第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

 当社グループは、従来から一貫して経営理念を「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」と定め、経営方針としては、「ユニークな中堅メーカーとしての強みを生かして、顧客満足度の最大化を推進し、利益の最大化を目指す」としております。株主を中心とし、更に従業員、取引先、地域社会、環境面での様々なステークホルダーに貢献し、その活動を通じて当社グループの企業価値の向上を追求することをもって経営方針としております。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社が経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、これに持分法による投資損益等を反映した経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、投下資本の生産性を示す指標としてROAやROEについても、重要な経営指標と考えております。

 

(3)中長期的な経営戦略

 当社グループは、将来目指すべき姿として長期目標(営業利益100億円、ROE8%)を定め、更なる成長の機会探索と既存事業の体質強化に取り組んでおります。

 第5次中期経営計画の「成長戦略施策」としては、

①偽造防止機能や意匠性等を付与した高付加価値の「パッケージ分野の強化」

②特殊機能紙における既存/新技術を活かした「環境対応型製品の開発」

③合成繊維・セルロースナノファイバー等の付加価値の高い「高機能シート分野での上市・拡販」

④固形燃料事業の拡大や廃棄物の再資源化を目指した「廃棄物利活用事業の強化・新規立上げ」

⑤環境対応樹脂(生分解性)を使用したラミネート技術での「新ブランド『NatuLami(ナチュラミ)』の立ち上げ」

 などを掲げております。

 

 上記の成長戦略に加えて、アフターコロナの新常態における市場変化に対応するべく、当社グループの「既存事業の体質強化」の施策として、

⑥日本製紙株式会社と連携した「段原紙・クラフト紙の生産体制の強化」

⑦全社的な「業務プロセスの見直し」による収益基盤の安定

⑧特殊素材事業での「工場設備・生産体制の見直し」によるコスト削減

などを重点に取り組んでまいります。

 

(4)経営環境

 ①企業構造

 当社は、2010年、特種製紙株式会社と東海パルプ株式会社を吸収合併することで設立され、主たる事業である製紙業においては「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」、製紙以外の事業領域については「環境関連事業」によって構成されております。また、横の連携も円滑に行うことを目的とした“事業本部制”を採用することにより、各セグメントが持つ技術や生産力をより相乗的に発揮できるように運営を行っております。

 「産業素材事業」は、段ボール原紙やクラフト紙等の産業用紙事業において日本製紙株式会社と合弁事業を行っており、当事業の売上については、その大半が持分法適用会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社向けのものです。したがって、当事業の業績は主に持分法利益の取り込みにより経常利益に反映されることになります。

 「特殊素材事業」は、ファンシーペーパー等の特殊印刷用紙及び特殊機能紙など高付加価値製品の製造・販売を行っており、事業の主体は特種東海製紙本体となります。

 「生活商品事業」は、子会社2社により構成されており、業務用ペーパータオルや食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙、ラミネート紙及びコート紙の製造・販売を行っております。

 「環境関連事業」は、当社保有の南アルプス社有林の有効活用を目的とした自然環境活用事業、当社サプライチェーンを起点としたリサイクルビジネスの拡大を目的とした資源再活用事業によって構成され、今後の新規事業の要の一つとしてさらなる拡大を進めてまいりたい事業分野であります。

 以上のように、規模の経済が働く事業分野においては他企業との合弁事業にて、独自の強みを活かすことのできる「多品種・小ロット・高付加価値」事業である特殊素材事業については、特種東海製紙本体により事業を推進、他のセグメントについては基本的に子会社による事業展開を行う体制を採っており、この事業本部制は適切に機能していると判断しております。

 

 ②市場環境・顧客動向

 a.産業素材事業

 当事業においては、段ボール等包装材に用いられる段ボール原紙、クラフト紙の製造を行っております。国内では新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、経済活動が回復基調にあること、加えてアジアを中心とした旺盛な段ボール需要も想定されることから、産業用包装素材の需要については今後も堅調に伸長するものと認識しております。

 b.特殊素材事業

 当事業においては、出版向けやハイエンドパッケージ向けファンシーペーパー、特殊機能紙など、小ロット多品種・高付加価値・高価格製品の製造・販売を行っております。従来からのデジタル化の流れによる出版部数の伸び悩みに伴って、出版向けファンシーペーパー等の特殊印刷用紙については、市場が縮小傾向にありますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上が大幅に減少した前期からは需要の回復が進みました。特殊機能紙については、電子化による影響で情報用紙の需要は減少傾向にあるものの、海外向け一部製品は引き続き堅調な需要を見込んでおります。

 c.生活商品事業

 当事業においては、トイレットペーパーやペーパータオル等、業務用及び家庭向けの衛生用紙や、紙を基材としたラミネート等加工製品の製造・販売を行っております。トイレットペーパーについては、国内の人口減少によって需要の伸びは見込めない一方、ペーパータオルについては、新型コロナウイルス感染拡大以降、社会全般の衛生意識の向上に伴って引き続き需要増加の傾向にあります。また、ラミネート等の加工品は、経済活動の緩やかな回復基調に伴って需要が増加傾向にあります。

 d.環境関連事業

 当事業においては、資源リサイクルを積極的に推進すべく産業廃棄物中間処理業等を営む中で、主に廃プラスチック等を有効活用した固形燃料(RPF)及び原燃料用木質チップの製造・販売等を行っております。中長期的には国内の社会課題解決に向けた動きとともに、環境負荷低減を目指した資源リサイクルの活動は重要性を増し、関連する事業のニーズは今まで以上に伸びるものと認識しております。

 

 ③競合他社の状況

 当社グループは製紙業を主たる事業としており、事業セグメントごとに異なった競合他社が多数存在します。いずれの事業セグメントにおいても、総需要に対して生産能力が超過気味であるという構造になっており、業界全体での競争は厳しさを増しているということが、共通認識となっております。その中で、比較優位にある分野を強化しつつ如何に差別化できる業務を行っていくかが極めて重要であると認識しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 ①原燃料価格の高騰

 急速に変化する地政学的リスクと昨今の為替相場の動向から、日本企業の原燃料調達に係る不確実性が急速に高まっております。その結果、重油をはじめとする各種原燃料価格の高騰が進んでおり、当社グループの製紙業全般にとって利益圧迫要因およびリスクとなっていることから、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。

 当社グループはこの課題に対応するため、燃料調達構造の見直しや分散化等業務プロセスを全社的に見直すとともに、徹底した経費削減および原価低減努力、製品価格の適正化等既存事業の体質強化を実施し、不確定性が高い事業環境において収益の改善・安定化を図ってまいります。

 

 ②紙製品への需要構造の変化

 国内人口の減少やデジタル技術の発展、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、情報媒体としての紙製品への需要減退が進む一方で、脱プラスチック化への社会的要請、衛生意識の高まりや在宅需要の増加等、紙製品への需要構造は大幅に変化しており、当社グループはこれを対処すべき課題として認識しております。

 当社グループはこの課題に対応するため、既存事業の体質強化による収益基盤の安定化を図るとともに、以下の2点に取り組んでまいります。

 a.環境対応型紙製品の開発

 脱プラスチック化の社会的要請が紙製品の新たな需要を生む可能性があると見込んでおります。プラスチック容器に代替するウエットモウルド事業や幅広い機能性を活用したTT-PACKAGEといったパッケージ分野をはじめ、リチウムイオン二次電池のセパレータ向けCNF製品やラミネート技術における樹脂層の薄膜化等、引き続き脱プラスチック・減プラスチックに貢献する製品開発に努めてまいります。

 b.優位性のある紙製品の拡大

 高水準な品質管理と技術力により他社との差別化を図ってまいります。高い品質が求められる特殊機能紙については製品への異物混入を極めて低位に抑えること等により一層の付加価値化を図り、シェアの維持・拡大に努めてまいります。また、兼ねてより開発に注力しております非セルロース系繊維素材については、継続的な機能性強化に取り組むとともに、多様な顧客ニーズに対応した拡販を推進してまいります。

 

 ③製紙以外の新たな事業領域の拡大

 当社グループは、環境関連事業を製紙業に次ぐ成長分野として認識しております。当セグメントでは、南アルプス社有林の有効活用を目指すとともに、資源再活用事業における固形燃料の生産体制強化および産業廃棄物処理の領域拡大に努めることで、製紙以外の新たな収益基盤の構築を図ってまいります。

 

 ④持続可能な社会に向けた対応

 当社グループは、カーボンニュートラルをはじめとした持続可能な社会に向けた取り組み、およびそれに関わる情報開示の充実を対処すべき課題として認識しております。脱プラスチック化に関わる新たな紙素材の開発に加え、化石燃料使用量のさらなる削減によりCO₂の発生減少に努めてまいります。また、グループ内の廃棄物ゼロエミッション化を目指し、ボイラーから発生する廃棄物の再資源化の検討を進めてまいります。情報開示につきましては、昨年12月にカーボンニュートラルに向けたロードマップを公開、本年3月には統合報告書を開示いたしました。6月にはTCFDフレームワークに基づく情報開示を予定しており、今後さらなる開示の充実を目指してまいります。

 

 ⑤資産の有効活用

 当社グループは、積み上げられた財務余力による成長戦略への積極的な投資を対処すべき課題として認識しており、既存事業の強化や新製品の開発に加え、新たな事業領域の拡大に向けたM&Aを積極的に実施してまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)需要及び市況の変動

 当社グループは製紙業を主たる事業としており、事業セグメントごとに異なったリスクがあるものと認識しております。

 ①産業素材事業

 当事業は段ボール原紙やクラフト紙等の産業用包装材を主に扱っております。経済環境の悪化に伴って物流活動が停滞した場合、また、悪天候により農産物の収穫量・流通量が著しく低下した場合、産業用包装材の需要が減少し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。また、当事業の海外展開先である中国及びASEAN諸国の政情や経済状況が著しく変動した場合、販売量の減少や市場価格の下落等の要因で、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。これらのリスクへの対応については、生産コスト低減施策を通じ、さらなる低コスト・高能率の生産体制を作りあげてまいります。

 ②特殊素材事業

 当事業が扱っている出版向けファンシーペーパー等の特殊印刷用紙及び特殊機能紙は、「多品種・小ロット高付加価値」が特徴の高価格製品群となっております。出版部数の伸び悩みに伴い、当事業の主力製品群である特殊印刷用紙の市場そのものが縮小傾向にありますが、他方で、ハイエンドパッケージ向け新製品の開発や中国市場の開拓等、積極的な製品展開に努めております。しかしながら、特に高価格の特殊印刷用紙においては、景況変動の影響をいち早く受けやすく、経済活動が停滞した場合、需要が著しく減少し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。今般のコロナ禍ではリスクが顕在化し、第14期連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)において、商業印刷、出版、パッケージ向け等の特殊印刷用紙の需要が減少いたしました。需要は回復基調にあるものの、当該リスクへの対応については、引き続き、新たな潜在的ニーズの追求に努めると共に、今後の市場動向を注視してまいります。

 ③生活商品事業

 当事業が主に扱っているトイレットペーパーにつきましては、国内人口減少に伴う需要減少がある反面、インバウンド需要の高まりから、業界では堅調な伸びとなっておりました。しかしながら、商業施設向け商品が多数あり、新型コロナウイルスの感染拡大以降、観光客減少に伴い、インバウンド需要が減少しております。この状況が長期化する場合、販売数量の減少等を通じて、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、市販品の拡販及び顧客ニーズを取り込み、製品のさらなる品質向上を推進し、生産効率を維持してまいります。

 またペーパータオルにつきましては、社会全般の衛生意識の高まりから需要は堅調であるものの、競合他社が同事業へ参入する動きもあり、長期的には供給が需要を超える可能性があります。ネットワークを強化しつつ、機能性を高めた製品の投入を検討するなどして存在感を顕示してまいります。

 

(2)原燃料価格の変動

 製紙業においては多量の原燃料を使用するため、その事業の主たる原料価格に変動があった場合、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。また、原燃料の輸入取引について為替変動リスクを負っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合、業績に負の影響を与える可能性があります。

 産業素材事業において主たる原料である段古紙の価格は、中国およびASEAN諸国をはじめとした海外情勢の影響を受けやすくなっております。したがって、海外情勢に著しい変化があった場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。

 生活商品事業において使用する上質の古紙の価格は、ペーパーレス化の進展に伴い、年々その発生量が減少し、古紙需給の影響を受けやすい状況となっております。したがって、更なるペーパーレス化の進展により、上質の古紙の発生量が減少した場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。

 古紙の調達価格上昇リスクについては、運送費のより安価な近場からの安定調達に注力するとともに、長年の取引関係を勘案した安定調達先の確保に努め、さらに段古紙については、日本製紙株式会社との共同調達の実施などにより対応しております。

 特殊素材事業において多量に使用するパルプについては、その多くを諸外国から調達しております。調達価格は海外市況の影響を受けるため、パルプ生産国の経済活動に著しい変化があった場合や、世界的な需要が高まった場合においては、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。パルプの調達価格上昇リスクの対応については、調達先を国内外で多様化するとともに、各取引先との良好な関係作りに注力しております。また、当社グループ全体としては、島田工場で製造している未晒パルプシートの海外輸出も行うことにより、購入パルプ価格の上昇の影響を緩和する施策も行っております。

 

(3)取引先の信用リスク

 当社グループの取引先の経営状況が、市場の変動や業界再編成等により財務上の問題に直面した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性については、現時点では確認しておりませんが、新型コロナウイルスによる影響が長期化した場合、社会全般における倒産リスクが高まるものと認識しており、各事業本部が密に連携し、一層の管理体制強化を図ってまいります。

 

(4)資金調達

 資金調達については、現状の経済情勢下においては重大なリスクはないものと認識しておりますが、変異株による新型コロナウイルス感染症拡大が更に広がり、更に厳しい要請下での緊急事態宣言期間が長期におよぶ状況となった場合は、金融機関からの資金調達が困難になる可能性があると考えております。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりませんが、手許流動性の確保のため現預金の積み増しを実施し、非常事態に備えております。

 

(5)法的規制

 製造販売業務を主体とする当社グループにつきましては、環境規制に加えて、労働安全衛生法、製造物責任法、知的財産権に関する規制等の様々な法規制の適用を受けております。このため、これらの規制の改定等に対応することや、これらの規制に関連した訴訟等を受けることにより、事業活動が制限されたり、高額な費用負担や環境対策設備の設置等、コストの増加につながることがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応について、当社グループでは常設の機関としてコンプライアンス委員会を設置し、常に法令遵守を念頭に置いた経営管理に努めており、また、特に環境規制については社長直轄の部署として安全・環境統括室を設置しており、環境関連の法改正及び環境保全に係る社会的要請の動向に、引き続き注視してまいります。

 

(6)災害や感染症及び事故による影響

 当社グループは、製造ラインの突発的な中断による潜在的なマイナス影響を最小限にするため、定期的な予防保全を行っております。また、災害事故等不測の事態発生に備え、影響を最小限にするための教育・訓練等を実施しており、特に地震対策については、当社内に緊急時の対応組織を設け、臨機応変に対応することにしております。しかし、これらの影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。また、当社グループの工場及び施設の多くは静岡県にあり、大規模な地震やその他の操業を中断する事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 また、従業員が重大な感染症に罹患した場合、従業員及びその家族への感染拡大を防ぐため、工場の操業を停止する可能性があり、停止の期間やその範囲は想定しておりません。今般の新型コロナウイルスの世界的な拡大を受け、当社グループでは、各都道府県の感染状況や政府機関の判断を随時注視しながら、リモートワークの導入をはじめとした社内施策を講じ、感染防止に努めております。

 

(7)環境の激変に伴う所有資産価値の変動

 ①投資有価証券の減損に係るリスク

 当社グループは、時価のある有価証券を保有しておりますが、時価が著しく下落した場合には、取得原価と時価との差額を当該期の損失とすることとなり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ②固定資産の減損に係るリスク

 当社グループは、多くの製紙業に関係する生産設備等の有形固定資産を有しております。第15期連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)においては、デジタル化の進展等に伴い特殊素材事業の一部の資産グループに減損の兆候がみられ、割引前将来キャッシュ・フローの総額が固定資産の帳簿価額を下回ったことから、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、帳簿価額の減少額を減損損失として計上しております。引き続き、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用に伴い、このような資産又は資産グループについて、時価の下落や当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの状況によっては減損処理が必要な場合があり、そうした場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ③のれんの減損に係るリスク

 当社グループは、第13期連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)に株式会社駿河サービス工業を連結子会社化したことに伴い、のれんを計上しております。当該のれんにつきましては、事業価値及びシナジー効果が発現された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、景気変動等の影響により収益性が低下した場合には、減損損失計上により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルスの影響を受けた前期と比べ大幅に改善しており、需要の回復が進みました。その結果、売上高は前年同期比で増収となり、また利益面でも、全般的な販売数量の回復に加え、前期に実施したグループ全体での原価低減や固定費削減の効果等もあり、営業利益は前年同期比で増益となりました。一方、期後半では、原燃料価格の高騰や不安定な世界情勢等、外部環境の変化により、製造原価が上昇に転じて不透明感が増しており、増益のペースは緩やかなものとなっております。

 このような状況の中、当社グループは、基盤事業の強化と資源再利用事業、脱プラスチック等の社会的要請も背景にした成長施策を実施し、当社グループのもつオンリーワンの品質と技術を活かした新製品開発、更には製紙以外の新たな事業領域に取り組んで参りました。同時に財務基盤の強化による筋肉質化を一層進めて、企業価値向上に鋭意取り組んで参りました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,661百万円減少し、125,430百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ937百万円減少し、46,867百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,723百万円減少し、78,562百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高80,711百万円(前年同期比5.6%増)、営業利益4,231百万円(前年同期比31.1%増)、経常利益5,733百万円(前年同期比4.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5,251百万円(前年同期比6.1%減)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

1) 産業素材事業

 段ボール原紙は、日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社を通じて国内外向け販売が堅調に推移しました。クラフト紙につきましても、国内向け販売が順調に推移しました。一方、利益面につきましては、水力発電による売電事業が渇水の影響等もあり、前年同期比で減益となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は39,375百万円(前年同期比6.0%増)、営業利益は1,154百万円(前年同期比2.0%減)となりました。

2) 特殊素材事業

 特殊印刷用紙の売上は、新型コロナウイルス感染の影響により大幅に減少した前年同期を上回りました。商業印刷向けの高級印刷用紙は、需要の回復に力強さがなく、厳しい状況が続いていますが、ファンシーペーパーは書籍・パッケージ用途で底堅い需要に支えられ、堅調に推移しました。他方、特殊機能紙につきましては、電子化による影響で情報用紙の売上は前年同期を下回りましたが、海外向け一部製品の需要は引き続き旺盛で、また、2020年に発売した高耐熱性絶縁紙はユーザーの要望に細やかに対応して顧客開拓を進めた結果、特殊機能紙の売上は前年同期を上回りました。原価面につきましては、パルプ・薬品等の購入価格上昇の影響を受けましたが、財務体質強化に伴う一層の効率化に加えて、徹底した原価低減に取り組み、利益は前年同期を大幅に上回りました。

 この結果、当セグメントの売上高は21,275百万円(前年同期比13.5%増)、営業利益は2,643百万円(前年同期比102.9%増)となりました。

3) 生活商品事業

 ペーパータオルの需要は高い水準で推移していますが、各社の増産や新規参入によって市場への供給量が増加し、販売数量は前年同期を下回りました。また、トイレットペーパーにつきましては、委託生産分の販売数量が前年同期を下回ったものの、長尺品の拡販効果等により、ほぼ横ばいで推移しました。一方、ラミネート等の加工製品につきましては、経済活動の緩やかな回復基調に伴って需要が増加傾向にあることに加え、新規受注活動の成果が表れて販売数量は前年同期を大幅に上回りました。しかしながら利益面につきましては、全製品とも原燃料価格の高騰、固定費の増加等により減益となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は16,859百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益は574百万円(前年同期比31.0%減)となりました。

 

4) 環境関連事業

 自然環境活用分野につきましては、土木・建築設備工事の完成高が前年同期を下回ったことなどにより減収となりました。利益面でも、2020年11月に製造開始したウイスキー等の将来成長事業に係る先行費用が大幅に増加したことなどもあり、前年同期比で減益となりました。資源再活用分野につきましては、リサイクルビジネスの強化を目的として前期に子会社化した株式会社駿河サービス工業が堅調に推移したことに加えて原価低減等により増益となりました。また、同社は8月に非連結子会社の湘南商事株式会社を吸収合併いたしました。

 この結果、当セグメントの売上高は8,174百万円(前年同期比6.8%減)、営業利益は2百万円(前年同期比96.2%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は11,722百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,474百万円の減少となりました。

  当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果得られた資金は9,579百万円となり、前連結会計年度に比べ2,059百万円の減少となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益7,299百万円、減価償却費6,225百万円、法人税等の支払額2,073百万円、売上債権の増加額1,841百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は4,701百万円(前連結会計年度は893百万円の獲得)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出7,231百万円、有形固定資産の売却による収入2,688百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果使用した資金は6,422百万円となり、前連結会計年度に比べ2,820百万円の減少となりました。主な内訳は、短期借入金の増加額4,170百万円、長期借入金の返済による支出4,160百万円、自己株式の取得による支出4,002百万円、配当金の支払額1,669百万円であります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

生産高(百万円)

 

前年同期比(%)

産業素材事業

43,285

5.8

特殊素材事業

18,661

17.8

生活商品事業

15,447

3.1

環境関連事業

112

20.2

合計

77,507

7.8

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっており、自社利用分も含まれております。

 

b.受注実績

  当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

特殊素材事業

24

67.0

-

100.0

環境関連事業

3,751

48.4

2,568

35.4

合計

3,775

45.1

2,568

34.2

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

    2 受注実績は、建築土木工事について記載しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

販売高(百万円)

 

前年同期比(%)

産業素材事業

37,445

6.4

特殊素材事業

20,598

13.5

生活商品事業

16,674

1.8

環境関連事業

5,992

10.2

合計

80,711

5.6

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社

29,705

38.9

32,063

39.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

 1) 財政状態

  (資産)

 当連結会計年度末の総資産は、125,430百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,661百万円の減少となりました。主な要因は、投資有価証券の期末時価評価等により減少したことによるものであります。

  (負債)

 当連結会計年度末の負債は、46,867百万円となり、前連結会計年度末に比べて937百万円の減少となりました。主な要因は、その他(設備関係支払手形)の減少によるものであります。

  (純資産)

 当連結会計年度末の純資産は、78,562百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,723百万円の減少となりました。主な要因は、自己株式の取得により減少したことによるものであります。自己資本比率は57.5%となり、前連結会計年度末に比べて0.2ポイント上昇しました。

 

 2) 経営成績

  (売上高)

 当連結会計年度の売上高は80,711百万円となり、前連結会計年度に比べて4,308百万円(5.6%増)の増加となりました。セグメントごとの売上高につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

  (売上総利益)

 当連結会計年度の売上総利益は11,759百万円となり、前連結会計年度に比べて671百万円(6.1%増)の増加となりました。これは主に、売上高が増加したことによるものであります。

  (営業利益)

 当連結会計年度の営業利益は4,231百万円となり、前連結会計年度に比べて1,003百万円(31.1%増)の増加となりました。これは主に、売上総利益が増加したことによるものであります。

  (経常利益)

 当連結会計年度の経常利益は5,733百万円となり、前連結会計年度に比べて237百万円(4.0%減)の減少となりました。これは主に、持分法による投資利益が減少したことによるものであります。

  (親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は5,251百万円となり、前連結会計年度に比べて342百万円(6.1%減)の減少となりました。これは主に、経常利益が減少したことによるものであります。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループが経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、また営業外の活動を反映する経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、投下資本の生産性を示す指標としてROAやROEについても、重要な経営指標と考えております。当社グループは、将来目指すべき姿として長期目標(売上高1,200億円、営業利益100億円、営業利益率8.3%、ROE8%)を定め、更なる成長の機会探索と既存事業の体質強化に取り組んでおります。

 当連結会計年度における営業利益は42億円、経常利益は57億円、ROEは7.2%となりました。第5次中期経営計画を推進することで、引き続き当該指標の改善に邁進していく所存でございます。

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 また、資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

  (資金需要)

 当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と設備資金需要の二つがあります。運転資金需要の主なものは紙パルプ製造・販売における原材料及び商品仕入れ、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金需要の主なものは紙製造工程の維持更新投資、エネルギー関連投資、研究開発関連投資、環境関連投資等、固定資産購入によるものであります。

 

  (財務政策)

 当社グループは、短期運転資金等の短期性資金については、主に金融機関からの短期借入金にて調達し、長期運転資金及び設備投資等の長期性資金については、内部資金及び金融機関からの長期借入金並びに金融機関を引受先とする社債(私募債)発行等により調達しております。なお、資金の性格、今後の資金需要、金利動向等の調達環境、予想される貸借対照表の流動比率及び借入金長短比率等を総合的に考慮し、調達額及び調達方法を適宜判断して実施しております。

 また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に備えて、現預金残高の積み上げにより一定程度の手許流動性を確保しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

5【研究開発活動】

 当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動は、原材料の開発、製品開発と生産工程に関わる技術開発及び新事業探索に重点をおいて行っております。また、引続き将来のための4つの技術 NaSFA(Nano technology,Security,Fusion,Art)の更なる検討、展開を進めております。

 研究開発は、フィブリック事業本部、パッケージ本部、研究開発本部が中心となり進めております。

 当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は935百万円でありますが、報告セグメントに含まれない戦略的研究開発費253百万円を含んでおります。

 

(1)産業素材事業

 産業素材事業では、ライナー、中芯、クラフト紙の品質改善とコストダウンに注力しております。原材料・処方・設備などの全ての面で検討、見直しを行っております。

 当セグメントに係る研究開発費は29百万円であります。

 

(2)特殊素材事業

 特殊素材事業では、当期に上市を予定していた2件の新製品について、新型コロナウイルス感染症の影響による材料の調達不安の影響により上市時期が遅れ、次期の上市にずれ込みました。開発については、新規材料を利用した提案型の新製品の開発はほぼ完了しており、今後市場に対してアプローチを進めていく予定です。また既存技術を利用した新製品についても次期に上市を計画しております。また当期から力を入れている、環境対応型製品の開発やデジタルトランスフォーメーションに関わるテーマについては、より差別化された形で市場に提案できるように開発を継続しており、新規事業分野への参入を鋭意検討しております。

 パッケージ分野では、新たなパッケージ用紙の開発を進めており、次期において2件上市する見込みです。TOKYO PACK 2022では新たな提案ができるよう、新技術による差別化されたパッケージ用紙を開発中です。当期4月に参入したウエットモウルドの製造販売事業では、パッケージ用途に採用されました。今後は、機能性、意匠性で差別化されたウエットモウルドを新たに展開していく予定です。

 当セグメントに係る研究開発費は402百万円であります。

 

(3)生活商品事業

 生活商品事業では、当期も環境配慮型の製品開発への注力を継続しております。家庭紙ではラミネート紙包装品の製品化に引続き、更なる脱プラスチック・減プラスチックを進行させた製品の開発に取り組んでおります。紙コート分野ではプラスチック代替となる防水性・防湿性・気体バリア性を有した技術を開発中であり、紙ラミネート技術でも樹脂層の薄膜化による減プラスチックを推進中です。紙素材100%の緩衝材であるペーパークッションは、活用分野を拡げるための加工・用途開発を行っております。

 当セグメントに係る研究開発費は39百万円であります。

 

(4)環境関連事業

 環境関連事業では、南アルプスの社有林内に豊かな自然環境を活かしたウイスキー製造を目指して「井川蒸溜所」の建設を行い、2020年11月に本格稼働いたしました。社有林の天然湧水、気候風土を活かした熟成など、個性際立つウイスキーを製造・販売できるようテストを重ねております。

 当セグメントに係る研究開発費は210百万円であります。

 

(5)知的財産について

 期間中に出願した特許等の知財の件数は32件(特許12件、意匠3件、商標17件)、登録された特許等の知財の件数は28件(特許13件、意匠4件、商標11件)となりました。