当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、<企業理念>で『常にお客様の立場で物事を考え、個性豊かな人間と、独創的な技術で世界に役立つ』とお客様第一の立場を鮮明にし、また<タクミナの使命>として、あらゆる産業の流体を高精度・高効率に送るポンプを核とした課題解決を提案すること、水と環境の分野にポンプの応用技術で安全と安心を提供することなど、「事業領域」をより明確に打ち出しております。
この方針のもと、お客様の満足度の高い製品・サービスが提供できる企業を実現し、流体ソリューションのメーカーとしてサステナブルな(持続性のある)社会にとってなくてはならない企業として世界貢献を果たし、ステークホルダーとの共存共栄を続けられる企業を目指しております。
(2)経営戦略等
当社グループは、お客様にさらなるご満足を提供し続けるというユーザー本位の企業理念に基づき、ダイヤフラムポンプの技術革新及び、これを最大限に活用した新規提案の拡充により、市場開拓とサービスの質向上を目指してまいります。具体的には経営戦略として、以下の4項目に取り組んでまいります。
① 主柱事業の強化・拡大
当社グループは、お客様の生産性向上、製品の品質向上に貢献する「スムーズフローポンプ」を活用し、提案営業を強化してまいります。既にケミカル・素材市場では、EV化への需要拡大に伴う二次電池市場のほか、MLCC(積層セラミックコンデンサ)やフィルム業界のプロセスにおける性能・信頼性において高い評価をいただいております。
また、滅菌・殺菌等のインフラ関連市場においても、個々のお客様のニーズにお応えする商品開発・提案を行うことにより、ブランド認知も浸透してまいりました。今後も水処理用途への拡販は元より、多くの業種におけるプロセスへの提案により市場拡大を目指してまいります。
② 海外市場での販売強化
世界市場での水平分業定着により、研究開発用途や製造用途等多くの引き合いを海外からいただくようになりました。当社グループでは、子会社が所在する米国及び韓国をはじめとして、中国やその他のアジア地域において、さらなる営業力を強化すべく、人員増強及び代理店の拡大とサービスの質向上に取り組んでまいります。
また、海外市場で受け入れられる商品拡充を目指し、海外規格対応は元より、お客様のニーズに応じたカスタマイズ製品を積極的に開発し、他社との差別化による顧客満足のさらなる向上を目指してまいります。
③ 製品開発力の強化
多種多様にわたる流体を送る技術に加え、「流体ソリューションセンターLABⅡ」を設置することによって、より高度な流体分析が可能となり、お困り事を持つ多くのお客様にご活用いただくことで、高い評価をいただいております。また、大学・企業や研究機関との連携を強化することにより、「スムーズフローポンプ」による流体に関する課題解決の提案を加速してまいります。
④ お客様に密着したサービス
当社グループにおける流体移送に関する豊富な知識と経験を活かし、営業部門と技術部門が一体となった体制を構築し、お客様に密着したサービスの提供を継続してまいります。また、お客様の抱える様々な問題を解決するために、サービスの幅を広げると共に、質の向上に取り組んでまいります。
(3)経営環境
今後の当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う各種制限の緩和以降は、社会経済活動は正常化へ向かい、日本経済は緩やかな回復基調で推移することが期待されますが、ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー価格の高騰や、円安進行による物価上昇が、国内の景気を押し下げるリスクとなっていることもあり、依然として先行き不透明な状況が続くものと判断しております。一方で、当社グループを取り巻く受注環境については、良好な収益環境に支えられた企業の設備投資意欲を背景に、足元では堅調に推移しており、受注残高を大きく積み上げております。
このような状況の中、当社グループとしましては、2023年4月よりスタートしました中期経営計画に基づき、「スムーズフローポンプ」による新市場・新用途開拓に向けた顧客創造体制の強化を図ってまいります。また、お客様から一層の安心感、信頼感を持っていただけるよう、ユーザー本位の経営理念を基に顧客創造を追求し、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ポンプのメーカーとして、お客様の立場に立った独創性のある製品を提供し続けるため、以下のことを主な課題と考えております。
① マーケティング機能の強化と「わかりやすい」情報発信
当社グループの活動に興味を持っていただき、当社グループ及び当社グループの技術・製品に、より一層関心を持っていただけるよう、お客様との接点を豊かにし、「お客様の立場に立って考える」という観点から全社を挙げてマーケティング体制を整備してまいります。具体的には、「流体ソリューションセンターLABⅡ」をはじめ、お客様と共同で課題解決に取り組むなど、ユーザーニーズの収集活動を強化してまいります。
また、「わかりやすい」情報発信(移動型研修施設「ポンプ道場」・ショールーム型研修施設「タクトスペース」・環境/社会/経済活動レポート・メールニュース・ホームページ・広告宣伝・展示会・動画を活用した製品/施設紹介など)に注力してまいります。
② ポンプ・ポンプ応用製品及び装置に関する商品化機能の拡充
ポンプ・ポンプ応用製品及び装置に関する商品化機能を拡充し、ケミカル・素材をはじめ食品・医薬品・化粧品など、あらゆる産業で求められている液体の精密充填・精密混合ニーズを的確に把握して、環境に配慮したエコデザインの高付加価値製品を開発・提供し、水処理・滅菌などの従来市場とともに新用途・新市場への展開を図ります。
③ コアコンピタンス(競争力のあるコア技術)の追求と認知度の向上
水の安全・安心を提供し、あらゆる産業で、高付加価値液体の理想的な移送システムを実現するため、滅菌殺菌テクノロジーの追求から生まれるユニークな製品・装置に加え、「スムーズフロー」ブランドに代表されるダイヤフラム(隔膜)駆動ポンプの利点(液漏れを起こさない構造・液質や液性を変化させない移送・高精度で安定的な移送・圧送など)について、認知度の向上を図り、その特長をさらに追求いたします。
④ 海外売上比率の向上
市場のグローバル化の進展に伴い、海外のお客様に対しても、様々な産業での理想的な液体移送の実現など、当社グループが貢献できるフィールドが増加しております。そのため、海外各地の情報収集、ユーザーニーズの把握や製品の認知度向上を図るとともに、各地域の販売店に対する支援活動の強化を行い、海外売上比率の向上に努めてまいります。
⑤ アフターサービスの強化
お客様のさらなる価値向上のためには、アフターサービスの強化が重要課題となっております。予防保全体制の拡充など、受動的な活動だけではなく能動的な活動に対しても積極的に取り組み、アフターサービスの強化を図ってまいります。
⑥ サブスクリプションサービスの浸透
新たな事業として「ポンプのサブスクリプションサービス」を開始いたしました。既に多くのお客様にご利用いただいております、「スムーズフローポンプQシリーズ」を手軽に必要な期間だけご利用いただけるサービスとなっております。当社グループは常に独創的なテクノロジーとサービスを追求し、本サービスを通じて、研究・開発における変革やものづくりイノベーションに貢献し、社会をより豊かなものにするために取り組んでまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としてROE(自己資本利益率)及び総資産経常利益率を活用しております。収益構造の改革、コストダウン、資産の効率的運用などによりその改善を図り、企業価値の一層の向上を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当社グループは、「技術と自然の調和」を最重要課題の一つとしており、自然環境保全を重要な企業活動項目と位置付けており、「次世代に残そう、自然と資源」を環境スローガンに掲げ、省資源・省エネルギー・廃棄物削減・再資源化の推進・環境配慮の商品開発・有害化学物質の徹底管理と汚染の防止・業務改善・貢献活動の各項目について、従業員が自主的に行動できるように教育してまいります。また、事業活動を支えていただいている取引先にも当社グループの環境関連活動に理解と協力を求め、活動の輪を広げてまいります。
① ガバナンス
当社グループでは、取締役会の諮問機関として設置しております「経営企画委員会」において、気候変動を含むサステナビリティ活動における企画・立案・報告等を適宜、課題として取り上げることとしております。「経営企画委員会」で決議された事項は取締役会に対して報告・提案され、取締役会はその内容の管理・監督を行うガバナンス体制を構築しております。
② 戦略及びリスク管理
戦略及びリスク管理においては、必要に応じて「リスク管理委員会」を開催し、当社グループにおけるリスクを抽出し、適宜、取締役会・経営企画委員会及びコンプライアンス委員会と協議・連携することとしております。
全社より抽出したリスクについては、定期的に見直しを行っており、当社グループの経営方針、経営戦略に重大な影響を与える可能性のあるサステナビリティ関連のリスクは特定されませんでしたが、BCP(事業継続計画)については策定をしており、リスクの特定がなされた場合には戦略の立案及び適切な対応を検討してまいります。
③ 指標及び目標
指標及び目標について、今後サステナビリティに関する取り組みをさらに進めていくうえで、当社グループに重大な影響を与える事項が発生する可能性を常に想定して、様々な情報を管理・監視してまいります。
(2)人的資本
当社グループは「人」こそが財産であると考え、サステナビリティ関連の項目の中で、特に人的資本を重視しております。人的資本については、性別や国籍、新卒・中途社員の区別なく、本人の経験や能力、適性に基づいた処遇とすることを基本方針としており、多様な視点や価値観を有する社員を積極的に採用しております。
① 戦略
当社グループでは、人材の成長こそ事業の強化を支える原動力と考え、社員に成長の機会を提供し、社員と企業が共に成長していく環境づくりに注力しており、以下の取り組みを実施しております。
・新入社員から次世代リーダー・専門職・管理職を育成する階層別教育、部門別教育の実施、自己啓発の推奨
・eラーニング制度により、社員が教育を受ける機会の提供
・1on1ミーティング:定期的な上司と部下の面談
・定期的な社員サーベイ(メンタル・フィジカル・エンゲージメント)の実施
・フレックスタイム制度の導入
また、女性が就業を継続し、活躍できる雇用環境の整備を行うため、以下の取り組みを実施しております。
・女性が活躍できる職場であることについての求職者に向けた積極的な広報活動(採用ホームページへの女性学生コンテンツ掲載、インターンシップでの女性学生積極的受入、女性学生向け自社イベント開催等)
・次世代育成支援に関する社内制度(産前産後休業、出産休暇、育児休業、介護休業、看護休業、各種慶弔金等)の充実と周知徹底及び制度利用の促進
・妊娠、出産、育児等に関するあらゆるハラスメントを防ぎ、育児休業を取得しやすい環境づくりを行うとともに、育児休業からの円滑な職場復帰の支援
・ハラスメントに対する基本方針の制定及び周知、相談窓口(社内・社外)の設置
② 指標及び目標
人的資本に関する方針の実現に向けて、次の指標を用いております。
当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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男性の平均勤続年数に対する女性の 平均勤続年数比率 |
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eラーニング制度を利用した社員に おける講座修了率 |
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(注)eラーニングは2023年10月1日から2024年8月31日が受講期間となっており、記載の修了率は2024年5月31日時点のものとなっております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能生があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
下記事項には、将来に関するものが含まれますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
なお、現時点においては、(1)から(11)のリスクが顕在化する可能性はいずれも低いと判断しておりますが、発生の回避及び発生した場合の対応に最大限努める所存であります。
(1)品質保証
当社では、品質マネジメントシステム国際規格であるISO9001の認証を取得し、日ごろから品質保証には細心の注意を払うとともに、業務効率の改善や顧客満足の向上に努めております。しかしながら、万が一製品に欠陥が発生した場合には、財政状態及び経営成績等並びに社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)原材料価格の変動
当社グループの製品は、鋼材や樹脂製品、電子部品などから構成されております。それら部品等の仕入価格は、市場価格の変動や需給動向の影響を受けるほか、ウクライナ情勢のような予期せぬ事態に起因する資源・エネルギー価格の高騰等により価格上昇が発生することもありますが、販売価格への転嫁が十分に進まない場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)部品等の調達に関するリスク
当社グループの製造においては、多種多様の素材や部品を使用しており、それらは外部サプライヤーからの供給を受けております。サプライヤーの操業・生産の予期せぬ停止により部品等の供給が絶たれた場合や、パンデミック、戦争、テロなどに起因した物流の混乱により部品等の大幅な納入遅延が発生した場合には、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクの発生に備えて、生産計画管理を徹底するとともに、先行手配及び適正在庫の確保のほか、代替調達先や代替品への切替により、影響が最小限に留まるよう努めております。
(4)大規模災害等
当社グループは、国内及び米国・韓国に営業拠点をもつほか、製品の生産拠点は第1、第2工場ともに兵庫県朝来市に所在しております。これらの事業拠点において、地震、水害、台風等の自然災害や火災等の事故もしくは感染症の流行といった大規模災害等が発生した場合には、各事業拠点における人的・物的損害を受けるのみならず、生産や販売活動のほか本社機能にも重大な影響を及ぼし、事業活動が中断する可能性があります。このようなリスクの発生に備えて、損害保険への加入や安否確認システムの導入のほか、リモートワークの体制整備、BCP(事業継続計画)の策定等の対策を講じており、リスクの低減に努めております。
(5)情報システムに関するリスク
当社グループは、企業活動の中で様々な情報システムを活用しておりますが、外部からのハッキングやウイルス等のサイバー攻撃により、サーバが使用できなくなるなど、情報システムに重大なトラブルが発生した場合には、企業活動が中断し、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクの発生に備えて、情報システム専任部門による厳格な管理及び運用を行っており、影響が最小限に留まるよう努めております。
(6)情報漏洩リスク
当社グループでは事業活動において、顧客情報や従業員の個人情報のほか、営業及び技術上のノウハウ等の機密情報を取り扱っております。これらの機密情報等への不正アクセスや外部からのサイバー攻撃等により情報漏洩が発生した場合、対応費用のみならず、社会的な信用の低下など、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクの発生に備えて、社員教育の徹底やシステム制御による各種情報へのアクセス制限のほか、ファイアウォールの設置やウイルス対策等の措置を講じることにより、リスクの低減に努めております。
(7)海外事業展開のリスク
当社グループは、営業拠点として米国及び韓国に現地子会社を設置しておりますが、予期しない法令・税制の変更、政治変動、戦争・テロなど不可避のリスクを内在しております。当該リスクを最小限にするために、現地子会社と密に連携を取り情報共有を図るとともに、必要に応じて外部専門家を活用するなどの対策を講じてまいりますが、これらのリスクが発生した場合、事業の遂行に問題が生じ、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)為替変動のリスク
当社は、円建て取引を主としておりますが、輸入及び一部の輸出取引については、外貨建てで決済しております。また、米国及び韓国それぞれに現地子会社を有しております。したがって、為替相場が想定以上に大きく変動した場合には、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクの発生に備えて、必要に応じて為替予約によるヘッジ等を行い、リスクの低減に努めております。
(9)貸倒れリスク
取引先の信用不安により予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクの発生に備えて、与信及び回収遅延債権の管理を徹底するなど、影響が最小限に留まるよう努めております。
(10)退職給付債務
退職年金資産運用の結果が前提条件と異なる場合、その影響額(数理計算上の差異)はその発生の翌連結会計年度から10年間で均等償却することとしております。年金資産の運用利回りの悪化や超低金利の長期化による割引率の低下等が、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績等に悪影響を与える可能性があります。また、退職給付制度の変更により過去勤務費用が発生する可能性があります。
(11)有価証券の時価変動リスク
当社グループは、市場価格等の変動を伴う有価証券を保有しております。市場価格等は金融市場や経済環境の動向に左右されるほか、有価証券発行体の企業価値が著しく毀損した場合には、保有有価証券に係る評価損が計上され、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクの発生に備えて、定期的なモニタリングにより価値下落の可能性を早期に把握するとともに、必要に応じて売却等を行うなど、影響が最小限に留まるよう努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行により、社会経済活動の正常化が一段と進展し、緩やかな回復基調が続きました。一方で、ウクライナ情勢や物価上昇の長期化に加えて、各国の金融引き締め政策や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがリスクとなっており、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループを取り巻く受注環境は、国内では、高水準の企業収益に支えられた旺盛な設備投資意欲を背景に、受注は好調に推移しました。また、海外向けでは、二次電池業界の設備投資が引き続き活発なことから、同業界向けの受注が好調に推移し、業績拡大に寄与しました。
以上の結果、売上高は、110億15百万円(前期比13.0%増)となり、前期に続き過去最高を更新しました。
利益面につきましては、仕入部材等の価格上昇の影響を一部受けたものの、売上増加に伴う増益等により吸収することができたため、売上総利益は49億96百万円(同11.5%増)と増加しました。また、企業活動の復調に伴う販売費及び一般管理費の増加を、売上総利益の増加により吸収することができたため、営業利益は15億82百万円(同8.5%増)、経常利益は16億11百万円(同9.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億95百万円(同12.7%増)となり、各利益についても過去最高を更新しました。
主な品目別販売実績は以下のとおりであります。
<高性能ソリューションポンプ>
国内市場では、当社グループの主力製品である「スムーズフローポンプ」の主要市場となるケミカル業界において、二次電池関連や素材関連を中心に堅調な設備投資需要が継続しており、MLCC市場の在庫調整による一服感はあったものの、同製品群の販売は前期に続き好調に推移しました。また、カーボンニュートラルやBCP対策、事業ポートフォリオの転換に取り組む顧客動向により、環境負荷低減や自動化・効率化など、スムーズフローテクノロジーを駆使したソリューションの採用も広がりつつあります。2023年10月には「高機能素材week2023」に出展し、電池・MLCC市場のほか、塗装やフィルム、接着剤等の製造工程に向けて「スムーズフローポンプ」を中心とした流体ソリューションを紹介し、高付加価値付与への貢献を訴求しました。
海外市場では、韓国企業における二次電池関連の投資計画が規模の拡大を見せながら進展するなか、「スムーズフローポンプ」の納入が継続しており、売上が大きく増加しました。
以上の結果、高性能ソリューションポンプの売上高は、44億23百万円(前期比13.9%増)となりました。
<汎用型薬液注入ポンプ>
コロナ禍からの復調が顕著な滅菌・殺菌業界及びプラント向けの水処理関連の動きが国内外ともに活発化しており、工場の再稼働や操業度の回復に伴う需要の増加により、売上は増加しました。2023年8月には、札幌ドームで開催された「下水道展’23札幌」に出展し、下水処理工程をメインターゲットとした設備費・維持管理費の削減や制御の簡素化などによる水処理設備の合理化についてアピールしました。
以上の結果、汎用型薬液注入ポンプの売上高は、28億81百万円(前期比11.5%増)となりました。
<ケミカル移送ポンプ>
「ムンシュポンプ(高耐食ポンプ)」が、国内外における製造業の回復といった主要因のほか、インフラ整備や老朽化対策等による鋼材需要の増加を背景として、製鉄プラント向けの案件を受注し順調に売上を伸ばしました。
以上の結果、ケミカル移送ポンプの売上高は、7億55百万円(前期比4.9%増)となりました。
<計測機器・装置>
コロナ禍のリバウンド需要を主因に案件数が底上げされ、水処理設備の増設・更新に伴う「pH中和処理装置」等の案件を多数受注したことにより、売上が増加しました。
以上の結果、計測機器・装置の売上高は、13億30百万円(前期比20.4%増)となりました。
<流体機器>
工業薬品の生産及び流通再編による設備更新需要が案件化されたことなどにより、売上が増加しました。
以上の結果、流体機器の売上高は、4億59百万円(前期比0.7%増)となりました。
<ケミカルタンク>
水処理関連で大型タンクやソリューションタンクなどのスポット案件が増加し、好調に推移しました。
以上の結果、ケミカルタンクの売上高は、7億20百万円(前期比11.5%増)となりました。
<その他>
その他には、立会調整費やメンテナンス等の売上高及びその他(レストラン、ホテル、フィットネス)の売上高が含まれております。
その他の売上高は、4億45百万円(前期比27.0%増)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて11億93百万円増加し、149億7百万円となりました。
流動資産は9億42百万円増加し、103億10百万円となりました。主な増加内訳は、現金及び預金の増加1億97百万円、売上債権の増加1億74百万円、有価証券の増加99百万円、棚卸資産の増加4億90百万円であります。
固定資産は2億51百万円増加し、45億97百万円となりました。主な増加内訳は、無形固定資産の増加34百万円、投資その他の資産の増加2億23百万円であります。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べて1億42百万円増加し、48億84百万円となりました。
流動負債は2億22百万円増加し、37億15百万円となりました。主な増減内訳は、仕入債務の減少47百万円、未払法人税等の増加23百万円、賞与引当金の増加54百万円であります。
固定負債は80百万円減少し、11億68百万円となりました。主な減少内訳は、退職給付に係る負債の減少64百万円であります。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べて10億51百万円増加し、100億23百万円となりました。主な増加内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益11億95百万円から配当金3億98百万円の支払いを差し引いた利益剰余金の増加7億97百万円、その他有価証券評価差額金の増加1億94百万円、為替換算調整勘定の増加20百万円、退職給付に係る調整累計額の増加17百万円であります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の65.4%から67.2%へと1.8ポイント上昇いたしました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて2億83百万円増加し、38億97百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて2億35百万円増加し、11億35百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益16億5百万円、減価償却費2億50百万円、賞与引当金の増加54百万円による資金の増加及び退職給付に係る負債の減少60百万円、売上債権の増加1億68百万円、棚卸資産の増加4億90百万円、仕入債務の減少47百万円、法人税等の支払4億11百万円による資金の減少によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて35百万円支出が増加し4億65百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出3億62百万円、無形固定資産の取得による支出70百万円、投資有価証券の取得による支出1億22百万円による資金の減少によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて76百万円支出が増加し、4億7百万円の支出となりました。これは主に、配当金の支払3億98百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、ポンプ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の生産実績、受注実績、販売実績の記載はしておりません。なお、品目別の生産実績等は次のとおりであります。
a. 生産実績
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品目 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比(%) |
|
高性能ソリューションポンプ(千円) |
4,591,069 |
115.8 |
|
汎用型薬液注入ポンプ(千円) |
2,901,987 |
112.1 |
|
ケミカル移送ポンプ(千円) |
756,620 |
104.4 |
|
計測機器・装置 (千円) |
1,334,616 |
120.5 |
|
流体機器(千円) |
465,878 |
102.2 |
|
ケミカルタンク(千円) |
725,964 |
112.1 |
|
合計(千円) |
10,776,139 |
113.6 |
(注)金額は販売価額で表示しております。
b. 受注実績
|
品目 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|||
|
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
|
|
高性能ソリューションポンプ |
4,549,130 |
99.7 |
1,481,630 |
109.3 |
|
汎用型薬液注入ポンプ |
2,931,175 |
111.8 |
258,776 |
111.3 |
|
ケミカル移送ポンプ |
792,068 |
104.3 |
235,719 |
118.4 |
|
計測機器・装置 |
1,284,455 |
102.1 |
287,974 |
86.2 |
|
流体機器 |
556,353 |
129.9 |
229,494 |
172.6 |
|
ケミカルタンク |
755,607 |
109.7 |
142,243 |
133.0 |
|
その他 |
430,839 |
101.3 |
102,826 |
87.9 |
|
合計 |
11,299,629 |
105.2 |
2,738,665 |
110.5 |
(注)金額は販売価額で表示しております。
c. 販売実績
|
品目 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比(%) |
|
高性能ソリューションポンプ(千円) |
4,423,403 |
113.9 |
|
汎用型薬液注入ポンプ(千円) |
2,881,085 |
111.5 |
|
ケミカル移送ポンプ(千円) |
755,500 |
104.9 |
|
計測機器・装置(千円) |
1,330,379 |
120.4 |
|
流体機器(千円) |
459,792 |
100.7 |
|
ケミカルタンク(千円) |
720,337 |
111.5 |
|
その他(千円) |
445,012 |
127.0 |
|
合計(千円) |
11,015,511 |
113.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高については110億15百万円(前期比13.0%増)となり、過去最高を更新しました。利益面につきましても、営業利益は15億82百万円(同8.5%増)、経常利益は16億11百万円(同9.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億95百万円(同12.7%増)と、前期に続きいずれも過去最高益となりました。
各品目別の販売状況につきましては、「第2[事業の状況] 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照下さい。
各段階利益の増減金額とその要因につきましては、以下のとおりであります。
売上総利益は、仕入部材等の価格上昇の影響を増収により吸収することができたため、5億14百万円(同11.5%増)の増益となりました。
営業利益は、ベースアップ等の実施や新型コロナウイルス感染症の影響を受けて制限されていた企業活動が再開されていることなどから、販売費及び一般管理費が3億90百万円増加(同12.9%増)しましたが、売上総利益の増加で吸収することができたため、1億24百万円(同8.5%増)の増益となりました。
経常利益は、受取利息及び受取配当金等の増加もあり、1億36百万円(同9.2%増)の増益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失が減少したこともあり、1億35百万円(同12.7%増)の増益となりました。
以上の結果、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の146円82銭から18円40銭増加し、165円22銭となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローは11億35百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは4億65百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは4億7百万円の支出となりました。以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から2億83百万円増加し、38億97百万円となりました。詳細につきましては、「第2[事業の状況] 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営において必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資によるものであります。
当連結会計年度末時点における重要な資本的支出の予定はありませんが、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資に係る資金調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3億96百万円となっております。
③ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中長期的に資本コストを上回るROE(自己資本利益率)の向上を目指す価値創造企業でありたいと考えております。このため、ROEを重要な指標として位置付けております。
当連結会計年度におけるROEは12.6%(前期比0.2ポイント上昇)となりましたが、引き続き当該指標の改善に邁進してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっての重要な会計方針については、「第5[経理の状況] 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。また、この連結財務諸表の作成に当たり、連結決算日における資産及び負債の数値並びに当連結会計年度における収益及び費用の数値に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。
当社グループでは、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付債務、棚卸資産の評価、有価証券の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性などについて、会計上の見積り及び仮定を用いており、そのうち主なものは以下のとおりでありますが、その発生可能性及び影響度を考慮して、いずれも経営成績等に重要な影響を及ぼすものはないと判断しております。
a.棚卸資産の評価
当社グループは、過去の消費実績を基礎としたうえで、見積り時点で入手し得る将来情報を加味することにより、期末の棚卸資産評価を行っております。なお、予期せぬ経営環境の著しい変化や入手した情報の精度などに見積りの不確実性があり、その変動により棚卸資産の減額処理及び評価損が計上される可能性があります。
b.固定資産の減損
当社グループは、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき、固定資産の回収可能価額を算出しております。なお、当初見込んでいた収益や将来キャッシュ・フロー等の前提条件に見積りの不確実性があり、その変動により固定資産の減額処理及び減損損失が計上される可能性があります。
c.退職給付債務
当社グループは、数理計算上で設定される前提条件に基づいて退職給付債務を算出しております。これらの前提条件には、日本の国債の市場利回りを基礎に算出した割引率や年金資産が投資されている資産の種類ごとの収益率に基づいて算出した長期期待運用収益率のほか、退職率、死亡率などの基礎率が含まれておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、将来期間にわたり影響を及ぼす可能性があります。
d.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、回収が不確実と判断された部分に対して評価性引当額を計上しております。また、回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲内で繰延税金資産を計上しております。なお、業績等により変動する将来の課税所得見込額に見積りの不確実性があり、その変動により繰延税金資産の取崩及びそれに伴う税金費用が計上される可能性があります。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。
当社グループの研究開発活動は、開発センターを中心にコア技術の追求と確立を目指しております。開発センターは、当社グループのコア技術であるダイヤフラム及び様々な分野に関しての流体移送に関する基礎技術を追求するとともに、ポンプ及び計測制御機器の開発・製品化研究も担っております。
また、開発・製品化研究においては、生産本部(工場)、東京・大阪・名古屋・福岡の各拠点の技術部門と連携して、お客様からのご要望やマーケットにおける潜在的な需要に関する情報を取り入れることで、お客様から望まれる独創的な製品の開発を迅速に行うことを目指しております。
当連結会計年度における主な活動は次のとおりであります。
<高精度小型スムーズフローポンプ「Qシリーズ」のラインナップ追加>
お客様に研究段階から「スムーズフローポンプ」を使用していただけるように、研究所やラボ施設向けに開発した小型スムーズフローポンプ「Qシリーズ」のラインナップに、装置に組み込む際の省スペース化の要望に応えるため、操作部を無くした「QNタイプ」を追加しました。さらに、既存の最大吐出量100mL/min 以上の要望に応えられるラインナップを追加すべく、最大吐出量500mL/min の「Qシリーズ中型」の開発も完了し、翌連結会計年度早々の発売を予定しております。
<「流体ソリューションセンターLABⅡ」の活用>
お客様のお困り事を解決する場としてご利用いただいている「流体ソリューションセンターLABⅡ」については、WEBカメラやWEB会議システムを通じて行うリモート立会試験に加えて、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことにより、お客様に直接お越しいただいて実施する実液立会試験も活発になっております。お客様が抱える様々な課題を解決するために、新たな測定機器の導入等を行い、さらなる市場の開拓を進めてまいります。
<基礎技術・要素技術の研究>
「スムーズフローポンプ」のコア技術にはダイヤフラムや弁座などがあり、それらの素材・形状の研究をはじめとして、様々な用途を想定した解析やシミュレーション・評価試験を積み重ね、製品開発・品質向上のスピードアップにつながるノウハウの蓄積を行っております。
また、水処理、滅菌・殺菌市場向けに対しても、これまで培ってきた流体コントロールの技術に加えて、水質管理に必要不可欠となる計測技術の研究によって得られたノウハウを駆使して、お客様のニーズに合った高付加価値製品の開発や次世代技術の研究開発を推進しました。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は