本項において、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営環境
今後の日本経済は、海外経済の下振れリスクがあるものの、物価上昇を受けた持続的な賃上げ機運の高まり等により、所得から支出への前向きな循環が広がり、回復の動きが続くものと見込まれます。
生命保険業界におきましても、人口減少・少子高齢化の進展、価値観・ライフスタイルの変容に伴うお客さまニーズの多様化、ITの高度化やコロナ禍を契機としたデジタル化の加速、金融市場における不確実性の増大等により経営環境が変化しており、お客さま本位の商品・サービスの提供、資産運用の高度化、資本コストを踏まえた資本効率の向上及び社会課題を踏まえた企業経営等、業務運営の更なる質の向上に取り組んでいく必要があります。
(2)経営方針
当社グループは、「Try & Discover(挑戦と発見)による価値の創造を通じて、人と社会に貢献する」ことを経営理念として事業運営を行っております。この経営理念のもと、グループ経営ビジョンを「保険を通じて、“ひとり”から、世の中のしあわせをつくる。ていねいに向き合い、大胆に変えるグループへ。」と定め、これを実現するために、2021年4月を始期とする5年間の『グループ長期ビジョン「Try & Discover 2025」~すべてのステークホルダーのしあわせのために~』に取り組んでおります。
このグループ長期ビジョンでは、グループKPIとグループ成長戦略を以下のとおり設定することにより、資本効率の向上を伴った成長ストーリーの推進を全体方針として掲げております。
(3)グループKPI
グループ長期ビジョンの策定にあわせて、定量的な目標指標であるグループKPI(Key Performance Indicator)を以下のとおり設定しております。
(グループ長期ビジョン「Try & Discover 2025」におけるグループKPI)
(注)1 グループ修正利益=当期純利益±資産・負債の会計処理のアンマッチ等による評価性損益等
+負債性内部留保の超過繰入額
2 修正ROE=修正利益/((前年度末純資産+当年度末純資産)/2)
3 ROEV=EV増減額/((前年度末EV+当年度末EV)/2)
4 「EV」、「新契約価値」については、「第2 事業の状況-4 経営者による財政状態、
経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析-(5)その他重要事項-(参考4) 市場整合的
エンベディッド・バリュー(MCEV)」をご参照ください。
(4)グループ成長戦略
強固な経営基盤と競争優位性を確保するため、具体的な経営戦略としてグループ成長戦略における5つの重点テーマを以下のとおり設定しております。
①コアビジネスの強化
当社グループは、“複数の独自性のある生命保険会社がそれぞれ特化戦略を追求”していることが強み・特徴となっております。引き続き、DXの推進による営業活動の変革や顧客接点の拡大に取り組み、各社の特化戦略追求を通じた事業の領域拡大・強化により、保険収益力を強化し、グループ収益基盤の強靭化を図ってまいります。
<各社の具体的な取組方針>
②事業ポートフォリオの多様化・最適化
国内生命保険事業をコアとするグループ既存事業での利益拡大に加え、グループの経営資源を成長事業に配賦し、資本効率の向上に取り組んでおります。この方針のもと、生命保険事業と親和性の高い領域でグループの強みを発揮するべく、クローズドブック事業における事業展開を拡大・発展させるとともに、新規事業の創出や育成にも取り組んでまいります。また、資本を有効活用することで、グループ全体の資本効率を向上させるべく、グループの事業ポートフォリオマネジメントを通じた低ROE事業の改革にも取り組み、グループ収益基盤の強化を図ってまいります。
③資本マネジメントの進化
資本マネジメントにおきましては、資本十分性を確保しつつ、ERMの一層の活用を通じて収益性の向上に取り組むことで、資本の効率性を高めていくことを基本としております。経済環境の変化や金融市場の変動等にも的確に対応しながら、グループ経営資源の最適化や成長投資と株主還元のバランスを図り、資本コストを踏まえた資本効率の向上に努めてまいります。
また、リスクマネジメントにおきましては、経済価値ベースの資本規制の導入(2025年度を予定)を見据え、金利リスクの削減や政策保有株式の縮減を着実に進めております。これにより、資産運用リスクをコントロールする一方で、事業投資によるリスク量の拡大を進め、保険引受リスクとの最適なバランスを図っていく方針です。
(注)ERMとは、エンタープライズ・リスク・マネジメントの略で、資本・収益・リスクを一体的に
管理することにより、企業価値の増大や収益の最大化といった経営目標を達成することを目的と
した戦略的な経営管理手法のことを指します。
④グループ一体経営の推進
不確実性の高い経営環境に対応していくため、グループ全体のフィールドを活用した経営資源の最適化を進め、既存の枠組みにとらわれない挑戦を続けることでグループ各社間の協働による事業シナジーをこれまで以上に追求してまいります。また、それを実現していくための土台となる従業員のグループ意識の醸成を図るため、当社の20周年記念事業の各種施策を積極的に展開してまいります。今後もグループ内におけるコミュニケーションの活性化を図り、役職員一人ひとりがグループの一員であることに誇りを感じて業務に取り組めるよう、一体経営をより強固なものとしてまいります。
⑤SDGs経営と価値創造
グループの事業を通じて、「健康で豊かな暮らしの実現」、「多様な人材が活躍できる環境づくり」、「地球環境保全・気候変動の緩和と適応への貢献」、「投資を通じた持続可能な社会への貢献」というサステナビリティ重点テーマ(4つのマテリアリティ)に取り組むことで共有価値を創造し、SDGs達成への貢献を推進してまいります。
以上、2024年度も、グループ長期ビジョンの実現に向けた取組みを継続してまいります。
今後もお客さまや金融市場から選ばれ続けるために、これまで以上に経済的価値と社会的価値の双方を追求する共有価値の創造を実践してまいります。
本項において、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
①取締役会による監視
取締役会は、SDGs及びCSRに関する基本方針や、地球環境や社会的課題に関連する施策等を審議・検討することを任務とする「グループサステナビリティ推進委員会」を取締役会の下部機関として設置しています。
グループサステナビリティ推進委員会は、取締役会議長である代表取締役社長が委員長を務め、グループ各社のサステナビリティ・CSR担当部門及び運用部門の担当役員、部長を構成員とし、SDGsなど地球環境や社会的課題に関連する基本方針・気候変動対応の目標と取組施策を定めています。取締役会の監督を受けており、半期ごとに取組状況のモニタリングを実施し、取締役会に報告しています。
このグループサステナビリティ推進委員会の取組みを推進するため、グループサステナビリティ推進委員会の下部機関として「サステナビリティ・アドバイザリー・コミッティ」「サステナビリティ推進専門部会」「ESG投資専門部会」「ソーシャルインパクト検討部会」を設置しています。サステナビリティ推進専門部会は、気候変動リスクや様々なサステナビリティ課題の状況と必要な対応を調査・検討し、グループサステナビリティ推進委員会に報告しています。ESG投資専門部会は、収益性向上と社会課題解決の同時追求を目指すESG投資への対応について、グループ内の情報連携を強化することで、グループ全体のESG投資の着実な遂行及び持続的強化を支援しています。加えて、外部有識者の参加するサステナビリティ・アドバイザリー・コミッティを設置し、外部有識者の視点や最新の動向を取り込み、当社グループのサステナビリティ対応の向上を図っています。
また、監査等委員がグループサステナビリティ推進委員会にオブザーバーとして参加するとともに、内部監査部門がサステナビリティ課題への対応の適切性に関する内部監査を実施しています。
②経営の役割
当社は、当社の経営及び当社グループの経営管理に関する重要な事項を審議及び決議するための機関として経営執行会議を設置し、それに並列して、グループ企業価値の持続的な向上を実現するため、グループ全体の視点から、グループ成長戦略等に関する事項及びそれに付随する重要な事項を審議するための機関としてグループ成長戦略会議を設置しております。また、気候変動対応を含むグループ全体のサステナビリティ推進の専担部署として「サステナビリティ推進部」を設置しており、各種サステナビリティ課題に対する基本方針の策定や具体的施策の推進、また進捗状況のモニタリングを実施しています。サステナビリティ推進部はグループサステナビリティ推進委員会の事務局であり、当該委員会で審議される地球環境や社会的課題に関する基本方針と取組施策の内容はすべて経営執行会議及び取締役会に報告されます。
<サステナビリティ推進体制>
(2)リスク管理
①リスクの特定・評価プロセス
当社グループではリスクの多様化・複雑化に対応するためリスクプロファイルを用いてグループを取り巻くリスクを網羅的に整理しています。リスクカテゴリー別にリスクを網羅的に洗い出し、当該リスクを把握・評価するとともに、各リスクの重要性、影響度、コントロール状況等を勘案し、取組事項の優先順位付けを行い、必要に応じ経営計画等への反映を行います。当社グループでは、気候変動関連リスクを管理すべき重要なリスクとしてリスクプロファイルに登録し、リスクの洗い出しとリスクの把握・評価を行っています。気候変動関連リスクは、保険引受リスク、資産運用リスク、オペレーショナルリスク、風評リスクのほか、経営全般に広く影響を及ぼすリスクとして把握・評価されます。
<当社グループの気候変動関連リスク>
ア.物理的リスク
熱ストレスによる死亡者数、熱中症搬送者数の増加や、自然災害の激甚化による災害犠牲者数の増加に起因する保険収支への影響等を物理的リスクとして認識しています。
イ.移行リスク
温室効果ガス排出に対する規制の強化や炭素税の導入、脱炭素に対応した新規技術への入れ替え、消費者の価値観や行動様式の変化等により生じる、当社グループの投融資先への財務的な影響に起因する資産運用収益の毀損等を移行リスクとして認識しています。
②リスクの管理プロセス
リスクの発生や既に認識しているリスクの変更を的確に認識・把握するため、年2回リスクプロファイルの見直しを行い、グループリスク統括委員会及び取締役会に報告しています。
リスクプロファイルを通じた全社のリスク特定・評価のプロセスにおいて、気候変動に関連するリスクは次に示すような観点で管理されています。
<気候変動関連リスクの管理>
ア.物理的リスク
・大規模災害リスク(保険引受リスク)とあわせ、再保険の活用等による保険収支悪化の緩和を検討
・既存商品をモニタリングし、商品改定等の対応を適切に実施
イ.移行リスク
・責任投資原則(PRI)に基づき、気候変動関連リスクを考慮した投融資を実施
・エンゲージメントにより、投融資先企業の脱炭素化に向けた対応を促進
・経済政策や法規制等の変動動向をモニタリングし、「グループサステナビリティ推進委員会」や「グループ経営推進委員会」において、グループ全体で情報を共有。当社グループの対応が上場企業として求められる水準から劣後しないよう取組みを実施
①気候変動リスク
当社グループは「TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース」の提言に賛同を表明するとともに、TCFDのフレームワークに則り、わかりやすい気候関連財務情報の開示に積極的に取り組んでいます。
ア.戦略
当社グループは、事業活動に関わるさまざまなサステナビリティの分野から、社会にとっての重要度が高く、また当社グループの事業との関連が大きい重要な社会課題の優先度を確認し、重点的に取り組む4つの「サステナビリティ重点テーマ」を定めています。
<T&D保険グループ サステナビリティ重点テーマ>
この重点テーマの1つに「地球環境保全・気候変動の緩和と適応への貢献」を掲げており、地球環境の保護、地球温暖化対策への貢献は、当社グループにとって極めて重要な果たすべき役割と認識しています。当社グループは、環境への取組姿勢を明確に示すため、「T&D保険グループ環境方針」を制定するとともに、具体的な目標設定を行い、着実に成果を挙げていきます。
気候変動リスクへの対応としては、物理的リスク、移行リスクにより生じる当社グループへの影響を検証するため、シナリオ分析を実施しています。物理的リスクに関しては保険収支への影響を、移行リスクに関しては資産運用収益への影響を分析するとともに、気候変動に関連する当社グループの事業機会も分析しております。
イ.指標及び目標
グループとしての環境保護関連の目標を設定し、毎日の事業活動の中でその達成に向けた取組みを進めています。目標は、「CO2排出量の削減」「電力使用量の削減」「事務用紙使用量の削減」「グリーン購入比率の向上」の4つです。その成果は半年ごとに計測し、各種レポート・ホームページ上で開示しています。
<T&D保険グループ CO2排出量削減目標>
当社グループでは、2040年度までに自社排出のCO2排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)とする長期目標を掲げるとともに、2025年度までにCO2排出量の40%削減、2030年度までに70%削減(いずれも2013年度比)を目指す中間目標を設定しています。CO2排出量の削減を推進するため、当社グループは、事業活動における全消費電力を再生可能エネルギーで賄うことを目指すグローバルイニシアティブ「RE100」に2022年4月に加盟しています。当社グループでは、「2030年度までに使用電力の60%を再生可能エネルギー由来とする」ことを中間目標とし、再生可能エネルギーの利用を積極的に進めていきます。
また、責任ある機関投資家として、投融資先のCO2排出量についても2050年度までにネットゼロとする削減目標を設定し、社会全体の排出量削減に貢献することを目指しています。その削減目標の達成に向けた取組みを着実に加速させるため、2030年度までに投融資先のCO2排出量を50%削減(2020年度比)する中間目標を設定しています。
※シナリオ分析及び環境目標・実績数値等の詳細については、当社の
サステナビリティレポート https://www.td-holdings.co.jp/csr/report/
(2023年4月1日~2024年3月31日を報告対象期間とするサステナビリティレポートは、2024年9月発行予定です。)
②人的資本
T&D保険グループは、「ともに働く『人材』こそが、グループ経営理念『Try&Discover(挑戦と発見)による価値の創造を通じて、人と社会に貢献するグループを目指します』の実現に向けた事業活動を担う、最も大切にすべき最大の原動力である」と位置づけ、T&D保険グループにおける人材マネジメントの基本的な方針としてグループ人事基本方針を定めています。当該方針に基づいた取組みについて、従業員の声を反映するため、毎年、従業員エンゲージメントスコアを調査し、その結果を非財務KPIとして開示しています。
ア.戦略
<人材育成方針>
グループ人事基本方針では、育成に関し以下のとおり定め、経営戦略であるグループ長期ビジョンの実現に資する人材育成に取り組んでいます。
[グループ人事基本方針抜粋]
「当社グループの一員として高いインテグリティ(誠実・真摯・高潔)と社会の変化や多様な価値観を受け容れる柔軟性、およびグローバルな視野を有し、当社グループの方向性を理解した上で自身の業務に対し真摯に取り組み、自ら考え、能動的に行動し、期待される成果を出せる自律型人材を育成します。」
ⅰグループの成長を牽引するリーダーの育成
T&D保険グループでは、中長期的な視点を持ち、T&D保険グループ各社の成長を牽引できる将来のリーダー候補として相応しい人材の育成に繋がる人事ローテーション・教育研修を実施しています。
ⅱ成長機会の提供
T&D保険グループでは、自身の業務に対し真摯に取り組み、自ら考え、能動的に行動し、期待された成果を出せる自律型人材の育成に取り組んでおり、公募型のビジネススクール、MBA、語学留学派遣やオンラインツールを使用した教育機会の提供を実施しています。また、新たな価値の提供や業務の生産性向上等に向けたデータ分析やAI用に関する教育の実施、ITリテラシーの向上を目的としたITパスポートの資格取得を推進しています。加えて、太陽生命及び大同生命における営業職員の育成については、入社初期層の育成支援体制を拡充するなど、制度・組織・体制の整備を通じて、サステナブルな成長を促す仕組みづくりに取り組んでいます。
ⅲ女性活躍の推進
女性のさらなる能力発揮は持続的な企業価値向上の源泉であり、女性活躍はグループの重要な経営課題と認識しています。この認識のもと、T&D保険グループでは、女性経営幹部の計画的な育成を実施するため、初級管理職層を含めたグループ共通の女性管理職比率目標を設定し管理職登用に向けた研修を行うなど、計画的な人材育成に取り組んでいます。
ⅳグループ内の人材流動化
様々な会社が存在するT&D保険グループの経営を担う人材の育成・母集団の拡大を目的に、グループ内の各社からT&Dホールディングスへの異動・公募による配置転換やグループ内で人材交流派遣を実施し、グループ内の人材流動化を促進しています。
<社内環境整備方針>
T&D保険グループでは、グループ経営理念の実現と当社グループの成長を追求し続けるための基盤は、従業員とその家族の心身の健康であると考え、従業員が安心して業務に従事でき、いきいきと働くことができる環境の構築を目指しています。
ⅰダイバーシティ・エクィティ&インクルージョンの推進
T&D保険グループは、人材の多様性(ダイバーシティ)を受け容れ、一体感を醸成する(インクルージョン)ことで、従業員同士が相互に信頼でき、感謝し、尊重する企業文化を構築し、T&D保険グループの一員であることの誇りと責任を感じることができる企業グループを目指し、女性活躍の推進、障がい者雇用、シニア人材の活躍推進に取り組んでいます。
ⅱ健康経営
社内環境整備方針に基づいたグループ共通の取組みや、生活習慣病の予防や労働時間の縮減等、各社独自の取組み(太陽生命における「太陽の元気プロジェクト」、大同生命における「DAIDO-ココカラ」、「T&Dフィナンシャル生命の健康宣言」)により、太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命は、経済産業省が従業員の健康増進に取り組む「健康経営」を普及させることを目的とし定めた健康経営優良法人認定制度に基づき、「健康経営優良法人〜ホワイト500〜」に認定されています。
ⅲワークライフバランスへの取組み
T&D保険グループ各社では、従業員が家事や育児、介護等の家庭の責任を果たしながら仕事で十分に能力を発揮し、パフォーマンスを高めるために、育児休業等の制度の充実や総労働時間の縮減、多様な働き方を可能とするための在宅勤務制度やサテライトオフィス勤務制度の導入等、さまざまな取組みを強化しています。
<参考指標(生命保険会社3社合計)>
イ.指標及び目標
<人的資本関連指標の実績・目標(生命保険会社3社合計)>
※ 設問は5肢選択(評点は最大5.0~最小1.0)
※女性経営幹部の計画的な育成を実施するため、初級管理職層を含めた目標・実績を開示しています。
以下において、当社及び当社グループの事業その他に関して投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項について記載しております。当社グループでは、これらのリスクを認識した上で、事態の発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。なお、本項において、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
本項においては、当社の傘下生命保険子会社である太陽生命保険株式会社(以下「太陽生命」といいます。)、大同生命保険株式会社(以下「大同生命」といいます。)及びT&Dフィナンシャル生命保険株式会社(以下「T&Dフィナンシャル生命」といいます。)の3社を「生命保険会社3社」、「生命保険会社3社」とともに当社が直接保有している「T&Dユナイテッドキャピタル株式会社」(以下「T&Dユナイテッドキャピタル」といいます。)、「T&Dアセットマネジメント株式会社」(以下「T&Dアセットマネジメント」といいます。)、「ペット&ファミリー損害保険株式会社」(以下「ペット&ファミリー損害保険」といいます。)及び「株式会社All Right」を併せた7社を「直接子会社」といいます。
(1) リスク管理
① リスク管理の基本的な考え方
当社グループでは、当社がグループにおけるリスク管理の基本的な考え方を定めた「グループリスク管理基本方針」を策定し、直接子会社は当方針のもと、関連会社を含めたリスク管理体制を整備しています。
当社は、グループにおけるリスクを統括管理するためグループリスク統括委員会を設置し、統一した経済価値ベースのリスク管理指標等に基づくリスクの状況について、直接子会社から定期的及び必要に応じて報告を受け、グループ各社が抱える各種リスクの状況を把握しています。また、当社は、グループ各社のリスクの状況を取締役会に報告するとともに、必要に応じて直接子会社に対し指導・助言を行うことにより、各社におけるリスク管理を徹底し、グループ全体のリスク管理体制の強化に取り組んでいます。
② リスク管理体制
当社グループでは、生命保険事業の社会公共性等に鑑み、経営の健全性及び適切性を確保するため、リスクを的確に把握し管理していくことを経営の重要課題の一つと位置づけ、持株会社である当社の統括管理のもと、グループ各社は自己責任原則に基づき事業特性に応じて適切なリスク管理を実施しています。
③ リスクの分類と対応
当社グループでは、金融市場の混乱、巨大災害、パンデミック、気候変動、サイバー攻撃など、経営上の様々なリスクを下記のとおり分類し、リスク分類ごとに管理方針を定め、リスクの発生を防止又は一定の許容範囲内にコントロールするよう努めています。
当社及び当社グループの事業その他に関して、重要であると考えられるリスクは次のとおりです。
(注)オペレーショナルリスクは、事務リスク(個人情報の漏えいリスクを含みます)・システムリスク・法務リスク・労務人事リスク・災害リスクに分類して管理しています。
④ リスクの認識と評価(リスクプロファイル)
当社グループでは、リスクの多様化・複雑化に対応するため、リスクプロファイル(注)を用いて、当社グループを取り巻くリスクを網羅的に整理しています。リスクカテゴリー別にリスクを網羅的に洗い出し、当該リスクを把握・評価するとともに、各リスクの重要性、影響度、コントロール状況等を総合的に勘案し、取組事項の優先順位づけに活用し、必要に応じて経営計画等へ反映しています。なお、新たな重要なリスクの発生や、既に認識しているリスクの大きな変更、社内・業界慣行の世間からの乖離等を的確に認識・把握するため、原則として半期ごとにリスクプロファイルの見直しを行い、グループリスク統括委員会及び取締役会に報告しています。
(注)「リスクプロファイル」とは、リスクの性質、規模など各リスクの特性を表すさまざまな要素により構成されるものの総称です。
⑤ 統合的リスク管理の取組み
当社グループでは、グループを取り巻く様々なリスクをリスク種類毎に定量化し、損失発生時の影響を把握するとともに、定量化していないリスクも含めた事業全体のリスクの適切なコントロールを通じて、経営目標の達成等に繋げる統合的リスク管理に取り組んでいます。
ア.リスクの定量化
当社グループでは、資産運用リスク、保険引受リスク、オペレーショナルリスク等について、内部モデルを用いてリスクを計測しています。具体的には、これらのリスクについて、バリュー・アット・リスクという指標を用いて計測し、計測期間1年、信頼水準99.5%の損失額をリスク量としています。
イ.リスクコントロール
上記の通り定量化したリスク(エコノミック・キャピタル)を、経済価値ベースの資産から負債を差し引いた純資産(サープラス)の一定の範囲内にコントロールするとともに、健全性に係る監督規制も踏まえつつ、財務の健全性、資本の十分性の確保を図っています。
2024年3月末のエコノミック・キャピタルは1兆5,259億円であり、サープラス3兆8,512億円に対して一定の範囲内にコントロールしています。
ウ.ストレステストの実施
定量化したリスクをコントロールしつつ、定量化で捉えきれないリスクにも適切に対応できるよう、幅広くリスクの把握に努めています。幅広く洗い出したリスクや、金融市場の大幅な悪化、大規模災害等、想定を上回る大きなショックが発生した場合の影響を確認するため、ストレステストを実施しています。ストレステストの結果を分析し、事前に対応策等を確認することにより、様々な局面においても健全性を維持できる態勢を構築しています。
(2) 持株会社のリスク
① 生命保険事業の業績への依存等に関するリスク
当社グループは、生命保険事業を主たる事業とする生命保険会社3社の業績に大きく依存しております。そのため、生命保険会社3社の経営状況が大きく変動した場合、又は生命保険会社3社の役割及び位置付けに大きな変更が生じた場合等は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。生命保険会社3社の業績については、当社取締役会等において予算実績差異管理や経営計画等の進捗状況をモニタリングするとともに、必要な助言・支援を実施しております。また、「事業ポートフォリオの多様化・最適化」をグループ長期ビジョンの成長戦略の柱の1つに掲げ、推進しております。
② 配当収入に関するリスク
当社の収入の大部分は、当社が直接保有している生命保険会社3社が当社に対して支払う配当となっております。一定の状況下では、保険業法及び会社法上の規制等により、生命保険会社3社が当社に支払うことができる配当の金額が制限される場合があります。また、生命保険会社3社が十分な利益を計上することができず、当社に対して配当を支払えない状況が生じた場合等には、当社は配当を支払えなくなるおそれがあります。生命保険会社3社の財務の健全性に関するリスクを適切にコントロールするとともに、予算実績差異管理や経営計画等の進捗状況に係るモニタリング等を通じて生命保険会社3社が当社に対して支払う配当の財源が確保できるよう管理しております。
③ 業務範囲の拡大に伴うリスク
当社グループは、今後も持株会社の利点を活かし、法令その他の条件の許す範囲内で、生命保険事業以外の分野に業務範囲を広げていくことを検討しております。当社グループは、拡大する業務範囲について全く経験がないか、限定的な経験しか有していないことがあります。また、業務範囲の拡大が進展しないか、又は当該業務の収益性が悪化した場合等には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。業務範囲の拡大にあたっては、生命保険事業に親和性のある分野を対象にするとともに、当該業務に経験がある団体・企業との提携・協業を通じて事業を推進することで、リスクの抑制を図っております。また、実施計画を事前に検証し、実施後は適宜、モニタリングすることで、適切にリスクコントロールを実施しております。
④ 規制変更のリスク
当社及び当社グループの事業は、保険業法によって規制され、金融庁による監督を受けております。また、その他の規制(法令、実務慣行、解釈運用及び財政政策等の影響を含みます)の制約の下で業務を遂行しております。そのため、将来における規制の変更及びそれらによって発生する事態が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。法令・規制改正情報を継続的に確認し、当社グループの事業運営に与える影響が大きいと想定される変更については、グループ各社と情報を連携しながら影響を検証・対応する態勢としております。
(3) 事業のリスク
直接子会社における主なリスクは以下のとおりです。これらのリスクは当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があり、特に、生命保険事業における保険引受リスク及び資産運用リスクの影響が大きいと考えております。
① 生命保険事業のリスク
ア.保険引受リスク
経済情勢や保険事故の発生率等が、保険料設定時の予測に反して変動することにより損失を被るリスクであり、感染症の拡大等により保険金や給付金等の支払いが急増するリスクも含まれます。
当社グループでは、保険引受が長期にわたって経営に重大な影響を与えることを認識したうえで、保険引受リスクの把握・分析・評価を行い、適切なリスクコントロールを行っています。
保険料の検討段階では、経済情勢の変化や保険事故発生率等の推移を考慮した適切な保険料が設定されていることを検証するとともに、ご加入者の公平性・モラルリスク防止の観点から、保険商品の特性に応じた適切な引受基準を設定しています。販売開始後は、保険事故の発生率等の実績の分析や、責任準備金の積立に関する適切性や十分性の確認を定期的に行い、必要に応じて保険商品の販売方針、引受基準及び保険料率の変更等の措置を講じています。
大規模災害や感染症の大流行が発生した場合に多額の保険金等の支払いが発生するリスクに対して、保険業法に基づく危険準備金を積み立てておりますが、この準備金が実際の保険金等の支払いに十分でない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、再保険契約を活用しております。再保険契約はカウンターパーティー・リスク(再保険会社の信用リスク)を有しており、カウンターパーティーに債務不履行が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があるため、カウンターパーティーの債務不履行時に担保される金額の設定や、再保険の取引量のコントロール等により、カウンターパーティー・リスクを適切に管理しております。
イ.資産運用リスク
資産運用リスクは、市場リスク、信用リスク及び不動産投資リスクに分類し、それぞれの資産特性に応じて適切なリスクコントロールを行っています。
ⅰ 市場リスク
金利、有価証券等の価格、為替等の様々なリスクファクターの変動により、保有する資産・負債(オフバランス資産を含む)の価値が変動することにより損失を被るリスクをいいます。
ⅱ 信用リスク
信用供与先の財務状況の悪化等により、資産(オフバランス資産を含む)の価値が減少ないし消失することにより損失を被るリスクをいいます。
ⅲ 不動産投資リスク
賃貸料等の変動等を要因として不動産に係る収益が減少する、又は市況の変化等を要因として不動産価格自体が減少することにより損失を被るリスクをいいます。
当社では、グループ全体での特定の業種・グループ等に対する与信集中の状況や、問題債権の管理・回収状況等についてモニタリングを行っています。
ウ.流動性リスク
流動性リスクは、資金繰りリスクと市場流動性リスクに区分されます。
ⅰ 資金繰りリスク
事業収支の悪化、巨大災害での資金流出等により資金繰りが悪化し、資金の確保に通常よりも著しく低い価格での資産売却を余儀なくされることにより損失を被るリスクをいいます。
ⅱ 市場流動性リスク
市場の混乱等により市場において取引ができなかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスクをいいます。
当社グループでは、生命保険会社3社が資金繰りの状況をその逼迫度に応じて区分したうえで、各区分に応じた管理方法を定め、一定の流動性を確保するとともに、資金調達のために資産の流動化を円滑に行えるよう体制を整備することにより適切なリスクコントロールを行っています。
エ.オペレーショナルリスク
オペレーショナルリスクは、事務リスク(個人情報の漏えいリスクを含みます)・システムリスク・法務リスク・労務人事リスク・災害リスクに分類して管理しております。
ⅰ 事務リスク
役職員等が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正・情報漏洩等を起こすことにより損失を被るリスクをいいます。当社グループでは、すべての業務に事務リスクが存在することを認識し、グループ各社ごとに事務リスクの管理体制を整備することにより事務リスクの発生防止・軽減に努めています。
また、個人情報の取扱いについては、「個人情報の保護に関する法律」及びその特別法である「行政手続における特定の個人を識別するための番号利用等に関する法律」等に対応し、個人情報保護に関する方針や個人情報保護宣言(プライバシーポリシー)の制定、各種規程・マニュアルの整備、個人情報保護に関する統括推進組織の設置、教育・研修の実施等を通じて、個人情報の保護・情報セキュリティ管理の徹底等に努めるなど、細心の注意を払っております。
万一、個人情報が漏洩した場合には、当社グループへの社会的信用、評判、ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
ⅱ システムリスク
コンピュータシステムのダウンや誤作動等、システムの不備等に伴い損失を被るリスク、又はコンピュータが不正に使用されることにより損失を被るリスクをいいます。当社グループでは、すべての業務を取扱うシステムに、システムリスクが存在することを認識し、システムリスクの管理体制を整備することにより、システムリスクの発生防止・軽減、及びリスク発生時の損失の極小化に努めています。
また、ファイアウォールやウィルス対策ソフト等による不正侵入・不正使用防止等のサイバーセキュリティ対策等を講じ、コンピュータシステムの安定稼動の確保に努めています。
システムに重大な障害が発生した場合には、各種業務において支障をきたすとともに、当社グループへの信頼が損なわれ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
ⅲ 法務リスク
諸法令等の遵守を怠ること等により損失を被るリスクをいいます。当社グループでは、コンプライアンスを推進することにより、リスクの発生防止に努めています。また、訴訟等の紛争が生じることにより損害賠償費用等の損失を被る懸念が生じた場合は、弁護士等と連携することなどにより早期解決を図り、損失の極小化に努めています。
当社グループは、「T&D保険グループCSR憲章」、「T&D保険グループコンプライアンス行動規範」及び「T&D保険グループコンプライアンス態勢整備基本方針」を制定のうえ、役職員に周知し、コンプライアンスの推進に取り組んでおります。また、当社及び直接子会社では、コンプライアンスに関する具体的な実践計画として「コンプライアンス・プログラム」を事業年度ごとに策定・実施し、コンプライアンスの徹底を図っているほか、業務遂行において遵守すべき法令等の解釈などを具体的に解説した「コンプライアンス・マニュアル」を作成し、手引書及び研修教材として活用しております。さらに、内部通報制度として「T&D保険グループヘルプライン」を設置し、グループ内のすべての役職員からコンプライアンス違反等の通報を受け付け、早期発見・未然防止に取り組んでおります。
これらの取組みにもかかわらず、今後当社グループの役職員により、法令・諸規則の違反、詐欺的行為その他不適切な行為等が行われ、それに伴う処分や訴訟提起など、法令等違反に起因した様々な問題が生じた場合には、当社グループの社会的信用、評判、ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
ⅳ 労務人事リスク
雇用問題、労務管理、人材流出、人権問題等、労務・人事上のトラブルが発生防止を含む、人的資本投資への対応が不十分な場合により損失を被るリスクをいいます。当社グループでは、労務人事リスクの存在を認識し、労務人事リスクの管理体制を整備することにより、労務人事リスクの発生防止・軽減に努めています。
ⅴ 災害リスク
大規模災害等に対する予防対策、あるいは発生時の緊急措置体制が整備されていないことにより損失を被るリスクをいいます。
当社グループでは、大地震や風水害等の災害や、感染症の流行を想定し、予防対策及び発生時の緊急対応体制を整備することにより、災害リスクの発生防止・軽減に努めています。
オ.風評リスク
当社グループ又は生命保険業界に関する悪評・信用不安情報等が保険契約者、投資家、マスコミ、インターネット、その他社会一般等に広がり、株価の下落、グループ各社の業績に悪影響が生じる等の事態が発生することにより損失を被るリスクをいいます。当社グループでは、風評リスクに関する情報、噂の収集を図るとともに、風評に接した場合の対応・報告体制を明確にすることにより、風評リスクの発生防止・軽減に努めています。
カ.関連会社等リスク
直接子会社の子会社・関連会社及び事業投資先において収支が悪化あるいは各種リスクが顕在化すること等により損失を被るリスクをいいます。当社グループでは、生命保険会社3社等の子会社・関連会社及び事業投資先における収支の状況、各種リスクの発生状況を把握し、適切なリスクコントロールを行っています。
なお、グループの関連会社の子会社である再保険会社(Fortitude Reinsurance Company, Ltd.等)に対する当社グループの生命保険会社3社による再保険の実施に伴い、当該再保険会社に対するカウンターパーティー・リスクは拡大しておりますが、T&Dユナイテッドキャピタル及び生命保険会社3社におけるリスク管理に加え、グループ全体の再保険取引量の上限設定や担保設定等に基づくモニタリング等により、リスクを適切に管理しております。
キ.その他
ⅰ 競合について
a 生命保険会社の状況
◇競合する生命保険会社
国内で「生命保険業免許」又は「外国生命保険業免許」を受けている会社は、当社グループの生命保険会社3社を含めて、合計42社あります(2024年3月末現在)。これらの保険会社は、生命保険契約を募集・維持管理する上においてはすべて当社グループと競合関係にあるといえ、これらの会社との競争が激化することにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
◇生命保険業界の動向
少子高齢化の進展や労働力人口の減少等により、将来的には新契約高や保有契約高が減少する可能性があります。その中にあって、新たなチャネルを有する保険会社の新規参入や様々な形態での業界再編、戦略的提携が行われており、今後さらに国内市場における業界再編等が進展する可能性があります。また、銀行等による保険販売の全面解禁に見られるように、自由化・規制緩和の動きが今後も進むことが予想されます。その結果、生命保険の商品価格、サービス面等の競争激化が予想され、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
b 生命保険事業における競合関係
民間生命保険会社が提供する生命保険と類似する機能を持つものとして、全国共済農業協同組合連合会、全国労働者共済生活協同組合連合会及び全国生活協同組合連合会等による生命共済等があり、生命保険会社3社が従事している生命保険事業と競合関係にあります。
また、金融機能に関わる分野では、企業年金資産の管理及び運用等の受託については主として信託銀行と、その資産運用の受託については主として投資顧問会社と競合関係にあります。
他社と競合関係にある事業について、生命保険会社3社の競争力が低下した場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
ⅱ 生命保険契約者保護機構に係る負担金について
生命保険契約者保護機構(以下「保護機構」といいます)は、生命保険会社が破綻した場合の保険契約者の保護を充実させるため、保険業法に基づいて、1998年12月に設立された法人であり、国内で営業を行うすべての生命保険会社(外国保険会社の日本支店を含みます)が会員として加入しております。保護機構は、保険契約者等のための相互援助制度として、生命保険会社が破綻した場合に、破綻生命保険会社の保険契約の移転等における資金援助、承継生命保険会社の経営管理、保険契約の引受け、補償対象保険金の支払いに係る資金援助及び保険金請求権等の買取り等を行います。保護機構が行う破綻生命保険会社に係る資金援助等の財源は、会員各社の負担金からまかなうこととなっております。ただし、2027年3月末までに生命保険会社が破綻した場合で、会員各社の負担金だけで資金援助等の対応ができない場合には、国から保護機構に対して補助金を交付することが可能とされております。会員は保護機構に対して負担金を保護機構の定款に定める基準により上限額に達するまで毎年納付しており、支出した年度毎に事業費として計上しております。
なお、保険契約者保護資金の残高が上限額に達していることに伴い、現在は保険契約者保護資金への負担金の拠出は停止されていますが、前記のとおり保護機構からの資金援助を要する生命保険会社の破綻が生じた場合等には当社グループの負担額が増加する可能性があります。
ⅲ 繰延税金資産について
当社グループは、日本の会計基準に基づき、将来の税金負担額の軽減効果を有すると見込まれる額を繰延税金資産として納税主体毎に繰延税金負債と相殺したうえで連結貸借対照表に計上しております。繰延税金資産の計上は、将来の課税所得の見積りに関する前提を含め様々な前提に基づいており、実際の課税所得は前提とは異なる可能性があります。また、今後、会計基準等の変更や、当社グループの将来の課税所得の見積額の変更等により、当社グループの繰延税金資産の一部又は全部の回収が困難であると当社グループが判断した場合、当社グループは、繰延税金資産の計上額を減額する可能性があります。なお、法人税制の改正により、法定実効税率が引き下げとなった場合には、繰延税金資産の計上額を減額することとなります。それらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
ⅳ 格付けについて
生命保険会社の保険金支払能力等に対して、格付機関が格付けを付与しております。今後、生命保険会社3社の支払余力、収益力、資産の質等の悪化により保険金支払能力格付け等が引き下げられた場合又は引き下げの検討を行うことが公表された場合、新契約の減少や解約の増加等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
② その他事業のリスク
ア.アセット・マネジメント事業に関するリスク
当社は、直接子会社であるT&Dアセットマネジメントを通じて、第二種金融商品取引業や投資運用業、投資助言・代理業により、国内外の年金・機関投資家及び個人投資家に資産運用サービスを提供しております。これらのサービスの対価である委託者報酬や運用受託報酬は、投資家より受託した運用資産の残高に基づいているため、市場価格の変動、又は解約が増加するなどにより運用資産残高が減少する場合には、同社の収入が減少し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
運用資産残高は、同社の執行役員会、取締役会での月次報告等により現状を把握し、リスク発生の予兆把握又は影響軽減等の管理に努めております。また、持株会社である当社においても、四半期毎に経営計画進捗状況についての定量面、定性面を含めたモニタリングを行っております。
イ.損害保険事業に関するリスク
当社は、直接子会社であるペット&ファミリー損害保険を通じて、ペット保険事業を営んでおります。同社の市場は拡大傾向にあり、今後も成長ポテンシャルを有していると考えていますが、一方で近年支払保険金の増加傾向が継続しており、収支の圧迫要因となっています。当社は同社の財務基盤強化を目的として、2021年12月に17億円の資本増強を実施しました。今後も同社の財務基盤の強化又は事業拡大のための支援のために、同社への追加投資、その他の経営資源の投入が必要となる可能性があります。また、他社との競合が激しくなった場合、若しくはペット保険への需要が減少した場合、又はペットの伝染病発生等により損害率が上昇した場合には、同社の収益が悪化し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
同社の業績及び財務健全性の基準であるソルベンシー・マージン比率の状況に関しては毎月、また、保険引受リスクに関しては四半期ごとに、同社取締役会等の会議体において確認しており、それらの情報は当社に報告されております。実績が予算に対して著しく悪化している場合には、適宜必要な対応策を講じることとしております。
ウ.クローズドブック事業に関するリスク
クローズドブックとは、新規引受を停止した保険商品の保有契約ブロックを指します。また、クローズドブック事業とは、他の保険会社が事業環境の変化等に応じて事業戦略・商品ポートフォリオを見直した結果として分離されるクローズドブックを取得・集約し、事業の効率化等による価値向上の取組みを通じて収益を獲得する保険会社の事業形態・ビジネスモデルです。なお、欧米では、事業環境の変化等に応じた事業戦略・商品ポートフォリオの見直しの一環として、クローズドブック取引の市場が普及しており、大きな市場となっております。
当社は、直接子会社であるT&Dユナイテッドキャピタルを通じて、クローズドブック専業保険会社であるFGH Parent, L.P. (以下「フォーティテュード社」といいます。)を当社の持分法適用の関連会社としております。
フォーティテュード社において、新たなクローズドブックの取得が順調に進捗しない場合や、保険・運用収支が悪化した場合等には、フォーティテュード社の収益が減少し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループでは、T&Dユナイテッドキャピタルの北米拠点であるT&D United Capital North America Inc.からフォーティテュード社へ取締役を派遣するなど、フォーティテュード社事業への直接的関与・牽制・モニタリングを行うとともに、グループの知見を活用した継続的なリスク管理態勢の強化を行っています。
なお、フォーティテュード社は、ALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)を通じて経済価値ベースの企業価値及び規制上の健全性の安定化を図っておりますが、米国会計基準を採用していることから、会計上は、子会社で保有している再保険貸資産(再保険取引に関連して元受保険会社に留め置かれている社債等に対する債権)等の時価変動を当期の損益として認識する一方で、再保険貸資産に対応する保険負債については対応する資産との間で評価方法に相違(例えば、金利上昇局面では計算前提となる割引率の見直しを行わない等)があり、市場の変動によっては、会計上の利益に一時的な影響を与える場合があります。
そのため、親会社株主に帰属する当期純損益に対し、市場変動等により会計上生じる経済実態を伴わない損益や負債内部留保の超過繰入(戻入)額を調整した「グループ修正利益」をグループの経営実態を表す当社独自の指標として導入しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
2023年度の日本経済は、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し、社会経済活動の正常化が進むなかで、企業収益が全体として高水準となり、雇用・所得環境が改善するなど、景気は緩やかに回復しました。
金融市場につきましては、世界的に根強いインフレ圧力を抑制するため、年度前半は欧米での利上げが続き、海外金利は上昇しましたが、その後は利上げによる経済・物価への影響や将来の利下げ開始時期等を見極める動きから上昇幅を縮めました。また、国内金利については、日本銀行による長期金利誘導目標の修正・撤廃やマイナス金利政策の解除等により上昇しました。こうした中、国内株式は好調な企業業績や円安を背景に日経平均株価が史上最高値を更新するなど大幅に上昇しました。
生命保険業界におきましては、新型コロナウイルス関連の入院給付金等の支払いが収束したものの、為替ヘッジコストの高止まり等の厳しい経営環境が続きました。一方、国内金利の上昇により、一時払円建て保険の販売が増加するなど、新契約業績は前年度より増加しました。
当社グループは、グループ長期ビジョン「Try & Discover 2025」に基づく、グループ成長戦略に取り組み、絶えず変化する人と社会の課題の解決に貢献することで、社会とともに成長する保険グループを目指しております。
つきましては、2023年度の当社グループの主な取組みについてご報告いたします。
①コアビジネスの強化
当社グループは、お客さま本位をグループ共通の価値観として、お客さまの利益に繋がる真摯・誠実かつ公正・適切な企業活動を行うために、「T&D保険グループお客さま本位の業務運営に係る基本方針」を定めており、基本方針の趣旨・精神を尊重する企業文化の醸成に取り組んでまいります。この基本方針のもと、生命保険3社は、それぞれの特化市場における独自のビジネスモデルに基づき、コアビジネスである生命保険事業の強化に取り組みました。
(注)1 企業の健康診断の受診促進の支援、経営者・従業員個々の生活習慣病等の発症リスク分析、継
続的な健康増進の取組みを促す健康促進ソリューションとインセンティブの提供等、健康経営
に必要なPDCAサイクルの実践を一貫してサポートするWebサービスです。
2 「健康経営® 」は、「特定非営利活動法人 健康経営研究会」の登録商標です。
②事業ポートフォリオの多様化・最適化
当社グループでは、生命保険事業が創出する安定的な収益をクローズドブック事業等の成長事業に配賦すること
で、収益源泉の多様化を進めるとともに、新規事業領域の開拓やグループシナジーの追求等により、事業ポートフ
ォリオの最適化を図っております。
(CVCファンドにおける取組み)
グループ長期ビジョンにおいて、新領域を探索し、当社グループのコアビジネスである生命保険事業の強化を目的とする新規事業に取り組む方針としております。この方針のもと、2022年6月に設立したコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)ファンドでは、ヘルスケア・インシュアテック・ペット関連の領域で先進的な技術やビジネスモデルを有するスタートアップ企業へ11件(約14億円)の出資を実施しております(2024年3月末時点)。
③資本マネジメントの進化
当社グループでは、資本コストを踏まえた資本効率性指標(修正ROE、ROEV)をグループ財務KPIに設定し、資本マネジメント・リスクマネジメントの進化を通じて、利益水準、資本効率の向上に取り組んでおります。
(資産運用ポートフォリオの改善)
保有資産のリスク対比リターンの改善を図るため、資産運用ポートフォリオの改善を進めております。当社グループの中でも相対的に長期の負債特性を持つ大同生命では、超長期国債の購入等により金利リスクの削減を継続いたしました。また、太陽生命・大同生命における政策保有株式につきましても、段階的な残高縮減を進めております。加えて、為替ヘッジコストの高止まりが続くなか、太陽生命・大同生命では引き続きヘッジ付外貨建て債券の残高圧縮を行っております。これらの取組みにより、資産運用収益の変動抑制を通じた株主資本コストの低減を図るとともに、成長事業を中心としたリスク対比リターンの高い事業への資本配賦を推進してまいります。
(株主還元の充実)
株主還元につきましては、現金配当において安定的・持続的な増配を目指すとともに、資本充足率の水準や成長投資の可能性、株価水準等を踏まえ、継続的に自己株式取得を実施する方針としております。この方針のもと、2023年度の1株当たり年間配当は、9期連続の増配となる、前年度比8円増配の70円(中間配当35円を含む)を予定しております(注)。また、2023年度の株主還元として、2024年5月に500億円を上限とした自己株式取得を決定いたしました。
(注) 2023年度の期末配当については、2024年6月26日に開催予定の第20回当社定時株主総会において承認
されることを前提としています。
④グループ一体経営の推進
生命保険・損害保険・アセットマネジメント等の事業の垣根を越えた新たなグループシナジーを追求するべく、グループ一体経営の推進及びグループガバナンスの強化に取り組んでおります。
(グループ総力の向上)
全従業員を企業価値向上のための人的資本と認識し、グループ人材交流・グループ内公募等によるグループ全 体のフィールドを活かした人材の育成・活用を進めております。また、グループ内IR・従業員向け株式交付制 度等を通じ、従業員の株主意識を醸成することでグループの持続的成長を図ってまいります。加えて、各社のビジネスモデルを強化しつつ、全体としての総力を引き上げる方針のもと、資産運用、DX(注)・システム、内部監査等、各種機能のグループ目線での高度化にも取り組んでおります。
(注) 進展するデジタル技術とビッグデータ・AIを活用してお客さま・社会のニーズを理解し、新たな価値
の創出に向けてビジネスモデルや組織、業務、企業文化・風土を変革することを指します。
2024年4月の当社設立20周年記念事業の一つとして、初めてのグループCMの放映を2023年4月から開始しております。「すべてのステークホルダーのしあわせに貢献する企業でありたい」という姿勢をこれまで以上に社内外に打ち出すことで、グループ意識の更なる向上を図り、グループ長期ビジョンの達成に向けた歩みを加速してまいります。
(役員体制の強化)
グループ一体経営を推進し、さらに強固なものとするべく、各社の代表取締役社長がよりグループ視点で自社の経営を行うグループ執行役員制度を2024年4月より導入いたしました。当制度の導入により、各社間の連携を強化し、更なるグループシナジーを追求してまいります。
⑤SDGs経営と価値創造
当社グループでは、事業を通じて社会課題を解決し、経済的価値と社会的価値の双方を創出する共有価値の創造により持続可能な社会に貢献するという考えのもと、SDGs経営に取り組んでおります。
(CO2排出量の削減)
当社グループでは、グループ全体で気候変動の緩和と適応に貢献するため、2040年度までに自社のCO2排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)とする長期目標を掲げ、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟しております。2023年4月には、当社、太陽生命、大同生命の本社ビルで使用する電力を100%再生可能エネルギー由来化するなど、使用電力の再生可能エネルギーへの切替えを積極的に進めております。また、当社グループは責任ある機関投資家として、自社の投融資先によるCO2排出量もネットゼロ目標(2050年度まで)の対象としており、目標達成に向けた建設的な対話(エンゲージメント)等の取組みを行っております。
(人権尊重の取組強化)
当社グループでは、「T&D保険グループCSR憲章」において人権の尊重を掲げており、グループすべての役職員及びすべてのステークホルダーの人権を尊重した事業活動を推進しております。その具体的な行動の一つとして「T&D保険グループ人権方針」に基づき、当社グループの事業活動が及ぼす可能性のある人権に対する負の影響を特定し、予防・軽減するために、毎年、人権に関するデューデリジェンスを実施しております。なお、2023年度には人権に関する主要な国際規範を参照し、専門家の知見を得ながら、人権デューデリジェンスの高度化を図っております。
当連結会計年度の業績は、次のとおりです。
(連結収支)
① 経常収益
ア 保険料等収入
保険料等収入は、契約業績好調等により前期比で増加しております。
イ 資産運用収益
資産運用収益は、主に金銭の信託運用益、為替差益の増加等により、前期比で増加しております。
(当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の資産運用収益の状況)
ウ その他経常収益
その他経常収益は、前期に大同生命の既契約終身保険ブロック及びT&Dフィナンシャル生命の既契約一時払終身保険ブロックの再保険取引に伴い責任準備金戻入額が増加したことの反動等により、前期比で減少しております。
② 経常費用
ア 保険金等支払金
保険金等支払金は、前期に再保険取引に伴う再保険料(※)が増加したことの反動等により、前期比で減少しております。
※再保険契約に基づいて再保険会社へ支払う保険料。
イ 責任準備金等繰入額
責任準備金等繰入額は、前期は大同生命の既契約終身保険ブロック及びT&Dフィナンシャル生命の既契約一時払終身保険ブロックの再保険取引に伴い責任準備金戻入となったことの反動等により、前期比で増加しております。
ウ 資産運用費用
資産運用費用は、為替ヘッジコスト上昇等に伴う金融派生商品費用の増加、有価証券売却損の増加等により、前期比で増加しています。
(当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の資産運用費用の状況)
エ 持分法による投資損失
持分法による投資損失は、前期に米国金利上昇に伴いフォーティテュード社において再保険貸資産評価損(※)を計上したことの反動等により、前期比で大幅に減少しております。なお、持分法による投資損失には、フォーティテュード社と生命保険会社3社の再保険取引に係る未実現損益の調整△21億円が含まれます。
※再保険貸資産評価損は、米国会計基準上、再保険貸資産と保険負債の評価方法の相違から発生する一時的な評価損益であり、グループ修正利益の調整に含めております。
③ 経常利益又は経常損失
以上の結果、経常損益は、前期比で大幅に増加し、経常利益に転じております。
④ 特別利益・特別損失
特別利益は、固定資産等処分益の増加等により、前期比で増加しております。
特別損失は、減損損失の増加等により、前期比で増加しております。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は、前期比で大幅に増加し、純利益に転じております。
なお、親会社株主に帰属する当期純利益に対し、市場変動等により会計上生じる経済実態を伴わない損益や負債内部留保の超過繰入(戻入)額を調整したグループ修正利益は、1,035億円(前期比14.7%増)となりました。
(セグメントの収支)
○生命保険会社3社
<太陽生命>
① 経常収益
ア 保険料等収入
保険料等収入は、主に企業保険の増加により、前期比で増加しております。
イ 資産運用収益
資産運用収益は、有価証券売却益の増加等により、前期比で増加しております。
ウ その他経常収益
その他経常収益は、責任準備金戻入額の減少等により、前期比で減少しております。
② 経常費用
ア 保険金等支払金
保険金等支払金は、解約増加に伴い解約返戻金が増加したものの、満期保険金及び年金の一括前払が減少したこと等により、前期比で減少しております。
イ 責任準備金等繰入額
責任準備金等繰入額は、前期比で増加しております。
ウ 資産運用費用
資産運用費用は、有価証券売却損の増加、ヘッジコスト上昇に伴う金融派生商品費用の増加等により、前期比で増加しております。
エ 事業費
事業費は、概ね前期並みとなっております。
③ 経常利益
以上の結果、経常利益は、前期比で増加しております。
④ 特別利益・特別損失
特別利益は、固定資産等処分益の増加により、前期比で増加しております。
特別損失は、概ね前期並みとなっております。
⑤ 当期純利益
以上の結果、当期純利益は、前期比で増加しております。
<大同生命>
① 経常収益
ア 保険料等収入
保険料等収入は、契約業績好調等により、前期比で増加しております。
イ 資産運用収益
資産運用収益は、利息及び配当金等収入の増加や為替差益の増加等により、前期比で増加しております。
ウ その他経常収益
その他経常収益は、前期に既契約終身保険ブロック再保険取引に伴い責任準備金戻入額が増加したことの反動等により、前期比で減少しております。
② 経常費用
ア 保険金等支払金
保険金等支払金は、前期に既契約終身保険ブロック再保険取引に伴い再保険料が増加したことの反動や新型コロナウイルス感染症による保険金・給付金の支払が減少したこと等により、前期比で減少しております。
イ 責任準備金等繰入額
責任準備金等繰入額は、前期は既契約終身保険ブロック再保険取引に伴い責任準備金戻入となったことの反動等により、前期比で増加しております。
ウ 資産運用費用
資産運用費用は、為替ヘッジコスト上昇に伴う金融派生商品費用の増加や、有価証券売却損の増加等により、前期比で増加しております。
エ 事業費
事業費は、概ね前期並みとなっております。
③ 経常利益
以上の結果、経常利益は、前期比で増加しております。
④ 特別損失
特別損失は、主に減損損失の増加により、前期比で増加しております。
⑤ 当期純利益
以上の結果、当期純利益は、前期比で増加しております。
<T&Dフィナンシャル生命>
① 経常収益
ア 保険料等収入
保険料等収入は、一時払商品の販売好調等により、前期比で増加しております。
イ 資産運用収益
資産運用収益は、金銭の信託運用益の増加等により、前期比で大幅に増加しております。
ウ その他経常収益
その他経常収益は、前期に既契約一時払終身保険ブロック再保険取引に伴い責任準備金戻入が増加したことの反動により、前期比で大幅に減少しております。
② 経常費用
ア 保険金等支払金
保険金等支払金は、主に解約返戻金の減少等により、前期比で減少しております。
イ 責任準備金等繰入額
責任準備金等繰入額は、前期は既契約一時払終身保険ブロック再保険取引に伴い責任準備金戻入となったことの反動により、前期比で大幅に増加しております。
ウ 資産運用費用
資産運用費用は、主に金融派生商品費用の減少等により、前期比で減少しております。
③ 経常利益
以上の結果、経常利益は、前期比で減少しております。
④ 特別損失
特別損失は、概ね前期並みとなっております。
⑤ 当期純利益
以上の結果、当期純利益は、前期比で減少しております。
○T&Dユナイテッドキャピタル(連結)
前期に米国金利上昇に伴いフォーティテュード社において再保険貸資産評価損等を計上したことの反動により、親会社株主に帰属する当期純損益は、前期から2,100億円増加し、24億円の親会社株主に帰属する当期純損失(前期は2,124億円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。 なお、修正利益については、前期から25億円減少し、57億円(前期比30.4%減)となりました。
なお、フォーティテュード社への出資及び出再の状況は以下のとおりです。
① 出資
※前事業年度末と当事業年度末の出資額合計の差額は、前事業年度末の出資コミットメント額の予約時と実行時の為替レート差によるものです。
② グループ内出再(出再責任準備金残高)
※出再責任準備金の大部分について、担保を設定しており、フォーティテュード社の信用リスクが顕在化した場合の影響は限定的と考えております。
※再保険取引のリスク管理については、「3 事業等のリスク-(3)事業のリスク-①生命保険事業のリスク-ア.保険引受リスク」をご参照ください。
(生命保険会社3社の契約業績等(単体))
生命保険会社3社(合算)の契約業績は以下のとおりであります。
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約年換算保険料(新契約には、転換による純増加を含みます。以下同じ)は、個人定期保険や円貨建て一時払商品等の主力商品の販売好調により1,983億円(前期比31.5%増)となり、前期比で増加しました。医療保障・生前給付保障等の第三分野の新契約年換算保険料についても、419億円(同9.5%増)となり、前期比で増加しました。
また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約年換算保険料は1兆6,336億円(同4.4%増)となり、前期比で増加しました。
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約高(新契約には、転換による純増加を含みます。以下同じ)は、4兆4,902億円(同11.0%増)となり、前期比で増加しました。
また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約高は51兆7,569億円(同2.0%減)となり、前期比で減少しました。
以下、生命保険会社3社の契約業績に重要な影響を与えた要因について説明いたします。
① 太陽生命
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約年換算保険料は、前期の新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療保険の販売増加の反動等により、324億円(前期比2.7%減)となり、前期比で減少しました。医療保障・生前給付保障等の第三分野の新契約年換算保険料についても、194億円(同6.1%減)となり、前期比で減少しました。また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約年換算保険料は、5,641億円(同1.5%減)となり、前期比で減少しました。
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約高は、2,409億円(同1.6%増)となり、前期比で増加しました。また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約高は11兆4,618億円(同11.8%減)となり、前期比で減少しました。
② 大同生命
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約年換算保険料は、お客さまの幅広い保障ニーズにお応えする丁寧なコンサルティング営業を実践したこと等により、735億円(前期比9.8%増)となり、前期比で増加しました。医療保障・生前給付保障等の第三分野の新契約年換算保険料についても、182億円(同5.0%増)となり、前期比で増加しました。また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約年換算保険料は、8,064億円(同0.5%増)となり、概ね前期並みとなりました。
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約高は、3兆3,822億円(同8.4%増)となり、前期比で増加しました。また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約高は36兆3,432億円(同0.7%減)となり、概ね前期並みとなりました。
③ T&Dフィナンシャル生命
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約年換算保険料は、円貨建て一時払商品等の主力商品の販売好調により、923億円(前期比82.7%増)となり、前期比で増加しました。医療保障・生前給付保障等の第三分野の新契約年換算保険料についても、43億円(同-%)となり、前期比で増加しました。また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約年換算保険料は、2,630億円(同38.3%増)となり、前期比で増加しました。
当連結会計年度の個人保険及び個人年金保険を合計した新契約高は、8,671億円(同26.1%増)となり、前期比で増加しました。また、当連結会計年度末の個人保険及び個人年金保険を合計した保有契約高は3兆9,517億円(同21.3%増)となり、前期比で増加しました。
以下、[保険引受業務] ア 保有契約高明細表、イ 新契約高明細表、ウ 保有契約年換算保険料明細表、エ 新契約年換算保険料明細表、オ 保険料明細表及びカ 保険金等明細表に記載の各数値は、太陽生命、大同生命及びT&Dフィナンシャル生命の合算数値であります。
当連結会計年度末のセグメント別保有契約高
(注) 1 個人年金保険、団体保険(年金特約)の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資(ただし、変額個人年金保険は、責任準備金(最低保証に係る部分を除く))と年金支払開始後契約の責任準備金額の合計額であります。
2 団体年金保険の金額は、責任準備金額であります。
3 その他は、財形保険、財形年金保険、医療保障保険、就業不能保障保険、受再保険の合計で表示しております。なお、各々の計上基準については、財形保険、財形年金保険の金額は、責任準備金額(財形年金保険(財形年金積立保険を除く)の年金支払開始前契約は年金支払開始時における年金原資)、医療保障保険の金額は入院給付金日額、就業不能保障保険の金額は就業不能保険金月額であります。
当連結会計年度のセグメント別新契約高
(注) 1 個人保険及び個人年金保険は、転換による純増加を含みます。
2 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
3 団体年金保険の金額は、第1回収入保険料であります。
4 その他は、財形保険、財形年金保険、医療保障保険、就業不能保障保険、受再保険の合計で表示しております。なお、各々の計上基準については、財形保険、財形年金保険の金額は、第1回収入保険料(財形年金保険(財形年金積立保険を除く)の年金支払開始前契約は年金支払開始時における年金原資)、医療保障保険の金額は入院給付金日額、就業不能保障保険の金額は就業不能保険金月額であります。
当連結会計年度末のセグメント別保有契約年換算保険料
(注) 1 年換算保険料とは、1回当たりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間で除した金額)。
2 医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除く。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含む。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
当連結会計年度のセグメント別新契約年換算保険料
(注) 転換による純増加を含みます。
当連結会計年度のセグメント別保険料
(注) その他は、財形保険、財形年金保険、医療保障保険、就業不能保障保険、受再保険の合計で表示しております。
前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
当連結会計年度のセグメント別保険金等
保険金
年金
給付金
解約返戻金
その他返戻金
(注) その他は、財形保険、財形年金保険、医療保障保険、就業不能保障保険、受再保険の合計で表示しております。
(資本の財源及び資金の流動性)
資本の財源及び資金の流動性については、「(2)財政状態の状況」及び「(3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は17兆2,071億円(前年度末比2.6%増)となりました。
主な資産構成は、公社債を中心とする有価証券12兆2,809億円(同4.2%増)、貸付金1兆7,433億円(同0.8%減)、金銭の信託1兆1,557億円(同5.1%減)、現金及び預貯金1兆1,376億円(同0.3%減)、有形固定資産3,780億円(同1.2%減)であります。
負債合計は15兆7,971億円(同0.1%増)となりました。その大部分を占める保険契約準備金は14兆3,017億円(同1.7%増)となっております。
純資産合計は1兆4,099億円(同41.9%増)となりました。純資産の部中、その他有価証券評価差額金は6,681億円(同143.1%増)となっております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、保険料等収入によるキャッシュイン、保険金等支払によるキャッシュアウトが大半を占めております。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前期から5,703億円収入増の2,627億円の収入となりました。これは主に、保険料等収入の増加及び保険金等支払金の減少によります。
なお、保険料等収入は、前連結会計年度から2,963億円増加し、2兆4,745億円となりました。
保険金等支払金は、前連結会計年度から3,828億円減少し、2兆1,651億円となりました。
当社グループの投資活動によるキャッシュ・フローは、収入保険料の運用に係るキャッシュ・フローが中心です。主な資産運用に関するキャッシュ・フローは有価証券の取得・売却等、資金の貸付・回収等です。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、前期から8,462億円支出増の1,802億円の支出となりました。
これは主に、前期に大同生命の既契約終身保険ブロック及びT&Dフィナンシャル生命の既契約一時払終身保険ブロック再保険取引に伴い有価証券の売却・金銭の信託の解約を行い投資活動によるキャッシュ・フローが6,659億円の収入となっていたことの反動によります。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、前期から273億円支出減の792億円の支出となりました。
支出減少の主な要因は、前期に社債償還による支出370億円を行ったこと等によります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前期から64億円増加し、1兆1,720億円(前年度末残高は1兆1,655億円)となりました。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社グループの主たる事業である生命保険業における業務の特殊性により、該当する情報がないため記載しておりません。
(5)その他重要事項
生命保険会社3社合算の基礎利益は1,258億円(前期比35.2%増)、順ざや額は393億円(同29.4%減)となりました。
当連結会計年度末の連結ソルベンシー・マージン比率は995.7%となりました(前連結会計年度末は920.1%)。また、連結実質純資産は2兆222億円となりました(同1兆8,691億円)。
生命保険会社3社のその他重要事項は以下のとおりです。
① 太陽生命
基礎利益は、新型コロナウイルス感染症による給付金の支払が減少したこと等により407億円(前期比91.4%増)となりました。順ざや額は、為替ヘッジコストの増加等により195億円(同53.6%減)となりました。
ソルベンシー・マージン比率は716.2%(前年度末は580.9%)となりました。また、実質純資産額は7,394億円(同6,177億円)となりました。
② 大同生命
基礎利益は、順ざやの増加や新型コロナウイルス感染症による保険金・給付金の支払が減少したこと等により865億円(前期比15.3%増)となりました。順ざや額は、利息及び配当金等収入の増加や、前期に実施した既契約終身保険ブロック再保険取引等に伴う予定利息負担の減少等により209億円(同33.7%増)となりました。
ソルベンシー・マージン比率は1,193.5%(前年度末は1,116.1%)となりました。また、実質純資産額は1兆3,126億円(同1兆2,632億円)となりました。
③ T&Dフィナンシャル生命
基礎利益は、△14億円(前期は△32億円)となりました。逆ざや額は10億円(前期比44.1%減)となりました。
ソルベンシー・マージン比率は567.6%(前年度末は659.4%)となりました。また、実質純資産額は241億円(同645億円)となりました。
(当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の基礎利益)
(当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の順ざやの状況)
(注) 1 順ざや額は、次の算式で算出しております。
順ざや額=(基礎利益上の運用収支等の利回り-(期中)平均予定利率)×一般勘定(経過)責任準備金
2 基礎利益上の運用収支等の利回りは、基礎利益に含まれる運用収支(一般勘定分の資産運用損益)から契約者配当金積立利息繰入額を控除したものの、一般勘定(経過)責任準備金に対する利回りのことであります。
3 (期中)平均予定利率は、予定利息の一般勘定(経過)責任準備金に対する利回りのことであります。
4 一般勘定(経過)責任準備金は、危険準備金を除く一般勘定部分の責任準備金について、以下の方式で算出しております。
一般勘定(経過)責任準備金=(期始責任準備金+期末責任準備金-予定利息)×1/2
(当連結会計年度末(2024年3月31日)のソルベンシー・マージン比率の状況)
(当連結会計年度末(2024年3月31日)の実質純資産額の状況)
(参考1)固有指標の説明
1.基礎利益
基礎利益とは生命保険本業における期間収益を示す指標の一つであります。
生命保険会社においては、株式、債券、為替市況等の運用環境が変動した場合、有価証券売却損益、有価証券評価損及び為替差損益が発生し、経常利益に大きな影響を与えることがあります。そのため、生命保険会社各社は、ディスクロージャー推進の一環として一般社団法人生命保険協会が定める「ディスクロージャー開示基準」に基づき、2001年3月期決算から、保険本業の期間収益を示す指標として、基礎利益を公表しております。基礎利益は、「経常利益」から有価証券売却益、有価証券売却損、有価証券評価損等の「キャピタル損益」と危険準備金戻入額、危険準備金繰入額、貸付金償却等の「臨時損益」を控除したものであります。基礎利益については、損益計算書に項目が設けられていませんが、参考情報として開示しております。
2.順ざや・逆ざや
生命保険会社は、保険契約者が支払う保険料を計算するにあたって、あらかじめ資産運用による一定の運用収益を見込み、その分保険料を割り引いて計算しております。この割引率を予定利率といいます。そのため、保険会社は、毎年割り引いた分に相当する金額(予定利息)を運用収益等で確保する必要があります。
予定利息を実際の運用収益等でまかなえている状態を「順ざや」といい、まかなえていない状態を「逆ざや」といいます。
3.責任準備金
責任準備金とは、将来の保険金等の支払いを確実に行うため、保険料や運用収益等を財源として積み立てる準備金のことで、生命保険会社の負債の最も大きな部分を占めております。
なお、責任準備金は期末において繰入と戻入とを相殺した差額を損益計算書に計上します。すなわち、繰入額が戻入額を上回る場合はその差額を責任準備金繰入額として経常費用の科目に表示し、戻入額が繰入額を上回る場合はその差額を責任準備金戻入額として経常収益の科目に表示します。
4.ソルベンシー・マージン比率
ソルベンシー・マージンは、大地震や株の暴落等、通常の予測を超えて発生するリスクに対応するための財務的な余裕である「支払余力」を意味しております。保険会社は、将来の保険金等の支払いに備えて通常予測できる範囲のリスクについては、責任準備金を積み立てて対応しておりますが、ソルベンシー・マージンは、これを超えるリスクへの備えとなります。ソルベンシー・マージン比率は、「ソルベンシー・マージン総額」(純資産の部合計、価格変動準備金、危険準備金、一般貸倒引当金等)を、通常の予測を超えて発生するリスクを計量化した「リスクの合計額」の2分の1で割ることにより算出される比率であります。
ソルベンシー・マージン比率が200%以上であれば、健全性について一つの基準を満たしていることを示しております。
5.実質純資産額
実質純資産額とは、貸借対照表の資産を基礎として計算した額(有価証券・不動産等について一定の時価評価を行ったもの)から負債を基礎として計算した額(負債の額から価格変動準備金・危険準備金等の額を差し引いた額)を控除した金額をいい、金融庁による早期是正措置において、実質的な債務超過の判定基準として用いられる行政監督上の指標の一つです。
(参考2) 連結ソルベンシー・マージン比率
(注) 1 上記は、保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
2 「最低保証リスク相当額 R7」は、標準的方式を用いて算出しております。
太陽生命
(注) 1 保険業法施行規則第86条、第87条及び平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出しております。
2 「最低保証リスク相当額 R7」は、標準的方式を用いて算出しております。
大同生命
(注) 1 保険業法施行規則第86条、第87条及び平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出しております。
2 「最低保証リスク相当額 R7」は、標準的方式を用いて算出しております。
T&Dフィナンシャル生命
(注) 1 保険業法施行規則第86条、第87条及び平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出しております。
2 「最低保証リスク相当額 R7」は、標準的方式を用いて算出しております。
①市場整合的エンベディッド・バリューについて
エンベディッド・バリュー(Embedded Value、以下、EV)とは、株主に帰属すると考えられる価値であり、貸借対照表などから計算される「修正純資産」と、保有契約に基づき計算される「保有契約価値」を合計したものであります。EVは、生命保険会社の企業価値を評価する指標の一つとされております。
現行の生命保険会社の財務会計では、新契約獲得から会計上の利益の実現までにタイム・ラグがあります。
一方、EVでは、将来の利益貢献が新契約獲得時に認識されるため、財務会計による財務情報を補強することができると考えられております。
当グループでは、欧州の主要保険会社のCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)から構成されるCFOフォーラムによって公表されたEV計算の基準である「The European Insurance CFO Forum Market Consistent Embedded Value Principles(※)(MCEV原則)」に基づいたEV(以下、MCEV)を開示しております。(※)Copyright© Stichting CFO Forum Foundation 2008
②MCEV及びGroup MCEV
(注) 1 当グループの生命保険事業を対象にしております。
2 当グループの生命保険以外の事業に係る会計基準に基づく純資産であります。
対象事業のMCEVの内訳
(注) 当年度中に販売した新契約(転換契約を含む)の年度末における価値を表したものであります。
当事業年度末のMCEVは、新契約の獲得、内外株価上昇および国内金利上昇等により5,429億円増加し、3兆9,832億円となりました。修正純資産は内外株価上昇等により増加し、保有契約価値は新契約の獲得、国内金利上昇等により増加しました。
新契約価値は52億円減少し、1,617億円となりました。
③各社別のMCEV
(注) T&Dフィナンシャル生命の新契約価値は契約獲得時点の評価としております。
④第三者機関の意見
当グループは、保険数理に関する専門的知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、当グループのMCEV及びGroupMCEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。
(注) 「円貨額が確定した外貨建資産」は、為替予約等が付されていることにより決済時の円貨額が確定し、当該円貨額を資産の貸借対照表計上額としているものであります。
(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成は、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況-1 連結財務諸表等-(1)連結財務諸表」の「会計方針に関する事項」に、重要な見積りは「第5 経理の状況-1 連結財務諸表等-(1)連結財務諸表」の「重要な会計上の見積り」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、会計上の見積りについては、財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき、その現況が継続するとの仮定により、見積りを実施しております。
① 責任準備金の積立方法
保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。保険料及び責任準備金の算出方法書に記載された計算前提(予定発生率・予定利率等の基礎率)が、直近の実績と大きく乖離することにより、将来の債務履行に支障を来すおそれがあると認められる場合には、追加の責任準備金を計上する必要があります。
② 支払備金の積立方法
保険業法第117条及び保険業法施行規則第72条に基づき、連結会計年度末時点において支払義務が発生したもの、又は、まだ支払事由の報告を受けていないものの支払事由が既に発生したと認められるもののうち、それぞれ保険金等の支出として計上していないものについて、支払備金を積み立てております。
既発生未報告支払備金(まだ支払事由の発生の報告を受けていないが保険契約に規定する支払事由が既に発生したと認める保険金等をいう。以下同じ。)については、新型コロナウイルス感染症と診断され、宿泊施設又は自宅にて医師等の管理下で療養をされた場合(以下「みなし入院」という。)の入院給付金等を支払う特別取扱を2023年5月8日以降終了したことにより、平成10年大蔵省告示第234号(以下「IBNR告示」という。)第1条第1項本則に基づく計算では適切な水準の額を算出することができないことから、IBNR告示第1条第1項ただし書の規定に基づき、以下の方法により算出した額を計上しております。
(計算方法の概要)
IBNR告示第1条第1項本則に掲げる全ての連結会計年度の既発生未報告支払備金積立所要額及び保険金等の支払額から、みなし入院に係る額を除外した上で、IBNR告示第1条第1項本則と同様の方法により算出しております。
なお、前連結会計年度末においては、当該みなし入院に係る額の代わりに、重症化リスクの高い方以外のみなし入院に係る額を除外しておりましたが、第1四半期連結会計期間中にみなし入院の入院給付金等の取扱いを終了したことにより、当該みなし入院に係る額を除外して算出する方法に見直しております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、支払備金の計上額が当初の見積り額から変動する可能性があります。
③ 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、年金資産の期待運用収益率や将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。このため、主要な仮定である割引率や長期期待運用収益率等が変動した場合、退職給付に係る資産・負債に重要な影響を与える可能性があります。
④ 固定資産の減損処理
固定資産については、資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に、その差額を減損損失に計上しております。回収可能価額は、資産グループの時価から処分費用見込み額を控除した正味売却価額と割引後将来キャッシュ・フローとして算定される使用価値のいずれか大きい方としております。今後、主要な仮定である保険営業活動から生じる損益や投資用資産の収支見込みが悪化し、割引前将来キャッシュ・フローが変動した場合、新たに減損損失が発生する可能性があります。なお、固定資産の減損処理に係る基準は「第5 経理の状況-1 連結財務諸表等-(1)連結財務諸表」の「連結損益計算書関係」にも記載しております。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際し、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積り額が減少した場合は繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。なお、当社及び生命保険会社3社を含む一部子会社は、当社を通算親会社とするグループ通算制度を適用しております。そのため、グループ通算制度を適用するグループ全体の連結課税所得の見積りに依存しますので、その見積り額が減少した場合は繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
⑥ 有価証券の減損処理
当社グループは、資産運用を目的として株式等の有価証券を保有しております。売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価もしくは実質価額が著しく下落したものについては、合理的な基準に基づいて有価証券の減損処理を行っております。なお、減損処理に係る合理的な基準は「第5 経理の状況-1 連結財務諸表等-(1)連結財務諸表」の「有価証券関係」の注記に記載しております。将来、金融市場の変動により、多額の有価証券評価損を計上する可能性があります。
⑦ 金融商品の時価の算定方法
有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、原則として市場価格に基づいて算定しておりますが、市場価格がない場合には合理的に算定された価額によっております。時価の算定方法については、「第5 経理の状況-1 連結財務諸表等-(1)連結財務諸表」の「金融商品関係」に記載しております。将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、見積り額は変動する可能性があります。
⑧ 貸倒引当金の計上基準
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、資産の自己査定基準及び償却・引当基準に則り、債務者の状況に応じ、回収不能見積り額を計上しております。将来、債務者の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。
該当事項はありません。