文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営方針
当社グループは「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」という企業理念のもと、“想像”と“創造”を繰り返し、高付加価値なサービスを提供していくクリエイター集団であり続け、世界中の全ての尊い個性がファッションで繫がる未来を目指すことを基本姿勢に事業活動を行っております。また、ESG(Environment/環境・Society/社会・Governance/ガバナンス)に関する課題に積極的に対応していくことが、ステークホルダーをはじめ、一般社会との持続的な共存・共栄につながると考えており、「ファッションでつなぐサステナブルな未来へ」をサステナビリティステートメントとし、主に4つの重点的な取り組みを設定いたしました。これにより、ファッションとテクノロジーズが持つ力で、すべての人が可能性を発揮できるよう支援すると共に、社会・環境問題の解決を目指してまいります。これからも当社グループは、世界中の全ての尊い個性がファッションで繫がる未来を目指してまいります。
また、この企業理念の達成のため、「MORE FASHION」×「FASHION TECH」、「ワクワクできる『似合う』を届ける」という経営戦略を設定しており、当社グループの強みであるファッションを更に極め、テクノロジーで時代を進めることを実践することが、中長期的な企業価値の向上につながるものと考えております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループが重視している経営指標は、EC事業から生み出される商品取扱高であります。なお、EC事業で計上する売上高のうち、受託商品の販売に係る収益は、商品取扱高に各手数料率を乗じた受託販売手数料のみを会計上の売上高として計上しております。そのため、当連結会計年度においては会計上の売上高が197,016百万円であるのに対し、商品取扱高は574,373百万円となっております。販売費及び一般管理費につきましては、商品取扱高に連動する変動費が多くを占めており、事業全体の規模を示す商品取扱高が売上高、利益それぞれに密接な関連を持っております。
また、当社グループでは資本コストを上回る利益を生み出すことが企業価値の増大につながると考えていることから、経営指標として自己資本当期純利益(ROE)も定めており、資本効率の高い経営に努めてまいります。具体的な目標値としては、世界的にみた場合に当社と類似する企業のROEの水準等を勘案し、ROE30%を目安としております。
当連結会計年度のROEは55.0%(前年同期実績60.1%)と引き続き高い水準を維持しており、目標値を大きく上回っております。株主への利益還元に関しては、財務基盤及び今後の投資計画等を鑑み、適切に対応してまいります。なお、当連結会計年度の配当額から算出される連結配当性向は70.2%となります。自己株式の取得も含めた総還元性向は中長期の通算(概ね5年平均)で80%超を目指しており、今後につきましても、株主還元施策の強化に努め、一層効率的な資本の運用を目指してまいります。
[補足情報]目標とする経営指標及びその他経営指標の推移
(注)1 EBITDA=営業利益+株式報酬費用+減価償却費+のれん償却額
2 いずれも連結ベースの財務数値を基礎とした指標となっております。
3 商品取扱高前年同期増減率及び商品取扱高に対する割合は、商品取扱高(その他商品取扱高除く)を用いて算定しております。
(3) 優先的に対処すべき課題
当社グループの当面の課題は、①親会社であるLINEヤフー㈱との連携深化によるシナジー創出、②ZOZOTOWNのリブランディング、③利益構造の多様化、④フルフィルメント及びECシステム機能強化、⑤システムエンジニアのリソース強化が必要であると考えております。
① 親会社であるLINEヤフー㈱との連携深化によるシナジー創出
当社グループはLINEヤフー㈱のグループ会社となって以降、同社グループ会社との連携を強めてまいりました。引き続きグループ会社間で更なるシナジー効果を最大化できるよう、最大限の取り組みを推進してまいります。
ⅰ.ZOZOTOWN Yahoo!ショッピング店の商品取扱高拡大
LINEヤフー㈱が運営するYahoo!ショッピングへZOZOTOWNを出店しております。新たな顧客層の獲得によりZOZOTOWN Yahoo!ショッピング店の売上は徐々に成長しておりますが、まだ拡大余地が十分にあると認識しております。今後は、ZOZOTOWN Yahoo!ショッピング店にもZOZOTOWN本店に実装される機能の拡充を進め、幅広いユーザー層に対応するECサイトとして商品取扱高の拡大を目指してまいります。
ⅱ.開発リソースの共有
LINEヤフー㈱所属のエンジニアと当社所属のエンジニアの技術力の共有により、開発スピード及び開発クオリティの向上を目指してまいります。
② ZOZOTOWNのリブランディング
当社コアビジネスであるZOZOTOWNにおいては、「MORE FASHION」×「FASHION TECH」をテーマに掲げ、これまで以上にファッションを追求し、ただ売るだけではなく、新しい売り方や顧客体験を創るテクノロジーを使って、よりユーザーにもブランドにも当社ならではの付加価値を与えられるサービスとなるべくリブランディングを図ってまいります。
③ 利益構造の多様化
当社グループは、2021年4月に今後の戦略として、利益構造の多様化を目的とした戦略の3本柱(①「買う」以外のトラフィックも増やす ②「生産支援」に踏み込む ③「技術ライセンス販売」 にトライ)を公表しました。
当社が独自に保有する顧客基盤、情報、ノウハウ、技術等の資産を最大限に活用することで収益機会の拡大を目指してまいります。
④ フルフィルメント及びECシステム機能強化
今後見込まれる商品取扱量の増加を視野に入れ、更なる物流キャパシティの拡大、業務効率化の促進を検討してまいります。また、ECシステムのハード及び機能面に関しましては、ユーザー数の増加及びそれに伴うアクセス数の増加への対応、ユーザビリティ向上のため、適宜強化を図ってまいります。
⑤ システムエンジニアのリソース強化
今後のビジネスの拡張を図る上でシステムエンジニアのリソース強化が重要となります。今後の事業展開を鑑み、開発スピードの向上や新たなテクノロジーを取り入れるべく、エンジニアを増員してまいります。さらに、①-ⅱに記載のとおり、親会社であるLINEヤフー㈱とのエンジニア等のリソース共有も積極的に行っていく予定です。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社は2020年に、「SDGs推進委員会」を設置し、環境・社会に対して、ファッションを扱うプラットフォーマー企業として何ができるのか議論を重ね「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」というサステナビリティステートメントを策定しました。このステートメントには、ファッションとテクノロジーを通じて、人と人をつなぎ、社会課題を革新的なやり方で解決していくという想いが込められています。
また、サステナビリティステートメント達成に向けてマテリアリティ19項目と、これまで大切にしてきたこととこれからの事業を通じて中長期で取り組むべきことをかけ合わせた4つの重点取り組みを掲げ、積極的に取り組み中長期的な企業価値の向上につなげることで、環境や社会に配慮した新しいファッションの世界の実現を目指しています。
①サステナビリティ経営の全体像
当社グループでは、取締役会において気候変動や生物多様性、人権、ガバナンスなどの課題を扱うことにより、戦略の立案・実行が効果的に行われると考えており、ESGに関する重要事項を取締役会で審議・決議しております。また、執行側でのマネジメント機関として設けた「SDGs推進委員会」では代表取締役社長兼CEOが委員長を務め、当社のリスクや機会、取り組み方針、目標についての議論や、ESGの取り組み実績の進捗確認を行い、「SDGs推進委員会」で審議された重要事項を取締役会にて承認します。また、2023年6月より当社は会社法関連法令に基づく監査等委員会設置会社へ移行しており、取締役会の運営状況の監視及び取締役の職務の執行を含む日常的活動の監査をおこなっております。
②取締役の報酬制度
取締役の報酬制度については、取締役会の諮問機関であり社外取締役を中心とした指名・報酬諮問委員会にて制度の見直しを検討してまいりました。その審議結果及びその答申を踏まえ、当社取締役のうち業務執行取締役について、当社の持続的かつ中長期の企業価値向上を促し、健全なインセンティブとして機能させることを目的とし、当社の経営戦略に基づく短期・中長期の業績の達成及び企業価値の向上に向けた取り組みとその成果に対して報酬を支払う報酬制度を導入いたしました。
具体的には、固定報酬及び業績連動報酬で構成されており、固定報酬は現金のみ、業績連動報酬は現金賞与及び株式報酬の2種類の報酬から構成されております。各報酬の割合については、業績連動報酬の割合が固定報酬の割合を上回り、業績連動報酬のうち株式報酬の割合が現金賞与の割合を上回っております。
また、株式報酬は、2023年度から「ESG評価指標」を導入し、事業の成長度を測る「株価成長率」「営業利益」「在籍要件」とESG経営の推進度を測る「ESG評価指標」で決定します。
役員報酬制度の概要
ESGに関するリスク・機会は、サステナビリティを専任で担当しているコミュニケーションデザイン室(サステナビリティ推進ブロック)が把握し、事業に影響を与えるリスク・機会を洗い出し、その後、代表取締役社長兼CEOが委員長を務める「SDGs推進委員会」で議論を行い、取締役会に報告しております。また、リスクマネジメント委員会では、当社グループ横断で重要リスクを特定しリスク管理を実施しております。
サステナビリティ・マネジメント
リスクマネジメント委員会
① マテリアリティ
当社グループは、サステナビリティステートメント「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」を実現するために、ステークホルダーと当社の双方にとって重要性の高いマテリアリティを特定しました。
※「マテリアリティ」は、SDGs推進委員会にて審議し、2022年3月14日の取締役会にて決議しております。
ⅰ.特定プロセス
Step1:課題の抽出
主要なESG評価機関(投資家)の評価、社会からの要請や株主、顧客、取引先、従業員、自治体、NGO等、各ステークホルダーの声を参考に、当社グループの特性や成長への寄与の観点から課題を抽出
※アナリストレポート、ユーザーインタビュー、取引先アンケート、従業員アンケート、NGOインタビューなどを参照
Step2:マテリアリティの分析・評価
「当社グループとして大切にしたいこと」と「財務的影響」を考慮して「ZOZOグループにとっての重要性」、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの軸で、マテリアリティを仮評価。仮評価を踏まえ、マテリアリティを解決する「4つの重点取り組み」を仮策定
Step3:妥当性の確認
仮評価したマテリアリティと「4つの重点取り組み」の妥当性、成長戦略との整合性を確認し、「SDGs推進委員会」にて審議
Step4:承認
取締役会の決議を経て、ZOZOグループのマテリアリティを特定・公表
※社会環境や経営環境の変化に合わせて随時見直しをおこないます
② 4つの重点取り組み・マテリアリティへの取り組み
当社は、サステナビリティステートメント「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」の実現、マテリアリティ19項目の解決に向け、4つの重点取り組みを策定し、解決に向けた取り組みを進めております。
ⅰ.重点取り組み①サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供
当社がブランドとともに考える基準や生産背景まで含めた詳細情報を自社運営サービスに掲載することで、お客様に人権や環境に配慮されたサステナブルな商品やサービスを選択できる機会を提供する。
ⅱ.重点取り組み②廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築
当社が計測技術や各種データを活かした受注生産プラットフォームを構築することで、アパレルにおける大量生産・大量廃棄を減らすための仕組みを実現する。
ⅲ.重点取り組み③ファッションに関わるすべての人のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン推進
当社が積極的な情報発信や取り組みを行い、当社の従業員、ファッション業界のプレイヤーや次世代層、マイノリティの人々、ファッションの生産者、汚染の影響を受けている人たち、ZOZOのお客様など、ファッションに関わるすべての人が可能性を発揮できる社会づくりに貢献する。
(注)1 ZOZOグループカバレッジ:94.3%
2 男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合
ⅳ.重点取り組み④持続可能な地域づくりへの貢献
当社がファッションとテクノロジーを活用し、各地域の環境面・社会面の課題解決にステークホルダーとともに取り組み、地域の活性化、持続可能な地域の実現に貢献する。
③ 4つの重点取り組み達成に向けた概念図・ロードマップ
ステークホルダーの皆さんと共に環境や社会をよくしていきたいと考えるZOZOが目指す、サステナビリティの世界をよりわかりやすく伝えるためのものです。
概念図
ロードマップ
④ 環境に関する戦略及び具体的な取り組み
当社は、将来の気候変動のシナリオは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に基づいた「FASHION INDUSTRY CHARTER FOR CLIMATE ACTION」と「A Roadmap to Net-zero Emissions for the Apparel Sector」を使用してシナリオ分析を行い、気候変動に関連するリスク・機会の抽出を行いました。
TCFDの戦略の図
リスクと機会において、環境配慮型のサービスや製品への移行、環境配慮型オペレーションの構築が重要であると考え、マテリアリティおよび重点取り組み「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」「廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築」「持続可能な地域づくりへの貢献」への対応をより一層進めていきます。
なお、気候変動などに関する具体的な取り組みは、以下のとおりです。
ⅰ 当社拠点へ再生可能エネルギーを導入
当社は、「2030カーボンニュートラル宣言」のもと、2030年までに拠点の電力を100%再生可能エネルギー化することを目指しており、2024年3月現在、当社拠点の電力消費量のうち9割以上が再生可能エネルギーとなっています。また、当社のサーバー等を保管しているデータセンターは、100%再生可能エネルギー電力を使用しています。今後、その他拠点においても、再生可能エネルギーの導入を進め、カーボンニュートラルの達成を目指します。
ⅱ 省エネ化を促進するため空調最適制御システム「EMS-AI」を導入
物流拠点「ZOZOBASE習志野1」では年間約540万kWhの電力を使用しており、そのうち空調使用による電力使用量は約50%を占めています。「EMS-AI」の導入によって、空調の温度制御が自動で最適化され、2020年2月から2021年2月の期間におこなった実証実験の結果、空調使用電力量は2018年度と比較し、約20%削減されました。2018年度の年間電力使用量に換算するとCO2削減量は約378トンに相当します。
今後もCO2削減および省エネ化を目指し、各拠点において環境に配慮した取り組みを進めてまいります。
ⅲ 計測テクノロジーにおける取り組み
当社は、ECでの購入時のサイズへの不安を解決すべく3D計測用ボディースーツ「ZOZOSUIT」をはじめ、足の3D計測用マット「ZOZOMAT」、フェイスカラー計測ツール「ZOZOGLASS」などの計測ツールを提供しています。これにより購入後のサイズ不一致による返品を抑制、返品配送において発生するCO2を削減し環境負荷の低減へ繋げています。ZOZOMAT利用者は非利用者に比べ返品率が36.9%低いという結果も確認しております。また、身体の3Dモデル生成が可能な「ZOZOSUIT」を使い、ワークアウトの進捗をサポートするボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」を米国で提供を開始しています。また、国内においてはファッションだけでなく健康医療分野などにも計測テクノロジーを活用しています。
ⅳ 生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」による受注販売
当社はファッション業界の課題である大量生産・大量破棄を解決する取り組みとして、生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」を開発し、取引先ブランドへ提供しております。「Made by ZOZO」はお客様からの注文後に商品の生産(受注生産)を行う為、需要に応じた適正量の生産が可能、これにより商品の作りすぎによる生産材料への負荷や売れ残りによる廃棄が発生しません。また、「Made by ZOZO」は1点から生産、また注文から最短10日で配送可能のため、通常の受注生産と比べお客様へもストレスなく商品をお届けすることが出来ます。また、「Made by ZOZO」の生産を行う中国の提携工場(生産工場は1拠点のみのためカバー率は100%)ではISO14001認証、ISO9001認証、ISO45001認証を取得しております。
ⅴ ZOZOUSEDにおける取り組み
ブランド古着のファッションゾーン「ZOZOUSED」では、お客様が使わなくなったファッションアイテムの買取・販売を行い廃棄物削減に取り組んでいます。また、アイテムを回収する際に使用する資材は、クリーニングすることで繰り返し利用できるリユースバッグを導入しています。
「ZOZOUSED」で、お客様から回収したアイテムを二次流通させることにより、新たに生産されるアイテムの製造過程から廃棄焼却までに発生するCO2排出を防ぐことができたと想定した場合、サービス開始時から累計でCO2排出量は約14万トン(※1)の削減、また、2022年度のCO2排出抑制量をスギの木の吸収量に換算すると約130万本に相当します。(※2)
また、これまでに「ZOZOUSED」の利用者数(リユース経験者数)は、サービス開始から累計(※3)で約1,700万人にのぼります。当社は今後も、リユース経験者を増やしていくことで、循環型ファッションを確立し、循環の環を拡げていきたいと考えています。
(※1)2012年11月〜2022年3月。新たに生産されるアイテムの製造過程から廃棄焼却までの間に発生するCO2排出を回避したと仮定。回収したアイテム品数を重量に変換(出典:環境省「サステナブルファッション―これからのファッションを持続可能」)し、アイテム1kgあたりのCO2排出量を乗算し算出(出典:環境省「3R原単位の算出方法」)
(※2)スギの木1本あたり約14kgのCO2排出量を吸収すると仮定(出典:関東森林管理局森林の二酸化炭素吸収力
(※3)2012年11月〜2022年3月。リユース経験者の定義は、「ZOZOUSED」サービス商品の購入者・買い替え割サービスの利用者・通常買取サービスの利用者の合計
ⅵ 輸送・配送
a. 幹線輸送における積載効率の向上
物流拠点「ZOZOBASE」では、遠方(北海道・九州地方など)へ商品配送を行う際、当社拠点で梱包を行わず、幹線輸送後に各地域エリアにあるヤマト運輸のリレーションセンターで個別梱包・配送をしています。これにより幹線輸送における積載効率の向上を図り、輸送に伴うCO2の削減へ取り組んでいます。
b.「置き配」サービスの推奨
当社はヤマト運輸が提供する、玄関前などの受け取り方法が選択可能なサービス「EAZY」を国内で初導入し、注文完了画面などで推奨しております。このようなサービスを通じて再配達を防ぐことにより、配送時のCO2の削減へ取り組んでいます。
c.「注文のおまとめ」機能の導入
当社では複数回に分けて商品を注文した際に、1つの注文としてまとめて配送する「注文のおまとめ」機能を導入しています。発送前の注文が複数ある場合、おまとめ可能な注文は自動的にまとめられ、ご指定のお届け先へ配送されます。これにより商品のお届けの際に使用する梱包資材や配送回数は減少し、配送に伴うCO2の削減へ取り組んでいます。
d.「ゆっくり配送」
お客様が通常配送(※)よりも余裕のあるお届け時期を選択した場合に、お買い物に使用できるZOZOポイントを受け取れる「ゆっくり配送」を試験導入し、「注文のおまとめ」機能促進による配送件数の削減や、繁閑に応じた発送作業の分散による配送の効率化など、さらなる効果を見込んでいます。また、今後は発送までのリードタイムを活用したモーダルシフトの実施なども検討しています。
(※)配送日の指定がない通常発送は、注文翌日から4日以内に発送。
ⅶ 梱包資材
物流拠点「ZOZOBASE」では、お客様へ商品を配送する際に使用する梱包資材にFSC認証段ボールやバイオマス素材の袋資材を採用しているほか、商品を保護するための緩衝材には再生紙を、物流拠点で使用する荷役台は100%リサイクル素材のパレットを導入し、環境配慮に努めています。また、梱包資材は複数のサイズを用意し、商品のサイズに対して適正サイズの資材を梱包担当者に知らせるシステムを導入するなど、配送用資材の廃棄量の削減に取り組んでおります。
ⅷ ペーパーレス化の促進
ZOZOTOWNで注文頂いた際にお客様へお渡しする納品書兼領収書を全て電子化しています。2023年度の出荷件数で換算した場合、年間約5,900万枚の納品書兼領収書(紙)を削減したこととなり、納品書兼領収書(紙)の生産と焼却に伴う二酸化炭素排出量としては、約341トンの廃棄削減効果が見込まれます。また社内においても電子契約サービス「クラウドサイン」を導入し契約書などWeb完結型として紙の廃棄削減に取り組んでいます。
ⅸ 水資源保全の取り組み
当社グループでは、事業活動において大量に水を使用することはありませんが、水資源の管理を環境保全上の重要課題と捉え、リスク分析、取水・排水量管理を行っています。最も水を利用している用途は、データセンターでの冷却・加湿用の水と、事業所での生活用水に大別されます。うち、事業所については、職場生活に必要な量のみを消費しています。これら、事業にかかる水資源に関しては、世界資源研究所(WRI)のWater Risk Atlasを活用し定期的に水源地の水ストレスをチェックしております。また、自社の水消費量の大半を占めるデータセンターの水源地に関しては、リスクはLow-Mediumであり、水ストレスと全体の水リスクが高くないことを把握しております。今後も継続して水ストレスの変化をチェックする体制を敷いており、水ストレスが高いと判断された場合には、適切な対策を講じて参ります。
ⅹ 生物多様性
当社グループでは、2023年1月、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指す「ネットゼロ」を発表しました。CO2排出量の削減は気候変動を緩和させるだけでなく、生態系の保全にもつながり、生物多様性の損失を抑えます。また、当社では「生物多様性」をマテリアリティの一つとして捉え、FSC認証取得済の段ボールや環境に配慮した梱包資材の採用、納品書兼領収書の電子化による紙の使用量の削減、商品を配送用段ボールに入れる際に使用する緩衝材をプラスチック素材から再生紙100%の素材に変更するなど企業活動において、森林破壊の抑制や、生物多様性/生態系の維持、強化、保全に努めています。今後も、関連する条約や法令を遵守し自然と共生する社会の実現を目指します。
ⅺ 第三者検証の受審
グループ企業であるソフトバンク株式会社とともに、「ISO14064-3」「ISAE3000」に準拠した第三者検証を受審しています。検証の保証水準は「限定的保証水準」において実施し、2022年度のスコープ1、2、3、温室効果ガス排出量、エネルギー使用量、水使用量について検証が行われた結果「算定ルール」に準拠せず、正確に算定されていない事項は発見されませんでした。今後、検証対象の範囲を拡大していきます。
ⅻ 環境デューデリジェンス
ZOZOTOWN出店アパレルブランド企業(アパレルの売上がメインの企業)、ZOZOTOWN出店アパレル以外のブランド企業(シューズ、コスメ、革小物などの売上がメインの企業)、ブランド以外の企業の環境リスクを特定するため、気候変動、水、資源などについてアンケートを実施しています。
⑤ 人的資本・人権に関する戦略及び具体的な取り組み
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のように策定しております。
当社は「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」を企業理念とし、世界中のすべての尊い個性がファッションでつながる未来を目指しております。ダイバーシティ経営を推進し、誰もが自分らしく自然に「自事(しごと)※」ができる仕組みづくりに取り組んでいます。事業の特性上、ファッションが好きな社員が多いことから、社員それぞれが個性豊かなファッションを楽しみ、ファッションを通じて互いの個性を理解し尊重し、多様性を大切にする独自の企業文化が醸成されております。また、役職や年次にとらわれることなく、フラットな組織の中でコミュニケーションが活発に生まれております。これにより、管理職や中核人材への登用においても性別や国籍、キャリア採用者等の枠を超えた多様性の確保がなされており、この環境を人材育成に活かしながら事業と共に社員も成長してまいります。
※当社では「仕事」を「自事」と表記します。これには「仕事(仕えること)」ではなく「自事(自然なこと)」であるという意味が込められています。
ⅰ 多様性の重視
当社は、人権に関する基本方針(人権ポリシー)で、多様性の重視について以下の宣言を行い取り組んでおります。
「私たちは、すべての人を個人として尊重し、政治的信念、思想、宗教、性・性自認・性的指向、身体的特徴、疾病、年齢、国籍、人種、民族などに拘らず、差別や不利益な取扱いを許容せず、採用、評価、育成、配置、昇給・昇進、役職登用等の機会を均等とし、多様な人材がいきいきと活躍できる職場環境を推進します。」
ⅱ 女性の活躍推進に関する取り組み
当社は、女性社員のさらなる活躍のため、女性活躍指針法の定めに基づく一般事業主行動計画を策定し取り組んでおります。当社の社員構成比は女性42.7%、男性57.3%(2024年3月時点)、課長相当職以上の女性管理職比率は24.2%(2024年3月時点)となっており、全国平均の12.7%※に比べ、高い数値となっております。また、執行役員などのロールモデルとなる社員が中心となり、ミートアップを実施しています。引き続き多様性を大切にしながら、経営戦略を推進するために適切な人材登用を行うことを基本としつつ、女性社員のさらなる活躍のための施策を積極的に推進し、女性管理職比率を向上させることに努めてまいります。
※女性管理職比率の全国平均は、厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」を参考
ⅲ 障がい者に関する取り組み
当社では、法定を上回る2.8%(2023年6月時点)の雇用率で障がいのある従業員が在籍しており、管理部門、カスタマーサポート部門、開発部門など様々な部門に所属しています。一人ひとりの障がいに寄り添った配慮を行うことで、障がいの有無に限らず個性を発揮し自分らしく活躍できる会社を目指します。
ⅳ 外国人の中核人材への登用
当社は、アメリカ、ニュージーランド、ベトナム等にグループ会社を保有しており、各グループ会社の取締役に外国人を登用しております。引き続き多様性を大切にしながら、適切な人材登用を行ってまいります。なお、経営戦略の推進に海外ビジネスの経験者が必要な場合には、国籍にかかわらず、適切な人材の登用を行ってまいります。
ⅴ キャリア採用者の中核人材への登用
当社の2023年度の新規キャリア採用者数は、171名(男性100名、女性71名)です。業務執行取締役および執行役員のほとんどが中途採用者である等、多くのキャリア採用者を管理職、中核人材として登用しております。なお、新卒採用者かキャリア採用者かにかかわらず、引き続き多様性を大切にしながら、適切な人材登用を行ってまいります。
ⅵ 多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針
a.多様性の確保に向けた人材育成方針
人材育成に関する社内環境の整備については、一般社員、管理職、全社員を対象とした様々な研修を実施しており、事業推進に必要な基礎知識を学ぶための研修やダイバーシティ推進研修など、社員の学ぶ環境を整えております。また、管理職については、選任評価基準に沿ったフィードバックを定期的に実施し、管理職内での縦横の連携を深めると共に、家庭環境やライフステージに応じた働き方のサポートを実施するなど、細部に応じたフォローアップを行っております。今後は中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略、人的資本制度をより充実させてまいります。
b.多様性の確保に向けた社内環境整備方針
当社はダイバーシティ経営を推進しており、性別(性的指向や性自認も含む)や国籍、価値観など互いの多様性を理解しあい、個々のライフスタイルに合わせた多様な働き方を応援するような仕組みづくりに取り組んでいます。社内規程における配偶者の定義には同性パートナーも含まれ、当社の社員はパートナーの性別にかかわらず、休暇、慶弔などの社内制度の適用を受けることが可能となっております。これまでもZOZOグループの社員を対象に、LGBTQIA+に対する正しい認識と理解を促進するためe-ラーニングを実施、6月のプライド月間にはLGBTQIA+を支援する団体へ寄付を行うとともに、日本国内の婚姻の平等(同性婚の法制化)を推進するキャンペーンへの賛同を表明しました。こうした職場におけるLGBTQIA+への取り組みが評価され、「PRIDE指標2023」において最高評価「ゴールド」認定を獲得しています。
外国籍・宗教に関する取り組みも実施しており、要望に応じて礼拝用のスペースを用意するなど、国籍や宗教により対応が必要な場合は都度検討し整備・改善を行っています。
また、当社の育休取得率は女性100%、男性(正規雇用労働者)67.4%(2024年3月時点)、産休・育休後の復職率は100%(2024年3月時点)と非常に高く、性別を問わず子育てしながら働く社員が働きやすい環境づくりに力を入れております。
ⅶ 人権方針の策定
「世界人権宣言」「国連ビジネスと人権に関する指導原則」「子どもの権利とビジネス原則」「ILO宣言の中核8条約上の基本原則」などの国際的な人権規範に従い、事業活動全てにおいて、事業を行う国や地域の文化・慣習を理解し、これを尊重して行動し、自らが差別や人権侵害に関与しないよう努めるとともに、サプライヤー・ビジネスパートナーなどに対しても、これらの原則にのっとって人権を尊重し、侵害しないように求めます。
ⅷ 人権デューデリジェンス
ZOZOTOWN出店アパレルブランド企業(アパレルの売上がメインの企業)、ZOZOTOWN出店アパレル以外のブランド企業(シューズ、コスメ、革小物などの売上がメインの企業)、ブランド以外の企業の人権リスクを特定するため人権、強制的な労働、人身取引、児童労働、ハラスメント、差別、賃金、労働安全衛生などについてアンケートを実施しています。
当社グループは、上記「④環境に関する戦略及び具体的な取り組み」に係る指標については、自社の事業活動での温室効果ガス排出量(スコープ1、2)を2030年までに実質ゼロにする「2030カーボンニュートラル宣言」に加え、間接的に排出される温室効果ガス排出量(スコープ3)も含めたサプライチェーン排出量を、2050年までに実質ゼロにする「ネットゼロ」を掲げ、実現に向け取り組んでいます。他にも、2023年3月にパリ協定が定める目標に科学的に整合する温室効果ガスの排出削減目標「Science Based Targets(サイエンス・ベースド・ターゲット)(以下SBT)」を認定する機関「SBTイニシアティブ」に対しコミットメントレターを提出し、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するための目標を設定しSBT認定を申請しています。
(単位:t-CO2)
スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
また、当社グループでは、上記「⑤人的資本・人権に関する戦略及び具体的な取り組み」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社グループ株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
①事業に関するリスクについて
ⅰ.業界の成長性について
現在、当社グループは「ZOZOTOWN」等のECサイトの運営を主力事業としております。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにオフラインの店舗を含むファッション小売市場全体の規模は縮小しましたが、EC市場に関しては成長が続き、オンライン化が進んでおり、今後も順調に成長すると考えられます。
しかしながら、ファッションEC市場を制限するような法規制、景気動向、個人の嗜好の変化等により、当該市場の成長が鈍化し、それに伴い当社グループの売上の大部分を占めるEC事業全体の規模が順調に拡大しない場合、又はこれらの要因によりユーザー離れが生じ、当社グループのビジネスモデルを長期的に維持できない場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ.システムトラブルについて
当社グループの主力事業はECサイトの運営であり、ECサイトにおけるシステムトラブルの発生可能性を低減させるために、ECサイトの安定的な運用のためのシステム強化、セキュリティ強化及び複数のデータセンターへサーバーを分散配置する等の対策を行っております。
しかしながら、地震、津波、火災などの自然災害、外部からの不正な手段によるサーバーヘの侵入などの犯罪、事故、停電など予期せぬ事象の発生によって、当社グループの設備又は通信ネットワークに障害が発生した場合は当社グループの事業活動が不可能になります。これらの障害が発生した場合には、当社グループに直接的損害が生じるほか、サーバーの作動不能や欠陥等に起因する取引停止等については、当社グループに対する訴訟や損害賠償など、当社グループの事業及び経営成績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
ⅲ.物流機能の強化について
当社グループの商品取扱量の増加に応じて、物流に関わる業務システムの効率化及び物流スタッフの確保が必要となります。当社グループでは、今後の商品取扱高の成長を見据えて物流拠点を拡大しており、千葉県内に2拠点、茨城県内に3拠点を有しております。また、将来的な労働人口の減少傾向などに向けた取り組みとして、現在は人の手で実施している出荷時の商品仕分け業務などに設備投資を積極的におこない、自動化を推進しております。
しかしながら、これらの対応が商品取扱量の増加に追いつかない場合には、意図的に商品在庫数や自社EC支援の社数及び「ZOZOTOWN」等に掲載する商品数を物流が対応可能な業務量に合わせてコントロールする必要がありますが、これらが事業機会や販売機会のロスに繋がり、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅳ.特定の業務委託に対する依存度の高さについて
当社グループは、商品購入者からの販売代金の回収業務について、クレジットカード決済分をSBペイメントサービス㈱に、コンビニ決済分をGMOペイメントゲートウェイ㈱に、また代金引換決済分をヤマトフィナンシャル㈱に、商品の配送業務について、ヤマト運輸㈱に委託しております。提出日現在において、これらの委託業者との間で何ら問題は生じておりませんが、今後各社の事業方針や戦略等の見直し、経営状況の変化や財務内容の悪化並びに取引条件の変更等があった場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅴ.取り扱いブランドについて
当社グループでは、「ZOZOTOWN」等において多くの顧客の嗜好に合う有力ブランドの商品を取り扱っております。当社グループとブランドとの関係は良好であり、何ら問題は生じておりませんが、今後ブランドの事業方針や戦略等の見直し、経営状況の変化や財務内容の悪化、又は、当社との取引関係の悪化等を起因とした商品供給量及び委託量の減少、契約の不履行若しくは取引の中止等があった場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅵ.競合について
当社グループは、ファッション関連商材を取り扱うEC事業者として、単なる商品の流通だけではなく、ECサイトの利便性及びデザイン性を高めること並びに消費者及び商品サプライヤー(ブランド)と密な関係を構築することで、他のアパレルEC事業者との差別化を図っております。
しかしながら、EC市場の拡大に伴い、他のファッション関連商材を取り扱うEC事業者の拡大、その他新規事業者の参入等により、新たな高付加価値サービスの提供等がなされた場合、更なる競争の激化が予想され、当社グループの競争力が低下する可能性があります。また、これら競争の激化が、サービスの向上をはじめとした競合対策に伴うコスト増加要因となることで、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅶ.知的財産権について
当社グループは、当社が運営するサービスについて、特許権、意匠権、商標権などの知的財産権を適切に権利化し、管理しており、今後も新たなサービスを行う際には、適切に知的財産権を取得し、管理していく方針です。また、第三者の知的財産権を尊重し、当社グループが運営するサービスが第三者の知的財産権を侵害しないよう監視・管理を行っていますが、知的財産権の特性上、第三者の知的財産権の侵害を理由とする訴訟やクレームが提起されないという保証はなく、そのような事態が発生した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅷ.個人情報保護について
当社グループはECサイト「ZOZOTOWN」等での通信販売、米国におけるZOZOSUITの販売と、これを用いた「ZOZOFIT」及び「WEAR」の運営を通じて保有した会員の個人情報並びにBtoB事業の受託を通じて保有する個人情報を管理しており、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱業者としての義務を課されております。当社グループは個人情報の第三者への漏洩、不適切な利用、改ざん等の防止のため、個人情報保護規程及び個人情報管理に関連する規程やマニュアルを制定することにより「個人情報保護マネジメントシステム」に準拠した管理体制を確立し、また、全社員を対象とした個人情報に関する教育を通じて個人情報の取扱いに関するルールを周知徹底し、個人情報保護に関する意識の向上を図ることで、同法及び関連法令等の法令遵守に努めております。なお、当社は2021年5月に情報セキュリティ基本方針を定め、同年7月に第三者機関の審査を受けて、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の国際規格「ISO/IEC 27001:2013」および日本国内規格である「JIS Q 27001:2014」の認証を取得しております。システム面においては個人情報を管理しているサーバーはセキュリティ設備が強固な外部データセンターにて管理されており、更には外部からの不正アクセスに対するセキュリティの強化及び個人情報の閲覧にアクセス制限を設ける等により、厳重に個人情報の管理を行っております。
しかしながら、個人情報が当社グループ関係者、業務委託先等の故意又は過失により外部へ流出した場合、又は外部からの不正なアクセスや想定していない事態によって個人情報の外部流出等が発生した場合には、適切な対応を行うために相当な費用負担、当社グループヘの損害賠償請求、当社グループ並びに当社サービスの信頼性やブランドが毀損し、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、欧州連合(EU)の「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」をはじめとする海外における個人情報保護に関する規制を遵守する必要がある場合には、適宜、外部専門家の助言などを得ながら対応してまいりますが、意図せず規制に違反し高額な制裁金を課された場合などには、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②経営に関するリスクについて
ⅰ.コンプライアンスについて
当社グループは、事業を展開するにあたり、様々な法律や諸規制、社会的要請の遵守を求められております。当社グループでは社内規程の整備と周知及びコンプライアンス教育を徹底し、グループ全体でかかる事案を含む重大な法令違反や不正行為等の未然防止に努めています。
しかしながら、当社グループのみならず取引先に起因するものも含むコンプライアンスに関するリスクは完全に排除できるものではなく、当社グループがこれらのリスクに対処できない場合には、行政機関からの行政処分や金銭的な損失及び損害の発生、社会的信用の低下により、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ.インターネット事業及びECサイトの運営に関する法規制について
当社グループでは、主力事業であるECサイト「ZOZOTOWN」の運営において「特定商取引に関する法律」等、及びSNSサービス「WEAR」の運営においては「電気通信事業法」等の関連法令による法的規制を受けております。当社グループは、社内管理体制の構築等によりこれら法令を遵守する体制を整備しておりますが、これらの法令の改正または新たな法令の制定が行われた場合には当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅲ.ファッション関連商材の販売に関する法規制について
当社グループは、ECサイト「ZOZOTOWN」等においてファッション関連商材の販売を行っており、「製造物責任法」及び「家庭用品品質表示法」等関連法令による法的規制を受けております。当社グループは、社内管理体制の構築及び取引先との契約内容にこれらの法令遵守義務事項を盛り込んでおりますが、これらの法令に違反する行為が行われた場合には、当社グループのブランドイメージの低下により、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅳ.訴訟等について
当社グループは、提出日現在において、重大な訴訟を提起されている事実はありません。
しかしながら、当社グループが保有する個人情報の管理不徹底等の人為的ミスの発生、第三者からの不正アクセスによる情報流出又はシステム障害及び第三者の知的財産権の侵害、販売した商品の不備等に起因して、訴訟を受ける可能性があります。その訴訟の内容及び結果、損害賠償の金額によっては当社グループの事業及び経営成績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
ⅴ.人材の確保について
当社グループの継続的な成長を実現させるためには、優秀な人材を十分に確保し、育成することが重要な要素の一つであると認識しております。そのため、積極的な新卒社員の採用、中途社員の採用及びアルバイト社員の受け入れ並びに社内公募制度の拡充及び社内教育体制の構築を行う等、優秀な人材の獲得、育成及び活用に努めております。
しかしながら、当社グループが求める優秀な人材を計画通りに確保出来なかった場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅵ.自然災害等について
当社グループの本社及び主たる物流拠点は千葉県および茨城県内にあり、当地域内において地震、風水害等の大規模災害や犯罪等の人為的脅威、事故、火災、停電などが発生した場合、または当社施設内や取引先において、パンデミックが発生した場合等、当社の想定を超える事態が発生した場合には、当社の物流が停滞する可能性、従業員が出勤困難になることによりサービスレベルが低下する可能性等があり、その内容及び結果によっては当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅶ.のれんの減損について
当社グループは、企業買収に伴い発生した相当額ののれんを連結貸借対照表に計上しております。当該のれんについては将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、事業環境の変化等により期待する成果が得られない場合は、当該のれんについて減損損失を計上し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅷ.親会社に関する利益相反について
当社は、ソフトバンクグループ㈱、ソフトバンク㈱、LINEヤフー㈱等の子会社であります。当社は、これらの親会社やそのグループ会社との間で、ユーザー誘導による集客や「ZOZOTOWN」等のYahoo!ショッピング出店、「ZOZOTOWN」等でのスマートフォン決済サービスPayPayの導入などの取引を行っており、今後も当社グループの事業拡大を目的としたそれらの会社との取引を多数行っていく予定です。これらの親会社は、当社の株主総会の議決権の過半数を直接的又は間接的に保有し、当社の経営への影響力を有しております。そのため、当社は「親会社グループとの間の取引の公正性維持に関する規程」を定め、これらの取引について、取締役会の決議をする場合には親会社やそのグループ会社と関係のある取締役は議決から除外するなど仕組みを構築し、取引の公正性が保たれるよう運用しております。しかし、当該仕組みが機能せず、親会社やそのグループ会社と当社との間で利益相反が生じる場合には、当社の利益が損なわれる可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
[表1]前年同期比 (単位:百万円)
( )内は商品取扱高(その他商品取扱高除く)に対する割合です。
当社グループは、「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」という企業理念のもと、日本最大級のファッションECサイト「ZOZOTOWN」、及びファッションメディア「WEAR」の運営を中心に事業活動を行っております。
当連結会計年度においては、資源・原材料価格の高騰や円安の進行等による物価上昇が続き、経済の先行きが不透明な状況である一方で、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の緩和等に伴う外出機会の増加ならびに洋服に対する需要の増加により、アパレル業界(特にオフライン)が活気づいた市況となりました。他方、残暑が長期間続いたことや、記録的な暖冬であったこと等、例年にはない気候影響も受けました。
この状況下で当社グループは、ZOZOTOWNにおいてはユニークユーザー数拡大及びコンバージョンレート(ユニークユーザーの購買率)向上を目指し、ユーザーとブランド双方にとって魅力的なサイト作りに一層注力してまいりました。具体的には、5月・9月・11月にセールイベント「ZOZOWEEK」の実施(2023年5月12日~21日の10日間、同年9月12日~18日及び9月21日~24日の11日間、同年11月1日~12日及び11月15日~19日の17日間)や、夏の本セール(2023年6月23日~)ならびに冬の本セール(2024年1月1日~)開始期間にはTVCMを放送し集客を強化する等、ZOZOTOWNにおける販売力の最大化に取り組みました。また、2023年11月23日~26日の4日間はブラックフライデーのセールイベントを実施し、同時期の気温低下の後押しもあり、秋冬物販売のピークをつくることができました。加えて、引き続き多様化するユーザーニーズに対応できるよう幅広いジャンルの新規ブランドの出店も進めてまいりました。カテゴリー強化の取り組みとしては、コスメカテゴリー強化を図る「ZOZOCOSME」に注力しております。ZOZOCOSMEは2024年3月末時点において国内外の700以上のコスメブランドを取り扱っておりますが、商品取扱高拡大のため、更に積極的な新規ブランドの誘致及びラインナップの拡大を進めてまいります。また、当社ならではの付加価値提供としては、当社独自のAIを活用した超パーソナルスタイリングサービス「niaulab(似合うラボ)」を展開する等、購買の上流にアプローチする「似合う」を軸としたソリューションの提供を目指しています。
LINEヤフーコマース(「Yahoo!ショッピング」と「Yahoo!オークション」の合算値)については、前連結会計年度までに獲得した顧客の定着に加え、モールを運営するLINEヤフー㈱による「本気のZOZO祭」(2023年6月25日、同年9月18日、同年10月15日、同年11月26日、2024年1月1日、同年2月25日、同年3月17日の計7回)等の販促施策投下により、順調に売上を伸長させております。
BtoB事業については、前連結会計年度に複数ブランドの支援終了があったものの、支援を継続しているブランド各社においては自社ECサイト活用の積極化が続いている状況です。
また、今後の商品取扱高拡大を見据え、2023年8月より物流拠点「ZOZOBASEつくば3」の稼働を開始いたしました。当拠点は、延床面積や商品保管数等の設備能力は当社内で最大規模であり、将来的な労働人口の減少傾向等に向けた対応策として国内初となる最新機器を導入する等の積極的な設備投資を行い、業務の自動化による省人化を目指しております。
これらの結果、当連結会計年度における商品取扱高は574,373百万円(前年同期比5.5%増)、その他商品取扱高を除いた商品取扱高は536,907百万円(同7.1%増)となりました。売上高は197,016百万円(同7.4%増)、売上総利益は183,147百万円(同6.9%増)となりました。売上総利益の商品取扱高(その他商品取扱高除く)に対する割合(粗利率)は34.1%となり、前年同期と比較して0.1ポイント低下いたしました。
売上高については、前年同期比でポイント等費用が増加した一方で、商品取扱高に対する売上高比率が高いUSED販売及び広告事業の成長が主な要因となり、前年同期比で商品取扱高(その他商品取扱高除く)の成長率を上回る伸び率となりました。
粗利率が前年同期比で悪化した主な要因は、前述のとおり前年同期比でポイント等費用が増加したことです。
販売費及び一般管理費は123,067百万円(前年同期比7.1%増)、商品取扱高(その他商品取扱高除く)に対する割合は22.9%と前年同期並の実績となりました。前年同期比で変動があった販管費項目は以下のとおりです。なお、以下の対商品取扱高比は、各販管費項目を商品取扱高(その他商品取扱高除く)で除した結果となります。
・上昇(悪化)要因
① 物流拠点「ZOZOBASEつくば3」関連のマテハン機器等の償却開始により、減価償却費(対商品取扱高)が0.3ポイント上昇。
② 物流拠点「ZOZOBASEつくば3」稼働に伴い賃借料(対商品取扱高)が0.2ポイント上昇。
③ 物量増に伴う作業効率の低下により、人件費うち物流関連費(対商品取扱高)が0.1ポイント上昇。
・低下(改善)要因
① 出荷単価が前期実績を上回ったことにより、荷造運賃(対商品取扱高)が0.3ポイント低下。
② 実質プロモーション費用の消化用途の変化(前年同期比でポイント等費用の比率上昇)により、広告宣伝費(対商品取扱高)が0.3ポイント低下。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は60,079百万円(前年同期比6.5%増)、営業利益率は対商品取扱高(その他商品取扱高除く)比11.2%となり、前年同期と比較して0.1ポイント低下いたしました。また、経常利益は59,764百万円(同5.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は44,341百万円(同12.2%増)となりました。
[表2]通期連結業績予想比
(単位:百万円)
( )内は商品取扱高(その他商品取扱高除く)に対する割合です。
2023年4月27日に開示いたしました期初計画に対しては、商品取扱高が1.1%下回りましたが、商品取扱高(その他商品取扱高除く)が0.3%上回りました。期を通じて例年にないネガティブな気候影響も受けましたが、機動的なプロモーションの投下により、商品取扱高(その他商品取扱高除く)の期初計画達成となりました。一方で、売上高は期初計画を1.8%下回りましたが、実質プロモーション費用のうち、売上高から控除となるポイント等費用の計上額が期初計画を超過したこと等が要因です。利益面では、期初計画に対して、営業利益が0.1%上回り、経常利益が0.4%下回り、親会社株主に帰属する当期純利益が5.6%上回りました。営業利益については、計画に対する出荷単価の上振れに伴う配送費用(荷造運賃)の低減並びに各種コストコントロールの結果、期初計画達成となりました。経常利益については、投資先ファンドの運用損の計上に伴い、期初計画を下回りました。親会社株主に帰属する当期純利益については、サステナビリティへの取り組みの奏功等により税額控除の恩恵を受けたこと及び連結子会社であった㈱yutoriの新規上場に伴い同社株式の売却による特別利益が生じたことにより、期初計画を上回っての着地となりました。
なお、当社グループはEC事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しておりますが、単一セグメント内の各事業区分の業績を以下のとおり示しております。
各事業別の業績は、以下のとおりです。
[表3]事業別前年同期比
(注) LINEヤフーコマースは「Yahoo!ショッピング」と「Yahoo!オークション」の合算値となります。
① ZOZOTOWN事業
ZOZOTOWN事業は、「買取・製造販売」「受託販売」「USED販売」の3つの事業形態で構成されております。「買取・製造販売」は当社グループが仕入れを行い、在庫リスクを負担し販売を行う事業形態になります。各ブランドからファッション商材を仕入れる形態と、MS(マルチサイズ)等、当社グループが商材を発注する形態がこちらに該当します。「受託販売」は各ブランドの商品を受託在庫として預かり、受託販売を行っております。「USED販売」は主に個人ユーザー等から中古ファッション商材を買取り、販売を行っております。新品商品購入促進のための付加価値サービスと位置付けております。
当社では、ZOZOTOWN事業を持続的に成長させていくためには「購入者数の拡大」及び「ファッション消費におけるZOZOTOWN利用率上昇」が重要なファクターであると認識しております。そのために、ユーザーとブランド双方にとって魅力的なサイト作りに取り組んでおります。
なお、ZOZOTOWN事業に係る主なKPIの推移は以下のとおりです。
(ショップ数等)
[表4]ショップ数、ブランド数の推移
(注) 1 四半期会計期間末日時点の数値を使用しております。
2 プライベートブランド「ZOZO」及び「マルチサイズ」は含んでおりません。
当連結会計年度に新規出店したショップ数は118ショップ(純増33ショップ)となりました。なお、第4四半期連結会計期間に新規出店したショップ数は17ショップ(純減10ショップ)となりました。主な新規出店ショップは、韓国のオンラインファッションストア「MUSINSA」、若年層に人気の韓国ブランド「Mardi Mercredi」、コスメブランドでは、資生堂グループの「NARS」です。新規出店誘致は計画通り進捗しましたが、ブランドの統廃合等による退店が多かったため、前四半期比でショップ数は減少いたしました。
(年間購入者数)
[表5]年間購入者数の推移
(注) 1 集計期間は会計期間末日以前の直近1年間としております。
2 年間購入者数は過去1年以内に1回以上購入したアクティブ会員数とゲスト購入者数の合計です。
3 アクティブ会員数は過去1年以内に1回以上購入した会員数になります。
4 「LINEヤフーコマース」は含んでおりません。
第4四半期連結会計期間において、アクティブ会員数が前年同期比及び前四半期比でそれぞれ増加したため、年間購入者数は前年同期比で増加しました。一方で、アクティブ会員数の前四半期比の増加幅が限定的であったことにより、ゲスト購入者数の前四半期比の減少幅が上回り、年間購入者数は前四半期比で微減となりました。アクティブ会員数の前年同期比での増加は、前連結会計年度に新規獲得した会員の定着に加え、2023年5月・9月・11月のZOZOWEEK及びブラックフライデー開催期間、同年6月末からの夏の本セール期間ならびに2024年1月からの冬の本セール期間において、TVCM放送ならびにWEB上の広告等により集客を強化したことが要因です。ただし、冬の本セール期間に暖冬影響を受けたことや、春物の立ち上がりシーズンに入って以降は気温が低い日が続き初動が芳しくなかったこと等により、特に新規会員の獲得が低調だったため、アクティブ会員数の前四半期比の増加幅はもの足りない結果となりました。ゲスト購入者数は、会員向けサービスの充実により、前年同期比及び前四半期比で減少傾向が継続しています。
(年間購入金額及び年間購入点数)
[表6]年間購入金額、年間購入点数の推移
(注) 1 集計期間は会計期間末日以前の直近1年間としております。
2 アクティブ会員1人当たりの指標となっております。
3「LINEヤフーコマース」は含んでおりません。
4 円単位となっております。
第4四半期連結会計期間において、全体の年間購入金額は前年同期比及び前四半期比で増加、全体の年間購入点数は前年同期比で減少したものの、前四半期比で増加となりました。全体の年間購入金額は、第4四半期連結会計期間の新規会員獲得が低調であったこと等が影響し、全体に占める新規会員の割合が低下したことで前年同期比及び前四半期比で増加基調にあります。既存会員においては、前年同期比及び前四半期比で年間購入金額及び年間購入点数は減少いたしました。コロナ禍で新規会員獲得が好調だった影響で既存会員のうち会員歴の浅い会員構成比が上昇したこと(会員歴が浅い程年間購入金額及び点数が低い)が主な要因です。
(平均商品単価等)
[表7]平均商品単価、平均出荷単価、1注文あたり購入点数、出荷件数の推移
(注) 1 四半期会計期間の数値を使用しております。
2「LINEヤフーコマース」は含んでおりません。
3 円単位となっております。
新品商材において、この秋冬もブランド各社による定価引き上げは続きましたが、第4四半期連結会計期間の平均商品単価は前年同期比で微増に落ち着きました。第3四半期連結会計期間から引き続き、暖冬の影響で秋冬物の動きが例年と異なり、冬の本セール期間に入って以降も単価の高いアウター類の売上構成比が伸び悩んだこと等によるプロダクトミックスの変化及び前年同期比でセール比率が上昇したことが主な要因です。一方で、平均出荷単価については、1注文あたりの購入点数が増加した影響で、前年同期比で増加いたしました。1注文あたりの購入点数が増加したのは、1万2千円以上の購入で送料無料となる送料無料施策の投下量が前年同期比で増加したため、同施策実施日の合わせ買いの割合が上昇したことが主な要因です。出荷件数については、前述のとおり、合わせ買いの割合が上昇したことに加え、新規会員獲得が低調だったこと等も影響し、前年同期比で微減となりました。
ⅰ. 買取・製造販売
当連結会計年度の商品取扱高は4,429百万円(前年同期比6.3%減)、商品取扱高に占める割合は0.8%(前年同期実績0.9%)となりました。売上高は4,263百万円(前年同期比6.5%減)となりました。2024年3月末現在、買取・製造販売のZOZOTOWN出店ショップは29ショップ(2023年12月末28ショップ)を運営しております。
ⅱ. 受託販売
当連結会計年度の商品取扱高は442,214百万円(前年同期比6.6%増)、商品取扱高に占める割合は77.0%(前年同期実績76.2%)となりました。売上高(受託販売手数料)は121,965百万円(前年同期比5.3%増)となりました。2024年3月末現在、受託販売のZOZOTOWN出店ショップは1,566ショップ(2023年12月末1,577ショップ)を運営しております。
ⅲ. USED販売
当連結会計年度の商品取扱高は18,090百万円(前年同期比12.7%増)、商品取扱高に占める割合は3.1%(前年同期実績2.9%)となりました。売上高は17,630百万円(前年同期比12.3%増)となりました。
② LINEヤフーコマース
LINEヤフーコマースは、「Yahoo!ショッピング」と「Yahoo!オークション」の合算値となります。LINEヤフー㈱が運営するオンラインショッピングモール「Yahoo!ショッピング」へZOZOTOWNを出店、ならびに、2024年3月より同社が運営するネットオークションサービス「Yahoo!オークション」へZOZOUSEDを出店しております。当連結会計年度の商品取扱高は57,696百万円(前年同期比15.7%増)、商品取扱高に占める割合は10.1%(前年同期実績9.2%)となりました。売上高(受託販売手数料)は17,136百万円(前年同期比17.0%増)となりました。
③ BtoB事業
BtoB事業では、ブランドの自社ECサイトの構築及び運営・物流業務を受託しております。当連結会計年度の商品取扱高は14,477百万円(前年同期比7.7%減)、商品取扱高に占める割合は2.5%(前年同期実績2.9%)となりました。売上高(受託販売手数料)は2,271百万円(前年同期比12.2%減)となりました。2024年3月末現在、受託サイト数は32サイト(2023年12月末33サイト)となっております。
④ 広告事業
広告事業は、ZOZOTOWN及びWEARのユーザーリーチ基盤を活用し、主に取引先ブランド各社に広告枠を提供し、広告収入を得る事業形態となります。当連結会計年度の売上高は9,737百万円(前年同期比25.3%増)となりました。
WEARについては、引き続きユーザーの拡大及びコンテンツの拡充に注力しております。
⑤ その他
その他商品取扱高には、Yahoo!ショッピングにおけるZOZOTOWN店を除いたファッションカテゴリーストアのうち、ZOZOオプション(当社提案をもとにYahoo!ショッピング内で実施する特集企画への参加等の営業支援の恩恵を受けることが出来るサービス)の契約を結んだストアの流通総額、当社連結子会社の自社ECサイトにおける流通総額、ZOZOTOWNからオフライン店舗への送客をする仕組み「ZOZOMO」を経由した流通総額及び米国で有料販売をしている「ZOZOSUIT」の流通総額を計上しております。当連結会計年度のその他商品取扱高は37,465百万円(前年同期比13.3%減)、商品取扱高に占める割合は6.5%(前年同期実績7.9%)となりました。その他売上高には、ZOZOTOWN事業に付随した事業の売上(送料収入、決済手数料収入等)及び前述のその他商品取扱高に関連した売上等が計上されており、当連結会計年度のその他売上高は24,012百万円(前年同期比7.5%増)となりました。
(単位:百万円)
(総資産)
総資産については、前連結会計年度末に比べ6,120百万円増加(前連結会計年度末比3.9%増)し、161,862百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末に比べ355百万円減少(同0.3%減)し、123,137百万円となりました。主な増減要因としては、現金及び預金の減少4,379百万円、売掛金の増加2,794百万円、商品及び製品の増加628百万円などによるものであります。固定資産は、前連結会計年度末に比べ6,476百万円増加(同20.1%増)し、38,724百万円となりました。主な増加要因としては、有形固定資産の増加5,863百万円、無形固定資産の増加230百万円などによるものであります。
(負債)
負債については、前連結会計年度末に比べ1,930百万円減少(前連結会計年度末比2.4%減)し、77,117百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べ3,942百万円減少(同5.5%減)し、68,261百万円となりました。主な増減要因としては、受託販売預り金の増加1,078百万円、未払金の減少1,359百万円、未払法人税等の減少1,075百万円、賞与引当金の減少1,125百万円などによるものであります。固定負債は、前連結会計年度末に比べ2,012百万円増加(同29.4%増)し、8,856百万円となりました。主な増加要因としては、退職給付に係る負債の増加451百万円、資産除去債務の増加1,755百万円などによるものであります。
(純資産)
純資産については、前連結会計年度末に比べ8,050百万円増加(前連結会計年度末比10.5%増)し、84,744百万円となりました。主な増減要因としては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加44,341百万円、剰余金の配当による減少26,998百万円などによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末から4,396百万円減少し、69,748百万円となりました。
当社グループは、自己資金及び金融機関からの借入等を資本の財源としております。また、当社グループの資金の流動性については、事業規模に応じた資金の適正額を維持することとしており、当社グループは運転資金の機動的かつ安定的な調達を可能とするため、取引銀行1行と貸越極度額20,000百万円の当座貸越契約を締結しております。
また、取引銀行3行と総額12,500百万円のシンジケートローン契約を締結しております。
当連結会計年度末における借入実行残高は、20,000百万円となっております。
各キャッシュ・フローの状況とその要因は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は42,589百万円となりました。主な増加要因としては、税金等調整前当期純利益60,426百万円の計上などによるものであります。一方、主な減少要因としては売上債権の増加額2,985百万円、棚卸資産の増加額1,202百万円、法人税等の支払額17,093百万円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は9,879百万円となりました。これは有形固定資産の取得による支出7,997百万円、無形固定資産の取得による支出1,366百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は37,138百万円となりました。これは配当金の支払額26,992百万円、自己株式の取得による支出9,999百万円などによるものであります。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に帰属する当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に設定しています。割引率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
借入に関する契約
当社は、2024年3月29日開催の取締役会において、シンジケート方式によるコミットメントライン契約の締結について決議を行い、同日付けでシンジケート方式によるコミットメントライン契約を締結しております。
賃貸借契約の締結
当社は、2024年2月16日開催の取締役会において、固定資産(物流センター)の賃貸に関する契約を締結することについて決議を行い、2024年2月29日付で定期建物賃貸契約を締結しております。
当連結会計年度の研究開発活動は、当社及び子会社の㈱ZOZO NEXT、ZOZO NEW ZEALANDLIMITEDで行っております。既存分野における新製品開発、既存製品の改良、新技術の開発及び技術サービス、新たな市場創出を目的として活動しております。
また、中・長期的展望に立って将来の事業領域を拡大するため、共同研究等により、先端技術を取り入れた基礎的研究を行っております。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
なお、当社グループは単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。