当社グループは、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念のもと、技術革新が速く活発なエレクトロニクス産業の中で、半導体製造装置のリーディングカンパニーとして、ビジネスを積極的に展開しております。
① 経営方針
当社グループは、技術専門商社からスタートし、開発製造機能をもつメーカーへの移行、グローバルな販売・サポート体制の構築など、事業環境の変化をいち早く捉え、その変化に素早く応えることにより、世界の市場に高い付加価値をもつ製品・サービスを提供してまいりました。また、当社は、技術革新が新たな価値を生み、継続的な市場拡大が見込まれる事業領域において、時代をリードする独創的な技術を創出し成長を続けてきました。
当社の原動力は、業界のリーディングカンパニーとして育んだ豊かな技術力、確かな技術サービスに基づくお客さまからの信頼、そして環境変化に柔軟かつ迅速に対応できる社員と、そのチャレンジ精神です。
今後も、当社のもつ専門性と最新技術を活かして事業を推進し、夢と活力のあるワールドクラスの高収益企業を目指すとともに、世の中の持続的な発展を支えるために不可欠な半導体の技術革新に貢献してまいります。
② ビジョン
当社グループのビジョンは「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」です。
当社グループは、世の中の持続的な発展を支える半導体の技術革新を追求します。当社の専門性を生かし、付加価値の高い最先端の装置と技術サービスを継続的に創出することで、中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上を目指していきます。
そして、企業の成長は人、社員は価値創出の源泉と位置づけ、ステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、このビジョンの実現に向けて活動してまいります。
③ 事業環境
情報通信技術の進化とともにデータ社会への移行が進む中、デジタル技術の活用と応用が様々な産業や分野において拡がっています。そして、これを支えるのが半導体の技術革新です。大容量、高速、高信頼性、低消費電力など、半導体の進化に向けた技術の追求は止まりません。トランジスタの誕生から76年。半導体デバイス市場は、2023年に約5,300億ドル(注)1になりましたが、2030年頃には1兆ドル(注)2へと、現在の2倍に相当する高い伸びが見込まれております。当社グループが参入する半導体製造装置事業は、社会の重要インフラである半導体を支え、夢のある社会の発展に向け、今後も大きく成長していくものと予想しております。
(注)1 世界半導体市場統計(WSTS)
(注)2 当社による試算
④ 中長期的な成長を見据えた取り組み
当社グループは、将来の成長と発展を目指すため、2022年6月に、2027年3月期を目標年度とする中期経営計画を発表しました。半導体市場及び半導体製造装置市場の大きな成長が見込まれる中、中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上を追求するマイルストーンとして、この中期経営計画を位置付けております。

また上述の中期経営計画の達成に向けた取り組みに加え、ワールドクラスの利益の創出とさらなる企業価値の向上を目指し、今後5年間の成長投資、人材投資の計画を2024年2月に以下のとおりアップデートいたしました。
・研究開発投資:1.5兆円以上(5年累計)
・設備投資:7,000億円以上(5年累計)
・人材採用:グローバルで10,000人の採用(5年累計)
■ 人材に関する取り組み
「企業の成長は人。社員は価値創出の源泉」という考えのもと、社員のやる気と会社へのエンゲージメントを重視した経営に取り組んでいます。

これらを社員と共有するとともに、定期的なエンゲージメントサーベイを進めることにより、社員の高い能力とやる気を引き出し、世の中の持続的な発展を支える半導体の技術革新に貢献することで夢と活力のある会社の維持向上に努めます。
また、将来の成長機会を取り込むために積極的な採用を継続していくとともに、Global、Generation、Genderの3Gの観点を意識しながら、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの向上に取り組んでまいります。そして、組織として膨張ではなく適切な成長を実現するため、業務の効率化、平準化を進め、社員一人一人のワークライフバランスの向上を図るとともに、様々なキャリアパスを示した上で、並行して教育プログラムの充実化を図り、社員の成長を支えてまいります。
加えて、次世代の経営執行を担う人材を育成するため、「TELサクセッションプラン」に基づき後継候補者の育成をおこなっております。指名委員会はその育成状況を分析、精査の上、取締役会に報告するとともに、取締役会は後継者育成プランが適切に実行されるよう監督しております。
社内のこうした取り組みとともに、社外においても将来の半導体人材の育成に取り組んでおります。当社は日米の大学によって構成される「半導体の人材育成と研究開発に関する未来に向けた日米大学間パートナーシップ(UPWARDS(注)3)」に参画するなど、様々なプログラムを支援しており、半導体の技術革新をリードする人材育成に寄与することで、半導体産業の発展に貢献してまいります。
(注)3 U.S.- Japan University Partnership for Workforce Advancement and Research & Development in Semiconductors
■ 環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取り組み
当社グループは、半導体製造装置のリーディングカンパニーとして、高性能・高品質の製品やサービスの継続的な提供を通じ、より高い利益を上げて経済価値を高めるとともに、サステナビリティに関する取り組みの推進により、持続可能な社会の発展に貢献し社会価値を高めることで経営基盤を強化し、企業価値の向上を図ります。
当社グループのこのような活動は高い評価をうけており、2024年4月に経済産業省と㈱東京証券取引所が創設した「SX(注)4銘柄2024」に選定されました。SXとは、社会と企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革をおこない、長期的かつ持続的な企業価値向上を図る取り組みです。当社は、半導体製造装置市場の変化にタイムリーに対応すべく、研究開発、調達・製造、販売、据付・保守サービスなどバリューチェーンにおける全方位的な取り組みをおこなっており、環境負荷対応やサプライチェーンにおけるリスクに適切に対処し、長期にわたり高い業績を上げ、企業価値を向上させてきたことが評価されました。
(注)4 サステナビリティ・トランスフォーメーション
◇ 環境に関する取り組み
社会において地球環境保全の重要性がより一層高まる中、当社グループではお客さまやパートナー企業さまと連携し、サプライチェーン全体で半導体の技術革新と環境負荷低減に取り組むことにより、事業リスクの低減や新たなビジネス機会の創出に注力しております。具体的には、E-COMPASS(Environmental Co-Creation by Material, Process and Subcomponent Solutions)の推進により、様々な活動を展開しております。
・半導体の高性能化と低消費電力化に貢献
・装置のプロセス性能と環境性能の両立
・事業活動全体におけるCO2排出量の削減
2024年3月期には、環境中期目標についてSBT(注)5の認定を取得し、科学的根拠に基づく目標の確実な達成に努めるとともに、環境長期目標については当初2050年としていたネットゼロの達成時期を2040年へ前倒しし、サプライチェーン全体における温室効果ガスの削減に取り組んでおります。また、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会について気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく取り組みを推進し、気候変動に対する継続的な対応策を講じるとともに透明性の高い情報開示をおこなうことで企業としてのレジリエンス(対応力)の向上に努めております。
(注)5 Science Based Targets。SBTはパリ協定が求める水準と整合した、5年~15年先の目標年として企業が設定する目標
◇ ガバナンスに関する取り組み
当社グループは、グローバル競争に勝ち抜き、持続的な成長を果たしていくために、コーポレートガバナンス体制が重要と考えています。常に最適で実効性の高い取締役会と攻めの経営執行体制を構築し、取締役会の実効性評価や機関投資家などからの意見を踏まえた課題に継続的に取り組むことで、中長期的な企業価値向上と持続的成長に向けた強固なコーポレートガバナンス体制を実現してまいります。
当社グループでは、このような体制や以下に示す取り組みを「攻めと攻めのガバナンス」(下図参照)と称して、実効性の向上に努めております。左側の攻めが短中長期の利益を同時に志向しながら常にワールドクラスの利益率を追求していくことを示しており、右側の攻めがすべての企業活動で不動の基礎をなす「Safety, Quality, and Compliance」、社員をはじめとするステークホルダーとのエンゲージメントやセキュリティの強化・向上を追求することを指しています。

《ガバナンスの実効性を強化する取り組み》
・CEOミッションを社員と共有:短中長期の利益と継続的な企業価値の向上とやる気重視経営の実践
・監査役会設置会社:取締役会及び監査役会から構成される監査役会設置会社とし、監査役会による
経営の監督のもと、実効性のあるガバナンスを実現
・取締役会オフサイトミーティングの実施:取締役、監査役及びコーポレートオフィサーによる
中長期的な戦略や課題などの議論(年2回)
・CEO報告:取締役会でCEO自ら重要な業務執行状況を報告(毎取締役会)
・代表取締役評価クローズドセッション:代表取締役を除く取締役、監査役及び
コーポレートオフィサーによるセッション(年1回)
《業務執行を支えるオペレーティングリズム》
・コーポレートオフィサーズ・ミーティング :執行側の最高意思決定機関(月1回)
・CSS(Corporate Senior Staff)ミーティング:全業務執行のグローバル横串の連携(年4回)
・四半期レビュー会議:中期経営計画の進捗をモニタリング(年4回)
今後も半導体製造装置市場は高い成長が見込まれます。そのため、当社が事業展開する拠点数も現在の19の国と地域、87拠点から近い将来には100拠点を超えると予想しています。このような中、実効性の高いガバナンスと業務執行を支える効果的なオペレーティングリズムの実現により、短中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上を追求してまいります。
⑤ 資本市場との対話
当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、経営層が率先してIR(Investor Relations)、SR(Shareholder Relations)活動に取り組んでおります。IR活動においては、四半期ごとの決算説明会や中期経営計画説明会にCEO及び各担当役員が登壇し、事業戦略や成長のストーリーを共有しています。また、CEO直轄組織としてIR専門部隊を設置しており、2024年3月期においては、ニューヨークにIR分室を設けました。これにより北米地域における投資家の皆さまとの対面での対話の機会が増加し、当社グループをはじめ、日本の半導体製造装置業界の認知が広がりました。
⑥ 資本政策
当社グループの資本政策は、成長投資に必要な資金を確保し、積極的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めることを基本としております。具体的には、営業利益率、資産効率をさらに高め、キャッシュ・フローの拡大に努めることで、持続的な成長を目指し、ROE向上など高い資本効率を追求します。
このような資本政策のもと、積極的な株主還元や高水準の成長投資、経営戦略に基づく優秀な人材の確保及び育成、お客さまやお取引先さまとの協業やその成果など、近年の高い利益成長の実績と将来に向けたさらなる成長への期待を背景に、2024年3月末時点の時価総額は東京証券取引所プライム市場で第3位となりました。純資産と比較して時価総額が大きく増加したことで、2024年3月末時点のPBR(株価純資産倍率)は10倍以上の水準となっております。
当社の配当政策につきましては、業績連動型を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%を目処とします。この方針に基づき、2024年3月期においては、年間配当は393円といたしました。また、自己株式の取得については、現状のキャッシュポジションや中長期的な成長投資資金、株価水準、総還元額の状況などに鑑み、機動的に実施を検討することとしており、2024年3月期については1,199億円の自己株式取得を実施いたしました。
当社グループは、以上のような取り組みを実行することで、さらなる持続的成長と企業価値の向上を通じて、社会に求められ、地球に選ばれる会社として、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念を実践してまいります。
なお、文中の将来に関する記述は、本有価証券報告書の提出日現在において入手可能な情報をもとに、当社グループが合理的であると判断した一定の前提に基づいており、当社グループとしてその実現を約束する趣旨のものではありません。
当社グループにおけるサステナビリティの考え方や取組については以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社グループはサステナビリティ統括部を本社に設置し、グループ全体で取組を推進しております。サステナビリティ担当執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会には、本部長、国内グループ会社・海外現地法人社長が出席し、短中長期目標の設定及び進捗管理、関連方針の策定、個別テーマに関する討議を実施しております。重要案件については執行側の最高意思決定機関であるコーポレートオフィサーズ・ミーティングで決議をおこなうとともに、適宜取締役会で報告し、取締役会はそれを監督しております。
なお、提出会社におけるコーポレート・ガバナンスの体制の概要等は、「
(2) 戦略
当社グループにおけるサステナビリティの取組は、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」というビジョンの実現による「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念の実践です。
この取組は、企業の独自の資源や専門性を生かして、社会課題を解決する“CSV”、すなわちCreating Shared Valueの考え方に基づいております。当社グループとしてのCSVをTSV、TEL's Shared Valueと定め、事業活動において社会的価値と経済的価値の創出に努めていきます。
当社グループでは事業において優先して取り組む重要事項をマテリアリティ(重要分野)として特定しております。マテリアリティの特定においては、事業環境や社会課題、またステークホルダーからのご要望などについて整理し重要事項を抽出した上で、CEOが参加するコーポレートオフィサーズ・ミーティングで討議をおこない、取締役会で承認を得ております。バリューチェーンにおいてこれらのマテリアリティを軸としたTSVに基づく活動を推進することで、革新的な技術をもつBest Productsや付加価値の高いBest Technical Serviceを提供してまいります。そしてこれにより中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上に努め、社会から高く信頼され愛される企業を目指します。なお、2024年3月期には既存のマテリアリティである「製品競争力」「顧客対応力」「生産性向上」「経営基盤」についてより細分化した内容に見直しをおこない、新たなマテリアリティを特定しました。
・ 新たに特定したマテリアリティ
|
英語表記 |
日本語表記 |
|
Climate Change and Net Zero |
気候変動とネットゼロ |
|
Product Energy Efficiency |
製品の環境性能 |
|
Best Products with Innovative Technology |
革新的な技術を持つBest Products |
|
Best Technical Service with High Added Value |
付加価値の高いBest Technical Service |
|
Customer Satisfaction and Trust |
顧客満足と信頼 |
|
Supplier Relationship |
サプライヤーリレーションシップ |
|
Respect for Human Rights |
人権の尊重 |
|
Employee Engagement |
従業員のエンゲージメント |
|
Safety First Operation |
安全第一のオペレーション |
|
Quality Management |
品質マネジメント |
|
Compliance |
コンプライアンス |
|
Ethical Behavior |
高い倫理観に基づく行動 |
|
Information Security |
情報セキュリティ |
|
Enterprise Risk Management |
エンタープライズリスクマネジメント |
社会において地球環境保全の重要性がより一層高まる中、当社グループでは主に以下の3つの観点において、お客さまやパートナー企業さまと連携し、サプライチェーン全体で半導体の技術革新と環境負荷低減に取り組むことにより、事業リスクの低減や新たなビジネス機会の創出に注力しております。具体的には、E-COMPASS(Environmental Co-Creation by Material, Process and Subcomponent Solutions)の推進により、様々な活動を展開しております。
・ 半導体の高性能化と低消費電力化に貢献
・ 装置のプロセス性能と環境性能の両立
・ 事業活動全体におけるCO2排出量の削減
2024年3月期には、環境中期目標についてSBT(注)の認定を取得し、科学的根拠に基づく目標の確実な達成に努めるとともに、環境長期目標については当初2050年としていたネットゼロの達成時期を2040年へ前倒しし、サプライチェーン全体における温室効果ガスの削減に取り組んでおります。また、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会について気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく取組を推進し、気候変動に対する継続的な対応策を講じるとともに透明性の高い情報開示を行うことで企業としてのレジリエンス(対応力)の向上に努めております。
詳細は、
(注) SBT:Science Based Targets。SBTはパリ協定が求める水準と整合した、5年~15年先の目標年として企業が設定する目標
人的資本の分野においては、「企業の成長は人。社員は価値創出の源泉」という考えのもと、やる気重視経営を実践しております。社員へ積極的に投資し様々な施策を展開するとともに、個々の可能性を生かし高い目標に向けてチャレンジできる多くの機会を提供しております。
当社グループでは経営層の強いコミットメントのもと、人材の多様性の確保に向けて、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを、継続的なイノベーションの創出や企業価値の向上につながる経営の柱として積極的に推進しております。「ONE TEL, DIFFERENT TOGETHER™」をスローガンに、3GすなわちGlobal(国籍)、Gender(性別)、Generation(世代)を多様性に向けた大きなテーマとして捉え、地域の特性を考慮した目標を設定しております。グループ各社における主な取組は以下のとおりであります。
・ 世界で多様な経験をもつ社員(国内社員と海外社員の比率=55:45)が活躍できるよう、グローバル共通の人事制度を基盤とし、国や地域を跨いだキャリア形成・人材交流を促進
・ サクセッションプランニングにおいて、ジェンダーダイバーシティを意識したタレントパイプライン(人材育成計画)形成をおこない、女性管理職比率(高度専門職を含む)を2027年3月期までに日本5.0%、当社グループ全体8.0%にする目標に向けた取組を実施。女性社員の比率の推移を考慮の上、今後さらなる目標値を設定
・ 社員の大半をエンジニアが占める当社グループの状況を踏まえて、リクルーターの活用やブランディングなどへの積極的な投資をおこない、各地域における一般的な女性エンジニア比率(理工学専攻の女性比率)と同等以上の女性エンジニアを採用
・ 今後5年間において、グローバルで合計10,000人の新卒及び中途採用の雇用を計画。また、日本国内においては当社グループで培った経験や知見・スキルを生かせるよう定年後再雇用制度を整備。こうした取組を通じて、幅広い世代の社員が能力を最大限に発揮すべく組織の活性化を推進
また、社員エンゲージメントの向上についても積極的に取り組んでおります。社員エンゲージメントの向上は、企業におけるパフォーマンスの最大化や持続的な成長に不可欠な要素であり、社員の定着率においても重要であると考え、「エンゲージメント・サーベイ」を2016年3月期から定期的に実施しております。
サーベイから得た結果や社員の声をもとに、より良い職場環境の整備に努めるとともに全社員が自由闊達な雰囲気の中で個々の能力を最大限に発揮しながらいきいきと活動し、建設的な議論や意見を交わせる風土・文化の醸成に向けて取り組んでおります。
経営層による継続的なメッセージの発信や社員集会などにより経営層と社員が会社の現状や将来について直接対話をおこなう機会を増やし、また安全・品質・コンプライアンスなど経営の基盤となる事項について社員の意識をより高める研修などをおこなっております。
加えて当社グループでは、急速に変化するビジネス環境に適応し、グローバルに活躍できる人材の育成に取り組んでおります。社員一人ひとりのパフォーマンスを最大化するために、社員のやる気を重視し、会社と社員がともに成長し続けるための人材戦略を展開しております。
内部教育機関として設立したTEL UNIVERSITYを中心に学びの文化の醸成に努め、社員一人ひとりが自己成長できる機会を提供しております。TEL UNIVERSITYでは集合研修のみならずウェブ教育などを積極的に活用し、世界中どの拠点からも学習することができる共通のプラットフォームを構築しております。
また国内外の大学とのコラボレーションを含む産学官連携プログラムの推進により、半導体業界における人材育成の強化にも継続的に取り組んでおります。2023年には、日米の大学によって構成される「半導体の人材育成と研究開発に関する未来に向けた日米大学間パートナーシップ(UPWARDS)(注)」へ参画し、技術革新をリードする学生や研究者の輩出に寄与することを目指しております。
(注) U.S.- Japan University Partnership for Workforce Advancement and Research & Development in Semiconductors
(3) リスク管理
当社グループでは、半導体を取り巻く地政学や市場変化などの様々なリスクに適切かつ迅速に対応するとともに、持続的な成長を実現すべくリスクマネジメント体制を構築し展開しております。事業を遂行する上で直面し得るリスクについて、将来を見据えて十分に検討をおこなうことにより影響を最小化するのみならず、それらを事業機会として捉え、適切に対応することが社会から信頼される企業であるために不可欠であると考えております。
2024年4月には、より実効的な活動を推進するためコーポレート企画&リスクマネジメント推進室(CPRO)をCEO直轄の戦略部門として本社に設置し、エンタープライズリスクマネジメント(注)1のさらなる推進に努めております。
事業活動における重要リスクについては、以下のようなPDCAサイクルをグループ全体で展開しております。
1. CPROと各業務の担当所管部門が連携して事業活動におけるコンプライアンス、人事・労務、事業継続などに関する様々なリスクを当社グループへの影響度と蓋然性から網羅的に洗い出し、12のリスク項目(注)2を特定するとともに各リスクオーナーを設置
2. 特定した12のリスク項目については各リスクオーナーが参加するリスクマネジメント委員会において共有
3. リスクの排除は業績向上に直接つながる機会という認識のもと、CEOや各本部長が参加する四半期レビュー会議では、12のリスク項目のうち特に課題がある項目について取組状況の確認と改善策について討議
2024年3月期においては、経営成績や財政状態、またキャッシュ・フローなどへの影響の観点から、これまでに特定した12項目のリスクについて見直しをおこない、各リスクに対する取組をさらに進めました。
12のリスク項目における環境対応については、TCFDのフレームワークに則り、次表「気候変動の影響により想定されるリスクと機会、当社の対応」のとおり取り組んでおります。当社グループのガバナンス体制に沿って、1.5℃シナリオにおける移行リスクや4℃シナリオにおける物理リスクに加え、エネルギーコストの減少や売上高の増加などの機会についても評価・分析をおこなっております。
これらに加えて当社グループのビジネスに影響を与える可能性のある新興リスクなど、幅広いトピックについてもリスクマネジメント委員会にて定期的に討議しております。
当社グループにおけるリスクマネジメントに関する活動については定期的に取締役会に報告し、取締役会は各リスクオーナーを中心に実行される様々な取組についての監督をおこなっております。今後も、自律性及び実効性の高いリスクマネジメントを実践していくために、グループ全体で機動的なオペレーションを展開していきます。
(注) 1 エンタープライズリスクマネジメント:リスクマネジメント活動に関する全社的な仕組みやプロセス
(注) 2 主要リスク12項目につきましては、「
・ 気候変動の影響により想定されるリスクと機会、当社の対応
以下は、2023年3月期における評価・分析結果であります。2024年3月期の情報については
時間軸:短期5年以内、中期2030年、長期2050年
採用シナリオ:1.5℃シナリオ(気温上昇1.5℃の場合)、4℃シナリオ(気温上昇4℃の場合)
範囲:当社グループ全体及び上流・下流を含むバリューチェーン全体
※ 1 リスク評価:当社内にてリスク影響度を評価した結果を記載
※ 2 炭素税:温室効果ガス排出に伴う増税分はIEA(International Energy Agency: 国際エネルギー機関)のNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)を参照。1米ドルを130円で換算
※ 3 取引先BCPアセスメント:調達額の80%以上(2023年3月期より調達額85%以上)を占める資材系のお取引先さまに対し、2014年3月期より継続的にBCPアセスメントを実施
(4) 指標及び目標
中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上において財務のみならず非財務における指標の達成は重要であり、今後も当社グループ全体で活動を展開していきます。また各指標の意義については定期的に確認し、具体的なアクションを確実に実行することで中長期指標の達成を目指しております。上記「(2)戦略」において記載した地球環境保全や人的資本の取組における主な指標及び目標、実績は以下のとおりであります。
・ 環境に関する主な指標
|
対象分野 |
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
|
|
中期環境目標 |
事業所 |
CO2総排出量 |
CO2総排出量70%削減 (2031年3月期まで、2019年3月期比) |
75%削減 (2019年3月期比) |
|
再生可能エネルギー 使用比率 |
再生可能エネルギー使用比率100% (2031年3月期まで) |
90% |
||
|
製品 |
CO2排出量 |
ウェーハ1枚当たりのCO2排出量 55%削減 (2031年3月期まで、2022年3月期比) |
24%削減 (2022年3月期比) |
|
|
長期環境目標 |
自社の活動 (スコープ1,2) |
CO2排出量 |
2040年までにネットゼロ |
|
|
自社以外の活動 (スコープ3) |
CO2排出量 |
2040年までにネットゼロ |
|
|
・ 人的資本に関する主な指標
|
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
|
|
管理職に占める女性労働者の割合 (女性管理職比率) |
日本: 当社グループ全体:8.0% (2027年3月期まで) |
日本: 当社グループ全体:6.3% |
|
|
キャリア |
一人ひとりが上長や周囲のサポートを実感し、自分の将来(キャリアパス)をイメージしながらやりたいことにチャレンジすることで、会社の成長や社会のために価値創出できる環境を構築(2027年3月期まで) |
・自立的なキャリア形成の環境整備と支援(組織内でのコミュニケーションの充実、動機付け、キャリア機会の提供、キャリア教育の推進など) ・新任マネージャー教育(教育期間を3倍に拡充) |
|
|
エンゲージメント |
エンゲージメント・サーベイのスコア(定期的に実施) |
継続的な改善(前回比スコア上昇)、もしくは各地域における他社平均値を超えるスコアを達成 |
2023年3月期に実施したサーベイ結果を解析するとともに直接社員の声を聞きながら各社ごとに改善プランを実行(2024年3月期はサーベイの実施はなし) |
|
|
日本: 海外:業界平均以上 |
日本: 海外:業界平均以上(95.8%) |
|
(注) 定年などによる退職は除く
「サステナビリティに関する考え方及び取組」に関する詳細な情報については、
本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。なお、これらの記載は、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された項目以外のリスクも存在します。
また、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 市場変動
半導体市場は、IoT、AI、5G等の情報通信技術の用途の拡がりやDXの進展、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)への対応を背景としたデータ社会への移行が加速するなか、技術革新が続くことで中長期的にはさらなる成長が見込まれております。しかしながら、世界経済の動向や最終製品の需要、貿易・関税政策、地政学的要因等により、短期的には需給バランスが崩れ市場規模が変動することがあります。半導体市場が急激に縮小した場合には、過剰生産及び在庫の増加、顧客の財務状況悪化による貸倒損失など、一方、急激な需要の増加に対応できなかった場合には、顧客に製品をタイムリーに供給できず、機会損失が生じるなど、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、こうした市場変動に対応するため、市場環境や受注状況を取締役会等の重要会議において定期的にレビューするなど、常に最新の市場動向を把握した上で、設備投資や人員・在庫計画等の適正化を図っております。
また、当社グループの売上高は、最先端の大手半導体メーカー等の投資動向の影響を受けやすい傾向にあります。
当社グループは、世界中の幅広い顧客と緊密な連携を図る専門組織を設置し、顧客ニーズや投資動向をいち早く把握することに努めるとともに、半導体需要の拡大に伴う新規顧客を開拓するなど、販売体制及び顧客対応力を強化し、顧客基盤の拡大に努めております。
(2) 研究開発
当社グループは、最先端技術について継続的な研究開発投資を実施し、当該技術を搭載した新製品を早期に市場投入することによって、各製品分野における高い市場シェアの獲得と高利益率の実現に成功してきました。しかしながら、顧客の技術要求に応える新製品をタイムリーに投入できない場合、また、開発した新製品が顧客要求に合致しなかった場合や競合他社による新技術・製品が先行投入された場合には、製品競争力を失い、開発コストの回収が困難となるなど、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、コーポレートイノベーション本部を設置し、革新的な技術開発と各開発本部が持つ製品・技術を融合した独創的な技術提案を行うための全社的な開発体制を構築するとともに、グローバルに展開している研究機関との共同研究や最先端顧客との間で複数世代にわたる技術ロードマップを共有するなど、将来のニーズに対応した強いネクストジェネレーションプロダクトを常に競合に先立ち提供する体制を整えております。
(3) 地政学
当社グループは、売上高に占める海外売上高の比率が高く、様々な国・地域において事業を展開しております。国際秩序やグローバルなマクロ経済情勢に影響を与える地政学的な対立や地域紛争は、各国・地域の安全保障、外交政策、産業政策及び環境政策に影響を与え、その結果サプライチェーンの一部に影響が出たりマクロ経済環境が悪化したりすることで、当社の事業活動を制約し、グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、国際情勢や各国・地域の外交・安全保障上の措置、産業政策の動向を注視して、製品の輸出入や技術開発に関する規制、マクロ経済の変動による事業への影響を分析しております。これらへの対応策を事前に検討するとともに、政策当局や業界団体、有識者等との対話を行いながら、リスクの早期発見やリスク発現時の迅速かつ適切な対応にあたっております。
(4) 調達・生産・供給
当社グループは、主要な生産拠点を日本国内に有し、国内外の顧客に製品を供給しております。そのため、国内における地震や風水害等の自然災害、テロ、感染症等の不可抗力による被害や事故等の発生を受け、生産が停止し、復旧に時間を要する場合には、顧客に製品をタイムリーに供給できない可能性があります。また、安定した製品の製造にはサプライヤーによる部品等の安定供給が欠かせません。災害や事故等のリスクに加え、サプライヤーの経営状態悪化、半導体市場の拡大に伴う供給能力を上回る需要、法改正や労働人口減少等により、部品の調達が滞った場合や国内外の物流網が逼迫した場合には、顧客に製品をタイムリーに供給できなくなり、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コーポレート生産本部を設置し、事業継続計画(BCP)などの策定と定期的なレビューを行うとともに、リスク低減に向けた対策を推進しております。例として、代替生産体制の確立、生産棟の耐震強化、生産の平準化、情報システムのバックアップ体制整備や重要部品のマルチソース化、適正在庫の確保等を進めております。また、半導体の需要予測をベースとしたフォーキャストをサプライヤーに共有する等の取り組みを進め、安定供給体制の確立に取り組んでおります。
(5) 安全
当社グループの製品の安全性に関する問題が発生した場合、受注取消や損害賠償責任が発生します。また、重大な人身事故が発生した場合には、当社グループの安全に対する意識や取り組み方が疑問視され、当社グループの社会的信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、開発・製造・販売・装置据付・サービス・管理等の各業務の遂行において安全や健康に対する配慮を常に念頭において事業を進めております。この「Safety First」という方針のもと、製品開発段階におけるリスク低減を意識した本質的な安全設計を実践し、現場作業においても危険予知ミーティングなどのリスクアセスメントを行うことにより、潜在的なリスクを特定して未然防止策を講じています。また、各従業員の業務に合わせた社内の資格認定と安全教育、顧客への装置トレーニング、事故報告システムの整備など、安全への取り組みを全従業員で継続的に推進しております。
(6) 品質
当社グループの製品は、多くの最先端技術が統合された製品であり、不具合が発生した場合には、リコール等の製品の回収、品質責任に基づく損害賠償責任や不具合対策費用の発生、また、当社グループのブランドイメージ及び信頼の低下につながるなど、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、全社統一の品質方針のもと、ISO9001の認証取得を含む品質保証体制や最高水準のサービス体制の確立に取り組み、継続的改善活動を行いながら、従業員及びサプライヤーへの品質教育を実施しております。開発においては、設計の初期段階から営業、サービス部門と連携し、顧客のニーズに対応すべく技術的な課題解決を図り、さらにシミュレーション技術を使用した検証を徹底するなど、リスク軽減、解消に取り組んでおります。また、不具合発生時においては、根本原因を究明した後、再発防止・類似不具合の未然防止策の実施・徹底を進めております。調達部品の品質管理においても同様に、常にサプライヤーの品質状態を把握し、監査、改善支援等を実施しております。
(7) 環境対応
当社グループを取り巻くステークホルダーをはじめ、世界全体でサステナビリティに関する社会的要請が高まっており、特に喫緊の課題である気候変動に対する取り組みは急務です。このような状況のもと、脱炭素社会への移行に伴う各国の気候変動政策、環境法令や業界行動規範、技術革新や顧客ニーズ等に適切に対応できなかった場合には、新規製品の開発、仕様変更、改造等の追加対応の費用発生、製品競争力の低下、社会的信用の低下等により、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、E-COMPASSプログラムを展開し、あらゆるお客さま、お取引先さまとのパートナーシップによりサプライチェーン全体での地球環境保全に取り組んでおります。環境法令や業界行動規範の遵守はもとより半導体デバイスの高性能化や低消費電力化に寄与する技術の提供、また業界をリードする中長期環境目標の達成に向けて製品使用時の温室効果ガス排出量削減や事業所における再生可能エネルギーの使用比率の向上及びエネルギー使用量低減に努めております。そのほか、梱包材の見直し、モーダルシフトの推進など、事業活動を通じて地球の環境保全に取り組んでおります。
(8) 法令・規制
当社グループは、グローバルに事業を展開する上で、各国・地域において、輸出入規制、環境法、競争法、労働法、汚職・贈賄、移転価格税制を含む様々な分野の法令、規制による制約を受けており、その遵守に努めております。しかしながら、各種法令、規制に抵触した場合には、社会的信用の低下、課徴金・損害賠償の発生、事業の制限など、また、各国の安全保障上の政策や将来において予期せぬ法令改正、規制の強化が生じた際に適切に対応できなかった場合には、その対応に要する費用負担や事業の制限等により当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、チーフ・コンプライアンス・オフィサーのもと、国内外主要拠点においてコンプライアンスに関する活動状況を把握する体制を構築しております。また、法令や企業倫理上疑義のある事項を早期発見し、速やかに対策を講じるため、当社グループ統一の内部通報制度を運用しております。さらには、外部機関によるコンプライアンスに関するアセスメントを実施し、抽出された課題は、CEO、取締役会及び監査役会に報告され、迅速かつ効果的な対策及びさらなる体制強化を進めております。
(9) 知的財産
当社グループの製品は、多くの最先端技術が統合された製品であり、知的財産の権利化と第三者による権利侵害の防止は、製品の差別化と競争力強化の上で重要な要素となります。第三者が保有する知的財産権を侵害した場合には、当社グループ製品の生産・販売が制約され、損害賠償金の支払が発生すること等が考えられ、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、知的財産戦略を事業戦略及び研究開発戦略と三位一体で推進することにより、適切な知的財産権ポートフォリオを構築しております。また、他社特許を継続的にモニタリングし、事業及び研究開発部門と連携して適切な対策を講じることで他社特許の侵害を回避する体制を構築しております。
このような取り組みを通じ、製品競争力の向上及び他社特許の侵害リスクの低減を図り、各製品分野における高い市場シェア獲得と利益率向上に努めております。
(10) 情報セキュリティ
社会全体のデジタル化が進む中、第三者による不正アクセスやコンピュータウイルス等によるサイバー攻撃は世界的に増加傾向にあります。このような環境下において、当社グループ及びサプライヤーに対するサイバー攻撃、内部不正等による情報漏洩やサービス停止等が発生した場合には、競争力・技術的優位性の棄損、製品生産活動を含めた業務の停止、社会的信用の低下や損害賠償の発生等により、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、サイバーセキュリティに関するソリューション導入やセキュリティ監視、内部不正対策といった技術面・運用面の対策に加えて、グローバルセキュリティポリシーの策定と教育・啓発・訓練を通じて、情報資産の適切な管理・保護に努めております。
また、情報セキュリティ委員会を設置することでグループ各社を含めた組織的強化を図るとともに、情報セキュリティに関する内部監査と外部機関によるアセスメントなどの活動を通じて、情報セキュリティ対策の実効性強化に努めております。
(11) 人材
当社グループがグローバルな事業展開を進めるなか、イノベーションを創出し成長を続けるためには、国内外で多様な人材を確保し育成することやダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを実践することが重要となります。しかしながら、必要な人材を継続的に採用・維持することができない場合、また、多様な価値観・専門性を持った人材が個性を発揮して活躍できる環境が整備できない場合には、製品開発力の低下や顧客サポートの質の低下を招き、競争優位性のある組織が実現できないなど、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、従業員は持続的な価値創出の源泉であり、従業員のエンゲージメントを高めることは企業価値向上において最も重要な要素と考えております。具体的には当社CEOによる定期的な社員集会を通じた方向性の共有、今後を担う人材を継続的に輩出するための育成計画の構築、従業員のキャリアパスの見える化、魅力的な報酬・福利厚生の提供、長時間労働・ハラスメントの防止を含めた労働環境の継続的な改善や健康経営の推進等に取り組んでおります。加えて、産官学連携の半導体人材育成やグローバルでの大学とのパートナーシップの強化を進めております。
(12) 感染症・自然災害等、その他
当社グループが事業を遂行するにあたっては、各国・地域における経済環境、金融・株式市場、外国為替変動、企業買収の成否、重要な訴訟、標準規格化競争、感染症、地震や風水害をはじめとする自然災害等の要因により、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性がありますが、それぞれのリスクに対し必要な対策を行っております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の状況
当連結会計年度の世界経済につきましては、コロナ禍以降急騰していた資源・エネルギー価格は前年度途中から下落し、それに伴って物価の上昇率は、当年度末には、主要国の中央銀行が中長期的な目標の目安としている2%程度まで低下しました。また、欧米諸国を中心とした政策金利の引き上げは若干緩和しましたが、円安水準は継続する状況にありました。
当社グループが参画しておりますエレクトロニクス産業におきましては、PCやスマートフォン等の最終製品の需要が一巡したことに伴い、前連結会計年度後半から半導体メーカーにおける生産の抑制がおこなわれました。その結果、在庫の調整が進捗し、当年度において、半導体の需給バランスは徐々に改善しております。
このような状況のもと、調整局面を迎えていた半導体製造装置向け設備投資も底打ちの兆候が見られました。メモリ及び先端ロジック/ファウンドリ向け半導体に対する設備投資は、まだ全体的に抑制傾向にあったものの、生成AI用途のアドバンストパッケージ向け設備の引き合いが増加しました。また、半導体の自給率向上に向けた中国におけるIoT及び車載や産業用の成熟世代向け設備投資は、前連結会計年度に引き続き堅調に推移しました。情報通信技術の拡充に伴うデータ社会への移行や脱炭素社会への取り組みを背景に、電子機器を支える半導体の役割とその技術革新の重要性が高まっており、中長期的に半導体製造装置市場はさらなる成長が見込まれております。
当連結会計年度の経営成績の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度の売上高は1兆8,305億2千7百万円(前連結会計年度比17.1%減)となりました。国内売上高が1,849億8千2百万円(前連結会計年度比22.9%減)、海外売上高が1兆6,455億4千4百万円(前連結会計年度比16.4%減)となり、連結売上高に占める海外売上高の比率につきましては89.9%となりました。
売上原価は1兆2億5千7百万円(前連結会計年度比18.3%減)、売上総利益は8,302億6千9百万円(前連結会計年度比15.7%減)となり、売上総利益率は45.4%(前連結会計年度比0.8ポイント増)となりました。
販売費及び一般管理費は3,740億6百万円(前連結会計年度比2.0%増)となり、連結売上高に対する比率は20.5%(前連結会計年度比3.9ポイント増)となりました。
これらの結果、営業利益は4,562億6千3百万円(前連結会計年度比26.1%減)となり、営業利益率は24.9%(前連結会計年度比3.1ポイント減)となりました。経常利益は、営業外収益121億6千4百万円、営業外費用52億4千2百万円を加減し4,631億8千5百万円(前連結会計年度比25.9%減)となりました。
税金等調整前当期純利益は4,734億3千9百万円(前連結会計年度比24.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,639億6千3百万円(前連結会計年度比22.8%減)となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は783円75銭(前連結会計年度の1株当たり当期純利益は1,007円82銭)となりました。
なお、当連結会計年度から、報告セグメントを「半導体製造装置」の単一セグメントに変更したため、セグメント別の記載を省略しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
また、当連結会計年度末の財政状態の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ405億7百万円減少し、1兆7,004億5千1百万円となりました。主な内容は、未収消費税等の減少878億8千3百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の減少734億6千6百万円、棚卸資産の増加1,107億4千9百万円によるものであります。
有形固定資産は、前連結会計年度末から782億7千8百万円増加し、3,373億6千6百万円となりました。
無形固定資産は、前連結会計年度末から38億2千4百万円増加し、323億8千3百万円となりました。
投資その他の資産は、前連結会計年度末から1,032億7千4百万円増加し、3,862億6千万円となりました。
これらの結果、総資産は、前連結会計年度末から1,448億6千8百万円増加し、2兆4,564億6千2百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ179億9千4百万円減少し、6,118億9千9百万円となりました。主として、支払手形及び買掛金の減少239億5千7百万円、未払法人税等の増加88億3千2百万円によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ22億7百万円増加し、843億8千3百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ1,606億5千5百万円増加し、1兆7,601億8千万円となりました。主として、親会社株主に帰属する当期純利益3,639億6千3百万円を計上したことによる増加、前期の期末配当及び当期の中間配当2,024億5千7百万円の実施による減少によるものであります。この結果、自己資本比率は71.1%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ108億6千2百万円減少し、4,616億8百万円となりました。なお、現金及び現金同等物に含まれていない満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資109億3千9百万円を加えた残高は、前連結会計年度末に比べ5億5千2百万円減少し、4,725億4千8百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、前連結会計年度に比べ84億5千万円増加の4,347億2千万円の収入となりました。主な要因につきましては、税金等調整前当期純利益4,734億3千9百万円、未収消費税等の減少880億9千2百万円、売上債権及び契約資産の減少848億4千8百万円がそれぞれキャッシュ・フローの収入となり、法人税等の支払額1,189億3千5百万円、棚卸資産の増加977億1千2百万円がそれぞれキャッシュ・フローの支出となったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主として有形固定資産の取得による支出1,169億9千3百万円により、前連結会計年度の417億5千6百万円の支出に対し1,251億4千8百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主に配当金の支払2,024億5千7百万円、自己株式の取得による支出1,200億2千8百万円により、前連結会計年度の2,565億3千4百万円の支出に対し3,250億1千2百万円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、市場の変化に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産の実績は販売の実績と傾向が類似しているため、記載を省略しております。受注の実績については、短期の受注動向が顧客の投資動向により大きく変動する傾向にあり、中長期の会社業績を予測するための指標として必ずしも適切ではないため、記載しておりません。また、販売の実績については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりであります。
なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
|
相手先 |
販売高 (百万円) |
割合 (%) |
|
Intel Corporation |
357,636 |
16.2 |
|
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Ltd. |
320,427 |
14.5 |
|
Samsung Electronics Co., Ltd. |
275,916 |
12.5 |
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
|
相手先 |
販売高 (百万円) |
割合 (%) |
|
Samsung Electronics Co., Ltd. |
237,441 |
13.0 |
(注) 販売高には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績については、連結売上高は1兆8,305億2千7百万円(前連結会計年度比17.1%減)、営業利益は4,562億6千3百万円(前連結会計年度比26.1%減)と、前年度から減収減益となりました。これは主に、コロナ禍においてPCやスマートフォン等の最終製品の需要が急激に拡大したことに伴い、半導体メーカーによる積極的な半導体製造装置向け設備投資が短期間に集中した結果、需給が緩み、前年度後半から当年度前半にかけて、投資の調整と生産の抑制がおこなわれたことによるものです。しかしながら、半導体メーカーによる在庫調整の順調な進捗と生成AI等の新たなアプリケーションの出現に加え、半導体の自給率向上に向けた中国地場の顧客による設備投資の加速によって、半導体製造装置市場は底打ちし、当年度後半から回復基調に転じました。
営業利益率は、前連結会計年度比3.1ポイント減の24.9%となりました。これは主に、翌年度以降の市場回復期において、シェアを拡大できるように、当年度においては売上高が減少したにも関わらず、研究開発投資を増額したことに起因しております。現在の中期経営計画で目標としている財務モデルの達成に向けて、また将来の更なる成長を目指して、研究開発費の総額は、前連結会計年度から116億7千6百万円増加(前連結会計年度比6.1%増)し、過去最高の2,028億7千3百万円となりました。なお、インフレによる部材や資源価格の高騰はありましたが、付加価値の高い製品を投入することで価格を適正化し、売上総利益率は、前連結会計年度比0.8ポイント増の45.4%となりました。
営業利益に、営業外損益及び特別損益を反映し、税金費用を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は3,639億6千3百万円となり、売上高に対する比率は、前連結会計年度から1.4ポイント下降し、19.9%となりました。なお、当連結会計年度に計上している特別利益108億3千8百万円は、主に米国テキサス州オースチン市の固定資産(土地及び建物等)の売却によるものです。これらの結果、1株当たり当期純利益は、783円75銭となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、当社グループでは売上高、営業利益率、ROE(自己資本利益率)を中期経営計画上の財務モデルにおける指標として使用しております。
具体的には、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ④ 中長期的な成長を見据えた取り組み」に記載のとおりであります。
② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容、並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
財政状態については、当連結会計年度末における総資産が2兆4,564億6千2百万円となり、前連結会計年度末から1,448億6千8百万円増加しました。これは主に、棚卸資産、有形固定資産と、投資その他の資産に含まれる投資有価証券の増加によるものです。なお、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末から108億6千2百万円減少し、4,616億8百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ405億7百万円減少し、1兆7,004億5千1百万円となりました。これは主に、未収消費税等の減少878億8千3百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の減少734億6千6百万円、棚卸資産の増加1,107億4千9百万円によるものです。棚卸資産は、翌年度以降の市場回復やコスト、サプライチェーンのサステナビリティ等を考慮し、部材調達の平準化等の施策を実行した結果、前連結会計年度末から1,107億4千9百万円増加し、7,629億5千7百万円となりました。有形固定資産は、最先端技術の研究開発に必要となる装置や測定器の取得、国内、韓国及び台湾におけるオペレーションの強化を目的とした各事業所の新設・改修に加え、竣工した山梨県韮崎市の開発棟、建設中である熊本県合志市の開発棟や宮城県大和町の開発棟、岩手県奥州市の物流センター等を反映し、前連結会計年度末から782億7千8百万円増加し、3,373億6千6百万円となりました。投資有価証券は、政策的に保有している上場株式の時価評価額が上昇したことにより、前連結会計年度末から1,121億9千8百万円増加し2,777億6百万円となりました。なお、総資産回転日数(注)は前連結会計年度の347日から475日へ増加しました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ179億9千4百万円減少し、6,118億9千9百万円となりました。これは主に、原材料の購入量減少に伴う支払手形及び買掛金の減少239億5千7百万円に起因しております。固定負債は、前連結会計年度末に比べ22億7百万円増加し、843億8千3百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ1,606億5千5百万円増加し、1兆7,601億8千万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益3,639億6千3百万円を計上したことによる増加、投資有価証券の評価額及び為替変動に伴う為替換算調整勘定の増加によるその他の包括利益累計額の増加1,143億1千8百万円に加え、前期の期末配当及び当期の中間配当2,024億5千7百万円の実施による減少、自己株式の取得1,200億2千8百万円に起因しております。この結果、自己資本比率は71.1%となりました。
キャッシュ・フローについては、現金及び現金同等物に、満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資を加えた残高は、前連結会計年度末から5億5千2百万円減少し、4,725億4千8百万円となりました。これは主に、市場の調整期においても、前述の通り、当年度における営業利益率は、24.9%と高い水準を維持し、親会社株主に帰属する当期純利益は3,639億6千3百万円となる一方で、配当性向50%の株主還元政策に基づく配当金の支払いに加え、自己株式の取得のための支出をおこない、同時に翌年度以降の市場回復を見据えた調達戦略と成長投資を実行したことによるものです。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、前連結会計年度に比べ84億5千万円増加の4,347億2千万円の収入となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益4,734億3千9百万円、未収消費税等の減少880億9千2百万円、売上債権及び契約資産の減少848億4千8百万円がそれぞれキャッシュ・フローの収入となり、法人税等の支払額1,189億3千5百万円、棚卸資産の増加977億1千2百万円がそれぞれキャッシュ・フローの支出となったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主として有形固定資産の取得による支出1,169億9千3百万円により、前連結会計年度の417億5千6百万円の支出に対し1,251億4千8百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主に配当金の支払2,024億5千7百万円、自己株式の取得による支出1,200億2千8百万円により、前連結会計年度の2,565億3千4百万円の支出に対し、3,250億1千2百万円の支出となりました。
当連結会計年度においては、部材調達の平準化等の戦略的な施策の実行に伴い、前年度に過去最高となった棚卸資産の水準をさらに上回るなど、必要な運転資本が増加するなか、高まる技術要求に対応し、競合との差別化を図ることができる革新的で付加価値の高い技術の創出のための研究開発、生産技術革新や環境負荷低減を考慮したサプライヤーとの協業等への成長投資を継続しました。一方で、当社グループの株主還元政策である配当性向50%に基づく配当金の支払いと自己株式の取得によって、計3,224億5千5百万円を株主に還元しました。これらは、事業運営を通じて獲得した手元資金によって賄っております。引き続き、高利益率によって作り上げた強固な財務基盤を維持しながら、将来への成長投資と積極的な株主還元に取り組んでまいります。
なお、経営指標の一つであるROE(自己資本利益率)については、21.8%となりました。
(注) 総資産回転日数=当連結会計年度期首・期末の総資産の平均÷当連結会計年度の売上高×365
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りの仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、地政学リスクや感染症、自然災害等が会計上の見積りに与える影響は、世界全体の半導体需要は地政学リスクの影響が小さいこと、当社グループにおいては、急激な変化に対応できるよう前もって部品調達を実行し、かつ、変化に合わせて生産・供給を機動的に対応できるような体制を整えていること等により、現時点においては限定的と認識しております。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、半導体製造装置及びその基礎研究又は要素研究等に関するものであります。なお、当社グループは「半導体製造装置」の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
半導体製造装置事業では、AI、5G、IoT、自動運転などに向けて次世代デバイスの高速化・大容量化・機能統合化が必要になり、それらを具現化する製造技術の高度化へ先行して対応すべく、新製品開発の強化に引き続き努めております。具体的には、コータ/デベロッパ、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置、先端パッケージ向けプロセス装置、ウェーハプローバ等の装置開発として、次世代デバイスから要求される装置・プロセス開発、プロセスの高精度化、装置の高信頼性化、高生産性化、コスト低減等の開発、装置仕様の標準化、部品・ソフトウエア共通化等の技術開発を推進しております。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した装置性能の向上や開発の効率化、管理部門の生産性の改善にも取り組んでおります。同時に、当社のSDGsにおける重要課題の一つである省エネルギー化の要求に対応するため、環境への取り組み強化に向けたサプライチェーンイニシアティブ「E-COMPASS」を推進し、装置の省電力化技術等、CO2排出量の削減など環境に配慮した技術開発にも注力しております。さらに、次々世代の新デバイス製造に必要な製造装置の開発を進め、新市場の拡大に対応できる体制を整えております。微細化加工技術開発の一環として、EUV露光による超高解像パターニングや3次元積層メモリ等複雑化する構造におけるプロセスの最適化を図るために複数工程開発がますます重要となっており、当社の各開発拠点を活用したプロセス開発とインテグレーション開発を行うことで、より付加価値の高い技術を開発、提案しております。
基礎・要素研究関連では、微細加工のための新しい各種プロセスの技術開発及び評価、10年先を見通しての新しいデバイス構造や新しい材料に対応する為のプロセス技術開発等を進めるとともにこれらの技術開発を支える各種の基礎的な研究を行っております。具体的には、微細加工に必要なプロセス技術として、高NA(解像度)EUV向けレジスト材料技術、マルチパターニングに代表される微細加工技術、各種新材料の成膜技術、エッチング技術、熱処理技術、洗浄技術の先行技術開発を進めるとともに、それら装置技術の基礎、基盤となる、プラズマプロセス装置に不可欠なプラズマ技術、熱処理装置で重要な熱制御技術、開発効率を向上させるシミュレーション技術、パーティクルや不純物汚染等を制御するコンタミネーション制御技術等、重要かつ他社との差別化を図る各種コア技術の研究にも注力しております。
これらに加えて、オープンイノベーション型の開発を強化するために、国内外の有力大学・各種研究機関等との共同開発、材料関係のパートナー、重要な部品及びコンポーネント関連のパートナーとの緊密な研究開発を推進しております。また、近年におきましては、最先端のプロセス開発評価を電気的特性データで検証していくことが必要不可欠となってきており、複数のプロセス工程を統合して評価するプロセスインテグレーションの評価の能力を強化しております。プロセスモジュール(トランジスタ工程から配線工程までの)全体で評価を進めることで、お客様にとってより有益で、価値のあるデータの取得を可能としております。
なお、当連結会計年度の研究開発費は、