第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、電子部品物流を主体とする当社及び国内外の子会社25社と、消費物流を主体とする国内子会社の㈱流通サービスによって構成されており、それぞれ専門分野に経営資源を集中して総合物流事業を展開しております。

 電子部品関連の当社及び国内外の子会社では、「ものづくりを支える最適物流を追求し、豊かな社会の実現に貢献します」との企業理念を掲げ、事業領域を「電子部品を核とした総合物流サービス」と定めています。また、消費物流関連の㈱流通サービスでは、「地域社会の中で、消費者の暮らしに貢献できる消費物流に特化した総合物流企業を目指します」との企業理念を定めています。グループ各社は企業理念のもと連携して、中期・短期の経営計画を推進し、業容の拡大と企業価値の最大化を図ってまいります。

 

(2)中長期的な経営戦略と目標とする経営指標

<電子部品物流・商品販売>

 電子部品関連の事業につきましては、主要顧客が属する電子部品産業は、通信の5G関連機器の普及や自動車の電子化の進行、AI、IoT、DXの実用化の進展などによりエレクトロニクス製品の需要拡大によって、今後も成長が予想されております。一方で、商品やマーケットの変化に対応した生産地変更やサプライチェーンの効率化・強靭化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しております。また、地政学リスクや感染症リスクなど経済環境の不確実性が高まる中、いわゆる経済安全保障上のリスクマネジメントが物流事業者に求められています。

 このような事業環境において、電子部品関連の事業をドメインとする当社及び国内外の子会社では、2022年度より3カ年の第5次中期経営計画をスタートしました。中期基本方針を「地球と社会にやさしく・最適物流の追求と進化」と定め、次の戦略・施策を推進し、グローバルにビジネスの拡大を図っていきます。

①GTB(Get The Business / 市場と商品の拡大):ビジネス領域の拡大、グローバルネットワークの充実、協創・提携体制の拡充。

②GTP(Get The Profit / 間・直の生産性向上):省人化・自働化の推進、戦略投資の拡大と確実な刈り取り、DXへチャレンジ。

③GTC(Get The Confidence / サステナビリティの追求):ESG対応の強化、安全・高品質の維持確保、非財務資本の維持・強化。

 目標とする経営指標として、中期・短期の経営計画で、事業別の売上高や営業利益などの損益目標を定め、PDCAのサイクルにより計画達成を図っております。グローバル成長の度合いを測る指標として「外販比率(アルプスアルパイングループ以外の売上構成比率)」、「海外売上比率」をKPIとしています。また、資本効率を意識した指標としてROE(自己資本当期純利益率)の向上に取り組んでおります。

 

<消費物流>

 消費物流分野では、人々のライフスタイルの変化に加え宅配サービスや通販ビジネスの成長に伴って個人宅配や通販の需要が拡大しています。一方で、これに伴う貨物量の増加や即日配送サービスの普及などによって、物流インフラへの負荷増、特にドライバーや倉庫作業員の人手不足、コストアップなどの深刻な状況が続いております。

 このような事業環境において、㈱流通サービスにおきましても、2022年度より3カ年の中期経営計画をスタートしました。事業の運営体制や営業体制の強化を図り、主要顧客である生協向けビジネスの更なる拡大、シェアアップを図るとともに、「通販・EC物流」の拡販を強化しています。さらに、新たな領域として、医薬品市場などの開拓も進めております。

 また、業界課題である人手不足に対処すべく自働化の推進、働き方改革の推進などによって定着率の向上を図り、人財の確保・育成につなげてまいります。

 

 当社グループでは電子部品関連、消費関連それぞれの分野において、上記の戦略・重点施策を着実に実行するとともに、サステナビリティに配慮した社会課題の解決に貢献し、更なるグローバル成長を図り、企業価値向上に努めてまいります。

 

(3)会社の経営環境と優先的に対処すべき課題

 当社の主要顧客である電子部品業界は、次世代通信である5G関連機器の普及、自動車の電子化の進行、AI、DXの進展など、エレクトロニクス製品の需要拡大によって、中長期的に成長が期待されております。一方で、商品やマーケットの変化に対応した生産地変更やサプライチェーンの効率化・強靭化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しております。また、地政学リスクや感染症リスクなど経済環境の不確実性が高まる中、いわゆる経済安全保障上のリスクマネジメントが物流事業者に求められています。このような中、2022年度より3カ年の第5次中期経営計画をスタートしました。中期基本方針を「地球と社会にやさしく・最適物流の追求と進化」と定め、次の戦略・施策を推進し、グローバルにビジネスの拡大を図っていきます。また、貨物特性に合わせた自働化、ロボットの導入や間接部門を含めた生産性向上を図り、収益性の強化にもつなげてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(サステナビリティに関する基本方針)

 当社グループは、企業理念である「ものづくりを支える最適物流を追求し、豊かな社会の実現に貢献します」に基づき、社会課題の解決につながる価値創造に取り組み、持続可能な社会の実現とグループの持続的な成長の両立を目指しています。

 また、当社グループが事業活動を行う上で基本とする経営姿勢を「お客様との共栄」「物流価値の創造」「環境・社会と調和」と定義しています。その精神・考え方を共有し、理解をより深めるために、企業・従業員として必要な行動や考え方を「アルプス物流倫理規範」で明文化し、全世界のグループ拠点に展開しています。さらに、定期的な研修を通して従業員一人ひとりに浸透するよう努めています。

 

(サステナビリティ推進体制)

 当社グループは、サステナビリティを事業の中核課題と捉え、取締役会でサステナビリティに関わる方針の決定、マテリアリティの特定及び重要課題の審議を行っています。特定された課題に対し、サステナビリティ推進委員会が施策を立案、実行し、その進捗状況について年2回取締役会に報告しています。

 サステナビリティ推進委員会は、主要なESG課題に沿って設定した3つのワーキンググループで構成されており、半期ごとに課題解決に向けた議論を行っています。ワーキンググループの構成は、外部・内部環境の変化に伴い見直しを行っています。

 

 当社グループが認識している重要なサステナビリティ課題である、(1)気候変動への対応及び(2)人的資本は、以下のとおりであります。

 

(1)気候変動への対応

 当社グループでは、気候変動のような将来の不確実性に対処することは、持続的な企業価値向上並びに持続可能な社会の実現に資するものであると考え、全社で環境課題に取り組んでいます。当社グループは2023年9月にTCFDへの賛同を表明しました。更なる取り組みを一層進めていくとともに、TCFDの開示推奨項目に沿って情報開示に努めていきます。

 

①ガバナンス

 当社グループは、品質環境を担当する役員が、TCFDをはじめとする気候変動に関する対応の管理・監督を行っています。また、取締役会の直下にサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動関連課題を含む主要なESG課題について協議・検討を行っています。サステナビリティ推進委員会の委員長は、ESG担当役員が務め、年に4回委員会を開催しています。サステナビリティ推進委員会は、主要なESG課題に沿って設定した3つのワーキンググループ(E 環境WG、S 社会WG、G ガバナンスWG)で構成されていますが、外部・内部環境の変化に伴って今後適宜見直しを行っていきます。気候変動課題については、サステナビリティ推進委員会が決定した活動方針に従い、各WGで具体的な取り組みを実施し、重要度に応じて取締役会に諮る体制を取っています。サステナビリティ推進委員会において審議・検討した、(E 環境、S 社会、G ガバナンス)に関する重要事項や活動実績などは、年2回取締役会に報告しています。

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②戦略

1)気候関連のリスクと機会の特定

 当社グループでは、気候変動関連のリスクと機会は、中長期にわたり事業活動に影響を与えると認識しています。当社グループにとっての重要な財務への影響を与える可能性のあるリスクや機会を特定するため、1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオの複数の将来シナリオを想定し、当社グループを取り巻く外部環境の変化やさまざまな状況下において、重要な財務への影響を与える可能性のあるリスクと機会の洗い出しを行いました。気候関連のリスクと機会の評価に際しては、当社グループの全てのセグメント(電子部品物流セグメント、商品販売セグメント、消費物流セグメント)を対象としています。なお、今後も引き続き当社グループの外部環境の変化等に応じて、適宜重要なリスクと機会の評価の見直しを行い、戦略に反映させていきます。

2)シナリオ分析の前提

 シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオ(1.5℃~2℃および4℃)を参考にしました。

・1.5℃~2℃の世界では、温室効果ガス削減のための規制が強化され、低・脱炭素化が進むことに伴う事業への影響、移行リスクが高まることが考えられます。

・4℃の世界では、規制などの移行リスクのレベルを超越した物理リスクが、異常気象により高まることが考えられます。

3)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響

 1.5℃~2℃未満シナリオ、4℃シナリオを前提として、当社の主要事業に重要な財務への影響を与えるリスクと機会を分析し、リスク低減に向けた対応策と、機会活用に向けた対応策を検討しました。

4)リスク・機会に対する戦略(移行計画)、レジリエンス

 シナリオ分析を実施し、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクと機会を特定し、適切な施策を講じることで、当社グループのレジリエンス(対応力)が高まるように今後、中長期的な視点から経営戦略に反映させていきます。

 

 

短期:3年未満

中期:3~10年未満

長期:10~30年

小:1億円未満

中:1~5億円

大:5億円超

リスク

/機会

分類

リスク/機会項目

発現時期

影響

リスク低減/機会活用に向けた

対策

リスク

移行

(政策・法的リスク)

炭素税の導入

中期

・EV化の開発に応じたEV車両の導入

・再生可能エネルギーへの転換

・積載率改善による車両効率の向上

・自動車のEV化に関する開発状況の情報収集

(技術リスク)

低排出技術に移行するためのコストの増加

長期

(評判リスク)

気候変動への対策並びに情報開示が不十分なことにより、企業評価が低下するリスク

評判低下に伴い資本調達コストが増加するリスク

中期

物理的

(急性リスク)

台風、豪雨、落雷などの異常気象の激甚化(河川の洪水、土砂災害など)

中期

・災害発生時における危機管理本部の設置体制

・詳細な危機管理フローの整備

・倉庫の自然災害対策として、土嚢、盛り土、高床(地面から1m)、キュービクルの屋上設置を実施

・災害の状況に臨機応変に対応するための迂回ルートの確保

物理的

(慢性リスク)

海面上昇(沿岸部に位置する拠点における対策費用や保険料が増加)

長期

・沿岸部に配置された拠点を把握し、海面上昇のリスクを把握

・急性リスク同様の対策による電源確保、継続通電可能な再生エネルギー導入検討

・代替輸送ルートの確保

気温上昇による労働環境の悪化により、人材確保が困難となるリスク

長期

・空調設備の整備による適切な労働環境の確保

 

 

リスク

/機会

分類

リスク/機会項目

発現時期

影響

リスク低減/機会活用に向けた

対策

機会

資産効率

物流の効率化

短期~中期

・海外を中心としたモーダルシフトを国内にも展開することを検討

・効率的な輸送網の構築や積載率の向上(例:段積み輸送)

・共同保管・共同集配など他社との連携

リユース・リサイクル

短期~中期

・資源の有効活用、リサイクル(再資源化)の推進による廃棄物の削減

業務プロセスの革新・効率化(DX等)

短期~中期

・電子部品物流プラットフォームを用いた共同保管・共同集配の拡充などによる効率的な倉庫管理や配送

・梱包設計変更による積載効率向上

・省力化、省電力化のマテハン機器の導入

・AIを活用した配送ルート最適化などによる走行距離の削減や燃費向上

高効率設備の導入の推進による、電力使用の低減・費用削減

中期

・倉庫屋上への太陽光発電設備導入の推進

・LED化

エネルギー源

より低排出のエネルギー源の使用

中期

・太陽光発電設備の設置などによる、再生可能エネルギーの導入

新技術の使用

短期~中期

・電動式大型ラックの使用

・EV化の開発に応じたEV車両の導入

炭素市場への参入

短期~中期

・カーボンオフセットなどの総合的なCO2削減による投資家からの評価の向上

製品とサービス

低炭素社会に向けた収益機会

短期~中期

・共同保管、共同集配

・積載効率向上

・省力、省電力のマテハン機器

・国内での長距離、多頻度を中心とした貸切輸送におけるモーダルシフトの導入を検討

・輸出入におけるモーダルシフト

レジリエンス

防災対策の強化による事業安定化

中期

・土嚢、盛り土、高床、キュービクルの屋上設置等による防災対策

・迂回ルートや輸配送手段の分散

・予め予測できる自然災害時(台風・大雪)における計画的な運休(事前案内)、各拠点BCP対応の実施

エネルギー効率化措置の採択による燃料コストの削減

中期

・最適な輸送ルートの設定

・トラック1台あたりの積載率向上

資源の代替/多様化による電力調達コストの削減

中期

・太陽光発電設備の設置などによる、再生可能エネルギーの導入

 

③リスク管理

 当社グループでは、経営企画部門及び人事総務部門が主管となり、全社的なリスク情報を把握し、管理する体制の構築・整備に取り組んでいます。

 気候変動関連リスクに関しては、サステナビリティ推進委員会、経営企画部及び品質環境部が中心となり、気候変動関連のリスクと機会を特定し、リスクを軽減するための対策、取り組みを検討し、各事業所や関係部署と共働して対策を検討・実行し、進捗状況を管理するとともに、経営層への報告、提言を行う体制を敷いていきます。

 また、リスクの重要度に応じて、気候変動担当(品質環境担当)役員が中心となり、取締役会においてリスクマネジメントプロセスの有効性を監督するという体制を敷き、全社で気候変動関連リスクの管理に取り組んでいきます。

 

④指標と目標

 マテリアリティである「事業を通じた環境負荷軽減の取り組み」を実践するため、当社グループは、輸送事業用車両等によるCO2排出量(Scope1)及び電力使用によるCO2排出量※1(Scope2)を重要な指標と捉え、削減を目指しています。それぞれの実績値及び目標は以下のとおりです。2022年度のCO2排出量は、物流キャパシティ増強により、2021年度と比較して総量は約1.7%の増加となりましたが、原単位では着実に削減しております。なお、2023年度実績に関しては、本年発行予定の統合報告書2024に、Scope3も含め掲載を予定しております。

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(2)人的資本

[基本的な考え方・方針]

 当社グループは、企業理念である「ものづくりを支える最適物流を追求し、豊かな社会の実現に貢献します」に基づき、「お客様ごとのニーズに応じた最適物流の追求」の実現に向けて、「顧客ニーズと市場動向に迅速に対応した提案ができるスキル・能力を持った人材」の育成を目指しております。最適物流を支える保管・運送・輸出入・包装設計・商品販売等の機能をつなげた総合物流サービス(グローバルワンチャンネルサービス)を担うプロフェッショナルな人材の成果発揮の機会と場を提供できる組織と環境を整えてまいります。

 また、中期的な人材戦略のテーマとして、「人的資本への投資と生き生きと仕事に取組める環境づくりと働きかけ」を掲げております。経営戦略に紐づいた人材戦略を推進することで、人材戦略を取り巻く内外の環境が大きく変化している状況下において、当社グループが求める「自ら考え、自ら判断し、自ら行動(挑戦)する」人材の安定確保に努めます。また、社員一人ひとりのキャリア形成と多様な働き方をサポートすることで、自律したプロフェッショナルと変化に対応できる人材になることを促し、相互に尊重し、支援し、助け合う環境を整えます。

 当社グループは、物流の現場を担う人材こそがサービスの原点であることから、「人材の重要性」を強く認識しております。人材の価値を最大限引き出すべく、社員満足度の向上と組織の活性化を推進することを通じて、当社グループの持続的成長・価値向上を実現してまいります。

 

[人的資本にかかる「戦略」(方針)に関連した「指標と目標」]

①人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

1)多様性の確保を含む人材の育成に関する方針

 当社グループは、「お客様ごとのニーズに応じた最適物流の追求」を実現するため、求める人材像として『自ら考え、自ら判断し、自ら行動(挑戦)する人材』を掲げております。積極性、行動力のある人材を確保するため、多様性を重視した採用を行う方針であります。また、当社グループの人材育成の方針として、「顧客ニーズと市場動向に迅速に対応した提案ができるスキル・能力を持った人材」の育成に努めています。お客様が抱える物流に関する課題を解決すべく、物流現場の様々なシーンにおいて自ら考え、自ら判断し、自ら行動と提案が出来る深い専門知識と幅広い見地をもった人材の育成に努めています。

 

2)社内環境整備に関する方針

 当社グループでは、国籍、人種、年齢、性別、思想、信条に関わらず多様な人材を採用する方針に基づき、多様な価値観をもつ人材がその能力を最大限に発揮できる人材の配置と職場づくりに努めております。多様な人材が働きやすい職場環境を整備することで、従業員エンゲージメント(社員満足度)の向上、組織の活性化を推進します。また、総合物流のプロとして、お客様が抱える物流に関する課題を解決するための最適なソリューションを提案できる人材を育成する方針に基づき、自ら考え、自ら判断し、自ら行動出来る人材の育成を企図し、社内研修プログラムも時代、環境に即したものに進化させてまいりました。具体的には、①階層別(必須・推薦)、②選抜型、③公募型と3つの参加形式による研修プログラム体系を整備・運用しており、従業員の積極的な参加を促すサポートを行っています。また、技術的側面に関しては、各事業単位でのOJT・OFF-JTの両面で従業員の育成に取り組んでいます。従業員一人ひとりが情熱を持ち、持てる能力を存分に発揮しながら、一流のプロとして成長していけることをサポートするため、当社グループは、教育・研修に力を入れております。

 

3)従業員の「安全衛生」に関する方針

 当社グループは、「従業員の安全と衛生」を事業活動推進のための最優先課題と捉えております。当社の営業所で働く全ての人々の「安全の確保と健康の増進」を図るため、各営業所に安全衛生委員会を設置し、安全衛生水準の向上につながる各種安全活動を推進しています。また、当社では、2021年10月に「健康経営宣言」を制定し、従業員の健康を増進するため、健康診断やストレスチェックの定期的な実施、特定保健指導の実施率向上などさまざまな「健康経営」の実践に積極的に取り組んでおります。

 

②人材戦略にかかる具体的なアクションプランと関連する指標と目標

1)女性活躍推進

 女性の管理職登用を加速するため、ワークライフバランスの充実を課題として捉え、性別に関係なく全社員が働きやすい制度面の充実と、多様な価値観を受け入れる組織風土の醸成を進め、社員が継続的に能力を発揮できる環境整備に取り組んでまいります。

 「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおり、当社及び主要子会社の女性管理職比率が低いことを今後の対応課題として認識しております。当社は2024年中に課長職及び係長職の女性比率の目標を下表の通りとしています。

女性役職者比率 実績及び目標

 

2021年

(実績)

2022年

(実績)

2023年

(実績)

2024年

(目標)

課長

1.6%

1.4%

2.8%

4.7%

係長

5.4%

10.8%

10.8%

17.0%

 

2)ワークライフバランスの取組

(柔軟な勤務地条件を選択できる仕組み)

 当社では、社員のキャリアやライフスタイルの多様化を踏まえ、勤務地条件を選定できるコース別人事制度を導入しています。グローバルに活躍する「グローバルコース」、国内を活躍範囲とする「ナショナルコース」、転居を伴う異動がない「エリアコース」の3つのコースがあります。コース選択によらず管理職として活躍することができる仕組みを設けています。

(仕事と私生活の両立を支援する仕組み)

 当社では、社員のさまざまな事情にあわせて、仕事と私生活の両立を支援し、継続就業を実現する各種制度を提供しています。

・フレックスタイム制

・在宅勤務制度

・配偶者分娩休暇

・出産休職制度

・育児休職制度

・育児短時間勤務

・子の看護休暇

・家族の介護休暇

・介護休職制度

・介護短時間勤務

・退職社員再雇用制度

・海外帯同休職制度

 

3)働き方改革

 当社では2016年から働き方改革の一環として総労働時間の削減目標を設定し管理しています。36協定の上限時間については、一般従業員は2019年4月に100時間から80時間に引き下げ、ドライバーも2024年4月に一般従業員同様に100時間から80時間に引き下げました。また、年休取得率の目標を70%と設定し取得状況の管理を行っています。時間外の削減及び年休取得率の管理により総労働時間の削減に取り組んでいます。継続的に平均時間外労働が多い部門については、適正人員化を図っています。

 2024年度に施行されるドライバーの労働時間の上限時間設定に先立ち、社内管理基準を設け、運行ルートの再設定、付帯業務の削減等に取組み、労働時間の削減に取り組んでいます。

 

正社員の総労働時間の短縮と年休取得の推進

 

総労働時間

(管理職を除く正社員)

年休取得率

2023年度

目標:2,062時間

実績:2,043時間

目標:70%

実績:74.5

2024年度目標

2,042時間

(2023年度比△1時間)

目標:70

 

4)従業員エンゲージメント

 当社グループが持続的成長・価値向上を実現していくためには、経営戦略に基づく人材戦略を構築、実践していくことが必要であると認識しています。従業員全員が一つの方向に向かって進むためには、従業員との対話やコミュニケーションを積極的に行うことが必要であり、社員満足度の向上と組織の活性化を推進することが重要と考えられるため、当社グループは従業員のエンゲージメント向上に努めております。当社では2021年度より全社でエンゲージメントに関する社員アンケートを毎年1回実施しています。毎年の調査結果に基づき、労使間で意見交換を行い、具体的改善施策を推進・実行しています。エンゲージメントの向上の進捗度合いを確認するとともに、今後の進むべき方向性について労使間での意見交換を行い全社でのエンゲージメント向上に向け、取り組みを進めています。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績などの状況に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)景気変動

当社グループは電子部品物流及び消費物流を主とした総合物流事業を展開しております。電子部品物流分野ではメーカーのグローバルな生産体制に対応するため海外子会社での物流体制を強化しており、当連結会計年度の電子部品物流分野における海外売上比率は42.9%です。主要顧客は電子部品業界であり、特に自動車、スマートフォンなどの各種電子機器などの生産・販売動向に影響を受けます。また、消費物流分野では国内各地での受託体制を拡大しており、景気変動に伴う各地域における消費者需要などに影響を受ける可能性があります。景気後退による顧客の生産・販売減や消費者の需要減は、当社グループの受託業務量の減少につながり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策として、顧客と密接にコンタクトを取り、市場・顧客の動向を把握することで、需要の変動に対応すべく取り組んでおります。

 

(2)為替変動

当社グループでは電子部品物流のグローバル化に対応し、中国、韓国、インド、アセアン、北米及び欧州で物流事業を展開しており、各地域に海外子会社を展開しております。これらの海外子会社の財務諸表は現地通貨で作成され、連結財務諸表作成のために円換算されております。また、当社におきましても子会社や商品販売事業の顧客などこれら子会社などに対する外貨建債権債務を有しているため、換算時の為替レートの変動は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。中でも、北米や中国での事業規模が大きく、米ドル、中国元に対して円高に変動した場合には、当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。対応策として、当社では、為替変動の影響を減少させるため、商品販売事業の一部の顧客との間では、直近の為替変動を取引価格に反映すべく定期的に取引価格の見直しを行っております。

 

(3)法的規制

当社グループが国内で営む各種事業は事業の公共性やそれに見合うサービスが提供できるように一般貨物自動車運送事業法(利用運送事業含む)、通関業法及び倉庫業法などの許認可を必要としております。また、当社グループが進出している海外各国でも各種の事業法制のもとに規制を受けております。当社グループでは国内外において必要な各種許認可を取得し法令遵守のもとに物流事業を遂行しておりますが、これらの法律が改廃された場合、内容によっては当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策として、国内外の法的規制や法律改正をウォッチすると共にコンプライアンスを重視した取り組みを行っております。

 

(4)業界内での競争

顧客の海外への生産シフトに伴う国内貨物量の減少や大手物流事業者の当社グループの物流業域への参入などにより、受託価格やサービス面などの競争は激化しております。当社グループでは電子部品物流の強みを活かした分野で事業展開し、拠点・ネットワークの整備拡充と事業基盤・体質の強化に努め、顧客ニーズに対応した高品質なサービスを提供してまいりますが、業界内における価格・サービス面での競争激化の状況によっては当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策として、これまで蓄積してきた電子部品の取扱いノウハウを活かし、各種自働化やシステム化に取り組み、高度化する個々の顧客ニーズに対応する最適物流に磨きをかけ、サービスの充実を図っております。

 

(5)市場・顧客ニーズの変化

当社グループの電子部品物流事業は、多品種・小ロットで顧客ニーズにきめ細かく対応できることが特徴です。自動車や電子産業で半導体・電子部品の標準化が進んだり、サプライチェーンが大きく変わる場合、多品種・小ロットのニーズが減少したり、価格競争力を失う可能性があります。これらの変化に対応するため、手作業によるきめ細かなサービスと同時に積極的に自働化投資も行っております。更にサプライチェーンの変化にも対応できるようグローバルネットワークの拡充も行っております。しかし、それらの市場・顧客ニーズの変化に迅速な対応ができない場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)燃料費・人件費等の高騰

当社グループは、運送サービスにおいて多数の貨物自動車を使用しております。その燃料費は原油価格や為替相場により変動します。国際物流の航空・海上利用運送の仕入価格も燃料費の変動に連動します。また、ドライバー、倉庫作業者など多くの人材を活用しており、人件費が上昇する可能性があります。トラック積載率の向上や倉庫の自働化投資を行い、原価改善を進めておりますが、急激な燃料価格の上昇や人件費の高騰に対し、原価改善が追い付かない場合や価格転嫁ができない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)アルプスアルパイングループとの関係

アルプスアルパイン㈱(以下、「アルプスアルパイングループ」という。)は、本書提出日現在において当社議決権の48.8%を保有しており、当社は同社の持分法適用会社となります。

アルプスアルパイングループは、国内外において電子部品、車載情報機器の製造・販売を行っております。当期において、当社グループがアルプスアルパイングループより受託している物流関連業務の連結売上高に占める割合は、32.5%となっております。自動車やスマートフォンの市況変化によるアルプスアルパイングループの生産変動、海外生産展開方針の変化や部材調達のサプライチェーンの変化などによって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策として、アルプスアルパイングループ以外の顧客に対する売上拡大を重点施策として取り組んでおります。

 

(8)カントリーリスク

当社グループでは顧客のグローバルな物流ニーズに対応するため、中国、韓国、インド、アセアン、北米及び欧州において事業を展開しております。これらの海外物流市場での事業展開には「予期しない法律又は税制の変更」、「不利な政治又は経済要因」、「テロ、戦争、その他の社会的混乱」などのリスクが常に内在されております。これらの事象がおきた場合、当社グループの事業の遂行に深刻な影響を与える可能性があります。特に事業規模の大きい北米や中国の動向が大きく影響します。対応策として、これら事業規模の大きい地域だけでなく、アセアンや欧州地域の拡大も図り、グローバルに拠点網を拡充し、バランスよく成長することに取り組んでおります。

 

(9)災害等

当社グループは、国内外の物流拠点において地震、台風、大雨、洪水などの自然災害や火災・事故などへの防災・減災対策を徹底しております。事業継続においては、運送、保管及びフォワーダーの物流機能など重要な情報インフラのバックアップ体制を整備しております。また、受託貨物保険や火災、地震災害保険の付保などの対策をとっております。これらの対策により、過去の災害発生時には事業への影響を最小限に留めています。しかし、想定を超える大規模な災害が発生した場合には、事業への影響が大きくなる可能性があります。

 

(10)感染症拡大に係るリスク

当社グループは、世界各地域において事業を展開しております。新型コロナウイルスの感染再拡大や新たな感染症の発生により、顧客の工場の操業停止などに伴い、当社取扱貨物量に影響が出ることがリスクとして予想されます。これらの事象が起きた場合、社長を対策本部長として、グローバルに展開する国内外の子会社と連携し、従業員の健康と安全の確保を最優先として、規制地域に勤務する従業員への支援物資の手配や、間接部門での在宅勤務の導入などの取り組みを推進しています。今後もこのような取り組みを継続し、感染症の発生・拡大に備え、顧客のサプライチェーンの寸断が発生しないよう物流事業者としての責任を果たすべく、事業継続に取り組んでおります。

 

(11)気候変動に係るリスク

当社グループでは、気候変動といった将来の不確実性に対処することは、持続的な企業価値向上並びに持続可能な社会の実現に資するものであると考え、気候変動への対処について全社で取り組んでおります。また、その取り組み状況を説明するため、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに沿って気候変動に関する情報開示に努めてまいります。TCFDの枠組みに沿った情報開示は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。当社グループでは、中長期にわたり事業活動に重要な影響を与える可能性のある気候変動に係るリスクと機会を特定しました。移行リスクとして、新たな法規制や制度、低排出技術への移行などによる費用負担増、顧客要求に追従できない場合のビジネス機会の損失、企業評価低下に伴う資本調達コストの増加などを想定しております。また、物理リスクとして、異常気象による自然災害の激甚化、海面上昇への対応などを想定しております。それらが想定した範囲を超えて発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)機密情報の漏洩・紛失

当社グループでは、業務に関連して多数の個人(従業員を含む)や顧客の機密情報を入手しております。「情報セキュリティ基本方針」を制定し、情報管理規程の整備や情報セキュリティ強化施策の展開、従業員への教育を行うなど、情報の管理には細心の注意を払っておりますが、何らかの事情によりこれらの情報が外部に漏洩する可能性は否定できません。万が一、個人情報や顧客情報が漏洩した場合、当社グループの社会的信用の低下や損害賠償責任を負うことにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)人材の確保等に係るリスク

当社グループの電子部品物流分野では、市場の拡大、新規顧客の獲得などにより、倉庫の新設・拡張、運送路線の拡大を進めております。消費物流分野では、小売企業の宅配サービスや通信販売ビジネスの成長に伴って、物流インフラの拡張や運送の増便を進めております。しかし、ドライバーや倉庫作業員の人手不足、コストアップなどの状況が続いております。人材確保及び定着率向上のための働き易い職場作り、省人化による生産性向上、人材育成、採用効率向上などの対応策を取っておりますが、雇用環境の変化などにより、当社が求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、今後の成長に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)物流施設・設備への投資

当社グループの電子部品物流分野の物流施設は、全体で約43%が自社施設です。国内については約62%が自社施設で、今後も事業の拡大に向け積極的に物流施設を建設してまいります。また、既存の物流施設は定期的に建て替えや大規模修繕が必要になります。そのため、今後投資額が大きくなり、減価償却費増加による業績への影響や投資負担により財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)固定資産の処分損失及び減損損失

当連結会計年度末における有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額は51,277百万円です。当社グループは国内外に物流拠点などを有しております。設備投資及び長期賃貸借契約などについては、投資効果やキャッシュ・フロー回収見込みなどを長期的な視点で検討した上で実施しておりますが、経済動向、顧客企業の動向などにより、当初計画よりも早期に処分、返還などを行い、一時的な損失または減損損失が発生するなど、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。具体的な対応策として、当社では、減損損失が発生すると影響が大きい一定金額以上の投資案件について、投資計画を取締役会において精査し、損益計画の妥当性、投資回収の実現性を審議しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態の状況

 前連結会計年度末と比較した当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は次のとおりです。

 資産については、流動資産は、受取手形及び営業未収金などが増加しましたが、現金及び預金などの減少により1,681百万円減少しました。固定資産は、主に有形固定資産の増加などにより6,918百万円増加しました。これにより資産合計は、前連結会計年度末比5,237百万円増の102,521百万円となりました。

 負債については、1年内返済予定の長期借入金の返済及び長期借入金での借換えによる減少、未払法人税等などの減少がありましたが、営業未払金などの増加によって流動負債は875百万円増加しました。固定負債は長期借入金での借換えによる増加などにより1,113百万円増加しました。これにより負債合計は、前連結会計年度末比1,988百万円増の37,014百万円となりました。

 純資産については、利益の確保による増加、為替換算調整勘定の増加などに対し、配当金支払による減少などがあり、前連結会計年度末比3,249百万円増の65,506百万円となりました。

 自己資本比率は、前連結会計年度末比0.3ポイント上昇し、59.2%となりました。

 

②経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、主要な国の多くで緩やかな減速傾向が継続しました。米国では良好な雇用・所得環境を背景に個人消費が堅調に推移し、全体として景気は底堅く推移しました。欧州では金融引き締めなどにより内需が落ち込んでいるほか、海外経済の減速を受け輸出の停滞など、景気は低迷しています。中国では内外需とも緩やかに持ち直しの動きがみられますが、不動産不況の継続や、消費回復力の弱さなどが足かせになり景気の回復は力強さを欠いています。日本経済は、インバウンド消費などを中心に緩やかな回復の一方で物価高や海外経済の減速など弱含みで推移しました。

 

 このような事業環境下、3カ年の第5次中計2年目の当期は、引き続き基本方針を「地球と社会にやさしく・最適物流の追求と進化」とし、次の戦略・施策を推進しグローバルにビジネスの拡大を図りました。

①GTB(Get The Business / 市場と商品の拡大):ビジネス領域の拡大。グローバルネットワークの充実。協創・提携体制の拡充。

②GTP(Get The Profit / 間・直の生産性向上):省人化・自働化の推進。戦略投資の拡大と確実な刈取り。DXへチャレンジ。

③GTC(Get The Confidence / サステナビリティの追求):ESG対応の強化、安全・高品質の維持確保。非財務資本の維持・強化。

 

 当連結会計年度のセグメントの概況は次のとおりです。

 

 [電子部品物流事業]

 当事業の主要顧客である電子部品業界においては、車載関連の生産は比較的堅調に推移しました。産機用部品では、設備投資の低迷、過剰在庫の消化も進まず低調に推移、パソコン、スマートフォンなどの民生機器、情報通信機器関連も生産の停滞が継続しました。

 当連結会計年度においては、倉庫の拡張や新規顧客の拡販活動などに取り組んでまいりましたが、航空貨物の減少、国際輸送運賃の落ち込み、生産停滞などによる貨物取扱量の減少など、既存貨物量の減少を補えず売上高は減収となりました。利益面では、生産性向上に取り組む一方で、大中華圏の国際輸送貨物の取扱いなどが第4四半期において想定以上に減少したことや荷動きの停滞に伴う効率悪化、競争環境激化の影響などにより減益となりました。

 当セグメントの業績は、売上高62,427百万円(前期比 10.0%減)、営業利益3,204百万円(同 44.1%減)となりました。

 

 [商品販売事業]

 商品販売事業では、電子部品に関連する包装資材・成形材料・電子デバイスの販売を行っています。当社では、調達と物流を一元化した電子デバイスの調達代行の提案、物流改善を意識した包装資材の提案を特長としております。

 当連結会計年度におきましては、海外向けの車載関連で電子デバイスの販売が増加したことから、売上高が増加しました。利益については、増収効果と為替の円安影響もあり増益となりました。

 当セグメントの業績は、売上高27,483百万円(前期比 14.4%増)、営業利益1,132百万円(同 9.1%増)となりました。

 

 [消費物流事業]

 消費物流分野では、宅配サービスや通販ビジネスの成長に伴って需要が拡大している一方、ドライバーを始めとする人材確保・育成が、業界全体の課題となっています。

 このような事業環境下、当社グループで消費物流を担う㈱流通サービスは、消費物流の川上にあたる企業間物流の取り込み、化粧品などの商品センター業務やメディカル関連の輸配送、生協宅配ビジネスの拡大に取り組みました。

 当連結会計年度においては、生協宅配エリアは拡大したものの、取扱い物量は前年並みとなりました。通販・EC物流では、荷動きが堅調に推移したことなどにより売上高は増加しました。利益については、自働化による効率の改善、固定費削減などにも取り組みましたが、支払運賃や倉庫増床による賃借料などのコスト増加要因があり減益となりました。

 当セグメントの業績は、売上高28,933百万円(前期比 4.2%増)、営業利益1,242百万円(同 2.8%減)となりました。

 

 以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高は118,844百万円(前期比 1.9%減)、営業利益は5,578百万円(同 30.6%減)、経常利益は6,019百万円(同 31.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,570百万円(同 29.1%減)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末と比べ3,039百万円減少の23,610百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、8,523百万円(前期比2,424百万円の収入減)の収入となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益の確保5,982百万円や減価償却費4,950百万円などによる資金増加の一方、法人税等の支払額2,324百万円などによる資金減少によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、7,645百万円(前期比2,799百万円の支出増)の支出となりました。主な要因は、新倉庫建設など有形固定資産の取得支出7,178百万円及びソフトウエアなど無形固定資産の取得支出790百万円などによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、5,128百万円(前期比3,270百万円の支出増)の支出となりました。主な要因は、リース債務の支払2,435百万円、当社の配当金支払1,772百万円などによるものです。

 

④生産、受注及び販売の実績

売上高実績

 当連結会計年度における売上高実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

売上高(百万円)

前年同期比(%)

電子部品物流事業

62,427

90.0

商品販売事業

27,483

114.4

消費物流事業

28,933

104.2

セグメント間の内部売上高又は振替高

合計

118,844

98.1

 (注) 最近2連結会計年度における主な相手先別の売上高実績及び当該売上高実績の総売上高実績に対する割合は、次のとおりであります。

 相手先名

 前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

売上高(百万円)

総売上高に対する割合(%)

売上高(百万円)

総売上高に対する割合(%)

アルプスアルパイン株式会社

10,343

8.5

8,302

7.0

TDK株式会社

5,478

4.5

5,647

4.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。

 この連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の数値及び報告期間における収益・費用の数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。この見積りは過去の実績や状況に応じ合理的と考えられるさまざまな要因に基づき行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

 当社は、特に以下の重要な会計方針が当社グループの連結財務諸表の作成において使用される判断と見積りに影響を及ぼすものと考えております。

 

a. 繰延税金資産

 繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。繰延税金資産の回収可能性を判断するにあたり、将来の課税所得を見積もっています。将来の見積課税所得は、顧客からの受注見込みや過去の業績等に基づいて算定しています。

 将来において顧客の需要減少や移転価格を含む税務関連の動向の変化により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。

 

b. 退職給付に係る負債

 退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用および退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。

 割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。

 これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼします。
 当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び期待運用収益率については、「退職給付関係」に記載しております。

 

c. 固定資産の評価

 当社グループは、近接した拠点間のビジネス上のつながりが強く、地域ごとの組織により管理会計上の業績管理をしているため、減損会計の適用にあたり、地域別のグルーピングを行っております。

 資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定にあたって見積もられる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。

 減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高は118,844百万円(前期比 1.9%減)、営業利益は5,578百万円(同 30.6%減)、経常利益6,019百万円(同 31.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,570百万円(同 29.1%減)となりました。

 当連結会計年度の連結業績は、電子部品関連では航空貨物の減少、生産停滞による貨物取扱量の減少などにより減収となりました。利益面では、荷動き停滞による効率悪化、競争環境激化の影響などにより減益となりました。消費物流分野では通販・EC物流が堅調に推移したことなどにより売上高は増加しました。利益については、支払運賃、賃借料などの増加により減益となりました。

 電子部品関連の物流と商品販売を主体とする当社及び国内外の子会社25社、そして消費物流を主体とする国内子会社の㈱流通サービスは、2022年度より3カ年の第5次中期経営計画をスタートしました。2年目となる当期も、基本方針を「地球と社会にやさしく・最適物流の追求と進化」とし、事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、グローバルにビジネスの拡大を図りました。

 なお、各セグメントの状況は、以下のとおりです。

 

[電子部品物流事業・商品販売事業]

 当連結会計年度は、電子部品物流事業と商品販売事業を合わせた電子部品関連の事業で期初に売上高93,500百万円、営業利益5,400百万円の計画を設定しました。実績は上記に記載の要因によって、売上高が計画比3.8%減の89,910百万円、営業利益は計画比19.7%減の4,336百万円となりました。また、グローバル成長の度合いを測る指標として「外販比率(アルプスアルパイングループ以外の売上構成比率)」、「海外売上比率」の向上に取り組んでおります。当連結会計年度においては、外販比率が前期比1.8ポイント減の57.0%に、海外売上比率については、電子部品物流において特に国際貨物の取扱い比率の大きい海外売上高の落ち込みなどにより前期比4.5ポイント減の42.9%となりました。

 今後については、主要顧客が属する電子部品産業は、通信の5G関連機器の普及や自動車の電子化の進行、AI、IoT、DXの実用化の進展などによりエレクトロニクス製品の需要拡大によって、今後も成長が予想されております。一方で、商品やマーケットの変化に対応した生産地変更やサプライチェーンの強靭化・効率化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しております。このような事業環境において、電子部品関連の事業をドメインとする当社及び国内外の子会社では、2022年度より3カ年の第5次中期経営計画をスタートしました。中期基本方針を「地球と社会にやさしく・最適物流の追求と進化」と定め、各種戦略・施策を推進し、グローバルにビジネスの拡大を図っていきます。

 

[消費物流事業]

 消費物流分野では、小売企業の宅配サービスや通販ビジネスの成長に伴って需要が拡大している一方、ドライバーを始めとする人材確保・育成が、業界全体の課題となっています。期初に売上高29,500百万円、営業利益1,300百万円の計画を設定しました。通販・EC物流では、荷動きが堅調に推移し、拡販活動も概ね計画通りとなりました。また、生協宅配のエリアは拡大しましたが、在宅需要の減少などにより取扱い物量は前年並みとなりました。これらの結果、売上高は計画比1.9%減の28,933百万円、営業利益が4.4%減の1,242百万円となりました。

 ㈱流通サービスにおきましても、2022年度より3カ年の中期経営計画をスタートしています。事業の運営体制や営業体制の強化を図り、主要顧客である生協向けビジネスの更なる拡大、シェアアップを図るとともに、「EC通販物流」の拡販・強化を進めていきます。さらに、医薬品輸配送などの新たな領域の市場開拓も進めていきます。また、業界課題である人手不足に対処すべく自働化の推進、働き方改革の推進などによって定着率の向上を図り、人材の確保・育成につなげてまいります。

 

③資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループでは、当連結会計年度におきまして、事業規模の拡大、顧客サービスの向上などを目的とした物流インフラ強化のための設備投資として、建設中の建物、情報システム構築など、総額11,035百万円の投資を行いました。

 当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、営業キャッシュ・フローの確保による自己資金と、金融機関からの借入によって調達を行っています。当連結会計年度末における借入金の残高は7,038百万円(前期末比79百万円減)、現金及び現金同等物の残高は23,610百万円(前期末比3,039百万円減)となりました。

 今後の重要な設備投資としては、引き続き国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資、生産性向上のための投資を行う計画です。なお、これらの設備投資資金については、現金及び現金同等物と、営業キャッシュ・フロー、借入金から充当する計画です。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。