第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは「ありがとうをX-Tech(クロステック)する」を企業理念に、「Digital Inclusion(デジタルインクルージョン)」をビジョンに掲げ、テクノロジーを通じて、世界中の人々が参加し、平等に利益を受ける機会を提供することで社会に希望を与える世界を目指しております。

 

(2) 経営戦略

当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症を機に、大企業に加え中堅・中小企業においてもテレワークが定着し、デジタルトランスフォーメーション(DX)への機運の高まりによる営業DX化が広がってまいりました。また、生産労働人口の減少に伴うIT人材の採用課題やIT人材不足への懸念が増加している状況において、当社グループの提供サービスへの需要は、より一層高まっているものと認識しております。

このような状況下において、当社は2023年4月3日付で単独株式移転の方式により設立され、持株会社体制へ移行したことにより、事業ポートフォリオの再構築を進め投資利益率と成長性を重視する経営方針を明確にしました。成長性、収益性の低い不採算事業・サービスからの撤退、新規事業の立ち上げにより経営資源の適正配分を行い、経営における選択と集中を進めました。

 

(3) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループが経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、営業利益率、及びROEを重視しております。

 

(4) 経営環境、事業上及び財務上の対処すべき課題

当社グループでは次の課題を掲げて計画的かつ迅速に取り組んでまいります。

① サービスシェア・収益力の拡大

当社グループは、継続的かつ安定的に収益を確保できるサブスクリプションモデルのSaaSを軸とした中堅・中小企業のDX支援を主力事業としております。そのため、当社グループが提供するSaaSの顧客企業数を加速度的に増加させることが重要であると認識しております。「SDGs」等、社会的企業価値向上に向けた取り組みを啓蒙し、SaaS提供を通じて企業のDX化を加速し、顧客を成功へ導くカスタマーサクセスにより収益の安定と向上を図ってまいります。

また、持続的な事業成長の実現に向けて、既存SaaSの成長に加えて、製品・サービスシナジーを発揮する新規事業等の展開も積極的に検討してまいります。

 

② IT人材の確保と育成

当社グループは、顧客企業のニーズをタイムリーに製品・サービスに反映させることで、他製品・サービスとの差別化を図ってまいりました。将来にわたり顧客企業から支持されるには、販売・サポート体制に加え、質の高い技術開発体制の構築が重要であると認識しております。このため、即戦力としての中途採用と中長期的な事業拡大に不可欠な新卒採用を、積極的に進めてまいります。

また、優秀な人材の確保及び維持のために、働きやすい環境整備や人事制度の構築、教育・研修などを積極的に進めてまいります。

 

③ サービス開発力の強化

顧客企業に当社グループのサービス・プロダクトを継続的にご利用いただくために、顧客のニーズや潜在的な要望を的確に捉え、機能優位性を維持する先端技術を積極的に取り入れた開発技術体制が求められております。このため、優秀なエンジニアの確保に加え、グループシナジーを通じたエンジニア交流等、開発リソースの確保に努めてまいります。

また、サービス・プロダクトを安心してご利用いただけるよう、データは日本国内の強固なデータセンターで管理し、顧客の増加に合わせたサーバー増強等を継続的に行い、より一層の安定稼働に向けた体制の強化に取り組んでまいります。

 

④ コーポレート・ガバナンス体制及び内部統制の強化

当社グループが継続的な成長を続けることができる企業体質の確立に向けて、コーポレート・ガバナンスの更なる強化と内部管理体制の強化が重要な経営課題の一つであると認識しております。コーポレート・ガバナンスに関しては、その強化への取り組みを推進し、株主、従業員、取引先等全てのステークホルダーに対して経営の適切性、健全性を最大限に発揮してまいります。

内部管理体制については、業務運営上のリスクを把握してリスク管理を適切に実施するとともに、定期的な内部監査の実施によるモニタリング機能の強化を図ってまいります。また、業務の効率化や合理化並びにリスク最小化を追求し、内部統制の強化を進めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、「ありがとうをX-Tech(クロステック)する」をグループ企業理念に掲げ、Digital Inclusion(デジタルインクルージョン)~テクノロジーを通じて、世界中の人々が参加し、平等に利益を受ける機会を提供することで社会に希望を与える~のビジョンに基づき、持続可能な社会の実現に向けて、テクノロジーを通じた環境・社会課題の解決と社会の発展に貢献することで、持続的成長と企業価値向上の実現を目指しております。その実現に向けて、様々なステークホルダーとの連携を強化し、サステナビリティを意識した経営を実践しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

ガバナンス

当社グループは、経営規模の拡大と組織文化の醸成を両立させながら、株主をはじめとした様々なステークホルダーの期待と信頼に応え、企業価値の向上を図るためには、サステナビリティを意識したコーポレート・ガバナンスの構築が不可欠であると考えております。その実現のため、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応しながら、経営の健全性・透明性を確保すべく、経営管理体制の強化、充実に努めております。

取締役会において、経営の重要な意思決定及び業務執行の監督を行うとともに、監査等委員会及び内部監査室により、職務執行状況等の監査を実施しております。継続して公正で透明性の高い経営活動を推進するため、コーポレート・ガバナンス体制の整備・強化に取り組んでおります。

 

戦略

当社グループは、持続的な成長や企業価値の向上を実現していく上で、人材は最も重要な経営資源であると考えております。毎年積極的な採用を行い、多様性に富んだ優秀な人材を採用することで、事業の成長に取り組める人材の確保と継続的な雇用の創出に努めております。

また、従業員の働き方については、ライフステージの変化や多様化する価値観に合わせて、生産性高く働ける仕組みを整備し、様々なバックグラウンドをもつ従業員が、それぞれの能力と個性を発揮し、活躍できる環境を整え、柔軟な働き方の実現に向けた取り組みを進めてまいります。

 

<人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略>

当社グループは、人材の多様性や変化の激しい市場環境に対応し、常に迅速に事業成長できる組織への力に変えるため、女性、外国人、様々な経験を持つキャリア採用者など多様な人材の登用、起用を積極的かつ継続的に行ってまいりました。また、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備などを行ってまいりました。

具体的には、働く時間や場所の柔軟化(フレックスタイム制、テレワーク等)、自律的なキャリア構築支援の取り組みとして採用募集しているポジションに対し、社員が自由に応募することができる社内公募制度、グループ会社間におけるグループ転籍制度などを実施しております。また、階層別研修や社内研修制度の充実を図り、全社的な人材育成や成長支援のためのさまざまな取り組みを実施してまいります。

今後も、従業員の誰もが当社グループで働くことに価値とやりがいを感じ、成長の機会や自分らしい人生を歩めるよう、様々な取り組みを行うとともに、従業員の成長を社会へ還元していく意識改革を推進してまいります。

 

リスク管理

当社グループは、経営戦略および事業戦略と連動して、重要なリスクへの対応力を高めるために必要な措置を講じております。当社グループでは事業運営に関し、顧客の重要な情報を保有しております。また、当社グループSaaS・サブスクサービスの継続利用の前提としてセキュリティの確保が必要不可欠であるため、リスクの中でも、特に情報セキュリティリスクを重視しております。当社は、ISO27001(ISMS認証)を取得しており、継続的なセキュリティマネジメント体制を構築し、定期的にリスクの分析・評価及びモニタリングを行うことでリスクの低減を図っております。また、役員及び従業員が情報セキュリティ方針を遵守・運用するため、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)管理責任者を指名し、情報セキュリティ委員会を設置し、戦略的なリスクマネジメントを推進することで、企業価値を高めることに寄与しているものと考えております。

 

指標及び目標

当社グループでは、社内で意思決定に関わる従業員の多様性向上のために、管理職に占める女性労働者の割合を増やすことが重要であると考え、その割合について、労働者に占める女性の割合と同水準にすることを目標として取り組んでまいります。

指標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合(%)

0.0

労働者に占める女性の割合(%)

23.4

役員に占める女性役員の割合(%)

18.2

 

 

また、男性従業員が育児休業を取得することで、男性従業員の育児参加だけでなく、その配偶者の育児負担を軽減し、配偶者のキャリア形成を支援することができるものと考え、男性従業員向けに育児休業制度の啓蒙活動を継続し、男性労働者の育児休業取得率の政府目標を達成することを目指してまいります。

指標

実績(当事業年度)

男性労働者の育児休業取得率(%)

100.0

女性労働者の育児休業取得率(%)

100.0

 

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には以下のようなものが挙げられます。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、重要であると考えられる事項につきましては、これらのリスク発生の可能性を十分認識した上で発生の回避及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で投資判断を行う必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 市場動向に関する事項

① 中小中堅企業向けサービス市場

当社グループの中小・中堅企業向けSaaSあるいはサブスクリプションサービスにおいては、数多くの競合が存在しております。

当社グループは、これまで培ってきたノウハウを活用するとともに、顧客企業のニーズへの対応や新たなサービスの開発に注力いたしますが、画期的なサービスを提供する競合他社や参入企業等との競争が激化し、当社グループの優位性が損なわれた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② SES(システムエンジニアリングサービス)市場

IT人材不足が深刻化していく中、クラウド、ビッグデータ、IoTのほか、RPA、人工知能やロボット、デジタルマーケティング、そして情報セキュリティなど、先端IT技術に携わる人材のニーズがより一層高まり、IT人材市場は活況を呈しておりますが、企業におけるシステム開発の内製化、開発コストを削減する新興国人材の活用、オフショア開発等が想定以上に急激に進んだ場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 業績変動等に関する影響

① 人材確保、教育及び育成について

(ア)サービス販売体制

当社グループが継続してサービスの拡販を進めていくには、直販営業の販売体制の強化が重要であると考えております。しかしながら、事業拡大に応じた人材の確保及び育成が計画通りに進まない場合や、有能な人材の流出が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(イ)サービス開発体制

クラウドの先端技術を取り入れたプロダクト開発運用を安定かつ迅速に進めていくためには、有能なITエンジニアの確保が重要であると考えております。当社では働きやすい環境整備、処遇改善を図る制度見直し等、人材確保に向けた取り組みを継続的に進めておりますが、ITエンジニア人材不足が加速し、待遇条件のミスマッチ等の原因により他社への流出が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ウ)SES(システムエンジニアリングサービス)

SES(システムエンジニアリングサービス)においては、数十名規模のプロジェクトメンバーで派遣する場合があるため、1社あたりの売上額が大きい取引先が存在します。既存取引先との取引深耕を積極的に行い、取引先のニーズに合ったIT人材を安定的に供給できるよう努めておりますが、人材の確保及び育成が計画通りに進まない場合や有能な人材の流出等により既存取引先の喪失があった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

② 技術革新への対応について

当社グループのプロダクトサービスは、技術革新のスピードが非常に速く、新たなサービスが日々生み出されております。その技術発展や新たなサービスの拡大は今後も予想されます。

当社グループにおいては、エンジニアの採用・育成等を通じて先進技術の習得に注力しておりますが、当社グループの技術対応への遅れや設備投資などのコストの増加により、全サービス利用企業のサービスは継続されますが、翌年以降の当社グループの販売及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ サービスの安定運用について

当社グループは、インターネットを介したSaaSの提供を行っております。安定したサービスの提供を行うため、日頃からサーバーの負荷分散や定期的なバックアップ、サーバーの稼動状況の監視を行い、トラブル等の未然防止を図っております。

しかしながら、急激なアクセス過多や自然災害、事故などにより当社グループのサービス提供に障害が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 投融資について

当社グループは、事業拡大のためにM&Aを実施しており、また今後もアライアンス、M&A等の投融資を行う場合があります。投融資の際は、リスク及び回収可能性を十分に事前評価し決定しておりますが、投融資先の事業の状況が当社グループに与える影響を確実に予想することは困難であり、事業環境の変化により事業が計画通りに進展しないことによりのれん評価や投資先の株式評価が減損の対象となった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3) 内部管理体制について

① 内部管理体制について

当社グループは、企業価値の継続的かつ安定的な増大を図るためにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であり、同時に適切な内部管理体制の構築が必要であると認識しております。

当社グループでは、内部監査や内部統制報告制度への対応、さらには法令や社内規程等の遵守の徹底を行っておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない事態が生じる場合には適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 情報管理体制について

当社グループが提供するサービスにおいては、顧客企業に関する機密情報から個人情報まで膨大な情報を取り扱っております。これらの情報資産を漏洩リスクから回避し、安全に管理していることが当社グループの使命であるという考えのもと、当社グループは全社的な取り組みとしてプライバシーマークの認定(ブルーテック株式会社 登録番号 第10822852号、株式会社アーキテクトコア 登録番号 第10823421号及び情報マネジメントシステム(ISO/IEC 27001)の認証(BBDイニシアティブグループ 登録番号 JUSE-IR-154)を取得し、情報資産の保護に万全を尽くすとともに、情報システムの有効性、効率性、機密性の確保を図っております。

しかしながら、何らかの理由により個人情報を含む重要情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生等により事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 情報セキュリティ管理体制について

当社グループのコンピュータ及びネットワークシステムは、適切なセキュリティ対策を講じて外部からの不正アクセス等を回避するよう努めております。

しかしながら、各サービスへのコンピュータ・ウイルスやハッカー等の外部侵入によりシステム障害が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4) 法的規制等に関する事項

① 法的規制について

当社グループは、事業上の特性及び必要性から、電気通信事業者の届出(届出番号 A-23-12220)をしており、「電気通信事業法」の適用を受けております。また、当社グループが提供するSaaSは、顧客企業より個人情報を含む情報資産を預かっており「個人情報の保護に関する法律」に準拠した適法かつ慎重な取扱いが要求されます。

そのため、当社グループは、法令等を遵守するために必要なコンプライアンス体制の構築及び維持に努めており、SaaSの利用規約の整備等を行っておりますが、法律改正等により当社グループの整備状況に不足が生じ、または当社グループが受ける規制や責任の範囲が拡大した場合、その後の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

SES(システムエンジニアリングサービス)においては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という)により規制されているため、当社グループは同法に基づき厚生労働大臣の許可を受け、一般労働者派遣事業を行っております(派13-311654)。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業を行うもの(派遣元事業主)が、派遣元事業主としての欠格事項に該当したり、法令に違反した場合には、事業許可の取り消し、又は業務の停止を命じる旨を定めています。

当社グループでは、社員教育の徹底、内部監査等による関連法規の遵守状況モニター、取引先の啓蒙等により、法令違反等の未然防止に努めていますが、万一当社役職員による重大な法令違反等が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

② 訴訟について

当社グループは、SaaSにおけるアプリケーション、ビジネスモデルに関する特許権、実用新案権、またはサービスに係る商標権等の知的財産権の調査等は可能な限り対応しておりますが、第三者の知的財産権を完全に把握することは困難であり、当社グループが認識せず他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は残されます。本書提出日現在まで当社グループでは事業に関連した特許その他知的財産権に関わる訴訟を提起されたことはありません。

しかしながら、将来、当社グループの事業に関連した特許その他の知的財産権が第三者にて成立した場合、当社グループの業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権について

当社グループは、SaaSにおけるアプリケーション、ビジネスモデルに関する特許権、実用新案権、またはサービスに係る商標権等の知的財産権の調査等は可能な限り対応しておりますが、第三者の知的財産権を完全に把握することは困難であり、当社グループが認識せず他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は残されます。本書提出日現在まで当社グループでは事業に関連した特許その他知的財産権に関わる訴訟を提起されたことはありません。

しかしながら、将来、当社グループの事業に関連した特許その他の知的財産権が第三者にて成立した場合、当社グループの業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社は2023年4月3日付で単独株式移転によりナレッジスイート株式会社(以下、「ナレッジスイート」という。なお、提出日現在は「ブルーテック株式会社」。)の完全親会社である純粋持株会社として設立されましたが、連結グループの範囲に実質的な変更はないため、ナレッジスイートの2022年9月期を比較情報として用いております。また、当連結会計年度の連結財務諸表は、単独株式移転により完全子会社となったナレッジスイートの連結財務諸表を引き継いで作成しております。

なお、当社は2023年6月1日付で、連結子会社であるナレッジスイートが有する株式の一部を当社に承継させることを目的に、会社分割(吸収分割)を実施しております。

また、2023年6月1日付で、当社の子会社であるナレッジスイートと当社の子会社(孫会社)である株式会社DXクラウドは、ナレッジスイートを存続会社、株式会社DXクラウドを消滅会社とした吸収合併を行い、商号を「ブルーテック株式会社」に変更しております。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症を機に、大企業に加え中堅・中小企業においてもテレワークが定着し、デジタルトランスフォーメーション(DX)への機運の高まりによる営業DX化が広がってまいりました。また、生産労働人口の減少に伴うIT人材の採用課題やIT人材不足への懸念が増加している状況において、当社グループの提供サービスへの需要は、より一層高まっているものと認識しております。

このような状況下において、当社は2023年4月3日付で単独株式移転の方式により設立され、持株会社体制へ移行したことにより、事業ポートフォリオの再構築を進め投資利益率と成長性を重視する経営方針を明確にしました。成長性、収益性の低い不採算事業・サービスからの撤退、新規事業の立ち上げにより経営資源の適正配分を行い、経営における選択と集中を進めました。その結果、子会社であるブルーテック株式会社が保有するSaaSプロダクトにおいて、お客様のDXニーズに適した販売戦略の大幅見直しを決定し、一部のソフトウエアについて特別損失を計上いたしました。

 

以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上収益は3,570,969千円(前期比10.4%増)、営業利益は22,577千円(前期比81.6%減)、税引前利益は10,318千円(前期比90.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は30,969千円(前期比73.6%減)となりました。

 

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

① DXセグメント

当セグメントは、BtoB向け営業支援SaaSビジネスアプリケーション「Knowledge Suite(ナレッジスイート)」を中心とした自社開発SaaSプロダクトの提供及び顧客企業をカスタマーサクセスへ導く導入支援コンサルティングサービスである「セールステック事業」、BtoB向けマーケティング支援サービスを提供する「マーテック事業」、及び俳優等のタレント肖像をサブスクリプションで提供する広告体験サービスの「タレントテック事業」で構成されています。

当連結会計年度においては、リード獲得チャネルの選択と集中により効率的なマーケティング・プロモーション活動を継続し、インサイドセールス体制を新たに立ち上げることで受注効率の高いリード(見込み顧客)獲得の拡大を図り、商談受注効率を高めてまいりました。そして、M&Aによりグループジョインした各社がセールステック事業及びマーテック事業に加わり、当連結会計年度より開始したタレントテック事業が加わったことで、グループサブスク契約件数(※1)は3,641件(前年同期比40.0%増)となりました。また、新たに開始したタレント肖像サブスク広告体験サービス「BUSINESS BOOST(ビジネスブースト)」、「Knowledge Suite」と高い相乗効果を発揮するBtoB営業リスト作成サービス「Papattoクラウド(パパットクラウド)」等、その他グループ会社が提供するサービスの同時提案やクロスセルといった取り組みを進め、ARPA(※2)は437,545円となり増加基調で推移いたしましたが、事業の選択と集中により収益性・成長性の低いOEM事業から撤退したことから、SaaS売上収益は前期比34.4%増、グループサブスク ARR(※3)は1,593百万円となりました。

これらの結果、DX事業の売上収益は1,758,991千円(前期比20.4%増)、セグメント利益は280,795千円(前期比14.0%増)となりました。

 

※1 当連結会計年度末時点のグループサブスク(OEM除く)契約件数。

※2 ARPA:Average Revenue Per Accountの略。1契約企業あたりの

  平均年次経常収益。

※3 グループサブスク ARR:OEMを除く当社グループが提供する全て

  のSaaS・サブスクリプションサービスにおける各四半期末時点の

  MRRの12倍で算出。

  ARRはAnnual Recurring Revenueの略。年次経常収益。

  MRRはMonthly Recurring Revenueの略。月間経常収益。

 

② BPOセグメント

当セグメントは、顧客企業へIT人材によるシステム開発サービス(SES/システムエンジニアリングサービス)を提供する「ディープテック事業」を中心に展開しております。

当連結会計年度においては、引き続き高いIT人材需要を背景に積極的な営業活動に加え、ビジネスパートナー(BP)との連携を強化し、IT人材の確保、教育を強化したことで顧客企業のSES(システムエンジニアリングサービス)派遣先プロジェクトへのアサインが増加し、IT人材稼働率も増加しました。また、IT人材単価も向上しましたが、利益率の向上を狙う目的で収益性の低い開発プロジェクト案件から限られたIT人材リソースの撤退を進め、SES売上収益は前期比2.7%増となりました。

これらの結果、売上収益は1,811,978千円(前期比2.2%増)、セグメント利益は240,451千円(前期比9.0%増)となりました。

 

 

  財政状態の分析は、次のとおりであります。

 

(資産)

当連結会計年度末の流動資産は1,198,418千円となり、前連結会計年度末に比べ49,095千円減少しました。これは主に、現金及び現金同等物の減少54,656千円、営業債権及びその他の債権の増加33,148千円、その他の流動資産の減少29,779千円によるものであります。

当連結会計年度末の非流動資産は2,548,577千円となり、前連結会計年度末に比べ364,895千円増加しました。これは主に、使用権資産の増加241,839千円、無形資産の増加68,866千円、繰延税金資産の増加51,925千円によるものであります。

これらの結果、当連結会計年度末の資産合計は3,746,996千円となり、前連結会計年度末に比べ315,799千円増加しました。

 

(負債)

当連結会計年度末の流動負債は1,604,073千円となり、前連結会計年度末に比べ89,239千円増加しました。これは主に、営業債務及びその他の債務の増加26,927千円、契約負債の増加53,617千円、有利子負債の減少50,104千円、リース負債の増加31,817千円、その他の流動負債の増加19,470千円によるものであります。

当連結会計年度末の非流動負債は1,049,394千円となり、前連結会計年度末に比べ156,557千円増加しました。これは主に、有利子負債の減少47,297千円,リース負債の増加207,251千円によるものであります。

これらの結果、当連結会計年度末の負債合計は2,653,467千円となり、前連結会計年度末に比べ245,797千円増加しました。

 

(資本)

当連結会計年度末の資本は1,093,528千円となり、前連結会計年度末に比べ70,002千円増加しました。これは主に、当期利益の計上30,969千円、新株の発行20,980千円によるものであります。

これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末に比べ0.6ポイント減少し、29.2%となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ54,656千円減少し、668,302千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は530,339千円(前連結会計年度は329,597千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期利益10,318千円、減損損失114,929千円、減価償却費及び償却費321,163千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は370,725千円(前連結会計年度は276,513千円の使用)となりました。これは主に、無形資産の取得による支出355,304千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は214,270千円(前連結会計年度は8,575千円の使用)となりました。これは主に、短期借入金の純増加額120,008千円、社債の発行による収入98,090千円、長期借入金の返済及び社債の償還による支出316,024千円、リース負債の返済による支出137,325千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社は受託販売を行っておりますが、受注から販売までの期間が短いため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示しますと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年10月1日

至  2023年9月30日)

前年同期比(%)

DX事業(千円)

1,758,991

120.4

BPO事業(千円)

1,811,978

102.2

合計(千円)

3,570,969

110.4

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の分析
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

当社グループの主な資金需要は、人件費や外注費等の売上原価の支払、販売費及び一般管理費の支払、M&A資金、ソフトウエア開発資金、借入金の返済及び法人税等の支払等であります。

当社グループは、事業活動に必要な資金を、営業活動によるキャッシュ・フローから生み出される自己資金により賄っており、今後も営業活動によるキャッシュ・フローから継続的に調達することが可能であると考えております。

当連結会計年度末現在、借入金及び社債の残高は1,684,814千円であります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、テクノロジーによる自動化で、人間の「脳力をフル活用できる世界」を目指し、人工知能、ビッグデータ、情報セキュリティ、IoT等の高度な先端IT技術の研究開発に注力しており、今後の事業の中心となる製品サービスの研究開発を進めております。

現在の研究開発は当社の先進技術開発部においてプロダクトを中心に推進されており、中長期的な収益の源泉となる先進技術を活用した「次世代Knowledge Suite(ナレッジスイート)」基盤の開発を推進してまいりました。当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は、36,462千円であります。

当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。

(1) DX事業

DX事業の主力サービスである「ナレッジスイート」は、潜在顧客の発掘から受注まで、一連の業務プロセスを可視化、高度化、最適化、自動化するツールとなっており、日本独特の法人営業の商習慣(顧客開拓営業、顧客深耕営業、ルート営業)に最適化されたサービスであります。顧客企業のニーズをもとに適時、機能強化を図っておりますが、そのニーズに応えるため、AI(人工知能)、IoTテクノロジーをはじめとした最新の技術を調査研究しております。

DX事業に係る研究開発費は36,462千円であります。

 

(2) BPO事業

BPO事業では、システム開発を主軸として顧客企業業務支援を行うシステムエンジニアリングサービスを提供しておりますが、当連結会計年度における研究開発は行っておりません。