文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、2030年を見据えたビジョンを「AR-2030 VISION」として定め、その行動指針は、「ステークホルダー・エンゲージメントを高める」としています。会社は社会のためにあること、また持続的に社会の責任を果たして社会に貢献できる企業であり続けることを常に考えていきます。そして私たちを取り巻くすべてのステークホルダーとの対話を通じて、企業価値を高めてまいります。
この「AR-2030 VISION」の実現に向けて、2023年4月~2026年3月の三ヵ年をどのように取り組んでいくかを第14次三ヵ年中期経営計画として取りまとめ、テーマを「後継」と「Well-being」としました。中期基本方針は、「魅力を高めて新たな価値を提供しよう」としています。中期経営戦略は、①事業活動の深化・進化・新化、②スマートファクトリーの実践、③Well-beingを高める、④地域社会貢献として、ESG経営を進化させ、4事業が新たな施策を持って2030年またその先の将来に向かって「新しいカタチ」に挑戦するステージに入ります。これまで以上に柔軟かつ好奇心旺盛な思考で行動し、事業活動を通じて様々な方々と一緒に未来につながるカタチをつくっていきたいと考えています。
新型コロナウイルス感染症も5類に分類され、社会活動が再開するなか、外部環境や事業環境の変化に素早く対応すべく「駆け抜ける」をスローガンに掲げて果敢に挑戦してまいりました。
当社グループは、それぞれの地域の未来につながる事業価値を創造し、お客様に満足し続けていただける岩盤を形成するため、あらゆる角度からリスクを分析・評価して対策をこうじております。それら全ての活動の根底にあるのは人材、無形資産価値だと考えております。総務・採用人事・知財・生産技術などの部門が縦横無尽に動きながら、時代に合わせて従業員に働きやすい環境を提供し、社会に存在価値を認めていただける企業であり続ける。その実現のためにも組織単位でなく全社の知恵を集めて議論・判断・実行していく「共同活動」に取り組んでまいります。
「朝日ラバーらしさ」は「機動力・対応力・誠実」だと考えています。光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信の4つの事業分野で、技術力の向上と新製品・開発製品によるお客様と市場の満足を高める活動が、少しずつカタチになりはじめています。産学連携による実証実験でのデータ収集と検証、他社との協業による技術連携と販売網の拡大、また海外に向けた新しい製品の展開など、具体的な活動による成果が現れ始めています。
私たちは、「個性を尊重し特徴ある企業に高めよう。豊かな人間関係、生活の向上を目指し社会に奉仕しよう。」という当社の社訓を心に刻み、当社を取り巻くステークホルダーの皆様との対話を通じて、さらに次の世代へとつなげていきます。
業績目標は、連結売上高85億円以上、連結営業利益率5%以上といたしました。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、取締役会の指示のもと、業務執行の取締役と執行役員で構成するESG会議を毎月実施し、サステナビリティに関する活動の進捗と新たに発生する課題の認識と対応について議論し、方針を決定して取締役会に報告する体制を整えています。対策については、組織の活動によるものと各機能を交えた安全衛生委員会、環境省エネ委員会、人材育成会議などの会議・委員会にて具体的な活動計画を策定、実施と確認のサイクルを運営しています。
(2)戦略
(人事戦略)
当社グループの人事基本戦略として、従業員との対話を大切にし、安心・健康でやりがいのある働きやすい職場づくりに努めます。従業員が公平に評価され、働きがいやモラールの向上につながるよう、資格等級制度、評価制度、給与制度を見直し、目標を必ず達成できる企業体質の構築を目指します。
朝日ラバーが目指す人材像
1. 私たちは、一人ひとりが自立心を持って目標に挑戦します。
2. 私たちは、個性を尊重しつつ人間性の向上を育み、仕事を通じて自己実現できる環境づくりを目指します。
3. 私たちは、公平に機会を与え、公正かつ具体的に評価し処遇を決めます。
当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針は、以下となります。
朝日ラバーは、経営基本方針の骨子として「広く社会に貢献すること」「人間として成長していくこと」を掲げ、一人ひとりの自主的な成長意欲や感謝の気持ちを重んじながら、常に社会や組織に最大限貢献できる人材育成を実施しています。
また、社内環境整備に関する方針は、以下となります。
①人格と個性の尊重
朝日ラバーは、従業員一人ひとりが有している人格と個性を尊重し、ワクワクできる働きがいのある職場や自身が成長できる環境づくりを進めます。
②コンプライアンスの推進
朝日ラバーは、果たすべき社会的責任を自覚し、コンプライアンスを遵守するため継続的に推進活動を行い、風通しの良い企業風土づくりを進めます。
③環境への配慮
朝日ラバーは、地球環境にやさしいゆとりと豊かさを実現できる社会環境と、安全、安心でイキイキと働ける職場環境の整備を進めます。
上記の方針のもと、従業員個人の保有するスキルを踏まえて、年間の教育計画に反映させています。従業員の保有能力を把握した上でのキャリアアッププランの策定や管理職のスキルアップ制度の導入を進めています。また、自己啓発の促進につとめ、通信教育などは修了を条件に費用はすべて会社負担として自主的な知識の習得を支援しています。
また、育児休暇、介護休暇、短時間勤務制度等のワーク・ライフ・バランスを考慮した施策も実施しています。当連結会計年度からは、年次有給休暇の時間単位取得を可能とする制度をスタートしました。また、子の看護休暇について、これまで小学校就学前までの子が対象でしたが、小学校6年生修了までの子に範囲を拡大させました。さらに、Well-being向上委員会を発足し、様々な部署・世代をメンバーにして従業員のWell-being向上に向けた制度構築を進めています。
朝日ラバーでは、従業員が健康でいきいきと仕事に取り組み、能力を最大限発揮できるように「こころと身体の健康増進」に向けた活動を推進しています。毎年ストレスチェックを実施し、その結果からの集団分析結果を活用した職場環境改善の取り組みを行なっています。産業医・保健師・当社管理部門が一体となった「健康支援室」は、特定保健指導を中心に食生活と運動の両面からの生活習慣病改善をサポートしています。2021年度から、希望者を対象に会社が検査費用を全額負担して、線虫検査によるがん検査を実施しています。
(環境活動)
当社は法令・法規・条例を遵守し、「環境にやさしいものづくり」と「確かな品質」の実現に向け、環境基本方針および品質基本方針を定め、環境・品質を一体とした考えのもとで品質・環境方針を定めています。
お客様の視点や市場のニーズに沿った品質を継続的に高めていく活動は重要であり、品質不具合はお客様の信頼を損なうとともに原料やエネルギーの無駄な消費と廃棄物の増大を招くことになります。そのためにも環境・品質問題を重要課題とし、統合マネジメントシステムを確実に運用し、社会に貢献する企業を目指します。
環境基本方針
当社は環境問題が人類共通の重要課題であることを認識し、「環境にやさしいものづくり」をスローガンとして、地球環境の保全と社会への貢献を目指して活動します。
当社で取り組んでいる主な環境活動は、以下となります。
① CO2排出量の低減
当連結会計年度において当社の総CO2排出量は966tとなり前期比0.1%減となりました。CO2排出の約9割を占める電力起因のCO2を削減するため、2021年12月より全工場において、外部からの購入電力はすべて再生可能エネルギー起因の電力(水力発電による属性のある非化石証書付電力)を使用しています。これにより、工場部門でのエネルギー消費によるCO2の発生は、ボイラー燃焼時に発生するものだけになります。さらに、段階的に自家消費用の太陽光発電設備を設置しています。また、蒸気配管の断熱や排熱の利用、電気エネルギーとの組み合わせなどでエネルギーの効率的な使用を検討するとともに、今後も再生可能エネルギーを利用した生産活動を推進していきます。
② 電力使用量の低減
当連結会計年度において当連結会計年度において当社で使用した電力量は約790万kWhとなり前期比2.5%減となりました。このうち、当社で自家消費した太陽光発電量は、約97万kWhで全工場で使用した総電力の12.2%となりました。特に、太陽光発電の導入を進めている白河、白河第二工場では全体使用量の25.3%となりました。省エネ活動としては、設備電源を中心とした不使用時または不必要時の停止(手動による停止、有圧換気扇に温度センサ取付による停止)、工場エア用のコンプレッサの組み合わせ及び吐出圧力の見直し、エア使用設備の運転停止時のエアバルブの閉止、ゴム材料の混練り方法の改善、設備の断熱化推進によるヒーター電力削減と周囲温度の上昇抑制によるエアコン電力低減、加湿設備や給排気設備のメンテナンスによる効率の維持他、電力の見える化によるムダの発見と運用改善を中心とした活動を進めていきます。
③ 廃棄物の削減
当連結会計年度において当社の廃棄物は317tとなり前期比4.8%増となりました。廃棄物重量の4割強を占めるゴム系廃棄物は、ゴム成形の性質上、生産量に対して一定割合で発生する性質があります。また、ゴムは一度、加硫反応させると元の材料に戻すことができません。そのため、生産量の増加は廃棄物の増加という関係になります。その前提の上に不良品などのロスによる廃棄物が上乗せされることから、これらのロスを減らす活動に取り組んでいます。バリの少ない金型設計による廃棄物削減に加え、バリの再資源化に対する活動にも取り組んでいます。
ポリシートに関して、従来、ポリシート(廃プラスチック類)はRPF燃料化されサーマルリサイクルされていますが、一部のポリシート(廃プラスチック類)はリサイクル業者へ資源として提供することにより、再生ペレットとなり、その後、ごみ箱や(玩具など、新たなプラスチック製品として再資源化(マテリアルリサイクル)されています。
(3)リスク管理
当社グループのリスクマネジメント活動は、事業活動に関わるリスクを抽出、評価、特定し、会社の社訓、経営基本方針、中期経営計画などを踏まえて、当社事業のビジネスチャンスに経営資源を投入するための指針となる年度経営方針を取締役会決議により策定します。その活動の詳細は、「
リスクマネジメントサイクルのうちでリスク評価の段階で、サステナビリティに関するリスクの認識とその発生可能性と影響度について評価を行い、次年度の活動計画に組み入れていきます。なお、2024年度の重要なリスクのうち、サステナビリティに関するリスク及びその内容と前連結会計年度の活動内容、発生可能性と影響度の評価については、3「事業等のリスク」の各項目に表示していますのでご参照ください。
(4)指標及び目標
サステナビリティに関するリスクを踏まえ当社の活動内容と実績については、
当社グループのリスクマネジメント活動は、事業活動に関わるリスクを抽出、評価、特定し、会社の社訓、経営基本方針、中期経営計画などを踏まえて、当社事業のビジネスチャンスに経営資源を投入するための指針となる年度経営方針を取締役会決議により策定します。組織の内部・外部のリスクを低減する活動として、事業部門の活動方針や会議体のテーマとして重要なリスク低減活動を組み込み、その活動を経営者が半期に一度レビューします。具体的なサイクルは以下となります。
①各月の状況把握
工場会議、経営会議等の会議体、また主要テーマごとの委員会による内部・外部の課題リスクの状況変化の把握
②トップ診断(半期に一度)
会社方針および各部門、会議体、委員会の年度計画を内部・外部のリスクに照らして、その活動内容の進捗と変化の確認および今後の活動計画の修正
③リスクマネジメント会議(半年に一度)
各部門、会議体、委員会による内部・外部のリスクの発生頻度また発生時の影響度を抑える活動の評価と内部・外部の課題の変化を踏まえて、新たな課題の発生の有無、課題の発生頻度の変化、発生時の重要度合の変化を評価します。評価の内容は取締役会に報告しています。
リスクの評価は、今年度の事業活動や会社を取り巻く環境から新たに発生したリスクの項目を挙げ、取締役と本部長それぞれがリスクの発生する可能性と発生した場合の影響度を点数評価して集約し、その点数の積でリスクの重要度を算出します。また、発生可能性または影響度のどちらかでも基準を脅威度とし、重要度と脅威度の高いリスクを特に重要度の高いリスク(マテリアリティ)として選定し、リスクを回避または低減する活動につなげます。

上記の方法により、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、下記中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1.重要度の高いリスク
(1)主要製品・新規受注製品の大幅な減少(社外要因 市場リスク 発生可能性:高 影響度:高)
当社製品は、そのほとんどがゴム部品として顧客のもとで最終製品として組み込まれ、市場へと展開されます。この最終製品の販売動向については顧客に依存するものであり、顧客の販売戦略上、計画していた販売数量に変動が生じることがあります。また、当社独自技術を生かしてお客様に新しい付加価値を提案できる新製品・開発製品の市場供給を継続的に行うこと、また、既存製品でも新しいお客様に向けた製品開発による市場の開拓によって、持続的に事業を成長させていく活動を進めています。品質、価格、納期などの条件を顧客と決定し、受注した製品の量産を進めていますが、最終製品の販売動向や市場動向、顧客の販売戦略上の事情により、受注数量が計画よりも減少することがあり、売上高の減少と利益の減少につながる可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、新型コロナウイルス感染症や半導体不足の影響が小さくなり受注は回復傾向になっているものの、特に自動車関係の製品で受注予測と実受注との乖離が見られることから、WEBミーティングと直接訪問による密着活動を推進して受注を増やすとともに、月初、月中、月末での予測の精度向上に取り組み、取締役会への情報共有化を図り、営業部門から工場部門への情報展開と柔軟な生産体制の実現に取り組んでまいりました。これにより、工場の生産体制の平準化に努め、受注状況に応じた工場間のフレキシブルな生産要員体制を進めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんがやや増加していると認識しており、影響度は同程度として依然として高い水準であると判断しています。
(2)新製品立ち上げ・自社開発の遅れ(社内要因 生産・技術リスク 発生可能性:高 影響度:高)
当社グループでは、当社独自の技術を生かしてお客様のニーズに合わせた新製品の開発に取り組んでいますが、独自の技術のさらなる深掘と強化、また技術の複合化によりこれまでにない付加価値を生み出す取り組みは、短期の受注活動には結びつかないものの、新規顧客開拓や既存顧客との関係強化による中期的な事業規模の拡大につながるため、経営の重要課題として一定の経営資源を投入し継続的に取り組んでいます。新製品開発の取り組みはロードマップを作成し、計画的に進めていますが、特に難易度の高いテーマの進捗の遅れや他社の技術開発の動向を踏まえた計画の見直しなどによる新製品開発の遅れは、将来の受注減による売上高の減少と継続的な事業の成長に大きく影響する可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、開発スケジュールの明確化と遅れに対する課題解決を進めてまいりました。また、技術員で構成する営業技術グループメンバーが直接顧客に出向いて市場ニーズと顧客要求をヒアリングし、素早く試作品を提供し、製品化のイメージを共有して新製品の立ち上げスピードを向上させる施策を進めました。さらに、失注案件についてその要因を分析し、次期開発案件の受注率とスピードアップを図るなど、影響度の低減に取り組んでまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性と影響度は同程度として依然として高い水準であると判断しています。
(3)エネルギーコストの高騰(社外要因 市場リスク 発生可能性:高 影響度:高 サステナビリティリスク)
当社グループでは、国内4拠点、海外1拠点でゴム製品の製造を行い、それぞれの事業に適した生産環境を整えております。国内2拠点でクリーンルームを設置し、各工程においては、油圧プレス機や自動アッセンブリ機、専用の検査機などの機械設備の稼働、そして、一部の医療用ゴム製品の製造工程では水処理工程を組み込むなど、これらの稼働に使用する電気代や水道代が上昇することで製造原価が上昇する恐れがあります。当連結会計年度における当社を取り巻く環境は、昨今のグローバルな情勢の変化などにより、エネルギーコストの中でも特に電気代が上昇しており、収益に与える影響が大きくなっています。
このリスクへの対応として、国内4拠点の工場の屋上に太陽光パネルの設置や省エネルギーにつながる改善活動を行うことで、外部から購入する電気代を減らす取り組みを進めております。また、全員参加の品質・生産性改善活動により作業効率を改善し、エネルギー当たりの生産量を増加させる取り組みも続けております。さらに営業部門においては、価格上昇分を販売単価に反映していただく交渉にも取り組んでおります。また、毎月の月例報告会で、工場ごとの電力使用量の報告と、実施した施策がどれだけ効果を発揮して年間の電力量削減に貢献するかを図解で示し、従業員の成果の見える化とモチベーション向上につなげています。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することはできませんがやや減少していると認識しており、影響度もやや減少していると判断しています。
(4)原材料価格の高騰・入手困難(社外要因 市場リスク 発生可能性:高 影響度:高 サステナビリティリスク)
当社グループの製品は、ゴム原料およびその添加物を仕入れ、加工し、販売しています。こうした原材料の価格は、グローバルな市況の変化に影響を受け変動することがあり、年度計画策定時に比べて大幅に高騰した場合、売上原価の増加など業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、グローバルな物流問題などにより、特別な材料を予定期日に予定数量を入手することが困難になる可能性もあります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、コストアップによる影響を算出し、ものづくりにおける原価改善を進めると同時に、顧客に環境変化を理解いただくよう努めて、価格上昇分を販売単価に反映していただく交渉を続け、販売単価への転嫁を妥結してまいりました。また、重要な材料の確保と代替品の調査や新たな仕入先の開拓を進め、安定して原材料を入手するための取り組みを進めています。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は新型コロナウイルス感染症の広がりがほぼ終息し、原材料の供給がほぼ回復しつつあることため減少、影響度は横ばいであると判断しています。
(5)採用募集の未達(社外要因 労働・雇用リスク 発生可能性:高 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループでは、継続的な事業の成長と働く環境の活性化に向けて、中期的な計画のもと、毎年の定期採用と臨機応変な中途採用を行っておりますが、少子化に伴う学生数の減少や募集企業の増加により、当社グループの採用募集活動にエントリーする人材の不足や、求める人材とのアンマッチなどにより、計画した採用を実施できないことがあり、持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、大学や学校との関係づくりはWEBによる説明会により実施が困難な側面が続くなかで、インターンシップの受け入れや採用媒体の活用を進めてまいりましたが、2024年4月の新卒入社者が無しという結果になりました。2024年度は全社での採用活動を推進し、地域や学校との接点を増やして会社と事業の魅力をアピールしていく体制を整えつつあります。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性と影響度はやや増加していると判断しています。
(6)新市場・新事業リスクの認識不足(社内要因 企業リスク 発生可能性:高 影響度:高 )
当社グループでは、当社独自技術を生かしてお客様に新しい付加価値を提案できる新製品・開発製品の開発を継続して進めており、また、既存製品でも新しいお客様に向けた製品開発による市場の開拓を進めています。新製品・開発製品また既存製品を新しい市場に向けて提案し、その市場ならではのニーズに応えて継続して収益を上げられる事業に育てていくことが、当社グループの持続的な成長につながると考えています。新しい市場や事業を展開する際には、顧客、仕入先、競合の調査を進めることに加えて、関係する法令や知的財産の状況、市場固有の商慣習などを調査する必要があり、既存市場や既存事業にのっとった事業展開では、想定外の経済的損失や機会損失が発生する可能性があります。
このリスクの発生可能性が高まっていることから、外部機関を利用した多角的な情報収集網の構築と、リスク分析を定期的に行うなどにより、発生可能性を抑止し、発生した場合の影響度を下げる活動を進めてまいります。
(7)従業員の高齢化(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:中 影響度:中 サステナビリティリスク)
当社グループでは、競争力の源泉の一つが従業員であることを認識し、従業員が能力を発揮し、働きやすい職場環境を整備することで従業員満足を実現していく活動を進めていますが、従業員の高齢化に伴い、人件費の増加だけでなく法令への対応や業務上の役割の体制が整備されない場合、従業員満足度が低下し、将来の競争力の低下につながる可能性があります。
このリスクへの対応として、専門的な業務を行っている場合でも属人化しないよう複数人での対応や共有化、また次の世代への業務の引継ぎやローテーションする体制を推進してまいりました。
このリスクの発生可能性は増加していますが、影響度は横ばいであると判断しています。
(8)社内ルールの逸脱(社内要因 労働・雇用リスク 発生可能性:高 影響度:高 サステナビリティリスク)
当社グループの活動は、顧客への提案活動から設計、受注、仕入、製造、販売という事業プロセスを通じて収益を上げる活動を進めていますが、その品質や財務報告の信頼性は社内ルールの順守が前提であり、これを逸脱することで正しい事業活動を妨げ、株主をはじめとする市場関係者に正しい情報を伝えることができず、社会の一員としての企業の信頼を損ねる可能性があります。
このリスクへの対応として、品質と環境マネジメントシステムの国際規格であるISO9001とISO14001を一本化したISO統合マネジメントシステムをベースとして、全社でマネジメントシステムを尊重し、さらなる品質向上を目指し活動しています。内部統制システムの運用状況を監査等委員である取締役が主導してマネジメントフローをチェックし、内部監査部門が組織の活動状況を毎月確認しています。また、コンプライアンスに関する従業員アンケートを実施し、職場の問題点を抽出して勉強会を開催するなど、ルールを守る意識を醸成する活動を進めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性と響度はやや減少していると判断しています。
(9)顧客からの大幅コストダウン要求(社外要因 市場リスク 発生可能性:中 影響度:中)
当社グループの製品は、顧客の要求仕様を踏まえて品質、価格、納期などの条件が決定し、量産していますが、最終製品の販売動向や市場動向、顧客の事情により、価格を大幅に下げるコストダウンを要求されることがあります。大幅なコストダウンは販売単価の継続的な下落が売上高の減少につながり、業績と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、顧客からのコストダウンの要請に対し、工場での材料歩留りの向上や購入材の価格交渉など原価低減活動を行うと同時に、顧客には販売単価を維持しながら機能面をアップできるような付加価値を提案できるよう技術の進化やものづくりの効率性の向上に努めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんがやや増加していると認識しており、影響度は減少していると判断しています。
(10)重大なクレーム(社内要因 生産・技術リスク 発生可能性:中 影響度:高)
当社グループでは、顧客に提供する製品の品質には、製品設計、工程管理、検査体制に至るまで、万全の体制を整えるべく努力しております。しかし、万一、顧客に納品した製品に不具合があった場合、返品や代納の対応による売上原価の増加だけでなく、お客様の信頼を損ない、将来の受注減による売上高の減少につながります。さらに、それが最終製品として市場に流出し、検証の結果、当社製品による不具合が認められ、製造物責任法による損害賠償責任が発生した場合、損失の計上により業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、お客様の要求事項の確認と不具合発生時の速やかな情報伝達により早期に適切な対応がとれる体制を整えてきました。また製造工程のルールを守る意識付けとQCサークル活動の推進や改善提案制度による改善活動やQCパトロールによる改善により、不良品を社外に流出させない取り組みと恒久的に不良を出さない対策を進めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性やや増加し、影響度は高い水準にあるもののやや減少と判断しています。
(11)社外の革新的な技術、新製品、新製法の出現(社外要因 市場リスク 発生可能性:中 影響度:中)
当社グループでは、独自の技術を応用した製品開発と事業展開を図ることで、お客様への付加価値の提案による差別化を事業戦略の柱としておりますが、既存製品や既存事業または今後展開を検討している製品や事業に対し、同業種異業種を問わず、機能または価格等の面で決定的に顧客に選択優位性を与える革新的な技術、新製品、新製法の出現は、市場の独占や寡占状態となり当社製品や事業が排斥されることにより、将来の受注減による売上高の減少と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、WEBセミナーやWEB展示会を積極的に活用し、また外部機関と連携して技術と知財トレンドの動向について多くの情報を収集する体制を整えています。また論文などの文献情報やWEBから調査し、市場や社会のニーズから必要となる技量や技術の構築に努めてまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんがやや増加していると認識しており、影響度はやや減少していると判断しています。
2.脅威度の高いリスク
(1)大規模地震の発生(社外要因 環境リスク 発生可能性:低 影響度:高)
当社の国内の生産工場はすべて福島県南部に位置しており、当社グループの生産高の約9割を担っています。当社の生産工場の建屋は、震度5以下の地震に対する耐震を備えていますが、福島県南部で震度6以上の大規模地震が発生した場合、工場の生産設備の被害や従業員の被災状況によっては、継続した生産活動が損なわれる可能性があり、業績と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、すでに策定しているBCM(事業継続マネジメント)方針に沿ってBCP(事業継続計画)を適宜見直し、被災した場合の緊急対応体制の構築と、稼働率が低下した場合でも事業を継続するための手続きを整備しています。また、従業員の被災状況を把握するために導入した安否確認システムの定期訓練を実施、システムの安定性と利用について周知を図ってまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性は社外要因のため統制することができませんが横ばいと認識しており、影響度はやや増加していると判断しています。
(2)工場の火災(社内要因 環境リスク 発生可能性:低 影響度:高)
当社製品はゴムのベース材料に薬品など様々な添加物を配合することで、ゴムの機能を特化した独自の付加価値を提供していますが、そのほとんどは引火性の低い材料であるものの、何らかの理由で火災が発生する可能性はゼロではありません。火災が発生した場合、従業員の被災や生産設備や環境の損害により、業績と持続的な事業継続に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このリスクへの対応として、当連結会計年度では、安全衛生委員会による安全パトロールによる危険箇所の特定とチェックを工場ごとに相互に行い、火災の発生を未然に防ぐ活動を進めています。また、地域の消防署の協力を得て、工場ごとに消防訓練を行い、火災の際の避難経路や手順の確認、消火活動の実施および消火器の増設など被災した場合の被害を最小限に抑える活動に取り組んでまいりました。
この結果、前連結会計年度に比べて、発生可能性はやや増加していると認識しており、影響度はやや減少と判断しています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の業績は、連結売上高は、工業用ゴム事業の販売が、下期の受注は回復傾向であるものの、上期の販売減少があったことから連結売上高は71億8千万円(前期比0.3%減)となりました。利益面においても売上高が減少したこと等により、連結営業利益は1億5千6百万円(前期比15.5%減)、連結経常利益は保険解約払戻金等があったことから1億9千5百万円(前期比0.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は風車事業の一つとして取り組んでいる風車のブレードを保護するカバーの開発において、実機に取り付けたカバーの劣化に対する再施工費用を特別損失として計上したことや、光学事業の再構築と挑戦の加速を図るため設備の回収可能性を考慮した減損損失を計上したこと等により1億3千3百万円(前期比34.1%減)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。
工業用ゴム事業
工業用ゴム事業では、自動車向け製品の受注は、精密ゴム製品やスイッチ用ゴム製品の受注は増加したものの、自動車内装照明用のASA COLOR LEDは上期までの在庫調整等の影響により受注は減少しました。また、自動認識機器に使用されるRFIDタグ用ゴム製品の受注は金利上昇などの厳しい事業環境が続き低迷しました。一方で、卓球ラケット用ラバーは前連結会計年度から受注増加が続き売上高は増加しました。
この結果、工業用ゴム事業の連結売上高は56億4千5百万円(前期比2.1%減)となりました。セグメント利益は3億4百万円(前期比23.9%減)となりました。
医療・衛生用ゴム事業
医療・衛生用ゴム事業では、診断・治療向けのプレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム栓の受注が堅調であったことや医療用逆止弁の受注が増加したこと、新たに参入を果たした医療シミュレータの受注も加わり売上高は増加しました。
この結果、医療・衛生用ゴム事業の連結売上高は15億3千5百万円(前期比6.7%増)となりました。セグメント利益は製品の販売構成や試作コストの増加等により1億2千万円(前期比3.7%減)となりました。
② 財政状態の状況
(資産の状況)
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べて2千7百万円増加し、94億1千4百万円となりました。この主な増加要因は、商品及び製品、建物及び構築物、投資有価証券が減少したものの、現金及び預金、電子記録債権が増加したものであります。
(負債の状況)
当連結会計年度末の負債は前連結会計年度末に比べて1億2千4百万円減少し、43億7千2百万円となりました。この主な減少要因は、短期借入金が増加したものの、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金が減少したものであります。
(純資産の状況)
当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べて1億5千2百万円増加し、50億4千2百万円となりました。この主な増加要因は、当連結会計年度の利益計上に伴う利益剰余金、為替換算調整勘定が増加したものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べ4億9千5百万円増加の13億8千6百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、6億4千1百万円の収入(前期は4億3千2百万円の収入)となりまし
た。
これは主に、税金等調整前当期純利益1億6千2百万円(前期は2億1千4百万円の利益)、減価償却費4億3千3百万円(前期は4億2千万円)によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、7千1百万円の収入(前期は8千7百万円の収入)となりました。
これは主に、定期預金の預入による支出10億2千5百万円(前期は14億7百万円の支出)、有形固定資産の取得による支出4億3千7百万円(前期は2億8千7百万円の支出)があったものの、定期預金の払戻による収入12億2千7百万円(前期は17億8千1百万円の収入)、投資有価証券の売却による収入2億7千4百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2億3千9百万円の支出(前期は6億1千9百万円の支出)となりまし
た。
これは主に、短期借入れによる収入15億円(前期は5億円の収入)、長期借入れによる収入4億円(前期は5億円の収入)があったものの、短期借入金の返済による支出12億円(前期は5億円の支出)、長期借入金の返済による支出8億4千7百万円(前期は10億2千4百万円の支出)、配当金の支払額9千万円(前期は9千1百万円の支払)によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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工業用ゴム事業(千円) |
5,499,258 |
△5.2 |
|
医療・衛生用ゴム事業(千円) |
1,551,495 |
8.2 |
|
合計(千円) |
7,050,753 |
△2.6 |
(注)金額は販売価格によっております。
b 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
工業用ゴム事業 |
5,663,211 |
△0.9 |
901,064 |
2.0 |
|
医療・衛生用ゴム事業 |
1,535,385 |
4.5 |
141,277 |
△0.0 |
|
合計 |
7,198,597 |
0.2 |
1,042,342 |
1.7 |
(注)金額は販売価格によっております。
c 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
工業用ゴム事業(千円) |
5,645,453 |
△2.1 |
|
医療・衛生用ゴム事業(千円) |
1,535,428 |
6.7 |
|
合計(千円) |
7,180,882 |
△0.3 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
日亜化学工業株式会社 |
1,063,115 |
14.8 |
1,048,784 |
14.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは「私たちは人を豊かにしてグローバル社会貢献度が高い技術会社になる」ことを未来に通ずる姿とし、2030年を見据えた「AR-2030VISION」を定めております。当連結会計年度は「AR-2030VISION」の実現に向けて2023年4月からスタートした第14次三ヵ年中期経営計画の初年度になります。中期経営方針として「魅力を高めて新たな価値を提供しよう」を掲げ、これまで以上に柔軟かつ好奇心旺盛な思考で行動し、事業活動を通じて様々な方々と一緒に未来につながるカタチをつくってまいります。
当社グループの重点事業分野を「光学事業」、「医療・ライフサイエンス事業」、「機能事業」、「通信事業」の4つとし、事業展開を進めるうえで、独自の競争力の源泉となるコア技術である「色と光のコントロール技術」「素材変性技術」「表面改質およびマイクロ加工技術」に、それぞれの事業分野に成長のキーワードとなる視点を加えて、ゴムが有する無限の可能性をさらに進化させる活動を進めてまいりました。
当連結会計年度における事業環境は、社会経済活動の正常化により需要は緩やかに回復してきましたが、インフレ抑制懸念や脆弱化したサプライチェーンの再構築など不確実性が高まりました。事業活動におきましては、円安により海外需要が高まる反面、原材料や部材価格の上昇、エネルギー価格の高止まりが続くなどの様々な影響を受けました。この中で当社グループは、当期経営方針に「魅力を高めて新たな価値を提供しよう」を掲げ、それぞれの事業分野のお客様との共創活動を積極的に行い、事業が貢献できる範囲を拡大してまいりました。機能事業の再生可能エネルギー分野では、脱炭素社会の実現に向けた風力発電機の設置拡大に伴い、これまでの研究段階から事業化に向けた活動にステージアップし、補助事業の採択を受けながら風力発電向け製品の実証実験やO&M事業形成に向けた準備を図ってまいりました。また、医療・ライフサイエンス事業では、光学事業に続く収益の第二の柱として成長すべく商社機能を持った新たな販売子会社の設立や第二福島工場の生産能力の増強を目的に増築を決定するなど、お客様の要望に素早く応える体制を整えてまいります。併せて、生産活動におきましては、技術基盤の成長を促す内外作政策や合理化投資を行うなど、新たな施策を積極的に展開しました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
工業用ゴム事業
社会経済活動の正常化により需要は緩やかに回復してきましたが、長くにわたり世界規模で発生したリスクは、事業環境や働き方に対して大きな変化をもたらしました。当社グループは、それら課題を解決しながら第14次三ヵ年中期経営計画で掲げる重点目標を達成させるため、積極的な改善活動でリスクを最小限に抑える活動を展開し、果敢に挑戦してまいりました。
自動車分野は、電動化が進むことで乗員に対する新たな快適空間の提供が求められ、照明部品や操作部品の役割が変わりつつあります。お客様が求めるインテリア空間に対して提案力を高めるため、より一層、当該事業製品の開発に力を注ぐとともに、営業活動や生産活動の有効性や効率性を高める体制の構築を進めてまいります。
スポーツ分野は、活況な市場環境が継続し、新製品の投入や増産投資は一定の成果が得られております。さらに次年度はオリンピックイヤーであることから新たな要求が加わることも想定します。今後も御客様に密着しながら質的成長に向けた活動を展開してまいります。
通信分野は、人手不足を背景とした生産合理化やウエアラブル製品が屋外で使用される機会が増えたことから、自動認識技術を必要とする事業環境が拡大しております。これまで特定のお客様に対するOEM製品を供給しておりましたが、弾性体の性質を生かした自社製品の提供を始め、市場参入機会の拡大を進めております。通信分野は、重点事業分野の全てにかかわりが得られる可能性を秘めており、それぞれをつなぐ活動を強化してまいります。
医療・衛生用ゴム事業
新型コロナウイルス感染症も5類に分類され診断・治療分野の市況も回復し、プレフィルドシリンジガスケット製品、採血用・薬液混注用ゴム製品の受注は堅調に推移しております。また自社開発製品である医療用逆止弁の採用が広がるとともに、白河第二工場で医療機器の品質管理システム構築のための国際標準規格であるISO13485を取得したことから、市場参入機会の拡大につながる開発投資や、海外市場も視野に入れた販売活動を展開しております。光学事業に続く収益の第二の柱として成長すべく商社機能を持った新たな販売子会社の設立や第二福島工場の生産能力の増強を目的に増築を決定するなど、さらにお客様の要望に素早く応える体制を整えてまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは各事業の受注状況に基づき、生産能力を検討し設備投資を実施、また新たな事業分野への研究開発投資を積極的に実施しております。その必要資金については財政状態の良化を考慮し、主に売上代金及び金融機関からの長期借入金による調達を基本としております。金融機関からの借入金は主として固定金利で調達しております。また、資金調達の機動性確保及び資金効率の改善等を目的に、主要取引金融機関と10億円のコミットメントライン契約を締結しております。これらの契約に基づく当連結会計年度末の借入未実行残高は10億円であります。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は17億6千万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは「私たちは人を豊かにしてグローバル社会貢献度が高い技術会社になる」ことを未来に通ずる姿とし、 第14次三ヵ年中期経営方針として「魅力を高めて新たな価値を提供しよう」を掲げております。研究開発活動はコア技術価値を高めて未来を支える行動を実践し、「常に社会の課題を解決するコア技術に磨き鍛えて継続的に事業価値を高め続ける源泉になる」ことを目的として、重点事業分野の顧客価値が高まるゴム素材・ゴム製品を追求しております。
研究開発活動は、当社工場の技術グループ・事業推進部および子会社である株式会社朝日FR研究所(ASAHI FR R&D Co., Ltd.)により行われ、工業用ゴム事業、医療・衛生用ゴム事業の研究開発を推進し、独自の競争力の源泉となるコア技術である「色と光のコントロール技術」「素材変性技術」「表面改質およびマイクロ加工技術」に、それぞれの事業分野に成長のキーワードとなる視点を加えて、ゴムが有する無限の可能性をさらに進化をさせる活動を進めてまいりました。また顧客ニーズにマッチするコア技術を鍛えるためにも、国や県のプロジェクトに対して積極的に参画し、外部頭脳とのネットワーク形成や新技術獲得に向け引き続き推進してまいりました。
子会社である株式会社朝日FR研究所の研究員は5名、これは全従業員の1.0%であります。当連結会計年度におけるセグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
1.工業用ゴム事業
第14次三ヵ年中期計画の重点事業である光学事業、機能事業、通信事業に対して、独自の競争力の源泉となるコア技術を活かした価値で貢献いたしました。当連結会計年度の主な研究成果並びに開発状況は次のとおりです。
(1)ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDの調色・色調管理技術は、自動車用の電装・カーオーディオ・スイッチなどのバックライト照明に広く使われております。IATF16949(自動車産業向け品質マネジメントシステム)を生かし、さらにグローバル品質に応える製造方法の確立や発光色を狭小に管理する技術開発を行いました。
また「感性・共感」をキーワードに埼玉大学と共同で進めている「色と光の感性認知支援研究」からASA COLOR LED-EMMOを用いた検査用照明器具の開発や光情報コミュニケーション支援システムを搭載したデバイスの開発を行いました。人の感情や心身の状態、個人のライフスタイルに合わせて照明の色や明るさを制御するヒューマン・セントリック・ライティング(HCL)照明の活用が広がる中、新たに勉強用光源や睡眠導入用光源を提供しております。今後も「人に寄り添う光」を開発して明かりの質の向上を追求してまいります。
(2)白色シリコーンインキ
主にLED照明器具用として、電子部品の基板に塗布して光を高反射する白色インキの開発を進めております。当社の白色シリコーンインキは、長期間にわたり高反射率を保持する塗膜を形成することから、LED照明器具の明るさ向上や省エネルギー化に寄与しております。新たに紫外線による光劣化防止性能を高めた紫外線反射フィルムの開発を行い展開が始まりました。目的に応じた製品開発を続け、さらに用途拡大を展開してまいります。
(3)ASA COLOR LENS
シリコーン素材技術に光学設計技術を応用したASA COLOR LENSは、自動車、一般照明、産業機器などへの拡販を継続しております。集客活動で得られたお客様のニーズを反映し、可視光LED用標準レンズのラインナップに紫外線LED用標準レンズを加えるとともに、表面実装に適した製品開発を行うことで、従来品より取扱い性を高めて設計のし易さを改善しました。専門展示会への出展を重ね訴求活動を行いながら、ガラスレンズや樹脂レンズでは対応が困難な用途に向けた開発を進めてまいります。
(4)再生可能エネルギー分野製品
再生可能エネルギー分野は、脱炭素社会の実現に向けた風力発電機の設置拡大に伴い、補助事業の採択を受けながら風力発電の維持管理等の技術開発・人材育成拠点の形成に注力しました。併せて、風力発電向けダイバータストリップや保護シート・シェルの実証実験を行い、O&M事業形成に向けた準備を図ってまいりました。今後も産学官連携支援のもと、風力発電機の性能向上や保守・保全への貢献を目指して取組みを強化してまいります。
(5)RFIDタグ用ゴム製品
「表面改質技術」の一つである分子接着・接合技術を用いたRFIDタグ用ゴム製品は、ゴムの柔軟性と接着剤では達成できない防水性で、ICチップやアンテナの保護に活用されております。屋外の過酷な環境下で使用可能な「やわらか保護カバーRFIDタグ」やIoTの様々なシーンでお役に立つ「やわらか保護カバーEnOcean搭載デバイス」をラインナップに加えました。プロセス改善や個体識別、資産管理などへの訴求力が格段に向上したことで用途拡大が進んでおります。
(6) F-TEM
柔軟性があるシリコーンゴムとペルチェ素子との複合製品であるF-TEMは、株式会社フェローテックマテリアルテクノロジーズと相互製品の販売特約店契約機会を生かして市場参入を果たしております。また、お客様の要求に満足する製品ラインナップの拡充も検討しております。本製品は熱電発電製品としての応用も可能であることから、エナジーハーベスティングへの利用も広がりつつあり、新たな製品開発が続いております。
2.医療・衛生用ゴム事業
第14次三ヵ年中期計画の重点事業である医療・ライフサイエンス事業においては、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて「朝日ラバーらしさで世界の医療現場と患者のQOL向上に貢献する」をスローガンに掲げ活動してまいりました。併せて、診断・治療向けの医療用ゴム製品の生産能力の増強に伴い第二福島工場の増築を決定し、2026年竣工に向けた活動が始まりました。当連結会計年度の主な研究成果並びに開発状況は次のとおりです。
(1)診断・治療向け医療製品
薬剤投与システムに使用されるプレフィルドシリンジガスケットの新たな市場領域への参入機会を高めるため、独自の表面改質技術による低摺動コーティング技術の開発を行いました。また、JIS規格に準拠した逆止弁(チェックバルブ)のバリエーションが増えたことで、各種透析回路における採用が進んでおります。
(2)超親水性処理技術
独自の素材変性技術と表面改質及びマイクロ加工技術を活かすことで、親水性に優れた表面改質処理を施す技術を進化させました。細胞培養関連製品への展開を目指して様々な素材への技術開発を進めております。
(3)医療用シミュレータ
医療現場に関わる方々との接点を増やし、市場の課題とニーズに触れ、新たな市場への参入を目指して医療シミュレータ製品の開発を行いました。効果的な内視鏡医療の普及の実現を目指す「大腸内視鏡シミュレータ」や心臓の冠状動脈の構造を立体的にわかりやすく理解できる「CAトレーナー」の販売を開始するなど、医療現場の安心・安全を高める活動につながりました。