第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「やればできるという自信 チャレンジする喜び 夢を持つ事の大切さ 私たちはこの3つの教育理念とホスピタリティをすべての企業活動の基軸とし 笑顔あふれる『人の未来』に貢献する」という企業理念のもと、お客様一人ひとりに寄り添い、未来を生き抜く力を手渡す教育サービスを提供してまいりました。

独自の人財育成施策に磨きをかけ、従業員の活力を事業成長の源泉とし、チームの力で課題を解決するホスピタリティ経営を推進しております。質の高い教育サービスと、人による心温かな対話を通して、お客様の成功体験を創出することを顧客価値とし、大学生を中心とする講師の成長支援を通してより多くの成長した若者を社会に送り出すことを社会価値と捉え、この二つの価値の追求によって、持続的成長と、企業価値の向上を目指しております。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、社会的な課題である少子高齢化が進み、大学受験の入試環境の変化や同業他社との競争により、在籍生徒数が減少するなか、教育コンテンツ開発を推進する一方、マーケティング改革、顧客提供価値の向上に取組み、業績回復の兆しは見えたものの、いまだ途上にあります。来期も、引き続き短期的課題に集中的に取組み当社のベースの力を更に引き上げる必要があると考えております。そのため、中期経営計画につきましては、短期の業績回復が確かなものになる来期を経て、新たな経営体制のもとで、中長期の戦略的課題や新領域開拓に向き合い、ベネッセグループの多様なアセットを活用するといった観点を踏まえて策定する必要があることから、このタイミングでの発表を見送ることといたしました。

当社グループは、継続的な成長を目指しており、収益性の観点から翌期の予想連結売上高及び連結営業利益を客観的な経営指標として位置づけております。現時点における2025年2月期の当社グループの予想連結売上高及び連結営業利益は、次のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

経営指標

2025年2月期(予想)

売上高

21,797

営業利益

1,271

 

 

(3) 経営環境

当社グループを取り巻く環境は、少子高齢化や人口減少の進展、物価上昇といったマクロ要因と、日本の教育制度の変化やEdTech(エドテックとは教育・学習に最新のTechnologyを利用したサービスの総称)をはじめとした成長領域への異業種企業の参入などの複合的かつ多様な影響を受けて大きく変化しております。特に教育制度の変化は、当社の経営環境に大きな影響を与えるものであり、迅速な対応が求められていると認識しております。

 

(4) 経営戦略等、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(3)のような経営環境の中、主力とする個別指導事業の課題は以下の通りです。

 

1.教育・サービス開の推進

教育環境の変化の中で生じるお客様のニーズに応えられるような新サービスの開発です。私立生向けに、学校別対策コンテンツの開発、中学受験指導品質の向上、校内塾事業の拡大をおこないます。公立生向けに、公立高校受験に必要な理科・社会の対策に必要なサービス開発をおこないます。ベネッセグループのアセットを活用した当社独自の競争優位性を活かしてお客様のニーズに応えられるようにサービスの開発を進めてまいります。

 

 

2.マーケティング改革

外部サイトを経由した問い合わせは減少傾向にあり、これを補うために自社サイトのリニューアルをはじめ、Web領域を中心としたマーケティング改革を引き続き進めてまいります。中期的にはマスに対する認知拡大を図り、ブランド力を強化してまいります。

 

3.人財育成の強化

個別指導はコモディティ化しており、サービスの仕組みで差別化を図ることが難しくなってきております。こうした事業環境において、お客様に価値を提供しているアルバイトの大学生等の講師と教室社員は、当社事業を支える重要な人的資本であります。したがって、そのサービス提供者である人財を独自に育成することが、他社との重要な差別化要素であると認識しております。他社との差別化をさらに強化するために、引き続きホスピタリティを基軸とし、お客様に当社の教育理念を届ける人財の育成を推進してまいります。

 

4.教室運営の生産性向上

顧客価値を提供する人財の活力を向上させるために、労働環境や業務プロセスを改善し効率化していくことが引き続き重要な課題と考えております。DXを活用したコミュニケーションツールを利用することで生徒・保護者とコミュニケーションを強化するとともに効率化を進めてまいります。

教室での提供価値を向上させるために、生徒一人ひとりの目標達成・成果実現のために面談力・提案力の向上による品質とともに、生徒が快適に学習するための教室環境の改善、美化、インフラ整備を進めてまいります。

 

これらの課題に取組み、持続的な企業価値向上に努め、企業理念に掲げた「笑顔あふれる『人の未来』」に貢献してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

1.サステナビリティ全般

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。当社は、サステナビリティを巡る課題への対応について、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しています。当社のサステナビリティに関する取組みについては、当社IRサイト等に開示しています。

 

(1) ガバナンス

当社は、社会に信頼される企業であり続けるため、法令遵守に基づく企業倫理の重要性を認識し、コーポレートガバナンスを経営上の重要課題と位置付けています。また、変動する社会、経営環境に対応した迅速な意思決定と経営の健全性の向上を通じ、長期的な安定と持続的な成長を実現するため、すべてのステークホルダーへの価値を高めることで、企業価値向上に努めます。

なお、詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

(2) 戦略

当社にとって「働く人の活力」が事業成長の源泉です。独自の人財育成施策や従業員ロイヤリティ向上の取組みが従業員感動満足を生み、人と組織の活力が高まります。結果としてそれが教育サービスの向上につながり、お客様満足度の向上といったお客様感動満足を生みます。従業員の活き活きとした、ホスピタリティある行動が、お客様のための、一人ひとりに寄り添った教育サービスを届ける原動力となり、結果として当社の持続的成長につながります。当社は、3つの教育理念とホスピタリティを基軸に、未来を切り拓く力を手渡す教育サービスを提供しておりますが、教室の社員や講師の一人ひとりに寄り添った関わりそのものが、お客様にとっての当社の価値と捉えています。当社は、このサービスプロフィットチェーンの好循環を生み出すことが、教育サービスの質やお客様にとっての当社の価値向上に直結すると考え、この循環の中で活躍する人財を採用・育成する人財戦略が経営戦略であるとの認識のもと、持続的な事業成長に向けた人的資本への投資に注力しております。

 

(3) リスク管理

当社の事業活動がステークホルダーに対して悪影響を与えていないか、社会課題の悪化を助長していないかを確認し、そうした事態の発生を防ぐことが企業経営における社会に対する責任と捉え、リスクマネジメントを行っております。2023年度は危機事案発生防止及び危機事案発生時対応・再発防止に係る機関としての危機管理委員会を定期的に開催し、適宜、代表取締役への報告や定期的に取締役会及び監査役会に審議の結果を報告するとともに、内部監査室等と連携することにより、重要な問題の対応を図りました。更に、代表取締役による従業員への危機管理意識向上のための発信や、従業員対象のコンプライアンス研修、注意喚起を含む情報共有を行い、事案の予防、再発防止に努めました。当社の使用人から直接報告等を行うことができる内部通報窓口「企業倫理ホットライン」及び「監査役直通ホットライン」は、内部通報制度運用規程に基づいて適切に運営しました。更に、今期は、ベネッセグループと連携し、災害発生時の従業員の安否確認及び建屋被害報告の体制について、被害状況把握の即時性向上を目指して一部の見直しを行うとともに、その運用を開始しました。各種感染症対策については、体調管理、入退室時の手指消毒、清掃といった基本的な予防対策を中心に、状況に応じた対策を継続的に実行し、感染症に伴う顧客や従業員の身体の安全を確保するとともに損害の発生防止に努めました。

 

 

2.気候変動への対応(ご参考)

当社は、企業理念において「笑顔あふれる『人の未来』に貢献する」を掲げています。気候変動は「人の未来」に深刻な影響を及ぼす地球規模の課題であるという認識のもと、気候変動への対応を、企業理念を実践する上での重要な取組みの一つと捉えています。当社は、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終報告書(TCFD提言)への賛同を表明し、2021年10月から、TCFD提言に沿って、株式会社東京個別指導学院単体の事業を対象に、複数のシナリオを用いた気候変動リスクおよび機会の特定と、定性的・定量的な事業インパクト評価を実施しました。当社は今後も2050年を見据えた長期的な視点で予測される環境変化を考慮し、気候変動に対応してまいります。そして、当社の持続的な成長と環境課題解決の両立を目指し、地球環境を考慮した拠点開発や、教育事業を通じて持続可能な未来をリードする人財を輩出することに尽力してまいります 。

 

3.人的資本への対応

教育事業を営む企業としての事業の根幹である人財について、人の成長が事業成長の軸であるとともに、人の成長が社会の未来をつくると捉え、お客さまや講師をはじめとするステークホルダーの成長を支援しています。

 

(1) 戦略

成長戦略として、1.サステナビリティ全般 (2) 戦略で述べた通り、独自の人財育成施策や従業員ロイヤリティ向上の取組みを強化するとともに、当社のサービスプロフィットチェーンの基幹である人財の採用・育成戦略が経営戦略上の重点課題であるという認識のもと、持続的な事業成長に向けた人的資本への投資に注力してまいります。また、当社は、関わるすべての人と喜びを分かち合う価値観を育み、多様な人財の能力や見識、アイデアを最大限に活かし協働する「ホスピタリティ経営」を推進しており、ホスピタリティ実践が可能な人財を育成するための施策を強化しております。

 

≪人財育成方針≫

当社は、企業理念に基づき、講師・全従業員が働きがいを実感して成長できるよう支援しています。更に、当社が定めるホスピタリティ人財「いつも『ありがとう』を大切に、関わるすべての人と喜びを分かちあえる人」を目指し、講師・従業員1人ひとりが行動目標を定め、目標実践できるよう支援しております。

 

≪2023年度 人財育成に関する当社の取組み≫

① 講師に対する取組み

(ア) 教室年間計画

講師がチームで教室運営の計画を立案しPDCAを回す1年間のプログラム「教室年間計画」や、その集大成である「TEACHERS’SUMMIT」では、講師同士の自律的な学びと実践の機会を提供しております。

(イ)  リーダーシップ養成研修

社会が求める力を主体的に学ぶ場である「TKGパートナーズ・アカデミー リーダーシッププログラム」を実施し、持続可能な未来を切り拓く力を備える人の育成に注力いたしました。

(ウ)  コーチング研修

主体性と思考力を育むコーチングメソッドである「TKGコーチング」を開発、2023年度は新人講師4,050名に対し研修を実施しました。講師がコーチングの力を習得することで、東京個別指導学院に通う約3万人の生徒の目標達成や、生徒自身が「自ら学び続ける人」として成長することに貢献していきます。「TKGコーチング」のノウハウはビジネスパーソンとして社会に出た後も希少性の高いマネジメントスキルとして活かすことができると考えており、当社の講師経験を持つ人財のウェルビーイングに貢献しております。

(エ)  ホスピタリティ研修

当社は、関わるすべての人と喜びを分かち合う価値観を育み、多様な人財の能力や見識、アイデアを最大限に活かし協働するコンピテンシーを身に付ける「ホスピタリティ研修」を体系化し、展開しています。「ホスピタリティ」という概念を体系的に学び直し、単なる概念で終わらせてしまうのではなく、教育サービスにおけるホスピタリティとは何かを問いかけ、行動に移すことを目的とした研修であり、2023年度はリーダー講師677名に実施いたしました。

 

 

② 社員に対する取組み

(ア)  全社員にオンライン学習プラットフォームを導入

社員のリスキリング、キャリア自律の支援のため、全社員にオンライン学習プラットフォームを導入いたしました。社員自身のアクティブラーニングによる、専門性とスキルの強化、自己実現とキャリアアップの機会を提供しております。

2024年2月29日

利用率 (アカウント登録数/アカウント発行数(社員数))

91%

 

 

≪社内環境整備方針≫

当社は創業以来、一人ひとりのお客様と向き合う、対話を通じた教育サービスを提供してまいりました。お客様と関わる人そのものが価値となる事業であり、働く人の活力が事業成長の源泉と捉え、「人を大切にすること」を基本とし、多様な人財が十分に個性や能力を発揮できる組織風土・文化づくりに尽力しております。人財の多様性の確保は「ホスピタリティ経営」の基盤を成すものであり、多様な人財の能力や見識、アイデアを最大限に活かし協働することが、お客様への提供価値向上に不可欠であると認識しています。人財の登用・処遇においても、年齢、性別などに依らず、従業員一人ひとりの当社での経験や特性、能力、意欲等を判断の軸とした公正な評価を実施しており、多様な個性や能力をもつ人財が、中核人財として活躍できるよう環境の整備を行ってまいります。

 

≪社内環境整備に関する当社の取組み≫

① 多様性(ダイバーシティ)の活用

■女性の従業員比率、および管理職への登用及びその状況

当社内の正規雇用女性従業員比率は、36.4%です。主力の個別指導教室においては全266教室中約20%が女性教室長です。人財の登用については、性別に依らず、当社での経験や特性、能力、意欲等を判断の軸としておりますが、女性も含めた多様な視点を集めることが重要と捉えています。女性活躍については、出産・男性も含めた育児休暇や時短勤務制度、育児・介護・私傷病での通院入院に利用できるように年次有給休暇を最大60日まで積み立てる制度などの仕組みを整備すること等を通じて、ライフイベントとキャリアを両立し、長く働き続けていただきたいと考えており、各種施策を拡充してきた結果、女性社員の平均勤続年数は年々改善傾向にあります。今後もさらに意欲のある人財が長く安心して働き続け活躍できるよう、環境整備や人財育成に注力してまいります。

■中途採用者の管理職への登用及びその状況

即戦力としての期待等から中途採用を進めております。また、多様な知見を集結させ今後の事業戦略立案を推進しています。アルバイト講師経験者が当社以外での社会人経験を経て中途入社した後、中核人材として活躍している実績も多くあります。管理職における中途採用者の割合は2021年度から2023年度の3年連続で半数以上となっております。

なお、学生時代に当社アルバイトを経験し当社を卒業した講師OBOG(アルムナイ)とのネットワークを構築しています。業界や年代を超えた交流機会の提供等を通じ、退職した講師との良好な関係性を保ち続けることができるよう取組んでいます。

■高齢者の就業機会確保

当社は定年を60歳としておりますが、健康で変わらぬパフォーマンスを発揮していただけることが十分に期待できる場合には、60歳以降も希望者を再雇用し、健康に配慮しつつ、変わらぬパフォーマンスを発揮できる体制を整備しております。

 

 

② 健康経営の推進

人と人との関わりによって価値を生む当社の事業にとって、「働く人の活力」が事業成長の源泉です。従業員が長期にわたり能力を発揮し続け高い活力を維持するためには、心身の健康維持向上が重要と捉え健康経営を推進しております。代表取締役社長を健康管理最高責任者、取締役副社長を健康管理担当役員とし、衛生委員会・衛生管理者・従業員が一体となり、産業医や健康保険組合と協力して従業員および家族の心と身体の健康保持・増進を図るための施策等に取組みます。また、経営上の重要な事項として、労働時間や有給休暇取得状況を経営会議にて報告します。このような取組みが認められ、2019年より6年連続で経済産業省による「健康経営優良法人」の認定を受けています。

 

(2023年度の具体的な取組み内容)

① 生活習慣病などの疾病高リスク者に対する精密検査案内や多様な検診への補助

② 従業員ばかりでなく従業員の被扶養者も利用・参加できる施策や施設の充実

③ 衛生委員会の実施義務がない小規模事業所においても衛生委員会を実施

④ 従業員が持続的に働き続ける環境づくり推進を目的とした、仕事と介護の両立ハンドブックの配布

⑤ 人事部による衛生管理者資格取得のための勉強会開催

⑥ 新型コロナウイルス感染予防対策として、予防グッズの配布、サーマルカメラの設置、清掃・消毒の徹底、ソーシャルディスタンスに配慮した座席配置、クリアパーテーションの設置、在宅勤務の推進

⑦ 禁煙促進のため、卒煙アプリの導入及びプログラム実施費用の補助

⑧ 定期健診当日に特定保健指導を行う「当日特保」の実施

⑨ 本社社員が教室を訪問し、教室社員との自己紹介や業務理解を深めるコミュニケーション活性化施策を実施

⑩ 教室の美化と衛生環境整備のため、全教室でクレンリネスを実施。さらに本社社員による全教室抜き打ち調査を実施

 

 

目標値

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

健康診断受診率

毎年100%

100%

100%

100%

100%

100%

精密検査受診率

2025年までに100%

28%

54%

45%

35%

特定保健指導実施率

2025年までに50%

38.1%

23.5%

21.7%

25.9%

新職業性
ストレス
簡易調査票

受検率

毎年95%以上

96.0%

97.2%

96.1%

97.3%

94.4%

高ストレス者率

13.30%

14.4%

13.5%

15.2%

14.9%

ワーク
エンゲージメント

3

2.7

2.7

2.8

2.8

2.8

健康6項目平均

3

2.9

2.8

2.9

2.9

2.9

 

 

③ 労働時間の適正な管理、年次有給休暇の取得促進

労働生産性の向上を一層進めて過重労働や業務量の偏りをなくし、休暇をとりやすい環境を維持することで人財の定着率を高め、企業の持続的な発展を目指しております。

④ 働き方改革の推進

従業員一人ひとりが仕事とプライベートのバランスを取りながら、充実した仕事生活を送ることができるよう、「フレックスタイム制」「時短勤務」「在宅勤務」など、柔軟な働き方の実現による働き方改革を推進しております。

 

(2) 指標及び目標

当社は、持続的な企業価値向上のため、「(1) 戦略」の記載事項をはじめとする各種取組みをおこなっております。なお、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針についての具体的な指標及び目標等は検討中であります。必要かつ有用な指標につきましては、当社を取り巻く環境を踏まえ今後も検討してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項、及び経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。

なお、文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 業績の季節性による変動について

当社グループは、主に、夏、冬、春の講習会及び2月、3月、4月に生徒募集活動を通常よりも活発に行っております。その結果、生徒数、各種売上高は増加する傾向にあります。また、経費面でも生徒募集の広告宣伝費、その他経費も集中して発生する可能性があります。

 

(2) 少子化と当社の今後の方針について

当社グループの属する学習塾業界は、長期にわたる出生率低下に伴う少子化により、学齢人口の減少という大きな問題に直面しております。また、大学入試改革などの目まぐるしい環境変化の中で、入試選抜方法の多様化・複雑化により、入試を目的とした生徒・保護者の教育環境の変化及び将来の進路選択に対する不安が高まる可能性があり、当業界内での生徒数確保の競争激化もこれまで以上となるものと想定されます。このような状況の下、人財育成事業などを中心とした事業の複線化を推進し、長期にわたり安定的・持続的に成長するために、より一層他社との差別化に努めます。今後、少子化が急速に進展した場合、及び同業間でコモディティ化する現状に特色が打ち出せない場合、または事業の複線化が計画通りに進まない場合、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 人財確保及び育成について

当社グループは、事業展開上約1万人を超えるアルバイト講師を雇用しております。もし、優秀な講師の継続的採用および育成が困難になった場合、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

人財確保の対策としては、当社の募集と応募者のニーズの接点を逃さないために、エリアごとに拠点を設けて集中的で効率的な採用を行っております。

人財育成の対策としては、当社オリジナルの人財育成プログラムを実現しております。

講師が実践を通じて学び、社員と共に成長する共創のプログラム・TEACHERS' SUMMITの継続的な推進と、各教室の主要講師を対象としたプログラム・TEACHERS' SUMMITアカデミーの開催を通して、講師が主体的に学べる場を提供しております。

 

(4) 個人情報の取扱いについて

当社グループは、効率的な学習指導を行うため、3万人を超える生徒・保護者の個人情報をデータベース化し管理しております。万一、当社グループの過失や第三者による不法行為等によってお客様の個人情報や機密情報等が漏洩等した場合、当社グループに対する損害賠償責任や社会的な信用低下等により、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 自然災害のリスクについて

当社グループは、9都府県に出店し、主に生徒へ学習指導を行っております。もし、地震や台風などの大規模な自然災害等により、教室における直接の被害の発生や、各種規制などによって通常の営業活動の継続に支障をきたす場合、今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなウイルスによるパンデミックが発生し通常の営業活動の継続に支障をきたした場合、当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 有形固定資産、のれん及び無形固定資産の減損について

当社グループの連結財務諸表に計上されている有形固定資産、のれん及び無形固定資産または提出会社の財務諸表に計上されている関係会社株式について、今後、収益性の低下等により回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には減損損失が発生する可能性があり、当社グループまたは提出会社の業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されたことで、国内における個人消費、インバウンド需要の増加などにより社会経済活動は緩やかな回復の動きがみられたものの、海外景気の下振れ、ウクライナ紛争の長期化や中東地域をめぐる情勢、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響には引き続き注意する必要があり、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

教育環境といたしましては、少子化が進む中、GIGAスクール構想によりアナログからデジタルへの変化が推進されております。また、問題解決能力や主体性を育むことを目指したSTEAM教育では、これまでの画一的な学びから、多様な思考による個別最適化した学びへの変化が求められております。受験においては、首都圏における中学受験者数は過去最多を更新する一方、大学受験は、2023年度私立4年制大学の定員割れ率が53.3%と全入時代を迎える中、入試制度は多様化しており、推薦型の入試においては「学校推薦型選抜」「総合型選抜」を選択する受験生が年々増加しております。

学習塾業界においては、環境変化への迅速な対応が求められるとともに、異業種からの新規参入も含めた生徒獲得の企業間競争は一段と激化しております。

このような状況のもと、当社は、企業理念「やればできるという自信 チャレンジする喜び 夢を持つ事の大切さ 私たちはこの3つの教育理念とホスピタリティをすべての企業活動の基軸とし笑顔あふれる『人の未来』 に貢献する」を経営の中心に据え、お客様一人ひとりに寄り添う教育サービスを提供してまいりました。

ここ数年の課題であった問い合わせ回復に対する対応として、マーケティング改革をおこなうとともに、自社サイトのリニューアルをはじめ、顧客に訴求しやすいページ、デザインの仮説検証サイクルを短期化し、改善活動を重ねてまいりました。また、認知度向上のために、首都圏と関西を中心に夏の生徒募集の時期にあわせて集中的に交通広告をおこないました。その結果、下期の問い合わせ件数は前年同期を上回ることができました。

その他の主な取組みとして以下4つをおこなっております。

 

①  教務コンテンツ開発の推進

第1四半期に開発した年内入試講座に続き、需要のある講座開発を引き続き進めております。また、テストローンチを開始した校内塾事業は、ベネッセグループのアセットを活用した当社独自の競争優位性を築きながらサービスを構築してまいりました。その結果、受講生の学習成果は着実に向上していることが確認出来ており、2024年度にはサービス提供先の拡大を予定しております。

②  組織基盤の向上

事業環境の大きな変化を受けて、全社員で事業課題に向き合い、提供価値を再定義する取組みを進めてまいりました。経営と事業現場社員が対話を重ねて当社の提供価値を再定義し、一つひとつの教室がその価値提供を実現するための計画を策定し実行しております。

③  顧客接点のDX化を推進

教室にご通塾いただくお客様とのコミュニケーションを改善するために、顧客コミュニケーションツールとしてパッケージソフトのテスト導入をおこなっております。

④  教室の統合

同一駅で2教室展開していたエリアにおいて、顧客利便性を十分に配慮した上で教室を統合することで拠点収益の改善を推進いたしました。

 

 

当期の在籍生徒数については、主力の高校生において、大学入試環境の変化により一般入試希望者の問合せが減少したこと等により、2023年度の期中平均在籍生徒数は30,720名(前年比94.7%)となりました。

当連結会計年度の業績は、マーケティング改革により下期の問い合わせが前年同期間を上回るなど回復したことで、入会者も回復が継続しておりますが、第1四半期での入会者の苦戦を取り戻すまでにいたりませんでした。その結果、売上高は21,661百万円と前年同期と比べ128百万円0.6%)の減収となりました。営業利益は1,608百万円と前年同期と比べ215百万円11.8%)の減益となりました。経常利益は1,615百万円と前年同期と比べ219百万円11.9%)の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は959百万円と前年同期と比べ290百万円23.2%)の減益となりました。

当期は、将来の事業成長の検討の前に、先ずは短期業績の回復に取組み、内部の構造課題の解決を優先的に進めてまいりました。

具体的には、年内入試の対応に向けた講座の開発、校内塾やニーズ別の講座開発等へのプロジェクト推進、及びマーケティング改革により自社サイト経由での問い合わせが前年同期で大きく上回る事、また面談力向上による退会率の改善などの取組みです。その結果、業績回復の兆しは見えたものの、いまだ途上にあります。来期も、引き続き短期的課題に集中的に取組み東京個別指導学院のベースの力を更に引き上げる必要があると考えております。

そのため、中期経営計画につきましては、短期の業績回復が確かなものになる来期を経て、新たな経営体制のもとで、中長期の戦略的課題や新領域開拓等に向き合い、ベネッセグループの多様なアセットを活用するといった観点をふまえて策定する必要がある事から、このタイミングでの発表を見送ることといたしました。

なお、当社グループの主たる事業は個別指導塾事業であり、その他の事業の売上高、セグメント利益等の金額は合計額に占める割合が僅少であるため、記載を省略しております。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産及び受注の状況

当社グループは、生徒に対して授業を行うことを主たる業務としておりますので、生産、受注の実績はありません。

 

② 販売の状況

 

部門

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比

生徒数(人)

金額(千円)

構成比(%)

生徒数(%)

金額(%)

個別指導塾

 

 

 

 

 

 小学生

4,238

2,482,496

11.5

95.8

102.0

 中学生

11,207

7,528,682

34.8

94.8

99.0

 高校生

15,275

11,225,890

51.8

94.4

99.3

個別指導塾計

30,720

21,237,069

98.0

94.7

99.5

その他事業計

424,180

2.0

94.7

合計

21,661,250

100.0

99.4

 

(注) 1 生徒数は、期中平均の在籍人数を記載しております。

2 その他事業は、サイエンス教室・文章表現教室事業、オンライン個別指導事業、校内塾事業及びHRBC株式会社の企業向け人財開発事業であります。

 

 

(2) 財政状態

〔資産〕

当連結会計年度末の資産合計は11,688百万円と、前連結会計年度末に比べ2.4%278百万円増加しました。

流動資産は7,594百万円と、前連結会計年度末に比べ9.5%656百万円増加しました。この増加は主に、売掛金が85百万円減少したものの、現金及び預金が737百万円増加したことによるものであります。

有形固定資産は685百万円と、前連結会計年度末に比べ11.5%89百万円減少しました。この減少は主に、既存教室の減損と除却によるものであります。

無形固定資産は1,407百万円と、前連結会計年度末に比べ20.3%359百万円減少しました。この減少は主に、生徒配置システムや請求基盤システムの運用開始と償却割合増加によるものであります。

投資その他の資産は2,000百万円と、前連結会計年度末に比べ3.6%70百万円増加しました。この増加は主に、教室閉鎖に係る敷金及び保証金が32百万円減少したものの、繰延税金資産が77百万円増加、投資有価証券が24百万円増加したことによるものであります。

 

〔負債〕

当連結会計年度末の負債合計は3,247百万円と、前連結会計年度末に比べ10.0%294百万円増加しました。

流動負債は3,213百万円と、前連結会計年度末に比べ9.9%290百万円増加しました。この増加は主に、賞与引当金が95百万円増加、未払消費税等が77百万円増加、未払法人税等が57百万円増加、未払費用が24百万円増加、契約負債が21百万円増加、役員賞与引当金が12百万円増加したことによるものであります。

固定負債は34百万円と、前連結会計年度末に比べ12.3%3百万円増加しました。この増加は主に、繰延税金負債が2百万円減少したものの、その他が6百万円増加したことによるものであります。

 

〔純資産〕

当連結会計年度末の純資産は8,440百万円と、前連結会計年度末に比べ0.2%16百万円減少しました。この減少は、親会社株主に帰属する当期純利益を959百万円計上したものの、剰余金の配当支払いを977百万円行ったことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ737百万円増加し、6,807百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれぞれの主な要因は以下のとおりであります。

 

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

当連結会計年度において営業活動により得られた資金は1,976百万円となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益1,505百万円、減価償却費530百万円、減損損失110百万円、長期前払費用償却額78百万円、賞与引当金の増加95百万円、売上債権の減少85百万円、未払消費税等の増加77百万円、法人税等の支払額568百万円によるものであります。

前連結会計年度と比較しますと、未払消費税等が379百万円増加したものの、税金等調整前当期純利益が306百万円減少、法人税等の支払額が416百万円減少したことなどにより1,011百万円増加しております。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

当連結会計年度において投資活動により使用した資金は262百万円となりました。

これは主に、移転等に係る有形固定資産の取得による支出113百万円、請求基盤システムや生徒配置システムの構築に係る無形固定資産の取得による支出83百万円、敷金及び保証金の差入による支出38百万円などによるものであります。

前連結会計年度と比較しますと、無形固定資産の取得による支出が317百万円減少したことなどにより327百万円減少しております。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

当連結会計年度において財務活動により使用した資金は976百万円となりました。

これは、配当金の支払いによるものであります。

 

 

(4) 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表及び当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表及び財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表及び財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第一部 第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第一部 第5 経理の状況 2財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要は、運転資金に加え、教室の新規開校への投資、ソフトウェア開発費用、成長分野への事業投資などがあります。これらの資金需要に対して、主に自己資金を充当していく方針でおります。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は6,807百万円となっており、当社グループの事業活動を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。尚、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載した新規教室の設備投資を予定しておりますが、自己資金により賄っていく予定であります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

資本業務提携契約

株式会社ベネッセホールディングスと、資本業務提携契約を締結しております。

資本業務提携契約の要旨は次のとおりであります。

 

内容

・顧客獲得及び教材開発・販売に関する相互協力

・データベース及びLMS(Learning Management System:ラーニング・マネージメント・システム)等個別指導サービス開発に関する相互協力など

提携先

株式会社ベネッセホールディングス(岡山県岡山市北区)

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。