第2【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営理念及び行動基本方針

経営理念

東邦チタニウムグループは

チタンと関連技術の限りない可能性を追求し

優れた製品とサービスを提供し続けることで

持続可能な社会の発展に貢献します

行動基本方針

私たちは、経営理念を実現するため次の3つの基本方針に基づき行動します。

1.安全とコンプライアンスを最優先し、健全で公正な企業活動を行います。

2.変革と創造を実践し、従業員と企業の持続的成長を果たします。

3.顧客、地域社会、株主をはじめとする全てのステークホルダーと対話を進め、信頼・共生関係を築きます。

 

 

(2) 経営環境

当社を取り巻く社会環境としては、脱炭素社会の形成に向けた取組や企業とステークホルダーとの共生関係の強化等、企業の社会的責任の遂行が、今後もますます強く求められていくものと考えています。

また、当面の経済環境としては、世界的には物価上昇率にピークアウトの動きがみられるが依然として水準は高く、インフレ抑制のための各国中央銀行による金融政策が景気回復の下振れ要因となりました。長期化する世界的な金融引き締めの影響や、中東地域をめぐる情勢、中国経済の先行き懸念などの海外経済の減速による下振れ要因に加え、物価上昇を背景とする個人消費の落込みやコスト高による設備投資の抑制等により先行き不透明な状況が続きました。

当社グループを取り巻く事業環境は、チタン事業においては航空機向け需要の本格的な回復に加えウクライナ紛争に起因するロシアからの調達回避もあり、製品販売は引き続き堅調に推移しましたが、触媒・化学品事業においては海外の景気低迷長期化等により販売は低調に推移しました。一方、為替円安による収益改善の効果はあるものの、コスト面では、輸入原材料・副資材コストの高止まりが、収益を大きく圧迫する要因となりました。

 

当社グループでは、社会的、経済的にも当社を取り巻く環境は、これまでとは大きく変わるものと考え、より長期的な視点で企業経営に取組むことを全社的に共有することを目的に、2023年5月に「2030年ありたい姿」を再構築しています。そして2030年の目標に対するキャッチアップ戦略を立案し、向こう3年間のアクションプランを「2023-2025年度中期経営計画」と位置づけています。

特に全社的な共通課題としてサステナビリティに関する取組を強化(「ESG経営の推進」)することとしています。なお、詳細は以下(3) 2030年ありたい姿、ESG経営の推進に記載しています。

 

(3) 2030年ありたい姿

当社は2022年に中期経営計画の基本テーマとして新たに「ESG経営の推進」を加えました。これは、「E」「S」「G」の視点で、自社とステークホルダーを取り巻く重要な諸課題の解決に取り組み、社会の持続的な発展に貢献することが、私たちの目指す経営理念の実現には、必要不可欠な課題のひとつであると考えたからです。

当社グループは2023年に創立70周年を迎えましたが、より長期的な視点で企業経営と社会への貢献に取り組み、「100年企業」を意識したいと考えています。

 


 

 


 

 


 


 

 

(4) 2023-2025年度 中期経営計画

「2030年ありたい姿」では、セグメントごとに具体的な目標イメージを設定しました。目標と現状とのギャップを認識した上で、そこに向けてのキャッチアップ戦略を立案し、まずは向こう3年間のアクションプランを策定しています。そして、このアクションプランを2023-2025年度中期経営計画として位置づけています。

 

セグメント別の課題及び施策

各セグメントごとの課題及び施策は、以下のとおりであります。

なお、優先的に対処すべき課題は2023-2025年主要施策として以下に記載しております。

 

① 金属チタン事業

航空機向けを主因とする旺盛なチタン需要に対応するため、サウジアラビアのスポンジ生産合弁会社(ATTM社)におけるフル生産体制への移行を完了するとともに、国内の若松工場及び茅ヶ崎工場において3,000トン/年程度の生産能力増強計画を決定しております。また、原料価格の高止まりや電力、燃料価格の高騰が続く中、これらを反映した適正な製品販売価格の実現に引き続き取り組んでまいります。

なお、金属チタン事業における2030年ありたい姿と23-25中計の主要施策は以下のとおりであります。


 

② 触媒事業

当社触媒の主な用途分野であるポリプロピレンの需要は、足元低迷しているものの、中長期的には拡大が見込まれる中、生産技術改善等による触媒の生産効率化及び増産に取り組んでまいります。あわせて、将来的な販売拡大を見据え、次の能力増強計画の検討を進めてまいります。

なお、触媒事業における2030年ありたい姿と23-25中計の主要施策は以下のとおりであります。


 

 

③ 化学品事業

海外の景気減速を主因にMLCC需要は調整局面となっておりますが、中長期には需要拡大が期待できる小型・大容量MLCCに対応可能な超微粉ニッケルの供給体制を構築するため、若松工場内に新工場を建設することを決定しており、2025年度の完工及び営業運転開始に向けて、建設工事及び操業立上げを着実に進めてまいります。

なお、化学品事業における2030年ありたい姿と23-25中計の主要施策は以下のとおりであります。


 

④ 新規事業

PEM(固体高分子膜)水電解水素製造装置の陽極側拡散層としての活用が期待されているチタン多孔質体(WEBTi)について、事業化に向けた準備・対応を進めており、供給能力の整備を含め、その早期事業化に取り組んでまいります。また、現在進めているその他の新規事業案件の事業化検討を加速するとともに、新たな事業化テーマの探索の取組を強化してまいります。

なお、新規事業における2030年ありたい姿と23-25中計の主要施策は以下のとおりであります。


 

 

 

(5) 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応


 

 


 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティに関する基本的な考え方及び取組方針

当社グループは、「東邦チタニウムグループ経営理念」のもと、ESG及びSDGsの観点から、事業活動を通じて自社とステークホルダーを取り巻く重要な諸課題の解決に取り組み、社会の持続的な発展に貢献し、長期的な企業価値の向上を目指すことを基本方針として制定し、これを当社の「ESG経営」と定義付けしています。その進め方として国際的なガイドライン(GRI、SASB等)を参考に、社会の持続的発展及び当社グループの長期的企業価値向上のための社会的課題をマテリアリティ(重要課題)として定め、事業活動を通して課題解決に取り組むこととしました。これが当社のサステナビリティに関する基本的な考え方及び取組です。

マテリアリティ、取組内容および目標の概要は下表のとおりです。

また、マテリアリティの抽出、優先順位付け、特定及び開示・振り返り等に関する考え方や定量・定性面の情報については、当社ウェブサイトに掲載しています。

URL:https://www.toho-titanium.co.jp/csr/materiality/

なお、過去の総括(実績)については、当社ウェブサイト(URL:https://www.toho-titanium.co.jp/csr/library/)の統合報告書をご参照ください。

 


 

気候変動については、当社グループにとってリスクであると同時に新たな収益機会を得るための重要な経営課題であると認識しています。当社グループがマテリアリティとして設定した「地球環境保全への貢献」については、2022年、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に即した情報開示を行っており、以下(5)「地球環境保全への貢献」に関する取組についてその概要を記載しています。

 

(2)ガバナンス

当社「ESG経営」の具体的推進テーマとなるマテリアリティの特定や取組内容・目標の設定、活動状況モニタリング、フィードバックに至る推進体制は、以下のとおりです。

 


マテリアリティに対する具体的な対応計画・目標の策定、対応策の進捗管理等は、ESG推進委員会のもとに置かれたE、S、Gの3つの個別分科会から構成されるESG推進部会が母体となり、事業部門及び関連する社内委員会との連携役も担いつつ推進しています。E、S、G各分科会での活動状況は、定期開催されるESG推進部会で情報を共有します。

また、原則年2回開催するESG推進委員会(委員長:社長)においては、ESG推進部会からの活動状況のほか、マテリアリティに関わる活動方針、重要事項や次年度計画等を審議します。その後、これらの事案は執行役員会及び取締役会に報告され、見解や指示等についてはESG推進委員会へフィードバックされる仕組みとなっており、二次的かつ全社俯瞰的立場からモニタリングしています。

 

 

(3)リスク管理

当社グループのリスクは、マテリアリティ対応に関連して想定されるリスクのほか、経営に大きく影響を及ぼす全社的なリスクから、生産・操業に関するリスク、人的資本の強化・拡充に関するリスクなど、経営理念や経営戦略の達成を阻害する様々なケースを想定しています。リスク管理委員会(委員長:社長)は、これらのリスクを総合的にマネジメントする機能を担っており、リスク管理規程及びリスク管理マニュアルを制定し、最適なコストで適切な対応を行うことを目的にそれぞれの取組等を扱う主管部門と推進責任者を定め、全社的なマネジメントシステムとして管理しています。

リスク調査から、評価、優先順位付け、対応計画の立案、活動状況とりまとめ及び是正・改善に関する助言等の実務的な運営は、リスク管理規程及びリスク管理マニュアルに沿って行われます。その中で重要事項、進捗状況の総括、是正・改善策等については、リスク管理委員会で審議し、執行役員会、取締役会で定期的にこれらの活動状況全般についての報告を行っています。リスク管理委員会は原則年1回の開催ですが、必要に応じ随時開催します。また個別重要リスクへの対応等については、委員長以下、関係者で検討会を開催するなど機動的な運営を行っています。

 

(4)マテリアリティ特定にあたっての基本的な考え方

マテリアリティを特定するうえで、国際的なガイドライン(GRI、SASBなど)を参考に、当社の「経営理念」「行動基本方針」等を踏まえ、マテリアリティ候補を抽出しました。抽出した候補を「当社にとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」の2つの評価軸上でマッピングし、優先順位をつけ、取締役を含め経営層の意見を参考に、重要度の高い課題をマテリアリティとして特定しています。

これらマテリアリティの抽出・特定のための検討では、当社グループの経営や事業の抱えるリスク、独自技術を活かした長期的な事業価値創造の可能性を踏まえ、同時に取組内容や定量的目標の妥当性の議論も行っています。

 

(5)「地球環境保全への貢献」に関する取組

当社グループの取り扱う製品の性質上、マテリアリティの中でも特に脱炭素社会の実現という課題は重要な位置にあり、当社グループにとってはリスクであると同時に新たな収益機会を得るための重要な経営課題と考えています。そのため当社グループは日本政府が提唱する脱炭素化を支持しており、気候変動に関する法規制を遵守します。また、この気候変動関連の対応については、TCFDのフレームワークに基づき、下記概要のとおり「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの枠組で開示しています。

なお、詳細については以下当社ウェブサイト『サステナビリティ』>『環境』に記載の「気候変動に関する対応」をご参照ください。

URL:https://www.toho-titanium.co.jp/csr/environment/

 

(ⅰ)ガバナンス

気候変動に関するリスクの特定、影響度及び対応策の審議と、承認されたリスクの対応状況のモニタリング及び管理については、リスク管理委員会が行います。気候変動に関する機会の特定、影響度及び対応策・目標の審議と、承認された機会の対応状況のモニタリングについては、ESG推進委員会が行います。また、リスク管理委員会で審議された気候変動に関するリスクについても併せて執行役員会に上申します。

執行役員会は、定期的(原則年2回)に両委員会で審議した気候変動に関するリスクと機会に関する事案報告を受け、その承認を行います。その後、監督機能を備えた取締役会で承認事案が報告されます。

 

 

気候変動問題に関する取組体制


 

 

(ⅱ)戦略

当社グループは、シナリオ分析を通じて気候変動による財務インパクトの把握に努めています。シナリオ分析の結果をもとに、脱炭素社会の実現に向けた具体的な移行計画を策定し、2023年度から2025年度までの中期経営計画へ反映しています。

(ⅲ)リスク管理

・気候変動リスクの特定プロセス

気候変動リスクの特定プロセスは、リスク管理委員会が主導しています。また、ESG推進委員会と連携の上、最終的に執行役員会で当社グループの気候変動リスクを特定します。

 

・リスクへの対応方法

特定された気候変動リスクは、リスク管理マニュアルに基づき、回避・低減・移転・受容の4項目に分類し、それぞれ対応を検討します。対応方針は、リスク管理委員会での審議後、ESG推進委員会を通じて執行役員会で報告し、最終承認されます。

 

・全社グループのリスクマネジメントへの統合

リスク管理委員会は、社長が委員長を務め、執行役員、関係会社社長及び社長の指名したメンバーで構成されています。気候変動リスクに関しても、リスク管理マニュアルに定められたシステムに基づき、他のリスクと同様にリスク管理委員会で管理しています。

 

 

 

(ⅳ)指標と目標

当社グループは、製造工程由来のCO2ゼロ化、省エネ・エネルギーの有効利用、使用エネルギー源のカーボンフリー化を通じてGHG排出量削減に取り組んでいます。Scope1、Scope2の総和で2025年度には25%、2030年度には40%の削減(いずれも対2018年度比)を目標に設定し、最終目標として、2050年度のネットゼロを目指します。

 

GHG排出量の推移


(注)1.カーボンニュートラル都市ガス及びカーボンオフセットLPGの燃焼に伴うCO2排出量はゼロとみなす。

  2.Scope3については、2022年度実績は367千トン-CO2、2023年度は集計中。

 

CO2フリー電力の導入

当社は、CO2排出量削減の一環として、2023年度から当社若松工場にPPAモデル(※1)による太陽光発電設備を導入し発電を開始しました。

また、2021年度より茅ヶ崎工場及び若松工場の一部と日立工場、2023年度より黒部工場にCO2フリー電力を導入しています。当社グループでは、今後も使用する電力のCO2フリー化を推進します。

なお、2050年カーボンニュートラル実現に向けてのロードマップについては、当社ウェブサイトに掲載しています。

URL:https://www.toho-titanium.co.jp/csr/carbon-neutral/

 

※1:Power Purchase Agreementの略。発電事業者が敷地内外への発電設備の設置と運用・保守を実施、発電した電力を需要家に供給する電力購入契約。

 

 

 

(6)人的資本に関する取組

(ⅰ)ガバナンス

当社グループは、人材の育成・マネジメントが経営の重要テーマであることを明確にするため、2023年10月、全社的な観点・経営視点から人材領域について議論する機関として、人材会議を設置しました。人材会議は、社長を議長とし、本部長・事業部長・社長指名者の約10名で構成し、原則として年2回開催するほか必要に応じて随時会議を開催することを定めています。2023年度は計7回の会議を開催し、新たな施策の検討・確認を行いました。

 

(ⅱ)戦略

当社グループは、人材こそが事業の成長と競争力を支える源泉であるとの認識のもと、人的資本の強化・拡充を図るべく、「職場の労働安全衛生改善」、「多様性と包摂性」、「働きやすい職場環境の整備」、「人材育成」、「人材採用」などのテーマについて取組を進めています。

中長期的な社員エンゲージメントの向上を目指し、現状を把握した上で効果的な改善を図るため、2022年度から従業員満足度調査を開始しました。定期的なモニタリングを通じて課題の抽出と対策の実施を繰り返すことで、既成概念に捉われず「挑戦し続ける風土」を醸成することを目指しています。

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。

 

①人材育成方針

当社グループは、多様な個性を持つ従業員一人ひとりが自らの能力向上に積極的に取り組み、当事者意識を持って自律的・能動的に行動し、失敗を恐れずチャレンジすることが、企業の活力を生み、事業の成長につながるものと考えています。このような観点から人材の計画的育成を図るべく、中長期人材育成戦略、年次の教育計画等に基づき、技術者発表会その他の技術交流機会等を通じた技術者のレベルアップ促進、高い技術力の伝承、習得を目的とした現場力向上教育、資格別の各種研修、通信教育の受講料全額会社負担など、従業員一人ひとりの能力向上を目的として各種プログラムを運用しています。

 

②社内環境整備方針

・職場の労働安全衛生環境改善

当社グループは、安全最優先の基本方針のもと、快適な職場環境の確保と労働災害ゼロを達成していくためにさまざまな活動に取り組んでいます。

全従業員が常に健康な状態を維持し、能力を最大限に発揮して業務に従事できることが経営上の重要課題と考えており、健康維持に関する各種サポート、定期的な体力測定の実施など、従業員の健康の維持・増進のためのさまざまな施策を実施しています。

 

・多様性と包摂性(女性活躍推進、シニア社員の活躍、障がい者雇用)

当社グループは、多様性と包摂性(ダイバーシティ&インクルージョン)に配慮した職場の実現を目指しています。

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画を策定し、次世代育成の支援に努めています。

また、2023年4月より、豊富な職務経験や専門知識を有するシニア社員に60歳以降も仕事に対する高いモチベーションの維持と活躍を期待し、定年年齢をこれまでの60歳から65歳へ延長しました。これまで以上にシニア社員の健康や体力面に配慮し、安心して長く働き続けることができる環境を整備していきます。

当社グループは、障がいのある方の採用と快適な職場環境の整備にも取り組んでいます。2023年度は、障がい者雇用促進法における法定雇用率の2.3%を達成しました。

 

 

・働きやすい職場環境の整備

当社グループは、従業員一人ひとりのライフイベント・ライフステージに応じて、幅広い働き方を柔軟に選択できる制度を導入しています。育児・介護休業制度を整備し、家庭と仕事の両立を実現するとともに、フレックスタイム制度、病気等に備えた積立年休制度などを設定しています。

 

・人材の採用

当社グループは、性別や国籍、新卒・キャリア採用にかかわらず、グローバルに活躍できる優秀な人材の確保に取り組んでいます。また、女性活躍推進法に基づき、女性の採用比率20%以上を目標に掲げています。

 

(ⅲ)目標及び指標

当社グループは、上記「(ⅱ)戦略」における人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりです。

指標

目標

実績

前連結会計年度

当連結会計年度

従業員満足度調査における
総合満足度
(5段階評価の平均値)

3.75以上(2025年度)

3.44

3.46

男性社員の育児休業取得率

50以上(2024年度)

13.3%

31.1%

社員採用(新卒・キャリア採用)における女性の割合

20以上(2024年度)

22.2%

(18名中4名)

17.9%

(28名中5名)

 

 

 

3 【事業等のリスク】

(1)リスクに関わる当社の取組み

当社グループでは、事業の継続性と安定的発展を確保するため、事業を取り巻くリスクに関わる課題及び対応策を総括的に協議、推進、進捗管理する組織として、従前からリスク管理委員会を設置しています。この体制のもと、具体的には、当社グループの経営理念、経営目標、経営戦略の達成を阻害する様々なリスクに対して、最適なコストで適切な処理を行うため、個別リスク事象毎に対応策の策定、取組み等を担う主管部門と推進責任者を定め、リスク管理のための活動を推進しています。

なお、当社のリスク管理体制については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)リスク管理」及び「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項 ア.業務の適正を確保するための体制及び当該体制の運用状況 (ア)業務の適正を確保するための体制の整備にかかる決議の内容 3.損失の危険の管理に関する規程その他の体制」、及び「同(イ)業務の適正を確保するための体制の運用状況の概要 3.損失の危険の管理に関する規程その他の体制」をご覧ください。

 

(2)事業等のリスク

この先の変異株の出現等の懸念はあるものの、2020年以降の新型コロナウイルス禍による当社および当社顧客への直接的な影響は収束し、現在、生産活動は従前の状況に回復しています。一方、当社顧客の景気動向は、コロナ対策であるロックダウン影響による中国経済の景気停滞や、欧米でのインフレと景気悪化等、新たな世界的な景気変動リスクにさらされており、当社の事業も間接的に大きく影響を受けることになります。加えて2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ問題に伴う金属資源・エネルギーの調達懸念・価格高騰やそれに伴う各種原材料価格の上昇等の地政学的リスクの顕在化は、当社の業績に直接大きく影響を及ぼしています。これらグローバルに経済、企業活動に対して影響を与えている事象に関しては、以下のそれぞれのリスクの中で具体的にその関連性等について補足します。

なお、当社グループの事業において、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクとして以下のものが考えられますが、全てを網羅するものではありません。また、これらリスクは当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 特定用途向けの需要が大きな割合を占めていることによる需要変動のリスク

金属チタン事業の主力製品の一つであるスポンジチタンは、航空機向け用途が需要の中心となっております。触媒事業では、中核製品である「THC」はプロピレン重合用にほぼ特化した触媒であります。また、化学品事業における超微粉ニッケル及び高純度酸化チタンも、積層セラミックコンデンサなどの電子部品向けの用途が需要の大部分を占めております。このように当社グループの事業は、セグメント別に見た場合、特定用途向けの需要が大きな割合を占め、当該用途先業界の好不調により販売量が大きく変動する傾向があります。

具体的には、航空機向けのスポンジチタンは、これまで、世界の経済情勢や航空旅客数の動向や、航空会社による航空機の更新やメンテナンス需要の動向等により、大きな幅で好不調を繰り返してきました。2020年度には新型コロナウイルス禍の影響による航空機産業の事業環境悪化を受け大幅な需要減となった一方、その後は徐々に回復基調にありました。ところが2022年春ウクライナ問題を契機に、欧米顧客が地政学的リスクからロシアからの調達を見直したことから、ロシア以外の当社を含めた生産国に対する需要が急拡大しています。またコロナ禍にあっても比較的堅調であった触媒事業においても、中国経済の停滞影響を受け、当社顧客である中国、東アジアを中心としたポリプロピレンメーカーでの触媒需要が減少しています。同様の理由から、化学品事業では、主要顧客の電子部品メーカーの生産調整の影響を大きく受け超微粉ニッケル等の需要が減少しています。

このため、当社グループは、事業の多角化、製品の新たな用途開拓、競争力ある製品の提供により、その影響を最小限にすべく努めておりますが、用途先業界の状況変化によって、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。なお、当社グループの製品の価格は、需要の動向により大きく変動する傾向があります。顧客と交渉を重ね適切な価格設定に注力しておりますが、需要の動向によっては製品価格が大幅に下落し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

② 原料代及び電力代の上昇に伴うリスク

金属チタンの製造コストは、原料代及び電力代がその相当部分を占めております。原料鉱石については、鉱石を同じく原料とする他業種での景気動向や、原料産地の地政学的リスクに影響を受けます。また原油、LNG、石炭等の資源エネルギー価格の変動は、製造プロセスでの電力使用量が多いチタン事業では、電力代の増加につながります。

ウクライナ問題の影響による足元の原料及びエネルギー価格の上昇は、地政学的リスクの実現の顕著な例と言えます。当社はこれまでもこれらコスト上昇影響を緩和すべく、比較的安価な低品位鉱石の使用による原料の多様化や、省エネなどコスト削減に取組んでまいりましたが、これらコスト低減努力を上回る原料価格や電力単価の上昇が継続した場合、あるいはコストアップ分の製品価格への転嫁等が十分できない場合には、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

   また化学品事業の主要原料であるニッケル地金は国際市況により取引価格が決定されます。当社顧客との間では、この国際市況価格を、一定期間の後、製品価格に反映する取引と、交渉により製品価格が決まる取引があります。したがって原料ニッケル価格の変動は、製品価格へ反映タイミングの期ズレや、交渉での転嫁が難しい場合には当社グループの期間損益や業績に大きな影響を与えることになります。当社では、国際市況価格が反映される取引に関しては、先物取引によるヘッジを利用してその影響を緩和する等対応策を実施していますが、国際市況価格が短期的にかつ急激に変動する場合には、当社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 輸出比率が高いことによる為替リスク

金属チタン事業のスポンジチタンや、触媒事業のTHC、化学品事業における電子部品材料は、輸出が販売量の大きな割合を占めており、当社グループ全体の売上高に占める輸出の割合は、当連結会計年度実績で55.1%となっております。輸出の多くはUSドル建てとなっているため、為替による影響を受けます。当社グループは、短期的な変動に関し為替予約取引によるヘッジを行うなど、為替リスクを低減すべく努めておりますが、為替が大きく円高に振れた場合には、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

④ 自然災害等に関するリスク

当社グループは、製品のほとんどを自社で生産しており、自然災害による工場施設に対する被害により、製品の生産・販売に支障が生じる可能性があります。特に、茅ヶ崎工場は、東海地震の地震防災対策強化地域内に所在しており、設備の耐震強化、防災諸設備の整備、防災体制の強化、防災訓練の実施などの対策に努めているほか、生産設備の複数拠点化(BCP)の検討を進める等リスク低減を図ることとしております。しかし自然災害の規模及び内容によって、当社グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

なお、新型コロナウイルス禍により、先に述べたように金属チタン事業において大幅な需要減を経験しましたが、ほかにも様々なサプライチェーンの停滞による資材等の調達懸念、依然として懸念される変異株の再流行による事業活動の制限などにより、生産活動が停滞し、業績にさらなる悪影響が及ぶ可能性があります。当社グループは、調達先の複数化や適正在庫の確保、並びに感染拡大を防止するための衛生管理の徹底や在宅勤務及び時差出勤を行うなど、各種の対応に努めております。

 

⑤ 環境・安全に関するリスク

当社グループは、製造現場を持つ企業として、安全確保と環境保全は事業運営上、最も重視しなければならない事項と認識しております。特に設備面での老朽化が進む茅ヶ崎工場では、設備インフラの中期的更新計画(「茅ヶ崎リニューアル」計画)を進め、さらに全社的に推進している抜本的な安全対策投資とあわせ、安全操業の維持と環境保全に万全を期しておりますが、万が一、事故・災害等が発生した場合は、操業の停止・制約や環境コスト、あるいは対策コストの発生により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

また、金属チタン事業は、現在、好調な需要を受け、スポンジ、インゴットの主力生産設備は高い稼働を続けており、予期せぬ操業の停止・制約が起こった場合には、計画している販売量の未達や長期契約を締結する顧客に対する供給責任の未達等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑥ 品質に関するリスク

当社グループは素材メーカーであり、その社会的使命は、顧客が満足する製品・サービスを安定的に供給することであります。そのため、ISO9001に基づく品質管理システムを整えるとともに、組織的な対応および維持及び継続的な改善のためのインフラ投資を行い、品質管理に万全を期しておりますが、万が一、品質不良、品質事故等が発生した場合は、対策コストの発生や当社グループ製品への評価の低下により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑦ 知的財産に関するリスク

当社グループは、特許権等の知的財産権を重要な経営資源の一つと捉え、法令に従い適切な取得保全手続きを行うと共に、知的財産権を含む第三者の権利を侵害することの無いよう細心の注意を払っております。しかしながら、当社グループの技術が十分に保護されず、又は当社グループが第三者の技術を侵害した場合には、収益機会の喪失・減少や損害賠償の支払いなど、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、知的財産権管理の専門部署を設け、的確な対応に努めております。

 

⑧ 情報漏洩に関するリスク

業務上の過失や不正アクセス等、何らかの原因により顧客情報や個人情報が流出した場合には、損害賠償や信用の失墜等、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、情報管理に係る規則を定め厳格な運用を行うと共に、必要なシステム対策を講じております。

 

⑨ 親会社等との関係に関するリスク

当社は、ENEOSホールディングス㈱並びにJX金属㈱の子会社であります。

ENEOSホールディングス㈱は、エネルギー事業のENEOS㈱、石油・天然ガス開発事業のJX石油開発㈱、金属事業のJX金属㈱、その他多くの子会社・関連会社を有し、「ENEOSグループ」を形成しております。当社は、その中で「金属事業」のセグメントに属する独立事業会社と位置付けられております。当社とENEOSグループとの間には、①当社からJX金属㈱への高純度チタンの販売、②JX金属㈱から当社への各種金属の溶解加工委託、③JX金属㈱から当社への非常勤役員の派遣、④ENEOSグループから当社への従業員の出向等の関係があります。

当社と親会社等との関係については、当社の自主性・独立性を確保したうえで、両社の企業価値向上を目指し連携・協力しあうことを基本と考えております。取引の条件等は、協議・交渉を行ったうえで決定しており、当社が受ける制約はありません。

しかしながら、親会社等は当社の議決権の過半数を有しており、当社の株主総会における取締役の選解任等を通じて当社の経営判断に大きな影響を及ぼし得る立場にあるため、その議決権の行使は当社の少数株主の利益に反する可能性があります。

なお、ENEOSグループによる当社株式保有比率は、将来に亘って一定とは限りません。当該比率に大きな変動が生じた場合には、当社株式の流動性、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑩ 海外事業に関するリスク

当社グループは、チタン事業の中長期的な競争力向上を目的として、サウジアラビアでのスポンジチタン生産合弁事業に参画しております。当社(35%出資)とサウジアラビアの石油化学メーカーであるタスニー社のグループ企業AMIC社(65%出資)が共同で設立したAdvanced Metal Industries Cluster and Toho Titanium Metal Co.,Ltd.(ATTM社)は、2019年度にサウジアラビアのヤンブーにおいて、スポンジチタンの生産を開始しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響等により立ち上げが遅れ収益性が低下した結果、同社は固定資産に係る減損損失を計上し、2020年12月末時点において債務超過となりました。

当社の連結財務諸表においてATTM社は持分法で会計処理されており、2021年3月期連結会計年度において持分法適用上の同社への投資簿価をゼロまで減額し、持分法による投資損失を計上しました。同社の欠損を負担する責任が投資額の範囲に限られていることから、持分法による投資損失の計上リスクはありません。

営業関連では、当社のスポンジチタン販売が好調であり、かつAMIC社側での引取ニーズが小さいため、現在のATTM社のスポンジ生産品の大半は当社が引き取っており、当社の重要なスポンジ調達先となっています。ATTM社のスポンジチタン生産に技術的な問題や何らかの制約が生じた場合、当社の販売面で影響を及ぼす可能性があり、そのことで当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、契約上、将来、AMIC社サイドでのチタン下流事業が立ち上がり、スポンジ引取が発生し始めた場合、当社の必要とする引取量に制約が生じる可能性があります。

当社としては、対応可能な支援を継続することとし、引き続き同社を取り巻く事業環境や同社の業績動向を注視してまいります。

なお、当連結会計年度におけるATTM社との取引等に関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 関連当事者情報」に記載のとおりであります。

 

⑪ 法令等へ抵触するリスク

当社グループは、国内外において事業を展開しており、許認可・通商・環境・税制・独占禁止法等各国の様々な法令・規制の適用を受けております。将来における法令等の新設・変更等が行われた場合、事業活動の停止・制限や対策コストが生じる可能性がありますが、不断の情報収集を通じその予防・回避に努めております。

中でも、脱炭素社会実現への取組みは世界的に加速している状況にあり、炭素税等法規制が厳格化する可能性があります。これに対し、当社グループは、チタン新製錬技術の活用等によりカーボンニュートラルの実現を目指し、当該リスクの低減を図る考えであります。

また、当社グループは、行動基本方針に「コンプライアンスの最優先」を掲げると共に定期的な教育を行うなど法令等の遵守に努めておりますが、万が一これらの法令等への違反が認められた場合、各規制当局からの処分、訴訟の提起や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑫ 投資に関するリスク

当社グループは、中期経営計画において「成長分野への重点投資による収益基盤の強化」を基本戦略として掲げるなど、継続的に様々な能力増強等のための設備投資等投資を行っております。

投資にあたっては、かねてより需要予測や当社グループの競争力などから採算性を慎重に判断し実施しておりますが、将来の正確な予測は困難であり、販売量の増加やコストダウン等の投資による効果が当初計画を下回って推移した場合、償却費負担の増加や該当資産に係る減損損失の計上などにより、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑬ 人材確保に関するリスク

当社グループの持続的な成長のためには、人材の確保が非常に重要な要素となっています。

人材の確保が十分にできない場合には、生産・販売・サービス等のレベル低下により、 当社グループの財政状態及び経営成績等に影響をもたらす可能性があります。そのため、国籍や性別などにこだわらない多様な人材の採用活動を積極的に行うだけではなく、シニア社員には60歳以降も高いモチベーションで活躍してもらうために2023年4月より、定年年齢を60歳から65歳に延長いたしました。さらに、有能な人材確保のために取り組むだけではなく、設備の省力化・合理化等の設備投資を行うことで、労働生産性の向上を進めております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績等の概要並びにそれらに関する認識及び分析・検討内容

① 事業全体

当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善している一方、物価上昇の影響で個人消費は弱含んでおり景気の持ち直しには一服感が見られました。

世界経済は、物価上昇率にピークアウトの動きがみられるが依然として水準は高く、インフレ抑制のための各国中央銀行による金融政策が景気回復の下振れ要因となりました。長期化する世界的な金融引き締めの影響や、中東地域をめぐる情勢、中国経済の先行き懸念などの海外経済の減速による下振れ要因に加え、物価上昇を背景とする個人消費の落込みやコスト高による設備投資の抑制等により先行き不透明な状況が続きました。

当社グループを取り巻く事業環境は、チタン事業においては航空機向け需要の本格的な回復に加えウクライナ紛争に起因するロシアからの調達回避もあり、製品販売は引き続き堅調に推移しましたが、触媒・化学品事業においては海外の景気低迷長期化等により販売は低調に推移しました。一方、為替円安による収益改善の効果はあるものの、コスト面では、輸入原材料・副資材コストの高止まりが、収益を大きく圧迫する要因となりました。

こうした中、当連結会計年度における経営成績は、売上高78,404百万円(前期比2.4%減)、営業利益5,628百万円(同47.4%減)、経常利益6,273百万円(同40.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4,951百万円(同34.0%減)となりました。

 


 

営業利益の対前連結会計年度比較を以下に示します。

 


 

経常利益は、6,273百万円の利益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、4,951百万円の利益となりました。

なお、当社グループが数値目標として掲げている「自己資本利益率(ROE)」について、目標10%以上に対し、当連結会計年度の実績は9.0%となりました。

 

② 各セグメント

セグメントごとの売上高、営業利益については、以下のとおりです。


 

金属チタン事業

当連結会計年度における金属チタンの販売は、航空機向けは引き続き堅調に推移した一方で、一般産業用途向けは前年並みの水準を維持しました。また、半導体向け高純度チタンの需要は減速していますが、一部で回復の兆しが見られました。収益面については、原料鉱石、電力価格及び副資材費の高騰に対する販売価格転嫁はあるものの、前期寄与していたコスト上昇前の製品在庫販売による利益が剝落したことを主因に、当期の金属チタン事業は、売上高59,363百万円(前期比9.1%増)、営業利益4,510百万円(同30.3%減)となりました。

 

触媒事業

当連結会計年度における触媒事業の販売は、中国景気後退による軟化と中国ポリオレフィン製造設備新設による能力過剰のため、周辺諸国における大幅な減産が続きました。こうした状況に加え、新工場稼働による固定費増によるコスト高の影響もあり、当期の触媒事業は、売上高7,326百万円(前期比16.5%減)、営業利益1,952百万円(同31.7%減)となりました。

 

化学品事業

当連結会計年度における化学品事業の販売は、米国の利上げや中国の経済停滞長期化の影響に伴い、主要製品である超微粉ニッケルの主な用途である積層セラミックコンデンサー(MLCC)の需要減少が継続していることから、販売量は前年同期を下回る水準となりました。加えて原材料・資材・ユーティリティ類の値上がりの影響等により、当期の化学品事業は、売上高11,714百万円(前期比31.8%減)、営業利益936百万円(同64.5%減)となりました。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

主な要因として、特定用途向けの需要が大きな割合を占めていることによる需要変動の影響、原料代及び電力代の変動、為替の変動等が挙げられます。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 財政状態の状況

資産の部は、売掛債権及び棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末比14,573百万円増126,002百万円となりました。

負債の部は、借入金の増加等により、前連結会計年度末比11,306百万円増69,454百万円となりました。

純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により前連結会計年度末比3,266百万円増56,547百万円となりました。

 

これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末比2.8ポイント悪化し44.9%となりました。財務基盤強化の目安指標であるD/Eレシオについては、前連結会計年度末比0.15ポイント悪化し、当連結会計年度末の実績は0.99倍となりました。

 

⑤ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は1,880百万円と期首に比べ1,535百万円の減少となりました。キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは3,135百万円の支出となりました。これは、売上債権の増加3,586百万円,棚卸資産の増加10,374百万円等による資金の減少があり、税金等調整前当期純利益6,192百万円、減価償却費7,397百万円等による資金の増加があったことによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、8,010百万円の支出となりました。これは、有形固定資産の取得による支出8,097百万円等によるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは、9,613百万円の収入となりました。これは、短期借入金の増加等によるものです。

なお、キャッシュ・フロー関連指標は、次のとおりであります。

 

2020年
3月期

2021年
3月期

2022年
3月期

2023年
3月期

2024年
3月期

自己資本比率

55.2%

48.6%

47.9%

47.7%

44.9%

時価ベースの自己資本比率
(株式時価総額/総資産)

52.9%

77.7%

105.6%

140.8%

88.2%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率
(有利子負債/営業キャッシュ・フロー)

4.0

28.1

4.1

8.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ
(営業キャッシュ・フロー/利払い)

46.7

8.4

56.3

31.1

 

 

⑥ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、収益性を高めるとともに資産の圧縮を進め、手元流動性の向上と強固な財務基盤の構築を実現していく考えであります。

当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための原材料費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用、並びに設備新設、維持改修等に係る投資であります。

これらの資金需要について、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本として、設備投資や長期運転資金は金融機関からの長期借入を基本として、それぞれ調達しております。

手許の運転資金につきましては、当社及び一部の国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)により、余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。

なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「⑤ キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。

 

⑦ 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、その作成において必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4 会計方針に関する事項」、及び「同 連結財務諸表注記 重要な会計上の見積り」 をご覧ください。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

金属チタン事業

41,985

123.1

触媒事業

9,737

96.5

化学品事業

15,975

78.3

合計

67,698

104.8

 

(注) 金額は売価基準で算出しております。

 

② 受注実績

受注生産は行っておりません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

金属チタン事業

59,363

109.1

触媒事業

7,326

83.5

化学品事業

11,714

68.2

合計

78,404

97.6

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Titanium Metals
Corporation

20,237

25.2

26,269

33.5

日本製鉄㈱

12,212

15.2

15,583

19.9

㈱村田製作所

10,603

13.2

 

3.当連結会計年度の㈱村田製作所については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社グループは、下記の契約を締結しております。

契約会社名

契約相手先

取引品目

契約の種類

東邦チタニウム㈱

(当社)

Titanium Metals Corporation

スポンジチタン

長期販売契約

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、既存事業の強化に注力する一方、当社グループの技術を活かして、一層の事業領域拡大と新規事業の開拓に向けた研究開発に取り組んでおります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、2,540百万円であり、各事業セグメント別の研究内容及び研究開発費は次のとおりであります。なお、研究開発費については、各セグメントに配分していない技術開発部門の研究費1,229百万円が含まれており、グループの将来を担う研究開発の加速に向け、独自新技術創出や新規事業提案、次世代技術開発の源泉となる基礎・基盤技術力の深化等に取り組んでおります。

 

(金属チタン事業)

金属チタン事業においては、スポンジチタン及びチタンインゴットの生産性及び品質の向上を目指した生産技術の改善・改良等に継続的に取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は366百万円であります。

 

(触媒事業)

触媒事業においては、触媒製品に係る品質向上、生産技術の改善・改良、新規製品開発等の研究開発に取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は496百万円であります。

 

(化学品事業)

化学品事業においては、超微粉ニッケル、高純度酸化チタン等の製品に係る品質向上、生産技術の改善・改良、新規製品開発等の研究開発に取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は446百万円であります。