文中において将来について記載した事項は、提出日現在において判断したものです。
当社の経営理念は、「存在意義」「使命」「信条」の3つのパートから構成されています。この経営理念は、有用性と信頼性の高い医薬品で世界の人々の健康に貢献し、企業価値を持続的に向上させることを目指していく当社の姿勢を表現しています。
アステラスの存在意義:先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する
・生命科学の未知なる可能性を、誰よりも深く究めたい。
・新しい挑戦を続け、最先端の医薬品を生み出したい。
・高い品質を確かな情報と共に届け、揺るぎない信頼を築きたい。
・世界の人々の健やかな生活に応えていくために。
・世界で輝き続ける私たちであるために。
アステラスの使命:企業価値の持続的向上
・アステラスは、企業価値の持続的向上を使命とします。
・アステラスは、企業価値向上のため、お客様、株主、社員、環境・社会など、すべてのステークホルダーから選ばれ、信頼されることを目指します。
アステラスの信条
アステラスの「信条」は、私たちが常に大事にする行動規範です。
アステラスは、これらの信条に共鳴し実践する人々の集団であり続けます。
高い倫理観: 常に、高い倫理観をもって、経営活動に取り組みます。
顧客志向: 常に、お客様のニーズを把握し、お客様の満足に向かって行動します。
創造性発揮: 常に、現状を是とせず、未来志向で自己革新に挑戦し、新しい価値を創造します。
競争の視点: 常に、視野広く外に目を向け、より優れた価値を、より早く生み出し続けます。
アステラスは、信条に則した行動を通じて、ステークホルダーの皆様への責任を適切に果たし続けるとともに、積極的な情報開示を行います。
製薬産業を取り巻く事業環境は時代とともに大きく変化しています。新薬開発の難易度の上昇、医療費抑制政策等マイナスの影響がある一方で、イノベーションを評価する制度の拡充や、科学技術の進歩に伴い、創薬に活用できる治療手段が増加するなどプラスの動きもあります。また、デジタル技術や工学技術の進歩は、異業種との融合を促し、患者さんに新しい医療ソリューションの提供を可能にします。当社は、これらの変化に柔軟に対応し、社会のサステナビリティへの貢献、その結果としてアステラスのサステナビリティに寄与する戦略を策定することで、企業価値を持続的に向上させ、革新的な医療ソリューションを患者さんに届け続けていきます。
①経営計画2021
当社は、「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変える」というVISIONの実現に向けて、2025年度までの5カ年にわたる「経営計画2021」を策定しました。「経営計画2021」では、2025年度までに着実な成長を実現し、成果へと結びつけることができるよう、4つの戦略目標、それを推進する企業風土を醸成するための“道しるべ”となる3つの組織健全性目標、それらが全て達成された際に到達できると考える3つの成果目標を設定しています。
1) 4つの戦略目標
戦略目標はVISIONを実現するための向こう5年間の道筋と、優先事項を示しています。
戦略目標1:患者さんのより良いアウトカムの実現
(i) アステラス製品に対する患者さんの持続的なアクセス、(ii) 患者さんがアステラスの製品から享受するアウトカム、の最大化に取り組んでいきます。
戦略目標2:科学の進歩を確かな「価値」へ
研究開発における重点戦略領域であるPrimary Focusに優先的に経営資源を投下し、パイプライン価値を高めます。
Primary Focus (注) :遺伝子治療、がん免疫、再生と視力の維持・回復、標的タンパク質分解誘導
(注) 2024年4月にミトコンドリアのPrimary Focusとしての認定を解消しました。
戦略目標3:Rx+ビジネスの進展
Rx+プログラムの事業化により我々が目指す「科学的根拠に基づくヘルスケアソリューションによって、心身ともに健康に、自分らしく生きることができる社会の実現」に向けて前進していきます。
戦略目標4:サステナビリティ向上の取り組みを強化
当社は、サステナビリティ向上への取り組みの重要性を認識しており、社会・環境に対する様々な活動を推進し、活動の基盤となるガバナンスの強化に努めています。社会に良い影響を与える活動によって得られたステークホルダーからの信頼が、アステラスのサステナビリティを向上させると考えています。
2) 3つの組織健全性目標
長期にわたり優れたパフォーマンスを生み出す社内環境を構築するために3つの組織健全性目標を策定しました。組織健全性目標への取り組みによって組織の最大限のポテンシャルを引き出し、One Astellasとして優れた実行力とイノベーションを生み出すための社内環境を構築します。
組織健全性目標1:果敢なチャレンジで大きな成果を追求
適切なリスクを取ることができるよう社員に権限が与えられるとともに、成果を追求し、イノベーションに注力できる環境を構築します。
組織健全性目標2:人材とリーダーシップの活躍
目的を持った人材マネジメントと、一貫したリーダーシップスタイルにより、望ましいマインドセットと行動が促進される環境を構築します。
組織健全性目標3:One Astellasで高みを目指す
共通の目標を達成するために社員が効果的に協働し、組織的に力強く戦略を推進する環境を構築します。
3) 成果目標
理想とする組織に近づき、戦略目標を確実に実行できた時、2025年度時点で達成できているだろうと考えられる姿を、数値目標として表したものが、この成果目標です。
・売上収益:XTANDI及び重点戦略製品 (注1) の売上は2025年度に1.2兆円以上
・パイプライン価値:Focus Areaプロジェクトからの売上は2030年度に5,000億円以上
・コア営業利益率 (注2) :2025年度に30%以上
これら3つの成果目標を達成することで、2025年度には当社は株式時価総額7兆円以上と評価されるような企業となることを目指します。
[当連結会計年度末における状況]
当連結会計年度末における成果目標の進捗状況に鑑みると、2025年度までの達成は厳しい見込みですが、XTANDIの独占販売期間満了を克服できる体制構築を引き続き整えます。
[各成果目標に対する対応策 (実行済み又は今後実行すべき策) ]
・売上収益:IVERIC bio社買収によるIZERVAY獲得、LCM (ライフサイクルマネジメント) による製品価値最大化
・パイプライン価値:研究開発組織・運営体制の改編、優先プロジェクトへの重点的なリソース配分、 Propella Therapeutics社買収による前立腺がん治療薬PRL-02の取得
・コア営業利益率:将来成長への投資を確保した上での厳格な費用コントロール、デジタル技術活用による業務効率の最適化
(注) 1.ゾスパタ、パドセブ、ビロイ、エベレンゾ、VEOZAH、AT132 (経営計画2021公表時 (2021年5月))
2.当社は、会社の経常的な収益性を示す指標としてコアベースの業績を開示しています。当該コアベースの業績は、フルベースの業績から当社が定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。調整項目には、減損損失、有形固定資産売却損益、リストラクチャリング費用、災害による損失、訴訟等による多額の賠償又は和解費用等のほか、会社が除外すべきと判断する項目が含まれます。
②株主還元方針
当社は、企業価値の持続的向上に努めるとともに、株主還元にも積極的に取り組んでいます。成長を実現するための事業投資を優先しながら、配当については、連結ベースでの中長期的な利益成長に基づき、安定的かつ持続的な向上に努めます。
また、自己株式の取得を必要に応じて機動的に実施し、資本効率の改善と1株当たり利益の向上を図ります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
(1) サステナビリティ
①サステナビリティに関する考え方
当社は社会のサステナビリティの向上に貢献していくことが、事業を継続していく上で極めて重要であると考えます。具体的には、アンメットメディカルニーズ (満たされない医療ニーズ) に応えるヘルスケアソリューションを提供することや、事業活動において製薬会社としての社会的責任を果たすことにより、当社は社会のサステナビリティの向上に貢献しています。その結果、自社や自社の製品等に対する社会からの信頼が得られ、当社のサステナビリティを向上させると考えています。このような好循環を生み出すことは、当社の存在意義である「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」ことを通じた「企業価値の持続的向上」という私たちの使命を果たすことにつながります。すなわち、当社にとって、社会のサステナビリティの向上に貢献することは、経営理念の実践そのものです。
②サステナビリティに関するガバナンス・リスク管理
当社は、サステナビリティ向上のためのガバナンスとして、「サステナビリティアドバイザリーパネル」及び「E・S・Gワーキンググループ (環境・社会・ガバナンスに関するワーキンググループ) 」を設置しています。両会議体は社長直轄組織のサステナビリティ部門が、事務局として運営管理をしています。
サステナビリティアドバイザリーパネルでは、環境、社会、ガバナンス (以下、ESG) の観点で、機会やリスクを含むサステナビリティに関わる事項を協議しています。部門横断のメンバーで構成されており、部門長、部長レベルの従業員が協議に参加します。サステナビリティアドバイザリーパネルで協議された事項は、案件毎の重要性及び決裁権限規程に従って、エグゼクティブ・コミッティにおける協議を経て取締役会で承認されます。取締役会が承認する案件として、サステナビリティの取り組みの指針となるマテリアリティ・マトリックスやサステナビリティ方針が該当します。
E・S・Gワーキンググループでは、当社のESGの観点で取り組むべき課題や機会の特定、関連部門と改善計画の立案と目標の設定、取り組みの進捗確認及びアドボカシー活動を実施します。E・S・Gワーキンググループは、案件ごとに部門横断のメンバーで構成されます。
サステナビリティ部門は、サステナビリティアドバイザリーパネルとE・S・Gワーキンググループの事務局業務に加え、ESGを含むサステナビリティ課題に対応し、サステナビリティ向上のための活動を推進しています。経営に与える影響が高いリスクが特定された場合は、サステナビリティアドバイザリーパネル事務局から、グローバル・リスク&レジリエンス委員会事務局へ共有され、必要な検討がなされます。また、コンプライアンスに関連する事項は、グローバル・コンプライアンス委員会事務局へ共有され、必要な検討がなされます。
③サステナビリティに関する戦略・指標及び目標
当社はサステナビリティ向上への取り組みの重要性を認識しています。社会と当社のサステナビリティ向上が、VISIONの実現に必要不可欠と考え、経営計画2021では、戦略目標4として「サステナビリティ向上の取り組みを強化」を設定しています。
また、社会と当社の双方にとって最も重要な課題を特定・優先順位付けしたマテリアリティ・マトリックスを策定し、サステナビリティの取り組みの指針としています。マテリアリティ・マトリックスでは、19の重要な課題を特定し、うち9つを最重要課題 (マテリアリティ) としました。これら9つのマテリアリティに最優先で取り組み、最先端の「価値」駆動型ライフサイエンス・イノベーターへの変革や社会の期待に応える強靭で持続可能な事業活動の強化によって、社会と当社のサステナビリティの向上を目指しています。これら9つのマテリアリティ及び社会からの要請の高い環境に関する課題について、中期的に優先する項目、具体的な取り組み、2025年度までのコミットメントをサステナビリティ方針として策定しています (注)。
(注) 環境の課題の詳細については、(3) 環境 (気候変動) をご参照ください。
1. 最先端の「価値」駆動型ライフサイエンス・イノベーターへの変革
(注) 人的資本の考え方や取り組みの詳細については、 (2) 人的資本をご参照ください。
2. 社会の期待に応える強靭で持続可能な事業活動の強化
(2) 人的資本
①人的資本に関する考え方
当社では、採用・配置、評価・処遇、人材・組織開発の3つの領域を適切にバランスよく推進することによって、期待する人材像、目指す組織像を実現し、「Employer of Choice:現在そして未来の社員に選ばれる会社」を目指しています。当社において、人的資本への投資は、今日の実行力の強化に加えて、将来の組織をかたちづくる重要な投資として位置づけられており、短期的及び中長期的な視点をもって継続的に実施しています。
②人的資本に関する戦略・指標及び目標
当社では、経営計画2021の実現に向け、「組織健全性目標」を設定しました。これは、イノベーションの促進、人材の活躍、コラボレーションの浸透を通して意欲的な目標の実現を目指す企業文化を醸成し、当社の実行力を向上させることを目指すものです。人事部門では、設定した目標の実現に向けて、以下に示している、カルチャー、マインドセットの変革、グローバルな人材・組織を支える人事制度の構築、イノベーティブな組織への戦略的改革を最優先事項として取り組んでいます。
また、これら主な3つの取り組みを基盤として支えているのが、データに基づく確実な進捗の確認です。確実な進捗確認の1つの施策として、グローバル・エンゲージメント・サーベイを実施しており、従業員のエンゲージメント向上への取り組みに注力し、各設問項目の進捗を可視化して、強みと改善点の分析結果に応じて具体的な対策を講じています。
A. カルチャー、マインドセットの変革
当社は、従業員に賢いリスクテイクと学びによる成長を促すため、心理的安全性の確保とフィードバック文化の促進に注力しています。イノベーションを生み出し続ける組織を作るには、誰もが結果を恐れずに大胆なアイデアを共有し、現状に疑問を持って声を上げ、互いにフィードバックを伝え合うことのできる環境と、他者からのフィードバックを自らの成長につなげていくマインドセットが重要だと考えています。
A-1. カルチャー、マインドセットの変革に関する目標
当社は果敢なチャレンジで大きな成果を追求します。適切なリスクを取ることができるよう従業員に権限が与えられるとともに、成果を追求し、イノベーションに注力できる環境の構築を目指します。
A-2. カルチャー、マインドセットの変革に関する状況
イノベーションを生み出し続ける組織に必要なリソース (時間、要員) を確保するために、White Space Creating Training をコーポレート機能にて実施しました。参加者へのアンケート調査では、本研修がより多くのホワイトスペース (注) を作るのに役に立ったかという設問に対して回答者の90%の同意を得る結果となりました。また、トップマネジメントとの双方向のコミュニケーションを促進するため、対話型のセッションである“Ask Me Anything”を継続して実施しています。
(注) 新しいアイデアを模索するために必要なリソース
日本においては、心理的安全性の確保と関わりが強い健康経営にも力をいれています。従業員一人ひとりが高い生産性や創造性を発揮し、自己実現が可能な働き方を実現するための前提として、従業員の健康と健全な組織風土の醸成があります。健全な組織風土は、心理的安全性が高く、従業員が互いに尊重し合い、安心して活発なコミュニケーションができる環境を必要とします。当社では、多様な働き方と従業員の健康増進を支援し、組織の健全化を推進しています。日本での当社の健康経営推進体制は、人事・コンプライアンス担当 (CPO&CECO) の下で、人事部門 (保健スタッフ含む) と健康保険組合、労働組合が主体となって企画・運営しています。
健康経営の取り組みの推進の結果、経済産業省の健康経営優良法人2024 (大規模法人部門) に3年連続認定されました。健康経営推進の取り組みによる成果は下記
https://www.astellas.com/jp/sustainability/promoting-health-management
B. グローバルな人材・組織を支える人事制度の構築及び多様性の確保
2023年度の地域別売上収益比率では、日本が約20%、海外が約80%となっており、当社のビジネスはグローバルに広がっています。それに伴い、従業員構成もグローバル化が進んでいます。ビジネス及び人材の変化に伴い、グローバルに通用する人事戦略・施策の構築が必須のため、グローバル規模で当社のビジネスを支える人事制度・システムの構築に取り組んでいます。
また、人種・国籍・性別・年齢を問わず多様な人材が自分らしさを大切にしながら活躍できるよう、ダイバーシティの推進に取り組んでいます。多様な価値観・考え方・バックグラウンド等を尊重し活かし合うことは、組織の創造性を高めるだけでなく優秀な人材の確保や競争力の向上にもつながると考えています。
多様性確保に向けた人材育成と社内環境整備について、下記の方針に従って推進しています。
・人材育成方針:属性によらず、自己責任を基本とする各人の意思・能力・適性に応じたキャリア形成機会を提供し、マネジャーはそのキャリア形成を支援します。高い成果を発揮し続ける能力・意欲のある人材に対して魅力ある成長機会を積極的に提供することで、多様な人材の活躍につながっています。
・社内環境整備方針:多様な人材が活躍できるよう、グローバルで統制・整合性の取れた評価プロセスを設定し、個々人の属性に関係なく役割と成果に基づく公正な評価を徹底しています。さらに、グローバル共通のジョブポスティングシステムの提供や、異なる国や地域での業務を行うグローバルアサインメント等を行っています。国や地域によらないグローバルなメンバーでのチームやグループの形成が進むことで、各組織における多様化にもつながっています。また、組織における多様性を実現するだけでなく、従業員一人ひとりが活躍するために、一人ひとりの強みや違いを理解し、受け入れ、尊重し、活かし合うインクルーシブな組織づくりにも心掛けています。日本においては副業制度を活用し、社内外の人材・知識・経験のネットワークの構築を推進しています。また、2024年度から日本において、居住地選択のフレキシビリティを高める「My Workplace制度」を導入し、社員の多様な働き方を推進することで、社員のエンパワーメントを高めるとともに、パフォーマンスの向上・優秀な人材の獲得を試みています。
B-1. グローバルな人材・組織を支える人事制度の構築に関する目標
当社は、本人事制度の構築を通じて、従業員一人ひとりがイノベーティブな活動に取り組み、意欲的な目標にチャレンジし、適切なリーダーシップの下、周囲とコラボレーションできる環境を目指しています。部門単位では、個別部門に閉じない部門横断型の目標を設定し、個人単位では意欲的な目標設定とフィードバックシステムの展開を推進し、One Astellasでパフォーマンスの向上を目指しています。
また、多様性を確保するために、下記3つの目標があります。
a. 女性のマネジャー職への登用
グローバルレポートラインの体制で設計されたポジションに対し、実力主義の下、ジェンダーにかかわらず適所適材の考え方に基づき登用を行っています。その上で、次長クラス以上のポジションについては、ジェンダー間で大きな差のないように確認・分析を行い、後継者プランを作成しています。日本では、女性の活躍推進を優先度の高い課題と位置づけ、目標数値を設定した上で取り組んでいます。数値目標、取り組みについては、下記
https://www.astellas.com/jp/sustainability/major-programs-japan
b. 外国人、中途採用者のマネジャー職への登用
グローバルレポートラインの体制で設計されたポジションに対し、実力主義の下、適切に登用を行っています。このことにより、当社ではグローバルで数多くの外国籍従業員、中途採用者がマネジャー職へ登用されており、今後も継続して取り組んでいきます。
c. サクセッションプランニングと運用
当社では、経営計画2021を実行するために必要なリーダーの要素として、「変革的リーダーシップ」、「結果志向」、「グローバル・マインドセット」を重要視し、それを踏まえてサクセッションプランニングを行っています。当社のサクセッションプランニングの特徴として、1. 完全なグローバル統合プラン、2.社内外問わず最適な人材を後継者候補に、3. 完全な自由競争による人材配置、4. 毎年の見直しにより常に最適な人材による適所適材を実現、があげられます。当社では次長クラス以上のポジションについて後継者プランの作成をグローバルで行っています。適所適材の考え方の下、グローバルに展開した後継者プランに基づき、各ポジションに対し国籍や性別を問わない多様性に富んだ後継者の選定、育成を目指しています。
B-2. グローバルな人材・組織を支える人事制度の構築に関する状況
グローバルな人材・組織を支える人事制度の構築に向けた取り組みの1つとして、グローバルでタレントマネジメントのプロセス統合を行っています。2022年度に目標管理と評価制度、報酬・レコグニション制度を改訂し、これまで部門業績を賞与支給金額の算定要素にしていたところを、全社業績に変更し、2023年度から運用を開始しています。社員同士のレコグニション制度として、Shining Star制度を導入し社員同士がお互いに称賛し合える風土を醸成しています。2023年11月に導入後、2024年3月末時点で87%の社員が本制度を利用し76%が実際に同僚又はマネジャーから一つ以上のレコグニションを受け取っています。そして、これらの柱を支え、グローバルでの適所適材を実現する基盤として、グローバルで人事システムの統合を進めています。
また、多様性確保に関しては、下記のとおりに取り組んでいます。
a. 女性のマネジャー職への登用
日本を含む各地域の女性従業員比率、女性のマネジャー職比率については、下記
https://www.astellas.com/jp/sustainability/esg-social
b. 外国人、中途採用者のマネジャー職への登用
当社では、国籍にとらわれずさまざまな従業員が中核人材として活躍しています。2024年3月31日現在、部門長クラス以上の62%、マネジャー職以上の70%が日本人以外の従業員です。また、積極的に多くの中途採用者を、中核人材へ登用しています。
c. サクセッションプランニングの実績
2023年9月時点では、部門長クラス以上のポジションが193ポジションあり、後継者候補として553人を選定しています。その内、外国籍従業員が58%、女性が40%を占めています。
d. 日本国内の各制度の利用実績
各種制度及びその利用実績については、下記
https://www.astellas.com/jp/sustainability/esg-social
C. イノベーティブな組織への戦略的改革
当社では、イノベーティブな組織への戦略的改革のため、組織のフラット化に取り組んでいます。社長からの階層を減らし、マネジャー1人が管理する部下の数を増やすことで、意思決定の迅速化と現場への権限委譲をねらいとしています。また、肩書にとらわれず、より効果的に協力・協働する組織に向けて、2024年4月から、階層ではなく役割を表すPosition Titleを用いています。
C-1. 組織のフラット化のための指標及び目標
組織のフラット化による意思決定を促すため、社長からの階層数を6以下とすることを目指し、スパン・オブ・コントロール (SPOC:Span of Control) (注) については、6人以上を目指しています。

(注) スパン・オブ・コントロール (SPOC:Span of Control):マネジャー1人が管理する部下の人数
C-2. 組織のフラット化の状況
2024年4月時点では、6階層以下の組織の割合が86%、スパン・オブ・コントロールの全組織の平均値が、5.9人に到達しました。
(3) 環境 (気候変動)
①環境 (気候変動) に関する考え方
当社は、世界的な環境問題である気候変動及びそれによってもたらされる結果は、患者さんに貢献していくための当社の事業の継続性に対して脅威となり得ると考えています。具体的には、気候システムの変化によって生じる極端な天候、降雨変化、伝染病の拡大、エネルギーポートフォリオの変化等があげられます。このような影響を低減するために、事業活動由来の温室効果ガスが気候システムに対して危険な人為的影響を及ぼさないよう、温室効果ガスの排出を削減することを目標としています。当社は、気候変動を低減し、また、気候変動に適応していくために、長期的で幅広い視野をもって環境に対する企業の責任を果たしていきます。
②環境 (気候変動) に関するガバナンス・リスク管理
当社は、2020年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース (Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD) の提言に対し賛同を表明し、気候変動に対する情報は、TCFDの提言に沿って開示しています。
気候変動等の環境への取り組みは、当社が取り組むサステナビリティの重要な課題として位置づけられています。当社では、さまざまな環境課題へ対応するため、Environment, Health & Safety (EHS) コミッティを設置しています。EHSコミッティの議長は、サステナビリティ部門長が務め、メンバーは機能横断的に選任されています。EHSコミッティでは、気候変動を含めたさまざまな環境課題への対応や実行計画の策定等を議論しており、審議内容は社長に報告されます。気候変動のリスクと機会の評価を含むTCFD提言に沿った開示はサステナビリティ活動の1つとして取締役会に報告されています。
環境に関するリスク管理はサステナビリティ部門によりモニタリングされ、社長に定期的に報告されます。特定されたリスクへの対応等は、課題の重要度に応じてエグゼクティブ・コミッティや取締役会にて決定されます。
③環境 (気候変動) に対する戦略・指標及び目標
経営計画2021の戦略目標4「サステナビリティ向上の取り組みを強化」において、「環境 (気候変動対策) 」を重点テーマの1つとして、設定しています。また、2021年度に改定されたマテリアリティ・マトリックスでは、「気候変動とエネルギー」を「非常に重要」な課題として位置づけています。
気候変動によって発生する事業のリスク及び機会は、2つのシナリオをもとに分析しています。気候変動に関する1.5℃シナリオでは移行リスクが顕在化すると仮定し、また4℃シナリオでは物理的リスクが顕在化すると仮定して、分析しています。
当社の事業と気候変動によって発生する事業のリスク及び機会の分析の詳細については、下記
https://www.astellas.com/jp/sustainability/TCFD-disclosure
また、サステナビリティ方針として策定した環境に関する課題の中期的に優先する項目、具体的な取り組み、2025年度までのコミットメントは下記のとおりです。
④温室効果ガス実排出量
当社の2022年度の温室効果ガス実排出量は、118千トン (スコープ1:61千トン、スコープ2:56千トン) でした。2023年度の実績は、下記
https://www.astellas.com/jp/sustainability/measures-to-address-climate-change
(1) リスク・ガバナンス
当社では、グローバル・リスク&レジリエンス委員会 (GRRC) 及び部門別リスク&レジリエンス委員会を設置し、重要なリスク及びその低減活動の監視を行っています。これらの委員会には監査部門がオブザーバー出席することで、監査計画立案時に、それらのリスクを適宜反映することを可能にしています。GRRCで検討するリスクは、最終的には取締役会に報告されます。
当社のリスク・ガバナンス体制図は以下のとおりです。

(2) エンタープライズ・リスク管理プロセス
エンタープライズ・リスク管理 (ERM) においては、経営企画部門に設置されているリスク管理チームが社内ステークホルダーと連携の下、年次プロセスを進めています。リスク評価はトップダウン及びボトムアップの両面から実施しています。既存のリスク低減活動を加味した上でリスクの影響度及び発生可能性を評価することで、リスク対応における優先順位付けを行っています。リスク・オーナーは、必要に応じリスク・エクスポージャーを更に低減し、レジリエンスを強化するための行動計画を策定します。
グローバル・リスク (全社レベルの注視が必要なリスク) は、GRRCにおいて議論し、承認されます。また、GRRCは、エマージング・リスク (当社が把握しているものの、その全容及び影響がまだ明らかではないトレンドから生じる不確実性) のモニタリングも行っています。GRRCでの議論後、特定のエマージング・リスクがグローバル・リスク又は部門リスクとしてリスクレジスターに追加される場合もあります。
グローバル・リスクの概要は下表のとおりです。なお、文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末において判断したものです。また、ここに記載されたものが当社の全てのリスクではありません。これらのリスクに加え、研究開発の不確実性、知的財産権を侵害される又は侵害するリスク、製品に副作用や安全性の問題が生じるリスク、当社グループのビジネスが他社の開発した医薬品のライセンス及び販売に一部依存するリスク等、製薬産業に特有のリスクのほか、競合品との競争、環境・安全衛生に関する関係法令違反、事業を行う過程において訴訟を提起されるリスク、災害等による製造の遅滞や休止、為替レートの変動等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるさまざまなリスクが存在しています。
グローバル・リスクの概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー (以下「経営成績等」) の状況の概要は次のとおりです。
[財政状態]
当連結会計年度末の連結財政状態計算書の概要及び前連結会計年度末からの主な変動は以下のとおりです。
2023年7月にIveric Bio社を買収して当社の連結子会社にしたことに加え、同社の買収資金に充当するために銀行借入れや、社債及びコマーシャル・ペーパーの発行による資金調達を行ったことに伴い、資産、負債に大きな変動がありました。
総資産は3兆5,696億円 (前連結会計年度末比1兆1,131億円増) となりました。
非流動資産は、2兆3,749億円 (同9,683億円増) となりました。有形固定資産は、2,937億円 (同73億円増) となりました。主に2023年7月にIveric Bio社を買収したことに伴い、のれんは4,187億円 (同903億円増) 、無形資産は1兆4,538億円 (同8,913億円増) となりました。
流動資産は、1兆1,947億円 (同1,448億円増) となりました。現金及び現金同等物は3,357億円 (同412億円減) となりました。
資本合計は、1兆5,960億円 (同880億円増) となり、親会社所有者帰属持分比率は44.7%となりました。当期利益170億円を計上した一方で、剰余金の配当1,167億円を実施しました。
負債合計は、1兆9,736億円 (同1兆251億円増) となりました。
非流動負債は6,879億円 (同4,654億円増) となりました。第2四半期連結会計期間にIveric Bio社の買収資金に充当するために資金調達を行い、当連結会計年度末の残高は社債2,500億円 (同2,000億円増) 、長期借入金1,977億円 (同1,977億円増) となりました。主にIveric Bio社の買収に伴い、繰延税金負債が453億円増加しました。
流動負債は1兆2,857億円 (同5,597億円増) となりました。第2四半期連結会計期間にIveric Bio社の買収資金に充当するために資金調達を行い、当連結会計年度末の残高はコマーシャル・ペーパー2,850億円 (同2,100億円増) 、短期借入金1,354億円 (同1,354億円増) 、1年以内返済予定の長期借入金519億円 (同519億円増) となりました。 その他の流動負債は4,765億円 (同938億円増) となりました。
[経営成績]
<連結業績 (コアベース) >
当連結会計年度の連結業績 (コアベース) は下表のとおりです。売上収益は増加した一方、コア営業利益及びコア当期利益は減少しました。
売上収益
・主要製品の前立腺がん治療剤XTANDI、尿路上皮がん治療剤PADCEV、急性骨髄性白血病治療剤XOSPATAの売上が拡大しました。PADCEVは、特に米国及び欧州で売上が大きく拡大しました。
・当連結会計年度に米国で発売となった閉経に伴う血管運動神経症状治療剤VEOZAH (2023年5月発売) と地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性治療剤IZERVAY (2023年9月発売) も売上収益に貢献しました。
以上の結果、売上収益は1兆6,037億円 (前連結会計年度比5.6%増) となりました。
コア営業利益/コア当期利益
・売上総利益は、1兆3,112億円 (同6.6%増) となりました。売上原価率は、製品構成の変化等により前連結会計年度に比べ0.7ポイント低下し、18.2%となりました。
・販売費及び一般管理費は、7,401億円 (同17.4%増) となりました。成熟製品における費用の削減 (同約80億円減) があった一方で、為替の影響 (同443億円増) やVEOZAHに関連する費用の増加 (同約400億円増) 、更にIveric Bio社の買収による影響 (同約310億円増) により、総額として増加しました。なお、XTANDIの米国での共同販促費用を除いた販売費及び一般管理費は、5,452億円 (同19.9%増) となりました。
・研究開発費は、2,942億円 (同6.5%増) となりました。主に、為替の影響 (同125億円増) やIveric Bio社の買収による影響により、総額として増加しました。
・無形資産償却費は、988億円 (同157.1%増) となりました。Iveric Bio社の買収で獲得したIZERVAYの無形資産償却費が増加の主な要因となりました。
以上の結果、コア営業利益は1,846億円 (同35.6%減) 、コア当期利益は1,510億円 (同32.8%減) となりました。
<連結業績 (フルベース) >
当連結会計年度の連結業績 (フルベース) は下表のとおりです。売上収益は増加しましたが、営業利益及び当期利益は減少しました。
フルベースの業績には、コアベースの業績で除外される「その他の収益」、「その他の費用」等が含まれます。当連結会計年度における「その他の収益」は87億円 (前連結会計年度:36億円) となりました。
「その他の費用」として、第4四半期連結会計期間において、遺伝子治療プログラムAT808の資産価値の見直しに伴う無形資産の減損損失 (399億円) 、エベレンゾの将来計画の見直しに伴う無形資産の減損損失 (164億円) 、ゾルベツキシマブの条件付対価の公正価値の増加 (80億円) を計上しました。また、Iveric Bio社の買収に伴う権利確定前のストック・オプション等の株式報酬に係る支払 (334億円) (注) を第2四半期連結会計期間に計上したことや、グローバルでの組織改革に伴う一時費用 (254億円) 等の影響で、当連結会計年度における「その他の費用」は1,678億円 (前連結会計年度:1,575億円) となりました。
(注) 第3四半期連結会計期間において、新たな事実が判明し追加的な分析を行ったため、当該株式報酬に係る支払を遡及修正しています。
<主要製品の売上>
(注) 1.VEOZAH:欧州ではVEOZAの製品名で承認取得
2.プログラフ:アドバグラフ、グラセプター、アスタグラフXLを含む
<XTANDI>
・全ての地域で売上が拡大し、ポジティブな為替の影響を除いても前連結会計年度と比較してグローバルで2桁近く成長しました。
・米国において、2023年11月に承認を取得した「生化学的再発のリスクが高いM0 CSPC (非転移性去勢感受性前立腺がん) 」も売上の拡大に貢献しました。
<PADCEV>
・全ての地域で売上が拡大し、グローバル売上は前連結会計年度と比較して大きく増加しました。
・米国において、2023年12月に承認を取得した「局所進行性または転移性尿路上皮がん患者を対象とした一次治療としてのペムブロリズマブ併用療法」での処方が拡大し、売上の伸長に貢献しました。
<XOSPATA>
・発売している全ての地域で売上が拡大しました。
<VEOZAH>
・2023年5月の発売以降、売上は拡大しているものの当初の想定を下回りました。
<IZERVAY>
・2023年9月の発売以降、売上は想定を上回って拡大しました。
<ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ>
・為替のポジティブな影響もあり、グローバルの売上は拡大しました。
<プログラフ>
・為替のポジティブな影響もあり、グローバルの売上は拡大しました。
<地域別売上収益の状況>
地域別の売上収益は下表のとおりです。全ての地域において、売上が増加しました。
(注) 第1四半期連結会計期間から、インターナショナルマーケットに含まれていた一部の国のコマーシャル区分をエスタブリッシュドマーケットに変更しています。前連結会計年度の金額は当該変更を反映しています。
エスタブリッシュドマーケット:欧州、カナダ 等
グレーターチャイナ:中国、香港、台湾
インターナショナルマーケット:中南米、中東、アフリカ、東南アジア、南アジア、ロシア、韓国、
オーストラリア、輸出売上 等
[セグメント情報]
当社グループは、医薬品事業の単一セグメントのため、記載を省略しています。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、1,725億円 (前連結会計年度比1,553億円減) となりました。
・Iveric Bio社の買収に伴う権利確定前のストック・オプション等の株式報酬に係る支払334億円がありました。
・法人所得税の支払額は381億円 (同314億円減) となりました。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、△8,458億円 (同7,613億円支出増) となりました。
・Iveric Bio社等の買収に伴い、子会社の取得による支出が7,850億円 (同7,850億円増) ありました。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、6,141億円 (前連結会計年度は1,956億円の支出) となりました。
・第2四半期連結会計期間にIveric Bio社の買収資金に充当するために資金調達を行ったことに伴い、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーは3,243億円の増加 (前連結会計年度は150億円の減少) 、社債の発行及び長期借入れによる収入が4,723億円 (前連結会計年度比4,223億円増) ありました。
・配当金の支払額は1,167億円 (同163億円増) となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、3,357億円 (前連結会計年度末比412億円減) となりました。
当連結会計年度における生産及び仕入実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 金額は、販売価格に基づいています。
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、以下のとおりです。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。また、文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。
[キャッシュ・フロー]
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
[財務政策]
当社グループは、企業価値の持続的向上に努めるとともに、株主還元にも積極的に取り組んでいます。
成長を実現するための事業投資を優先しながら、配当については、連結ベースでの中長期的な利益成長に基づき、安定的かつ持続的な向上に努めます。また、自己株式の取得を必要に応じて機動的に実施し、資本効率の改善と1株当たり利益の向上を図ります。資金の流動性については、コマーシャル・ペーパー及び借入金による資金調達を行い、また流動性リスクに備えるため取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、当面の運転資金及び設備資金に加え、一定の戦略的投資機会にも備えられる現預金水準を確保しています。
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの事業等は医薬品事業に特有のさまざまなリスクを伴っています。事業展開にあたっては、必要資金を円滑にかつ低利で調達できるよう財務基盤の健全性の維持に努めます。
当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り、判断及び仮定」に記載のとおりです。
(注) 1.以下の技術導入契約を終了しています。
・Frequency Therapeutics, Inc. (米国) とのFX-322に関する技術導入契約
・富士フイルム富山化学株式会社 (日本) とのガレノキサシン (ジェニナック)に関する技術導入契約
2.Merck & Co., Inc. (米国) とのフィダキソマイシン (ダフクリア) に関する技術導入契約については、ゼ
リア新薬工業株式会社へ譲渡しました。
Boehringer Ingelheim International GmbH (ドイツ) との塩酸タムスロシンOCAS製剤に関する技術導出契約については、アルゼンチンの契約を含め、終了しました。
(4) その他
・IVERIC bio, Inc. (米国) 買収に関する契約
当連結会計年度において、当社は、米国のバイオ医薬品企業であるIVERIC bio, Inc. との間で、同社を買収することで合意し、2023年4月に契約を締結しました。この契約に基づき、米国東部時間 2023年7月11日に同社の買収が完了し、同社を当社の完全子会社としました。
・Propella Therapeutics, Inc. (米国) 買収に関する契約
当連結会計年度において、当社は、米国のバイオ医薬品企業であるPropella Therapeutics, Inc.との間で、同社を買収することで合意し、2023年11月に契約を締結しました。この契約に基づき、米国東部時間 2023年12月21日に同社の買収が完了し、同社を当社の完全子会社としました。
当社は、2021年5月に発表した経営計画2021において、「患者さんのより良いアウトカムの実現」「科学の進歩を確かな『価値』へ」「Rx+ビジネスの進展」「サステナビリティ向上の取り組みを強化」の4つを戦略目標として掲げ、「価値」 (注) の創造と提供の実現を目指しています。経営計画2021及び各戦略目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 対処すべき課題」に記載しています。
(注) 患者さんにとって真に重要なアウトカム (治療等による臨床上の成果) を、それを提供するためにヘルスケアシステムが負担するコストで除したもの
当連結会計年度における研究開発活動をはじめとする持続的な成長に向けた主な取り組みは以下のとおりです。
(1) 戦略目標1:患者さんのより良いアウトカムの実現
前立腺がん治療剤XTANDI/イクスタンジ及び中長期にわたり成長を支える重点戦略製品 (注) に優先的に経営資源を振り向けました。上市済の製品については、尿路上皮がん治療剤パドセブや急性骨髄性白血病治療剤ゾスパタ、腎性貧血治療剤エベレンゾ等、当社の成長をけん引する製品の育成と製品価値の最大化を図りました。開発後期段階においては、尿路上皮がん治療剤パドセブのMerck社 (米国) のPD-1阻害剤KEYTRUDA (一般名:ペムブロリズマブ) との併用療法について、局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者における一次治療の追加適応としての米国、欧州及び中国における承認取得、閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状治療剤VEOZAHの米国及び欧州における発売、当連結会計年度に行ったIVERIC bio社 (米国) の買収によって獲得した地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性治療剤IZERVAYの米国における発売、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌治療剤ビロイの日本での承認取得等、多くの進展がありました。
(注) パドセブ、ゾスパタ、ビロイ、エベレンゾ、VEOZAH、IZERVAY、AT132 (2024年3月31日現在)
当連結会計年度におけるXTANDI及び重点戦略製品の売上及び主な進捗状況は以下のとおりです。
・前立腺がん治療剤XTANDI/イクスタンジ (一般名:エンザルタミド)
当連結会計年度売上:7,505億円 (前連結会計年度比13.5%増)
全ての地域で売上が拡大し、為替のプラスの影響を除いても前連結会計年度と比較してグローバルで2桁近く成長しました。米国において、2023年11月に承認を取得した「生化学的再発のリスクが高い非転移性去勢感受性前立腺がん」も売上の拡大に貢献しました。追加適応症の開発の主な進捗状況は以下のとおりです。
2023年9月 中国において、転移性ホルモン感受性前立腺がんに対する追加適応に関する承認申請が受理されました。
2023年11月 米国において、生化学的再発のリスクが高い非転移性ホルモン感受性前立腺がんの追加適応に関する承認を取得しました。今回の承認により、XTANDI/イクスタンジは、本適応症において米国食品医薬品局で承認された最初の新規ホルモン療法となりました。
2024年4月 欧州において、サルベージ放射線療法が適応とならない生化学的再発のリスクが高い非転移性ホルモン感受性前立腺がんの追加適応に関する承認を取得しました。
・尿路上皮がん治療剤パドセブ (一般名:エンホルツマブ ベドチン)
当連結会計年度売上:854億円 (前連結会計年度比92.1%増)
全ての地域で売上が拡大し、グローバル売上は前連結会計年度と比較して大きく増加しました。米国において、2023年12月に承認を取得した「局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者を対象とした一次治療としてのKEYTRUDAとの併用療法」での処方が拡大し、売上の伸長に貢献しました。追加適応症の承認取得及び開発の進捗状況は以下のとおりです。
2023年4月 米国において、KEYTRUDAとの併用療法について、局所進行性又は転移性尿路上皮がんでシスプラチン不適応の患者における一次治療の追加適応に関する迅速承認を取得しました。
2023年12月 米国において、本剤とKEYTRUDAとの併用療法について、局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者における一次治療として、追加適応に関する承認を取得しました。当該承認により、この併用療法は、局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者の一次治療における現在の標準治療である白金製剤を含む化学療法に代わる最初の治療選択肢となりました。
2024年1月 欧州において、本剤とKEYTRUDAとの併用療法について、局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者における一次治療の追加適応に関する承認申請が受理されました。
2024年2月 日本において、2024年1月に行った局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者の一次治療を対象としたKEYTRUDAとの併用療法についての追加適応に関する承認申請に対し、優先審査品目の指定を受けました。
2024年3月 中国において、局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者の一次治療を対象としたKEYTRUDAとの併用療法について、生物学的製剤一部変更承認申請が受理されました。
・急性骨髄性白血病治療剤ゾスパタ (一般名:ギルテリチニブフマル酸塩)
当連結会計年度売上:551億円 (前連結会計年度比18.3%増)
発売している全ての地域で売上が拡大しました。追加適応症の開発の進捗状況は以下のとおりです。
2024年2月 FLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病患者における造血幹細胞移植後の維持療法を対象とした第Ⅲ相MORPHO試験の結果を受けて、本試験に基づく開発を中止したことを公表しました。
・CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌治療剤ビロイ (一般名:ゾルベツキシマブ)
承認取得及び開発の進捗状況は以下のとおりです。
2023年7月 欧州において、Claudin 18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性又は転移性胃腺がん及び食道胃接合部腺がんの治療薬としての販売承認申請が受理されました。
2023年8月 中国において、Claudin 18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性又は転移性胃腺がん及び食道胃接合部腺がんの治療薬としての生物学的製剤承認申請書が受理されました。
2024年1月 米国における、Claudin 18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性又は転移性胃腺がん及び食道胃接合部腺がんの治療薬としての生物学的製剤承認申請について、米国食品医薬品局から、ゾルベツキシマブの医薬品製造受託機関の施設を査察した結果、未解決の指摘事項があるため、審査終了目標日までにゾルベツキシマブを承認できない旨の通知を受領しました。当社は本指摘事項を迅速に解決し、必要とする患者さんへ本治療剤を届けるため、米国食品医薬品局及び医薬品製造受託機関と連携しています。
2024年3月 日本において、「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」を効能・効果として製造販売承認を取得しました。
・腎性貧血治療剤エベレンゾ (一般名:ロキサデュスタット)
当連結会計年度売上:45億円 (前連結会計年度比41.0%増)
欧州においては売上が拡大した一方、日本では売上が減少しました。開発の進捗状況は以下のとおりです。
2023年11月 欧州において、小児における慢性腎臓病に伴う貧血を対象として第Ⅲ相試験を開始したことを公表しました。
・閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状治療剤VEOZAH (一般名:fezolinetant)
当連結会計年度売上:73億円
2023年5月の発売以降、売上は拡大しているものの当初の想定を下回りました。承認取得及び開発の進捗状況は以下のとおりです。
2023年5月 米国において、閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状の適応に関する承認を取得しました。
2023年12月 欧州において、閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状の適応に関する販売承認を取得しました。
2024年3月 日本において、閉経に伴う血管運動神経症状を有する患者を対象とした第Ⅲ相STARLIGHT2試験の最初の患者への投与を開始しました。
2024年4月 補助内分泌療法中の乳がん患者における血管運動神経症状を対象として、第Ⅲ相段階に移行したことを公表しました。
・地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性治療剤IZERVAY (一般名:avacincaptad pegol)
当連結会計年度売上:121億円
2023年9月の発売以降、売上は想定を上回って拡大しました。承認取得及び開発の進捗状況は以下のとおりです。
2023年8月 米国において、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性の適応に関する承認を取得しました。
2023年8月 欧州において、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性の治療薬としての販売承認申請が受理されました。
2023年9月 地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性患者を対象とした第Ⅲ相GATHER2試験において、良好な投与後24カ月時点のトップライン結果が得られたことを公表しました。
2024年3月 米国において、第Ⅲ相GATHER2試験の良好な2年間に渡る投与データの添付文書への追加に関する一部変更承認申請が受理されました。
また、その他の主要製品の売上は以下のとおりです。
・過活動膀胱治療剤ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ (一般名:ミラベグロン)
当連結会計年度売上:1,981億円 (前連結会計年度比5.0%増)
為替のプラスの影響もあり、グローバルの売上は拡大しました。
・免疫抑制剤プログラフ (一般名:タクロリムス水和物)
当連結会計年度売上:2,031億円 (前連結会計年度比2.2%増)
為替のプラスの影響もあり、グローバルの売上は拡大しました。
上記以外に、医療用医薬品事業に関する以下の取り組みを行いました。
2023年9月 アイルランドのトラリーに無菌製剤の製造ラインを備えた工場を新設することを決定しました。
2023年12月 国内営業戦略及び営業体制を見直し、「特別転進支援制度」を実施しました。本制度は2024年3月末に完了しました。
2024年4月 子会社であるアステラス B.V. とアステラス ファーマ ヨーロッパ B.V. は、メッペル工場のDelpharm Industrie社 (フランス) への事業譲渡を完了しました。
(2) 戦略目標2:科学の進歩を確かな「価値」へ
当社は、Focus Areaアプローチという研究開発戦略の下、多面的な視点で創薬ターゲットを絞り込む新しいアプローチで革新的な製品の創出に取り組んでいます。2024年3月現在、Focus Areaのうち重点的に研究開発投資を行うPrimary Focus (注1) として「遺伝子治療」「がん免疫」「再生と視力の維持・回復」「ミトコンドリア (注2) 」「標的タンパク質分解誘導」の5つを認定しています。
(注) 1.Focus Areaの中における特定の組合せで、科学的妥当性、研究開発や商業化の実現可能性、プロジェクトの充実度や進捗度の観点から選択され、優先的な投資対象となるもの
2.2024年4月にミトコンドリアのPrimary Focusとしての認定を解消しました。
当連結会計年度における各Primary Focusの主な進展は以下のとおりです。
・Primary Focus 遺伝子治療
2023年5月 Kate Therapeutics社 (米国) との間で、新規のMyoAAVカプシドを介して正常に機能するMTM1遺伝子を送達する前臨床段階の次世代遺伝子治療プログラムの全世界における開発・製造・商業化に関する独占的ライセンス契約を締結しました。
2024年3月 遺伝子治療薬ASP2016について、フリードライヒ運動失調症に伴う心筋症患者を対象とする第Ⅰ相段階に移行しました。
・Primary Focus がん免疫
2023年4月 がんを対象として第Ⅰ相段階にあった腫瘍溶解性ウイルスASP9801の開発を中止したことを公表しました。
2023年4月 急性骨髄性白血病及び骨髄異形成症候群を対象として第Ⅱ相段階に、固形がんを対象として第Ⅰ相段階にあった人工アジュバントベクター細胞ASP7517の開発を中止したことを公表しました。
2023年4月 がんを対象として第Ⅰ相段階にあった人工アジュバントベクター細胞ASP0739の開発を中止したことを公表しました。
2023年8月 Poseida Therapeutics社 (米国) との間で、がん領域の細胞医療における戦略的投資を含む提携に関する契約を締結しました。
2023年10月 レプチン-IL-2遺伝子を搭載した全身投与型腫瘍溶解性ウイルスASP1012が第Ⅰ相段階に移行しました。
2023年11月 CD20陽性B細胞リンパ腫を対象とする細胞医療ASP2802が第Ⅰ相段階に移行しました。
2023年12月 Elpiscience Biopharma社 (中国) との間で、新規の二重特異性マクロファージ誘導抗体である、ES019及び別の1つのプログラムに関する共同研究及びライセンス契約を締結しました。
2024年2月 Kelonia Therapeutics社 (米国) との間で、新規のがん免疫療法プログラムに関する共同研究及びライセンス契約を締結しました。
2024年4月 がんを対象として第Ⅰ相段階にあった抗TSPAN8/抗CD3二重特異性抗体ASP2074の開発を中止したことを公表しました。
・Primary Focus 再生と視力の維持・回復
2023年7月 4D Molecular Therapeutics社 (米国) との間で、同社独自の高い網膜指向性を持つアデノ随伴ウイルスベクターR100を、眼科希少遺伝性疾患における1つの創薬ターゲットに使用するライセンス契約を締結しました。
・Primary Focus ミトコンドリア
2023年4月 鎌状赤血球症を対象として第Ⅰ相段階にあったBACH1阻害薬ASP8731/ML-0207の開発を中止したことを公表しました。
2024年4月 原発性ミトコンドリアミオパチーを対象として第Ⅱ相段階に、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象として第Ⅰ相段階にあったPPARδ調節剤ASP0367の開発を中止したことを公表しました。
・Primary Focus 標的タンパク質分解誘導
2023年6月 Cullgen社 (米国) との間で、革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及び独占的オプション契約を締結しました。
2023年7月 ペプチドリーム株式会社との間で、2つの創薬標的に対する新規タンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及びライセンス契約を締結しました。
2024年4月 KRAS G12D分解誘導薬ASP4396について、がん患者を対象とする第Ⅰ相試験の最初の症例への投与を達成しました。
当連結会計年度におけるPrimary Focus以外の研究開発活動の主な進展は以下のとおりです。
2023年4月 国立大学法人 京都大学iPS細胞研究所との間で、ヒト人工多能性幹細胞由来の分化細胞・組織の活用をより一層推進し革新的医療ソリューションを創出するため、第二期共同研究契約を締結しました。
2023年4月 感音難聴を対象として第Ⅱ相段階にあったFX-322の開発を中止したことを公表しました。
2023年5月 ソニー株式会社との間で、同社が独自開発した高分子材料による、がん領域における新規抗体薬物複合体プラットフォームの創製に向けた共同研究契約を締結しました。
2023年8月 米国マサチューセッツ州に、最先端のライフサイエンス拠点を開設することを公表しました。
2023年8月 慢性鼓膜穿孔を対象として第Ⅰ相段階にあったASP0598の開発を中止したことを公表しました。
2023年10月 三井不動産株式会社が運営する「三井リンクラボ柏の葉1」内に、同社と共に、当社のオープンイノベーションの拠点を開設しました。
2023年10月 BioLabs Global社 (米国) 及び三井不動産株式会社との間で、つくば及び柏の葉におけるライフサイエンスエコシステムの発展に向けた覚書を締結しました。
2023年11月 国立大学法人 筑波大学との間で、戦略的パートナーシップに関する確認書を締結しました。
2023年11月 ミラベグロンについて、小児における過活動膀胱を対象として第Ⅲ相段階にあった開発を中止したことを公表しました。
2023年11月 アルコール使用障害を対象として第Ⅰ相段階にあったGABAB受容体陽性アロステリック修飾物質ASP8062について、開発を中止したことを公表しました。
2023年12月 Propella Therapeutics社 (米国) の買収を完了し、同社が前立腺がん治療薬として開発中の次世代アンドロゲン合成阻害薬PRL-02を獲得しました。本買収により、同社は当社の完全子会社となりました。
2023年12月 アゾール系抗真菌剤isavuconazoleについて、小児における侵襲性アスペルギルス症及び侵襲性ムーコル症を適応症として、米国で承認を取得しました。
2023年12月 Mass General Brigham社 (米国) との間で、戦略的提携に関する契約を締結しました。
(3) 戦略目標3:Rx+ビジネスの進展
当社は、医療用医薬品 (Rx) に留まらず、ペイシェントジャーニー (診断、予防、治療及び予後管理を含む医療シーン) 全体において、様々な方法で患者さんに「価値」を届けることを目指しています。私たちはこの取り組みをRx+事業と呼んでいます。「科学的根拠に基づくヘルスケアソリューションによって、心身ともに健康に、自分らしく生きることができる社会」の実現を目指し、Rx+プログラムの事業化に鋭意取り組んでいます。
当連結会計年度における主な進展は以下のとおりです。
・精密手術をガイドする蛍光造影剤
2023年11月 蛍光造影剤ASP5354 (一般名:pudexacianinium chloride) について、第Ⅲ相試験の最初の症例への投与を実施したことを公表しました。
2024年2月 ASP5354について、リンパ節マッピングを実施する乳がん及びメラノーマ患者でのリンパ節の可視化・同定を対象として第Ⅱ相段階にあった開発を中止したことを公表しました。
・モバイルヘルスケアソリューション
2023年6月 Eko Health社 (米国) との間で、同社の最新のデジタル聴診器Eko CORE 500及びAIを活用した心血管疾患検出ソフトウェアについてのグローバル供給・ライセンス契約を締結しました。
2023年11月 運動支援サービスFit-eNce及びFit-eNce Homeについて、プログラムを中止したことを公表しました。
2024年2月 Welldoc社 (米国) と共同で製品化を進めている糖尿病患者を対象とした疾病自己管理支援のためのデジタルヘルス製品であるBlueStarについて、ロシュDCジャパン株式会社の血糖自己測定器アキュチェックガイドMeとの組合せ医療機器 (注) として2型糖尿病患者を対象とする検証的治験において患者組み入れを開始しました。
(注) 診断や治療等に必要な医療機器を組み合わせた状態で、薬事手続がなされているもの
・心疾患患者サポートエコシステム
2023年12月 使い切りホルター心電計EG Holterの販売を終了しました。
(4) 戦略目標4:サステナビリティ向上の取り組みを強化
2022年度、9つの最重要課題をサステナビリティ向上のための2つの柱としてまとめ、さらに、社会からの要請の高い環境に関して2つの重要課題を加えて、サステナビリティ方針を策定しました。

2023年度、サステナビリティ方針において、より明確な指標をもって2025年度までのコミットメントの進捗を測るため、約50の指標を設定しました。これらの指標は年度計画に反映され、全社的な取り組み事項として実行されます。
当連結会計年度における代表的なサステナビリティ向上の取り組みとその結果は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。
なお、当連結会計年度の研究開発費は