第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりです。なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、2008年の開業以来「ライフネットの生命保険マニフェスト」を掲げ、経営理念を「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」と定めています。デジタルテクノロジーを活用しながら、一貫してお客さま視点で商品・サービスを提供し、生命保険の未来をつくるオンライン生保のリーディングカンパニーとなることで、「安心して、未来世代を育てられる社会」の実現を目指します。

 

(2) 経営環境

 当社グループを取り巻く事業環境として、主に以下の3点を認識しています。

 まず、1点目として、オンライン生保市場の継続的な拡大とさらなる成長可能性です。新型コロナウイルス感染症拡大以前から続く金融サービスのデジタル化は、当該感染症により加速し、お客さまの行動様式や企業の事業環境認識に大きな変化をもたらしたと考えています。生命保険業界においても、オンライン化への構造的変化は不可逆なものであり、今後もオンライン生保市場は拡大するものと認識しています。オンラインで保険商品・サービスを提供する競合他社が増加し、競争環境が厳しさを増す中、オンライン生保市場におけるリーディングカンパニーである当社グループが圧倒的な地位を確立し続けるためには、提供価値の一層の磨き上げに加え、新たな価値提供の創出が必要であると認識しています。

 2点目は、若年層を起点とするテクノロジー活用の拡大です。開業以来、当社グループは主に子育て世代を中心に若年層のお客さまの支持を得て事業を拡大してまいりました。前経営方針下では、異業種のオンラインビジネスの拡大も相まって、当社グループのお客さまは中高齢層にも広がり、オンライン生保市場の拡大に手ごたえを感じています。一方で、便利なITサービスが次々と登場する中で、時代とともに変化するお客さまの行動様式に適応し、事業規模をより一層拡大するためには、常にその時代の若年層に選ばれることが重要であると考えています。

 3点目は、巨大な経済圏を持つ企業のオンライン金融サービスへの参入です。昨今、異業種の企業によるオンライン金融サービスへの関心が非常に高まっていると認識しています。当社グループにおいても、前述のとおり、様々な業種のパートナー企業との提携を実現しました。パートナー企業の戦略や経済圏に保険ビジネスが組み込まれることを通じて、オンライン生保市場のさらなる成長可能性があることを認識しています。今後も、パートナー企業にとって魅力ある商品・サービスの開発・提供を行うとともに、当社グループ自身のブランド力の強化を通じてパートナー企業に選ばれる存在であり続けることが重要であると考えています。

 

(3) 中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき課題

 当社グループは、今後も力強い成長を継続しながら、企業価値の向上及び社会課題の解決に取り組むため、この度、新たに経営方針及び2028年度を最終年度とする5年間の中期計画を策定するとともに、これらを通じて当社グループが実現したい社会として「アウトカム目標」を設定しました。

 

○新たな経営方針の骨子

経営理念

正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、

お客さま一人ひとりの生き方を応援する

目指す姿

生命保険の未来をつくるオンライン生保のリーディングカンパニー

大切にする
価値観

Lifenetter Values

 1. Manifesto driven お客さまを起点にする

 2. Ownership 自ら動く

 3. Teamwork 多様な仲間を力にする

 4. Growth mindset 変わりつづける

 5. Be ambitious 元気に、明るく、楽しく

 

○中期計画(2024年度~2028年度)の骨子

成長戦略

重点領域
(事業)

Tech & Services

・AIやマイナンバー制度をはじめ様々なITサービスを活用することで、お客さまの利便性を追求する。

Rebranding

・今の時代やお客さまの価値観にあわせて、ライフネットブランドを再構築する。

Embedded

・パートナー企業とともに、保険やサービスをシームレスに届ける。

人材戦略

重点領域に注力するための組織体制移行の推進

従業員の成長と事業成長の好循環の創出

「ライフネットの生命保険マニフェスト」を基軸とした組織風土の維持・強化

2028年度

目標

経営目標

包括資本(Comprehensive Equity)の2,000億円~2,400億円到達

財務目標

株価:3,000円以上

1株当たり包括資本成長率:10%程度

非財務目標

(人材)

エンゲージメントスコア(総合):継続的に向上

 [多様性]意思決定者*1に占める割合:女性 30%以上、30代以下 15%以上

 [成長機会]エンゲージメントスコア(成長):継続的に向上

*1. 意思決定者とは、取締役及び部門長以上の役職者を指します。

 当社グループが、この度新たに経営目標に設定した包括資本(Comprehensive Equity)は当社グループの定義する指標です。国際財務報告基準(以下、「IFRS」)の連結財政状態計算書の資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)保険サービスを提供するにつれて認識する未稼得の利益を表す負債であるCSM*2(保険契約及び再保険契約を合算し税調整後)及び団信保有契約に対する将来の更新分も含めた将来のIFRS損益の価値である団信契約価値を合計したものです保有する保険契約の将来の利益の評価額を含むことから当社グループの企業価値を表す指標として定めています

*2. CSMはContractual Service Marginの略であり、将来において保険サービスを提供するにつれて認識することとなる未稼得利益を表します。

 

○実現したい社会「アウトカム目標」の設定

アウトカム
目標

安心して、未来世代を育てられる社会

参考指標*3

オンライン生保の市場浸透率、未来の生活見通し、子育てのしやすさ

*3. オンライン生保の市場浸透率は、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」において、加入意向のあるチャネル及び直近加入契約の加入チャネルについて「インターネットを通じて」と回答した人の割合、未来の生活見通しは、内閣府の「国民生活に関する世論調査」において、「今後の生活の見通し」について「良くなっていく」と回答した人の割合、子育てのしやすさは、内閣府の「社会意識に関する世論調査」において、「社会の満足度(満足している点)」について「子育てしやすい」と回答した人の割合に基づき計測します。


(優先的に対処すべき課題)

①オンライン生保の提供価値の向上

 重点領域「Tech & Services」に注力することで、個人保険事業及び団体信用生命保険(以下、「団信」)事業におけるお客さまのさらなる利便性向上を実現するとともに、生産性を高め事業費効率の改善を目指します。AI(人工知能)やマイナンバー制度等のITサービスを活用し、生命保険のインターネット企業として、先進性のある保険サービスの提供に努めます。保険申込のご検討者に対してアプローチ方法を高度化することや、お客さまの各種手続き(お申し込み・ご契約中・保険金給付金のご請求等)の利便性を高めることに取り組み、顧客体験の一層の向上を目指します。また、お客さまに対してより良いサービスを提供できるよう様々なデータの活用のさらなる推進を行いながら、生産性を高めることで事業費効率の改善に努めます。

 

②ダイレクトビジネスの質的変化への取組み強化

 重点領域の「Rebranding」に取り組み、ライフネットブランドを今の時代に合わせて更新することで、オンライン生保のリーディングカンパニーとしての提供価値を一層磨き、競合他社とは一線を画した存在になることを目指します。競争環境の激化が進む中で、主力のダイレクトビジネスにおいて、新たな成長モデルを確立し力強い再成長を実現するための道筋を描く必要があると考えています。そのためには、改めて若年層のお客さまから選ばれ続けることが重要であるという認識のもと、支持される商品・サービスの強化、ライフネット生命保険のイメージの再構築、ナーチャリング(顧客育成)手法の確立等を進め、量的拡大を可能とする新たな成長モデルの構築に努めます。

 

③協業パートナーとのビジネスの深化と拡充

 当社グループは、重点領域「Embedded」に注力し、個人保険事業のパートナービジネス及び団信事業において、収益機会の拡大を目指して、各協業先との取組みを強化するとともに新規協業先の開拓に努めます。

 まず、個人保険事業のパートナービジネスにおいては、パートナー企業の重点領域や経済圏の中に保険ビジネスが積極的に組み込まれていくことを目指して、当社グループの経営資源の投下を強化します。現在の主なパートナー企業について、三井住友カード株式会社とは、2023年12月に提供を開始した「Vポイントが貯まる保険」を軸に新たな成長源となるよう取組みを進めます。KDDI株式会社とは、グループ内の連携を通じて保険ビジネスのau経済圏への組込みを強化することに努めます。また、株式会社マネーフォワードとは、先方の提供するPFM(Personal Financial Management)サービスとの連携強化を図り、パートナービジネスの成長に貢献するよう取組みを続けます。さらに、高いブランド力と幅広い顧客基盤を有する新たな企業との協業についても積極的に検討してまいります。将来的には、パートナービジネスがダイレクトビジネスと並ぶ当社グループ事業の成長を支える柱となることを目指します。

 次に、2023年7月から開始した団信事業については、今後の新たな収益源となるよう事業の拡充を目指します。利便性を追求した商品・サービスの提供を通じて、団信のご加入者と契約者である銀行にオンライン生保ならではの価値を届けてまいります。昨年開始したauじぶん銀行株式会社との団信事業の取組みは順調な立ち上がりとなりました。引き続き、先方と協議を行いながら団信商品の検討・提供を行うことで、新規の住宅ローン契約の増加に貢献してまいります。また、新たなパートナー銀行の開拓にも取り組みます。魅力ある団信商品の提供に加え、昨今金融サービスにおいてもオンライン化が進展する中で、オンライン生保である当社グループと提携することで銀行のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進にも寄与することを目指します。

 

④重点領域を支える人的資本の強化

 当社グループは、業界の常識にとらわれず、中長期にわたって力強い成長を実現することを目指して、マテリアリティに掲げる「多様性を大切にする」「成長の機会をつくる」を軸に人的資本強化への取組みを推進します。その中で、新たに掲げた中期計画の人材戦略において、個人保険と団信の両事業を横断する3つの重点領域に注力するために組織体制の移行を推進することに加え、従業員の成長と事業成長の好循環の創出、「ライフネットの生命保険マニフェスト」(以下、マニフェスト)を基軸とした組織風土の維持・強化に努めます。

 組織体制移行の推進については、全社一丸となって3つの重点領域に取り組めるよう組織の枠組みを超えた活動を強化するとともに人材の戦略的配置を行います。次に、従業員の成長と事業成長の好循環の創出について、当社グループは、開業以来多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、オンライン生保という類のないビジネスモデルを作り上げてきたと考えています。今後は、社内の人材育成にも重点を置き、各従業員が持つスキルを活かしながら新たな業務にも挑戦できる環境を強化することで、個人の成長を事業の成長に繋げ、企業価値の向上を図ります。さらに、マニフェストを基軸とした組織風土の維持・強化については、マニフェストに基づいた事業運営を行うことが当社グループの経営理念の体現であり、また魅力ある多様な人材の確保に寄与していると認識しています。事業の拡大に伴い組織が大きくなる中で、改めてマニフェストを基軸にした社内風土を醸成し、多様な知見・経験・アイデアを持つ従業員が活躍できる環境と重点領域に注力できる推進体制を強化します。

 

以上の取組みを推進することで、さらなる成長を目指します。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりです。なお、本項における将来に関する事項は、別段の表示がない限り、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティに対する考え方

 ライフネット生命は、2008年の開業以来「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」というライフネットの生命保険マニフェストに基づいた経営を行っています。このマニフェストには、相互扶助という生命保険の原点を忘れずに、お客さま視点の商品・サービスの提供を追求する、という強い思いが込められています。

 私たちはサステナビリティにおいても、相互扶助の考え方を大切にしています。お客さま、パートナー企業、株主・投資家、従業員に加え、将来の世代も含めた社会を形成するさまざまなステークホルダーとの相互のつながりを大切にしながら、生命保険の新しい価値を提供し続けていくことが、当社グループのサステナビリティに資すると考えています。

 相互扶助という生命保険の原点を大切にしながら、オンラインの生命保険会社の強みを生かして生命保険の未来をつくる取組みを推進することで、持続可能な社会の実現と当社グループの企業価値の向上を目指します。

 

(2) サステナビリティ全般

① ガバナンス

 当社グループのサステナビリティに関する方針及び取組みは、議長である代表取締役社長と執行役員(取締役との兼務含む)で構成された当社の執行役員会において協議・報告を行い、重要なものについては取締役会に報告しています。取締役会は、当社グループのサステナビリティに関する取組み等に対して、中長期的な企業価値向上の観点から議論・監督を行っています。

 また、代表取締役社長を委員長として関係役員・部門長等で構成される「リスク管理委員会」において、サステナビリティの観点を含めた事業全般のリスクに関してリスク管理を行い、リスク管理委員会での議論の内容は、取締役会に報告しています。

 当連結会計年度の主な取組みとして、執行役員会においては、当社グループの企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指して、当社グループが実現したい社会「アウトカム目標」や中期計画の人材戦略における人的資本に関する非財務目標の設定、気候変動に係る当社グループのリスク及び機会について、議論を重ねました。また、2022年度に特定したマテリアリティ(重要課題)については、新たな経営方針及び中期計画の策定を検討する過程において見直しの要否を検討するとともに、各マテリアリティの指標を新たに設定するための協議を行いました。執行役員会における各議題の内容は、取締役会に報告しています。リスク管理委員会においては、サステナビリティに係るリスクの管理体制の整備やリスクの識別・評価を行い、取締役会に報告しています。また、任意の指名・報酬委員会においては、監査等委員でない社内取締役の短期業績連動報酬の指標として新たに非財務指標(お客さま満足度及び従業員満足度)を導入することを検討し、取締役会で決議しました。

 今後も、執行役員会においてサステナビリティに関連した対応の強化を目指して協議を行い、マテリアリティを踏まえた取組みを推進し、取締役会において実効的な監督を行ってまいります。

 

 

② 戦略

 当社グループは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指して、長期に取り組むべきマテリアリティを特定しています。「生命保険の未来をつくる」をテーマとして、以下の1から10までをマテリアリティとして認識し、「お客さま」「社会」「従業員」のステークホルダーに対して取組みを進めるとともに、経営の基盤となる「ガバナンス」を継続的に強化してまいります。

0102010_001.jpg

 

 

(マテリアリティの特定プロセス)

 2022年度に以下のプロセスを経てマテリアリティを特定しました。まず、「ライフネットの生命保険マニフェスト」及び経営方針等を踏まえながら、株主・投資家からの意見、SASB(Sustainability Accounting Standards Board, サステナビリティ会計基準審議会)をはじめとするガイドライン、ESG評価機関の評価項目等を参考に課題を抽出しました。次に、抽出した課題から、ステークホルダーにとっての重要度及び当社グループにとっての重要度の2つの視点で、マテリアリティ候補を選定し、取締役会及び執行役員会等での議論を経て、マテリアリティを特定しました。マテリアリティの項目においては、年1回の頻度で確認し、外部環境の変化や当社グループの経営戦略を踏まえて必要に応じて見直しを行ってまいります。

 

③ リスク管理

 当社グループは、リスク管理に係る基本的な考え方を「リスク管理に関する基本方針」に定め、組織体制の確立を率先して行うことにより、サステナビリティに係るリスクも含めた各リスクの評価・改善体制を整備しています。具体的には、リスク管理に関する基本方針において、当社グループが管理すべきリスクを規定し、「統合的リスク管理規程」において各リスクの一次リスク管理部門を定め、リスク管理部が主な二次リスク管理部門として、リスク管理(識別・評価・対応)を統括しています。当社グループは、総合的なリスク管理を行うためには、組織横断的な取組みが有効との考えに基づき、代表取締役社長を委員長として関係役員・部門長等で構成されるリスク管理委員会を設置し、リスク管理委員会での議論の内容は、取締役会に報告しています。リスク管理の体制等は、第2[事業の状況]3[事業等のリスク](1)リスク管理方針、(2)リスク管理体制をご参照ください。

 

 当社グループのマテリアリティに対応する機会及びリスクの概要は以下のとおりです。サステナビリティに係るリスクとして、以下のリスクを個別に管理することに加え、「A-6 サステナビリティ全般に係るリスク」を管理しています。リスクの詳細は、第2[事業の状況]3[事業等のリスク](4)特に重要性が高いリスク、(5)その他の主要なリスクをご参照ください。

タイトル

マテリアリティ

機会とリスクの概要

主要なリスク

お客さまのために未来をつくる

1. 正直に、わかりやすく、安くて、便利にする

2. セキュリティを高める

 当社グループは、「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」という経営理念のもと、インターネットを主な販売チャネルとし、シンプルでわかりやすい商品と利便性の高いサービスを提供することで、競合他社との競争優位性を形成していると認識しています。

 今後、競争環境の変化や技術革新の進展により競争力が低下する場合や、情報セキュリティへの対応の欠如等によってお客さまの信頼を損ねる場合には、当社グループの経営基盤を著しく毀損する可能性があります。

A-1 競争状況に係るリスク

A-11 技術革新に係るリスク

D-1 システムリスク

D-3 情報漏えいに係るリスク

D-6 保険金・給付金の支払い漏れに係るリスク

よりよい社会のために未来をつくる

3. パートナーシップを積極的に活用する

4. 気候変動に対応する

5. 責任ある投資をする

 当社グループは、ダイレクトビジネスに加え、パートナー企業の強みを相互に活用することで生命保険を通じた新たな価値提供に取り組んでいます。また、気候変動は、中長期的な視点からは当社グループの経営環境に影響を与える可能性があることから、今後対応を検討してまいります。加えて、生命保険会社として社会の持続可能性にも配慮した資産運用を行うことは重要であると考えています。

 当社グループのこれら社会課題への対応が不十分な場合、または不十分と評価される場合、追加的なコストの発生や社会的評価の悪化を通じ、当社グループの業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。

A-3 提携先との関係及び提携先の業績に係るリスク

A-5 気候変動に係るリスク

 

 

タイトル

マテリアリティ

機会とリスクの概要

主要なリスク

従業員とともに未来をつくる

6. 多様性を大切にする

7. 成長の機会をつくる

 当社グループは、従業員自身が多様な視点を持ちお互いを尊重できる組織をつくることが、多様化するお客さまのニーズや社会に対し、柔軟に対応しながら、生命保険の新たな価値を提供することにつながると考えています。そのため、多様な従業員一人ひとりが健康で明るく楽しく働きながらそれぞれの強みを発揮し、その挑戦と成長を支える環境づくりに注力します。

 多様性のある有能な人材を採用・育成できない場合、多様性を組織の成長につなげる環境が整備できない場合は、マニフェストを基軸とした経営を行うことができず、経営戦略の遂行が困難となる可能性があります。

D-7 人材の確保・維持に関するリスク

未来をつくるガバナンス

8. ガバナンスを強くする

9. リスク管理を高める

10. 企業倫理を大切にする

 当社グループは、マニフェストにおいて、「私たちは、常に誠実に行動する。コンプライアンスを遵守し、倫理を大切にする。」という行動指針を掲げ、高い社会性・公共性を有する生命保険会社として、経営の透明性の確保とコーポレート・ガバナンスの強化・充実を図っています。また、生命保険会社としての業務の健全性及び適切性の観点からリスク管理体制の整備に努めることで、持続的な企業価値向上の実現を目指しています。

 重大な法令等の違反や社会規範からの逸脱があった場合、あるいはリスク管理体制が有効に機能しなかった場合、さまざまなステークホルダーからの信頼を損ね、レピュテーションの低下を伴いながら企業価値を毀損する可能性があります。

D-2 法令等違反及び社会規範逸脱に係るリスク

D-9 リスク管理体制に係るリスク

 

④ 指標及び目標

a. 実現したい社会「アウトカム目標」の策定

 当社グループは、企業価値の向上と社会のサステナビリティの実現を目指して、2024年5月に、当社グループが実現したい社会としてアウトカム目標「安心して、未来世代を育てられる社会」を設定し、当目標の進捗を確認するための参考指標を公表しました。新たに策定した経営方針の実現及び中期計画の実行を通じて、アウトカム目標の実現を目指します。詳細は、第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](3)中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき課題をご覧ください。

 

b. 各マテリアリティにおける指標

 2023年度に各マテリアリティにおける指標を設定しました。各マテリアリティにおける指標と2023年度の実績は以下のとおりです。

マテリアリティ

指標

2022年度

2023年度

1. 正直に、
わかりやすく、
安くて、便利にする

包括資本(企業価値)*1

1,336億円

1,598億円

保有契約年換算保険料*2

24,033百万円

28,750百万円

従業員エンゲージメントスコア(理念戦略)*3

73

72

ご契約者の推薦度*4

82.2%

82.5%

マテリアリティ

指標

2022年度

2023年度

2. セキュリティを
高める

主要な外部認証の取得

対応中

CSIRTの定期的な活動の継続*5

継続実施

継続実施

役職員向け研修の継続

継続実施

継続実施

3. パートナーシップを積極的に活用する

パートナー企業との
取組み

・KDDI株式会社とともにPontaポイントがたまる「auの生命ほけん」を提供

・三井住友カード株式会社とともに「Vポイントが貯まる保険」を提供

・auじぶん銀行株式会社と団信事業を開始

4. 気候変動に対応する

(3) 気候変動を参照

5. 責任ある投資をする

連結ソルベンシー・
マージン比率の健全な水準の維持

3,173.1%

2,192.9%

ネガティブスクリーニングの実施

継続実施

継続実施

6. 多様性を大切にする

(4) 人的資本を参照

7. 成長の機会をつくる

(4) 人的資本を参照

8. ガバナンスを強く
する

取締役会の監督機能
強化施策の継続実施

・取締役会の多様性を維持(独立社外取締役 9名中3名、女性取締役 9名中1名)

・指名・報酬委員会の委員長は社外取締役、構成人員は社外取締役過半数(4名中3名)を維持

・取締役会の多様性を維持(独立社外取締役 10名中4名、女性取締役 10名中2名)

・指名・報酬委員会の委員長は社外取締役、構成人員は社外取締役過半数(5名中4名)を維持

・取締役会のスキル項目に関する対応を実施(取締役会に必要なスキルの見直し、スキル項目の選定理由及び新たな経営方針・中期計画とスキル項目の相関関係を開示)*6

・社外役員会*7の開催(4回)

・モニタリング・ボードへの移行に向けて、取締役会の在り方等を検討

独立社外取締役比率*8

33%

40%

9. リスク管理を高める

リスク管理委員会の定期的な開催及び取組みに対するPDCAの実施

・リスク管理委員会を3ヵ月に1回開催

・全体的なリスクを洗い出したうえで、各リスクを適切に管理するため、規程に基づき、各部門はリスクの状況や対応等についてリスク管理委員会で報告し、レビューを実施

・リスク管理委員会を3ヵ月に1回開催

・全体的なリスクを洗い出したうえで、各リスクを適切に管理するため、規程に基づき、各部門はリスクの状況や対応等についてリスク管理委員会で報告し、レビューを実施

 

 

マテリアリティ

指標

2022年度

2023年度

10. 企業倫理を大切にする

コンプライアンス委員会の定期的な開催及び取組みに対するPDCAの実施

・コンプライアンス委員会を3ヵ月に1回開催

・法令遵守徹底のため、コンプライアンスに関する基本方針に定める事項等に基づき、コンプライアンス委員会で、各部門から報告を行い、レビューを実施

・コンプライアンス委員会を3ヵ月に1回開催

・法令遵守徹底のため、コンプライアンスに関する基本方針に定める事項等に基づき、コンプライアンス委員会で、各部門から報告を行い、レビューを実施

従業員へのコンプライアンス研修の継続

継続実施

継続実施

*1.包括資本は、2024年5月に公表した当社グループの新たな経営指標です。当社グループは、中期計画において2028年度に包括資本の2,000億円~2,400億円到達を目標として掲げています。

*2.年換算保険料とは、1回当たりの保険料(団信は、保有契約をもとに算出される翌月の収入保険料)について保険料の支払い方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額をいいます。当社商品の保険料は全て月払いのみとなっているため、1ヶ月当たりの保険料に12を乗じたものを年換算保険料としています。

*3.従業員エンゲージメントスコアとは、各従業員や組織の状態を可視化するエンゲージメント調査から算出された数値で、最大値は100です。当指標は、複数あるエンゲージメント調査項目のうち、理念戦略に関する項目のスコアです。

*4.ご契約者にアンケートを実施し、当社の商品・サービスをご家族や友人に「ぜひすすめたい」「どちらかといえばすすめたい」と回答したお客さまの割合です。ご契約者からの評価を表す指標として、ネット・プロモーター・スコア(NPS)®を採用し、NPSを踏まえてご契約者の推薦度を算出しています。なお、ネット・プロモーター・スコア(NPS)は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。

*5.サイバーセキュリティインシデントを一元管理し対応するCSIRTによる毎月の活動等を指します。

*6.2024年6月23日開催予定の第18回定時株主総会終結後の取締役のスキル・マトリックスは、第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](2)[役員の状況]をご参照ください。

*7.社外役員会は、社外取締役で構成された取締役会の実効性評価を踏まえたディスカッションを行う任意の会議体です。

*8.2024年6月23日開催予定の第18回定時株主総会終結後の取締役会において、女性取締役比率29%(7名中2名)、独立社外取締役比率57%(7名中4名)となる予定です。

 

(3) 気候変動(よりよい社会のために未来をつくる)

 当社グループは、将来の気候変動による事業活動の影響を把握するため、今後TCFDが提唱するフレームワークに則り開示を行ってまいります。なお、気候変動に係るガバナンス及びリスク管理は、(2)サステナビリティ全般をご参照ください。

① 戦略

 当社グループは、気候変動に関するリスクと機会を以下のとおりと認識しています。

リスク

保険事業

物理的リスク

平均気温上昇に伴う保険事故の増加(慢性的)

自然災害に伴う保険事故の増加(急性的)

自然災害に伴う事業拠点等への被害

移行リスク

規制強化・新技術開発・消費者の価値観・行動の変化等

不十分な対策がもたらす評判低下、罰金・訴訟等

資産運用

物理的リスク

異常気象・自然災害の増加による投融資先の価値の低下

移行リスク

炭素関連規制の導入・強化による投融資先の価値の低下

機会

保険事業

地球温暖化対応の一環としてDX化が進み、お客さまの行動様式がオンライン対応へとより変化することで、オンラインでの保険提供機会が拡大する可能性がある

新たなリスクに備える保障ニーズが出現し、新たな商品・
サービスの提供により収益が拡大する可能性がある

資産運用

気候変動問題の解決に貢献するとともに運用ポートフォリオの質向上に資する可能性がある

 

②指標及び目標

 当社グループは、開業以来インターネットを主軸としたビジネスを行うことで、グループ内の業務に加え、お客さまの利便性を追求しながらサービスのペーパーレス化を推進し紙資源の削減を進めています。また、支店・営業所を持たないことにより温室効果ガス排出の抑制に貢献しています。現時点においては、当社グループのビジネスモデルや事業規模を踏まえて、目標値等は定めておりませんが、気候変動が当社グループを含む生命保険業界へ影響を及ぼす可能性があることを事業のリスクとして認識し、今後中長期的な視点で対応事項を検討してまいります。

 当社グループの2023年度における温室効果ガス排出量のうち、Scope1(自社が直接排出する排出量)及びScope2(他社から供給された電気等の使用に伴う排出量)は以下のとおりです。なお、2023年度のSocpe2の実績について、新たにデータセンター(大阪府大阪市)の電気使用量を含めて算出しているため、2022年度から増加しました。

  温室効果ガス排出量(Scope1及びScope2)の実績

   (単位:t-CO2)

 

2022年度*1

2023年度*2

Scope1

25.6

24.5

Scope2*3

79.7

233.8

合計

105.4

258.3

*1.2022年度(2022年4月~2023年3月)は、本社オフィス(麹町NKビル)の電気使用量及び都市ガス使用量を元に算出しています。当実績の対象範囲は、当社及び連結子会社のライフネットみらい株式会社です。

*2.2023年度(2023年4月~2024年3月)は、2022年度の対象範囲に加え、データセンター(大阪府大阪市)の電気使用量を含めて算出しています。また、データセンターの電気使用量は、契約電源に基づき算出しているため、当社グループが実際に使用した電気使用量と異なる可能性があります。

*3.Scope2の排出量は、GHGプロトコルにおけるマーケット基準での算定結果です。

 

(4) 人的資本(従業員とともに未来をつくる)

 当社は、「生命保険を相互扶助という原点に戻す」という思いとともに、徹底した情報開示と一貫したお客さま視点での運営を目指して、2008年に開業しました。創業者の思いを込めた「ライフネットの生命保険マニフェスト」のもとに集まるメンバーが、生命保険業界で初めてとなる付加保険料率の全面開示や給付金請求手続きのオンライン完結サービスの開始など、生命保険の未来をつくるための様々な挑戦を続けています。これは、従業員同士が多様な知見・経験を活かし、それぞれの価値観を尊重しながら活発な提案や議論を行い、業界の挑戦者としての取組みを推進してきたからこそ実現できるものであると考えています。当社グループは、「多様性」と挑戦を通じた「成長機会」が今後も当社グループの成長を支える重要な要素であると認識し、マテリアリティに掲げる「多様性を大切にする」「成長の機会をつくる」ことに取り組んでまいります。なお、人的資本に係るガバナンス及びリスク管理は、(2)サステナビリティ全般をご参照ください。

 

①戦略

 当社グループは、人材を企業価値向上の源泉と捉え、従業員の可能性を最大限に引き出すため、以下のとおり、人的資本に係る方針を策定するとともに取組みを推進し、従業員とともに生命保険の未来をつくることを目指します。

 

a. 人材育成方針及び社内環境整備方針

 当社グループは、多様性を大切にし、従業員一人ひとりに挑戦と成長の機会を提供することで、「ライフネットの生命保険マニフェスト」の実現を目指します。

多様性を大切にする

 時代や環境の変化にすみやかに対応し、お客さまのさまざまなニーズにそって、わかりやすく安くて便利な商品・サービスを提供するために、当社グループは多様性を大切にします。マニフェストのもとに集まった多様な知見・経験・アイデアを持つ従業員が、健康で明るく楽しく働きながら、それぞれの個性を活かして互いに尊重できる組織を目指します。

成長の機会をつくる

 マニフェストの実現に向けて、量的な成長と質的な変化をつづけるために、当社グループは従業員の成長の機会をつくります。挑戦の機会を提供することで従業員の成長を後押しし、失敗をも学びにつなげることで組織の知見を蓄え、個人の成長を組織の成長につなげることを目指します。

 

b. 経営方針、中期計画における人材戦略

 当社グループは、2024年5月に新たな経営方針及び2028年度を最終年度とする5年間の中期計画を発表しました。

詳細は、第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](3)中期的な経営戦略及び優先的に対処すべき課題をご覧ください。

 経営方針のうち「大切にする価値観」は、当社グループの役職員で議論を行い、この度新たに策定しました。事業の成長に伴い、組織が拡大している中で、引き続き創業時の思いを受け継ぐことが重要であるという考えのもと、多様性を尊重しながらもマニフェストの実現に向けて一人ひとりが共通して大切にする価値観を検討し、「Lifenetter Values」として言語化しました。Lifenetter Valuesの詳細は、ライフネット生命採用ウェブサイトに掲載しています。
  Lifenetter Values https://www.lifenet-seimei.co.jp/recruit/LifenetterValues/

 また、当社グループは、中期計画の重点領域を推進するために、中期計画において人材戦略を策定するとともに、人的資本に係る非財務目標を設定しました。

 人材育成方針及び社内環境整備方針を踏まえながら、当社グループが中期計画期間中に重点領域を力強く推進するために取り組むべき組織の課題として、大きく3点認識しています。1点目は組織全体で重点領域に取組む体制です。当社グループが、同業他社と一線を画したオンライン生保の提供価値を向上させるとともに、異業種のパートナー企業のエコシステムにオンライン生保を積極的に組み込むという新しい取組みを実行するためには、既存の部門等の枠組みに捉われず全社一丸となって事業を推進する体制の一層の強化が必要であると考えています。2点目は挑戦を通じた社内人材育成の強化です。当社グループは開業以来、多様なバックグランドを持つ人材を即戦力として積極的に採用してまいりました。一方で、人材の獲得競争が激化するとともに今後労働人口の減少が見込まれる中、社内の人材育成を強化していくことも重要であると認識しています。中期計画期間においては、挑戦を通じた育成を強化することで従業員の成長を促し、従業員の成長を事業成長につなげ、事業成長に伴って従業員にさらなる挑戦の機会を提供するという好循環を目指します。3点目はマニフェストを基軸とした組織風土の維持・強化です。当社グループは一貫したお客さま視点を大切にしたマニフェストを軸に業務運営を推進していますが、より一層の事業拡大を目指す中で、創業当時の思いや創業者を直接知る機会のない従業員が増えています。マニフェスト及びマニフェストを軸として生まれた企業文化を維持・強化することが、オンライン生保という類のないビジネスモデルにおいて先進的なお客さまサービスを提供し続ける土台になると考えています。

 

②指標及び目標

 当社グループは、人的資本に係る戦略を推進するため、指標及び目標を設定しました。指標・目標及び2023年度の実績は以下のとおりです。

 

人的資本に係る総合的な指標及び目標

指標・目標

2022年度

2023年度

[中期計画目標]

従業員エンゲージメントスコア(総合)*1の継続的向上

70

70

 

多様性を大切にする

指標・目標

2022年度

2023年度

[中期計画目標]

意思決定者*2に占める
女性の割合
   30%以上

30代以下の割合 15%以上

 

 

21.9%

9.4%

 

 

23.5%

2.9%

PRIDE指標における
「ゴールド*3」の継続

「ゴールド」を獲得

「ゴールド」を獲得

産休・育休後の復帰率100%

100%

100%

健康経営優良法人*4

の認定継続

「健康経営優良法人2023」に認定

「健康経営優良法人2024」に認定

 

成長の機会をつくる

指標・目標

2022年度

2023年度

[中期計画目標]

従業員エンゲージメントスコア(成長)*1の継続的向上

67

66

ピアボーナスの活用者率*5

90%以上

91.3%

91.4%

1on1面談の実施率*6

90%以上

80.3%

96.6%

従業員1人当たりの研修時間24時間以上

19.6時間

20.6時間

*1.従業員エンゲージメントスコアとは、各従業員や組織の状態を可視化するエンゲージメント調査から算出された数値で、最大値は100です。(総合)はエンゲージメント調査の項目のすべてを含めた全体のスコアであり、(成長)は複数あるエンゲージメント調査項目のうち、成長機会に関する項目のスコアです。

*2.意思決定者とは、取締役及び部門長以上の役職者を指します。2022年度は当指標を部門長以上の役職者を指す「女性管理職比率」として開示しましたが、新たに発表した中期計画を踏まえて変更します。女性管理職比率は、第1[企業の概況]5[従業員の状況](4)管理職に占める女性労働者の割合及び男性労働者の育児休業取得率をご参照ください。

*3.PRIDE指標とは、workwithPrideが主催する企業や団体のLGBTQなどのセクシャルマイノリティに関する取組みを評価するための指標であり、ゴールドは最高評価です。

*4.経済産業省と日本健康会議が運営する健康経営優良法人認定制度に基づき認定されます。健康・医療新産業協議会健康投資ワーキンググループにおいて定められた評価基準に基づき、企業等からの申請内容を審査した上で、日本健康会議において認定されます。

*5.月に1回以上ピアボーナスのアプリにアクセスした人の割合(年度平均)です。

*6.年間12回(月に1回)上長と実施する面談のうち、当該年度に実施した割合です。

 

③目指す姿と具体的な取組み

 当社グループは、マニフェスト及び経営理念の実現に向けて、人材育成方針及び社内環境整備方針を踏まえて、以下の5つの課題に対して重点的に取り組みます。

 

a. 多様性を育む

 当社グループは、多様な人材がそれぞれの能力をいかんなく発揮でき、各々の個性や経験・スキルを踏まえた活発な議論により創発が起きる状態を目指します。

 定期育成採用(未経験者採用)においては、対象年齢を広く30歳以下としていることに加え、応募書類に性別の記載を求めないなど、年齢・国籍・ジェンダーフリーでの採用を行っています。加えて、社内外の多様性の推進を目的として有志によるダイバーシティチームを組成し、部門横断での活動を積極的に行っています。

 また、当社グループは、意思決定者における多様性の推進が、お客さまサービスの拡充を通じた事業成長に重要であると考え、中期計画の人的資本の目標に設定しています。

 

b. 元気に、明るく、楽しく

 当社グループは、一人ひとりの従業員が、前向きに生産性高く働ける環境を整備し、育児・介護等で働き方に制約があっても能力をいかんなく発揮できる状態を目指します。

 オフィスにおけるコラボレーションと在宅勤務における集中を組み合わせたフレキシブルワークの環境を整えているほか、フレックスタイム制により、柔軟な働き方を実現しています。加えて、時間外労働の削減にも継続的に取り組んでいます。当社グループでは「制度より風土」の文化が根付いており、男女問わず、育児のための休暇・フレックス等が積極的に活用され、“お互いさま”の精神で助け合う様子がみられます。この文化の維持・継続が当社グループの持続的な成長にとって重要な要素であると考えています。

 

c. 一体感の醸成

 当社グループは、所属部門や役職に関係なく従業員がそれぞれの強みを活かして主体的に行動しながら、高いチームワークを発揮し、ともに成長し続けられる組織を目指します。

 手挙げによる自発的な部門横断活動を実施・推進することに加え、社内SNSや社内イベント、部活動などのカジュアルなつながりの機会を複数設けることで、業務内外におけるフラットなコミュニケーションを促進しています。

 

d. 挑戦の機会の提供

 当社グループは、従業員一人ひとりが常に挑戦と成長を求められるように役割を付与し、挑戦の結果としての失敗を学びにつなげ、挑戦し続けられる組織を目指します。

 管理職には3~5年の役職任期を設け、任期の間に後進を育成することを重要な職務と位置付けています。本制度の運用により、管理職への早期の登用につなげています。また、各年度における目標設定・評価において、期初と期末の成長の差分を評価する成長度評価を実施しています。月次での1on1面談を通じ、業績目標のみならず、成長目標の達成についても、上長が伴走しながら個人の成長を促す仕組みを構築しています。

 

e. 組織力を高める

 当社グループは、個人の成長が組織の成長につながり、組織の出力が個人の出力の総和より大きくなる状態を目指します。

 成長度評価(「d.挑戦の機会の提供」を参照)において、各従業員が自身の成長に加え、他者の育成にも注力するよう「後進の育成」を評価の項目の一つとして設定しています。OJTにおいては、業務の標準化・形式知化を推進しているほか、ピアラーニングと称して、専門的な知見を従業員自身が講師となってシェアする社内勉強会を頻繁に実施しています。

 

 

(5) その他のサステナビリティに関する事項

①お客さま本位の業務運営 (お客さまのために未来をつくる)

 当社グループは、相互扶助という生命保険の原点を忘れずに、「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」というライフネットの生命保険マニフェストを経営理念として業務を運営しています。ライフネットの生命保険マニフェストは第1[企業の概況]3[事業の内容](2)マニフェストを基軸とした経営をご参照ください。

 マニフェストを踏まえ、当社グループでは、常にお客さまの声に耳を傾け、お客さまの視点に立った商品・サービスの開発・提供を行うとともに、徹底した情報開示を「正直に」行うことで、お客さま本位の業務運営に努めており、その一環として「お客さま本位の業務運営に関する方針」(以下、「当方針」)を公表しています。また、当方針における取組み状況及び成果指標の数値を定期的に公表しています。さらに、当方針及び成果指標は、必要に応じて見直し、改善を図ることで、より良いお客さま本位の業務運営を目指しています。

 当方針並びに当方針における取組み状況及び成果指標の数値の詳細は、ライフネット生命公式ウェブサイト「お客さま本位の業務運営に関する方針」に掲載しています。
  お客さま本位の業務運営に関する方針 https://www.lifenet-seimei.co.jp/policy/cs_policy/

 また、当社グループは、オンライン生保の円滑な運用においては、情報セキュリティの確保が最重要課題の一つであると認識しています。情報資産を守るために「情報セキュリティ基本方針」を定めるとともに、堅牢な情報セキュリティ体制の構築に取り組んでいます。情報セキュリティ基本方針は、ライフネット生命公式ウェブサイト「情報セキュリティについて」に掲載しています。また、情報セキュリティ管理体制の整備状況は、第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)コーポレート・ガバナンスの概要⑦情報セキュリティ管理体制の整備状況をご参照ください。
  情報セキュリティについて https://www.lifenet-seimei.co.jp/policy/security/

 

②社会課題の解決に向けた取組み (よりよい社会のために未来をつくる)

a. 資産運用に関する事項

 当社は、お客さまの保険事故の発生時に確実かつ適切に保険金等をお支払いするために、堅実な資産運用方針を定め、2023年度においても国債など高格付けの円金利資産を中心とした運用を継続しました。

 資産運用方針、投資ポートフォリオ及び運用規模を踏まえて、現時点においては明確なESG(環境・社会・ガバナンス)の投資方針等は定めていませんが、生命保険事業の特性や社会の持続可能性の観点から、当社内において一定の規律のもと、運用実績やリスク等に鑑み、ESGを考慮した投資を実施しています。

 

b. パートナーシップの活用

 当社グループは、より多くのお客さまにマニフェストに基づく商品・サービスの価値を届けることに加え、生命保険の価値提供を高め企業グループの枠を超えた連携により社会の課題を解決することを目指して、パートナー企業との提携を推進しています。2023年度においては、新たにSMBCグループと当社グループによる資本業務提携を締結しました。2023年12月には、SMBCグループの三井住友カード株式会社とともに、生命保険としては初のVポイントを活用した商品となる「Vポイントが貯まる保険」の販売を開始しました。また、KDDIグループのシナジーを活用して、auじぶん銀行株式会社と提携し、2023年7月から団信事業を開始しています。さらに、2022年度に資本業務提携を行ったエーザイ株式会社とともに、日本の高齢化社会における生活者の医療・介護に係る負担の軽減に貢献することを目指して認知症保険「be」を開発し、2024年4月から販売しています。今後も、生命保険業界に限らず様々なパートナーシップを活用し、オンライン生保市場の拡大及びお客さまや社会に対して利便性の高い金融サービスの提供を目指します。

 

③コーポレート・ガバナンスに関する事項 (未来をつくるガバナンス)

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため開業以来、コーポレート・ガバナンスの強化と充実に継続的に取り組んでいます。2024年6月23日開催予定の第18回定時株主総会(以下、「本総会」)終結後の取締役会においては取締役会の監督機能を強化し監督と執行の分離を一層機能させることを目的として過半数を独立社外取締役とする構成に変更します。また、モニタリング・ボードとしての実効性・効率性を高めることを目的として、取締役の員数は10名から7名とする予定です。これにより取締役会に占める女性取締役比率は29%となり多様性の一層の推進を図ります。さらに、本総会終結後の監査等委員会は全員が独立社外取締役となる予定であり、監査等委員会においても独立性のさらなる強化を実現します。

 コーポレート・ガバナンスに関する詳細は、第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)コーポレート・ガバナンスの概要をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは次のとおりです。当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、事態発生の回避及び発生した場合の迅速かつ適切な対応に努めます。なお、本項における将来に関する事項は、別段の表示がない限り、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) リスク管理方針

 当社は生命保険会社としての財務の健全性及び業務の適切性を確保しつつ、リスク戦略を実現するため、リスク管理態勢の整備・確立が経営上極めて重要であると認識しています。これらリスク管理に係る基本的な考えを「リスク管理に関する基本方針」に定め、社内の組織態勢を確立することにより、各リスクの評価・改善態勢を整備しています。また、当社の子会社においても、これらリスク管理に係る基本的な考えを、適切な業務運営のため準用することとしています。

 

0102010_002.png

 

(2) リスク管理体制

 当社では、社内の組織態勢(図参照)として、管理すべき各リスクの一次リスク管理部門を定め、リスク管理部が主な二次リスク管理部門として、リスクを統括するものとしています。また、総合的なリスク管理を行うためには、組織横断的な取組みが有効との考えに基づき、関係役員・部門長等で構成される「リスク管理委員会」を設置しています。さらに、生命保険会社にとっては、資産・負債の総合管理がリスク管理の要諦になるとの認識に立脚し、これとは別に「ALM*1委員会」を設けています。その他に、内部統制の体制整備・運営の推進を図るため、コンプライアンス体制の整備や推進状況等を協議・フォローする組織横断的な機関として、関係役員・部門長等で構成される「コンプライアンス委員会」を設置しています。

*1. Asset Liability Management(資産・負債の総合管理)

 

(3) リスクの分類

 当社グループは、主要なリスクについて、事業戦略リスク、保険引受リスク、市場リスク、信用リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスク*1に分類しています。以下は、この分類とともに当社グループの主要なリスクを示したものです。

*1. オペレーショナルリスクは事務リスク、法務リスク、コンプライアンスリスク、システムリスク等に分類し管理しています。

 

リスク分類

主要なリスク

A.事業戦略リスク

A-1  競争状況に係るリスク

A-2  保険獲得キャッシュ・フローの投下に係るリスク

A-3  提携先との関係及び提携先の業績に係るリスク

A-4  日本国内の人口動態に係るリスク

A-5  気候変動に係るリスク

A-6  サステナビリティ全般に係るリスク

A-7  法規制に係るリスク

A-8  社会保障制度等の変更に係るリスク

A-9  他の生命保険会社の破綻に係るリスク

A-10 オンライン生保業界の風評に係るリスク

A-11 技術革新に係るリスク

A-12 IFRSにおける繰延税金資産の評価に係るリスク

B.保険引受リスク

B-1  死亡率・罹患率等に係るリスク

B-2  IFRSにおける保険契約の評価に係るリスク

C.市場リスク・信用リスク・流動性リスク

C-1  金利変動に係るリスク

C-2  再保険取引に係るリスク

C-3  株価・為替等の変動に係るリスク

C-4  社債等に係る信用リスク

C-5  流動性リスク

D.オペレーショナルリスク

D-1  システムリスク

D-2  法令等違反及び社会規範逸脱に係るリスク

D-3  情報漏えいに係るリスク

D-4  大規模災害等における事業継続性に係るリスク

D-5  事務リスク

D-6  保険金・給付金の支払い漏れに係るリスク

D-7  人材の確保・維持に関するリスク

D-8  訴訟リスク

D-9  リスク管理体制に係るリスク

 

(4) 特に重要性が高いリスク

 「(3)リスクの分類」で分類・管理している主要なリスクのうち、発生した場合の影響度及び発生可能性に鑑みて特に重要性が高いと評価されるリスク及びその内容と対応策は以下のとおりです。

 

a. A-1 競争状況に係るリスク

 当社グループは、日本の生命保険市場において、国内生命保険会社、外資系生命保険会社、保険子会社を保有している国内の大手金融機関との競争に直面しています。競争には、価格や商品内容、契約者向けサービス、代理店手数料に関するものが含まれます。新型コロナウイルス感染症拡大以前から続く金融サービスのデジタル化は、当該感染症の拡大を背景に加速し、生命保険業界においても対面チャネルを主力としていた会社が一部オンライン化を推進するなど、新規プレイヤーが参入しており、今後、オンライン生保市場の拡大とともに競争環境の厳しさが増していく可能性は高いと考えています。当社グループが主力としている個人保険事業のダイレクトビジネスにおいて、競争力を維持できない場合には、新契約件数の減少及び解約等の増加によって保有契約件数が減少し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループは保有契約の持続的な成長を目指していますが、保有契約の成長が限定的になれば、規模の拡大と業務効率の改善による収益性の向上が実現できないこととなります。

 当社グループでは、「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」というライフネットの生命保険マニフェストのもと、お客さま視点で商品・サービスの設計・開発を行い、お客さまの当社グループに対するエンゲージメントを高めることで競争力の維持・強化を図っています。その他、積極的な保険獲得キャッシュ・フローの投下や、パートナービジネスにおける協業の推進、団体信用生命保険事業への取組みなど、当社グループの今までの経験を活かした事業の拡大を進め、これまでに築き上げてきたオンライン生保市場での競争優位性を維持・強化してまいります。

 

b. A-2 保険獲得キャッシュ・フローの投下に係るリスク

 生命保険業では一般的に、長期間にわたり平準的に保険料を収受する一方、契約前後の短期間に広告宣伝費・代理店手数料などが集中的に支出されます。当社グループは、認知度の向上や新契約の獲得を目的として、テレビCMや検索連動型広告に代表される各種の広告宣伝を行っており、積極的に保険獲得キャッシュ・フローを投下しています。営業活動の効果が十分に得られない場合、営業活動が適切に行われない場合、又は想定するほどにインターネットを通じた保険商品への購買行動が消費者に浸透しない場合には、保険獲得キャッシュ・フロー効率が低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 お客さまのニーズの変化や社会経済環境の動きには様々な短期的要因や長期的要因があり、それらの影響を受けて保険獲得キャッシュ・フロー効率も常に変動します。当社の商品・サービスやマーケティングにおいてこれらへの対応が適切になされない場合、今後、現状の規模での保険獲得キャッシュ・フローの投下を継続したとしても新契約業績が低下し、適正な商品の収益性が確保できないことになります。当社では、新契約の成長と保険獲得キャッシュ・フロー効率のバランスを定期的にモニタリング・分析を行いながら、保険獲得キャッシュ・フローの投下を判断してまいります。これらのコントロールを通じて、保険獲得キャッシュ・フローの投下に係るリスクの発生可能性を抑制することができると考えています。

 

c. B-1 死亡率・罹患率等に係るリスク

 生命保険料は、予定死亡率、予定罹患率、予定解約率、予定事業費率等の基礎率に基づいて計算されています。このため、例えば、実際の死亡率が予定死亡率よりも高い水準となること、又は、過去の死亡率実績から増加することにより、想定よりも多くの保険金を支払うこととなる可能性があります。また、終身医療保険、就業不能保険、がん保険及び認知症保険などの非伝統的なリスクを保障する商品に用いる予定罹患率は、死亡率などの伝統的なリスクを保障する生命保険商品の基礎率に比べ、相対的に高い不確実性を内包しています。さらに、当社は、これまで、定期死亡保険・終身医療保険・就業不能保険・がん保険・認知症保険の保障性商品に限定した生命保険の販売を行っていることにより、リスク・ポートフォリオにおいて、リスクを分散させる効果が相対的に小さくなる可能性があります。

 また、2023年7月から開始した団体信用生命保険事業においても、実際の死亡率や罹患率が保険料の計算基礎を上回り損失が発生する可能性があります。団体信用生命保険はそれぞれの契約の保険料率を1年ごとに変更する仕組みであることなどから、その損失を限定的なものとすることが可能と考えていますが、保険料率や商品設計の適切な管理がなされない場合、より長期にわたって当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、新型コロナウイルスを超えるような感染症の大流行や、東京や大阪等の人口密集地域を襲う地震・津波・テロ等の大規模災害を原因として大量の死傷者が発生した場合、当社は保険給付に関する予測不可能な債務を負うリスクにさらされます。当社は、日本基準の会計においては、保険業法上の基準に従って危険準備金を積み立てていますが、これは必ずしもあらゆる大規模災害発生時の支払いを担保するものではなく、保険金・給付金の支払いが危険準備金を超える可能性があります。

 これら死亡率・罹患率等に係るリスクは、現状の国民の死亡率や疾病・障害の罹患率の動向等に鑑みれば現時点での発生可能性は低いと考えています。当社では、死亡率や罹患率等が適正な範囲を超えることがないよう、商品開発時に保障内容や診査方法等を適切に設定するとともに、死亡率や罹患率等の状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて診査方法等の見直しや商品改定を実施する体制としています。また、ストレステストを実施し、大規模災害が発生した場合の影響や対応を確認しています。

 

d. C-1 金利変動に係るリスク

 当社は、高格付けの公社債などを資産運用の主たる手段として保有しています。今後、市場金利が大幅に上昇する場合、当社が保有している公社債の時価が想定を超えて下落する可能性があります。

 また、IFRSの保険契約の評価における割引率や経済価値ベースの保険負債評価に用いる割引率は市場金利に基づいて変動します。これら金利変動に伴う公社債の時価や保険負債等の評価額の変動によって、日本基準の純資産、IFRSの資本、当社が企業価値を表す経営指標として定める包括資本及び経済価値ベースの資本が影響を受けます。当社によって対処し得る程度を超えて市場環境が大きく変動した場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 現在、世界経済や国際政治状況が大きく変化するなかで、グローバルに物価上昇が進行し、欧米各国も政策金利の引上げを行ってきました。これらの状況において、金利変動の蓋然性は高まっていると認識していますが、当社は現状では十分な資本を確保し、経済価値ベースにおいても保障性商品のみで構成される商品ポートフォリオにより金利変動による影響は限定的と考えています。当社では、金利リスクを含む市場リスクに対しリスクリミットを設定したうえで、その状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて資産運用方針等を見直す体制としています。現在、金融経済の動向を踏まえ、金利変動リスクの抑制と財務会計上の耐性を高めることを目的として、債券のデュレーションの短期化及び日本基準における会計上の保有目的区分について「その他有価証券」から「満期保有」への割合のシフトを進めています。

 

e. D-1 システムリスク

 当社グループは、インターネットを主な販売チャネルとしており、情報システムの安定運用に依拠して、生命保険の販売、引受け、契約の管理、統計データ及び顧客情報の記録・保存などの事業運営を行っています。また、当社グループの業容拡大、商品・サービス開発の機動性確保及び業務効率化のため、毎年一定規模の情報システム投資を行っています。しかし、事故、災害、停電、ユーザー集中、人為的ミス、妨害行為、内部・外部からの不正アクセス、ウイルス感染やネットワークへの不正侵入、外部からのサービス妨害攻撃、ソフトウエアやハードウエアの異常等の要因により、当社グループの情報システムが機能しなくなる可能性があります。また、情報システムの刷新にあたり問題が発生する可能性もあります。それらの場合、機会損失や追加費用が発生する可能性があります。加えてこれらが原因で、当社グループがお客さまに提供するサービス、保険金・給付金の支払いや保険料の収納、資産運用業務などを一時的に中断せざるを得ない事態が生じる可能性があり、その結果、お客さまの信頼及び当社グループのレピュテーションの低下を招くとともに、行政処分につながるおそれがあり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、開業以来現在に至るまで大規模なシステムトラブルなどは発生しておらず、安定したシステム運用を行っています。想定外の原因により大規模なシステムトラブルが発生する可能性は、今後も低いと考えているものの、他の金融機関と同様に存在すると考えています。当社グループでは、情報システムを安定運用するための基本的な考え方や方策を社内規程等に定め、それらに基づく情報システムの開発、運用状況の監視、バックアップ体制の整備、障害発生時の対策等を行っています。また、外部からの攻撃等に備え、ファイアウォールやウイルス対策ソフト等による不正侵入や不正使用の防止と監視、ソフトウエアの脆弱性診断や、有事に適切な対応を図るためのCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の運営等を行っています。

 

f. D-2 法令等違反及び社会規範逸脱に係るリスク

 当社グループは、当社グループ又はその役職員、代理店、外部委託先又は顧客による不正や法令違反、例えば、違法な保険募集、顧客情報の不正利用、顧客による詐欺・なりすまし、その他の不祥事件等により、損失を被るリスクがあります。特に、違法な募集行為や顧客情報の不正利用が発生した場合には、監督当局から行政処分を受けるおそれがあるほか、当社グループへの信頼の低下、ブランドの毀損及び訴訟などの多額の費用負担につながり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、不正や法令違反には該当しない場合であっても、当社グループ又はその役職員が、社会的な規範や期待、要請に反する行為や、商慣習や市場慣行に反する行為、利用者の視点の欠如した行為に至ることにより、顧客を含むステークホルダー、市場の健全性、公正な競争、公共の利益に悪影響を及ぼす可能性があります。それらの場合、当社グループへの信頼の低下、ブランドの毀損及び対応費用の発生につながり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、オンライン生保であるため保険募集に係る不正が発生しづらいことや、事業の範囲や規模が限られること等により、発生可能性は低いと考えていますが、不祥事件等を排除又は減少させるための態勢を整備しています。当社グループでは、コンプライアンス委員会等を通じて法令等の遵守体制の整備や遵守状況の確認を定期的に実施し、必要に応じて課題や問題の改善に取り組んでいます。加えて、役職員に対し、テーマ別や階層別の研修を通して、法令等に対する意識浸透を図っています。また、当社グループでは、顧客を含むステークホルダーや社会からの期待に応えるため、経営理念を「ライフネットの生命保険マニフェスト」として定め、役職員への浸透と実現を図っています。その他、顧客からの問い合わせや苦情の分析等を通じて、顧客本位の業務運営の実現状況を定期的に確認しています。

 

g. D-3 情報漏えいに係るリスク

 当社グループは、インターネットを活用した生命保険事業を展開しており、顧客情報(個人情報)を中心とする様々な機密情報を主に電磁的方法により保有しています。当社グループの役職員、代理店、外部委託先による顧客情報の紛失・漏えい・不正利用が発生した場合、若しくは第三者が当社グループの情報システムに侵入して顧客情報を不正取得した場合には、監督当局から行政処分を受けるおそれがあるほか、当社グループへの信頼の低下、ブランドの毀損及び訴訟や顧客への損害賠償などの多額の費用負担により、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 情報漏えいが仮に発生した場合の影響の大きさに鑑み、当社グループは、情報セキュリティ管理の重要性を経営の最重要課題の一つと認識し様々な対策を行っているため、情報漏えいの発生可能性は低く抑制できていると考えています。データの持ち出し等については、データへのアクセスやコピーの制限、ログのモニタリング等の技術的な対策を行っています。また、外部からの攻撃等に備え、ファイアウォールやウイルス対策ソフトによる不正侵入や不正使用の防止と監視、ソフトウエアの脆弱性診断や、有事に適切な対応を図るためのCSIRTの運営等を行っています。

 

(5) その他の主要なリスク

 「(3)リスクの分類」で分類・管理している主要なリスクのうち、「(4)特に重要性が高いリスク」以外のリスクの内容は以下のとおりです。

 

a. A-3 提携先との関係及び提携先の業績に係るリスク

 当社グループは、インターネットを通じた主力のダイレクトビジネスに加えて、収益機会の拡大を目指し生命保険業界内外の企業との業務提携を通じたパートナービジネスの取組みを強化しています。当社グループの提携先が事業上の問題に直面した場合、業界再編などによって戦略を転換した場合、又は当社グループが魅力的な提携相手でなくなったと判断された場合などには、当社グループとの業務提携が解消される、又は提携内容が変更される可能性があります。また、今後当社グループ以外の競合会社との提携が進む可能性があります。その結果、当社グループは事業戦略の変更を迫られ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

b. A-4 日本国内の人口動態に係るリスク

 1960年代後半以降、日本国内の合計特殊出生率は総じて減少傾向にあり、依然として低い水準にあります。その中で、15歳から64歳までの人口(以下、「生産年齢人口」)も減少しています。このような人口動態の変化が、日本国内における生命保険市場に悪影響を与える可能性があります。また、当社が販売する生命保険商品の顧客基盤は、主にこの生産年齢人口に属しています。生産年齢人口が今後も減少し続けた場合、当社の主力商品である定期死亡保険に対する需要が減少することになり、中長期的に当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、人口動態の変化などの社会情勢の変化も踏まえながら、お客さまのニーズに応える商品・サービスを開発してまいります。

 

c. A-5 気候変動に係るリスク

 気候変動への対応は、国際社会全体で取り組む大きな社会課題となっており、企業に対しても気候変動への適応と緩和に対する取組みが求められています。当社グループにおいても、気候変動は中長期的な業績に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば温暖化に伴い感染症が増加する場合や、異常気象が健康へ悪影響を及ぼす場合、自然災害等による被害が増加する場合には、保険金・給付金の支払いが増加する可能性があります。また、当社グループが社債等を通じて投資する企業において、自然災害等の被害の増加や、低炭素社会への移行に向けた制度変更、消費者選好の変化等による悪影響を受ける場合、当該企業への投資価値が低下する可能性があります。

 

d. A-6 サステナビリティ全般に係るリスク

 社会環境や自然環境の悪化、人権や平和への侵害によって、中長期的な当社グループ事業の成長可能性と持続可能性が低下する可能性があります。そのため、持続可能な社会に向けての取組みは、当社グループにおいても社会的使命を果たしつつ長期的に企業価値を向上させていくため、事業戦略の一部として重要であると認識しています。

 当社グループは、第2[事業の状況]2[サステナビリティに関する考え方及び取組](2)サステナビリティ全般に記載のとおり、マテリアリティを特定するとともに、持続可能な社会の実現に向けた取組みを行っています。これらへの当社グループ自身の取組みが不十分と評価される場合、又は当社グループが社債等を通じて投資する企業の取組みに問題がある場合、追加的なコストの発生や社会的評価の悪化を通じ、当社グループの業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

e. A-7 法規制に係るリスク

 当社は、保険業法の規定による生命保険業免許を受けた保険会社であり、保険業法等による規制と金融庁の広範な監督の下にあります。保険会社に適用される法規制の改正は、当社グループの保険販売に影響を及ぼす、又は法規制に対応するための予期せぬ追加コストの発生により当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 例えば、情報漏えいに対する問題意識の高まりなどから、保険募集におけるインターネットの利用を制約するような法規制が導入された場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、ソルベンシー規制として、保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors: IAIS)が国際的な規制を、金融庁が国内向けの規制を、いずれも経済価値ベースで新たに導入することが検討されています。このように新たな規制や基準等が導入された場合には、これらに含まれる制約が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、保険業法は、内閣総理大臣(原則として金融庁長官に権限委任。以下同じ)に対して、免許の取消し、業務の停止、立入検査、報告又は資料の提出など、保険業に関する広範な監督権限を与えています。特に、保険業法では、当社が、法令に基づく内閣総理大臣による処分を受けた場合、定款、事業方法書、普通保険約款、保険料及び責任準備金の算出方法書などの基礎書類に定めた事項のうち特に重要なものに違反した場合、免許に付された条件に違反した場合、又は公益を害する行為をした場合に、内閣総理大臣が保険業法第133条に基づき、当社の免許を取り消すことができると定めています。仮に、当社の免許が取り消されることとなれば、当社は事業活動を継続できなくなり、解散となる可能性があります。

 

f. A-8 社会保障制度等の変更に係るリスク

 生命保険は、相互扶助の原理に基づき、国の社会保障制度を補完する私的保障の中核を担っています。当社の商品も、国の社会保障制度を前提として設計されており、中長期的に社会保障制度の変更があった場合、訴求力を失う可能性があります。

 また、私的保障の充実を促す仕組みである生命保険料控除制度が税制改正により縮小若しくは廃止となった場合、当社の新契約件数の獲得、ひいては当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

g. A-9 他の生命保険会社の破綻に係るリスク

 当社は、国内の他の生命保険会社とともに、破綻した生命保険会社の契約者を保護する生命保険契約者保護機構(以下、「保護機構」)への負担金支払い義務を負っています。将来的に、国内の他の生命保険会社が破綻した場合や、保護機構への負担金の支払いに関する法的要件が変更された場合には、保護機構に対する追加的な負担を求められ、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、他の生命保険会社の破綻は、生命保険業界全体に対する消費者の評価にも悪影響を与え、生命保険会社に対するお客さまの信頼を損なう可能性があります。この生命保険会社に対する不信感の影響で、当社の新契約件数の減少及び解約等による保有契約件数の減少を招き、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

h. A-10 オンライン生保業界の風評に係るリスク

 インターネットを通じた生命保険商品の販売は、様々なメディアにおいて「オンライン生保」という業種・業態として認知を高めつつあります。このような業界認知の向上は、当社グループの認知度向上及び成長にプラスに寄与する側面もある一方、同業他社において個人情報の漏えいやシステム障害等の問題が生じた場合は、オンライン生保業界全体に対する消費者の評価に悪影響を与え、新契約件数の減少や解約等による保有契約件数の減少により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、オンライン生保の提携先としての魅力が毀損され、ビジネスパートナーとの協業に悪影響を与える可能性もあります。

 

i. A-11 技術革新に係るリスク

 当社グループは、インターネットを活用した生命保険業務を展開していることから、インターネットとその関連技術に精通し続けることが当社グループの成長において不可欠です。IT関連業界は、技術革新のスピードが速く、新技術の登場により当業界の技術標準又は顧客の利用環境が変化することから、新技術への対応が遅れた場合、当社グループの提供する保険商品及びサービスが劣後し、業界内での競争力の低下を招き、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

j. A-12 IFRSにおける繰延税金資産の評価に係るリスク

 当社グループは、2023年度よりIFRSを任意適用しています。IFRSにおいては、保険契約の評価に係る税務上の将来加算一時差異があり、その解消により回収が見込まれる範囲内で税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対する繰延税金資産を認識しています。当社グループの経営状況の悪化や将来の見通しの変化等により、保険契約の評価に係る将来加算一時差異が減少し、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対する繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額され、その結果、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

k. B-2 IFRSにおける保険契約の評価に係るリスク

 当社グループは、2023年度よりIFRSを任意適用しています。IFRSにおいては、保険契約の評価を、報告日時点における将来キャッシュ・フローに関する現在の見積り、現在の割引率及び非金融リスクに係るリスク調整に関する現在の見積りを用いて測定しています。将来キャッシュ・フロー及び非金融リスクに係るリスク調整の見積りについて、保険契約の評価をするにあたっての前提条件の変更があった場合、その影響額は契約サービスマージン(CSM)で調整されます。しかしながら、保険事故発生率、解約失効率、維持費率の著しい悪化、または、非金融リスクに係るリスクの著しい増大により、保険契約グループにおいてCSMで調整しきれない悪化方向の前提条件の変更を行うこととなる場合、その影響額のうちCSMを超える金額については当期の損失として計上されることになります。その結果、財務会計上の損失が生じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

l. C-2 再保険取引に係るリスク

 当社は、主に保険引受リスクの軽減のため、再保険会社と再保険契約を締結しています。しかし、再保険契約は、取引先の存在が前提となるカウンターパーティ・リスクが伴うことから、現在の契約が履行されない場合や、将来適切な条件で締結できない場合及び再保険の締結自体ができない場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

m. C-3 株価・為替等の変動に係るリスク

 当社は、運用資産の一部として海外の債券や国内外の株式なども保有しています。これらは、適切なリスクコントロールのうえ投資を実施しているため、市場リスクに与える影響は限定的であると認識していますが、予期せぬ市場の変動等により株価下落・クレジットスプレッド拡大・円高などが進行した場合に、時価が下落することや、予期せぬタイミングで売却することなどにより、当社グループが損失を被る可能性があります。

 また、一部において、純投資目的に加えて当社グループの企業価値又は業績の向上を目的とした株式投資を行っており、今後も行う可能性があります。投資先の選定にあたっては、必要な検討を実施したうえで投資判断を行っていますが、市場経済の動向や投資先の財務内容及び業績が悪化した場合や為替の変動が発生した場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

n. C-4 社債等に係る信用リスク

 当社は、主に高格付けの公社債などへ投資しているため信用リスクに与える影響は限定的であると認識していますが、保有する公社債の発行体の業績が著しく悪化し信用力が低下した場合、時価の下落に加え、元利金不払い等の債務不履行が生じる可能性があります。また、当社グループが保有するその他の資産についても、取引先の破綻等により、回収不能に陥る可能性があります。それらの場合、当該資産の価値が減少又は消失し、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

o. C-5 流動性リスク

 当社グループは、保険金・給付金の支払いに対応するために必要な一定程度の預貯金を含め、手元流動性を確保した資産運用を行っています。しかし、感染症の大流行・地震・津波・テロなどの大規模災害により、急遽、多額の保険金・給付金の支払いが求められた場合、当社グループの資金繰りに悪影響を及ぼす可能性や、不利な条件での資産の売却を強いられ当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、大規模災害が金融市場の混乱につながった場合など、資産の処分が全くできなくなった場合、保険金・給付金の支払いが遅延する可能性があります。その結果、当社グループのレピュテーションが低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

p. D-4 大規模災害等における事業継続性に係るリスク

 感染症の大流行や、人口密集地域や広範囲を襲う地震・津波・テロ・国家間紛争等の大規模災害が発生した場合、保険引受リスクや流動性リスクへの影響に加え、当社グループの役職員・関係職員の被災・罹患や当社グループ施設の損壊、外部の業務委託先の機能停止等により、当社グループの事業継続への影響や追加費用が発生する可能性もあります。当社グループは、地震等で被災した場合を想定して事業継続計画を策定していますが、この事業継続計画の想定を超えるような大規模災害が発生した場合、当社グループの業務運営に重大な支障をきたす可能性があります。なお、このような状況においては、当社グループが事業を継続できていた場合も、社会・経済全体の活動が低下することにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

q. D-5 事務リスク

 当社グループが構築した事務リスク管理体制が有効に機能することなく、事務手続き上の重大な過失が起こった場合、当社グループの風評の低下又は財務上の損害をもたらす可能性があるとともに、行政処分を受ける可能性があります。また、当社グループの外部委託先や代理店の不適切な事務処理が原因で、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、2023年度より連結財務諸表についてIFRSを任意適用し、それらの財務諸表を作成するための事務体制を構築していますが、対応の不備等による開示情報の重大な誤謬が発生した場合、当社グループの風評の低下又は財務上の損害をもたらす可能性があります。

 

r. D-6 保険金・給付金の支払い漏れに係るリスク

 生命保険業界全体が保険金等の「不払い問題」を契機に以後継続的に支払い体制の強化を図る中で、当社においても、正確かつ迅速な支払いを行うための不断の努力を重ねています。しかし、事務手続き上の重大な過失や保険金・給付金の支払い漏れが発生した場合、行政処分の如何にかかわらず、当社グループへの信頼の低下等を通じ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

s. D-7 人材の確保・維持に関するリスク

 当社グループは、時代や環境の変化にすみやかに対応し、お客さまのさまざまなニーズにそった商品やサービスを提供するため、高い専門性を有する多様な人材の確保に努めています。また、事業の成長及び企業価値の向上につなげるべく、人材の育成に努めています。しかし、人材の確保及び育成に関する環境整備が不十分な場合、または重大な人事・労務問題の発生により当社グループの信頼が著しく低下した場合、必要な人材が採用できず、また、社外に人材が流出することにより、当社グループの業績及び企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

t. D-8 訴訟リスク

 当社グループは、主に予防法務に重点を置き、弁護士などと相談しながら訴訟の発生リスクを極小化しており、現在までのところ、重大な訴訟は発生していません。しかし、生命保険事業に関連した訴訟が発生し当社グループが不利な結果を被る可能性もあり、将来にわたって当社グループの社会的信用や業績に影響を及ぼす訴訟や係争が発生する可能性があります。また、同様に、他社が係争中の訴訟を含め、生命保険会社に不利な判決が下された場合に、潜在的な訴訟の可能性や顧客への対応に係る事務コストが高まる可能性があります。

 

u. D-9 リスク管理体制に係るリスク

 当社は、リスク管理に関係するあらゆる事項の報告を行う全社横断的な機関である「リスク管理委員会」を設置し、適切なリスク管理を行っています。しかし、リスクを把握する上で必要となる過去の実績や経験の蓄積が十分ではない可能性があり、当社グループのリスク管理体制が有効に機能しなかった場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループは、当連結会計年度より、IFRSを適用しています。また、前連結会計年度の財務数値についても、IFRSに組み替えて比較分析を行っています。なお、財務数値に係るIFRSと日本基準との差異については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記」の「42. 初度適用」をご覧ください。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度において、日本経済はコロナ禍からの回復を遂げ、経済活動の再開に伴い緩やかな成長基調を取り戻しました。しかしながら、物価の上昇が個人消費の力強い回復を阻害しており、賃金の継続的な上昇を通じて成長期待を高めることが今後の課題となっています。

 金利状況においては、日本銀行によるゼロ金利政策は解除されたものの、国内外の金利差は広がり、為替の円安傾向は継続しています。

 生命保険業界においては、金利上昇を受けた一時払い商品の予定利率の引き上げ・新型コロナウイルス感染症関連の保険金等支払いの収束による業績回復・異業種企業との資本提携の動き等、事業環境の変化に直面しています。

 このような状況において、当社グループは「正直に経営し、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供することで、お客さま一人ひとりの生き方を応援する」という経営理念のもと、インターネットを主な販売チャネルとする生命保険会社として開業から16年目を迎えました。当連結会計年度においては、開業以来初の団体信用生命保険事業を開始し事業領域を拡大させるとともに、個人保険事業においても、パートナー企業との共同開発商品を販売する等、お客さま視点での商品・サービスの提供に努め、個人保険の保有契約件数は60万件を突破しました。

 

(契約の状況)

 当社グループは、新たな収益機会の拡大を目指して、2023年7月より団信の提供を開始しました。当連結会計年度末の個人保険及び団信を合算した保有契約年換算保険料*1は、前連結会計年度末比119.6%の28,750百万円となりました。内訳について、個人保険は前連結会計年度末比105.8%の25,424百万円、団信は3,326百万円となりました。

 個人保険における保有契約件数、新契約年換算保険料及び新契約件数、解約失効率は次のとおりです。保有契約件数は、2024年3月に60万件を突破し、前連結会計年度末比105.7%の600,945件となりました。また、当連結会計年度の新契約年換算保険料は、前連結会計年度比73.6%の2,883百万円、新契約件数は、前連結会計年度比73.5%の72,434件となりました。また、当連結会計年度の解約失効率*2は、6.5%(前連結会計年度6.5%)となりました。

*1.年換算保険料とは、1回当たりの保険料(団信は、保有契約をもとに算出される翌月の収入保険料)について保険料の支払い方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額をいいます。当社商品の保険料は全て月払いのみとなっているため、1ヶ月当たりの保険料に12を乗じたものを年換算保険料としています。

*2.解約失効率は、解約・失効の件数を月々の保有契約件数の平均で除した比率を年換算した数値です。

 

(収支の状況)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

増減額

保険収益

20,732

24,698

3,966

保険サービス損益

6,618

8,222

1,604

金融損益*3

△452

555

1,008

その他の損益*4

△822

△527

295

税引前利益

5,343

8,251

2,908

親会社の所有者に帰属する当期利益

3,562

5,734

2,171

 

 当連結会計年度の保険収益は、前連結会計年度比119.1%の24,698百万円となりました。内訳について、個人保険に係る保険収益は22,694百万円、団信に係る保険収益は2,004百万円となりました。個人保険については、保険収益を構成する主要な要素のうち、「予想保険金及び維持費*5」は10,464百万円、「消滅したリスクに関する非金融リスクに係るリスク調整の変動(以下、「リスク調整リリース」)」は1,678百万円、「提供したサービスについて認識したCSM*6(以下、「CSMリリース」)」は7,056百万円となりました。保険サービス損益は、主にリスク調整リリース及びCSMリリースの計上により、前連結会計年度比124.2%の8,222百万円となりました。金融損益は、主に投資信託の評価益の計上により、555百万円となりました。その他の損益は、保険サービスに直接関連しない費用の計上等により、△527百万円となりました。

 以上の結果、税引前利益は、前連結会計年度比154.4%の8,251百万円となりました。また、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比161.0%の5,734百万円となりました。

 なお、当連結会計年度において発生した保険契約の履行に直接関連する費用のうち、保険契約群団の獲得に直接起因する費用(マーケティング、新規契約の査定及びシステムに係る費用等の合計)である保険獲得キャッシュ・フローは前連結会計年度比90.3%の9,377百万円、保険獲得キャッシュ・フローに含まれない費用である維持費は前連結会計年度比112.0%の4,533百万円となりました。

*3.金融損益とは、主に金融資産から生じる投資損益、保険金融収益または費用、再保険金融収益または費用の小計です。

*4.その他の損益とは、保険サービスに直接関連しない費用、保険事業以外の損益を指し、商品開発費用や子会社の損益等が含まれます。

*5.維持費とは、保険契約の履行に直接関連する費用のうち、保険獲得キャッシュ・フローに含まれない費用を指し、保険契約の管理及び維持に係る費用や保険サービス提供のための間接費用が含まれます。

*6.CSMはContractual Service Marginの略であり、将来において保険サービスを提供するにつれて認識することとなる未稼得利益を表します。

 

(財政状態)

 当連結会計年度末の総資産は、112,417百万円(前連結会計年度末93,814百万円)となりました。主な勘定残高として、高格付けの公社債を中心とする投資有価証券は51,564百万円、保険契約資産は32,378百万円となりました。保険契約は一般的には負債として計上されるものの、当社グループは以下の表「保険契約負債の内訳」のとおり、個人保険の保険契約負債はマイナスとなることから保険契約資産として計上しています。その内訳は、個人保険における将来キャッシュ・フロー現価△150,693百万円、リスク調整26,141百万円及びCSM92,173百万円となりました。また、団信においては保険料配分アプローチを適用して測定し、保険契約負債として685百万円を計上しました。

 

保険契約負債の内訳

(単位:百万円)

将来キャッシュ・フロー現価

(保険金等から保険料を差し引いた収支の現価)

△150,693

リスク調整

26,141

CSM

92,173

個人保険における保険契約負債 合計

△32,378

団信における保険契約負債(保険料配分アプローチを

適用して測定する契約に係る保険契約負債)

685

 

 負債は、主に繰延税金負債が増加したことにより、21,535百万円(前連結会計年度末18,110百万円)となりました。主な勘定残高は、繰延税金負債18,610百万円となりました。

 資本は、公募増資及び第三者割当増資による新株式発行を行ったことに加え、当期利益を計上したことにより、90,882百万円(前連結会計年度末75,704百万円)となりました。

 また、行政監督上の指標のひとつとして経営の健全性を判断するために活用する指標である連結ソルベンシー・マージン比率は、当連結会計年度末において2,192.9%となり、充分な支払余力を維持しています。

 

(商品・サービスなどの取組み)

 当連結会計年度における主な取組みとして、2023年9月に、公募増資による新株式発行、auフィナンシャルホールディングス株式会社及び三井住友カード株式会社を割当先とする第三者割当増資による新株式発行を行いました。本増資で獲得した資本を活用し、今後さらなる成長を加速させ、オンライン生保の可能性を解放し、魅力的な経済圏を有するパートナー企業との取組みの推進を目指します。

 当社グループは、2023年7月より、開業以来初の団信事業として、auじぶん銀行株式会社の住宅ローン利用者に向けた団信の提供を開始しました。また、三井住友カード株式会社を通じて、2023年12月より「Vポイントが貯まる保険」の販売を開始しました。

 さらに、当連結会計年度においても外部機関からの多数の評価を獲得しました。商品では、定期死亡保険「かぞくへの保険」が、「価格.com保険アワード2023年版」において生命保険の部(定期保険)で7年連続総合第1位を受賞しました。サービスでは、コンタクトセンターとウェブサイトが2023年「HDI格付けベンチマーク(生命保険業界)」において業界最多記録(当社調べ)となる11回目の最高評価を受賞しました。さらに、実際に契約手続きをされたお客さまが評価する「J.D. パワー生命保険契約満足度調査」ではダイレクト型チャネル部門で4年連続第1位*1を受賞し、前経営方針の重点領域として掲げた「顧客体験の革新」への注力が、お客さまからの高い評価につながったものと考えています。

*1.J.D. パワー「生命保険契約満足度調査<ダイレクト部門>」において、2021年~2024年の4年連続1位受賞。2024年調査は新規契約・更新手続きをした顧客1,331名からの回答によるものです。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に保険契約資産の増加がマイナスに影響したものの、税引前利益の計上により、6,016百万円の収入(前連結会計年度2,681百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に投資有価証券の取得により、3,443百万円の支出(前連結会計年度763百万円の収入)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、主に公募増資及び第三者割当増資による新株式発行により、9,681百万円の収入(前連結会計年度109百万円の支出)となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、24,423百万円(前連結会計年度末12,137百万円)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

 生命保険業においては、該当する情報がないため記載していません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。本項における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営状況の分析等

 当社グループは、当連結会計年度までの経営方針において、EEV(ヨーロピアン・エンべディッド・バリュー)を当社グループの企業価値を表す最も重要な指標と位置づけ、経営目標として「EEVの2,000億円早期到達」を掲げました。また、EEVの持続的な成長を支える経営指標として、成長性指標・収益性指標・健全性指標を設定しており、各指標の説明、成果及び分析は以下のとおりです。

 なお、当社グループは、2024年5月14日に、新たな経営方針及び2024年度から2028年度までの中期計画を発表しました。2023年度より国際財務報告基準(IFRS)を適用していることから、当中期計画においては当社グループの企業価値を表す重要な経営指標にIFRSに基づいた「包括資本(Comprehensive Equity)」を定め、経営目標として「2028年度における包括資本の2,000億円~2,400億円到達」を設定しています。詳細は、第2[事業の状況]1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](3)中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき課題をご参照ください。

 

(EEVについて)

 EV(エンベディッド・バリュー)は、「修正純資産」と「保有契約の将来利益現価」を合計した指標であり、当社グループが用いるEEV(ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー)は、EV(エンベディッド・バリュー)の種類の一つです。

 「修正純資産」は、期末の純資産に調整額(負債中の内部留保等)を合計して算出します。当年度の純利益がプラスの場合は、修正純資産を増加させる要因となり、マイナスの場合は、修正純資産を減少させる要因となります。「保有契約の将来利益現価」は、現在の保有契約から生じる将来の利益を現在価値に割り引いたもので、新契約を獲得すると、一般的には保有契約の将来利益現価が増加します。

(EEVを経営指標として定めた理由)

 生命保険契約は、一般的に新規の契約を獲得する時に多くの費用がかかるものの、収益となる保険料収入を生み出す期間は長期となるため、費用と収益の発生にタイムラグが生じます。現在の法定会計(日本基準)上の損益計算書では、新規の契約獲得に係る費用を初年度に一括計上する一方で、収益となる保険料収入は長期にわたって計上されます。そのため、新規の契約が増加するほど当年度に計上される費用が増加し、当期の利益にマイナスの影響を与える構造となっています。特に、当社グループのように保有契約に占める新契約の割合が大きい生命保険会社においては、当期の法定会計上の損益計算書の損益が損失の計上となる傾向にあります。当社グループは、超長期となるビジネスである生命保険会社の企業価値を評価するためには、法定会計に加えて、将来の利益も含めた長期の収益性を示すEV(エンベディッド・バリュー)も考慮する必要があると考え、EEV(ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー)を前経営方針における経営指標として定めました。

 

(EEV計算結果と変動要因分析)

 当連結会計年度末のEEVは、前連結会計年度末比17.9%増加の146,991百万円となりました。修正純資産は25,251百万円、保有契約の将来利益現価は121,740百万円となりました。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度末

(2023年3月末)

当連結会計年度末

(2024年3月末)

増減

EEV

124,666

146,991

22,324

修正純資産

18,367

25,251

6,883

保有契約の将来利益現価

106,299

121,740

15,440

 

 また、前連結会計年度末から当連結会計年度末までのEEVの変動要因分析は以下のとおりです。

 なお、修正EV増加額につきましては、EEVの変動のうち、「新契約価値」「将来利益現価の割り戻し」「保険関係の前提条件と実績の差異」の合計額を修正EV増加額と定義したもので、当社グループの期間業績を表す指標と位置付けています。

(単位:百万円)

2023年3月末EEV

124,666

 

修正EV増加額

8,953

 

2023年度の新契約価値

6,730

 

将来利益現価の割り戻し

1,472

保険関係の前提条件と実績の差異

750

保険関係の前提条件の変更

3,132

 

経済的前提条件と実績の差異

357

 

2024年3月末EEVの調整*1

9,881

 

2024年3月末EEV

146,991

 

*1. 資本の増減による項目

 

 前連結会計年度末から当連結会計年度末にかけて、EEVは22,324百万円増加しました。当連結会計年度においては、団信事業の開始に伴う新契約価値の増加、個人保険の死亡率前提の見直しや団信の引受に伴う事業費効率の改善など保険関係の前提条件の変更による増加、2023年9月に実施した公募増資及び第三者割当増資等により、EEVは伸長しました。

 

(EEVの持続的な成長を支える経営指標)

 当社グループは、成長性指標として保有契約業績及び新契約業績、収益性指標*2として保険獲得キャッシュ・フロー効率(保険獲得キャッシュ・フローを新契約件数で除した新契約1件当たりの保険獲得キャッシュ・フロー)及び保険獲得キャッシュ・フローを除く経費率(保険獲得キャッシュ・フローを除く経費を経過保有年換算保険料で除した割合)、健全性指標として連結ソルベンシー・マージン比率を設定しています。各指標の結果分析は以下のとおりです。

 成長性指標について、当連結会計年度末の保有契約業績は、個人保険及び団信を合算した保有契約年換算保険料が前事業年度末比119.6%の28,750百万円となりました。

 個人保険における業績は次のとおりです。保有契約業績は、保有契約年換算保険料が前連結会計年度末比105.8%の25,424百万円、保有契約件数が2024年3月に60万件を突破し、前連結会計年度末比105.7%の600,945件となりました。新契約業績は、新契約年換算保険料が前連結会計年度比73.6%の2,883百万円、新契約件数が前連結会計年度比73.5%の72,434件となりました。また、解約失効率は6.5%(前連結会計年度6.5%)と、前連結会計年度と同水準を維持しました。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い保障性の生命保険商品の需要低下が長引いたことなどにより、個人保険の保有契約業績の成長速度は緩やかとなりました。

 団信においては、保有契約年換算保険料が3,326百万円となりました。2023年7月から開始したauじぶん銀行株式会社との取組みにおいて、急速な成長を続けるauじぶん銀行の住宅ローン融資実行額を背景に、当社グループの保険契約年換算保険料も力強い成長を実現しました。成長性指標については、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況もご参照ください。

 収益性指標について、保険獲得キャッシュ・フロー効率は、前連結会計年度の10.5万円から当連結会計年度は12.9万円となりました。新型コロナウイルス感染症の収束に伴う保障性の生命保険商品の需要低下の継続により新契約の獲得が想定どおりに進捗しなかったこと、及び個人保険事業のさらなる成長の実現に向けた新たな営業投資を行った結果、保険獲得キャッシュ・フロー効率は低下しました。保険獲得キャッシュ・フローを除く経費率は、前連結会計年度の20.7%から当連結会計年度は18.4%となりました。主に、auじぶん銀行株式会社が契約する既存の団信契約の引受保険会社を当社へ移管したことにより保有契約が大きく増加したことでのスケールメリットが働き、保険獲得キャッシュ・フローを除く経費率が改善しました。

 健全性指標の連結ソルベンシー・マージン比率は、2,192.9%(前事業年度末3,173.1%)で、充分な水準を確保しています。ソルベンシー・マージン比率についての詳細については、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容のb. ソルベンシー・マージン比率もご参照ください。

*2.収益性指標は、財務報告において、2022年度までは、従前適用している日本基準を踏まえて「営業費用効率」及び「営業費用を除く事業費率」を設定していましたが、2023年度より新たに国際財務報告基準(IFRS)を任意適用したことから、それぞれ「保険獲得キャッシュ・フロー効率」及び「保険獲得キャッシュ・フローを除く経費率」に変更しました。なお保険獲得キャッシュ・フローとは保険契約群団の獲得増加に直接起因する費用であり主に従来の営業費用に新契約査定に係る費用及びシステムに係る費用を加えたものです

 

b. ソルベンシー・マージン比率

(a) ソルベンシー・マージン(支払い余力)の考え方

 ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株式市場の暴落など、通常の予測の範囲を超えて発生するリスクに対応できる「支払い余力」を有しているかどうかを判断するための経営指標・行政監督上の指標のひとつです。具体的には、純資産などの内部留保と有価証券含み益などの合計(ソルベンシー・マージンの総額=支払い余力)を、定量化した諸リスクの合計額で除して求めます。なお、ソルベンシー・マージン比率が200%以上であれば、行政監督上、健全性についてのひとつの基準を満たしているとされます。

ソルベンシー・マージン比率 =

ソルベンシー・マージン総額

 × 100(%)

リスクの合計額 × 1/2

 

(b) 連結ソルベンシー・マージン比率

 当連結会計年度末のソルベンシー・マージン比率は、2,192.9%となり、支払余力は引き続き高水準を維持しています。

                                   (単位:百万円)

項   目

前連結会計年度末

(2023年3月31日)

当連結会計年度末

(2024年3月31日)

(A) ソルベンシー・マージン総額

31,818

45,669

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資本金等

16,430

86,661

価格変動準備金

124

危険準備金

2,420

異常危険準備金

一般貸倒引当金

(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ損益(税効果控除前))×90%

(マイナスの場合100%)

△855

△240

土地の含み損益×85%

(マイナスの場合100%)

未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額

全期チルメル式責任準備金相当額超過額

15,679

17,687

負債性資本調達手段等

全期チルメル式責任準備金相当額超過額及び負債性資本調達手段等のうち、マージンに算入されない額

△1,854

△58,438

控除項目

△124

その他

(B) リスクの合計額

  0102010_003.png

2,005

4,165

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保険リスク相当額          R1

1,043

2,357

一般保険リスク相当額        R5

巨大災害リスク相当額        R6

第三分野保険の保険リスク相当額   R8

400

891

少額短期保険業者の保険リスク相当額 R9

予定利率リスク相当額        R2

4

4

最低保証リスク相当額        R7

資産運用リスク相当額        R3

1,266

2,324

経営管理リスク相当額        R4

81

167

(C) ソルベンシー・マージン比率

0102010_004.jpg

3,173.1%

2,192.9%

(注) 上記は、保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出

しています。

なお、2023年度末の連結ソルベンシー・マージン比率は、平成23年金融庁告示第23号第1条第2項の

規定に基づき、国際財務報告基準(IFRS)に従って作成した連結財務諸表に基づき算出しています。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、主に保険契約資産の増加がマイナスに影響したものの、税引前利益の計上により、6,016百万円の収入(前連結会計年度2,681百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に投資有価証券の取得により、3,443百万円の支出(前連結会計年度763百万円の収入)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、主に公募増資及び第三者割当増資による新株式発行により、9,681百万円の収入(前連結会計年度109百万円の支出)となりました。

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、24,423百万円(前連結会計年度末12,137百万円)となりました。

 当社の資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりです。

 当社は、保険料収入を主な資金の源泉としています。また、保険金・給付金の支払いに対応するために必要な一定程度の預貯金を含め、手元流動性を確保したうえで資産運用を行っています。

 当連結会計年度においても、高格付けの事業債などの円金利資産を中心とした運用を継続しました。また、適切なリスク管理のもとで国内外の株式や債券などを対象とした運用を通じて、資産の多様化を行っています。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6. 重要な会計上の見積り及び判断」をご参照ください。

 

(3) 並行開示情報

 当社は、2021年5月に子会社であるライフネットみらい株式会社を設立しましたが、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第5条第2項により、当企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいものとして日本基準に準拠して連結財務諸表を作成していませんので、並行開示情報は記載していません。

 

(4) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。

前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

 「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 42. 初度適用」に記載のとおりです。

 

当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(保険契約資産等)

 日本基準において、保険業法及び保険業法施行規則に基づき、以下の保険契約準備金を積み立てています。

 

・支払備金

 期末時点において支払義務が発生しているもののうち支払いが行われていないもの、又は、まだ支払事由の報告を受けていないものの支払事由が既に発生しているものと認められるものについて保険業法の規定に基づいて算出された金額

 

・責任準備金

 期末時点において、保険契約上の責任が開始している契約について、保険契約に基づく将来の債務の履行に備えるため、算出方法書に記載された方法に従って計算した金額

 責任準備金のうち保険料積立金については、大蔵省告示に定める方式により計算しています。

 責任準備金のうち危険準備金については、保険業法施行規則に基づき、保険契約に基づく将来の債務を確実に履行するため、将来発生が見込まれる危険に備えて、所定の積立基準額以上を繰入計上し、積立限度額の範囲内で積み立てています。

 また、保険契約に再保険契約を付した場合において、支払備金及び責任準備金の積立額のうち、再保険を付した部分に相当する金額を計上しないこととしています。

 IFRSでは、保険契約グループの帳簿価額を、残存カバーに係る負債と発生保険金に係る負債の合計としており、残存カバーに係る負債は、将来の期間において契約に基づき提供されることとなるサービスに係る履行キャッシュ・フロー及び報告日の残存CSMで構成されています。

 発生保険金に係る負債は、まだ支払われていない発生保険金及び費用に係る履行キャッシュ・フローで構成されています。

 また、IFRSでは保険契約に再保険契約を付した場合においても、上記の残存カバーに係る負債と、発生保険金に係る負債について、金額の一部を控除する処理は行っていません。

 日本基準において、再保険貸借は再保険協約に基づき計上しています。

 また、新契約の一部(以下、出再契約)を対象として修正共同保険式再保険を行っており、出再契約にかかる新契約費の一部は再保険収入に含まれる出再手数料として収益計上し、未償却出再手数料として再保険貸に資産計上され、その後一定の期間において費用である再保険料を含む再保険収支に基づいて段階的に償却しています。

 IFRSでは、再保険協約に基づいてカバーを受ける際に、再保険契約グループごとに再保険契約負債を認識し、再保険者から回収した金額若しくは回収見込み額を再保険契約資産として認識しています。

 また、修正共同保険式再保険契約については、IFRS第17号における保険契約の定義を満たさないため、IFRS第9号に基づき会計処理を行っています。

 この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、保険契約資産が32,378百万円増加し、保険契約負債が59,783百万円減少し、再保険契約資産が4,126百万円減少し、再保険契約負債が696百万円減少しています。

 

(純損益又はその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産)

 日本基準において、一部の有価証券を「満期保有目的の債券」へ分類し、償却原価により測定していますが、IFRSでは「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産」へ分類し、公正価値にて計上しています。

 また、日本基準において一部の有価証券(金銭の信託において信託財産として運用している有価証券を含む)を「その他有価証券」へ分類し、帳簿価額と公正価値の差額をその他の包括利益に計上していますが、IFRSでは「純損益を通じて公正価値で測定する金融資産」へ分類し、公正価値の変動額を純損益に認識しています。

 この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、投資損益が387百万円増加し、その他の包括利益(税効果前)が1,084百万円減少しています。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2015年4月、KDDI株式会社(以下、「KDDI」)と資本業務提携契約を締結しました。また、2019年12月には、KDDIの金融事業に係る組織再編が行われ、KDDIが保有する全ての当社株式がauフィナンシャルホールディングス株式会社(以下、「auFH」)に承継されたことに伴い、auFHを加えた三社間で業務提携契約を締結しました。

 2022年8月には、auじぶん銀行株式会社(以下、「auじぶん銀行」)との間で団信に関する業務提携契約を締結しました。当業務提携契約に基づき、2023年7月より、当社はauじぶん銀行が提供する住宅ローンに係る団信の引受保険会社となり、auじぶん銀行の住宅ローン利用者向けに団信の提供を開始しました。

 また、2023年8月に、当社及びライフネットみらい株式会社(以下、「当社グループ」)と株式会社三井住友フィナンシャルグループ及び三井住友カード株式会社(以下、「SMBCグループ」)の4社間における資本業務提携基本契約を締結しました。付加価値の高い保険商品と決済サービスとの連携を通じて当社グループ及びSMBCグループのサービスを幅広いお客さまに提供し、デジタル保険マーケットを牽引することを目的としています。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。