当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
Mission, Vision、経営環境、中長期的な経営戦略および対処すべき課題
Ⅰ.当社グループのMission, Vision
当社および当社グループは、「ヘルスケアにおける新しい価値の創造を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献する」というMissionのもと、「人々の健康に寄り添い、信頼とイノベーションを通じて、ヘルスケアの発展に貢献するグループを目指す」というVisionを掲げ、事業環境が急激に変化する中、将来の飛躍的な成長のために、医療領域に留まることなく広くヘルスケア領域へと事業を展開しております。
Ⅱ.中期計画「H.U. 2025 ~Hiyaku(飛躍) & United~」の概要
当社は、将来の飛躍的かつ持続的な成長に向けて、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画『H.U. 2025 ~Hiyaku(飛躍) & United~』(以下、「本中期計画」)を2020年9月に策定いたしました。
本中期計画策定時点における想定を大幅に上回る新型コロナウイルス感染症の拡大と長期化により、グループ一丸となってPCR検査や空港検疫所における高感度抗原定量検査等の対応に尽力してまいりました。一方で、後ろ倒しとなっていましたH.U. Bioness Complexは2023年5月に全面稼働となり、一部遅れはあるものの本中期計画は着実に進捗しております。当社としましては、引き続き本中期計画の達成に向けて尽力するとともに、事業環境の変化に対応した中長期的な成長戦略について継続的に協議してまいります。
①当社グループを取り巻く事業環境と本中期計画の重要テーマ
当社グループを取り巻く事業環境は、高齢化や先端的医療の導入等による医療費の伸長が見込まれる中、医療機関の経営状況の悪化や医療費の削減要請に伴う検体検査実施料の抑制により、国内臨床検査市場は今後も厳しい状況が継続するものと見込まれます。一方、医療費の抑制策が進む中、病院および病床再編に伴う在宅医療や予防医療のニーズの拡大、先進医療技術の向上やIT技術の進展など新たな成長の機会があり、事業環境の様相は刻々と変化しております。
また、新型コロナウイルス感染症流行以降、生活者の行動変容や患者様の受診抑制傾向からの回復鈍化等、足元の流動的な環境変化にも適切な対応が求められております。
海外臨床検査市場においては、新興国を中心に成長しているものの先進国では社会保障費抑制による低成長が継続しております。また、各国の制度変更等による薬事関連コストが増加する等、厳しい事業環境が継続しております。
このような事業環境の中、当社は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画『Transform! 2020』(以下、「前中期計画」)において推進してきた成長基盤の整備、組織と業務の変革を土台として、下記3点を本中期計画における重要テーマとして掲げグループ一丸となって推進してまいります。
・H.U. Bioness Complexの稼働
・CDMO事業の強化
・ヘルスケア×ICT
②企業価値向上へのストーリー
当社グループは、LTS事業およびIVD事業を有する世界的にみても稀有なグループ企業であり、これらの事業に加えて滅菌関連事業や在宅・福祉用具事業をはじめとする様々なヘルスケアに関連する事業の拡大・強化に取り組んでおり、幅広い事業展開を行っております。これらの事業活動により高付加価値または新しい価値を創出していくことが、当社グループの企業価値を向上させるものと考えております。
・当社グループの価値創造ストーリー
当社グループの有する無形資産を基にグループシナジーを最大限活用し、顧客提供価値の最大化を図ってまいります。
LTS事業およびIVD事業においては、検査の早期開発、開発評価、承認取得を、グループR&D機能も活用し一体となって進めることにより、新規臨床検査の早期実用化を実現してまいります。このLTS事業とIVD事業での価値創造モデルは、今般のSARS-CoV-2抗原検査の早期実用化と収益への貢献により、あらためて実証されたと考えております。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、検査の重要性および当社グループが行うLTS事業が医療を支える社会インフラであるということも社会的に広く認識されたと自負しております。
今後は、中央材料室および手術室における滅菌サービスを提供する滅菌関連事業と合わせて、グループとしての総合提案を行っていくことで、顧客提供価値を最大化し、グループの企業価値を向上してまいります。
※1HSセグメントにおける滅菌関連事業
※2多様な顧客との関係性、それらのカスタマーリレーション
※3KOL:Key Opinion Leader
・グループの事業展開
病院を中心とした医療機関へのグループ総合提案等により着実な成長を果たすとともに、先端領域の検査拡充、次世代プラットフォームの開発等、更なる成長のための施策に取り組んでまいります。
また、検査情報のデジタル化を推進するとともに、PHR(Personal Health Record)を含むICT(Information and Communication Technology)サービスツールを導入・推進することにより、事業を通じて得られる様々なデータの利活用と医療/健康情報プラットフォームの確立を目指し、ヘルスケア×ICT領域へと事業展開を進めてまいります。
※ HSセグメントにおける滅菌関連事業
・ヘルスケア×ICTサービスの展開
地域医療や予防医療の一層の充実が求められる中、当社は、在宅事業やセルフメディケーション・健保事業等を新規育成事業として強化しており、これらのサービスとICTを融合させた新たなサービスを展開してまいります。
また、開業医向け業務支援SaaS(Software as a Service)と、生活者向けのPHRを当社グループで一体的に提供することで、医療の場における検査結果のさらなる活用をサポートし、LTS事業における開業医向けサービスの付加価値向上に取り組んでまいります。

③本中期計画における重要施策
本中期計画は、新型コロナウイルス感染症への対応およびH.U. Bioness Complex稼働に向けた構造改革を実行していくフェーズと、H.U. Bioness Complexの稼働後の投資の回収および収益拡大を果たす2つのフェーズに分かれます。
これを前提として、「H.U. Bioness Complexの安定稼働と自動化による原価低減」、「LTS事業における収益性の改善」、「グループ一体化戦略の推進」、「IVD事業におけるCDMO事業の拡大」を本中期計画における重要施策と定め、グループ一丸となって実行してまいります。
1.H.U. Bioness Complexの安定稼働と自動化による原価低減
当社が、本中期計画における最重要施策と位置付けておりましたH.U. Bioness Complexが2022年1月に稼働を開始し、2023年5月に全面稼働いたしました。
H.U. Bioness Complexは、将来の事業環境においても高品質な検査サービスを継続して提供するためのものであり、一般検査においては全自動化による業務効率化と24時間稼働による大量処理が可能となり、また特殊検査においては最先端の検査項目に対応する設備・環境を整備し、AI技術やロボティクス等を導入することで、徹底した業務効率化とさらなる品質向上を追求いたします。
検査の自動化等により、2025年3月期には、2020年3月期と比較して、H.U. Bioness Complex単体で1検査当たりの原価の低減を見込んでおります。
2.LTS事業における収益性の改善
H.U. Bioness Complexを中心とした検査体制の構築により収益性の改善に努めてまいります。
また、外部とのアライアンス推進によるシェアリング・ロジスティクスの構築やグループ内の集荷機能および拠点の統合を進めることにより、集荷・物流に係るコストの最適化を図ってまいります。
これらの施策を通じて、高品質な検査を提供することに加え、コスト競争力の向上等によりお客様に選ばれる検査会社となり、更なるシェア向上を果たしてまいります。
3.グループ一体化戦略の推進
3-1グループ営業統合
当社は、2020年9月に、株式会社エスアールエル、富士レビオ株式会社および日本ステリ株式会社の国内営業部門およびマーケティング部門を統合したH.U.フロンティア株式会社(以下、「H.U.フロンティア」)を設立し、2020年10月1日より営業を開始いたしました。また、2021年10月1日より、当社の連結子会社である株式会社日本医学臨床検査研究所、株式会社北信臨床および株式会社エスアールエル北関東検査センターの営業部門およびマーケティング部門をH.U.フロンティアに統合しております。
H.U.フロンティアは、当社グループがかねてより進めてきたグループシナジーの強化をより加速するために設立されたものであり、医療を取り巻く環境が急速に変化する中、当社グループがもつ臨床検査サービス、臨床検査薬の製造販売、医療器材の滅菌サービスなど幅広い事業をもって、顧客ニーズに応じて様々なサービスや総合的なソリューションを提供してまいります。
また、各社の顧客基盤を一元化することで、セグメント間のクロスセル拡大や既存顧客への拡販を強化するほか、各社がもつ高い技術力を活用し、最適な新サービスや製品の開発も行うことで、グループ一体での顧客提供価値の最大化を目指してまいります。
3-2グループ内販拡大
引き続き検査ラボや院内顧客に対するルミパルス製品の内販拡大を推進するとともに、原価率の高い検査試薬や使用量の多い試薬の開発を進めグループ内での内製化を推進し、LTS事業のコスト削減およびグループ全体でのキャッシュ・フロー改善に取り組んでまいります。
3-3R&Dの強化
グループ内のR&D機能を統合し知の共有を図るとともに、グループ全体最適のR&D戦略を推進し、機動的な技術の導入・開発の加速を推進してまいります。
4.IVD事業におけるCDMO事業の拡大
IVD事業における海外戦略は、ルミパルス製品の拡販を中心に取り組んでまいりましたが、後発のプレーヤーとしてグローバル大手企業と競争し収益を拡大していくことは非常に難しく、また、各国における規制等の変更により薬事関連のコストが増大しております。このような事業環境の中、海外ルミパルスに関しては、展開地域および項目に関する選択と集中を進めてまいります。一方、IVD事業の強みである免疫分野の良質な原材料・試薬開発技術および、LTS事業におけるルミパルス製品の採用実績をもとにした信頼性と評価を活用することで、CDMO事業の強化・拡大に取り組んでまいります。
④2025年3月期の経営数値目標(連結)
本中期計画において、売上高の着実な成長と利益率の追求のみならず、資本効率の向上と安定的なキャッシュ・フローの創出を果たすべく、下記のとおり経営数値目標を掲げております。
・2021年3月期・2022年3月期・2023年3月期および2024年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標
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2021年3月期(実績) |
2022年3月期(実績) |
2023年3月期(実績) |
2024年3月期 (実績) |
2025年3月期(目標) |
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売上高CAGR (2021年3月期実績は対前年成長率) |
18.2% |
20.3% |
11.4% |
5.9% |
6%以上(※) |
|
EBITDAマージン |
17.0% |
23.9% |
16.5% |
7.1% |
18%以上 |
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営業利益率 |
11.4% |
18.5% |
9.0% |
△1.7% |
10%以上 |
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ROE |
16.0% |
23.2% |
10.8% |
△5.2% |
12%以上 |
|
ROIC |
8.7% |
15.4% |
7.0% |
△1.2% |
8%以上 |
(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)
・2021年3月期・2022年3月期・2023年3月期および2024年3月期の実績と本中期計画における累計数値目標
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2021年3月期(実績) |
2021年3月期~ 2022年3月期 (累計実績) |
2021年3月期~ 2023年3月期 (累積実績) |
2021年3月期~ 2024年3月期 (累積実績) |
2021年3月期~ 2025年3月期 (累計目標) |
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営業キャッシュ・フロー |
356億円 |
908億円 |
1,234億円 |
1,399億円 |
1,500億円以上 |
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フリー・キャッシュ・フロー(※) |
73億円 |
317億円 |
346億円 |
351億円 |
500億円以上 |
(※)リース債務を除く
⑤セグメント別計画
1.LTS事業
LTS事業においては、収益性の改善を最重要課題として認識しており、「③本中期計画における重要施策」に記載のとおり、H.U. Bioness Complexの安定稼働と自動化による原価低減、全国ラボ再編、集荷物流機能の合理化、営業統合によるグループ総合提案等の施策を通じて、収益構造を抜本的に改善してまいります。
さらに、先進医療技術の向上、地域包括ケアシステムの進展や医療におけるICTツールの重要性が高まる等、LTS事業を取り巻く環境は刻々と変化しており、LTS事業が環境変化に対応し飛躍的な成長を果たすべく、「商品力の強化」および「医療機関および生活者へのICTツールの導入」に関しても重要施策として掲げております。
(商品力の強化)
特殊検査に強みを持つ臨床検査会社として、がんゲノム、血液疾患、感染症や希少疾患等、最先端かつ医療需要の大きい疾患分野の新規項目の導入を推進してまいります。また、将来的に需要が拡大することが予測される再生医療・細胞医療領域への進出を図ってまいります。
一方、収益性の面では、ルミパルス試薬の採用項目拡大および不採算項目の整理等を通じて、コスト競争力を向上してまいります。
(医療機関および生活者へのICTツールの導入)
開業医、生活者の双方のニーズに合致したICTツールを提供してまいります。開業医には、これまで提供してきた検査結果システムに加え、業務支援システムを提供し、生活者には、個人のヘルスケア情報を一元管理できるPHRを提供してまいります。
当社グループが提供するICTツール間を連携させることで、開業医と生活者との間に新しい接点を創出する等、診療効率と患者様サービスの向上に資する新たな価値を創出してまいります。
(LTS事業における2021年3月期・2022年3月期・2023年3月期および2024年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標)
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2021年3月期(実績) |
2022年3月期(実績) |
2023年3月期(実績) |
2024年3月期(実績) |
2025年3月期(目標) |
|
売上高CAGR (2021年3月期実績は対前年成長率) |
17.2% |
22.3% |
10.7% |
5.1% |
6%以上(※) |
|
EBITDAマージン |
14.0% |
18.0% |
7.5% |
△0.1% |
17%以上 |
|
営業利益率 |
9.0% |
13.1% |
0.2% |
△8.5% |
9%以上 |
(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)
2.IVD事業
「③本中期計画における重要施策 4.IVD事業におけるCDMO事業の拡大」に記載のとおり、IVD事業の強みを活かすとともに、生産体制の拡充と社内リソースの再配置等により、CDMO事業の強化・拡大に取り組んでまいります。
新・グローバル戦略として、まず、継続的な研究開発活動を通じ、他社が保有しないコンテンツの開発・製品化を進めてまいります。次に、日本国内で販売拡大を進め、欧米では臨床データの取得を通じ、新規製品の臨床的価値の実証を進めてまいります。自社プラットフォームで価値が実証された項目・製品はCDMO事業モデルを通じ、世界に広げてまいります。
国内事業については、H.U.フロンティアによるグループ総合提案および営業力強化、内外販におけるルミパルス試薬の項目拡販、LTS事業向けの項目内製化・導入推進および、マニュアル製品の選択と集中による固定費の最適化により、国内事業の成長と収益性の改善を図ってまいります。
海外ルミパルス事業については、地域と項目の選択を行うとともに、独自性のあるアルツハイマー関連項目に注力してまいります。なお、アルツハイマー病を始めとする神経疾患関連領域に特化し、バイオマーカーの開発を実施してきたADx NeuroSciences N.V.の買収により、同社が有する幅広い原料のポートフォリオおよび最新の技術等を活用することで、アルツハイマー関連項目のラインアップ拡大を目指してまいります。
また、ルミパルスの機能を補完・進化すべく、Fluxus, Inc.と開発中の超・高感度検出技術を取り込んだ形で、次期プラットフォーム開発を加速させてまいります。
さらに、新型コロナウイルス感染症により需要を再認識したエスプライン製品をはじめとするPOCT(Point Of Care Testing)を強化してまいります。具体的には、検体種別(唾液、鼻前庭、無痛採血等)の拡大や感染症項目のラインアップ強化等により商品力を強化していくほか、H.U.フロンティアによるLTS事業の顧客への販売を進めるとともに、生産キャパシティを拡充してまいります。
(IVD事業における2021年3月期・2022年3月期・2023年3月期および2024年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標)
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2021年3月期(実績) |
2022年3月期(実績) |
2023年3月期(実績) |
2024年3月期(実績) |
2025年3月期(目標) |
|
売上高CAGR (2021年3月期実績は対前年成長率) |
24.8% |
26.7% |
20.5% |
11.5% |
4.5%以上(※) |
|
EBITDAマージン |
31.8% |
46.6% |
44.0% |
29.5% |
25%以上 |
|
営業利益率 |
25.6% |
41.6% |
37.9% |
20.9% |
20%以上 |
(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)
3.HS事業
滅菌関連事業においては、病院の経営環境が厳しさを増す中、医療現場のニーズに応えるとともに、医療現場の効率化やコスト削減に資するサービスを積極的に提案してまいります。
重点施策としては、営業統合によるグループ総合提案、手術室を含めた全面受託化の深化および、継続的なオペレーションの改善による収益拡大および利益改善を図ってまいります。また、労働集約型ビジネスであることに鑑み、人件費の最適化を図ってまいります。
(HS事業における2021年3月期・2022年3月期・2023年3月期および2024年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標)
|
|
2021年3月期(実績) |
2022年3月期(実績) |
2023年3月期 (実績) |
2024年3月期(実績) |
2025年3月期 (目標) |
|
売上高CAGR (2021年3月期実績は対前年成長率) |
13.0% |
0.5% |
△0.8% |
△0.1% |
9%以上(※) |
|
EBITDAマージン |
11.6% |
11.5% |
10.0% |
10.7% |
12%以上 |
|
営業利益率 |
7.3% |
6.3% |
3.8% |
4.7% |
9%以上 |
(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)
4.持分法適用関連会社
(Baylor Miraca Genetics Laboratories, LLC)
2024年3月期につきましては、既存のパートナーシップからの売上拡大および新たなパートナーシップの獲得等により、がんや先天性疾患に関わる遺伝学的検査の受託数が増加し、増収となりました。2025年3月期につきましては、引き続き売上成長を図るとともに、株式公開に向けて事業を推進してまいります。
(中国平安JV(深圳平安好医医学検験実験室))
引続き、三位一体モデル(健診クリニック、画像センター、検査ラボ)を推進しながら、中国平安グループの顧客基盤やネットワークの活用等による院内ラボ事業の拡大、特殊検査項目の導入等により、持分法投資損益の黒字化を目指してまいります。
(株式会社札幌ミライラボラトリーおよび株式会社札幌メディ・キャリー)
2021年6月10日付で、札幌臨床検査センター株式会社との間で、北海道札幌地域において共同で検体検査ラボ事業を行うための合弁会社および同地域において共同で臨床検査関連の集荷・物流事業を行うための合弁会社を設立し、2022年3月期より事業を開始しております。
(株式会社メディスケット)
2022年4月1日付で、株式会社メディパルホールディングスとの間で、医療・ヘルスケア領域における物流プラットフォームの構築に取り組むための物流合弁会社を設立し、自社の集荷・物流効率の向上のみならず、他社への集荷サービス提供の拡張を目指しています。具体的には、集荷コスト、両社のルート共通化により温室効果ガス、保有車両等の削減を目標としております。
(株式会社ガイアメディケア)
当社の子会社であるケアレックス株式会社が、在宅事業を営む株式会社ガイアメディケアとの間で業務提携契約を締結したうえで、発行済株式総数の33.4%を取得し、当社の持分法適用会社としております。採用や教育・研修における連携や人事交流を推進し、人材やサービス提供エリアを両社で補完し合うことで首都圏を面でカバーする体制を構築していきます。
⑥財務戦略と財務規律
本中期計画においては、安定的なキャッシュ・フローの創出と健全な財務規律の維持を重要なテーマとして掲げ、下記のとおり財務戦略を実行してまいります。
1)キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善等による営業キャッシュ・フローの改善
2)ファイナンスリースおよび不動産ファイナンスの活用
3)不動産売却の推進
(財務規律)
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2021年3月期 (実績) |
2022年3月期 (実績) |
2023年3月期 (実績) |
2024年3月期 (実績) |
2025年3月期 (目標) |
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(リース債務を除く) 純有利子負債 |
0.6倍 |
0.17倍 |
0.45倍 |
1.79倍 |
1.3倍以下(※) (本中計期間中2.5倍以下を維持する) |
|
自己資本比率(%) |
45.6% |
48.9% |
50.3% |
49.0% |
40%以上 |
(※)2025年3月期
Ⅲ.2025年3月期の計画
①2025年3月期の見通しについて
2025年3月期につきましては、新型コロナウイルス感染症関連検査の減少を見込むものの、ベース事業の成長およびLTS事業における収益性の改善等により、下記のとおりとなる見込みです。
|
単位:億円(四捨五入) |
2024年3月期実績 |
2025年3月期予想 |
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売上高 |
2,370 |
2,410 |
|
EBITDA※1 |
168 |
310 |
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営業利益 |
△40 |
100 |
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ROE |
△5.2% |
4.9% |
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ROIC※2 |
△1.2% |
2.9% |
※1 EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
※2 ROIC=NOPAT(営業利益-みなし法人税)/ 投下資本 [(純資産+有利子負債(リース債務含む)
+ その他の固定負債)の期首・期末残高の平均]
②2025年3月期計画の骨子
本中期計画の最終年度にあたる2025年3月期について、「Mission, Vision、経営環境、中長期的な経営戦略および対処すべき課題 Ⅱ.中期計画「H.U. 2025 ~Hiyaku(飛躍) & United~」の概要」に記載のとおり、重要テーマに取り組んでまいります。
・LTS事業における収益性の改善
H.U. Bioness Complexを中心とした検査オペレーションの抜本的な効率化等による原価改善効果を発現させてまいります。また、株式会社メディパルホールディングスとの合弁会社である株式会社メディスケットによるシェアリング・ロジスティクスの推進により、集荷・物流に係るコスト最適化効果の発現を加速させてまいります。
・CDMO事業の強化
CDMO事業における中長期な需要拡大を見据え、パートナーとの開発を推進してまいります。
Ⅳ.株主還元と成長への投資
各事業から生み出される利益および資金につきましては、主たる配当のKPIとして連結自己資本配当率(DOE)6%レベルを目指し、その上でキャッシュ・フロー、中長期的に健全な財務基盤の維持などを総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を実施してまいります。
また、内部留保にかかる資金は、中長期的な成長に向けた投資を最優先として充当してまいります。
当社グループにおけるサステナビリティに関する考え方および取り組みの状況は、次のとおりであります。
(1)ガバナンスおよびリスク管理
①ガバナンス
1)サステナビリティ推進体制
当社グループは、当社の代表執行役社長が委員長を務める「H.U.グループ サステナビリティ委員会」において、サステナビリティに係る基本方針と活動計画を協議します。同委員会は、計画の実行にあたってグループ各社の活動状況をモニタリングするほか、サステナビリティに関わる社外の最新動向を収集・共有する役割も担います。同委員会のもと、関係各部門の本部長を責任者とする、活動テーマごとの5つの部会を設置し、サステナビリティ活動を推進しています。
当社グループは、指名委員会等設置会社として、監督と執行の明確な分離と事業を迅速に運用できる執行体制を確立しており、サステナビリティに関しても、同コーポレート・ガバナンス体制のもと活動を行っています。「H.U.グループ サステナビリティ委員会」での議論・決議の内容は、当社の取締役会に報告されています。
2)サステナビリティにおける中長期的な重要課題および目標
当社グループは、ESGの観点だけでなく、顧客資産、知的財産やブランドを含めた無形資産全般も対象に含め、中長期的な企業価値に影響を与える要素としてマテリアリティ(重要課題)を定義し、特定しています。マテリアリティについては、ダイナミック・マテリアリティの考えのもと、外部環境の変化や当社事業の状況、各課題への取り組みの進捗を踏まえながら、「H.U.グループ サステナビリティ委員会」でレビューし、更新の是非を判断しています。
当社グループのマテリアリティ(2023年4月改定)
さらに、当社グループでは、マテリアリティの解決に向けサステナビリティ活動に関わるKPI(重要業績評価指標)および目標を「サステナビリティ・ロードマップ」として公表しています。最新のロードマップについては、2024年3月期からの2カ年で設定しており、2025年3月期末までの目標達成に向けて取り組みを進めています。
当社グループのサステナビリティ・ロードマップ
2024年3月期において、MSCI ESG Ratings、健康経営優良法人ホワイト500の認定、CDP評価Climate(気候変動)の3つのESG指標を役員報酬に導入するとともに、指名委員会の委員長および委員の全てを社外取締役にしたことで、ガバナンスに関する2つの目標を達成しました。
②リスク管理
当社グループは、サステナビリティ関連のリスクを含めた当社およびグループ全体のリスク管理を統合的に推進し、グループをリスクから防衛することを目的にリスク管理委員会を設置しています。また、「自然災害および気候変動等に起因する事業活動の停止、制約等による影響」を重要なリスク項目として特定しています。詳細は、「
(2)重要な戦略ならびに指標および目標
①戦略
気候変動がもたらす自然災害の激甚化による建物や設備の損壊リスクおよび物流寸断等のサプライチェーンリスク、政策や法規制の厳格化、投資家をはじめとするステークホルダーからの情報開示要請等、当社グループ事業に関わるさまざまな変化が想定されることから、当社グループでは、「気候変動」をマテリアリティの一つとして特定しています。
気候変動への取り組みについては、当社の総務本部長を責任者とする「環境・エネルギー部会」が計画を策定し実行しています。また、目標設定などの重要事項は、「H.U.グループ サステナビリティ委員会」で協議され、適宜、取締役会に報告されています。
環境・エネルギー領域の体制
気候変動に関連したリスク・機会に関する情報開示の高まりを受け、当社グループは、2021年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言への賛同を表明しました。TCFDの提言に基づく情報開示として、不確実性の高い気候変動の影響を捉えるため、シナリオ分析を行いリスクと機会を定性的に評価しています。検討に際しては、移行リスクが大きくなる世界(1.5℃、2℃)、物理的リスクが大きくなる世界(4℃)を想定し、発生し得る事象を整理しました。各事象への備えとして、「短期:1年」「中期:5年」「長期:10年」の時間軸を設定し、事業への潜在的影響および対応事項を整理するとともに、事業リスクおよび機会について分析しました。
TCFD提言に基づく気候変動シナリオ分析
②指標および目標
当社グループは、パリ協定および大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを踏まえ、環境分野のマテリアリティとして特定した「気候変動」と「循環型社会」に対する長期目標を策定し、取り組みを進めています。
「気候変動」に対する目標としては、CO2の総排出量削減を掲げています。深刻さが増す気候変動への世界的な危機認識の高まりを受け、当社グループでは、2050年にCO2(Scope1・2)の排出量をネットゼロとする目標を掲げ、当該目標達成に向けて取り組みを加速させています。
当社グループのCO2排出量削減の中長期目標
(3)人的資本に関する戦略ならびに指標および目標
①戦略
H.U.グループがMission,Visionを実現するためには、変革に挑戦することが求められます。そして、変革のドライバーとなるのは「人(従業員)」であり、従業員の意識と行動を変えていくことでヘルスケアにおける新しい価値が創造できると考えています。このため、人的資本に関するマテリアリティ(人権、ダイバーシティ、働きやすい職場環境、健康増進、人材開発・育成)を特定し、「人を想い、人が高める」をキーワードに、多様かつ健康で活性化された組織風土づくりに取り組んでいます。
また、組織への定着を図るため、これらの考え方を「人権方針」「ダイバーシティ方針」「労働安全衛生方針」「人材育成方針」として定め、統一した認識のもと、組織的・体系的に推進しています。
これらの方針の詳細については、当社ホームページをご参照ください。
https://www.hugp.com/sustainable/humanrights.html
[社内環境整備に関する取り組み事例]
当社グループでは、多様な人材一人ひとりが健康でいきいきと活躍できる環境の整備に努めています。
<人事制度の改定>
2024年4月からの人事制度の抜本的改革に向けて、複線型のキャリアの設置やジョブディスクリプション・職種別の期待行動の明示等を通して、社員への期待を明確化することに加えて、管理職による部下の評価・フィードバック状況を把握する仕組みの導入や賞与の変動割合の拡大の浸透を図ってきております。
上記の施策により、2024年4月から今まで以上に、個々人の貢献により報いていき、本人の成長・納得感が得られるような透明性の高い制度運用を進めております。
<ダイバーシティ>
当社グループのダイバーシティ方針では、多様な人材一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮することで革新を生み出し、新たな価値を創造することを表明しています。
ダイバーシティ推進にあたり、課長以上の女性管理職比率および男性の育児休業・休暇取得率のKPIを設定し達成に向け、社長直轄のダイバーシティ専任組織を中心に、グループ各社の関係者が共に取り組んでいます。
2024年3月期は「知る」をテーマとし、従業員を対象とするダイバーシティ基礎教育、管理職を対象とするダイバーシティ・マネジメント教育、職場のコミュニケーション向上施策など、ダイバーシティ&インクルージョンの基礎となる施策を推進しました。
2025年3月期は、無意識バイアス、LGBTQ、育児や介護に関する教育等により、一人ひとりが更に活躍できる職場づくりを推進します。
<健康経営>
当社グループでは、社名の由来である“Healthcare for You”一人ひとりと向き合い、全ての人に最適なヘルスケアを届ける、を社内でも実現すべく「健康増進」をマテリアリティに掲げ、従業員やその家族についても、メンタルおよびフィジカルの両面から様々な施策を推進しています。2019年に「健康宣言」を明文化、2020年には健康経営推進室、2022年には健康経営推進部を設置、2023年には健康経営白書を発行して取り組みを強化してまいりました。その結果として、健康経営優良法人大規模法人部門を5年連続で取得したことに加え、2024年には初めて健康経営銘柄に選定されました。現在グループ会社全体で、健康経営優良法人大規模法人部門では7社(うち、当社を含むグループ4社が3年連続ホワイト500を取得)、中小規模法人部門では3社、グループ計10社が健康経営優良法人として認定されています。
②指標および目標
人的資本に関するマテリアリティに基づき、2024年3月期からは、「人材開発・育成」を加えて改定されたマテリアリティに基づき、2025年3月期までの2カ年目標を設定し、さらなる取り組みを進めています。各指標ともに2024年3月期の目標値以上のペースで推移しています。
人的資本に関する当社グループのサステナビリティ・ロードマップ(主要部分)
(2024年3月期~2025年3月期)
リスクマネジメントの基本的な考え方と管理体制
H.U.グループは、当社およびグループ各社におけるリスクマネジメント体制を「リスク管理規程」に定め、グループとして統一した方針のもと、リスク管理を推進しています。
当社は、当社およびグループ全体のリスク管理を統合的に推進し、グループをリスクから防衛することを目的にリスク管理委員会を設置しています。CFOを委員長、代表執行役を除く執行役を委員として構成し、年1回以上の頻度で開催してその結果を取締役会に報告しています。具体的な活動は以下のとおりです。
(1)グループ各社のリスク管理状況の統括管理
(2)グループ全体に関するリスクおよび経営者による不正リスクの識別とコントロールの実行管理
(3)開示すべきリスクの識別とコントロールの実行管理
(4)当社のリスク管理に関する事項
また、当社およびグループ各社は、リスク管理委員会または経営会議等においてリスク管理を行っています。そのプロセスについては、リスクの識別、全社的か業務プロセス単位かといったリスクの分類、顕在化する可能性および影響の大きさに基づくリスクの分析・評価、リスク対応のステップに分けており、具体的にはRCM(リスクコントロールマトリックス)を用いて管理し、当社のリスク管理委員会に年1回以上報告しています。
当社のリスク管理委員会において、グループ各社のリスク管理状況を勘案した上で、グループ全体に関する「特に重要なリスク」と「重要なリスク」を特定しております。
グループリスク管理の枠組み
個別のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
特に重要なリスク
(1) 情報の取扱および情報システムに関するリスク
当社グループは大量の患者個人情報やその検査データを保有しているため、そのセキュリティの確保と個人情報保護法の遵守体制構築は経営の重要課題の一つであります。その一環として、株式会社エスアールエルでは、プライバシーマーク認証を2005年2月に取得しております。また、情報システムのセキュリティ対策として臨床検査事業システムに関する運用業務においてISMSおよびISO/IEC27001の認証を取得しております。また、当社グループは、事業遂行に関連して複数の情報システムを利用しており、これら情報システムについて安定的な運用に努め、老朽化システムの改修・更新対応も含め、情報漏洩防止に資する情報システムの構築と運用ルールの周知徹底を推進しております。
しかしながら、ソフトウェア・ハードウェアの不具合、人為的ミス、災害、犯罪行為、サイバー攻撃、コンピューターウィルス侵入、テロ等により情報システムが正常に作動せず、その結果、個人情報の流出、サービスの大規模な停止、誤請求、検査報告の遅延やデータの消失等が生じた場合、当社グループおよび、その製品・サービスに対する信頼性が失墜し、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは業務遂行に関連して情報システムの開発を行っております。システム開発に当たっては必要に応じて第三者による外部評価を行う等、プロジェクトマネジメントの強化に注力しております。ただし、人材の確保が予定通り進まなかった場合、開発計画の進捗が滞った場合、開発コストが増大した場合、あるいは計画された機能を実現できない等の場合には、当社グループの業務遂行に支障をきたす可能性や、開発にかかったコストを回収できない可能性があります。
(2) 精度管理および品質保証に関するリスク
検査・関連サービス事業における精度管理は、検査結果の正確性を維持するために最も重要な事項であります。当社グループの主要な検査・関連サービス事業会社は、日本医師会、日本臨床検査技師会、日本衛生検査所協会等の各種公的機関等の外部精度管理に参加し、精度管理の徹底に努めております。また、一般財団法人医療関連サービス振興会主催のサービスマーク、米国臨床病理医協会(CAP)、米国臨床検査室改善法(CLIA)およびISO15189の認定を取得するなど社内体制の構築にも注力しております。検査・関連サービス事業における過誤に関しては、発生事案を早期に把握し原因究明および対応策を検討出来る体制を整備するとともに、手順の改善や自動化、社員教育の徹底等、再発防止に努めております。
臨床検査薬事業に関しても、社内の品質保証体制を整備し、製品の品質向上に努めております。当社グループの主要な臨床検査薬事業会社は、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO13485の認証を取得しております。
ヘルスケア関連サービス事業における滅菌関連事業においても、提供するサービスの品質向上に努めており、主要な滅菌センターにおいて、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001の認証を取得しております。
しかしながら、人為的ミスや不測の事態により製品/サービスの品質が担保できない場合には、当社グループの信頼性が損なわれることにより、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 人為災害および感染症等に起因する事業活動の停止、制約等による影響
当社グループの各事業所において、火災、労働争議、設備事故等、人為的な災害が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、感染力が強くかつ深刻な健康被害をもたらす感染症の蔓延(パンデミック)等により、操業に支障が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(4) 自然災害および気候変動等に起因する事業活動の停止、制約等による影響
当社グループの各事業所あるいは顧客である医療機関等が大規模な台風、地震等の自然災害に見舞われた場合に備え、事業継続計画(BCP)を整備し、非常用設備や備品の配置等を行っております。
また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、気候変動が当社グループに与える事業リスクと事業機会について評価、分析を進め、事業戦略への反映と情報開示を推進していくとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献する取り組みを進めております。
しかしながら、気候変動に伴う自然災害等の物理的被害が甚大化した場合、あるいは温室効果ガスの排出規制等が想定以上に強化された場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(5) 研究開発および技術革新に関するリスク
当社グループは効率的かつ迅速な新製品および新技術の開発のため研究開発投資を継続的に行っております。このため、H.U.グループ中央研究所を設立し、基礎研究活動の効率化とスピードアップおよび情報の一元化を進めるとともに、国内外への学会参加の他、必要に応じ第三者の意見を取り入れること等により、市場動向や技術動向の情報収集を積極的に行っております。また、社内での研究開発の進捗について定期的にレビューを行うなど管理体制の強化を行っております。
しかしながら、人材確保ができなかった等の理由により、研究開発において想定した成果が十分かつ迅速にもたらされない、あるいは競合他社に技術開発を先行されてしまう可能性があります。また研究開発の途上において有効性・安全性等の薬事承認に必要とされる基準に満たない等の事由によって研究開発を断念せざるを得ない場合があり、それまでにかかったコストを回収できない可能性や、研究開発方針の見直しを余儀なくされる可能性があります。さらに、技術革新が急速に進展し、その対応が遅れた場合、当社グループの製品/サービスまたはビジネスモデルの競争力が著しく低下することにより、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 製品/サービスの供給に関するリスク
当社グループは、製品/サービスの安定した供給体制の維持に努めております。また、当社グループの事業活動に必要となる原材料や資材等の調達についても、仕入先の分散化等、安定的な調達体制の構築を進めております。
しかしながら、製品/サービスの供給における業務プロセスに遅延や不具合が生じることや、急激な需要の増加や不測の事態等により当社グループや仕入先の供給体制が停止あるいは供給能力が不足することにより、当社グループが安定的な製品/サービスの提供を継続することが出来なくなった場合、あるいは、急激な人件費や原材料等の高騰の影響を価格転嫁できなかった場合には、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 減損会計適用に関するリスク
当社グループは、のれんをはじめとする有形・無形の固定資産および投資有価証券等を所有しております。これらのうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目は、エスアールエル社の臨床検査資産グループにおける有形および無形固定資産57,958百万円(連結総資産の19.9%)ならびにBaylor Miraca Genetics Laboratories, LLCに対する投資有価証券4,994百万円(連結総資産の1.7%)および貸付金4,920百万円(連結総資産の1.7%)であります。
これらの資産の評価においては、会計上の見積りを必要としており、その価値が下落した場合や期待通りの将来キャッシュ・フローが見込めない状況となった場合、減損処理が必要となり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
重要なリスク
(8) 企業買収等(M&A)に関するリスク
当社グループは、成長戦略のひとつとして、既存事業の関連分野におけるM&Aを国内外において検討・実施しており、これにより企業価値の向上を目指しております。
M&Aの実施に当たっては、事前に収益性や投資回収可能性に関する調査および検討を各事業会社および、当社専門部署にて行っており、必要に応じて弁護士、会計士等の社外の専門家の助言を受けております。
しかしながら、買収後における事業環境の急変や想定外の事態の発生等により、買収事業が所期の目標どおりに推移せず、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 知的財産権に関するリスク
当社グループの製品は、物質・製法など複数の特許によって、一定期間保護されています。当社グループでは、特許権を含む知的財産権を適正に管理し、他者からの侵害に対しても常に注意を払っており、グループ内の知的財産管理機能を当社に集約し専門性を高める等、管理体制の強化を図っております。
しかしながら、保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社グループの製品が他者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償を請求される可能性があります。
(10) 法的規制等に関するリスク
当社グループの事業活動は、国内では医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律ならびに関連する法律等の、また、海外ではFDA等による法的規制に服しています。当社グループはこれらの法規制等の改正動向につき、常時積極的な情報収集に努めるとともに、適時対応策の検討を行っておりますが、将来において、法律の改正や規制強化等が行われる場合には、当社グループの事業活動への制限や事業運営に係るコスト増加につながる可能性があります。
(11) 市場環境の変化による影響
医療制度の大きな改革が継続的に進められるなか、当社グループの事業環境は、市場における他社との競合なども加わり、一段と厳しさを増しております。当社グループでは市場および競合動向の情報収集および分析評価を継続的に行い、既存ビジネスの競争力強化のための施策や、新規ビジネス展開等に活用しておりますが、市場環境の変化、各国の医療費抑制の政策や、開発、製造および流通に関わる諸規制の厳格化等は市場価格に影響を及ぼしており、今後もその傾向は続くものと予想され、それにより当社グループの業績および財政状態に悪影響を受ける可能性があります。
(12) 海外事業展開に関するリスク
当社グループは、日本国内のほか、北米・欧州・アジアおよびその他の地域における事業活動を積極的に展開しており、海外事業の戦略的重要度が高まっております。かかる海外地域における市場の変化、景気の後退、政情の変化、経済制裁の発動、労務問題、文化や商慣習の相違、その他の政治的および社会的要因、産業基盤の脆弱性、公衆衛生上の問題、法規制等の変更、税制の変更、テロ・紛争等の発生、感染性疾病の流行や災害の発生等について、現地事業拠点と当社担当部署が連携し常時情報収集を行い、即時の対応が出来るよう努めておりますが、これらの事案が発生した場合には、当社の業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13) 繰延税金資産の回収可能性に係るリスク
繰延税金資産の評価に用いる将来の一時差異等加減算前課税所得の見積りは、当社の包括的な承認を得た翌連結会計年度予算および中期経営計画の数値を、過去の達成状況を踏まえて修正し、当連結会計年度の臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得・税務上の欠損金の発生状況を考慮して算定しております。
繰延税金資産の評価には、翌連結会計年度予算および中期経営計画の達成状況が影響します。翌連結会計年度の業績が予算を大きく下回る場合には、繰延税金資産を減額する可能性があり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14) 経営戦略の実行に伴うリスク
中期計画における各年度の目標数値は、当社の経営目標を表す将来予想であり、これらの取組みを実施し、目標を達成する能力は、上記(1)ないし(13)に記載のリスクおよび不確実性、特に、想定を上回る競争の激化やそれに伴う市場価格の下落、研究開発投資の不奏功、顧客ニーズの変化、アライアンスの不調、国内外の医療制度の想定を上回る変更、海外事業展開および為替変動に関するリスクの顕在化の影響を受ける可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当連結会計年度における世界経済は、長期化するウクライナ情勢に加え、中東情勢の緊迫化など、先行き不透明な状況で推移いたしました。
わが国においては、2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症が感染症法上の分類における5類感染症へ移行し、経済活動は正常化へ向かっておりますが、世界情勢の緊迫化を背景とした原材料価格やエネルギー価格の高騰など、先行きに注視が必要な状況が続いております。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、新型コロナウイルス関連検査需要の急激な減少に加え、医療機関の経営状況の悪化や医療費の削減要請に伴う検体検査実施料の抑制など、事業環境が急速かつ大きく変化しております。
このような環境の中、当社グループといたしましては、H.U. Bioness Complexを中心とした業務効率改善によって収益性を向上させ、安定的な事業継続性を実現するための経営基盤の強化に取り組むとともに、アフターコロナを見据えたベース事業の成長に注力しております。
当連結会計年度の売上高は236,950百万円(前期比9.2%減)となりました。主な減収要因は検査・関連サービス事業および臨床検査薬事業における新型コロナウイルス関連検査数の減少です。
利益では、主に検査・関連サービス事業および臨床検査薬事業における新型コロナウイルス関連売上高の減収により減益となりました。その結果、営業損失は4,043百万円(前期は営業利益23,381百万円)、経常損失は7,241百万円(前期は経常利益22,010百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は7,553百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益15,676百万円)となりました。
① 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等
当社グループでは、将来の飛躍的かつ持続的な成長と収益力向上の観点から、連結売上高、連結営業利益およびEBITDAを、株主資本の効率的な運用の観点からROE(株主資本利益率)を、投下資本に対する収益性向上の観点からROIC(投下資本利益率)を、それぞれ重要な経営指標と位置付けています。
当連結会計年度の実績は、連結売上高が236,950百万円、連結営業損失が4,043百万円、EBITDAが16,828百万円、ROEが△5.2%、ROICが△1.2%となっております。
なお、個別プロジェクトの投資判断については、CEOの諮問機関である投資委員会が各案件の妥当性確認や論点整理するなど、決裁前の事前審査機能の強化を図り、投資後のモニタリングを実施しています。投資案件の評価においては、国別の資本コストに一定の事業リスクを反映したハードルレートを用いた評価を実施し、各事業部門に資本コストを意識した投資を促すとともに、これを上回るリターンの創出による中長期的な企業価値向上への寄与を重視しております。
② セグメントごとの経営成績
イ.検査・関連サービス事業(LTS)
売上では、がんゲノムを始めとした遺伝子関連検査を含むベース事業は伸長したものの、主に新型コロナウイルス関連検査売上が減少したことにより減収となりました。これらの結果、売上高は146,730百万円(前期比10.0%減)となりました。利益では、収益性改善施策による効果の発現があった一方で、新型コロナウイルス関連売上高の減収に伴う減益や原材料費の増加等により、営業損失は12,512百万円(前期は営業利益279百万円)となりました。
ロ.臨床検査薬事業(IVD)
売上では、円安の好影響もあり、CDMO・原材料供給事業を中心としてベース事業は伸長したものの、主に新型コロナウイルス関連製品の売上高が減少したことにより減収となりました。これらの結果、売上高は61,908百万円(前期比11.6%減)となりました。利益では、新型コロナウイルス関連製品の減収に伴う減益やグループ内取引の減少に伴う利益減に加えて研究開発費の増加等により、営業利益は12,915百万円(前期比51.3%減)となりました。
ハ.ヘルスケア関連サービス事業(HS)
売上では、滅菌関連事業が伸長した結果、売上高は28,311百万円(前期比2.0%増)となりました。利益では、人件費の増加があったものの、主に在宅・福祉用具事業の収益性改善等により、営業利益は1,337百万円(前期比26.5%増)となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
イ.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
検査・関連サービス事業(百万円) |
145,013 |
90.8 |
|
臨床検査薬事業(百万円) |
89,540 |
79.0 |
|
ヘルスケア関連サービス事業(百万円) |
26,513 |
101.7 |
|
合計(百万円) |
261,066 |
87.2 |
(注)金額は、販売価格換算によっております。
ロ.受注実績
当社グループは、役務又は商品等の受注から完了又は納品等までの所要時間が短いため、常に受注残高は僅少であり、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため記載を省略しております。
ハ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
検査・関連サービス事業(百万円) |
146,730 |
90.0 |
|
臨床検査薬事業(百万円) |
61,908 |
88.4 |
|
ヘルスケア関連サービス事業(百万円) |
28,311 |
102.0 |
|
合計(百万円) |
236,950 |
90.8 |
(注)主要な販売先については、総販売実績に対する割合が10%以上に該当する販売先がありませんので、記載を省略しております。
(2)財政状態の分析
|
|
前連結会計年度 (2023年3月31日) |
当連結会計年度 (2024年3月31日) |
増減 |
|
資産合計(百万円) |
297,924 |
290,849 |
△7,074 |
|
負債合計(百万円) |
147,877 |
148,344 |
467 |
|
純資産合計(百万円) |
150,047 |
142,505 |
△7,542 |
|
自己資本比率(%) |
50.3 |
49.0 |
△1.4 |
(資産)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ7,074百万円減少し、290,849百万円となりました。その主な要因は、建物及び構築物(純額)の増加4,379百万円、繰延税金資産の増加3,532百万円、機械装置及び運搬具(純額)の増加3,128百万円およびのれんの増加2,945百万円があった一方、流動資産その他の減少5,257百万円、長期貸付金の減少4,441百万円、ソフトウエアの減少4,360百万円、現金及び預金の減少4,238百万円および建設仮勘定の減少2,865百万円があったためであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ467百万円増加し、148,344百万円となりました。その主な要因は、1年内償還予定の社債の増加10,000百万円、長期借入金の増加4,000百万円および未払金の増加3,658百万円があった一方、流動負債その他の減少7,371百万円、社債の減少3,900百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少3,700百万円、リース債務(固定)の減少1,364百万円および未払法人税等の減少996百万円があったためであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ7,542百万円減少し、142,505百万円となりました。その主な要因は、為替換算調整勘定の増加6,069百万円およびその他有価証券差額金の増加1,379百万円があった一方、親会社株主に帰属する当期純損失7,553百万円および配当金の支払7,151百万円があったためであります。
以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.4%減少し、49.0%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析
(連結キャッシュ・フローの状況)
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前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
増減 (百万円) |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
32,535 |
16,551 |
△15,983 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△29,583 |
△16,050 |
13,532 |
|
フリー・キャッシュ・フロー(百万円) |
2,951 |
500 |
△2,450 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△5,757 |
△5,782 |
△25 |
|
現金及び現金同等物(百万円) |
44,185 |
39,946 |
△4,239 |
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,239百万円減少し、39,946百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動により獲得した資金は、16,551百万円(前期比49.1%減)となりました。この主な要因は、減価償却費20,323百万円、法人税等の還付額5,929百万円、持分法による投資損失2,788百万円およびその他の固定負債の増加額2,099百万円があった一方、税金等調整前当期純損失7,619百万円、その他の流動負債の減少額5,844百万円および仕入債務の減少額1,767百万円があったためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動により使用した資金は、16,050百万円(前期比45.7%減)となりました。この主な要因は、有形固定資産の売却による収入1,180百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出12,370百万円および無形固定資産の取得による支出5,187百万円があったためであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動により使用した資金は、5,782百万円(前期比0.4%増)となりました。この主な要因は、社債の発行による収入6,100百万円および長期借入れによる収入4,000百万円があった一方、配当金の支払額7,143百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出4,420百万円および長期借入金の返済による支出3,700百万円があったためであります。
(4)資本の財源および資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資、研究開発、借入金の返済ならびにこれらに係る利息の支払い、配当の支払い、法人税の支払いおよびM&Aであります。当社グループは、引き続き財務の健全性を保ちつつ、営業活動により相応のキャッシュ・フローを生み出すことにより、当社グループの成長に必要な資金調達が可能であると考えております。
短期運転資金は自己資本および金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債又はその組み合わせによる調達を基本としております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債は81,946百万円であります。主なものは、社債31,100百万円、長期借入金29,000百万円、長期リース債務7,996百万円、短期リース債務3,849百万円および1年内償還予定の社債10,000百万円であります。
また、当社は、緊急時の手元流動性を確保すること等を目的として、主要取引金融機関と総額200億円のコミットメントライン契約を締結しております。当該契約に基づく当連結会計年度末における借入実行残高はありません。
当社グループは、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)より格付A(安定的)を取得しており、引き続き格付けの維持・向上に努めてまいります。
(5)重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを必要としており、経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績、将来計画やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた重要な会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定のうち、重要なものおよびその補足事項については以下のとおりであります。
a.固定資産の評価
有形固定資産・無形固定資産については、資産又は資産グループに減損の兆候がある場合には、減損損失を認識するかどうかの判定を行います。当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識すべきと判定し、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。回収可能価額は、正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額とし、正味売却価額は資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除しています。使用価値は資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引いて算定します。
翌連結会計年度の業績が予算を大きく下回る場合や、将来キャッシュ・フローに重要な影響を与える事象が発生した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
b.投資有価証券の評価
市場価格のない株式等の評価は、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が50%程度以上低下し、かつ実質価額の回復可能性がないと判断したときは、実質価額までの減損を行います。
また、当社グループで保有する関連会社に対する投資については、個別の投資の価値が下落し、その下落が一時的でないと判断される場合には、公正価値まで減損します。公正価値の算定は、主に外部専門家を利用しております。
翌連結会計年度において、投資先の財政状態の悪化により、投資有価証券の実質価額が著しく低下した場合には、評価損を計上する可能性があります。
当社グループが締結している重要な契約は、次のとおりであります。
主要な技術導入契約
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相手先 |
契約内容 |
契約期間 |
対価の支払 |
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ウィスター研究所(米国) |
癌関連モノクローナル抗体技術の導入 |
1998年11月17日 ~終期の定め無し |
一定料率のロイヤルティ |
(注)契約当事者は、富士レビオ㈱であります。
検査・関連サービス事業研究開発におきましては、主に感染症領域、先端医療領域、グループ連携強化の活動を推進しております。感染症領域では、新型コロナウイルス対応での経験と学びを活かし、今後の新興・再興感染症およびパンデミックに対して迅速に対応できる技術基盤強化と国産化を進めてまいりました。また、国際的な医療課題となりつつある薬剤耐性菌に対する検査技術およびAI開発も推進しております。先端医療領域では、高度化・情報化する検査技術のパラダイムシフトに対応するべく、難病・希少疾患領域、およびがん領域でのゲノム解析をはじめとするオミックス解析プラットフォームについて、高品質な検査サービス提供を可能とする統合的システムの開発・実装を推進しております。グループ連携として、臨床検査薬事業にて新規に開発・上市される検査試薬の早期導入を推進しており、とくに神経疾患領域の試薬導入を強化しております。新規臨床検査項目の開発と導入、新規技術の検査現場実装、特殊検査技術のAI・DX化、ものづくり・機械化による効率化を進め、H.U. Bioness Complexに集約した検査現場およびグループ研究開発組織とのシナジーによる価値創造に注力してまいります。当事業にかかる研究開発費は
臨床検査薬事業研究開発におきましては、アルツハイマー病を含む神経疾患領域の研究用試薬および体外診断用医薬品の開発・上市活動を継続的に行い、それ以外の疾患領域においても、独自性が高く臨床有用性を有する試薬や、臨床現場の効率化をサポートする試薬の開発に努めました。国内における神経疾患関連試薬としては、血液等を使用する3種類のルミパルス®システムを用いた研究用試薬(ニューロフィラメント軽鎖、アポリポタンパク質E4、および全アポリポタンパク質E)を開発・上市いたしました。さらに、脳脊髄液を用いたルミパルス®システムの体外診断用医薬品(β-アミロイド1-40、β-アミロイド1-42)が、12月に保険適用され、治療薬投与の普及と共に、本臨床領域に大きな貢献を果たしていくと期待しております。米国・欧州においては、ルミパルス®システムを用い、アルツハイマー病関連の血液マーカーであるリン酸化タウタンパク質217の研究用試薬を上市し、今後、体外診断用医薬品としての性能を確認し、開発・上市を推進してまいります。神経疾患領域以外では、国内において、ルミパルス®システムを用いた体外診断用医薬品として、シクロスポリン測定試薬を上市いたしました。本試薬は、世界初の2種の抗体を用いたサンドイッチ型のシクロスポリン測定試薬であり、前年度上市しましたタクロリムス試薬と同様に、検体前処理工程も含めた全自動化測定法であり、臨床検査室の負担削減や短時間報告等が期待されております。また、冠動脈疾患の診断補助として、アポリポタンパク質B-48測定試薬が体外診断用医薬品として承認され、潰瘍性大腸炎の病態把握の補助として承認されているPGE-MUM測定試薬が保険適用されました。研究用試薬としては、肝癌マーカー候補として期待されるグリピカン3測定試薬の上市を行い、今後、臨床研究を進め体外診断用医薬品としての開発を進めてまいります。海外においては、欧州では欧州体外診断用医療機器規則に法った製品群の上市を進め、中国ではペプシノーゲンI, II測定試薬を上市しました。今後も国内外の市場に向けて、神経疾患領域、腫瘍マーカー、感染症等の各種疾患領域で、独自性が高く臨床有用性を有する試薬の開発を継続してまいります。また、次世代の超高感度プラットフォーム開発を進めており、神経疾患領域等の研究用試薬のラインアップ開発と共に、超高感度化による臨床的有用性を示すための臨床研究を進めてまいります。当事業にかかる研究開発費は
全社研究開発では、H.U.グループの基礎研究機能を集約した合同会社H.U.グループ中央研究所において医療・ヘルスケアの最適化、社会課題の解決を目指した中長期視点での基盤技術の研究開発と実装にむけた検証を継続しております。AI開発、ものづくり、ロボティクスから医療情報利活用、先端分析技術開発まで多岐にわたる研究開発を推進しており、特に医療・ヘルスケアの高度化および多様化に伴い今後の実用化が期待される先端モダリティ(Exosomes、Microbiome、細胞・再生医療等)に関する研究開発を加速させております。EViSTEP®など当社独自技術を利用したグループ内外の企業・機関との積極的な協業・オープンイノベーションを積極的に推進しており、バイオマーカー探索、臨床研究などによる有用性検証等を通して早期の社会実装を目指します。ヘルスケア領域における活動も強化しており、本領域におけるオープンイノベーションの一例として、唾液・生活習慣と免疫状態の関係に基づいた免疫検査サービスを開発し、検査関連サービス事業の協力の下、新規に事業展開します。また、昨今、医療現場の大きな課題として、人手不足に伴う生産性向上の必要性が明確になりつつあります。これまでの医療機関・検査現場との協業を通じて研究所に蓄積した多様な基盤技術・ノウハウを活用し、グループ内外に対してDX化、AI開発、機械化/ものづくりの活用による「スマートラボ・DXラボ」の実現を支援する活動を開始しております。当事業にかかる研究開発費は1,595百万円です。
以上により、当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は
今後もH.U.グループ研究開発機能の一体化を推進し、No.1、Only-oneの技術基盤開発および人材育成を通じて、医療・ヘルスケアに必須のサービスや製品を継続的に提供・提案することを目指してまいります。