当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.会社の経営の基本方針
当社グループでは、都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行及び国際輸送の6つの事業を主要な事業領域と位置付け、グループ経営機能を担う当社(純粋持株会社)の下、阪急電鉄㈱、阪神電気鉄道㈱、阪急阪神不動産㈱、㈱阪急交通社及び㈱阪急阪神エクスプレスの5社を中核会社として、グループ全体の有機的な成長を目指しています。
当社グループは、鉄道事業をベースに住宅・商業施設等の開発から阪神タイガースや宝塚歌劇など魅力溢れるエンタテインメントの提供に至るまで、多岐にわたる分野において、それまでになかったサービスを次々と提供することにより、沿線をはじめ良質な「まちづくり」に貢献するとともに、社会に新風を吹き込み、100年以上の長い歴史の中で数々の足跡を残してきました。そして、これらの活動等を通じて、暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を絶えずお客様にお届けしてきました。今後も、グループの全役員・従業員が、お客様の日々の暮らしに関わるビジネスに携わることに強い使命感と誇りを持ち、そうした思いを共有し、一丸となって業務にあたっていく上での指針として、以下のとおり「阪急阪神ホールディングス グループ経営理念」を制定しています。
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阪急阪神ホールディングス グループ経営理念 |
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使命(私たちは何のために集い、何をめざすのか) |
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「安心・快適」、そして「夢・感動」をお届けすることで、お客様の喜びを実現し、社会に貢献します。 |
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価値観(私たちは何を大切に考えるのか) |
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お客様原点 |
すべてはお客様のために。これが私たちの原点です。 |
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誠実 |
誠実であり続けることから、私たちへの信頼が生まれます。 |
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先見性・創造性 |
時代を先取りする精神と柔軟な発想が、新たな価値を創ります。 |
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人の尊重 |
事業にたずさわる一人ひとりが、かけがえのない財産です。 |
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行動規範(「価値観」を守り、「使命」を果たしていくために、私たちはどのように行動するのか) |
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1. 私たちは、出会いを大切にし、お客様の立場に立って最善を尽くします。 |
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2. 私たちは、法令遵守はもとより、社会的責任を自覚して行動します。 |
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3. 私たちは、仕事に責任と誇りを持ち、迅速にやり遂げます。 |
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4. 私たちは、目先のことのみにとらわれず、中長期的な視点で考えます。 |
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5. 私たちは、現状に満足することなく、時代の先を見据えて取り組みます。 |
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6. 私たちは、思いやりの心を持ち、お互いを認め合います。 |
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7. 私たちは、活発にコミュニケーションを行い、風通しのよい職場をつくります。 |
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8. 私たちは、グループ全体の発展のために力を合わせます。 |
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2.サステナビリティ宣言
当社グループでは、2020年5月に発表した「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」に基づき、ESG(環境・社会・企業統治)に関する取組を着実に推し進めています。
このサステナビリティ宣言では、当社グループがサステナブル経営を進める上での基本方針や6つの重要テーマ等を定めており、これをベースに、これからもお客様や地域社会等との信頼関係を構築しながら、持続的な成長を図り、ひいては持続可能な社会の実現につなげていきます。
なお、サステナブル経営の推進にあたり、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」(※1)及び「国連グローバル・コンパクト」(※2)への対応として、2021年5月に賛同の意を表明しています。
※1 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」…2015年に、G20の要請を受け、金融安定理事会の作業部会として設置されたものであり、投資家等の適切な投資判断に資するよう、企業等に対して、気候変動に伴うリスクと機会の特定、その財務的な影響の試算、気候変動に対応する事業戦略等を開示することを推奨しています。
※2 「国連グローバル・コンパクト」…1999年の世界経済フォーラムで提唱された企業の行動規範であり、企業等に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野において、10原則を遵守し実践するよう要請しています。
<サステナビリティ宣言の概要>
基本方針
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~暮らしを支える「安心・快適」、暮らしを彩る「夢・感動」を、未来へ~ 私たちは、100年以上積み重ねてきた「まちづくり」・「ひとづくり」を未来へつなぎ、 地球環境をはじめとする社会課題の解決に主体的に関わりながら、 すべての人々が豊かさと喜びを実感でき、 次世代が夢を持って成長できる社会の実現に貢献します。 |
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6つの重要テーマ |
取組方針 |
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① 安全・安心の追求 |
鉄道をはじめ、安全で災害に強いインフラの構築を目指すとともに、誰もが安心して利用できる施設・サービスを日々追求していきます。 |
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② 豊かなまちづくり |
自然や文化と共に、人々がいきいきと集い・働き・住み続けたくなるまちづくりを進めます。 |
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③ 未来へつながる暮らしの提案 |
未来志向のライフスタイルを提案し、日々の暮らしに快適さと感動を創出します。 |
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④ 一人ひとりの活躍 |
多様な個性や能力を最大限に発揮できる企業風土を醸成するとともに、広く社会の次世代の育成にも取り組みます。 |
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⑤ 環境保全の推進 |
脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進します。 |
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⑥ ガバナンスの充実 |
すべてのステークホルダーの期待に応え、誠実で公正なガバナンスを徹底します。 |
<サステナビリティ宣言の位置づけ>
3.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1) 長期ビジョンについて
当社グループでは、コロナ禍をきっかけとした急速な社会変化や、SDGs・2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識の高まり等、社会経済環境や事業環境の変化に対応し、持続的な企業価値の向上を実現していくために、2022年5月に「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン-2040年に向けて-」を策定しました。
この長期ビジョンでは、今後推進していく「芝田1丁目計画(大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替え、阪急三番街の全面改修等)」や「なにわ筋連絡線・新大阪連絡線計画」等の大規模プロジェクトの利益貢献が期待できる2035~2040年頃を見据えながら、その実現に向けた戦略や財務方針等を下記のとおり定めています。
今後の経営目標については、2035~2040年頃の成長イメージに加え、その通過点として2030年度の経営目標(財務指標・非財務指標)を下記のとおり掲げています。
2030年度における経営目標(財務指標・非財務指標)
<財務指標>
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収益性 |
事業利益 (注) 事業利益…営業利益+海外事業投資(不動産事業等)に伴う 持分法投資損益 |
1,300億円+α(※2) |
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財務健全性 |
有利子負債/EBITDA倍率 (注) EBITDA…事業利益+減価償却費+のれん償却額 |
5倍台 |
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資本効率 |
ROE (注) ROE…親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本 |
中長期的に7%水準 |
<非財務指標>
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・ CO2排出量の削減率 (2013年度比)△46% ・ 鉄道事業における有責事故ゼロ |
・ 従業員満足度の継続的向上 ・ 女性管理職比率 10%程度 ・ 女性新規採用者比率 30%以上を継続 |
2035~2040年頃の成長イメージ
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大規模プロジェクトの竣工・開業による利益貢献に加え、阪急阪神DXプロジェクトの一層の 推進等により、2030年度の事業利益(1,300億円+α)からさらなる利益伸長を目指す |
当社グループでは、現在、この長期ビジョンで掲げた戦略に沿って、海外不動産事業の規模拡大をはじめ、様々な取組を推し進めていますが、当社グループを取り巻く事業環境は、同ビジョン策定時に想定していた以上のスピードで変化しています。そうした中でも、当社グループが持続的に成長していくためには、既存事業の伸長に注力することはもとより、成長する市場にも新たに積極果敢に進出していくことによって、利益の拡大を図り、安定的な資金創出力を確保・維持していくことが必要となります。加えて、昨今の資本市場からの要請等に鑑みますと、中長期的に企業価値の向上を目指していくうえでは、経営目標の中でも、ROE8%水準を意識した資本効率の向上がとりわけ重要と考えられます。
こうしたことを踏まえ、当社グループでは現在、市場の将来性や資本効率等の観点から、事業ポートフォリオや経営資源の配分のあり方等について継続的に検討を深めています。これにより、変化する事業環境の中でも、様々なステークホルダーの期待に応え、持続的に成長できる企業グループとなることを目指していきます。
※1 当社グループがDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関して新たに取り組む施策(デジタル領域での新サービスの提供やグループ共通IDの導入等)の総称
※2 事業利益1,300億円を目指すとともに、阪急阪神DXプロジェクト等での上積み(+α)に挑戦します。
(2) 中期経営計画の進捗等について
当社グループでは、長期ビジョンの実現に向け、中期的な取組を反映した具体的な実行計画として、2022年度から2025年度までの4か年の中期経営計画を策定し、それに則った施策を推し進めています。
2023年度については、都市交通事業において旅客数に一定の回復がみられたことや、不動産事業においてホテルの宿泊需要の回復に加え、分譲、賃貸及び海外不動産等の各事業も伸長したこと、またエンタテインメント事業において阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝及び38年ぶりの日本シリーズ制覇を果たすなど、スポーツ事業が好調に推移したこと等により、着実に利益を伸ばすことができました。
2024年度については、不動産事業においてマンション分譲戸数が増加するものの、スポーツ事業での減益を見込むこと等により、事業利益は1,070億円、親会社株主に帰属する当期純利益は700億円と予想しています。そして、現行の中期経営計画の最終年度となる2025年度については、ここ数年間で新たに着手・推進した取組の成果を発現させていくことで、事業利益は1,180億円、親会社株主に帰属する当期純利益は750億円、「有利子負債/EBITDA倍率」は6.9倍、ROEは7%水準となる見通しです。
また、株主還元については、経営基盤の一層の強化に努めながら、総還元性向(※3)を30%とすることで、安定的な配当の実施と自己株式の取得に取り組むことを基本方針としています。このうち、配当については、近時の業績の推移等を踏まえて、2024年度の利益配分から、1株当たりの年間配当金を55円から60円(中間配当金30円、期末配当金30円)に引き上げることを予定しています。
※3 総還元性向…親会社株主に帰属する当期純利益に対する年間配当金総額と自己株式取得額の合計額の割合
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(注)事業利益=営業利益+海外事業投資(不動産事業等)に伴う持分法投資損益
(2022年度以前は、海外事業に係る持分法適用会社が存在していなかったため、営業利益=事業利益)
(3) 宝塚歌劇団の事案について
当社グループは、2023年9月に宝塚歌劇団宙組劇団員が逝去された件について、宝塚歌劇団における組織運営の不備により、亡くなられた劇団員に対し、長時間の活動を余儀なくさせ過重な負担を生じさせたこと、及び、宝塚歌劇団内において、厚生労働省指針(令和2年厚労省告示第5号)が示す「職場におけるパワーハラスメント」に該当する様々な行為を行ったことによって、当該劇団員に多大な心理的負荷を与える事態を引き起こしたことを認めました。持株会社である当社としても、このような事態を引き起こしたことを厳粛に受け止め、以下の再発防止に向けた取組を着実に実行していくとともに、さらなる改善策を検討していきます。
① 「一人ひとりの活躍」に向けた取組のさらなる推進
各事業の特性に応じた形で、相談・救済の窓口の再周知やハラスメント調査・研修等の施策をより強化するとともに、外部の専門家の助言を得ながら「ビジネスと人権」を意識した施策のPDCAサイクルをさらに推進することなどにより、当社グループの事業活動に関係する人権リスクを防止・軽減していきます。
② 宝塚歌劇団に対するガバナンス機能の強化
宝塚歌劇団について、当社グループのコンプライアンス体制やリスク管理体制の中で、組織としての特性に合った形で適切なマネジメントを行い、当社の宝塚歌劇団に対するガバナンス機能を強化していきます。また、当社監査部門等による監査を強化することで牽制機能の実効性を確保するとともに、当社として、継続的にモニタリングを実施していきます。
そして、宝塚歌劇団では、興行計画や稽古スケジュールの見直しと併せて、活動時間管理の強化や、劇団員の心身の健康管理体制の強化など、現場のサポートやケアを行う体制・仕組みを強化し、劇団員が良好なコンディションのもと活動に打ち込める環境の整備を進めています。また、現場の問題を把握し、意見を吸い上げる仕組みを強化するため、各種相談窓口の利用促進を図るとともに、職場環境(心理的安全性等)を把握するための調査を実施しています。これらの取組をより実効性の高いものとするために、当社グループで歌劇事業を運営する阪急電鉄㈱に外部有識者で構成されるアドバイザリーボードを設置し、専門的知見から助言を受けて、今後の取組に生かしていきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.サステナビリティ全般
(1)ガバナンス
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当社グループでは、2020年度からサステナビリティ推進委員会(委員の構成等は右図のとおり)を、年2回(原則として、9月・2月)開催しています。 同委員会では、サステナビリティに関する外部環境(行政・投資家・他社の動向等)やESG評価機関の評価状況等を踏まえ、当社グループのサステナブル経営の重要テーマに関する方針を策定したり、取組の進捗状況について確認したりするほか、中期経営計画に反映すべき事項等について審議・決定しています。 また、同委員会における審議内容は、グループ経営会議に付議されるとともに、取締役会にも報告してその監督を受けています。 同委員会を中心に、事務局(主管)であるサステナビリティ推進部が経営企画部門や各事業部門と連携しながら、サステナブル経営のPDCAサイクルを回しています。このように、グループ全体のマネジメント体制に組み込んで、サステナブル経営を推し進めています。 |
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(2)戦略
当社グループでは、サステナビリティ宣言において、サステナブル経営を進める上での基本方針や6つの重要テーマ等を定めています。重要テーマの特定にあたっては、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめとするグローバル共通の社会課題や当社グループが特に対処すべき社会課題を踏まえ、外部有識者の意見も参考にしながら、下記6つに絞り込み、グループ経営会議での審議を経て、取締役会で承認しました。これらをベースに、これからもお客様や地域社会等との信頼関係を構築しながら、持続的な成長を図り、ひいては持続可能な社会の実現につなげていきます。なお、サステナビリティ宣言の詳細については、
重要テーマと取組方針を踏まえた具体的な取組の方向性については、以下のとおりです。
(3)リスク管理
当社では、人事総務室内にグループのリスク管理を統括する担当部署を設け、毎年リスク調査を行っています。同調査では、気候変動(自然災害等)・事故・情報管理・法令順守・その他組織運営等に関するリスクを対象としており、組織横断的なリスクについては同担当部署が、各コア事業固有のリスクについては各事業部門が、それぞれリスクを特定・分析し、適切な対応方を定めるようにしています。また、これらのリスク分析やリスク対応の状況については、毎年取締役会で報告しています。
このうち、気候変動関連のリスクについては、自然災害など事業運営に直接影響するリスクだけでなく、エネルギーや資材価格の高騰などバリューチェーンで発生するリスクも、項目ごとに分析・検討を行っており、その上で時間軸(短期・中期・長期)をにらみながら、リスク評価を実施しています。そして、年に複数回、その対策状況についてモニタリングを行っています。
また、気候変動関連のリスクやそれらが事業に与える影響等については、サステナビリティ推進委員会でも審議しています。そして、その内容については、リスク調査時の重点リスクの選定に活かすなど、グループ全体のリスクマネジメントに反映するようにしています。
(4)指標及び目標
当社グループがサステナブル経営を推し進めるにあたり、特に重要と考える取組については、2030年度の経営目標として、グループ共通の非財務KPIを設定しています。
また、その他、健康経営や男性育児休業等に関するグループ共通の非財務KPIや、事業特性に応じたコア事業ごとの非財務KPIを設定しており、グループ全体で重要テーマの実現に向けた取組を進めています。
2.気候変動
当社グループは、2021年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」へ賛同の意を表明し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の各項目に沿った情報開示を進めています。また、2022年5月に公表した長期ビジョンでは、パリ協定の目標である1.5℃シナリオの実現に向け、当社グループのCO2排出量の削減目標として、2050年度実質ゼロを新たに掲げ、その中間地点となる2030年度の目標を△46%(2013年度比)としました。今後も、気候変動への対応を事業戦略に組み込み、事業の強靭性を高めることで、脱炭素社会への移行を着実に推し進めていきます。
(1)ガバナンス
ガバナンスについては、
(2)戦略
<リスク・機会の特定>
気候変動への対応を検討するにあたり、当社グループのコア事業のうち、特に気候変動の影響が大きいと想定される鉄道事業と不動産事業について、事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクと機会の特定を行いました。
<シナリオ分析及び財務的な影響の試算>
特定したリスクと機会のうち、特に影響が大きいと想定されるものについて、2030年度における鉄道事業・不動産事業への影響を把握するため、シナリオ分析を実施しました。具体的には、脱炭素政策の強化が見込まれる1.5℃シナリオ、物理的リスクの顕在化が見込まれる4℃シナリオにおける事業への財務的な影響の試算(※1)を行いました。
分析にあたり活用した社内外のデータは、以下のとおりです。
① 社内データ:CO2排出量の見通し、自然災害リスクへの対応計画、ZEB・ZEHの施工計画等
② 外部データ:IEA(国際エネルギー機関)や環境省・気象庁のレポート等(※2)より、炭素税の予測、
降雨量の予測等
※1 単年度の営業利益への影響額について、いずれのコストアップも価格転嫁を加味しない場合の試算を行いました。なお、当該試算は2023年3月末時点をベースとしており、今後、新たな前提で試算を行った際は、統合報告書等で随時公表する予定です。
※2 IEA「World Energy Outlook 2022」等
IPCC「RCP8.5」「RCP2.6」
気象庁「日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」等
<鉄道事業への影響と今後の対応>
1.5℃のシナリオでは、政策等により環境関連の規制が強化され、炭素税の導入に伴うCO2排出量への課税により△27億円の営業利益への影響が生じることが確認できました。引き続き、省エネルギー型車両への更新やLED照明の導入等によるエネルギー使用量の削減、また駅等への太陽光パネルの設置など再生可能エネルギーの活用に取り組むことで、これらの影響を低減していきます。
4℃シナリオでは、自然災害の激甚化(規模・頻度)により、物理的被害の可能性が高まることが確認されました。今回の試算では、当社沿線で被害額が最も大きいと見込まれる武庫川を選定し、被害額を算出しました。氾濫発生時に車両避難を実施しなかった場合、想定される営業利益への影響額は△39億円となる一方で、車両避難を実施することにより、被害を△4億円まで大幅に軽減できることを確認できました。引き続き各種安全投資や車両避難計画の着実な運用等により、長期運休を回避できる強靭な事業運営に努めていきます。
[物理的リスクに対するハード・ソフト両面での対応例]
ハード面では、線路脇で土砂崩れが発生する危険性の高い箇所について、斜面の崩壊や落石の防止、排水機能の強化等の対策工事や、雨量計の増設等を実施しています。
ソフト面では、河川の氾濫による車庫及び車両の浸水被害を回避するため、車両避難計画等の浸水対策を進めています。例えば、今回財務的な影響額を試算した武庫川では、過去100年間、西宮車庫周辺を含む下流域で洪水は発生していませんが、実際に発生したときに想定される影響額の大きさに備え、災害レベルの豪雨(※3)が予想される際に、阪急電鉄の西宮車庫の車両を浸水の影響がないところへ避難させる計画を策定しています。このように、ハード面及びソフト面から気候変動リスクに対する安全対策を進め、被害の低減に努めています。
※3 市区町村等が作成したハザードマップ上の「計画規模降雨(100年に1度の降雨規模)」を想定しています。
<不動産事業への影響と今後の対応>
1.5℃のシナリオでは、炭素税の導入に伴う建設資材の価格の上昇により△23億円、ZEBをはじめとする建築物への対応や環境規制の強化に伴う建築コストの上昇により△5億円など、営業利益への影響が生じることが確認できました。なお、ZEHについては、国等の補助金を活用するとともに、用地仕入れの段階からZEH採用によるコスト増を収支に織り込み、適正な販売価格を設定する(ZEH住宅への税制優遇等により、顧客のZEHへの評価も向上している)ことにより、営業利益への影響は限定的と見込んでいます。一方、ZEBについては、賃料価格への転嫁が難しく、営業利益に上記の建築コストの上昇に伴う減価償却費相当の影響が生じる可能性がありますが、国等の補助金も活用しながら、できるだけ影響の低減に努めていきます。
4℃シナリオにおける不動産事業への財務的な影響は、限定的であることを確認しました。物理的リスクとして、梅田地区の水害が想定されますが、内水氾濫については、不動産物件への止水板の設置や災害対応マニュアルの整備など既に対応を完了しており、外水氾濫については、発生確率が非常に低い(※4)と見込まれています。
今後も、新たに開発する大型ビルを中心にBCP対応率やグリーンビルディング認証の取得率、新規マンション開発におけるZEH化率などの指標を掲げ、いずれのシナリオにおいても対応できるよう取組を進めていきます。
※4 淀川の氾濫に伴う梅田地区の浸水は、市区町村等が作成しているハザードマップの想定最大規模の降雨時(1000年に1度程度)にのみ想定されていますが、4℃シナリオにおいても発生確率は非常に低いと見込まれています。
(3)リスク管理
リスク管理については、
(4)指標及び目標
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当社グループでは、サステナブル経営の重要テーマに「環境保全の推進」を掲げ、グループ共通の非財務KPIとして、CO2排出量(※5)の削減目標を設定しています。具体的には、パリ協定の目標である1.5℃シナリオの実現に向け、当社及び子会社の国内事業所におけるCO2排出量の削減について、2050年度において実質ゼロとする目標を掲げ、また中間目標として、2030年度に2013年度比△46%とすることを目指しています。 この目標達成に向けた基本的な取組方針は、まずエネルギー使用量の削減を重視し、財務の健全性と投資効率をみながら「①省エネの着実な推進」に取り組むとともに、技術革新の動向をみながら、事業採算性が合うので |
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あれば、「②創エネ(再エネ発電設備等の導入)の検討」を進めていきます。そして、①、②の取組だけで目標を達成することが難しい場合は、「③再エネ電力の購入」によりカバーリングすることで対応していきます。 上記の方針のもと、各事業では、気候変動への対応を含む非財務のアクションプランや進捗管理を適切に行うための指標を設定しています。また、2021年度の温室効果ガス排出量から、スコープ1及びスコープ2に加えて、スコープ3についても算定しています。さらに、CO₂削減に向けた投資の促進等を目的に、2023年度から、インターナルカーボンプライシング(※6)を導入(5,000円/t-CO2)しました。 |
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今後も、脱炭素社会に向けた取組を積極的に推し進めていきます。
※5 スコープ1、2相当。なお、当社グループでは、CO2以外の温室効果ガスの割合が極小であることから、CO2排出量を温室効果ガス排出量とみなしています。
※6 企業が独自に炭素価格を設定し、将来のCO2排出量削減や炭素税の導入による経済的な影響の把握、投資判断の意思決定、省エネ推進へのインセンティブ等に活用する手法
3.人的資本・多様性
長期ビジョンの実現に向けては、沿線やコンテンツの魅力をさらに高め、事業フィールドをより拡げるなど、グループが一体となって変革を推し進めていく必要がありますので、その原動力となる従業員一人ひとりが活躍することは、欠かせない重要なファクターです。こうしたことを踏まえ、当社グループでは、今後とも従業員の働きがいや働きやすさをより高め、多様な人材が個性や持てる能力を最大限に発揮し、活躍できる環境を整備することで、様々な価値観が響きあう躍動感溢れる組織を創っていきます。
(1)戦略
長期ビジョンを実現するためには、同ビジョンと連動した人材戦略が必要です。そのために、新卒の同質性の高い人材だけに頼るのではなく、多様な人材を備え、また従業員の潜在能力を新たに見出し、会社と従業員の双方が協力してそれを高めながら、一人ひとりが活躍しやすい環境を整えていきます。
<長期ビジョン(=経営戦略)と連動した人材戦略>
(2)指標及び目標
経営戦略上必要な人材を計画的に採用・育成し、一人ひとりのパフォーマンスの最大化を図るため、下表のとおり、KPIを設定しています。
なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、当社グループに属するすべての会社では行われていないため、連結ベースでの記載は困難です。このため、上表の指標に関する目標及び実績は、注釈があるものを除き、当社及び主要6社を対象として記載しています。また、一部のKPIについては、実績のモニタリングのみを行っているため、目標値を設定していません。
4.人権
(1) ガバナンス
ガバナンスについては、「1.サステナビリティ全般」の「(1) ガバナンス」に記載のとおりです。
(2) 戦略
当社グループは「人の尊重」をグループ経営理念の価値観の一つとしており、すべての従業員がその趣旨を深く理解できるよう、「人権の尊重に関する基本理念」と「人権の尊重に関する基本方針」を明文化しています。
2023年4月には、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」等を踏まえ、基本理念と基本方針を改定し、これを踏まえて人権デュー・ディリジェンスにも取り組むなど、今後も負の影響の回避・低減に努めていきます。
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<阪急阪神ホールディングスグループ 人権の尊重に関する基本理念> 私たちは、事業活動を通じて関わるすべての人の人権を尊重することで、出生、人種、国籍、宗教、信条、性別、性的指向、性自認、年齢、障がいの有無などによる差別や人権侵害のない、豊かな社会づくりに貢献します。
<阪急阪神ホールディングスグループ 人権の尊重に関する基本方針> 1.人権尊重に関連する法令・規範の遵守 私たちは、私たちの事業活動を行うそれぞれの国や地域で適用される人権に関する法令の遵守に努めるとともに、国際連合の「国際人権章典(世界人権宣言・国際人権規約)」および国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」※などの人権に関する国際規範を支持・尊重します。 ※ 結社の自由および団体交渉権の承認、強制労働の禁止、児童労働の禁止、雇用および職業における差別の禁止、安全で健康的な労働環境を中核的労働基準として定めています。
2.適用範囲 本理念と方針は、阪急阪神ホールディングスグループのすべての役職員に適用します。また、関連するステークホルダーに対しても、本理念と方針への理解・支持を得るよう努め、共に人権尊重の歩みを進めることを期待します。
3.人権デュー・ディリジェンス 私たちは、人権尊重の責任を果たすため、人権デュー・ディリジェンスを継続的に実施し、人権への負の影響の回避・低減に努めます。
4.救済・是正 私たちは、私たちの事業活動において人権への負の影響を直接的に引き起こしたり、助長したりしたことを把握した場合、適切な手段を通じて、その救済と是正を実施もしくは協力します。
5. ステークホルダーとの対話 私たちは、社外の専門家との対話を通じて知見を得るとともに、ステークホルダーの意見に耳を傾け、責任ある対応に努めます。
6. 教育・啓発 私たちは、本理念と方針が私たちの事業活動に定着するよう、必要な教育と啓発を継続的に行います。
7.職場環境づくり 私たちは、私たち役職員一人ひとりの人権を尊重するため、採用に始まるすべての処遇において、公正かつ公平であるよう努めます。また役職員がお互いに一人ひとりの違いを認め、個性や能力を存分に発揮できる職場環境づくりを進めます。
8.情報開示 私たちは、人権尊重の取組について、適時・適切に情報を開示します。 |
なお、「人権の尊重に関する基本理念」と「人権の尊重に関する基本方針」について、当社グループの全役職員に配付する「コンプライアンスの手引き」等を通じて周知を図っているほか、グループ各社の経営層と当社の全管理職を対象に、経営トップによるサステナブル経営の重要性の説明や外部有識者による人権啓発研修を毎年実施するなど、トップコミットメント及び教育・啓発に取り組んでいます。
(3) リスク管理
<人権デュー・ディリジェンス>
当社は、人権の尊重に関する基本理念及び基本方針の改定にあたり、全連結子会社に対し、2022年度にチェックリストによる人権尊重に関する状況確認を実施しました。当該リストは、ILO(国際労働機関)が定める中核的労働基準である、結社の自由及び団体交渉権の承認、強制労働の禁止、児童労働の禁止、雇用及び職業における差別の禁止、安全で健康的な労働環境に関して、専門家の助言を踏まえて、当社が独自に作成したものです。
また、「ビジネスと人権」の視点をさらに意識し、グループ全体(サプライチェーンを含む。)において、人権リスクの洗出しと優先順位付けをしたうえで、人権侵害の防止・負の影響の軽減の取組を進めていきます。取組にあたっては、社外の視点を重視し、大学教授やNGO等の外部の専門家と対話しながら進めていきます。
特に、ハラスメントについては、当社社長及びグループ各社のトップからハラスメント防止メッセージを従業員に発信するとともに、毎年、グループ各社がハラスメント防止対策計画を策定し、それに沿った取組を計画的に実施しているほか、当社グループの従業員を対象に「職場環境に関するアンケート」を隔年で実施し、アンケート結果を、グループ各社におけるハラスメント防止対策の立案に活用しています。
<是正・救済>
当社では、人権侵害行為を含む法令等違反行為・反倫理的行為が行われていた場合、又はそのおそれがある場合に、当社グループの役職員及び当社グループのお取引先が利用可能な内部通報制度として、内部相談受付窓口及び外部の弁護士を窓口とする外部相談受付窓口からなる「企業倫理相談窓口」を設置しています(匿名での相談も可能)。なお、企業倫理相談窓口の運用の状況について、毎年取締役会及び監査等委員会に報告しており、2022年度におけるグループ全体の受付件数は69件でした。
さらに、当社では、当社グループの従業員を対象とした「ハラスメント相談窓口」を設置し、職場におけるハラスメントについての相談を受け付けています(匿名での相談も可能)。
両窓口の利用にあたっては、相談者のプライバシーが保護されることはもちろん、相談したことを理由とする不利益な取扱いがない旨を規程等で明示しています。
(4) 指標及び目標
当社グループでは、研修等を通じて人権啓発に取り組んでおり、下表のとおり、KPIを設定しています。
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非財務KPI(※) |
目標値(2025年度) |
2022年度実績 |
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当社主催人権研修受講率 |
100%を継続 |
100% |
※ 対象範囲は、当社及び主要6社(阪急電鉄・阪神電気鉄道・阪急阪神不動産・阪急交通社・阪急阪神エクスプレス・阪急阪神ホテルズ)
当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、これらのリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではありません。
なお、当社グループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況」の「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」「② コーポレート・ガバナンス体制」「2.内部統制体制」に記載のとおりです。
(1) 自然災害、事故
① 自然災害等について
当社グループは、都市交通事業、不動産事業、エンタテインメント事業、情報・通信事業、旅行事業及び国際輸送事業など多種多様な事業を営んでおり、地震や台風等の自然災害、大規模な事故、テロ行為等が発生した場合には、顧客や営業施設への被害及び事業活動の制限等により、当社グループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。特に近年、気温や海水温の上昇などの気候変動により、集中豪雨や強力な台風等が増加する可能性が指摘されており、こうした自然災害により上記の影響を受けるリスクが高まってきています。
当社グループとしては、既存設備の維持更新投資や耐震補強工事を実施するとともに、激甚化する自然災害による影響の分析や対応を進めるほか、特に鉄道等の公共輸送に携わるグループ会社については、安全性を最優先にした体制の整備に努めるなど、ハード・ソフトの両面から、自然災害や事故等による影響の最小化に向けた取組を行っています。
② 感染症の流行について
感染症が広く流行し、往来の制限をはじめ人々の生活が様々な制約を受けることとなった場合、当社グループでは、都市交通事業における鉄道等の旅客人員の減少、不動産事業における賃貸施設の休館・来館者数の減少やホテルのインバウンド・国内需要の減少、エンタテインメント事業におけるプロ野球の試合や宝塚歌劇の公演の中止・入場人員の制限、旅行事業における海外・国内ツアーの催行中止等、各事業において大きな影響を受ける可能性があります。
当社グループとしては、こうした状況下であっても、感染状況に応じた予防・拡大防止措置を講じながら、鉄道等の社会インフラを運営する企業グループとして事業継続に努めるとともに、これらによる影響を受けても持続的な企業価値の向上を実現すべく、収益力の向上と安定した財務体質の確保を図ってまいります。
(2) 情報管理
当社グループは、各事業において情報システムを利用しており、事故や災害、社内や取引先における不正やミス、サイバー攻撃等によりその機能に重大な影響を受けた場合、当該情報システムの停止、誤作動等のほか、情報の漏えい等が生じることで、当社グループの事業運営に支障を来すとともに、当社グループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。特に、個人情報については、各事業において顧客データ等の個人情報を管理しており、不測の事故等により情報が流出した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、大きな影響を受ける可能性があります。
当社グループとしては、電子情報セキュリティ基本方針等の社内規程に従い、情報の漏えい、改ざん、不正利用等の防止や情報システムの安定稼働に必要な対策を講じています。特に、当社グループは、重要インフラである鉄道を運営していることも踏まえ、サイバーセキュリティの確保をリスク管理の重要な要素と位置付けており、行政等の関係機関とも積極的に連携して情報収集に努めるなど、継続的に対策を講じているほか、「グループCSIRT」を整備し、問題発生時に速やかに連絡・対処して被害の局所化を図るとともに、適切な再発防止策を講じる体制を構築しています。また、個人情報については、上記に加え、国内外の個人情報保護に関する法令を遵守するよう、個人情報管理基本方針等の規程を制定し、個人情報の適切な利用と保護を図る体制を整備するとともに、役職員に対する教育等に取り組んでいます。
(3) コンプライアンス
当社グループは、全てのステークホルダーの期待にお応えし、信頼され、称賛される企業集団となることを目指しており、その前提の一つとなるのがコンプライアンスを重視した経営姿勢であります。万一、コンプライアンスに反する行為が発生した場合は、損害賠償や社会的信用の失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。
当社グループとしては、各事業において、会社法、金融商品取引法、労働法、税法、経済法、各種業法その他関係法令の遵守はもちろんのこと、人権の尊重、腐敗行為(贈収賄等)の防止、税務ポリシー等の各種の基本方針や、企業倫理規程等の社内規程を整備し、これらに従った事業運営を徹底するとともに、当社によるモニタリングを継続的に行い、グループ全体に対するガバナンス機能を強化するなど、コンプライアンス経営を推進しています。中でも、人権の尊重については、当社グループの使命を果たし続けるための基盤であると考えており、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」等を踏まえて、「人権の尊重に関する基本理念」及び「人権の尊重に関する基本方針」を策定(2023年4月に改定)するとともに、人権デュー・ディリジェンスにも取り組むなど、「ビジネスと人権」の枠組みに沿った取組をさらに推進することで、負の影響の回避・低減に努めていきます。また、こうした取組の実効性をより高めるため、役職員等への啓発や教育を行い、その知識や意識を向上させることで、コンプライアンスに反する行為の未然防止を図っているほか、内部通報制度を設け、コンプライアンス経営の確保を脅かす事象を速やかに認識し、対処できる体制を構築しています。
(4) 財務(有利子負債について)
当社グループでは、各事業において継続的に設備投資を行っていますが、これに必要な資金の多くは、金融機関からの借入れや社債等によって調達しています。そのため、今後、金利の上昇・金融市場の変化等が生じた場合や、当社グループの財務状況の変動等に伴って当社の格付が引き下げられた場合には、支払利息の増加のほか、返済期限を迎える有利子負債の借換えに必要な資金を含む追加的な資金を望ましい条件で調達することが困難になる可能性があります。
なお、当連結会計年度末における連結有利子負債残高は1兆1,741億60百万円となっていますが、今後、施設等の安全性の維持・向上に係る投資に加えて、大規模プロジェクトをはじめ将来を見据えた成長投資を予定しており、連結有利子負債が一定程度増加する見込みです。
当社グループとしては、引き続き資金調達の多様化を進め流動性を確保し、金利の固定化を行うことで金利変動リスクの回避に努めるとともに、コストや維持更新投資の削減などを通じて有利子負債の抑制を図りながら、財務体質の健全性の維持に努めていきます。
(5) 政治・経済・社会環境の変動
① 法的規制について
当社グループのうち、鉄道事業者においては、鉄道事業法の定めにより経営しようとする路線及び鉄道事業の種別毎に国土交通大臣の許可を受けなければならず(第3条)、さらに旅客の運賃及び料金の設定・変更は、国土交通大臣の認可を受けなければならない(第16条)こととされています。よって、これらの規制により、当社グループの鉄道事業の活動が制限される可能性があります。なお、これらの国土交通大臣の許可及び認可については、期間の定めはありません。
また、鉄道事業以外でも、当社グループが展開する各事業については、様々な法令、規則等の適用を受けており、これらの法的規制が強化された場合には、規制遵守のための費用が増加する可能性があり、規制に対応できなかった場合は、当社グループの活動が制限される等、当社グループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。
当社グループとしては、規制の変更、新設に関する情報やその影響等を事前に調査・把握し、当社グループへの影響を最小限にとどめるよう努めています。
② 保有資産の時価下落について
当社グループが保有する棚卸資産、有形・無形固定資産及び投資有価証券等の時価が、今後著しく下落した場合には、減損損失又は評価損等を計上することにより、当社グループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。
③ 少子化等について
当社グループが基盤とする京阪神エリアにおいて、少子化等に伴う将来的な人口動態の変化から、鉄道、バス、タクシー等に対する旅客輸送需要やその他の各事業における需要が減退することに加え、労働市場の逼迫に伴い働き手の確保が困難になることが想定され、当社グループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。
当社グループとしては、沿線における定住人口の増加や、インバウンド需要の取込等による交流人口の増加のための取組に加えて、DXの活用等を通じた生産性の向上に向けた取組をグループ全体で推し進めていきます。
④ 社会変化(ライフスタイルやビジネススタイルの変化)等について
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、人々の行動・生活拠点の変化や、QOL(Quality of Life)の意識拡大等の社会変化のほか、SDGs・2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識が高まるなど、社会経済環境や事業環境が急速に変化しています。今後、これらの変化に伴って人々の生活が大きく変容した場合には、人々の生活に密接に関わる事業を多く営んでいる当社グループの既存のビジネスモデルが影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、こうした状況を踏まえ、2022年5月に策定した「長期ビジョン-2040年に向けて-」の戦略に則った施策等を推し進めるとともに、既存事業の伸長に注力することはもとより、成長する市場にも進出することで、利益の拡大と安定的な資金創出力の確保・維持を図っていきます。また、資本市場からの要請等に鑑み、市場の将来性や資本効率等の観点から、事業ポートフォリオや経営資源の配分のあり方等について継続的に検討を深め、変化する事業環境の中でも、様々なステークホルダーの期待に応え、持続的に成長できる企業グループとなることを目指していきます。
⑤ 気候変動問題への対応について
気候変動に伴い、温室効果ガスの排出抑制に向けた取組が世界全体で進んでいます。当社グループの主力事業である鉄道は、他の輸送機関と比べて環境負荷が少ないものの、今後、鉄道や不動産をはじめとする各事業において、脱炭素社会や循環型社会に対応するための投資・費用の発生が見込まれるほか、温室効果ガス排出に係る税制の導入や(再生可能エネルギーの促進等に向けた)電力小売単価の上昇に伴って費用が増加する可能性があります。また、こうした社会への移行に対応できなかった場合には、信用の毀損等に伴う収益の減少や、円滑な資金調達が困難となる可能性があります。
当社グループでは、温室効果ガス削減への対策は持続可能な社会の実現に向けて必要な取組であると認識しており、「サステナビリティ宣言」において重要テーマの一つに「環境保全の推進」を掲げ、脱炭素社会や循環型社会に資する環境保全活動を推進しています。その一環として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、その開示フレームワークに沿って、「ガバナンス」「リスク管理」「指標と目標」を明示するとともに、「戦略」については、当社グループの事業のうち、特に気候変動の影響が大きいと想定される鉄道事業と不動産事業における「リスクと機会」を特定し、シナリオ分析を進めて財務的な影響の試算等を行い公表するなど、同提言に沿った対応を進めています。また、こうした気候変動に関するリスクと機会を評価・管理するため、グループ共通のKPIとしてCO2排出量の削減目標(2030年度目標:2013年度比△46%。2050年度目標:実質ゼロ)を設定するとともに、各事業における個別のKPIを定めるほか、温室効果ガス排出量についてスコープ3の算定・開示や、ICP(内部炭素価格)の設定により各事業における取組を推進するなど、気候変動に対する事業の強靭性の向上を図っています。
⑥ 国際情勢について
当社グループのうち、不動産事業、旅行事業、国際輸送事業等については、海外においても事業活動を行っており、各国の政治・経済情勢の大幅な変動や法規制、紛争又はテロ行為、感染症の流行など様々なリスク要因があります。これらのリスクについて、弁護士やコンサルタント等、専門家の助言を踏まえたリスク分析を行った上で対応に努めていますが、予期せぬ情勢変化が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等が影響を受ける可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりです。
① 経営成績の状況
当期のわが国経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、社会経済活動の正常化が進む中で、企業収益の改善や個人消費の持ち直しがみられたこと等により、期を通じて緩やかな回復が続きました。
そうした中、当社グループにおいては、2022年5月に「阪急阪神ホールディングスグループ 長期ビジョン-2040年に向けて-」を公表し、その実行計画としての中期経営計画に掲げる目標を達成すべく、収支構造の強靱化に向けて進めてきた取組等の成果を活かしながら、着実に利益を回復させるとともに、今後の成長を見据えた施策を推し進めました。
当期の業績については、旅行事業・国際輸送事業において前期に一時的な需要に対応したことによる反動があったものの、都市交通事業において旅客数に一定の回復がみられたことや、不動産事業においてホテルの宿泊需要の回復に加え、分譲、賃貸及び海外不動産等の各事業も伸長したこと、またエンタテインメント事業において阪神タイガースがリーグ優勝及び日本シリーズ制覇を果たすなど、スポーツ事業が好調に推移したこと等により、営業収益、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも増加しました。
当期の当社グループの成績は次のとおりです。
|
|
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
対前連結会計年度比較 |
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増減額 |
増減率(%) |
||
|
営業収益 |
9,976億11百万円 |
293億10百万円 |
3.0 |
|
営業利益 |
1,056億89百万円 |
163億38百万円 |
18.3 |
|
経常利益 |
1,094億13百万円 |
209億80百万円 |
23.7 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
678億1百万円 |
208億48百万円 |
44.4 |
セグメント別の業績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、「不動産」セグメントにおいて、「海外不動産事業」を独立した業態(サブセグメント)として表示しており、増減率については、前期の実績値を組み替えて算出しています。
(都市交通事業)
鉄道事業については、阪急電鉄及び阪神電気鉄道において、鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し、阪神尼崎駅のほか、各駅への可動式ホーム柵等の整備を推し進めています。また、阪神大阪梅田駅では、新3番線・新4番線の供用を開始するなど、駅構内の改良工事が完了しました。さらに、阪急伊丹線において、センサ付き固定柵の設置等によりホーム上の安全性を確保のうえ、ワンマン運転を開始しました。こうした施策を通じて、引き続き安全・安心で持続可能な鉄道サービスの実現に取り組んでいきます。
このほか、2024年3月に北大阪急行電鉄南北線延伸線が開業しました。これにより、北摂地域における移動の利便性を大幅に向上させるとともに、公共交通への移動手段のシフトによる道路混雑の緩和や環境負荷の低減を図りました。
自動車事業については、阪急バス・阪神バスにおいて、安全対策や利便性向上施策等に取り組むため、2023年9月に路線バスの運賃改定を実施しました。
営業収益は前期に比べ176億79百万円(9.5%)増加し、2,032億60百万円となり、営業利益は前期に比べ118億22百万円(52.7%)増加し、342億57百万円となりました。
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事業の内容 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度 増減率(%) |
|
|
鉄道事業 |
1,479億71百万円 |
10.0 |
|
自動車事業 |
436億53百万円 |
8.7 |
|
流通事業 |
127億78百万円 |
6.8 |
|
都市交通その他事業 |
100億28百万円 |
12.5 |
|
調整額 |
△111億71百万円 |
- |
|
合計 |
2,032億60百万円 |
9.5 |
・ 阪急電鉄㈱運輸成績表
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区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
対前連結会計年度 増減率(%) |
|||
|
営業日数 |
(日) |
366 |
0.3 |
||
|
営業キロ |
(キロ) |
143.6 |
- |
||
|
客車走行キロ |
(千キロ) |
162,391 |
△1.8 |
||
|
|
定期 |
(千人) |
313,294 |
4.6 |
|
|
旅客人員 |
定期外 |
(千人) |
284,626 |
4.6 |
|
|
|
合計 |
(千人) |
597,920 |
4.6 |
|
|
|
|
定期 |
(百万円) |
32,244 |
7.8 |
|
運輸収入 |
旅客運賃 |
定期外 |
(百万円) |
60,674 |
10.5 |
|
|
|
合計 |
(百万円) |
92,919 |
9.6 |
|
運輸雑収 |
(百万円) |
5,167 |
5.9 |
||
|
運輸収入合計 |
(百万円) |
98,087 |
9.4 |
||
|
乗車効率 |
(%) |
40.5 |
- |
||
・ 阪神電気鉄道㈱運輸成績表
|
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
対前連結会計年度 増減率(%) |
|||
|
営業日数 |
(日) |
366 |
0.3 |
||
|
営業キロ |
(キロ) |
48.9 |
- |
||
|
客車走行キロ |
(千キロ) |
44,879 |
△1.0 |
||
|
|
定期 |
(千人) |
120,734 |
5.0 |
|
|
旅客人員 |
定期外 |
(千人) |
114,356 |
10.3 |
|
|
|
合計 |
(千人) |
235,090 |
7.5 |
|
|
|
|
定期 |
(百万円) |
12,010 |
8.2 |
|
運輸収入 |
旅客運賃 |
定期外 |
(百万円) |
22,242 |
14.9 |
|
|
|
合計 |
(百万円) |
34,253 |
12.4 |
|
運輸雑収 |
(百万円) |
2,684 |
6.2 |
||
|
運輸収入合計 |
(百万円) |
36,937 |
12.0 |
||
|
乗車効率 |
(%) |
40.3 |
- |
||
(注)1 上表は、第1種鉄道事業及び第2種鉄道事業の合計です。
2 客車走行キロは、社用、試運転、営業回送を含みません。なお、営業回送を含めた客車走行キロは、阪急電鉄㈱が166,445千キロ、阪神電気鉄道㈱が46,632千キロです。
3 乗車効率の算出方法
乗車効率 = 延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)/(客車走行キロ×平均定員)× 100
(不動産事業)
不動産賃貸事業については、商業・オフィス・賃貸マンションが一体となった複合施設「阪急西宮ガーデンズ プラス館」(兵庫県西宮市)が開業し、阪急西宮北口駅南東エリアの一連の大規模開発が完了しました。このほか、「HEP FIVE」(大阪市北区)の飲食フロア「TAMLO」、「sononそのだ(旧園田阪急プラザ)」(兵庫県尼崎市)、「マルシェ池田(旧阪急池田ブランマルシェ)」(大阪府池田市)をリニューアルするなど、既存の商業施設やオフィスビルにおいても競争力の強化と稼働率の維持向上等に努めました。また、物流施設については、「ロジスタ大阪松原」(大阪府松原市)、「ロジスタ豊中」(大阪府豊中市)が竣工しました。
なお、大規模開発プロジェクトのうめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」については、2024年9月の先行街びらきに向けて、工事が計画どおり進捗しています。
不動産分譲事業については、マンション分譲では、「ジオ彩都いろどりの丘」(大阪府箕面市)、「ジオ阪神芦屋」(神戸市東灘区)、「ジオ石神井公園」(東京都練馬区)等を販売しました。また、宅地戸建分譲では、「ジオガーデン千里藤白台」(大阪府吹田市)、「ジオガーデン目黒学芸大学」(東京都目黒区)等を販売しました。
海外不動産事業については、アセアン諸国において住宅分譲事業を推し進めたほか、インドネシアで2022年に取得した大規模商業施設「セントラルパークモール」に隣接する商業施設「ネオソーホーモール」を取得するなど、海外における不動産賃貸事業の規模拡大を進めました。このほか、オーストラリアにおいてオフィス・商業からなる複合施設を取得するなど、事業エリアの拡大にも努めました。
ホテル事業については、インバウンドを中心に高まる宿泊需要や、回復基調にある飲食・宴会需要を着実に取り込むとともに、会員向けアプリの利便性向上や様々なプランの企画・販売等を通じて、競争力の強化に努めました。
営業収益は前期に比べ362億5百万円(12.8%)増加し、3,182億54百万円となり、営業利益は前期に比べ219億75百万円(78.9%)増加し、498億26百万円となりました。
|
事業の内容 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度 増減率(%) |
|
|
賃貸事業 |
1,270億62百万円 |
0.7 |
|
分譲事業等 |
1,538億42百万円 |
11.9 |
|
海外不動産事業 |
85億52百万円 |
163.2 |
|
ホテル事業 |
626億63百万円 |
41.9 |
|
調整額 |
△338億66百万円 |
- |
|
合計 |
3,182億54百万円 |
12.8 |
(エンタテインメント事業)
スポーツ事業については、阪神タイガースが、ファンの方々のご声援を受けて18年ぶりのリーグ優勝及び38年ぶりの日本シリーズ制覇を果たしました。また、阪神甲子園球場では、物販・飲食において多彩な企画を実施するなど魅力ある施設運営に取り組んだほか、2024年に開場100周年を迎えるにあたり、「阪神甲子園球場開場100周年カウントダウンイベント」等を開催しています。
ステージ事業については、歌劇事業において、月組公演「フリューゲル -君がくれた翼-」・「万華鏡百景色」、星組公演「RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~」・「VIOLETOPIA」等の各公演が好評を博しました。
このほか、六甲山地区においては、「六甲ミーツ・アート芸術散歩」の内容を拡充し、関西を代表する芸術祭への発展を目指したほか、六甲山スノーパークでは開業60周年企画を実施し、インバウンドを含む多くのお客様にご来場いただきました。
営業収益は前期に比べ103億23百万円(14.3%)増加し、826億12百万円となり、営業利益は前期に比べ14億96百万円(11.9%)増加し、141億19百万円となりました。
|
事業の内容 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
|
|
営業収益 |
対前連結会計年度 増減率(%) |
|
|
スポーツ事業 |
503億27百万円 |
31.2 |
|
ステージ事業 |
322億20百万円 |
△4.8 |
|
調整額 |
64百万円 |
- |
|
合計 |
826億12百万円 |
14.3 |
(情報・通信事業)
情報サービス事業については、eコマース等のインターネット関連ビジネスが好調に推移したほか、鉄道会社に対し、鉄道車両内のセキュリティ向上と犯罪の抑制を目的とした車内防犯カメラシステムの提供を開始しました。
放送・通信事業については、FTTHサービス(光ファイバーを用いた高速インターネットサービス)の提供を推進するなど、お客様のニーズに応える様々なサービスを展開することにより、事業の着実な伸長に努めました。
あんしん・教育事業については、安全・安心に対するニーズの高まり等を背景に、「登下校ミマモルメ」を導入する学校・施設数が着実に伸長したことに加え、ロボットプログラミング教室「プログラボ」の生徒数が堅調に推移しました。
営業収益は前期に比べ42億24百万円(7.0%)増加し、645億79百万円となり、営業利益は前期に比べ2億18百万円(3.7%)増加し、61億35百万円となりました。
(旅行事業)
旅行事業については、新型コロナウイルスの感染症法上の5類への移行と水際対策の終了により、海外旅行部門において、復調途上ではあるもののツアーの取扱いが増加したほか、国内旅行部門においては、全国旅行支援を活用したツアーが好評を博すなど好調に推移しました。
営業収益は前期に比べ255億15百万円(13.3%)増加し、2,169億15百万円となりましたが、自治体からの支援業務などの受注が減少したこと等により営業利益は前期に比べ102億89百万円(△67.4%)減少し、49億68百万円となりました。
(国際輸送事業)
国際輸送事業については、航空輸送・海上輸送ともに前期までの輸送スペース不足等による需給の逼迫状況が緩和したことや、お客様の在庫調整等による物流需要の減少により、厳しい事業環境が続きました。
そうした中でも、アラブ首長国連邦での現地法人の設立等、グローバルネットワークのさらなる拡充を図るとともに、日本国内やアジアを中心に物流倉庫を新設・拡張するなど、ロジスティクス事業の強化に注力しました。
営業収益は前期に比べ629億69百万円(△38.6%)減少し、1,003億円となり、営業利益は前期に比べ81億57百万円(△97.3%)減少し、2億23百万円となりました。
(その他)
建設業等その他の事業については、営業収益は前期に比べ44億75百万円(8.0%)増加し、601億25百万円となり、営業利益は前期に比べ6億58百万円(23.9%)増加し、34億10百万円となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計については、販売土地及び建物や投資有価証券、有形固定資産が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,875億20百万円増加し、3兆529億30百万円となりました。
負債合計については、有利子負債や前受金(流動負債の「その他」)が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ985億89百万円増加し、1兆9,830億59百万円となりました。
純資産合計については、利益剰余金や非支配株主持分が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ889億31百万円増加し、1兆698億71百万円となり、自己資本比率は32.0%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物については、前連結会計年度末に比べ124億32百万円増加し、538億8百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純利益842億46百万円、減価償却費625億82百万円、減損損失242億77百万円、売上債権の減少額183億1百万円、棚卸資産の増加額613億25百万円、法人税等の支払額198億24百万円等により、1,235億13百万円の収入(前期は1,320億91百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローについては、固定資産の取得による支出1,382億70百万円、投資有価証券の取得による支出331億44百万円、工事負担金等受入による収入398億13百万円等により、1,413億20百万円の支出(前期は1,132億16百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローについては、借入金の純増による収入551億89百万円、コマーシャル・ペーパーの純減による支出100億円、社債の発行による収入348億11百万円、社債の償還による支出300億円、配当金の支払額121億13百万円等により、284億61百万円の収入(前期は89億81百万円の支出)となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、都市交通事業、不動産事業、エンタテインメント事業、情報・通信事業、旅行事業及び国際輸送事業など多種多様な事業を営んでいるため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため、生産、受注及び販売の実績については、「① 経営成績の状況」におけるセグメント別の業績に関連付けて示しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等」「(1) 連結財務諸表」「注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりですが、特に以下の項目が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。
a 固定資産の減損
当社グループは、事業の特性上、多くの固定資産を保有しています。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初想定した収益等が見込めなくなった場合や将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合は、固定資産の減損を実施する可能性があります。
b 販売用不動産の評価
当社グループは、販売用不動産を多数保有しています。市場環境の変化や開発・販売計画の変更等により、正味売却価額が大きく下落した場合は、販売用不動産の評価減を実施する可能性があります。
c 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得や実現可能性の高いタックス・プランニングに基づき、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。業績の変動等により、将来の課税所得やタックス・プランニングに変更が生じた場合は、繰延税金資産が増加または減少する可能性があります。
② 資本の財源及び資金の流動性
a 有利子負債
当連結会計年度末現在の有利子負債の概要は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
有利子負債 |
年度別要支払額 |
||||
|
1年以内 |
1年超 3年以内 |
3年超 5年以内 |
5年超 |
合計 |
|
|
(1) 短期借入金(※1) |
101,789 |
- |
- |
- |
101,789 |
|
(2) 長期借入金(※1) |
88,065 |
150,604 |
166,242 |
388,926 |
793,838 |
|
(3) 社債 |
15,000 |
40,000 |
40,000 |
170,000 |
265,000 |
|
(4) リース債務(※2) |
4,130 |
4,725 |
2,859 |
1,817 |
13,532 |
|
合計 |
208,984 |
195,329 |
209,101 |
560,744 |
1,174,160 |
(※1)1年内返済予定の長期借入金は、「(2) 長期借入金」に含めています。
(※2)「(4) リース債務」は、流動負債と固定負債のリース債務の合計です。
また、当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、当連結会計年度末における債務保証額は461億44百万円です。
b 財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金等については、内部資金または借入金及び社債により資金を調達することとしています。このうち、長期借入金及び社債にて調達した資金については、その大半を回収期間が長期にわたる鉄道事業や不動産賃貸事業を中心とした固定資産の取得等に充当しています。重要な設備投資の計画については、「第3 設備の状況」の「3 設備の新設、除却等の計画」「(1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。また、これらの資金は、固定金利に比重を置いた調達を実施しています。
これらの資金調達に加えて、キャッシュマネジメントシステムによるグループ資金一元化により、グループ会社からの余剰資金を集約して有効活用するとともに、大規模自然災害や感染症の流行等の予期せぬ事象に備え、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結することにより、機動的に資金を確保する体制を構築しています。
c 株主還元
株主還元については、「第4 提出会社の状況」の「3 配当政策」に記載のとおりです。
③ 経営成績、財政状態、キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績、財政状態、キャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」の「① 経営成績の状況」、「② 財政状態の状況」、「③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
経営指標の見通し及び進捗状況については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「3.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
特記事項はありません。