第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業以来「事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献すること」を使命とし、この使命達成のため「品質重視の考えに立ち、常に世界に誇る技術を開発、向上させる」「経営効率の向上に努め、企業の存続と発展に必要な利益を確保する」「市場志向の精神に従い、そのニーズにこたえるとともに、需要家への奉仕に徹する」の3項目を掲げ、その実現に努めることを経営理念といたしております。

また、グループ経営理念の実践に加え、環境問題や格差拡大など深刻化する社会問題への対応と社会全体の持続性への配慮を当社グループの経営方針として明確化するため、「サステナビリティ方針」を策定しております。このサステナビリティ方針では、「1. 最先端のメカトロニクス技術によるイノベーション創出で、お客さまをはじめ社会への価値創造に貢献」「2. 世界中のステークホルダーとの対話と連携を通じ、公正かつ透明性の高い信頼ある経営の実現」「3. 世界共通の目標であるSDGsの達成を目指し、グローバルでの社会的課題の解決」の3つを方針として掲げています。

このような方針のもと、社会および顧客ニーズに高い次元でこたえる製品・サービスの提供や、従業員にとって働きがいのある会社づくりに取り組んでいます。これらにより、継続的な利益の創出を実現し、ステークホルダーのみなさまへの一層の還元を図るとともに、社会課題の解決を通じた持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、長期経営計画「2025年ビジョン」(2016年度~2025年度)においてメカトロニクスを軸とした「工場自動化・最適化」と「メカトロニクスの応用領域」を事業領域と定め、経営目標については営業利益を最も重要な経営指標とし、「質」の向上にこだわることで経営体質の強化を目指しています。

この「2025年ビジョン」の期間における最後の中期経営計画「Realize 25」(2023年度~2025年度)を2023年度より始動いたしました。「Realize 25」では、安川グループ経営理念を基本にソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」(※1)を中心とした事業活動を強化し、「2025年ビジョン」の達成を目指すとともに、お客さまの経営課題の解決とサステナブルな社会の実現に寄与してまいります。

なお、「2025年ビジョン」および「Realize 25」の詳細は、以下のURLからご覧いただくことができます。

 

2025年ビジョン:https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2019/06/Vision2025_Revision.pdf

Realize 25    :https://www.yaskawa.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/realize25.pdf

 

(※1)i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス):当社が1969年に提唱した「メカトロニクス(メカニズムとエレクトロニクスを融合した造語)」に3つの“i”(integrated:統合的、intelligent:知能的、innovative:革新的)を重ね合わせ、お客さまの経営課題の解決に寄与するソリューションコンセプト。

 

(3) 中期経営計画「Realize 25」の概要

① 財務目標

当社グループは「2025年ビジョン」において、営業利益を最も重要な経営指標に据え、過去最高となる1,000億円の営業利益を目指しております。「Realize 25」においては、i3-Mechatronicsの展開とロボティクスの進化により新たな価値を創出し、収益および生産性を高めることで、「2025年ビジョン」の達成を目指します。

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[参考]

2022年度実績為替レート 134.12円/米ドル、139.84円/ユーロ、19.68円/元、0.103円/ウォン

2025年度想定為替レート 130.00円/米ドル、140.00円/ユーロ、19.00円/元、0.100円/ウォン

 

 

② 基本方針

方針1 i3-Mechatronicsソリューションによる価値創出

 「i3-Mechatronics」のコンセプトを軸に、お客さまが求める「コト」、すなわち「改善や進化」へのソリューションの価値を最大化することで、お客さまへの貢献性を高めます。この「お客さまへのソリューション」を実現するために、技術・生産・販売・品質機能の強化を図ってまいります。

(a) お客さまの価値創出につながる技術開発力の強化

安川テクノロジーセンタで業界をリードする製品・技術を創出し、お客さまの価値向上を実現します。

(b) i3-Mechatronicsによる自社の「ものづくり」進化

i3-Mechatronicsソリューションを自社の生産現場で実践し、生産性向上・生産管理高度化を追求することで、当社製品の競争力向上を図ります。

(c) お客さまのサプライチェーンへの戦略的なアプローチの強化

エンドユーザや装置メーカ等のお客さまと連携強化を図り、最適なソリューションを提供するとともにビジネスの領域拡大を目指します。

(d) 製品ライフサイクルにおける製品・サービス品質の革新

YDX(※2)を通じて蓄積される膨大なデータを活用して「お客さまの設備を止めない」サービスをグローバルで展開します。

 

(※2)YDX:YASKAWA Digital Transformationの略。第1フェーズである「YDX-I」では、経営資源の可視化・一元化とその最適配置を目指した活動を実施。「YDX-Ⅱ」では、製品・サービス視点でのお客さまへの価値創出を実施。

 

方針2 世界一/世界初の自動化コンポーネントを軸としたグローバル成長市場攻略

 自動化コンポーネントを中心としたグローバルでの市場別戦略を展開し、最適な生産体制を構築することで、成長市場の需要を確実に捉えます。

(a) グローバル最適生産体制の構築とレジリエントなサプライチェーン構築

拡大する需要に対して生産能力・生産性の向上を図るとともに、環境変化やリスクに強いグローバル生産体制を構築します。

 

方針3 メカトロニクス応用領域の事業拡大によるサステナブルな社会の実現に貢献

(a) Energy Saving

グリーンプロダクツの拡販によりお客さまの省エネ性向上と環境負荷軽減を実現します。

(b) Clean Power

新製品を軸に事業を本格拡大させ、世界トップクラスの創エネを実現します。

(c) Food & Agri

コア技術を結集し、食の安全と安定供給を実現します。

(d) Biomedical Science

ゲノム解析や再生医療分野における自動化等を通じて、すべての人が人間らしく、より豊かに、輝ける未来を実現します。

 

方針4 YDXとサステナビリティ経営の深化による経営基盤の強化

(a) PLM(Product Lifecycle Management)の再構築をベースとしたYDXチェーンによる新たな価値提供

YDXの第2フェーズとなる「YDX-Ⅱ」ではPLM再構築によるお客さまへの価値を創出します。

(b) マテリアリティへの取り組み強化を軸としたサステナビリティ経営の推進

サステナビリティ課題に対するマテリアリティを設定し、ステークホルダーのみなさまの期待に応えるサステナブルな経営を実践します。

 

③ 中期経営計画「Realize 25」の遂行状況

財務実績

 

2023年度実績

売上収益: 5,756億円

営業利益: 662億円

営業利益率:11.5%

ROE:    13.6%

ROIC:   11.8%

配当性向: 33.0%

 

2023年度の主な取り組み

中期経営計画「Realize 25」の達成に向けた2023年度の主な取り組みは以下のとおりです。

 

方針1 i3-Mechatronicsソリューションによる価値創出

(a) お客さまの価値創出につながる技術開発力の強化

未自動化領域の開拓を狙った新型自律ロボット「MOTOMAN NEXTシリーズ」と生産現場のセルを統合制御しi3-Mechatronicsを実現するYRMコントローラ「YRM1010」の販売を開始しました。

(b) i3-Mechatronicsによる自社の「ものづくり」進化

内製化拡大を実現する国内ロボット機械加工工場の建設を完了しました。

(c) お客さまのサプライチェーンへの戦略的なアプローチの強化

i3-Mechatronicsを実現するキープロダクトによるお客さまへのアプローチを強化し、各業界のトップメーカーとの協業を通じた実績を拡大しました。

(d) 製品ライフサイクルにおける製品・サービス品質の革新

市場サービスデータの一元化・構造化を行い、製品品質状況・市場稼働状況の集約管理を開始しました。

 

方針2 世界一/世界初の自動化コンポーネントを軸としたグローバル成長市場攻略

(a) グローバル最適生産体制の構築とレジリエントなサプライチェーン構築

グローバルにおける主要部品の内製化や事業部共通の重点部品の一括調達により、生産/調達体制および需要地生産体制の強化を推進しました。

 

方針3 メカトロニクス応用領域の事業拡大によるサステナブルな社会の実現に貢献

(a) Energy Saving

安川インバータGA700シリーズの大容量帯の販売を開始し、大型の一般産業用機械や設備への適用を可能としました。

 

(b) Clean Power

脱炭素社会実現に向けて新型の太陽光発電用パワーコンディショナ「Enewell-SOL P3A」の市場投入を行い、国内における自家消費市場での取り組みを強化しました。

(c) Food & Agri

米国でいちごの植物工場を展開しているOishii Farm Corporationとの資本業務提携により植物工場の自動化を推進しました。また、JA全農と協業開発を進める「きゅうりの葉かき作業の自動化」は本格的な導入フェーズに移行しました。

(d) Biomedical Science

再生医療分野におけるロボットを活用した自動化プラットフォームの構築に向け、外部パートナーとの共同研究を進めました。

 

方針4 YDXとサステナビリティ経営の深化による経営基盤の強化

(a) PLM(Product Lifecycle Management)の再構築をベースとしたYDXチェーンによる新たな価値提供

PLM再構築のベースとなる安川データレイクの基盤整備を進めました。

(b) マテリアリティへの取り組み強化を軸としたサステナビリティ経営の推進

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

(4) 経営環境および優先的に対処すべき課題

 2024年度の当社グループを取り巻く経営環境は、半導体・電子部品市場の投資再開が見込まれる等、製造業における自動化・省力化に関する設備投資が回復する見込みです。

 2024年度は中期経営計画「Realize 25」そして長期経営計画「2025年ビジョン」の確実な達成に向けて、DX(Digital Transformation)をベースにソリューションコンセプトである「i3-Mechatronics」をもう一段進化させるとともに、市場の変化を捉えた戦略をグローバルに展開し、更なる収益性の向上に努めてまいります。

 

 2024年度の重点実施項目は以下のとおりです。

 

① お客さまの“コト”を実現するi3-Mechatronicsの進化

 徹底したお客さまの“コト”(改善・進化)の理解に基づくソリューション提案、そして、それを実現する

“モノ”(製品・技術)の提供を拡大させるとともに、自社の生産現場におけるi3-Mechatronicsの実践による自動化領域の拡大とモノづくりの高度化を進めていきます。また、グローバルでの協創によるi3-Mechatronicsの進化を目指し、i3-Mechatronicsプロジェクトで実証したソリューションの水平展開や、YRMコントローラを基軸としたグローバル展開を実行していきます。

 

② グローバル成長市場の動向を捉えた戦略展開によるビジネス拡大

 グローバルにおける主要なお客さまとの連携強化を通じ、半導体市場の投資の再開を確実に捕捉します。また、国内中核販社および拡販パートナーの役割連携による国内半導体市場でのプレゼンスを向上させるとともに、拡大が期待されるBEV(二次電池式電気自動車)領域のモノづくりやサプライチェーンの変化に追随した自動化ソリューションの提供を目指してまいります。

 製品面では、2023年度に市場投入した「MOTOMAN NEXT」の拡販を加速させるとともに、サーボ・インバータ市場におけるお客さまの“コト”の理解に基づく製品戦略を再強化していきます。

 

③ メカトロニクス応用領域の事業拡大に向けたパートナー戦略の推進

 カーボンニュートラルに向けて拡大する創エネ・省エネ需要をしっかりと捉え、新型の太陽光発電用パワーコンディショナ「Enewell-SOL P3A」を拡販していきます。また、メカトロニクス応用領域におけるアライアンスとして、“食”や“農業”、そして“バイオメディカル”における自動化領域でパートナーとの協業を進めていきます。

 

④ 「YDX-Ⅱ」プロジェクト推進強化によるサステナビリティ経営の実践

 生・販・技・サービスのデータ連携によるPLM再構築、そして、その基盤となる安川データレイクの構築等、

全社一丸となって「YDX-Ⅱ」プロジェクトを推進していきます。

 また、「One YASKAWA」の確立に向けた安川グループ経営理念の理解深化を継続し、安川グローバルにおいて、集約したデータに基づくサステナビリティ経営の実践を通じ、企業価値の更なる向上を目指してまいります。

 

 各セグメントにおける具体策は以下のとおりです。

 

〔モーションコントロール〕

 ACサーボモータ・コントローラ事業においては、半導体市場等の立ち上がりを確実に捕捉するため、販売活動を強化します。また、i3-Mechatronicsを実現させる「YRMコントローラ」やACサーボ「Σ-X」(シグマ・テン)シリーズなどを軸としてグローバルに展開し、収益のさらなる拡大を図ります。生産については、i3-Mechatronicsを実践した変種変量に追従できる自動化ラインを進化させて生産性向上を図ります。

 インバータ事業においては、ターゲット市場におけるお客さまの“コト”の徹底した理解に基づく販売活動の強化を図るとともに、グローバルでの需要地生産や部品内製化等により生産力の強化を進めていきます。太陽光発電市場においては、パワーコンディショナ「Enewell-SOL P3A」を中心に国内の自家消費市場の攻略を強化して売上拡大を図ります。

 

〔ロボット〕

 i3-Mechatronicsソリューションの実践・展開による提供価値を進化させるとともに、市場の変化に追従した事業展開を加速してまいります。

 また、2023年度に市場投入した「MOTOMAN NEXT」の拡販パートナーとの連携活動の強化を通じてプレゼンスの向上を図るとともに、多様化する市場ニーズを捕捉します。加えて、半導体やEVなどの注力市場においては、市場の立ち上がりを確実に捉え、事業拡大を進めていきます。

 生産については、国内外の生産拠点の自動化・省人化を拡充し、需要変動に強い効率的な生産体制を構築します。

 

〔システムエンジニアリング〕

 鉄鋼プラントシステム・社会システム分野では、AI・IoT技術によりカーボンニュートラル需要に対応した付加価値の高いサービスの提供に努めます。クレーン分野では、アジアを中心とする港湾クレーン等の成長市場への追従を図ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループは「安川グループ経営理念」のもと、「サステナビリティ方針」を2021年度に策定しました。この方針に沿ってマテリアリティを特定し、長期経営計画や中期経営計画における目標を展開することで、戦略的なサステナビリティの推進を図ります。また、進捗のモニタリングを行い、PDCAサイクルを回していくことで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

<サステナビリティ方針>

 私たちは、安川グループの経営理念である「事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献すること」を基本的な考え方として、その実践を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めます。

1.最先端のメカトロニクス技術によるイノベーション創出で、お客さまをはじめ社会への価値創造に貢献します。

2.世界中のステークホルダーとの対話と連携を通じ、公正かつ透明性の高い信頼ある経営を実現します。

3.世界共通の目標であるSDGsの達成を目指し、グローバルでの社会的課題の解決に取り組みます。

 

<当社グループのサステナビリティ推進のフレームワーク>

 「安川グループ経営理念」のもとに策定した「サステナビリティ方針」の実現のためにマテリアリティを特定し、長期経営計画や中期経営計画における目標展開を図ることで、戦略的なサステナビリティの推進を図ります。

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(1) サステナビリティについての取組み

① ガバナンス

 当社は、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。

 本委員会には関係部門の責任者、またアドバイザーとして社外取締役が出席し、グループ全体のサステナビリティを推進しております。また、マテリアリティに関する重点施策・方針の企画、審議、グループ展開、モニタリングを行っております。

 サステナビリティに関する取組み状況等は、定期的に取締役会および経営会議に報告しております。

 

<サステナビリティ推進体制>

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② 戦略

 サステナビリティ課題・目標(マテリアリティ)については、取締役会等において国際社会の動向や当社にとって関係の深い社会的課題を「ステークホルダーにとっての重要性」「当社にとっての重要性」の2つの視点で評価し、その中で特に重要度の高い課題をマテリアリティとして特定しました。また、特定したマテリアリティについては強化領域および戦略の方向性を明確化した定量的・定性的KPIを設定しております。当社グループは、マテリアリティの解決を通じて、サステナビリティ方針で目指す持続可能な社会の実現と企業価値の向上に取り組んでおります。

 

<当社グループのマテリアリティ>

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③ リスク管理

 「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標および目標

 当連結会計年度における当社グループのマテリアリティに関する取組みおよびその進捗状況は以下のとおりです。

 

<事業を通じた社会価値の創造と社会的課題の解決>

マテリアリティ

i3-Mechatronicsを通じたパートナー連携で産業自動化革命の実現

目指す姿

ソリューションコンセプトである「i3-Mechatronics」でお客さまの経営課題を解決する。

取組み

「i3-Mechatronics」プロジェクトの成功事例の蓄積

2023年度進捗

・「i3-Mechatronics」コンセプトを実現するキープロダクト(MOTOMAN NEXTシリーズ、YRMコントローラ、Σ-Xシリーズ、YASKAWA Cockpit)によるお客さまへのアプローチ強化

・各業界のトップメーカーとの協業を通じた実績拡大

 

マテリアリティ

クリーンな社会インフラ構築と安全・快適な暮らしの基盤づくり

目指す姿

(a) 当社の技術力を活用し製品の環境性能を高め、製品拡販により世の中の環境負荷を低減させる。

(b) 当社のこれまでのメカトロニクス技術を応用展開し、新規領域へ挑戦する。

取組み

[目標]

(a) CCE100(Contribution to Cool Earth 100)(※1)の達成

[2025年度:100倍]

(b) メカトロニクス技術を応用展開した取組み事例の拡大

2023年度進捗

(a) 125.9倍(見込み)

(b) 「省エネ」「クリーンパワー」「食品・農業」「バイオメディカル」を中心にメカトロニクス応用領域での取組みを推進

・安川インバータGA700シリーズ 大容量帯の販売開始

・太陽光発電用パワーコンディショナ Enewell-SOL P3A の販売開始

(※1)2025年度に当社製品によるCO2排出削減貢献量を当社グループによるCO2排出量の100倍以上とする独自の目標

 

マテリアリティ

オープンイノベーションを通じた新たな技術・事業領域の開拓

目指す姿

(a) M&A/アライアンスを活用し新領域での事業拡大および技術をフィードバックする。

(b) 世界初、世界一の技術・製品開発に向け、社外との連携を推進する。

(c) ベンチャー投資と協業を通じ事業シナジーを発揮する。

取組み

(a) M&A/アライアンスを通じた新領域への取組みの強化

(b) 産学官連携の取組みの強化

(c) YIP(※2)を通じたベンチャー投資の拡大

2023年度進捗

(a) 当社の事業領域である工場自動化およびメカトロニクス応用領域において、技術的シナジーの創出に向けてM&A/アライアンスを活用した成長機会の積極的な探索を継続

・JA全農と協業開発を進める“きゅうり葉かき作業自動化”の実証から本格的導入フェーズへの移行

・米国 Oishii Farm Corporationとの資本業務提携による植物工場の自動化推進

(b) 当社の将来技術に寄与する研究開発について、国内外との産学官連携を推進

(c) ベンチャー投資:1件(累計件数:20件)

(※2)安川イノベーションプログラムの略。2016年度から開始したCVC機能を併せ持った新規事業創出スキーム

 

<サステナブルな社会/事業に寄与する経営基盤の強化>

マテリアリティ

サステナブルな生産性の高いものづくり

目指す姿

(a) “安川ソリューションファクトリ”コンセプトの国内外展開によりグローバルでの生産効率化/最適化を進める。

(b) CO2排出量を削減し、世界的な気候変動問題へ対応する。

(c) 「お客さまの設備を止めない」を最終目標としたライフサイクルでの最適保全メニューを提供する。

(d) サステナブル調達ガイドライン遵守を原則としたサプライチェーン管理を実施する。

取組み

[目標]

(a) 最先端ものづくりの導入

・自社工場における生産効率の改善(生産性指標(※3)の向上)

[2022年度:+19%(※4) 2025年度:+34%(2019年度比)(※5)]

(b) グリーンプロセスを通じた温室効果ガスの排出削減

・温室効果ガス(CO2)の排出量削減

[2025年度:▲30%(※6)(2018年度比)]

(c) 製品の安全・品質向上

・当社グループ全体のPL(Product liability:製造物責任)委員会体制による製品安全の担保

[2022年度:「PLの芽」摘み取り活動のグローバル展開の強化](※7)

・新たなシステム導入を通じた製品品質の向上

[2022年度:市場品質情報一元化システムのグローバル運用開始]

(d) サステナブルなサプライチェーンの構築

・サステナブル調達ガイドライン遵守率の向上

[2022年度:遵守率100%(※4)(対象:安川電機の主要取引先)

2025年度:遵守率100%(対象:安川グループの主要取引先)]

2023年度進捗

(a) 生産性指標:+21%(2019年度比)

(b) ▲22.7%(見込み)(2018年度比)

(c)

・「PLの芽」摘み取り活動のグローバル展開

(「PLの芽」摘み取り件数:29件、リスクアセスメント完了件数(対象15件 100%完了)

・グローバルでの品質情報の一元化

(中国での運用開始)

(d) 海外グループ会社2社へのサステナブル調達活動の方針展開・ガイドライン制定支援

(※3)国内工場間接・直接要員1人当たり売上高(2019年度比)

(※4)2022年4月目標値を変更

(※5)2024年4月目標値を変更

(※6)2022年5月の2050年カーボンニュートラル目標の改定に伴い目標値を変更

(※7)2022年10月目標を設定

 

 

マテリアリティ

働きがいのある職場づくりと人材育成

目指す姿

(a) 女性の活躍を推進することにより多様な人材の強みを発揮する。

(b) 人事理念に基づいた人づくりを実現し、社員の働きがいを向上させる。

(c) 業務上の休業災害をなくし、安全な職場を実現する。

(d) 従業員一人ひとりが安心して働くことができ、最大限に能力を発揮できる環境を整備することで生産性を向上させ、会社と従業員の持続的な発展を目指す。

(e) 従業員の人権意識を向上させ、人権が尊重された職場を実現する。

(f) 「ものづくりの進化」を担う人材の育成に取り組み、それぞれの地域と共生・共創する社会貢献活動を推進する。

取組み

[目標]

(a) ダイバーシティとインクルージョン

・女性管理職比率の向上

[2025年度:単体・国内グループ:2倍(2021年度期初比)]

(b) 人材育成

・プロフェッショナル人材(※8)の比率向上

[2025年度:全社平均75%以上(※9)]

(c) 労働安全衛生

・休業災害度数率の改善

[2025年度:単体 0.2以下の維持、国内グループ・グローバル主要生産拠点 0.4以下の維持]

(d) 健康経営(※10)

・健康経営実現に向けた指標の改善

(e) 人権と労働慣行

・従業員の人権デューデリジェンスのプロセス導入・定着

[2022年度:国内グループ向け人権デューデリジェンスの実施

2025年度:EUサステナビリティ法令の要件を見据えた対応検討(※11)]

(f) 地域社会貢献

・「ものづくりの進化」を担う理系人材の育成

[2022年度:新たな「ものづくり人材育成プログラム」の開始]

2023年度進捗

(a) 女性管理職比率:単体 3.0倍、国内グループ 2.0倍(2021年度期初比)

(b) プロフェッショナル人材比率:29%(※9)

(c) 休業災害度数率:単体 0.16、国内グループ 0.44、グローバル 0.56

(d) 健康経営実現に向けた指標(10項目)の設定完了、「健康経営優良法人2024」認定取得

(e) 単体:人権デューデリジェンスの継続実施、国内:関係会社での人権デューデリジェンス導入、海外:主要拠点での現状把握

(f) 新プログラムの企画完了(ロボットキットの組み立て・プログラミング・安川電機みらい館の実働ロボットとの協調作業)

(※8)自身が任された業務内のスキルにおいて人に教えることができるレベルまたは一人で遂行できるレベルの人材

(※9)年度末時点において設定した全スキル項目のうち一定のスキルレベル以上にある項目の比率。2023年度実績は一部の部門においてスキル項目の設定方法を変更した影響あり。2024年6月プロフェッショナル人材の定義および目標値を変更予定

(※10)2024年4月取組みを追加

(※11)2024年4月目標を変更

 

 

マテリアリティ

公正かつ透明性の高いガバナンス体制

目指す姿

(a) 投資家との建設的な対話を通じ、持続的な成長と企業価値の向上を図る。

(b) セキュリティ組織のレベルアップを図り、自律的かつ継続的な情報セキュリティ体制を構築する。

(c) コンプライアンスリスクの早期発見により重大化を未然に防止する。

取組み

(a) コーポレートガバナンス・コードを活用した“攻め”のガバナンスの強化

・コーポレートガバナンス・コードの各原則の実施(未実施の場合は合理的な説明)

(b) 情報セキュリティの強化

・システムにおける社内外セキュリティ監視・対策と外部監査機関によるセキュリティレベル評価・改善

(c) コンプライアンスの強化

・内部通報制度等を活用したコンプライアンスの強化

・海外を含むコンプライアンス担当者との会議開催による連携強化

2023年度進捗

(a) 「プライム市場」選択企業に求められるコーポレートガバナンス・コードの各原則の実施

(b) 情報セキュリティ人材の強化とセキュリティ脅威分析サービス活用によるグローバルSOC(セキュリティ・オペレーション・センター)監視強化、潜在的リスクの早期発見と対策の実施グローバル拠点セキュリティ監査と海外各国の情報セキュリティ法案への対応

(c) 内部通報その他コンプライアンス事案への適切な対応の継続

海外を含むコンプライアンス担当者との会議の開催

 

(2) TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示

 当社グループは2019年9月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年9月には環境省のTCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業へ参加するなど様々な活動を進め、2021年5月にTCFD提言に基づく気候変動関連の情報を開示しました。今後も引き続き気候変動関連の情報開示を充実させ、より一層環境に配慮した事業活動を継続していくことにより、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値のさらなる向上を図ります。

 

<TCFD提言に基づく情報開示>

① ガバナンス

 当社はサステナビリティ方針に基づき、取締役会および経営会議において持続的に成長するための重要課題としてサステナビリティ課題・目標(マテリアリティ)の特定および解決に向けた施策を決定しております。また、サステナビリティ推進体制として、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、関連部門の責任者に加え、アドバイザーとして社外取締役が出席し、グループ全体のサステナビリティ施策のモニタリングおよび展開加速を図っております。

 気候変動への対応についても、重要課題についてはマテリアリティに位置付け、サステナビリティ委員会にてモニタリングを行うとともに、それ以外の施策を含む全体遂行については、社長が任命した環境推進統括者が運営する環境推進体制においてPDCAを管理しております。なお、取締役(社外取締役および監査等委員である取締役を除く)の報酬内容においては、持続可能な企業活動の実現および社会課題への対応を目的に、当社製品を通じたCO2排出量削減目標達成度を評価に組み込んでおります。

 

② 戦略

 当社の主要事業である、モーションコントロール、ロボットおよびシステムエンジニアリングについて、気候変動が及ぼすリスクと機会について検討を行いました。

リスクと機会は、政策や規制など気候変動対策や社会的要求の変化等によって生じる“移行”リスク・機会と、自然災害や気温の上昇などによって生じる“物理”リスクが考えられます。これらのリスク・機会を抽出し、事業活動に与える影響を「大」「中」「小」の3段階で評価しております。以下に掲載している抽出したリスクと機会について、影響度が「中」「大」のものについて、2030年の社会を想定した2℃、4℃のシナリオ分析を行いました。その結果、4℃シナリオでは低炭素化は推進されず、異常気象の激甚化が想定され、これにより引き起こされる物理的リスクへの対応が最も重要と考えられます。2℃シナリオでは、異常気象の激甚化へのある程度の対応も必要ですが、それ以上に材料・資源価格上昇への対応が重要となります。一方、低炭素化が推進されることで、FA機器・産業用インバータ・再エネ発電用機器およびそれを用いた企業の工場・設備の生産性向上・省エネ性能を高めるソリューションビジネスの需要が拡大することが機会となることが分かりました。

 これら分析結果の財務計画への影響は、リスクによる当社の売上減少よりも、機会による売上増加の方が大きいことが分かりました。

 また、この機会への対応としては、安川グループが長期経営計画「2025年ビジョン」で目指す「i3-Mechatronics」を軸とした工場の自動化/最適化の取組みおよび社会の持続的な発展に向けた新たなメカトロニクス応用領域への挑戦において、展開を進めます。

 

<リスク・機会要因に関する事業影響>

リスク/

機会

移行/

物理

要因

影響

評価

リスク

移行

炭素価格

・各国政府による炭素税の導入による、燃料調達コストや材料調達コストの増加

各国の炭素排出政策

・排出権取引の導入や排出規制の強化に伴い、グリーン電力購入等のコスト増加

省エネ、低炭素化

・電動化、EV化等に伴う関連資材不足や輸出規制等による価格高騰および入手困難による生産影響

リサイクル規制

・プラスチック規制等による、代替材料等採用に伴うコストの増加

低炭素技術の普及

・省エネ要求の高まりを背景とした、製品の省エネ性能競争激化によるR&D等投資コストの増加

投資家、顧客の

行動変化

・環境対応が進んだ企業への選好の発生による対応コストの増加

・情報開示、調達に関する環境配慮の対応遅れによる企業評価の低下およびビジネス機会損失

物理

平均気温の上昇

・自社工場の空調エネルギー増加によるエネルギーコストの増加

・海面上昇により水災リスクが許容値を超えた生産拠点の移転の必要性

異常気象の激甚化

・台風・竜巻・洪水による、操業停止・生産減少・設備の復旧への追加投資

機会

移行

省エネ、低炭素化

・省エネの必要性が高まり、FA機器および産業用イン

バータの需要が増加

・工場・設備の生産性向上・省エネ性能を高める

ソリューションのビジネス機会が拡大

・FIT政策のインセンティブ等により、太陽光発電や風水力・地熱・バイオマス発電設備の需要が拡大

・自動車のEV化が進み、EV向け電機品のビジネス機会が拡大

・船舶のEV船、ハイブリッド船の需要が高まり、船舶向け電機品のビジネス機会が拡大

投資家、顧客の

行動変化

・環境貢献ビジネスの拡大により投資家の評価が向上し、ESG投資の増加、企業価値の向上

 

シナリオ分析に用いた主なシナリオ

・主に移行リスクを分析するために使用 IEA(※1)、SDS(※2)、STEPS(※3)

(※1)国際エネルギー機関 (※2)持続可能な開発シナリオ (※3)すでに公表済みの政策によるシナリオ

・主に物理的リスクを分析するために使用 IPCC(※4)、RCP2.6(※5)、RCP8.5(※6)

(※4)気候変動に関する政府間パネル

(※5)世界の平均気温が産業革命以前より2℃程度上昇するシナリオ

(※6)世界の平均気温が産業革命以前より4℃前後上昇するシナリオ

 

③ リスク管理

 当社グループは、直接的または間接的に当社グループの経営あるいは事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、社長が指名した危機管理委員長が運営する危機管理委員会を設置しております。これにより、全社的なリスクの評価、管理、対策立案とその実行を行っております。

 気候変動に関連するリスクについても、当委員会において評価、管理を行い、また危機発生時には危機のレベルに応じた対策本部を設置し、適切な対応を実施します。

 危機管理委員会の内容については、取締役会、経営会議およびサステナビリティ委員会においても情報共有が行われ、全社の危機管理について監督およびモニタリングを実施するとともに、リスク評価とマテリアリティ分析の整合性を図ることで、全社におけるリスク管理の強化を図っております。

 

④ 指標および目標

 当社は、全人類における社会課題である地球温暖化の抑制に向けて、2050年に当社グループのグローバルの事業活動に伴うCO2排出量(スコープ1+スコープ2)を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とするとともに、そのマイルストーンとして2030年の同CO2排出量を2018年比で51%削減する目標「2050 CARBON NEUTRAL CHALLENGE」を設定しております。さらに、サプライチェーンの上流や下流のCO2排出量(スコープ3)に対しても2030年の同CO2排出量を2020年比で15%削減する目標を設定しております。

 本マイルストーンは、2023年1月にSBTイニシアチブ(※7)から世界平均気温を産業革命の前と比べて1.5℃未満の上昇に抑えるための科学的根拠に基づいた目標であるとして認定されました。

 また、当社はコア技術であるパワー変換技術を活用した世界最高性能を誇るインバータなどの製品供給を通じ、世の中のCO2排出量削減に貢献するため、2025年に当社製品によるCO2削減貢献量を当社グループによるCO2排出量の100倍以上とする目標「CCE100」を掲げて事業活動に取り組んでおります。

 これらの目標の達成に向けて、当社ではインターナルカーボンプライシング制度(社内炭素価格:5,000円/t-CO2)を導入し、積極的な環境投資を進めております。

 当社のスコープ1、スコープ2およびスコープ3の排出量は以下のURLをご参照ください。なお、当事業年度のデータは、本年9月以降の掲載を予定しております。

https://www.yaskawa.co.jp/company/csr/group/esg-data

 

(※7)Science Based Targets initiative:企業のCO2削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ

 

(3) 人的資本(人材力強化)についての取組み

 当社グループは、「安川グループ経営理念」に基づき、事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献できる人材の確保、育成、最適配置を行うことで生産性を向上し、持続的な発展を目指します。また、多様な従業員一人ひとりが最大限に能力を発揮できるよう、安心して働くことができる職場環境の実現を目指しております。

 そのために、当社グループでは、グローバル共通の人事理念を制定し、求める人材や人事制度に対する基本的な考え方を定めております。

 

<人事理念>

〔求める人材〕

 安川電機は会社創設以来、時代時代のニーズを先取りして新しいことに絶えずチャレンジし続けてきました。プロフェッショナルな意識を持ち、失敗を恐れず皆と協力しながら新しいことにチャレンジし続ける人材を求めています。

〔人づくり〕

 従業員一人ひとりが自己実現できるよう、チャレンジできる成長の機会の提供を行います。文化、慣習、言葉の壁を越えてグローバルにビジネスの拡大に寄与できる人材の育成を、自己啓発、OJL、OFF-JLを通して行います。

〔働く環境づくり〕

 日々の会社生活が心身ともに健康に過ごせる労働環境の整備に最大限の努力を行います。職場環境からあらゆる差別を廃止し、ハラスメントの防止に努めます。また、ワークライフバランスを推進するため、多様な働き方を実現する取り組みや諸制度の構築を行っていきます。

〔評価と処遇〕

 定期的な上司と部下の面談を通して、一人ひとりが期待される役割を明確にします。頑張って成果を収めた人が評価される制度を構築し、評価基準の情報開示を行うことにより透明性を高めます。発揮された成果については、合議による評価の実施により公正さを保ち、報酬、昇格の処遇において公平に報います。

 

① 人材の多様性の確保を含む人材育成および社内環境整備に関する方針と取組み

 長期経営計画「2025年ビジョン」の実現に向け、特に「経営理念の理解深化」「ダイバーシティとインクルージョンの進化」「プロフェッショナル人材の育成と最適配置」「働きやすい職場環境の実現」を4つの重点項目として取り組みます。これらの取組みをES(従業員満足度)アンケートや経営層との直接対話といった従業員との積極的なコミュニケーションを通じて常時モニタリングすることにより、素早く人事施策の改善に反映し、生産性と働きがいの向上を加速させます。そして、これらの取組みにより持続的な企業価値の向上を目指します。

 

(a) 経営理念の理解深化

 「2025年ビジョン」の達成に向けてぶれない軸を持ち、「安川グループ経営理念」およびソリューションコンセプト「i³-Mechatronics」を体現できる人材を増やすため、経営層の直接対話による理念教育を実施しております。

 2023年度からは受講対象者を国内外のグループ会社へ拡大し、経営理念の理解深化を図っております。

 

(b) ダイバーシティとインクルージョンの進化

 当社は「2025年ビジョン」において、ダイバーシティ(人材多様性)推進を掲げ、多様な人材の強みを生かせる風土づくりに取り組んでおります。変動の激しいグローバル市場にスピーディに対応するため、企業の進化と競争力強化を目指し、次の3項目を人材多様性推進のミッションとしております。

<人材多様性推進のミッション>

1.多様な価値観や考え方を持った人材の採用と育成によって、環境変化に強い企業体質を構築します。

2.多様な意見や視点を取り入れ、イノベーションが必然的に起こる社風を創出します。

3.あらゆる差別要因を排除し、従業員の個性を認めることによって働きがいのある職場環境を実現します。

 

(ⅰ)女性の活躍

 当社グループ全体では、管理職の13.4%(2023年度)を女性が占めていますが、当社単体では、技術中心のメーカーとして技術系の採用が多く、その母数となる理系の女子学生の比率が少ないこともあり、結果として女性管理職の比率が低いという課題を抱えております。また最近の社内アンケート結果から、管理職を目指す女性従業員の割合が向上している一方で、男女の性別の役割意識については改善傾向にあるものの、依然として男女間でギャップが存在していることが分かりました。

 

 これらの課題を解決するため、サステナビリティ方針に基づくマテリアリティの1つとして、女性管理職比率を2025年度に2021年度比2倍(単体)にする目標を掲げております。具体的な取組みとして、文系理系職問わず女性採用を積極的に推進しております。また、スキルアップやマインドチェンジのみならず、女性従業員を育成する職場管理職の意識変革や関わり強化に向けた女性管理職育成のための研修等も実施しております。

(ⅱ)経験者プロフェッショナル人材(プロ人材)の採用および登用

 経営戦略の実現に必要な人材を確保するため、各分野の経験を積んだプロ人材を積極的に採用しており、採用者全体に占める経験者採用の比率は年々増加しております。

 また、その貢献度や役割に応じ、部長・課長などへの抜擢・登用を進めております。

(ⅲ)海外オペレーションの現地化

 グローバルでは、世界規模で考え、地域に根ざして活動する「グローカル経営」を基本的な考え方とし、海外オペレーションの現地化を促進しております。

 

(c) プロフェッショナル人材の育成と最適配置

 教育体系は、業務を通じて学ぶOJL(On the Job Learning)を中心に位置づけ、これを補完するOFF-JL(Off the Job Learning)と自らの価値を高める自己啓発を組み合わせて構成しております。自己啓発は、会社が援助対象と認めたものについて、一定の自己負担を前提に会社が援助を行います。

 直近では、以下のような項目を重点施策として取り組んでおります。

(ⅰ)プロフェッショナル人材(プロ人材)の育成

 グローバルな競争が求められる現在のビジネス環境において、企業としての優位性を保つためには、人材一人ひとりのプロフェッショナル化が求められています。プロ人材が増えれば増えるほど、組織の競争力は高まり、「変化への対応」「危機への対応」を柔軟に行えるようになると考えております。

 プロ人材の比率を向上させるために、「OJLシート・スキルチェックを活用した保有スキルレベルの視える化」や「キャリアパスモデルによる、身に付けるべきスキル・能力ならびにステップアップのための道筋の視える化」等を行うことで、従業員全員が必要な能力・スキルを積極的に学び、自律的な成長を促す環境を整備しております。また、事業環境の変化に対応した教育体系を構築することにより、適切なタイミングで必要な教育を行い、グループ全体の組織能力向上に取り組んでおります。

(ⅱ)若手人材の育成

 当社における若手人材(入社5年目以内)に求める姿として、「物事を論理的に考え、適切に相手に伝えること」を掲げ、人材育成を進めております。また、2017年度より、当社技術社員として必要な一定の知識の幅(深さと広さ)の習得を目的として、技術系新入社員に対し「安川フレッシャーズテクニカルスクール(YFTS)」を開校しております。

 各種教育・研修を通じて業務に必要な知識を習得させ早期戦力化を図るとともに、入社して早い時期からキャリア・目指す姿を考える機会を設け、自律的なキャリア形成を促しながら、育成を図っております。

(ⅲ)多様な人材の強みを生かす最適配置

 当社では、多様なライフスタイルを持った従業員が働きがいを感じて仕事ができるよう適材適所に人材を配置することを基本的な考え方としております。そのために、従業員一人ひとりの能力発揮と自己成長が求められるとともに、自ら考えたキャリアを発信する場を提供することで、キャリアを実現する人材配置に取り組んでおります。

(ⅳ)評価・報酬制度

 国内では少子高齢化やグローバル化が進み、デジタル技術の進化によって若手人材の就業意識が変わりつつあります。また、高度専門人材の重要性が増していることから、人材獲得の競争は激しくなっています。このような状況の中で、優秀な人材を確保し、その活躍を支援するため、採用や従業員のパフォーマンス向上、リテンションおよび将来的な成長等を総合的に考慮した魅力的な処遇を実現する評価・報酬制度を実施しております。

 従業員の貢献意識と働きがいを向上させるため、知識・スキルの蓄積に基づく年功的な評価から職務を遂行し得られた成果(貢献度)に基づく評価にシフトし、一人ひとりが担う役割と職務に基づく処遇としております。

 また、企業の価値創造の主体が従業員であることを鑑み、2022年度に中長期インセンティブ制度を従業員に拡大しました。経営への参画意識の向上をねらいとし、中期経営計画の達成度合いに応じて管理者以上には株式報酬を、従業員には持株会奨励を兼ねた現金報酬を支給し、当社グループの企業価値向上への意識を高める制度としております。なお、従業員持株会には関係会社を含む対象従業員の80%(2024年2月末時点)が加入しております。

 

(d) 働きやすい職場環境の実現

 当社は従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた多様な働き方を導入し、ワーク・ライフマネジメントを重視しております。また、健康で安全な職場環境を維持するための予防策や対策を徹底し、従業員が安心して働ける環境を提供することで、生産性と働きがいの向上を目指しております。

(ⅰ)多様な働き方の実現

 時間や場所にとらわれず、生産性を上げて成果を出せる環境を整備するため、テレワーク制度を導入しております。本制度は、育児、介護および治療と仕事の両立にも活用できるよう、原則として日数の制限を設けておりません。

 併せて、ICTの活用により、遠隔でも上司と部下が日々の業務の計画と実績などの確認やコミュニケーションを行うためのツールを導入し、公平に評価できる仕組みを整備しております。

 また、多様な人材の活躍を促すため、転勤のあり方を見直し、事由を問わずライフイベントに応じて従業員の働くスタイルを選択可能な「エリア限定制度」を導入しております。

(ⅱ)安全で健康に働ける環境づくり

 当社は、安全衛生業務を総括管理するため全社総括安全衛生管理者をおき、中央安全衛生委員会を年2回開催しております。この委員会メンバーは労使同数で構成され、各事業所代表者およびグループ会社代表者はオブザーバーとして参加します。各事業所およびグループ会社は、中央安全衛生委員会で決定された方針をもとに、月1回開催されるそれぞれの安全衛生委員会の中でブレイクダウンした独自の方針を決定し管理・運用しております。具体的には、災害事例の周知やその対策、パトロールの指摘事項と改善内容の確認、ヒヤリハットの報告および長時間労働対策などに取り組んでおります。

 健康経営については、「安川グループ経営理念」実現のため、2015年に「安全宣言」を制定し、2019年には「働き方改革」の取組みを盛り込んだ「健康安全宣言」に見直し、従業員の健康づくりを推進してきました。2023年度からはサステナブル経営の観点から人的資本の活性化を重要施策と位置づけ、「健康経営宣言」として社内外に広く宣言し、健康経営を推進しております。2024年3月には「健康経営優良法人2024」の認定を取得しました。

<安川グループ「健康経営宣言」>

安川グループ経営理念である、『安川グループの使命は、その事業の遂行を通じて広く社会の発展、

人類の福祉に貢献すること』を実現するため、従業員一人ひとりの働きがいのベースとなる健康づくり

をサポートし、健康で安全に明るく働きがいのあるグループを目指します。

1.会社で働くことによる病気やケガをなくします。

2.自律的に健康安全活動を実践する従業員を増やします。

3.従業員一人ひとりが安全で明るく働きがいのある職場・働き方を実現していきます。

<健康経営の基本的考え方と目指す姿>

 従業員一人ひとりが安心して働くことができ、最大限に能力を発揮できる環境を整備することで生産性を向上させ、会社と従業員の持続的な成長・発展を目指します。

<健康経営推進体制>

 代表取締役社長の責任のもとに定めた健康経営宣言に基づき、健康経営担当役員を推進体制における責任者とします。

 健康経営の推進にあたり、健康経営担当役員を委員長とする健康経営推進委員会を年2回以上開催します。

 委員会のメンバーは労働組合委員をはじめ部門横断で構成されています。

 健康経営担当部門は、産業医・産業保健スタッフといった専門職、健康保険組合と連携し、組織横断で目標達成に向けた課題解決への対応を進めています。

 

a.労働安全衛生

 労働安全衛生マネジメントシステムの考え方を基本に、各職場において、安全に作業を行うための作業基準書の整備と教育訓練、リスクアセスメントおよび日々の業務における災害防止活動を行っております。

 また、これらの活動が安全衛生方針や目標の達成につながっているか内部監査を行い、指摘項目について各事業所の安全衛生委員会の中での指導を徹底することでさらなる改善を図っております。これにより、当社および国内グループにおける労働災害の度数率は同業種の平均を下回る水準を維持しております。

b.従業員の健康サポート

 各種健康診断では、関連する法令や検査の特性を十分に考慮し、作業環境の把握や対象者の選定から検査実施と事後措置まで、有機的かつ効率的な運用を図っております。業務上の疾病予防はもちろんのこと、生活上・就業上の支援に重きを置いた保健指導や教育を行っております。

c.メンタルヘルス対策

 精神医学的な病気や障害は、他の病気と同様、誰にでも起こりうる疾患であると位置づけ、必要に応じた生活上・就業上の支援を行っております。

 従業員の健康および生活にさまざまな影響を及ぼす心理的ストレスへの対策の一環として、ストレスチェック制度を活用し、その結果に基づく個人と職場へのフィードバックを行っております。

 また、健康・医療・介護・育児・メンタルヘルス等に関して24時間・365日いつでも専門家に相談できる外部相談窓口を設置しております。

d.疾病休業者の職場復帰支援

 やむを得ず病気やケガで休業した従業員が職場に復帰するときは、本人はもちろん所属長や管理部門および産業医が協力し、可能な限りの人的サポート体制や物理的環境を整え支援を行っております。

 

(e) 従業員との積極的なコミュニケーションを通じたエンゲージメントレベルの把握

(ⅰ)ES(従業員満足度)アンケート

 2016年度より当社単体の社員全員を対象としたES(従業員満足度)アンケート調査を毎月実施しております。アンケートを通じて経営施策の理解や浸透度、職場の繁忙感および人事制度への満足度等を測ると同時に、社員の抱える諸課題を解消し、中期経営計画の目標達成や「2025年ビジョン」の実現に向け、経営層と全社員がより一体となった企業風土の醸成を目指しております。

 アンケート回答率は毎月90%を超え、さまざまな意見や要望が寄せられております。アンケート分析結果は毎月社内に公表しており、全ての意見や要望に対するフィードバックにも努めております。

 また、働きがいを感じる従業員の割合を定期的に定量化しており、働きがいの肯定回答率は80%前後の高い値で推移しております。

(ⅱ)経営層と一般社員との対話集会

 経営層との直接対話(対話集会)による独自の人づくり推進活動を展開しております。社長自ら「人づくり推進担当」として、進化する当社グループを担う人づくりをモットーに、従業員とのコミュニケーションの輪を広げ、双方向の対話を通して、参加者のモチベーション向上とチャレンジする人材の育成を強化しております。

 

② 指標および目標

 上記の方針および取組みに関する主な指標、目標および実績は以下のとおりです(※1)。

指標

目標

実績

(2023年度)

プロフェッショナル人材(※2)の比率

(単体)

全社平均75%以上(2025年度)

29%(※3)

働きがい・成長機会の肯定回答率

(単体・ES(従業員満足度)アンケート)

80%以上(2023~2025年度)

86%

(※1)当社グループのマテリアリティである「働きがいのある職場づくりと人材育成」に関する連結の取組みの指標および目標などは「(1) サステナビリティについての取組み」に記載しております。

(※2)自身が任された業務内のスキルにおいて人に教えることができるレベルまたは一人で遂行できるレベルの人材

(※3)年度末時点において設定した全スキル項目のうち一定のスキルレベル以上にある項目の比率。2023年度実績は一部の部門においてスキル項目の設定方法を変更した影響あり。2024年6月プロフェッショナル人材の定義および目標値を変更予定

 

3【事業等のリスク】

当社は、経済・市場の状況等を含む経営の遂行状況に係るリスクについては、経営会議等の執行会議および取締役会においてモニタリングしております。加えて、直接的または間接的に当社グループの経営あるいは事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処することを目的に危機管理基本規程を定め、この規程に従い社長が指名した危機管理委員長が運営する危機管理委員会とその傘下に各専門委員会を設置しております。危機管理委員会では、リスク管理体制の整備に関する事項やリスク管理教育の企画・推進およびリスクの評価と、発生した場合のレベルに応じた対策本部の設置など適切な対応を実施しております。また、これらのリスク管理状況は経営会議等の執行会議、取締役会およびサステナビリティ委員会に定期的に報告することで全社の危機管理について監督およびモニタリングを実施し、リスク管理の強化を図っております。

当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある重要なリスクおよびそれらの対策については下表のとおりです。その他、コンプライアンス、品質問題、自然災害(地震・水害等)、テロ・紛争および法規制についてもリスクとして認識のうえ、対策を講じていきます。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営環境に関する項目

 

地政学リスク(国際関係変化)

リスクの説明

 当社グループは日本・中国を中心に7カ国に生産拠点を持ち、グローバル30カ国に展開している営業拠点を通じ、日々お客さまに製品・サービスを提供しています。このことから、米中やロシア・ウクライナ情勢などの国際関係の変化やそれに起因する社会・環境の変化、法規制の変更などは事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 特に、各国の輸出規制、技術移転の制限、関税の引き上げ等により、開発、生産、物流や営業活動が制限を受け、お客さまへの製品供給に支障をきたす場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

 このようなリスクに対して、各地域の政治・経済情勢や法規制の動向などについて、各拠点を通じて定期的にモニタリングし、事業への影響を迅速に把握できる体制を整えています。

 地政学リスクに起因する多岐に渡る事業活動リスクが顕在化した際には、本社の危機管理委員会を通じ迅速な初動対応を講じるとともに、各専門委員会および経営会議等の執行会議との連携を図りながら、グローバルにおける効果的なインシデント対応体制を構築することで被害や損害を最小限とすることに努めています。

 特に、近年では変化による事業への影響が大きいグローバルにおける法制変化などのモニタリングを強化するため、国内における各事業・本社部門に加え、海外子会社を始めとしたグローバル拠点にコンプライアンス担当者を設置することで、本社の法務部門を中心としたグローバルでの統制体制を整備しています。

 

(2) 事業環境に関する項目

 

部材調達・物流に係るリスク

リスクの説明

 当社グループは鋼材等の原材料や各種部品を多数の取引先から調達していますが、価格の高騰や業界の需要増によっては、継続的な必要量の確保が困難となる可能性があります。また、取引先において、自然災害、感染症の拡大、事故、経営状況の悪化等により、当社グループに対する部品や原材料等の安定的な提供が困難になる可能性があります。

リスクへの対策

 このようなリスクに対して、当社グループは取引先との対話を通じた信頼関係の構築、グローバルでの調達先の分散を図るとともに、適正な在庫水準の確保と現地生産・現地調達の推進を通じた需要変動への対応、国内および主要海外拠点における事業継続計画(BCP)策定による災害リスク等への対応を強化するなど調達機能の強化に努めています。

 また、リスク部品の早期発見と全社対策の強化を図るとともに、入荷困難な状況が継続する部品に関しては、入手可能な部品への設計変更を行う等、対応を強化しています。

 

 

 

 

為替相場の変動に係るリスク

リスクの説明

 当社グループはグローバルで事業展開し、その取引先は世界各地にわたるため、為替相場の変動リスクにさらされています。当社グループは、米ドル、ユーロ、中国人民元等の現地通貨建てで製品・サービスの販売・提供および原材料・部品の購入を行っていることに加え、現地通貨建ての製品輸出を行っており、想定以上の為替相場の変動は製品の競争力を弱めるなど、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは現地通貨で表示された資産および負債を保有していることから、為替相場の変動は円建てで報告される当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2024年2月29日に終了した連結会計年度の為替感応度(実績為替平均レート(米ドル:143.2円、ユーロ:155.1円、中国人民元:20.02円、韓国ウォン:0.109円)から1%変動した場合の業績影響額)は、売上収益については、米ドル:約13.9億円、ユーロ:約9.0億円、中国人民元:約12.5億円、韓国ウォン:約3.6億円となり、営業利益については、米ドル:約3.4億円、ユーロ:約1.7億円、中国人民元:約2.8億円、韓国ウォン:約1.8億円となります。

リスクへの対策

 このようなリスクに対して、当社グループでは、先物為替予約契約や為替ヘッジを実行することに加え、現地生産や現地調達の推進などを通じ、為替変動に強い収益構造の構築に取り組んでいます。

 

 

競争の激化に係るリスク

リスクの説明

 当社グループの事業分野においては、それぞれの分野で強力な競合相手が存在します。当社グループ製品のシェアの高い分野においても、将来にわたり競争優位性を保てるという保証はありません。このため競合企業との価格面における激しい競争が発生した場合は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの製品等に対しては、技術および品質等における競争力を確保するため、適時・適切な製品投入を行う必要があります。当社グループが提供する製品等の競争力が相対的に脆弱である場合や、製品投入時期が適切でない場合等に、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

 このようなリスクに対して、当社グループはi3-Mechatronicsを通じて、最適なソリューションをお客さまに提供することにより、製品・サービスの差別化および高付加価値化に努めています。安川テクノロジーセンタを中心として部門横断的な研究開発の継続的な強化を図り、世界初・世界一にこだわった画期的な製品開発を進めるとともに、徹底した効率化を図ることで開発期間の短縮を図り、コスト競争力の高い製品のタイムリーな市場投入に努めています。

 

 

サステナビリティ課題に係るリスク(気候変動・人権)

リスクの説明

 気候変動について、政策や規制など気候変動対策や社会的要求の変化等によって生じる“移行”リスクが考えられます。例えば、炭素価格・各国政府による炭素税の導入による燃料調達コストや材料調達コストの増加、各国の炭素排出政策・排出権取引の導入や排出規制の強化に伴うグリーン電力購入等のコスト増加が挙げられます。

 また、人権については強制労働、児童労働などの問題に対し、自社だけではなく取引先も含めた対応が社会的な要請として求められています。

 これらのリスクについて、対応が適切でない場合、企業価値に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

 このようなリスクに対して、当社グループは気候変動についてTCFD提言への賛同を表明し、環境省のTCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業へ参加をするなど様々な活動を進め、TCFD提言に基づく気候変動関連の情報を開示しました。今後も引き続き気候変動関連の情報開示を充実させ、より一層環境に配慮した事業活動を継続していくことにより、持続可能な社会の実現への貢献と企業価値のさらなる向上を図ります。また、体制として、社長を委員長とするサステナビリティ委員会にてモニタリングを図るとともに、リスク評価とマテリアリティ分析の整合性を確認し、それ以外の施策を含む全体遂行については、社長が任命した環境推進統括者が運営する環境推進体制においてPDCAを回しながら活動の質の向上を図っています。

 人権については、「世界人権宣言」、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などに基づき、人権の尊重を安川グループ企業行動規準に定め、すべての人々の人権を尊重する対応を推進しています。推進体制として、サステナビリティ担当部門、総務担当部門および調達担当部門が中心となり、当社グループおよびサプライチェーンにおける人権の尊重に取り組んでいます。これらの取組みについて、サステナビリティ委員会において施策の審議やモニタリングを定期的に行っています。これらの取組みを通じて、常に変化する人権に関する社会的要請や課題に継続的に対応していきます。

 

 

 

情報セキュリティに係るリスク

リスクの説明

 当社グループ事業の活動において、お客さま・取引先の個人情報あるいは機密情報を入手・保有することがあります。これらの情報は厳重に扱っておりますが、サイバー攻撃などの不測の事態により不正アクセスやデータ破壊、搾取、紛失等が発生する可能性があります。重大セキュリティリスクとしてサイバー攻撃、ランサムウェア・ウイルス感染、不正アクセスなどを起因とするサーバ・システムダウンやネットワーク障害により事業継続への支障や生産力低下などを引き起こす可能性があります。また、当社が保有・管理する情報が社外に漏洩した場合や当社に関わる虚偽の風説をSNSなどで流布された場合、お客さまを含む市場との信頼が失われ、当社の事業継続に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対策

 当社は情報セキュリティリスクを重要経営課題と捉え、経営トップダウンによる体制・運用に取り組んでいます。平時では情報セキュリティ基盤の強化活動を推進しており、高度化・巧妙化する最新サイバー攻撃や日々発生する脆弱性情報の動向、ブランド調査をグローバルで監視・情報収集しています。当社に関わる情報セキュリティリスクが予見・発見された場合は、速やかにリスク管理体制が適切な対応を指示し、CSIRT体制(Computer Security Incident Response Team)と連携してインシデント対応を行い、リスク被害の最小化と早期対策・回復できるレジリエントな情報システムの維持・強化を進めています。近年では生成AI技術の台頭やOSS(Open Source Software)を活用した開発業務が増え、情報漏洩や間違った情報の利用、権利侵害などのリスク管理にも十分配慮した仕組みを取り入れています。これらの活動により当社の情報セキュリティに関するリスクを最小限に抑え、お客さまに信頼性の高い製品・サービスを提供していきます。

 

 

人材確保に係るリスク

リスクの説明

 労働力不足がグローバルで進行する中で、高度な専門性を持った人材を含め、その獲得の競争が激化しています。

 また、従業員一人ひとりが主体性を持って能力を発揮し続けるためには、文化・慣習・言葉等の壁を越えてグローバルにビジネスの拡大に寄与できる人材の育成と心身ともに健康に過ごせる労働環境の整備がより重要となっています。

 このような状況の中、人材の採用・育成が遅れたり、優秀な人材が流出したりする場合、当社グループの競争力が低下する可能性があります。

リスクへの対策

 「2025年ビジョン」の実現に向けた人的資本経営の取組みの中で、従業員との対話を重視しつつ、併せて事業戦略遂行に必要な人材要件の策定と人材データの可視化に基づいた人的投資や多様な人材の活躍を促す人材マネジメントを強化することで、経営戦略に連動した人材戦略を実行していきます。また、持続的な経営戦略を策定し、高い成果を創出していくために、安川グループの将来を担う次世代の経営幹部候補者を早期に選抜し、研修プログラムなどを通じて育成・登用しています。

 具体的には、特に「経営理念の理解深化」、「ダイバーシティとインクルージョンの進化」、「働きやすい職場環境の実現」を重点項目として取り組みます。これらの取組みをESアンケートや経営層との直接対話といった従業員との積極的なコミュニケーションを通じて常時モニタリングすることにより、素早く人事施策の改善に反映し、生産性と働きがいの向上を加速させます。このように、人的資本である「人(従業員)」の求心力をグローバルに向上させ、ブランド力(選ばれる・信頼される)を強化することで人材の獲得・確保につなげていきます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 2023年度~2025年度中期経営計画「Realize 25」に関する認識および分析・検討内容

経営指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中期経営計画「Realize 25」の概要」に記載しております。

 

(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析

① 概況

当期における当社グループの経営環境は、製造業全般における生産の高度化・自動化を目的とした設備投資が底堅く推移した一方、半導体・電子部品向けの需要は軟調に推移しました。

このような環境において当社グループの業績は、サプライチェーンの混乱により遅れていた生産が正常化し、受注残の消化が進んだことで、前期比で増収となりました。利益面については、高騰した原材料費などの価格転嫁やシステムエンジニアリングにおける事業構造改革の進展などがプラスに寄与しましたが、昨年度に一時的に発生した退職年金制度の変更や遊休不動産の売却などに伴うその他の収益がなくなった影響などにより減益となりました。

 

この結果、当期の経営成績は以下のとおりです。

 

2023年2月期

2024年2月期

前期比

売上収益

5,559億55百万円

5,756億58百万円

+3.5%

営業利益

683億 1百万円

662億25百万円

△3.0%

親会社の所有者に帰属する

当期利益

517億83百万円

506億87百万円

△2.1%

米ドル平均レート

134.12円

143.22円

+9.1円

ユーロ平均レート

139.84円

155.06円

+15.22円

中国人民元平均レート

19.68円

20.02円

+0.34円

韓国ウォン平均レート

0.103円

0.109円

+0.006円

 

なお、当期における当社グループの地域別の経営環境は以下のとおりです。

日 本:

半導体・電子部品市場における在庫調整の継続や自動車市場の投資低迷などにより、需要は総じて軟調に推移しました。

米 国:

オイル・ガス関連の設備投資や一般産業分野における自動化投資は継続したものの、半導体市場が低調に推移するなど、需要は伸び悩みました。

欧 州:

EVなどの成長市場における設備投資は継続したものの、景気後退の影響を受け製造業全般の需要は減速しました。

中 国:

太陽光発電用パネル製造装置などの一部市場において期初に堅調な需要が見られましたが、期の後半における市場全体の回復が総じて鈍く、製造業全般の需要は伸び悩みました。

中国除くアジア:

アセアン各国やインドにおいてはインフラ関連や一般産業分野などで、韓国ではEVなど自動車市場において、設備投資が堅調に推移しました。

 

 

② セグメント別の状況

当社グループでは、事業内容を4つのセグメントに分けています。

当期の各セグメントの経営成績は以下のとおりです。

モーションコントロール

売上収益   2,600億35百万円   (前期比   +3.1% )

営業損益     381億98百万円   (前期比   +5.5% )

モーションコントロールセグメントは、ACサーボモータ・コントローラ事業とインバータ事業で構成されています。

売上収益は半導体・電子部品向けが伸び悩んだものの、生産の正常化により販売が伸長し前期比で増収となりました。利益面については、高騰した原材料費の価格転嫁による採算性の改善や新製品への切替効果などにより増益となりました。

〔ACサーボモータ・コントローラ事業〕

 半導体・電子部品向けの需要低迷や在庫調整の長期化の影響を受け、売上収益は減少しました。

〔インバータ事業〕

 生産の正常化によりグローバルで売上が拡大したことに加え、米国のオイル・ガス関連およびアセアン各国やインドにおけるインフラ関連の需要が堅調に推移し、売上収益は大幅に伸長しました。

ロボット

売上収益   2,346億80百万円   (前期比   +4.8% )

営業損益     251億49百万円   (前期比   △3.7% )

一般産業分野において、中国では投資が低迷した一方、欧米を中心に人件費高騰・労働力不足を背景とした生産の高度化・自動化の投資が底堅く推移しました。また、韓国でのEVを中心とした自動車市場における塗装関連の大口案件の売上も寄与し、売上収益は前期比で増加しました。利益面については、高騰した資材の価格転嫁の取組みがプラスに寄与したものの、間接費の増加により減益となりました。

システムエンジニアリング

売上収益     554億55百万円   (前期比   +8.5% )

営業損益      56億37百万円   (前期比  +119.0% )

太陽光発電用パワーコンディショナや海外の港湾クレーン関連の販売が堅調に推移し、売上収益は前期比で増加しました。

利益面については、売上増加による利益増加に加え、大型風力発電関連の子会社の株式売却を行うなど、事業構造改革を進めた結果、大幅な増益となりました。

その他

売上収益     254億86百万円   (前期比  △11.8% )

営業損益       4億16百万円   (前期比  △76.7% )

その他セグメントは、物流サービス事業などで構成されています。

売上収益・営業利益ともに前期比で減少しました。

 

(3) 経営者による財政状態およびキャッシュ・フローの状況の分析

① 資本の財源および資金の流動性にかかる情報

(a) 資産、負債および資本(B/S)構造に関する基本的な考え方

(ア) 流動資産(手元現預金)

キャッシュがグローバルで分散し余剰にならないようにコントロールしながら、手元現預金は月商1ヵ月程度の水準を維持する方針です。

(イ) 非流動資産

将来の利益源になる投資を積極的に行う方針です。

(ウ) 資本構成

親会社所有者帰属持分比率50%以上を安定的な経営が実現できる水準とみております。今後は将来の設備投資のための内部留保が増えてきますが、現金・資本が過剰になることがないよう、一定のネットD/Eレシオを目安に置きながら効率性を重視する方針です。

 

(b) キャッシュアロケーションに関する基本的な考え方

当社は、営業活動により生み出したキャッシュを①投資、②株主還元、③従業員配分の3方向に効果的に投入することで、持続的な成長を実現することを基本方針としております。

(ア) 投資

中期経営計画「Realize 25」では、2023年度~2025年度の累計で1,500億円の投資計画を立てております。キャッシュを有効活用し、工場や事業所の再編、内製化や自動化および需要地生産の拡大など、効率化・付加価値向上のための先行投資を厚くしていく方針です。

(イ) 株主還元

当期利益に対し30%+αの配当性向を想定した経営を実践しております。キャッシュが想定以上に創出された場合は、追加の還元策も検討します。

(ウ) 従業員配分

中期経営計画の目標達成度合いに応じた中長期報酬制度を2022年度より従業員に拡大しております。従業員には、生産性の高い仕事のやり方により付加価値向上・利益率改善に取り組むインセンティブとなっております。また、従業員持株会への加入を促す制度としており、企業価値向上がインセンティブとなり従業員の経営参画意識を高める効果も期待しております。

 

② 資産、負債および資本(B/S)の状況

(a) 資産  7,023億35百万円(前期末比 492億2百万円増加)

棚卸資産等の増加により、流動資産が前期末に比べ251億99百万円増加しました。また、有形固定資産やその他の金融資産等の増加により、非流動資産が前期末に比べ240億2百万円増加しました。

 

(b) 負債  2,943億16百万円(前期末比 37億40百万円減少)

その他の流動負債等が増加したものの、短期借入金等の減少により、流動負債が前期末に比べ256億64百万円減少しました。一方、長期借入金等の増加により、非流動負債が前期末に比べ219億23百万円増加しました。

 

(c) 資本  4,080億18百万円(前期末比 529億42百万円増加)

利益剰余金やその他の資本の構成要素等が増加しました。

 

③ キャッシュ・フロー(C/F)の状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は402億79百万円(前期末比 19億95百万円減少)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(a) 営業活動によるキャッシュ・フロー

棚卸資産の増加等があったものの、税引前当期利益や減価償却費の計上等により、546億19百万円の収入(前期比 568億28百万円の収入増)となりました。

 

(b) 投資活動によるキャッシュ・フロー

有形固定資産及び無形資産の取得による支出等により、293億46百万円の支出(前期比 96億51百万円の支出増)となりました。

 

(c) 財務活動によるキャッシュ・フロー

長期借入れによる収入があったものの、借入金の返済および配当金の支払い等により、294億16百万円の支出(前期比 366億14百万円の支出増)となりました。

 

※営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは252億72百万円の収入となりました。

 

(4) 生産、受注および販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲にわたりかつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため、生産および受注の実績については、「(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析」におけるセグメントの経営成績に関連づけて記載しております。

また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析」におけるセグメントの経営成績に関連づけて、連結の数字を示しております。

 

(5) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 IFRSに準拠した連結財務諸表の作成にあたり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示および報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針の要約 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社は、「電動機(モータ)とその応用」を事業領域に定め、世界初・世界一にこだわった製品・技術の研究開発をグローバルな体制で行っております。長期経営計画「2025年ビジョン」では、メカトロニクスを軸とした「工場自動化・最適化」と「メカトロニクスの応用領域」を事業領域に設定し、新しい価値と市場の創造を目指しております。

「工場自動化・最適化」においては、これまでのソリューションに「デジタルデータのマネジメント」を加えたコンセプト「i³-Mechatronics」を軸とした産業自動化革命の実現に向け、メカトロニクス技術とICTの融合により、新しい自動化ソリューションの開発を継続しております。

「メカトロニクスの応用領域」では、メカトロニクス技術が応用できる分野を探索・実証しながら、事業化に向けた取組みを進めました。特に、Energy Saving分野(省エネ機器・高効率モータ)、Food & Agri分野(野菜生産システム・食品工場自動化)、Clean Power分野(太陽光発電・電気自動車)およびBiomedical Science分野(ゲノム解析・再生医療の自動化)に焦点を当てて取り組んでおります。

また、技術開発拠点「安川テクノロジーセンタ」(以下、YTC)においては、基礎技術開発から量産試作までを含めた上流から下流までの全プロセスを集約するなど、技術開発機能を結集させ、一貫した仕組みのなかで開発を進めることで、お客さまを勝たせる新たな製品の開発をタイムリーに行います。

以上の取組みにより、当連結会計年度の研究開発費は21,247百万円となりました。

 

〔研究開発分野〕

長期経営計画「2025年ビジョン」の実現に向け、ソリューションコンセプト「i³-Mechatronics」の具体化に向けた研究開発に引き続き取り組みました。IoTを軸とする新製品・新技術開発およびAI技術を製品に反映させるため、オープンイノベーションのさらなる強化を進めております。

YTC内のローカル5Gを活用した産業用ロボットの遠隔制御の研究や新しい生産設備の検証を行うなど、お客さまのスマート工場化実現のためのソリューション開発を進めております。

また、大学の研究室などとロボットの制御技術の開発や、農業分野での最先端技術の研究に加え、それぞれの技術を生かした新しい市場の開拓に向けた取組みを進めております。国立大学法人九州大学においては、最先端の技術開発や人材の育成などの幅広い活動によって、ともに持続的な成長とシナジー創出を実現する関係を築いております。国立大学法人九州工業大学においては、YTC内にて次世代ロボットの共同開発を継続しております。

さらに、全国農業協同組合連合会においては、畜産・農業生産・流通販売の3分野を中心に、スマート農業の具体化に向けた取組みを継続しております。農業生産においては自動化実証などを進め、「きゅうりの葉かき作業」は本格的な現地導入フェーズへと移行しております。

これらにおける当分野の研究開発費は5,811百万円です。

 

〔モーションコントロール分野〕

装置や産業用ロボットなどで構成されたいわゆる“セル”を統合的に制御し、同時に同期性の高いデータをリアルタイムに収集・活用してフィードバックできるYRMコントローラ「YRM1010」を開発しました。従来機種より処理性能・通信を強化し変種変量生産を実現します。

i³-Mechatronicsを実現する新マシンコントローラ「MPX1000シリーズ」の展開を開始しました。その第1弾となる「MPX1310」は、従来機種からモーション処理性能などの性能向上と、機能強化を実現しています。これにより当社のサーボドライブ製品の性能を最大化させ、お客さまの装置性能と付加価値向上に貢献します。

また、一般産業用途向け安川インバータ「GA700シリーズ」の400V級の容量ラインアップを従来の0.4~355kWから630kWへ拡大しました。大容量帯を拡充したことで、大型の一般産業用機械や設備に適用可能となり、より幅広くGA700をご使用いただけるようになりました。従来機種と比較して大幅に小型化・軽量化を実現しており、お客さまの設備の省スペース化に貢献します。

これらにおける当分野の研究開発費は9,303百万円です。

 

〔ロボット分野〕

産業用ロボットの業界で初めて(※)、ロボット自身が周りの環境に適応しながら判断する自律性を持った次世代ロボット「MOTOMAN NEXT」を開発しました。「MOTOMAN NEXT」シリーズは、不確定なモノの状態・形状・大きさのバラツキ、作業順序の変更や割込みが存在するような作業など、人が判断を行い作業している「未自動化領域」の自動化に貢献します。FA分野を始め、食品・物流・農業といった産業における労働力不足などの社会的課題の解決につなげてまいります。

デジタルツイン環境を実現するシミュレーション検証をベースにしたエンジニアリングツール「YASKAWA Cell Simulator」を開発しました。設計から立ち上げ、セル全体の動作確認、動作分析と再設計まで、バーチャル環境を活用することにより一気通貫でエンジニアリングすることが可能となり、セルシステム上の各段階での様々な課題解決に寄与します。

これらにおける当分野の研究開発費は4,661百万円です。

(※)当社調べ 大手ロボットメーカー対象

 

〔システムエンジニアリング分野〕

環境・エネルギー分野においては、脱炭素社会実現に向けた自家消費特化型太陽光発電用パワーコンディショナ 「Enewell-SOL P3A 25kW」が2023年度「省エネ大賞 製品・ビジネスモデル部門 資源エネルギー庁長官賞」(一般財団法人省エネルギーセンター主催)と、第66回「十大新製品賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」(日刊工業新聞社主催)をダブル受賞しました。本製品は、200V級では最大級の出力となる25kWを実現することで、特に中規模自家消費型太陽光発電システムにおいて優位性を発揮します。

これらにおける当分野の研究開発費は1,470百万円です。