1on1の対話トレーニングシステム”を発表。画像解析技術、言語解析技術、AI技術を活用し、部下役のAIとの1on1シミュレーションを行う中でトレーニーであるリーダーの発話内容や振る舞いを解析。トレーニング終了後の振り返りを通じて、1on1における対話スキル向上を実現
・建物・設備の管理効率化を実現する“空間データ作成・利活用AIソリューション”の実証実験を開始。カメラやレーザースキャナー等光学デバイスから取得した点群と360度画像を自動的に位置合わせしてつなぎ、建物内をバーチャルに見て回ることのできる3次元復元を実現。AI技術の活用により、3次元CADモデルの生成、またデジタル建物の中で計測・計画・シミュレーションを支援する機能等を開発
IDPS ~インクジェット技術の活用領域の拡大により持続可能な社会の実現を目指す技術開発~
・高圧対応の“GELART JETヘッド”を開発。高粘度・大滴サイズの塗料吐出による大面積・厚塗り印刷や、塗料の飛翔距離拡大による曲面・凹凸面への印刷、大粒子含有材料の吐出を実現し壁面や路面、自動車外装等へのデジタル塗装技術を開発中
・従来のシリコン太陽電池に代わる発電技術として注目を集めているペロブスカイト太陽電池の製法開発を含む、国立大学法人東京工業大学とのインクジェット技術の共同研究実施
なお、当連結会計年度の当分野に係る研究開発投資は 15,435百万円です。