文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
ヤマトグループは常にお客様価値を高めた製品・サービスの提供を追求し、業界最高の「技術とものづくり」の力を高め、地域社会の発展に貢献します。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社が属する建設業界においては、関連予算の執行により堅調に推移する公共投資の増加に加え、民間設備投資においても、社会経済活動の正常化が進んだことにより国内景気が持ち直し、機械投資やデジタル関連投資を中心に増加することが期待されるものの、建設資材価格の上昇は続くものとみられ、また、技能労働者の高齢化や現場労働者数の減少は建設業における喫緊の課題であり、今後はデジタル技術を活用した、より生産効率を高めた生産システムの構築が進むものと思われます。
このような状況に対応すべく、当社グループは当連結会計年度を初年度とする3か年の中期経営計画を策定しました。
当社グループは、以下の3点を成長戦略とした「中期経営計画」(2023~2025年度)を推進していきます。
1. コア事業の強化・拡大
当社の強みである「カタチにする力」(見える化・工業化)を更に推進し、高品質・高評価・高収益につなげます。
・品質向上、ものづくり体制の確保・強化
・競争の強化
・顧客の拡大
2. グリーンイノベーションの推進
地方都市の脱炭素社会実現のため、環境性・快適性・経済性がバランスする技術・サービスを提供します。
・資源の有効活用
・省エネルギーの強化
・再生可能エネルギーの拡大
3. 経営基盤の強化・地域貢献
変化に対応し、継続的に成長するための人的資本投資とDX、ガバナンスを強化、エッセンシャル企業として地域に貢献します。
・モチベーションの向上(長く安心して働ける環境整備など)
・ガバナンスの強化(グループでのガバナンスレベル向上など)
・地域貢献(2023年3月21日に開駅した「道の駅まえばし赤城」の事業運営など)
当社グループは、本計画の目標達成に向けて、総力をあげて取り組んでまいります。
ひとを育て、技術を磨き、イノベーション(新しい価値創造)を起こして、地域とひとの幸せを創造する企業を目指し、さらなる努力を重ねてまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、中期経営計画(2023~2025年度)において連結売上高、連結経常利益、連結ROE、連結配当性向を経営目標とし、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。また、70億円の投資計画(3期累計)を掲げており、その内訳は生産性向上投資60億円、成長投資(企業連携・M&A・人財投資)10億円です。
なお、当連結会計年度の実績及び現在の事業展開の進捗状況から中期経営計画の見直しは不要であると判断しています。
(4)建設プロダクトとSDGs
当社グループは「建設プロダクト」というコンセプトを合言葉に、お客様価値の高い「モノ」と「サービス」を提供し、社会的課題の解決や気候変動などの地球環境問題への取り組みを通じて持続可能な地域社会づくりの実現に貢献します。
「中期経営計画」(2023~2025 年度)及び「SDGs行動宣言」の詳細は、当社ホームページにてご確認ください。
・中期経営計画(2023~2025 年度):2023年3月27日公開
・SDGs行動宣言:2023年2月1日公開
(5)内部統制報告制度(J-SOX)における開示すべき重要な不備の解消について
当社は、2023年6月19日付で関東財務局長に提出した2023年3月期の内部統制報告書において、当社連結決算に使用する子会社の個別財務諸表の正確性を担保する内部統制の不備(「収益認識に関する会計基準」等の適用にあたり、連結決算手続の過程で一部の連結子会社の個別財務諸表を誤って修正したこと及び株式会社スズデンの会計処理の誤りを当社が連結決算手続の過程で識別したことによる連結決算作業の遅延)は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いと判断し、開示すべき重要な不備として2023年3月期末日における財務報告に係る内部統制は有効ではないことを開示しました。
当社は、当該事実を真摯に受け止め、財務報告の信頼性を確保すべく以下の再発防止策を講じて、その整備及び運用状況の改善を実施しました。
・経理部内でのチェック体制の見直し
決算作業手順の見える化及び決算作業の属人化を排除するために、外部の専門家(公認会計士)を利用して決算チェックリストの拡充を図るとともに、当該チェックリストを用いた検証を多重的に実施することで、決算処理の誤りを防止しました。
なお、決算チェックリストは人的統制であることから、ケアレスミスを可能な限り防止するため、決算処理のIT化を進めてまいります。
・経理人員の補強や会計的な知見の向上
当社及び株式会社スズデンにおいて決算開示の業務経験を有する経理人材の採用や経理部での勉強会を行うとともに、当社経理部員による建設業経理に関連する資格取得や外部セミナーへの参加等を通じて会計的な知見の向上を図りました。
以上の結果、前連結会計年度の開示すべき重要な不備は解消され、当連結会計年度末日における当社グループの財務報告に係る内部統制は有効であると判断しました。
皆様の信頼回復と当社グループの企業価値の向上を図るために、引き続き、コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の強化に努めていきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティに関する考え方
地球温暖化による自然災害が多発する今、脱炭素社会の実現は、現在の私たちの責任です。また、少子高齢化による人口減少が進行する社会において、持続可能な社会づくりを進めていく事は私たちの役割であり、サステナブル経営の強化は不可欠となっています。私たちヤマトグループは、建設という事業フィールドを通じて、お客様や社会に喜ばれる価値の提供を行ってまいりました。経営理念、経営ビジョンのもと、事業を通してESG問題に積極的に取り組み、エッセンシャル企業として地域の社会課題を総合力で解決してまいります。
(2) ガバナンス
当社グループは、サステナビリティをめぐる諸課題について重要な経営課題として取り組み、取締役会に上程または報告する体制としています。
(3) 戦略
2023年度を初年度とする中期経営計画において、「コア事業の強化・拡大」「グリーンイノベーションの推進」「経営基盤の強化・地域貢献」の3点を成長戦略とし、サステナビリティに関する戦略としては、「地方都市の脱炭素社会の実現」「人的資本投資」「ガバナンス強化」について、具体的施策を掲げています。
(地方都市の脱炭素社会の実現)
当社グループは、「建設プロダクト」というコンセプトを合言葉に、お客様価値の高い「モノ」と「サービス」を提供し、社会的課題の解決や気候変動などの地球環境問題への取り組みを通じて持続可能な地域社会づくりの実現に貢献しています。具体的には、建物建設プロセスにおいて、設計~施工~保守・メンテナンスの各プロセスで「見える化」「3次元設計」「工業化」「デジタル化」の手法を効果的・総合的に活用することで、事業活動における省人化・資源ロス削減・環境負荷低減を推進しています。また、省エネルギーや省CO2、食品ロス低減、安心安全な水環境創出に貢献する独自技術や施工技術を新築・既設建築物に導入することで、サステナブルな建築物をお客様に提供しています。脱炭素社会の実現に向け、環境性・快適性・経済性がバランスするグリーンイノベーションを推進しています。
中期経営計画では以下を重要具体的施策とし、推進しています。
(人的資本に関する取り組み)
当社グループは、人材を「資本」と捉え、当社の原点である「社是社訓を実践する社員の育成」に改めて取り組むことにより、技術力とマネジメント力に優れた社員を育成してまいります。
(人材育成方針)
従業員の各職務に応じて求められる知識や技術を習得する機会を提供し、企業理念である社是社訓を実践できる人材を育成してまいります。
(環境整備方針)
従業員の多様性 (経験、技能、属性)を尊重し、能力を十分に発揮させることが企業競争力を高めるとの認識に立ち、多彩な人材を確保してまいります。特に女性・高齢者の活躍促進に向け職場環境の整備を行い、ワークライフバランスを推進してまいります。
中期経営計画では以下を重要具体的施策とし、推進しています。
技術力とマネジメント力に優れた社員を育成するため、技術力強化への投資に加え、今後は管理職マネジメント研修、女性活躍研修に積極的に投資してまいります。管理職が対話を通じて部下と向き合うことにより、部下のみならず管理職自らの成長につながり、ひいては当社と従業員との一層の信頼関係が醸成されるものと考えています。
研修費に占める重点投資研修の構成割合は次のとおりです。
(4) リスク管理
事業に重大な影響を及ぼすサステナビリティに関するリスクについては、業務執行会議の承認事項または報告事項としています。業務執行会議は、取締役、執行役員及びグループ会社取締役で構成し、取締役会によって決定された経営方針に基づく諸施策を迅速に審議、実施する機関です。
また、担当取締役を推進役とし、グループ全体のサステナビリティ及びSDGs推進活動を行うSDGs推進委員会では、毎月、環境・社会に関するサステナビリティ及びSDGsの取り組みについて議論を行い、適宜、業務執行会議や取締役会に報告をし、助言を受けています。
建設業では熟練技能者の高齢化と新規入職者の減少が急速に進行しており、人材の確保と育成が喫緊の課題となっています。また、2024年問題についても建設業界の担い手不足や長時間労働など、重要な人的リスクと認識し、担当部署を中心に評価・検討を行い、業務執行会議ではリスク管理に関する情報を共有するなど、継続的なリスク管理を行っています。
当社グループの事業にとって気候変動に関する課題への対策は、事業創出の機会でもあり、省エネルギーや省CO2、食品ロス削減、省人化などの技術とサービスを技術開発し、今後とも継続的にお客様へ提供してまいります。
(5) 指標及び目標
当社グループでは、上記「(3) 戦略」において記載した人材育成方針および環境整備方針に関する指標として、次の指標を用いています。当該指標に関する実績および目標は、次のとおりです。
なお、連結子会社を含めた指標及び目標の設定は困難なため、当社単独の指標及び目標としています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、下記項目の中には、将来の予想に関する事項も含まれていますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 建設業界の市場環境に関わるリスク
当社グループが営んでいる事業である建設工事業は受注請負産業です。民間企業による設備投資の減少や政府及び地方公共団体の公共投資の削減により、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、新たな建設市場構築に向けた脱請負業、リニューアルやリノベーション分野への経営資源の戦略的投入による安定的な受注の確保に取り組んでいます。
(2) 気候変動に関わるリスク
気候変動に対する需要の変化に対する対応が遅れ、競争力の低下により当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、省エネルギーや食品ロス削減などの顧客の要望に合致した技術とサービス力の強化に努めています。
(3) 取引先の信用に関わるリスク
建設工事業においては、その請負金額とそれに伴う工事支出金が一般的に高額であり、工事目的物の引渡時に多額の工事代金が支払われる契約が多いため、工事代金を受領する前に取引先が信用不安に陥った場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、組織的なプロジェクトリスク管理体制を整備し、具体的根拠と客観的評価に基づいた与信管理の徹底に努めています。
(4) 資材調達価格の高騰に関わるリスク
調達する機器及び材料の価格が高騰し、それを請負金額に反映させることが困難な場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、資材価格動向のモニタリングや予測及び予測精度向上に向けた取組みを継続するとともに、集中購買や早期発注を通して価格の上昇を抑制することに努めています。また、民間建設工事の契約締結に際して、建設資材等の価格高騰に対するスライド条項の合意に努めています。
(5) 工事施工に関わるリスク
工事施工中における人的・物的事故あるいは災害の発生や工事引渡後における手直し工事の発生等、予期せぬ費用の発生により、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、安全に向けて最大限の配慮を払うとともに安全衛生の現場指導、適正な労務環境の構築等による安全衛生管理の徹底や品質に関するパトロール、過去の不具合事例の周知等を実施し、未然防止策によるリスクの低減に努めています。
(6) 不採算工事の発生に関わるリスク
受注時には予測できなかった経営環境の変化や工事施工段階での想定外の追加原価等の発生により、不採算工事が発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、業務のフロントローディングを進めます。具体的には、生産設計で情報を確定しプレハブ加工による施工の工業化を図ることによって、原価リスクを低減し、不採算工事の抑制に努めています。
(7) 株式等の保有に関わるリスク
当社グループは、株式や債券などの金融資産を保有していますが、これらの金融資産は、株式相場や基準価額の下落により、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、経済合理性の観点から保有資産の見直しを実施することによりリスクの低減に努めています。
(8) 退職給付制度に関わるリスク
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算定されていますが、年金資産の時価の下落、年金資産の運用利回りの低下等により、退職給付費用が増加した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、ポートフォリオをリスクの低い債券や一般勘定を中心とし、安定運用を目指す方針としており、時価の下落によるリスクを低減するよう努めています。また、将来の財政悪化リスクに備えるため、リスク対応掛金の拠出を行っています。
(9) 法的規制に関わるリスク
当社グループは、建設業法を始めとする様々な法規制の適用を受けています。法規制に違反し、監督官庁による処分や指導を受けた場合には、営業活動が制限され、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、各種関連法令の事前確認を徹底し、役職員及び協力会社に対して法令遵守の啓発活動及び遵守状況の確認を実施しています。
(10) 人材確保に関わるリスク
定年退職者の増加や新規採用者の減少、時間外労働の上限規制適用による総労働時間の減少が見込まれ、施工能力の縮小により当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
このリスクに対応するため、設備施工の工業化や現場管理業務の集約化を推進すると共に、定年を65歳に延長するなど、長く安心して働ける環境整備に取り組んでいます。
(11) M&Aに関わるリスク
当社グループでは、事業強化等を目的として、M&Aを行っています。買収時には想定していない外部経営環境の悪化等により買収後の実績がM&A時に見込んでいた収益計画と大きな乖離が生じた場合、のれんや関係会社株式の減損の計上が必要となる可能性があります。
このリスクに対応するため、買収企業の収益計画や活動実績の精査等を行うことによって、減損の兆候を早期に発見するよう努めています。
(12) 内部統制報告制度(J-SOX)に関わるリスク
当社は、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の重要性を認識しています。しかしながら、経理部員の会計知識の不足等により適切な財務報告が行われず、その結果、当社グループの社会的信用や市場での評価が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
このリスクに対応するため、会計の専門的知見を有する経理人員の育成や補強、監査法人との十分なコミュニケーションを図ります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、長引く国際情勢の不安定化、国内における円安によるコスト負担増加や能登半島地震等の自然災害の影響はあったものの、大手企業を中心とする賃上げをはじめとした雇用・所得環境の改善により、回復傾向にあります。
建設業界においては、公共投資は関連予算の執行により底堅く推移しており、民間設備投資は外部環境の回復基調を受け、持ち直しの動きがみられます。しかしながら、建設資材価格やエネルギー価格の高騰等の影響、担い手不足や長時間労働の解消等といった働き方改革への対応等、当社グループを取り巻く経営環境の先行きは依然として楽観できない状況にあります。
このような経営環境のもと、当社グループは総力をあげて独自の技術・商品を活用したビジネスモデルにより、市場に寄り添った営業活動、デジタル技術を活用した生産システムの改革等、業態変革を図ってきました。
この結果、売上高は前連結会計年度比8.5%増の482億9千6百万円となりました。これは、受注高が前連結会計年度比10.5%増の561億3千8百万円と、受注環境が良好であったためです。この受注状況を後押しした大きな要因は、当社グループが運営する「道の駅まえばし赤城」の設計施工の実績や、当社のサポートセンター兼配管加工工場である「朝倉工場」を広く評価いただいたことです。
利益面では、営業利益は前連結会計年度比11.1%減の18億7百万円、経常利益は前連結会計年度比7.4%減の23億3千1百万円となりました。これは、事業等のリスクで記載のとおり、工期の長い大規模工事で想定を上回る建設資材価格の高騰等により工事損失引当金を計上するなど、不採算工事が発生したことが主な原因です。また、当社の「株式会社ヤマトグループコーポレートガバナンスに関する基本方針」に従い、政策保有株式の縮減を行った結果、特別利益として投資有価証券売却益を3億5千3百万円計上しています。前連結会計年度においても5億5千万円の投資有価証券売却益を計上しており、順調に政策保有株式を縮減しています。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比20.7%減の14億7千9百万円となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりです。なお、セグメント間取引消去前の金額を使用しています。
(建設工事業)
売上高(完成工事高)は、478億3千4百万円となりました。これは、主に建築・土木、空調・衛生、電気・通信、水処理プラント、冷凍・冷蔵に関する工事の設計・監理及び施工並びに、これらに関連する事業によるものです。
(商業施設運営業)
売上高は、5億1千3百万円となりました。これは、連結子会社である株式会社ロードステーション前橋上武が運営する「道の駅まえばし赤城」に基づくものです。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産残高は、前連結会計年度末比10.9%増の528億8千8百万円となりました。その内容は以下のとおりです。
流動資産は、前連結会計年度末比5.9%増の303億5千8百万円となりました。これは、主として受注増及びそれに伴う売上債権の回収が順調に進んだことにより現金預金が増加したことによります。
固定資産は、前連結会計年度末比18.3%増の225億3千万円となりました。これは、主として政策保有株式やSDGs債の含み益等が増加したことによります。当社グループでは、中期経営計画(2023~2025年度)において70億円の投資計画(3期累計)を掲げています。当該計画実行のための資金需要が生じるまでの間は、安全性の高い債券等へ投資して余資運用しています。
その一環として、当社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題への対応が中長期的な企業価値の向上に重要な要素であることを認識していることから、ESG投資として、以下の発行体へ投資しています。当社は、本債券を始めとしたESG投資を継続的に実施することで、今後も企業が果たすべき社会的責任を全うします。
2023年2月22日付けで公表しているとおり、当社は、少子高齢化及び今後の建設業における人材不足への対応や企業としての継続的発展を確保するとともに、労働意欲向上、熟練技術者からの若手社員への技能伝承や育成を図っていくべく定年年齢の延長を実施し、全社員が長期にわたり安心して働け、働きがいを感じることができる雇用環境の実現を目指しています。当事業年度の9月1日を施行日とする確定給付企業年金規約の改定を行った結果、退職給付債務が増加し、過去勤務費用が発生していますが、事業等のリスクに記載のとおり企業年金の財政悪化リスクに備えるためリスク対応掛金の拠出等を行っていることから、積立不足とはならず、退職給付に係る資産を計上しています。
のれんは株式会社スズデン及び日新設計株式会社をM&Aした際に生じたものです。事業等のリスクに記載のとおり、M&A時に見込んでいた収益計画と大きな乖離が生じた場合、のれんの減損の計上が必要となる可能性がありますが、当連結会計年度末現在、株式会社スズデン、日新設計株式会社のいずれについてものれんについて減損の兆候は生じていません。
ロ 負債
流動負債は、前連結会計年度末比10.4%増の133億5千2百万円となりました。これは、主として受注増に伴う工事未払金の増加及び契約負債(未成工事受入金)が増加したことによります。なお、工事損失引当金が前期に比べて大幅に増加していますが、これは受注時には予測できなかった経営環境の変化により採算性が低い工事を受注したことによるものです。事業等のリスクに記載のとおり、今後は、業務のフロントローディングをより一層進めます。
固定負債は、前連結会計年度末比77.0%増の22億1百万円となりました。これは、主として政策保有株式等の時価上昇に伴い、繰延税金負債が増加したことによります。
純資産は、前連結会計年度末比8.7%増の373億3千5百万円となりました。これは、主として政策保有株式等の時価上昇に伴い、その他有価証券評価差額金が増加したことによります。
堅実経営の成果として、自己資本比率が、前期72.0%、当期70.5%と依然として極めて高い水準を維持しています。
引き続き、財務レバレッジ(借入金依存度)に依存せず、収益性(売上高当期利益率)を改善させることで連結ROEの向上を目指します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主として売上債権の回収により、39億1千5百万円の収入超(前連結会計年度比54億9千5百万円の収入増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、中期経営計画で公表しているとおりロジスティックセンター建設のための土地を購入したことや、また、SDGs債を購入したことなどから投資支出があるものの、政策保有株式を売却していることから投資収入もあり、5億9千6百万円の支出超(前連結会計年度比1億4千2百万円の支出増加)に留まっています。
この結果、フリーキャッシュ・フローは33億1千9百万円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に株主還元策として配当金の支払い及び自己株式の取得を行ったことにより、10億9千1百万円の支出超(前連結会計年度比7億1千3百万円の支出増加)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比22億2千8百万円増加の86億5百万円となりました。
(建設工事業)
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設工事業では、生産実績を定義することが困難であり、また、請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。
当社グループの種類別の受注高及び売上高の内訳は次のとおりです。
・受注高
・売上高
(注) 1 前連結会計年度以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当連結会計年度の受注高にその増減額を含んでいます。
2 リース収益は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号 2007年3月30日)に基づくものです。
3 セグメント間取引消去後の金額を使用しています。
(商業施設運営業)
・売上高
(注) 1 当社グループは前連結会計年度より「不動産管理業」を開始しました。当第1四半期連結会計期間において商業施設の運営を開始したことなどを踏まえ報告セグメント名称を改めて検討した結果、「不動産管理業」を「商業施設運営業」に変更しています。
2 セグメント間取引消去後の金額を使用しています。
2023年3月21日に開駅した「道の駅まえばし赤城」は、赤城山の南麓に位置し、群馬県で33番目に開駅する道の駅です。本道の駅は、“モノ×コト×ヒト”の交流拠点をコンセプトとし、「日本一」市民に愛される道の駅を目指しています。「買い物」「食べる」「リラックス」「遊ぶ」「交流」「学び・体験」の6つの楽しみ方をご提案し、一日中、前橋・赤城を楽しめる施設となっています。
開駅後、積極的に集客活動を実施し、その1つとして広報活動においては新聞各社98件、テレビ報道41件、雑誌掲載79件、その他媒体80件のメディア露出がありました。台南フェア、ビアガーデン、イルミネーションなどイベントも年間で200件実施し、いつ、何度来ても楽しめる道の駅としての施策を行いました。
<台南フェア(開催期間:2023年6月30日(金)~2023年7月2日(日))>
前橋市ともゆかりが深く、台湾の食の宝庫とも言われている台南市よりご出店いただきました。
道の駅には、400個のランタンが灯り、いつもの道の駅と違った雰囲気を演出しました。
台南市政府が2023年7月3日に出した報道資料によれば、来場者数は予想を大きく上回る延べ5万人に達し、売り切れが続出するほどの人気を博しました。
豊かな台南農産物や台南料理文化を味わいつつ、台南の風情や音楽パフォーマンスを体験できるイベントとなりました。
<MAEBASHI AKAGI ILLUMINATION 2023~光のテラス~(開催期間:2023年12月9日(土)~2024年2月29日(木))>
約17万球のLEDによるイルミネーションを、施設内の3つのエリアで実施しました。
遊歩道に沿って約125メートルの青い光のトンネルをつくるほか、屋外広場や屋外テラスでも星空などのイメージを演出しました。
<道-1グランプリ2023 復活祭(開催期間:2023年11月11日(土)~12日(日))>
道の駅活性化や地域創生を目的に京都府京丹後市で4年ぶりに開催された「道-1グランプリ2023 復活祭」で、地産地消食堂アカギメシの「赤城牛のローストビーフ丼」が準グランプリを獲得しました。
丼ぶりには群馬県産の食材をふんだんに使用しており食べ応えも抜群です。
「道の駅まえばし赤城」を代表するグルメのひとつです。
これらの効果もあり開駅後、好調に来場者数を伸ばし、繁忙期となるゴールデンウィークやお盆、観光需要が高まる9月、10月には特に多くのお客様にご来場いただきました。
来場者数について、当初、年間80万人を見込んでいましたが、開駅からおよそ7か月で300万人を突破し、1年間で440万人の来場者数となりました。
1日の平均来場者数は、平日がおよそ1万人、休日がおよそ2万人で、特に市内の家族連れを中心にリピーターが多いという現状です。
今後、来場者のさらなる増加を目指し、旅行会社に働きかけるなどして県外からのツアー客の誘致にも力を入れてまいります。
参考のため、提出会社の事業の状況は次のとおりです。
なお、「注記事項 (重要な会計方針) 5 収益及び費用の計上基準」に記載のとおり、建設工事業で行っている一部の業務委託に関する取引について、顧客への財又はサービスの提供における当社の役割が代理人に該当する場合に、顧客から受取る額から業務委託先等に支払う額を控除した純額で収益を認識していますが、当社は業績管理のため総額売上高を活用していることから、提出会社の事業の状況については代理人取引を総額表示に組み替えて記載しています。
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当事業年度の当期受注高にその増減額を含んでいます。
2 リース収益は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号 2007年3月30日)に基づくものです。
3 次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)です。
建設工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比です。
(注) 1 第78期の完成工事のうち請負金額13億円以上の主なもの
2 第79期の完成工事のうち請負金額9億円以上の主なもの
3 第78期・第79期ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はいません。
(d) 次期繰越高(2024年3月20日現在)
(注) 次期繰越工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
当社グループは、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して、連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成に当たっては、資産・負債及び収益・費用の計上に関しては見積りが必要です。これらの見積りについては、過去の実績や状況に応じて見直しを行っていますが、不確実性が伴うため、実際の結果は異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主として営業キャッシュ・フローにより賄っています。その上で、事業投資等で必要資金が生じる場合には、財務の健全性維持を勘案し、主として金融機関からの借入により資金調達を行っています。当社グループの主な資金需要は、資機材の調達、外注費の支払、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。
(資本業務提携契約の解消)
当社は、2017年5月12日に高砂熱学工業株式会社(以下「高砂熱学工業」といいます。)との間で業務及び資本提携契約(以下「本提携」といいます。)を締結し、同日「業務及び資本提携契約の締結、及び第三者割当による自己株式の処分に関するお知らせ」にて開示をしていました本提携につきまして、契約期間の満了により解消しました。
高砂熱学工業は、当社の普通株式1,010,000株を保有しています。相互に保有している株式については売却する方針であり、売却の時期及び方法等については今後のマーケット状況等を踏まえつつ、各々判断していきます。なお、当社と高砂熱学工業は、資本業務提携の解消後もこれまで両社で築きあげてきた良好な関係を維持していく所存です。
研究開発については、環境改善に対する社会的要求に対応するため、当社の大和環境技術研究所を中心に、住環境関連の新技術開発に積極的に取組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費は、
主な研究開発
当研究所においては、上下水道及び温浴施設向けの水処理、空気調和衛生分野に関する研究と検証試験を行っており、その内容は以下のとおりです。
(1)浄水施設等のリニューアル・機能強化提案のためのデモ試験、運転システムの検証を通じて、既存技術の改善改良・特許取得に向けた活動を継続しています。
・上水道における配水管網内での残留塩素濃度の平準化を目的とした実証試験及び実施設への実装を行っています。第79期は、当社のTASK監視システムと制御システムを組み合わせたIotによる省人化を図るための室内規模試験での検証を行った結果、満足した結果が得られました。第80期では実施設での検証活動を予定しており、将来、このシステムにAI学習機能を持たせた省人化システムへと拡張する予定です。
・小中規模浄水施設向けのろ過機について、既設・新設を問わず安価に適用可能な高効率洗浄システムの開発研究を行っています。第79期は、室内規模試験でのデータを集積しつつ、実規模ベースでの試験装置製作の計画を進めました。第80期では、実施設規模装置を製作し、既設施設への組み込み方、当社ろ過装置への標準搭載に必要な諸データを収集する予定です。
(2)農業集落排水処理施設、コミプラ等の小規模下水道施設向けに、省エネルギー化のための運転制御システムの汎用性について検証を行っています。第78期の検証活動を第79期も引き続き行いました。システムの構築については、ほぼデータ収集を完了し、第80期で本システムの製品としての取りまとめをして完了させる予定です。
(3)温浴施設におけるレジオネラ感染症対策技術の改善活動として、レジオネラ属菌の主な増殖要因と共に電解オゾン水を利用したレジオネラ属菌抑制手法について検証活動を継続して行っています。第78期に引き続いて第79期も実施設でのデータ収集と装置の一部改良等を行いつつ、電解オゾン水によるレジオネラ属菌抑制の有効性をさらに検証しました。第80期では、電解オゾン水生成装置の電極材料その他装置設計に必要な諸元を整理し製品化のための検証を引き続き行う予定です。
(4)無人の建物空間内へ次亜塩素酸水を超音波噴霧して表面除菌を行い、コロナウイルス等の接触感染対策を可能とする空間除菌システムの性能評価を行っています。第78期は当社内に設置した当該噴霧器を自動運転化し、通年での性能評価を行った結果、3~4時間で表面除菌効果が得られることが分かりました。性能評価は第78期にて終了とし、本システムは当社本館ロビーと食堂に常設され、毎日早朝の自動除菌を行っています。第79期は、第78期に引き続き通常消毒作業として定着させました。第80期以降は、定期的に効果の検証データを蓄積する予定です。
(5)水道水質基準の全項目検査に対応しつつ、温浴施設及び食品衛生に係わる細菌検査についても適用範囲の拡大と、より一層の精度・信頼性向上を図れるよう活動を継続中です。第80期は、第79期に引き続き土壌汚染対象物質への対応について、分析技術の取得・技術者養成を行うとともに、新規人材の獲得にも力を入れていく予定です。
なお、商業施設運営業において、研究開発活動は行っていません。
また、連結子会社においては、研究開発活動は特段行っていません。