文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「JALグループ企業理念」を次のとおり定めています。
(JALグループ企業理念)
JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、お客さまに最高のサービスを提供します。
一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。
(2)目標とする経営指標
「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」において、次の3項目を経営目標としております。
①安全・安心
安全:航空事故・重大インシデント0件
安心:航空利用に加え、日常・ライフステージでも世界トップレベルの顧客体験を実現(NPS +4.0pt)
②財務
EBITマージン:2025年度に10%以上を達成
ROIC :2025年度に9%を達成
EPS :2025年度に290円レベルを達成
③サステナビリティ
環境 :CO2排出量削減(総排出量 909万トン未満)
使い捨てプラスチック削減(客室・ラウンジ:新規石油由来全廃、空港・貨物:環境配慮素材へ100%変更)
地域社会:国内の旅客・貨物輸送量を2019年度対比+10%
人 :DEI推進(グループ内女性管理職比率 30%)
(3)経営環境ならびに対処すべき課題
当社グループは、2021年5月に、「安心・安全」「サステナビリティ」をキーワードとした「JAL Vision 2030」、および、その実現に向けた「2021-2025年度JALグループ中期経営計画」を策定、発表しました。また、2024年3月21日には「中期経営計画ローリングプラン2024」を策定し、新型コロナウイルス感染症の影響が収束した新たな環境下で顕在化している不安定な世界情勢を背景とした物価高騰や、航空・観光業界の人材不足といった環境変化に対応し、2025年度における中期経営計画の完遂および中長期的な成長を目指します。
また、当社グループが対処すべき課題については、中期経営計画の中で目標達成の時間軸に従い以下の通り課題を整理し、取組みを推進していくこととしております。
1.中期的な課題(~2025年度)
① 利益目標の達成、事業構造改革の推進
② 経営目標の達成
2.長期的な課題(~2030年/~2050年)
① 関係・つながりの創造
② GX戦略
③ 人的資本経営
1.中期的な課題
1-①:利益目標の達成、事業構造改革の推進(~2025年)
ESG戦略の推進により高いレジリエンスと成長性を備えた事業ポートフォリオを構築し、EBIT目標は2024年度1,700億円、2025年度2,000億円、EBITマージンは2025年度に10%以上を達成します。
航空領域では、基幹事業であるFSCおよび貨物郵便における利益構造の再構築を図り、収益性を改善させます。また、LCC事業の事業規模を拡大させるとともに、マイル/金融・コマース事業、その他事業では、強みである顧客基盤やヒューマンスキルを活かし、成長する分野へ積極的に展開することで、利益を拡大・成長し、事業構造改革を牽引します。これらの取り組みにより、変化する外部環境の中においても、安定的な事業運営を実現してまいります。
1-②:経営目標の達成(~2025年)
各事業領域の取り組みに加えて、6つの項目(安全・カスタマーエクスペアリエンス(CX)・グリーントランスフォーメーション(GX)・ソリューション営業・人財・財務)においては、全事業領域を跨いで連携し、各事業をサポートしていくことが重要と考えています。これらの事業領域横断の取り組みにより、2025年度経営目標(安全・安心、サステナビリティ、財務)を達成するとともに、事業運営のサステナビリティ向上を実現します。
2.長期的な課題
2−①:関係・つながりの創造(~2030年)
当社グループは、「移動」を通じて「関係・つながり」を創ることで社会的価値・経済的価値を創出し、企業価値を向上させます。当社グループにおける「関係人口の人数」と「地域との関わり度」を数値化し、持続的にその向上に努めることで、2030年には「関係・つながりの総量」を2023年対比1.5倍に拡大させることを目指します。
2−②:GX戦略(~2050年)
当社グループは、航空機による人・モノの流動を創出することを主たる事業とする性質上、他の移動手段に比べて単位当たりCO2排出量が格段に多いことから、排出を抑制するための取り組みについて、真摯に、かつ、主体的に取り組む必要があると認識しております。
当社グループは、中期経営計画において2050年までに「CO2排出量実質ゼロ」とすることを定め、その実現に向けた取り組みを着実に推進しております。「省燃費機材への更新」や「運航の工夫」に加え、持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel、以下「SAF」)の安定的かつ適正な価格での調達を実現するため、官民・業界で一体となり、連携して取り組んでまいります。
2−③:人的資本経営(~2030年)
多様な人財が多様なフィールドで活躍できる環境を整え、能力の発揮に応じた還元を行い、エンゲージメント向上と価値創造を実現します。そのために人的資本投資として、「能力を伸ばす」、「多様性を高める」、「活躍領域を広げる」、「知見を得る」ことに、積極的に投資します。人的資本投資により人的資本を厚くすることで、高い社員エンゲージメントと価値創造を実現し、その成果を適切に社員に還元してまいります。
以上の取り組みを通じて「JAL Vision 2030」で掲げた私たちのパーパス「多くの人々やさまざまな物が自由に行き交う、心はずむ社会・未来の実現」を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を取締役会で審議・決定しています。取締役会への付議にあたり、社長を議長とするサステナビリティ推進会議において、以下の事項を主な議題とし、マネジメントレビューを行っています。
● サステナビリティの実現に向けた取組の重要課題・年度目標の決定、進捗のモニタリング・評価
● 気候変動のリスクと機会に関する対応の決定
● 環境マネジメントシステムのモニタリング・評価
● 人権デューデリジェンスのモニタリング・評価
サステナビリティ推進会議の下部会議体であるサステナビリティ推進委員会(委員長:総務本部長)を月次で開催し、取組の進捗確認と議論を行っています。
2023年度は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)/TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に関する情報開示、DJSI評価結果とレビュー、ESG評価の総括、重要課題(マテリアリティ)の再整理、移動を通じた関係・つながりを創出する取り組み、目標の追加・見直しなどについて議論を行い、取締役会に計4回報告しました。
②戦略
当社グループは、2021年5月に、「安心・安全」「サステナビリティ」をキーワードとした「JAL Vision 2030」、および、その実現に向けた「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」を策定、発表しました。また、「中期経営計画ローリングプラン2023」においてESG戦略を価値創造・成長を実現する最上位の戦略と位置づけ、環境負荷の低減を前提に、サステナブルな人流・商流・物流と関係人口を創出し、コロナ禍を経て見直されつつある「移動・つながり」の力で、地域社会の衰退や幸福度の低下といった社会課題の解決を目指す価値創造ストーリーを示しました。
事業で生み出す「移動・つながり」を通じて、社会的価値・経済的価値を創出し、社会課題の解決を図るべく、2023年度に重要課題(マテリアリティ)の見直しを行いました。これまでのマテリアリティは、SDGsの17ゴール/169ターゲットの達成への貢献に向けて、主にフルサービスキャリア事業領域において取り組むべき4つの領域・22の課題としていましたが、航空に限らず当社グループの全事業領域における経済的価値の創出との連動性が高まるよう、8つに見直しました。当社グループの最大の強みである人財(人的資本)について、全社員の価値創造力と生産性の向上を図ることが経営における重要課題であることから、マテリアリティの一つに含めました。
また、2024年3月21日に策定した「中期経営計画ローリングプラン2024」においては、当社グループにおける「関係人口の人数」と「地域との関わり度の向上」を数値化し、持続的にその向上に努めることで、2030年には、「関係・つながりの総量」を1.5倍に拡大させることを掲げました。このESG戦略の推進を通じて当社の社会的・経済的価値を高め、企業価値の向上を実現します。
③リスク管理
当社グループでは、リスクを組織の使命・目的・目標の達成を阻害する事象または行為と定義し、半期ごとにリスク調査と評価を行っています。環境を含むサステナビリティ全般のガバナンスに関わるリスクはサステナビリティ推進会議において、リスクの管理方針と必要な対応策を審議し、その内容は取締役会に報告しています。
④指標と目標
8つのマテリアリティに基づく主な取り組み項目として、「選択肢を増やす」「制約をなくす」「目的を創る」という視点で事業活動を行い、「移動を通じた関係・つながり」を創出していくための取り組み、GX戦略をはじめ豊かな地球を次世代へ引き継ぐための地球環境保全の取り組み、人財戦略が目指す人的資本経営、人権デューデリジェンスにかかわる対応、そして価値創造の基盤となるガバナンスそれぞれに指標と目標を設定し、ESG経営を推進しています。いずれも定量的な数値目標を設定することが可能で、意思を持って推進していく項目を設定し、当社Webサイトで開示しています。
(https://www.jal.com/ja/sustainability/initiatives/)
特に以下の項目については、「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」における、サステナビリティに関する経営目標としております。
●環境 :CO2削減(総排出量 909万トン未満)
使い捨てプラスチック削減(客室・ラウンジ:新規石油由来全廃、
空港・貨物:環境配慮素材100%変更)
●地域社会:国内の旅客・貨物輸送量を2019年度対比+10%
●人 :DEI推進(グループ内女性管理職比率 30%)
(2)気候変動への対応
①ガバナンス
当社グループでは、取締役会が、気候変動・生物多様性に関する執行の取り組みに関し、定期的な報告(2023年度実績:4回)を通じて強い監督機能を発揮しています。執行においては、社長が議長を務めるサステナビリティ推進会議で、基本方針の策定、重要な目標の設定と進捗管理を実施するとともに、課題に対する対応方針を審議・決定します。総務本部長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会で、環境マネジメントシステム(EMS)を通じて把握した個別課題を審議の上、サステナビリティ推進会議に報告します。
なお、中期経営計画には気候変動への対応を経営戦略に織り込んだ上で、事業を通じた社会課題の解決に向けたサステナビリティ全般における8つの重要課題(マテリアリティ)を定め、これらの課題に対する着実な取り組みを通じ、持続可能な事業運営および企業価値の向上を実現するという強い意志の下、外部ESG評価やCO2排出削減目標などを指標として役員報酬に反映しています。
[2023年度に取締役会およびサステナビリティ推進会議体で上程・報告された事案]
・気候変動への対応(移行計画)に関する取り組みの進捗(目標の策定、年度実績)
・TCFD・TNFDに関する情報開示、EMSレビュー
・2050年までのCO2排出量実質ゼロに向けたGX戦略
②戦略
気候変動への対応は社会の持続可能性にとって重要な課題であるとの認識のもと、当社グループは、2018年に環境省が主管する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」へ参画し、国際エネルギー機関(IEA)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による今世紀末までの平均気温上昇が「4℃未満」と「2℃未満」の2つのシナリオ(RCP8.5(注1)、RCP2.6(注2))に基づき、2030年の社会を考察しました。 また、航空運送事業者の責務として、CO2排出量の削減をはじめとするさまざまな取組を着実に推進すべく、2050年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロエミッション)を目指すことを2020年6月に宣言しました。その後、IEA SDSシナリオ(注3)などを踏まえてリスクと機会を考慮して具体的なロードマップを作成し、2021年の「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」および2022年の同ローリングプランに反映しました。さらに2023年の同ローリングプランでは、2050年までのCO2排出量実質ゼロに向け、1.5℃シナリオの世界の実現を目指すことを前提に、GX戦略を策定しました。
上記に加え、2021年2月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明し、SBTi(Science Based Targets Initiative)と同レベルである2050年までにCO2排出量実質ゼロとする目標を掲げ、グローバルな枠組みでの情報開示に努めています。
なお、2022年のICAO(国際民間航空機関)の総会にて、国際航空分野における「2050年までのカーボンニュートラル」を目指す長期目標、および、CO2排出削減の枠組みであるCORSIA(注4)の見直しが採択され、国際航空に課せられるCO2排出規制は今後さらに進む可能性があります。
このような環境下、当社が掲げる削減目標達成に向け、省燃費機材への更新、日々の運航での工夫(JAL Green Operations)、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の活用による従来の取組を加速させてまいります。「中期経営計画ローリングプラン2024」におけるGX戦略のとおり、2030年度までに76%の機材を省燃費機材に更新するとともに、SAFのさらなる活用に向け、国内外におけるSAFの調達地点拡大をはじめ、国産SAFの製造開始・量産に向けた国産SAF製造事業者とのパートナーシップの深化を図ります。さらに、目標達成やCORSIAに対応すべく、適切なタイミングで排出権取引により必要な炭素クレジットを調達するとともに、中長期的には世界で開発中の合成燃料、ネガティブエミッション(CO2除去・回収等)といった新技術も積極的に活用してまいります。
[JALグループのネット・ゼロエミッション実現に向けたロードマップ]
[JALグループのネット・ゼロエミッション実現に向けたシナリオ作成の前提]
当社グループは1.5℃シナリオを前提に、2020年6月の株主総会において2050年のネット・ゼロエミッションの目標を掲げました。その後、IEA SDSシナリオなどを踏まえてリスクと機会を考慮して具体的なロードマップを作成しました。
当社グループの航空機が排出するCO2の削減については、1.5℃シナリオを前提としてICAO(国際民間航空機関)やIATA(国際航空運送協会)での最新の検討資料やATAG(注5)などのシナリオを参照しつつ、2050年までのCO2削減のシナリオを検討し、今後の課題と打ち手について議論を進めています。
シナリオ作成にあたっては、総需要に基づくRTK(有償輸送トンキロ)の伸びを国際線・国内線それぞれに設定の上、2050年までのCO2総排出量を算出し、各取組による効果を反映しました。
(注)1.RCP8.5 シナリオ:IPCC第五次報告書における高位参照シナリオ(2100年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当するシナリオ)
2.RCP2.6 シナリオ:IPCC第五次報告書における低位安定化シナリオ(将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに開発された排出量の最も低いシナリオ)
3.IEA SDSシナリオ:IEA(国際エネルギー機関)による持続可能な開発目標を完全に達成するための道筋である、持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)
4.Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:航空会社全体の国際線のCO2排出量において、基準値を超える排出分を参加国の航空会社で分担してオフセット義務を課す制度。2024年以降は「2019年の排出量を超えない」から「2019年比85%を超えないこと」に見直され、ベースラインが15%深掘りされた
5.Air Transport Action Group:航空業界のサステナビリティを推進するグローバル連合
気候変動は「安全・安心な社会」における事業運営を前提とした航空運送事業に対して負の影響を及ぼし、結果として、事業の継続を考える上で甚大なリスクとなる可能性があります。
また、航空会社によるCO2削減をはじめとする気候変動への対応は、省燃費機材への更新やカーボンプライシングへの対応など、さまざまな財務上のインパクトを与える可能性があります。
当社グループでは、事業に影響を与えるこれらの要素をTCFDにおける気候変動に関するリスク・機会の分類に沿って整理・検討し、下表に記載しています。なお、ここでいう「時期」および「発生時の影響」の区分とは、次に定めた通りです。以下は2023年8月1日の取締役会で見直しをしています。
③リスク管理
当社グループでは、半期ごとに実施するリスク調査において、特に重要と評価されたものを優先リスクと位置づけ、社長を議長とするグループリスクマネジメント会議でリスク管理の状況を確認し、対応策を審議・決定します。
経営戦略上の重点課題である、気候変動や生物多様性などの環境課題については、関連する国際社会の法・規制や政策動向などを踏まえつつ、環境マネジメントシステム(EMS)に基づくPDCAサイクルを通じてリスク管理を実施しています。
④指標と目標
当社グループでは、航空運送という事業の特性上、CO2排出量の内訳は航空機からの直接排出が約99%を占めています。この事実を踏まえ、まずは航空機からのCO2排出量削減を最優先課題として対応していきますが、地上施設からの間接排出によるCO2削減についても同様に高い目標を掲げ、真摯に取り組んでいます。国内外のさまざまなステークホルダーとの連携・協働を強化しつつ、CO2削減の国際的な枠組みに則り、日本政府の「クリーンエネルギー戦略」とも整合しながら、最先端の取組で業界をリードしていきます。
当社グループは、2021年5月に本邦航空会社として初めて2030年度の具体的な目標(2019年度対比で総排出量を10%削減)を掲げ、アライアンスでのSAF共同調達や機材更新時のESGファイナンス活用などに率先して取組み、世界の航空業界の脱炭素化を推進してきました。安定した財務基盤に基づく省燃費機材への着実な更新、日々の運航の工夫の着実な実施、またSAFの具体的な搭載目標を定めた上での戦略的な調達といった取組により、目標の達成に向けて果敢に挑戦します。
なお、SAFについては海外における製造・サプライチェーン構築の動きが加速していますが、日本国内でも政府の「経済財政運営と改革の基本方針2023」「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」「クリーンエネルギー戦略」「GX実現に向けた基本方針」の中で、SAFの製造・流通を推進していくことが明記されました。当社グループは、2030年度に全搭載燃料の10%をSAFに置き換えるという目標を実現するため、官民の連携や国内外のステークホルダーとの協働を通じ、SAFの商用化に向けて積極的に取組みます。
(3)自然資本(生物多様性)への対応
①ガバナンス
当社グループでは、生物多様性に関する取り組みに対しても、気候変動への対応と同様のガバナンス体制を構築しています。TNFDの提言に基づく先行情報開示、および「自然に関するコミットメント」は、2023年8月の取締役会において報告・承認されました。
②戦略
当社グループは、TNFDが提唱する、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのLEAPアプローチ(注6)に則り、自然への依存と影響および優先地域の特定をした上で、リスクと機会の評価を行っています。
当社グループの航空運送事業における自然への依存と影響を洗い出し、依存は「自然遺産・ビーチリゾート等自然が豊かな観光地への運航」「現地食材商品の販売」、影響は「空港周辺への環境汚染の可能性」「SAFの製造過程における生態系への影響の懸念」などが挙げられました。
水リスクに関しては、世界資源研究所が提供する水リスク分析ツールを活用して当社グループの取水地域を分析した結果、水ストレスレベルが低いとされる日本国内が主であり、リスクは低いと認識していますが、総取水量の8割を占める首都圏(羽田・成田)を中心に、航空機部品洗浄のための水のリサイクルなどを通じて水資源の保全に努めていきます。また、分析の見直しは今後も年1回実施していきます。
生物多様性リスクに関しては、WWFが提供する生物多様性リスクフィルターにおける重要な生物多様性が存在する地域と当社グループの就航地を照合したところ、日本国内の多くが生物多様性リスクの高い地域であることがわかりました。なかでも自然観光需要の高い北海道・鹿児島(奄美)・沖縄は事業が自然に依存している地域、また、東京は主要空港であることから事業が自然に影響を与えている地域として、優先して生物多様性の保全に取り組むべき地域と特定しました。
生物多様性の損失は航空運送事業の継続を考える上で重大なリスクとなる可能性があり、それを管理することは機会にもつながります。特定した依存と影響をもとに自然に関連するリスクと機会の評価を行い、下表のとおり整理していますが、今後、財務上のインパクトも分析の上、リスクと機会の評価を深めていきます。
(注)6.「LEAP」とは、Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェー
ズの頭文字をとったもの。サプライチェーン全体を対象に自然との接点を発見し、優先すべき地域を特
定する(Locate)、自社の企業活動と自然との依存関係や影響を診断する(Evaluate)、診断結果を基
に、重要なリスクと機会を評価する(Assess)、自然関連リスクと機会に対応する準備を行い、投資家
に報告する(Prepare)情報ガイダンス。
③リスクと影響の管理
当社グループでは、半期ごとに実施するリスク調査において、特に重要と評価されたものを優先リスクと位置づけ、社長を議長とするグループリスクマネジメント会議でリスク管理の状況を確認し、対応策を審議・決定します。経営戦略上の重点課題である、気候変動や生物多様性などの環境課題については、関連する国際社会の法・規制や政策動向などを踏まえつつ、環境マネジメントシステム(EMS)に基づくPDCAサイクルを通じてリスク管理を実施しています。
④指標と目標
当社グループは、生物多様性には気候変動や資源、環境汚染などさまざまな環境課題が影響していると認識し、包括的な解決を目指しています。生物多様性の保全に関わる目標に加え、CO2排出量や廃棄物、水使用量などの環境データについても開示しています。
(https://www.jal.com/ja/sustainability/initiatives/)
(4)人財への取組
①戦略
■全体像
2023年度は、ESG戦略を価値創造・成長を実現する最上位の戦略と位置づけた上で、ESG戦略を推進するための事業戦略の一つとして人財戦略を位置づけました。ESG戦略の推進にあたっては、まずはJALグループの求める人財像を「多様な価値観を尊重し、新たな価値創造に挑戦し、変革を起こす人財」と明確化しました。次に、環境が急速に変化する中、特に対応すべき課題として、社内において多様な人財が集い、個々の持つ能力を十分に発揮するための機会の創出が不足していること、また外部に目を転じると、少子高齢化が進む中、今後人財の確保が困難になることを認識しました。
この厳しい環境変化に対処すべく、「価値創造性の向上」と「抜本的な生産性の向上」を実現するための人財投資を積極的に行い、事業構造改革を加速させていきます。これにより企業価値を向上し、得られた成果を人的資本である社員一人ひとりに還元することで、さらなる価値創造へつながる好循環を目指していきます。
■人財育成方針
事業構造改革による人財ポートフォリオの最適化と、急速な社会環境の変化の中で社員に求められる役割が変化しており、その変化に対応していけるよう、自律的キャリア形成への転換とリスキルの支援を行いました。社員が自ら希望する部門を指定できる立候補型人事制度の導入や、社員一人ひとりが持つスキルや能力を活かせる社内副業制度等の自律的キャリア施策、またDX教育等の学び直しを行うことにより、社員が自らのキャリアを責任を持って形成していけるよう支援しました。
■社内環境整備方針
人的資本を最大限活用することを目的に、社内環境整備方針として以下3つの方針を定め、取り組みを進めてきました。
[新たな人財ポートフォリオの形成]
事業構造改革を実現するため、新規事業領域を支える多様な知見・経験を持つ人財と、既存事業領域を支える航空分野の専門性が高い人財を、獲得、育成、配置、処遇していきます。経験者採用の拡大や成果連動比率の高い報酬制度の適用領域・職位の拡大、安全運航に必要不可欠な高度専門人財に適用する人事賃金制度を導入していくことで、人財を最適なポストに配置し、当社グループの新たな人財ポートフォリオを構築しています。
[DEI(注7)の推進]
中長期的に企業価値を向上し、事業の持続可能性を高めるため、従来の同質性の高い人財のいる企業から、経験や感性、価値観、専門性といった多様な知と経験を持つ人財がいる、多様性の高い企業へと転換していきます。グループ横断的な出向や日本における外国籍社員の積極採用、誰もがやりがいを持って働ける環境づくりを通じた障がいのある方の雇用の拡大により、多様性を深め、新たな価値の創造につなげます。
[エンゲージメントの向上]
当社グループ最大の強みである多様な人財の力を最大限に引き出すために、社員一人ひとりがやりがいや働きがいを感じるエンゲージメントの高い職場環境を創りあげていきます。人財戦略の各種施策や、JALフィロソフィを通じた組織活性化や健康経営を推進していくことにより、社員のエンゲージメントの向上を図ります。これにより、生産性を上げ、得られた成果を適切に人的資本投資に回すことで、さらにエンゲージメントを高める好循環を実現していきます。
(注)7.DEI=ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン
②指標と目標
■2023年度実績(当社グループ)
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カテゴリー |
KPI |
目標( |
実績(2023年度) |
人財育成方針 |
自律的キャリア形成への転換とリスキルの支援 |
一人当たり売上高の拡大 |
+15% (2019年度対比) |
+16% (2019年度対比) |
社内環境整備方針 |
新たな人財ポートフォリオの形成 |
成長領域への人財配置 |
+3,500名 (2019年度対比) |
+2,990名 (2019年度対比) |
DEIの推進 |
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エンゲージメントの向上 |
エンゲージメントの高い社員割合(注8) |
+10pt (2019年度対比) |
△0.6pt (2019年度対比) |
(注)8.社員意識調査でポジティブな回答をした社員の割合
■今後に向けて
2024年3月に発表した「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2024」において、当社グループのあるべき姿であるJAL Vision 2030の実現に向け、人財を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す「人的資本経営」の考え方を整理しました。
事業のサステナビリティを高め、社会的価値と経済的価値を創出していく原動力は人財であるとの考えの基、JALフィロソフィと健康経営を基盤とし、継続的な人財投資を通じて、多様な人財が多様なフィールドで活躍できる環境を整え、社員一人ひとりが高いスキルや専門性を発揮していくことで、当社グループにおける人的資本の層を厚くしていきます。
その結果として、能力発揮に応じた社員還元を行い、エンゲージメント向上と価値創造の実現という、中長期的なあるべき姿を追求していきます。
投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、定期航空運送事業および不定期航空運送事業を中心とする当社グループの事業の内容に鑑み、当社グループにおいては様々なリスクが存在しております。
当社グループは、「JALグループリスクマネジメント基本方針」において、重大な損失につながる要素ならびに「業務の有効性と効率性」、「財務報告の信頼性」、「法令等の遵守」、「資産の保全」を阻害する要素、加えて市場環境の変動や疫病・震災・テロ等の外的要因のみならず、グループ全体・自社・自組織の目標達成を阻害する業務執行上の要素もリスクと定め、リスクに強靭な企業グループとして事業を継続できるよう、適切なリスクマネジメントを実施してまいります。
グループ全体のリスク総括のために社長を議長とする「グループリスクマネジメント会議」を置き、JALグループが抱えている主要なリスクを俯瞰的に把握し適正なリスク管理に努めるとともに、連結業績に影響を及ぼす事象が発生した場合は「財務リスク委員会」と連携して対応しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のあると認識している主要なリスクは次のとおりです。ただし、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)世界的な疫病の蔓延拡大に関わるリスク
①短期的な業績に与える影響に関わるリスク
当社グループは、日本および世界各地に航空運送事業を展開しております。2020年初頭から全世界規模で感染が拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)のように未知の疫病の世界的な拡大が発生した場合には、各国政府による入境制限や移動の制限・自粛要請といった人の移動に関する規制の発動や、企業や利用者の感染防止を目的とした自発的な航空機利用の回避により、航空旅客需要は大幅に減少する可能性があります。当社グループが営む航空運送事業は、航空機材費や人件費等の固定費比率が高いことから、短期的な需要の急減は、当社グループを含む航空運送事業者の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
②中長期的な事業環境の変化に関わるリスク
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、一時的に人の移動が大きく制限を受けたことにより、ITを活用し、移動を伴わず非対面での働き方が社会に広く浸透しております。こうした社会・行動様式の変化により、航空機を使った業務渡航の需要に変化が生じることで、当社グループが営む航空運送事業の事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。
ポストコロナにおける業務渡航需要の変化を見据え、当社グループでは、LCCやマイレージ・ライフスタイル事業領域を強化する事業構造改革を進め、事業リスクの分散を図っております。
(2)自然災害・テロ攻撃等の災害に関わるリスク
当社グループの航空機の利用者の過半数は羽田空港および成田空港を発着する航空機を利用しており、当社グループの事業における羽田・成田両空港の位置付けは極めて重要です。また、当社グループの運航管理・予約管理等、航空機の運航に重要な情報システムセンター、ならびに全世界の航空機の運航管理やスケジュール統制等を実施する「IOC(Integrated Operations Control)」は東京地区に設置しています。
そのため、東京地区を含む首都圏において、大規模な震災や火山の噴火、大型台風等による被害が発生した場合、もしくは当該重要施設において火災やテロ攻撃等の災害が発生し、羽田・成田両空港の長期間閉鎖や、当社グループの情報システムやIOCの機能が長期間停止した場合、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
IOCの機能停止に備え危機管理体制およびBCPを整備しており、その一環として、大阪国際空港内にオペレーションコントロールの一部機能を移管しています。その機能は東京地区のIOCの機能の全てを代替できるものではありませんが、東京地区のIOCの機能が停止した場合、その再稼働までの間、暫定的に東京地区のIOCを代替します。
(3)気候変動・地球温暖化・環境規制に関わるリスク
世界では、地球温暖化等に起因する気候変動が大きな課題となっており、地球温暖化に起因し、日本国内において大規模な自然災害の発生頻度が多くなるような場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが属する航空業界は、気候変動の要因となる化石燃料を大量に消費する業界であることから、CO2排出量の削減が社会的な責務であり、当社グループにおいても極めて重要な経営課題となっております。温暖化防止を始めとした地球環境に係わる企業の社会的責任が高まる中、CO2排出量、騒音、有害物質等に関する環境規制が強化され、消費行動にも影響を及ぼしつつあります。今後、温室効果ガス排出量取引制度等、温室効果ガス排出への課金等費用負担を伴う環境規制のさらなる強化等が行われた場合、また、消費者の行動様式に変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。加えて環境負荷軽減への取り組みが不十分な場合には、当社グループの社会的な評価が低下し、当社グループの事業運営に影響を与える可能性があります。
そのため、当社グループでは、2024年3月に公表した「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2024」において、ESG戦略を価値創造・成長を実現する最上位の戦略と位置づけ、社会課題の解決を加速化してまいります。当社グループでは、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指しており、その実現に向けて、省燃費機材への更新促進、運航の工夫、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の安定的かつ適正な価格での調達などの取り組みを加速させるとともに、排出量取引やネガティブエミッション(CO2除去・回収等)といった新技術を活用してまいります。
なお、気候変動に関わるリスクの概要やリスク低減に向けた当社の対応については、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の枠組みを活用し、その詳細を当社ホームページにて開示しています。( https://www.jal.com/ja/sustainability/environment/climate-action/ )
(4)国際情勢や経済動向等の外部経営環境に関わるリスク
①外部経営環境に関わるリスク
当社グループは、日本および世界各地に航空運送事業を展開しており、航空需要は、世界の経済動向、テロ攻撃や地域紛争、戦争等により大幅に減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの業務は、整備業者、空港職員、航空保安官、燃油取扱業者、手荷物取扱者、警備会社等の第三者の提供するサービスに一定程度依存しており、第三者が、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
②競争環境に関わるリスク
当社グループは、国内および海外において、路線、サービスおよび料金に関して激しい競争に直面しています。
国内線では、既存の航空会社との競争に加え、LCCを含む低コストキャリアや新幹線との競争、国際線では、海外および日本の主要航空会社との競争が激化しており、それに加えて海外および日本の航空会社によって形成されるアライアンス、コードシェアおよびマイレージ提携が競争を激化させています。
上述のように、現在の当社グループの競争環境や事業環境が大幅に変化した場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、航空運送事業においては、a)共同事業、b)複数の航空会社によるアライアンスへの加盟、c)コードシェア提携、d)マイレージ提携等、様々な形式で世界中の航空会社との提携を展開しております。また、マイル事業等の非航空事業分野においても、他業種との広範な提携関係を構築することで顧客基盤の強化を図っておりますが、これらの提携パートナーの経営状況や、提携関係に大きな変化が生じた場合には、当社グループの提携戦略に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクの軽減に向け、地政学的なリスクをモニターする体制、関係当局、提携パートナーとの良好な関係の構築、商品・サービス競争力の向上、柔軟な需給適合の実施、適切な委託先管理に努めております。
(5)航空機導入に関わるリスク
当社グループは、航空運送事業において、燃費効率に優れた新型機への更新や機種統合による効率化を目指し、ボーイング社、エアバス社等に対して航空機を発注しておりますが、これらの航空機メーカーやエンジン等の重要な部品のサプライヤーにおける技術上・財務上・その他の理由により納期が遅延した場合、当社グループの機材計画は変更を余儀なくされ、当社グループの中長期的な事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、航空機メーカー等と状況を常時把握し、都度、航空機導入・退役計画を見直すことでかかるリスクの低減に努めております。
(6)市況変動に関わるリスク
①燃油価格の変動に関わるリスク
当社グループの業績は、燃油価格の変動により影響を受けます。当社グループは、燃油価格の上昇分を一部燃油特別付加運賃として顧客に転嫁しておりますが、これは燃油価格の変動を直ちに反映することができず、また、顧客に全てを転嫁することは困難です。また、当社グループは、燃油価格の変動リスクを軽減するため、原油のヘッジ取引を行っております。なお、ヘッジ取引手法やヘッジポジションの状況等によっては、原油市況の下落の効果を直ちに業績に反映することができず、短期的な当社グループの業績の改善に寄与しない可能性があります。
②為替変動に関わるリスク
当社グループは、日本国外においても事業を展開しており、外貨建により、収益の一部を受領し費用の一部を支払っています。特に当社グループにおける主要な費用である航空機燃料の価格の大半は米ドルに連動した金額となることから、当社グループにおいては米ドルの為替変動による影響は収益よりも費用が大きくなっております。これら為替変動による収支変動を軽減する目的で、収入で得た外貨は外貨建の支出に充当することを基本とし、加えてヘッジ取引を行っております。また航空機価格の大半は米ドルに連動した金額となることから、資産計上額および減価償却費が為替変動により増減するリスクがあります。これら為替変動によるリスクを軽減する目的で為替取得機会の分散を図るべくヘッジ取引を行っております。
③資金・金融市場・財務に関わるリスク
当社グループは、航空機の購入等の多額の設備投資を必要としており、その資金需要に応じる為に金融機関や市場からの資金調達を行う可能性があります。当社グループの資金調達能力や資金調達コストについては、資金・金融市場の動向や当社グループの信用力の変動等により、資金調達の制約や資金調達コストの上昇を招く可能性があります。
また、当社グループは繰延税金資産を計上しておりますが、当社グループの将来の課税所得の見込み額が低下した場合、もしくは税制改正等により、過去に計上した繰延税金資産の取り崩しが発生し、当社グループの財務状況に一時的に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、キャッシュ・フロー創出力の向上と資金調達能力の維持向上に向け、強固なリスク耐性を備えた財務体質を保つべく財務戦略を計画・遂行してまいります。
(7)航空安全に関わるリスク
当社グループでは、航空機の運航の安全性の確保のため、日々様々な取り組みを実施しておりますが、ひとたび死亡事故を発生させてしまった場合、当社グループの運航の安全性に対する顧客の信頼および社会的評価が失墜するだけでなく、死傷した旅客等への補償等に対応しなければならないことから、当社グループの業績に極めて深刻な影響を与える可能性があります。さらに、当社グループや、当社グループが運航する型式の航空機、また当社のコードシェア便において安全問題が発生した場合、当社グループの運航の安全性に対する顧客の信頼および社会的評価が低下し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、「安全」をJALグループ存続の大前提と位置付け、全社員が日々航空安全の実現に向けたゆまぬ努力を継続しております。また、航空事故対応の専門部門を配置するとともに社長を議長とする「グループ安全対策会議」を置き、グループ全体の安全に対して徹底した管理を行っています。なお、航空事故に伴う各種損害の軽減、ならびに被災者への確実な賠償を行う目的で、現在業界水準と同程度の補償額・補償範囲の損害賠償保険に加入しております。
(8)法的規制・訴訟に関わるリスク
当社グループの事業は、様々な側面において、国際的な規制ならびに政府および地方自治体レベルの法令および規則に基づく規制に服しています。これらの規制の変化等により、当社グループの事業がさらに規制され、また、大幅な費用の増加が必要となる可能性があります。
①法的規制に関わるリスク
当社グループは、航空法をはじめとする航空事業関連法令、二国間航空協定を含む条約その他の国際的取り極め、独占禁止法その他諸外国の類似の法令、ならびに着陸料等の公租公課等の定めに基づき事業を行っておりますが、これらに変更が生じた場合や、法令に基づき耐空性改善通報等が発出された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、羽田空港等、当社グループの航空運送事業において重要な位置付けをもつ空港における発着枠の割当て等が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、公正な競争環境が確保されるよう、国土交通省をはじめ国内外の関係当局等に対して要望しております。
②訴訟に関わるリスク
当社グループは事業活動に関して各種の訴訟に巻き込まれるおそれがあり、これらが当社グループの事業または業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは訴訟の提起等を受けており、事態の進展によっては、追加的な支出や引当金の計上により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、重大なリスクとなり得る法令違反および競争阻害行為等の防止に万全を期すべく、全社員および役員に対してコンプライアンス遵守を徹底させるべく、教育・啓発活動等に努めております。
(9)IT(情報システム)、顧客情報の取り扱いに関わるリスク
当社グループは、業務の多くを情報システムに依存しています。コンピュータ・プログラムの不具合やコンピュータ・ウィルス等のサイバー攻撃によって情報システムに様々な障害が生じた場合には、重要なデータの喪失に加えて、航空機の運航に支障が生じる等、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。また、情報システムを支える電力、通信回線等のインフラや、メールコミュニケーション等の当社が利用するクラウドサービスに大規模な障害が発生した場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。
また、当社グループが保有する顧客の個人情報が取り扱い不備または不正アクセス等により漏洩した場合には、当社グループの事業、システムまたはブランドに対する社会的評価が傷つけられ、顧客および市場の信頼が低下して、当社グループの事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報漏えい対策とウイルス対策を推進し、24時間365日体制で不正アクセスやウイルス感染などの脅威を監視しています。インシデント発生時にはサイバーインシデントへの対応体制を構築し、迅速な対応と再発防止を行っています。なお、個人情報の漏洩に備えた保険にも加入しております。
(10)人材・労務に関わるリスク
当社グループの事業運営には、航空機の運航に関連して法律上要求される国家資格を始めとする各種の資格や技能を有する人材の確保が必要ですが、当社グループの従業員がその業務に必要なこれらの資格や技能を取得するまでには相応の期間を要することから、当社グループが想定する人員体制を必要な時期に確保できない場合には、当社グループの事業運営が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループの従業員の多くは労働組合に所属しておりますが、当社グループの従業員による集団的なストライキ等の労働争議が発生した場合には、当社グループの航空機の運航が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、採用競争力の向上、離職率の低減に努めるとともに、良好な労使関係の維持に努めております。
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)は、コロナ禍が収束した新たな環境において、2019年度を上回る利益水準への回復を達成いたしました。一方で、不安定な世界情勢、物価上昇、人材不足など、社会全体に共通する新たな課題に直面しています。こうした経営環境の変化等を踏まえて、当社グループは2024年3月21日に「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2024」を発表いたしました。事業構造改革の推進によりさらなる成長を実現してまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
まず経営課題について、当社グループは、航空輸送のサステナビリティを確かなものにするために大きく三つの 課題に取り組んでいます。カーボンニュートラルの実現、事業構造改革、そして人的資本経営です。カーボンニュートラルの実現に向けては、2023年6月にShell社の航空燃料部門であるShell Aviationと2025年から米国ロサンゼルス国際空港にてSAF(Sustainable Aviation Fuel)を調達する契約を締結しました。これにより「2025年度に全燃料搭載量の1%をSAFに置き換える」という目標を達成できる見込みとなりました。また、同月に省燃費機材の円滑な導入のため、当社として2回目となるトランジションボンドを発行いたしました。さらに、2024年1月に エアバスA350-1000型機を導入し、2024年3月にエアバス社とボーイング社から42機の新型機導入を決定しました。今後も最新鋭省燃費機材の導入を加速し、お客さまに最高のサービスを提供しつつ、国際線を中心に増機・大型化により成長を目指すとともに、より環境に配慮したフライトをご提供してまいります。当社グループのこのようなサステナビリティに関する取り組みやサービス品質等が世界最高水準と評価され、2023年9月にはAPEX(Airline Passenger Experience Association)「WORLD CLASS」を3年連続で受賞し、2023年12月にはESG投資の代表的指数であるDJSI Asia Pacific Index(Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index)の構成銘柄に世界の航空業界トップのスコアで2年連続選定されました。今後も「2030年度に全燃料搭載量の10%をSAFに置き換える」という目標達成のため重要となる国内におけるSAF商用化および普及・拡大に向け、ご関係の皆さまと横断的に協力して取り組んでまいります。
事業構造改革については、コロナ禍の経験から事業ポートフォリオを再構築し、特に非航空事業領域での新たなビジネスの創造およびグループ全体の利益拡大を目指しております。マイル・ライフ・インフラ事業領域やLCC事業領域の成長を通じて、レジリエンスと成長性を備えた事業構造を実現してまいります。
人的資本経営については、現在当社グループの人員数はコロナ前と同水準を確保しているものの、今後の人財不足に鑑み、2023年4月には3年ぶりに約2,000名の新入社員を迎え、キャリア採用、インターンシップの募集も開始しました。このほか、将来の航空整備士の養成・確保のためANAホールディングス株式会社と共同で無利子貸与型奨学金「航空整備士育成支援プログラム」を創設し、持続可能な空港グランドハンドリング体制の整備に向け個社の垣根を越えて協力する取り組みを開始しております。また、デジタルや新技術を活用し、少ない人数でも同じアウトプットを実現できるよう社員へのDX教育を実施する等、生産性向上を進めております。2025年3月期は4年ぶりに大幅なベースアップも実施しており、当社グループは今後も人財を資本ととらえて企業価値向上につながる人的資本経営を推進してまいります。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産については、前連結会計年度末に比べ1,286億円増加し、2兆6,492億円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べ372億円増加の1兆7,008億円となりました。資本については、前連結会計年度末に比べ913億円増加の9,483億円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における売上収益は1兆6,518億円(前年同期比20.1%増加)、営業費用は1兆5,422億円(前年同期比14.7%増加)となり、財務・法人所得税前利益(当社は、当期利益から法人所得税費用、利息およびその他の財務収益・費用を除いた「財務・法人所得税前利益」をEBITと定義しております。以下「EBIT」という。)は1,452億円(前年同期比124.9%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は955億円(前年同期比177.5%増加)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりです。
<航空運送事業セグメント>
当連結会計年度における航空運送事業セグメントの経営成績については、売上収益は1兆5,149億円(前年同期比 20.1%増加)、投資・財務・法人所得税前利益(以下「セグメント利益」という。)は、1,322億円(前年同期比160.7%増加)となりました。(売上収益およびセグメント利益はセグメント間連結消去前数値です。)
フルサービスキャリアにおける国際旅客収入は6,223億円(前年同期比49.1%増加)、国内旅客収入は5,510億円(前年同期比22.1%増加)、貨物郵便収入は1,333億円(前年同期比40.7%減少)、LCCにおける国際旅客収入は621億円(前年同期比129.1%増加)、国内旅客収入は51億円(前年同期比46.3%増加)でした。
部門別売上収益は、次のとおりです。
科目 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
構成比 (%) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
構成比 (%) |
対前年 同期比 (%) |
国際線(フルサービスキャリア) |
|
|
|
|
|
旅客収入(百万円) |
417,526 |
33.1 |
622,399 |
41.1 |
149.1 |
貨物収入(百万円) |
188,902 |
15.0 |
100,367 |
6.6 |
53.1 |
郵便収入(百万円) |
12,241 |
1.0 |
9,766 |
0.6 |
79.8 |
手荷物収入(百万円) |
1,766 |
0.1 |
1,556 |
0.1 |
88.1 |
小計(百万円) |
620,437 |
49.2 |
734,090 |
48.5 |
118.3 |
国内線(フルサービスキャリア) |
|
|
|
|
|
旅客収入(百万円) |
451,127 |
35.8 |
551,026 |
36.4 |
122.1 |
貨物収入(百万円) |
20,017 |
1.6 |
19,591 |
1.3 |
97.9 |
郵便収入(百万円) |
3,631 |
0.3 |
3,642 |
0.2 |
100.3 |
手荷物収入(百万円) |
409 |
0.0 |
491 |
0.0 |
119.8 |
小計(百万円) |
475,187 |
37.7 |
574,751 |
37.9 |
121.0 |
国際線・国内線 合計(百万円) |
1,095,624 |
86.9 |
1,308,841 |
86.4 |
119.5 |
旅客収入(LCC) (百万円) |
|
|
|
|
|
ZIPAIR |
22,449 |
1.8 |
54,082 |
3.6 |
240.9 |
スプリング・ジャパン |
8,224 |
0.7 |
13,253 |
0.9 |
161.1 |
小計(百万円) |
30,674 |
2.4 |
67,335 |
4.4 |
219.5 |
その他 (百万円) |
134,753 |
10.7 |
138,757 |
9.2 |
103.0 |
合計(百万円) |
1,261,052 |
100.0 |
1,514,934 |
100.0 |
120.1 |
(注)金額については切捨処理、比率については四捨五入処理しております。
輸送実績(フルサービスキャリア)は、次のとおりです。
項目 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年同期比 (利用率は ポイント差) |
|
国際線 |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
4,348,562 |
6,628,180 |
152.4% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
27,310,618 |
37,201,808 |
136.2% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
38,039,283 |
47,328,460 |
124.4% |
有償座席利用率 |
(%) |
71.8 |
78.6 |
6.8 |
有償貨物トン・キロ |
(千トン・キロ) |
2,795,737 |
2,515,410 |
90.0% |
郵便トン・キロ |
(千トン・キロ) |
125,904 |
104,259 |
82.8% |
国内線 |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
30,109,920 |
35,109,846 |
116.6% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
23,090,624 |
26,771,128 |
115.9% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
35,243,210 |
35,184,302 |
99.8% |
有償座席利用率 |
(%) |
65.5 |
76.1 |
10.6 |
有償貨物トン・キロ |
(千トン・キロ) |
280,599 |
282,974 |
100.8% |
郵便トン・キロ |
(千トン・キロ) |
22,044 |
22,079 |
100.2% |
合計 |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
34,458,482 |
41,738,026 |
121.1% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
50,401,243 |
63,972,937 |
126.9% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
73,282,493 |
82,512,763 |
112.6% |
有償座席利用率 |
(%) |
68.8 |
77.5 |
8.8 |
有償貨物トン・キロ |
(千トン・キロ) |
3,076,337 |
2,798,384 |
91.0% |
郵便トン・キロ |
(千トン・キロ) |
147,949 |
126,338 |
85.4% |
輸送実績(LCC)は、次のとおりです。
項目 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年同期比 (利用率は ポイント差) |
|
ZIPAIR |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
488,210 |
1,130,315 |
231.5% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
2,471,419 |
6,215,209 |
251.5% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
4,674,955 |
7,979,582 |
170.7% |
有償座席利用率 |
(%) |
52.9 |
77.9 |
25.0 |
スプリング・ジャパン |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
481,206 |
845,485 |
175.7% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
409,361 |
902,067 |
220.4% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
760,306 |
1,286,916 |
169.3% |
有償座席利用率 |
(%) |
53.8 |
70.1 |
16.3 |
(注)1.旅客キロは、各区間有償旅客数(人)に当該区間距離(キロ)を乗じたものであり、座席キロは、
各区間有効座席数(席)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。輸送量(トン・キロ)は、
各区間輸送量(トン)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。
2.区間距離は、IATA(国際航空運送協会)、ICAO(国際民間航空機関)の統計資料に準じた算出基準の大圏距離方式で算出しております。
3.フルサービスキャリア(国際線):日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)
フルサービスキャリア(国内線):日本航空(株)、(株)ジェイエア、
日本エアコミューター(株)、(株)北海道エアシステム、
日本トランスオーシャン航空(株)、琉球エアーコミューター(株)
ただし、前年同期は、
フルサービスキャリア(国際線):日本航空(株)
フルサービスキャリア(国内線):日本航空(株)、(株)ジェイエア、
日本エアコミューター(株)、(株)北海道エアシステム、
日本トランスオーシャン航空(株)、琉球エアーコミューター(株)
4.スプリング・ジャパンの輸送実績には国際線および国内線の合計を記載しております。
5.数字については切捨処理、比率については四捨五入処理しております。
<その他>
株式会社ジャルパックと株式会社JALUXおよび株式会社ジャルカードの概況は、次のとおりです。
株式会社ジャルパック
項目 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年 同期比 (%) |
海外旅行取扱人数(万人) |
1.7 |
5.9 |
343.4% |
国内旅行取扱人数(万人) |
213.1 |
170.4 |
80.0% |
売上収益 (億円)(連結消去前) |
1,088 |
1,154 |
106.1% |
株式会社JALUX
項目 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年 同期比 (%) |
売上収益 (億円)(連結消去前) |
279 |
320 |
114.9% |
株式会社ジャルカード
項目 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年 同期比 (%) |
カード会員数 (万人) |
344.3 |
348.1 |
101.1% |
売上収益 (億円)(連結消去前) |
171 |
132 |
77.0% |
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ746億円増加し、7,138億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益1,393億円に減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減算等を行った結果、営業活動によるキャッシュ・フロー(インフロー)は3,639億円(前年同期は2,929億円のキャッシュ・インフロー)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出を主因として、投資活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△1,950億円(前年同期は△1,127億円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
長期借入金の返済による支出および配当金の支払額を主因として、財務活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△1,050億円(前年同期は△384億円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産、受注及び販売に該当する業種・業態がほとんどないため、「① 財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断および見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しております。
経営者が行った連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積りは次のとおりです。
・収益認識
航空輸送に係る収益は、航空輸送役務の完了時に認識しております。
航空輸送に使用される予定のない航空券販売(失効見込みの未使用航空券)は、航空券の条件や過去の傾向を考慮して適切な認識のタイミングを見積り、収益認識しております。
また、当社グループは会員顧客向けのマイレージプログラム「JALマイレージバンク」を運営しており、旅客輸送サービス等の利用に応じて付与するマイレージの内、将来顧客が行使することが見込まれる分を履行義務として認識し、顧客がマイレージの利用に際して選択するサービスの構成割合を考慮して独立販売価格を見積り、取引価格はこれらの履行義務に対して独立販売価格の比率に基づいて配分しております。マイレージプログラムの履行義務に配分された取引価格は契約負債として認識し、マイレージの利用に従い収益計上しております。
・航空機等の減価償却費
航空機、航空機エンジン部品および客室関連資産等の各構成要素の耐用年数決定にあたり、将来の経済的使用可能予測期間を考慮して、減価償却費を算定しております。
・固定資産の減損
当社グループは、期末日現在の対象資産について、減損が生じている可能性を示す事象があるかを検討し、減損の兆候が存在する場合には減損損失の計上要否の検討を行っております。
・繰延税金資産の認識
当社グループは、将来減算一時差異、未使用の繰越税額控除および繰越欠損金を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で繰延税金資産を認識しております。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたっての見積りに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における資産については、現金及び現金同等物の増加などを主因として前連結会計年度末に比べ1,286億円増加し、2兆6,492億円となりました。
(負債合計)
当連結会計年度末における負債については、契約負債の増加などを主因として、前連結会計年度末に比べ372億円増加の1兆7,008億円となりました。
(資本合計)
当連結会計年度末における資本については、主に親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べ913億円増加の9,483億円となりました。
2)経営成績
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、収入面では、国際旅客収入(フルサービスキャリア)はインバウンドを中心に需要が回復し、前年対比2,048億円の増収となりました。国内旅客収入(フルサービスキャリア)は、旅客数が回復し、単価も向上したことで前年対比997億円の増収となりました。この結果、売上収益は1兆6,518億円(前年同期比20.1%増加)となりました。
費用面では、燃油費は復便による使用量の増加等により334億円の増加、人件費は採用再開による人員数の増加や業績回復に伴う賞与の増加等により417億円増加しました。一方、コストマネジメントに努めた結果、営業費用全体としては1兆5,422億円(前年同期比14.7%増加)となりました。
以上の結果、EBITは1,452億円(前年同期比124.9%増加)となりました。また、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、955億円(前年同期比177.5%増加)となりました。
セグメント別の分析は次のとおりです。
<航空運送事業>
(国際線 フルサービスキャリア事業領域)
国際旅客事業では、日本における水際対策が終了、自由な往来が再開し、コロナ前を上回る事業規模への成長に向けた準備が整っております。旅客数は、日本発着路線への供給座席数が戻り切らない中において、月次ベースでは訪日旅客数がコロナ前の水準を超えることが増える等、好調なインバウンドが寄与し、コロナ前の約68%まで回復しております。中国線の需要回復の遅れはありますが、業績への影響は限定的であり、需要がコロナ前を上回ったインバウンドに比べ回復の遅れていた日本発の需要も徐々に戻っております。結果として、国際旅客全体の旅客数は前年を大きく上回る水準で増加する中、単価も前年に引き続き高い水準を維持しました。また、2024年度夏期ダイヤより欧州・アフリカ・南米方面への新たなゲートウェイとして羽田=ドーハ線を新規就航しました。さらに、エアバスA350-1000型機の導入により、脱炭素の推進に加え、最新の快適性をご提供し商品サービスの強化も進めてまいります。
(国内線 フルサービスキャリア事業領域)
国内旅客事業では、行動制限がなくなり、以前のような社会経済活動が再開したことで、すでにコロナ前同水準の供給体制でお客さまをお迎えしております。運賃をシンプルな体系へ移行しレベニューマネジメントを強化したことで、お客さまの利便性向上と単価向上を両立できております。その結果、旅客数、単価共に前年対比で増加し、好調を維持しております。2023年度冬期ダイヤより、株式会社北海道エアシステムが札幌丘珠=根室中標津線に新規就航しており、医療・防災を支える札幌市と中標津町をはじめとした根室エリアのつながりを強化することにより地域社会の発展に貢献してまいります。
(貨物)
貨物事業においては、日本発着貨物需要の回復が遅れている中、アジア・中国=北米間の需要獲得に努めるとともに、医薬品・生鮮貨物等の高付加価値貨物の獲得に注力し、コロナ前を大きく上回る収入を確保しました。また、2024年2月よりボーイング767型貨物専用機の運航を開始し、グローバルにロジスティクス事業を展開しているDHL Express社との強固なパートナーシップを軸に、成田/名古屋/ソウル/台北/上海に就航しました。旅客便貨物室と新たに加わった自社貨物専用機の供給を組み合わせ、アジア域内およびアジア=欧米間の最適な航空貨物輸送ネットワークを構築・強化します。社会ニーズをとらえた高品質な物流インフラとして、お客さまの想いに応え社会に貢献し、貨物郵便事業の持続的な成長を実現してまいります。
(LCC事業領域)
国際線中長距離LCCである株式会社ZIPAIR Tokyo(以下、ZIPAIR)は、2023年6月よりサンフランシスコ線、2023年7月からはマニラ線、2024年3月からはバンクーバー線に新規就航し、就航地点は北米・アジアを中心に9地点まで増加しております。ZIPAIRは現在の8機体制から2025年度までに10機体制へ拡大を予定しており、積極的に事業規模を拡大してまいります。中国線の需要が少しずつ回復する中、スプリング・ジャパンは3年8カ月ぶりに成田=上海線の運航を再開しており、ジェットスター・ジャパン株式会社を含めた特徴の異なるLCC3社による成田空港をハブとしたネットワーク構築に努め、若年層やファミリー層等、新たな人流の創出を目指してまいります。
(マイル・ライフ・インフラ事業領域)
2024年1月よりJALグローバルクラブが生まれ変わり、単年度のみのご搭乗実績によるステイタス進呈から、お 客さまの生涯を通じたJAL便のご利用および、日常生活のさまざまなサービスのご利用で、ステイタスポイントが たまり続ける「JAL Life Status プログラム」を開始しました。また、混雑する時期でもマイルで予約できる「特典航空券PLUS」のご利用も増えており、マイルのためやすさ・つかいやすさ向上に取り組んでおります。日常生活のさまざまなシーンでマイルをためて、JALならではの特別な体験へマイルを交換できる「JALマイルライフ」を引き続き推進してまいります。さらに、外国航空会社便のグランドハンドリングの受託便数も順調に回復しております。非航空事業領域では、今後も人やモノのつながりを創造し、新たな収益源にするとともに、つながりを新たな航空需要に結びつけ、航空事業の収益拡大につなげてまいります。
費用面においては、燃油費は復便による使用量の増加の影響を受け、前年より増加しておりますが、燃油市況は比較的安定して推移いたしました。各種費用も供給量の増加や世界的なインフレーションの進行により増加傾向にありますが、コスト抑制努力やイールド向上により対応し、前年対比で大きく増益となりました。今後も、さらなるイールド向上や生産性向上等により収益性向上に努めてまいります。
(今後の見通し)
「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」のうち、最初の3年間が終了し、その実績や経営環境の変化等を踏まえて、当社グループは2024年3月21日に「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2024」を発表いたしました。同中期経営計画の完遂に向け努力してまいります。
2024年3月期はコロナ禍が収束した新たな環境において、EBITはようやく1,000億円を超える利益水準への回復を達成いたしました。2025年3月期は事業構造改革の推進によりさらなる成長を実現してまいります。2025年3月期の通期連結業績予想につきましては、同中期経営計画ローリングプランでお示しした事業環境等を踏まえ、国際線旅客の需給バランスはタイトな状況が続くと想定して、連結売上収益1兆9,300億円、EBIT1,700億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,000億円、と予想いたします。
なお、算出にあたり、米ドル円為替レートは145円、航空燃油費の一指標であるシンガポール・ケロシンの市場価格を1バレルあたり110米ドルとしています。
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
2023年度は、新型コロナウイルス感染症の影響が収束した新たな環境において、EBITは1,000億円を超える水準へ回復いたしました。一方で、不安定な世界情勢、物価高騰や航空・観光業界の人材不足といった、社会全体に共通する新たな課題が顕在化しております。また、SDGs達成や気候変動に対する社会の意識はさらに高まり、企業はESG経営を強く意識した上でその対応を加速していくことが求められております。このような経営環境の変化を踏まえ、当社は、「中期経営計画ローリングプラン2024」を策定し、ESG戦略を価値創造ストーリーに基づく最上位の戦略と定め、2025年度における中期経営計画の達成と、中長期的な成長に向けた取り組みを加速・具体化いたします。当社グループは、社会インフラ・ライフラインとしての責務を果たし、「安全・安心」と「サステナビリティ」を成長のエンジンとして、「JAL Vision 2030」の実現を目指して全社員一丸となって進んでまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性
1)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。
強固な財務体質の維持に関しては、格付評価上の自己資本比率の水準を50%程度に保ち、「シングルAフラット」以上の信用格付(日本の格付機関)の取得・維持を目指し、リスク耐性の強化を図ります。
同時に、持続的な成長に向けた取り組みも加速させます。設備投資に関しては、早期に新機材を導入するとともに、LCC事業領域の拡大を図り、グループとしての成長を加速します。
2)経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大により甚大なる影響を受けた経験を踏まえ、適正な手元現預金の水準について検証を実施した結果、イベントリスク発生時に大きな影響を受ける旅客収入規模に応じ、航空券払戻リスクにも一定程度耐えうる水準を設定しております。リスク耐性の強化および資産効率の両立を図るべく、旅客収入の5.0~5.6カ月分(毎月末)を安定的な経営に必要な手元現預金水準(コミットメントライン含む)として確保してまいります。
ESG戦略を加速するための投資を前向きに推進しつつ、業績の回復に伴い、配当性向35%程度の早期実現を目指して株主還元も拡大させることで、企業価値向上に資する経営資源の配分に取り組んでまいります。
3)資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、航空運送事業に関わる燃油費、運航施設利用費、整備費、航空販売手数料、機材費(航空機に関わる償却費、賃借料、保険料など)、サービス費(機内・ラウンジ・貨物などのサービスに関わる費用)、人件費などがあります。
また、投資活動に係る資金支出は、成長を加速させるための省燃費機材の導入等の資産投資のほか、生産性向上を目的とした人財投資や、企業価値向上に資するSAF購入等のESG推進費用等があります。
4)資金調達
当社グループは、事業活動の維持および将来の成長のために必要な資金について、安定的かつ機動的に確保することに努めております。
設備投資は、内部資金および外部資金を有効に活用して実施してまいります。設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としておりますが、十分な手元流動性の確保、資金調達手段の多様化、資本効率の向上を企図し、主要な事業資産である航空機などの調達に当たっては、金融機関からの借入、社債の発行、航空機リース等の有利子負債を一部活用しております。また、ESG投資の推進に向けては、2023年6月に当社として2回目となるトランジションボンドを発行するなど、今後もESGファイナンスを積極的に活用してまいります。
当社は従前から、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、資金調達能力の源泉である強固な財務体質の維持向上に努めてまいります。また、当社は国内2社の格付機関から信用格付を取得しております。本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付は「シングルA(安定的)」、格付投資情報センターの格付は「シングルAマイナス(安定的)」となっております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、健全な財務体質を有していることから、必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題ないと認識しています。コロナ禍を耐え抜くために機動的な資金調達を実施したことで、有利子負債残高はこの3年間で大幅に増加しましたが、2024年3月末時点においても、格付評価上の自己資本比率は41.0%(注1)、ネットD/Eレシオは0.0倍(注2)と、航空業界においては世界最高レベルの強固な財務基盤を維持できております。
(注)1.格付評価上の自己資本比率=格付評価上の自己資本/総資産
2.格付評価上のネットD/Eレシオ=(格付評価上の有利子負債-現金及び現金同等物)/格付評価上の自己資本
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画」において、以下を経営目標としております。
(安全・安心)
経営目標である「航空事故(注1)ゼロ・重大インシデント(注2)ゼロ」を達成し、安全のリーディングカンパニーを目指します。目標達成に向けて、安全・安心を最優先に考える文化・意識の継承と継続的な浸透を更に進めるとともに安全・安心を取り巻く社内外の環境変化に対応するために、以下を重点に取り組んでまいります。
・デジタル技術で安全を強化
- 飛行中の揺れを自動で感知し、他機へ共有する新たなシステムの導入
- 航空機の故障を予測し壊れる前に直す取組みの推進
- 業界全体での滑走路誤侵入対策の実施
・次世代への安全への継承
- 実運航を支援する専門人財育成プログラムの開始
- 多様な人財に安全を継承する取組みの実施(三現主義)
- 運航乗務員のメンタルヘルス支援の仕組み構築
2023年度は目標未達成となっておりますが、発生した事案を踏まえて再発防止策を強化し、安全で安心できる社会の実現に向けて取り組んでまいります。
指標 |
2025年度までの目標 |
2023年度実績 |
航空事故 |
0件 |
1件(注3) |
重大インシデント |
0件 |
1件(注4) |
(注)1.航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災、航行中の航空機の損傷(大修理相当)等
2.航空事故には至らないものの、その恐れがあったと認められる事態。滑走路からの逸脱、非常脱出等
3.航空事故:2024年1月2日、日本航空516便において、着陸後、海上保安庁の航空機と衝突し、滑走路脇で停止、炎上した事案。
4.重大インシデント:2023年7月12日、日本航空585便において、着陸時の予備燃料が不足した事案。
お客さまに心地よい安心をお届けするため、顧客満足度はNPS(Net Promoter Score)を指標とし、目標達成に向け取り組んでいます。
2023年度は、お客さまの航空のご利用がより一層進んだ中、各種商品・サービス品質の向上を図ってまいりました。
国際線では新機材であるA350-1000を導入し、「Design Your Story」をコンセプトとしたサービスを開始するなど、国内線・国際線を通じて、お客さま一人ひとりの価値観にこれまで以上に寄り添った体験づくりに注力しました。また、客室乗務員の接客や保安対応などを中心に、サービスの信頼性にも高評価をいただきました。
外部機関からの評価では、2023年9月に日本で唯一の3年連続となるAPEX(注1)の「WORLD CLASS」(注2)を受賞したほか、2024年4月には7年連続でのSKYTRAX(注3)「5スター」(注4)の認定を受けました。
引き続き、お客さまの多様なニーズや社会課題に合わせて商品・サービスを提供し、世界トップレベルの顧客体験を実現いたします。
指標 |
2025年度までの目標 (2021年度期初対比) |
2023年度実績 (2021年度期初対比) |
NPS 国内線 |
+4.0ポイント |
+6.8ポイント |
NPS 国際線 |
+4.0ポイント |
+3.3ポイント |
(注)1.お客さまの搭乗体験向上のために航空会社や航空関連メーカー、旅行関連企業などで構成する米国を拠点とする非営利団体
2.ポストコロナ時代に航空会社へ求められる最も重要な価値を「サステナビリティ」、「安全・安心とウェルビーイング」、「サービス品質」と定め、世界トップレベルの評価を認定するアワード
3.英国を拠点とする航空会社の格付け会社
4.格付けプログラム「ワールド・エアライン・スター・レイティング」において世界最高品質を示す評価
(財務)
これまで築き上げた高い収益性と強固な財務安定性を兼ね備えつつ、成長に向けた積極的な投資および経営資源の有効活用により常に成長し続けるために、「EBITマージン(売上高利益率)2025年度に10%以上を達成、ROIC(投資利益率)2025年度に9%を達成、EPS(1株当たり純利益)2025年度に290円レベルを達成」を目指します。
2023年度は未達成となっておりますが、高い収益性と強固な財務安定性を目指してまいります。
指標 |
2025年度までの目標 |
2023年度実績 |
EBITマージン(売上高利益率)(注1) |
10%以上 |
8.8% |
ROIC(投資利益率)(注2) |
9% |
7.3% |
EPS(1株当たり純利益) |
290円レベル |
219円 |
(注)1.EBITマージン=EBIT / 売上収益
2.投資利益率(ROIC)=EBIT(税引後)/ 期首・期末固定資産(*)平均
*固定資産=棚卸資産+非流動資産-繰延税金資産-退職給付に係る資産
なお、ROICは社会的価値を考慮した新しい投資効率指標として、「サステナブルROIC(仮称)」の導入を今後検討してまいります。
(サステナビリティ)
環境目標について、「省燃費機材への更新」「運航の工夫」「持続可能な航空燃料(SAF)の活用」によるCO2排出量削減と、客室・ラウンジでの新規石油由来プラスチック全廃、および貨物・空港での環境配慮素材配合への置き換えによる使い捨てプラスチック削減に取り組んでまいります。
地域社会目標について、多くの人々やさまざまな物の流動を創出し、航空会社の根源的な価値である輸送力を活かして、地域活性化に貢献してまいります。
DEI推進目標について、女性社員の意思決定への参画をさらに促すほか、多様な人財の登用と活躍を推進し、会社の持続的な成長と発展に向けて努めてまいります。
|
指標 |
2025年度までの目標 |
2023年度実績 |
環境 |
CO2削減 |
総排出量909万トン未満 (2019年度実績) |
907万トン |
使い捨てプラスチック削減 |
新規石油由来全廃 環境配慮素材へ100%変更 |
新規石油由来を58%廃止 環境配慮素材へ91%変更 |
|
地域社会 |
国内の旅客(注)・貨物輸送量 |
2019年度対比+10% |
旅客+2% 貨物△15% |
人 |
グループ内女性管理職比率 |
30% |
29.8% |
(注)観光需要喚起や新規流動の創造による旅客数の増
重要な契約の内容
会社名 |
契約の名称 または種類 |
契約の内容 |
契約相手先 |
締結年月 |
契約期間 |
国名 |
日本航空株式会社 |
航空機調達契約 (注) |
ボーイング社製787型航空機の発注に関する契約 |
ザ・ボーイング・カンパニー |
2005年 5月 |
- |
米国 |
アライアンス |
世界的な航空連合であるワンワールドへの加盟に際し、基本的な規約事項を定めた契約 |
ワンワールドマネジメントカンパニーおよび加盟各社 |
2007年 4月 |
解約しない限り継続 |
米国 |
|
アメリカン航空との共同事業 |
アメリカン航空との包括的な業務提携に関する契約 |
アメリカン航空 |
2010年 2月 |
5年経過後は自動更新 |
米国 |
|
航空機調達契約 (注) |
エアバス社製A350型航空機の発注に関する契約 |
エアバス |
2013年 10月 |
- |
仏国 |
|
ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンランド航空およびイベリア航空との共同事業 |
ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンランド航空およびイベリア航空との包括的な業務提携に関する契約 |
ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンランド航空およびイベリア航空 |
2016年 10月 |
5年経過後は自動更新 |
英国 フィンランド スペイン |
|
マレーシア航空との共同事業 |
マレーシア航空との包括的な業務提携に関する契約 |
マレーシア航空 |
2020年 4月 |
5年経過後は自動更新 |
マレーシア |
|
航空機調達契約 (注) |
ボーイング社製737型航空機の発注に関する契約 |
ザ・ボーイング・カンパニー |
2023年 3月 |
- |
米国 |
(注)当該契約に基づく航空機の調達については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載しております。
研究開発費を発生させる活動はありません。