第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

<経営方針>

 当グループは、お米を中心としたコアコンピタンスを強みに、「変化」と「イノベーション」によりさらに価値を磨き上げることで、独自価値を追求した事業構造へと変革し、持続的成長を目指します。創業以来、変わらない価値観として大切にしてきた「創業の心」「社是」「経営理念」「経営基本方針」はしっかりと引き継ぎつつ、時代の変化に合わせて変えるべきものとして、2023年、「Purpose」「Vision」「Value」を定義し、当グループの理念体系として再構築しております。

 全役員・従業員の心を一つにして、「Rice Innovation Company」の実現を通じて持続可能な社会に貢献してまいります。

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<中期経営計画等>

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・亀田製菓グループ「進化と勝ち筋」 中長期の事業構想

 亀田グループの存在意義は、お米の恵みを美味しさ・健康・感動という価値に磨き上げ、お客様価値としてお届けすることです。当グループが掲げるビジョン「ライスイノベーションカンパニー」の実現に向けて、当社のバリューを活かし、お米の可能性を最大限に引き出すことで、世界で新価値・新市場を創造していきたいと考えております。

 国内米菓事業のみならず、海外事業や食品事業への先行投資や技術移転によって展開国と事業領域を拡大しておりますが、将来的に蓄積していく技術やノウハウを強みに、国内外のパートナーシップを活用しながら成長し、アセットライトで高収益なビジネスモデルへの転換を目指しております。

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・事業規模の成長のロードマップ

 構造改革により早期に収益基盤を立て直し、2026年度までに安定的な収益体質へ転換(最高益)、その基盤をベースとした拡大戦略によって高収益の成長を目指してまいります。0102010_004.png

 

・中期経営計画骨子

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・事業セグメント別 戦略サマリー

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 これら長期のありたい姿、事業構想、経営戦略等からバックキャストで2024年度の経営方針及び目標を策定しており、その詳細については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ⑤ 経営戦略の現状と見通し」に記載しております。

 厳しい環境変化においても機会を見出し、グループビジョン「ライスイノベーションカンパニー」を実現し、企業価値向上につなげていきます。

 

※将来に関する留意事項

 将来の経営環境や業績予想に関する記述は、当社が現時点で入手可能な情報や計画策定の前提としている仮定などに基づくものであります。実際の業績は様々な要因によって予想値と異なる可能性があります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ推進に向けた全体像

当グループは、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティに対する取り組みを重要な経営課題として認識するとともに、事業機会の観点からもサステナビリティ対応の強化を掲げ、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでおります。当該活動の中で、当グループのサステナビリティ基本方針を以下のように定めております。

(サステナビリティ基本方針)

亀田製菓グループは、Better For You(お米の恵みを美味しさ・健康・感動という価値に磨き上げ健やかなライフスタイルに貢献する)の企業グループとして、「ライスイノベーションカンパニー」の実現を通じて持続可能な社会に貢献していきます。

上記サステナビリティ基本方針のもと、外部環境の変化が当グループの活動に与えるリスクおよび機会の両面から重要課題として人的資本および気候変動関連を特定し、その枠組みの中でガバナンス及びリスク管理について次のとおり取り組みをすすめております。

 

① ガバナンス

サステナビリティに対する取り組みについては、代表取締役会長CEOを責任者とする『サステナビリティ推進タスクフォース』において、サステナビリティに関する方針や各種課題の解決に向けた詳細な目標の設定、それらを実践するための体制および具体的な実行方法の立案、各種施策の運用状況のモニタリングなどを行っております。

なお、サステナビリティに関する重要課題の特定プロセスとしては、2021年度に外部環境が当グループ活動に与えるリスク面の観点から「サステナビリティ重要課題」を特定し、2022年度には、社内ワークショップにより重要課題(マテリアリティ)候補を抽出し、社内外の役員および社外のステークホルダーにより重要度評価を実施することで、経営全体の重要課題(マテリアリティ)へと見直しを行い、6つのカテゴリー・19の具体的課題に取りまとめ、目標および指標(KPI)を設定しました。

これら活動内容の進捗状況等については、『サステナビリティ推進タスクフォース』にて、定期的に取締役会に付議・報告することで、その重要課題への対応状況を取締役会が監督しております。

また、必要に応じてステークホルダーの視点も取り入れながら、より客観性および実効性の高い取り組みをすすめてまいります。

 

サステナビリティ推進体制

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② リスク管理

当社は、サステナビリティ課題を含む事業へのリスクおよび機会について、四半期ごとに開催する定例のリスク管理委員会で検討・モニタリングを実施しております。同委員会での審議内容や検討状況を取締役会に定期的に報告することで、リスク管理全般の統制管理を行っております。

なお、当社のリスクマネジメント体制の詳細は、「3.事業等のリスク」に記載しております。

 

(2)人的資本関係

① 戦略

当グループは、「人、自然、社会を思いやる気持ちを大切に、最高のアイデアと技術で、挑戦や価値創造を楽しめる人材集団」を目指しております。

目指す集団形成に向けて「事業基盤を支える人材の育成」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「従業員の心と体の健康経営」の3つを重要課題(マテリアリティ)として特定し、人材戦略を実行しております。

中長期成長戦略と連動した人材戦略を実践することにより、グループビジョン「ライスイノベーションカンパニー」を実現し、企業価値向上につなげていきます。

・重要課題(マテリアリティ)と人材戦略

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・中長期成長戦略と人材戦略との関係性

中長期成長戦略と連動した人材戦略を推進しています。

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上記人材戦略の達成のため、以下の施策をすすめてまいります。

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(注)「人材ポートフォリオ」における当グループが考える人材について

・イノベーター   … 新規事業や事業革新をリードする人材

・エキスパート   … 高度な技術・専門性をもった人材

・基盤人材(米菓) … これまで培ってきた知識・技術を生かして成果に結びつけられる人材

 

② 指標及び目標

上記の戦略の中で識別した、重要課題(マテリアリティ)にもとづく、施策および目標、指標(KPI)は以下のとおりであります。

重要課題

(マテリアリティ)

施策および目標、指標(KPI)

2022年度実績

2023年度実績

2030年度目標

従業員の心と体の健康経営

(注)1

セルフケア・ラインケアの充実

内部通報・相談窓口設置

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン (注)2

女性管理職比率

15.6%

13.8

30

女性監督職比率

13.4%

13.8

30

男性育児休業取得率

51.7%

62.1

80

男女間賃金格差

68.1%

67.2

80

事業基盤を支える人材の育成 (注)2

人財育成投資の推進

2021年度比

27.8%増加

2021年度比

52.2%増加

2021年度比

80%増加

当社はグループ各社と連携して人的資本経営の重要課題に取り組んでおりますが、具体的な実績及び目標に関しては以下の数値を記載しております。

(注)1.当社および一部国内連結子会社

2.当社

 

(3)気候変動関係

 農産物を主原料とする当グループにとって、サプライチェーンに重大な影響を与える可能性のある気候変動への適切な対応は、優先度の高い重要課題であると考え、2021年11月にTCFD※1(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場であるTCFDコンソーシアム※2に加入しております。

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※1TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース):Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略。G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。

※2TCFDコンソーシアム:TCFDに関する企業の効果的な情報開示や適切な取り組みについて議論を行う目的で2019年に設立。

 

① 戦略

a.シナリオ分析

 気候変動によるリスクおよび機会の特定にあたり、当グループにおける製品およびサービスの調達・生産・供給までのバリューチェーン全体を対象として、国際機関等が公表するシナリオをもとに4℃シナリオと2℃シナリオの2つの将来世界観を整理し、2030年時点における当グループへの影響を考察するとともに、それぞれの世界観におけるリスクおよび機会を特定しております。

 

4℃シナリオ、2℃シナリオにもとづく将来世界観

4℃シナリオ

2℃シナリオ

気候変動対策への取り組みは現行の政策や規制以上の進展がなく、化石燃料由来のエネルギーが継続的に使用されることによって温室効果ガス排出量が増大し、産業革命期頃と比較して、2100年頃までに地球平均気温が4℃以上上昇する将来予測。台風や豪雨をはじめとする異常気象の激甚化や、慢性的な気温上昇に伴う作物生育への悪影響といった、気候変動による直接的な被害が増加するのに対し、法規制や税制という形での市場への締め付けは強化されないため、移行リスクとしての影響度は小さい。

世界規模でのカーボンニュートラルの達成に向けて低炭素化が推進され、世界の平均気温が2℃程度の上昇に抑えられる将来予測。脱炭素化に向けた厳しい法規制や税制が施行され、温室効果ガスの排出量が抑制されることにより、気温上昇が抑制され異常気象等物理的リスクの規模や頻度は4℃シナリオに比べ縮小するものの、脱炭素化に向けた社会構造の変化に伴い、移行リスクは高まる。

(参考シナリオ)

IPCC(気候変動に関する政府間パネル):RCP8.5

IEA(国際エネルギー機関):STEPS

(参考シナリオ)

IPCC(気候変動に関する政府間パネル):RCP2.6

IEA(国際エネルギー機関):SDS/NZE2050

 

 重要課題となり得るリスク項目の中で定量的な分析が可能な項目については、2030年時点における財務インパクトを推定し、4℃シナリオにおける「生産工場に対する物理的被害の拡大」および「プラスチック製包装資材の価格上昇」、2℃シナリオにおける「カーボンプライシングの導入によるコスト増加」が特に大きな影響を及ぼす可能性があることを確認しております。

 なお、当グループの主原料である米の収量および価格の分析にあたり、外部機関が開示する将来予測パラメータでは、空気中の二酸化炭素濃度の上昇が米の生育に寄与するほか、気温上昇による生産地拡大などにより収量の増加および販売価格が低下すると予測されており、各将来予測シナリオにおける米価格予想、平均収量の推移、消費生産バランス等の要素から試算した結果、仕入れコスト減少の可能性を確認しております。

 一方で、水田の水温上昇などに伴い品質低下が見込まれていることから、こうした米を原料にしながらもおいしい米菓を引き続きお客様にお届けできるよう、製品開発や社会貢献の可能性を模索するのが当グループの役割であり、既存の取り組みを継続・加速するとともに、新たな対応策の検討も推進していきます。

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 また、リスクのみならず、当グループで展開するプラントベースフードやECOパッケージ化の推進は、気候変動が進む世界観においてもエシカル消費をはじめとするお客様の新たなニーズに応える製品群として事業機会の可能性を確認しております。リスクへの対応策をはじめとする具体的な既存の取り組みについては、統合報告書や当社ホームページで開示しているほか、今回のシナリオ分析を踏まえ、さらなる具体的な対応策を各事業で検討・立案し、不確実な将来世界に対するあらゆる可能性について備えていきます。

 

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b.具体的な取り組み

・CO2排出量・エネルギー使用量の削減

 新潟県内の4工場すべてにおいて、基幹設備のA重油・LPガスから都市ガスへのエネルギー転換を実施したことに加え、2022年8月より東北電力株式会社が提供する水力発電所で100%発電されたCO2フリーの再生可能エネルギー電気「よりそう、再エネ電気」を亀田工場に、2023年8月には水原工場にも導入しました。

 さらに、トラック輸送からCO2排出量の少ない鉄道貨物輸送などへ切り替えるモーダルシフトを推進し、「エコレールマーク」取り組み企業として認定されています。

 今後も、熱効率の高い焼成設備への更新や排熱の再利用、モーダルシフトの推進などにより、CO2排出量・エネルギー使用量の削減に取り組みます。

 

・プラスチック使用量の削減

 2030年度までに全商品のECOパッケージ化などにより、当社および国内連結子会社のプラスチック使用量を2017年度比30%削減することを目標に掲げております。

 具体的には、包装技術の向上に取り組むことで、製品の破損を防止するために使用していたプラスチックトレーを廃止するとともに、製品パッケージをスリムにするECOパッケージ化を推進、さらに、包装サイズ変更や、個包装に頼らない商品開発により、プラスチック使用量の削減に取り組んでおります。

 なお、ECOパッケージ化の推進により、配送時の積載効率の改善にもつながっております。

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・お客様の嗜好変化への対応

 食生活が生み出す環境負荷に対するお客様の意識は確実に変化しております。更には、自然災害の増加や新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、お客様の防災意識・健康意識の高まりに対して、当グループが扱う長期保存食やプラントベースフード、アレルゲン28品目不使用の米粉パン、植物性乳酸菌などは、そうしたお客様のニーズに対応する製品であり、社会課題の解決に寄与するものと考えております。

 当グループは、お米の恵みを美味しさ・健康・感動という価値に磨き上げ健やかなライフスタイルに貢献する 「Better For You」企業となるため、食品事業を国内米菓事業、海外事業と並ぶ三本目の柱とするべく、長期視点でシーズの獲得や育成を進め、早期の事業拡大に取り組んでまいります。

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② 指標と目標

 当社は、気候変動課題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス総排出量を指標とし、当社における2030年度の温室効果ガスの総排出量を40%削減(2017年度比)する目標を設定しております。

 また、当グループですすめるプラスチック使用量の削減はScope3における温室効果ガス排出量の削減のみならず、消費財を扱うメーカーとして優先的に取り組むべき重要課題として認識しており、製品のプラスチックトレーの廃止、およびパッケージをスリムにするECOパッケージ化、さらに、包装サイズ変更や、個包装に頼らない商品開発を行うことでプラスチック使用量の削減をすすめております。2030年度までには当社の全製品をECOパッケージ化するとともに、プラスチック使用量を30%削減(2017年度比)することを目標に掲げております。

 

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3【事業等のリスク】

(1) 当社のリスクマネジメント体制

 リスク管理の対応については、当社のリスク管理委員会が中心となってリスクの把握・対応を行っております。同委員会は原則として四半期に1回以上開催し、「亀田製菓グループリスク管理規程」にもとづき、当社およびグループ各社の事業活動を継続するにあたって、経営に対し重大な影響を及ぼすと想定されるリスクの予見と未然防止策の検討を行うとともに、外部専門家を講師とする「危機管理セミナー」を開催し、役職員の危機対応への意識向上にも努めております。万一、係るリスクが現実のものとして顕在化した場合には、直ちに危機対策本部を設置し、「危機管理マニュアル」に定められた手順に沿って迅速に適切な対応と情報開示を行うこととしております。

 また、当グループは、グローバル化等に伴うリスクの高まりに対し健全に牽制する経営体制の構築・社外取締役による高度なモニタリングモデルの実現を図るため、取締役会について取締役の過半数を独立性の高い社外取締役で構成しております。さらに、監査役会設置会社として、監査役の機能を有効に活用しながら経営に対する監査・監視機能の強化を図っております。

 加えて、当グループは、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティに対する取り組みを重要な経営課題として認識しており、人的資本や気候変動等に関するリスク管理についても経営レベルで行っております。

 

(2) 主要な事業等のリスク

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、◎印を付したリスクについては、特に重要なリスクとして認識しております。

 また、以下に記載したリスクは当グループの全てのリスクを網羅したものではなく、これ以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中の記載内容および将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

リスク

対応策

基幹プロセスリスク

原材料及び商品の安全(◎)

 

・原材料や製造工程のトラブルによる生産活動の停止

・上記に起因した製品の回収や販売の中止など

・品質保証委員会を中心とした品質保証体制の強化

・グループ品質保証担当者会議の開催

・食品安全管理体制構築のための「FSSC22000」(食品安全マネジメントシステムの国際規格)の取得

資金調達

 

・金融市場の不安定化、金利上昇による資金調達コストの増加

・国内金融機関において100億円のコミットメントラインの設定

・一部の海外子会社が利用できる総額25億円のグローバルコミットラインの設定

有形固定資産、無形固定資産

 

・事業環境の変化及び業績低迷による減損損失の発生の可能性

・社内基準に基づく経済合理性の検討

・投資時における厳格なリスク管理

・投資実行後の投資効果について継続的モニタリング

退職給付債務等

 

・計算基礎率の変動による貸借対照表計上額の変動

・退職給付制度の変更による追加負担の発生

・経済、金融動向のモニタリング

・外部研修への参加
・当社監査部による監査体制強化

新会計基準の適用、会計基準の変更および税制改正等

 

・新会計基準の適用、会計基準の変更および税制改正等による、既存会計処理からの変更

・外部研修への参加
・当社監査部による監査体制強化

買収(M&A)等の投資

 

・買収後における偶発債務や未認識債務の発生

・のれん発生による償却費用負担増加

・買収後の業績低迷による減損損失の発生の可能性

・詳細なデューデリジェンスの実施

・当社からの基幹人材の派遣

・当社による、管理・統括・運営面でのサポート

・当社監査部による監査体制強化

 

 

 

リスク

対応策

災害事故リスク

情報セキュリティ(◎)

 

・災害等によるシステムの作動不能や内部データの消失

・想定外のサイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスの感染等による、社内情報の漏洩、改ざん等

・システム変更によるシステム停止、障害等

・情報の適切な保存・管理に向けた「文書保存規程」「個人情報保護管理規則」「亀田製菓グループ情報管理規程」「亀田製菓グループ情報システム規程」など各種規程を整備

・定期的なセキュリティ専門会社による外部評価の実施と評価にもとづく個別対応

・老朽化した通信機器の定期交換

・役員、従業員向けの定期的な情報セキュリティ研修の実施

・旧システムとの並行稼働

自然災害、パンデミック、大規模な事故(◎)

 

・経営インフラが新潟県下越地方に集中することによる、生産拠点および販売拠点の喪失や、従業員等への安全等の被害、サプライチェーンの寸断等

・火災等の大規模事故による信用低下

・「危機管理マニュアル」の整備

・リスク別対応フロー、BCP(事業継続計画)の策定および随時見直し

・従業員安否確認システムの導入および定期的な訓練の実施

・生産拠点など主要施設の耐震補強

・火災や自然災害等を想定した防災訓練の実施

これらの対策を超えた被害が発生するリスクについても継続して研究を行い、可能な限り被害を最小化し、当グループの業績および財政状態への影響を低減することに努めております。

環境(◎)

 

・気候変動への対応

詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組

(3)気候変動関係」をご参照ください。

外部環境リスク

サプライチェーン(◎)

 

・主な原料は農産物であり、気候、作柄、相場などによって、調達量や調達価格に影響

・原材料全般における、需給動向や原油価格などによる調達価格への影響

・物流起因による商品供給の不安定化

・原材料の品種や産地などの分散調達による安定した数量の確保と特定の調達先への集中回避

・品種や産地が特定される原材料等については、複数年契約の締結

・在庫の分散化

・デジタル化推進による物流効率化

流通の変化と競合等(◎)

 

・業界や特定企業の経営状態や販売政策などの変化による販売機会の減少、販売価格の低下

・競合企業による新商品の投入や販売促進活動による商品の陳腐化、販売機会の減少

・フィールドスタッフを配置することで小売店へのきめ細かなフォロー

・提案型営業によるお客様目線での売り場づくりとサポート

・新商品開発体制の強化

海外事業の状況(◎)

 

・国または地域において、経済状況、政治、社会情勢等の著しい変化、食品の安全性、気候変動、自然災害の発生による需要の減少、操業の中断、供給不足など

・為替レート変動に伴う業績変動

・当社から海外グループ会社への基幹人材の派遣

・当社海外事業本部による、海外グループ会社の管理・統括・運営面でのサポート

・当社監査部による海外グループ会社の監査体制強化

 

 

 

リスク

対応策

外部環境リスク

人材確保・育成(◎)

 

・雇用情勢の変化や国内の少子高齢化による労働人口の減少

・事業活動に必要となる優秀な人材の確保難や育成計画の遅れ

・イノベーター、エキスパート人材の育成

・グローバルKAMEDAで活躍できる人材の育成

・従業員の自律、成長、親和、喜びを生み出す基盤づくり

・多様な価値観を尊重し、挑戦を後押しする組織風土

コンプライアンスリスク

法的規制等

 

・海外進出先の現地法令を含む法的規制の強化、新たな規制の施行などにより事業活動が制限

・重大な法令、規則違反

・人権問題(強制労働、ハラスメント等)による、訴訟の発生や退職者の増加

・当社関連部門によるサポート

・当グループのコンプライアンス委員会の開催

・当社監査部による監査体制強化

・外部研修への参加

・内部通報の体制整備

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は34,208百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,941百万円の増加となりました。これは主に、「現金及び預金」が941百万円、「受取手形、売掛金及び契約資産」が1,460百万円、「商品及び製品」が196百万円、「原材料及び貯蔵品」が163百万円、「その他」が207百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定資産は86,302百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,386百万円の増加となりました。これは主に「建物及び構築物」が801百万円、「建設仮勘定」が906百万円、「投資有価証券」が2,394百万円、「退職給付に係る資産」が4,197百万円それぞれ増加した一方、「機械装置及び運搬具」が995百万円、有形固定資産の「リース資産」が538百万円それぞれ減少したことによるものであります。

この結果、総資産は120,510百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,328百万円増加となりました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は29,856百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,134百万円増加となりました。これは主に「短期借入金」が2,618百万円、「未払法人税等」が602百万円、「その他」が723百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定負債は16,934百万円となり、前連結会計年度末に比べ528百万円の減少となりました。これは主に「繰延税金負債」が1,769百万円増加した一方、「長期借入金」が2,281百万円減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は46,791百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,606百万円増加となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は73,718百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,722百万円の増加となりました。これは主に「親会社株主に帰属する当期純利益」2,257百万円及び「剰余金の配当」1,159百万円により「利益剰余金」が1,097百万円増加したことや、「為替換算調整勘定」が1,402百万円、「退職給付に係る調整累計額」が2,228百万円、「非支配株主持分」が638百万円それぞれ増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は58.0%(前連結会計年度末は58.3%)となりました。

 

b.経営成績

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前連結会計年度比

(%)

(百万円)

(百万円)

売上高

94,992

95,534

0.6

営業利益

3,564

4,467

25.3

経常利益

5,215

6,798

30.4

親会社株主に帰属する当期純利益

1,892

2,257

19.2

 

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇により個人消費が一進一退の展開となる一方で、外需の拡大がけん引し、底堅い成長を続けています。

企業部門については円安の進行もあって、原材料やエネルギー価格の高騰が解消されておらず、企業収益の下押し要因となっています。

国内の食品企業においては、これらの経済環境を踏まえ、厳しい舵取りが続いています。

 

こうした中、当グループは、経営環境の変化を踏まえて再構築した「中長期成長戦略2030」の実行に向けて取り組んでいます。お米の恵みを美味しさ・健康・感動という価値に磨き上げ、お客様の健やかなライフスタイルに貢献する、「Better For You」をパーパス(存在意義)として位置づけ、お米の可能性を最大限に引き出し、世界で新価値・新市場を創造する姿、ビジョン(目指す姿)「ライスイノベーションカンパニー」の実現を通じて持続的な成長と企業価値向上を目指しています。

 

これまで国内米菓事業で培った技術やノウハウなどの事業基盤をベースとして、海外事業ならびに食品事業への先行投資を通じて事業領域の拡大に取り組んでいますが、将来的にはこれらの取り組みにより蓄積する技術やノウハウを強みに、アセットライトで高収益なビジネスモデルへの転換を目指しています。2026年度までにグループの収益基盤を整え、以降はその強固な基盤のうえに、もう一段の事業拡大を図ることで2030年度に向けた持続的な成長と企業価値向上に取り組んでいきます。

中計初年度にあたる2023年度は、多様化する社会のニーズに応え、社会課題の解決に資する商品開発などを通じ、お客様に価値を提供し続ける企業を目指し、構造改革の実行と、経営基盤の強化に取り組みました。

 

国内米菓事業については、外出型消費の回復により、需要は底堅く推移しています。商品の独自性を高めた価値訴求型の競争戦略へと転換を図りつつあり、その中で、原材料やエネルギー価格の高止まりを踏まえ、価格改定や規格変更を実施する等、収益確保に取り組みました。

重点ブランドである「亀田の柿の種」は、「いつでも・どこでも・だれとでも楽しめるお菓子への進化」を目指してリニューアルを実施、新商品を訴求するテレビCMの放映やそれに連動して店頭露出の強化を図るなどブランド価値の深化に努めました。「亀田のつまみ種」は期間限定商品の発売により需要喚起に取り組むとともに、「ハッピーターン」「無限」シリーズは人気スマートフォンアプリゲームとのコラボレーションキャンペーンを実施するなど若年層獲得に向けた取り組みも継続的に推進しています。また、当社が培ってきた「お米」の加工技術を活かした新価値商品の育成に取り組むなど、ブランド価値の深化と商品価値の進化の両輪で取り組みをすすめました。加えて、商品戦略に連動する形で、生産能力増強や適正価格販売、販売促進費用の効率的な執行等、価値訴求に軸足を置いた活動を展開しました。

これらの取り組みの結果、重点4ブランドの売上高については「無限」シリーズが前期を上回った一方、上期に生じた在庫不足の影響でプロモーション等を一時的に抑制したこともあり、「亀田の柿の種」「ハッピーターン」「亀田のつまみ種」は前期を下回りました。

なお、百貨店向け商品や土産物用商品を製造販売するグループ会社は、コロナ禍からの正常化に伴う市場回復効果もあり増収となりましたが、単体米菓の減収を補えず、国内米菓事業全体の売上高は前期を下回りました。

 

海外事業については、北米のMary’s Gone Crackers, Inc.は生産活動の立て直しや供給体制の正常化を図り、事業基盤の立て直し、値上の実行、販路拡大等、収益改善に向けた取り組みをすすめました。一方アジアは総じて好調に推移し、その中でもベトナムのTHIEN HA KAMEDA, JSC.における堅調な国内需要およびクロスボーダー取引拡大などが寄与し、海外事業全体の売上高は前期を上回りました。

 

食品事業については、プラントベースフードで植物性原料100%のサラダチキンを発売し、取り扱い拡大に取り組むとともに、アレルゲン28品目不使用の米粉パンは、米粉ならではの食感等の品質を訴求し、個人向けに加え業務用の取り扱い拡大にも着手しました。また、植物性乳酸菌については、機能性を訴求し差別化を図ることで販路拡大に取り組みました。長期保存食については、前期に地震等の影響で高まった個人需要やコロナ禍による各自治体の在宅治療支援物資に採用された反動減がありましたが、年度後半、能登半島地震等に伴う需要の高まりもあり増収となりました。これらの結果、食品事業全体の売上高は前期を上回りました。

 

以上の結果、売上高は95,534百万円(前期比0.6%増)となりました。

 

営業利益については、単体米菓における商品の価格改定、規格変更に加え、重点4ブランドの成長に向けたセールスプロモーション活動や生産能力増強によりプロダクトミックスの改善に取り組むとともに、販売促進費の効率的な執行、商品の絞り込みや外部生産委託の活用など生産効率の向上に継続的に取り組んだ結果、収益性は着実に改善し、前期比で増益となりました。さらに、百貨店向け商品や土産物用商品を製造販売するグループ会社については、人流回復による増収効果もあり、国内米菓事業全体では前期比で増益となりました。

 

海外事業については、Mary’s Gone Crackers, Inc.がオペレーションの正常化を図るプロセスにおいて、一時的に構造改革費用が発生し減益幅が拡大しましたが、THIEN HA KAMEDA, JSC.において国内販売に加えクロスボーダー取引が拡大する等、アジア地域が総じて好調に推移し、同地域では着実な利益成長を果たした結果、海外事業全体では前期比で損失縮小となりました。

 

食品事業については、長期保存食の個人需要の反動減影響を第4四半期の需要増でも補いきれなかったことに加え、プラントベースフードの規模拡大に向けた先行投資の影響もあり、前期比で減益となりました。

これらの取り組みの結果、営業利益は4,467百万円(前期比25.3%増)となり、本業の稼ぐ力が着実に回復しています。

また、経常利益については、持分法適用関連会社であるTH FOODS,INC.の持分法による投資利益が減少しましたが、営業増益に加え円安に伴う一時的な為替差益が発生した結果、6,798百万円(前期比30.4%増)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益については、Mary’s Gone Crackers, Inc.に起因して特別損失を計上しましたが、経常増益に加え子会社の工場建設に関して補助金を計上した影響もあり2,257百万円(前期比19.2%増)となりました。

② キャッシュ・フローの状況

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

増減

(百万円)

(百万円)

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

8,285

9,730

1,445

投資活動によるキャッシュ・フロー

△8,442

△8,140

301

財務活動によるキャッシュ・フロー

972

△1,255

△2,227

現金及び現金同等物に係る換算差額

214

133

△80

現金及び現金同等物の期末残高

6,974

7,442

467

 

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ467百万円増加し、7,442百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は9,730百万円(前期比1,445百万円の収入増加)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益に、減価償却費や減損損失等の非資金項目、退職給付に係る資産や売上債権等の営業活動に係る資産及び負債の増減、法人税等の支払額を加減算したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は8,140百万円(前期比301百万円の支出減少)となりました。

これは主に、有形固定資産の取得による支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は1,255百万円(前期は972百万円の収入)となりました。

これは主に、短期借入金の純増減額や長期借入金の返済による支出、配当金の支払額によるものであります。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは1,590百万円となりました。

 

 キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

自己資本比率(%)

61.6

62.7

61.3

58.3

58.0

時価ベースの

自己資本比率(%)

121.5

109.4

81.0

83.3

74.7

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率(年)

1.8

1.8

2.3

2.8

2.4

インタレスト・

カバレッジ・レシオ(倍)

59.8

91.6

191.4

71.0

131.1

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

3.キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを利用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

4.2023年3月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2022年3月期に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させています。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

数量(屯)

金額(百万円)

国内米菓

68,911

63,613

97.2

海外

17,334

12,951

119.8

食品

4,041

5,730

94.4

報告セグメント計

90,287

82,295

100.0

その他

合計

90,287

82,295

100.0

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去前の金額を記載しております。

2.記載金額は販売価格で表示しております。

 

b.受注実績

 当グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

金額(百万円)

国内米菓

66,307

97.9

海外

15,096

109.8

食品

7,278

103.0

報告セグメント計

88,682

100.2

その他

6,852

105.9

合計

95,534

100.6

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.財務戦略の基本的な考え方

当グループは、盤石な財務基盤を維持しつつ、「ライスイノベーションカンパニー」の実現に向け国内外での投資と株主に対する利益還元のバランスを重視しております。

盤石な財務基盤の維持に関しては、自己資本比率の水準を60%程度に保っているほか、国内金融機関におけるコミットメントライン等の資金枠を確保しており、機動的な資金調達ができる体制を構築しております。

同時に、適切な情報開示・IR活動を通じて株主資本コストの低減に努めるとともに、営業キャッシュ・フローによる十分な債務償還能力を前提に、資金調達には負債の活用もすすめることにより、資本コストの低減および資本効率の向上にも努めてまいります。

設備投資に関しては、企業価値の向上に資する成長のための投資を積極的に推進してまいります。2023年度から2026年度の4年で430億円のキャッシュ・フローを創出し、通常投資と株主還元はこの範囲内で行ってまいります。なお、各年度の設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則とし、盤石な財務基盤を維持し、十分な水準の手元流動性を確保してまいります。

また、KAMEDA3.0で掲げるアセットライトなビジネスモデルの実現に資するM&Aなどの戦略投資については、案件の質や規模に応じて最適な手段で外部から資金調達をしてまいります。

 

b.経営資源の配分に関する考え方

当グループは、「ライスイノベーションカンパニー」の実現に向け、国内外での投資と株主に対する利益還元のバランスを重視しております。

投資については、各年度の営業キャッシュ・フローの範囲を原則とし、菓子の製造販売事業で創出した資金を、事業領域の拡大を目指す海外事業、食品事業へ配分することとし、投資効率を高める目的からハードルレート8%を目安に投資基準を厳格化し、案件ごとに判断する形としております。

株主に対する利益還元については、中期経営計画を実行し収益の拡大を図ることで、株主還元の安定的拡大を目指し、配当性向は、当面は30%を一つの目安として考えております。

 

c.資金需要の主な内容

当グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、主に米菓の製造に関わる原材料費、運賃、製造費用(生産に関わる償却費、賃借料、保険料など)、販売費(販売業者へ支払うリベートや、販売促進費用)、人件費などがあります。

また、投資活動に係る資金支出は、食品の安全、安心のために不可欠な設備や施設への投資、製造原価低減のための構造改革投資などの設備投資のほか、海外における事業領域の拡大に向けた生産能力の増強や新規製販拠点の設立などがあります。

d.資金調達

当グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金および外部資金を有効に活用しております。

資金需要の主な内容に記載している運転資金および投資資金などの調達に当たっては、主に国内金融機関からの借入を活用しております。

また、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しております。加えて盤石な財務基盤を有していることから、当グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しております。

機動的な資金枠を確保するため、国内金融機関において100億円のコミットメントラインを設定しているほか、一部の海外子会社が利用できる総額25億円のグローバルコミットメントラインを設定し、機動的な資金調達ができる仕組みを確保しております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

⑤ 経営戦略の現状と見通し

当グループは、「中長期成長戦略2030」において、お米の可能性を最大限に引き出し、世界で新価値・新市場を創造する「ライスイノベーションカンパニー」をビジョン(目指す姿)として掲げ、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。

2025年3月期は、実質賃金の改善による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の増加などが期待されます。一方で、為替相場の変動、原材料やエネルギー価格の上昇に伴う物価上昇が及ぼす個人消費の停滞懸念など先行き不透明感がぬぐい切れていません。

このような環境下において、国内米菓事業は量的成長(価格訴求)から質的成長(価値訴求)への転換の流れを加速するべく、重点6ブランド・高付加価値商品の強化、外部連携を含めた生産能力の増強、付加価値営業の推進による効率的販売体制の構築などサプライチェーンの最適化に取り組んでいきます。海外事業は、黒字化の実現に向けてアジアではクロスボーダー取引の更なる推進と自社ブランド展開強化、北米は事業の再構築に注力します。食品事業は、長期保存食では民需を中心とした販路拡大と生産能力の増強、米粉パンとプラントベースフードはマーケティング・販売機能の見直しを通じた売上の拡大に取り組みます。さらに、機能性食品は海外を含めた販路拡大に加えて新たな機能性素材の市場投入を図ります。

 

連結業績見通しにつきましては、売上高は100,000百万円(前期比4.7%増)、営業利益4,500百万円(前期比0.7%増)、経常利益5,700百万円(前期比16.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,900百万円(前期比28.5%増)を予想しています。

また、業績見通しの前提となる為替レートにつきましては、1US$=140.0円、1CNY=20.0円、1THB=4.0円、1VND=0.0060円を想定しています。

 

また、これまで同様に収益性向上を第一義としつつも、株主様への安定的な配当原資の確保と、成長企業として再投資サイクルを重視することから、キャッシュ創出力を示すEBITDAを重要指標に位置付けております。成長投資を優先しながらも、利益成長を実現することで中長期的に株主資本コストを上回るROEを目指していきます。

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<2024年度 事業別重点戦略>

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※将来に関する留意事項

将来の経営環境や業績予想に関する記述は、当社が現時点で入手可能な情報や計画策定の前提としている仮定などに基づくものであります。実際の業績は様々な要因によって予想値と異なる可能性があります。

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.固定資産の減損

 当グループが減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境などの外部要因に関する情報や当グループが用いている内部の情報(予算など)と整合的に修正し、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。当該見積りには、売上高に影響する米菓に関連する市場成長率の見込などの仮定を用いております。中期経営計画の見積期間を超える期間の将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値に、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえて見積っております。

 当グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※6 減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(2,368百万円)を計上いたしました。

 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。

 なお、Mary’s Gone Crackers, Inc.が保有する固定資産の評価方法に関する詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

b.繰延税金資産の回収可能性

 当グループは、繰延税金資産の回収可能性については、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。

 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するに当たっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当グループが用いている内部の情報(過去における中期経営計画の達成状況、予算など)と整合的に修正し見積っております。当該見積りには、売上高に影響する米菓に関連する市場成長率の見込などの仮定を用いております。

 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

c.退職給付債務及び費用の算定

 当グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、将来の給与水準、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社及び国内子会社の年金制度においては、割引率は国債の利回りに基づき、長期期待運用収益率は、現在及び予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在及び将来期待される長期の収益率を考慮して決定しております。

 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る資産(負債)及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) (9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。

 

d.返金負債及び変動対価の算定

 当グループは、変動対価の算定に際して、販売額に対する値引き、割戻し、返品等を含む変動対価の割合は過去の実績と概ね整合するとの仮定のもと、過去の実績率に基づき、将来発生見込額を見積っております。

 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する返金負債及び変動対価の金額に重要な影響を与える可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当グループは、お米を主たる原料とした事業を展開しており、お米に関する研究開発の長年の経験を有しております。その経験を活かし、お米の可能性を最大限引き出し、世界で新価値・新市場を創造する「ライスイノベーションカンパニー」を目指すため、食品開発研究所を中心にグループ会社と共同で、「お米が持つ無限の可能性」の研究に取り組んでおります。

食品開発研究所では、おいしさ、機能性、新素材、生産技術などに関わる幅広い研究を実施しており、現在、機能性素材研究、食品開発研究、メディカル開発研究を、米菓スナック開発部においては、米菓製造に関する研究開発を行っております。

 

(1) 機能性素材の研究開発

「お米由来」の植物性乳酸菌「K-1」「K-2」や、米タンパク質、米ペプチドの基礎研究を行っております。また、産学官連携として、新潟大学や京都大学、信州大学、九州大学などとそれぞれの機能性について共同研究を行い、当グループ外の知見を活かしつつ、さらなる可能性の追求に取り組んでおります。

なお、植物性乳酸菌については海外展開もすすめております。

※整腸作用と肌の保湿効果のある「K-1」、アトピー性皮膚炎や花粉症への抗アレルギー作用と免疫賦活作用のある「K-2」は、長年にわたるお米の研究により生まれた「お米由来」の植物性乳酸菌であります。

 

(2) 食品開発研究

アレルゲン28品目不使用の米粉パンや米粉クッキーの研究開発や、健康意識の高まりやタンパク質クライシスなど社会課題に寄与すると考えるプラントベースフードの研究開発、タンパク質の加工技術の研究など、グループ会社と共同で行っております。

なお、2023年10月に、グループ会社の株式会社マイセンファンフードより日本初となる植物性100%のサラダチキン『植物生まれのグリーンチキン』シリーズを発売しました。

 

(3) メディカル開発研究

自然災害の増加による防災意識の高まりや高齢化社会のニーズなど社会課題に寄与すると考える災害食や低たんぱく質米飯、おかゆなどの研究開発に取り組んでおります。

 

(4) 米菓製造に関する研究

技術革新による新商品開発や、生産の省人化に向けた研究、海外展開に向けた研究開発、食品開発研究所とともに食感や味覚の可視化などに取り組んでおります。なお、社会課題に対応した減塩商品の開発や、品質保証部とともに安全・安心な商品開発、フードロス削減のための賞味期限の延長にも取り組んでおります。

 

以上の結果、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は1,124百万円となりました。

なお、当グループの行っている研究開発活動は各セグメントに共通するものであり、各セグメントに関連づけて記載しておりません。