第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、基本理念に基づき「食とくらしのグローバルイノベーター」をビジョンに掲げ、世界中の人々の安全で安定的な食の確保とくらしを守ることを使命とし、新たな価値の創造により持続可能な社会の実現に貢献していきます。

事業活動と社会活動の両立を推進することで、新たな価値の創造による安全性の高い、環境に配慮した優れた化学農薬や非化学農薬を創出し、安全で安定的な食の確保に貢献するとともに、これまで培われた技術を、人々のくらしを豊かにする新製品の創出へと価値を創造し、人類と地球が共生できる社会の実現を目指します。

当社グループは、サステナビリティ経営を推進し、新たな価値の創造を持続的に可能とする企業グループを目指し、業績の向上に努め、公正で活力のある事業活動を通じて社会的責任を果たし、社会に貢献することを目指します。

 

当社グループの中核事業である農薬事業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国の経済発展などを背景とした食料需要の拡大から、グローバルな農薬市場は拡大傾向にあります。一方、国内では、農業従事者の高齢化、後継者不足の深刻化、耕作放棄や転用などによる農地面積の減少、政府による農業資材費低減方針などを背景に、農薬市場は漸減傾向が継続するものと考えられます。また、創薬難度の高まりと農薬登録要件の増加により、新規薬剤開発コストが増大し、開発期間も長期化しております。さらに、各国の農薬登録制度における要件の厳格化、ジェネリック農薬との価格競争、ロシアのウクライナ侵攻に伴う電力高騰や鉱物資源の供給不足による原材料費や委託製造費の高騰、異常気象による農作物への影響など当社グループを取り巻く事業環境は一層厳しさを増しております。

今後の見通しにつきましては、中東情勢の緊迫化やロシアのウクライナ侵攻の長期化、中国経済の減速など、地政学リスクの顕在化による世界経済への影響や気候変動による影響等、不安定で不透明な状況が続くと想定しております。当社グループの中核事業である農薬事業は、食料安定供給を支える農業生産の根幹に関わるビジネスであるため、他の業種に比し影響は限定的であると考えられますが、生産、調達などへの直接的な影響や農業を取り巻く環境変化による間接的な影響が想定されます。

このような事業環境下、グループビジョン「Nichino Group-Growing Global」を掲げ、当社グループは中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」の最終年度となる当連結会計年度において、最終年度の数値計画である売上高890億円、営業利益64億円を達成しました。さらに、前年度に続き目標売上高1,000億円を達成することができました。さらには、ターゲット市場における重点剤の登録取得や開発推進、次世代事業の開発推進、スマート農業の海外展開拡大や外部事業者との提携、国内農薬販売の強化、業務改革・働き方改革の推進など、事業基盤の強化に一定の成果を上げることができました。また、株式会社ADEKAとの資本業務提携によるシナジーを早期に創出し発揮するべく活動を推進してきました。

2025年3月期から始まる新中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」では、サステナビリティ経営の推進を成長戦略とし、社会全体と当社グループの持続可能性の両立を実現することを目標に事業活動を推進します。具体的には、事業戦略の深化、環境経営の高度化、人的資本経営の推進に重点的に取り組みます。最終年度である2027年3月期には、営業利益108億円、売上高1,200億円の達成に加え、ROE8%以上を目標として資本コストを意識した経営に取り組んでまいります。

 

[ビジョン]
「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」

・カーボンニュートラルの実現

・環境調和型製品・技術の継続的な創出

・サステナブルな社会の実現に貢献

 

[中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)]
 呼称  「Growing Global for Sustainability(GGS)」

 数値計画

 

 

2027年3月期

計画(最終年度)

 

営業利益

108億円

 

売上高

1,200億円

 

ROE

8%以上

 

海外売上高

900億円

 

海外売上高比率

75%

 

設備投資

約85億円(3年間)

 

研究開発投資

約190億円(3年間)

 

 (注)  本資料に記載されている計画値および業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

基本方針・基本戦略

当社は、当社グループの社会における存在意義について改めて検証し、日本農薬グループ理念体系を改定するとともに、基本理念とバリュー、ビジョンについて見直しを行いました。新たにビジョンを「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」と設定し、中期経営計画では、サステナビリティ経営の推進を成長戦略として、社会全体と当社グループの持続可能性の両立を実現することを目標として事業活動と社会活動を推進します。

 


 

具体的には、以下に掲げる施策を着実に推進します。

・重点品目・新規事業の拡大

ベンズピリモキサン、ピリフルキナゾン、ピラフルフェンエチル、フルベンジアミド、トルフェンピラドを主要重点品目と定め、エリア戦略に基づき拡販に努めます。また、生物農薬や作物保護資材の収益拡大、選択と集中、リソースの最大活用を図ります。

・原価低減

原体製造の内製化を進め原価低減を図ります。

・エリア戦略に基づいた市場拡大

市場規模拡大が期待できるアジア太平洋、中南米を中心に拡販します。さらに今後成長が期待できる中東・アフリカ市場については事業基盤の整備を進めます。また、高単価かつ世界中で栽培されるSpecialty Crop(果樹・野菜)を中心に主要重点品目の登録、拡販を進めます。

・化学合成

パイプライン化合物(医・動物薬含む)の研究開発を加速します。また、研究開発リソースの選択と集中、グローバル開発・マーケティング戦略の強化、精緻化を進めます。

・バイオリソース活用

生物農薬や作物保護資材のポートフォリオ拡大を進めます。また、バイオベース原料を用いた有用化合物の製造に取り組みます。

デジタル技術の活用

AI診断ビジネスの収益を拡大します。また、デジタル技術の活用により業務効率化、合理化を実現します。

新たなビジネスモデルの取り込み・創出

外部価値の取り込みも含め、新規事業の育成、創出に積極的に取り組みます。

資本収益性の向上

資本コストを意識した経営に取り組みます。指標としてROE8%以上を目指します。

キャッシュフローの改善

主に在庫削減による改善を図ります。

固定費適正化(生産性向上)

管理経費や人件費など効率的な業務遂行により生産性を高め適正化を図ります。また、研究開発リソースの選択と集中や厳格な投資判断により適正化に努めます。

気候変動対応

継続的な施策により2030年GHG排出量23%削減(2020年対比)を目指します。

生物多様性への配慮

継続的なイノベーションにより「環境調和型製品*」のポートフォリオ拡大に努めます。

*人畜安全性や環境安全性が相対的に高い当社製品

人的資本経営の推進

従業員のWell‐Beingをテーマとし、人財開発の推進、健康経営、職場の環境整備に取り組みます。

・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進

当社グループの成長には、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進が必須であるという考えのもと、採用、育成・研修、人財活用、健康経営、職場環境について各指標を定め取り組みます。

コンプライアンス・リスクマネジメントの強化

当社グループの強靭化を推進するため、BCPをブラッシュアップします。また、重要法令にかかわる教育と管理の徹底、品質保証体制や情報セキュリティの強化を図ります。

グループ各社に対する監査の強化

内部監査の強化などによりグループガバナンスを強化します。

 

配当方針

累進配当を基本とし、中長期的には配当性向40%水準を目指します。

 

当社グループは、サステナビリティ経営の推進を成長戦略とし、継続的なイノベーションの創出を通じて事業戦略をさらに深化します。同時に、カーボンニュートラルの実現に向けた環境経営の高度化、人的資本経営の推進による企業価値の向上に取り組み、サステナブルな社会の実現に貢献します。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、サステナビリティ経営の拡充を図っていくため、取締役社長を議長とする執行役員会がサステナビリティ、コンプライアンス、リスクマネジメント、レスポンシブル・ケア推進ならびにJ-SOXに関する各活動を統括し、気候変動をはじめとする事業活動における重点課題を審議します。決定した事項は、取締役会へ報告を行います。

サステナビリティ委員会では、コンプライアンス、リスクマネジメントおよびレスポンシブル・ケア推進の3委員会の統括機能として各委員会の活動を間接的に支援するほか、サステナビリティに関する基本方針の立案、重点課題の策定、対応検討・支援・管理等を行います。

リスクマネジメント委員会では、当社リスクの把握ならびにリスクの低減策を講じています。気候変動がもたらすリスクを含め、リスク対策を進めることで、当社及び当社グループの社会的責任を果たすことに努めています。

(2) 気候変動対応に関する戦略

今後も世界の人口が増加すると予測されています。しかしながら、農地面積の拡大には限界があるうえ、農地拡大に伴う森林破壊等が懸念されています。また、気候変動による異常気象の増加等により、農地面積が減少する可能性があります。そのため、人口増加に伴う食料需要の拡大に対応するには、農薬等の農業資材を通じた農業生産の効率化と安定化が不可欠です。

当社グループは、「コーポレートビジョン」や「将来のありたい姿」「2030年のありたい姿」において技術革新による安定的な食の確保と豊かなくらしを守ることを基本方針として掲げており、今後も引き続き持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 


 

(3) 中核人財の多様性確保に関する戦略

当社は、従業員は事業活動における最も重要な経営資本であるとの考えのもと、人材を「人財」と位置づけ事業活動を行っております。加えて、当社は異なる経験・技能・属性を持つ人財が活躍し、多様な視点や価値観が存在することが、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなりうるとの認識に立ち、社内における女性活躍促進を含む多様性の確保を推進しております。事業のグローバル展開、研究開発型企業としての競争力強化のために、女性、外国人、キャリア採用者など、多様な人財の採用、管理職への登用を継続して進めております。さらに、従業員がそれぞれの個性や能力を活かし、個々人の価値観にあわせた働き方が実現できるよう、職場環境の整備と企業風土の変革に取り組んでおります。

また、中期経営計画Growing Global for Sustainability(GGS)において、当社の2030年のありたい姿を策定し、従業員の多様な価値観を、イノベーションの創出や経営の意思決定に活かすための人事施策を推進し、ありたい姿を実現いたします。

(4) 気候変動に関連する主要なリスクや機会

当社グループでは、「2030年のありたい姿」の実現に影響を及ぼす、気候変動に関連するリスクや機会について、2℃未満シナリオや4℃シナリオを参照し、シナリオ分析を行っております。主要なリスクや機会は、以下の通りです。

 

●リスク ●機会 影響度 極大:50億円超 大:5~50億円 中:0.5~5億円 小:0.5億円未満 (影響度の判断基準は売上高を基本とする)

リスク/機会

リスク機会の内容

影響度
(2030年)

参照シナリオ

リスク低減/機会活用に向けた対策

カーボンプライシングの導入

脱炭素社会の実現に向け、炭素税等のカーボンプライシングの導入が進み、財務的な負担が増加する恐れがあります。

2℃未満シナリオ
(IEA持続可能な開発シナリオ)

再生可能エネルギーへの転換やバイオ燃料の使用等を通じた中長期な計画に基づく総合的なGHG排出量の削減に取り組んでいます。

原材料の高騰

脱炭素に向けたエネルギー政策の変化によって、エネルギー需要やエネルギー供給の量が変化し、原材料の価格やエネルギーコストが高騰し、調達が困難となる可能性があります。

2℃超シナリオ
(IEA公表政策シナリオ)

原材料ソースの複数化によるリスク低減策やエネルギー消費の少ない生産設備への更新のほか、各国の省エネ関連施策の的確な把握・解析を通じて、サプライチェーン全体の観点から協働やパートナーシップの高度化に取り組んでいます。

エネルギーコストの増加

炭素集約製品への需要減少
脱炭素製品への需要拡大

顧客や販売パートナーからの環境配慮要請の高まりに伴い、多量の温室効果ガス排出を伴い製造された製品へのニーズが減少する可能性があります。
・一方、少ない温室効果ガス排出で製造された製品へのニーズが増加する可能性があります。

-

製造工程における合理化や革新的な製造技術の開発・導入検討を進めているほか、製造工程において少ない炭素排出量が期待できる生物農薬等の製品ラインナップに取り組んでいきます。

先進的取組による顧客からの評判向上

脱炭素に向けた取り組みや、充実した情報開示が顧客から評価され、評判が向上する可能性があります。

-

気候変動と農業や事業特性との直接的な関係性を踏まえて、的確な将来予測と中長期的な研究開発視点に基づく技術革新への取り組みを加速させ、適正な情報発信に取り組んでいきます。

投資家からのESG評価の向上

当社グループの炭素効率性の高さが投資家から評価され、ESG投資における評価が向上する可能性があります。

-

化学業界の中でも高いレベルにある当社グループの炭素効率性を維持・向上させるとともに、GHG削減策を含めたCSR優先課題への取り組み等に関して、積極的なESG経営の情報発信に取り組んでいきます。

農地面積減少による需要減少

気候変動等の影響により農地面積が減少し、農薬需要が減少する可能性があります。

2℃未満シナリオ
(IPCC SSP1)
4℃シナリオ
(IPCC SSP3)

化学農薬に加え、新たに生物農薬・バイオスティミュラント等の作物保護資材分野への事業展開やIT技術を駆使したスマート農業の促進を通じて、総合的な作物保護の観点から農地保全および農業生産性の向上に貢献していきます。

農作物生産量の増加による需要増加

世界的な人口の増加により、農作物の需要や生産量が増加し、収量増加に必要な農薬需要が増加する可能性があります。

極大

病害虫増加等による需要増加

気温の上昇等により、病害虫や雑草による被害が増加し、農薬需要が増加する可能性があります。

4℃シナリオ
(IPCC SSP3)

農業生産現場に立脚したデータ・ドリブンなマーケティング戦略の構築を進めており、病害虫・雑草の発生や被害の変化、それに伴う現場ニーズの変化を迅速・的確に捉えることで生産者ニーズに合致した製品やサービスの提供に取り組んでいます。

 

 

 

(5) 気候変動対応に関する指標・目標

当社グループは、低炭素社会への取り組みとしてCO2排出量を前年比で削減、2030年にグループ全体(この項において「日本農薬及び製造拠点を有する国内外の連結子会社」を指します。)において2020年比23%削減(Scope1+2)、2050年にインドを除くグループ全体でカーボンニュートラル、2070年にグループ全体でカーボンニュートラルを目指すという目標を立てて活動を継続しています。

2024年3月期の日本農薬及び製造拠点を有する国内の連結子会社における原油換算エネルギー使用量は、生産量の減少等により前期比16.1%削減しましたが、CO2の排出量は、関西以西の電力会社の排出係数増加等により前期比3.2%の削減に止まりました。なお、インド及びブラジルの生産拠点を加えたCO2排出量は、前期比10.9%削減となりました。

(6) 中核人財の多様性確保に関する指標・目標

① 女性活躍推進への対応

当社は女性活躍推進のための行動計画を策定し、女性活躍を積極的に推進しております。

2011年4月の女性管理職比率は2.0%でしたが、女性従業員に対する管理職としての育成や意識付けを行うとともに、男性管理職の女性活躍推進への意識改革を推進した結果、2024年3月には10.3%に向上しております。また、管理職候補となる係長相当職の女性比率は2024年3月現在27.1%に達し、早期に管理職登用するだけでなく部長職や課長職への女性従業員の登用も進めております。加えて、今後は女性役員の内部登用を進めていくために、女性管理職比率をさらに高めると共に、経営者としての育成を進めてまいります。具体的な数値目標として、女性管理職比率を2027年3月13%、2031年3月22%に設定しております。さらに、この数値目標を達成するため管理職昇格候補者の母集団としての、採用者における女性比率はこれまでの30%から50%へ目標を引き上げることにいたしました。

② 外国人の登用

ビジョン「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」実現に向けた対応を進めております。その中で、2011年と2021年に外国籍の海外グループ会社社長を当社執行役員に登用しました。引き続き、海外グループ会社を成長させるとともに、執行役員としての資質を備えた人財を育成してまいります。加えて、外国人の役員への内部昇格に向け、管理職登用や、積極採用を進めてまいります。

③ キャリア採用者の活用

イノベーションは多様性から引き起こされるとの考え方のもと、当社は他社で経験を培った人財を積極的に採用しております。当社従業員のうち、キャリア採用者がおよそ1/3を占めており、役員、管理職に占めるキャリア採用者の割合も同程度の比率となっております。引き続き、経営者、特定分野のスペシャリスト、事業拡大のための新領域の専門家、DX人財などのキャリア採用を進めてまいります。また、キャリア採用手法の多様化を目的に、従業員の紹介や自ら当社へ入社を希望する方が事前にキャリアと希望職種を登録できるキャリアエントリー制度、さらにやむを得ない事情で退職した、または他企業で経験を積んだ元社員が再度入社するジョブリターン制度を2024年4月より導入し、新たな価値観を取り入れ社内を活性化させてまいります。

④ 中核人財の多様性確保に関する指標・目標の対象範囲

当社グループは、中期経営計画Growing Global for Sustainability(GGS)において、当社の2030年のありたい姿を策定し、従業員の多様な価値観を、イノベーションの創出や経営の意思決定に活かすための人事施策に落とし込み推進しておりますが、必ずしも連結グループに属する全ての会社において関連する指標のデータ管理が行われていないことから、本項では、日本農薬単体の指標・目標を開示しております。 

 

3 【事業等のリスク】

当社は、グループ全体のリスク管理の基本方針とその管理体制を「リスクマネジメント規定」において定め、部門を統括する常勤取締役及び執行役員から構成されるリスクマネジメント委員会を設置し、リスクの把握、リスクの顕在化予防、顕在化したリスクの影響を最小限に留めるリスク発生対処等を行なっています。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅したものではありません。

 

1 経済状況等

当社グループは国内のみならず海外にも輸出し、また販売拠点を有しており、輸出、販売している殆どが農薬製品、農薬用原体であります。このため国内外の政治・経済情勢および農業情勢、市場動向、天候、病害虫の発生状況、公的規制などによって、直接的、間接的な影響を受けます。

 

2 原材料の調達について

当社グループの事業で用いる農薬原体、原料、副原料等の一部については、コストダウンを推進した結果、特定の地域や購入先に集中する傾向にあり、年間購入総額における中国依存度は高い水準にあります。当社グループでは原材料の調達先の複数化を進めることによりリスクを低減するよう取り組んでいますが、相手国での法規制の強化や購入先の操業事故等により調達に制約を受けた場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3 原材料の価格変動について

当社グループの事業で用いる農薬原料、副原料等の購入価格は、国内、国外の市況、為替相場の変動および原油、ナフサ価格動向などの影響を受けます。業績に及ぼす影響は、購入価格の引下げ、販売価格への転嫁、為替リスクヘッジなどにより極力回避していますが、予期せぬ事態の場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 為替の変動について

当社グループの事業には、農薬原体を含む原材料の輸入、製品の輸出とインド、ブラジル、米国などにおける生産、販売が含まれており、外貨建てとしては米ドル、インドルピー、ブラジルレアルが主なものであります。これらの外貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のため円換算されていますが、換算時の為替レートにより元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても円換算後の価格が影響を受ける可能性があります。

 

5 新製品の開発

新製品の開発には、多大な技術的、財務的、人的資源と長い時間を要します。この間の市場環境の変化、技術水準の進捗、規制動向の変化などにより開発の成否、将来の成長と収益性に影響を受ける可能性があります。

 

6 災害・事故について

当社グループでは安全で安定的な食の確保と豊かな緑と環境を守ることを使命として、国際標準に基づく品質、環境管理システムにて操業、運営しています。しかしながら、大規模地震や台風などの自然災害による生産設備への被害、工場における事故などのトラブルにより工場停止、原料などの供給不足、品質異常などの不測の事態が発生する可能性があります。これらのリスク回避として、厳格な原材料の受け入れ検査、製品の品質チェック、定期的な設備点検などを実施していますが、自然災害、事故などによる影響を完全に排除する保証はなく、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

7 法的規制

当社グループの事業は、国内外での販売、輸出において農薬取締法、通商関連法、独占禁止法、製造物責任法等様々な法規制、政府規制を受けています。当社グループでは、コンプライアンス委員会活動を通じてコンプライアンス強化に努め、適切に対応すべく取り組んでいますが、今後、法的規制を遵守できなかった場合や、規制の強化によっては当社グループの社会的評価や業績に影響を及ぼす恐れがあります。特に近年、農薬に関する法規制が世界的に強化されており、農薬原体等の新規登録の遅延、中止、既存登録の抹消の処分を受けた場合、当社グループの事業展開に支障をきたすとともに業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

8 企業買収・事業投資について

当社グループは、戦略的施策の一環として、グローバルベースで企業買収・事業投資を実施しています。実施に際しては、対象企業や事業について詳細なデューデリジェンスを行い、リスク回避に努めていますが、将来の不確実な経済条件及び経営環境の変化により期待する成果が得られないと判断された場合には、関係会社株式の評価損やのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

9 訴訟に関わるリスクについて 

当社グループは、国内及び海外事業に関連して、取引先や第三者との間で、訴訟その他法定手続きが発生するリスクがあります。重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における世界経済は、欧州では高インフレによる金融引き締めの影響から景気は弱含みの状態にありましたが、米国では良好な雇用情勢により個人消費が堅調に推移し景気の拡大が続きました。一方、わが国では、企業収益や雇用情勢に改善の動きがみられたものの、世界的な金融引き締めや中国経済の持ち直しの動きに足踏みがみられたことなどから、景気は依然として不安定な状況で推移しました。

農業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国の経済発展などを背景とした農産物需要の拡大から、農業生産は引き続き伸長しました。世界の農薬市場は、米州などの需要増加からここ数年拡大基調にありましたが、2023年は、多くの地域で天候不順の影響を受けたことや、汎用的に使用される非選択性除草剤など一部品目の流通在庫増加に伴い主要地域で価格が大幅に下落したことなどから、成長が鈍化しました。

当社グループの主な販売地域に目を転じますと、国内では、猛暑など天候不順による病害虫の少発生や過年度の流通在庫の影響などから、農薬需要は弱含みで推移しました。

北米では、カリフォルニア州など一部地域で寒冷な気候が続き、例年よりも害虫の発生が少なかったことに加え、流通在庫の影響などから農薬需要は弱含みで推移しました。中南米では、ブラジルで流通在庫の影響から非選択性除草剤等の販売が減少し、価格も大幅に下落しました。また、アジアでは、インドでの大規模な干ばつをはじめとした天候不順の影響から農薬需要は弱含みで推移しました。一方、欧州では、一昨年の干ばつの影響からの回復もあり農薬需要は堅調に推移しました。

このような状況下、当社グループは中期経営計画「Ensuring Growing Global2(EGG2)」に取り組み、収益性の向上と技術革新・次世代事業の確立および持続的な企業価値の向上を目指しました。

当連結会計年度における主な取り組みとして、2023年4月には、化学合成農薬以外の事業ポートフォリオ拡充を目的として、連結子会社のNichino Europe Co., Ltd.が、英国のアジュバント等の添加剤やバイオスティミュラントの製造・販売会社であるInteragro (UK) Ltd.の全発行株式を取得しました。また、当社が得意とする果樹・園芸分野向け農薬の需要が高いチリでの事業活動強化・拡大を目的として、2023年10月、同国に現地法人を設立しました。さらに、インドでは連結子会社のNichino India Pvt. Ltd.において、新規水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンの新たな混合剤を登録し、2023年12月より販売を開始したほか、複数の農薬原体を製造できるマルチパーパスプラントが竣工し、稼働を開始しました。

当連結会計年度における当社グループの売上高は、中核事業である農薬事業でインドにおける自社開発品目の販売拡大などにより、1,030億33百万円(前期比9億42百万円増、同0.9%増)となりました。海外売上高は738億85百万円、海外売上高比率は71.7%となりました。利益面では、ブラジルでの一部ジェネリック品目の価格下落の影響などから、営業利益は74億38百万円(前期比13億円減、同14.9%減)、経常利益は59億32百万円(前期比18億47百万円減、同23.7%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、ブラジルでの法人税額の減少などにより、47億77百万円(前期比2億88百万円増、同6.4%増)となりました。

セグメントの業績を示すと、次のとおりです。

 

① 農薬事業

農薬事業の売上高は975億52百万円(前期比9億99百万円増、同1.0%増)、セグメント利益(営業利益)は71億60百万円(前期比12億49百万円減、同14.9%減)となりました。

 

② 農薬以外の化学品事業

農薬以外の化学品事業の売上高は37億56百万円(前期比9百万円減、同0.3%減)、セグメント利益(営業利益)は8億89百万円(前期比58百万円減、同6.2%減)となりました。

 

③ その他

その他の売上高は17億23百万円(前期比47百万円減、同2.7%減)、セグメント利益(営業利益)は3億31百万円(前期比1百万円増、同0.3%増)となりました。

 

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度に比べ、213億31百万円増1,579億83百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ、140億60百万円増775億87百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べ、72億70百万円増803億96百万円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ48億97百万円増加し、当連結会計年度末は192億64百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の減少は、3億44百万円となりました。これは税金等調整前当期純利益を58億58百万円計上したものの、売上債権の増加額66億56百万円による資金の減少があったことが主な要因であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は、48億8百万円となりました。これは関係会社株式の取得による支出26億21百万円、有形固定資産の取得による支出15億95百万円があったことが主な要因であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の増加は、98億35百万円となりました。これは長期借入金の返済による支出40億62百万円があったものの、長期借入れによる収入93億43百万円、短期借入金の純増額61億52百万円があったことが主な要因であります。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

60,995

96.4

農薬以外の化学品事業

831

115.9

その他

404

61.8

合計

62,232

96.3

 

(注) 金額は、製品製造原価によっています。

 

(2) 商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

18,769

92.9

農薬以外の化学品事業

1,302

102.0

その他

54

47.0

合計

20,126

93.2

 

(注) 金額は、仕入価格によっています。

 

(3) 受注実績

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

農薬以外の化学品事業

その他

555

90.9

228

192.8

合計

555

90.9

228

192.8

 

 

(4) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

農薬事業

97,552

101.0

農薬以外の化学品事業

3,756

99.7

その他

1,723

97.3

合計

103,033

100.9

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しています。

 2 販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の販売先はありません。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

当社グループの中核事業である農薬事業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国の経済発展などを背景とした食料需要の拡大から、グローバルな農薬市場は拡大傾向にあります。一方、国内では、農業従事者の高齢化、後継者不足の深刻化、耕作放棄や転用などによる農地面積の減少、政府による農業資材費低減方針などを背景に、農薬市場は漸減傾向が継続するものと考えられます。また、創薬難度の高まりと農薬登録要件の増加により、新規薬剤開発コストが増大し、開発期間も長期化しております。さらに、各国の農薬登録制度における要件の厳格化、ジェネリック農薬との価格競争、ロシアのウクライナ侵攻に伴う電力高騰や鉱物資源の供給不足による原材料費や委託製造費の高騰、異常気象による農作物への影響など当社グループを取り巻く事業環境は一層厳しさを増しております。

なお、今後の見通しにつきましては、中東情勢の緊迫化やロシアのウクライナ侵攻の長期化、中国経済の減速など、地政学リスクの顕在化による世界経済への影響や気候変動による影響等、不安定で不透明な状況が続くと想定しております。当社グループの中核事業である農薬事業は、食料安定供給を支える農業生産の根幹に関わるビジネスであるため、他の業種に比し影響は限定的であると考えられますが、生産、調達などへの直接的な影響や農業を取り巻く環境変化による間接的な影響が想定されます。

このような事業環境下、グループビジョン「Nichino Group-Growing Global」のもと、当社グループは中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」に取り組み、収益性の向上と技術革新・次世代事業の確立および持続的な企業価値の向上を目指して活動しました。当連結会計年度における当社グループの売上高は1,030億33百万円(前期比9億42百万円増、同0.9%増)となりました。利益面では、営業利益は74億38百万円(前期比13億円減、同14.9%減)、経常利益は59億32百万円(前期比18億47百万円減、同23.7%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は47億77百万円(前期比2億88百万円増、同6.4%増)となりました。

なお、セグメント別の業績は以下のとおりです。

 

(農薬事業)

国内農薬販売では、天候不順による病害虫の少発生や過年度流通在庫の影響を受けたものの、前連結会計年度における価格改定の効果が通年にわたり寄与したほか、ベンズピリモキサン(商品名「オーケストラ」)をはじめとする主力自社開発品目の普及拡販に努めた結果、国内農薬販売全体の売上高は前期を上回りました。

海外農薬販売では、世界最大の農薬市場であるブラジルで、競争激化に伴う一部ジェネリック品目の価格下落の影響などから、販売が低迷しました。北米では、寒冷な気候が続いた影響に伴う害虫の少発生により、上期は販売が低迷しましたが、下期は当用期に向けた需要が高まったことから、販売は総じて堅調に推移しました。欧州では、南欧地域でダニが多発生した影響により殺ダニ剤フェンピロキシメートの販売が好調だったことなどから、販売が堅調に推移しました。アジアでは、インドで雨季の到来遅延など天候不順の影響はあったものの、園芸用殺虫剤ピリフルキナゾンなど自社開発品目の普及を進める販売戦略が奏功し、販売が堅調に推移しました。さらに、為替が円安基調で推移したこともあり、海外農薬販売全体の売上高は前期を上回りました。

以上の結果、農薬事業の売上高は975億52百万円(前期比9億99百万円増、同1.0%増)、セグメント利益(営業利益)は、ブラジルにおける収益性悪化の影響から71億60百万円(前期比12億49百万円減、同14.9%減)となりました。

 

(農薬以外の化学品事業)

化学品事業では、シロアリ薬剤分野の販売が好調に推移しました。医薬品事業では、外用抗真菌剤ルリコナゾールの中国販売終了により売上高が伸び悩みました。

以上の結果、農薬以外の化学品事業の売上高は37億56百万円(前期比9百万円減、同0.3%減)、セグメント利益(営業利益)は8億89百万円(前期比58百万円減、同6.2%減)となりました。

 

(その他)

緑化造園工事事業では、造園工事で前期まで計上されていた大型工事の欠落等により売上高が減少しました。

分析事業では、食品分野等の受注が伸長した結果、売上高が増加しました。

以上の結果、その他の売上高は17億23百万円(前期比47百万円減、同2.7%減)、セグメント利益(営業利益)は3億31百万円(前期比1百万円増、同0.3%増)となりました。

 

(2) 目標とする経営指標の達成状況等

当社グループは、当社の将来のありたい姿としてグルーブビジョン「Nichino Group-Growing Global」を策定し、新規農薬、医・動物薬など、顧客ニーズに適う先進技術を提供し農業生産や健康的な生活を支えること、ならびに低環境負荷製品、省力化技術など、SDGsに資する製品、サービスを拡大し持続可能な社会に貢献することを目指しております。このグループビジョン達成に向けた将来のありたい姿として、当社グループは事業規模として営業利益率15%以上、売上高2,000億円を目指しております。その達成に向けた数値目標として、2030年度に営業利益率10%以上、売上高1,250億円を実現し、魅力ある新製品技術、CSR(SDGs)経営を通じてグローバルで“ニチノーブランド、ニチノー品質”が浸透している企業を目指すことを定めております。

2022年3月期を初年度とする中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」においては、最終年度となる2024年3月期の目標売上高1,000億円、計画数値として営業利益64億円、売上高890億円を設定し、収益性の向上と技術革新・次世代事業の確立および持続的な企業価値の向上を図る計画としております。

最終年度となる当連結会計年度においては、ターゲット市場における重点剤の登録取得や開発推進、次世代事業の開発推進、スマート農業の海外展開拡大や外部事業者との提携、国内農薬販売の強化、業務改革・働き方改革の推進など、事業基盤の強化に一定の成果を挙げることができました。また、株式会社ADEKAとの資本業務提携によるシナジーを早期に創出し発揮するべく活動を推進してきました。

当連結会計年度においては、上記計画値の達成に向け業績向上に努めてまいりました。その結果、海外農薬販売でインドでの自社開発品目の販売が拡大したほか、為替が円安基調で推移したことなどにより、売上高、営業利益とも中期経営計画の計画値を上回りました。さらに、最終年度の目標売上高1,000億円についても2期連続で達成することができました。

 

(3) 財政状態の状況

①事業全体の状況

当連結会計年度末の総資産は、売上債権が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ、213億31百万円増1,579億83百万円となりました。

負債につきましては、短期借入金及び長期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ、140億60百万円増775億87百万円となりました。

純資産につきましては、前連結会計年度末と比べ、72億70百万円増803億96百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比べ、2.5%減の49.4%になりました。

 

 

②セグメント情報に記載された区分ごとの状況

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ168億52百万円増加し、1,454億35百万円となりました。

 (農薬事業)

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ170億26百万円増加し、1,402億95百万円となりました。

 (農薬以外の化学品事業)

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ1億17百万円減少し、30億50百万円となりました。

 (その他)

当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ55百万円減少し、20億89百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④資本の財源および資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、新剤開発・登録等にかかる研究開発費や開発途中の剤の生産設備の設置及び既存剤の生産効率化にかかる設備投資であり、これらを主に自己資金並びに金融機関からの借入金により調達しています。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は192億64百万円であり、十分な手元流動性を確保しています。

 

⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

契約先

契約年月日

有効期限

契約の内容

日本農薬㈱
(当社)

全国農業協同組合連合会

2003年12月11日

2003年10月1日から2004年9月30日までとし、文書による別段の意思表示なき時は1年ごとの自動延長。

農薬製品の売買に関する売買基本契約(更改)。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは「研究開発型企業」として、技術革新をすすめ、安全性の高い環境に配慮した新製品の開発を行っています。

当社グループにおける研究開発費の総額は、5,448百万円です。

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりです。

 

(1) 農薬事業

・新規開発品目

新規汎用性殺虫剤(開発コード:NNI-2101)は、本年度も一般社団法人日本植物防疫協会が実施する新農薬実用化試験に供試し、農薬登録申請に必要な有効な試験事例を集積しました。これら知見により幅広い殺虫スペクトル、既存剤に感受性の低下した害虫に対する有効性、優れた浸透移行性など、本剤の特長を示すことができたと考えております。また、多くの害虫や作物を対象に様々な処理方法で実用性が確認されつつありますので、利便性の高い害虫防除資材となるように農薬登録申請を準備中です。本剤はグローバル市場でも広く開発を検討しており、韓国やインドなど登録性や市場性の見込まれる国や地域から順次、開発を開始しております。さらに他の新規パイプライン候補剤としては殺虫剤1剤を開発検討中です。

水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンは、日本ではオーケストラフロアブルに加えて混合剤(オーケストラロムダンモンカットエアー、オーケストラスタークルエアー、オーケストラロムダンモンカット粉剤DL)の販売を開始し、さらに新規混合剤(開発コード:NNIF-2241フロアブル)の開発も開始しました。これら製品ラインアップの拡充により本分野の市場シェア拡大および水稲本田散布剤としてのブランド確立を進めてまいります。また、水稲の農薬市場が大きいインドでは、既に販売を開始したOrchestra剤に加え、速効性に優れるピメトロジンとの混合剤Orchestra Duet(2023年6月登録取得)の販売を開始しました。インドでも本剤ビジネスの最大化を目指して混合剤開発を進めてまいります。他の国ではベトナムでも2023年9月に本剤の登録を取得しており、水稲栽培の盛んなアジア広域で単剤と混合剤を合わせて市場ニーズに沿った製品の開発を進めてまいります。

汎用性園芸殺菌剤ピラジフルミドは、国内では省力的で使い易い製品を目指して、無人航空機散布やセルトレイ処理など幅広い処理法での適用拡大(登録内容の拡大)を進めました。また、各国での開発も進めており、カナダ、ヨルダン、ペルーでは新規に登録を取得し、米国、メキシコ、コロンビア、エクアドル、チリ、サウジアラビア、ベトナムでは登録申請中です。今後もさらなるビジネス拡大を目指し、ブラジルおよびその他の地域でも開発の可能性を検討してまいります。

 

・国内製品

2022年度から開発を開始した園芸用殺虫混合剤(開発コード:NNI-2210)および園芸用殺菌混合剤(開発コード:NNF-2220)は、2024年内に登録申請の予定(2025年登録見込)であり、本製品の開発により国内製品ポートフォリオの充実や当社市場シェアの拡大を図ります。また、コルテバ・アグリサイエンス日本株式会社およびコルテバ・ジャパン株式会社(以下、両社あわせて「コルテバ社」といいます。)とは新規コルテバ社製品の導入や、それら有効成分を含む混合剤の開発について検討しております。既存剤では、ドローン散布も可能な無人ヘリ航空機散布やセルトレイ処理など省力防除技術に関する適用拡大を積極的に進めており、フェニックス顆粒水和剤、アクセルフロアブル、コルト顆粒水和剤、パレード20および15フロアブルなどの適用拡大を行いました。また、和歌山県のももで問題となっているクビアカツヤカミキリに対して、同県からの早期登録要望を受けて殺虫剤アクセルフロアブルの適用拡大を申請しており、2024年内の登録取得を見込んでいます。

 

・海外製品

殺虫剤フルベンジアミドはさらなるビジネス拡大に向けて検討を進めており、市場の大きなブラジルに加えてアルゼンチン、ザンビア(2023年9月)でも登録を取得し、販売を開始しました。また、フィリピンとエクアドルで販売開始に向け準備中、コロンビア、アルジェリア、ジンバブエでは登録申請中であり、順次、販売国を拡大してまいります。

殺虫剤トルフェンピラドは、新たにオマーン、パレスチナ、ベトナムで販売を開始しました。アルジェリア、サウジアラビアでも販売開始に向けて準備中であり、エクアドル、ホンジュラス、エルサルバドル、ベリーズ、チュニジアでは登録審査中です。

殺虫剤ピリフルキナゾンは新たにオマーン、サウジアラビア、ドミニカで販売を開始しました。また、カナダ、チュニジア、イスラエル、エルサルバドルで登録を取得し、2024年の販売開始を目指して準備中です。ニカラグア、チリ、ニュージーランド、ベトナム、台湾では登録審査中であり、今後も登録国や地域拡大に向けた取り組みを進めます。

殺ダニ剤ピフルブミドはタイで登録を取得(2023年3月)し、販売開始に向けた準備を進めております。また、ベトナム、エジプトで登録申請中であり、その他の国においても開発の可能性を見極めるための評価を継続しています。

殺菌剤イソプロチオランは水稲いもち剤として普及販売していますが、中南米、フィリピン等ではバナナ分野への適用に向けて開発を進めています。また、その他に殺虫剤ブプロフェジン、殺虫・殺ダニ剤フェンピロキシメート、殺菌剤フルトラニル、除草剤ピラフルフェンエチル、除草剤オルトスルファムロンについてもグローバルでの登録維持や登録拡大検討を進めており、ビジネスの維持・拡大を図っています。

 

(2) 農薬以外の化学品事業

当社がこれまで培ってきた創農薬技術を活用し、動物薬・医薬の探索研究にも注力しております。他社との共同研究を含む複数の有望プロジェクトを既に自走させており、当社ライフサイエンス分野の柱とすることを目標に研究を進めております。特に株式会社ADEKAとの共同研究では、坑寄生虫薬として期待される化合物群を見出し、本化合物群に関する特許出願4報が世界知的財産機構(WIPO)より国際公開されました。本化合物の動物薬メーカーへの導出を開始し、パイプラインの継続的な拡充に向けて本共同研究を加速していきます。

 

(3) その他

特記すべき事項はありません。

 

当社は引き続き研究開発型企業として、法令およびその精神遵守のもと、技術革新により安全で環境に調和した新製品を市場に提供することにより、顧客ニーズに応えるとともに、安定的な農産物生産を通してサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。また、新たに策定した中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」に基づきグローバル展開を加速し、各国農薬登録規制に対応した新規有効成分を継続的に創出していくとともに、将来の市場環境変化を見据えた事業領域の拡大に挑戦してまいります。