文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、従来から一貫して経営理念を「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」と定め、経営方針としては、「ユニークな中堅メーカーとしての強みを生かして、顧客満足度の最大化を推進し、利益の最大化を目指す」としております。株主を中心とし、更に従業員、取引先、地域社会、環境面での様々なステークホルダーに貢献し、その活動を通じて当社グループの企業価値の向上を追求することをもって経営方針としております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社が経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、これに持分法による投資損益等を反映した経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、投下資本の生産性を示す指標としてROAやROEについても、重要な経営指標と考えております。
(3)中長期的な経営戦略
当社グループは、10年後に目指すべき姿(営業利益100億円、ROE8%)を定め、更なる成長の機会探索と基盤事業の強化・変革に取り組んでおります。
その中で「成長戦略施策」としては、
①高機能な合成繊維のシート化やセルロースナノファイバーのシート化等付加価値の高いシート状物を展開する「高機能シート分野への挑戦」
②当社の最大の強みの一つである偽造防止用紙の海外展開、中国をはじめとした有力市場に向け特殊紙販売の強化など、M&A構想も視野に入れた海外比率アップの強化を狙う「新市場開拓・海外販売の強化」
③広大な南アルプス社有林を活用した観光事業等の推進と、再活用資源の多様化及び再資源物の高付加価値化を目指す「環境関連分野の収益化」
を掲げております。
上記の成長戦略に加えて、当社グループの既存事業の収益基盤を強固にするべく、以下の通り「基盤事業の強化・変革施策」を重点施策として取り組んでおります。
④「日本製紙株式会社との合弁シナジーの追求」により、島田工場の一層の競争力アップを目指す
⑤「新製品の開発と製品構成見直し」を行い、島田工場でのパルプ・クラフト紙の増産、タント等汎用的ファンシーペーパーの開発や販売展開、当社の強みである機能包装紙分野における一層の競争力改善や販売拡大
⑥三島工場でのガスタービン発電導入による工場効率改善や島田工場でのパルプ増産に伴う燃料効率改善等による「製造工程の見直し・改善」
(4)経営環境
①企業構造
当社は、2010年、特種製紙株式会社と東海パルプ株式会社を吸収合併することで設立され、主たる事業である製紙業においては「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」、製紙以外の事業領域については「環境関連事業」によって構成されております。また、当社グループは、2020年度より各セグメントの自立的判断を重んじた運営を行う“カンパニー制”から、横の連携も円滑に行うことを目的とした“事業本部制”へ変更致しました。これにより、各セグメントが持つ技術や生産力をより相乗的に発揮できるように運営を行ってまいります。
「産業素材事業」は、段ボール原紙やクラフト紙等の産業用紙事業において日本製紙株式会社と合弁事業を行っており、当事業の売上については、その大半が持分法適用会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社向けのものです。したがって、当事業の業績は主に持分法利益の取り込みにより経常利益に反映されることになります。
「特殊素材事業」は、ファンシーペーパー等特殊印刷用紙及び特殊機能紙など高付加価値製品の製造・販売を行っており、事業の主体は特種東海製紙本体となります。
「生活商品事業」は、子会社2社により構成されており、業務用ペーパータオルや食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙の製造・販売を行っております。
「環境関連事業」は、当社保有の南アルプス社有林の有効活用を目的とした自然環境活用事業、当社サプライチェーンを起点としたリサイクルビジネスの拡大を目的とした資源再活用事業によって構成され、今後の新規事業の要の一つとしてさらなる拡大を進めてまいりたい事業分野であります。
以上のように、規模の経済が働く事業分野においては他企業との合弁事業にて、独自の強みを活かすことのできる「多品種・小ロット・高付加価値」事業である特殊素材事業については、特種東海製紙本体により事業を推進、他のセグメントについては基本的に子会社による事業展開を行う体制を採っており、この事業本部制は適切に機能していると判断しております。
②市場環境・顧客動向
a.産業素材事業
当事業においては、段ボール等包装材に用いられる段ボール原紙、クラフト紙の製造を行っております。新型コロナウイルスの影響による需要構造の変化が足元ではあるものの、生活様式の変化に伴う宅配ニーズの増加や巣篭りニーズの増加等、根強い需要が見込まれ、加えてアジアを中心とした底堅い段ボール需要も想定されており、産業用包装素材の需要については今後も堅調に伸長するものと認識しております。
b.特殊素材事業
当事業においては、出版向けファンシーペーパーやハイエンドパッケージ、機能紙など、小ロット多品種・高付加価値・高価格製品の製造・販売を行っております。従来からのデジタル化の流れによる出版部数の伸び悩みに伴って、出版向けファンシーペーパー等特殊印刷用紙については市場が縮小傾向にあるとともに、今回の新型コロナウイルスの影響により国内需要及び主な海外展開先である中国市場の一時的な減少があるものと認識しております。他方で、同様にコロナ感染をきっかけとした社会構造の変化による特殊機能紙における新たな潜在的ニーズが出てきており、この動きに伴う商機を追求していきたいと考えております。
c.生活商品事業
当事業が主に扱っている衛生用紙につきましては、国内人口減少に伴う需要減少がある反面、インバウンド需要の高まりから業界では堅調な伸びとなっておりました。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大以降、海外からの観光客が激減したことに伴い、これまで伸長してきた商業施設向け商品のインバウンド需要が減少しております。他方で、一般向けの生活商品については、社会全般の衛生意識の向上に伴って需要増加の傾向にあります。
d.環境関連事業
当事業においては、資源リサイクルを積極的に推進すべく産業廃棄物中間処理業等を営む中で、主に廃プラスチック等を有効活用した固形燃料(RPF)及び原燃料用木質チップの製造・販売等を行っております。足元では、新型コロナウイルスの影響による経済活動の低下により、業績にも一時的な影響が出る可能性は考えられますが、中長期的にはSDGsの流れから、リサイクル関連事業のニーズは今まで以上に伸びるものと認識しております。
③競合他社の状況
当社グループは製紙業を主たる事業としており、事業セグメントごとに異なった競合他社が多数存在します。いずれの事業セグメントにおいても、総需要に対して生産能力が超過気味であるという構造になっており、業界全体での競争は厳しさを増しているということが、共通認識となっております。その中で、比較優位にある分野を強化しつつ如何に差別化できる業務を行っていくかが極めて重要であると認識しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
製紙業界を巡っては、国内人口の減少や物流費の上昇、経済活動の伸び悩み・IT化の進展による国内需要の減退等、厳しい経営環境にあるとの認識のもとに、「成長戦略施策」の推進により、顧客ニーズにマッチし差別化が出来る一層の高付加価値新商品の投入、更には脱プラスチックの流れの中で持続可能な成長を進め、製紙以外の新たな事業領域への進出を模索する「市場経営環境を踏まえた事業ポートフォリオの変更・再構築」が課題となると考えております。
具体的には、以下の重点施策を推進してまいります。
①優位性のある製品の拡大
強みのある特殊機能紙については、厳しくなる品質要求へのきめ細やかな対応と品質安定を両立することで、一層競合他社との競争優位性を高め、シェアの維持・拡大に努めてまいります。
また、開発に注力してきた非セルロース系繊維の抄造・加工技術については、電気・電子分野の顧客ニーズに合った高耐熱・高絶縁性等の属性を備えた新シートを拡販する等により、競合他社との差別化を図ってまいります。
②紙製品需要の新規開拓
紙製品需要の新規開拓を図るため、「パッケージ企画本部」を新設致しました。当社が培ってきた紙の高機能化技術の組み合わせによる新製品開発、及びパッケージ製品のサプライチェーン全域との連携を実施し、今後成長が見込まれるパッケージ分野の需要開拓に取り組みます。
また、海外への展開については、中国市場におけるファンシーペーパーの存在感強化を目的としたブランド認知活動を引き続き推進していくとともに、中長期的な視野ではターゲットをASEANまで拡大、M&Aも視野に入れた拡大戦略を探索してまいります。
③持続可能な社会への転換
脱プラスチック化の社会的要請が、紙製品の新たな需要を生む可能性があるものと見込んでおります。ラミネート技術を活かしたプラスチック減量化・環境対応型の商品開発に取り組み、生活商品事業において機能性付加による他社との差別化を図ってまいります。
④製紙以外の新たな事業領域への進出
基幹3事業に次ぐ第4の事業として新設した環境関連事業は、成長市場かつ当社保有の経営資源を活用可能な分野であり、今後大幅な事業拡大を図ります。自然環境活用事業については、自然環境の保護・保全と経済活動の調和を重点課題とし、南アルプス社有林の維持整備を行うとともに、これまで培ってきたノウハウと天然資源による収益化を目指します。資源再活用事業については固形燃料製造を核に、産業廃棄物処理、その他リサイクル関連の事業領域を強化・拡大し、循環型社会の構築に貢献してまいります。その一環として今年1月に廃棄物処理を行う株式会社駿河サービス工業を取得致しました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)需要及び市況の変動
当社グループは製紙業を主たる事業としており、事業セグメントごとに異なったリスクがあるものと認識しております。
①産業素材事業
当事業は段ボール原紙やクラフト紙等の産業用包装材を主に扱っております。経済環境の悪化に伴って物流活動が停滞した場合、また、悪天候により農産物の収穫量・流通量が著しく低下した場合、産業用包装材の需要が減少し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。また、当事業の海外展開先である中国及びASEAN諸国の政情や経済状況が著しく変動した場合、販売量の減少や市場価格の下落等の要因で、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。これらのリスクへの対応については、生産コスト低減施策を通じ、さらなる低コスト・高能率の生産体制を作りあげてまいります。
②特殊素材事業
当事業が扱っている出版向けファンシーペーパー等特殊印刷用紙及び特殊機能紙は、「多品種・小ロット高付加価値」が特徴の高価格製品群となっております。出版部数の伸び悩みに伴い、当事業の主力製品群である特殊印刷用紙の市場そのものが縮小傾向にありますが、他方で、パッケージ向け新製品の開発や中国市場の開拓等、積極的な製品展開に努めております。しかしながら、高価格の製品群は、景況変動の影響をいち早く受けやすく、経済活動が低下した場合、需要が著しく減少し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性について、新型コロナウイルスの影響により、輸出向けの特殊機能紙等、一部製品にて売上高の減少を確認しております。当該リスクへの対応について、引き続き、特殊機能紙における新たな潜在的ニーズの追求に努めると共に、今後の市場動向を注視してまいります。
③生活商品事業
当事業が主に扱っている衛生用紙につきましては、国内人口減少に伴う需要減少がある反面、インバウンド需要の高まりから、業界では堅調な伸びとなっておりました。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大以降、観光客減少に伴い、インバウンド需要が減少しているように、世界的な経済活動の停滞があった場合、販売状況の悪化や販売価格の低下等を通じて、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応としては、顧客ニーズを取り込み、製品のさらなる品質向上を推進することで、価格の維持を実施し、今後の市場動向を注視してまいります。
(2)原燃料価格の変動
製紙業においては多量の原燃料を使用するため、その事業の主たる原料価格に変動があった場合、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。
産業素材事業において主たる原料である段古紙の価格は、中国をはじめとした海外情勢の影響を受けやすくなっております。したがって、海外情勢に著しい変化があった場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。
生活商品事業において使用する上質古紙の価格は、国内のリサイクルシステムの変化に影響を受けやすくなっております。したがって、リサイクルシステムの著しい変化により上質古紙の発生量が減少した場合、調達価格が高騰し、当該事業の業績に負の影響を与える可能性があります。
古紙の調達価格上昇リスクについては、運送費のより安価な近場からの安定調達に注力するとともに、長年の取引関係を勘案した安定調達先を確保することに努めること、さらに段古紙については、日本製紙株式会社との共同調達も実施する等により対応しております。
特殊素材事業において多量に使用するパルプについては、海外市況に著しい変化があった場合、調達価格が高騰し、当事業の業績に負の影響を与える可能性があります。
パルプの調達価格上昇リスクの対応については、調達先を国内外で多様化するとともに、各取引先との良好な関係作りに注力しております。また、当社グループ全体としては、島田工場で製造している未晒パルプシートの海外輸出も行うことにより、購入パルプ価格の上昇の影響を緩和する施策も行っております。
(3)取引先の信用リスク
当社グループの取引先の経営状況が、市場の変動や業界再編成等により財務上の問題に直面した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性については、現時点では確認しておりませんが、新型コロナウイルスによる影響が長期化した場合、社会全般における倒産リスクが高まるものと認識しており、各事業本部が密に連携し、一層の管理体制強化を図ってまいります。
(4)資金調達
資金調達については、従来であれば重大なリスクはないものと認識しておりますが、新型コロナウイルスの影響が長期化した場合は、金融機関からの資金調達が困難になる可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、現時点では認識しておりませんが、現預金の積み増し及びコミットメントラインの活用により、万が一の事態に備え早期対処に努めております。
(5)環境関連の法的規制
当社グループは、各種事業において環境関連の法規制の適用を受けております。このため、これらの規制の改定等に対応することにより、生産活動が制限されたり、高額な費用負担や環境対策設備の設置等、コストの増加につながることがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応について、当社グループは社長直轄の部署として安全・環境統括室を設置しており、環境関連の法改正及び環境保全に係る社会的要請の動向に、引き続き注視してまいります。
(6)災害や感染症及び事故による影響
当社グループは、製造ラインの突発的な中断による潜在的なマイナス影響を最小限にするため、定期的な予防保全を行っております。また、災害事故等不測の事態発生に備え、影響を最小限にするための教育・訓練等を実施しており、特に地震対策については、当社内に緊急時の対応組織を設け、臨機応変に対応することにしております。しかし、これらの影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。また、当社グループの工場及び施設の多くは静岡県にあり、大規模な地震やその他の操業を中断する事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、従業員が重大な感染症に罹患した場合、従業員及びその家族への感染拡大を防ぐため、工場の操業を停止する可能性があり、停止の期間やその範囲は想定しておりません。今般の新型コロナウイルスの世界的な拡大を受け、当社グループでは、各都道府県の感染状況や政府機関の判断を随時注視しながら、リモートワークの導入をはじめとした社内施策を講じ、感染防止に努めております。
(7)環境の激変に伴う所有資産価値の変動
①投資有価証券の減損に係るリスク
当社グループは、時価のある有価証券を保有しておりますが、時価が著しく下落した場合には、取得原価と時価との差額を当該期の損失とすることとなり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②固定資産の減損に係るリスク
当社グループは、多くの有形固定資産を有しております。固定資産の減損に係る会計基準の適用により、このような資産において、時価の下落や当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの状況によっては減損処理が必要な場合があり、そうした場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③のれんの減損に係るリスク
当社グループは、株式会社駿河サービス工業を連結子会社化したことに伴い、のれんを計上しております。当該資産につきましては、事業価値及びシナジー効果が発現された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、景気変動等の影響により収益性が低下した場合には、減損損失計上により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループは、2017年度にスタートした第四次中期経営計画の最終年度を迎え、「NEXT10 ~次なる成長 次なる挑戦~」のもと、グループの更なる成長と基盤強化を図ってまいりました。本計画における主要テーマとして、「成長戦略施策」では、①高機能シート分野への挑戦、②新市場開拓・海外販売の強化、③環境関連分野の収益化、「基盤事業の強化・変革施策」では、①事業モデルの見直し、②新商品の開発・販売、③製造工程の見直し・改善を掲げ、次なる成長に向けた諸施策を推進してまいりました。
第四次中期経営計画期間中においては、特殊素材事業では主力商品の販売強化から新商品開発まで幅広く施策を手掛けたものの、成果摘み取りは次期経営計画に持ち越すこととなりました。産業素材事業では、コスト削減等の基盤強化策を着実に実施するとともに最適地生産の実行等、日本製紙株式会社との合弁による効果も確実にあげることができました。生活商品事業では、衛生用紙は供給体制の強化、ラミネートは多用途展開にそれぞれ注力したものの、事業環境が厳しく成果が相殺されました。この結果、第四次中期経営計画で掲げた最終年度の営業利益5,500百万円には大幅未達となりました。
当連結会計年度、特殊素材事業におきましては、商品開発の方向性である「NaSFA(ナスファ)」のもと、多くの開発を進めております。機能紙分野では、第3四半期で上市した特殊機能紙について、その関連製品の上市に向けて検討を進めております。セキュリティー分野では、第2四半期の大型案件に続き、その技術を利用した新たな案件に着手いたしました。また、海外展開の一環として、11月に開催された偽造防止技術の国際会議 High Security Printingへの参加により、海外偽造防止用紙の引き合いがあり開発を進めております。ファンシーペーパー分野では、海外向けファンシーペーパーの上市を当年度中に見込んでおりましたが、新型コロナウイルスの影響により延期になりました。また、国内向けでは2件の新商品を上市する予定でしたが、同様に延期になりました。
産業素材事業におきましては、連結子会社の新東海製紙株式会社において、更なるコスト面・品質面での競争力向上に取り組んでおります。
生活商品事業におきましては、ペーパータオルやラミネート製品の分野において新商品開発を進めております。
当社グループは、これらの3事業に加え、新たに自然環境の活用や資源の再活用を目指した環境関連事業をセグメント化し、将来の収益基盤の強化を図ってまいります。また、当社は、資源再活用ビジネスを今後更に強化・発展させるべく、1月に株式会社駿河サービス工業の株式を取得し、連結子会社化いたしました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,726百万円増加し、132,655百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ761百万円増加し、54,977百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,964百万円増加し、77,678百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高80,603百万円(前年同期比1.6%減)、営業利益2,870百万円(前年同期比8.7%減)、経常利益5,389百万円(前年同期比0.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,694百万円(前年同期比12.3%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
1) 産業素材事業
主力製品である段ボール原紙及びクラフト紙につきましては、日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社向けの売上が減少したことなどにより、当セグメントの売上高は39,159百万円(前年同期比4.7%減)となりました。利益面につきましては、パルプの外販価格低下の影響等により、営業利益は1,039百万円(前年同期比7.7%減)となりました。
2) 特殊素材事業
特殊機能紙につきましては、海外向け一部製品の販売が順調に推移するとともに、消費税率引上げに伴う影響緩和策に関連して一部製品の受注が増加、加えて国内初の偽造防止技術を付与した新規セキュリティー用紙の販売を開始し、販売数量・金額ともに前期を上回りました。一方、特殊印刷用紙につきましては、国内外において複数の新製品を投入しましたが、その効果の発現に時間を要しており、販売数量・金額ともに前期を下回りました。利益面では、新商品上市に係る工場能率への影響、三島工場の新ガスエンジン稼働に伴う一時的な固定費の増加、成長戦略推進のための試験研究費の増加、物流経費の増加等により、大幅な減益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は21,911百万円(前年同期比2.9%減)、営業利益は1,271百万円(前年同期比23.8%減)となりました。
3) 生活商品事業
ペーパータオルにつきましては、原燃料高騰を緩和するため販売価格への転嫁を進めた影響が残り、販売数量が前期を下回りました。新型コロナウイルスの感染拡大以降は、社会全般の衛生意識の向上に伴って需要が増加しており、安定供給に努めております。トイレットペーパーにつきましては、販売数量が堅調に推移したとともに、販売価格の値上げ効果もあり、大幅な増益となりました。
この結果、当セグメントの売上高は17,860百万円(前年同期比1.5%減)、営業利益は536百万円(前年同期比91.5%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は9,908百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,181百万円の増加となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は11,014百万円となり、前連結会計年度に比べ2,774百万円の増加となりました。主な要因は、売上債権の減少であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は9,598百万円となり、前連結会計年度に比べ3,296百万円の増加となりました。主な要因は、子会社株式の取得であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は234百万円となり、前連結会計年度に比べ3,396百万円の減少となりました。主な要因は、借入金の増加であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円)
|
前年同期比(%) |
|
産業素材事業 |
42,018 |
△9.5 |
|
特殊素材事業 |
18,931 |
2.1 |
|
生活商品事業 |
15,100 |
△2.1 |
|
報告セグメント計 |
76,050 |
△5.4 |
|
その他 |
18 |
46.4 |
|
合計 |
76,069 |
△5.4 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっており、自社利用分も含まれております。
3 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
特殊素材事業 |
40 |
△77.3 |
0 |
△100.0 |
|
報告セグメント計 |
40 |
△77.3 |
0 |
△100.0 |
|
その他 |
5,145 |
96.5 |
2,780 |
234.6 |
|
合計 |
5,186 |
85.4 |
2,780 |
205.7 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 受注実績は、土木・造園工事について記載しております。
3 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円)
|
前年同期比(%) |
|
産業素材事業 |
37,226 |
△4.0 |
|
特殊素材事業 |
21,168 |
△0.4 |
|
生活商品事業 |
17,575 |
△1.5 |
|
報告セグメント計 |
75,970 |
△2.4 |
|
その他 |
4,633 |
14.8 |
|
合計 |
80,603 |
△1.6 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
||
|
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
|
日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社 |
34,044 |
41.6 |
31,301 |
38.8 |
3 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
4 当連結会計年度より、表示方法の変更を行っており、「前年同期比(%)」は、
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (表示方法の変更)」に記載のとおり、
組替後の前連結会計年度の連結財務諸表の数値を用いて比較しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、132,655百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,726百万円の増加となりました。主な要因は、のれんの増加によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、54,977百万円となり、前連結会計年度末に比べて761百万円の増加となりました。主な要因は、有利子負債の増加によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、77,678百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,964百万円の増加となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加によるものであります。自己資本比率は53.5%となり、前連結会計年度末に比べて0.4ポイント上昇しました。
2) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は80,603百万円となり、前連結会計年度に比べて1,297百万円(1.6%減)の減少となりました。セグメントごとの売上高につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は10,803百万円となり、前連結会計年度に比べて58百万円(0.5%増)の増加となりました。これは主に、原燃料価格が下落したことによるものであります。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は2,870百万円となり、前連結会計年度に比べて272百万円(8.7%減)の減少となりました。これは主に、試験研究費・物流経費を中心とした販管費が増加したことによるものであります。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は5,389百万円となり、前連結会計年度に比べて35百万円(0.7%増)の増加となりました。これは主に、持分法による投資利益が増加したことによるものであります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は3,694百万円となり、前連結会計年度に比べて517百万円(12.3%減)の減少となりました。これは主に、特別利益が減少したことによるものであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標としては、収益稼得水準の観点から営業利益を最も重視しており、また営業外の活動を反映する経常利益や、株主に対する還元の基準となる親会社株主に帰属する当期純利益についても重要視しております。加えて、投下資本の生産性を示す指標としてROAやROEについても、重要な経営指標と考えております。
当連結会計年度における営業利益は28億円、経常利益は53億円、ROEは5.3%となりました。次期経営計画を推進することで、引き続き当該指標の改善に邁進していく所存でございます。
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、運転資金需要と設備資金需要の二つがあります。運転資金需要の主なものは紙パルプ製造・販売における原材料及び商品仕入れ、製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金需要の主なものは紙製造工程の維持更新投資、エネルギー関連投資、研究開発関連投資等、固定資産購入によるものであります。
(財務政策)
当社グループは、短期運転資金等の短期性資金については、主に金融機関からの短期借入金にて調達し、長期運転資金及び設備投資等の長期性資金については、内部資金及び金融機関からの長期借入金並びに金融機関を引受先とする社債(私募債)発行等により調達しております。また、資金の性格、今後の資金需要、金利動向等の調達環境、予想される貸借対照表の流動比率及び借入金長短比率等を総合的に考慮し、調達額及び調達方法を適宜判断して実施しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
(有形固定資産)
有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しております。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて行っております。将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えておりますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
(のれん及びその他の無形固定資産)
のれん及びその他の無形固定資産について、事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化等、減損の兆候が発生した場合に減損の判定を行っております。当社グループは、株式会社駿河サービス工業を連結子会社化したことに伴い、のれんを計上しております。のれんの公正価値の見積りにあたっては、外部専門家による評価を活用しており将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、同社における将来の収益力の低下等により、減損損失が発生する可能性があります。
(退職給付に係る負債)
従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、その影響は数理差異として累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動は、原材料の開発、製品開発と生産工程に関わる技術開発及び新事業探索に重点をおいて行っております。また、引続き将来のための4つの技術 NaSFA(Nano technology,Security,Fusion,Art)の更なる検討、展開を進めております。
研究開発は、新規事業推進室の3本部(海外事業本部、フィブリック事業本部、研究開発本部)が中心となり進めています。研究開発スタッフは、グループ全員で44名にのぼり、これは総従業員の約3%に相当します。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)産業素材事業
産業素材事業では、ライナー、中芯、クラフト紙の品質改善とコストダウンに注力しております。原材料・処方・設備などの全ての面で検討、見直しを行っております。
(2)特殊素材事業
特殊素材事業では、新たな製品開発による新規事業分野進出に力をいれております。今期、新たな技術を確立し、一部の製品を上市しました。近々、その関連製品を上市する見込みです。ファンシーペーパー分野では、国内の競争力の向上のため、既存の製品のリニューアルを実施しました。新たな技術を導入し、短期間で87色の新製品の開発に成功しました。海外向けのファンシーペーパーの開発にも力をいれており、1件の新製品の開発に成功しました。当年度中に上市を見込んでおりましたが、新型コロナウイルスの影響により延期になりました。偽造防止用紙分野では、偽造防止用紙の国際会議「High Security Printing 2019」にて、新技術を発表しました。国内製紙メーカーとしては初めて展示ブースを設置し、当社の技術をアピールしました。多くの海外向けの偽造防止用紙の引き合いがあり、現在検討を進めております。国内においても2件の偽造防止用紙の開発に成功し、上市しました。それ以外にも、ファンシーペーパーで1件、機能紙で2件の新製品を上市しました。
(3)生活商品事業
生活商品事業では、特殊素材事業との人事交流を行い、双方の知識・技術を融合した新たな視点での製品開発を行います。新製品では抗菌仕様のクレープ食材紙、環境に配慮した樹脂ラミネート製品(バイオ樹脂、生分解樹脂)の開発を上市に向けて進めております。包装材料でも樹脂減容化のためにフィルム包装から紙包装に変更される動きがあります。紙をベースにラミネート、コート品の開発を進めております。
(4)知的財産について
期間中に出願した特許等の知財の件数は20件(特許7件、意匠3件、商標10件)、登録された特許等の知財の件数は35件(特許21件、意匠2件、商標12件)となりました。