当社は、双日グループ企業理念、双日グループスローガンを掲げ、企業理念にある「豊かな未来」の創造に向け、当社グループの事業基盤拡充や持続的成長などの「双日が得る価値」と、国・地域経済の発展や人権・環境配慮などの「社会が得る価値」の2つの価値の実現と最大化に取り組んでいます。
(双日グループ企業理念)
双日グループは、誠実な心で世界を結び、
新たな価値と豊かな未来を創造します。
(双日グループスローガン)
New way, New value
(双日の価値創造モデル)

「豊かな未来」の創造、「2つの価値」の実現に向けて、当社では人材を最も重要な経営資源と考え、「人財」と表記し、価値創造モデルの中心に据えています。世界中のニーズを把握し、価値を生み出す人財力を高めていくことが、双日の価値創造の源泉です。
実効性の高い戦略と充実したコーポレート・ガバナンスのもと、常に新しい発想を持ち、トレーディング・権益投資・事業投資を通じた機能を発揮して、将来を見据え、外部環境の目まぐるしい変化やニーズの多様化に先駆けたスピード感あるビジネスを展開しています。
また、世界各国に広がる事業拠点やパートナーシップ、それぞれの地域で長年にわたり育んできたお客様との信頼関係やブランド力など、築き上げてきた確固たる事業基盤が、当社の持続的な成長を支えています。
当社が創造した価値は、「社会が得る価値」として還元され、ステークホルダーからの信頼獲得につながります。また、創造した価値は、「双日が得る価値」として、当社の人材基盤やビジネスノウハウといった各事業基盤を拡充するものとして還元され、当社の競争力強化や新たなビジネスチャンスの増加につながります。
また、このような企業理念のもと、2030年における「目指す姿」として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げており、総合商社としての使命である、必要なモノ・サービスを必要なところに届けつつ、マーケットニーズや社会課題に応える事業や人といった価値を創造し続けることにより、持続的な企業価値向上を実現しています。
(2) 「中期経営計画2023」の振り返り
「中期経営計画2023」は、2030年の目指す姿「事業や人材を創造し続ける総合商社」に向けた第一歩と位置づけ、持続的な企業価値向上に取り組んできました。
稼ぐ力の強化によりROEを向上させ、非財務面も含めた当社取り組みの透明性を高めることにより資本コストの低減に努めると共に、安定的・継続的な配当政策に加え、機動的な自社株買いを行いました。これら取り組みの結果として、定量計画については全ての項目を達成することができました。
<「中期経営計画2023」の定量計画と実績>

人材戦略については、人事施策の効果・浸透度を定量的に測定しながら人的資本経営を実行するため、2021年6月に以下の人材KPIを設定しました。外部環境や人事施策の浸透状況に応じて柔軟な見直しができるよう動的KPIとし、半期ごとに経営会議及び取締役会において進捗の確認、及び人事施策の検証を行っています。
※当社実質ベース
2023年度に子が出生した社員の育児休暇取得率には、2024年度に取得を計画中の者(男性社員4名)を含む。
(3) 「中期経営計画2026」について
① 「中期経営計画2026」の位置づけ “Set for Next Stage”
「中期経営計画2023」の進捗・成果を踏まえ、「中期経営計画2026」のスタートに際し、新たにNext Stageとして現在の収益水準と企業価値を2倍に成長させるとの定量ターゲットを定めました。

「中期経営計画2026 - Set for Next Stage - 」は、このNext Stageを見据えて、成長基盤と人的資本の強化に取り組む中期経営計画と位置づけています。Next Stageに到達するためのキーメッセージとなる「双日らしい成長ストーリー」の実現に向け、成長基盤と人材への積極投資を行っていきます。
② 定量目標
「中期経営計画2026」における定量目標として以下を掲げています。
将来の成長に向けて、財務規律を堅持した上で6,000億円の投資を実行します。ROEについては、当社が認識する株主資本コスト9~10%を超える12%超を確保し、企業価値と株主価値の向上を図ります。株主還元については、基礎的営業キャッシュフローの3割程度を充当するというキャッシュアロケーション方針に基づき行っていきます。

※株主資本:その他の資本の構成要素(為替換算調整勘定、その他評価差額金、繰延ヘッジ損益等)を除外した前期末自己資本
※株主資本DOE:支払配当÷株主資本
③ Next Stageへの基本方針
双日らしい成長ストーリーの実現に向け、成長基盤と人的資本を強化するために、以下の基本方針に沿って独自性・強みをさらに磨き上げることで、競争優位を確立します。

“競争優位・成長の追求 – 双日らしさ”
双日はこれまで100年以上にわたり、「先読み」「変革」「挑戦」を通じて、必要なモノ・サービスを必要なところに届けることを一貫して使命・ミッションとしてきました。
「中期経営計画2026」においてはそれらを踏襲しつつ、「スピード」、「共創・共有」、「マーケットイン“Glocal”」、「パートナーシップ」、「ヒトの魅力(ちから)」を新たな要素として再定義しました。双日DNA から生まれる独自性・双日らしさを常に進化させ、当社競争力の源泉とし、持続的な成長を実現します。

④ 成長基盤の強化
1) 戦略的強化領域
「中期経営計画2023」で定めた3つの注力領域における実績・進捗を踏まえ、以下を戦略的強化領域として再設定しました。加えて、全ての事業領域に必要不可欠な要素として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」領域を全社横断的に強化します。
また、ベトナムで確立されつつあるような強みのある成長市場におけるビジネスの面展開を、さらに他地域においても推進していきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)については、「中期経営計画2023」でのDigital開拓期を経て、以下の3つの柱を通じ“Digital in All”による価値創造を図ります。
・デジタルビジネスの収益化
-さくらインターネットとの戦略的提携と協業による成長の取り込み
-双日グループのデジタル事業会社である日商エレクトロニクスのさらなる機能強化・収益力の向上など
によるデジタルビジネスの収益の塊化
・既存ビジネスとデジタルの掛け合わせによる稼ぐ力、価値・競争力の向上
・デジタル人材の拡充、データ・AI活用のためのデジタル基盤の整備・構築
GX(グリーントランスフォーメーション)に関しては、2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」での脱炭素目標に向けた取り組みを加速させます。(詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ チャレンジ ① 脱炭素社会実現への挑戦(24~28ページ)」を参照)
GX分野の技術革新や社会への普及速度を見極め、そのステージに合ったソリューションを自ら創造・提供することを目的とし、2024年1月に経営直轄の専門組織を設置しました。GXに資する事業に積極的に資源配分することで、カーボンニュートラル社会の実現と当社の企業価値拡大の両立を目指します。
2) 双日らしい成長ストーリー
当社の示す双日らしい成長ストーリーの事例としては、以下が挙げられます。
“成長市場 面展開”
当社に知見があり、成長が期待できる市場において、関連性のある事業・領域に集中的に投資を行うことで、点から線に、線から面に展開し、市場ニーズ・成長を取り込みます。そのような事業をベトナム以外においても早期に形成し、その国・地域と共に成長していくストーリーの実現を目指します。現場に密着した事業運営を行い、創意工夫をこらしてビジネスを作り続け、パートナーと共に成長していきます。
“ビジネスモデルの変革・深化”
当社はマーケットインの徹底により、社会ニーズに合わせて、様々なビジネスを変革してきました。
例えば、エネルギー事業においては石油ガスの輸入トレードから始まり、発電プラントの輸出、大型発電所の開発・運営、近年では再エネや省エネを掛け合わせたEnergy as a Serviceといった事業を開始するなど、時代と共に変革を遂げてきました。
当社の事業創造DNAである「先読み力」、「変革」、「挑戦」に加え、双日らしさを構成するマーケットイン、パートナーシップといった強みを活かした成長ストーリーの事例であり、今後も各事業領域・市場において変革と成長を続けていきます。
“バリューチェーン上の事業領域の拡大”
情報技術の進展やグローバル化により、様々なバリューチェーンにおいて中間業種の機能が低下し、付加価値の源泉が川上と川下に移行してきました。当社は従来より川中であるトレードビジネスを中心に営んできましたが、幅広い業界での知見・接点を活かし、付加価値の高い領域に積極展開することで、自らの事業ポートフォリオを変革し、事業価値の最大化を図っていきます。
3) 新規投資の方針
新規投資に関しては、3ヶ年6,000億円の成長投資並びにヒトへの投資を計画しています。
ポートフォリオを強化する成長投資においては競争優位性や独自性を追求し、既存領域を核とした事業の 「塊」を構築することに重点を置いた最適なリソース配分・成長戦略を実行していきます。
また、ポートフォリオをトランスフォームする成長投資においては、十分な収益性を確保できる500億円超の規模感ある投資を実行します。

⑤ 人的資本の強化
1) 人材戦略の考え方
「中期経営計画2026」では、2030年の目指す姿である「事業や人材を創造し続ける総合商社」に向け、「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」の3点の人材戦略基本方針を掲げ、双日らしい成長ストーリーの実現に向けた「事業創出力」と「事業経営力」の強化を目指します。
人的資本の強化を支える土台として、「双日らしいカルチャーの醸成」、「Digital in All」、「データを活用した対話」により、挑戦や思考の柔軟さといった双日らしい独自の風土・文化を深化させ、事業創出力、事業経営力の最大化を図っていきます。
2024年4月より、役割等級・評価・報酬などを見直した、新たな人事制度をスタートさせました。社員一人ひとりの成長、組織の成長・活性化、会社の成長・企業価値向上を実現させることで、当社らしい人的資本経営を加速させていきます。

2) 人材KPI(動的)
2030年の目指す姿に向けて双日らしい成長ストーリーを実現するためには、事業創出力、事業経営力を備えると共に、Digital in Allを実践できるヒト(組織・人材)の育成・強化が必要となることから、次に掲げる人材KPIを設定し、各種施策の効果を測っていきます。

⑥ キャッシュフロー・マネジメント
基礎的営業キャッシュフローと資産入替を原資に、さらなる成長に向けた成長・ヒト投資と株主還元を実行します。基礎的営業キャッシュフローの7割程度を成長・ヒト投資に、3割程度を株主還元に充当します。

⑦ 利益配分に関する基本方針
「中期経営計画2026」期間累計の基礎的営業キャッシュフローの3割程度を株主還元する方針です。
1) 配当
・安定的かつ継続的な配当を行うため株主資本DOE4.5%を配当方針とし、業績変動や株価・為替による
影響を最小限に抑える
・当期純利益による株主資本の積み上げが、株主還元による株主資本の減少幅を上回る限りにおいて、
累進的に増配となる配当方針
2) 自己株式取得
・キャッシュフロー・マネジメント方針に基づき、「中期経営計画2026」期間を通じて機動的に自己
株式取得を実施
これを踏まえ、2025年3月期の配当については、1株当たり年間150円(中間75円、期末75円)を予定しています。当該年度の当期純利益(当社株主帰属)に基づく連結配当性向(予想)は29.6%となります。

(1) サステナビリティ チャレンジ
当社グループにとってのサステナビリティとは、「双日グループ企業理念」に基づき、ステークホルダーと共に事業を通じた「2つの価値(双日が得る価値と社会が得る価値)」の最大化を図り、当社グループと社会の持続的な成長を目指すことです。
この「2つの価値」の最大化に向けて、当社は中長期的に取り組むべき「マテリアリティ(サステナビリティ重要課題)」を定めました。このマテリアリティの策定にあたってはパリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)などを参照し、当社グループと社会の持続的な成長のために対処すべき普遍的な課題として「人権」「環境」「資源」「地域社会」「人材」「ガバナンス」を抽出、設定しました。
このマテリアリティの中から、個別具体的な課題を特定し2050年に向けた長期ビジョンとして「脱炭素社会実現 への挑戦」と「サプライチェーンを含む人権尊重」の2本柱からなる「サステナビリティ チャレンジ」を策定しました。この長期ビジョンは中期経営計画をはじめとする成長戦略を策定する上での下敷きにもなっています。
当社は、このような課題への対応のため、ステークホルダーとの対話などを通じ、当社グループにとってのリスクと機会の把握に努め、脱炭素社会実現に向けた対策や人権関連方針などの各種個別方針を策定、それらを「中期経営計画2026」にも反映し、具体的なアクションにつなげています。また、当社グループは2018年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の最終提言に賛同し、そのフレームワークを活用して積極的な情報開示と透明性向上に努めています。

当社グループにおけるサステナビリティに関するガバナンス体制の主要な構成要素は、取締役会、経営会議、サステナビリティ委員会の3つの会議体です。また、執行役員の中から、サステナビリティ全般を管掌する担当役員が任命されています。サステナビリティ委員会は社長が委員長を務め、年に4回以上開催されています。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する方針や考え方の整備、サステナビリティ推進体制の構築、リスクと機会の特定・評価、指標や目標の策定、取り組み状況のモニタリングなどを行っています。サステナビリティ委員会では、サステナビリティ推進部が事務局としてサステナビリティ委員会の執行の実務を担っています。また、サステナビリティ委員会の活動や検討・協議された方針・課題は経営会議及び取締役会に付議又は報告されています。経営会議は社長が議長を務め、原則毎月2回開催されています。経営会議では、サステナビリティに関する全社方針や戦略などの重要事項の審議・決裁を行うほか、サステナビリティ委員会の活動報告を受けて、必要に応じてサステナビリティ委員会に対応の指示を行っています。取締役会はこれらのプロセスを定期的に監督し、必要に応じて対応の指示を行っています。
<サステナビリティ推進・実行体制図>

<2023年度サステナビリティ関連の会議体における主な承認・報告事項>
サステナビリティ推進部が、各種媒体からの社内外の動向の把握、ステークホルダーとのコミュニケーション、外部専門家や有識者からの助言・指摘等を通じて当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクの識別・特定・評価に関する情報を収集し、サステナビリティ委員会に報告しています。サステナビリティ委員会は、それらの報告を受けて、検討・議論を行い、当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクを特定・評価しています。また、社長管下の業務執行機関である内部統制委員会が、業務遂行に伴う様々なリスクの認識、新たな事業や環境の変化により生じるリスクの検討を行い、必要な体制の整備とモニタリングを通じた改善施策の協議、担当部署への指示を行っています。環境・社会(人権)リスクは、当社グループが認識するリスクの1つとして特定され、脱炭素、気候変動対応、サプライチェーンを含む人権問題の防止・対応についてのリスク管理運営の進捗、改善状況を内部統制委員会がモニタリングの上、その結果について四半期ごとに経営会議、取締役会に報告しています。加えて、当社グループの個別の投融資案件を審議する投融資審議会での審議過程において、サステナビリティに関するリスクの特定と評価が行われています。以上のほか、当社では毎年、外部の有識者を招いて経営陣との間でステークホルダーダイアログを開催しており、その中でサステナビリティ経営について討議・確認しています。環境・社会に関するリスクについては、
<ステークホルダーダイアログの開催>
経営が多様なステークホルダーの視点を取り入れるための取り組みの一環として、定期的にダイアログを開催しています。
事業と人材を創造し続ける総合商社を目指す当社として、人的資本経営を通じていかに企業の持続的成長を実現させ、ビジネス創造につなげていくか、そのために人材戦略をどう進めていくべきかにつき議論いたしました。
① 脱炭素社会実現への挑戦
1) Scope1、Scope2の削減
当社は、CO2排出の削減は脱炭素社会実現に向けた当社グループの責務であると考えています。したがって、当社グループによるCO2排出(Scope1とScope2)の削減を加速し、来たる脱炭素社会への耐性を高めると共に、この社会移行を新たな機会と捉え、幅広い分野におけるビジネスを進めていきます。2021年3月には、「サステナビリティ チャレンジ」を実践すべく脱炭素対応方針を策定し、Scope1とScope2の削減目標(後述)を設定しました。
2) Scope3、Scope4の計測と把握
当社は、脱炭素社会の実現のためには、当社グループのCO2排出(Scope1とScope2)削減に加えて、サプライチェーン全体のCO2排出(Scope3)までを含めた取り組みが必要であると考えています。また、Scope3の多い産業とそのサプライチェーン上の工程においては現在又は将来的に排出削減ストレスがかかる可能性が高いと考え、リスクとしてその計測と把握を行っています。具体的には、外部専門家を起用して、当社が事業を行っている産業のサプライチェーンにおいてScope3の多い所を特定し、リスクが高い、又は高まる箇所として分析し、その結果を示したものが次のCO2分析図です。縦軸に当社グループが関わっている一般的にCO2排出が多い産業分野を、横軸にサプライチェーン上の工程を置き、当社グループにとってのリスクがある所を濃いオレンジ色で表しています。当社グループへの影響が特に大きいと考えられる発電、製鉄分野からScope3の計測による定量把握を進めており、順次計測範囲を拡大しています。一方で、Scope3が多い所はCO2削減貢献による新たな事業創出の機会のある所でもあると捉え、削減貢献事業の取り組みを推進すると共に、その削減貢献量をScope4として定義づけ計測と把握を行っています。
<サプライチェーン上のCO2分析図>

注:2024年3月期データ。GHGプロトコルが規定する、Scope3の15のカテゴリーを簡略化して作成しています。
カテゴリー別の詳細は、https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/e/data/ をご参照ください。
* Scope4の計算方法:(IEAが公表する2022年の世界火力発電原単位(832g/kWh)- 当社発電原単位)×発電量
3) 脱炭素ロードマップ
当社は注力分野として再生可能エネルギー事業、トランジション事業を含む「エッセンシャルインフラ」や「エネルギー・素材ソリューション」を掲げていますが、それらの戦略の下敷きの1つとして、下記、脱炭素ロードマップがあります。「社会動向」や「必要な技術」を年代ごとに想定し、当社の「リスク」と「機会」を整理したもので、今後も定期的に見直していきます。
- 増加している再生可能エネルギーやサーキュラービジネスは恒常的に拡大し、将来的には余剰再エネ電力を使用したグリーン水素の活用が見込まれます。
- ただし、脱炭素社会への移行には、再生可能エネルギー普及時の不安定さを下支えするトランジション期間が必要と考えています。
- 当社は、トランジション事業として、高効率のガス火力発電や省エネサービス事業を推進することで、脱炭素社会への移行を事業機会につなげていきます。
- なお、技術動向は刻々と変わるため、随時見直しを行い、当社の対応の方向性を定期的に更新していきます。
<脱炭素ロードマップ>

4) シナリオ分析
● 移行リスク
外部調査、内部分析も踏まえ、「リスク」と「機会」が、当社グループの経営戦略、事業活動、財務計画に対する影響がより大きいと考えられる事業分野について順次シナリオ分析を行い財務への影響を分析しています。具体的には、CO2排出量の多いリスクのある所(<サプライチェーン上のCO2分析図>を参照)の中で当社グループが事業を行っており、特に影響が大きいと考えられる石炭権益事業と発電事業における移行リスクについてシナリオ分析を行いました。
<シナリオ分析>
● 物理的リスク
気候変動が抑制できず温暖化が進行した場合の物理的リスクについては、まず、海岸洪水や河岸洪水などの水に関するリスク(急性リスク)に注目して分析を行っています。具体的には、世界資源研究所(World Resources Institute)が提供する水リスクの分析ツールAqueductの評価「Extremely High」と「High」の地点に所在する事業・資産(製造・加工工場などの非オフィス)が水リスクにさらされていると考え、その2024年3月末現在の有形固定資産額(リース資産は除く)を財務影響額として分析しました。その結果、東南アジア地域を中心に、一部の事業拠点における海岸洪水・河岸洪水の水リスクが高いことを確認し、財務影響のある資産(有形固定資産)の額は約300億円になると算定しました。
当社は、前項で説明した当社グループの気候変動における移行リスクとその機会を評価及び管理するための指標と目標を脱炭素方針として設定しています。その進捗状況は以下のとおりです。
<脱炭素方針と進捗状況>

<Scope1、Scope2排出量の推移(総量※)>
※2020年度以降の新規事業を含む
<Scope1、Scope2削減の進捗(既存事業)>

<権益資産推移>

なお、上記の目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化に応じて柔軟に見直しを行います。また、2023年度のScope1、Scope2排出量は現時点の集計値であり、第三者保証を取得した数値については当社ウェブサイト及び統合報告書にて開示いたします。
② サプライチェーンを含む人権尊重
当社グループはグローバルに様々な事業を展開していますが、その事業に関わるサプライチェーン上のどの国・地域においても人権尊重に努めるべく、人権リスクの把握及び低減を図っています。その取り組みにあたっては、「国際人権章典」及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」を支持し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」フレームワークに沿って人権尊重への対応を行っています。
<国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が定める人権対応のフレームワーク>

1) 方針の策定・共有
当社グループは、「国連グローバル・コンパクト」の10の原則などを踏まえて、「双日グループ人権方針」や「双日グループ サプライチェーンCSR行動指針」などの方針を策定しています。サプライヤーやグループ会社に対して、当社の方針を周知し、理解と実践を求めています。また、サプライチェーン上の人権尊重においては、事業現場における認識と理解が重要であると考えています。そこで、当社グループ各社からの人権尊重への理解と事業現場への認識徹底を行う旨の確認書の取得や、グループ各社の経営陣とサステナビリティ推進部(サステナビリティ委員会事務局)との間での対話を通じ、方針や取り組みの周知及び現場の対応状況の確認を行い、人権尊重意識の徹底と理解の浸透を図っています。
2) リスク評価
当社グループはグローバルに事業を展開し、その事業の範囲は多岐に亘る上に、川上から川下までサプライチェーンに広く関わっています。そこで、リスクベースアプローチの観点より、英国NGO「ビジネスと人権リソースセンター」が保有する人権リスクの発生事例データベースをもとに、当社グループの事業の中でも特にリスクが高い事業分野を特定すると共に、サプライチェーン全体において一般的にどの工程で人権リスクが発生しやすいか、分析・確認をしています。

上記のとおり特定した高リスク事業分野に対し、当社では以下のPDCAによる確認を行う体制を構築しました。
● リスク評価のPDCA

● 現地デュー・ディリジェンス
当社は、人権リスクを調査・確認するために、個々の取引や事業において取引や事業が行われている現場でのデュー・ディリジェンスを必要に応じて行っています。例えば、当社グループは木材の調達(輸入)について、合法性の確認、環境への配慮、社会への配慮の3本柱からなる木材調達方針を定めていますが、この方針の実践として、供給元を当社自身にて訪問し、その経営陣、現地NGO、行政機関、地域住民代表との面談を含む調査を行っています。
● グループ会社との対話
<外国人技能実習生に対する人権尊重>
当社では一部のグループ会社において外国人技能実習生を受け入れていますが、当該グループ会社に対しては、アンケート調査を実施して関連法令の遵守を確認するのみならず、受入現場を訪問して労働現場を確認し、経営層、及び技能実習生と対話を実施することで、技能実習生の労働・生活環境を把握し、問題がないことの確認に努めています。
技能実習生を受け入れている当社グループ会社は、人権尊重に留意するとともに、日本語学習の機会を設けたり、旅行やレクリエーション等を開催し、技能実習生との円滑なコミュニケーションを意識した取り組みを行っています。
また、グループ会社間で情報交換会を開催し、外部専門家による講演を受講、あるいは受入れに当たっての課題に関し意見交換を行う等、グループ内での意識向上を図っています。
1) 改善・救済/実績開示
策定した方針に従い、リスク評価を行い、サプライチェーンを含む人権尊重の取り組みを進め、「国際人権章典」や国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が掲げる人権尊重の実現を目指します。2024年3月期の高リスク事業分野に対するリスク評価においては、高リスク事業分野に関連する営業部署や当社連結会社のマネジメントまたは取引担当者に対し、各高リスク事業分野の課題の周知徹底に加え、課題への対応や現場における確認状況について対話等により確認し(2023年度実績:全152社、計50回)、サプライチェーンにおける対応について問題がないことを確認しました。今後も、外部専門家の意見も聴取しながら、これら高リスク事業分野において、PDCAを通じた継続的な改善を進めると共に、適時・適切な開示も行います。
● 木材調達における指標と目標
当社グループは、戦略のリスク評価の項にて説明のとおり、高リスク事業分野を特定しており、その中で木材分野については木材調達方針として指標と目標を定めています。具体的には、海外から調達(輸入)する木材について原産地までのトレーサビリティと、環境・社会(人権)へ配慮した森林管理の適切性に応じて以下の4つのレベルに分けて評価し調達を行うための目標を定めています。
レベルA:認証材(※)
レベルB:トレーサビリティに加え、認証以外で環境・社会(人権)に配慮した森林管理の適切性を
検証済みの木材
レベルC:トレーサビリティが確保されている木材
レベルD:トレーサビリティの確保が不十分な木材
※ FSC(R)、PEFCなどによる認証木材
<定量推移と目標>

*毎年、評価基準を厳格化しており、2020年度以降はレベルAを認証材のみとしております。
2023年度のレベルA比率は23%。レベルA+Bは2022年度94%→2023年度99%(+5ポイント)となっています。
※上表における調達木材の取扱いに関する比率は、WWFジャパンの「林産物調達チェックリスト」を用いて当社が実施した評価に基づいて決定したレベルごとの木材(輸入材)の[調達金額]÷[調査対象とした木材(輸入材)総調達金額]で算定しています。また2023年度調査結果は、前年度の2022年度における木材調達金額を基に算出しています。なお、2020年度より第三者保証を取得しています。
当社グループの木材調達方針とその目標・実績の詳細については当社ウェブサイトをご覧ください(ただし、適宜内容を更新することがあります)。
<参考リンク>
https://www.sojitz.com/jp/csr/supply/lumber/
(2) 人材戦略に関する基本方針
全社方針として掲げる2030年の目指す姿「事業や人材を創造し続ける総合商社」の実現に向け、価値創造の源泉である多様性と自律性を備えた個の成長を、組織の成長、会社の成長につなげています。
①「中期経営計画2023」における人材戦略の振り返り
当社では、人事施策の効果・浸透度を定量的に測定しながら人的資本経営を実行するため、2021年6月に以下の「人材KPI」を設定しました。外部環境や人事施策の浸透状況に応じて柔軟な見直しができるよう動的KPIとし、具体的な施策を見直し、モニタリングする体制を整えています。人材KPIの進捗を人事施策の取り組みと併せて、半期ごとに経営会議及び取締役会へ報告しています。人材KPIの進捗は取締役及び執行役員の業績連動型株式報酬制度における報酬決定プロセスに評価指標として組み込んでおり、経営戦略実行への連動を高めています。
<参考リンク>
「中期経営計画2023」中の人材KPI進捗一覧
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/s/data/
<人材KPI(動的)と2023年度の実績>

※1 2023年度の数値は当社実質ベース。2023年度に子が出生した社員の取得率で2024年度に取得を計画中のものを含む。
なお、育児介護休業法に基づく法定ベースでは97%(96%)で、取得者には2022年度に子が出生して2023年度に
初めて育児休暇を取得した社員が含まれる一方、2024年度に計画中のものは含まれない。
2023年度の数値は現時点の集計値であり、第三者保証を取得した数値については当社ウェブサイト及び統合報告書にて開示いたします。
②「中期経営計画2026」を支える人材戦略
2030年の目指す姿「事業や人材を創造し続ける総合商社」に向け、「中期経営計画2023」では多様性と自律性を備える個の集団を形成するために、個の成長に比重を置きながら組織力の強化に注力してきました。「中期経営計画2026」では、当社グループの人材戦略基本方針として、双日らしい成長ストーリーの実現に向けた「事業創出力」と「事業経営力」の強化を目指します。
「中期経営計画2026」基本方針に掲げるNext Stage(当期利益2,000億円、ROE15%超)に向けた基盤の確立には、強みある事業群への進化、高い収益性の確保が不可欠であり、既存事業の拡大と新規事業投資を通じたグループの拡大とネットワーク活用による共創の促進を中心に「グループ連結力」を強化していきます。「中期経営計画2023」から掲げていた、自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個の強化とそれを組織力向上につなげるミドルマネジメントの強化を加速、環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢により、「事業創出できる」「事業経営できる」ヒト(組織・人材)を持続的に創出していきます。
持続的な価値創造に向けた「事業基盤」と「人的資本」の強化を支える土台として、「双日らしいカルチャー」の醸成、「Digital in All」、「データを活用した対話」の浸透により、新たな事業創出や生産性向上につなげ、当社スローガン“New way, New value”を実践していきます。挑戦や思考の柔軟さ(若さ)といった双日らしい独自の風土・文化を深化させ、社員が徹底的に向き合い対話し、事業創造につなげていきます。
2024年4月から、2030年の目指す姿の実現に向け、次なる成長を実現していくために重要なのは人材のギアチェンジです。社員一人ひとりがどこよりも挑戦・成長できる状態を目指し、報酬の引き上げ・役割等級・評価など人事制度を見直し、新たな人事制度をスタートさせました。双日らしい成長ストーリーを実現するヒトの魅力(ちから)を強化し、社員一人ひとりの成長が、組織の成長・活性化となり、会社の成長・企業価値向上を実現させる当社らしい人的資本経営を加速させていきます。2024年度は個人の成長を引き出すため、評価のさらなる納得度の向上度合いをモニタリングします。

商社にとって価値創造の中核であり最も重要な資本である「人材」の力を最大化させ、自ら変革し新たな価値を創造し続けられる「個」の集団を形成し、価値創造につなげる「人的資本経営」を次の実行体制のもとで推進しています。
人的資本経営の実行体制として、取締役会で経営視点での方針の議論を経て、重要な人事事項は、社長が議長を務める人事審議会で審議・決裁しています。具体的な取り組みである人材KPIの進捗状況や人事施策の効果・課題などは経営会議と取締役会で定期的に議論しながら進めています。リスクの早期発見・対処のため、エンゲージメントサーベイや360度サーベイなどを活用してモニタリングする体制を整え、また、コンプライアンスホットラインや社内目安箱を設置し、現場の意見を吸い上げ、持続的な企業価値向上の推進力を高めていきます。
<人的資本経営 実行体制図>

人的資本価値の毀損「リスク」と、価値向上のための「機会」という「攻めと守り」の両面から各重要課題にアプローチすることによって、企業価値向上につなげています。また、2030年の目指す姿の体現に向け、足元の課題のみならず、将来を見据えて今着手すべき課題に対しても取り組みを開始しています。

1) 人材KPI(動的)
「中期経営計画2023」では個の成長に比重を置きながら組織力の強化に注力、「中期経営計画2026」では女性課長比率の目標を2030年代に50%へ引き上げ、各種取り組みを継続すると共にアウトプットを意識し「事業創出力」と「事業経営力」を高め、双日らしい成長ストーリーの実現を目指した内容にいたしました。
具体的には、「事業創出力・事業経営力」の向上に向けた「双日らしいカルチャーの醸成(挑戦指数、風通し指数)」、「多様な人材活躍(女性総合職 海外・国内出向経験割合、海外グループ会社CxO(現地人材)比率、デジタル応用人材)」に取り組んでいきます。また、一部KPIでは、定期的に実施しているエンゲージメントサーベイ(*1)の回答率を用いることで社員の声を定点観測し施策につなげていきます。

(*1)2017年より開始したエンゲージメントサーベイ(社員意識調査)は、当社の状況を正確に把握し、効果的な人材戦略につなげるために外部専門家の監修のもと、当社独自の設問を策定・導入しています。サーベイでは、回答選択肢を6択設けており、そのうち「①とてもそう思う」「②そう思う」の回答割合を「積極肯定回答率」、「③どちらかといえばそう思う」を含めた回答割合を「肯定回答率」と定義し、組織別や属性別(年代別、職群別)などに分析を行い、各組織単位での改善活動につなげています。
<参考リンク>
エンゲージメントサーベイ
https://www.sojitz.com/jp/corporate/strategy/jinzai/
「中期経営計画2026」における当社グループの人材戦略基本方針として、「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」の3点を掲げています。
1) 人材戦略基本方針①「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」
「多様性を競争力に」をテーマに、人材の多様性を、変化の激しい市場環境に対応し、常にスピード感をもって事業創造できる組織の力へと変えることで、「事業や人材を創造し続ける総合商社」を目指しています。ジェンダー、現地人材、高い専門性を持つキャリア採用者など、多様な人材の獲得と活躍機会の提供を積極的かつ継続的に行いながら、それぞれの特性や能力を最大限に活かせる職場環境整備、マネジメント層の教育など様々な取り組みを実施しています。
● 女性活躍推進
組織の意思決定に関わる女性社員を増やし、2030年代には男女間の差がなく適所適材が実現している状態を目指し、ダイバーシティマネジメントの専任組織を中心に、課長までの人材パイプライン拡張に取り組んでいます。
多様性をイノベーションの創出といった競争力につなげていくために、女性活躍推進を人材戦略の最重要テーマの1つと位置づけています。「中期経営計画2026」の最終年度には課長に占める女性の比率を20%程度とし、2030年代には、これを50%程度へ引き上げていきます。各世代層のパイプライン形成と経験の蓄積、男女間における経験値のギャップ解消、女性特有のライフイベントを見越した「キャリアを止めない」施策に取り組んでいます。

- 女性課長職比率は、2023年度に10%以上とした目標に対し、2024年3月31日現在で12%
- 女性総合職の新卒採用比率は2018年度以降継続して30%以上を維持 (2024年4月入社:42%)
- 女性総合職の海外・国内出向経験割合は2023年度に50%とした目標に対しては2024年3月31日現在で48%
なお、「中期経営計画2026」における人材KPIについては、37ページをご参照ください
- (ご参考)取締役9名のうち2名、監査役5名のうち2名が女性役員
(2024年3月31日現在:女性役員割合28.6%)
- (ご参考)専門知識や経験を備えた外部からの人材登用や内部昇格により、女性執行役員は2名
(2024年3月31日現在)
女性社員の採用、育成、登用を積極的に進めてきた結果、新規事業領域で活躍する事例も生まれています。国内では、当社がロイヤルホールディングス株式会社と設立したカフェ事業の運営展開を行う事業会社において、女性社員が社長に就任し、事業運営の陣頭指揮を執っています。また、当社がベトナム最大手の乳業メーカーVietnam Dairy Products JSCと共同で設立した事業会社の立ち上げでは、出身部署やキャリア、国籍が異なる多様なバックグラウンドの社員が集結した中で、メンバーの一人である女性駐在員が、セールス・マーケティング担当として、ベトナム国内における販売チャネルの開拓に取り組んでいます。
ジェンダーに関わらず仕事と育児を両立することについて、職場全体が理解・応援できる環境を整えることは、女性がライフイベントを経てもキャリアを中断することなく活躍できる企業風土醸成のために重要であり、男性社員を含めた育児休暇取得率100%の維持を目指しています。その中で、業務効率化やチームマネジメント力の強化に向けた取り組みや早期復職支援や両立支援策の推進により、社員のキャリア形成を支援しています。
当社は2022年4月に育児のための特別休暇である男女共通の「産後育児休暇」を導入しました。生まれた子が1歳になるまで通算で40労働日の有給休暇を回数制限なく分割し、自由に取得できるもので、男性社員では、従事中の業務や家族の状況に応じて育児休暇・休業を柔軟に取得することを可能としています。
下図は、男性社員の育児休暇・休業の実績分布です。これは、「産後育児休暇」の運用を開始した2022年4月からの1年間(2022年度)に初めてこの休暇を利用した男性社員46名を対象に、生まれた子が1歳になるまでに取得した育児休暇・休業の通算日数※を示したものです。実績分布をみると、短期間の育休取得から長期間の育休取得まで幅があり、男性社員それぞれの状況に応じて育児休暇・休業を取得していることがわかります。
※産後育児休暇と、これに連続する所定休日又は法定の育児休業を加えた日数。
子が1歳になるまでの追跡となるため、育児休暇・休業の取得期間には翌年度となる2023年度も含まれます。
<2022年度に初めて育休を取得した男性社員(46名)の出生後1年までの育休取得日数>

また、当社では「産後育児休暇」を取得した男性社員から、どのように休暇を取得したかをヒアリングしています。以下は男性社員の利用実例ですが、出産直後から取得する育休だけでなく、多様な取得の形が見られます。
<男性社員の利用実例>
・プロジェクトに取り組んでいる期間や決算期を避けた育児休暇の取得
・配偶者が出産の前後に実家に滞在する「里帰り出産」から戻った時からの育児休暇の取得
・配偶者の早期復職支援として復職のタイミングでの育児休暇の取得
・新生児を養育中の配偶者と定期的に交代して配偶者の負担を軽減する目的で、所定休日に産後育児休
暇1日を加えて週休3日として担当する業務との両立を図った形での育児休暇の取得など
仕事と育児の両立を応援する風土を醸成するために、部長研修では、男性育休をテーマとするパネルディスカッションを実施し、現場の課題やマネジメントの工夫など、活発な意見交換を実施しました。また、多様性を価値創造につなげるための意識醸成の取り組みとして、ダイバーシティ月間を開催し、育児、介護、LGBTQなど複数テーマでの講演会を通じて社員一人ひとりがDEI推進を考え、理解を深める機会を設けています。
男女の賃金の差異については、
● デジタル人材育成の活用と育成のさらなる強化
当社は社内外のパートナーと共にデジタルを活用することで、ビジネスモデルや業務プロセスの変革を実践できるデジタル人材を育成するため、スキル分野・スキルレベルの設計と研修カリキュラムの独自開発を行いました。既に、入門・基礎による全社員のリテラシーレベルの底上げが完了し、上位の応用人材も「中期経営計画2023」の目標であった300人の育成を達成(実績:321人、そのうちエキスパート:60人)しました。これらのデジタル人材を活用することで、鉱物取引における価格最適化、水産事業会社の商品販売戦略などのデータ分析や、本マグロ養殖事業のデジタルツインによる尾数推定方法の特許出願など、ビジネス課題への実践を着実に進めています。また、エキスパートとなった管理職を営業本部・コーポレートの各組織内のデジタル専門部隊のマネジメントに抜擢し、Digital in Allの実現に向けて強固な体制を築いています。
「中期経営計画2026」においては、全社のデジタルリテラシーの更新・底上げを継続しつつ、応用人材の研修カリキュラムの強化と育成人数のさらなる拡大を進めていきます。応用基礎では、データとテクノロジーをビジネスモデルにどのように組み入れるかを構想するためにビジネスアーキテクチャ研修(約20時間程度)を新設します。また、育成人数も全総合職の50%程度(約1,000名)、そのうちエキスパートは10%程度(約200名)の育成を目指し、全組織に応用人材が配置され、同人材を基軸とした全社レベルでのデジタル変革の実現を目指します。
● キャリア採用者の活躍
当社では、経営人材、DXなどの専門人材、ジェンダー、現地人材などの多様性強化に向けたキャリア採用に注力しています。2024年3月末現在で、管理職ポストにおけるキャリア採用者の割合は24%、役員ポストにおいては39%を占めています。なお、2023年度の採用に占めるキャリア採用者の比率は31%でした。今後も、年間の新規採用者数の30%程度をキャリア採用者としていく予定で、そのうち40%程度を女性とする方針です。また、2021年12月には、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)・執行役員として専門人材(女性)を社外から迎えました(※)。これまでに他社で培った知見や女性ならではの視点などを経営や現場との対話に活かし、新規事業の創出と事業モデルの変革につながるデジタルの実装を加速していきます。
※2024年4月1日付で、専務執行役員 CDO 兼 CIO 兼 デジタル推進担当本部長に就任
● 現地人材の活躍
海外事業会社を起点に現地ネットワークに入り込み、事業領域の拡大や新規事業の創出につなげるため、現地人材のCxOポストをさらに拡大し、2022年3月末に40%だった海外事業会社の現地人材CxO比率が、2024年3月末現在で45%となりました。2025年度までに50%と設定していた目標値を、「中期経営計画2026」では60%に引き上げ、さらなる現地化を目指しています。域内での意見交換/情報共有によるマーケットイン・事業機会発掘の強化、共創と共有を推進するための海外地域における取り組みとして、海外事業会社CxOで構成するアドバイザリーボードを米国で開催しており、当時の社長も参加し、米州の事業会社のCxOと今後の成長戦略に関して積極的に議論しました。このような交流を通じ、当社グループが持つ多種多様な事業と掛け合わさることにより、事業拡大につなげ、連結力強化を目指しています。
● トレーニー制度
当社では、400社を超えるグループ会社を通じて多様なビジネスを展開しており、それぞれの事業会社の経営を担う人材の育成は重要な課題です。経営人材の育成・確保のため、国内外へ派遣、MBA派遣・語学自己研鑽制度など、様々な研修を行っています。特にユニークな取り組みとして、現所属組織とは異なるミッションを持つ本部外トレーニー制度があります。例えば、コーポレート(職能)出身の人材が事業会社で営業を経験、また化学本部のトレーディング業務を担当していた人材が航空・社会インフラ本部主管の事業会社でM&A後の統合効果を最大化させるべく、経営・業務・意識統合に向けた取り組みに携わるという形で、これまでと異なる経験を積みます。新たな経験を通じて、社員が多角的な視野を身に付け、知識や人脈に加え社員の幅出しのきっかけとなる成長の機会となっています。2023年度は24ヶ国に海外トレーニーを派遣(うち40%が女性社員)、日本とは異なる現場を早期に経験することで、さらなる成長につなげグローバルで活躍できる人材の育成を目指しています。
<参考リンク>
トレーニー制度
https://www.sojitz.com/jp/corporate/strategy/jinzai/
● 発想×双日プロジェクト(通称:Hassojitzプロジェクト)
当社における「さらなる成長」を考え、未来構想力や戦略的思考を定着させるべく、2019年に新規事業創出プロジェクト「発想×双日プロジェクト」を開始しました。第1回目に社長賞を受賞した「ワイヤレス充電」案件は、2023年3月より公道での実証実験を開始しています。
他にも、2020年度のeスポーツや早生樹案件は会社を設立するなど、新たな事業づくりを進めています。開始から5年目となる2023年度は「情熱のチカラで変革を!」をテーマに、外部の有識者やアルムナイメンバーとのディスカッションを行い、発想を起点とした事業創出力の強化を継続しています。2021年度からは内定者研修プログラムの一環として「内定者×Hassojitz」を導入し、当社の業務理解の促進と既存の枠にとらわれない事業の発想力強化をおこなっています。また、外部プログラムへの派遣や、外部講師からのアドバイスを通じ、事業アイデアの精緻、高度化、共創による発想、イノベーションを加速させています。Hassojitzプロジェクトでは起業家精神の醸成と自律的に事業創出ができる人材の育成を促進しています。
<参考リンク>
ワイヤレス充電事業
https://www.sojitz.com/jp/newway_newvalue/article/nwnv_post_11.html
● 人と人とが徹底的に向き合い対話する文化浸透
当社グループの価値創造の源泉である人材同士の活発なタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションは、多角的な意見・情報共有による意思決定の質向上、自由な発想や組み合わせによるイノベーション創出、目標達成に向けた貢献意欲・組織エンゲージメント向上など、会社・組織の成長と発展に重要な役割を果たすと考えています。
多様性と自律性を備える「個」それぞれが当社らしさを考え、行動に変えていくことが人的資本経営の先にあるべき姿と考え、2023年4月、全社を巻き込んだ対話型プロジェクト“双日らしさの追求プロジェクト”を立ち上げました。社内外へのヒアリングを通じた現状認識、全組織から選抜されたコアメンバーによるワークショップ、経営と意見交換・議論を繰り返し、将来と現在、会社と個人などの観点から、当社らしさやありたい姿を言語化しました。2030年の目指す姿の実現について社員一人ひとりが“自分ごと”として言語化することにより、社員の日々の行動と経営目標の方向性を合致させ、人材の力が会社の力につながるよう、全社をあげて取り組んでいます。
● 双日アルムナイ
双日アルムナイ活動内容
https://sojitz-alumni.com/page
● 多様なキャリアプラン実現に向けた支援(双日プロフェッショナルシェア株式会社)
双日プロフェッショナルシェア
https://www.sojitz.com/jp/corporate/strategy/jinzai/
2) 人材戦略基本方針②「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」
多様性と自律性を備える「個」の成長(Will/Can)を組織と会社の成長(Shall)、企業価値向上につなげるためには、経営層と現場社員の結節点・橋渡し役として戦略遂行とエンゲージメント向上を担うミドルマネジメント層の強化が不可欠と考えています。
● ミドルマネジメントの強化による組織力向上
当社の価値創造の源泉である人材の力を最大化するため、対話を通じて社員の力を引き出し組織力の向上につなげるマネジメント力の強化が重要であると考えています。エンゲージメントサーベイ結果(2022年度回答率99%)を分析し、部課長の中で最も現場に近い課長職が組織エンゲージメントに大きな影響を与えることがわかりました。組織エンゲージメント向上においては、部長職と比べて課長職の影響力が高いため、課長職を中心としたミドルマネジメント層の強化に取り組んでいます。
また対話力の高い課長職の組織は、「風通し」「挑戦意欲」「成長実感」が高い傾向にあることがデータから明らかになりました。当社におけるミドルマネジメントの強化は「対話力向上が最重要」と位置づけ、研修の実施など強化施策を実行しています。今後、対話の質をより向上させ、組織の統率力向上、「事業創出力・事業経営力」の強化につなげます。
● 活躍し続けられる人材育成(研修プログラム)
当社では、会社目線(戦略遂行上求められる組織能力の確保)、社員目線(個々が持つ能力と目指すキャリアの実現)の双方の観点から、対話を通じて最適な人材開発を継続しており、社員の成長をサポートするために様々な研修を実施しています。全ての世代と階層に提供するデジタル人材育成プログラムなどのコンテンツのほか、新入社員向けや管理職向けの研修、役員向けの研修など様々な研修コンテンツを提供し、個の成長を組織の成長につなげています。次世代リーダー育成を目的とした選抜研修も展開し、組織のレジリエンス力を向上させ、豊富な人材プール・サクセッションプラン構築に向け、計画的に人材育成を推進しています。経営人材としての素養の醸成、高度な経営スキルの獲得、他社経営人材とのネットワーキング、専門家によるコーチングや異業種交流型研修への派遣などを行っています。
<参考リンク>
研修プログラム
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/s/human_resources/
3) 人材戦略基本方針③「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」
テクノロジーの発展や地政学リスクなどの著しい環境変化や多様な顧客ニーズに対応し続けるため、機動的かつ計画的な人材配置や育成・抜擢を行い、2030年の目指す姿の実現に向け事業創出力と事業経営力を高めていきます。
● 多様な経験機会による人材育成(ジョブローテーション制度、社内公募制度)
当社では、管理職登用までに2つ以上の異なる業務(出向や海外駐在を含む)を経験し多様な専門知識とスキルを身に付けるジョブローテーション制度や、自らが思い描くキャリアを切り拓く機会としての社内公募制度など、社員の育成促進とキャリアの幅を広げる制度を導入しています。社員とキャリアプランを共有するための定期的な面談機会のほか、異動して約半年後のタイミングで活躍・定着度合いをヒアリングしサポートする仕組みなど、社員のモチベーションをモニタリングできる体制を整え、必要に応じて面談を実施しています。また、2020年度からは昇格に必要な要件を見直し、能力とやる気を兼ね備えた若手社員の早期抜擢を可能としています。
● 機動的・計画的な人材配置や育成を支える人材の可視化
「個」と「組織」の強化をさらに進めるべく、人材データを活用(データサイエンス)しています。エンゲージメントサーベイや360度サーベイなど、定期的に実施する全社サーベイや人事データを多角的・多面的に分析しデータドリブンな人材戦略の遂行につなげています。また、全社でタレントマネジメントシステムを活用し、タテ・ヨコ・ナナメの対話促進、適所適材の実現、公正・公平な評価フィードバック、社員の成長を可視化するなど、社員個人と組織をデータでつなぎ、人的資本経営の基盤を充実させていきます。
4) 多様な人材の活躍を支える制度・取り組み
当社グループの成長は社員と共にあると考え、多様な価値観やキャリア志向を持つ全ての社員が、挑戦・成長を積み重ねることで、高いモチベーションを維持しながら自律的に働き続けられる環境を整えていきます。
● 健康経営
当社グループにとって最大の財産である社員とその家族が心身共に健康であり、社員が働きやすさと働きがいを持てる健全な職場環境づくりは、会社の重要な責任の1つと考え、『双日グループ健康憲章 “Sojitz Healthy Value”』を策定しました(2018年3月)。疾病の未然予防・健康増進に加え、仕事と治療の両立を図るべく、健康推進担当の組織体制を強化し、各健康関連施策を実施しています。定期健康診断の一次受診率100%を継続しつつ、疾病の早期発見・予防を目指し、二次健診受診率を人材KPIとして定め、2023年度は目標の70%を上回る77%まで向上しました。2023年度は、2022年度に策定した健康戦略マップをもとにフィジカルヘルス対策/メンタルヘルス対策/女性の健康対策を主軸として健康施策を実行し、それらの取り組みが評価され、「健康経営銘柄」に2度目の選定を受けています。
<参考リンク>
健康戦略マップ
https://www.sojitz.com/pdf/jp/sustainability/sojitz_esg/s/health/strategymap.pdf
フィジカルヘルス対策では、健康に対する社員の意識と行動の変容を促すことを目的に、2023年9月に当社は「双日健康フェス」と題し、10種類の施策を実施しました。社長を含む経営層も参加し、運動奨励(体力測定会など)や各種セミナー(睡眠、体の歪み改善、健康診断結果の読み方、食生活など)を通じ、健康の重要性の理解を深める機会を提供しました。
メンタルヘルス対策では、精神科産業医監修のもと、発症予防を目的とした全社員向けのセミナーや、部下のメンタルケアを目的とした管理職向けのセミナーを実施し、産業医と所属組織との連携を深めメンタル不調の予防に取り組んでいます。
女性の健康対策については、2022年4月以降、子宮頸がん・乳がん検診の対象の全年齢への拡大、社内診療室への婦人科嘱託医の配置、不妊治療に関わる相談窓口の設置、外部企業と契約し、医師や専門家による女性の健康に関するオンラインセミナーの配信等、施策を強化しています。不妊治療は仕事との両立の難しさが課題として認識され、本人のみならず、所属組織が理解を深めることを目的に、婦人科医による仕事と不妊治療の両立に関するセミナーを実施するなど、取り組みを強化しています。
今後も健康経営を推進し、社員一人ひとりが心身健康な状態を維持し活躍し続けられる環境を整備していきます。
<多様な人材の活躍を支える主な制度・取り組み一覧>

● グループ全体で企業価値向上を加速させる取り組み(従業員持株会・株式の付与)
当社は、グループ全体で持続的な企業価値向上及び株価上昇に向けた意識醸成を企図し、株主への利益還元だけではなく、当社を支える従業員への株式の付与を通じて従業員一人ひとりの会社への帰属意識と企業価値向上に向けたモチベーションを高めていきます。2023年5月には、従業員持株会の会員である社員に対して、特別報酬として1人あたり100株を付与しました。2024年3月現在で、当社における従業員の持株会加入率は90%程度となり、収益の拡大による資金の循環を人や事業の成長につなげるべく、グループ全体で企業価値向上に向けた取り組みを加速させていきます。「中期経営計画2026」の数値目標を双日グループ一丸となって達成した際は、従業員に対して特別報酬を付与する予定です。
5) 女性活躍推進法による情報開示(補足説明)
● 当社(提出会社)における男女の賃金の差異の状況について
当社の正社員は総合職と事務職で構成されています。総合職は基幹業務において主体的に役割を担い、事務職は総合職を補佐し事務処理業務全般を担う職種です。また、非正社員は主に定年再雇用社員です。当社では、それぞれの職種ごとに役割等級制度を採用し、年齢や性別を問わず、本人の資質や能力、取り組み意欲に応じて役割が決定されています。職務の内容や異動の範囲などが同じ役割等級では性別の違いによる賃金の差はありません。(時間外勤務などの変動要因によるものを除く)
<年間平均賃金(職位別)>

● 「全従業員」、「正社員」、「非正社員」の雇用管理区分による男女の賃金の差異
女性活躍推進法に基づく「全従業員」、「正社員」、「非正社員」の雇用管理区分(以下「女性活躍推進法に基づく雇用管理区分」)で算出した場合の男女の賃金の差異は以下のとおりです。
<男女の年間平均賃金の差異(男性社員の年間平均賃金に対する女性社員の年間平均賃金の割合)>
<人員数(2024年3月31日現在)>
● 女性活躍推進法に基づく雇用管理区分で発生している男女の賃金の差異の理由と当社の考え方について
女性活躍推進法に基づく雇用管理区分においては男女の賃金の差異が発生していますが、その要因として、当社では総合職において管理職層で女性社員の割合が低いことが挙げられます。現在、人材戦略の重要施策として、女性活躍推進に取り組んでいます。2030年代に全社員に占める女性社員比率50%程度、女性課長比率を50%程度にすることを目指し、新卒及びキャリア採用における女性総合職社員の採用増加に加えて、仕事と育児の両立環境の整備、各世代層のパイプライン形成と経験の蓄積やキャリア意識の醸成を積極的に進めています。今後は管理職層の女性社員増加により、この要因による男女の賃金の差異は縮小していくと考えています。
各世代層のパイプライン形成については、「1) 人材戦略基本方針①「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」 ● 女性活躍推進(38~39ページ)」をご参照ください。
また、総合職とは役割が異なる事務職において全員が女性社員(2024年3月31日現在)となっていることも、男女の賃金の差異の要因です。当社は事務職を多様な働き方の1つの形態と位置づけ、今後も採用を継続していく方針です。事務職は、性別に関わりなく選択可能な職種ですが、新卒採用・キャリア採用共に応募者は女性となっていることから、今後も男女の賃金の差異への影響は発生すると考えています。一方、当社では、総合職と事務職との間で相互に職種転換を可能とする制度を設けており、男女共に入社後に社員個人のキャリア・働き方に応じた職種転換が可能となっています。
非正社員は、主に定年再雇用制度に基づき、定年退職後(60歳定年制)に有期雇用社員として継続雇用された社員です。定年再雇用者に対する賃金は、定年時に担っていた職種と職種ごとの役割等級に準じて決定されますが、女性の再雇用社員の多くが事務職からの雇用継続となっていることから賃金の差異が発生しており、全従業員の男女の賃金の差異にも影響しています。
<職種別の人員状況>

● 総合職における男女の賃金の差異について
当社は、2016年度に公表した女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画において、2021年度までに新卒女性総合職の採用比率を30%以上に引き上げる目標を設定しました。2018年度にその比率は目標の30%を超え、2023年度は42%となりました。「中期経営計画2026」では40%以上の維持を目標に掲げています。現在、主任級までの各職位にわたって30%程度を女性総合職が占める人員構成となっています。一方で、採用増加前の世代となる係長級以上の上級職をみると、各職位に在籍する女性総合職の比率が大きく落ち込みます。総合職の職位別年間平均賃金をみると、職位ごとに一定のバランスで女性総合職社員の分布が広がっている下級職では、男女の賃金の差異は100%に近いものの、上級職になるにつれて漸減し、部長級を含めた累計(総合職全体)で、70.3%という数値となっています。当社では、前述のとおり、経営戦略として女性総合職社員の採用増加(新卒及びキャリア)と仕事と育児の両立環境の整備、各世代層のパイプライン形成と経験の蓄積やキャリア意識醸成を積極的に進めています。今後、女性管理職の割合が増えるにつれ、総合職の全職位にわたって男女の賃金差異が縮小していくと考えています。
<総合職の職位別人員数(累計)>

<総合職の職位別年間平均賃金(累計)>

● 女性活躍推進法等に基づく「男女の賃金の差異」について過去5年間の推移について
5年前(2018年度)からは全体として緩やかな改善傾向が見られますが、変化はまだ僅かです。「中期経営計画2026」で設定した目標に沿って、新卒女性総合職採用比率40%以上を維持、また2026年度には女性課長比率20%程度としていく方針であり、総合職における男女の賃金の差異の数値が着実に改善が進んでいるかをモニタリングしていきます。
※将来情報に関するご注意
本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、業績を確約するものではありません。実際の業績等は、内外主要市場の経済状況や為替相場の変動など様々な要因により大きく異なる可能性があります。重要な変更事象等が発生した場合は、適時開示等にてお知らせします。
有価証券報告書に記載しております、事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、将来事項に関する記述につきましては、当期末現在において入手可能な情報に基づく当社の判断、目標、一定の前提又は仮定のもとでの予測などであります。
当社グループは、総合商社としてグローバルかつ多角的に事業を行っており、展開する事業の性質上、様々なリスクにさらされております。また、ロシアのウクライナへの軍事侵攻の長期化や、デジタル化の加速、価値観・ニーズの多様化など、外部環境は著しく変化し続けており、常に、新たなリスクへの対応が必要であると考えております。特に、当社グループのみならず、仕入先、販売先、業務委託先などを含めたサプライチェーン全体でリスクを捉え、準備、対応することも重要と認識しております。
当社グループは、2023年度を最終年度とする「中期経営計画2023」において、このような著しい事業環境の変化を機会と捉え、事業やビジネスモデルを変革し続けることを目指し、企業価値向上に向けた各種施策に取り組んできました。
こうした中、内部統制の基本的な考え方である3線ディフェンス(第1線:営業本部、第2線:コーポレート、第3線:監査部)における第1線、及び第2線のリスクマネジメント力の強化や、当社グループ全体のリスク評価・可視化等に関し、経営における議論を進めてきました。

当社グループでは、「リスク管理基本規程」に則り、社長管下の業務執行機関である内部統制委員会が、全社を俯瞰し、業務遂行に伴う様々なリスクを認識・分類・定義した上で、新たな事業や環境の変化により生じるリスクの確認と対応の検討を継続的に行っております。これらのリスクについては、リスクテーマごとに細分化、網羅的な把握、重要性評価がなされた上で、各々のリスク管理責任者が年度初めに「リスク管理運営方針・運営計画」を策定し、PDCAサイクルを展開しております。また、内部統制委員会がその進捗を四半期ごとにモニタリングし、必要に応じて改善施策の協議、担当部署への指示を行うほか、結果を経営会議、取締役会に報告しております。
取締役会は、定例報告などを通じてリスク管理運営状況を監督し、リスク管理体制・プロセスの実効性を評価しております。
<リスク管理基本規程におけるリスク管理PDCA活動のイメージ図>

また、昨今の外部環境や事業領域の変化を踏まえ、サイバーセキュリティ、安全保障貿易管理及びBtoCビジネスに対するリスク対応について、重要性を鑑みた管理体制強化に努めるほか、個々のリスクをサプライチェーン全体で捉え、突発的なリスク発現時の影響度合いの把握や、機動的に対応を通じた、レジリエンス(回復力)強化に取り組んでおります。2023年度には、地政学リスク、災害リスク、環境・人権リスクそれぞれについてシナリオを策定し、営業本部・コーポレートとの対話並びに経営会議での議論を通じて、リスク発現時の対応策などを確認しております。
なお、当社グループ資産が晒されるリスクをリスクアセットとして市場、事業、信用、カントリーの4つのカテゴリーで計測し、リスクに対する収益性を確認する指標として活用するほか、財務の健全性を維持すべく自己資本の1倍以内に収めることを目標としております。2024年3月末のリスクアセットは自己資本の0.6倍であります。
当社グループは、こうした様々なリスクに対処するため、適切なリスク管理体制を整備し、リスク管理にあたっておりますが、これらの全てのリスクを完全に回避できるものではありません。
当社グループの事業に関しては、以下のようなリスクがあります。
(1) マクロ経済環境の変化によるリスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開し、事業活動は多岐にわたっており、当社グループの業績は、日本及び関係各国の政治経済状況や世界経済全体の影響を受けます。そのため、世界的あるいは特定地域における経済動向は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場リスク
当社グループは、貿易業や事業投資を通じた外貨建の取引などに伴う為替変動リスク、資金の調達や運用などに伴う金利変動リスク、営業活動における売買契約・在庫商品などに伴う商品価格変動リスク並びに上場有価証券の保有などに伴う価格変動リスクなどの市場リスクにさらされております。当社グループは、これらの市場リスクを商品の売買残高などの資産・負債のマッチングや先物為替予約取引、商品先物・先渡取引、金利スワップ取引などのヘッジ取引によって極小化することを基本方針としております。
①為替リスク
当社グループは、外貨建の輸出入取引・外国間取引を主要な事業活動として行っており、その収益・費用などは主に外国通貨による受払いとして発生する一方、当社グループの連結決算上の報告通貨が日本円であることから、外国通貨の対日本円での為替変動リスクにさらされております。この為替変動リスクに伴う損失の発生又は拡大を未然に防ぐために、先物為替予約などのヘッジ策を講じておりますが、これらの対応を行っても為替変動リスクを完全に回避できる保証はなく、予期せぬ市場の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外の事業会社からの受取配当金、海外連結子会社・持分法適用関連会社の損益の多くが外貨建であり、日本円に換算する際の為替変動リスクを負っています。さらに、当社グループは、海外に多くの現地法人・事業会社などを保有しており、財務諸表を日本円に換算する際の為替変動により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、為替の収益感応度(米ドルのみ)は、1円/米ドル変動すると、売上総利益で年間7億円程度、当期純利益(当社株主帰属)で年間2億円程度、自己資本で20億円程度の影響があります。
②金利リスク
当社グループは、営業債権などによる信用供与・有価証券投資・固定資産取得などのため金融機関からの借入又は社債発行などを通じて資金調達を行っております。資産・負債を金利感応度の有無により分類し、金利感応度のある資産と負債との差額を金利ミスマッチ金額と捉え、固定・変動調達比率を調整することで金利変動リスクを管理しておりますが、金利変動リスクを完全に回避できるものではなく、金利水準の急上昇による調達コスト増大が当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、2024年3月末の当社グループの有利子負債残高は9,067億4百万円であり、平均利率につきましては、短期借入金は3.87%、1年内返済予定の長期借入金は2.70%、長期借入金(1年内返済予定のものを除く)は1.90%となっております。
③商品価格リスク
当社グループは、総合商社として様々な事業分野において多岐にわたる商品を取り扱っており、相場変動などによる商品価格変動リスクにさらされております。取扱い商品については、社内組織単位ごとにポジション(ロング・ショート)限度額とMax Loss Amount(MLA)を設定の上、ポジション・損失管理を行うと共に、損切りルール(評価額を含む損失額がMLAの90%に抵触した場合、MLAの範囲内に収めるべく速やかにポジションを解消するルール)を設定し運用しておりますが、これらの対応を行ってもリスクを完全に回避できる保証はなく、予期せぬ市場の変動などにより当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、各商品ポジションに関しては、モニタリングの上、本部別に増減内容の分析を行うなど、適正水準にコントロールするための施策を行っております。
④上場有価証券の価格リスク
当社グループは、市場性のある有価証券を保有しております。「中期経営計画2023」においては、2020年12月末現在の政策保有株式を半減させる方針のもと着実に売却を進め、当初の計画どおり実行いたしました。「中期経営計画2026」においても前中計と同様、保有する上場株式の個別銘柄ごとの保有意義見直しを継続する方針です。
保有上場株式の株価が大幅に下落した場合、有価証券の公正価値の変動によって、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 信用リスク
当社グループは、多様な商取引を行う中で国内外の取引先に対し信用供与を行っております。これらの商取引においては、販売先の業績不振や経営破綻などにより、当社の債権が回収できないリスクが存在します。また仕入先において、経営不振などにより仕入契約どおりに当社商品供給がなされない場合、当社グループが主契約者として販売先に販売契約の義務を果たせず、契約履行責任を問われるなどのリスクも存在します。
これらのリスクについて、取引先に対し11段階の信用格付けを付与し、当該格付や当社が負うリスクの類型により取引先ごとに取引限度を設定し、債権残並びに契約残を設定された限度の範囲内でコントロールしております。また、定期的に取引先信用状況やサプライチェーン全体を俯瞰し取引条件を見直し、かつ取引先の信用状況やその変化に応じ、担保・保証の取得や保険の付保など保全措置を講じ、信用リスクが顕在化した場合に、予想される損失の軽減にも努めております。さらに、債権査定制度を導入し、回収に懸念のある債権については、当該取引先の信用状況、債権回収実績、保全内容などを基に回収可能性について査定を行い、回収が難しいと判断する債権額を算定し適時に貸倒引当金を計上しております。
しかしながら、こうした信用リスクの管理を行った場合でもリスクを完全に回避できる保証はなく、取引先の破綻などにより債権の回収不能などの事象が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 事業投資リスク
当社グループは、様々な事業領域において企業買収や新規事業会社設立といった事業投資を行っております。事業投資は、事業計画どおりに収益獲得ができないリスク、投下資本回収リスク、事業撤退時に損失が発生するリスクが存在します。事業投資から発生する損失の予防と抑制を目的として、当社グループは事業投資案件の実行の判断時、また投資実行後の管理や撤退に関して事業投資基準を設けて、管理しております。
新規事業投資案件の実行時においては、取り組み意義やキャッシュ・フロー計画を含めた事業計画を厳格に評価しております。特に収益性の評価に関しては内部収益率(IRR)を指標とし、これに対しハードルレートを設定した上で、これを上回る案件を取り上げることとしており、事業投資実行の判断において、当社グループの株主価値を向上させ、かつリスクに見合う収益が得られる案件を選別する仕組みを構築しております。
実行済の事業投資案件については、投資案件ごとにROIC(Return on Investment Capital)や、キャッシュリターンベースでのROICであるCROIC(Cash-Return on Investment Capital)が資本コストを超えているかを測定し、定期的に事業性を評価しながらそれぞれの事業の問題点を早期に把握し、適時適切に改善策の実行、あるいは撤退を進めることで当社グループのバランスシートの劣化を防ぎ、企業価値の維持・向上につなげております。
このように、事業投資の実行時、実行後の仕組みを整備しておりますが、期待どおりの収益が上がらないリスクや事業計画を達成できないリスクを完全に回避することは困難であり、想定どおりに事業が進まない場合、当社グループが保有するのれん及び固定資産等の価値が毀損し、減損損失が発生する、又は当該事業からの撤退などに伴い損失が発生する可能性があります。これらの場合において、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) カントリーリスク
当社グループは、カントリーリスク発現時の損失の発生を最小化するためには、特定の国・地域に対するエクスポージャーの集中を避ける必要があると考えております。また、カントリーリスクが大きい国との取り組みでは、貿易保険などを活用し案件ごとにカントリーリスクヘッジ策を講じることを原則としております。
カントリーリスクの管理にあたっては、各国・地域ごとにカントリーリスクの大きさに応じて客観的な手法に基づく9段階の国格付けを付与すると共に、国格付けと国の経済規模に応じてネットエクスポージャー(エクスポージャーの総額から貿易保険などのカントリーリスクヘッジを差し引いたもの)の上限枠を設定し、各々の国のネットエクスポージャーを上限枠内に抑制しております。
しかしながら、これらのリスク管理やヘッジを行っていても、当社グループの取引先所在国や当社グループが事業活動を行う国の政治・経済・法制度・社会情勢の変化によって計画どおりの事業活動を行えない可能性や損失発生の可能性を完全に排除することはできません。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 資金調達リスク
当社グループは、事業資金を金融機関からの借入金又は社債発行などにより調達しております。金融機関との取引関係の維持、一定の長期調達比率の確保などによる安定的な資金調達を行っておりますが、金融市場の混乱や格付会社による当社グループの信用格付けの大幅な引下げなどの事態が生じた場合には、資金調達が制約されると共に、調達コストが増加するなどにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 環境・社会(人権)リスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、事業活動とそのサプライチェーンは多岐・広範にわたっておりますが、当社グループの事業活動及びサプライチェーンにおいて、環境問題や労働安全衛生、人権などにかかわる問題が発生した場合、又は環境・人権保護団体などから環境や労働安全衛生、人権などにかかわる問題に関与していると批判を受けた場合に、事業活動の停止・中止、汚染除去・浄化費用の支出、被害・損害の補償、訴訟や損害賠償などの負担が発生するリスク、当社グループがサプライチェーンから外される、又は当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼすリスクがあります。
また、気候変動を抑制できずに温暖化が進行した場合に、当社事業の収益や資産価値に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして、気候変動抑止のために法規制が強化されるなどの移行リスクと、気温上昇により洪水などの災害が発生し、被害が生じる物理的リスクがあります。
当社グループは、長期ビジョンとしてサステナビリティ チャレンジを策定し、環境方針や人権方針などの個別の方針も策定して、これらの環境・社会(人権)リスクに対応すべく、取り組んでおります。
環境・社会(人権)リスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ チャレンジ リスク管理(23ページ)」を併せてご参照ください。
(8) コンプライアンスリスク
当社グループは、様々な事業領域で活動を行っており、事業活動に関連する法令・規制は、会社法、税法、汚職など腐敗行為防止のための諸法令、ハラスメント防止のための諸法令、独占禁止法、関税法、外為法を含む貿易関連諸法令や化学品規制などを含む各種業界法など広範囲にわたっております。これらの国内外の法令・規制を遵守するため、当社グループではコンプライアンスプログラムを制定し、コンプライアンス委員会を設け、グループ全役職員にコンプライアンスマインドを浸透・定着させるための取り組みを、全社をあげて実施しております。また、安全保障貿易管理委員会を中心とした安全保障貿易に関する実行体制の整備・運用にも取り組んでおります。しかしながら、このような取り組みによっても事業活動におけるコンプライアンスリスクを完全に排除することはできるものではなく、関係する法律や規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 法務リスク
事業活動に関連して、当社グループが国内又は海外において訴訟、仲裁などの法的手続きの被告又は当事者となることがあります。訴訟などには不確実性が伴い、その可能性の程度や時期、結果を現時点で予測することはできませんが、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)システム・情報セキュリティリスク
当社グループは、情報資産を適切に保護・管理するため、各種規程を整備し、チーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー(CISO)を議長とする情報・ITシステムセキュリティ委員会を中心とした管理体制を構築し、情報セキュリティに係る体制を強化しております。また、重要な情報システムやネットワーク設備については、これらの機器設備を二重化するなど障害対策を施すと共に、ファイアウォールによる外部からの不正アクセスの防止、システムの脆弱性を悪用するウイルス対策、暗号化技術の採用などによる情報漏洩対策の強化にも努めております。
その他、グループ全体のセキュリティガバナンス強化に重点的に取り組んでおり、グループ全体のIT資産・脆弱性の一元的な管理、サイバー攻撃を早期に検知し影響を抑え込むソフトウエアの導入、不審メールに対する訓練など、セキュリティ対策をグループ全体に展開しております。
さらに、2021年度から取り組んでいる本社、子会社のセキュリティリスクアセスメントを当期も実施し、必要に応じたセキュリティ対策の指導を行いました。本取り組みは毎年繰り返し、PDCAを通じた継続的な対応改善を図ると共に、当社グループが抱えるセキュリティ上の課題・リスクを可視化し、優先度をつけた中長期的なセキュリティ対策を実施しております。
このように総合的な情報セキュリティの強化と事故防止に努めておりますが、近年急増しているサイバー攻撃やコンピュータへの不正アクセスなどにより、個人情報を含めた重要な情報資産が漏洩又は毀損、予期できない自然災害や障害を原因として情報通信システムが不稼働の状態に陥る可能性は排除できません。なお、本社含めグループ連結会社でセキュリティリスクが顕在化した際には、対応にかかる費用や取引先・顧客への補償費用といった予想される損失については、保険の付保による軽減に努めております。しかしながら、被害の規模によっては当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)災害等リスク
地震、風水害などの自然災害や感染症の大規模な流行により事務所・設備・従業員とその家族などに被害が発生し、当社グループに直接的又は間接的な影響を与える可能性があります。災害対策マニュアル並びに感染症マニュアルの作成、防災訓練、従業員の安否確認システムの整備、事業継続計画(BCP)の策定などの対策を講じております。
大規模な災害時における取引上のサプライチェーン維持の取り組みとして、代替取引先・代替商品の検討を行い取引継続の強靭化に取り組むと共に、サプライチェーンへの影響の可視化と保険の付保を行うなどして被災した場合の損害の低減を講じております。
しかしながら、被害を完全に回避できるものではなく、サプライチェーン寸断により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12)ウェブサイト・SNSを介した企業情報発信に関するリスク
当社グループのウェブサイト・SNSは、システムの脆弱性に起因する掲載情報の改ざんリスクや収集した個人情報の流出リスク及び運用に起因する批判・非難の集中や著作権・商標権・肖像権の侵害リスクにさらされております。システムの脆弱性に関しては、上記(10)の「システム・情報セキュリティリスク」に記載のとおり、可能な限りの安全対策に努めております。また、運用に関しては、グループ共通のSNS運用ポリシーや規程類に基づき、ウェブサイト・SNSを保有する組織ごとに、投稿に関する事前承認手続きやウェブサイトの定期見直しなどをルール化、明文化することを義務づけております。しかしながら、このような取り組みによっても、リスクを完全に排除できるものではなく、当社グループの信用やブランド価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13)品質に関するリスク
当社グループでは、事業投資の実行に伴い、事業領域が拡大・多様化しており、製造業やサービス業への進出も増加しています。これに伴い、全社に共通する品質管理の基本方針を「双日グループ・品質管理ポリシー」として制定し、これに基づく現場での自律的、主体的な品質管理を推進しております。また、提供するモノ・サービスの品質を適切に管理する全社横断組織として品質管理委員会を設置し、下図に示すように、事業現場での品質管理状況を網羅的にモニタリングする体制を整えております。
<品質管理モニタリング体制図>

また、個々の事業においては、品質に起因したリスク発現に対して、事業特性も考慮しながら、顧客対応を実践しており、品質管理委員会では、その実践状況を議論・研究し、成果や気付きを全社に共有の上、他事業への応用・品質改善につなげる取り組みをしております。とりわけトレード事業においては、個々の商流のサプライチェーン全体を見据えた品質起因のリスクの洗い出しとリスク対応の点検を行っております。
しかしながら、品質問題の発生を完全に抑制することは困難であり、当該問題により生じた損害について、当社グループが責任を負う可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)人材リスク
当社グループは、人材を会社の資本、価値の源泉と捉え、価値創造できる人材を輩出し続ける人的資本経営を推進しており、経営戦略・事業戦略の実現に向けた人材の確保・育成に努めております。人材確保に関しては、人材ポートフォリオを意識した、多様性の推進、イノベーションの創出、機能強化を目指したM&Aやデジタル人材など専門性の獲得を目的としてキャリア採用に力を入れています。2023年度のキャリア採用人数は47名(採用目標人数:新卒採用100名、キャリア採用40名~50名)となり、キャリア採用の強化を通じて、30代から40代前半が少ない当社社員の年齢構成の適正化を図っております。
人材育成に関しては、多様性と自律性を備える「個」の集団形成を目指す人材戦略の中で、経営人材、デジタル人材、外国人人材など事業戦略の実現に必要となる人材育成を強化しています。重要テーマについては人材KPIを設定し、進捗や効果を定量的にモニタリングする体制を整備しています。
このように人材戦略に基づいた様々な取り組みを行っていても、高齢化に伴う労働人口の減少や、人材の流動化により必要な人材の確保・育成が十分にできない場合、事業計画の進捗に遅れが生じる可能性があります。
人材リスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人材戦略に関する基本方針 リスク管理(36ページ)」を併せてご参照ください。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を設定することが義務付けられております。実際の業績はこれらの見積りと異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しております。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しております。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
当社グループは、資産又は負債の公正価値を測定する際に、入手可能な限り、市場の観察可能なデータを用いております。公正価値の具体的な算定方法は次のとおりであります。
(a) 資本性金融資産
上場株式については、取引所の価格によっております。非上場株式については、割引将来キャッシュ・フローに基づく評価技法、類似会社の市場価格に基づく評価技法、純資産価値に基づく評価技法、その他の評価技法を用いて算定しております。非上場株式の公正価値測定に当たっては、割引率、評価倍率等の観察可能でないインプットを利用しており、必要に応じて一定の非流動性ディスカウント、非支配持分ディスカウントを加味しております。非上場株式の公正価値の評価方針及び手続の決定はコーポレートにおいて行っており、評価モデルを含む公正価値測定については、個々の株式の事業内容、事業計画の入手可否及び類似上場企業等を定期的に確認し、その妥当性を検証しております。
(b) デリバティブ金融資産及びデリバティブ金融負債
通貨関連デリバティブ
為替予約取引、直物為替先渡取引、通貨オプション取引及び通貨スワップ取引については、期末日の先物為替相場に基づき算出しております。
金利関連デリバティブ
金利スワップについては、将来キャッシュ・フローを満期日までの期間及び信用リスクを加味した利率で割り引いた現在価値により算定しております。
商品関連デリバティブ
商品先物取引については、期末日現在の取引所の最終価格により算定しております。商品先渡取引、商品オプション取引及び商品スワップ取引については、一般に公表されている期末指標価格に基づいて算定しております。
当社グループは期末日において、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額を見積っております。のれん及び耐用年数の確定できない無形資産については毎期、さらに減損の兆候がある場合には都度、減損テストを実施しております。個別資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。
回収可能価額は、個別資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としております。公正価値は市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積もって算定しております。使用価値は、貨幣の時間価値及び個別資産又は資金生成単位に固有のリスクに関する現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローを割引いて算定しております。将来キャッシュ・フロー見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度としております。なお、当社グループは、使用価値及び公正価値の算定上の複雑さに応じて外部専門家を適宜利用しております。
過年度にのれん以外の資産について認識した減損損失については、期末日において、認識した減損損失がもはや存在しない又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを判定しております。このような兆候が存在する場合には、回収可能価額の見積りを行い、当該回収可能価額が資産の帳簿価額を上回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで増額し、減損損失の戻入れを認識しております。のれんについて認識した減損損失は、以後の期間において戻入れておりません。
なお、持分法適用会社に対する投資の帳簿価額の一部を構成するのれんは区分して認識しないため、個別に減損テストを実施しておりません。持分法適用会社に対する投資が減損している可能性が示唆されている場合には、投資全体の帳簿価額について回収可能価額を帳簿価額と比較することにより単一の資産として減損テストを行っております。
当社グループでは、固定資産の減損会計等の会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき実施しております。
引当金は、過去の事象の結果として現在の債務(法的債務又は推定的債務)を有しており、当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に認識しております。
貨幣の時間的価値の影響に重要性がある場合、当該負債に特有のリスクを反映させた現在の税引前の割引率を用いて割引いた金額で引当金を計上しております。
確定給付制度は、確定拠出制度以外の退職給付制度であります。確定給付制度債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割り引くことによって算定しております。制度資産の公正価値は当該算定結果から差し引いております。
割引率は、当社グループの確定給付制度債務と概ね同じ満期日を有するもので、かつ支払見込給付と同じ通貨建ての、主として報告日における信用格付けAAの債券の利回りであります。
過去勤務費用は、即時に純損益で認識しております。
当社グループは、確定給付制度から生じるすべての確定給付負債(資産)の純額の再測定を即時にその他の包括利益で認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産及び繰延税金負債は、資産及び負債の帳簿価額と税務基準額との差額である一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除について認識しており、期末日における法定税率又は実質的法定税率、及び税法に基づいて、資産が実現する期又は負債が決済される期に適用されると予想される税率又は税法で算定しております。
繰延税金資産は、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産の帳簿価額は期末日において再検討しており、繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなった範囲で繰延税金資産の帳簿価額を減額しております。
当連結会計年度は、コロナショックからの経済活動の再開に伴うサービス消費の活発化及び堅調な雇用により、景気回復に底堅い動きがみられます。一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化、中東情勢の緊迫化など地政学リスクの高まり、中国の不動産市況悪化と需要低迷、根強いインフレと各国中銀の金融引き締め継続といった不確実性の影響を絶えず注視していく必要があります。
米国では、インフレ抑制を目指し、FRBが2022年3月~2023年7月に11回に及ぶ利上げを実施しましたが、その後2023年9月~2024年3月は5会合連続で金利を据え置いており、政策金利は5.25~5.50%となっております。2024年の米国経済はインフレ鈍化と堅調な雇用や消費を受け、ソフトランディングがメインシナリオになりつつあります。
EU経済圏では、ECBが2024年4月の理事会で5会合連続の政策金利据え置きを決定しました。3月の消費者物価上昇率は前年比2.4%に鈍化しています。EU経済圏の第4四半期GDPは、前年同期比+0.2%と停滞が続いています。
中国では、2月の消費者物価指数(CPI)が前年同期比+0.7%と6ヶ月ぶりに上昇しましたが、今後のCPIには注意が必要です。2024年1~2月の主要経済指標には好転しているものがあるものの、1~2月の住宅販売面積は前年同期比-31.6%に低下しており、不動産市況は依然停滞傾向にあります。
アジアでは、2023年の欧米を中心とした外需低迷から回復基調に転じ、財輸出が増加傾向にあります。アジア各国は為替への影響を考慮し、米国等の金融政策に追随するタイミングで、2024年後半以降の利下げを見込んでいます。
日本では、2023年10~12月のGDP成長率は前期比+0.1%の鈍い伸びとなりました。日銀が2024年3月にマイナス金利などの大規模金融緩和政策を解除し、17年ぶりに利上げを決定しましたが、日米金利差が開いている状態が続き円安が継続しています。名目賃金を示す現金給与総額は上昇していますが、実質賃金の低下が長期化するなかで国内消費は足踏み状態が続いています。
当期の経営成績を分析しますと、次のとおりであります。
収益は、石炭の価格下落による金属・資源・リサイクルでの減収に加え、各種化学品の取扱数量減少による化学での減収などにより、2兆4,146億49百万円と前期比2.6%の減収となりました。
売上総利益は、石炭の価格下落やコストの増加による金属・資源・リサイクルでの減益に加え、各種化学品の取扱数量減少や一過性の損失による化学での減益などにより、前期比116億12百万円減少の3,259億55百万円となりました。
税引前利益は、売上総利益の減益に加え、連結子会社の新規取得などによる販売費及び一般管理費の増加により、前期比295億38百万円減少の1,254億98百万円となりました。
当期純利益は、税引前利益1,254億98百万円から、法人所得税費用224億37百万円を控除した結果、当期純利益は前期比127億64百万円減少の1,030億60百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期純利益は前期比104億82百万円減少し、1,007億65百万円となりました。
当期純利益にFVTOCIの金融資産や在外営業活動体の換算差額などを計上した結果、当期包括利益は前期比274億80百万円増加し、1,732億83百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期包括利益は前期比298億83百万円増加し、1,683億17百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期純利益のセグメント別業績は次のとおりであります。
当社グループは、2023年4月1日付にて一部の報告セグメントの区分方法の変更を行っており、連結財務諸表の注記事項「5 セグメント情報」に記載しております。
なお、本部別の成長戦略は以下のとおりです。
自動車販売を中核とした既存事業の強みを活かし、持続的な成長を目指す戦略を展開しています。既に知見や実績のある領域の拡大を基盤に、「機能」「特色」「変革」の3つを成長戦略のキーワードとして、販売力・金融・デジタルといった機能を強化することで、差別化し優位性のあるビジネスモデルを追求します。これにより持続的な成長を実現すると共に、社会課題やニーズに対してソリューションや価値を提供し、豊かなモビリティ社会の実現へ寄与していきます。
航空・船舶・鉄道の3大輸送手段における長年の経験と豊富な知見をもとに、2024年4月1日付機構改革に伴い新たに加わった社会インフラ事業でのノウハウを掛け合わせ、各事業を面として紡ぎ、社内外との共創を通じて、社会的な共感力と訴求力が高い事業を創出していきます。当社機能の先鋭化・多角化を推し進め、事業価値向上を図り、変化する顧客やマーケットニーズを的確に捉えた横断的なソリューションを提供していきます。
エネルギー及びヘルスケア領域において、脱炭素、人口増加、高齢化などの社会課題解決に対応し、従来の「アセット型」インフラビジネスに加え、顧客へのサービス・ソリューション提供を行う「事業型ビジネス」を構築し、収益機会及び規模の拡大を目指します。また、投資先企業の顧客基盤・人脈やパートナー企業を通じたローカルネットワークを拡充し、当社の有形・無形の資産を活用することで双日ならではの競争優位を構築し、新たな価値を創造します。
社会の持続可能性への貢献のために、循環型社会と脱炭素への適応を重視した事業ポートフォリオへの変革を推進します。資源リサイクル領域の事業基盤強化を徹底的に追求すると共に、デジタル化や脱炭素の推進により既存事業のビジネスモデルを変革することで、市況耐性を強化し、社会ニーズに応じた新たな価値を提供しながら、さらなる安定的な資源の供給体制を構築していきます。
<化学>
現在化学業界では、大きな転換期を迎えており、デジタル化実装によるオペレーションの次世代化など、商流変化の機会を獲得するために実効性のある施策を講じると共に、各地域のサプライチェーンの変化を捉えるため、海外拠点における現地化を一層推進していきます。また、脱炭素の社会的要請が高まる中、その潮流に即した事業の創出にも注力し、規模感のある事業投資の実行を進め、収益の塊を獲得していきます。
経済成長の著しい新興国を中心に、肥料・アグリビジネス事業、食料・飼料畜産事業、林産・バイオマス事業などの既存事業をさらに強化していくと共に、中でも東南アジアでトップクラスの市場シェアを保有する肥料事業において、デジタルを組み合わせることで新たなビジネスを構築、収益の拡大を進めています。また、ベトナムで進める牛の肥育・加工・販売事業は、豚肉や鶏肉へと取り組みを拡大し、同国最大の総合食肉事業への展開を目指します。
<リテール・コンシューマーサービス>
強みであるベトナム・リテール事業、水産事業、畜肉事業の成長に注力し、「売る力」×「運ぶ力」をさらに磨くことで収益の積上げを図ります。ベトナムにおいては、既存事業の強化に留まらず、個々の事業が相互に連動して取引先と共に成長して行く面展開を戦略として掲げ、新たに当社グループに加わったDaiTanViet(卸事業)とのシナジーでバリューアップを図ると共に、デジタルを活用しサプライチェーンの効率化を進めます。水産事業は既存事業を軸に収益を強化し、米国や中国・アジアの水産市場の成長を商機として海外販売の拡大に挑戦します。
当期末の資産合計は、円安の影響に加え、連結子会社の新規取得などにより、前期末比2,260億30百万円増加の2兆8,868億73百万円となりました。
負債合計は、円安の影響に加え、連結子会社の新規取得や営業債務及びその他の債務が当期末日の休日影響により増加したことなどにより、前期末比1,469億79百万円増加の1兆9,312億45百万円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、自己株式の取得や、配当金の支払いがあったものの、当期純利益の積み上がりや、為替の変動によるその他の資本の構成要素の増加などにより、前期末比863億63百万円増加の9,240億76百万円となりました。
この結果、当期末の自己資本比率は32.0%となりました。また、有利子負債総額から現金及び現金同等物、及び定期預金を差し引いたネット有利子負債は前期末比678億64百万円増加の6,972億90百万円となり、ネット有利子負債倍率は0.75倍となりました。
※自己資本比率及びネット有利子負債倍率の算出には、親会社の所有者に帰属する持分を使用しております。
また、有利子負債総額にはリース負債を含めておりません。
次に、資産をセグメント別に分析しますと、以下のとおりであります。
当期のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローは1,121億87百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは124億29百万円の収入、財務活動によるキャッシュ・フローは1,865億23百万円の支出となりました。これに現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は1,962億75百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期の営業活動による資金は、営業収入及び配当収入などにより1,121億87百万円の収入となりました。前期比では594億52百万円の収入減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期の投資活動による資金は、パナマ自動車販売事業会社、ベトナム業務用食品卸会社への出資があったものの、航空機関連取引や米国ガス火力発電事業の売却による回収などにより124億29百万円の収入となりました。前期比では167億28百万円の収入減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期の財務活動による資金は、借入金の返済や自己株式の取得及び配当金の支払いなどにより1,865億23百万円の支出となりました。前期比では438億44百万円の支出減少となりました。
「中期経営計画2023」におけるキャッシュ・フローマネジメントにつきましては、引き続き営業活動と資産入替により創出されたキャッシュの範囲内で成長投資と株主還元をマネージし、中でも、短期の運転資金増減の影響を受けない基礎的キャッシュ・フローを、「中期経営計画2020」から「中期経営計画2023」の6年間累計で黒字とする目標にしておりました。
業績が堅調に推移したため、2023年度の基礎的営業キャッシュ・フローは1,092億円の黒字となりました。これに加えて、政策保有株式や入替による投資の売却、航空機関連取引での回収などもあった一方で、新規投資の実行や株主還元による支出などによって、基礎的キャッシュ・フローは628億円の赤字となりましたが、6ヶ年累計での基礎的キャッシュ・フローは1,397億円と大幅な黒字を達成いたしました。
「中期経営計画2026」においても、引き続き営業活動と資産入替により創出されるキャッシュを原資に成長投資と株主還元を実施する方針であり、上記の6ヶ年累計における黒字と併せて基礎的キャッシュ・フローが黒字となる範囲でマネージする方針です。

*1 基礎的営業CF=会計上の営業CFから運転資金増減を控除したもの
*2 自己株式取得を含む
*3 基礎的CF=基礎的営業CF+調整後投資CF-支払配当金-自己株式取得
(調整後投資CF=会計上の投資CFに長期性の営業資産等の増減を調整したもの)
③ 資金の流動性と資金調達について
当社グループは、「中期経営計画2023」におきまして、従来と同様に資金調達構造の安定性維持・向上を財務戦略の基本方針とし、一定水準の長期調達比率の維持や、経済・金融環境の変化に備えた十分な手元流動性の確保により、安定した財務基盤の維持に努め、当期末の流動比率は150.2%、長期調達比率は81.9%となりました。
長期資金調達手段の1つである普通社債につきましては、当連結会計年度は発行しておりませんが、引き続き金利や市場動向を注視し、適切なタイミング、コストでの起債を検討してまいります。
また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、円貨1,000億円(未使用)及び25.75億米ドル(6億米ドル使用)の長期コミットメントライン契約を有しております。
(目標とする経営指標の達成状況等)
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 「中期経営計画2023」の振り返り(13~14ページ)」をご参照ください。
(販売、仕入及び成約の状況)
① 販売の状況
「(2) 当連結会計年度の経営成績の分析」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 5 セグメント情報」をご参照下さい。
② 仕入の状況
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
③ 成約の状況
成約は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
※将来情報に関するご注意
本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、業績を確約するものではありません。実際の業績等は、内外主要市場の経済状況や為替相場の変動など様々な要因により大きく異なる可能性があります。重要な変更事象等が発生した場合は、適時開示等にてお知らせします。
特記事項はありません。
特記事項はありません。