第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社は、企業としての利益追求による社会への貢献はもとより、希少疾患や難治性疾患治療のための医薬品開発に取り組み、医療格差をなくし、きめ細かく人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献することで、こころ豊かで安心できる社会環境を提供すべく、日々研究開発に努めております。また当社は、「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を目標に掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活用し、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定めております。「こどもの力になること、こどもが力になれること」を創薬活動のキーワードとして、小児疾患医療の充実はもとより、SHEDのような若年性由来の幹細胞を活用することで様々な疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた全世代の方に向けて、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。

 

(2) 経営戦略等

 当社の経営戦略は、研究開発の対象領域を抗体医薬に代表されるバイオ医薬品と定め、これを大学等での研究から見出された医薬品のシーズを育成するバイオ新薬事業と新しいカテゴリーとして設定されたバイオ医薬品のジェネリックと言えるバイオ後続品事業、将来に向けて成長性の高い事業を拡充する目的で再生医療分野を中心とした細胞治療事業(再生医療)の3事業を柱としています。比較的開発リスクが低く一定の収益が見込めるバイオ後続品事業と、開発リスクはあるが高い収益が見込めるバイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)を両輪として、安定性と成長性を兼ね備え、相互補完が可能となる事業の推進を通して、より盤石な経営体制を構築してまいります。

 バイオ後続品事業については、バイオ医薬品の1品目のグローバル市場は数千億円規模と非常に大きく、さらに、各国の医療行政において後発品への要求が高まっていることから、当社はこの分野にグローバルに参入することを目指します。また、外部委託を活用するバーチャル型で身軽な経営を行います。また、品目の選定は、製薬企業の要望を捉えて開発方針を企画し、共同開発の形式で製薬企業などに原薬や製剤を販売し、利益を上げてまいります。

 バイオ新薬事業については、大学、研究機関及び事業会社と共同研究や研究会を立ち上げ、効果的かつ効率的に抗体医薬や核酸医薬などのバイオ医薬品シーズの探索を行います。さらに、自社における研究開発により付加価値を高めた上で、製薬企業にライセンスアウトし、収益に結びつけてまいります。

 細胞治療事業(再生医療)については、再生医療等製品を始めとした最先端の医学・医療分野における事業展開となることが想定され、新たな事業モデルの構築が求められるため、より多面的な事業評価や採算性評価等が必要となります。このうち、当社は再生医療における細胞治療事業を戦略的領域と定めており、SHED及びCSCを軸とした研究開発活動を展開してまいります。そのほかにも、様々な大学、研究機関及び事業会社と情報交換を行い、効果的かつ効率的に事業の立ち上げを行うべく積極的に取り組んでまいります。

 

(3) 経営環境

 我が国の医薬品業界においては、規制緩和や社会保障費の削減に向けたジェネリック医薬品の普及促進策など、業界を変えていくような様々な施策が、政府の成長戦略と相俟って具体化され始めておりますが、既にこの流れは当社開発品の販売状況にも見られ、今後も続くものと思われます。さらに、海外の先進国においてはジェネリック医薬品の市場シェアの拡大傾向が日本よりも顕著に表れており、このような状況は当社にとってビジネスチャンスであります。この急速に高まる需要に応えるべく、より積極的にバイオ後続品開発を進め、新たなバイオ後続品の上市を達成することが経営の安定化につながります。また、国内外の製薬企業は、罹患者数の多い疾患に対しては既に充分な医薬品及び治療方法の提供がなされていることから、希少疾患・難病に対しての研究開発活動に注力するなど医薬品業界の研究開発活動の動向は変化しつつあります。当社は、これらの流れを注視しつつ、自らの所有する技術・知見等に適した疾患及び市場動向を見極めながら、限られた経営資源を効果的に使いながらバイオ新薬事業や細胞治療事業(再生医療)を推進してまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、バイオ新薬事業とバイオ後続品事業、加えてバイオ医薬品の他に大学等での研究から見出された再生医療等製品のシーズ探索、研究を行う細胞治療事業(再生医療)を事業の柱としております。これらは共に医薬品及び再生医療等製品の開発であるため、膨大な時間と資金を必要とし、収益計上できるまでの期間が非常に長く、短期的な経営指標で実績評価を行うことが適さないビジネスであります。このため、目標とする短期的な経営指標は設定しておりませんが、中長期的には、テーマごとに開発スケジュールを設定し、スケジュールの達成度を指標とし、これに伴う研究開発投資について効率性を慎重に検討しつつ経営を進めてまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① バイオ新薬の開発

バイオ新薬事業では、ライセンスアウト先が望むデータを揃え、ネットワークやビジネスチャンスを最大限に活用して、早期にライセンスアウトを実現させることが重要であると考えております。

なお、パイプライン拡充のための具体的な取組み等は、以下のとおりであります。

 

イ 抗RAMP2抗体(開発番号:GND-004、対象疾患領域:眼科疾患、がん)への取組み

次世代型抗体医薬品等の研究開発を進めた結果、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する抗RAMP2抗体を創出することに成功しました。本開発品は、眼疾患の治療並びにがん領域における抗腫瘍効果を期待できる医薬品候補として、2017年9月に当該抗体に関する特許を出願し、2018年9月には国際特許出願を行いました。今後は、知的財産権の確保を図りながら研究開発を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。

 

ロ 新規抗体

2020年1月には、がん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約を、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約を、それぞれ締結いたしました。今後は共同研究を進め、製薬企業へのライセンスアウトを目指してまいります。

 

ハ バイオ新薬候補品の充実

バイオ新薬は、研究活動によって新薬のシーズを見つけ、次に、細胞レベル・小動物レベルでの有効性を確認した上で特許などの産業財産権による権利化を行い、ここで初めて公開することができます。引き続き、将来顕在化しそうな疾患領域や現時点では満足な治療法がない疾患領域を見極め、外部機関との連携も活かしながら研究開発を行っていく所存であります。

 

② バイオ後続品の開発

当社は、フィルグラスチムバイオ後続品の開発において培った経験とノウハウを発展的に応用することで、新たなバイオ後続品の開発を効率的かつ優位に進めることが可能であると考えております。今後、バイオ後続品事業は世界的な競争により拍車がかかると想定されることから、開発品目の選定は多面的な評価をした上で慎重に行い、選定した開発品目については開発リスク低減のために早期に提携関係を構築し、効率的な開発を心掛けてまいります。バイオ後続品の上市に伴う新たな収益源を確保することで、将来の財務基盤の強化に努めてまいります。

なお、パイプライン拡充のための具体的な取組み等は、以下のとおりであります。

 

イ ペグフィルグラスチムバイオ後続品(開発番号:GBS-010、対象疾患領域:がん)への取組み

当該先行品は、フィルグラスチムにPEG(ポリエチレングリコール)を修飾することで、投与回数を減らし効果の持続性を増すなど、高付加価値を付与した次世代型フィルグラスチムであります。当該医薬品の原料が既に日本で上市しているフィルグラスチムであることから、フィルグラスチムバイオ後続品を有する点で当社は他社に比してペグフィルグラスチムの開発を進める上で優位性があります。また、当社は当該バイオ後続品の原薬製造プロセスを既に確立し、先行品との同等性・同質性に関する良好なデータを得ておりますので、これを訴求データとして国内外の製薬企業との早期の提携を実現すべく、今後も引き続き上市に向けて鋭意取り組んでまいります。

 

ロ がん治療領域のバイオ後続品への取組み

がんの治療法は日進月歩であり、バイオ医薬品への期待は高く、現在、世界の医薬品市場の上位一角を占めるのはがん治療に係るバイオ医薬品です。当社は、2016年12月に持田製薬㈱とのがん治療領域におけるバイオ後続品の共同事業化契約を締結し、開発を開始いたしました。今後は相互協力の下、本開発品の上市に向けて鋭意取り組んでまいります。

 

ハ ラニビズマブバイオ後続品(開発番号:GBS-007、対象疾患:眼疾患)への取組み

世界的な高齢化社会の進展や生活習慣の変化に伴い、黄斑変性症等の眼疾患の患者が増加しております。これらの治療薬としてバイオ医薬品が注目されておりますが、当該領域のバイオ医薬品は高額であり、様々な患者様にご使用頂くためにもバイオ後続品の開発の社会的必要性を感じております。当社が千寿製薬㈱と共同開発を行ってきたラニビズマブバイオ後続品について、2021年9月27日付で同社が国内での製造販売承認を取得し、2021年12月9日に上市されました。一方で、今後の事業拡大を目指して国内における本開発品の適応症追加、より市場規模の大きい海外展開を検討・推進しております。

 

ニ アフリベルセプトバイオ後続品(開発番号:GBS-012、対象疾患:眼疾患)への取組み

当社は、2019年12月に癸巳化成㈱とアフリベルセプトバイオ後続品に関する事業化を目的とした共同開発契約を締結いたしました。今後は、当該バイオ後続品の高産生株を用いて原薬の製造プロセスを確立しつつ、この原薬を基に製剤開発、非臨床試験、臨床試験、製造販売承認取得、販売等で必要となる第三者提携先を探索し、当該バイオ後続品の事業化に向けた体制構築を進めてまいります。

 

③ 細胞治療事業(再生医療)における再生医療等製品の開発

 当社は、将来の成長性を追求するため、再生医療における細胞治療分野をターゲットとした再生医療等製品の開発を進めております。次世代医療である再生医療は、未だ根治が望めない重篤な疾患に対して、新たな治療法を提供できる可能性があります。当社はSHED及びCSCを研究ソースとして、様々な大学等の研究機関との共同研究又は企業との提携を行い、新たな治療法を待つ患者様へ一日でも早く貢献するべく、研究開発活動を推進しております。

 なお、パイプライン拡充のための具体的な取組み等は、以下のとおりであります。

 

イ CSCを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:JRM-001、対象疾患:小児先天性心疾患)

 当社と㈱日本再生医療は、小児先天性心疾患を軸とした重篤な心疾患に対する新たな治療法を提供するため、CSCと呼ばれる心臓内に存在する多能性のある体性幹細胞を用いた世界初となる再生医療等製品の実用化を目指し研究開発を推進しております。生まれながらに心臓に何らかの異常をもつ小児先天性疾患は新生児100人に1人の割合で発症するとされ、当該開発品はこれらの症状を改善するために、手術で得られた心臓の切片から、高い自己複製能力を持ち、心臓にまつわる心筋細胞へ分化することができるCSCを培養し、これらを患者様本人へ投与することで心機能の改善を図るものであります。なお、本開発品は、同じ心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う㈱日本再生医療の株式譲渡を2022年4月4日付で決議・実行し当社の連結子会社ではなくなりましたが、今後、当社は開発活動の支援という形で開発に関与いたします。

 

ロ SHEDを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-101、対象疾患:口唇口蓋裂)

 口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で、発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る先天性疾患の一つです。SHEDは、発生学的に神経堤細胞由来であり、優れた骨再生能力を有していることから、唇顎裂の再生医療には最適な細胞ソースであるため、当社はORTHOREBIRTH㈱が保有する綿状の人工骨充填材レボシスをSHEDと組み合わせることで新たな治療法を創出できると考え、同社と共同研究契約を締結し、開発活動を行っております。

 

ハ SHEDを活用した再生医療等製品の開発(開発番号:GCT-102、対象疾患:腸管神経節細胞僅少症)

 腸管神経節細胞僅少症は、腸管の蠕動運動を司る神経細胞の不足により腸閉塞症状を示す難病で、効果的な治療方法がいまだ確立されていません。SHEDは腸管神経節細胞と同じ神経堤由来の細胞であるため、投与されたSHEDが不足している腸管神経節細胞を補う働きをすることにより、腸管蠕動運動が回復することが期待できます。当社は、当該疾患を対象とした再生医療等製品を開発するべく、持田製薬㈱と共同事業化契約を締結し、当社が保有するSHEDと持田製薬㈱の消化器領域における知見と実績を組み合わせることで、新たな治療法の創出を目指してまいります。

 

ニ SHEDを活用した再生医療等製品開発のための大学との共同研究

 当社は、これまでのSHEDの疾患に対する適性の見極めの結果、神経及び骨疾患などの分野で新たな治療法を提供できる可能性を複数のアカデミア及び企業に評価いただき、それぞれの分野で研究開発活動を推進しております。複数のアカデミア及び企業と研究開発を進めていく中で、SHEDを基盤とした治療法開発の可能性に関して着実に成果が得られつつあり、当社の成長ドライバーであるSHEDを活用した世界初の再生医療製品の創出を目指してまいります。また、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との間で進めている脳性まひに対する取り組みに関して、世界で初めて慢性期脳性まひモデルの運動障害の改善をSHEDの投与で確認したことを基に、2022年10月には名古屋大学と脳性まひ治療に関する特許の共同出願や、同年11月に開催された「第66回日本新生児成育医学会・学術集会」において、名古屋大学より当該研究成果を発表する等、各アカデミアとの連携を通して進めてまいります。

 

ホ SHEDを活用した強化型細胞治療「デザイナー細胞」の開発

 デザイナー細胞とは、既存の細胞医薬に新たな機能を付加し、「より高い治療効果」や「疾患部位に細胞を届けやすくする指向性の強化」といった効果を狙うもので、根治が難しい疾患等に対する次世代の新たな医療として注目され、世界的にも開発が進められている分野です。当社は、2021年9月8日にナノキャリア㈱と共同研究契約を締結、さらには同12月6日には㈱バイオミメティクスシンパシーズと、疾患指向性のあるSHEDを取得可能とする新規培養法の開発に係る委託開発契約をそれぞれ締結し、開発活動を本格化させております。

 

④ 医薬品開発事業全般における優位性の確保

イ 開発品目の優先順位

上述のとおり当社は主要事業のいずれにおいても複数の開発品目を保有しており、限られた人員と資金を効率的に投下して最大限の成果を上げられるよう日々深慮し、提携先の製薬企業や委託先と協業の下、当社の開発品目の価値最大化に努めております。その一方で、バイオ医薬品の市場動向、各疾患領域の標準治療法、競合他社の開発状況等も日々変化しています。当社は、社内外の様々な要因を適時勘案し、当社の開発品目の優先順位を柔軟に見直しながら、当社の開発品目の市場優位性を確保しつつ、企業価値の最大化を図ってまいります。

ロ 製品の競争優位性の確保

医薬品にとって原薬の品質と製造費用は重要ですが、とりわけバイオ医薬品にはその2点が長期的な事業を行う上で最重要な事項となります。当社としては、その点のみならず、製品の使い勝手(ユーザビリティ)が市場優位性を左右するものと考えております。そこで、当社は原薬製造の供給体制及び製造費用に関わる製造委託先との製法開発に注力するとともに、製剤においても医療現場や患者様の使い勝手に優れた製品を目指し、デバイス企業との協議にも積極的に取り組んでまいります。

 

⑤ 提携による事業推進

当社は、成長著しいバイオ医薬品及び細胞治療事業(再生医療)の開発に注力し、未だ有効な治療法がない疾患を対象とするバイオ新薬及び再生医療等製品の開発に取り組んでおります。ただし、当社の経営資源には限りがあることから、経営資源を効率的に活かすために提携によって補完し得る企業と事業推進を図る必要があります。

一方、バイオ後続品の開発においては、アジアや欧米の製造委託先についても、密接な人的交流をもとにネットワークの形成とその充実を図っております。また、グローバル製薬企業がバイオ後続品にも取り組み始めておりますので、品質・製造費用・製剤などで差別化できる提案を行い、グローバル製薬企業との提携を目指す必要があります。

以上のように、当社は積極的に共同研究・事業提携・製造などに関わるネットワークを構築し、国内外の製薬企業とのライセンスアウトに繋げ、人的・資金的資源を効率的に組み合せながら事業の推進を図ってまいります。

 

⑥ ネットワークの強化

当社はビジネスモデルとしてバーチャル型の経営を掲げております。また、当社だけでは解決できない課題に対し、社外の経営資源も含めた最適な組合せを構築し、迅速かつ積極的に解決を図ってまいります。また、今後推進していく細胞治療事業(再生医療)に関する事業のシーズの探索にもネットワークが必要となります。これらのネットワークの構築には、社外との情報交換を積極的に行い、情報集約力を高め、ネットワークのシナジーを最大限に発揮させられる人財の育成が重要であると考えております。

 

⑦ コンプライアンス・リスク管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化

当社が円滑に社外ネットワークを構築していくためには、当社の社会的信用を維持・向上させていくことが重要であると認識しております。当社の取引先の多くは上場企業など社会的信用のある会社や公的研究機関であり、対等な取引関係を維持していくためには、当社にも相応の社会的信用が必要になります。

このような観点から、当社は小規模組織ではありますが、十分な信頼が得られるよう継続的にコンプライアンス及びそのリスクに対する意識の向上並びに内部統制の強化を図ってまいります。また、全てのステークホルダーのニーズに対して組織的かつ的確に対応できるよう、コーポレート・ガバナンスの改善を図り、経営の公正性・透明性を高めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 当社は、「バイオで価値を創造する〜こども・家族・社会をつつむケアを目指して〜」の企業理念のもと、創業以来培ってきたバイオ技術を用いた医薬品の開発ノウハウ及び上市実績を最大限活用して、病気に苦しむ患者様に早期に新たな治療薬・治療法を提供し、こども及びこどもを支える大人を含むすべての年代の方が幸せに明るく暮らすことができる社会の実現に貢献することを目的に活動を続けております。このような状況の中、当社は、中長期的な企業価値の向上に向けた事業活動を通じて、持続可能な社会の実現を目標としたSDGsの達成が非常に重要であると考えております。現時点において、当社はサステナビリティに係る基本方針を定めておりませんが、前述の考え方に則して、当社が目指している主に乳歯歯髄幹細胞(SHED)を原料とした新しい医療の創出、並びにバイオシミラー事業にて患者様に安価で高品質な医薬品を新たな選択肢として提供する活動を通して、ESGのうち特にS(Social=社会)に対する社会貢献を追求するとともに、当社が具体的に対処すべき課題を明確にし、その基本方針を策定することにより企業の持続的な成長に資するよう今後も継続的に検討してまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めておらず、サステナビリティ関連のリスク及び機会、管理するためのガバナンス過程、統制及び手続等の体制をその他のコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりません。

 詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」」をご参照ください。

 

(2)戦略

 当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の戦略における、リスク及び機会に対処するための重要な取り組みは検討中であります。

 しかしながら、持続的な成長や企業価値向上のためには、人財は最も重要な経営資源であり、専門性の高い知識や経験を有する、多様な人財の採用及び育成が重要であると認識しております。そのため、「創造性とイノベーションにあふれる組織風土」をミッションとして、当社の事業を中長期にわたり持続的、効果的かつ迅速に進めることのできる人財の確保・育成と各種人事制度及び組織体制の整備を以下のとおり進めつつ、これら各種制度の整備における目標や進捗について、今後、検討しながら具体的に取り組んでまいります。

 

① 専門性の高い人財の確保

・細胞治療などの再生医療分野における知識・経験を有している人財の採用

・次世代モダリティの知見を有する人財の採用

・海外での事業推進を見据えたグローバル人財の採用

 

② チャレンジできる環境の確保

・人財戦略を実現するタレントマネジメントの実施

・多様性(性別・年齢・国籍・価値観)が高まる社内文化の醸成

・機動的かつ適正な人事配置・キャリアデベロップメントプラン(人財育成計画)の策定、実行

 

③ 従業員一人ひとりを尊重した働き方の確保

・緊急事態、パンデミック発生時でも対応できる勤務体制

・柔軟な働き方が可能なインフラの充実

・一人ひとり異なる働き方への理解に対する社内文化の醸成

 

(3)リスク管理

 当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連のリスク管理における記載はいたしませんが、現状のリスク管理はリスク・コンプライアンス委員会を設置し、管理体制を構築しております。

 詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 当社では、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の指標及び目標の記載はいたしません。

 具体的な指標及び目標については、今後、サステナビリティの基本方針の策定と併せて検討を進めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社の事業展開その他に関してリスク要因と考えられる主な事項を記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。

 当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載のうち、予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、特段の記載がない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため実際の結果とは異なる可能性があることにご留意下さい。

 

1.法的規制等に関する事項

(1) 許認可等に関するリスク

 当社は、原薬などの販売に当たり医薬品医療機器等法その他の規制を受けますが、これらについて法令違反があった場合、あるいは必要とされる資格を保有する人財が離職しその補充ができない場合には、監督官庁から業務の停止や許認可の取消し等の処分を受けることになり、当社の経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、業務の停止や許認可の取消し等の処分を受ける原因となる事由は発生しておりません。

主な許認可等の状況

許認可等の名称

所管官庁等

許認可等の内容

有効期限

取消し等となる事由

医薬品販売業許可

東京都

東京都保健所長

許可

(5302190371)

2025年6月30日

(6年ごとの更新)

医薬品医療機器等法、その他薬事に関する法令若しくはこれに基づく処分に違反する行為があったとき、医薬品医療機器等法第75条第1項により、その許可が取り消され又は期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命じられることがある。

 

(2) 医薬品の研究開発における医薬品医療機器等法その他の規制に関するリスク

 当社が業を営む医薬品業界では、研究、開発、製造及び販売のそれぞれにおいて、国内外の薬事に関する法令、薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けております。

 当社は、日本国内の市場に留まらず欧米を含む国外の市場もターゲットとして各開発品の研究開発を進めておりますが、これらの開発品を医薬品として上市させるためには、各国の薬事に関する法令、バイオ後続品に係るガイドライン及びその他の規制に準拠して製造販売承認の申請を行い、承認を取得することが必須となります。このため、臨床試験等において、医薬品としての品質、有効性及び安全性を示すことができない場合には、承認を得られず、上市できず、当社の事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、現在の医薬品医療機器等法においては、原薬の外部委託製造が可能となっておりますが、今後このような外部委託製造に関する規制や海外品の輸入等に関する規制が改定された場合、当社の事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 医療制度改革の影響に関するリスク

 我が国では、医療費の抑制を目的として、薬価改定を含む数々の医療制度改革がこれまで実施されてきており、今後の高齢化社会を見据えた場合、その方針は継続されるものと考えられます。このため、当社開発品の上市に伴い、当該医薬品の薬価が影響を受け、当社が製薬企業に販売する原薬又は製剤の販売価格にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

2.医薬品開発事業に関する事項

(1) 医薬品開発事業全般に関するリスク

 医薬品開発の分野では、世界各国の製薬企業に加え、当社を含む創薬ベンチャー企業などが技術革新の質とスピードを競い合っております。また、医薬品の基礎研究、開発から製造及び販売に至る過程では、各国における諸規制に従うことから、長期間にわたり多額の資金を投入せざるを得ません。このため、各開発品の研究開発には多くの不確実性が伴い、当社の現在及び将来における開発品についても同様のリスクが内在しております。当社は、研究開発段階から収益が得られるビジネスモデルを構築することにより、各開発品の研究開発リスクの分散を図っておりますが、期待どおりの収益が得られる契約が締結できる保証はありません。このような場合には、当社の事業計画や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 医薬品の有用性及び安全性に関するリスク

 当社は、「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して」という経営理念のもと、医療ニーズに応えるべく、医薬品の研究開発を行っております。医薬品の研究開発では、基礎研究段階から製造販売承認の取得に至るまで、様々な研究開発過程を段階的に進めていく必要があり、それぞれの段階において研究開発の続行可否が判断されます。このため、非臨床試験や臨床試験において期待する効果が確認できない場合、予期せぬ副作用が発生した場合、あるいは研究開発期間中に医療現場での標準治療法等が変わり、医療ニーズに対する開発品目の有用性を見出すことが困難となった場合など、医薬品としての有用性及び安全性が確認できない場合には、研究開発が中止されることになります。当社の開発品において研究開発が続行できなくなった場合には、当社の事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 新規開発品の創出に関するリスク

 当社は、社外との提携関係を積極的に構築することで、新規開発品の探索及び創出を図ることについても重要な事業戦略としております。しかしながら、これらの活動により、新規開発品の探索及び創出が確実にできる保証はありません。このため、何らかの理由により、新規開発品の探索及び創出活動に支障が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 研究開発に内在する進捗遅延に関するリスク

 当社は、研究開発型企業として自社単独での研究開発を推進しつつ、社外との提携関係を構築することで効率的な研究開発の推進を図っております。

 しかしながら、当初計画したとおりの研究開発の結果が得られない場合、各種試験の開始又は完了に遅延が生じた場合、提携先との契約等により当社単独で研究開発を進めることができない場合、あるいは提携候補先との契約交渉が遅延した場合には、医薬品としての製造販売承認の取得が遅れる又は制限される可能性は否定できません。当社は、このような事態を極力回避すべく、各開発品の進捗管理及び評価を適時に行い、各開発品の優先順位付け、投下する経営資源の強弱の変更、あるいは研究開発の一時中断の決定などの対応を図っております。このように、当社は研究開発費が大きく増加するリスクを低減しておりますが、研究開発が計画どおりに進捗しない場合には、当社の事業計画並びに財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 医薬品業界における競合に関するリスク

 近年の医薬品業界は、国内外の製薬企業、バイオ関連企業、研究機関などが激しく競争しており、技術革新が急速に進む環境下にあります。このため、これらの競合先との競争の結果により、当社がライセンスアウトした開発品あるいは研究開発中の開発品が市場において優位性を失い、研究開発の中止を余儀なくされるおそれがあります。また、当社の開発品がいち早く上市できた場合でも、これらの競合先が優位性のある製品を市場に投入し、当社の市場シェアを奪うなど、当社の事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 国内外の大手製薬企業等の参入に関するリスク

 近年の国内外における医療費抑制策の中で、ジェネリック医薬品市場の拡大傾向は今後も持続するものと考えております。このため、国内外の大手製薬企業等が日本のジェネリック医薬品市場のみならず、世界市場が非常に大きいと期待されるバイオ後続品市場にも積極的に参入してくることも考えられ、既に一部顕在化しております。当社が事業領域とするバイオ後続品については、低分子化合物のジェネリック医薬品に比べて豊富な知識、経験及びノウハウが求められることから、参入障壁は比較的高いものと認識しております。しかしながら、国内外の大手製薬企業等が巨額の研究開発費を投じ参入を強化する可能性があります。さらに先発医薬品メーカーから特許権の許諾を受けて発売される後発医薬品「オーソライズド・ジェネリック(AG)」をめぐる動きも活発化しております。これは先発品とまったく同様に製造される特性上、後発品としての申請に必要な試験が省略できるなど非常に短期間で参入を果たせるものとなります。このような状況は低分子化合物のジェネリック医薬品市場に大きな影響を与えることが想定されます。現状では、バイオ後続品におけるAGの定義であるバイオセイムと呼ばれる後発品が現れたことで、ジェネリック医薬品市場のAGに見られるような影響を受け、当社の事業計画及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

3.収益モデルに関する事項

(1) 収益計上に関するリスク

 医薬品の基礎研究開始から上市に至るまでには長い年月を要することから、研究開発の成果が事業収益として計上されるまでには長期間を要します。また、医薬品開発の成功確率は近年益々低くなっており、上市に至らないケースも多いため、最終的に事業収益が計上されない可能性もあります。また、当社が臨床開発段階において製薬企業と提携した場合、その製薬企業が臨床試験を実施することになります。このため、臨床試験は提携先の製薬企業に依存し、当該提携先において順調に臨床試験が進まない場合や経営環境の変化や経営方針の変更など、当社が制御し得ない要因が発生した場合には、当該医薬品の開発が遅延あるいは中止となる可能性があります。

 一方、研究開発が順調に進捗して上市に至った場合であっても、当該医薬品が市場において評価されず、当初計画していた収益を計上できない可能性があります。

 当社は、研究開発段階から収益の計上方法を多様化することにより、各開発品の収益計上リスクの分散を図っておりますが、研究開発を行ったにもかかわらず、期待どおりの収益が計上できる保証はありません。このような場合には、当社の事業計画や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) バイオ後続品の販売に関するリスク

 当社の開発品であるバイオ後続品は、提携先の製薬企業が販売を行っておりますが、何らかの理由により、提携先企業が販売に支障をきたした場合には、当該医薬品の売上減少に伴い当社の原薬等の売上、あるいは当該医薬品の売上に係るロイヤリティ収益が減少し、当社の事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 提携先企業等との契約に関するリスク

 当社は、各事業においてパートナー企業と業務提携、共同研究あるいはライセンス契約等を締結し、それぞれ協働して開発活動を行っておりますが、各社における経営環境の変化や経営方針の変更など当社が制御し得ない要因によって中断あるいは中止となる可能性を含め、何らかの理由により当該契約が解除された場合には、当社の事業戦略や事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

4.事業推進体制に関する事項

(1) 提携関係に関するリスク

 当社は、研究開発の各段階において、開発や販売を行う製薬企業などとの広範な提携関係を構築することで、固定費の増加を回避しつつ専門性の高い社外の技術力を活用し、戦略的かつ柔軟に研究開発を推進しております。しかしながら、計画通りに提携関係が構築できなかった場合、提携関係に変更が生じた場合あるいは提携関係が解消された場合には、当社の事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) バーチャル(外部委託)型経営に関するリスク

 当社は、バーチャル型企業であることから、医薬品開発に伴うGLP試験やGMPに基づく原薬などの製造を受託企業に委託しております。このため、当該委託先において一定の信頼性や品質を有する対応が困難となり、代替先への製造移管を速やかに行うことができない場合には、当該開発品の研究開発に遅れが生じたり、研究開発自体が中止となることで、当社の事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は、当該開発品の上市後、原薬などを安定供給することが必要となりますが、製造委託先が商業用規模での安定供給に支障をきたし、代替先への製造移管を速やかに行うことができない場合には、当該医薬品の販売開始の遅延や市場への供給不足が発生し、当社の経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 小規模組織であることに関するリスク

 当社の研究開発の特長は、社外との提携関係を構築することで、固定費を抑えつつ効率的に事業を推進することにあります。このため、少人数による組織体制が適しておりますが、今後積極的に開発品の拡充を図るためには、人員の増強が必要になるものと考えております。しかしながら、想定どおりに人財の確保ができない場合あるいは人財の流出が生じた場合には、研究開発の推進や社外との提携関係の構築に支障が生じ、当社の事業計画や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 また、事業の拡大に伴い、内部管理体制の強化も必要になってまいります。この点においても研究開発と同様に少人数の組織であるため、想定どおりに人財の確保ができない場合あるいは人財の流出が生じた場合には、内部管理体制の質の低下を招き、当社の社会的信用を損なう可能性があります。

 

(4) 大学・公的研究機関との共同研究に係る費用負担に関するリスク

 当社は、医薬品シーズの探索を目的として、北海道大学をはじめとする複数の大学や公的研究機関との共同研究を行っておりますが、共同研究に係る費用の一部については当社が負担しております。また、共同研究の進捗状況に応じて、追加的な費用を負担する場合もあります。

 当社は、今後も大学や公的研究機関との共同研究に積極的に取り組む方針であり、相応の共同研究費を負担する予定でありますが、共同研究に係るテーマなどの状況により、当社が予定していない費用負担が発生することになった場合、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 研究所の使用に関するリスク

 当社は、北海道大学創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォーム推進センターが民間企業との共同研究等のために設けているオープンラボラトリスペースの一部を、当社研究所として使用しております。このため、共同研究契約の終了など何らかの理由により、同施設の使用ができなくなった場合には、当社研究所の移転を余儀なくされ、追加的な設備投資や賃借料の発生などによって、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 企業再編、企業買収、合併等に関するリスク

 当社は、事業展開の手段として、関係会社の設立や売却、合併・分割・買収・提携の手法を用いる可能性があります。そのため、これらにかかる費用等が、一時的に当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。また、当該事業が当初の計画どおりに進捗しない場合、あるいは事業環境や競合状況の著しい変化により、当初想定していた効果が得られず、例えば投資価値の減損処理を行う必要が生じるなど、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

5.知的財産権に関する事項

(1) 知的財産権に関するリスク

 当社は、事業活動の中で様々な知的財産権を使用しておりますが、これらは当社の権利及び当社が権利出願中のもの、社外から適法に使用許諾を受けたもの、あるいは特許権が期間満了に至ったものであると認識しております。

 しかしながら、当社が出願中の特許等の全てが成立する保証はありません。また、特許等が成立した場合でも、当該特許等を超える優れた技術の台頭により、当社の特許等に含まれる技術が淘汰される可能性もあります。このような場合には、当社の競争力が失われ、当社の経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 一方、本書提出日現在において、当社の事業活動について第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた事実はありません。また、当社は今後発生し得る紛争を未然に防止するため、社内において、あるいは弁護士や弁理士を通じて特許調査を適宜実施しておりますが、万が一当社が第三者の特許等を侵害していた場合、当該第三者から差止請求や損害賠償請求を受け、高額な許諾料を請求されるなど、当社の事業活動並びに財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、第三者が当社の特許等を侵害する場合には、権利保全のために必要な措置をとるなど、その解決のために多大な費用と時間を要する可能性があります。

 

(2) 特許の確保に関するリスク

 当社の従業員が職務発明をした場合、係る権利は職務発明規程に基づき原始的に当社に帰属いたしますが、当該発明者に対して特許法第35条第4項に定める相当の利益を支払わなければなりません。これまでに当該利益を支払う事例が生じたことはありませんが、将来的に支払が発生した際、利益の相当性について紛争が生じる可能性があります。これらの紛争により、発明者に追加の利益を支払わなければならない場合には、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 権利者からの契約解除等に関するリスク

 当社の開発品の中には、第三者から実施許諾を得たうえで研究開発を進めるものもあります。当社は、当該ライセンス契約に定める諸条件に従って、開発品を製品化する努力義務を負っております。ライセンス契約に定める諸条件の全てを当社が満たすことができるかどうかについては、多くの要因に依存しており、これらの中には当社が制御不能な要因も含まれております。このため、将来的に当社がライセンス契約の解除条項に抵触し、権利者から権利の許諾を受けられなくなった場合には、当社の事業計画並びに財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

6.業績等に関する事項

(1) 財政状態及び経営成績に関するリスク

 当社は主にバイオ後続品等の販売で得た収益により研究開発費を除いた固定費を賄える状況となっているものの、既存の開発品に係る研究開発費が先行して計上されますので、現時点では利益を計上することができておりません。当社は、早期の黒字化を目指しておりますが、事業計画が想定通りに進捗しない場合には、黒字化の時期が遅れたり、繰越利益剰余金がマイナスからプラスに転じる時期が遅れる可能性があります。

 

(2) 税務上の繰越欠損金に関するリスク

 当社は2023年3月期において、税務上の繰越欠損金を有しており、現在は所得を課税標準とする法人税、住民税及び事業税が課されておらず、2024年3月期における課税所得もマイナスとなる見通しであります。しかしながら、今後当社の業績が順調に推移することで繰越欠損金を上回る課税所得が発生した場合あるいは税制改正に伴い所得を課税標準とする法人税、住民税及び事業税が発生した場合には、計画している当期純利益又は当期純損失並びにキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 特定の販売先への依存に関するリスク

 当社の売上高の大半はバイオ後続品の原薬又は製剤供給にかかる売上であるため、同事業への売上依存度が非常に高い状態にあります。

 当社は新規販売先の開拓を進めることで、特定の販売先への売上依存度の引き下げを図る方針でありますが、新規販売先の開拓が想定どおりに進まない可能性があります。また、現在契約を締結している販売先との契約解消等が生じた場合には、当社の経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(4) 資金調達に関するリスク

 当社はバイオ後続品事業を始めバイオテクノロジーに関する事業化を目指した研究開発型企業であるため、先行投資としての研究開発資金を必要としますが、当社が業を営む医薬品業界やバイオ事業の特質として、研究開発投資がリターンを生み出すまでの期間が長く、また、これに伴うリスクも高いため、調達資金が投資家の期待する成果に必ずしも結びつかない可能性があります。このため、安定的な収益基盤を確立するまでの間は、間接金融による資金調達は難しく、増資を中心とした資金調達を行う方針であります。その場合には、当社の発行済株式総数が増加し、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、当初の想定を上回る研究開発資金が必要となり、機動的な資金調達が困難な場合には、研究開発を継続することができなくなる可能性があります。

 

(5) 財務制限条項への抵触リスク

 当社の借入金には財務制限条項が付されており、当該条項に抵触した場合、期限の利益を喪失し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 配当政策に関するリスク

 当社は、創業以来配当を実施しておらず、本書提出日現在においても、会社法の規定上、配当可能な状態にはありません。当面は早期の黒字化を目指し、内部留保による財務体質の強化及び研究開発活動への再投資を優先する方針であります。一方で、株主への利益還元についても重要な経営課題として捉え、財政状態及び経営成績を勘案しつつ配当の実施を検討してまいります。しかしながら、利益計画が想定どおりに進捗せず、今後も安定的に利益を計上できない状態が続いた場合には、配当による株主還元が困難となる可能性があります。

 

(7) 投資有価証券の価値変動に関するリスク

 当社は本書提出日現在において投資有価証券を保有しております。

 このため、当該投資有価証券の価値変動に伴い評価損が計上された場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 為替レートの変動に関するリスク

 当社は、社外との提携関係の構築をグローバルに展開していることから、海外の取引先との間で外貨建取引を行っております。これまでは、当社の外貨建取引の多くが支払サイトも短いことから、多額の為替差損益を計上することはありませんでしたが、当社の今後の事業規模の拡大に伴い、外貨建取引の規模が大きくなった場合や支払サイトの長い外貨建取引を行う場合には、為替レートの変動により当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

7.その他

(1) 情報流出に関するリスク

 当社が研究開発の過程で入手する知見、技術、ノウハウ等には重要な機密情報が多く含まれております。当社は、これらの機密情報が社外に流出しないよう、役職員や取引先との間で秘密保持義務等を定めた契約を締結し、厳重な情報管理に努めております。

 しかしながら、役職員や取引先によりこれらが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が流出し、当社の事業活動に大きな影響を与える可能性があります。

 

(2) システム障害等に関するリスク

 当社はシステム障害、セキュリティ侵害等を未然に防止するために様々な手段を講じておりますが、ウィルス、権限のないアクセス、自然災害、通信エラーあるいは電気障害などが引き起こす事故が発生する可能性を否定することはできません。システム障害、セキュリティ侵害等が発生した場合、当社が保有する医薬品開発過程における重要な情報が喪失又は流出する可能性があります。データの喪失あるいは機密情報の流出を招いた場合、データ復旧のために金銭的・時間的に多大な負担を余儀なくされたり、特定の開発品の開発の進捗が遅延したり、取引先から損害賠償を請求されたり、当社の社会的信用が失墜して社外との提携関係の構築が難しくなるなど、当社の事業計画の進捗に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 医薬品の品質・副作用に関するリスク

 当社が開発に関与する医薬品の安全性に関する情報は、限られた被験者を対象に実施した臨床試験から得られたものであり、上市前に副作用の全てを把握することはできません。当社は、直接医薬品の販売を行う計画はありませんが、上市後に予期せぬ副作用が発生する可能性があります。その場合、製品の回収あるいは販売中止を余儀なくされ、当社の原薬などの販売についても継続することが困難となり、以後の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(4) 訴訟等に関するリスク

 当社は、コンプライアンス体制の構築に注力しておりますが、製薬企業などから特許等の侵害を理由として損害賠償請求を受けたり、訴訟を提起される可能性があります。また、製造物関連、環境関連、労務関連その他に関する訴訟が提起される可能性もあり、これらの結果、当社の社会的信用が失墜し、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 災害に関するリスク

 当社は、事業活動の中心となる事業所を東京都と北海道に設けており、地理的なリスク分散を図っております。また、当社は研究開発活動の一部を社外に委託していることから、実質的にはさらに広くリスク分散されているものと考えております。

 しかしながら、これらの地域において地震等の大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊やインフラの機能停止などにより、当社の事業活動が影響を受ける可能性があります。

 

(6) 新型コロナウイルスに関するリスク

 当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止及び予防のための対応として、在宅勤務及び時差出勤の推進、WEB会議の推進、不要不急の出張の自粛、衛生管理の徹底等に努めております。現在、新型コロナウイルスの感染拡大は沈静化に向かい、各国で行動制限の緩和が進んでおります。しかし再度、感染拡大や事態の長期化により、当社の役員及び従業員が罹患した場合や当社の提携先や外部委託先に重大な影響が生じた場合、営業活動、生産活動及び研究開発活動の停滞により、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

 当社は、「バイオで価値を創造する -こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を目標に掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活用し、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。上述の目標を達成するために、バイオ後続品事業、バイオ新薬事業、細胞治療事業(再生医療)の3つを主要事業とした研究開発活動を推進しております。バイオ後続品事業においては、安定的な収益基盤を確立させると共に、我が国の医療費削減を目的としたジェネリック医薬品の普及政策を背景に、患者様へ新たな治療の選択肢と、より安価な治療を届けられるよう事業展開を図っております。バイオ新薬事業及び細胞治療事業(再生医療)においては、未だ世にない画期的な治療法の開発を目的に、新たな医薬品を創出するというチャレンジを鋭意推進し、その成長性を追求しております。

 当事業年度における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。

 

イ バイオ後続品事業

 各上市済製品においてはパートナー会社との協働の下、フィルグラスチムバイオ後続品の原薬販売、ダルベポエチンアルファバイオ後続品の売上高に応じたロイヤリティによる収益を安定的に計上していることに加え、2021年12月9日に上市されたラニビズマブバイオ後続品にかかる販売収益においては、想定を超える受注と2023年1月に糖尿病黄斑浮腫に対する追加適応症の承認取得により、さらなる売上増が見込まれることから、今後の経営基盤を支える収益源としての役割が期待されます。その他、上述の3製品に続いての上市を目指す第4製品目のバイオ後継品の研究開発並びに新たなバイオ後継品の開発も着実に推進しております。

ロ バイオ新薬事業

 次世代型抗体医薬品等の研究開発を進めた結果、2020年1月にがん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約をそれぞれ締結しました。また、2022年5月には㈱カイオム・バイオサイエンスとの抗体医薬品開発に関する共同研究契約を締結し、当社が保有するがん領域の抗体医薬品の開発候補品について、両社の技術・知見を組み合わせて共同研究を行うことを目的に開発活動をスタートさせております。その他、新規メカニズムに基づく新生血管形成を阻害する抗RAMP2抗体に関して特許査定を受ける等、知財戦略と並行しながら、開発中のパイプラインについても着実に開発活動を推進しております。

ハ 細胞治療事業(再生医療)

 当社は、今後の企業価値向上に大きく寄与する重要な研究ソースとして、乳歯歯髄幹細胞(SHED)を活用したプロジェクトの推進、アカデミア及び企業との共同研究又は提携を推進しております。

 当社は、これまでのSHEDの疾患に対する適性の見極めの結果、神経及び骨疾患などの分野で新たな治療法を提供できる可能性を複数のアカデミア及び企業に評価いただき、それぞれの分野で研究開発活動を推進しております。

 複数のアカデミア及び企業と研究開発を進めていく中で、SHEDを基盤とした治療法開発の可能性に関して着実に成果が得られつつあり、当社の成長ドライバーであるSHEDを活用した世界初の再生医療等製品の創出を目指してまいります。また、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との間で進めている脳性まひに対する取り組みに関して、世界で初めて慢性期脳性まひモデルの運動障害の改善をSHEDの投与で確認したことを基に、2022年10月には名古屋大学と脳性まひ治療に関する特許の共同出願や、同年11月に開催された「第66回日本新生児成育医学会・学術集会」において、名古屋大学より当該研究成果を発表する等、各アカデミアとの連携を通して進めています。

 さらに、SHEDの臨床入りのスタートとして、名古屋大学が主導する脳性まひを対象とした臨床研究(SHEDのファーストインヒューマン試験)において、現在投与開始に向けた準備が進められています。2019年にSHEDを導入して以来進めてきた探索・基礎研究の段階から、ヒトへの投与を行う臨床段階へと開発ステージが上がったことにより、SHEDを医薬品として早期に上市させる蓋然性も高まり、今後も精力的に研究開発を推進してまいります。

 そのほか、将来の成長戦略として、より高い治療目標を達成するためにSHEDへの遺伝子導入や培養法改変によってSHEDの機能を強化した第二世代SHED(次世代型細胞治療「デザイナー細胞」)の研究開発を推進しております。

 具体的な進捗として、2021年9月8日にナノキャリア㈱と共同研究契約を締結、さらには同12月6日には㈱バイオミメティクスシンパシーズと疾患指向性のあるSHEDを取得可能とする新規培養法の開発に係る委託開発契約をそれぞれ締結し、開発活動を本格化させております。加えて、アカデミアとの研究開発においては、国立大学法人浜松医科大学と協働で進めてきました脳腫瘍に対する新規治療法に関する基礎研究において、高い研究成果が得られており、浜松医科大学と共同で論文発表を行う等、第二世代SHEDの研究開発も確実に進展しております。引き続き当社は、第二世代SHEDの臨床応用に向けた研究開発も、アカデミア及び企業と推進してまいります。

 さらに、SHEDを再生医療等製品として製品化するための基盤として開発を進めてきたSHEDマスターセルバンク(MCB)が2022年8月に完成し、これにより、SHEDの製造の原料となる乳歯を提供頂く体制構築のための「ChiVo Net 未来医療子どもボランティアネットワーク」、東京大学医学部附属病院、昭和大学歯科病院、それぞれとの連携から、㈱ニコン・セル・イノベーションのGMP/GCTP対応製造施設において細胞培養、MCBのGMP製造を行うまでの一連の体制(S-QuatreⓇ)を構築することができました。加えて、2022年9月には、昭和電工マテリアルズ㈱と再生医療等製品の製法開発及び治験薬製造に関する基本取引契約を締結し、上述の体制下において製造された信頼性の高い高品質なSHEDマスターセルバンクを活用した治験薬製造に向けて、開発活動を加速させております。

 以上の試みを通して、当社における再生医療等製品の研究・開発活動をさらに一層加速すると共に、S-QuatreⓇを基盤としたSHED創薬プラットフォームを用いて、アカデミアや企業との連携による研究・開発パイプラインの強化をより確実に進めてまいります。

 なお、これまでSHEDと共に取り組んでまいりました心臓内幹細胞(CSC)に関するパイプライン(JRM-001)については、将来の上市を目指したパートナリング活動を継続する中で、心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う㈱日本再生医療の全株式譲渡を2022年4月4日付で決議・実行し当社の連結子会社ではなくなりましたが、今後も当社による開発活動の支援を継続いたします。

 これらの結果、当事業年度の売上高は2,776,241千円(前期比 76.9%増)、営業損失は550,929千円(前期は651,139千円の営業損失)、経常損失は624,769千円(前期は968,535千円の経常損失)、当期純損失は657,434千円(前期は550,863千円の当期純損失)となりました。

 なお、2022年4月4日付で、連結子会社であった㈱日本再生医療の株式を譲渡したことにより、連結子会社が存在しなくなったため、当事業年度より連結財務諸表を作成しておりません。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における総資産の残高は、前事業年度度末比12.2%増の3,894,765千円となりました。これは主に、仕掛品が366,387千円減少したものの、売掛金及び契約資産が626,912千円、前渡金が325,992千円増加したことによるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末比50.6%増の2,661,259千円となりました。これは主に、受注損失引当金が475,243千円減少したものの、長期借入金(1年内返済予定を含む)が850,000千円、転換社債型新株予約権付社債が400,000千円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末比27.6%減の1,233,505千円となりました。これは、資本金及び資本剰余金がそれぞれ88,285千円、新株予約権が11,461千円増加したものの、当期純損失を657,434千円計上したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,067,162千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により減少した資金は1,421,259千円となりました。これは主に、棚卸資産の減少353,498千円があったものの、売上債権の増加626,912千円、受注損失引当金の減少475,243千円、税引前当期純損失を656,224千円計上したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により減少した資金は28,825千円となりました。これは主に、関係会社貸付金の回収による収入26,254千円あったものの、投資有価証券の取得による支出50,000千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により増加した資金は1,356,312千円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出150,000千円あったものの、長期借入れによる収入970,000千円、転換社債型新株予約権の発行による収入499,720千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度における生産実績は、次のとおりであります。

区分

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

バイオ後続品事業

1,222,980

269.2

 

原薬等販売収益

1,222,980

269.2

合計

1,222,980

269.2

(注)金額は、製造原価によっております。

 

b.受注実績

 フィルグラスチムバイオ後続品及びラニビズマブバイオ後続品につきましては、ロット単位での受注であり、各ロットの生産高に応じて売上高が変動し、受注金額を確定できないことから、記載を行っておりません。

 なお、上記以外の品目につきましては、研究開発段階での売上であり、その不確実性に鑑み、記載を行っておりません。

 

c.販売実績

 当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。

区分

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

バイオ後続品事業

2,572,702

166.7

 

原薬等販売収益

2,331,444

161.1

 

知的財産権等収益

241,258

252.5

バイオ新薬事業

-

-

細胞治療事業(再生医療)

203,539

778.9

 

知的財産権等収益

203,539

778.9

合計

2,776,241

176.9

(注)当事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

千寿製薬㈱

1,369,494

49.3

富士製薬工業㈱

665,880

24.0

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容

当事業年度における売上高は、新たに販売開始となったラニビズマブバイオ後続品を含めて主にバイオ後続品の原薬等の販売が順調に推移したことに加え、ダルベポエチンアルファバイオ後続品の販売に伴うロイヤリティ収益、バイオ後続品の第4製品目の製造プロセス開発に係る原薬販売等により、2,776,241千円となりました。一方、主にバイオ後続品事業におけるラニビズマブバイオ後続品の商用製造に向けた最終段階の開発及び将来の原価低減に向けた開発費用並びに細胞治療事業(再生医療)におけるSHEDマスターセルバンク開発等に取り組んだ結果、研究開発費を1,216,349千円計上したため、営業損失は550,929千円、当期純損失は657,434千円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社が業を営む医薬品業界の特質として、研究開発投資がリターンを生み出すまでの期間が長く、これに伴うリスクも高いと考えられております。当社は、そのリスクを分散させるために、複数の開発品を保有し、パイプラインの充実を図ることが最重要課題であると考えておりますが、そのためには多額の研究開発資金が必要となります。一方で、特にバイオ後続品については、既存バイオ医薬品の特許期間の満了時期から逆算して研究開発を開始する必要があるため、機を逸することのない意思決定と経営資源の投入を行う必要があります。今後も直接金融による資金調達が基本になりますが、開発品の優先順位を考慮しつつ財務会計面及び管理会計面からも検討を加えた上で意思決定を行っていくことで、パイプラインの充実と安定的な収益基盤の確立につながるものと考えております。

なお、今後1年の資金繰りの状況は研究開発費として1,600,000千円を計上する予定であります。これら研究開発費は、SHEDの成長戦略実現に向けた開発、ラニビズマブバイオ後続品の原価低減のための施策による一時的支出が主な内訳であります。当社は、当事業年度末で現金及び預金並びに売掛金を合わせて2,155,929千円の残高を有しており、今後中長期的には上述のとおり原価低減施策の結果、高い利益率を持ったバイオ後続品の販売による売掛債権の回収及びロイヤリティ収益並びに新株予約権行使等で必要十分な資金調達がされることが見込まれるため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していないものと評価しております。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化も想定し、資金調達も含め、手許流動性の維持・向上に努めてまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りには不確実性が伴うため、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。

 当社の財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等  注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 原薬販売に関する契約

契約書名

売買基本契約書

相手先名

富士製薬工業㈱

契約締結日

2013年2月25日

契約期間

フィルグラスチムバイオ後続品製剤の製造販売承認取得日(2012年11月21日)から7年間。ただし、当該有効期間満了日の6ヶ月前までに終了の合意が無い限り、更に1年間自動延長されるものとし、以後もこの例による。

主な契約内容

富士製薬工業㈱がフィルグラスチムバイオ後続品製剤を日本国内で商業的に製造販売するため、当社は、フィルグラスチムバイオ後続品製剤の原薬を継続的・安定的に同社に売り渡し、同社はこれを独占的に買い受ける。

 

(2) 共同開発に関する契約

契約書名

ダルベポエチンアルファバイオ後続品 国内サブライセンス及び共同開発契約書

相手先名

㈱三和化学研究所

契約締結日

2014年1月21日

契約期間

本契約締結日からロイヤリティの支払いが終了する日まで

主な契約内容

① ㈱三和化学研究所がDong-A ST Co., Ltd.から許諾を受けたダルベポエチンアルファバイオ後続品の国内開発権の再許諾を受け、本製品の国内開発を共同で実施する。

② 開発マイルストン等の支払いを行い、上市後はロイヤリティを受領する。

 

(3) ライセンスインに関する契約

契約書名

ライセンス契約書

相手先名

Dong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬㈱)

契約締結日

2008年1月21日

契約期間

本契約に定める各地域(日本、米国及び一部地域を除く欧州)での販売開始後10年間とし、一方の当事者から更新拒絶の意思表示がない限り、以後1年毎に自動更新される。ただし、日本地域に限り、当社の販売提携先が販売を継続する限り有効とする。

主な契約内容

① フィルグラスチムバイオ後続品を産生する細胞及び技術に対する独占的実施権の許諾を受ける。

② 上記実施許諾により得られたフィルグラスチムバイオ後続品の原薬又は製剤を、医薬品用途において使用、製造、販売及び譲渡を行う権利を受ける。

③ 契約一時金、開発段階に応じたマイルストン契約金及び上市後におけるロイヤリティを支払う。

 

(4) 共同事業化に関する契約

契約書名

日本国内向け共同事業化契約書

相手先名

千寿製薬㈱

契約締結日

2016年5月12日

契約期間

本契約締結日から、開発を中止又は販売を終了する日まで有効

主な契約内容

千寿製薬㈱がラニビズマブバイオ後続品製剤を日本国内で商業的に製造販売するため、当社は、ラニビズマブバイオ後続品製剤の製剤を継続的・安定的に同社に売り渡し、同社はこれを独占的に買い受ける。

 

 

6【研究開発活動】

 当社は、希少疾患、難治性疾患及び小児疾患などの医療領域を対象として、バイオ医薬品(バイオ新薬及びバイオ後続品)及び細胞治療事業(再生医療)における細胞治療及び再生医療分野を主軸とした研究開発活動を展開しております。

 

(1) 自社研究開発体制

 当社では、研究開発本部及び事業開発本部が研究開発を担当しており、北海道大学創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォーム推進センター内に研究所を置き、自社での研究開発体制を整備しております。加えて、外部委託先を活用し、効率的かつ迅速な研究開発を推進しております。

 当社の研究開発においては、主にバイオ新薬のシーズ探索を目的として、疾患に関連する物質の特定やその働きを阻害する抗体などの作製を行い、その作用機序などの分析と評価を行うことに研究開発資源を投入しております。また、バイオ後続品の研究開発においては、高産生株の作製などを行っております。

 

(2) 共同研究開発体制

 当社は、バイオベンチャー企業であることから、限られた人財と要員で事業を推進しております。このため、早期の段階から、各分野に専門性を有する社外の研究機関や製薬企業などと提携することにより共同研究開発体制を構築し、当社の研究開発費の増加を回避しつつ、必要な社外技術の有効活用を図っております。また、多額の開発費用を要する商業用規模での製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験の開発段階においては、製薬企業へのライセンスアウトを基本とし、それに伴う共同研究開発契約などにより、契約一時金や開発マイルストン収益を得たり、共同研究開発に伴う役務収益を得たりすることで、研究開発費の負担の軽減を図っております。

 

(3) 研究開発活動の概要

 当事業年度における研究開発費の総額は1,216,349千円となりました。当社の研究開発費の主な内容は、非臨床試験、臨床開発及び製造プロセス開発に関連する外部委託費、社外からライセンスインした特許やノウハウの実施料、自社における研究材料費、研究員の人件費等であります。

 

(4) 主な開発品の進捗状況

① バイオ後続品事業

 各上市済製品においてはパートナー会社との協働の下、フィルグラスチムバイオ後続品の原薬販売、ダルベポエチンアルファバイオ後続品の売上高に応じたロイヤリティによる収益を安定的に計上していることに加え、2021年12月9日に上市されたラニビズマブバイオ後続品にかかる販売収益においては、想定を超える受注と2023年1月に糖尿病黄斑浮腫に対する追加適応症の承認取得により、さらなる売上増が見込まれることから、今後の経営基盤を支える収益源としての役割が期待されます。その他、上述の3製品に続いての上市を目指す第4製品目のバイオ後継品の研究開発並びに新たなバイオ後継品の開発も着実に推進しております。

 

② バイオ新薬事業

 次世代型抗体医薬品等の研究開発を進めた結果、2020年1月にがん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発を目的として札幌医科大学との共同研究契約を、同じくがん細胞殺傷効果を有する新たな抗体の取得を目的としてMabGenesis㈱との共同研究契約を、それぞれ締結し、その他の開発中のパイプラインと合わせて研究開発活動を継続しております。

 

③ 細胞治療事業(再生医療)

 当社は、細胞治療事業(再生医療)の研究開発において、重要な研究ソースとなるSHED及びCSCを活用したプロジェクトの推進、アカデミアとの共同研究又は企業との提携を推進しております。

 SHEDについては、SHEDの疾患に対する適性を見極め、骨及び神経疾患といった分野で新たな治療法を提供できる可能性を複数のアカデミア及び企業に評価いただき、それぞれ研究開発活動を推進しております。

 CSCについては、小児の重篤な心臓疾患である機能的単心室症を主な対象とした再生医療等製品の開発(開発番号JRM-001)を推進しております。なお、本開発品は、同じ心疾患領域における研究開発経験・ノウハウを保有する㈱メトセラに当該事業を譲渡し、同社が主体となって開発を行っていただくことが最善と判断したため、JRM-001の開発を行う当社の完全子会社である㈱日本再生医療の株式譲渡を2022年4月4日付で決議し、実行いたしました。今後、当社は開発活動の支援という形で開発に関与いたします。

 そのほか、再生医療分野での事業を進展させていくための重要なステップとして、SHEDを再生医療等製品として製品化するための基となるマスターセルバンク(MCB)の製造及びワーキングセルバンクの確立と安定供給体制の構築を㈱ニコン・セル・イノベーションと進めつつ、一方で東京大学医学部附属病院との連携によるSHED製造の原料となる乳歯を提供頂くための臨床研究を開始いたしました。今後、当該臨床研究を確立する事により安定した乳歯提供体制を確立し、上述のMCBにおいて安定的なSHED製造体制構築を目指します。これにより当社における再生医療等製品の研究・開発活動を加速すると共に、アカデミアや企業との連携による研究・開発パイプラインの強化を進めてまいります。