文中においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 会社の経営方針
当社は、自立した個人を重んじ、和を尊び、協力を旨とする“人間尊重”、失敗を恐れず困難な道を選択する “チャレンジ精神”、“環境・地域社会、株主・従業員との共生”を基本理念としており、優れた技術力に基づく優良な品質の製品を適正な価格で提供することに努めております。
こうした企業活動を推進することで、「わたしたちは世界的視野に立ち、高い志と誠をもって価値を創造し、国家社会に貢献すると共に豊かな未来を築く事に全力を尽くす。」との社是を実践し、世界中の得意先からの顧客満足度No.1の評価を得るとともに、一般社会からのその存在を期待される企業となるよう努めております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
第15次中期経営計画では全社方針を「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」と定めました。エフテックファミリー全体で「Back to Basics」「Challenge for New」を土台に事業基盤をしっかり固め、将来の持続的成長に向けた活動に取り組んでいきます。具体的な取り組みは以下のとおりとなります。
<Back to Basics>
① 稼ぐ力の強化
モノづくりの本質追求から稼ぐ力を強化し、収益の向上へと繋げていきます。
② 財務体質の健全化
第14次中期経営計画投資による成果の創出やモニタリング機能、分析力の強化により財務体質を健全化していきます。
<Challenge for New>
① 戦略的な成長ビジネス機会の追求
北米新子会社設立により、北米地域におけるEV自動車メーカーに対する営業活動及びこれらに関連する業務を強化していきます。
② サステナビリティ経営の構築
ESG経営の取り組みを通じて企業価値を向上させていきます。方針を策定し、サステナビリティの具現化に向けて組織的に推進していきます。

① 短期的な課題
2023年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化、資源・エネルギー価格の高止まりに加えて、欧米の金融引締めや中国経済の減速など、先行きは極めて不透明な状況が続きました。自動車業界においては、半導体不足は概ね解消されましたが、米国における労働需給の逼迫や中国市場における日系自動車メーカーのEV化の出遅れなど、地域ごとに異なる事業環境に直面しました。
こうした環境下、当社グループは、昨年4月より第15次中期経営計画をスタートさせ、「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」を合言葉に、「Back to Basics」と「Challenge for New」の基本方針に沿い、「モノづくりの本質追求」から稼ぐ力の強化と財務体質の健全化に繋げ、「得意先に対する新たな価値の提供」を通し新たな成長機会を追求することに全社一丸で取り組んでいます。特に、
・EV化の加速、お客様のニーズへの柔軟かつ的確な対応
・米国拠点の再建と北米事業地域セグメントの収益力回復
・前中期経営計画の投資効果の創出
・モニタリング体制の強化による収支・投資の一元管理
・従業員エンゲージメント向上施策の実行
・サステナビリティ経営に向けた基本テーマへの対応
に取り組んでまいります。
② 中長期的な課題
[自動車産業を巡る変化]
(市場)
日本においては少子高齢化、人口減少に伴い国内自動車市場が縮小し、新車販売台数の減少が続いています。一方、海外では、日系OEMの急激な生産数の落ち込みがあるものの依然として世界No.1市場の中国、成熟市場ではあるものの安定的に高い需要の見込める北米、そして今後さらなる市場の成長が期待されるインドでの適切な事業展開が求められます。
(サステナビリティ)
カーボンフリーなサステナブル社会の実現という世界的な潮流の中、EV化の流れは今後も継続することが予想されます。
サステナビリティ経営として、当社と社会の更なる持続的成長の実現に向けて、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)の領域での重要課題(マテリアリティ)を抽出し、それぞれの重要評価指標(KPI)を設定し、その実現に向けた取り組みを進めていかなければなりません。
(人的資本)
企業がサステナビリティ経営を目指す上で、従業員のやる気と個性を活かしつつ、個々の成長段階やキャリアに応じた能力開発を推進し、それぞれの能力を最大限に伸ばす人材育成に取り組む人的資本戦略は必須の要素として考えられています。
[当社グループの取り組み]
こうした環境下、当社グループとしては、以下の事項に取り組んでまいります。
・EV化へのトレンドを的確に捉え、EV車種の新規受注活動をグローバルで積極的に展開
・日本の生産技術力と現場管理力の更なる進化と海外拠点への移植
・海外拠点のモノづくり力(安全・品質・コスト・納期)の強化と稼ぐ力の向上
・インド事業への経営リソースの投入強化
・新開発手法の確立と実践
・カーボンニュートラルへの具体的な取り組みの推進
[当社の長期ビジョン]
当社グループは、世界中のお客様が求める価値を提供し、「足廻り機能領域の専門メーカーとして世界No.1を目指す」ために進化を続けてまいります。「足廻り機能領域」とは、当社グループが得意とする「サブフレーム」、「サスペンション」、「ペダル」の3つのコア領域のことを指し、まさに当社グループのアイデンティティを表しています。また、当社グループが目指す「世界No.1」とは、売り上げ規模ではなく、社員全員が「モノづくりの本質」を誰にも負けないと自信を持って言えるまで追求することであり、最終的にはお客様の評価によって決まるものと考えています。
当社グループは、「高品質な製品を安全に、高効率、最少エネルギーで生産し、企業努力をしっかり反映させたコストレベルで、お客様にオンタイムで供給する。」との「モノづくりの本質」を追求することで、お客様の評価「世界No.1」を目指すべく、以下の5項目を徹底的に追求してまいります。
当社グループの「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社グループでは、「サステナビリティ基本方針」を制定し、当社グループ全体のサステナビリティの取組を経営レベルで推進していくために、代表取締役社長が委員長を務め、各本部長、各室長、執行役員で構成する「サステナビリティ委員会」を設置しました。同委員会では、サステナビリティに関連する重要な課題についての討議を行っています。ここで報告、協議された内容は、経営会議での詳細な審議を経て、取締役会へ上程されます。取締役会では、上程されたこれらの重要な課題に対して適切なガバナンスを実施し、持続可能な未来の実現に向けた当社戦略へと反映します。また、これら全ての経営活動は、全社のコーポレート・ガバナンス体制下で、取締役会及び監査役会の厳密な監督・監査のもと運営されています。
[サステナビリティ体系図]

(2) 戦略
当社グループは、サステナビリティを巡る課題を重要な経営課題であると認識し、以下に掲げた第15次中期経営計画戦略マップ(2023年度~2025年度)の重点テーマの一つとして、「サステナビリティ経営の構築」を掲げています。全社方針である「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」を実現するために、以下のとおり、各領域で具体的な取り組みを行っています。
(ⅰ)ESG経営への取り組み強化
(ⅱ)ステークホルダーからの評価向上
(ⅲ)カーボンニュートラルの実現へ向けた推進
[第15次中期経営計画戦略マップ]

(3) リスク管理
サステナビリティに関するリスク管理として、GRIスタンダードなどの国際規格や外部評価の結果を踏まえ、収益機会とリスクの両面から、「自社にとっての重要度」と「ステークホルダーの関心事」の二軸で総合的に分析・検証し、特定しています。特定された重要課題(マテリアリティ)7つに対し、改善取り組みを行っています。
(4) 指標及び目標
当社グループが特定した重要課題(マテリアリティ)について、ESG各領域における2030年の目指したい姿及びKPIを重要項目ごとに定め、サステナビリティ推進部が各関連部門と連携をとりつつ目標達成に向けて進めております。

(5) 人的資本多様性にかかる戦略
① 人材の多様性の確保を含む育成方針
当社は、企業理念の一つに「人間尊重」を掲げており、性別、国籍、人種等の垣根を越えて従業員同士が互いの価値観を認め、多様な視点で新たな価値を創造することが企業の成長に不可欠であると考え、積極的に多様性の確保に努めてまいります。そのうえで、「チャレンジ精神」「利益確保」を合わせた三つの企業理念を具現化できるような人材を育成するために、社員個々のやる気と個性を最大限に伸ばすように取り組んでまいります。
・公募制度による駐在員選定
当社は、人材育成を目的として、社員が自らキャリアを希望することができるように、特定の職務に対して社内で公募する制度を2021年度に導入しました。これまでに海外駐在員を募集し、累計で8名合格しました。今後は、海外駐在員以外の職務についても公募を実施していく予定です。
② 社内環境整備の方針
当社は、各社員が持つ多様な視点や経験を企業の成長に活かすために働き方改革を推進し、安全・安心かつ生活との調和をとることができる職場となるよう常に改善に取り組んでいます。
・女性社員の活躍推進
当社では、男女を問わずすべての人が個性と能力を発揮できる職場を目指しています。作業の性格上、男性が中心だった製造・エンジニアリング・開発・購買部門では、作業環境が大きく改善され、女性の配置が積極的に進められる等、全社的に様々な分野で女性が働くことができるように取り組んでいます。今後は女性活躍推進法に基づき、更なる女性の進出拡大を目指し、採用・登用及び指導者の育成の取り組みを進めていきます。仕事とプライベートのバランスが図られ、男女ともに充実した社会生活を送ることができるよう環境整備に取り組んでまいります。
・高年齢層(シニア世代)の活躍推進
60歳の定年を迎える従業員を対象に、定年後も満65歳まで継続して働くことができる環境を提供するとともに、定年後の働き方を考えるためのライフプランセミナー等の情報提供も行っています。また、2019年7月からは、定年再雇用者の新たな働き方として、モチベーション向上と技術継承を目的とした「匠制度」を始めました。これは、高度な技術を持つ熟練者を「匠」(たくみ)として認定し、後継者へ技術を伝承する指導者として重要な役割を担っていただく制度であり、役割・責任に応じた報酬制度としています。
また、満65歳の継続雇用期間を満了した従業員についても、必要な労働力を維持する観点から、業務委託契約などにより弾力的な雇用の確保に努めてまいります。
・年次有給休暇の取得促進
当社では、時効で消滅する年次有給休暇を全社員「0」とする目標を掲げており、一般従業員は目標を23年連続達成しています。また、取得促進を図るために半日有給休暇は制度の範囲内で年20回取得可能としており、育児・介護等個人の状況に合わせ柔軟に対応できるようにしています。
・育児・介護両立支援
育児や介護について、上司と部下が相互に理解し合える協力的な職場環境づくりを目指し、以下の取り組みを推進しています。
(ⅰ) 「仕事と育児・介護の両立支援ガイドブック」を社内ポータルサイトで発信
(ⅱ) 管理職を対象とした育児・介護休業法改正説明会の開催
(ⅲ) 男性向け育休取得促進のための周知文書の掲示
(6) 人的資本多様性にかかる指標及び目標
当社グループでは、(中略)人材の多様性の確保を含む育成方針及び社内環境整備の方針に係る指標については、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。なお、多様性の確保について連結ベースで推進することの重要性は認識しており、労働慣行などが異なる海外子会社として設定する指針や数値目標について、今後、検討してまいります。従いまして、次の指標に関する目標及び実績につきましては、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
指標・目標
・女性管理職
当社は、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定する「くるみんマーク」を取得する等、女性社員が活躍できる環境の整備に積極的に取り組んでいます。2019年4月に初めて女性が部長職に就き、2024年4月には執行役員に女性が初めて就任しました。また、女性社員の意見を事業運営に活かすべく、社長による女性社員とのタウンミーティングを実施しています。経営陣を支える管理職層における多様性を確保するために、女性管理職数を2025年度には2020年度比で2倍以上、2030年度には全管理職のうち女性管理職が占める割合を10%以上とすることを目指しています(2024年3月末時点の女性管理職比率:1.2%)。
・外国人管理職
当社では、グループ売上高の約9割を海外売上高が占めており、事業におけるグローバル化の推進と合わせて人材のグローバル化にも積極的に取り組んでいます。外国人等のグローバル人材を採用するために、海外における採用活動に加えて、国内においては2023年度新卒採用活動より採用計画にグローバル人材の目標数を明示しています。2024年3月末時点におけるグループ全体の外国人管理職は100名以上おりますが、当社における外国人管理職は1名です。2025年度には外国人管理職数及び外国人社員数を現状より増加させる予定です。
・中途採用管理職
当社では即戦力となる人材を中途採用しており、管理職における中途採用社員の比率は2024年3月末時点で27.8%となっており、2025年度においても現状を維持する予定です。
(7) 気候変動に係るリスク及び戦略
当社は、自動車の足廻り機能部品の製造会社として、設計・開発及び塑性加工、溶接、塗装、組立まで、安全性に配慮した一貫加工体制を構築し、技術を培ってきました。 昨今、自動車産業では、ハイブリッド車や電気自動車等、バッテリーを搭載した自動車の生産・販売が主流になりつつあります。今後も自動車の足廻り機能部品のメーカーとして各自動車メーカーから選ばれ続けるために、当社は自動車の低燃費性能に貢献する軽量な製品を、安全に、かつ地球環境に配慮しながら量産していかなければなりません。 一方で自動車は、多くの企業による多くの生産プロセスを経て製造され、一般消費者に販売されます。そして一定期間使用された後、廃棄されます。自動車のライフサイクルにおいては大量の環境資源が使用されています。 当社は、当社の事業活動がこうしたライフサイクルの中で行われていることを自覚したうえで、環境負荷低減へ積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
当社グループでは、気候変動リスクへの対応を経営上の重要課題として位置付けており、2050年度カーボンニュートラル実現を目指しております。まずは自社領域(Scope1/2)におけるCO2排出量を2030年度までに2017年度基準で39%以上削減するという中間目標を設定し、その達成に向けた取り組みを進めております。具体的には、省エネルギー活動の徹底、高効率生産設備への更新、生産ラインの再編及び再生可能エネルギーの導入を加速させてまいります。
(8) 温室効果ガス(GHG)排出量
温室効果ガス(GHG)排出量に関する詳細な情報については、当社ウェブサイト(https://www.ftech.co.jp/csr/report)に公表されている「
なお、本事業年度(2023年度)の温室効果ガス(GHG)排出量の実績については、2024年10月末発行予定の「統合報告書」にてお知らせする予定です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループが連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績等の状況の概要
a. 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化、資源・エネルギー価格の高止まりに加えて、欧米の金融引き締めや中国経済の減速など、先行きは極めて不透明な状況が続きました。自動車業界においては、半導体不足は緩和されましたが、米国における労働需給の逼迫や中国市場における日系自動車メーカーのEV化の出遅れなど、厳しい経営状況が続いております。
こうした事業環境下、当社グループは、昨年4月より第15次中期経営計画をスタートさせ、「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」を合言葉に、「Back to Basics」と「Challenge for New」の基本方針に沿い、「モノづくりの本質追求」、「得意先に対する新たな価値の提供」に全社一丸となって取り組んでまいりました。その結果、様々な得意先から多くの新機種の引合いを受け、受注につなげることができました。数々の得意先からの生産・品質面での表彰受賞を含め、更に企業価値を向上させることができました。
こうした活動のもと、当連結会計年度の業績は、売上高は298,759百万円(前期比14.4%増)、営業利益は3,708百万円(前期比81.9%増)、経常利益は3,001百万円(前期比56.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,683百万円(前期比2.9%減)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(日本)
半導体不足の緩和もあり主要得意先の生産台数が増加傾向にあること、新規得意先からの受注製品の量産効果等により、売上高は30,612百万円(前期比31.1%増)となりました。損益面は、売上高の増収効果により、営業利益は1,352百万円(前期比224.1%増)となりました。
(北米)
半導体不足の緩和により主要得意先の生産台数が増加傾向にあること、新規受注製品の量産効果及び為替の円安影響等により、売上高は206,501百万円(前期比21.7%増)となりました。損益面は、米国において労働需給逼迫に起因する労務コスト上昇等の影響がありましたが、売上高の増収効果や生産体質の改善、価格転嫁等により、営業利益は758百万円(前期は営業損失1,040百万円)と黒字化しました。
(アジア)
主要得意先の生産台数は東南アジア諸国では堅調でしたが中国地域は減産となりました。その影響を受け、売上高は61,645百万円(前期比9.5%減)、損益面では、営業利益は1,511百万円(前期比35.4%減)となりました。
当連結会計年度末における総資産は、商品及び製品は減少しましたが、現金及び預金、売掛金、機械装置及び運搬具の増加により、前連結会計年度末に比べ15,634百万円増加し、191,772百万円となりました。
負債は、長期借入金は減少しましたが、支払手形及び買掛金、短期借入金、未払金の増加により、前連結会計年度末に比べ8,648百万円増加し、120,029百万円となりました。
純資産は、利益剰余金、為替換算調整勘定の増加により、前連結会計年度末に比べ6,985百万円増加し、71,742百万円となりました。
② 生産、受注及び販売実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1,金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.当連結会計年度において、日本セグメントの生産実績に著しい変動がありました。これは、新規得意先からの受注製品の量産効果等によるものであります。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、日本セグメントの受注高に著しい変動がありました。これは、新規得意先からの受注製品の量産効果等によるものであります。
3.当連結会計年度において、北米セグメントの受注残高に著しい変動がありました。これは、新規製品の量産本格化及び円安効果によるものであります。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、日本セグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは、新規得意先からの受注製品の量産効果等によるものであります。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、12,204百万円(前期比122.2%増)となり、前連結会計年度末と比べ6,712百万円増加しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの前連結会計年度に対する増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、19,466百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益3,100百万円、減価償却費14,559百万円、棚卸資産の減少2,440百万円、利息の支払額2,816百万円、法人税等の支払額2,940百万円によるものであります。
なお、前連結会計年度との比較では、営業活動によるキャッシュ・フローは、17,433百万円の収入から19,466百万円の収入となりました。これは主に、棚卸資産の減少、減価償却費の増加、仕入債務の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、8,902百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出8,809百万円によるものであります。
なお、前連結会計年度との比較では、投資活動によるキャッシュ・フローは、16,342百万円の支出から8,902百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出の減少、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、4,263百万円の支出となりました。これは主に、短期借入金の純増額7,616百万円、長期借入れによる収入3,400百万円、長期借入金の返済による支出13,562百万円によるものであります。
なお、前連結会計年度との比較では、財務活動によるキャッシュ・フローは、2,340百万円の収入から4,263百万円の支出となりました。これは主に、短期借入金の増加、長期借入れによる収入の減少によるものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものであります。
① 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2026年3月末までの第15次中期経営計画(2023年4月1日~2026年3月31日)では、外部環境の良化や前中期経営計画期間に実施した投資効果による当社事業の平常化と収益力の向上、増加した有利子負債残高の減少による財務体質の健全化を目指し、最終年度の経営指標として、連結売上高3,000億円、連結営業利益80億円、連結売上高営業利益率2.7%、NetDebt/EBITDA((連結有利子負債残高-連結現預金) / (連結営業利益+連結減価償却費))3.1倍以下、EPS(1株当たりの親会社株主に帰属する当期純利益)175円以上を計画しております。
初年度となる当連結会計年度については、半導体不足の緩和により主要得意先の生産台数が回復したこと、新規受注製品の量産効果、円安による為替換算の影響により、連結売上高は計画を達成することができました。しかしながら損益面は連結営業利益、売上高営業利益率ともに米国における労働需給逼迫に起因する労務コスト上昇等の影響により計画を下回りました。なお、NetDebt/EBITDAは投資額のコントロールに注力したこと、EPSは為替差益の増加や持分法による投資利益の増加により親会社株主に帰属する当期純利益が計画を上回ったことにより、それぞれ計画を達成することができました。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の業績は、世界的な半導体の調達問題が解消され、特に日本と北米でお客様の生産が回復したこと、国内・海外共に新規受注車種が立ち上がったことなどにより、売上高、営業利益は増収増益の結果となりました。しかしながら、営業利益は期初に発表した計画値を中間期で下方修正しており、稼ぐ力の強化が必要と課題認識しております。
稼ぐ力の強化の具体的な施策の1つ目は原価低減活動の徹底です。特に米国拠点において労務コスト抑制が課題となっており、当連結会計年度においては日本・メキシコ・カナダ・中国からエキスパートを派遣してグループ一体で各種製造工程の生産効率改善等をサポートしてきました。しかしながら、一部では改善効果が見られたもののまだ途上の段階であり、引き続きサポートを継続していきます。また、中国拠点では得意先が当初の想定より大幅に減産しており、要員計画など、得意先の生産計画に合わせた体制にすべく取り組んでいます。
2つ目は各種コスト負担増の価格転嫁です。世界的なインフレによる原材料価格や労務コストの上昇への対応は企業努力だけでは限界があります。当連結会計年度に見込んでいた上昇部分は得意先と売価アップについて交渉し、概ね理解を得ることができました。来年度以降も各種負担増について適切な回収に努めていきます。
持続的な企業価値の向上を実現するためには、モノづくりの本質追求によるお客様からの信頼獲得、お客様の要請に応えられる設計開発力及び成長市場の開拓が必要となります。当社は、当連結会計年度においても、生産・品質面で多くのお客様から表彰をいただくとともに、当社の強みであるCAE解析技術を進化させた最適化設計で、軽量化や低コスト化、生産性向上を実現し、様々な得意先から多くの新機種の引合いを受け、新たな受注を獲得しました。
財政状態については、当連結会計年度のNetDebt/EBITDAは、計画の3.6倍以下に対して実績が3.5倍になりました。計画値達成に向けて、有利子負債を抑制すべく「投資額のコントロール」に注力しました。一般投資、新機種向け投資を問わず、案件ごとに多面的な評価を実施して、投資額の抑制を徹底しています。また、当連結会計年度において、連結子会社エフアンドピーアメリカ・マニュファクチャリング・インコーポレーテッドに対する債権(貸付金)の株式化(デット・エクイティ・スワップ)を実施しました。当該連結子会社の今後の持続的な成長の実現に向け、借入金の減少、資本の充実による財務基盤の安定化を図っております。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度末と比べて2,033百万円増加した要因につきましては、減価償却費が増加したほか、棚卸資産の減少、仕入債務の増加によるものであります。
当社グループの資本の財源については、主として営業活動から得られた資金により対応し、必要に応じて銀行等からの借入により調達をしております。主な使途は新規受注への対応や生産能力維持・増強などに伴う設備投資、部品の量産のための諸費用、研究開発費などであります。また、資金の流動性については、当社において十分な借入枠を維持・継続しております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、会計上の見積りを行う必要があります。貸倒引当金等の各引当金の計上、固定資産の減損に係る会計基準における回収可能価額の算定、繰延税金資産の回収可能性の判断、退職給付に係る負債の算定等につきましては、過去の実績や将来の事業計画を基礎として、一定の仮定を用いて会計上の見積りを行っております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」)に記載しておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社が締結している技術援助等に関する契約は、次のとおりであります。
(注) ロイヤリティ又は技術援助料として、技術援助先の売上高に一定の料率を乗じた額を受け取っております。
当社グループの研究開発部門は、顧客である自動車メーカーが求めるサスペンションやサブフレーム、ペダルの先進設計や先進技術を先駆けて提案し、厳しい競争の中でも確実に受注が実現できるよう日々強力に推進しております。
当連結会計年度においては、当社の強みであるCAE技術を進化させた最適化設計で、ホンダ「N-BOX、CR-V、FREED、WR-V(Elevate)」、GM「Chevrolet Blazer EV、Equinox EV」のサブフレームやサスペンション等で大幅な軽量化や低コスト化、生産性向上を実現しました。また、日本をはじめ、北米、中国、フィリピンの研究開発部門が連携することにより、欧米系の自動車メーカーをはじめ新興EVメーカーからの受注や、新たな開発案件も順調に増加しております。より進化した受注活動を展開し、大幅軽量化、確実な機能や性能の見極め、スピード感を持った仕様提案、さらに安定立ち上げに向け開発を推進しております。
開発本部基本方針として「グローバルR&Dの英知の連鎖で新たなモビリティ社会のシャーシシステム開発メーカーになり、競合他社に圧倒的な軽量化とCostで差別化する」ことを推進しております。従来の単体部品の開発のみならずシステムとして最適な開発を目指し、更なる軽量化とコスト低減を目標に、グローバルな開発拠点で連携し、広い視野で開発に取り組んでおります。サステナブルモビリティ時代に向けた更なる軽量化対応として、独自な視点で関連サプライヤー及び協力メーカーと連携し、高ハイテン化・モジュール領域での最適構造化や新たな技術要素へも取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費は、一般管理費に計上した