文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)が判断したものです。
当社グループは、『“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す』という経営理念のもと、ありたい姿である「笑顔をつくる会社」の実現に向け、提供価値である「安心と愉しさ」を進化させていきます。そして、SUBARUを自動車事業と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドへ持続的に成長させるとともに、すべてのステークホルダーの皆様に事業活動へ共感いただくことを通じてSUBARUグループの持続的な成長と愉しく持続可能な社会の実現を目指しています。
(1) ありたい姿、提供価値、経営理念
<ありたい姿> 笑顔をつくる会社
<提供価値> 安心と愉しさ
<経営理念> “お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す
(2) 基本方針
<品質方針>
私たちは何より品質を大切にしてお客様の信頼に応えます
2.お客様の声に常に耳を傾け、商品とサービスに活かします
3.法令・社会規範・社内規則を遵守し、お客様に信頼される仕事をします
<SUBARUグローバルサステナビリティ方針>
*:SUBARUグループ:株式会社SUBARUおよびすべての子会社
(3) 新経営体制における方針
当社は2023年の新経営体制への移行に伴い、同年8月2日に「新経営体制における方針」の説明を実施し、「2030年に向けた電動化計画のアップデート」と「2030年を見据えたうえでの2028年までの直近5年間に向けた決意」を公表しました。
「新経営体制における方針」においても、前中期経営ビジョン「STEP」で掲げた「個性を磨き上げ、お客様にとってDifferentな存在になる」「お客様一人一人が主役の、心に響く事業活動を展開する」「多様化する社会ニーズに貢献し、企業としての社会的責任を果たす」という3つの目指す方向は変わりません。同様にこれまで重点取り組みに据えてきた「組織風土改革」「品質改革」も、当社が持続的に成長していくうえで根底にあるものと位置づけ、新経営体制においても企業競争力を高める土台として取り組み続けていきます。そして「SUBARUらしさの進化」については、SUBARUの提供価値である「安心と愉しさ」をBEV※1時代においても追求し続けるために、「モノづくり革新」「価値づくり」という2つの取り組みにステージアップしていきます。
※1:Battery Electric Vehicle(電気自動車)
(4) 対処すべき課題
<大変革期の勝ち残りに向けて>
自動車業界は100年に一度の大変革期にあると言われていますが、近年この変革はさらに非連続かつ従来以上にスピード感のある変化が生まれています。この急速な変化に対して当社は「柔軟性と拡張性」の観点を念頭に置き、よりタイムリーに対応していきます。
①2030年へ向けて目指す姿
(2030年に目指す電動車販売比率)
当社は脱炭素社会の実現に貢献するべく、2050年にWell-to-Wheel※2でCO2排出量を2010年比で90%以上削減することを目指しており、これに向けて2030年代前半までには全世界で販売する車のすべてに電動化技術を適用します。また、2030年時点でのマイルストーンについては「新経営体制における方針」にて見直しを行い、電動化比率をBEVのみで50%を目指すと掲げています。内燃機関からBEVへと移行する過渡期において、BEVの普及は加速や減速を繰り返しつつ徐々に市場に受容されながら進んでいくと当社は考えています。お客様の嗜好の変化や市場の動向をしっかりと捉えながら、着実に電動化への取り組みを進めていきます。
※2:「油井から車輪」の意味。EVなどが使用する電力の発電エネルギー源までさかのぼって、CO2排出量を算出する考え方。
(電動車ラインアップ)
BEVの市場投入については、2026年末までにSUVを4車種、2028年末までにはさらに4車種と合計8車種のラインアップを予定しています。2026年末までに投入を予定する4車種のうち、2022年に市場に投入した「ソルテラ」はトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)とともに両社の強みを持ち寄りつくりあげてきました。これに続く残りの3車種についても、これまで培ってきたSUBARU/トヨタ両社のBEV開発の知見や強みを活かして共同開発し、1車種は当社の矢島工場、1車種はトヨタの米国工場で生産し相互に供給することを予定しています。先行きを見通すことが難しい時代においてもアライアンスの活用により、リスクを軽減し開発および生産の柔軟性を確保しながら、魅力あるBEVを順次市場に投入していきます。
また、トヨタハイブリッドシステムをベースとした水平対向エンジンを搭載する、SUBARUらしい独自のHEV※3である次世代e-BOXERを、今後販売を予定する新型「フォレスター」に続き「クロストレック」にも展開拡大を計画します。HEV商品の強化により、電動化移行期における商品の柔軟性も確保していきます。
※3:Hybrid Electric Vehicle(ハイブリッド自動車)
(生産体制の再編計画)
電動車の生産に向け、当社は2022年5月より生産体制の再編計画を段階的にアップデートしてきました。国内では2024年秋頃を目途に北本工場において、次世代e-BOXERの基幹ユニットとなるトランスアクスルの生産開始を予定し、本工場、矢島工場で生産される車両に順次搭載していきます。また、ガソリンエンジン車とBEVの混流生産の開始を矢島工場にて計画しており、ここで生産するBEVはトヨタにも供給を予定します。加えて2027年以降を目安とした大泉工場におけるBEV専用ライン追加についても各種取り組みを進めています。米国においても次世代e-BOXER車両の生産を計画しており、過渡期における全世界の工場生産キャパシティは120万台レベルとなります。
電動化時代における生産体制についても「柔軟性と拡張性」の観点を念頭に、BEVの普及の加減速や市場の動向にあわせ、ガソリンエンジン車/HEV/BEVのバランスや日米での生産比率などフレキシブルな対応ができるよう準備を進めています。

②2028年に向けた決意
2030年に目指す姿の実現に向けて、当社では2028年までの期間を非常に重要な期間として位置づけ、「モノづくり革新」と「価値づくり」の2つの取り組みを進めていきます。自動車業界が大変革期にあるなか、決してSUBARUが埋没することのないよう、「モノづくり」と「価値づくり」においては、世界最先端でありたいと考えています。内燃機関からBEVに替わっていく過渡期において、国内外工場再編による「生産体制」の刷新を決断したタイミングに「開発プロセス」や「商品企画」の刷新を合わせ、BEVへ資源を集中することで、早期に「モノづくり革新」「価値づくり」を実現する―このチャレンジを2028年までにやり切ります。
(モノづくり革新)
モノづくり革新を通じて、小回りの利く「SUBARUの規模だからこそできる」製造・開発・お取引先様領域まで含めたサプライチェーンが一体となった“ひとつのSUBARU化”を進めることで、高密度なモノづくりを推進する―この考え方を軸に、開発手番半減、部品点数半減、生産工程半減を実現し、世界最先端のモノづくりを成し遂げます。商品構想、設計、生産などが、それぞれ前工程の手離れを待ちリレー式に進めてきた業務を、モノづくり革新のなかでは各領域をアジャイルに進めていくことで、モノづくりに要する時間の半減につなげます。加えて、このような取り組みを絶え間なく推進していくことで、既存領域にかかる開発日数、生産手番などの抑制を図り、先行きの見えない時代における「非連続に変化する領域」への対応力も強化していきます。

(価値づくり)
米国では販売子会社であるスバル オブ アメリカ インク(SOA)と全米の販売店が一体となったLove Promiseという活動が実を結んでいます。SUBARUの商品を核として、お客様、販売店、SUBARUそして地域社会の人と人を強固につなげるこの取り組みこそが「SUBARUの社会と未来への価値貢献」であり、これを守りさらに取り組みの輪を拡げていく―この想いは、この先の大変革期や電動化時代においても決して変わるものではありません。お客様、販売店、SUBARUのつながりの中心にある「商品」において、その価値をさらに進化させていきます。
BEV時代の「価値づくり」において、重要となるのが当社の提供価値である「安心と愉しさ」のさらなる進化です。その1例として、これまで培ってきたAWD(全輪駆動)性能はBEV化により、緻密な制御を可能にし「安全・安心」という強みをさらに強化することができると考えています。また、BEV時代におけるシームレスやストレスフリーといった使い勝手の追求、クルマの魅力を減らすことなく長くお付き合いいただきたいという考えに基づく減価ゼロの発想など、BEVの時代においてもSUBARUはテクノロジーで応えていきます。このような商品や機能を核とし、お客様には「安心」「挑戦」「いつでも新しい」というような、「SUBARUと共に過ごすことでの色褪せない情緒的な価値」を感じていただけると考えています。電動化が進むことにより、「今まで以上にお客様の人生に寄り添うSUBARU」を目指していきます。
「モノづくり革新」「価値づくり」の実現を加速させるべく様々な取り組みが進んでいます。2024年1月に稼働を開始した群馬県太田市の開発拠点「イノベーション・ハブ」では当社従業員、お取引先様が垣根なく集い、開発・生産など様々な検討を行う「大部屋活動」や株式会社アイシン※4、パナソニック エナジー株式会社※5、AMD※6など各社との協業を進めることで「モノづくり革新」「価値づくり」の具現化に向けた活動を推し進めています。また、「モノづくり革新」「バッテリービジネス」「デジタルカー」「コネクトビジネス」「コスト改革」の5つの領域を「核心的重点テーマ」と位置付け、各領域を担当する5人のCXO(Chief X Officer)を新設し、それぞれが部門横断で取り組みを進めることで、「モノづくり革新」「価値づくり」のスピードアップを図っていきます。
※4:SUBARUとアイシン、次世代電動車両用eAxleに関する協業を開始
https://www.subaru.co.jp/news/2024_03_12_113512/
※5:SUBARUとパナソニック エナジー、車載用円筒形リチウムイオン電池の供給に関する協業基本契約を締結
https://www.subaru.co.jp/news/2024_03_19_163431/
※6:SUBARUとAMD、ステレオカメラとAI推論処理を融合するSoC設計に関する協業を開始
https://www.subaru.co.jp/news/2024_04_19_154136/
③脱炭素社会に向けた取り組み
当社は脱炭素社会に貢献するため、商品(スコープ3)および工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する長期目標(長期ビジョン)を2050年とし、それを補完する中期目標(マイルストーン)を設定しています。これらの目標は非連続かつ急速に変化する事業環境に応じて随時見直されており、2023年には、商品に関する中間目標を「2030年に全販売台数の50%をBEVにすることを目指す」、工場・オフィスなどの中期目標を「2035年度に2016年度比60%削減」に引き上げました。当社のバリューチェーン全体のCO2排出量は販売した商品の使用によるものが大部分を占めるため、自動車の電動化に向けた取り組みを着実に進めていくことが重要です。また、当社グループが直接排出するCO2(スコープ1および2)の削減に当社自らが率先して取り組むことはバリューチェーン全体での削減活動をより充実させていくものと考え、再生可能エネルギーの利用や高効率な設備への更新などに取り組んでいきます。
なお、商品および工場・オフィスに「素材部品」「輸送」「廃棄」を加えたバリューチェーン全体の脱炭素社会に向けた取り組みは、各領域でのCO2削減を目的とした会議体にて管理され、最終的には環境委員会にて全体統括されています。

※7:2050年に世界で販売されるSUBARU車の燃費(届出値)から算出するCO2排出量を、同2010年比で90%以上削減。総量ベース。
市場環境変化による販売台数の増減は加味するが、走行距離の多少は考慮しない。
※8:他社からOEM供給を受ける車種を除く。
※9:EV・ハイブリッドなど、電力利用を高める技術を指す。
<人財づくり>
事業環境が急速に変化するなか、当社が競争力を高め持続的な成長を続けていくための原動力は人財であり、人財を育てていくことこそが当社にとっての企業競争力の源泉です。「自律への働きかけ」「個を磨く」「共感づくり」という3つを人財づくりの軸とし、人財育成や組織風土改革などを重点テーマに掲げ、各種取り組みを推進しています。
(自律とチャレンジを促す人財育成)
従業員の自律的な能力開発と自発的なチャレンジを促し、個の成長を後押しするため様々な取り組みを行っています。「笑顔をつくる会社」の実現に向け、従業員一人ひとりの自律的な行動へつなげることを目的に全従業員を対象として行われる「SUBARUビジョン理解プログラム」では、2023年度は「新経営体制における方針」をテーマに取り扱いました。本方針への取り組みと「笑顔をつくる会社」実現へのつながりや、従業員一人ひとりが何を考え、動き出そうとしているのかについて、映像視聴や職場内でのディスカッションを通じて理解を深めることで、各自の自律的な動き出しへの働きかけを行っています。
また、時代と共に変化するお客様の期待に継続的に応えるためには、新たな技術価値の創造を担うエンジニア人財の育成が不可欠です。これまで内燃機関で培ってきた技術力(スキル)に電動化時代に求められる新たな技術力を付加し、SUBARUらしい技術力の強化を行うことを当社では「アドスキル」と呼び、エンジニア人財の「アドスキル」に積極的に取り組んでいます。特にソフトウェア領域が技術価値創造を左右する状況を踏まえ、2022年度より技術部門において「ソフトウェア人財育成プロジェクト」を発足させ、「新入社員向け研修」「既存社員向け研修」の2本柱で入門・初級・中級・上級とレベルを分けた教育講座を実施しています。
(ダイバーシティ経営)
SUBARU独自の価値創造を実現し続けるため、当社は性別・国籍・文化・ライフスタイルなどの多様性を尊重し、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できる働きやすい職場環境の整備に努めています。また、多様な人財が活躍しキャリアの充実を図れるよう、適材適所の人財配置や人財育成、管理職への登用も進めています。とりわけ女性の活躍推進については重要であると考えており、「キャリア形成支援」と「仕事と育児の両立支援」を重点課題として取り組んでいます。キャリア形成支援については女性管理職の育成に力を入れており、「2025年までに女性管理職数を2021年時点の2倍以上」とする目標を掲げています。この目標に向け、管理職を目指す女性それぞれに合った育成・教育を行う「Women's Leadership Program」の推進や女性役員との対話会「役員フォーラム」など、各種研修体系を整備し取り組むほか、2023年11月には全社従業員に対し、女性活躍推進の加速に向けた経営トップメッセージを発信しています。これらの取り組みの結果、2024年4月時点で管理職1,132名のうち43名が女性となり、2021年に24名であった女性管理職は1.8倍に増えています。
そのほかにも人財づくりに向けた様々な取り組みを実行しており、今後も各種取り組みを一層深化させていくことで、「個の成長」を「組織の成長」へつなげ、企業競争力を高めていくとともに、大変革期における「モノづくり革新」「価値づくり」を実現する「変革をリードする人財」が最大限能力を発揮できる環境づくりを行うことで、新たな時代のスタンダードとなるプロセスや技術を生み出していきます。
<資本コストや株価を意識した経営>
当社は持続的な成長に向けて「資本コストや株価を意識した経営の実現」※10が不可欠だと考えています。当社のROEは、半導体の供給不足による生産台数の減少が大きく影響した2021年3月期、2022年3月期を除けば資本コストを上回る数値で推移しており、直近のPBRについても生産・販売環境の正常化や為替変動を主因に1倍程度に改善しています。自動車業界の大変革期においても、世界最先端の「モノづくり革新」「価値づくり」を着実に実行し、競争力のあるSUBARUらしい商品を市場へ投入することで2030年を見据えた長期的目標として、「業界高位の収益力」「ROE10%以上」を追求していきます。
一方でPERについては、現状7~8倍程度とプライム市場平均PERに対し低位で推移しています。電動化をはじめとする中長期展望の不確実性を背景に期待が醸成されづらい状況であることが要因と捉えており、今後より一層のIR活動強化に取り組み、成長の柱となる電動化戦略の進捗開示などを通して、当社への期待値向上へつなげていきます。

※10:詳細は2024年3月15日に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」をご参照ください。
https://www.subaru.co.jp/outline/pdf/governance_action.p
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)が判断したものです。
当社グループは「“お客様第一”を基軸に『存在感と魅力ある企業』を目指す」という経営理念のもと、ありたい姿「笑顔をつくる会社」の実現に向け、CSR重点6領域の考え方を取り入れ、SUBARUグローバルサステナビリティ方針に基づいた取り組みを推進してきました。従業員一人ひとりが成長の原動力となるべく、人財への投資を行うことで「個の成長」を「組織の成長」へとつなげ、提供価値である「安心と愉しさ」をさらに進化させ、お客様との関係を深めることで、SUBARUグループの持続的な成長と愉しく持続可能な社会の実現の両立を図っていきます。
価値創造プロセス図

当社グループのあらゆるサステナビリティに関わる取り組みを議論する場として、「サステナビリティ委員会」を設置し、年2回開催しています。サステナビリティ委員会は、委員長を代表取締役社長とし、全役員がメンバーとして加わり、事業を社会的側面から考察し、取り組みの強化を図っています。当社グループとして、国内、海外各拠点と連携しながらグループが一体となってサステナビリティ実現に向けたCSRの取り組みを包括的に推進し、関係する委員会や部門のPDCAの状況をモニタリングしています。また、同委員会での議論内容は取締役会に付議・報告をしています。
<2023年度サステナビリティ委員会における主な議論内容>
・CSR/サステナビリティ戦略および取り組み進捗
・人権取り組み進捗
・ESG評価機関による評価と対応
・2023年度/2024年度統合レポート/サステナビリティWebの方向性と内容
<体制>

当社グループは、2018年に「CSR重点6領域」―「人を中心とした自動車文化」「共感・共生」「安心」「ダイバーシティ」「環境」「コンプライアンス」―を定めました。この「CSR重点6領域」は、「事業の強みを活かして社会に貢献する領域」と「社会の要請に応える領域」の2つの視点から評価・検討しました。その結果、事業の強みを活かして社会に貢献する領域として、「人を中心とした自動車文化」「共感・共生」「安心」「ダイバーシティ」の4つを、社会の要請に応える領域として、「安心」「ダイバーシティ」「環境」「コンプライアンス」の4つを選定しました。「安心」と「ダイバーシティ」が重複していますが、「安心」については、社会の要請とSUBARUグループの事業の強みが合致している領域であり、「ダイバーシティ」については、社会から求められるダイバーシティだけでなく、お客様に提供する商品のダイバーシティを含めた広義のものと捉えています。
当社グループでは、人財の多様性の確保がSUBARU独自の価値創造を実現し続けるための重要な要素と考えており、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮し、イノベーションの創出が促されるよう、性別・国籍・文化・ライフスタイルなどの多様性を尊重し、働きやすい職場環境の整備に努めています。また、国内・海外の関係会社においても、それぞれの事業内容や地域性を踏まえて取り組んでいます。
また、当社では従業員一人ひとりがSUBARUグループの持続的な成長と持続可能な社会の実現の両立を担う原動力となるべく、自律的に行動し変革をリードする人財の創出を目指すとともに、自身のキャリア形成を考え、チャレンジする風土づくりや多様な人財が活躍できる環境整備を進めています。2021年度より新たな人事制度や教育プログラム、公募制ジョブローテーションなどを導入し、従業員が自律的に学べる機会やチャレンジする機会を提供しています。加えて、やりがいや誇りの源泉となるSUBARUへの共感やエンゲージメントの強化にも取り組んでいます。
当社グループは「人権尊重」「気候変動」などのサステナビリティ領域の課題を含む事業のリスクについて、影響度の大きな課題を優先的に対応し、日常業務としてリスクの抑制を図る活動を推進しています。リスク管理の詳細は
当社グループは、下表の通り「CSR重点6領域」の各領域において「2025年のありたい姿」を明確にし、さらにはそのKPIと目標値を定めることで取り組みを推進しています。
※1: 定量・定性ともに含む
※2: 当社単体においてのKPIや目標も含む
※3: SUBARU乗車中の死亡事故およびSUBARUとの衝突による歩行者・自転車などの死亡事故をゼロに
当社は気候変動を最も重要な課題の一つと認識しており、脱炭素社会に貢献するため、商品(スコープ3)および工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する長期目標(長期ビジョン)を2050年とし、それを補完する中期目標(マイルストーン)を非連続かつ急速に変化する事業環境に応じて随時見直しながら設定しています。当社は自動車に対する環境規制やマーケットの動向を注視しながら、日米工場の生産体制再編を活用して柔軟に対応し、ある程度方向性が見えてきた段階で一気に拡張していくという「柔軟性と拡張性」の視点で、先行きの見えない困難な時代を乗り切っていきたいと考えています。
なお、2023年に工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する中期目標を「2035年度に2016年度比60%削減」、商品(スコープ3)に関する中間目標を「2030年に全販売台数の50%をBEVにすることを目指す」に引き上げました。
中期目標に対する2022年度の実績は、電動車の全世界販売台数の割合が5.7%、スコープ1、2の排出量が480,498t-CO2(2016年度比19%削減)であり、2023年度の実績は今期の統合レポートおよび当社ウェブサイトにて開示予定です。
気候変動に関しては、サステナビリティ委員会の下部組織である環境委員会にて、将来の社会が要求する水準と合致する大局的かつ中長期的な方策を議論するとともにその進捗を評価しており、重要な問題はサステナビリティ委員会を経て、取締役会に報告されます。また、事業活動のライフサイクル全体で排出されるCO2の削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献すべく、商品および工場・オフィスに「素材部品」、「輸送」、「廃棄」を加えたライフサイクル全体の取り組みは、各領域でのCO2削減を目的とした会議体にて管理され、最終的には環境委員会にて全体統括されています。
気候変動に関する情報開示について、当社は2023年4月にTCFDの提言に賛同しました。TCFDの推奨開示項目に関しては、
なお、当社の気候変動に関するリスクマネジメントについては、「
当社では2015年1月にダイバーシティ推進室を設置し、女性従業員、中途採用従業員、外国籍従業員等、あらゆる多様な人財がそれぞれ活躍できるよう、働きやすい職場環境の整備や適材適所の人財配置および人財育成に努めています。
当社では持続的な成長において、女性の活躍推進が重要であると考え、重点課題である「キャリア形成支援」と「仕事と育児の両立支援」に取り組み、各種の推進活動を行うとともに、女性が様々なライフイベントを通じて働き続けることができるよう各種制度の整備と風土の醸成を行っています。
女性管理職の育成においては、「2025年までに女性管理職数を2021年時点の2倍以上」とする目標を掲げて取り組んでおり、2023年度末時点の管理職者数は全体1,086名のうち女性は31名となりました。引き続き目標の達成に向け女性従業員のキャリア形成支援、会社全体の意識改革・組織風土改革を経営トップも含めた全社で推進していきます。
具体的な取り組みとしては、管理職を目指す女性従業員を対象に、一人ひとりに向き合い、本人に合った育成・教育を個人単位で行う「Women’s Leadership Program」を推進し、自分らしいキャリアを描くための各種研修の実施や男性従業員も対象としたアンコンシャスバイアス研修を実施しています。さらに、2023年11月には全社従業員に対し、女性活躍推進の加速に向けた経営トップメッセージを発信するとともに、女性を部下に持つ上司向けのマネジメント研修も新たに開催し、女性が活躍できる風土づくりや職場環境構築の一層の強化に取り組んでいます。
また、働き方の面においても、従来「仕事と育児の両立支援」を重要な取り組みとして位置付けており、育児休業や短時間勤務などの各種制度は、法律を上回る基準で運用しています。
当社グループでは、国籍を問わず各拠点の方針や事業に適した人財を採用しています。2023年度末において当社には外国籍従業員が105名在籍しています。このうち管理職は5名おり、製造部門および技術部門で活躍しています。
当社では、環境変化に対応し持続的な成長を図るために、近年、中途採用を積極的に進めています。2023年度末の正規従業員における中途採用従業員数は4,344名、このうち管理職は193名です。なお、2018年4月以降6年間において、累計の中途採用数は710名です。
また、2020年12月には、IT企業の集積地である渋谷にAI開発拠点「SUBARU Lab(スバルラボ)」を開設し、AI開発に必要な人財のスムーズかつ的確な採用につなげる取り組みなども進めています。引き続き、中途採用の推進を図り、新たな知見や価値観を取り入れ、企業価値の向上につなげてまいります。
当社グループでは緊急事態発生時の対応だけでなく、日々の企業活動において重大な影響を及ぼす様々なリスクに対し、リスク発生時のダメージを最小化するためのリスクマネジメントの実践を経営の最重要課題の一つとして推進しています。
自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えており、グローバルに事業を展開する当社グループは、世界情勢の変化に素早く対応し、経営の持続性の確保と経営基盤の強靱化を図りつつ、人的、社会的および経済的損失の最小化にこれまで以上に取り組んでいく必要があります。このような環境のなかで事業活動を行っていくうえで、グループ全体での戦略的なリスクマネジメントの推進が不可欠であり、当社グループをリスクに強い体質にし、企業価値の向上を図ることが重要であると考えています。
当社は、グループのリスク顕在化と拡大を防止するため、取締役会が選任したCRMO(最高リスク管理責任者)が、リスクマネジメント・コンプライアンス活動を統括し、活動状況などを取締役会に報告しています。
具体的な推進体制として、各部門に本部長クラスのリスク管理責任者を置き、CRMOを委員長、リスクマネジメント・コンプライアンス室および法務部からなるリスクマネジメントグループを業務執行責任範囲とする執行役員を副委員長とする「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」(以下「リスコン委員会」という)において、重要事項の審議・協議、決定および情報交換・連絡を行っています。
CRMOは、リスクマネジメント・コンプライアンス室や法務部などのコーポレート部門の専門的見地からの支援を受けつつ、各事業に横断的な役割を担う経営企画部や各部門・カンパニーと密接に連携し、企業集団を通じたリスク管理の強化を推進しています。さらに、監査部が各部門および各子会社の業務遂行について計画的に監査を実施しています。

2023年度については、引き続き平時の取り組みとして、リスコン委員会において、グループ全体の「リスクマネジメント方針」と各部門の「リスクマネジメント行動指針」のもと、各本部の重要リスクの洗い出しを実施、影響度の大きな課題を優先的に対応し、日常業務としてリスクの抑制を図る活動を推進しました。
当社は2023年の新経営体制への移行に伴い、同年8月2日に「新経営体制における方針(以下、「新体制の方針」)」の説明を実施し、「2030年に向けた電動化計画のアップデート」と「2030年を見据えたうえでの2028年までの直近5年間に向けた決意」を公表しました。これに伴い、当社を取り巻く環境が非連続かつ従来にないスピード感で推移していくなか、「新体制の方針」の実現をより確実に進めていくために、各本部の重要リスクに加え、外部変化や足元の環境を踏まえた経営レベルの議論を通じて策定した新リスクマップを活用するなどリスクマネジメントの一層の強化を進めています。
これに加えて、グループ全体にとって最適なリスク管理とその実効性向上のためのリスクマネジメント研修会を実施、リスクリテラシー向上と委員会活動の活性化を図りました。
さらに、「サイバー攻撃」「サプライチェーンの分断」「自然災害時の復旧対応」などの当社グループ重点リスク低減の取り組みを継続し、リスコン委員会での定期的フォローによる実効性の向上を図りました。
なお、全社的な緊急連絡体制を「緊急事態対応基本マニュアル」に基づき整備し、定期的に「安否確認システム」の訓練などを実施することで、当社に影響を及ぼすおそれのある災害発生時の情報共有に備えています。
※「新体制の方針」の内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)対処すべき課題」をご覧ください。
当社グループの経営成績および財務状況、キャッシュ・フローなどに数百億円以上の大きな影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクと対応策は以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに関するすべてのリスクを列挙したものではありません。
(1) 主要市場の経済動向
当社グループの主要な市場である国および地域の経済情勢は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内はもとより、当社グループの売上収益の約8割を占める北米における景気の後退や需要の減少、価格競争の激化などが進むことにより、当社グループの提供する商品・サービスの売上収益や収益性に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替の変動
当社グループにおいて北米売上収益は約8割を占め、売上収益、営業利益、資産等のなかには、米ドルを中心とした現地通貨建ての項目が含まれており、連結財務諸表作成時に円換算しています。通期の業績見通しにおいて想定した為替レートに対し、実際の決算換算時の為替レートに乖離が生じた場合、主に円高局面では当社グループの売上収益と財務状況はマイナスに作用し、円安局面ではプラスに作用する可能性があります。当社では為替リスクを最小限にすべく、状況に応じ為替予約などによるヘッジを実施していますが、期末日に極端な為替変動が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融市場の変動
当社グループは、事業活動の資金を内部資金および金融機関からの借入や社債の発行によって確保しています。また、十分な手元流動性を確保するために、一定額の現金および現金同等物残高の確保を行っています。しかし、経済・金融危機などの発生により金融市場から適切な条件で資金調達が出来なくなった場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは市場性のある証券や債券などの金融資産を保有しており、金融市場の影響により公正価値や金利などが著しく変動した場合、金融資産の減損および年金資産の減少による従業員給付債務の増加により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(4) 原材料価格の変動
当社グループは、原材料を多数のお取引先様から適時適切な量で調達していますが、特定の原材料およびお取引先様に依存している場合があります。貴金属については材料の性質や機能を維持しながら原材料の使用量の調整を行うなど変動影響の軽減に取り組んでいますが、大規模な原材料価格の変動や需給状況のひっ迫などが発生した場合は、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(5) 特定の事業および市場への集中
当社グループは、主に自動車と航空宇宙の2つの事業により構成され、“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、限られた経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開しています。自動車事業の売上収益が9割以上を占め、販売市場は主に北米を中心とした先進国です。主要生産拠点は国内の群馬製作所および米国のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)の2拠点となり、主にSUV(多目的スポーツ車)を中心とした生産と販売を行っています。このため、自動車事業に関わる需要や市況、同業他社との価格競争などが予測し得る水準を超えて推移した場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(6) 市場における需要・競争環境の変化
当社グループの主力事業である自動車業界は大きな環境変化を迎えており、モビリティサービスの普及に伴う異業種からの参入や環境対応に伴う電動化へのシフト、シェアリングや自動運転普及に伴う移動手段の多様化によって、お客様の価値観や嗜好ニーズはさらに多様化していくことが予想されるなど、当社を取り巻く環境は非連続かつ急速に変化しています。このような状況のなか、「新体制の方針」において発表した2030年の電動車販売比率「バッテリーEVのみで50%」の実現に向けて組織体制の刷新や業務提携などを進めスピードアップと全体最適化を図っています。先行きを見通すことが難しい段階においては、「柔軟性と拡張性」の観点を持ち、HEV※の強化などにより、電動化移行期における商品の柔軟性も確保しながら「モノづくり革新」と「価値づくり」の取り組みを強力に推し進め、常に規制、市場環境や需要動向を注視しながらお客様のニーズに基づく新商品を適切なタイミングと価格で市場に投入することに努めていきます。
一方で、電動車への移行期においては普及のタイミングが想定と異なり、新商品が販売計画に満たない場合、同業他社との価格競争などが激化した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
※:Hybrid Electric Vehicle(ハイブリッド自動車)
(7) 商品ならびに販売・サービスに関する責任
当社グループは、品質の高さをSUBARUブランドの大事な根幹、付加価値の源泉であると位置づけ、「品質改革」の3つの切り口である「品質最優先の意識の徹底と体制強化」「つくりの品質の改革」「生まれの品質の改革」に取り組み、着実な成果を生んでいます。
今後もこれらの改革を加速させるとともに、「新体制の方針」を受け、特に電動化など新技術対応を含めた「生まれの品質の改革」を強化すべく取り組みを進め、開発最上流から生産・物流まで一貫して、お客様に価値を感じていただける品質を確保します。また、厳格な完成検査体制を維持して確かな品質で商品をお届けするとともに、万が一不具合が発生してしまった場合は、お客様へのご迷惑を最小限にするとともに、迅速な解決につなげられるよう継続的な業務プロセス改革に取り組みます。さらに、お客様視点に重点を置いた啓発活動を全社で展開することで、従業員全員の品質最優先の意識の徹底を図っていきます。
このように品質改革に取り組む一方で、大規模なリコールなどが起こった場合、多額のコストとして品質関連費用などが発生することに加え、ブランドイメージの毀損などにより、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(8) サプライチェーンの分断
当社グループは、自動車や航空機などの製造にあたり、多数のお取引先様から部品や材料を調達しています。定期的にお取引先様の品質保証力や供給能力のチェックを行うとともに、必要に応じお取引先様の経営状況のチェックも行い、安定調達に努めています。物流においては、ドライバー不足などの課題を認識し、対処を進めるなど安全で効率的な物流の実現に向けた取り組みを行っています。また、有事が発生した際は、平時より整備をしている一次・二次お取引先様の部品ごとの「サプライチェーン情報データベース」に基づき、影響を受ける可能性のあるお取引先様や部品を早期に特定することにより、生産継続に必要な在庫数の確認や代替品の生産検討、さらには生産設備の復旧支援を行うなど、サプライチェーン分断の影響を最小限に留める対応を取っています。しかしながら、大規模な地震や台風などの自然災害、新型コロナウイルス感染拡大の影響やそのほかの要因によりサプライチェーンの分断や需給のひっ迫、物流網の混乱が発生した場合、安定したコスト・納期・品質で調達の維持や商品の出荷が出来ず、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
2023年度は上半期前半まで半導体供給不足による生産制約の影響は残ったものの、以降は供給が回復しました。一方で半導体需給バランスは完全に正常化したとは言えず、引き続き状況を注視しつつ、生産および調達面での各種取り組みを継続していきます。
(9) 知的財産の侵害
当社グループは、製品やサービスを通じてお客様に「安心と愉しさ」という価値をお届けするために必要な技術・ノウハウなどを知的財産として保護し、SUBARUのブランド価値の維持・向上に努めています。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似製品を製造した場合や、知的財産に関わる訴訟などが生じて当社に不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(10) サイバーセキュリティ
当社グループは、製品の開発・生産・販売など、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しています。また、製品では電子部品を搭載し、ソフトウエア制御しています。これらの資産を守るためにサイバーセキュリティ基本方針を定め、サイバーセキュリティ部門が中心となりセキュリティマネジメントシステムを構築し、これに基づく活動をサイバーセキュリティ会議の運営を通じて行っています。具体的には従業員の意識向上に向けたセキュリティ教育や監査を定期的に実施するとともに、セキュリティ防御システムの増強も行うことで日々進化するサイバー攻撃からのリスク低減を図っています。これに加え、サイバー攻撃検知の迅速化を図るための監視とセキュリティインシデント発生時のSIRT(Security Incident Response Team)体制も整備しています。データのバックアップについては、当社データセンター内の自社運用ならびにクラウド環境において、複数箇所に分散しバックアップが取れる体制を整えており、局所的な災害などにおいても、事業継続や復旧の早期化に向けた対策を講じています。当社グループの情報技術やネットワーク、システムは、安全対策が施されているものの、サイバー攻撃、不正アクセス、マルウェアによる攻撃、人為的なミスによる個人・企業情報の漏洩、大規模な停電、火災などが発生した場合、重要な業務やサービスの中断、データの破損・喪失、機密情報の漏洩などが発生し、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(11) コンプライアンス
当社グループは、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つと位置付け、法令・社内諸規程などの遵守はもとより、社会規範に則した公明かつ公正な企業活動を遂行することを役職員一人ひとりに浸透させるべく、コンプライアンス体制・組織の構築および運営、ならびに各種研修等の活動を行っています。コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めているものの、当社グループおよび委託先などにおいて重大な法令違反や役職員の不正・不適切行為などが発生した場合、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下などによるブランドイメージの毀損が事業基盤に重大な影響を与え、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(12)訴訟など法的手続き
当社グループは、事業活動を行うなかで、ユーザー、お取引先様や第三者との間で様々な訴訟そのほかの法的手続の当事者となる可能性があります。現在係争中の案件や将来の法的手続において当社グループに不利な判断がなされた場合、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(13)ステークホルダーコミュニケーション
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、すべてのステークホルダーから満足と信頼を得るために、コーポレートガバナンスガイドラインを定め、コーポレートガバナンスの強化を経営の最重要課題の一つとして取り組んでいます。また、ディスクロージャーポリシーに基づき、フェアディスクロージャーに努め、法令に基づく開示を行っています。さらに、経営戦略や事業活動などの当社を深く理解していただくために有効と思われる会社情報を、迅速、公正公平、適正に開示しています。また、当社グループの持続的な成長に向けた発信として、2023年8月に公表した「新体制の方針」の各取り組みの進捗や、電動化・人的資本・知的財産・ガバナンスなどのESG情報について株主・投資家等と建設的な対話を図るとともに、社内関係者へのフィードバックを行うなどステークホルダーコミュニケーションの向上に努めています。しかしながら、株主との建設的な対話やステークホルダーとのコミュニケーションが不十分な場合、インサイダー取引などの不公正取引や虚偽記載などの法令違反行為による巨額の課徴金支払いなどが発生した場合は、株主や投資家をはじめとしたステークホルダーからの信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下などによるブランドイメージの毀損が事業基盤に重大な影響を与え、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(14) 人権尊重
当社グループは人を第一に考え、「人を中心としたモノづくり」を行っています。「一人ひとりの人権と個性を尊重」することを、SUBARUの重要な経営課題と捉え、SUBARUグループの「人権方針」を策定するとともに、同方針をもとに、ビジネス上の人権リスクを特定し、その対応策を策定、実行する「人権デュー・ディリジェンス」を実施しています。そのなかで明確化したSUBARUグループにとって特に重要なリスクについての対応策を着実に進め、継続的にリスク軽減を進めています。また、サプライチェーンを含め、事業に関連するビジネスパートナーやそのほかの関係者にも、本方針に基づく人権尊重の働きかけを行い、人権尊重の取り組みを推進しています。
それにもかかわらず、当社グループおよび上記関係者において、労働環境・労働安全衛生上の問題、様々なハラスメント、労働者の権利・機会の侵害、人権上の問題のある調達などを行った場合には、関連法規への抵触に加え、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下によるブランドイメージの毀損、販売の低迷、人財流出、資材・資金の調達難などが事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(15) 人財の確保と育成
当社は、従業員一人ひとりがSUBARUグループの持続的な成長と持続可能な社会の実現の両立を担う原動力となるべく、自律的に行動し変革をリードする人財の創出を目指すとともに、自身のキャリア形成を考え、チャレンジする風土づくりや多様な人財が活躍できる環境整備を進めています。
人財の確保においては、電動化対応、先進安全技術の進化、IT分野の強化といった専門領域での人財確保のため、これまで以上に積極的な採用を行っています。
また、独自の価値創造を実現し続けるため、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できるよう、 性別・国籍・文化・ライフスタイルなどの多様性を尊重した登用を行うとともに働きやすい職場環境の整備に努めています。特に安全衛生については、重要な経営課題と位置づけ「安全衛生はすべての業務に優先する」ことを基本理念とし、労働災害防止、疾病予防、労働環境向上に向けた取り組みを全社的に進めています。今後、労働市場のひっ迫、異業種も含めた人財獲得競争の激化、コンプライアンス事案につながるような労務問題により人財の確保ができない場合、安全衛生への対応が不十分な場合、あるいは人財の流出が続いた場合は、当社グループの事業活動や経営に影響を及ぼす可能性があります。同様に、人財の育成が不十分な場合や、従業員の多様性が尊重された誰もが活躍できる職場環境が実現できない場合においても、当社グループの事業活動などに影響を及ぼす可能性があります。
(16) 気候変動
当社は、気候変動に関連する「政策・規制」「技術」「市場」等の移行リスクに関して、各専門部門が広く情報を収集し、将来予測から不確定な気候変動リスクの認識を行っています。また、気候変動の物理的なリスクに関わる操業リスクは、BCPの一環として、リスクマネジメント・コンプライアンス室が中心となり関連規程類の整備を進め、緊急時のSUBARUグループ全体にわたる情報を一元的に掌握するとともに、その対応を統括管理する体制を整えています。これらの気候変動に関連する事項の一部は、取締役会や執行会議などで提案・議論され、特に重要な案件については取締役会の審議を経て意思決定しています。
気候変動に関する認識している主なリスク
しかしながら、現時点での将来予測が極めて困難な気候変動リスクの影響および発現によっては、研究開発費用などの増加、顧客満足やブランドイメージの低下などによる販売機会の逸失により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(17) 事業活動に影響を与える各国の政治・規制・法的手続き
当社グループは、北米を中心に世界各国において事業を展開しています。海外市場での事業活動においては、政治的、経済的要因、法律または規制の変更、課税、関税、その他の税制変更等のリスクが内在しています。当該リスクが顕在化した場合や事業展開をしている国・地域において政治的要因・通商政策の強化、通商紛争などが発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
また、環境などに関する主な法的規制は、自動車の燃費、排出ガス、省エネルギーの推進、騒音、リサイクル、製造工場からの汚染物質排出レベルに関するもので、これらの規制は、今後、さらに強化される可能性があります。各種規制への対応が不十分な場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(18) 地政学・地経学的災害(国際紛争・テロリスク)
当社グループは、世界各国において事業展開をしており、統括部門が日々情報収集やモニタリング活動を行い関連部門で情報を共有しています。しかしながら、当該国や地域においてテロ、戦争、内戦、政治 不安、治安不安などが発生し、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売および物流、サービスの提供などの遅延や停止が長期化する場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(19) 自然災害と関連する損害
当社グループでは、日ごろから事業継続に備えた規程類の定期的な整備とアップデートおよび訓練などを実施しています。さらに、各事業所単位では、重要業務の選定、緊急連絡体制の整備等BCPの強化を図り、全社コーポレート部門と密接に連携しながら事業継続や早期復旧を的確かつ迅速に行うための対応を進めています。しかしながら、大規模な地震、台風、豪雨、関連する火災・洪水等の自然災害や火災などの事故の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売および物流、サービスの提供などの遅延や停止が長期化する場合や、企業機能停止が長期化する場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(20)感染症等の発生
当社グループは経営に重要な影響を及ぼしかつ通常の意思決定ルートでは対処困難な緊急性が求められるリスクについて、有事の際に対応できる体制を整備しているものの、感染症やその他未知見な災害(パンデミック等)の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、生産、商品の販売やサービスの提供などの遅延や停止が長期化する場合や企業機能停止が長期化する場合には、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次の通りです。文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当連結会計年度の世界経済は、長期化するロシア・ウクライナ情勢および中東での紛争勃発などによる地政学リスクが高まり、また、物価上昇を受けた利上げなどに伴い景気の先行きの不透明な状況が続きました。一方、日本においては新型コロナウイルスが5類に移行するなど各種制限が緩和され、それに伴い需要と供給の両面において回復基調となりました。
このような経営環境のなか当社グループは、ありたい姿である「笑顔をつくる会社」に向けて、提供価値である「安心と愉しさ」の追求と経営理念である“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指してまいりました。2023年6月の新経営体制への移行に伴い、同年8月2日に「新経営体制における方針」を発表し、「モノづくり革新」と「価値づくり」の取り組みを強力に推進してきました。
(売上収益)
自動車売上台数の増加、自動車売上台数の増加および為替変動による増収効果などにより、売上収益は4兆7,029億円と前連結会計年度に比べ9,285億円(24.6%)の増収となりました。
諸経費等の増加などがあったものの、自動車売上台数の増加および為替変動による増益効果などにより、営業利益は4,682億円と前連結会計年度に比べ2,007億円(75.0%)の増益となりました。
5,326億円と前連結会計年度に比べ2,542億円(91.3%)の増益となりました。
3,851億円と前連結会計年度に比べ1,847億円(92.1%)の増益となりました。
セグメントごとの経営成績は次の通りです。
当社の重点市場である米国の自動車全体需要は約1,580万台と前連結会計年度を約11%上回りました。また、国内の自動車全体需要は約450万台と前連結会計年度を約3%上回る結果となりました。
このような事業環境のなか、生産および調達などにおける各種取り組みを継続してきたことにより、当連結会計年度の国内の生産台数は60.2万台と前連結会計年度に比べ2.7万台(4.7%)の増加、海外の生産台数は36.8万台と前連結会計年度に比べ6.9万台(23.0%)の増加となりました。以上の結果、国内と海外の生産台数の合計は97.0万台と前連結会計年度に比べ9.6万台(10.9%)の増加となりました。
重点市場である米国のほかカナダを含む北米を中心にSUBARU車の需要は強く、売上台数は堅調に推移し、海外は87.8万台と前連結会計年度に比べ12.5万台(16.6%)の増加、国内は9.9万台と前連結会計年度に比べ0.1万台(0.8%)の減少となったものの、海外と国内の売上台数の合計は97.6万台と前連結会計年度に比べ12.4万台(14.5%)の増加となりました。
売上収益は、自動車売上台数の増加および為替変動による増収効果などにより、4兆5,936億円と前連結会計年度に比べ9,031億円(24.5%)の増収となりました。またセグメント利益は、諸経費等の増加などがあったものの自動車売上台数の増加および為替変動による増益効果などにより、4,615億円と前連結会計年度に比べ1,983億円(75.3%)の増益となりました。
なお、当連結会計年度の連結売上台数は次のとおりです。
防衛、民間、ヘリコプターすべての事業において納入および受注が増加しました。特に「ボーイング787」の引き渡しの増加および多用途ヘリコプター「UH-2」の売上の増加などにより、売上収益は1,043億円と前連結会計年度に比べ253億円(32.0%)の増収となりました。また、セグメント利益は27億円と前連結会計年度に比べ47億円改善し、4期ぶりの黒字となりました。
売上収益は50億円と前連結会計年度に比べ1億円(1.9%)の増収となりました。また、セグメント利益は36億円と前連結会計年度に比べ26億円(42.0%)の減益となりました。
生産、受注および販売の実績は、次の通りです。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。なお、自動車の生産台数は、上半期前半まで半導体供給不足による生産制約の影響は残ったものの、生産および調達などにおける各種取り組みを継続したことにより、前連結会計年度を上回りました。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しています。
② 受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次の通りです。
なお、自動車事業については見込生産を行っています。
(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しています。
(2) 財政状態
① 資産の状況
当連結会計年度末の資産は、4兆8,141億円と前連結会計年度末に比べ8,700億円の増加となりました。主な要因は、外貨建定期預金の増加および為替の影響などにより「その他の金融資産(流動および非流動)」が5,758億円増加したこと、設備投資などにより「有形固定資産」が1,073億円増加したこと、為替の影響などにより「現金及び現金同等物」が685億円増加したことです。
② 負債の状況
負債は、2兆2,488億円と前連結会計年度末に比べ4,146億円の増加となりました。主な要因は、製品保証引当金の増加などにより「引当金(流動および非流動)」が921億円増加したこと、米国市場インセンティブの増加などにより「その他の流動負債」が908億円増加したこと、長期借入金の増加などにより「資金調達に係る債務(流動および非流動)」が869億円増加したこと、「未払法人所得税」が659億円増加したことです。
③ 資本の状況
資本は、2兆5,654億円と前連結会計年度末に比べ4,554億円の増加となりました。主な要因は、当期利益の計上、配当金の支払いおよび取得した自己株式の消却により「利益剰余金」が2,832億円増加したこと、為替換算調整勘定の増加などにより「その他の資本の構成要素」が1,776億円増加したことです。
(単位:百万円)
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1兆480億円となりました。
営業活動による資金の増加は7,677億円(前連結会計年度は5,038億円の増加)となりました。主な要因は、税引前利益5,326億円、減価償却費及び償却費2,178億円、法人所得税の支払額1,105億円などです
投資活動による資金の減少は7,037億円(前連結会計年度は3,368億円の減少)となりました。主な要因は、定期預金の増加3,661億円、有形固定資産の取得による支出(売却による収入との純額)1,853億円、無形資産の取得及び内部開発に関わる支出1,117億円などです。
財務活動による資金の減少は665億円(前連結会計年度は1,223億円の減少)となりました。主な要因は、親会社の所有者への配当金の支払額652億円、リース負債の返済による支出427億円、自己株式の取得による支出400億円、長期借入金の借入れによる収入(返済による支出との純額)741億円などです
(単位:百万円)
(4) 資本政策の方針
当社グループは、“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開し、強固な財務体質と高い資本効率を維持し、中長期的な企業価値の向上を図っています。当社は2023年8月に実施した「新経営体制における方針」の説明において、2022年より段階的に発表してきた電動化計画のアップデートを行い、BEVへ資源を集中し世界最先端の「モノづくり革新」と「価値づくり」を目指すことを公表しました。この実現に向け、財務健全性(自己資本比率50%以上)と財務安定性(相応のネットキャッシュポジション)を維持しつつ、2030年頃までに最大で約1.5兆円の電動化対応投資(バッテリー関連、国内・米国生産体制整備、電動車開発関連など)を見込みます。加えて電動化に向けた革新の原動力となる人的資本への投資も着実に実施していきます。また、保有する円とUSドルのバランスおよび最適な資本構成を踏まえ、資金調達が適当と判断される場合はサステナビリティファイナンスなども念頭に円建て債務での調達を行っていきます。
持続的な成長に向けては資本コストや株価を意識した経営の実現が不可欠です。当社の現状の資本コスト(WACC)は6%半ば(CAPMに基づく)であり、自己資本利益率(ROE)は2030年を見据えた長期的目標として、業界高位の収益力とあわせ10%以上を追求していきます。また、役員報酬制度において、KPIの一つにROEを採用するなど、従前より重要な指標と位置付けておりましたが、2024年度より企業価値の改善に関する指標である相対TSR(対 配当込みTOPIX成長率)を新たなKPIとして追加することで、中長期的な企業価値の持続的な向上に向けた実効性をより高めていきます。
株主還元の考え方については、総還元性向30%~50%を目安に、業績、投資計画、経営環境を総合的に勘案し、安定的・継続的な配当と機動的な自己株式の取得を実施していきます。投資が増加するなかでも株主還元を重視し、その時々の経営状況やバリュエーションを踏まえ、株主と当社の双方にとって最適かつバランスの取れた資本政策を柔軟に実施していきます。なお、2023年5月11日に資本効率の向上を目的に決定した約400億円の自己株式の取得については、2023年9月22日に取得を終了し、2023年11月15日に取得した自己株式を全株消却いたしました。また2024年5月13日には、新たに600億円を取得上限総額とする自己株式の取得と、取得する自己株式の全数消却を行うことを発表しました。
当社グループは、経営環境を考慮しつつ、適切な手元資金水準を維持しながら、資金調達計画を経営会議において審議し、戦略的投資と研究開発費等の成長に向けた経営資源の適切な配分を安定的に行っています。当社グループの資金調達および資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、主要銀行からの借入とコミットメントライン契約の締結、ならびに社債の発行を行っており、現在必要とされる流動性の水準を満たしていると考えています。当連結会計年度末における有利子負債の残高(リース債務を含まず)は3,995億円と、前連結会計年度に比べて869億円の増加となりました。デット・エクイティ・レシオは0.16と、安全性を維持しています。今後の設備投資や研究開発の投資計画によっては資金の追加調達、現預金残高の取り崩しをする可能性があります。
コミットメントライン約2,000億円に加え、社債ならびにコマーシャル・ペーパー発行枠を設定する等、合計約4,000億円の資金調達枠を確保し、資金需要に機動的に対応できる体制を整えています。
また、当社は 国内の格付機関である格付投資情報センターから格付を取得しており、有価証券報告書提出日現在においての格付は「 シングルAマイナス(安定的)」となっています。強固な財務体質を維持し、上記資金調達枠を保持していることから、当社グループの事業運営に必要な運転資金および投資資金に関しては問題なく確保できるものと認識しています。
(5) 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、様々な見積りによる判断が行なわれていますが、見積りに内在する不確実性により、実際の結果は異なることがあります。
連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しており、特に重要な見積りを伴う会計方針は以下の通りです。
① 損失評価引当金
当社グループは、各報告日において、金融商品に係る信用リスクが当初認識以降に著しく増大したかどうかを評価 しており、当該信用リスクが当初認識以降に著しく増大していない場合には、当該金融商品に係る損失評価引当金を12ヶ月の予想信用損失に等しい金額で測定しています。また、当該金融商品に係る信用リスクが当初認識以降に著しく増大している場合には、当該金融資産に係る損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定しています。ただし、営業債権、リース債権および契約資産については、常に損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定しています。
将来、取引先などの財務状況が悪化するなどにより支払能力が低下した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。
② 製品保証引当金
当社グループは、製品販売時に付与した保証約款に基づく製品保証とともに、主務官庁への届出等に基づいて個別に無償の補修を行っています。
保証約款に基づく製品保証の対象は、各国における保証約款に基づき、期間および走行距離や不具合の原因などにより決定しています。
保証約款に基づく製品保証の保証修理費用は、製品を販売した時点で引当金を認識しており、保証期間内に不具合が発生して部品を修理または交換する際に発生する費用の総額について、過去の補修実績、過去の売上台数を基礎として将来の発生見込みに基づく最善の見積りにより引当計上しています。
主務官庁への届出などに基づく個別の保証修理費用は、経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、その債務の金額について信頼性をもって見積ることができる場合に引当金を認識しており、製品の不具合に関する過去の経験を基礎として算定した1台当たり将来保証修理費用などおよび対象台数に基づく最善の見積りにより引当計上しています。
当社グループは、発生が見込まれる保証修理費用について、現在入手可能な情報に基づき必要十分な金額を引当計上していると考えていますが、製品保証引当金の計算では将来複数年にわたり生じる保証修理費用を予測しているため、実際の保証修理費用が見積りと乖離することにより、製品保証引当金を追加計上する必要が生じる可能性があることから、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。
③ 従業員給付
当社グループは、従業員給付のうち退職給付について、将来の退職給付の支払いに備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務および年金資産の見込額に基づき、退職給付を計上していますが、この計算は主として数理計算上で算定される前提条件に基づいて行われています。この前提条件には、割引率、将来の給与水準、退職率、死亡率などが含まれており、それぞれの条件は現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されています。当社は、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合には、将来期間において認識される費用および債務に影響を与える可能性があるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。
割引率が変動した場合の確定給付制度債務に与える影響額については、連結財務諸表注記の「19 従業員給付(4)数理計算の仮定」を参照ください。
④ 金融資産
当社グループは、価格変動性の高い公開会社の株式、株価の決定が困難である非公開会社の株式、国債、社債および投資信託などを保有しています。
純損益を通じて公正価値で測定する金融資産については、投資価値の変動により損失が発生することがあるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えています。
⑤ 繰延税金資産
繰延税金資産は将来減算一時差異などを使用できるだけの課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で認識し、繰延税金負債は原則としてすべての将来加算一時差異について認識しています。当該見積りは、将来の不確実な経済条件の変動などによって影響を受ける可能性があり、実際に発生した課税所得の時期および金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の有価証券報告書において、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
2006年3月 トヨタ自動車株式会社と業務提携
2008年4月 トヨタ自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社と開発・生産における新たな協力関係に合意
2019年9月 トヨタ自動車株式会社と長期的連携関係のさらなる発展・強化を目指し、新たな業務資本提携に合意
当社は、前中期経営ビジョン「STEP」において、お客様に認められる「SUBARUらしさ」をより高めるため、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みや、提供価値である「安心と愉しさ」の具現化に向け、SUBARUづくりを刷新し、モノづくり革新を進めてきました。昨今の自動車産業を取り巻く非連続な環境変化やそのスピード感は従来以上のものと捉えています。このようななか、当社は2023年の新経営体制への移行に伴い、同年8月2日に「新経営体制における方針」の説明を実施し、「2030年に向けた電動化計画のアップデート」と「2030年を見据えたうえでの2028年までの直近5年間に向けた決意」を公表し、自動車業界の大変革期のなかで決して埋没することのないよう、「モノづくり革新」と「価値づくり」において世界最先端を目指し取り組みを進めています。内燃機関からBEVに変わっていく過渡期において、国内外工場再編による「生産体制」の刷新と、「開発プロセス」や「商品企画」の刷新を合わせることで、この2つの取り組みを早期に実現すべく、研究開発活動を進めています。
当連結会計年度におけるグループ全体での研究開発支出は
(1) 自動車事業
自動車の研究開発では、当社の「提供価値」である「安心と愉しさ」の提供を通じてお客様から共感され、信頼していただける存在となることを目指し商品の開発を推進しています。当事業に関わる研究開発支出は
① 開発拠点の刷新
2023年3月に東京都三鷹市の開発拠点が稼働開始したことに続き、2024年1月に群馬県太田市の開発拠点「イノベーション・ハブ」が稼働を開始しました。時代に合わせて高度に分業化した「製造部門」「開発部門」および「お取引先様」を「イノベーション・ハブ」に集め、新たな価値を想像する「知の中心となる環境」を作り出していきます。
② 安心・安全への取り組み
SUBARUは「人の命を守る」ことにこだわり、2030年の死亡交通事故ゼロ※1の実現に向けて取り組みを進めています。これらの取り組みの結果、これまでも日本、米国 、欧州をはじめとする国内外の第三者機関による安全 性能試験・評価において高い評価を受けており、最高ランクの評価を多数獲得しています。また、当社は、2023年秋にマニュアルトランスミッション車(以下MT車)向けの運転支援システム「アイサイト」を開発し、SUBARU BRZ改良モデルに初採用しました。アイサイトは、世界で初めてステレオカメラのみで、自動車だけでなく歩行者、二輪車までも対象としたプリクラッシュブレーキや、追従機能付クルーズコントロール等を実現したSUBARU独自の運転支援システムで、アイサイトを搭載したSUBARU車の世界累計販売台数は、2008年5月の発売以来、550万台を超えています※2。今回SUBARU BRZ改良モデルに採用するMT車向けアイサイトは、高い衝突回避、衝突被害軽減、運転負荷軽減の各性能へMT車の特性に合わせた制御を施し、リアルワールドの幅広いシーンでの安定した動作を実現、運転する愉しさと安心を高い次元で両立しました。また、米国IIHS※3によって行われた2023年安全性評価において、2024年モデルのインプレッサが最高評価となる「トップセイフティピックプラス(TSP+)」を獲得しました。また、2024年モデルのクロストレックは、「トップセイフティピック(TSP)」を獲得しています。
SUBARUは今後も、SUBARUの総合安全思想の軸である「0次安全」「走行安全」「予防安全」「衝突安全」「つながる安全」を追求し、世界中のお客様へ「安心と愉しさ」を提供するとともに、2030年死亡交通事故ゼロを目指していきます。
※1: SUBARU乗車中の死亡事故および衝突による歩行者・自転車などの死亡事故をゼロに。
※2:2023年5月末現在
※3:Insurance Institute for Highway Safety(道路安全保険協会)
③ 新商品開発状況
当連結会計年度において、「安心と愉しさ」でお客様の笑顔をつくるべく、以下の商品を展開しました。
i.2023年4月、北米専用車「Crosstrek Wilderness(クロストレック ウィルダネス)」を米国で発表しました。 「クロストレック ウィルダネス」は、2021年3月に発表した「アウトバック ウィルダネス」、2021年9月に発表した「フォレスター ウィルダネス」に続く、ウィルダネスシリーズ第三弾となるモデルです。コンパクトなボディに本格的なSUV性能を備え、都会からアウトドアシーンまで幅広く使えるクロスオーバーSUVという、「クロストレック」の価値はそのままに、オフロード性能の高さを予感させるよりタフでラギッドなデザインと、走破性や機能性の強化により、個性をさらに際立たせました。
ⅱ. 2023年10月、「レヴォーグ レイバック」を発表しました。新型SUV「レヴォーグ レイバック」は、「レヴォーグ」が持つ先進安全・スポーティ・ワゴン価値の3つの価値に加え、SUVの価値である自在性と、上質さを兼ね備えた、SUBARUの豊富なSUVラインアップのなかで、唯一無二の存在となるSUVとして、日本市場向けに新たに開発したモデルです。
ⅲ.2023年11月、米国ロサンゼルスオートショーにおいて、新型「フォレスター」(米国仕様車)を世界初公開しました。第6世代となる新型フォレスターは、走る愉しさを感じさせる優れた運動性能、安心を提供する先進安全装備、とことん使えるユーティリティなど、その機能や実用性をさらに高め、日常から非日常までどんな時でも乗る人すべての期待に応える事ができるSUVに進化しました。SUVらしく頑丈で堂々とした存在感を感じるエクステリアデザインとし、フルインナーフレーム構造による高いボディ剛性や、2ピニオン電動パワーステアリングの採用により動的質感を向上。また、新世代アイサイトを標準装備し、安全性能も高めました。さらに、一部グレードでは11.6インチセンターインフォメーションディスプレイも搭載しました。
また、この新型「フォレスタ―」の公開に合わせて、今後SUBARUらしい独自のHEVである次世代e-BOXERを搭載することも発表しました。新型「フォレスタ―」の次世代e-BOXER搭載車を新たな電動化計画における次のステップとし、これに続いて電動車を続々と登場させる予定です。
(2) 航空宇宙事業
航空宇宙カンパニーは将来にわたる持続的成長に向け、新規事業開拓および生産性向上を中心とした以下の研究開発を行っています。
ヘリコプター分野では、ユーザーの運用におけるさらなる安心・安全につながる装備品の開発や原価低減に関する研究を継続し、商品価値の向上に取り組んでいます。
防衛分野では、操縦/整備教育システムや無人機システムの研究、民間機分野では構造の軽量化に向けた新材料や適用技術の開発に取り組んでいます。
また、生産基盤強化として、組立・塗装作業の自動化等の研究開発にも積極的に取り組んでいます。その他、サプライチェーンを含めた生産プロセスにおけるDX推進に加え、持続可能な航空燃料(SAF)の活用や電動化等のGX推進の取り組みや、将来モビリティの実現に向けた技術実証を続けています。
当事業に関わる研究開発支出は
(3) その他事業
株式会社スバルITクリエーションズにおける情報システム開発に係る研究開発費を中心としたその他事業全体の研究開発支出は