(1) 会社の経営の基本方針
①当グループの原点
日本では明治時代以降に信託制度が導入され、1922年には「信託法」、「信託業法」が制定されました。これらにより、信託制度が確立され、本格的な発展期を迎えることとなりました。
1924年には「信託業法」に基づく日本最初の信託会社として三井信託株式会社が設立されております。1925年には住友信託株式会社が設立され、1962年には中央信託銀行株式会社が設立されております。これら信託会社・信託銀行が当グループの中核子会社たる三井住友信託銀行株式会社の母体となっており、「信託」が当グループの原点となっております。
当グループは、「信託」の受託者精神に立脚し、「信託」の力で各時代におけるお客さまのニーズや社会の要請に応じて、新たな価値創出に「挑戦」し、日本の発展に貢献する「開拓」の姿勢を、創業以来貫いてまいりました。
例えば、戦後の高度成長期には、重厚長大産業向けの設備投資資金ニーズに応える「貸付信託」を中心に、日本の経済成長を支えてきました。
1960年代からは、企業年金の制度設計・資産運用・資産管理を三位一体で提供する「年金信託」の受託者として、勤労者の充実した老後の生活を支援しております。
2000年以降は、「信託法」、「信託業法」の改正を契機に、時代に合った新たな商品・サービスの提供を通じて、社会課題に向き合っております。
当グループはまさに「信託」を原点とし、「信託」とともにその歴史を歩んでおり、今後もさらなる飛躍に向けて歩みを進めてまいります。
(三井住友信託銀行株式会社の主な変遷)
(三井住友信託銀行株式会社の信託財産残高推移)
(※)2012年3月期以前の信託財産残高については、三井住友信託銀行株式会社統合前の各社の信託財産残高を
合算して算出しております。
②当グループの基本方針
当グループは、目指す企業グループ像を明確にするため、次のとおり存在意義(パーパス)、経営理念(ミッション)、目指す姿(ビジョン)、行動規範(バリュー)を定めております。
信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる
①高度な専門性と総合力を駆使して、お客さまにとってトータルなソリューションを迅速に提供してまいります。
②信託の受託者精神に立脚した高い自己規律に基づく健全な経営を実践し、社会からの揺るぎない信頼を確立
してまいります。
③信託銀行グループならではの多彩な機能を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出し、株主の期待
に応えてまいります。
④個々人の多様性と創造性が、組織の付加価値として存分に活かされ、働くことに夢と誇りとやりがいを持てる
職場を提供してまいります。
「The Trust Bank」の実現を目指して
当グループは、信託の受託者精神に立脚し、高度な専門性と総合力を駆使して、銀行事業、資産運用・管理事業、
不動産事業を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出する、本邦最大かつ最高のステイタスを誇る
信託銀行グループとして、グローバルに飛躍してまいります。
当グループの役員・社員は、グループ経営理念を実践するため、以下の6つの行動規範を遵守してまいります。
お客さま本位の徹底 -信義誠実-
私たちは、最善至高の信義誠実と信用を重んじ確実を旨とする精神をもって、お客さまの安心と満足のために
行動してまいります。
社会への貢献 -奉仕開拓-
私たちは、奉仕と創意工夫による開拓の精神をもって、社会に貢献してまいります。
組織能力の発揮 -信頼創造-
私たちは、信託への熱意を共有する多様な人材の切磋琢磨と弛まぬ自己変革で、相互信頼と創造性にあふれる
組織の力を発揮してまいります。
個の確立 -自助自律-
私たちは、自助自律の精神と高い当事者意識をもって、責務を全うしてまいります。
法令等の厳格な遵守
私たちは、あらゆる法令やルールを厳格に遵守し、社会規範にもとることのない企業活動を推進してまいります。
反社会的勢力への毅然とした対応
私たちは、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力に対して、毅然とした姿勢を貫いてまいります。
(2) 金融経済環境
当連結会計年度の金融経済環境を見ますと、海外では、欧米を中心に金融引き締めが続き、それを受けて、欧州の景気は低調に推移しましたが、米国は良好な雇用環境を背景に景気の堅調さを示しました。中国は不動産市場の低迷等が景気の重石となりました。国内経済は、インフレ環境下で個人消費を中心に内需が低迷しました。
金融市場では、日経平均株価は2023年12月まで上値の重い展開が続きましたが、米国の株価上昇や円安を背景に上向き、2024年2月には過去最高値を更新しました。10年国債利回りは、日本銀行が変動許容幅を拡大するにつれ2023年10月末には0.9%超まで上昇した後、米金利の低下に伴い12月には0.6%前後まで低下しました。2024年1月以降は、金融政策の正常化期待の高まりから0.7%台まで上昇したものの、3月にマイナス金利政策が解除された後も、日本銀行の緩和継続姿勢が浸透したことから、落ち着いた動きを保ちました。ドル円レートは、一時円高方向に振れる局面もあったものの、総じて日米の金融政策スタンスの違いを反映して円安基調で推移し、2024年3月末には150円を超える水準となりました。
(3) 事業の経過
当グループは、「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」というパーパス(存在意義)のもと、事業運営を推進しております。
日経平均株価が史上最高値を更新し、日本銀行のマイナス金利政策が解除される等、日本経済がデフレからの完全脱却に向けた大転換期を迎える中、2023年度は、中期経営計画で掲げた以下の3つのテーマに基づいた取り組みを進めました。
1.信託グループらしいビジネスの成長と資本効率の向上
当グループは、お客さまとの信任関係に基づく長期にわたるお取引を強みに、資産運用・資産管理を軸とした信託グループらしいビジネスモデルで、「社会的価値創出と経済的価値創出の両立」の実現を目指しています。社会課題解決と市場の創出・拡大に貢献する取り組みの規模を示す残高指標として、Assets Under Fiduciary(以下、「AUF」といいます。)を新たに定義し、2030年度までに800兆円まで拡大するとともに、ROE10%以上の早期達成に向けた取り組みを推進しています。
個人のお客さまには、三井住友信託銀行において、「人生100年時代」を見据え、年金業務で培った資産運用に係る知見を活かし、年金や退職金に加え、不動産やローンも含めた資産・負債全体のフローとストックの両面に着目したトータルコンサルティングを展開しました。
オンライン・コンサルプラザの拡充をはじめとするお客さまとのコンタクトチャネルの高度化により、資産形成層へのアプローチ強化も進めています。2023年9月には、お客さまの資産形成をサポートするスマートフォンアプリ「スマートライフデザイナー」をご利用のお客さまに、資産形成・運用・管理・承継に至るライフステージに応じた三井住友信託銀行のサービスの提供に加え、住信SBIネット銀行株式会社の先進的なデジタル基盤を活用した機能をご利用いただける「三井住友信託NEOBANK」のサービス提供を開始いたしました。
また、2023年7月には、超富裕層ファミリーの金融資産・不動産・プライベートエクイティ等の資産管理サービスに加え、幅広いジャンルにおいてコンシェルジュサービスを提供する株式会社PrivateBANKと三井住友信託銀行が資本業務提携いたしました。両社の協業により、富裕層のお客さまに対し、より多面的なサービスを提供するとともに、商品開発力とソリューション提供力の強化を図り、資産運用・資産管理や社会貢献を行うための基盤を充実させてまいります。
法人のお客さまには、「ESG/サステナブル経営」への取り組みがますます重要となる中、ガバナンス、人的資本、不動産ESG等の各種サーベイを起点に、投資家の立場にも視野を拡張した対話で企業価値向上を促すエンゲージメント型のソリューション営業を拡充しました。
2024年2月には、三井住友信託銀行が、環境・低炭素転換の専門知識を豊富に有する世界最大のサステナビリティ専門コンサルティング企業であるERMグループと、気候変動対策のサービス提供に向けて合弁会社を設立し、4月に事業開始いたしました。
新たな技術やサービスで我が国の未来創りに貢献するスタートアップ企業に対しては、上場前のIRサポートや、上場前後の投資家からの資金調達を支援していきます。三井住友信託銀行では、銀行機能を活かしたシード出資をはじめ、株式上場を検討する段階に入ったスタートアップ企業への支援として、2025年度までに累計で最大500億円規模の投融資を行う活動を推進しています。また、三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社(以下、「三井住友トラスト・アセットマネジメント」といいます。)では、三井住友信託銀行の知見も活かし、上場株式と未上場株式の双方に投資するクロスオーバーファンドを設定しました。銀行機能と投資家機能の両面で、スタートアップ企業への資金供給に貢献していきます。
個人を含む投資家のお客さまには、社会的価値と経済的価値の創出を両立し、利の厚い投資機会を提供するプライベートアセット運用を拡大しています。とりわけ、我が国の産業や社会生活を支えるインフラ領域は、脱炭素化、デジタル化等の課題解決のために多額の資金需要を見込む一方、投資市場としては未成熟であり、投資機会が限られています。
かかる中、2023年9月には、当社グループ会社であるジャパン・エクステンシブ・インフラストラクチャー株式会社が投資判断に関する助言を行う国内総合型インフラファンド(ジャパン・インフラストラクチャー第一号投資事業有限責任組合)を組成しました。国内インフラ領域の資金需要と運用ニーズの結節点となり、投資機会の創出・提供を通じて、社会課題解決に貢献していきます。
2023年12月には、資産運用ビジネス高度化に向けた取組方針を公表し、政府の「資産運用立国」構想に対し、業界をリードする取り組みを進めています。三井住友信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、日興アセットマネジメント株式会社(以下、「日興アセットマネジメント」といいます。)の自律的な運用力の向上を進めるとともに、多様で実力ある運用会社とパートナー化を進め、それらをグループ内に連ねる「マルチアフィリエイトモデル」の構築に取り組みます。この実現に向け、2030年度までに累計で最大5,000億円の規模で、主にグローバルな運用力・顧客基盤の獲得や新興マネージャーへの投資等に積極的に投下していく方針です。また、資産運用ビジネスの更なるガバナンス高度化や運用力向上に向けた取り組みを一層加速させていきます。
これに先駆け、2023年11月に、三井住友トラスト・アセットマネジメント及び日興アセットマネジメントは、投資リターンと環境成果の実現に着目した運用商品を有する英国のOsmosis (Holdings) Limitedと資本業務提携いたしました。
資産管理業務では、株式会社日本カストディ銀行のガバナンスの改善・強化を支援するとともに、三井住友信託銀行を中心に、投資家や運用会社の業務高度化・効率化ニーズに応える機能強化・サービス向上を図りました。また、デジタル技術を活用した業務プロセス標準化や、海外資産管理の基幹システム共通化の検討を進め、競争力の強化に取り組みました。
2.未来適合に向けた人的資本強化
当グループ特有の専門性の高い業務を支えるのは、社員一人ひとりであり、社員が能力を最大限に発揮することが、お客さまや社会への価値の提供に繋がると認識しています。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを一層加速するため、女性活躍推進、育児や介護と仕事の両立、人権・LGBTQに関する理解促進、及び自律的なキャリア形成を通じた多様性と専門性を組織の総合力として発揮するための人事制度の整備等を推進しました。こうした取り組みの結果、LGBTQに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する一般社団法人wwP(work with Pride)が運用する「PRIDE指標」において、当グループが最高評価「ゴールド」を受賞いたしました。また、三井住友信託銀行においても、企業や行政、NPOなどの異なるセクターから集まった重要なプレイヤーと協働し、特定の社会課題解決に取り組む企業として「レインボー」を同時受賞いたしました。
また、2024年度に創業100年を迎えた当グループは、ステークホルダーの皆さまに当グループをより深くご理解いただき、感謝の意を表す様々な取り組みをグループ一体で進めております。
当グループのパーパスは、お客さま本位のもと、様々な社会課題を解決し、我が国の発展に貢献してきた信託の原点を反映しています。創業100年を迎えるにあたり、お客さまから「信じて託される」尊さと、お客さまの「未来への願い」に応える強い意思を、グループ内外により効果的に伝え、体現していくために、ブランドスローガン「託された未来をひらく」を策定しました。
100周年事業は、当グループの組織創りそのものです。社員一人ひとりが主役となり、当グループのアイデンティティや挑戦と開拓の歴史を知り、当グループで働くことに自信ややりがいを感じ、次の100年に向けた「挑戦」のムーブメントを起こす機会と捉え、取り組んでまいります。
3.経営基盤の高度化
お客さまとの長期的な信任関係の基礎となるリスク管理、コンプライアンス、お客さま満足度の向上を含むフィデューシャリーの実践については、一層の高度化に取り組んでまいります。ますます複雑化・巧妙化する金融犯罪やサイバー攻撃に対しても、リスク管理態勢や運営ルールをアップデートし、対策を講じています。
生成AIをはじめとするデジタル技術を活用したサービス提供や業務プロセス変革も着実に進めています。2023年4月には、相続手続きにおけるお客さまと金融機関双方の負担軽減を図るために、デジタル技術を活用した戸籍謄本の読み取りや書類不備のチェックを行い、相続人関係図の作成を可能とするシステムを開発し、利用を開始しました。生産性向上や業務効率化に効果が大きいと想定される領域に経営資源を集中的に投下し、お客さまのニーズに適した商品・サービスの拡大や、高品質なコンサルティング提供力の向上に一層の磨きをかけてまいります。
(4) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
2024年4月15日、当グループは創業100年を迎えました。信託の受託者精神に立脚し、「信託の力」で各時代におけるお客さまのニーズや社会の要請に応じて、新たな価値の創出に果敢に「挑戦」し、我が国の発展に貢献する「開拓」の姿勢は、創業以来、いつの時代も変わりません。
私たちを取り巻く環境が急激に変化する中、健全で豊かな未来創りを目指した創業の原点に立ち返り、「託された未来をひらく」存在として、これまで以上にグループが一体となって新たな「挑戦」と「開拓」に取り組み、全てのステークホルダーのWell-being向上に貢献する企業となるため、2024年10月1日付で当社は商号を「三井住友トラストグループ株式会社」へ変更する予定です。
中期経営計画の2年目となる2024年度は、AUFを軸とした成長戦略を「実行・実践・実現」するために、以下の3つの重点テーマに取り組んでまいります。
<テーマ1>アドバイザリ・資産運用・資産管理機能(好循環加速の駆動力)の強化
我が国の最大の金融・社会課題は、金融資産2,100兆円、不動産1,000兆円、合計3,000兆円を超えると言われる個人の資産や企業の内部留保が、投資や消費に回らず、停滞して動かないことだと考えています。当グループが実現したい「好循環による成長」とは、投資家が有望な事業に投資を行い、株価の上昇や配当といった投資の果実が国民の資産形成に繋がり、企業は業績の向上によって新たな投資や雇用の拡大を進める、という一連の行動による経済全体の持続的成長です。
信託会社を起源とする当グループは、不動産関連業務、銀行業務と機能を拡張する中で、投資家、事業者それぞれの想いに直接触れ、双方のニーズを結びつけてきました。その中で培った、当社の強みであるアドバイザリ・資産運用・資産管理機能の三位一体型ビジネスモデルに一層の磨きをかけ、AUFを拡大させながら、資金・資産・資本の好循環を加速してまいります。
①アドバイザリ
お客さまのライフプランや資産・負債の全体像を把握したうえで、適切な資産配分の提案から商品提供までをシームレスに行い、お客さまの最善の利益に繋がる意思決定を支援いたします。お客さまのリスク許容度に応じた最適なポートフォリオの提案・提供を通じ、新たな投資需要を創造してまいります。
2024年度は、脱炭素をはじめとする社会課題解決領域に資金使途を限定する元本補填付きの信託新商品を新たに導入する予定です。この新商品を皮切りとして、お客さまのリスク許容度に応じたリターンが見込める運用商品の開発・提供を進め、個人のお客さまの資産形成に貢献してまいります。
②資産運用
三井住友信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、日興アセットマネジメントを中心とするグループ各社が、個性を発揮し、自律的に成長することで、グローバルに選ばれるグループとなることを目指します。利が厚く、お客さまの投資ニーズに応えるプライベートアセット領域への注力に加え、北米を中心とした運用会社等への出資・提携やユニークで魅力的な新興マネージャーの発掘・育成など、2030年度までに累計で最大5,000億円の資金を投下することで、世界で戦える運用力を備えてまいります。また、当グループの資産運用ビジネスを支える人材に関しては、グローバル基準に沿った運用会社独自の評価・報酬制度の導入や、外部のプロ人材の積極的な採用・登用も継続して行ってまいります。
③資産管理
AI等の新技術による業務の効率化・標準化を図り、新興運用マネージャーへのインフラ提供、プライベートアセットやデジタルアセットなどへの取扱資産の拡張、取引データを利活用したレポート作成などを通じて、取組領域を拡大してまいります。
今後もお客さまの意思決定支援や需要創造に貢献する「アドバイザリ」、高品質なプロダクトを提供する「資産運用」、アドバイザリや資産運用を支えるプラットフォームである「資産管理」機能による三位一体型ビジネスモデルに一層磨きをかけ、資金・資産・資本の好循環を加速し、2030年度までにAUFを800兆円まで拡大するとともに、ROE10%以上の早期達成を目指します。
<テーマ2>フィデューシャリーの高度化
当グループは、お客さまから信じて託される、お客さまの想いを実現するフィデューシャリー(受認者)として、お客さまの最善の利益を追求し、お客さまの期待を超える水準まで業務品質を高度化してまいります。
様々なサービスを提供するうえで、お客さまの想いや時代の変化を自律的に捉え、常に適正な品質を担保することは、当グループの付加価値であり、収益の源泉と考えています。
リスクの顕在化を未然に防ぐため、管理手法の高度化に加え、グループ社員が誰でも、誰に対しても意見を発信することができ、その声に確りと耳を傾け、適切な対応策を一緒に考え行動する、オープンな組織創りや健全な企業風土の醸成にも取り組んでまいります。
<テーマ3>生産性・採算性の向上(DXの推進、インフレへの対応)
我が国の人口減少やインフレが加速していく中、当グループが持続的に成長し、各ステークホルダーのWell-being向上に貢献するには、デジタル技術を活用した抜本的な業務プロセス変革による生産性向上や、適正な商品・サービス価格への見直しによる採算性向上が不可欠だと考えており、これらに資する取り組みに一層注力してまいります。
豊かな未来に向け、社会課題の解決を通じたトランジションが進む現下の環境で求められる役割は、健全で豊かな未来創りを目指した創業の原点にも通じており、今まさに「信託の力」が求められる時だと捉えています。
お客さまの最善の利益のために、当グループの役員・社員の一人ひとりが、自ら考え、自ら判断し、自ら行動することを絶えず継続し、進化していくことで、次の100年に向けた未来創りに貢献し、お客さまや社会から選ばれ続ける「三井住友トラスト・グループ」を目指してまいります。
報告セグメントにおける目指すべきビジネスモデルは、以下のとおりであります。
(個人事業)
人生100年時代を迎え、お客さまの「長く充実した人生を過ごすこと」への関心がますます高まるとともに、将来に向けた資産形成・運用や高齢期における資産管理、相続・資産承継に関する悩み・不安が、各世代における社会課題として顕在化してきています。
個人事業では、信託銀行グループならではの高度な専門性と多彩な商品・サービスを駆使しながら、個人のお客さまの世代やライフイベントなどに応じて変化する資産・負債の特性を踏まえたトータル・コンサルティングを通じてお一人お一人に寄り添った最適なソリューションをご提供することで、お客さまの「ベストパートナー」となり、長期間にわたる信頼と安心を培っていくことを目指しています。
(法人事業)
革新的なIT技術・産業素材・工業技術の登場とライフサイクルの短期化、デジタル化の急速な進展、ステークホルダーとの対話の重要性拡大、脱炭素化・SDGs実現に向けた対応の加速など、企業を取り巻く環境は従来以上のスピードで変化するとともに、ますます複雑さを増しています。
創業来培ってきた「信託銀行ならではの多彩さ・専門性を強化」し、これらを複雑・高度に融合させ、お客さまと社会の顕在化した課題はもとより、潜在的な課題の解決にも貢献する「トータルソリューションモデルを進化」させることを通じて、お客さまと社会から「ベストパートナー」に指名される金融機関を目指しています。
(投資家事業)
投資家事業においては、ESG投資など社会課題解決に繋がる運用商品の開発や社会的価値の創出に注力することに加え、資産管理事業においては、IT・デジタル技術の活用による資産管理・データサービスの強化など資金等の好循環を創出する各種サービスの高度化に取り組みます。また、地産地消型のエネルギー循環など地域経済エコシステム構築への貢献やライフプランマネジメントを通じたFINANCIAL WELL-BEINGサポートなど、多様な投資家のお客さまの経営課題に寄り添いながら社会課題解決に貢献していきます。
(不動産事業)
法人向け不動産仲介・コンサルティングは、国内外の金融機関・不動産会社等とのネットワークも生かして、不動産に関する多彩な機能をご提供し、企業価値向上と経営課題の解決を目指します。個人向け不動産仲介は、お客さまのライフステージに即した不動産情報のご提供を拡充し、お客さまの資産価値最大化を追求します。
本邦No.1の規模である不動産証券化信託や不動産投資法人関連業務は、不動産投資市場の拡大を支えるインフラとして、堅確な業務継続を実現し社会的使命を果たします。これらの業務を通じ、お客さまの不動産の「ベストパートナー」を目指します。
(マーケット事業)
先進国の金融政策、新興国の景気動向に加えて、世界的な政治情勢、地政学リスクなど市場を取り巻く不確実性は高まっています。お客さまの保有資産やバランスシートにも市場リスクが存在しており、マーケットボラティリティ(市場変動)を適切にマネージするソリューションをご提供することでお客さまの資産価値を守っていきます。
マーケティング業務・マーケットメイク業務の知見に加えて、投資業務や財務マネージ業務における長年の経験に裏打ちされた市場リスクコントロールの技術も活用するなど、専門家集団によるボラティリティマネージのあらゆるノウハウを活用し、お客さまに最適なソリューションをご提供していきます。
(運用ビジネス)
今後も長期的にグローバルな資産運用ビジネスの成長が見込まれる一方、地政学リスク、パンデミックリスクに加え、競争激化や規制強化による運用手数料低下圧力が一層強まっており、短中期的なビジネス環境は不透明さを増しています。こうした環境を機会と捉え、グローバルベースの先駆的なESG活動を含めた海外ビジネスの拡大に加え、海外の運用会社への提携戦略(出資などを含む)を通じ、グループとしてグローバル展開を加速します。
また、グループ内に特長が異なる運用会社を複数持つ強みを生かして、パッシブからアクティブ、オルタナティブまでフルラインをカバーし、国内外の機関投資家から個人投資家まで幅広いお客さまの多様化する投資ニーズにお応えしていきます。
(5) 目標とする経営指標
当グループは、2023年度以降の中期経営計画期間における財務目標(KPI)として以下を設定しております。資産運用・資産管理を軸とした信託グループらしいビジネスモデルの推進により、2030年度までにROE10%以上、親会社株主純利益3,000億円以上、AUF800兆円を目指し、早期にPBR1倍以上(時価総額3兆円以上)が達成できるよう、着実に歩んでまいります。
※定義見直しによる増加分20兆円を含む。
(注)1.自己資本ROE:自己資本に対する当期純利益の比率。利益を稼ぐ効率性を示す指標であり、この比率が高いほど、自己資本を効率的に使って純利益を稼いでいることを示します。なお、2023年度(実績)の自己資本ROEについては、政策保有株式及び日本株ベア型の投資信託の損益影響を除くと、概ね親会社株主純利益の期初予想(2,000億円)を前提に算出したROEを上回る水準と試算。
2.実質業務粗利益:当社及び連結子会社の業務粗利益に持分法適用会社の損益(臨時要因を除いた持分割合考慮後の金額)等を反映した社内管理ベースの計数。
3.実質業務純益:経常利益から与信関係費用や株式等関係損益などの臨時的な要因の影響を控除したもので、実質的な銀行(及びグループ)の本業の収益を表す指標。
4.AUF(Assets Under Fiduciary):社会課題解決と市場の創出・拡大に貢献する投融資、資産運用・資産管理の残高を合計したもの。
5.手数料収益比率:実質業務粗利益に対する各種手数料収益(受託財産に係る信託報酬や不動産仲介手数料、投資信託の販売手数料等)の比率。この比率が高いほど、当グループが注力する手数料ビジネスが粗利益の獲得に貢献していることを示します。
6.経費率(OHR):実質業務粗利益に対する総経費の比率。利益を稼ぐ効率性を示す指標であり、この比率が低いほど、経費を効率的に使って粗利益を稼いでいることを示します。
7.普通株式等Tier1比率:資本金、資本剰余金及び利益剰余金など、自己資本の中でも中核的な資本に対するリスクの割合を表すもの。資本の十分性を示す規制指標であり、この比率が高いほど、リスクに対する備えが厚いことを示します。
当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
①価値創造プロセスの考え方
当グループは、自らの存在意義(パーパス)を「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」と定義するとともに、「社会的価値創出と経済的価値創出の両立」を経営の根幹に掲げています。
社会的価値創出と経済的価値創出を両立させるには、存在意義(パーパス)に基づきステークホルダーの価値を最大化させながらポジティブインパクトを創造するプロセスと、当社自身の財務・非財務の経営基盤を持続的に強化していくプロセスを有機的に結合するとともに、それを経営レベルで適切に管理する仕組みが必要です。当社は、この仕組みを「価値創造プロセス」として整理しています。
②サステナビリティ方針
当グループは、「1.事業を通じた社会・環境問題の解決への貢献」「2.お客さまへの誠実な対応」「3.社会からの信頼の確立」「4.環境問題への取り組み」「5.個人の尊重」「6.地域社会への参画・貢献」からなる「三井住友トラスト・グループの社会的責任に関する基本方針(サステナビリティ方針)」(以下、サステナビリティ方針)を取締役会において定めています。
また、サステナビリティ方針に関連する当グループの取組方針及び具体的な行動指針について、「環境方針」「気候変動対応行動指針」「生物多様性保全行動指針」「人権方針」を取締役会において定め、役員・社員に周知するとともに対外的に公表しています。
このうち、「人権方針」については、サステナビリティ方針で定めている、「あらゆる企業活動において、個人の人権、多様な価値観を尊重し、不当な差別行為を排除」することを徹底するため、国際連合人権理事会「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき2013年12月に制定したものですが、昨今の人権尊重の重要性の高まり、人権課題に対する国際的な要請に加えて、金融機関として取り組むべき人権課題が変化していることを踏まえ、2023年2月に改定しました。改定後の「人権方針」については、
③マテリアリティの特定
当社では、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を根幹に、経済、社会の情勢変化、グループとしてのリスク認識、ステークホルダーからの要請なども考慮に入れて、中長期的な重要課題(マテリアリティ)を特定し取締役会において定めています。
当社は、2015年度に初めてマテリアリティを特定し、以後、2019年度、2022年度に改定を実施しています。現行のマテリアリティの特定にあたっては、世界経済フォーラム国際ビジネス協議会の提言をもとに、世界4大会計事務所が中心となって取りまとめた「持続可能な価値創造のための共通指標と一貫した報告を目指して」における共通指標(以下、コモンメトリクス)を起点としました。第一段階として、コモンメトリクスの「地球」「人」「豊かさ」「ガバナンス」に分類される論点に基づいて「マテリアリティテーマ」を特定し、第二段階として、当グループのパーパスと経営戦略上のテーマに沿って、マテリアリティテーマを、実現を目指す社会と価値に関する項目に整理し、マテリアリティとして特定しています。
マテリアリティについては、企業活動が経済、社会、環境に影響(ポジティブインパクト/ネガティブインパクト)を与える項目を「インパクトマテリアリティ」、価値創造の根幹に影響を与える項目を「ガバナンス・経営基盤マテリアリティ」、財務パフォーマンスに影響を与える項目を「財務マテリアリティ」として3つに区分し、リスクアペタイト・フレームワークの中で適切に管理するマテリアリティ・マネジメントを実践しています。
マテリアリティ及びマテリアリティテーマについては、経済や社会の情勢変化に伴って生じる論点を適切にくみ取るため、定期的にレビューを実施し、取締役会に報告しています。
(注)マテリアリティの3区分の定義は以下のとおりであります。
④サステナビリティ推進体制
当社では、サステナビリティ方針に基づき執行機関である経営会議がサステナビリティ推進に関する方針・戦略を協議・決定し、取締役会がこれを監督する体制としています。
2023年度からは、サステナビリティ課題への対応における所管各部との協議、取組状況の報告を組織的に行うことを目的に、経営会議の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しました。同委員会は、サステナビリティ推進部統括役員(CSuO)を委員長、経営企画部統括役員、人事部統括役員、IR部統括役員を委員とし、当社のサステナビリティへの取組状況の確認と、サステナビリティ推進に関する各種施策の審議を行っています。なお2024年度は、サステナビリティリスクへの注目度の高まりを受け、リスク統括部統括役員(CRO)を委員に加えています。
同委員会における審議を経た上で、経営会議へ付議することで、サステナビリティに関する課題の対象範囲を明確化し、方針立案、対応実施、開示までの一連の取り組みを組織的に行う態勢を整えています。
①社会的価値創出に向けたポジティブインパクトの創造
社会的価値は当グループの企業活動が生み出す場合もありますが、多くはステークホルダーからその先のステークホルダーへ影響が連鎖する中で形成されていくと考えています。SDGsの実現に貢献し最終的に経済(豊かさ)、社会(人間)、環境(地域)に対する良い影響(ポジティブインパクトの創造とネガティブインパクトの抑制)につながる活動が、当グループにおける社会課題解決型ビジネスです。
当グループは「信託」の多彩な機能を活用し、「資金・資産・資本の好循環」をキーワードに、個人・企業・投資家それぞれに生じる社会課題に対して付加価値の高い商品・サービスをお客さまに提供します。上記のマテリアリティの特定においても考慮した社会課題等を踏まえ、当グループでは、2030年に実現したい社会や当社の姿を見据え、好循環を促進する3つの重点戦略領域として、「人生100年時代」「ESG/サステナブル経営」「地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)」を設定しています。
社会課題がますます高度化・複雑化するなか、当グループ固有の経営資源や顧客基盤だけでは社会課題を解決することは困難です。さまざまなステークホルダーとの連携やプラットフォームの構築を行い、新たな市場や機会を創出します。また、これらを実現するために、人的資本や設備投資を強化していきます。
②気候変動にかかる戦略
イ.気候変動対応に関する考え方
気候変動は、グローバルな経済・社会の持続性を脅かす最も深刻な環境問題の一つですが、当社のマテリアリティにおいては、「気候変動」を含む「ESG/サステナブル経営」をインパクトマテリアリティとして特定しています。
当グループでは、気候変動問題を優先的に対応する社会課題と位置付けており、この問題の解決には、既存の法制度や生活スタイル、企業活動など複雑な利害関係に向き合いながら、カーボンニュートラル社会への移行(トランジション)を着実に進めることが重要と考えます。「気候変動」に対しては、グループ共通のプリンシプル(行動原則)である「気候変動対応行動指針」のもと、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に認識し、信託グループの多彩なビジネスを通じて、ネガティブな影響の最小化とポジティブな影響の最大化に取り組んでいく方針です。
ロ.気候変動に関するリスクの認識
当グループでは、中長期的な気候変動や異常気象による社会インフラ・自然等の物理的被害(物理的リスク)や気候変動に関連した政策変更・気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等による低炭素社会への急速な移行(移行リスク)を気候変動関連リスクと定義し、自らの事業活動による温室効果ガス(GHG)排出の抑制や、セクターポリシー等に基づく規律ある投融資のリスク管理・モニタリングに努めています。三井住友信託銀行では、移行リスク及び物理的リスクが将来にわたって投融資ポートフォリオに与える影響を把握すべく、シナリオ分析を実施しており、これらをビジネスモデルや戦略の持続可能性に関する確認、及び投融資先のお客さまとの気候変動に関する対話とエンゲージメントのツールと捉え、ポートフォリオ特性を踏まえつつ分析に取り組んでおります。
(ⅰ)移行リスク
移行リスク分析では、2023年度に、海外の事業法人を対象に加え、NGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)の気候変動シナリオごとに、2050年までの信用格付の変動シミュレーションを実施の上、与信関係費用にどのような影響が生じるかを分析しました。分析手法としては、前年同様、全セクターをカバーするセクターレベルのトップダウン方式による分析に加え、移行リスクヒートマップにおいて移行リスクが高いと判定されるセクターについては、個社レベルの財務シミュレーション(ボトムアップ方式)を組み合わせた信用格付シミュレーション分析を実施しました。
結果として、「Current Policy(3.0℃シナリオ)」との比較において、NetZero2050(1.4℃シナリオ)では2050年までの累計ベースで903億円、同様にBelow 2.0(1.6℃シナリオ)では520億円の与信関係費用が増加する試算結果となりました。
(ⅱ)物理的リスク
物理的リスクについては、三井住友信託銀行の与信ポートフォリオは大企業を中心とした事業法人と不動産、プロジェクトなどのアセットファイナンスの比率が高いこと、また、事業法人については入手可能な分析対象資産の位置情報データが限定的であることなどから、住宅ローンや不動産ファイナンス、プロジェクトファイナンスなど、資産の位置情報をもとにした分析が可能なアセットファイナンスを優先してシナリオ分析を実施しております。2023年度においては、ファイナンスを提供する太陽光発電プロジェクトの位置情報をもとに、土砂災害、積雪量の長期的予想モデルを用いて、案件ごとに将来の被災リスクの時系列変化を分析し、信用格付を用いた与信関係費用のシミュレーションを行っています。なお、プロジェクトファイナンスについては、取組期間、返済スケジュールを反映する簡便なモデル化を行った上で、取引期間中に被災する確率を計算する方法を取っています。
分析にあたっては、株式会社ウェザーニューズとの協働により、土砂災害に関しては、NASA(アメリカ航空宇宙局)の土砂災害モデル及びNIES2020(国立環境研究所)の降水量を用いて、2100年までの推計値を算出しています。積雪に関しては、気象研究所大気大循環モデル(MRI-AGCM3.2/NHRCM)を採用し、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベースであるdatabase for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)上の、2℃、4℃シナリオにおける積雪深、積雪層全層の積雪相当水量を用いて、2100年までのリスクを分析しています。与信関係費用の試算においては、被災した際の想定損害率について十分なデータ蓄積がないことから、被災した場合に一定期間稼働が停止するなど効率が低下し、信用格付の低下を通じて発生する与信関係費用を推計しています。
結果として、推計される与信関係費用額は、4℃シナリオにおいて2100年までの累積で4億円程度にとどまると試算されました。
ハ.気候変動に関する機会の認識
脱炭素社会の実現に向け、社会構造・産業構造が大きく変わり始めるなか、グリーン技術開発や設備投資には巨額の資金が必要となります。政府の試算によると、日本国内だけでも、2030年までに約150兆円の資金需要が発生するといわれています。米国では、インフレ抑制法(通称IRA法)が成立し、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)など気候変動に関連する産業に対して税額控除や補助金を提供し、10年間で3,690億ドルを米国政府が支援する予定です。これに欧州連合(EU)も追随し、グリーンディール産業計画を発表するなど、世界各国がGX(グリーントランスフォーメーション)投資を促進する政策を打ち出しています。
このような莫大な資金需要に応えるためには、官民で資金を出し合うブレンデッドファイナンスが必要不可欠です。当グループはこのような機会を逃すことなく、金融機関としての役割を果たし、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を目指していきます。
<各セクターにおける機会の認識>
(注)1.VPP(バーチャルパワープラント)とは、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供することを指します。
2.需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることを指します。
3.CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、CO2の回収・利用・貯留のことを指します。
4.一般送配電事業者が保有する送配電ネットワークを使用して、工場等に自家用発電設備を保有する需要家が当該発電設備を用いて発電した電気を、別の場所にある当該需要家や当該需要家と密接な関係性を有する者の工場等の需要地に送電する制度を指します。
5.PPA(Power Purchase Agreement)とは、需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を購入する契約を指し、オフサイト・コーポレートPPAとは、需要場所から離れた場所に発電設備を設置し電力小売事業者を経由して需要家に電力供給を行うモデルを指します。
ニ.カーボンニュートラルに向けた移行計画
当グループは、全世界で加速するGHG削減等の社会課題解決に向け、2021年10月にカーボンニュートラル宣言を公表するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて着実に歩みを進めていくために、ネットゼロを目指す銀行間の国際的なイニシアティブであるNZBA(Net-Zero Banking Alliance)に加盟しました。また、グループ会社である三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社は2021年7月、日興アセットマネジメント株式会社は同年11月に、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロを目指す資産運用会社によるグローバルなイニシアティブであるNZAMI(Net-Zero Asset Managers initiative)に加盟し、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロの実現を目指していきます。両社はそれぞれグローバルに資産運用を展開する機関投資家として、投資先企業などのGHG排出量ネットゼロ実現に向けた施策を検討しています。
また、当グループは、2023年10月にカーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しました。信託グループならではの幅広い業務領域をカバーするため、銀行・運用・信託、及び自社グループ(当グループの事業活動に伴うGHG排出)のセグメントごとの特性を踏まえた構成としています。
ガバナンス・基盤の強化を行い、指標・目標を設定するとともに、銀行・運用・信託において、サーベイや専門性・パートナーシップ等の付加価値機能をフル活用し、各ステークホルダーとの対話を通じた経営課題・ニーズの把握や、課題解決に向けた幅広いソリューションを提供していきます。また、自社グループにおいても、エネルギー使用量の削減及び再生可能エネルギーへの転換を促進するとともに、GHG排出量の計測範囲の拡大や、良質なカーボンクレジットの活用検討等に取り組んでいきます。
これらを推進することで、当グループのGHG排出量ネットゼロ達成はもとより、お客さまの脱炭素化に貢献し、脱炭素社会の実現を目指します。移行計画の全体像及び具体的な内容は以下のとおりです。
<カーボンニュートラルに向けた移行計画の全体像>
◆銀行(NZBA)
◆運用(NZAMI)
◆信託
◆自社グループ
(注)2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXヘの挑戦を行い、現在及び未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取り組みを行う企業群と官・学と共に協働する組織です。
なお、当社では、カーボンニュートラルに向けた取組推進のため、以下のガバナンス・基盤を強化していく計画です。
③人的資本にかかる戦略:人事戦略とWell-beingの向上
当グループの掲げるパーパスを実現し、社会課題への取り組みを通じた資金・資産・資本の好循環の促進と市場の創出による成長を図るためには、非財務資本、その中でも人的資本の充実が重要と考えており、当社のマテリアリティにおいては「人的資本」をガバナンス・経営基盤マテリアリティとして特定しています。社員は価値創造の源泉となる重要な資本の一つ(人的資本)であり、社会的価値創出及び経済的価値創出の重要な担い手です。人的資本への投資による社員のWell-beingの向上を通じて、お客さまや社会に対する価値創出が実現し、社会の一人ひとりのWell-being向上に繋がります。その結果として、社会の成長とともに当グループの企業価値も向上し、それが社員一人ひとりの励みや誇り、やりがいといった社員のWell-being向上をもたらす「好循環」を創り上げると考えております。
価値創造の起点となる社員のWell-beingについて、当グループでは「イ.心身ともに健康で、ロ.会社のパーパスに共感しながら、ハ.多様性を認め合う良好な人間関係のもと、ニ.自分の価値や強みを活かして、働く幸せを追求していける状態」と定義し、社員のWell-beingを追求することで人的資本の向上を実現してまいります。
イ.健康経営(心身ともに健康)
当グループでは、社員が健康と幸福を実感し、持続的に能力を発揮することで人的資本の向上を目指しております。そうした心身両面での健康推進を目指した取り組みが評価され、当グループは7年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されております。
(注)プレゼンティーズムとは、出勤しているものの、何らかの健康問題によって業務効率が低下している状態、アブセンティーズムとは、仕事を休業ないし欠勤している状態を指します。
ロ.エンゲージメントの強化(会社のパーパスに共感)
当グループでは、社員が会社のパーパスに共感し、経営課題や社会的使命に取り組むことで、人的資本の向上を目指しております。
(注)1.FINANCIAL WELL-BEINGとは「お金や資産について、不測の事態に対する備えと将来に向けた準備ができて、安心できる状態」を指します。
2.株式交付信託と譲渡制限付株式の利点を組み合わせた社員向け株式報酬制度を指します。
ハ.組織力の強化(多様性を認め合う良好な人間関係)
当グループでは、「個々人の多様性と創造性を経営に生かす」ことを重視しており、多様な属性・背景を有する社員が公正・公平(エクイティ)な支援の下、その多様性と創造性が組織の付加価値となるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの概念そのものを経営理念(ミッション)に掲げ、人的資本の向上を目指しております。
ニ.人材力の強化(自分の価値や強みを発揮)
当グループでは、「人材育成No.1金融グループ」を目標として掲げており、2018年4月に制定した「人材育成方針」に基づき、各社員が未来に向けたありたい姿を自ら考え、実現に向けて自ら行動する「自律的なキャリア型人材」の育成に注力することで、人的資本の向上を目指しております。
①サステナビリティ関連リスク管理方針
当グループは、持続可能な社会の構築に積極的に貢献することが社会的な責任であるとの認識のもと、「三井住友トラスト・グループの社会的責任に関する基本方針(サステナビリティ方針)」を掲げています。当グループの事業活動が環境・社会問題等の持続可能な社会の構築に係る課題等に及ぼす影響への配慮が不十分な場合、結果的に問題の発生や拡大あるいは助長等に関与してしまうおそれがあり、それらは当グループの企業価値を棄損するだけでなく、上記方針の実現を阻害する重要なリスクであると認識しています。
上記のようなサステナビリティに関するリスクを的確に管理すべく、当グループでは「リスク管理規程」に「サステナビリティ関連リスク管理方針」を規定し、基本的な考え方、取締役会・経営会議・役員の役割と責任、3線防衛体制、リスクカテゴリーごとの気候変動を考慮したリスク管理方針等を定めています。
なお、サステナビリティ関連リスクのうち気候変動関連リスクは、当グループのトップリスクとして管理を行っています(トップリスクの定義等は「3 事業等のリスク」をご参照ください)。
②サステナビリティ関連リスク管理に向けた体制整備
当グループでは、2023年4月に三井住友信託銀行株式会社のリスク統括部内にサステナビリティ関連リスクに対応する専門チームを設置し、サステナビリティ関連リスク管理体制の整備・高度化に取り組んでいます。2023年度は、責任ある企業行動に対する社会的要請の高まり等の環境変化を踏まえ、三井住友信託銀行が行う与信業務等の一部業務を対象に、外部データを活用したサステナビリティ関連リスクに係るデューデリジェンス実施等に関するサステナビリティ関連リスク管理の枠組みを導入しました。当該リスク管理の枠組みにて認識したリスクに対しては、リスクに応じたモニタリングや、取引先企業やステークホルダー等とのエンゲージメント(対話)を通じてリスク低減を図っていくことで、サステナビリティ方針に掲げた持続的社会の構築に向けた環境・社会課題の解決等に貢献していきます。
③気候変動関連リスク管理方針
当社では、取締役会の決議により気候変動に関する基本的方針として「気候変動対応行動指針」を策定しています。また、気候変動関連のリスク管理に関しては、「リスク管理規程」の中で「サステナビリティ関連リスク管理方針」を規定し、気候変動関連リスクを含むサステナビリティ関連リスクに関する基本的な考え方、取締役会・経営会議・役員の役割と責任、3線防衛体制、リスクカテゴリーごとの気候変動を考慮したリスク管理方針等を定めています。
「サステナビリティ関連リスク管理方針」において、「気候変動関連リスク」とは、環境分野の重要課題のうち、中長期的気候変動や異常気象により、社会インフラ、自然等が物理的被害を受けたり(物理的リスク)、気候変動関連政策の変更、気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等により低炭素社会への急速な移行が起きたり(移行リスク)することで、当グループ・顧客・市場・金融インフラ・社会が悪影響を受けることと定義しています。その上で気候変動を各リスクカテゴリーに横断的に影響を与える「リスクドライバー」とした上で、各リスクカテゴリーで気候変動固有のリスク管理方針のもと、管理の具体化を進めております。
<気候変動関連リスク管理のための3線防衛体制>
<気候変動固有のリスク管理方針>
(注)短期:1年以内、中期:1年超10年未満、長期:10年以上
④気候変動関連リスク管理に向けた対応
イ.三井住友信託銀行株式会社の与信業務における環境社会(ES)リスク管理
三井住友信託銀行株式会社では、社会への負の影響が大きい与信は禁止、抑制、または慎重な取り組みを行う必要があるとの観点から、「セクターポリシー」を定めて、定期的に投融資審議会で見直しを行い、経営会議に報告しています。また、投融資の取組判断のプロセスにおいて、セクターポリシーに十分留意する運営としています。
ロ.投融資先の気候変動移行リスク管理
三井住友信託銀行では、高炭素セクターごとの投融資ポートフォリオGHG排出量を、パリ協定に沿ったものへコントロールする目的で、投融資ポートフォリオ移行リスク管理態勢を構築しています。
この中で、3線防衛体制における1線、2線の関連各部、チームの役割と責任、セクターポリシーの在り方、1線における与信先の移行リスク管理の実務プロセス(気候変動移行リスクセクターヒートマップを勘案した投融資先の移行リスク区分評価、エンゲージメントを通じたリスク削減に向けた協議、モニタリング等)、2線の牽制の在り方等を定めています。これらのリスク管理プロセスは、セクターごとのGHG排出量削減目標の進捗管理や、風評リスク管理と一体となって実施されます。
(ⅰ)気候変動移行リスクに対する対応方針
全世界でGHG排出量削減に向けた動きが加速する中、当グループは、2021年10月に「三井住友トラスト・グループ カーボンニュートラル宣言」を公表し、投融資ポートフォリオのGHG排出量を、2050年までにネットゼロにすることを目指しています。お客さまと協働し、お客さまの中長期的な気候変動移行リスクによる影響とその対応策について、継続して対話していくことを重視していきます。
(ⅱ)気候変動移行リスク管理に対する考え方
投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロに向けて、気候変動移行リスクセクターヒートマップを基にGHG排出量削減目標を設定する戦略上重要なセクターを特定しています。特定されたセクターについては、GHG排出量削減目標とそのモニタリング・管理、各種基準やセクターポリシーを設定しています。
(ⅲ)気候変動移行リスク管理プロセス
GHG排出量削減目標を設定したセクターについては、新規与信先・既存与信先に関わらず、移行リスクに関するデューデリジェンスを実施した上で、投融資の取組判断を行うこととしています。
特に、与信残高が一定以上となる場合は、リスクの重要性を勘案して、気候変動移行リスクを区分しています。この気候変動移行リスク区分は定期的に見直すとともに、必要に応じて、区分に応じた追加的リスク低減措置を検討します。
⑤人権マネジメント
当グループでは、「人権」尊重の責任を継続的に果たしていくことを「人権方針」において掲げています。事業活動における人権を尊重する責任を果たすべく、人権課題を確認することを目的に、年1回、グループ各社を対象に「人権デューデリジェンスチェックリスト」を送付し、役員・社員、取引先・サプライヤーにおける人権課題の把握、改善策を講じることに努めています。本チェックリストの結果を含め当グループの人権対応状況を把握し、必要な課題の抽出、改善策を協議する場として、「人権デューデリジェンス連絡会」を設置しています。本連絡会の審議を通じて、人権啓発研修の内容見直し等の具体的取組に反映させています。
(4)指標及び目標
①気候変動関連の主な指標及び目標
当グループでは、気候変動に係る当グループの戦略とリスク管理の基本方針に基づき管理する具体的指標及び目標を設定し、グループにおける気候変動対応の状況をモニタリングしています。今年度における主な指標及び目標は下表のとおりです。なお、当グループは指標の状況を定期的に確認し、外部環境の変化や戦略の見直しに伴い、指標の見直しを行っております。
(注)1.投融資ポートフォリオについては、セクターごとに以下の中間削減目標を設定しており、実績は記載のとおりです。
(注)2.自社グループのGHG排出量については、2022年度の実績でScope1(直接排出)とScope2(間接排出)合計で9,997t-CO2eとなり、前年度と比較して約57%削減しました。また、GHGプロトコルに準拠した計測・集計を行い、三井住友信託銀行単体(Scope1,2)の一部について、初めて第三者保証を取得しました。今後、利用データの質的・量的な充実や、計測手法の改善を通じた分析精度の向上に努めます。
(注)3.運用ポートフォリオについては、各社ごとに以下の中間削減目標を設定しており、実績は記載のとおりです。
(注)4.2021年6月末時点の運用資産85兆円の50%にあたる約43兆円が対象
5.目標は「2019年比半減」であるが、2021年6月時点のポートフォリオに対して、2019 年の排出データを使用して算出したため、進捗実績値を「2021年6月比」と表記
6.2021年12月末時点の運用資産31兆円の43%にあたる約13兆円が対象
②人的資本関連の主な指標及び目標
当グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。なお、施策の浸透とともに各種指標は上昇しております。
備考欄に「※1」のあるものは当グループ全体、その他は三井住友信託銀行株式会社のデータ、「※2」のあるものは当事業年度から新たに情報公表を開始したデータであります。
(*1)ストレスチェック実施先の増加により2022年度までは関係会社17社、2023年度は関連会社18社の結果の単純平均としています。
(*2)設問「自分自身の思考や行動に影響を与えている」についての、関連会社のスコアの平均であります。2022年度以前は社員意識調査を実施した関連会社17社の単純平均であり、2023年度は、所属従業員が少ない会社のスコアへの影響を排除するため、社員意識調査を実施した関係会社のうち従業員数50人以上の関係会社15社の単純平均としています。
(*3)設問「あなたは、この会社で働いていることに、満足している」についてのスコアであります。
(*4)設問「自分の仕事に対して誇りを持っている」等、関連する10の設問についてのスコアの平均値であります。
(*5)各年度中に育休を取得した男性労働者の数を、各年度中に配偶者が出産した男性労働者の数で割った比率であり、100%を超える水準となっております。
(*6)2022年度より集計開始しており、2021年度の実績数値はありません。
(*7)新中期経営計画(2023-2025年度)にあわせて新たに設定した指標であり、2021年度、2022年度の実績数値はありません。
加えて、更なる人的資本の向上に向けた主なKPIとして、次のとおり目標を設定しております。
備考欄に「※」のあるものは当グループ全体、その他は三井住友信託銀行株式会社のデータであります。
(*1)ストレスチェック実施先の増加により2022年度までは関係会社17社、2023年度は関係会社18社の結果の単純平均としています。
(*2)設問「自分自身の思考や行動に影響を与えている」についての、関係会社のスコアの平均であります。2022年度以前は社員意識調査を実施した関係会社17社の単純平均であり、2023年度は、所属従業員が少ない会社のスコアへの影響を排除するため、社員意識調査を実施した関係会社のうち従業員数50人以上の関係会社15社の単純平均としています。
(*3)設問「自分の仕事に対して誇りを持っている」等、関連する10の設問についてのスコアの平均値であります。
(*4)2023年度にて2025年度の目標であった92の水準を達成しており、今後は90を維持すべく2025年度の目標を90へと引き下げております。
当グループでは、フォワードルッキングな視点で、1年以内に当グループの事業執行能力や業績目標に重大な影響をもたらす可能性があると考えているリスクをトップリスク、中長期的に重大な影響をもたらす可能性があると考えているリスクをエマージングリスクとして、経営者が定期的に選定のうえ、リスクの状況をモニタリング、コントロールしながら、対応策を講じ、取締役会等への報告を行っております。以下の記載における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当グループが判断したものです。
<トップリスク及びエマージングリスクの(リスク認識)の表記について>
当グループでは、管理すべき重要なリスクについて、それぞれの「発生可能性」と「影響度」で評価したリスクマップを作成し、定期的に取締役会等に報告しております。当グループのリスク認識として、各トップリスク及びエマージングリスクのリスクマップにおける位置を色と番号で示しています。
イ.トップリスクとリスク対応策
ロ.エマージングリスクとリスク対応策
(2) その他のリスク
トップリスク及びエマージングリスク以外の主要なリスクには以下のものがあります。
イ.事業面に関するリスク
当グループは収益力強化の観点から様々な事業戦略を展開しておりますが、以下の要因により当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
(ⅰ) 経済環境・市場環境・企業業績の悪化、同業他社との競争激化等の外部要因の変化等によって、事業戦略が奏功せず、当初想定した成果を生まない可能性があります。
(ⅱ) 当グループは、顧客サービスの向上、コスト競争力の強化等を目的として、他社との提携や合弁等を通じて、効率的なグループ経営を行うことにより、当グループとしての中長期的な収益力強化を図っておりますが、他社との提携や合弁等に伴うコスト、採用する事業・再編戦略や会計方針、事業環境の変化、その他の外部要因等により、期待通りのサービス提供や成果を確保できない可能性があります。また、このような提携や合弁等には、当グループと相手先との利益相反や意見対立、提携や合弁等の解消等様々なリスクがあります。
(ⅲ) 当グループの業務範囲の拡大、金融サービスや管理システムの高度化に伴って、当グループが従来経験のない、もしくは予想されなかったリスクあるいはより複雑なリスクに晒される可能性があります。
当グループは、企業価値の向上を目的として、企業買収、出資、資本提携、子会社の設立等を行っており、今後も同様の企業買収等を行う可能性があります。しかし、これら企業買収等は、法制度の変更、競争環境の変化等により、想定通りの効果が得られない可能性があります。また、企業の財務内容や契約関係等の事前調査を十分に行っておりますが、買収後に未認識の偶発債務が発生した場合や、当該子会社等の利益が、期待した水準を大幅に下回った場合には、子会社株式及びのれんについて、相当の減額を行う必要が生じる可能性があります。これらにより、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
当グループは、グループ会社間の連携により、顧客基盤の拡大やソリューション提供力の強化等による連結収益の拡大に取り組むとともに、経費削減等を通じた効率性の向上に努めております。当グループがグループ内の連携による収益効果を得られるかどうかについては、将来の事業環境の変化による不確実性を伴うものであり、子会社・関連会社の事業又は経営の悪化により、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
④ 信託事業に関するリスク
当グループは、取引先に提供する信託商品のうち一部の合同運用指定金銭信託について、元本補填契約を結んでおります。信託勘定には債権償却準備金を計上しておりますが、これを充当しても元本に損失が生じた場合には、その補填のための支払を行う可能性があります。また、元本補填契約のない信託商品についても、信託事業を遂行する上で、受託者としての責任において負担すべき債務・費用が発生する可能性があります。
また、資産運用業務において、運用成績が市場のベンチマークや他社の運用商品に劣る結果となった場合には、委託者が運用を委託している資金を引き揚げる可能性があり、当グループの業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑤ 規制・制度の変更に関するリスク
当グループは、事業活動を行う上で、様々な法律、規則、政策、実務慣行、会計制度及び税制の法令諸規制等の影響を受けております。これらの法令諸規制等は将来において新設・変更・廃止される可能性があり、その内容によっては、商品・サービスの提供が制限される、新たなリスク管理手法の導入その他の体制整備が必要となる等により、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
① 事務リスク
当グループは、内部規定及び事務処理体制の整備、事務処理状況の定期的な点検、本部の事務指導等によって、適正な事務の遂行に努めておりますが、役員・社員・外部委託先要員が事務処理の過誤や不正等を起こした場合、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
② 外部委託に関するリスク
当グループは、様々な業務の外部委託を行っております。外部委託を行うにあたっては委託先の適格性や委託内容、形態を含め十分な検討を行っておりますが、委託先の選択が不適切であった場合、委託先において重大な事務過誤等が発生した場合等には、当グループにおいても間接的・直接的に悪影響を受ける可能性があり、これにより、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
③ システムに関するリスク
当グループは、様々な業務を遂行するため多様なシステムを活用しております。システムに関しては十分なリスク管理体制を構築しておりますが、コンピュータシステムのダウンや誤作動、システムの不備、さらにコンピュータの不正使用等により、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。
④ 新技術リスク
情報通信技術の変化の勢いは加速し続け、お客さまの行動に影響を与えており、当グループは、従来のビジネスモデルを再定義する場合がございます。クラウドコンピューティングやブロックチェーン、人工知能等の新技術は、大きな機会を提供するだけでなく、慎重に管理する必要がある新しいリスクを生み出しております。当グループは、これら新技術に関しては慎重に管理するようにしておりますが、誤作動や不備等により、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑤ 情報セキュリティリスク
当グループは、内部規定及び情報管理体制の整備や社内教育の徹底等によって、顧客情報や社内機密情報の漏洩への対策を講じておりますが、役員・社員・外部委託先要員の不注意や不正行為等により顧客情報や社内機密情報が外部に漏洩した場合、当グループが行政処分や損害賠償等の請求を受ける可能性があり、これにより、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑥ 人材に関するリスク
当グループは、幅広い分野で高度な専門性を必要とする業務を行っており、有能な人材の確保・育成に努めておりますが、必要な人材を確保・育成することができない場合には、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑦ コンダクトに関するリスク
当グループ各社・役員又は社員の行為が、職業倫理に反していること、又はステークホルダーの期待と信頼(※)に応えていないことにより、当グループ・顧客・市場・金融インフラ・社会及び職場環境に対し悪影響を与える可能性があります。
(※)合理的な期待水準を把握のうえ当グループとして設定する適切なサービスレベル
⑧ 人的リスク
人事運営上の不公平・不公正(報酬・手当・解雇等の問題)、人権問題(ハラスメントを含む)等が発生した場合、当グループの業務運営や業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑨ 災害等の発生に伴うリスク
当グループは国内外の営業拠点や本部、システムセンター等の業務施設において事業活動を行っており、これら施設等や、その他当グループが保有する有形資産(動産・不動産・設備・備品等)及び従事する役員及び社員は、地震、風水害、火災、爆発、停電、戦争、犯罪・テロ、資産管理の瑕疵、あるいは新型インフルエンザ等の感染症等による被害を受ける可能性があります。こうした事態が発生した場合、その被害の程度によっては、当グループの業務の全部又は一部の継続が困難になる等、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑩ 風評リスク
当グループや金融業界一般に対して否定的な内容の報道がなされたり、インターネット等の情報媒体において、否定的な内容の風評・風説が流布したりすることがあります。その内容が正確か否かにかかわらず、こうした報道・風評・風説により、金融業界一般又は当グループのイメージや株価に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑪ 環境・社会的リスク
当グループは、「三井住友トラスト・グループの社会的責任に関する基本方針(サステナビリティ方針)」を掲げ、持続可能な社会の構築に積極的に貢献することが社会的な責任であると認識しています。しかしながら、当グループの事業活動が環境・社会問題に及ぼす影響に対する配慮が不十分である場合、直接的・間接的の如何に関わらず、結果的に問題の発生や拡大、あるいは助長等に関与してしまうおそれがあり、引いては信用リスク等の財務面に関するリスクや当社風評等に影響が及ぶ可能性があります。
⑫ モデルリスク
当グループは、業務遂行上さまざまなモデル(※)を使用しています。モデルには唯一の正解は存在せず、一定の仮定や単純化を含むことにより、不正確なアウトプットを出力するリスクがあります。また、モデルに根本的な誤りがなくても、適切に使用されないことによって、誤った意思決定につながるリスクがあります。当グループではこれらのモデルリスクを認識し、モデルの開発、使用、変更、廃止等の各プロセスにわたり、モデルリスクを管理していますが、モデルの不確実性を完全に排除することはできず、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
(※)インプット、加工処理プロセス、アウトプットの3つの要素から構成されるものであり、理論や仮定に基づきインプットデータを処理し、アウトプット(推定値、予測値、スコア、分類等)を出力するもの
⑬ リスク管理の方針及び手続が有効に機能しないリスク
当グループは、リスク管理の方針及び手続の強化に努めております。しかしながら、新しい分野への業務進出や急速な業務展開、又は外部環境の変化により、リスクを特定・管理するための方針及び手続が有効に機能しない可能性があります。また、当グループのリスク管理の方針及び手続の一部は、過去の経験・データに基づいて構築されたものもあること、将来のリスクの顕在化を正確に予測し対処することには限界があることもあり、有効に機能しない可能性があります。こうした当グループのリスク管理の方針及び手続が有効に機能しない場合には、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
① 信用リスク
(ⅰ) 不良債権の状況
国内外の景気動向、不動産・株式市場を含む金融経済環境の変化及び貸出先の経営状況等により、当グループの不良債権残高や与信関係費用が増加する可能性があります。
(ⅱ) 貸倒引当金
当グループは、貸出先の状況、差入れられた担保の価値及び経済全体に関する前提・見積りに基づいて貸倒引当金を計上しております。従って、実際の貸倒費用が貸倒引当金計上時点における見積りと乖離する可能性があります。また、経済情勢全般の悪化、貸出先の信用状況の変化、担保価値の下落その他予期せざる理由により、貸倒引当金の積み増しが必要となる可能性があります。
(ⅲ) 貸出先への金融支援
当グループは、貸出債権等の回収実効性を確保することを目的として、貸出先に債務不履行等が生じた場合においても、債権者として有する法的な権利を必ずしも行使せず、状況に応じて債権放棄や追加貸出等の金融支援を行うことがあります。このような場合には、不良債権残高や与信関係費用が増加する可能性があります。
(ⅳ) 他の金融機関の動向による影響
急速な貸出金回収や取組方針の変更等、他の金融機関の動向によっては、当該貸出先の経営状態が悪化する可能性や追加融資を求められる可能性があります。このような場合には、不良債権残高や与信関係費用が増加する可能性があります。
② 市場リスク
当グループは、バンキング業務又はトレーディング業務として、債券、株式、デリバティブ商品等の多種の金融商品に対し投資活動を行っております。これらの活動による損益は、金利、外国為替、債券及び株式市場の変動等のリスクに晒されており、その結果、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
③ 退職給付債務に関するリスク
当グループの年金資産の価値の下落や退職給付債務の計算の前提となる期待運用利回りの低下等の数理上の仮定に変化があった場合、当グループの未積立退職給付債務が変動する可能性があります。また、金利環境の変化等によって未積立退職給付債務や退職給付費用に悪影響が及ぶ可能性、年金制度の変更によって未認識の過去勤務費用が発生する可能性及び会計基準の変更によって財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
④ 繰延税金資産に関するリスク
繰延税金資産は将来の課税所得の見積額等に基づき計上されております。経営環境の変化等に伴う課税所得の見積額の変更等によって繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑤ 自己資本比率等に関するリスク
当グループには、銀行法に定める自己資本比率等に関する規制が適用されるため、自己資本比率やレバレッジ比率等の規制比率を所要水準以上に維持する必要があります。
当グループの自己資本比率やレバレッジ比率等が、要求される水準を満たすことができなかった場合には、その水準に応じて、金融庁から経営改善計画の提出や業務の全部又は一部の停止を含む様々な命令を受けることとなり、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑥ 資金繰りリスク
当グループの財務状況や業績の悪化、当グループに対する悪い風評、経済環境の悪化、市場の流動性の低下等によって、当グループの資金調達コストが上昇したり、資金調達が制限されたりする可能性があります。その結果、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑦ 格付低下のリスク
格付機関が格付を引き下げた場合には、当グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される可能性があります。また、当グループのデリバティブ取引に関して追加担保を要求される、既存の顧客取引が解約される等の事態が発生する可能性もあります。このような場合には、当グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
⑧ ALMに関するリスク
当グループは、バランスシートに内包された上記「②市場リスク」や「⑥資金繰りリスク」等を適切にコントロールする目的で、資産及び負債の総合管理(ALM)を行っています。
国内の金融政策転換等の環境変化により、特に金利上昇局面では、当社が保有する金融資産価値の変動、資金調達費用の増加、顧客の投資行動の変化等が想定されます。その結果、従来よりもALM運営の難易度は上昇しており、当グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
(3) リスクガバナンス体制
当グループは、グループ全体のリスクガバナンス体制として、各事業によるリスク管理(ファーストライン・ディフェンス)、リスク統括部及びリスク管理各部によるリスク管理(セカンドライン・ディフェンス)、内部監査部による監査(サードライン・ディフェンス)の三線防御体制(スリーラインズ・オブ・ディフェンス)を構築しております。
(4) リスク管理のプロセス
当グループでは、リスク統括部及びリスク管理各部がセカンドラインとして、以下の手順でリスク管理を行っております。また、このリスク管理プロセスについては、関連するシステムを含め、サードラインの内部監査部により定期的に監査されております。
イ.リスクの特定
当グループの業務範囲の網羅性も確保した上で、直面するリスクを網羅的に洗い出し、洗い出したリスクの規模・特性を踏まえ、管理対象とするリスクを特定しております。この中で、特に重要なリスクを「重要リスク」として管理しております。
ロ.リスクの評価
管理対象として特定したリスクについて、グループ各事業の規模・特性及びリスクプロファイルに見合った適切なリスクの分析・評価・計測を行っております。「重要リスク」については、定期的に、「発生頻度」「影響度」及び「重要度」を評価し、トップリスクやエマージングリスクなどに該当するかどうかの判断を行っております。
ハ.リスクのモニタリング
当グループの内部環境(リスクプロファイル、配分資本の使用状況など)や外部環境(経済、市場など)の状況に照らし、KRI等の指標を設定した上で、リスクの状況を適切な頻度でモニタリングし、状況に応じ、グループ各事業に対して勧告・指導又は助言を行っております。モニタリングした内容は、定期的に又は必要に応じて取締役会、経営会議などへ報告・提言しております。
ニ.リスクのコントロール及び削減
リスク量がリスクアペタイトの許容レンジやリスク限度枠を超過したとき、もしくは超過が懸念されるなど、経営の健全性に重大な影響を及ぼす事象が生じた場合には、取締役会、経営会議などに対して適切に報告を行い、リスクの重要度に応じ、必要な対応策を講じております。
当連結会計年度における当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、以下のとおりであります。
(経営成績の状況)
当連結会計年度の実質業務純益は、法人与信関連手数料を中心とした手数料収益の増益に加え、株高・円安などの市況要因も追い風となり、前年度比140億円増益の3,386億円となりました。
経常利益は、政策保有株式の削減活動を加速する一方で、株価の変動が期間損益に与えるリスクを大幅に縮減することを目的として、日本株ベア型の投資信託(※)のポジション縮小・再構築を実施したことに伴い株式等関係損益が悪化したことを主因に、前年度比1,845億円減益の1,013億円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度比1,118億円減益の791億円となりました。なお、日本株ベア型の投資信託の売却損計上は評価損から実現損への振替であり、資本十分性に懸念はありません。
(※)政策保有株式の株価変動リスクに対するヘッジを目的に保有
(資産負債等の状況)
当連結会計年度の連結総資産は、前年度末比6兆8,541億円増加し75兆8,769億円、連結純資産は、同3,151億円増加し3兆1,376億円となりました。
主な勘定残高といたしましては、現金預け金は、前年度末比1兆2,291億円増加し22兆8,316億円、貸出金は、同1兆6,099億円増加し33兆4,209億円、有価証券は、同3兆58億円増加し9兆9,389億円、また、預金は、同2兆309億円増加し37兆4,182億円となりました。当グループの連結貸借対照表は現金預け金、貸出金及び有価証券等の与信、預金等の受信ともに円貨が中心となっておりますが、全通貨ベースでの運用・調達の安定性のバランス確保はもちろん、外貨につきましても顧客性の預金やスワップ市場等を利用した円投取引、社債発行などにより調達構造の多様化・安定化を図る方針としております。当グループの資金調達(社債及び借用金)の状況につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑤連結附属明細表」に記載しております。
なお、当連結会計年度の信託財産額は、前年度末比1兆2,410億円増加し257兆4,668億円となりました。
(キャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは4兆2,945億円の収入(前年度比1兆6,783億円の収入増加)、投資活動によるキャッシュ・フローは2兆5,841億円の支出(同3兆5,444億円の支出増加)、財務活動によるキャッシュ・フローは857億円の支出(同1,317億円の支出減少)となり、現金及び現金同等物の期末残高は20兆8,378億円となりました。
信託報酬は1,162億円、資金運用収支は△1,203億円、役務取引等収支は3,382億円、特定取引収支は759億円、その他業務収支は3,864億円となりました。
うち、国内の信託報酬は1,162億円、資金運用収支は2,008億円、役務取引等収支は3,378億円、特定取引収支は733億円、その他業務収支は1,163億円となりました。
また、海外の資金運用収支は△1,837億円、役務取引等収支は606億円、特定取引収支は25億円、その他業務収支は2,698億円となりました。
(注)1.「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内に本店を有する連結子会社(以下、「国内連結子会社」という。)であります。
「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外に本店を有する連結子会社(以下、「海外連結子会社」という。)であります。
2.相殺消去額は、連結会社間の内部取引相殺消去額及び国内店・海外店間の本支店取引相殺消去額を表示しております。
3.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)を控除しております。
資金運用勘定の平均残高は64兆5,846億円、利息は1兆89億円、利回りは1.56%となりました。
資金調達勘定の平均残高は64兆4,516億円、利息は1兆1,293億円、利回りは1.75%となりました。
うち、国内の資金運用勘定の平均残高は52兆7,303億円、利回りは1.27%となり、資金調達勘定の平均残高は51兆1,056億円、利回りは0.91%となりました。
また、海外の資金運用勘定の平均残高は16兆1,188億円、利回りは3.88%となり、資金調達勘定の平均残高は16兆1,005億円、利回りは5.02%となりました。
イ.国内
(注)1. 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、一部の国内連結子会社については、半年毎の残高に基づく平均残高を利用しております。
2. 「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内連結子会社であります。
3. 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度566,634百万円、当連結会計年度583,248百万円)を、資金調達勘定は、金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度99百万円、当連結会計年度99百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)をそれぞれ控除しております。
ロ.海外
(注)1. 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、海外連結子会社については、半年毎の残高に基づく平均残高を利用しております。
2. 「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外連結子会社であります。
3. 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度88,066百万円、当連結会計年度84,849百万円)を控除しております。
ハ.合計
(注)1. 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、一部の連結子会社については、半年毎の残高に基づく平均残高を利用しております。
2. 相殺消去額は、「平均残高」については連結会社間の債権債務の相殺金額の平均残高を、「利息」については連結会社間の内部取引相殺消去額及び国内店・海外店間の本支店取引相殺消去額を表示しております。
3. 資金運用勘定は、無利息預け金の平均残高(前連結会計年度586,311百万円、当連結会計年度592,686百万円)を、資金調達勘定は、金銭の信託運用見合額の平均残高(前連結会計年度99百万円、当連結会計年度99百万円)及び利息(前連結会計年度0百万円、当連結会計年度0百万円)をそれぞれ控除しております。
役務取引等収益は4,674億円、役務取引等費用は1,291億円となりました。
うち、国内の役務取引等収益は5,111億円、役務取引等費用は1,733億円となりました。
また、海外の役務取引等収益は727億円、役務取引等費用は121億円となりました。
(注)1.「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.相殺消去額は、連結会社間の内部取引相殺消去額及び国内店・海外店間の本支店取引相殺消去額を表示しております。
特定取引収益は777億円、特定取引費用は18億円となりました。
うち、国内の特定取引収益は751億円、特定取引費用は18億円となりました。
また、海外の特定取引収益は26億円、特定取引費用は0億円となりました。
(注)1.「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.相殺消去額は、連結会社間の内部取引相殺消去額及び国内店・海外店間の本支店取引相殺消去額を表示しております。
3.特定取引収益及び費用は、国内・海外の合計で内訳科目ごとの収益と費用を相殺した純額を計上しております。
特定取引資産は2兆157億円、特定取引負債は1兆7,673億円となりました。
うち、国内の特定取引資産は2兆241億円、特定取引負債は1兆6,733億円となりました。
また、海外の特定取引資産は1,078億円、特定取引負債は939億円となりました。
(注)1.「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.相殺消去額は、連結会社間の内部取引相殺消去額及び国内店・海外店間の本支店取引相殺消去額を表示しております。
信託財産額は、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づき信託業務を営む連結子会社の信託財産額であります。なお、連結子会社のうち、該当する信託業務を営む会社は三井住友信託銀行株式会社であります。
(注)1.上記残高表には、金銭評価の困難な信託を除いております。
2.「信託受益権」に含まれる資産管理を目的として再信託を行っている金額
前連結会計年度末 186,860,561百万円
当連結会計年度末 184,859,226百万円
3.共同信託他社管理財産 前連結会計年度末 191,886百万円
当連結会計年度末 191,907百万円
金銭信託
(注)1.信託財産の運用のため再信託された信託を含みます。
2.リスク管理債権の状況
※社債(当該社債を有する信託業務を営む金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部に
ついて保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法第2条第3項に規定する有価証券
の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、未収利息、仮払金、支払承諾見返及び有価証券の貸
付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)をいう。
(参考)
資産の査定は、貸出金等の各勘定について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
1.破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2.危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3.要管理債権
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4.正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
(億円・四捨五入)
○ 預金の種類別残高(末残)
(注)1.「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外連結子会社であります。
2.相殺消去額は、連結会社間の内部取引相殺消去額を表示しております。
3.預金の区分は次のとおりであります。
① 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
② 定期性預金=定期預金
○ 業種別貸出状況(末残・構成比)
(注)「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外連結子会社であります。
○ 外国政府等向け債権残高(国別)
該当ありません。
(注)「外国政府等」とは、外国政府、中央銀行、政府関係機関又は国営企業及びこれらの所在する国の民間企業等であり、日本公認会計士協会銀行等監査特別委員会報告第4号に規定する特定海外債権引当勘定を計上している国の外国政府等の債権残高を掲げております。
○ 有価証券残高(末残)
(注)1. 「国内」とは、当社、三井住友信託銀行株式会社(海外店を除く。)及び国内連結子会社であります。
「海外」とは、三井住友信託銀行株式会社の海外店及び海外連結子会社であります。
2. 相殺消去額は、連結会社間の資本連結等に伴う相殺消去額を表示しております。
3. 「その他の証券」には、外国債券及び外国株式を含んでおります。
(参考)
自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国際統一基準を適用のうえ、信用リスクアセットの算出においては先進的内部格付手法及び基礎的内部格付手法、マーケット・リスク相当額の算出においては標準的方式を採用しております。
また、自己資本比率の補完的指標であるレバレッジ比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準(平成31年金融庁告示第12号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
(単位:億円、%)
(単位:%)
(注)詳細は、当社ウェブサイト(https://www.smth.jp/investors/report/basel)に記載しております。
(生産、受注及び販売の状況)
「生産、受注及び販売の状況」は、銀行持株会社における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、2024年5月時点において判断したものであります。
① 当連結会計年度総括
実質業務純益は、好調な手数料収益と株高・円安など市況要因が牽引し、前年度比140億円増益の3,386億円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、実質業務純益が増加した一方で、日本株ベア型の投資信託のポジション縮小・再構築を実施したことに伴い株式等関係損益が悪化したことを主因に前年度比1,118億円減少し、791億円となりました。
(主なKPI)
(実質業務純益及び親会社株主純利益の増減)
② 経営成績の分析
イ.実質業務純益
資金関連利益については、前年度に計上した債券ベア投信解約益の剥落及び調達コスト増加を主因に、前年度比2,326億円減少し、845億円の損失計上となりました。外貨余資運用益を加えた実質的な資金関連の損益は同106億円減少し、2,899億円となりました。
手数料関連利益については、法人与信関連手数料が好調に推移したことを主因に、前年度比295億円増加し、4,788億円となりました。
総経費は、円安に伴う増加はあったものの、計画に沿った人的資本投資や粗利連動経費の増加を主因として、前年度比459億円増加し、5,354億円となりました。
上記に所要の調整を加えて計算した、いわゆる実勢ベースの利益を表す実質業務純益は前年度比140億円増加し、3,386億円となりました。
ロ.与信関係費用
与信関係費用は、貸出金償却の減少を主因に前年度比14億円減少し、118億円の損失計上となりました。
ハ.株式等関係損益
株式等関係損益は、政策保有株式の削減活動の加速等により売却益1,085億円を計上した一方で、日本株ベア型の投資信託(※)のポジション縮小・再構築に伴う実現損2,981億円の計上等により、1,885億円の損失計上となりました。
(※)政策保有株式の株価変動リスクに対するヘッジを目的に保有
ニ.特別損益
特別損益は、前年度に計上した海外業務関連システムの更改に伴う特別損失の反動減等により、前年度比111億円改善し、33億円の損失計上となりました。
③ セグメント別損益の内容
(注)1.「運用ビジネス」は、連結子会社である三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社(連結)、日興アセットマネジメント株式会社(連結)及び資産運用業務を行う持分法適用関連会社2社の合計であります。
2.金額が損失又は減益の項目には△を付しております。
報告セグメントごとの実質業務純益の主な増減要因は次のとおりであります。
(個人事業)
経費が増加した一方、時価上昇を主因とした投資運用コンサルティング関連手数料の増益により、三井住友信託銀行(単体)の実質業務純益は前年度並みの213億円となりました。また、連結子会社においても経費が増加したことから、連結の実質業務純益は前年度比13億円減益の401億円となりました。
(法人事業)
与信関連手数料が好調に推移したことを主因に、実質業務純益は三井住友信託銀行(単体)では前年度比195億円増益の1,307億円、連結では同221億円増益の1,629億円となりました。
(投資家事業)
時価上昇を主因とした資産運用・資産管理関連手数料の増加や、米国の金利上昇の影響を受けた海外の資産管理子会社の増益を主因とし、実質業務純益は三井住友信託銀行(単体)では前年度比14億円増益の445億円、連結では50億円増益の627億円となりました。
(不動産事業)
個人向け仲介を取り扱う三井住友トラスト不動産が引き続き堅調を維持したものの、三井住友信託銀行の法人向け仲介において大口案件の成約実績が前年度を下回ったことから、実質業務純益は三井住友信託銀行(単体)では前年度比66億円減益の273億円、連結では同64億円減益の356億円となりました。
(マーケット事業)
米国の金利上昇影響によるALM業務の軟調および経費増等を主因に、実質業務純益は前年度比78億円減益の463億円となりました。
(運用ビジネス)
手数料収益は堅調に推移しているものの、経費の増加等により、実質業務純益は前年度比42億円減益の179億円となりました。
④ 損益の内容(参考情報)
(注)1.業務粗利益=信託報酬+(資金運用収益-資金調達費用)+(役務取引等収益-役務取引等費用)+(特定取引収益-特定取引費用)+(その他業務収益-その他業務費用)
2.実質業務純益は実質業務粗利益から総経費を除いたものであります(実質業務粗利益及び総経費は持分法適用会社の損益等も考慮した社内管理ベースの計数)。なお、実質業務粗利益と業務粗利益の差額及び総経費と経費の差額は主に持分法適用会社の経常利益(臨時要因調整後)×持分割合等であります。
3.金額が損失又は減益の項目には△を付しております。
⑤ 財政状態の分析
イ.貸出金
銀行勘定の貸出金は、前年度末比1兆6,099億円増加し、33兆4,209億円となりました。また、信託勘定(元本補填契約のある信託)の貸出金は、同23億円減少し、81億円となり、銀行勘定との合計では同1兆6,076億円増加し、33兆4,290億円となりました。なお、三井住友信託銀行株式会社(単体・国内店)の中小企業等貸出金残高は、同4,466億円増加し、18兆4,260億円となり、住宅ロ-ン残高は、同712億円減少し、10兆3,902億円となりました。
(三井住友信託銀行株式会社単体・国内店)
(注)1.銀行勘定・元本補填契約のある信託勘定合計の計数であります。
2.特別国際金融取引勘定分を除いております。
銀行法及び再生法に基づく債権について、銀行勘定は、前年度末比355億円減少し1,164億円となり、債権残高に対する比率は、同0.12%低下し0.33%となりました。債権区分別では、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が同0億円、危険債権が同391億円、貸出条件緩和債権が同69億円の減少、三月以上延滞債権が同106億円の増加となりました。
また、信託勘定(元本補填契約のある信託)においては、前年度末比0億円減少し0億円となり、債権残高に対する比率は、同0.10%低下し0.57%となりました。債権区分別では、危険債権が同0億円、貸出条件緩和債権が同0億円の減少となりました。
○銀行法及び再生法に基づく債権の状況(部分直接償却実施後)
(参考)金融再生法開示債権の状況等(三井住友信託銀行株式会社単体)
金融再生法開示債権は、銀行勘定・信託勘定(元本補填契約のある信託)合算で前年度末比365億円減少し、977億円となりました。また、開示債権比率(総与信に占める割合)は、同0.1%低下し、0.3%となりました。
債権区分別では、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が前年度末比3億円の増加、危険債権が同414億円の減少、要管理債権が同46億円の増加となりました。
銀行勘定の債務者区分ごとの引当率につきましては、要管理先債権の非保全部分に対する引当率は19.8%、その他要注意先債権の債権額に対する引当率は2.4%となりました。
○ 金融再生法に基づく資産区分の状況(三井住友信託銀行株式会社単体・部分直接償却実施後)
(億円・四捨五入)
(注)( )内は前事業年度の計数であります。
(注)( )内は前事業年度の計数であります。
○ 債務者区分ごとの引当額と引当率の状況(三井住友信託銀行株式会社単体・銀行勘定)
ロ.有価証券
有価証券は、国債の増加等により、前年度末比3兆58億円増加し、9兆9,389億円となりました。
保有上場株式につきましては、「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律」における保有規制の対象となる取得原価ベースでの金額は、前年度末比518億円減少し、4,435億円となりました。
(注)その他には、外国債券及び外国株式を含んでおります。
○ 保有上場株式の残高
ハ.繰延税金資産
繰延税金資産・繰延税金負債の純額は、その他有価証券評価差額金にかかる繰延税金負債の増加等により、前年度末比1,391億円減少し、1,940億円の繰延税金負債の計上となりました。
ニ.預金
預金は、前年度末比2兆309億円増加し、37兆4,182億円となりました。
(注)預金は、譲渡性預金を除いております。
(三井住友信託銀行株式会社単体・国内店)
(注)1.「その他」は、公金、金融機関であります。
2.預金は、譲渡性預金及び特別国際金融取引勘定分を除いております。
ホ.純資産の部
純資産の部合計は、その他有価証券評価差額金の増加等により、前年度末比3,151億円増加し、3兆1,376億円となりました。
⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
⑦ 連結自己資本比率(国際統一基準)
当社は、信用リスクについては「先進的内部格付手法及び基礎的内部格付手法(注1)」、マーケット・リスクは「標準的方式」を採用しております。
当連結会計年度末の「普通株式等Tier1比率」は11.35%、「Tier1比率」は12.55%、「総自己資本比率」は13.64%と、いずれも規制上の所要水準の7.55%、9.05%並びに11.05%(注2)を上回っております。
(注1)保有する資産のうち、重要性の低いもの等は「標準的手法」を適用しております。
(注2)各比率の所要水準に資本保全バッファー、カウンター・シクリカル・バッファー及び国内の金融システム上重要な銀行に対する追加的な資本賦課を勘案・加算したものであります。
(注)連結自己資本比率については、銀行法第52条の25の規定に基づく平成18年金融庁告示第20号に定められた算式により算出しております。
⑧ キャッシュ・フローの状況
「(1)経営成績等の状況の概要(キャッシュ・フローの状況)」に記載しております。
⑨ 資本の十分性、資本政策等について
イ.経営方針・経営戦略の遂行にあたっての資本の十分性について
当グループは、資金・資産・資本の好循環の実現と企業価値の向上を経営テーマとして掲げる中、財務面では、2030年までのありたい姿として「普通株式等Tier1比率」(バーゼルⅢ最終化完全実施ベース)について、安定的に10%以上確保することを十分性の目線としております。
中期経営計画においては、2025年度までに「普通株式等Tier1比率」(バーゼルⅢ最終化完全実施ベース)9.5~10%程度とすることを目標としております。2024年3月末時点においては、前年比0.6%上昇の10.2%程度となっております。これは、円安進行に伴い外貨建てリスクアセットが増加した一方で、利益蓄積や株価上昇に伴う評価損益の改善により普通株式等Tier1資本が増加したことが背景です。今後の環境変化に注意しつつ、信託グループらしいビジネスの成長と資本効率の向上を図り、規律をもって資本政策運営をしてまいります。
ロ.成長投資、手元資金、株主還元のバランス並びに資本コストに関する経営者の考え方について
当グループは、ステークホルダー資本戦略として、「普通株式等Tier1比率」(バーゼルⅢ最終化完全実施ベース)水準に応じた資本運営のプリンシプルを基本に、成長投資、株主還元、人的資本投資等、各ステークホルダーに対して規律ある投資・分配を実施していきます。規律に基づく資本運営により、イノベーションを生み出す源泉である当グループの多彩な事業の横断・融合力を一層高め、事業ポートフォリオ強化を進めてまいります。
中期経営計画における株主還元方針については、一株当たり配当金は累進的としつつ、利益成長を通じた増加を目指し、連結配当性向40%以上を目安に決定することとしております。なお、自己株式取得については、資本十分性の確保を前提として、中長期的な利益成長に向けた資本活用と、資本効率性の改善効果とのバランスを踏まえつつ、機動的に実施する方針です。
企業価値向上に向けた取り組みとして、手数料比率が高く安定した利益成長と適切なリスクコントロールにより、収益ボラティリティを抑制し、また、各ステークホルダーとの対話も充実させることで、定量・定性両面で資本コストや株価を意識した経営を継続し、早期にPBR1.0倍以上を達成することを目指します。
該当事項はありません。
該当事項はありません。