文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、1923年の創業以来、品質と信頼を至上とするものづくりの原点にこだわり、印刷機械メーカーとしてまい進してまいりました。その中で、「感動 = Beyond Expectations」は国内外で共感を持ってグループ社員に迎え入れられてきました。これからも当社グループは「感動創造活動」を通して、「感動企業の実現」への努力を重ねることで、企業としての社会的責任・使命を全うしてまいります。
また、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、地域社会、社員とその家族等、全てのステークホルダーの信頼と期待に応えるとともに、共存共栄を図ることを行動指針として活動しております。
(2) 会社の対処すべき課題及び中期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標
当社グループの事業環境につきましては、依然として地政学リスク等不確実な要素が多岐にわたり従来よりも速いテンポで発生すると考えられ、都度、迅速な判断、軌道修正が必要となります。
印刷業界は、出版印刷分野や商業印刷分野での印刷物は減少が予測されるものの、高付加価値印刷やパッケージ印刷の需要は堅調に推移することが予測されており、特にアジア地域においてはパッケージ印刷を中心に好調に推移することが予測されます。一方で、材料費・物流費及びエネルギー価格の高騰や労働力不足は引き続き印刷産業に影響を及ぼしており、ワンパス両面機、多色機、検査装置等の高付加価値機能による生産性向上の取組みや、環境性能向上の取組みがより一層求められております。
当社グループはおかげさまで2023年に創業100周年を迎えることができました。このような事業環境の中、当社グループは、これからの100年に向けて、歴史に胡坐をかくことなく、再創業元年という気持ちで事業変革を本格化させてまいります。そのスタートとして、経営理念を「感動企業の実現」と改定しました。また、パーパスを「プリントテクノロジーで社会を支え感動をもたらす」と制定いたしました。これらをもとに、長期ビジョン「KOMORI 2030」を策定し各事業の方向性を明確にいたしました。「プリントテクノロジーの SHINKA で情報・文化・経済を支え感動をもたらす」ために価値創造エンジンの技術基盤であるプリントテクノロジーの研鑽に努め、ソリューションを生み出す取組みを推進してまいります。2025年3月期からスタートした第7次中期経営計画では、サステナブルな経営体質に向けた事業変革と経営基盤強化の推進を実行してまいります。第7次中期経営計画の骨子、財務方針、目標としている経営指標は以下のとおりです。
① 第7次中期経営計画の骨子
a. 事業ポートフォリオ転換に向けた取組み強化(事業変革)
i). 基盤事業(オフセット事業/証券印刷事業)の付加価値強化による収益力向上
ii). 成長事業 (DPS事業/PE事業) の技術基盤強化により2桁成長を継続
b. 経営基盤強化(戦略投資)
i). 新規市場・成長市場の獲得へ向けた要素技術開発投資の拡大
ii). グローバル化が進む事業環境に合わせた事業体制の刷新とグローバル人財活用
c. 筋肉質な経営体質への転換(経営体質改善)
i). 事業別製販技サービス一体体制の本格運用と資産圧縮・効率化
ii). 販売/サービス顧客管理システム、人事システム、管理システムのグローバル対応
② 第7次中期経営計画の財務方針
a. 資本コストや株価を意識した経営の実現のため、経営資源の適切な配分を実施
b. ROE向上のため総還元性向を50%とし、成長投資への配分比率を高める
(収益向上・成長・サステナビリティへの積極投資)
c. 第7次中期経営計画期間中は新たに最低配当額(40円)を導入し安定配当を継続するとともに、総還元性向(50%)は維持し株主還元を重視
③ 第7次中期経営計画の目標とする指標(2027年3月期)
長期ビジョン「KOMORI 2030」に沿って、2030年までに2段階でROE向上を図り、第7次中期経営計画ではその1段階として『成長投資』と『収益確保』のバランスをとってまいります。
第7次中期経営計画最終年度の経営目標は以下のとおりです。
a. 営業利益率: 7.0%以上
b. ROE: 6.0%以上
当社グループは、プリントテクノロジーを通じて社会文化を支えることにより、全てのステークホルダーに対して常に満足と感動をお届けし、経営理念である「感動企業の実現」を達成することを目指す姿としています。私たちは社会や外部環境の変化に柔軟に対応し、社会課題解決と持続発展可能な社会の創造に貢献していきます。
当社グループは、経営の健全性及び透明性の向上を目的とするガバナンスの強化は重要な経営課題であると認識し、積極的に取り組んでおります。取組みの詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
(気候変動に関する情報開示の取組み)
当社グループでは、気候変動による事業への影響を考察するために、「国際エネルギー機関(IEA)」や「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」等外部機関が公表している気候関連シナリオを参考に、シナリオ分析を行いました。分析では、「KOMORIエコビジョン」で定める2030年時点の気候変動による影響を定量・定性の両面で評価を行っております。なお、分析にあたって使用したシナリオ及び分析の結果は以下のとおりです。
4℃シナリオでは、風水害等の物理的な影響が拡大、激甚化することが想定されます。当社グループの各拠点に対しても物理的な被害が発生することを想定しており、直接的な被害及び被災による営業停止については定量的な分析を実施の上、被害規模を分析評価しています。また、平均気温の上昇により、当社グループで使用する空調設備使用によるコストの増加も考えられます。
このような物理的な影響が想定される中、当社グループでは風水害等の影響を受けやすい拠点の移転や空調設備の省エネルギー化を進め、リスクの低減を図っております。
1.5℃シナリオでは、脱炭素化に向けた政策規制や技術革新の進展がそれらに伴う操業コスト及び対応コストの発生が想定されます。また、エネルギー政策の実施に伴うエネルギー需要の変化によって生じる電力価格の上昇、脱炭素への移行に伴うサプライチェーン全体での対応コストの価格転嫁から、当社グループの支出増へつながる可能性を評価しています。
このような脱炭素化に伴う影響が想定される中で、当社グループではScope1+2や製品のCO2排出量削減目標の設定をはじめとする脱炭素化に向けた取組みを行い、リスクの低減を図っております。例えば、空調や照明設備の省エネ化や太陽光発電設備、製品の脱梱包化の取組みは、電力価格の上昇や省エネ・再エネ政策、プラスチック規制の導入に対応しております。また、当社グループの製品の省エネ性能の向上やダウンサイジングを進めていることは、当社グループの製品に対する需要変化に対応しております。
その他事業機会となり得る事項として、従来型の印刷機から環境性能の高い印刷機やデジタル印刷機への移行というのは当社グループにとってリスクであるとともに、顧客ニーズの掘り起こしによる需要拡大につながると考えております。また、デジタル化の進展による電子部品の需要増加はプリンテッドエレクトロニクス分野の発展につながります。製品の研究開発への注力がリスクの低減及び事業の拡大や売上の増加といった機会につながると考え、引き続き取組みを推進してまいります。
(注) 1.*箇所は2022年3月期の営業利益実績に対しての影響がある(考えられる)項目に対して以下の基準で定量的な評価を実施しております。
⇒大:5%以上、中:1%以上~5%未満、小:1%未満
2.定量的な評価を行っていない影響については、定性的な考察を踏まえて評価しております。
(人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略)
当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針及び戦略は、以下のとおりであります。
・従業員エンゲージメントの向上
当社グループが持続的に企業価値を向上し続けるためには、人財を最も重要な「資本」として位置づけ、「従業員感動」の実現を通して、従業員エンゲージメントを向上させる取組みが必要不可欠であると考えており、その根幹を"厳しくともやりがいのある"「KOMORI流働き方改革」と位置づけています。
当社グループでは「KOMORI流働き方改革」を「K-Work」と名付け、段階的に改革を実行し、グループ全体で人的資本の強化に努めています。
《「K-Work」の三本柱》
① 働きやすい職場環境の整備
健康で、柔軟に働くことができる職場環境
② 人財マネジメントの強化
労働意欲と能力を高める人事・教育制度
③ ダイバーシティの推進
ライフイベントに沿った両立支援及び多様な人財の登用
《「K-Work」の活動実績》
① 働きやすい職場環境の整備
当社では、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、リモートワークや時差出勤といった新しい働き方の導入、部門を超えたコミュニケーションの活性化による新たなアイデアの創出や価値の創造を目的としたオフィスレイアウト改革の推進等、時間や場所に捉われない柔軟な働き方の拡充に取り組んでいます。
また、従業員が持続的にパフォーマンスを最大限発揮するためには、一人一人の健康管理が重要であるとの考えに基づき、従業員の健康維持・増進を目的とした健康経営についても、戦略的に取り組んでいます。
・健康経営
従業員感動を実現するためには、社員一人一人が心身共に健康で、生き生きと仕事に取り組むことが不可欠なため、当社は健康経営に取り組んでおります。具体的には、適正な労働時間管理、定期健康診断受診の徹底、特定保健指導参加の勧奨、ラジオ体操実施等の健康増進、新型コロナやインフルエンザの職域接種による感染症対策等を実施しています。これらの取組みが評価され、2023年3月「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定されました。昨年に引き続き、2年連続での認定となります。
今後も引き続き従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、取組みの継続的な効果検証や見直しを図りながら、様々な健康課題の解決や、従業員と家族の健康維持・増進に努めてまいります。
② 人財マネジメントの強化
当社グループは、多様な人財一人一人が自律的に成長・活躍し続けられる組織を目指しています。そのために、従業員それぞれのキャリア志向に応じた成長の場を提供するとともに、やる気を引き出すことで従業員の成長を促し、それにより組織の成長へ繋げたいと考えています。当社グループは、実力と自主性を重視し、意欲さえあれば何度でも挑戦できる仕組み・環境づくりを行っています。
・グローバル人財育成の強化
当社グループの海外現地法人は11ヶ国に18拠点を展開しており、従業員の1/3は外国籍の海外人財が所属しています。今後、各事業の更なるグローバル化が見込まれることから、グローバルリーダーの育成を急務と捉えています。
そのため、当社ではグローバル人財を「海外事業化戦略を現地スタッフと共に企画し達成できる人財」と定義し、主に「異文化適応力」「経営管理知識」の強化を目的とした教育をスタートしています。また、海外現地法人との人財交流や、海外人財の雇用を促進し、グローバル化に則した「人と組織体制」の確立に取り組んでいます。
・キャリア開発・評価
従業員と組織の双方がパフォーマンスを最大限に発揮することができる最適な人員配置と、公正・公平で透明性の高い評価、及びそれに基づく処遇を実現するためのキャリア開発・評価を実行しています。半期ごとに展開する目標管理シートを活用して、上長と本人が目標設定と達成結果を摺り合わせするための面談を1on1で行っています。また、自己申告書では、今後の異動・キャリア志向についての希望も記入できるようになっており、本人の意向も確認しながら、組織全体での最適な人員配置となるように努めています。
・女性キャリア研修
管理職として必要な基礎的能力や考え方に対しての理解を深め、自身を女性のキャリアを切り開くロールモデルとする認識を高めるための知識や考え方を習得させる必要があります。本研修を通して、「女性管理職としてのありたい姿を描く」「キャリアプランの策定」「リーダー・マネージャーとして求められる能力・考え方」「会社側でできること/自分自身でできることについてのディスカッション」「自己評価、外部からの評価の確認」「世の中の女性活躍動向」「ステップアップの可能性」等について学び、女性キャリアに求められる役割認識と知識付与を図ります。
・研修・教育
当社では、多種多様な職種・年齢層の従業員が活躍しているため、各人のステージに合わせた形で目標管理やOJTの対象としており、育成・コミュニケーションのツールとして活用しています。加えて、人財育成を体系化し、様々な研修・教育を行うことで、業務上で求められるスキルや専門知識を習得する場を提供しています。
③ ダイバーシティの推進
当社は、両立支援、次世代育成をDE&I推進の重点施策の一つと位置付け、ライフイベントに沿った制度の拡充を進めています。「仕事と育児を両立している従業員が働きやすく、やりがいを感じられる職場環境を提供することで、その従業員が保有している能力を最大限に発揮できる」という考えから、様々な取組みを行っています。
・シニア人財の活用
当社では、「常に挑戦意欲と実行力を持ち、経営課題に対し、自律・変革対応型の行動ができる人財を育成する」を人事施策としています。
適正な目標設定、業務配置及び適正な評価を行うことで、社員の能力開発と成長を支援します。
役職定年後や再雇用においても「会社が求める役割」を明確にするとともに、メリハリのある「評価(給与・賞与)」を行うことで、意欲・能力のある社員に活躍していただきたいと考えています。
・くるみん認定
当社は、ダイバーシティ推進の一環として女性活躍推進を実施しており、2021年4月「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣より、「くるみん」の認定を受けました。
当社では、「リスクマネジメント規程」に基づき、経営戦略や事業戦略に想定される様々なリスクについて、CSR委員会の下部組織である「リスクマネジメント委員会」を設置し、各本部のリスク担当者と連携して取り組んでおります。リスクの特定と評価に際しては気候関連を含む経営環境のあらゆる側面リスクを抽出した上で、リスクの発生頻度と影響度で評価を行っております。リスク管理の活動計画及び評価は各本部のリスク担当者が実行し、活動進捗についてはリスクマネジメント委員会で討議され、特に重要とされたリスクはCSR委員会及び取締役会に報告・協議されます。これらのプロセスを通して特定したリスクについては個別に担当部署を定め、対策及びその実行計画を検討しリスクの未然防止や発生時の影響緩和を図ることとしており、その活動についてはリスクマネジメント委員会により進捗及び対応状況の管理を行っております。
(気候変動関連)
当社グループは温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を2015年から公表しており、Scope1,2,3のGHG排出量を2018年から公表しております。2024年3月期のGHG排出量は現在算出中の為、算出済の2023年3月期のデータとなりますが、Scope1+2は2011年3月期を基準年として、2023年3月期で38.4%削減を達成しております。2024年3月期には、2050年カーボンニュートラル達成に向けて「KOMORIエコビジョン」を改定しました。Scope1+2のGHG排出量は2023年3月期を基準年として2031年3月期26%低減を目標として取り組んでまいります。なお、Scope3の2023年3月期排出量は1,190ktとなっております。

(人財の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標)
また、当社は、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標は、次のとおりであります。
(注)1.労働者の男女の賃金の差異については、上位役職者が少ないことが主な理由となっております。当社はこれを課題として認識し、引き続き、現在注力している女性の活躍を推進し、多様性の確保を図ってまいります。
2.管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
① オフセット印刷市場が縮小するリスク
当社グループは、これまで出版、商業印刷向けオフセット印刷機を主軸に事業を展開してきましたが、印刷業界は、インターネットや電子書籍の浸透によって、特に欧米・日本では書籍、商業印刷の需要が縮小しており、商業印刷向けオフセット印刷機の売上高が減少してきております。今後、電子媒体の増加が新興国を含め世界的に急速に浸透することによって書籍、商業印刷の需要がさらに縮小した場合には、出版、商業用印刷向けオフセット印刷機の需要も縮小し、当社グループのオフセット印刷事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方、厚紙(加飾、医薬、中間箱)、段ボール、ラベル、軟包装等といったパッケージ市場は持続的に成長していることから、パッケージ印刷はこれからも成長が見込まれます。当社グループは、今後、オフセット印刷事業の主力分野を商業印刷からパッケージ印刷市場への対応を強化し、製品戦略としてROIを軸とした製品ポジショニングの見直しによる競争力向上と生産体制の再構築を行い、差別化商品の市場投入、ブランド認知度の向上、ソリューション提案による領域の拡大等の施策を行ってまいります。
② 欧米の海外現地法人の収益力が弱体化するリスク
現地法人では、電子媒体の増加に伴い、販売主力機である商業印刷向けオフセット印刷機の需要が減少傾向にあり、収益力が弱体化する可能性があります。
そのため、オフセット印刷機の入れ替え需要の獲得、部品販売や保守サービスの推進、さらに資材及び機材販売の強化に乗り出しておリます。また、商業印刷向けオフセット印刷機の需要は漸次減少しつつも、一定の入れ替え需要は存在しております。しかしながら、印刷会社においてコスト競争力の強化が必須になっており、印刷工程の省力化、スキルフリー化が求められております。その対策として、当社グループが開発したKP-ConnectやDPSを活用し、リカーリングインカムの増大を構築すべく工程最適化ソリューションの提案による商機拡大を図ってまいります。
③海外事業に伴うカントリーリスク
外国企業に対する暴動、内乱、テロ、戦争、自然災害、感染症等が発生した場合、財政状態及び経営成績に悪影響を受ける可能性があります。
当社グループは、ハザードリスク発生時の全社対応方針を定めて客先対応ルールを策定する等の対策をとっております。また、市場調査情報を定期的に取得しリスク評価を行い中期計画への影響分析等も行っております。
④ 電子部品等供給リスク
電子部品等の供給不足が引き起こす生産ラインの不安定稼働とそれに伴う納期遅延は大幅に改善されています。しかし、今後の供給のひっ迫と需要の拡大等の複数の要因(米国と中国の経済摩擦・海外における紛争の影響・各国における輸出入の規制・サプライチェーンの混乱や輸送コストの急騰・新規需要の拡大等)が複雑に絡み合い供給リスクが派生する可能性は高く、当社グループの財政状態及び経営成績が悪影響を受ける可能性があります。
このような状況への対策として、電子部品や一般市販部品メーカーとの連携強化を図り、先々の使用量を提示してロット発注や適正な在庫確保に努めてまいります。また、電子部品や一般市販部品の代替可能な部品を選定し、同種部品の2社以上の調達先確保を前提に、発注先メーカーの新規開拓の促進を図ってまいります。
⑤ 製品の品質クレームにより損害が生じるリスク
当社グループが製造・販売する製品に販売、製造、サービスに起因する製品の品質クレームが発生した場合は、補修等の損失や損害賠償による損失が発生し、さらには信用問題とともにブランドが毀損する可能性があります。
そのため、当社グループは、「顧客視点」の総合的な品質管理として知覚品質管理を実施しております。この知覚品質管理は、「ブランド管理」を軸にし、「総合製品品質管理」、「顧客対応品質管理」、「見栄え品質管理」を行っており、顧客視点での品質保証体制を整備しております。また、グローバルCRMを活用したサービスケースの迅速な対応を体制強化してまいります。
⑥ 情報セキュリティの侵害に係るリスク
情報セキュリティが侵害され、情報漏洩、データの破壊や改ざん、業務やサービスの停止等の被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与えるのみならず、当社グループへの信用失墜に繋がる可能性があります。
そのため当社グループは、情報セキュリティの推進に係るポリシーを「情報セキュリティ基準」や具体的な利用・運用ルールの要領として定めるとともに、推進組織として情報セキュリティ委員会を設置し、国内外グループ会社を含めセキュリティ体制の構築、維持、整備を行っております。また、定期的な脆弱性診断やリスクアセスメントを実施することにより、リスクを早期に発見し、対策を講じる体制を構築しております。また、一般従業員向けメール訓練や教育も実施する等のリスクを未然に防ぐ対応も実施しております。
今後も脅威動向の変化を捉え、サイバーセキュリティ対策への取組みを継続してまいります。
(2) 新規事業に関するリスク
① デジタル印刷事業の拡大が停滞するリスク
印刷業界では印刷品質と生産性の両面において、デジタル印刷機に対する需要は根強く、当社グループとしては引き続きプロユースのデジタル印刷機の商品化に取り組んでまいります。
コニカミノルタ社と共同開発の上で製品展開を行っておりますB2サイズのデジタル印刷機「Impremia IS29」については、技術課題を克服し製品の完成度が向上しています。また、B2サイズのデジタル機については市場に登場してから約10年が経過していることより、競合他社より次世代機の開発計画が示され更には同市場への新規参入を表明するメーカーもあることから当社グループも次の製品に向けた製品改良、新規開発の必要性に基づく開発投資が発生する可能性があります。
また、B1サイズの次世代デジタル印刷機「Impremia NS40」については技術課題に対応し、早期市場投入に向けて準備をしております。
② PE(プリンテッドエレクトロニクス)事業における、対象分野の変動リスク
市場変化のスピードに追随できず、事業収益を大幅に低下するリスクがある新規事業の一つの柱であるPE事業では、開発対象分野の技術革新の影響より収益が見込めると判断した分野が急速に収縮したり、逆に他の分野が急速に立ち上がったりなどの環境に置かれています。
従って新しい市場開拓に時間を要し、対象分野の急速な市場変化により想定した事業拡大等ができず、事業収益が大幅に低下するリスクがあります。
当社グループは市場調査を徹底し事業推進体制による商品化機能を強化しております。さらに次世代プリンテッドエレクトロニクスのイノベーションを推進するために、山形大学と包括的な連携協定を締結致しました。今後は市場変化を見極めながら次世代プリンテッドエレクトロニクスの開発を推進して参ります。
(3) 財務に関するリスク
① 為替レート変動によるリスク
当社グループの主要な海外市場は、欧州、北米、中国を含むアジアであり、海外売上高比率は全体の60%超となっております。円以外の主要な取引通貨はドル、ユーロであり、為替変動の影響を受けやすい構造となっており、想定為替レートに対し急激な円高が発生した場合は売上高、利益の減少等収益に影響を与えます。
為替レート変動によるリスクを軽減するため、当社グループは原材料や部品の海外調達や、一部製品の海外生産を実施しております。また、円建て契約を優先するほか、先物為替予約等でヘッジすることにより短期のリスクの合理的な軽減を図っております。しかしながら、大幅な変動が生じた場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② のれんの減損が顕在化するリスク
当社グループは、印刷需要が伸びている新興国市場でのシェア拡大を目的とした企業買収を行っております。この企業買収に伴い、のれんを計上しておりますが、買収後の事業が計画に対して実績が下回る等により、その乖離が継続して生じた場合は、のれんの減損損失の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企業買収に当たりましては、企業価値算定、投下資金の回収見込み、買収金額の妥当性、リスク等について取締役会で十分な審議を行った上で意思決定を行っております。また買収後は出向者の派遣並びに連携の強化等を通じて、管理及び事業の推進体制を整え、リスクの軽減に努めております。
③ 棚卸資産の過多によりキャッシュ・フローが悪化するリスク
当社グループが販売予測の前提条件と実績の乖離により過剰な製品在庫を生じさせた場合は、生産調整にとどまらずキャッシュ・フローを悪化させる可能性があります。
そのため、過剰な製品在庫を生じさせない対策として、適正在庫の全社目標を設定するとともに、関係会社ごとに売上水準に合わせた在庫目標を設定し、月次で乖離を管理しております。一方で、昨今の電子部品等の供給リスクに対しては、中長期的な販売予測を元に部品毎に適正在庫量を設定することで、棚卸資産の管理と安定供給生産の両立を目指してまいります。
(4) 災害等によるリスク
緊急事態における本社機能、製造拠点の集中に係るリスク
本社及び当社グループの主要製造拠点であるつくばプラント・製造子会社において、地震や竜巻等自然災害が発生した場合には、本社の財務集計等の経営管理機能、製造設備の破損、サプライチェーンの機能麻痺等が発生し、操業停止等の事態に陥り、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、サプライチェーンについては、東日本地域のサプライヤーだけでなく、西日本や海外のサプライヤーとの取引拡大等の対策を講じています。今後は、適正な部品在庫を確保するために発注方法の見直しを検討・計画し対策を講じていく予定です。
直下型地震対策については「事業継続計画(BCP)」の策定、「首都圏直下型地震発生時リスクマネジメント」(地震対策マニュアル)の社員への配布、防災訓練(コロナ禍の中においては、リモート防災訓練)等の対策を講じています。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化に加え中東での地政学リスクが発生し、先行きに対する不透明感が強まりました。一方で、アフターコロナの経済活動拡大による影響を受け進行していたインフレが鈍化しつつあり、それに伴い各国の追加的な金融引き締めの中断や金融緩和時期の検討が重ねられ、回復の兆しが見える状況となっております。
印刷機械の市場動向は、日本においては労働コストの上昇や人手不足に加え、エネルギー価格の高騰や印刷資材の価格上昇の影響を受け、生産性向上や効率化等の合理化投資を進める動きが続いております。これに対応したROI(投資収益率)提案を中心とした「advance(アドバンス)」モデルの販売促進に取り組んだ結果、オフセット印刷機を中心に受注が好調で売上高の増加につながりました。北米においては、金利の高止まりの影響により、設備投資への慎重な姿勢が見られるものの、好調だった前連結会計年度の受注残が寄与し、売上高が増加しました。欧州では物価上昇に金利の上昇も加わり設備投資に慎重な姿勢が見られましたが、売上高はユーロ高の影響もあり前連結会計年度を上回りました。中華圏では、海外企業によるサプライチェーン見直しや為替変動による中国元安、さらには不動産不況等の影響により設備投資の先送りの傾向が見られました。一方で、大手印刷会社は労働力確保の深刻化や人件費の上昇に対して、省人化・自動化を目的とした設備更新を継続しており、中華圏全体での売上高は前連結会計年度を上回りました。アセアンやインドを含むその他の地域では、オフセット印刷機の需要拡大が続いていますが、証券印刷機の受注契約が遅れていることが影響し、売上高が減少しました。
以上の結果、当連結会計年度における受注高は99,114百万円(前連結会計年度比1.8%増加)、売上高は104,278百万円(前連結会計年度比6.5%増加)となりました。売上原価率は、原材料価格の高騰等により、前連結会計年度に比べ悪化しました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ、円安により主に海外連結子会社の人件費が増加したことや、アフターコロナにより旅費交通費が増加したこと等により増加しました。その結果、営業利益は4,898百万円(前連結会計年度比14.3%減少)となりました。経常利益は上記営業利益と為替差益の影響により6,797百万円(前連結会計年度比2.8%増加)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、当連結会計年度に減損損失を計上した影響等により4,641百万円(前連結会計年度比18.8%減少)となりました。
また、海外売上高は69,700百万円(前連結会計年度比6.2%増)で、売上高に占める割合は66.8%となりました。
地域別連結売上高の概況は以下のとおりです。
日本市場はオフセット印刷機を中心に合理化投資の動きが見られ、補助金による投資促進効果も後押しとなり、前連結会計年度に引き続き受注高が増加しました。売上高は、前連結会計年度の受注残と当期の受注高増加が反映され、前連結会計年度比7.1%増加の34,578百万円となりました。
北米市場では、大手企業を中心に高付加価値印刷機への需要が高まりましたが、全体では金利の高止まりの影響で設備投資に慎重な姿勢が見られ受注高は前連結会計年度を下回りました。一方で、前連結会計年度後半に好調であった受注分が当連結会計年度の検収・売上に寄与したため、売上高は前連結会計年度比44.5%増加の11,683百万円となりました。
欧州市場では、ウクライナ情勢の長期化や物価上昇に金利の上昇も加わり設備計画に慎重な姿勢が見られました。前連結会計年度に含まれていた証券印刷機売上の反動減や、当連結会計年度に予定していた大型機売上の翌連結会計年度へのずれ込み等マイナスの影響がありましたが、ユーロ高の影響もあり、売上高は前連結会計年度比0.9%増加の22,754百万円となりました。
中華圏市場では、海外企業によるサプライチェーン見直しや人民元安に加え不動産不況の影響を色濃く受けました。中堅企業では投資に慎重な態度が見られた一方で、大手企業は収益改善のため、積極的な合理化投資が続きました。この結果、売上高は前連結会計年度比3.8%増加の18,316百万円となりました。
その他の地域はアセアン・インド・オセアニア・中南米を含んでおります。オフセット印刷機の売上高は、コロナ後の回復基調が継続していることからインド・中南米で大きく増加し、それ以外の地域でも全て前連結会計年度比で増加しました。一方で証券印刷機は受注の遅れにより当連結会計年度の売上高が減少しております。その結果、売上高は前連結会計年度比2.4%減少の16,944百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
a. 日本
セグメントの「日本」には、日本の国内売上高と、日本から海外の代理店地域や海外証券印刷機の直接売上高が計上されております。同代理店地域には、中華圏の一部を除くアジアと中南米等が含まれております。上記記載のそれぞれの地域での業績を反映した結果、セグメントの「日本」の売上高は76,896百万円(前連結会計年度比1.2%増加)となり、セグメント利益は4,428百万円(前連結会計年度比15.7%減少)となりました。
b. 北米
セグメントの「北米」には、米国の販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました北米の状況の結果、セグメントの「北米」の売上高は11,692百万円(前連結会計年度比45.3%増加)となり、セグメント利益は758百万円(前連結会計年度比229.1%増加)となりました。
c. 欧州
セグメントの「欧州」には、欧州の販売子会社、欧州の紙器印刷機械製造販売子会社及び印刷後加工機製造販売子会社グループの売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました欧州の状況の結果、セグメントの「欧州」の売上高は23,376百万円(前連結会計年度比0.4%増加)となり、セグメント損失は168百万円(前連結会計年度は370百万円の利益)となりました。
d. 中華圏
セグメントの「中華圏」には、香港、中国深圳市、台湾の販売子会社及び中国南通市の印刷機械装置製造販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました中華圏の状況の結果、セグメントの「中華圏」の売上高は16,527百万円(前連結会計年度比8.7%増加)となり、セグメント損失は230百万円(前連結会計年度は32百万円)となりました。
e. その他
「その他」には、インド、シンガポール及びマレーシアの販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べましたその他地域の状況の結果、売上高は4,501百万円(前連結会計年度比25.9%増加)となり、セグメント利益は319百万円(前連結会計年度比5.7%増加)となりました。
(2) 財政状態
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,065百万円増加して167,588百万円(前連結会計年度比1.2%増加)となりました。資産の主な増加要因は、投資有価証券の増加7,346百万円、棚卸資産の増加4,527百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加2,468百万円等であります。主な減少要因は現金及び預金の減少7,853百万円、有価証券の減少4,894百万円、のれんの減少1,765百万円等であります。
(負債及び純資産)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ5,268百万円減少して53,121百万円(前連結会計年度比9.0%減少)となりました。負債の主な減少要因は、電子記録債務の減少5,360百万円、契約負債の減少753百万円等であります。主な増加要因は、繰延税金負債の増加1,887百万円、流動負債その他の増加484百万円等であります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,334百万円増加して114,467百万円(前連結会計年度比6.8%増加)となりました。純資産の主な増加要因は、投資有価証券評価差額金の増加4,875百万円、為替換算調整勘定の増加1,540百万円、退職給付に係る調整累計額の増加889百万円、利益剰余金の増加739百万円であります。主な減少要因は資本剰余金の減少502百万円等であります。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の64.6%から68.3%(前連結会計年度比3.7ポイント増加)となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の1,961.88円から2,157.34円(前連結会計年度比195.46円の増加)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ11,281百万円減少し、49,664百万円(前連結会計年度比18.5%減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ12,527百万円減少し、8,051百万円の資金減少となりました。資金減少の主な内訳は、仕入債務の減少額6,760百万円、売上債権の増加額5,635百万円、棚卸資産の増加額2,762百万円等であり、資金増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益5,805百万円、減価償却費1,967百万円、減損損失1,384百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が526百万円の資金減少であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ1,009百万円増加し、483百万円の資金増加となりました。資金増加の主な内訳は、有価証券の純増減1,710百万円、投資有価証券の売却による収入660百万円、保険積立金の払戻による収入531百万円、定期預金の払戻による収入485百万円等であり、資金減少の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出1,552百万円、定期預金の預入による支出744百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が4,077百万円の資金減少であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ796百万円減少し、4,874百万円の資金減少となりました。資金減少の主な内訳は、配当金の支払額2,439百万円、自己株式の取得による支出1,504百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出701百万円等であります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 金額は平均販売価格で表示しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 受注残高には、見込み受注分は含まれておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、「3 事業等のリスク」に記載した項目が挙げられますが、特に影響が大きい要因は次のとおりであります。
当社グループの総売上高に占めるオフセット印刷機事業の割合は大きく、景気動向や法律・規制の施行、税制等の変更等に起因するオフセット印刷機の需要環境変動が、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度のオフセット印刷機の需要環境は、地政学リスクの拡大の影響等を受ける等、地域によりばらつきはあるものの、総じて引き続き改善を見せました。一方で、電子媒体の増加が新興国を含め世界的に急速に浸透していますが、今後において人々の行動が変化して書籍、商業印刷の需要がさらに縮小した場合には、出版、商業用印刷向けオフセット印刷機の需要も縮小し、当社グループのオフセット印刷事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対応した製品戦略として、製品ポジショニングの見直しによる競争力向上と差別化商品の市場投入を実施するとともに、DPS事業やPESP事業等の新規事業や、MBOグループの印刷後加工機の事業とのシナジー効果を拡大し収益源の多様化・安定化を進めております。このように、オフセット印刷機事業以外の事業についても拡大を図ることにより、個別事業の需要環境変動が発生したとしても経営成績への影響度を低減できるように図ってまいります。
次に、当社グループの海外売上高比率は全体の60%を超えており、かつ製造拠点が日本に集中していることから、為替変動の影響を受けやすい構造となっております。当社グループはこの為替変動リスクに対応すべく、円建て契約を優先するほか、先物為替予約で短期の変動リスクをヘッジする一方、部材等の海外調達比率を高め、また、一部製品の製造を海外生産子会社へ移管する等により為替エクスポージャーを低減する努力を続けております。
足元では、半導体不足をはじめとした電子部品供給のリスクが改善し、納期が正常化しつつありますが、継続して電子部品や一般市販部品のメーカーとの連携強化を図り適正な在庫確保を図るとともに代替可能部品の選定等対策を進めてまいります。今後とも、「3 事業等のリスク(4)災害等によるリスク」に記載した適正な部品在庫を確保するための対策を講じて安定稼働に努めてまいります。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、経済・金融環境の変化に伴う需要変動リスクに備えて十分な手許流動性を確保することにより、安定した財務基盤の維持に努めております。運転資金及び事業投資資金については主として内部資金により調達しておりますが、財務運営の安定性を増すため、2020年10月に普通社債100億円を発行しております。今後の運転資金及び事業投資資金の需要については内部資金の範囲内と認識しておりますが、内部資金を超過する大型戦略投資資金が必要となる際には、借入金や社債により調達する可能性があります。なお、当社は格付け機関である格付投資情報センター(R&I)より長期格付けA-を取得しております。
(7) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標等
当社グループは、製造・販売・技術・サービスの組織体制の連携強化を図り、当連結会計年度を最終年度とする第6次中期経営計画(2020年3月期~2024年3月期)を進めてまいりました。第6次中期経営計画はCovid-19の感染拡大という非常に厳しい市場環境の中スタートいたしましたが、その環境下で、世界最高クラスのROIを提供する新機種であるリスロンアドバンスシリーズを市場に投入し、多色機モデルの拡充とコンサル型提案営業を展開することで、一時700億円台に落ち込んでおりました売上高も、2022年3月期以降は大幅に改善しました。ROEは、前連結会計年度に2期連続で第6次中期経営計画の目標を達成いたしました。一方、最終年度である当連結会計年度は急速に進む資材高騰に対し販売価格の改定で対応したものの、改善効果は翌連結会計年度に反映される見込みです。
第6次中期経営計画の2024年3月期の計画及び実績は以下のとおりです。
翌連結会計年度では、第7次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)がスタートします。同計画の骨子については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)会社の対処すべき課題及び中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標」に記載しており、サステナブルな経営体質に向けた事業変革と経営基盤強化を推進し,企業価値向上を目指してまいります。
2027年3月期目標
(8) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
研究開発は、当社グループの事業戦略において重要度の高い活動です。
当社グループは、事業戦略上重要な活動として次の研究開発に取り組んでいます。
1.オフセット印刷の品質・生産性向上技術開発
2.紙幣印刷機の関連技術開発
3.高い生産性を有するデジタル印刷機の開発
4.革新的なPE(プリンテッドエレクトロニクス)技術開発
5.環境対応の要素技術開発
当連結会計年度における当社グループの重要な研究開発成果は次のとおりであります。
1.オフセット印刷の品質・生産性向上技術開発
省電力かつ操作性の高いインターフェースによって刷新されたオフセット印刷機の新モデル「GLX/GL-advance (アドバンス) EX(エディション)」を開発しました。エネルギーコストの高騰とオペレーター人材の不足は、印刷会社の利益を圧迫する大きな要因となっています。これらの課題に対応するため、この新モデルは、最新のプリントテクノロジーを駆使し、エネルギーコストの抑制と印刷オペレーターの作業効率向上を実現しています
さらに、人と環境に優しいスマートファクトリーの構築を推進する工程管理ソフトウェア「KP-Connect(コネクト)」の機能拡張を進め、アライアンスの拡充、CO2排出量の見える化等を実現しています
2.紙幣印刷機の関連技術開発
つくばプラント内にKGC-S (Komori Global Center-Security)を開所しました。KGC-Sは、KOMORIのセキュリティプリントテクノロジーを、政府機関や印刷会社並びにサプライヤーに提供する最新鋭の施設です。これにより基盤印刷技術開発だけでなく、近年の銀行券に求められる高度な偽造防止技術開発をさらに強化しています。
3.高い生産性を有するデジタル印刷機の開発
片面毎時6,000枚の印刷スピードで、世界最高クラスのROIを実現するB2枚葉UVインクジェットデジタル印刷機「J-throne 29(ジェイスロン29)」を開発しました。「J-throne 29」は、イメージング技術に、独自開発の画像形成機能を融合させるとともに、新規開発の専用UVインクによる幅広い印刷適性と高い生産性を備えています。
4.革新的なPE(プリンテッドエレクトロニクス)技術開発
PEに関する要素技術の開発のため、PE要素技術開発センター(以下、PEDEC)を設立しました。エレクトロニクス業界の急速な進化に対応するため、PEDECを活用した要素技術の開発基盤を整え、技術競争力の確立を目指します。さらに今後は、パートナー企業との共同開発や産学連携によるオープンイノベーションを推進する場としても活用し、PE技術の可能性を追求します。
5.環境対応の要素技術開発
インキローラー配列・構成の最適化、ブロアーシステムの高効率化・小型軽量化、加湿システムの最適化による印刷機の消費エネルギー削減に取組み、印刷品質向上、用紙搬送安定化、ダウンタイム削減等を追求しました。これらにより、印刷中の消費電力を最大18%削減するとともに損紙枚数を低減し、温室効果ガスの削減と高い生産性の両立を実現しています。
なお、当連結会計年度の研究開発費は、