文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「お客様の豊かな人生をサポートする。」ことを企業理念(MISSION)とし、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスを提供する。」ことを企業目標(VISION)としています。企業理念、企業目標を実現するうえでは、優位性のある顧客体験価値を提供することが何より重要だと考えています。
そこで、強固な財務基盤や安定した取引システムの提供、お客様に寄り添ったサポート体制など、金融機関としてお客様からの信頼に応えること、堅実な企業活動を維持し、発展させていくことが、「投資そのもの、および証券会社選びの安心感」につながると考え、当社の1つ目の提供価値であると定めています。加えて、投資自体が楽しくより身近で魅力的なものに、そしてお客様の人生における発見と成長につながる知的好奇心がわくような体験にしたいという思いから、投資についての多様な「アイデアの提供」を2つ目の提供価値としています。このような考えをコーポレートスローガン「投資をまじめに、おもしろく。」において示しています。
そして、コーポレートスローガンを体現するため、お客様からの信頼に応える「安定した取引環境」の提供、投資を始めるハードルを下げ、より多くのお客様へ発見と成長の機会を届ける「様々な顧客ニーズを満たす豊富な商品」、「トライアルバリアの低い商品・サービス」、「シンプルでわかりやすいサービス」の提供、さらに一歩先を行くオンライン証券を目指して、お客様それぞれのニーズに沿ったきめ細やかな対応を実現する「パーソナライズされたサービス」の提供に努めてまいります。
なお、当社は、経営資源をオンラインベースの事業に集中することで、効率的なオペレーション体制を維持してきました。コロナ禍を経たオンライン中心のコミュニケーションの広がりを背景に、オンラインベースの事業の優位性は一層高まるものと考え、オンラインベースのビジネスモデルに集中する方針を堅持していきます。
日本国内における株式のオンライン取引サービスは、1998年に始まりました。それ以降、個人の株式等委託売買代金に占めるオンライン証券会社顧客の比率は年々上昇を続け、現在では9割を超えています。一方、個人の株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は、未だ4割程度に留まっていますが、その比率は年々拡大しています。対面型の証券会社からオンライン証券会社への株式資産の流入は継続しており、今後も、オンライン証券会社を通じた個人株式等委託売買代金の拡大余地があるものと考えます。
オンライン証券業界においては、個人の株式等委託売買代金は当社を含む大手オンライン証券会社5社(当社、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券)によって占められている他、各社シェアの順位にも大きな変動はなく、一定の均衡状態が続いていました。ところが、2023年にSBI証券、楽天証券の2社が株式売買委託手数料の無料化に踏みきったことにより、各社は、信用取引、FX(外国為替証拠金取引)、投資信託、ホールセール事業、資産運用業、暗号資産関連事業等への事業拡大に注力するなど、収益源の多様化を進めています。そのような中で、プラットフォーマーとの事業および資本の関係を強化し、規模の拡大を目指す動きもあります。この動きは、顧客一人ひとりの資産規模や取引規模は小さいながらも、数多くの顧客にアプローチすることで収益をあげるという、ロングテールのビジネスモデルを目指すものです。一方で、これまでのオンライン証券会社のビジネスモデルは、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えるものの、取引頻度が高い一部の顧客に利益の大半を依存している状況にあります。このように、一部競合他社の手数料無料化を契機に、収益構造の見直しが業界共通のテーマとして顕在化し、その結果として、オンライン証券のビジネスモデル、および重点的に取り組む分野の違いも鮮明化してきたものと考えます。
当社は、企業目標を達成するために以下の経営目標を定めております。
① 付加価値の高いサービスを提供し、価値に見合う適正な対価を得る。
② 経営資源を有効活用し、利益及び株主価値の向上を目指す。
③ 株主資本コスト(現状8%)を上回るROEを達成する。
当事業年度のROEは12.9%となり、株式等委託売買代金や信用取引残高の増加、FX取引の拡大等を背景に、前事業年度の10.1%から上昇しました。引き続き、上記の目標値を達成しており、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
当社は、経営目標を達成するための経営戦略として以下4点を定め、その実現に向けて取り組んでおります。
① 大手オンライン証券会社として認知される「強いブランドの構築」
② オンライン証券会社として備えるべき金融商品・サービスの「ラインアップの充実」、独自性を意識した 「特色のあるサービスの提供」
③ 優位性のある顧客体験価値を提供し続ける「サービスクオリティの向上」
④ これらの事業・サービスの提供を支えるための基盤となる「多様性のある自律的な組織の実現」
以上に記載の経営の基本方針および経営目標を踏まえて中長期的経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
(a)強いブランドの構築
当社は、「金融機関としての信頼性」と「知的エンターテインメント性」を両立した事業展開を推進することが、強いブランドの構築に資するものと考えています。「金融機関としての信頼性」を向上する点については、お客様から安心して取引できる金融機関として認知されるため、強固な財務基盤や安定した取引システムの提供、金融機関としての信頼性の維持・向上に資するコンプライアンス体制の強化、お客様に寄り添ったサポート体制など、堅実な企業活動の維持・発展に努めております。なお、金融機関の認知度は当該金融機関に対する信頼性の向上に資する面があり、長期的な顧客基盤の維持・拡大のために、継続的に認知度の強化に取り組んでまいります。
当事業年度においては、新NISA制度に合わせて、当社のイメージキャラクターである山本美月さんを起用したテレビCMの配信や、eスポーツ大会「VALORANT」及び「RAGE STREET FIGHTER」へ協賛し、認知度向上に向けた取り組みを強化しました。また、お客様へのサポートを提供する当社コールセンターは、第三者評価機関であるHDI-Japan(ヘルプデスク協会)が主催する「2023年度問合せ窓口格付け(証券業界)」において、最高評価の「三つ星」を13年連続で獲得しております。
一方の「知的エンターテインメント性」を推進する点については、商品・サービスの開発、マーケティング活動、投資情報の提供、コールセンターにおけるサポートなどを通じて取り組んでまいります。
当事業年度においては、引き続き投資の「おもしろさ」を伝える動画コンテンツを多数公開しております。投資や資産形成にかかる知識や情報を「お笑い」で翻訳する動画「資産運用!学べるラブリー」シリーズが人気コンテンツとなった結果、当社が運営するYouTube公式チャンネルの登録者数が29万人を突破し、主要証券会社が運営するチャンネルでは、最大の規模となりました。投資情報メディア「マネーサテライト」では、顧客にとって発見や成長につながる多様なアイデアの提供に努めました。これから投資を始める初心者から上級者まで、資産運用をサポートする投資情報を継続的に提供するとともに、相場急変の要因やニュース性の高い情報をタイムリーに動画で分かりやすく解説したほか、米雇用統計発表に合わせたLIVE番組を放送するなど、マーケットの動きをリアルに感じる顧客体験を提供しました。その他、個人投資家に人気のあるIPO銘柄においては、ベンチャーキャピタルとの連携を強化して引受件数の向上に努めた結果、引受参入率は65%を超え、IPO銘柄の取り扱い数において、業界2位となりました。
(b)ラインアップの充実、特色のあるサービスの提供
お客様に選ばれるオンライン証券会社になるためには、年齢・志向・資産状況などが異なる個人投資家の多様なニーズに応える金融商品・サービスを提供していくことが欠かせません。当社の新規口座開設者の4割以上が30代以下の投資初心者層であることを考えると、金融商品・サービスの多様化によって投資への入り口をより広げるとともに、標準的な金融商品・サービスを取り揃え、お客様が証券会社を検討する際の「非選択理由」をなくす必要があります。
当事業年度においては、新NISA制度で、日本株・米国株・投資信託のすべての商品の売買手数料を無料とし、投資を始めるハードルを下げるお得なサービスの提供に努めました。また、証券取引を快適にする銀行サービス「MATSUI Bank」の提供を開始し、証券口座と銀行口座のシームレスな連携を実現しました。「MATSUI Bank」では、円普通預金金利年0.2%を提供し、お客様の待機資金を有効活用できるサービスとしたほか、銀行サービスを利用するお客様との新たな接点を築くことができました。FX事業では初心者の方でもコストを抑えて、安心して100円から取引できるFX自動売買機能を導入しました。米国株事業では、信用取引を業界最安水準の手数料で導入しました。
(c)サービスクオリティの向上
オンライン証券各社が提供する金融商品には大きな差がないため、サービス水準を充実することや利便性の高い取引・情報ツールを継続的に提供していくことなど、優位性のある顧客体験価値を提供することによって、お客様にとって価値の高い証券会社と認識していただけるものと考えております。また、オンライン証券という業態ではあるものの、お客様からの問い合わせや相談事について、ヒューマンタッチなコミュニケーションの機会を提供することも、顧客体験価値の向上につながると考えています。
当事業年度においては、投資情報ツール「マーケットラボ」の銘柄検索機能などのユーザビリティの向上を図りました。取引ツール「日本株アプリ」では、MATSUI Bankへの入出金やスイープ入金に対応し、継続的な機能拡充など利便性向上に努めました。「FXアプリ」では、100円から取引できるFX自動売買機能を追加し、スマートフォンのみで自動売買設定ができるように対応しました。顧客向サポートにおいては、専門の相談員がNISAに関するお問い合わせに対応する無料の「松井証券NISAサポートダイヤル」を開設したほか、お客様一人ひとりのご希望や投資スタンスに寄り添い、銘柄探しや取引タイミング等の意思決定をサポートする「株の取引相談窓口」の対象を、これまでの日本株に加えて米国株にも広げ、より多くの相談に対応できる体制を構築しました。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
当社は、「お客様の豊かな人生をサポートする。」ことを企業理念(MISSION)とし、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスを提供する。」ことを企業目標(VISION)としています。企業理念、企業目標を実現するには、株主をはじめとする全てのステークホルダーとの協働が必要不可欠であると認識しております。
また、当社は役職員の行動指針として(ⅰ)「お客様起点」、(ⅱ)「進化」、(ⅲ)「こだわり」、(ⅳ)「チームワーク」、(ⅴ)「事実に基づく判断」、(ⅵ)「社会への貢献」を定めており、ステークホルダーとの協働を実現するための基盤となっております。
これらを踏まえた当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は以下の通りです。
当社は、サステナビリティに関する重要な事項について、取締役会が監督する体制としています。取締役会は、中長期的な企業価値向上に実質的な影響を及ぼすマテリアリティ(優先的に取り組むべき重要課題)を踏まえて、個別の施策の状況を監督しておりますが、マテリアリティは事業環境等の変化に応じて見直しを行うこととしております。また、経営企画担当部署が、サステナビリティを推進する事務局の役割を担っております。
当社においては、マテリアリティの特定を通じて、サステナビリティに関して当社が直面するリスクと機会の影響度合いを把握し、評価することとしております。マテリアリティの特定は、経営企画担当部署が事務局となり策定した原案をもとに、取締役会において審議を行い、その結果を受けて内容を確定しております。マテリアリティの特定プロセスは以下の通りです。
a. 課題候補項目のリストアップ
サステナビリティ会計基準審議会(SASB)スタンダード、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)スタンダード、および持続可能な開発目標(SDGs)などの国際的な各種ガイドラインを参照し、当社の事業や企業文化に関連性の高い課題をリストアップします。
b. 重要な課題の抽出
お客様、株主、従業員といったステークホルダーとの対話を通じて、当社に対する期待を把握し、その上でリストアップした課題の中からより重要性の高い課題を抽出します。
c. 当社が取り組むべきマテリアリティの特定
抽出した課題について、社会の持続可能性への貢献度が高く、自社の中長期的な成長に大きく影響する項目と、経営戦略との関連性を評価し、取締役会での議論を経て、優先的に取り組むべき重要課題を特定します。
また、当事業年度末現在において、当社において特定したマテリアリティは以下の通りです。
③ 戦略
当社は、サステナビリティを推進するための戦略として、マテリアリティを踏まえた取組を進めております。主な取組は以下の通りです。
a. 社会の健全な発展及び投資・資産形成の支援
「金融市場へのアクセサビリティ向上」、「証券市場の公平性を高める取組」、「分かりやすい情報提供」の観点から、トライアルバリアの低い商品・サービスやシンプルでわかりやすいサービスの提供に努めてまいります。また、顧客が金融商品へ投資する手助けとなる様々な情報の拡充、取引・情報ツールの利便性の向上、顧客サポート体制の強化を推進してまいります。
「様々な金融商品・サービスの提供」の観点から、商品・サービスのラインアップの拡充を図ってまいります。
当事業年度の具体的な取組は、
b. 役職員のウェルビーイングとダイバーシティ
「(2)人的資本に関する取組 ①戦略」をご参照ください。
c. 事業成長を支える経営体制
「コーポレート・ガバナンスの充実」、「コンプライアンスの徹底」の観点から、健全なコーポレート・ガバナンス及び信頼性の高い社内体制の維持を図ってまいります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況については、
「高度な情報セキュリティの維持」の観点から、システムの強化と情報セキュリティ対策の拡充を図ってまいります。当事業年度の具体的な取組としては、BCP計画を全面改訂し、首都直下地震等の災害に際しても、遠隔地のデータセンターを利用して業務を円滑に継続できる体制を構築しました。
④ 指標及び目標
マテリアリティの各項目とそれに対する施策の達成状況は、必ずしも定量的に測定できるものではありません。当事業年度末現在、当社が設定している指標及び目標は、「役職員のウェルビーイングとダイバーシティ」に関するもので、その内容は、「(2)人的資本に関する取組 ②指標及び目標」に記載しております。
a. 人材育成に関する方針
当社は、性別・年代・職歴をはじめ、多様な人材で組織づくりを推進することを基本方針としています。また、「社員一人一人が当事者意識を持ち、自律的に学習・成長する組織になる」という組織目標を掲げ、お互いの多様な考え方を認め合い、個人の成長と共に会社も成長していくことを目指しています。そのための戦略を「採用」「配置」「定着」「人材育成」「評価」「報酬」の6項目に分解し、各々アクションプランを策定しています。
1) 採用
組織における長期的な年齢構成の適正化を図るため、毎年継続的に新卒採用を実施するほか、組織に必要な人材を即戦力として採用するため、中途採用を適宜実施しています。
2) 配置
少人数体制を生かし、社員一人ひとりの希望や適性と会社のニーズを見極めたフレキシブルな人材配置を行っています。
3) 定着
新卒入社、中途入社の社員が組織になじみ、より早く成果を出せるためのオンボーディングサポートに取り組んでいます。入社前には定期面談や先輩社員との座談会などを通じて当社ビジネスの理解促進と不安の解消に努めています。入社後は、チームビルディングや金融業界に関する研修、各部署の紹介や交流など、社員間の交流の機会を設けています。
また、メンバーシップ型組織に基づき、多様なキャリアパスを経た人材を育成するため、新卒から10年程度の間に複数部署での業務を経験するジョブローテーション制度を設けています。また、専門的なスキルを備えた人材を確保するため、職位制度にプロフェッショナル職を導入しており、社員にとっても、自らのキャリアパスを自律的に考えるきっかけとなっています。
4) 人材育成
変化の激しいビジネス環境でも長期にわたって活躍できる人材を育成するため、全社横断の研修・リスキリング制度を策定しています。新入社員が年次ごとに取得すべきスキルを明確にし、中堅社員に対しても研修を体系化して推奨し、時間と費用面で会社が十分なサポートを行っています。2023年度は、社員一人当たりの研修時間と研修費用が目標値を超えました。また、テーマ別に受講が可能な外部研修や、社員自ら目指す組織について考え、意見を交換するワークショップ等を通じて、人材育成を図るための環境整備に取り組んでいます。このほか、社員同士がお互いを高め合うことを目的に360度フィードバック制度の導入、上司との1on1ミーティングの推奨を行い、気軽に相談できる風通しの良い組織づくりに取り組んでいます。
5) 評価
社員一人ひとりの成長を支援し、公平な評価を実現するため、職位ごとのアカウンタビリティを定めています。アカウンタビリティとは、社員が職位毎に期待される役割を「意識・意欲・姿勢」「業務遂行能力」「リーダーシップ・マネジメント」の3視点から定義づけたもので、当社の評価基準となっています。
6) 報酬
「競争力のある報酬体系の維持と追求」を基本方針とし、定期昇給やベアありきではなく、社会経済の状況を踏まえた上で、個人の公平な評価に連動した適正な報酬を支払うことを重視しています。
b. 社内環境整備に関する方針
社員同士の交流を支援し、会話が弾みアイデアが生まれる組織となるよう、社内に多目的のコミュニケーションスペースを設けており、ミーティングルームやカフェテリアとしての利用に加え、社内イベントの場としても活用しています。また、リモートワーク制度、時差出勤や1時間ごとに有給休暇を取得できる時間休の活用、育児休業制度や短時間勤務制度の充実を図り、多様性のある働き方をサポートしています。従業員の健康・労働環境については、全社員に対してストレスチェックテストを実施し、必要に応じて産業医による面接指導を行っています。
その他、企業型確定拠出年金制度、従業員持ち株会奨励金制度、金融リテラシーを促進するための研修プログラムや資格奨励金制度などを整え、社員のフィナンシャル・ウェルネスを支援しています。さらに、子育てサポート企業として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けるなど、従業員が安心して出産・育児ができる職場環境作りやワークライフバランスの実現に努めています。
「社員一人一人が当事者意識を持ち、自律的に学習、成長する組織になる」という組織目標の達成には、社員一人ひとりのエンゲージメントが重要です。当社ではエンゲージメントを「会社の理念、方針、目標に共感し、社員が自ら意欲的に仕事に取組み、仲間や会社に深い思い入れをもつこと」と定義し、毎年エンゲージメントサーベイを実施しています。初めてのサーベイを行った2019年度以来、スコアは毎年上昇しています。従業員のエンゲージメント向上が企業価値の向上に繋がると考え、今後も社員発のアクションプランを取り入れた、制度や施策の導入を進めていきます。
当社は、性別・年代・職歴等を問わず、個々の能力や適性を十分見極め、必要な人材を登用しております。2023年度の人的資本に関する指標は以下のとおりです。
男女比率
新卒/中途比率
年齢構成
有給休暇取得状況
育児休業取得率
リスキリング
また、当社は、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(計画期間:2022年4月1日~2027年3月31日)において「女性社員の割合を35%以上」「管理職に占める女性の割合を15%以上」を目標に掲げました。2023年度の女性社員の割合及び管理職に占める女性の割合は上表の通りです。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
当社は、経営資源をオンラインベースの証券取引サービスに集中する戦略をとっており、個人投資家向けの日本株ブローキング事業が当事業年度の純営業収益全体の約8割を占めています。日本株ブローキング事業における主要な収益源は、株式等委託手数料収入及び信用取引顧客への資金や有価証券の貸付け等から得られる金利及び貸株料収入等です。今後、株式市況の低迷等により個人投資家の株式等委託売買代金や信用取引残高が減少する場合や、競争環境の変化によって、当社の株式等委託売買代金及び信用取引残高が減少する場合、あるいは、競争上、手数料や金利・貸株料水準を引き下げることになった場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、日本株ブローキング事業を強化すると共に、FX事業・米国株事業・投資信託事業をはじめとするオンラインベースでの商品・サービスを強化し、収益の多様化を積極的に進める方針ですが、対象分野における市場動向や他社との競争環境の変化により、必ずしも見込み通りに業容の拡大が進む保証はありません。
当社は、個人投資家向けの日本株ブローキング事業を主たる事業としておりますが、同事業を行う競合他社には、当社に比べ、資金力、技術力、マーケティング力、サービス面、知名度、顧客基盤等において強みを持つ者が存在し、厳しい競争に晒されています。中でも、顧客獲得のため、無料もしくは、より低価格の委託手数料を提示するオンライン証券会社が多数存在しております。その他、近年は、フィンテックベンチャーの新規参入や対面型金融機関によるオンラインサービスの強化が相次ぎ、競争環境はこれまで以上に厳しくなることも想定されます。今後、他の金融機関との競争がさらに激化した場合には、当社の既存顧客の他社への流出、新規顧客獲得数の減少、顧客獲得に要する広告宣伝費の増加により、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
金融商品取引業者には、金融商品取引法、金融商品取引業等に関する内閣府令及び金融商品取引業者の市場リスク相当額、取引先リスク相当額及び基礎的リスク相当額の算出の基準等を定める金融庁告示(以下「金融庁告示」といいます。)に基づき、一定の自己資本規制比率の維持が求められています。自己資本規制比率とは、固定化されていない自己資本額の、保有する有価証券の価格の変動その他の理由により発生し得るリスク相当額に対する比率をいいます(金融商品取引法第46条の6)。
金融商品取引業者は自己資本規制比率が120%を下回ることのないようにしなければなりませんが(同法同条第2項)、当社の自己資本規制比率は、2024年3月末現在、十分な水準を維持しております。
金融庁告示により信用取引資産の2%が取引先リスク相当額とされており、信用取引残高の増大は、当社の取引先リスクを増大させることから、自己資本規制比率を引き下げる要因となります。今後、当社の信用取引残高が増加し続けた場合、自己資本規制比率を維持するためには、自己資本等の調達が必要となります。その際、当社が十分な自己資本等の調達が行えなかった場合、当社は顧客への信用供与を制限せざるを得なくなります。その場合には、当社の株式等委託手数料収入・金利収入において機会損失が発生する可能性があります。また、規制内容が改正され、取引先リスク等の算定方法が変更された場合、自己資本規制比率を引き下げる要因となり得ます。
当社が収益の柱としている信用取引においては、顧客への信用供与が発生するため、市況の変動によっては顧客の信用リスクが顕在化する可能性があります。すなわち、顧客が信用取引等で損失を被った場合、または担保となっている代用有価証券の価値が下落した場合、顧客が預託する担保価値が十分なものでなくなり、顧客への信用取引貸付金を十分に回収できない可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、株価指数先物取引、日経平均株価指数オプション取引(売建)及びFX(外国為替証拠金取引)においても、類似のリスクがあります。
当社は、信用取引貸付金の原資として、制度信用取引については、自己調達資金に加え証券金融会社からの借入を利用しておりますが、市況の変動により、証券金融会社に差入れた有価証券等の担保価値が低下した場合、追加の担保の差入れを求められることがあり、そのための借入等は当社が独自に行う必要があります。また、一般信用取引については、通常制度信用取引に比して証券金融会社からの資金の借入に制約があるため、現在は主に金融機関からの借入等により賄っておりますが、金融市場の動向、当社の経営状況あるいは当社の格付けの低下等によっては、適切な資金調達が行えない可能性があります。今後、調達費用の水準によっては当社の金融収支が悪化する可能性、あるいは必要資金の手当てができない場合、一般信用取引の利用を制限する可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があるとともに、手数料収入・金利収入において機会損失が発生する可能性があります。
また、金融機関からの借入金の返済等に際して、金融市場の動向、当社の経営状況あるいは当社の格付けの低下等によっては、借り換えあるいは新規の借入や社債の発行等による資金調達が適切な条件で行えない可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
顧客の取引に関する情報を、瞬時かつ大量に処理するオンライン証券取引業務にあっては、システムの安定稼動は重要な要素であり、システムに何らかの障害またはサイバー攻撃による被害が発生し、機能不全に陥った場合には、当社の事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。
システム障害は、ハードウエア、ソフトウエアの不具合及び誤操作・誤処理等の人為的ミスによるものの他、アクセス数の突発的な増加、通信回線の障害、コンピュータウィルス、コンピュータ犯罪、災害等によっても生じ得るものであります。当社が利用しているシステムは、アクセス数の増加を見込んだ上で設計されている他、システムの二重化等想定される様々なリスクへの対策を講じておりますが、想定を大幅に上回る注文が集中した場合や、その他の要因によりシステムに被害または停止等の影響が生じる場合には、顧客からの注文を適切に処理することができなくなる可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、サイバー攻撃に対するシステムの防御に努めておりますが、それが十分または適切でなく、サイバー攻撃による被害が発生する場合には、システムの機能不全や顧客情報の漏洩等が発生する可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、外部委託先を含む関係者のシステムへの接続について、それぞれの業務に応じて権限を付与するとともに、利用状況をモニタリングしておりますが、それが十分または適切でなく、システムの不正利用等を防げなかった場合には、顧客情報の漏洩等が発生する可能性があります。
なお、各種業務において事務処理が適切に行われないことにより、サービスの品質低下やその他の問題が発生する可能性がありますが、その場合においても、システムの機能不全が直接または間接的に影響する場合があります。
システム障害やサイバー攻撃、あるいはシステムの不正利用等が発生した場合や、不適切な事務処理が行われた場合には、当社が、監督官庁による処分を受ける可能性または損害賠償請求を含む何らかの責任を問われる可能性がある他、当社のシステム及びサポート体制に対する信頼が低下し、顧客離れが生じる可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、新規公開株式等の引受業務を行っておりますが、有価証券の引受けを行う際、当社に引受責任が生じるため、引受リスクが発生します。当社は、公募・売出残株が生じないよう慎重に引受金額等の決定を行っておりますが、当社が引き受けた有価証券を販売することができない場合、公募・売出残株の株価動向によっては、当社は損失を被る可能性があります。また、引受業務を行った企業に何らかの不祥事が発生した場合、当社に対する信頼が低下し、顧客離れが生じる可能性がある他、顧客より損害賠償請求等の責任を問われる可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
顧客の個人情報及び個人番号の不正取得や改変等の被害を防止することは、当社が事業を行う上で重要であります。当社は個人情報等が不正に使用されないよう十分なセキュリティ対策や、社内の管理及び業務委託先に対する監督を行っておりますが、今後、個人情報等の漏洩等があった場合、損害賠償の請求や、監督官庁による処分を受ける可能性がある他、当社の信用が著しく低下する可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、他の証券会社や電子商取引を行う企業のセキュリティや情報管理に対する信頼の低下が、インターネット、さらには、当社のシステムの信頼性の低下につながる可能性もあります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、様々な業務に関して、多くの外部事業者と契約を結んだ上で業務を委託しております。特に、当社の株式取引システムの開発・運用を委託しているSCSK株式会社は、当社の重要な業務委託先であります。また、顧客に提供している自動更新型のトレーディングツール、顧客取引用ウェブサイト、FX(外国為替証拠金取引)・投資信託・米国株の取引システムについて、それぞれの開発・運用を複数の外部事業者に委託しております。当社が顧客へ提供する企業情報・市況情報は、外部事業者から提供を受けております。また、札幌センターにおける顧客問合せ対応業務についても、外部事業者から労働者派遣を受けて運営しております。なお、外部事業者への業務委託等は以上に限らず多岐に渡っております。
これらの外部事業者が、何らかの理由で当社へのサービスの提供を中断または停止する事態が生じ、当社が速やかに代替策を講じることができない場合、当社の業務に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、SCSK株式会社との契約関係が維持できなくなった場合、または、同社のソフトウエア開発能力の低下等により、当社のシステムに問題が生じまたはそれが陳腐化し、顧客の信用を維持することができなくなった場合、当社あるいは第三者が新たに代替システムを構築する必要性が生じます。その際、速やかに適切な代替手段を講じることができない場合、当社は顧客へのサービスの提供を停止する可能性があり、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、外部事業者との契約の改定等により、外部事業者に支払う費用の増額を求められる可能性があり、その場合には同様に、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、外部事業者において法令・規則等に対する違反等があった場合、委託元である当社が監督官庁による処分を受ける可能性がある他、当社の信用が著しく低下する可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、顧客に対するFX(外国為替証拠金取引)サービスの提供とそれに伴う利益獲得を目的として、顧客との間で外国為替証拠金取引を行う一方、その為替変動リスクを制御するために、カウンターパーティーと外国為替証拠金取引を行っております。顧客との取引で発生したポジションにつき、カバー取引を行わない範囲については、ポジションを保有するリスクが発生するため、為替変動リスクに晒されておりますが、原則として、各営業日の取引終了時点における顧客のポジションについては、すべてカバーすることとしています。
当社は、外国為替証拠金取引に係るトレーディングに関して、リスク限度額を社内規程で定めるほか、社内規程等に基づき、原則として事前に設定されたアルゴリズムに基づくカバー取引・マリー取引・その他のディーリングを行うことで為替変動リスクの制御に努めております。
しかしながら、こうした当社の方針にも関わらず、予期せぬ為替相場の変動により、アルゴリズムにおける想定を超える為替損失が発生した場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、カバー先に差し入れている保証金は当社の自己資金で充当しているため、当社はカバー先の信用リスクを負っております(顧客の証拠金は、自己の資金とは完全に区分して、信託銀行に預託しています)。今後の経済情勢等の変化により、カバー先の信用リスクが顕在化した場合には当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、米国株取引においても取次先に保証金を差し入れており、その保証金は当社の自己資金で充当しているため、当社は取次先の信用リスクを負っております(顧客からの預り金等は、自己の資金と完全に区分して、信託銀行に預託しています)。このため、上記の外国為替証拠金取引に関してカバー先へ差し入れている保証金と同様のリスクがあります。
なお、米国株取引においても信用取引を提供しております。信用取引のリスクは、「(3) 信用取引等に関するリスクについて」における信用取引及び一般信用取引のリスクの記載をご参照ください。
金融商品取引法、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律、犯罪による収益の移転防止に関する法律、不当景品類及び不当表示防止法、個人情報の保護に関する法律、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、銀行法、その他の法令・規則等の改定等により、当社が行っている業務に対し、新たな規制が導入された場合には、関係業務の収益性が低下する可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、金融商品取引法、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律、銀行法、その他の法令・規則等に服しており、コンプライアンス体制の強化に努めておりますが、今後、法令・規則等に対する違反等があった場合、監督官庁による処分を受ける可能性がある他、当社の信用が著しく低下する可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、法令・規則等を遵守するよう、役職員等に対するコンプライアンスの徹底を図っておりますが、その対策が有効に機能せず、役職員等による不正や内部者取引等の金融商品取引法その他の法令・規則等に対する違反等があった場合、当社の信用の低下につながる可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、自然災害、火災、感染症の流行等によって通常の事業運営が困難となった場合に備え、事業継続計画を策定し、関連マニュアルの整備、定期的な訓練等を実施しておりますが、地震等の自然災害、火災、長期間の停電、感染症の流行、国際紛争、テロ攻撃等が発生した場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、当社は本社オフィス等の主要な事業所を首都圏に置いていることから、首都圏において自然災害等が発生した場合には、サービスの提供を停止する等の影響が生じる可能性があります。その場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度末現在において、重要な訴訟等は発生しておりません。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、当社はオンライン証券取引サービスの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
当事業年度の国内株式市場は、期首に28,200円台で取引を開始した日経平均株価が、日銀の金融緩和策維持の決定や、東京証券取引所のPBR1倍割れ企業に対する改善要求への期待等から堅調に推移しました。5月から6月にかけては、景気減速懸念のある中国・米国に比べて悪材料が少ない日本株への投資が集中し、7月3日には33年ぶりとなる33,753円を記録しました。その後、10月にかけて、米金融引き締めの長期化懸念、好決算を発表した銘柄への押し目買い、中東情勢の緊迫による地政学リスクの高まりなどから、株価は一進一退を繰り返しながら下落し、一時31,000円を割り込みましたが、日米の長期金利の低下や金融政策の修正観測の高まりによって上昇に転じ、11月に33,500円台を回復しました。1月に入ると、ハイテク株が牽引する堅調な米国市場の影響で株価はさらに上昇し、半導体関連株の買いにも支えられ、2月22日にバブル崩壊後の最高値となる39,099円を記録しました。3月には日銀政策決定会合を経て緩和的な金融環境が維持されるとの見方が強まったことや、米国主要3指数の最高値更新を受け史上初の4万円を突破しました。月末にかけては配当落ち等が意識されながら小幅に推移し、3月末の日経平均株価は40,300円台で取引を終えました。
このような市場環境の中で、二市場(東京、名古屋の各証券取引所)合計の株式等売買代金は、前事業年度と比較して30%増加しました。当社の主たる顧客層である個人投資家については、株価上昇に伴う買い余力の増加等を背景に取引が拡大し、二市場全体における個人の株式等委託売買代金は同43%増加となりました。なお、二市場における個人の株式等委託売買代金の割合は24%と、前事業年度の22%から増加しました。当社の株式等委託売買代金については同37%の増加となりました。
以上を背景に、当事業年度においては、株式等委託売買代金の増加等により受入手数料が20,390百万円(対前事業年度比26.9%増)となりました。また、信用取引平均残高が増加したこと等により、金融収支は同17.0%増の11,698百万円となりました。トレーディング損益は、主としてFX取引のトレーディング益により同34.6%増の3,157百万円の利益となりました。
この結果、営業収益は40,207百万円(同29.4%増)、純営業収益は35,245百万円(同24.0%増)と大幅な増加となりました。また、営業利益は15,165百万円(同33.6%増)、経常利益は15,054百万円(同33.8%増)、当期純利益は9,790百万円(同25.2%増)と大幅な増加となりました。
収益・費用の主な項目については以下の通りです。
受入手数料は20,390百万円(同26.9%増)となりました。そのうち、委託手数料は19,368百万円(同27.8%増)となりました。これは主として、株式等委託売買代金の増加によるものです。
トレーディング損益は、主としてFX取引のトレーディング益により、3,157百万円(同34.6%増)の利益となりました。なお、FXに係るトレーディング益と金融収支の合計は2,755百万円(同35.4%増)となりました。
(金融収支)
金融収益から金融費用を差し引いた金融収支は11,698百万円(同17.0%増)となりました。これは主として、信用取引平均残高の増加に伴い信用取引収支が増加したことや、株券等のレンディングの拡大に伴い有価証券貸借取引収支が増加したことによるものです。
販売費・一般管理費は、同17.7%増の20,080百万円となりました。これは主として、広告宣伝費の増加等により取引関係費が同18.6%の増加となったことや、事務委託費の増加により事務費が同18.9%の増加となったこと、減価償却費が同25.7%の増加となったことによるものです。
以上を背景に当事業年度のROE(自己資本当期純利益率)は、12.9%となりました。当社は、株主資本コスト(8%)を上回るROEを中長期的に達成することを経営目標としております。当事業年度のROEは、株式等委託売買代金の増加や信用取引平均残高の増加、FX取引の拡大等を背景に、前事業年度の10.1%から上昇しました。今後も中長期的な資本効率の向上に努めてまいります。
当社の主たる事業は、個人投資家向けの株式等委託売買業務であり、収入項目としては受入手数料、とりわけ株式等売買に関する委託手数料が当社の業績に重要な影響を及ぼします。また、主として信用取引に起因する金融収益についても当社の業績に重要な影響を及ぼす要因となります。しかしながら、その水準はともに株式市場の相場環境に大きく左右されます。
当社の主な資産は、顧客からの預り金や受入保証金等を信託銀行に預託した顧客分別金信託(預託金に含まれます)と、信用取引貸付金を中心とする信用取引資産です。一方、信用取引貸付金に充当することを目的として、短期借入金等による調達を行っております。当社の主な負債は、預り金、受入保証金及び短期借入金です。
当事業年度末の資産合計は、対前事業年度末比20.1%増の1,172,667百万円となりました。これは主として、預り金及び受入保証金等の増加に伴い預託金が同26.5%増の700,212百万円となったことや、信用取引貸付金が同13.3%増の311,624百万円となったことによるものです。
負債合計は、同21.9%増の1,096,342百万円となりました。これは主として、預り金が同30.6%増の425,836百万円となったことや、受入保証金が同13.7%増の285,297百万円となったこと、信用取引貸付金の増加に伴い信用取引借入金が同317.7%増の42,861百万円となったことによるものです。
純資産合計は、ほぼ横ばいの76,326百万円となりました。当事業年度においては、2023年3月期期末配当金及び2024年3月期中間配当金計10,289百万円を計上する一方、当期純利益9,790百万円を計上しております。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、5,916百万円のマイナス(前事業年度は15,530百万円のマイナス)となりました。預り金及び受入保証金が増加したことに伴いキャッシュ・フローのプラスが生じた一方、預託金が増加したことに伴いキャッシュ・フローのマイナスが生じております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、8,883百万円のマイナス(前事業年度は4,276百万円のマイナス)となりました。これは、無形固定資産の取得による支出や投資有価証券の取得による支出が主な要因です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、8,621百万円のプラス(前事業年度は41,921百万円のプラス)となりました。これは、配当金の支払があった一方、短期借入金が純増加となったことが主な要因です。
以上の結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、76,249百万円(前事業年度末は82,427百万円)となりました。
当社は、「ラインアップの充実」、「特色のあるサービスの提供」、「サービスクオリティの向上」を経営戦略として位置付けております。このため、各事業年度において、オンライン証券取引サービスを継続的に提供するとともに、各種新サービスの追加や取引システムの能力強化あるいは改良等に必要なシステム投資を中心とする設備投資を継続的に行っております。一方で、日々の業務運営に手元資金を必要とする他、主たる業務である信用取引貸付金の原資を必要としております。手元資金は、株式等委託売買や株券貸借取引等に伴う決済の他、顧客への出金等に対応するために十分な水準を確保しておりますが、日々の決済等の状況により、必ずしもその水準は一定しません。
当社が行う資金調達は、主として信用取引貸付金の原資に対応するものです。経常的な信用取引貸付金の増減については、銀行等金融機関からの短期借入金の増減を中心に対応しております。信用取引貸付金の水準が大きく増加する場合に備えて、社債による資金調達を機動的に行えるよう発行登録も行っておりますが、当事業年度末現在においては、信用取引貸付金と内部留保の水準を踏まえ、資金調達の大部分はコールマネーを含む短期借入金によっております。
なお、複数の金融機関と当座貸越契約やコミットメントライン契約を締結することで、資金調達の安全性を確保しております。
当社は、中長期的に株主資本コストを上回るROEを達成することを経営目標としており、株主還元は、株主資本コスト相当額以上を配当として実施する方針です。当事業年度末現在の株主資本コストは、資本資産評価モデルを参考に8%と想定していることから、経営目標として中長期的に8%を上回るROEを達成するとともに、配当政策として各期8%以上の純資産配当率(DOE)を実現することとしております。併せて、各期の配当性向については60%以上とすることとしております。株主還元の結果内部留保が増加する場合においては、信用取引貸付金の原資や設備投資資金等として有効に活用いたします。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。