当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「熱心な素人は玄人に勝る-新しいことを自分で創めよう-」を企業理念として掲げております。
コールセンターは、商品メーカーの問い合わせ窓口だけでなく、電話セールスとしての「顧客とのコミュニケーションの場」としても幅広く使われています。また、国や地方自治体の問い合わせ窓口として活用されるほか、ニューノーマルな時代における非対面接客としても、その重要性や存在意義が高まっております。
またコールセンターには、日々蓄積される“お客様との対話”(=「顧客の生の声」)や、年齢・性別などの顧客基本情報や問い合わせ対応履歴などの各種情報等、膨大なデジタルデータが集まります。その情報資産を十分に活用し、顧客が持つ潜在的なニーズを捉え、コールセンターと顧客の“エンゲージメント”の機会を創り出すことも、これからのコールセンターには必要になってきます。
私たちは、通信インフラ企業として、このような「コールセンター」を軸につながる企業と顧客・消費者の接点を、最新技術を用いたクラウドサービスで、「より快適に・より便利に」を実現し、企業とユーザー間のコミュニケーションデータをシームレスにつなげ、ストレスフリーで無駄のないコミュニケーションを可能にすることで社会に貢献してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、事業活動の成果を示す①売上高、②サービス別月次利用数を重要な経営指標としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、2024年3月期から2026年3月期までの3か年を対象とした「中期経営計画」を策定し、2023年5月に公表しております。
当社が属するコールセンター市場は、人材不足が深刻化しており、顧客との接点は労働集約的な人による対応から自動化やAI化が加速していくものと考えられます。また、今後のコールセンターシステムは、コールセンターに
おいて収集した情報をAIに分析させ、広告配信や効果的な販売に結び付ける等、DXによる統合化が進んでいくことが予想されます。
当社は、このような将来の自動化・AI化のニーズを先読みすべく、次世代のコールセンターシステムに関する知的システムの開発を進めてまいりました。一方、2024年3月22日に「特別損失(減損損失)の計上及び業績予想の修正並びに役員報酬の減額に関するお知らせ」にて開示しました通り、当社の拡充するサービスラインナップに対応するために固定資産のグルーピングを変更したこと、また、「VLOOM」及び「GROWCE」等の新サービスにおいてサービスリリース計画が遅延したことなどにより、新規獲得見込み案件の機会損失や受注時期の後ろ倒しが発生し、当初想定した計画期間内での回収の可能性が困難であると判断したことから、当事業年度においてソフトウエア資産の減損損失を計上しております。
これにより、2024年3月期を初年度とする中期経営計画の進捗が後退することとなりましたが、中期経営計画において掲げる2つの柱からなる成長戦略に変更はなく、確実に実施していくことにより売上高に結びつけてまいります。加えて、この成長戦略に合わせたコスト構造及び運営体制へ見直していくことにより、早期に安定した収益基盤を確立できるよう推進してまいります。具体的な成長戦略及びコスト改善施策は下記の通りです。
[成長戦略]
(1)「@nyplace」の安定成長
当社の売上高の大半を占める「@nyplace」において、交換機のバージョンアップと体制の最適化によって、収益基盤であるサービスの着実な成長を保持します。具体的には、以下の施策を予定しております。
・交換機(PBX)のシステムバージョンアップにより、新機能及びサービス対応範囲の拡張、基盤強化、SIP対応や他システムとの連携機能強化を行い、付加価値の高いサービスへ転換し差別化する。
・顧客向けポータルサイトやFAQの充実等により作業の自動化や効率化を実現し、利益を最大化する。
(2)独自サービスの飛躍成長
前中期経営計画における新サービス(コールセンターシステムのAI化+マーケティング活用)を含めた当社独自サービスで、多様化、低価格化、拡張性を求める既存のマーケットニーズへ対応し、新たなマーケティング市場の開拓を推進します。
・「VLOOM」及び「Afullect」によって既存のコールセンター市場を開拓
・マーケティング活用型サービスである「GROWCE」、「GOLDEN LIST」、「UZ」によって新市場を開拓
・全サービスの連携及び統合化を進め、当社独自のサービスを確立
[コスト改善施策]
(1)「@nyplace」に比重を置いた運営体制を見直し、経営資源の再配置を実施する
(2)サービス提供に必要な固定費の見直しを行い、生産効率を向上させる
(3)サービス運営体制における外注費の見直しを実施し、顧客ニーズを各サービスへ更にスピーディーに反映できる体制へ改善する
当社の中期経営計画3ヶ年における主要定量目標及び進捗状況は以下であります。
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
2026年3月期 |
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目標 |
実績 |
目標 |
業績予想 |
目標 |
業績予想 |
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売上高 |
24億円 |
21.5億円 |
27億円 |
21.5億円 |
31億円 |
- |
※今後の目標数値は、いずれも策定時点で目標値として定めたものであり、今後、適時開示等で公表される業績予想値と異なる場合があります。
(4)会社の優先的に対処すべき課題
当社の営むクラウドサービス事業は、導入コストの負担軽減とスピーディーな導入、システムコストの最適化等が可能な点から注目を集める一方、新規参入が多い事業でもあります。
当社は、競合他社との差別化を図るために、クライアントニーズを捉えたサービス、可用性の高いシステム、信頼を得られる組織の構築が重要であると考えております。
一方、上記「(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載の通り、早期に安定した収益基盤を確立することが最重要課題と考えており、以下の成長戦略及びコスト改善施策を着実に実行してまいります。
[成長戦略]
(1)「@nyplace」の安定成長
当社の売上高の大半を占める「@nyplace」において、交換機のバージョンアップと体制の最適化によって、収益基盤であるサービスの着実な成長を保持します。具体的には、以下の施策を予定しております。
・交換機(PBX)のシステムバージョンアップにより、新機能及びサービス対応範囲の拡張、基盤強化、SIP対応や他システムとの連携機能強化を行い、付加価値の高いサービスへ転換し差別化する。
・顧客向けポータルサイトやFAQの充実等により作業の自動化や効率化を実現し、利益を最大化する。
(2)独自サービスの飛躍成長
前中期経営計画における新サービス(コールセンターシステムのAI化+マーケティング活用)を含めた当社独自サービスで、多様化、低価格化、拡張性を求める既存のマーケットニーズへ対応し、新たなマーケティング市場の開拓を推進します。
・「VLOOM」及び「Afullect」によって既存のコールセンター市場を開拓
・マーケティング活用型サービスである「GROWCE」、「GOLDEN LIST」、「UZ」によって新市場を開拓
・全サービスの連携及び統合化を進め、当社独自のサービスを確立
[コスト改善施策]
(1)「@nyplace」に比重を置いた運営体制を見直し、経営資源の再配置を実施する
(2)サービス提供に必要な固定費の見直しを行い、生産効率を向上させる
(3)サービス運営体制における外注費の見直しを実施し、顧客ニーズを各サービスへ更にスピーディーに反映できる体制へ改善する
これらを踏まえ、早期の収益基盤の確立及び中期経営計画の実現と更なる事業推進のため、以下の6点を重要課題として取り組んでまいります。
① 販売力強化及び販路拡大
当社は、今後も成長が見込まれる市場環境において、営業の組織体制強化による新規マーケット開拓及び既存マーケット拡大、オンライン集客の強化によるWebリード数増加及びサービスサイト強化、販売パートナーとの協業・共創によるサービス力強化及び販売チャネル拡大等の取り組み、また、製販一体となる組織体制の最適化、クライアントニーズに応える機能拡充及びサービスメニューの追加、競争優位性を高める価格戦略等を通じて、販売力強化及び販路拡大を図ってまいります。
② 事業領域の拡大について
当社は、今後更なる成長を遂げるために、従来のサービスに加え、多様化するコンタクトチャネルやクライアントニーズに対応した新たな機能及びサービスを提供していきます。更に、コールセンターに蓄積される様々なデータを活用する新たな事業の開発・参入などを通じて、マーケティング事業領域等の周辺事業領域への事業の拡充を図ってまいります。
③ 開発力の強化
当社は、あらゆるクライアントニーズに応える機能拡充及びサービスメニューの開発に努めてまいります。また、それに加えてニーズを超えるさらに価値あるサービスの創造を実現するため、開発技術力強化のための教育と内製化及び環境整備へ積極的な投資を行い、開発機能の品質とスピードの向上を進めてまいります。
④ システム安定性の強化
当社は、コールセンターに不可欠な365日24時間のシステム提供に耐えうる十分な設備投資を行っており、今後も継続してサービス品質の維持向上を図るため、定期的・計画的な予防保守の運用体制を構築し、持続可能かつ高品質な安定したサービスの実現に努めてまいります。
⑤ 組織体制整備及び人材育成
当社は今後もクライアントの要望に対してスピーディーに対応していく組織の確立を目標として、専門分野を有する人材の補強、社内研修体制の更なる充実及び管理職のマネジメント能力の強化を図り、全社的な高い営業力を持つとともに、全社が隔たりなく連携する組織体制の整備に努めてまいります。
⑥ 内部管理体制の強化
企業として大きく成長していくためには、クライアントのみならず社会的な信用を得ることは、重要な課題であると考えております。そのため当社は、コーポレート・ガバナンスの充実に努め、内部統制システムの整備、コンプライアンス体制の充実及び経営の透明性の確保を図り、企業倫理の一層の向上を着実に進めております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方及び取り組み
当社のサステナビリティに関する考え方については、事業を通して顧客並びに社会における課題解決に貢献することと考えており、顧客並びに社会が抱える課題を解決するサービスを当社が提供し続けることにより、顧客の企業価値向上に貢献し、それが当社の企業価値向上につながり、顧客や社会が抱える課題解決に貢献するというライフサイクルを重視しています。
このライフサイクルの実現には、マーケットニーズをサービスへ展開させるための5つの力が重要であると考えており、「顧客基盤」「情報収集力」「企画力・提案力」「開発力」「信頼性・専門性」の5つの要素を安定的かつ継続的に生み出す基盤として、人的資本投資が重要課題であると捉え、取り組みを行っております。
あわせて、当社は、企業の重要な事業基盤ともなり得るクラウドサービスやマーケティングサービスを提供しており、安心して継続的にサービスをご利用いただけるよう努める責務があります。そのため、公正・適正な事業運営、法令遵守ができるガバナンス体制の構築強化はもとより、地球温暖化や気候変動などの社会問題の解決に貢献するため、環境負荷を軽減する取り組みも行っております
(2)ガバナンス
当社は、サステナビリティに関するリスク及び機会や重要事項等については、常勤の取締役及び監査役を出席者とする経営会議において内容を審議した上で、その重要度に応じて取締役会への報告または決議を行うこととしております。
(3)戦略
当社の人的資本経営については、「
一、売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える。
一、自立、職人(プロフェッショナル)の意識を持ち、事業を興すことにより、利益の追求だけでなく人間的に成長することを必達とする。
一、初心、感謝、謙遜、思いやり、闘争心の念を忘れず、決して驕り高ぶらず、決して手を抜かず、勤勉、努力を旨とする。
一、自分の人生の目標を持ち、自分で考え、自分で行動する。
一、家族を大切にする。
当社では、これらの企業理念、経営方針、行動指針を体現できる人材の育成により継続的にマーケットを開拓し、顧客のニーズにあった新しいサービスを提供することが企業価値の確立・向上を生むライフサイクルの実現につながるとの考えに基づき、就業規則や人事制度、研修制度等を通じた各種の取り組みを行っております。
また、地球温暖化や気候変動などの社会問題の解決に貢献するため、事業の規模や特性を踏まえた上で、環境負荷を軽減する取り組みも行っております。
①人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取り組み
当社は、以下の施策を通し、採用の門戸を広げながらキャリアの段階にあわせたOJTとOFF-JTの両輪による育成プログラムを実施することで、社員一人ひとりがビジネスパーソンとして「人財」へ成長することを支援しております。
1)採用に関する取り組み
当社が2008年から一貫して継続している新卒採用による社員数は、全社員の約4割を占めるほどになっております。性別、国籍、学部不問での母集団形成と自社独自の選考基準に加え、人事担当者だけでなく営業や技術の現場先輩社員もリクルーターとして学生からの相談に親身になって寄り添うことで、入社後ギャップの低減と早期離職の防止を図っております。
一方、中途採用においても、創業期から一貫して年齢や国籍、性別にかかわらず、スキルや人柄、入社以前の経験等を重視した採用選考を行っております。このような取り組みを通してサステナブルな事業サイクルを支える人材の育成・輩出に繋がっております。
2)若手社員育成のための取り組み
新入社員研修では、入社時研修の一環として人事担当者や職業能力開発推進者によるキャリアへの動機づけを促すためのプログラムを実施しております。その後、配属されてから1年目の期間は先輩社員が専任の指導員となり、業務遂行上のアドバイスや職種別のスキルチェックを行いながら新入社員の自立と成長を促す制度を運用しております。
入社2年目以降については、直属の上司による半期毎の評価後面談において、これまでの業務に関する内容だけでなく今後のキャリアプランや異動希望、働き方など、中長期的なキャリアに関する棚卸しや将来への展望といった相談にも真摯に対応しております。
3)中堅以上の社員育成のための取り組み
中堅以上の社員育成のための取り組みについては、経理、法務、自社ソリューション等の研修を実施することで、事業部門の人材を対象とするOff-JTを中心に、その育成を継続支援しております。また、新任の管理職に対しては、マネジメントに欠かせないビジネスマインドや各種コンプライアンスに関する研修を実施するなど、OJTを行う事業部門とOff-JTを行う人事部門が連携協力することで次世代経営幹部の育成・輩出に取り組んでおります。
4)エンジニア人材育成のための取り組み
当社のエンジニア人材は、技術力の強化を目的とする社内制度の下、その役割機能毎に5つのエンジニアタイプに分類されております。制度では、それぞれのエンジニアタイプに求められるスキルや知識を社員一人ひとりのレベルに応じて段階的に身に付けられるように定めており、スキルアップを目的とした自己学習や資格取得、外部研修の受講についても会社が全面的に支援しております。
②社内環境整備に関する取り組み
1)人事制度に関する取り組み
当社では、2014年度の上場を契機に人事諸制度及び就業規則類の大幅な刷新を行い、以降、外部環境の変化や各種のニーズに臨機応変に対応しております。具体的には、経営戦略に応じた育成制度の創設、働き方の変化に応じた就業規則の改定、業務環境の変化に応じた評価制度の見直しなどを行いました。
今後も、経営戦略上のニーズに応えることはもちろん、社員の声に耳を傾けながら外部環境の動向も注視することで、社員の働く環境の最適化に努めてまいります。
2)在宅勤務制度の運用
2020年4月より緊急的措置として開始した在宅勤務ですが、2021年4月には社内制度としての整備を行い、以降、見直しを繰り返しながら継続的に運用しております。オンライン上での会議の進め方や労務管理方法にも工夫を施し、ツールやシステムの導入によってコミュニケーションの円滑化を図ると同時に業務環境のデジタル化も推し進めることで、組織の活性化と生産性の向上を促進しております。
3)一般事業主行動計画の策定
2022年8月には、育児を行う社員の子育てと仕事の両立支援の促進、女性を含めた全ての人材が継続して就業し活躍できる職場づくりを目指し、「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画(計画期間:2022年11月1日~2025年3月31日)」並びに「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(計画期間:2023年6月1日~2027年3月31日)」を策定し、公表しました。
4)従業員エンゲージメント及びワーク・モチベーション向上のための取り組み
従業員エンゲージメント及びワーク・モチベーション向上のための取り組みとして、四半期に一回の頻度で利用できる社内会食費補助制度や社内部活動への活動費用支援の他、年に1回の頻度で「P-BEC(The Prize of Best Engagement to Collabos)」という社内表彰制度を運用しております。
本表彰制度では業務内容やプロジェクトの大小にかかわらず、社員の様々な努力や貢献にスポットライトを当てており、互いに感謝・賞賛しあう文化を醸成するとともに社内交流を活性化させる一助となっております。

(注)2023年度社内表彰開催時の説明資料より抜粋
③環境負荷の軽減に関する取り組み
1)エネルギー消費の削減に関する取り組み
当社が提供する「COLLABOS PHONE」のシステムは、世界トップレベルのエネルギー効率を実現する環境対応型大規模データセンターに設置しており、最新鋭の外気空調システム『GreenMall®』の採用により、空調消費電力やCO2排出量の大幅削減を実現しております。また、当社オフィスについては、床面積の縮小によりオフィスのスリム化を図るとともに、循環型社会の実現に向け、100%再生可能エネルギーによる電力供給を行うテナントビルを選定し、エネルギー消費の削減に貢献しております。
2)廃棄物の削減に関する取り組み
当社がサービス提供において取り扱うネットワーク設備やサーバー等機器類の廃棄については、分解再利用を主とするリサイクル事業者を選定、依頼しております。また、社内業務においては、ITツールの導入やWeb会議の導入及び社内申請や手続き等の見直しによりペーパーレス化を推進しており、廃棄物の削減に取り組んでおります。
(4)リスク管理
当社は、サステナビリティに関するリスク及び機会や重要事項等について、管掌役員による全社的見地からの管掌組織へのモニタリングを行うとともに、各組織において発生するリスクは経営会議へ報告がなされる体制としております。経営会議においては、リスクを評価・分析し、対応方針について検討を行うとともに、決定した方針はその重要度に応じて取締役会への報告または決議を行うこととしております。
(5)指標及び目標
当社では、上記「(3)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次の通りであります。
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指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
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(注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。詳細は、「
以下において、当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを取りまとめております。また、必ずしもリスクと考えられない事項についても、当社の事業活動を説明する上で投資家の判断基準になりうる事項については、積極的な情報開示を行っていく観点から記載しております。
当社は、リスクの発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でおりますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載事項も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が独自に判断したものであります。そのため、将来発生しうる可能性があるすべてのリスク及び当社株式への投資に関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1)事業内容に関するリスク
① 特定サービスへの依存について
「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、当社は、コールセンター向けの各種サービスを提供しておりますが、現在、「@nyplace」に売上高の多くを依存しており、当事業年度においても売上高全体の約64.6%を占めております。当社の業績が、特定サービスに依存することを好ましい状態とは考えておらず、中期経営計画に示している独自サービスの飛躍成長により、新たに当社の柱となる新規事業の創出に向け、積極的に販売拡大を実施しております。
しかしながら、現時点においては主要サービスである「@nyplace」が不測の環境変化等の事態に陥った場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また「@nyplace」は、AVAYA社製IP電話交換機システムを使用しております。当社は、AVAYA社の日本法人である日本アバイア㈱の代理店を通じて、AVAYA社製IP電話交換機システム、周辺機器及び備品を調達しております。今後、何らかの理由によりAVAYA社が日本市場から事業撤退する等、予期せぬ事象が発生し、製品の調達が困難になった場合、「@nyplace」の継続的なサービス提供に支障が発生する可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② サービス提供の安定性について
クラウドサービス利用を検討する基準として、安定したサービス提供の可否が重要な事項の1つとなっております。当社におきましては、事業の信頼性及び安定したサービス提供の実現性の観点から、設備及びネットワークの管理に細心の注意を払っております。サービス提供に関連する設備は、当社の契約するデータセンターに設置し、機器構成による稼働負荷の物理的かつ理論的な軽減を行っております。また、万一トラブルが発生した場合においても、短時間で復旧できるよう復旧テストやリスク管理体制を整えております。
しかしながら、上記の取り組みにも関わらず、2011年3月に発生した東日本大震災のような想定を超える大規模な地震等により本社及びデータセンター設備が致命的に損壊し、電力供給の停止等の予測不能な事態が起こった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ システム不具合について
当社は開発、保守及び運用体制の充実を図り、システム不具合の発生を未然に防ぐ体制の構築に努めております。しかしながら、一般的には高度なシステムにおいて、大小はあるものの欠陥発生を完全に解消することは不可能であると言われており、予期せぬシステム不具合が発生する可能性があります。
今後、当社サービス運用上に支障をきたすベンダーや開発言語の開発元等による潜在的かつ致命的な不具合が発覚し、当社が適切に解決できなかった場合、サービス提供に支障が発生する可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 設備投資について
当社は、既存サービスの強化及び新規サービスの導入を図るとともに、クライアント数の増加に応じて継続的な設備投資を計画しております。
しかしながら、事業を継続する中で、過年度の実績を大きく上回る急激なアカウント数の増加、当社の予測を超えるインターネット技術等の進展に伴うシステム投資の発生等により、投資時期、内容、設備規模について変更せざるを得ない状況となった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 事業拠点及び主要設備の集中について
当社の本社及び当社が契約するデータセンターは、東京都を中心とした首都圏近郊に集中しております。そのため、東日本大震災のような想定外の大規模災害等の発生により首都圏近郊の都市機能の一切が麻痺した場合、当社の事業継続が困難になる可能性があります。
また、インフラ麻痺等によるクライアント対応の遅延等、当社のサービス提供に大きな支障が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 新規事業及びサービスの開発について
当社は、今後の更なる事業の成長に向け、従来サービスの強化に加えて、市場ニーズに対応した新たな機能及びサービスの開発・提供により、コールセンター周辺事業領域及びマーケティング事業領域等への事業の拡充を図っております。これらの取り組みにおいて、計画通りに開発が進捗しなかった場合、想定し得ないような技術革新が起きた場合、あるいは当初期待した通りの成果を上げることができなかった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、新規事業領域への参入において、市場環境の変化や競争の熾烈化等により、事業活動が当初期待した通りの成果を上げることができなかった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 人材育成及び採用について
クラウドサービス市場は、非常に技術革新が早く、競合他社との競争が激しい市場であります。そのため、専門技術に精通し、クライアントのニーズに的確に対応できる提案力や応用力を持った人材、また組織運営等のマネジメントに優れた人材の継続的な確保と育成が重要となり、かかる人材の育成又は採用ができなかった場合、将来にわたり当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、人員の育成、採用のための研修、その他のコストを追加的に負担する必要が生じる可能性があり、これらの追加的コストの発生により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 企業買収及び他社との業務提携等について
当社は、経営の効率化と競争力強化のため、企業買収及び資本参加を含む投資、他社との業務提携等により、事業の拡大を行うことがあります。新しい製品やサービスを提供するにはこのような経営戦略が不可欠となりますが、活動が円滑に進まなかった場合、あるいは当初期待したとおりの効果が得られなかった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当該他社が事業戦略を変更し、当社が資本参加、業務提携関係等を維持することが困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業環境に関するリスク
① インターネット環境について
クラウドサービスは、インターネット環境を通じてサービス提供を行うものであり、法人によるインターネット利用の更なる普及が、当社の成長のための必要な条件であります。
今後、インターネット利用の普及に伴い通信速度遅延、通信回線障害等の通信インフラに関する弊害や、悪質なハッカー等の第三者からの侵害等による弊害の広がり、インターネット利用に関する新たな法的規制の導入等、その他予期せざる要因が発生し、法人によるインターネット利用が縮小する状態となった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 技術革新について
クラウドサービス市場は、技術革新の早い市場であります。そのため、当社は、クライアントへのアンケートや訪問・提案等の日々の営業活動の中でニーズを集約しながら、市場ニーズに対応した新たな機能及びサービスの開発・提供を行うことにより、競争力のある独自のサービスを構築していく方針であります。
しかしながら、競合他社等により先進的な技術革新があり、当社の対応が遅れた場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 市場競争について
クラウドサービス市場において、当社は早期に事業参入をしており、パイオニアとしてのメリットを活かしながら市場ニーズに合致するサービス提供を目指して開発を行い、競合他社との差別化を図っております。
しかしながら、今後の市場が拡大する中で、大手システムエンジニアリング会社や通信事業者等の競争力の高い企業を含む多くの新規参入企業が考えられ、それらの新規参入事業者の登場による技術革新、価格競争等の激化により当社の優位性が薄れた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 顧客のクラウドサービスの利用方針について
当社のクラウドサービスは、コールセンターを所有するクライアントや販売促進活動を行うマーケティング部門を所有するクライアントを対象としており、インターネット網を介して当社が開発、構築したシステムを月額料金制で提供しております。企業が自社でシステムを構築する場合と比較して、大規模な設備投資が不要になるとともに、導入コストの低減及び導入期間の短縮が可能となります。
しかしながら、クライアントがクラウドサービスの利用方針を変更し、当社のサービスの利用から自社でのシステム運営に切り替えた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)株価形成に関するリスク
① 潜在株式について
当社は、取締役、監査役及び従業員に対して、新株予約権を利用したストックオプション制度を採用しております。当事業年度末現在における当該潜在株式の総数は、発行済株式総数4,792,800株に対し、936,900株となっております。権利行使期間においてこれらの新株予約権が行使された場合、1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
② 配当政策について
当社は、財務体質の強化と事業拡大のための内部留保の充実等を図ることが重要であるとの考えに基づき、過去において配当を実施しておりませんが、株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しております。
今後、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針ですが、現時点において配当の実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
(4)事業体制に関するリスク
当社は、今後大きく成長するにあたり、事業拡大に伴う人員の拡充、人材育成を行うとともに、経営判断及び業務執行の体制を充実させていく必要があると考えております。また、体制構築にあたってはコーポレート・ガバナンスを十分に機能させるために、内部統制システムの整備、運用及び各業務プロセスの管理体制の構築を同様に推進していく必要があると考えております。
しかしながら、事業の急速な拡大等により、適切な経営・事業体制の整備が遅れ、十分なコーポレート・ガバナンス体制での業務運用が困難となった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)法令遵守に関するリスク
① コンプライアンスについて
当社は、クラウドサービス事業者及び個人情報取扱事業者として、インターネットに関連する規制である電気通信事業法及び各種個人情報の取り扱いに関する法規制等の遵守は、当社が社会的な責任を果たすために重要な事項であると考えております。
当社は、上記の対応として、コンプライアンス体制の構築及び維持に努めております。プライバシーマーク制度やISMS適合性評価制度の認証の取得、コンプライアンス研修の実施、機密情報取扱に関する研修等の社内教育の充実、各業務プロセスの管理、改善を行う体制構築と、法令遵守に向けた内部管理体制の構築を推進しております。
しかしながら、今後進むとみられる法改正への対応の遅れ、予期せぬ自然災害、人的ミスの影響等による機密情報の流出、管理体制の不備等による役員及び従業員の法令違反等が発生した場合、当社の社会的な信用の低下、あるいは情報流出防止対策、損害賠償等の多額の費用の発生等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権の侵害について
現在、当社はオープンソースを利用したシステム開発等によりサービス提供を行っております。過去もしくは現時点において、当社に対し第三者からの知的財産権の侵害等による訴訟が発生した事実はありません。しかしながら、今後、当社の認識の範囲外で第三者が新たに取得した知的財産権等の内容によっては、当社に対する損害賠償等の訴訟が発生する可能性も否定はできず、その場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 個人情報及び企業情報の保護について
当社では、業務に関連して多数の個人情報及び企業情報を保有しております。当社は情報管理に関する全社的な取り組みとして、個人情報保護方針、情報セキュリティ基本方針の公表及び諸規程を規定するとともに、社内教育による情報管理への意識向上等の施策を実施しております。また、個人情報についてはプライバシーマークの認証を取得しているほか、情報資産の漏洩や改ざん、不正利用等を防ぐため情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を取得し、社内の情報資産に関しリスク分析を行い、リスクがある事項に関しては改善策を講じ、情報漏洩の防止に努めております。
しかしながら、情報機器の誤作動や操作ミス等により個人情報や企業情報が漏洩し、損害賠償責任の負担、社会的信用の失墜等が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)自然災害等に関するリスク
地震、台風、津波等の自然災害、火災、各種感染症の拡大等により、当社の事業拠点及び契約するデータセンターに被害が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行により経済活動の正常化が進み、個人消費やインバウンド需要の回復が見られるほか、好調な企業収益や人手不足感を背景に雇用所得環境の改善やデジタル化の推進等によるソフトウエア関連の投資拡大など、景気は緩やかな回復基調にあります。一方で、海外景気の下振れ、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢悪化に伴う原材料及びエネルギー価格の高騰、記録的な円安や物価上昇の影響等、依然として先行きは不透明な状況となっております。
当社を取り巻く国内クラウド型コールセンター市場におきましては、数年ごとに大規模なシステム投資が必要なオンプレミス型(※1)から拡張性が高いクラウド型(※2)への移行が引き続き顕著化しており、今後については、特に大規模案件のクラウド型への移行が一層加速すると見込まれております。また、コールセンターの対応窓口が電話だけでなく、メール、チャット、問い合わせフォーム、SNS等へマルチチャネル(※3)化していることに加えて、生産年齢人口の減少や労働力不足から、コールセンター業務をアウトソーシング化する動きも拡大しております。さらに、昨今においては、ChatGPTに代表される生成AI(コンピュータが学習したデータから、新たなデータや情報を自動生成する技術)を活用した製品やサービスが急速に増えるなか、コールセンターシステムの動向についても、AIによる自然言語処理能力を活用した要約機能やVOC分析等の先端的機能に注目が集まっており、コールセンターの役割が「コストセンター」から収益を生みだす「プロフィットセンター」へ本格移行する過渡期に入ったとの見方も強まっております。
このような環境のもと、当社は、2023年5月10日に開示した「中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)」に基づき、成長投資を収益へつなげる販売拡大フェーズとして以下の成長戦略を推進してまいりました。
①「@nyplace」の安定成長
新機能及びサービス対応範囲の拡張、基盤強化、SIP対応や他システムとの連携強化を実現させるため、交換機のシステムバージョンアップを実施し、既存顧客の移行計画をスタートしております。また、サービス提供における作業の自動化や効率化による体制の最適化及び経営資源の再配置を進めております。
②独自サービスの飛躍成長
2023年8月に音声認識、自動要約、スマホ対応、完全冗長構成等の機能を搭載したAIコールセンターPBX/CTIシステム「VLOOM」の提供を開始したほか、同年11月には、AI顧客分析・予測ツール「GOLDEN LIST」の大型バージョンアップを実施、さらに、同年12月には、急騰する生成AI活用のニーズに対応し、効果的なVOC分析やマーケティング施策に貢献する当社独自のAIマーケティングシステム「UZ」の提供を開始いたしました。これらサービスの提供とともに既存市場の深耕及び新規市場の開拓を推進しております。
新規顧客獲得に向けた取り組みとしては、業界最大規模の展示会への出展、シナジー効果のある企業とのオンライン共催セミナー開催によるリード獲得、SEO対策やリスティング広告等のWeb施策等に注力してまいりました。また、他社サービスとの連携及び協業施策の推進においては、サービス力の強化及び販売チャネル拡大を目的としたAI CROSS株式会社及び株式会社WOW WORLDとの協業のほか、クラウドサービスとインターネット回線サービスのワンストップ提供を目的として、ソニービズネットワークス株式会社が提供する法人向けインターネット回線サービス「NURO Biz」の取り扱いを開始しました。
既存顧客に向けた取り組みとしては、定期的なヒアリング訪問やアンケート調査活動、顧客ニーズを反映した要望機能開発やシステムバージョンアップ等のリテンション活動により、クロスセルやアップセルでの収益機会の拡大に注力してまいりました。
上記取り組みの一方、主に「@nyplace」における大型案件の減席等に伴う月額利用料の減少、また、「VLOOM」及び「GROWCE」等の新サービスにおいて、サービスリリースが当初の計画から遅延したことによる新規獲得見込み案件の機会損失や受注時期の後ろ倒し等による売上貢献の遅れが、当事業年度の業績に大きく影響している状況となっております。
これらの結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて477,443千円減少し、1,752,183千円となりました。
当事業年度末における負債総額は、前事業年度末に比べて320,755千円増加し、647,399千円となりました。
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて798,199千円減少し、1,104,784千円となりました。
b. 経営成績
当事業年度の経営成績は、売上高2,153,973千円(前事業年度比8.3%減)、営業損失294,326千円(前事業年度は営業利益101,439千円)、経常損失276,410千円(前事業年度は経常利益100,313千円)、当期純損失798,320千円(前事業年度は当期純利益67,861千円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前事業年度末に比べて75,719千円減少し、1,178,233千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動の結果得られた資金は、104,179千円(前事業年度は165,681千円の収入)となりました。主な要因は、税引前当期純損失759,375千円の計上があった一方で、減価償却費287,086千円、減損損失483,164千円、法人税等の支払額19,643千円、賞与引当金の減少額21,200千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動の結果支出した資金は、360,694千円(前事業年度は344,909千円の支出)となりました。要因は、中期経営計画における@nyplace用設備への投資や新サービス及び現有サービスへのITソリューション開発投資等の有形及び無形固定資産の取得による支出360,694千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動の結果得られた資金は、180,795千円(前事業年度は125,415千円の支出)となりました。主な要因は、長期借入れによる収入300,000千円の一方で、リース債務の返済による支出69,524千円及び長期借入金の返済による支出50,000千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社の主たる業務はクラウドサービス事業のため、生産活動を行っておらず、生産設備を保有していないため、記載を省略しております。
b. 受注実績
a. 生産実績と同様に、当社の主たる業務であるクラウドサービス事業の事業特性に馴染まないため、記載を省略しております。
c. 販売実績
当事業年度の販売実績について、当社の報告セグメントは単一セグメントでありますが、サービス別に示すと、下表のとおりであります。
|
サービスの名称 |
売上高(千円) |
前年同期比(%) |
|
@nyplace |
1,392,146 |
87.5 |
|
COLLABOS PHONE |
481,818 |
99.1 |
|
VLOOM |
23,213 |
- |
|
COLLABOS CRM |
122,507 |
85.6 |
|
COLLABOS CRM Outbound Edition |
28,819 |
83.6 |
|
その他 |
105,467 |
111.2 |
|
合計 |
2,153,973 |
91.7 |
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 |
当事業年度 |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
㈱カスタマーリレーションテレマーケティング |
347,236 |
14.78 |
276,723 |
12.85 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
1)財政状態
(資産)
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて477,443千円減少し、1,752,183千円となりました。主な要因は、リース資産が増加した一方で、ソフトウエアの減損による無形固定資産の減少によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べて320,755千円増加し、647,399千円となりました。主な要因は、長期借入金及び1年内返済予定の長期借入金の増加、リース債務の増加によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて798,199千円減少し、1,104,784千円となりました。主な要因は、利益剰余金が減少したことによるものであります。
2)経営成績
(売上高)
当事業年度における売上高は2,153,973千円(前事業年度比8.3%減)となりました。製品・サービスごとの状況は、以下のとおりであります。
・「@nyplace」につきましては、オンプレミス型からクラウド型へのリプレイス案件の獲得や業務拡大及び拠点移転に伴う契約数の増加があったものの、新型コロナウイルス関連のスポット公共案件の業務縮小やノンボイスチャネル増加に伴う電話問い合わせの減少による月額利用料の減少、また、前事業年度に受注した複数拠点のサーバリプレイスに伴う大型スポット案件の一時売上高の減少により、期間平均利用席数は6,352席(同1,251席減)、売上高は1,392,146千円(同12.5%減)となりました。
・「COLLABOS PHONE」につきましては、他社サービスとの連携、既存顧客からの紹介、価格優位性等による新規案件の獲得や既存顧客であるBPO事業者等の業務拡大に伴う通信売上の増加があった一方で、新型コロナウイルス関連のスポット公共案件の業務縮小に伴う月額利用料の減少等により、期間平均利用チャネル数は3,594チャネル(同130チャネル減)、売上高は481,818千円(同0.9%減)となりました。
・「VLOOM」につきましては、当初の計画からサービスリリースに遅れはあったものの、展示会出展やセミナー開催等による案件の引き合い、また、大型の新規案件の獲得等により、期間平均利用チャネル数は355チャネル(同-)、売上高は23,213千円(同-)となりました。
・「COLLABOS CRM」及び「COLLABOS CRM Outbound Edition」につきましては、新型コロナウイルス関連や行政関連のスポット公共案件の業務縮小等により、契約数が減少いたしました。これらの結果、インバウンド用(受信)の「COLLABOS CRM」につきましては、期間平均利用ID数は1,808ID(同434ID減)、売上高は122,507千円(同14.4%減)となり、アウトバウンド(発信)用の「COLLABOS CRM Outbound Edition」につきましては、期間平均利用ID数は465ID(同107ID減)、売上高は28,819千円(同16.4%減)となりました。
・その他、新サービス及び業務効率化等を実現する付加的サービスにつきましては、顧客情報管理(CRM)システムにマーケティングの機能を搭載した統合CRMマーケティングシステム「GROWCE」の新規案件獲得による契約数の増加やAI 顧客分析・予測ツール「GOLDEN LIST」における金融業界のマーケット開拓による新規案件獲得等により、売上高は105,467千円(同11.2%増)となりました。
(売上原価)
当事業年度の売上原価は、1,661,728千円(同13.5%増)となりました。主な要因としては、「@nyplace」の体制の最適化に伴う業務委託費や外注費の大幅なコスト削減があった一方で、新サービス「GROWCE」及び「VLOOM」のソフトウエア償却費等の先行コスト及び「@nyplace」のバージョンアップ及びエネルギー価格高騰に伴うホスティング費用の増加等によるものであります。サービス別の売上原価の内訳としては、「@nyplace」は、940,920千円(同1.5%減)、「COLLABOS PHONE」は、309,262千円(同3.1%減)、「VLOOM」は、153,205千円(同-)、「COLLABOS CRM」及び「COLLABOS CRM Outbound Edition」は、52,268千円(同13.4%減)、その他、新サービス及び業務効率化を実現する付加的サービスは、206,071千円(同59.8%増)となりました。
(販売費及び一般管理費)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、786,570千円(同0.4%増)となりました。主な要因としては、本社移転に伴う家賃の減少及びオフィス資産の減価償却費の減少があった一方で、新サービスの開発に伴う業務委託費用や販売拡大のための広告費等の増加によるものであります。
以上の結果、営業損失は294,326千円(前事業年度は営業利益101,439千円)となりました。また、営業外収益として、当社システム開発における外部委託の開発遅延に伴う一部負担金17,091千円が発生したことにより、経常損失は276,410千円(前事業年度は経常利益100,313千円)となりました。加えて、当社の事業環境や事業状況の変化に伴い固定資産のグルーピングを変更したことにより、改めて「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき将来の回収可能性を資産グループごとに検討した結果、当初想定した期間での回収が困難であると判断したことから、ソフトウエア及びソフトウエア仮勘定の減損損失483,164千円を特別損失として、また、法人税等調整額(損)38,329千円等を計上したことにより、当期純損失は798,320千円(前事業年度は当期純利益67,861千円)となりました。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、設立以来、コールセンター向けクラウドサービスの提供を中心に事業を展開しており、コールセンターのシステム構築から運用における業務課題解決に向けたサポート、また、AIやデータ活用によるマーケティング支援に至るまで、企業の生産性向上や業務効率の改善、販売促進等に貢献すべくサービスの提供に努めております。
当社が属するクラウドサービス市場につきましては、2022年末のクラウドサービス利用企業の割合は前年末より1.8ポイント増加し、72.2%に及んでおり、上昇傾向が続いております。(出典:総務省「情報通信白書 令和5年版」)
また、クラウド型CRM市場の市場規模につきましては、2022年度に4,932億円(前年比20.5%増)となり、2022年度においてクラウド型とオンプレミス型の市場構成比は、54.8%対45.2%とクラウド型市場がオンプレミス型市場を逆転し、クラウド型のニーズが高く推移している状況となっております。
クラウド型市場が引き続き好調に伸びている要因といたしましては、オンプレミス型からクラウド型へのシフトがさらに加速されてきていることに加えて、新型コロナウイルス感染症の発生以降、一気に高まったテレワークへの移行ニーズが続いており、オンプレミス型のシステムに在宅基盤をクラウドで追加する需要も新たに加わり、定着化したことが要因として挙げられております。最近においては、これまで移行に慎重であった比較的大規模な案件のリプレイスも増加しており、クラウド型での導入が市場全体に浸透してきていることを背景に、2023年度以降も市場は年平均17.0%で成長し、2027年度には市場規模は1兆824億円、クラウド型とオンプレミス型の構成比は、78.9%対21.1%にまで広がるものと予測されております。(出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社「マーテック市場の現状と展望2023年度版〈クラウド型CRM市場編〉」)
このような状況の中、当社が属するコールセンター市場は、慢性的な人材不足や市場動向に伴うマルチチャネル化への対応等が必要とされております。今後は、生成AIや音声認識技術等のIT技術の活用による既存業務の生産性向上や顧客対応の自動化が求められ、これらの技術革新は、コールセンターをはじめ、ITベンダー、BPOベンダーの全ての業務やビジネスに大きく影響するものと考えられます。近年においては、コールセンターのみならず、マーケティング活動や営業活動といった顧客接点の幅広い領域において、VOC(顧客の声)の活用が急拡大したことから、一時は停滞感のあったコールセンター業界においてもAI技術の導入が急速に進んでおり、人手不足の解消とともに、データ分析等の付加価値の高い事業領域へのシフトが顕著になるものと予想されます。
当社は、このような将来の自動化・AI化のニーズを先読みすべく、次世代のコールセンターシステムに関する知的システムの開発を進めてまいりました。一方、2024年3月22日に「特別損失(減損損失)の計上及び業績予想の修正並びに役員報酬の減額に関するお知らせ」にて開示しました通り、当社の拡充するサービスラインナップに対応するために固定資産のグルーピングを変更したこと、また、「VLOOM」及び「GROWCE」等の新サービスにおいてサービスリリース計画が遅延したことなどにより、新規獲得見込み案件の機会損失や受注時期の後ろ倒しが発生し、当初想定した計画期間内での回収の可能性が困難であると判断したことから、当事業年度においてソフトウエア及びソフトウエア仮勘定の減損損失を計上しております。
これにより、2024年3月期を初年度とする中期経営計画の進捗が後退することとなりましたが、中期経営計画において掲げる2つの柱からなる成長戦略に変更はなく、確実に実施していくことにより売上高に結びつけてまいります。加えて、この成長戦略に合わせたコスト構造及び運営体制へ見直していくことにより、早期に安定した収益基盤を確立できるよう推進してまいります。具体的な成長戦略及びコスト改善施策は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりであります。
c. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、事業活動の成果を示す売上高及びサービス別月次利用数を重要な経営指標としており、当事業年度における売上高は2,153,973千円(前事業年度比8.3%減)となりました。
サービス別売上高及び月次利用数の内訳は、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 a. 経営成績等 2)経営成績」に記載のとおりであります。引き続き、これらの指標を拡大していくように取り組んでまいります。
d. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の報告セグメントは、クラウドサービス事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
a.資金需要の主な内容
当社の運転資金需要のうち主なものは、情報通信機器の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
b.資金調達
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や設備投資等の調達につきましては、自己資金、金融機関からの借入及びリースを基本としております。
なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、441,763千円であります。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,178,233千円であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
この財務諸表の作成にあたり、資産・負債及び収益・費用の報告数値について影響を与える見積りは、過去の実績や状況に応じて、可能な限り合理的と考えられる根拠や要因等に基づき実施しております。しかしながら、これらの見積りについては不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
〔用語解説〕
※1.オンプレミス型
企業が利用するシステムや設備等を自社で保有し、自社で構築、運用する仕組み。
※2.クラウド型
企業自身では設備を持たず、インターネット等のネットワークを経由してサービスを利用する仕組み。
※3.マルチチャネル
電話やメール、FAX、Webの問い合わせフォーム、チャット、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等の複数の問い合わせ手段をもつこと。
該当事項はありません。
該当事項はありません。