当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「幸せはこぶ住まいづくり」、「買っていただいたお客様に幸せになっていただくこと」を事業の目的とし、「富士山のように日本一愛される会社」にするという想いのもと創業された会社であります。大阪府全域、兵庫県南部及び和歌山県北部を主たる営業地盤として売りっぱなし建てっぱなしにしないお客様に顔を向けた責任のとれる住まいづくりを経営の基本として事業を展開しております。そのため、一時的な利益や事業拡大を求めるのではなく、長期的な安定経営によるつぶれない会社づくりが重要であると考えております。長期的な安定経営には、人財が必要不可欠であり、見識、胆識、洞察力の優れた立派なリーダーを育成することが重要であることから、人は財産であるという考えのもと、当社グループでは、「人材」ではなく「人財」と表現し、次のような経営理念と社訓を掲げております。
「経営理念」
・ 社員のため
・ 社員の家族のため
・ 顧客・取引先のため
・ 株主のため
・ 地域社会のため
・ ひいては国家のために当社を経営する
「社訓」
・ 我々はフジ住宅の社員である
・ 我々は熱意と誠意をもって仕事に接しよう
・ 我々は自己の仕事の責任と重要性を認識しよう
・ 我々は感謝と奉仕の精神をもって仕事をしよう
・ 我々は顧客・取引先に感謝されるような仕事をしよう
経営理念は、「社員のため」「社員の家族のため」から始まります。これは、社員と社員の家族が幸せでなければ、お客様に心から喜んでいただける仕事はできないと考えているためです。社員とその家族を大切にし、全社員が感謝の気持ちや仕事に対しての誇り、やりがい、生きがいを持つと、社員のモチベーションが高まり、社員は心からお客様を大切にすることができます。その結果、お客様をはじめ、お取引先様、株主様、地域社会、国家へと全てのステークホルダーの幸せに繋がっていくと考えております。
上記の経営理念・方針を活かしながら、人財の成長に合わせて事業を拡大するという考えのもと、過去からの営業地域のさらなる深耕を図るとともに、府下最大のマーケットである大阪市内をはじめ大阪府北部地域及び兵庫県南部地域への積極的な地域拡大を図り、収益力の向上及び財務体質の強化を推進することにより、お客様、お取引先様、株主様から常に信頼され、事業を通じて社会のお役に立てる企業となることを目指しております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
(安定した収益の確保)
不動産業界は好不調の激しい業界であるため、長期的な安定経営を行うことが重要と考え、不動産事業の中での多角化によるバランス経営を図るとともに、大阪府全域、兵庫県南部及び和歌山県北部を主たる営業地盤として地域密着型経営を行っております。
当社グループは、地域に根付いた住宅提供事業者として、新築戸建住宅、分譲マンション、改装付中古住宅の販売、土地有効活用提案によるアパート建設、サービス付き高齢者向け住宅建設、個人投資家向け一棟売賃貸アパート販売、分譲マンション管理、賃貸管理、建設関連など住宅・不動産に関するあらゆる住まいのワンストップサービス企業としてお客様に心から喜んでいただける商品及びサービスの提供に取り組んでおります。また、大きな景気変動下でも揺るがない経営体質を保持し、つぶれない会社づくりをするため、土地有効活用事業や賃貸及び管理事業の非分譲事業の比率を高める等、賃貸収入を生むストック型ビジネスを拡大することで継続的に安定した収益を確保しております。
今後も引き続き、これまでに培ったお取引先様等との協力関係を基礎として、売りっぱなし建てっぱなしにしないお客様に顔を向けた責任のとれる住まいづくりを着実に実行し、長期的な安定経営を目指して参ります。
(ESGに関する取組み)
当社グループでは、2021年12月14日の取締役会にて、以下のとおりサステナビリティ基本方針を決議いたしました。
「当社グループは『社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する』という経営理念のもと、創業以来、事業活動を通じて社会貢献活動に取り組んで参りました。国連で採択された『SDGs』(持続可能な開発目標)等、社会課題に対する企業が果たす役割の重要性が増しております。ESG(環境・社会・企業統治)及びSDGsと地域密着型経営である当社の事業活動との関連を意識し、社会貢献に取り組むことにより、今後も社会とともに持続的に成長し、信頼される企業グループを目指して参ります。」
サステナビリティ基本方針に基づき、以下の取り組みを実施しております。
(3)目標とする経営指標
当社グループは、企業価値の向上と継続的な成長を図り、企業の経営効率を判断する指標である自己資本当期純利益率(ROE)を重要な経営指標として意識し、10%以上を目標としております。
また、財政状態の安全性及び健全性の確保のため、自己資本比率25%以上を目標としております。当社グループは不動産事業の多角化によるバランス経営を行っていることから、事業形態が異なる事業部門ごとに、定期的に事業部門別貸借対照表を作成することや、事業形態ごとに売上高に対する在庫の金額をコントロールする目標比率を設定し、事業部門ごとに在庫の回転状況を検証しております。また、全社的な安全性の指標として、在庫に対する有利子負債の額をコントロールする目標比率や、急激な土地の時価下落に備えるため純資産額に対する在庫の金額をコントロールする目標比率を設定しており、これらの指標についても定期的にモニタリングを行うことで、経営のさらなる安定化と収益力の向上を目指しております。
2022年5月10日に公表しました中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の最終年度となる2025年3月期の業績目標は、以下のとおりであります。
|
2025年3月期計画 |
連結売上高 |
1,218億円 |
連結営業利益 |
70億円 |
連結経常利益 |
66億円 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
44億円 |
(4)報告セグメントごとの経営環境
① 分譲住宅事業
分譲住宅事業では、地域密着型経営の強みを活かし、良質な分譲用地の選別や、お客様のニーズへの対応等を図り、顧客満足日本一を目指しております。また、長期的には少子高齢化が進むにつれ新築住宅市場は縮小するため、厳しい環境になっていくことが予想されます。しかしながら、住宅業界は特定の大手企業が寡占している状態ではなく、地元の工務店や中小企業等、数多くの不動産会社が存在している業界であるため、更にシェアを増やすことができると考えております。また、新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワークの定着といった新しいワークスタイルや生活様式の変化に合わせて快適な住空間を求める世帯が増加し、住宅の購入意欲や住宅性能への関心も高まっております。
当社グループは、特許取得システム「炭の家」の使用権を当社グループ営業地域内(大阪府・兵庫県の一部・和歌山県の一部)で取得しております。「炭の家」は、炭の自浄作用を活用して外気からの有害物質を除去する独自の換気システムであり、新築戸建住宅ではこの換気システムを採用した「炭の家/ピュアエア」を販売しております。
新築戸建住宅の建築にあたっては、耐震や耐風性能と同時に、通風と気密性を両立させたフジ住宅独自の「FX-WOOD 工法」を採用する等により、国土交通省で定められた住宅性能表示制度で最も高い耐震性を表す耐震等級3を実現し、また、地震の揺れを大幅に低減する制震ダンパーを採用する等、強度や耐震性、耐久性を追求した住まいづくりを行っております。更に、従来のクオリティを維持しながらシンプルなデザインで低価格帯を実現した「S・O・U」、生活動線がコンパクトで、デザイン性、耐震性に優れた平屋のメリットを活かした「HIRANAGI」の販売を開始し、多様なユーザーニーズに応えられるよう、「炭の家/ピュアエア」、「S・O・U」、「HIRANAGI」のスリーブランド戦略を展開しております。
分譲マンションにおいては、従来の「シャルマンフジ」シリーズに加え、これまでに培った住まいづくりの知恵と技術を集結し、都市生活にふさわしいマンションの在り方を追求した都市邸宅マンション「ブランニード」を販売し、幅広いエリアでお客様のニーズに対応できるマンションの供給を行っております。
このように、独自の商品による競合他社との差別化を図り、お客様にとって安心できる住まいを提供しております。引き続き地域密着型経営を行い、事業の拡大を図って参ります。
② 住宅流通事業
新築住宅に比べ低価格帯である中古住宅の需要は根強く、当社グループでは、新築住宅に加えて中古一戸建住宅や中古マンションを取り扱うことによって、住宅販売におけるバランス経営の強みを活かしております。また、既存住宅を活かし再生させる住宅流通事業は、古くなった住まいを再生して新しく不動産流通市場に供給することで、新築住宅の建築と比較して二酸化炭素の排出量や木材の使用量等を大幅に抑えられることから、持続可能な社会へ貢献することができる事業となっております。
当社グループの住宅流通事業では、仕入れからリフォーム、引渡し、更にアフターサービスまで一貫して当社が管理しております。リフォーム工事は協力業者にて施工していただきますが、中古住宅の建物の品質チェックや、リフォームプランの作成、工事完了チェックは当社が直接行い、安心できる中古住宅を提供する体制を整えております。
中古住宅販売は新築住宅に比べ低価格帯である中古住宅を取り扱うため、1物件当たりの利益額は少なくなりますが、取り扱い物件数を増やすことでセグメント利益を確保する事業です。そのため、物件取得から引渡しまでの在庫保有期間が長期化することは、資金効率を低下させ、財務体質の悪化を招く可能性があります。当社グループでは、良質な中古住宅を仕入れて、在庫保有期間は半年を目途に設定し、在庫回転率を意識した効率的な販売を行うことで、収益及び資金の両面からバランスのとれた経営を行って参ります。
③ 土地有効活用事業
建築コストの上昇等により厳しい事業環境が続いておりますが、土地有効活用事業は資産承継や相続税対策を背景とした需要の高い事業であります。そのため、個人投資家向け一棟売賃貸アパートについては引き続き需要が見込まれる状況となっております。また、少子高齢化が進むにつれて、今後もサービス付き高齢者向け住宅の需要が一層高まっていくことが予想されます。
当社グループの土地有効活用事業では、既にご契約をいただいているお客様や金融機関からのご紹介による土地オーナー様、会社経営者様に対し100%紹介営業を行っております。そのため、オーナー様及び紹介者様の信頼を裏切らないよう、専門スタッフによる賃貸業者へのヒアリングや周辺物件の稼働状況確認等の綿密な市場調査を経て、アパート等の経営をするには厳しい立地である等、オーナー様にとって有益とならないと当社グループが判断した場合は、建築請負をお断りしております。更に、当社グループでは土地有効活用事業で建設した建物を一括して借上げし、入居者様に転貸する一括借上システムを取り入れ、完成後の運用管理についてもサポートを行っております。このような経営姿勢によって、既オーナー様のリピート受注率は競合他社と比べて高くなっており、引き続きリピート率のさらなる向上を目指すとともに、「日本一愛される土地有効活用事業部」を目指した経営を行って参ります。
④ 賃貸及び管理事業
今後、人口流入や少子高齢化により、都市部における賃貸住宅及びサービス付き高齢者向け住宅の需要の拡大が予想されます。良質の賃貸・管理サービスは提案型の建築請負の営業支援となり、引渡し後の賃貸管理の引き受けと併せて、土地有効活用事業と相乗効果が高い事業となっております。
土地有効活用事業で建設して一括借上を行った建物の管理については、原則として週2回の共用部分の清掃を実施し、入居者様からのお問い合わせや設備のトラブルに24時間365日対応可能な専属チームを設置する等、入居者様に安心して長くお住まいいただくための住環境の整備を行っております。
サービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」では、「自分の親を安心して預けられる住まい」をコンセプトに、介護業者スタッフが24時間常勤し、巡回や見守りを行い安否確認を万全に整える等、安心・安全なサービスの確保や、健康面でバランスのとれた食事の提供を行っております。また、全戸個室でありながら家賃は低価格を実現する等、入居者様や入居者様のご家族の様々なニーズに応えております。
経営のさらなる安定化を目指し、非分譲事業である賃貸及び管理事業の比率を高め、継続的に安定した収益の確保を行うため、引き続き顧客満足度の高いサービスの提供に注力して参ります。
⑤ 建設関連事業
建設関連事業では、民間工事や公共工事等、様々な建築工事を行っており、建築物においても建築一式工事をはじめ、給排水工事、外構工事、リフォーム、解体工事など多種多様な施工実績を誇っております。また、当社グループ内では、サービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」において木造以外の住宅提供を行うほか、新築分譲マンションの施工にも取り組んでおり、協業範囲は順調に拡大しております。これらの豊富な実績により卓越したノウハウを蓄積しており、質の高い建築工事を施工し続けております。高い品質はもちろん、適切な工期を実現しながら、引き続き安全に最善を尽くした施工を行って参ります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
① 優秀な人財の採用及び育成並びに働き甲斐のある環境の整備
当社グループの長期的な安定経営を継続するためには、能力と熱意を兼ね備え、当社グループの経営理念・方針や価値観に共感する優秀な人財を採用すること、また、そのような人財が長期にわたってやりがいを感じるとともに明るく元気にイキイキとストレスのない働きやすい就業環境を整備することが、重要であると考えております。また、業績向上の原動力は、経営理念・方針や価値観を理解、実践する人財の育成にあると考え、そのための施策として、会長または社長自らが役職員と直接対話する「会長・社長への質問会」を定期的に開催し、質問者一人ひとりと電話ミーティングを行い、仕事のみならず、プライベートの悩み・問題まで解決に努める取り組みを行っております。更に、役員を含め社員、パート社員全員が全員を評価する人事評価システムを採用し、直属の上司からの評価にとどまらず、他部署を含めた部下や同僚等全方面から評価する360度の公正・公平な人事評価・査定を行うことで、年齢・性別による区別や職務範囲を限定することなく実力・実績に応じた役職に登用しております。加えて、社員の専門的かつ高度な知識獲得のために資格取得支援制度を充実させることで、各種業務資格の取得を促進しております。働きやすい環境の整備としましては、いつでも電話相談できる健康相談ダイヤルの積極的な活用推奨、テレワークによる柔軟な働き方の推進、パート社員を含めた全役職員を対象とする診断項目の充実した健康診断の実施、部屋型の高気圧酸素ボックスを社内に設置することで打ち合わせや休憩に利用できるようにする等、多様性を尊重し、社員が働きやすく、健康を維持できる就業環境づくりを行っております。当社グループは、社員の健康管理に積極的に取り組む企業として、経済産業省が東京証券取引所と共同で選定を行う「健康経営銘柄」に2016年、2018年、2019年の3回選定されました。また、2023年3月8日付で経済産業省が日本健康会議と共同で認定を行う「健康経営優良法人2023 大規模法人部門(ホワイト500)」にも認定されました。こちらは初年度より7年連続での認定となっております。2024年3月には、厚生労働省「がん対策推進優良企業」表彰において、当社が優良企業として2023年に引き続き2回目の表彰を受けました。これらは、経営トップが先頭に立ち、全ての社員が健康への意識を高め、心身の健康を維持できるよう、枠にとらわれない様々な環境を整えていることを評価いただいたものと認識しております。更に、2023年2月21日には当社グループの「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」が認められ、一般社団法人日本テレワーク協会主催の「第23回テレワーク推進賞」において2回目となる「優秀賞」を受賞いたしました。当社グループのこのような取組みは、優秀な人財の採用に繋がり、採用活動において、実際に優位性を保てております。
今後も引き続き、社員の健康保持・増進に向けた取組みを全社一丸で行い、社員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的な取組みによる企業価値の向上を通じてお客様をはじめ、お取引先様、株主様、地域社会、国家と全てのステークホルダーへの社会的責任を果たすべくこれからも邁進して参ります。
② 気候変動リスクへの対応
当社グループは「OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション」の活動に参加しており、同会の設立目的である『「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する一層野心的で先進的な取組みを大阪から具体化し、これを全国へと波及させることによって、わが国が目指す2050年の脱炭素化社会実現における先導的な役割を果たしていく』に賛同しており、今後活動領域を広げて参ります。中でも、当社グループでの脱炭素の取組みとして、和歌山県の「企業の森」事業による、森林保全・管理活動に係る協定を締結し、和歌山県日高郡日高川町の2.16ヘクタールの森林を「フジ住宅の森」と名付けて、当社グループのボランティアによる植林並びに育林活動を行っております。この活動は、当社の45周年記念事業として2019年4月に第1回目の植林活動を開始して以来、年1回のペースで活動しており、2023年11月には第5回目の育林活動を行いました。今回の活動では、第1回目の植林時には40センチほどであった苗木が人の背丈ほどの木々に成長していることを確認しております。また、当社の「フジ住宅炭の家/ピュアエア」では、換気に伴う熱エネルギーの喪失を防ぐ「全熱交換システム」を採用し、省エネに配慮した住宅をお客様にご提供しております。今後におきましても、ステークホルダーの皆様との対話や積極的な情報開示を行いながら、社会と企業の持続的成長を目指して参ります。
③ 既存事業による収益基盤の維持・強化
好不調の激しい不動産業界においては、長期的な安定経営を行うことが重要と考えております。昨今、土地価格は上昇もしくは高止まりの状況が続いており、加えて、建築費の高騰も続く等、当社グループを取り巻く環境は厳しさを増しております。そのような環境下でも安定した経営体質を保持するため、当社グループでは、分譲住宅事業、住宅流通事業、土地有効活用事業、賃貸及び管理事業、建設関連事業と不動産事業の中での多角化を図っております。経営の安定化・つぶれない会社づくりを重視した基本方針を継続し、安定した収入を確保するためストック型ビジネスを一層強化することは経営上重要であると考えております。賃貸アパート及びサービス付き高齢者向け住宅の一括借上事業や中古住宅アセット事業、サービス付き高齢者向け住宅の自社保有といった非分譲事業の比率を高めることにより、経営のさらなる安定化を目指して参ります。
④ DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
経済状況や社会情勢の変化が急速に進む現代社会において、時代の変化に即した商品・サービスの提供、加えて働き方改革等の労働環境の変化に対応するためには、変化に強い基盤システムを構築しDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めることは重要事項であると考えております。当社グループでは、変化に強いシステム基盤の構築を目指す上で次世代基幹情報システム構築プロジェクトを推進しております。これにより、豊富な用地情報の全社的な活用、複数部署でのデータ連携強化、生産性向上等、社内全体の業務効率向上を目標としております。次世代基幹情報システム構築プロジェクトを推進することで、継続的かつ長期的に企業価値を高め、迅速かつ丁寧な顧客対応やサービスの提供を行い、顧客満足度の向上を目指して参ります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する」という経営理念のもと、創業以来、事業活動を通じて社会貢献活動に取り組んで参りました。当社グループの「サステナビリティ基本方針」に基づき、ESG及びSDGsと地域密着型経営である当社の事業活動との関連を意識し、社会貢献に取り組むことにより、今後も社会とともに持続的に成長し、信頼されるグループを目指して参ります。
(ガバナンス)
取締役会は、経営環境の変化に対応した競争優位性の高い戦略を策定し、スピーディーな意思決定を行うため、原則月1回開催し、緊急を要する案件があれば、書面決議による開催をしております。取締役会には社外取締役も出席し、独立性の高い立場から助言を受けることで取締役会の監督機能を高めるとともに、活発な議論が交わされるように努め、合議制により公正・迅速な意思決定を行っております。
また、内部統制推進委員会の分科会として「TCFDワーキンググループ」を設置し、気候変動が当社の事業に与える影響の把握を行い、取締役会に報告を行っております。取締役会は人的資本経営に関して、経営トップが主導する健康推進の施策を実行する健康推進チームより年1回、以下の報告を受け、モニタリングしております。また、設定した対応策や目標を監督しております。
・健康推進に関する取組施策の実施状況
・健康診断結果等のデータから分析した健康課題
・ストレスチェックの実施及び集団分析
(リスク管理)
代表取締役社長を委員長とする内部統制推進委員会及びリスク・コンプライアンス推進委員会は、当社グループ全体のリスクマネジメントを統括・管理し、十分討議し対策を検討するほか、特に重要なものについては取締役会で審議する体制となっております。また当社は、気候変動リスクを中長期的に大きな影響を与えるリスクの一つと認識し、2022年4月に内部統制推進委員会の分科会として「TCFDワーキンググループ」を設置いたしました。「TCFDワーキンググループ」は、気候変動の影響について洗い出し、洗い出したリスクを特定・分類するため、社内の関係部署とグループ会社の協力を仰ぎながら状況の把握を行っております。
なお、サステナビリティに関する具体的な取り組みは次のとおりであります。
環境に配慮した事業活動として、既存住宅を活かし再生させることで、新築住宅に比べ二酸化炭素排出量・廃棄物が大幅に抑えられ資源の節約となる中古住宅再生事業を行っております。また、新築戸建住宅においては、セルローズファイバー(天然系断熱材)の使用や省エネに配慮した戸建住宅(フジ住宅の炭の家)の供給を行っております。その他、2019年4月より活動を開始した植林・育林を行う植樹ボランティア「フジ住宅の森」等の取り組みを行っております。
地域貢献においては、少子高齢化が進む中「自分の親を安心して預けられる住まい」をコンセプトにしたサービス付き高齢者向け住宅の展開、本社ビル周辺の環境美化活動、青色回転灯を装備した自動車により地域の子どもの見守り活動を行う青色防犯パトロール等に取り組んでおります。
当社グループの事業は、全て不動産に関連する事業であることから、不動産市況、住宅関連税制、住宅ローン金利水準等による購買者の需要動向、各種不動産法規の改廃、建築資材の原材料の価格動向等に影響を受けております。当社グループの事業展開においてリスク要因となる可能性が考えられる主な事項は、以下のとおりであります。当該リスクが当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす金額は不明ですが、リスクが顕在化した場合は、事業継続の観点から、純資産の範囲内で賄えることが、リスクの最大の許容量と考えております。当該リスクの顕在化する可能性は、常にあるものと認識し、それぞれ対応策を講じております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1)法的規制について
当社グループの属する不動産業界は、宅地建物取引業法、建設業法、建築基準法、建築士法、都市計画法、住宅の品質確保の促進等に関する法律、マンションの管理の適正化の推進に関する法律等の様々な法的規制を受けております。当社グループでは、上記の法令を遵守するためにコーポレート・ガバナンス及びコンプライアンス推進体制を強化するとともに、法務部門が作成した法令遵守のチェックリストを用い、関係各部署による宅地建物取引業法及び建設業法のセルフチェックを行っております。また、内部監査部門による宅地建物取引業法・建設業法コンプライアンス監査を実施しております。
しかしながら、今後、これらの法令等の改正や新たな法令等の制定により規制強化が行われた場合には、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは事業活動を継続していくために、以下の免許、登録、許可を得ております。現在、当該免許、登録、許可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、今後何らかの理由によりこれらの免許、登録、許可の取り消し等があった場合、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
会社名又は 事務所名称 |
許認可等の名称 |
許認可登録番号 |
有効期間 |
許認可等の取消事由 |
フジ住宅㈱ |
宅地建物取引業者免許 |
国土交通大臣 |
2023年10月18日 ~ 2028年10月17日 |
宅地建物取引業法 |
フジ住宅㈱ |
特定建設業許可 (建築工事業、内装仕上工事業、土木工事業) |
国土交通大臣 |
2022年10月3日 ~ 2027年10月2日 |
建設業法 |
フジ住宅㈱ 一級建築士事務所 |
一級建築士事務所登録 |
大阪府知事 |
2023年11月5日 ~ 2028年11月4日 |
建築士法 |
フジ住宅㈱ 一級建築士事務所 |
一級建築士事務所登録 |
大阪府知事 |
2023年3月8日 ~ 2028年3月7日 |
建築士法 |
フジ・アメニティ サービス㈱ |
宅地建物取引業者免許 |
大阪府知事 |
2020年7月7日 ~ 2025年7月6日 |
宅地建物取引業法 |
フジ・アメニティ サービス㈱ |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づくマンション管理業者登録 |
国土交通大臣 |
2020年7月30日 ~ 2025年7月29日 |
マンションの管理の適正化の推進に関する 法律第83条 |
フジ・アメニティ サービス㈱ |
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に基づく賃貸住宅管理業者登録 |
国土交通大臣 (01)第000532号 |
2021年8月14日 ~ 2026年8月13日 |
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する 法律第23条 |
雄健建設㈱ |
特定建設業許可 (土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、熱絶縁工事業、建具工事業、水道施設工事業、解体工事業) |
大阪府知事 (特-6)第51771号 |
2024年4月1日 ~ 2029年4月1日 |
建設業法 |
雄健建設㈱ |
一般建設業許可 (電気通信工事業) |
大阪府知事 (般-6)第51771号 |
2024年4月1日 ~ 2029年4月1日 |
建設業法 第29条 |
(2)棚卸不動産の評価について
当社グループは不動産販売業という性質上、棚卸不動産の評価が損益に直接的な影響を与えるため、この評価を誤ると財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業用地の仕入れに際して、営業面、資金面、リスク等について、事前に関係各部署が十分に協議し、その結果を踏まえて仕入れを行っております。しかし、土地を取得し開発及び宅地造成を行い、建物を建築し販売を完了するまでの工事期間が長期にわたるため、その間の不動産市況の悪化等により、販売を開始したものの当初計画どおりに契約獲得が進まず、販売可能価額の再設定が必要になる場合があります。また、開発計画時において予期し得なかった事象の発生に伴う工事の長期化や遅延、変更、中断等が生じた場合にはコストが増加し、結果として当初想定の利益が見込めなくなります。
以上のことから、棚卸不動産については、販売可能性を考慮した最新の販売可能価額を把握するとともに、期末時点の見積追加原価及び見積販売経費を控除した正味売却価額を算出し、期末ごとに正味売却価額と簿価を比較し、簿価切り下げ要否の判断を行っております。
なお、今後におきまして開発計画時に予期し得なかった事象の発生に伴う工事の長期化や中断、その他不動産市況の悪化等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)有利子負債について
当社グループは、「幸せはこぶ住まいづくり」、「買っていただいたお客様に幸せになっていただくこと」を事業の目的とし、売りっぱなし建てっぱなしにしないお客様に顔を向けた責任のとれる住まいづくりを経営の基本として事業を展開しており、当社グループの経営姿勢を理解してくださる多数の金融機関から好意的に融資を受けることができております。
当社グループにおいては、原則として分譲住宅事業のプロジェクト案件ごとに、用地の取得資金と開発費用等そのプロジェクトの推進に必要な資金を、プロジェクトの期間に応じて短期借入金、長期借入金での調達を行っており、有利子負債残高の合計額は総資産に対して比較的高い水準で推移しております。また、運転資金については、原則として手持資金で賄うこととしておりますが、資金繰り弾力化のため、当座借越枠をはじめ、一部短期借入金、長期借入金及び社債発行により調達することがあります。
近年においては、低金利の継続により、金利負担は比較的低水準で推移しておりますが、金融機関からの金利の引き上げ要請があった場合、または将来において金融引き締めの影響等で金融機関から返済を迫られ、新たな融資を受けることができなくなった場合は、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループは、金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しており、棚卸不動産の仕入れに係る資金調達の一部に活用しております。当該契約においては、一定の担保制限条項及び財務制限条項が付されており、当該条項に抵触した場合には当該借入金の返済義務が生じる可能性があり、その場合は当社グループの財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(4)災害等によるリスクについて
当社グループは、社員の安全・健康を事業経営の基盤と捉え、今後想定される南海トラフ地震等に備えるため、当社グループ保有の事務所の耐震診断及び耐震補強工事の実施、大地震対応マニュアルの作成や緊急連絡・安否確認システムの構築、災害備蓄品の設置等を行っており、更にBCP(事業継続計画)研修・演習の取り組みを実施しております。また、当社グループは、棚卸不動産・事業用固定資産等の様々な不動産を保有しております。地震や火災、その他の災害に備えて、当社グループの純資産が大幅に棄損しないように、保有資産の規模・重要性等を考慮した上で、適切な火災保険・地震保険・損害保険等に加入しております。しかしながら、当社グループは、大阪府全域、兵庫県南部及び和歌山県北部を主たる営業地盤として地域密着型経営を行っているため、近畿地方を中心とした南海トラフ地震等の災害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(5)原材料・資材価格等の高騰について
建築コストは用地仕入価格とともに売上原価の主要項目であり、国内外市場の動向等により原材料・資材・物流等の価格が上昇した場合は、上昇分に応じて販売価格に転嫁しております。しかしながら、想定を上回って建築コストが上昇し、販売価格へ転嫁することが難しい場合は、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(6)契約不適合責任について
当社グループの不動産販売事業において、新築住宅は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)及び宅地建物取引業法の規定に基づいて、構造耐力上主要部分と雨水の浸入を防止する部分については引渡し後10年間、その他の部分については引渡し後2年間の契約不適合責任を負っております。中古住宅は、宅地建物取引業の規定に基づいて、引渡し後2年間の契約不適合責任を負っております。また、請負物件については、品確法の規定に基づいて、構造耐力上主要部分と雨水の浸入を防止する部分については引渡し後10年間、その他の部分については引渡し後2年間の契約不適合責任を負っております。
当社グループは、建設工事の工程ごとにチェックリストを用いて完了チェックを行い、品質管理に万全を期しております。しかしながら、当社グループの販売した物件や請負った物件に契約不適合があった場合には、契約不適合責任に基づく当該不適合部分の補修や損害賠償、契約の解除等により予定外の費用を負担せざるを得ないことがあり、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)人財の確保・育成について
当社グループは、長期的な安定経営を行うことを基本方針とし、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ①優秀な人財の採用及び育成並びに働き甲斐のある環境の整備」に記載のとおり、優秀な人財の採用及び育成とストレスのない働きやすい就業環境を維持することが重要課題であると認識しております。近年、少子高齢化の進行と労働人口の減少、価値観や働き方の多様化等、労働市場を取り巻く環境は大きく変化しておりますが、今後も継続的に優秀な人財を採用し、社員が働きやすく長く活躍できるような環境を維持して参ります。しかしながら、当社グループの求める人財を十分に確保・育成することができなかった場合は、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、宅地建物取引業法、建設業法、建築士法等の法律上要求される宅地建物取引士、一級建築士等の国家資格をはじめとする各種資格や技能を有する人財の確保が必要であるため、資格取得支援を充実させることで各種資格の取得を促進しております。しかしながら、宅地建物取引業法、建設業法及び建築士法上の法定有資格者を適正に配置できない場合には免許や許可の取り消しの可能性もあり、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)外部の協力業者へ委託している業務について
当社グループは、建設工事における施工面の大部分を外部の協力業者へ委託しております。社員や取引先等の関係者を通じて協力業者を紹介していただく等、積極的な新規開拓に取り組むとともに、既存の協力業者に対しては、年に1回開催の現場協力会大会及び毎月開催される安全衛生協議会で当社グループの経営理念の共有及び安全・品質管理の徹底等を行うとともに、表彰制度や健康診断のご案内と実施、協力業者にとって有益な書籍等の情報発信を行うことによって良好な関係の維持・強化を図っております。しかしながら、当社グループの選定基準に合致する協力業者を十分に確保できなかった場合や、協力業者の経営困難や労働者不足に伴う工期の遅延や外注価格が上昇した場合等には、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(9)個人情報の管理について
当社グループは、事業を通して取得したお客様の個人情報を多数取り扱っております。当社グループにおいては「個人情報の保護に関する法律」に基づき、プライバシーポリシーを策定し個人情報の取り扱いに関する当社グループの姿勢・考え方を公表するとともに、社内規程の整備、管理体制の構築を行い、システム対策を含め情報セキュリティについては想定しうる対策を講じております。しかしながら、これらの対策にもかかわらず高度なサイバー攻撃による不正アクセスやコンピュータウイルスによる被害、また、パソコンの盗難や業務上の過失等、何らかの原因により、重要な情報が外部に漏洩した場合には、当社グループの信用力の低下や多額の損害賠償の請求等によって、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(10)気候変動リスクについて
当社グループは、気候変動は事業活動に影響を与える課題と認識しており、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略 (ESGに関する取り組み)及び(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ②気候変動リスクへの対応」に記載のとおり、環境保全に配慮した事業活動及び社内活動を実施しております。TCFDへの対応については、2022年4月12日の取締役会において内部統制推進委員会の分科会としてTCFDワーキンググループ(以下、「本グループ」)を設置することを決議しました。
本グループにおいて、次の事項について協議しております。
① 気候変動が当社の事業活動に与える影響の把握及びTCFD提言に基づく情報開示の内容の策定
② サステナビリティ基本方針に基づいた取り組みの状況の確認及び取り組みの推進
今後、大規模な気候変動の発生により、経済環境や社会環境の変化が発生した場合、不動産需要の低下、地価等の下落、個人消費の低迷等が起こる可能性があり、また、環境問題に関する法令等の強化等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(11)サイバーセキュリティについて
当社グループは、事業の円滑・効率的な運用等を目的として、ITシステムの利活用を推進しております。近年のデジタル技術の著しい発展の一方で、サイバー攻撃手法の高度化・巧妙化も進んでおり、当社グループでは、電子情報セキュリティ規程等を定め、サイバーセキュリティの体制整備を行うとともに、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種情報セキュリティ対策に加え、役職員向けに不審メールへの対応訓練を実施しております。しかしながら、不正アクセスやサイバー攻撃を受け、重要なシステムの誤作動や停止、保有する機密情報の流出が発生した場合、社会的信用の失墜、事業活動の混乱や停滞、顧客・取引先への補償等が発生し、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、約40年ぶりに物価が上昇し、マクロ経済環境の大きな変化が生じました。一方、円安を背景に企業業績は好調を持続した結果、春闘における平均賃上げ率は約30年ぶりの高い伸び率を記録し、更に2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行とインバウンドの本格回復等もあり、経済社会活動の正常化が進みました。これを受けて日銀は2024年3月、2024年春闘での大幅賃上げを確認後、マイナス金利を柱とする大規模金融緩和の解除を決定、17年ぶりに政策金利を引き上げることとなり、景気の好循環に向けた第一歩を踏み出しました。また、2024年3月には日経平均が史上最高値をつけ、株式市場も活況を呈するなど、四半世紀以上続いたデフレからの脱却がようやく現実味を帯びてきました。
不動産業界におきましては、住宅価格の上昇、世帯数・生産年齢人口の減少に伴い、当連結会計年度も新築住宅着工棟数は漸減となりました。特に「持ち家」で区分されるハウスメーカーは、販売価格が購買力を大きく上回り、着工棟数は前年同月を下回った状態が2年以上続いており、当社の「分譲住宅」についても「持ち家」ほどではないものの力強さを欠きました。新築分譲マンションは戸建以上に建築費高騰の影響を受けて販売価格は上昇又は高止まりが続いており、立地や価格帯による売れ行きの差が鮮明になりました。新築戸建及び分譲マンションにおいても、業績の維持、向上には販売戸数だけでなく、戸当り利益の確保が重要になりますので、事業者の販売戦略や体力によって明暗が分かれるようになったと言えます。また、金利に関しましては、住宅ローンの固定金利は上昇しましたが、変動金利への影響は軽微でありましたので、住宅取得意欲を削ぐまでには至らず、底堅さを保っていると見ています。一方、賃貸住宅の建築や取得に関しましては、投資家による需要は根強く、着工棟数は各社とも概ね堅調に推移しました。
このような状況のもと、当社グループは住宅・不動産に関するあらゆる住まいのワンストップサービス企業として、不動産事業の中での多角化によるバランス経営を図り、より収益性が高く効率性の高い賃貸及び管理事業の比率を高め、長期的な安定経営・つぶれない会社づくりを重点に事業を展開して参りました。
当社グループの対処すべき課題に対する当連結会計年度の主な取り組みは、次のとおりであります。
会社の成長を支える重要な経営基盤である優秀な人財の採用及び育成並びに働き甲斐のある環境の整備については、積極的なテレワークの活用による柔軟な働き方の推進やスニーカー通勤の奨励、昇降式スタンディングデスクの導入、毎日午後3時をストレッチの時間として設定する等、健康保持増進に向けた様々な取り組みを実施して参りました。また、健康診断では法定外検査項目の大腸がん、乳がんエコー、腫瘍マーカー、胃がんの原因にもなりうるピロリ菌検査、NT-proBNP検査に加え、2022年4月よりすい臓がん、胆管がん、胆のうがんを調べるCA19-9も導入しており、パート社員を含め全役職員が100%受診することを目標に設定し、過去10年以上受診率100%を達成しております。当連結会計年度においては、スポーツ庁による「スポーツエールカンパニー2024」に5年連続で認定され、また、厚生労働省「がん対策推進優良企業」表彰において、当社が優良企業として昨年に引き続き2回目の表彰を受ける等、当社の取り組みは公的にも高い評価を受けており、健康で働きやすい職場の整備に努めることで、優秀な人財の確保に向けた取り組みを進めております。
気候変動リスクへの対応については、脱炭素社会の実現に向けて、オフィスの照明のLED化、オフィスの最大需要電力を監視し電力コントロールを行うデマンド監視装置の設置、電子決裁システムや経費精算システムの導入による社内書類のペーパレス化といった環境保全に配慮したオフィス環境の改善を実施しております。また、全営業車にハイブリッド車を導入しているほか、和歌山県日高郡日高川町の「フジ住宅の森」では当社グループのボランティアによる植林並びに育林活動により二酸化炭素の削減に貢献しております。更に、当社の新築戸建住宅につきましては、換気に伴う熱エネルギーの喪失を防ぐ「全熱交換システム」を採用する等、省エネに配慮した住宅となっております。断熱材はその製造過程においてエネルギーの発生が少なく、天然系素材であり、リサイクル材を主原料とする「セルローズファイバー」を採用する等、省エネ住宅の供給に努めており、環境保全・地域社会への影響に責任をもった事業活動を行っております。
収益基盤の維持・強化については、連結子会社である雄健建設グループとの協業により、従来から取り扱っておりました木造のサービス付き高齢者向け住宅に加えて、より収益性の高い鉄骨造の取り扱いを推進しております。2022年2月に鉄骨造のサービス付き高齢者向け住宅(大阪府吹田市)が竣工し、2023年1月には他社が社宅として使用していた物件を中古物件として仕入れ、リノベーションしたサービス付き高齢者向け住宅(兵庫県西宮市)が竣工いたしました。新たな鉄骨造のサービス付き高齢者向け住宅の受注も進んでおります。商品ラインアップの充実化により、協業による相乗効果を高め、需要が高く、安定収益源に繋がる土地有効活用事業、賃貸及び管理事業を更に強化していく考えであります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進については、次世代基幹情報システム構築プロジェクトを軸に社内の業務効率化を進めております。これまでの成果として、分譲戸建住宅、分譲マンションの工程管理システム、アフターサービスの管理システムを刷新し、全社的な業務効率化に繋がるシステムの運用を開始いたしました。今後は、用地情報の管理システムの刷新や経営計画の策定に係る業務効率化を目的とした原価管理のシステム構築を進める予定であります。また、電子契約及び契約書管理サービスを導入し、新築分譲住宅契約者様の9割以上、賃貸管理物件の入居者様の8割以上の方と電子契約を締結しております。電子契約を用いることで、当社の業務効率化に繋がるだけでなく、お客様の手続き及び費用負担の削減にも効果が出ております。今後は、中古住宅の売買契約にも電子契約の導入を拡大していく予定であります。また、昨今深刻さを増しているサイバー攻撃対策については、業務用パソコンへのウイルス対策の強化、標的型攻撃メールに対しての全社的な訓練、データ暗号化対策等を実施しております。サイバーセキュリティを強化しながら、今後もさらなる業務効率化と顧客満足度の向上を目指し、次世代基幹情報システム構築プロジェクトを中心にDXを推進して参ります。
また、対処すべき課題としまして、SDGs及びESGへの取り組みがあげられます。
当社は地域密着型経営を標榜しており、特に「社会」との関わりにおける社会貢献活動や従業員の健康や働きやすさに配慮した諸施策等については前段のとおりであり、更に、2023年4月に株式会社中国銀行より5億円、2024年3月に株式会社池田泉州銀行より5億円の「サステナビリティ・リンク・ローン」を用いた融資を受けました。これらの融資は、当社グループにてSDGsに関連する企業目標を設定し、その目標達成状況に応じて借入金利が変動するものであり、目標の達成にインセンティブを設定することで、サステナビリティ経営の高度化を図ることとなります。当社グループは、サービス付き高齢者向け住宅において日本一の運営棟数を誇り、これはSDGsの「すべての人に健康と福祉を」「住み続けられるまちづくり」に関連する事業でもありますので、融資の目標設定として、今後もサービス付き高齢者向け住宅の供給を年間約5%増加させることといたしました。高齢化社会における安心・安全な住まいの普及に役立てるとともに、さらなる企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた取り組みを一層発展させて参ります。その他ESGに関する当社の取り組みの概要につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略」に記載しております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より売上高に係る表示方法の変更を行っており、前期の数値を組替後の数値で比較分析を行っております。
(分譲住宅セグメント)
自由設計住宅は、コロナ禍における「住宅特需」が一巡し、前連結会計年度末の受注残高が減少したことで想定どおり引渡戸数が大きく減少しました。一方で、分譲マンションは、大阪南エリアでは竣工時一棟全戸引渡しを含め引渡戸数が大きく増加しました。しかしながら、販売単価が高い大阪北エリアの引渡戸数が大幅に減少することとなりましたので、引渡戸数は微増となりました。その結果、当セグメントの売上高は前連結会計年度を下回りました。当連結会計年度の戸建自由設計住宅等の引渡戸数が537戸(前期は623戸)と前連結会計年度に比べて大幅に減少しましたが、分譲マンションの引渡戸数が239戸(前期は214戸)と前連結会計年度に比べて増加した結果、当セグメントの売上高は35,461百万円(前期比2.8%減)となりました。一方で、利益率が大きく改善したことに加えて、広告宣伝費を中心に販売費及び一般管理費が減少したことにより、セグメント利益は1,856百万円(前期比50.1%増)となりました。
(住宅流通セグメント)
近年、価格の上昇が顕著な新築分譲住宅に比べ、割安な中古住宅に対する需要は根強く、中古マンションは、引渡戸数は減少しましたが、販売単価の上昇により引渡戸数の減少を補い売上高が増加しました。一方で、中古一戸建は、引渡戸数が大幅に減少したため、売上高が前連結会計年度を大きく下回りました。仕入れ厳選方針の継続により収益性も安定し、当連結会計年度は収益性の高い中古住宅アセット事業の賃貸入居者付き中古住宅販売が好調でありましたが、当連結会計年度の中古住宅の引渡戸数は1,016戸(前期は1,077戸)となり、前連結会計年度に比べ減少しました。その結果、当セグメントの売上高は24,881百万円(前期比2.9%減)と前期並みとなりましたが、利益率が下降したことにより、セグメント利益は909百万円(前期比33.6%減)となりました。
(土地有効活用セグメント)
当連結会計年度の個人投資家向け一棟売賃貸アパートの引渡棟数が137棟(前期は125棟)と12棟の増加となったこと及び一棟当たりの販売価格の上昇により売上高は大きく増加し、賃貸住宅等建築請負及びサービス付き高齢者向け住宅の引渡件数も59件(前期は29件)と大幅に増加することとなりました。また、新規受注が好調で建築請負工事が順調に進行したことにより売上高は増加しました。その結果、当セグメントの売上高は31,907百万円(前期比20.1%増)となり、セグメント利益は2,952百万円(前期比33.2%増)となりました。
(賃貸及び管理セグメント)
主として土地有効活用事業にリンクした賃貸物件の引渡しに伴い管理物件の取扱い件数が増加したこと並びに前連結会計年度に自社保有のサービス付き高齢者向け住宅が増加したことにより、当セグメントの売上高は28,027百万円(前期比7.9%増)となり、セグメント利益は3,400百万円(前期比9.3%増)となりました。
(建設関連セグメント)
当連結会計年度における建設工事が工程どおりに順調に進捗し、受注契約高が増加したことにより、当セグメントの売上高が2,305百万円(前期比0.3%増)となったものの、利益率が下降したことにより、セグメント損失19百万円(前期はセグメント損失14百万円)となりました。
(その他セグメント)
その他セグメントにおいては、保険代理店事業に係る収益を計上しており、当連結会計年度における当セグメントの売上高は174百万円(前期比10.7%減)となり、セグメント利益129百万円(前期比14.2%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高120,388百万円(前期比5.0%増)を計上し、営業利益7,264百万円(前期比15.6%増)、経常利益6,643百万円(前期比15.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,559百万円(前期比19.4%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ3,459百万円の増加となり、当連結会計年度末には23,752百万円(前期比17.0%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は5,990百万円(前期比33.4%減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上額6,654百万円(前期比15.8%増)及び仕入債務の増加額2,570百万円(前期は2,770百万円の使用)並びに棚卸資産の増加額2,600百万円(前期は4,864百万円の減少)及び法人税等の支払額1,625百万円(前期比10.7%減)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は8,203百万円(前期比24.0%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出8,009百万円(前期比24.6%増)及び無形固定資産の取得による支出204百万円(前期比30.0%増)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は5,672百万円(前期は1,717百万円の使用)となりました。これは主に、長短借入金の純増加額7,184百万円(前期は370百万円の純減少)、社債の償還による支出875百万円(前期比6.1%増)及び配当金の支払額992百万円(前期比0.7%増)等によるものであります。
③ 販売及び契約の実績
a.販売実績
当連結会計年度及び前連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|||
数量 |
金額(千円) |
数量 |
金額(千円) |
||
分譲住宅 |
|
|
|
|
|
自由設計住宅等 |
623戸 |
25,527,464 |
537戸 |
22,393,439 |
|
分譲マンション |
214戸 |
9,323,077 |
239戸 |
10,757,288 |
|
土地販売 |
9,586㎡ |
1,644,678 |
11,429㎡ |
2,311,055 |
|
|
計 |
837戸 9,586㎡ |
36,495,220 |
776戸 11,429㎡ |
35,461,784 |
住宅流通 |
|
|
|
|
|
中古住宅(一戸建) |
114戸 |
3,048,090 |
80戸 |
2,091,939 |
|
中古住宅(マンション) |
963戸 |
22,563,944 |
936戸 |
22,773,927 |
|
その他 |
- |
16,787 |
- |
15,567 |
|
|
計 |
1,077戸 |
25,628,821 |
1,016戸 |
24,881,435 |
土地有効活用 |
|
|
|
|
|
賃貸住宅等建築請負 |
23件 |
3,335,101 |
42件 |
4,769,119 |
|
サービス付き高齢者向け住宅 |
6件 |
3,147,108 |
17件 |
4,400,080 |
|
個人投資家向け一棟売賃貸アパート |
125棟 |
18,651,377 |
137棟 |
21,173,542 |
|
|
計 |
29件 125棟 |
25,133,586 |
59件 137棟 |
30,342,743 |
賃貸及び管理 |
|
|
|
|
|
賃貸料収入 |
――― |
18,867,753 |
――― |
20,308,482 |
|
サービス付き高齢者向け住宅事業収入 |
――― |
6,165,432 |
――― |
6,738,926 |
|
管理手数料収入 |
――― |
943,162 |
――― |
979,692 |
|
|
計 |
――― |
25,976,348 |
――― |
28,027,102 |
建設関連 |
103件 |
1,239,839 |
119件 |
1,500,855 |
|
報告セグメント計 |
――― |
114,473,817 |
――― |
120,213,919 |
|
その他 |
――― |
195,874 |
――― |
174,836 |
|
合計 |
1,914戸 9,586㎡ 132件 125棟 |
114,669,691 |
1,792戸 11,429㎡ 178件 137棟 |
120,388,755 |
(注)1.最近2連結会計年度に、販売実績が総販売実績の100分の10以上の相手先はありません。
2.住宅流通セグメントの「その他」は、仲介手数料収入等であります。
3.当連結会計年度より売上高に係る表示方法の変更を行っており、前連結会計年度については、当該変更を反映した組替後の数値を記載しております。
b.受注契約実績
当連結会計年度及び前連結会計年度におけるセグメントごとの受注契約実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|||||||
期中契約高 |
期末契約残高 |
期中契約高 |
期末契約残高 |
||||||
数量 |
金額(千円) |
数量 |
金額(千円) |
数量 |
金額(千円) |
数量 |
金額(千円) |
||
分譲住宅 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
自由設計住宅等 |
521戸 |
22,044,211 |
324戸 |
13,928,775 |
516戸 |
21,352,367 |
303戸 |
12,887,703 |
|
分譲マンション |
257戸 |
10,957,831 |
195戸 |
8,576,551 |
319戸 |
13,561,762 |
275戸 |
11,381,025 |
|
土地販売 |
11,131㎡ |
2,148,923 |
4,289㎡ |
863,491 |
9,144㎡ |
1,683,693 |
2,003㎡ |
236,129 |
|
|
計 |
778戸 11,131㎡ |
35,150,967 |
519戸 4,289㎡ |
23,368,818 |
835戸 9,144㎡ |
36,597,823 |
578戸 2,003㎡ |
24,504,858 |
住宅流通 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
中古住宅(一戸建) |
101戸 |
2,746,888 |
10戸 |
276,967 |
77戸 |
1,997,849 |
7戸 |
161,694 |
|
中古住宅(マンション) |
955戸 |
22,542,249 |
131戸 |
3,105,113 |
911戸 |
22,357,705 |
106戸 |
2,681,050 |
|
その他 |
― |
16,787 |
― |
- |
― |
15,567 |
― |
- |
|
|
計 |
1,056戸 |
25,305,925 |
141戸 |
3,382,081 |
988戸 |
24,371,123 |
113戸 |
2,842,745 |
土地有効活用 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
賃貸住宅等建築請負 |
37件 |
4,451,196 |
― |
5,920,750 |
51件 |
6,265,592 |
― |
7,417,223 |
|
サービス付き高齢者向け 住宅 |
17件 |
4,704,522 |
― |
6,710,729 |
11件 |
3,115,982 |
― |
5,426,630 |
|
個人投資家向け一棟売賃貸アパート |
129棟 |
20,132,377 |
91棟 |
13,930,000 |
141棟 |
22,004,542 |
95棟 |
14,761,000 |
|
|
計 |
54件 129棟 |
29,288,095 |
91棟 |
26,561,480 |
62件 141棟 |
31,386,117 |
95棟 |
27,604,854 |
建設関連 |
103件 |
1,020,975 |
― |
465,109 |
121件 |
1,639,075 |
― |
604,809 |
|
合計 |
1,834戸 11,131㎡ 157件 129棟 |
90,765,963 |
660戸 4,289㎡ 91棟 |
53,777,489 |
1,823戸 9,144㎡ 183件 141棟 |
93,994,139 |
691戸 2,003㎡ 95棟 |
55,557,267 |
(注) 期中契約高に記載された金額は、期中契約高と期中解約高を純額表示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、現行の見積りを必要とする会計処理については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりの方法によっており、会計基準等の新設・更新や連結財務諸表に重要な影響を及ぼす事象が発生した場合は、基本的には会計処理基準に準拠する方法によることとしており、新たに見積りを必要とする場合は、蓋然性の高い見積り方法による方針としております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(棚卸資産)
当社グループの棚卸資産の評価については、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により評価損を計上しております。今後、市場状況の悪化による処分価額の低下が生じた場合、棚卸資産の評価損を計上する可能性があります。
(貸倒引当金)
当社グループは、営業未収入金等の回収事故に対処するため、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加の引当金が必要となる可能性があります。
(有価証券の減損)
当社グループのその他有価証券については、期末日における時価が取得価額の50%以上下落した場合、または、2年間にわたり連続して取得価額の30%以上下落した場合に、減損処理を行うこととしております。
将来、投資先の株価の著しい下落があった場合には、投資有価証券の評価損を計上する可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループの繰延税金資産については、中長期の損益見込みに基づいて将来の課税所得を検討し、回収可能性を考慮して計上しております。当連結会計年度末において計上されている繰延税金資産は十分回収できると判断しておりますが、予測し得なかった損失の発生が見込まれた場合、当該繰延税金資産が法人税等調整額として費用化される可能性があります。
② 財政状態の状況、分析及び検討
当社グループは、適切な流動性の維持、事業活動のための資金確保及び健全なバランスシートの維持を財務方針としております。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ13,604百万円増加して168,212百万円(前期比8.8%増)となりました。流動資産は、前連結会計年度末に比べ9,615百万円増加して113,165百万円(前期比9.3%増)となり、固定資産は、前連結会計年度末に比べ3,989百万円増加して55,047百万円(前期比7.8%増)となりました。
流動資産増加の主な要因は、現金及び預金の増加額3,459百万円(前期比17.0%増)及び棚卸資産の増加額5,583百万円(前期比7.0%増)等を反映したものであります。
固定資産のうち有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ3,801百万円増加して49,808百万円(前期比8.3%増)となりました。この増加の主な要因は、中古住宅アセット事業に係る土地・建物の取得、自社保有サービス付き高齢者向け住宅に係る土地・建物の取得、本社設備並びに分譲住宅事業及び住宅流通事業に係る販売センター設備等の取得による増加額7,916百万円等の増加要因並びに所有目的の変更及び減価償却実施による減少額4,234百万円等の減少要因を反映したものであります。無形固定資産は、前連結会計年度末に比べ51百万円増加の611百万円(前期比9.1%増)となりました。また、投資その他の資産は、前連結会計年度末に比べ136百万円増加の4,627百万円(前期比3.0%増)となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ9,683百万円増加して117,207百万円(前期比9.0%増)となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べ4,803百万円増加して44,745百万円(前期比12.0%増)となり、固定負債は、前連結会計年度末に比べ4,880百万円増加して72,461百万円(前期比7.2%増)となりました。
流動負債増加の主な要因は、支払手形・工事未払金の増加額2,101百万円(前期比45.7%増)及び短期借入金の増加額1,886百万円(前期比8.9%増)並びに契約負債の減少額375百万円(前期比15.9%減)等を反映したものであります。
固定負債増加の主な要因は、長期借入金の増加額5,298百万円(前期比8.1%増)及びその他固定負債の減少額341百万円(前期比54.4%減)を反映したものであります。
当連結会計年度末の純資産の合計は、前連結会計年度末に比べ3,921百万円増加して51,004百万円(前期比8.3%増)となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益4,559百万円の計上による資金増加要因及び配当金の支払額992百万円の資金減少要因並びに自己株式の処分による増加額199百万円等を反映したものであります。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の30.45%から30.32%となりました。また、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末の1,316.94円から1,413.94円となりました。
当連結会計年度末の財政状況は、仕入環境が改善したことにより、棚卸資産・有形固定資産ともに増加することとなり、フリー・キャッシュ・フローが減少に転じたため、有利子負債の増加に伴う財務活動によるキャッシュ・フローは大幅な増加となりました。しかしながら、現金及び現金同等物の期末残高が増加し、純資産も順調に積み上がりましたので、純資産対比におけるネット有利子負債の水準は前連結会計年度末よりも低下しており、財務の健全性は維持できているものと考えております。引き続き健全な財務状態を維持、強化できますよう努めて参ります。
③ 経営成績の分析・検討
当連結会計年度の連結損益計算書に重要な影響を与えた要因につき、以下にご説明します。
a.売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ5,719百万円増加して、120,388百万円(前期比5.0%増)を計上することとなり、期初公表予想をわずかに上回る結果となりました。分譲住宅セグメントにおいては、自由設計住宅の引渡戸数が前期に比べ大きく減少し大幅な減収となり、分譲マンションの引渡戸数が前期に比べ増加し増収となったものの、減収を補うことができなかったため、当セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ2.8%減少の35,461百万円となりました。住宅流通セグメントにおいては、中古住宅に対する需要は根強く、販売は総じて好調に推移しましたが、売上高は前連結会計年度に比べ2.9%減少し24,881百万円となりました。土地有効活用セグメントにおいては、当連結会計年度の個人投資家向け一棟売賃貸アパートの引渡棟数が137棟(前期は125棟)と12棟の増加となったこと及び一棟当たりの販売価格の上昇により売上高は大きく増加し、賃貸住宅等建築請負及びサービス付き高齢者向け住宅の引渡件数も59件(前期は29件)と大幅に増加することとなりました。また、新規受注が好調で建築請負工事が順調に進行したことにより売上高は増加しました。その結果、売上高は前連結会計年度に比べ20.1%増加して31,907百万円となりました。賃貸及び管理セグメントにおいては、主として土地有効活用事業にリンクした賃貸物件の引渡しに伴い管理物件の取扱い件数が増加したこと並びに前連結会計年度に自社保有のサービス付き高齢者向け住宅が増加したことにより、売上高は、前連結会計年度に比べ7.9%増加し28,027百万円となりました。建設関連セグメントにおいては、当連結会計年度における建設工事が工程どおり順調に進捗し、受注契約高が増加したことにより、売上高は前連結会計年度に比べ0.3%増加し2,305百万円となりました。
b.営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ978百万円増加して、7,264百万円(前期比15.6%増)となりました。主な要因としては、分譲住宅セグメントに係る営業利益が前連結会計年度に比べ50.1%増加の1,856百万円となったこと、土地有効活用セグメントに係る営業利益が前連結会計年度に比べ33.2%増加の2,952百万円となったこと及び賃貸及び管理セグメントに係る営業利益が前連結会計年度に比べ9.3%増加の3,400百万円となったこと並びに住宅流通セグメントに係る営業利益が前連結会計年度に比べ33.6%減少の909百万円となったことによるものであります。
c.経常利益
当連結会計年度の営業外損益は、営業外収益が前連結会計年度に比べ15.7%減少し298百万円となり、営業外費用が主として分譲住宅セグメント及び土地有効活用セグメントの開発用土地購入並びに住宅流通セグメントの中古住宅取得に付随する借入金に係る費用の増加により、前連結会計年度に比べ2.6%増加し919百万円となりました。
以上の結果、営業利益に営業外収益・費用を加減算した経常利益は6,643百万円(前期比15.7%増)となり、売上高経常利益率は5.5%(前期は5.0%)となりました。
d.親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の特別利益は、固定資産売却益の計上が増加したことにより12百万円(前期は4百万円)となり、特別損失は前連結会計年度にあった固定資産売却損がなくなったこと等により前連結会計年度に比べ81.1%減少し0百万円となりました。また、税金費用は、前連結会計年度に比べ8.7%増加し2,095百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ19.4%増益となり4,559百万円を計上しました。
(3)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要のうち主なものは、不動産(棚卸資産、固定資産)の取得・開発をはじめとする事業への投資資金等であり、金融機関からの短期借入金、長期借入金を基本としております。その中で、中古住宅等の取得資金の効率的な調達を行うため、取引銀行と当座貸越契約及びコミットメントライン契約並びにコミット型タームローン契約を締結しております。当連結会計年度において、中古住宅アセット事業仕入資金及び個人投資家向け一棟売賃貸アパート用地仕入資金のためのコミットメントライン契約2件(契約締結額合計6,000百万円、期末借入額合計118百万円)を金融機関と締結しました。また、金融機関1行を引き受け先とする銀行保証付無担保社債(発行額750百万円)を発行しました。現金及び預金は23,767百万円(前連結会計年度は20,308百万円)となりました。
(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社グループは、株主重視の経営という観点から、企業価値の向上と継続的・安定的な成長を図り、企業の経営効率を判断する指標である自己資本当期純利益率(ROE)を重要な経営指標として位置付けており、ROE10%以上の達成を目指しております。また、財政状態の安全性及び健全性の確保のため、自己資本比率25%以上を目標としております。
当連結会計年度は、ROEにつきましては9.30%で未達成となりましたが、自己資本比率は30.32%で目標を達成しました。
過去5年間におけるROE及び自己資本比率の推移は、以下のとおりであります。
経営指標 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
ROE |
7.96% |
5.80% |
9.02% |
8.35% |
9.30% |
自己資本比率 |
24.55% |
28.11% |
28.89% |
30.45% |
30.32% |
中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の2期目である当連結会計年度のROEを含めた各経営指標の達成・進捗状況は以下のとおりであります。
経 営 指 標 |
2024年3月期 (中期経営計画) |
2024年3月期 (実 績) |
2024年3月期 (計画比) |
売上高 |
117,000百万円 |
120,388百万円 |
3,388百万円( 2.9%増) |
経常利益 |
6,300百万円 |
6,643百万円 |
343百万円( 5.4%増) |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
4,200百万円 |
4,559百万円 |
359百万円( 8.6%増) |
ROE(自己資本当期純利益率) |
8.70%以上 |
9.30% |
0.60ポイント増 |
該当事項はありません。
特記すべき事項はありません。