第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業以来「世界共通の品質を世界共通の価格で」を企業理念に掲げ、品質の良いファッショントレンドアイテムをリーズナブルな価格でお客様へお届けするために、「ライフスタイル創造企業」として、お客様にご満足いただき感動を与えられるような世界共通のサービスを提供することで、人々の幸せを実現していくことを基本方針としております。

そのために、世界のシューズストア「ABC-MART」を展開し、以下を実行してまいります。

① 「ABC-MART」の出店を拡大し、世界に通用するストアブランドに確立することを目指します。

② 「ABC-MART」では、ブランドを基調としたトレンドアイテムの充実を図ります。

③ 「ABC-MART」のマーチャンダイジングを強化するためにブランドポートフォリオを充実します。

④ 「ABC-MART」のリアル店舗とオンラインをつなぐデジタルコマースを強化します。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループの経営指標としては、連結営業利益率を二桁水準で維持することを目標とします。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、今後の中長期的な経営戦略として、①マーケットシェアの拡大、②積極的な店舗展開とデジタルコマースの推進、③世界マーケットへの発信、④既存ブランドの拡充と新規ブランドの取得・育成を掲げております。

① マーケットシェアの拡大

国内のシューズマーケットはピーク時で1兆4,000億円まで拡大し、新型コロナウイルス感染症の拡大による需要の減少で2020年には1兆1,000億円程にまで縮小したといわれております。(株式会社矢野経済研究所発出の調査資料に基づく。)現在、当社は、シューズマーケットでおよそ2割のシェアを持つシューズカンパニーであり、国内トップ企業であります。韓国市場においても、コロナ禍においてマーケットの寡占化が進みましたが、連結子会社ABC-MART KOREA,INC.が韓国のシューズ市場においてイニシアチブを発揮しております。

現在置かれているシューズ業界のみならず、スポーツ市場、スポーツアパレル市場、レディース市場など、シューズを取り巻く環境下において成長市場は多数あります。これらのマーケットを取り込んでいくことで、シューズ関連事業の拡大を模索してまいります。企業買収や異業種との業務提携、新商品の共同開発やコラボレーションなど、新たなビジネスチャンスも獲得してまいります。

 

② 積極的な店舗展開とデジタルコマースの推進
イ.出店拡大

成長への一番の原動力は新規出店であります。既存店のリニューアル出店や業態変更による新規出店を含め、年間50店舗程の出店を続けてまいります。

ロ.業態の開発・展開

「ABC-MART」を中核に据えて、

第一に、トレンド志向の都市型旗艦店「ABC-MART GRAND STAGE」の出店を都心部から郊外の大型商業施設へ拡大します。

第二に、カテゴリー戦略に寄与する業態店舗の出店を進めてまいります。スポーツファッション専門店「ABC-MART SPORTS」、レディースシューズ専門店「Charlotte」、レザーブーツ専門店「Danner」、パーソナルスポーツやアウトドア系ファッションのスポーツセレクトショップ「OSHMAN'S」など。

第三に、面積規模が100坪以上の地方郊外のショッピングセンターにおいては、2つ以上の屋号を併設して展開する複合業態店舗の出店を拡大します。

 

ハ.デジタルコマースの強化

デジタル事業においては、自社オンラインサイトの利用促進と他社サイトでの販売を強化します。

オムニチャネル戦略としては、オンライン販売における店舗受取サービスの提供やリアル店舗におけるネットを活用した取り組みを促進し、リアル店舗とオンラインの垣根を越えたサービスを提供し、顧客サービスの向上に努めてまいります。

 

③ 世界マーケットへの発信

当社は、「ABC-MART」を世界のトレンドの発信拠点と位置づけ、海外展開を拡大しております。現在、韓国、台湾、ベトナムに「ABC-MART」の店舗網を拡充し、北米においてはレザーブーツ専門店「Danner」を展開しております。今後も他の東南アジアの国など、日本と親和性の高い海外市場への販路拡大を模索してまいります。

また、当社は、世界のトレンドを商品企画に活かして製造した商品を国内向けにリーズナブルな価格帯で提供する取り組みを行っております。

 

④ 既存ブランドの拡充と新規ブランドの取得・育成

当社グループは、商品の企画開発・製造から販売までを一貫して行う自社ブランドを保有しております。1995年に商標権を取得し主にレザーカジュアルシューズを中心に展開する「HAWKINS」ブランド、レディース商品のPBブランドとして自社開発した「NUOVO Collection」「ABC Select」「byA」等があります。2012年には米国の高品質ブーツブランド「Danner」「LaCrosse」を、2014年には「White's Boots」の商標権を取得いたしました。

このようにして、ブランドの取得やPBブランドの開発育成等を行うことで高い収益性を実現し、またシューズ業界における競合他社との差別化を図っております。

今後も、様々なライフスタイルに応じた商品の開発、提供を行うとともに新規ブランドの取得も視野に入れ業容の拡大に努めてまいります。

 

(4) 経営環境

今後の当社グループを取り巻く経営環境を展望しますと、国内においては、欧米との金利差拡大に伴う円安の進行と円安による物価の上昇が続いておりますが、金融政策の転換期を迎え、社会経済活動が一層活発となる兆しが見えております。一方で、個人消費に与える影響が懸念されており、企業における賃上げの動きが拡大されるかが鍵となっております。海外においては、地政学的なリスクの高まりの長期化、欧米のインフレ鈍化懸念、中国の景気減速など、世界経済は先行き不透明な状況が続くものと予想します。

このような状況下、当社グループは、お客様の購買意欲を高めるための様々な販売戦略を実施し、新たなマーケットを開拓するべく諸施策の遂行に取り組んでまいります。またどのような状況下においても、より良い商品をお客様にご提案できる接客サービスの向上に努めてまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループが対処すべき課題といたしましては、『店舗・商品・人材・IT』という重要な戦略要素を強化していくことであると認識しております。

① 店舗戦略

店舗売上の最大化を目指すため、都市型旗艦店「ABC-MART GRAND STAGE」、スポーツファッション専門店「ABC-MART SPORTS」の出店を拡大いたします。また、増床改装により売場面積を拡大し、店舗の新陳代謝を促進するための好立地への移転や業態変更を積極的に行ってまいります。異なる屋号、異なる業態の店舗を併設させた複合業態による出店を拡大することで、新たな顧客層の獲得とオペレーションの効率化を実現してまいります。

多店舗展開を推進するにあたり、多様な商圏、顧客層に応じた店舗形態を築いていく必要があります。地域の特性等も考慮に入れながら新業態の開発に取り組みます。また、商品の企画から構成(マーチャンダイジング)を店舗設計に組み入れ、収益重視の店舗開発を行ってまいります。これらを踏まえ、個別店舗の収益を最重要視し、全ての店舗が収益に貢献することを目指します。

海外においても、「ABC-MART」のグローバルな店舗展開を推進してまいります。

 

 

② 商品戦略

顧客ニーズの多様化とライフスタイルの変化に即応していくために、商品カテゴリー毎の戦略をより明確にし、店舗とオンラインへの商品供給を適時適切に行ってまいります。売れ筋商品の見極めと滞留在庫の取り扱いの早期判断・対処により、単品毎の在庫回転率の改善を図り、収益力を高めてまいります。

売上総利益率の向上を図るためには、メーカー各社との取引において他社との差別化を図るため、ナショナルブランドの共同企画による限定商品を多数展開してまいります。また、売上総利益率の高い自社企画商品においては、付加価値の高い、競争優位性の高い商品の開発を行ってまいります。これらの取り組みを行うことで、売上原価の低減と利益率の向上に努めてまいります。

商品の販売戦略においては、デジタル広告の積極的な利用とテレビなどの媒体活用を戦略的に使い分けて、ターゲット層に響く広告宣伝と販売促進活動を行ってまいります。

 

③ 販売力(人)の強化

当社グループは、対面販売による営業活動を主軸に事業を展開しております。

お客様にとって魅力のある店づくり、商品づくりを心がけ、提供していくためには、スタッフ一人ひとりの販売力=『人の力』が重要であると認識しております。また、お客様への気配りや心遣いが次のご来店に繋がることから、接客サービスを向上させる取り組みを進めてまいります。また海外子会社の店舗とも人材交流を進め、グループ企業としての「接客の均一化」を図ってまいります。

また女性管理職比率の向上を図ります。2030年度の目標として17.7%を目指します。そのためには、スタッフの様々なライフスタイルに応じた「働き方改革」を推進してまいります。ショートタイム社員や地域限定社員など雇用形態の多様化を図り、中長期的な労働力の確保を目指します。

 

④ IT活用による顧客満足度の最大化

当社グループは、対面販売を基調とした直営店(リアル店舗)のほか、インターネットオンラインサイトを運営しております。当社グループの事業拡大には、デジタルコマースの成長は不可欠です。

リアルとネットを繋ぐためのオムニチャネル戦略を推進していくため、スマートフォンを活用した様々な取り組みを実施してまいります。ABCマートアプリによる新規会員の獲得、リアルとネットの相互利用が可能な電子ポイントシステム、会員向け情報発信サービスの提供、キャッシュレス決済への対応に加え、在庫情報の可視化によるオペレーションの向上があります。今後も、IT活用による顧客満足度の最大化と更なる業務の効率化を目指してまいります。

 

⑤ 内部管理体制の強化

企業規模が拡大していくなか、国内外へのグローバルな活動が活発化しており、その社会的責任も一層増していることを強く認識しております。

2015年5月、取締役会における経営判断の適正性を監視する機能をさらに高めていくため、また取締役会の監督機能の強化によるコーポレート・ガバナンスの充実という観点から、監査等委員会設置会社へ移行しました。

取締役の職務執行状況や経営活動全般における法令遵守についての内部監査を強化していくとともに、お客様の安心・信頼に繋がる店舗運営を実現するため、店舗監査を定期的に実施し、必要に応じて是正勧告等を行い、店舗運営の適正化に努めてまいります。また法令遵守はもとより、役職員の健康管理の観点から、より一層働きやすい労働環境の整備に向けた取り組みを積極的に行ってまいります。会計監査につきましては、監査等委員との相互連携により監査体制を充実させてまいります。その他法令・税務についての判断を要する案件につきましては、顧問弁護士、顧問税理士に依頼または相談し、適宜、指導や助言を受けてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、靴を中心に「ライフスタイル創業企業」として、お客様にご満足いただける商品やサービスの提供を行っております。当社グループの持続的な成長が社会貢献に繋がるような世界、具体的には、ファッションを通じて様々な人が集まり地域社会が活性化されるような世界を目指しております。

 当社グループでは、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視・管理するためのガバナンス体制として、経営幹部が出席する経営会議において各種戦略とサステナビリティを巡る様々な課題について検討を重ね、業務執行取締役主導の下、稟議決裁を経て各部門で実行しております。取締役経営企画室長が進捗状況のモニタリングを行っており、半期に一度、当社取締役会へ報告する体制を取ることでリスクマネジメントの統制を図っております。なお、当社代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。

 

(2)戦略

 当社グループにおけるサステナビリティを巡る重要課題として、「地域社会とのつながり」「誰もが働きやすい環境づくり」「サステナブルな商品セレクト」「エコロジカルな店舗運営」「ロスをうまない経営」の5つを掲げ、人的資本と気候変動への対応に取り組んでまいります。

 

① 人的資本

当社グループは、多店舗展開を成長戦略の柱としております。都市部や地方郊外への出店を通じてその地域における雇用を生み出し、様々な人々に必要なモノ(日用品・嗜好品)の提供を行うことで地域経済を活性化させる役割を担っております。当社グループの主なステークホルダーは、お客様、従業員、お取引先様、株主様であります。お客様との接点となる「ABC-MART」を通じて地域社会とのつながりを強固にするためには、まずは「ABC-MART」で働く人一人ひとりのために働きやすい環境づくりを行うことが重要であります。このことから、人的資本経営を最重要視し、「人材育成に関する方針」と「社内環境整備に関する方針」を定め、推進してまいります。

 

1) 人材育成に関する方針

(a) 現場での経験と“共育”

お客様との対面販売による現場での経験が人材育成の基本となり、当社グループの強力な販売力の源です。新人スタッフの育成にあたり、現場経験豊富な先輩スタッフによるコーチングは不可欠であり、ときに先輩スタッフも“自らを知る”機会を得て、共に成長できる環境をも育てます。そして、こうした環境下で“ライバル心”を育てることで、販売力の最大化を目指します。

 

(b) 雇用の多様化とワークライフバランスの充実

当社グループでは、ライフスタイルの変化に対応し、雇用形態の多様化を進めております。女性やパート・アルバイトの積極採用はもとより、地域限定社員やショートタイム社員の登用など、地域や目的に応じた雇用を確立しております。こうした取り組みにより、経験を積んだスタッフが継続して働ける環境づくりを行い、ワークライフバランスの充実を図ります。

 

(c) キャリア開発とチームづくり

社員数が増え、顔が見えづらい環境下において、社員の潜在能力を見出し、適切な場所でその能力を十分発揮させることはとても重要な課題です。各人の能力・実績・経験・志向等を把握し、適切なキャリア開発を行うため、人事部と現場を良く知るエリアスーパーバイザーとでキャリア開発チームをつくり、当社グループの将来の担い手を発掘してまいります。

 

 

2) 社内環境整備に関する方針

(a) ダイバーシティと人権の尊重

当社グループには、国籍、人種、性別、年齢等の属性面に加え、キャリア、考え方、価値観、ライフスタイル等も含んだ多様な社員が共存しております。社員一人ひとりの持つ個性を多様性として理解し、全ての社員が受け入れられ、尊重し合いながら、それぞれの特性や能力を最大限に活かすことが、新たな発想や価値の創造に繋がると考えております。

これらのことから、当社グループでは、個々を尊重し、以下の対応を行ってまいります。

・女性が当たり前に活躍できる環境づくり

・将来的に組織の意思決定に関わる女性役職者を増やしていく取り組み

・障がいの有無に関わらず、全ての従業員が自身の強みを活かして永く活躍できる環境づくり

・外国人の積極雇用と異文化コミュニケーションの促進

・LGBTQへの理解と対応、相談窓口の設置

 

(b) 研修制度とサポート体制

当社グループの人材育成は、「教育=共育」を全社共有のテーマとしており、OJTによるコーチングを実務スキル教育の軸としております。集合研修においては、マインドセットを目的に人事部主導で実施する研修と、全国各地の店舗社員から人事部が任命したファシリテーター(研修講師)が地域毎に実施する研修に分けております。店舗社員が研修講師になる仕組みにより、現場で獲得したノウハウが社内に蓄積され、また共有化されることで販売力の強化を図る取り組みです。

将来的に組織の意思決定に関わる女性社員を育成する目的で、女性役職者育成研修、選抜女性店長研修を実施してまいります。また様々な価値観を持った人材がモチベーション高く働ける職場環境をつくるため、エリアを管轄するスーパーバイザーを対象に、アンコンシャスバイアスの理解を深めるための研修を実施してまいります。

障がいのある社員も“チームの一員(ONE TEAM)”として活躍できるような環境づくりを行います。2024年2月末現在、139名が在籍(雇用率2.61%)しております。障がいに関する専門知識を持つ支援チームが配属店舗に定期的に訪問し、また管理者を対象にした研修を実施することで、特性や個性に合わせた指導方法のサポート体制を確立してまいります。

外国人の雇用を積極的に行ってまいります。2024年2月末現在、15の国又は地域(中国、韓国、台湾、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、ペルーなど)からグローバルな人材を採用しており、141名が在籍しております。グローバル企業として異なる文化や価値観を受け入れるための取り組みとして、異文化コミュニケーション研修やフォローアップ研修を実施してまいります。

LGBTQに対する理解を深め、全ての社員が働きやすい環境づくりを目指してまいります。2023年度において、LGBTQ相談窓口を設置し、社内管理上の性別選択項目が変更できる体制に変え、そしてパートナーシップ登録制度を導入いたしました。

 

 

② 気候変動への対応

当社グループは、世界的な平均気温4℃上昇による気候変動が社会経済活動に及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を1.5℃以下に抑制することを目指す動きに貢献していくことが重要であると考えます。これらの気候変動への対応を強化するため、気候関連のリスクと機会がもたらす事業への影響を把握するように努め、戦略の検討を進めてまいります。

 

1) 気候変動に伴うリスク

気候変動に伴うリスクには、足元では、気温上昇による商品需給バランスの悪化と販売機会のロス、エネルギー資源やあらゆるモノの価格上昇に伴う営業費用の増加、政府による温室効果ガス排出に関する規制強化やカーボンプライシングの導入による新たな費用の発生が予想されます。自然災害の激甚化(台風・豪雨などによる水害発生等)や海水面の上昇によって発生するリスクとしては、商品在庫や店舗などの営業資産の滅失・損壊、仕入先や倉庫等の被災による供給停止や物流網の寸断による供給遅延、従業員の被災や情報システムの停止に伴う本社機能の不全など、中長期的な営業活動の停滞、それに伴う収益の著しい減少や財務状況の悪化が考えられます。

当社グループは、東日本大震災や新型コロナウイルス感染症などの経験から、それらのリスクについて、多少のレジリエンスを持っておりますが、一方で、想定を上回る事態への対応が急務であることも認識しております。

これらの気候変動による事業への影響を鑑みて、“今、私たちにできること”を日常的に考え、企業活動に伴い発生する環境負荷の低減に取り組んでまいります。

 

2) 気候変動による機会

気候変動は、新たな商品需要を生み出すビジネスチャンスとも捉えております。消費者の環境意識の高まりは、マーケットに新たなトレンドを生み出す機会になります。気温の上昇によりサンダルの需要や降雨降雪により防水系シューズの需要が高まることから、機能面での付加価値の提案が新たな収益機会に繋がる可能性があります。また、再生プラスチック商品の需要拡大に伴い、天然皮革製品の需要は低下傾向にあるものの、モノを大事にする思想が天然皮革や綿・麻・絹などの自然素材の価値を高め、新たなニーズを生み出すものと考えます。これらのことから、当社グループとしては、これからも新商品の企画・開発や商品カテゴリー別の販売戦略に重点を置き、今後もお客様のニーズに寄り添った商品やサービスの提案を継続してまいります。

 

 

(3)リスク管理

 当社では、企業価値を形成する有形無形資産や企業の成長戦略を脅かす事業リスクを適切に管理するため「リスク管理規程」「コンプライアンス管理規程」「行動指針」を定めております。当社のリスク管理体制は、代表取締役社長をリスク管理統括責任者として、関係各部署の役職者で構成されるリスク管理委員会を設置して対応に当たっております。リスク管理委員会においては、事業活動に伴う重大なリスクの顕在化を防ぐための対策や、万一リスクが顕在化した場合でも被害を最小限に留めるための対応策を協議、検討し、実行しております。サステナビリティに係るリスクや優先的に対応すべきリスクについては、週一で開催される経営会議で詳細な検討を行い、下位の部会で情報共有しております。コンプライアンスに関する問題に関しては、必要に応じて外部の有識者の助言を受けて対応しております。

 当社グループの主なリスクとその対応につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

 

(4)指標及び目標

 

① 人的資本

 当社グループの人的資本に関する測定可能な指標は、以下のとおりであります。

 なお、上記「(2) 戦略」において記載した「人材育成に関する方針」「社内環境整備に関する方針」に係る指標については、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける指標の記載は困難であります。このため、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

提出会社

 

2022年度実績

(第38期)

2023年度実績

(第39期)

2030年度目標

女性管理職比率   (%)   (注)2

14.5

15.5

17.7

男女賃金格差(男性100%に対し)(%)

77.4

77.3

90.8

男性育児休業取得率 (%)

26.0

31.3

100.0

 

 

 (注)1 上記は全正社員を対象としております。

   2 管理職は、店舗においては店長職以上、本社においてはチームマネージャー職以上としております。2023年度における次期管理職候補である店舗役職者の女性比率は38.4%となりました。

 

② 気候変動への対応

 当社グループは、気候関連リスク及び機会を管理するための指標は定めておりませんが、以下の対応を継続的に進めていく所存であります。

 

1) サステナブルな商品セレクト

 当社グループでは、ナショナルブランドの環境に配慮した商品を数多く扱っており、例えば、サステナブルな手法で綿花栽培を行ったコットン100%のTシャツや靴のアッパーに50%以上のリサイクル素材を使用したスニーカー等の品揃えを拡充しております。メーカー各社様と共同で開発しているABC-MART限定商品においても、サステナブルな素材を用いて開発された商品が多くあります。

 なお、これらリサイクル素材を用いた商品の製造コストは通常よりも非常に高く、販売価格に影響をもたらします。そのため、環境に配慮した商品に対するお客様のニーズと購買価格帯を見極めながら、商品開発を検討していく必要があることから、目標値は設定しておりません。

 

2) エコロジカルな店舗運営

(a) 電気使用量の削減

 当社は、2027年までに全店舗の照明をLEDに替え、省エネルギーの推進を図ります。2023年2月末時点において、非対応の店舗は1,074店舗中412店舗であり、2027年までの間に段階を踏んで対応していく計画です。5年間のLEDに係る投資総額は、12億30百万円と想定しており、1店舗当たりの投資回収期間はおよそ4年となります。非対応店舗全店の節電効果は、概算で年間4億円程度と試算しております。

 当社単体の2022年の年間電気使用量(空調使用量除く。)は66,000千kWh程でCO2排出量はおよそ30,000トンと試算しております。再生可能エネルギー電力への転換は光熱費の負担の増加が見込まれるため、年間の電気使用量及びCO2排出量の目標値の設定はしておりません。

 

(b) 環境に配慮した内装材等の使用

 当社グループの国内の店舗戦略においては、年間40店舗の新規出店、40店舗の改装をベースとした出店を計画しております。土地・建物の取得を除いた店舗造作に係る年間の設備投資総額はおよそ35億から40億円程となります。現在、環境に配慮した内装材の使用を検討しております。資源高や円安の影響により内装材も高騰していることから、コストパフォーマンスを考慮しながら、計画が実現できるように進めてまいります。

 当社グループでは、2021年10月より、石油由来のポリエチレン製ショップバッグを廃止し、植物由来のボタニカルインキを使用した再生紙のショップバッグとリサイクルポリエチレン製ショップバッグを全店で使用しております。2022年2月期において、出荷ベースで1,738万枚のうち紙袋の使用は38.4%でしたが、2023年2月期においては、出荷ベースで2,089万枚のうち紙袋の使用を77.3%に高めた結果、CO2排出量をおよそ3トン削減することができました。

 

3) ロスをうまない経営

 当社グループの考えるロスには、商品がないことによる販売機会のロスと在庫のロスがあります。

コロナ禍、積極的なIT投資によりデジタル基幹システムの構築とオムニチャネル戦略の強化を行ってまいりました。店舗において倉庫在庫の販売が直接できるようになり、またオンライン販売においては店舗での商品受け取りが可能となり、欠品時の販売機会のロスが低減できるようになりました。さらにスマホアプリによる自店在庫の見える化により、お客様の利便性が増したことに加え、生産性の向上による売上拡大と業務効率の改善による人件費の圧縮が可能となりました。

 次の目標としては、将来の在庫処分をうまないために、売上分析に基づき、需要のある地域に適切な分量の商品を供給し、販売していく仕組みをつくることにあります。滞留商品については、地域の拠点となる大型店舗やアウトレット店に商品を集約することで、在庫の消化を促進する取り組みも行ってまいります。さらに、外部での販売会や催事などを企画し、徹底して売り切る体制を整えてまいります。このようにして、長期滞留在庫(使用不可商品を除く。)の廃棄ゼロを目指します。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 感染症の拡大(顕在化の可能性:小、時期:特定時期なし、影響度:大)

① 主なリスクの内容

・感染拡大防止のため、営業店舗の休業等を含めた営業制限

・当社グループ及び取引先企業の従業員等の感染

・取引先メーカーからの仕入商品の入荷遅延、海外生産工場の操業停止、物流遅延

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの各社は、小売事業として多店舗展開を行っております。既存の感染症については、ワクチン、予防薬や治療薬の開発や普及により、感染拡大による営業制限のリスクは小さくなっておりますが、新たな感染症が発出し感染拡大により緊急事態宣言が発表される状況となった場合、売上高の著しい減少が想定されます。まず、世界的に感染拡大となった場合、インバウンド需要が見込めなくなります。2020年2月期決算における国内のインバウンド需要は、国内売上のおよそ1割程でした。店舗が一定期間一斉休業した場合を除き、特に大都市圏での移動制限や外出自粛により消費が1割から2割程減退すると予想します。特に、東京を含めた関東圏は全店舗の4割を占めるため、これらが一斉休業となった場合、国内売上高の過半に影響を与えると想定されます。海外については、連結売上高のおよそ2割を占める韓国において、ソウル特別市内及び京畿道において都市封鎖(ロックダウン)が生じた場合、過半の店舗で営業が困難な状況に陥ることから売上高の著しい減少が想定されます。利益については、国内外ともに、減収に応じて経費のうち人件費や地代家賃などの固定費に当たる部分が負担増となり減益の可能性があります。米国については、製造業であるため、サプライチェーンの混乱によるコンテナ不足や輸送費の上昇など仕入原価の増加が想定されます。

当社グループは、延べ人数で1万人を超える雇用をしております。感染症に限らず、これら不可抗力な事象の発生により、長期的に店舗運営が困難な状況となった場合、雇用の維持ができなくなる可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、感染状況に応じて感染防止策(マスク・消毒・密を避ける)を実行に移すとともに、オンライン販売の強化、関東以外の地域への出店強化、都心部のみならず生活圏への出店拡充などを行うで売上減少のリスクを軽減してまいります。

 

(2) 大規模災害等(顕在化の可能性:中、時期:特定時期なし、影響度:大)

① 主なリスクの内容

・大地震や台風・豪雨などの自然災害

・火災、停電

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの国内店舗は、全国各都道府県に1,000店舗以上あり、海外については、韓国に300店舗以上、台湾に60店舗以上あります。各社は、商品等を保管する倉庫を所有しております。また日本及び米国においては工場を所有しております。大規模な自然災害等により店舗・倉庫・工場が被災した場合、固定資産や商品等に損害が発生する可能性があります。日本における本社機能は東京、韓国においてはソウル特別市、台湾においては台北エリア(新北市)、ベトナムにおいてはホーチミン市、米国においてはオレゴン州にあります。自然災害等、不可抗力な事象の発生により本社機能が麻痺した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。中長期的には首都圏直下型地震や南海トラフ地震が予測されており、相当程度のリスクがあります。具体的な発生時期や影響の程度は不明です。

当社グループの主な取り組みといたしましては、予防的な措置として基幹業務を中心にクラウド運用を強化すること、事後対応としてSNS等を活用した緊急連絡網の整備、大型店にサテライトオフィスを設置するなど本社機能の一部分散等の対応をしてまいります。

 

(3) 海外情勢(顕在化の可能性:中、時期:短期・中長期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・政治・経済情勢の変動

・テロ・紛争等による治安状態の悪化や社会的な混乱

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの売上高のうちおよそ3割が海外売上高であり、そのうち韓国で2割を占めます。韓国においては、ソウル特別市内及び京畿道にドミナント出店しており、全体の過半の売上を占めております。新型コロナウイルス感染症の流行以外にも、過去においてSARSやMARSといった感染症の流行、日本製品の不買運動等により業績が悪化することがありましたが、政治・経済情勢の変動等により同様のことが起こる可能性があります。

当社グループの国内事業は売上の2割強を自社ブランドで占めておりますが、これらの商品は海外の委託工場で生産し、日本に輸入しております。主な生産地域は、東南アジア(約5割)、中国(約5割)であります。過去にミャンマーのクーデターや感染症によるベトナムのロックダウンなど、少なからず影響がありましたが、これらの地域において政治・経済情勢が著しく悪化した場合、商品供給が滞る可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、海外拠点を増やすこと、海外の他地域への進出を検討しております。海外生産においては生産国を分散することでリスク回避を行っております。

 

(4) 為替相場の変動(顕在化の可能性:大、時期:短期・中長期、影響度:中)

海外セグメントは、韓国、台湾、米国、ベトナムで構成されております。それぞれの現地通貨に対し円高になった場合、売上や利益が減少します。在外子会社の資産、負債は、当該子会社の決算日の直物為替相場により円貨に換算し、収益及び費用は、期中平均為替相場により円貨に換算しております。当社グループの売上のおよそ3割が海外売上のため、決算期末日時点の為替相場が大きく変動した場合、財務諸表に影響を与える可能性があります。

当社グループの国内売上の2割強が自社企画商品であり、その9割を海外から輸入しております。これら輸入商品の大半が米ドル決済であり、年間1.5億から2億ドル程の外貨需要があります。米ドルが1円円安になった場合、仕入原価が1.5億円から2億円増加します。輸入為替につきましては、仕入コストの安定化を図ることを目的として為替予約等を締結する場合がありますが、為替相場が大きく変動した場合、売上総利益に影響を与える可能性があります。なお、現在、為替予約の締結は行っておりません。

 

(5) サプライチェーン問題(顕在化の可能性:中、時期:短期・中長期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

 ・環境負荷や人権に関わる問題

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループは、当社及び国内外の子会社において海外の生産委託工場で靴を中心とした商品の製造と輸入を行っております。生産国において環境負荷や労働安全衛生上の問題、また人権に関わる問題が発生した場合、環境保護団体や人権保護団体等から事業活動の停止や中止の勧告、汚染除去・浄化費用の支出、被害・損害の補償、訴訟や損害賠償等の負担が発生するリスクがあります。また当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼすリスクがあります。

当社グループのサプライチェーンの管理体制としては、全ての工場に対し、取引の基本条件として工場監査を義務づけております。品質基準、価格、法令遵守、労務管理、人権保護、環境への配慮などが工場選考基準となっております。BSCI、DTI、FLA、SA8000、WRAP、SLCP、SCANなどを推奨監査プログラムとして採用しており、半年から1年の周期で定期的に工場監査を実施しております。全ての評価項目が適正水準に達していることが取引開始(更新)の前提条件としております。

 

 

 

(6) 事業環境(顕在化の可能性:大、時期:短期・中長期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・シューズマーケットの縮小

・ファッショントレンドの変化

② 当社グループへの影響と主な取り組み

中長期的には、国内においては、人口減少と超高齢化社会によりシューズマーケットは縮小の可能性があります。シューズの需要が低下する場合、出店戦略や業績に影響を与える可能性があります。

世界的なカジュアル志向により、スニーカー需要が増し、レザーシューズやビジネスシューズの販売が低迷するなど、トレンドの変化により、商品の需要と供給が変わることから、業績に影響を与える可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、シューズマーケットにおける国内シェアの拡大、またシューズ以外の分野、スポーツアパレル市場やアウトドア市場においてもシェア拡大を狙ってまいります。トレンドの変化への対応につきましては、商品カテゴリー毎の戦略を適宜見直してまいります。

 

(7) 季節変動(顕在化の可能性:大、時期:短期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・販売動向の変化

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループが置かれているシューズ業界は、ファッション業界と同様、売上高に季節変動があります。3月から5月(第1四半期)は就職・就学需要と春休みやGW等の春商戦があり、12月と1月は年末年始商戦があるため、売上が最も大きくなります。また出店が多くなる第1四半期と第3四半期に経費が多く計上されることから、営業利益は四半期会計期間毎に変動する傾向にあります。キャッシュ・フローにつきましては、納税時期である4月と10月、配当支払い時期である5月と11月は、現預金の支出が多く、また新規出店や改装によるリニューアル出店が多い時期でもあることから、第1四半期と第3四半期の財務活動と投資活動によるキャッシュ・フローは支出が増加します。

当社グループの主な取り組みといたしましては、シーズン毎に販売戦略を構築し、きめ細かな商材設定を行い、旬な商品を適時適切なタイミングで販売することで販売機会のロスを低減し、在庫回転率を高めてまいります。また季節感のある店舗運営を心掛けることで、お客様の再来店を促す取り組みを実施してまいります。そしてお客様にご満足いただける商品・サービスの提案を継続的に行ってまいります。

 

(8) 人材の確保と育成(顕在化の可能性:中、時期:短、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・採用状況の悪化

・離職率の上昇

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの国内においては、毎年200名以上の新規採用を行っております。採用難や離職率が上昇した場合、出店戦略や店舗運営に影響を与える可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、雇用形態の多様化(短時間労働正社員ほか)、地域密着型の人材登用を行い、人材の確保に努めております。また採用研修制度の充実を図り、人材の育成と能力開発を進めていくことで、将来を担う若手社員の離職を防ぐ取り組みを行っております。また様々な事情により退職した社員の再雇用を促す取り組みとして「ウェルカムバック制度」を活用しております。

 

 

(9) 情報セキュリティ(顕在化の可能性:中、時期:特定時期なし、影響度:大)

① 主なリスクの内容

 ・主要なシステム及びネットワークの大規模障害

 ・機密情報の流出・消失

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループは、デジタルコマースやサービス運営で情報システムや外部サービスを利用しております。大規模停電などのシステム障害に備え、主要なシステムやサーバーをクラウド化し、通信回線等のインフラ設備を冗長化する等リスクの分散を図っております。これらの情報システム等の可用性を高い状態で維持するため、定期・不定期のシステムメンテナンスやソフトウェアのアップデートを行っており、既知の脆弱性への対応と潜在的な脆弱性の発見及び対策に努めております。しかしながら大規模災害や未知のコンピューターウイルスの侵入・サイバー攻撃などによりシステム障害が発生した場合、当社のサービス運営が困難な状況に陥る可能性があり、その場合当社グループの財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、デジタル事業を展開するうえで、顧客情報(個人情報を含む)や営業秘密等の機密情報を取り扱っております。万が一、機密情報の流出・消失が発生した場合、当該情報の回収や損害賠償の支払等の対処を要し、業績への悪影響や顧客の信用低下を招く可能性があります。

 

(10) 減損損失(顕在化の可能性:小、時期:短期・中長期、影響度:小)

当社グループは、原則として各店舗を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位と捉え、減損会計を適用し、投資の回収可能性を適時に判断しております。事業環境の変化等により収益性が低下した場合や所有不動産の土地の価格が著しく下落した場合、土地や建物などの有形固定資産や、企業買収に伴い取得したのれんや商標権などの無形固定資産について減損損失を計上する可能性があります。

 

(11) 金融商品評価損(顕在化の可能性:小、時期:短期・中長期、影響度:中)

当社グループは、現在、純投資目的である投資株式を保有しております。これらは市場価格(時価)により価格が変動するため、時価が下落した場合は、損失を被る可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営者の視点による財政状態、経営成績の状況に関する分析・検討内容

① 当連結会計年度の経営成績の概況及び分析

当連結会計年度(2023年3月1日から2024年2月29日まで)における事業環境は、コロナ禍から社会経済活動の正常化が本格化し、外国人旅行客の増加もあり、消費が急速に拡大しました。一方で、地政学的なリスクの高まりを背景に円安や物価の高騰が続いており、景気回復の減速が懸念されております。

シューズ業界におきましては、世界的なインフレの進行とインバウンド需要の高まりにより、コロナ禍に縮小したマーケットが回復基調で推移しました。消費動向としては、エネルギーや食料品等の価格上昇により、お客様の価格志向は消耗品と嗜好品とで二極化が進みましたが、トレンド商品としての靴は需要が増加傾向にあります。商品トレンドは、新作スニーカーを中心としたスポーツ系カジュアルに加え、旅行やレジャーなどアウトドア系ファッションの需要が拡大しております。

これらのことから、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

このような状況下、当社グループは、デジタルインフラの活用、グランドステージと複合業態店舗の拡大、スポーツシューズやスポーツアパレルを含めたライフスタイルカジュアルの拡充に対応してまいりました。店舗展開につきましては、国内外合わせて79店舗の新規出店を行い、70店舗の改装を実施しました。当社グループの店舗数は、1,487店舗となりました。

以上の結果、当連結会計年度における連結業績は、売上高は前期比18.7%増3,441億97百万円となりました。利益面につきましては、都心部大型路面店の売上回復が寄与し、営業利益は前期比31.6%増556億71百万円、連結営業利益率は16.2%となりました。経常利益は前期比33.4%増578億34百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比32.2%増400億9百万円となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

イ.国内

販売戦略につきましては、昨秋以降、日本、韓国、台湾、ベトナムの4ヶ国で新作シューズを同時リリースするなど、プロモーション活動をグローバルに展開してまいりました。商品展開としては、著名アーティストとのコラボレーション企画による新作スニーカーやカジュアルシューズ、アパレルの販売に注力してまいりました。物価の高騰が続く中、セール時期にはお求めやすい価格帯の商品を取り揃えるなど、お客様のニーズに対応した取り組みを実施してまいりました。

店舗展開におきましては、郊外のショッピングセンターを中心に45店舗の新規出店を行いました。トレンドアイテムとスポーツアパレルの拡充を図るため、「GRAND STAGE」と「ABC-MART SPORTS」の出店を拡大いたしました。業態変更を目的としたスクラップアンドビルドと好立地への移転を実施したため、34店舗の閉店を行いました。これらの結果、期末の国内店舗数は1,095店舗となりました。既存店におきましては、増床改装を中心に55店舗の改装(うち35店舗は増床改装、27店舗は業態変更)を実施しました。「ABC-MART」や「ABC-MART SPORTS」など複数のバナーを一箇所に集めた複合業態店舗の出店拡大を積極的に進めてまいりました。これらの結果、当期末時点の「GRAND STAGE」は87店舗、また複合業態店舗は103店舗となりました。なお、当連結会計年度から連結の範囲に加わった株式会社オッシュマンズ・ジャパンが運営する「OSHMAN'S」は上記国内店舗数に含めております。当連結会計年度において、「OSHMAN'S」は5店舗出店、1店舗閉店、計14店舗となりました。衣料品の販売がメインの「OSHMAN'S」は「GRAND STAGE」とターゲット層が類似していることから、相互送客による売上拡大と業務効率による利益獲得を目的に「GRAND STAGE」と「OSHMAN'S」の同施設内における共同出店を進めております。当期末時点において8店舗展開しております。

 

国内店舗の営業状況につきましては、下期に入り、都心部の大型路面店の売上がコロナ前の水準にまで回復しました。通期の売上高増収率(通販含む。)につきましては、「OSHMAN'S」を除き、全店で前期比17.2%増、既存店で前期比16.8%増となりました。インバウンドの増加により、物価上昇下においても高単価スニーカーの販売が好調だったこととアパレル売上の伸長により、既存店の客単価が前期比8.8%上昇しました。オンライン販売については、デジタル売上高(実店舗におけるEC在庫の販売分を含む。)が前期比5.6%増となりました。

これらの結果、国内における売上高は前期比20.1%増2,378億74百万円、セグメント利益は前期比30.6%増457億25百万円となりました。

 

 

ロ.海外

海外の店舗展開につきましては、韓国に22店舗、台湾に7店舗、米国に1店舗、ベトナムに4店舗、計34店舗の新規出店を行いました。期末店舗数(2023年12月31日現在)は、韓国316店舗、台湾63店舗、米国8店舗、ベトナム5店舗、計392店舗(閉店 韓国14店舗、台湾11店舗)となりました。

海外の業績につきましては、為替はいずれの通貨に対しても円安水準となりました。韓国につきましては、トレンドアイテムの販売が好調だったことから、売上高は前期比15.4%増の663億22百万円となりました。台湾につきましては、国内マーケットは競争が激しいものの国内需要の取り込みが堅調だったため、売上高は前期比18.8%増の117億57百万円となりました。米国につきましては、DTCとEコマース事業が好調だったことから、売上高は前期比13.0%増の292億29百万円となりました。ベトナムにつきましては連結業績へ与える影響は軽微であります。海外連結子会社はいずれも12月決算であります。

これらの結果、海外における売上高は前期比15.4%増1,075億86百万円、セグメント利益は前期比37.0%増98億93百万円となりました。

 

(販売実績)

品目別販売実績

 

品目別

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

前期比(%)

スポーツ

163,404

192,500

17.8

レザーカジュアル

44,720

50,470

12.9

キッズ

22,790

26,161

14.8

サンダル

14,544

18,387

26.4

レディース

16,563

19,014

14.8

ビジネス

8,550

9,356

9.4

ウェアその他

12,196

21,108

73.1

その他

7,306

7,196

△1.5

合計

290,077

344,197

18.7

 

(注)1 上記金額は、国内及び海外の合計で表示しております。セグメント別の販売実績につきましては、「1 連結財務諸表等 注記事項(収益認識関係) 1.顧客との契約から生じる収益を分解した情報」に記載しております。

  2 当連結会計年度より、「ウェアその他」の金額的重要性が増したため、「その他」から別掲しております。

 

 

地域別売上実績

 

地域別

売上高

店舗数

金額(百万円)

構成比(%)

開店(店)

閉店(店)

期末(店)

北海道

7,598

3.5

3

1

42

東北

8,338

3.9

5

3

58

東京

42,509

19.7

2

4

146

関東(除く東京)

51,830

24.0

8

10

282

中部

27,682

12.8

6

6

166

関西

41,060

19.0

12

5

185

中国四国

10,619

4.9

2

2

69

九州沖縄

26,058

12.1

7

3

147

国内店舗売上高合計

215,697

100.0

45

34

1,095

その他(注)1

21,152

 

 

 

 

国内合計

236,850

 

 

 

 

 韓国

66,322

61.8

22

14

316

 台湾

11,757

11.0

7

11

63

 ベトナム

277

0.3

4

5

 米国

28,989

27.0

1

8

海外合計

107,347

100.0

34

25

392

売上高合計

344,197

 

79

59

1,487

 

(注) 1 「その他」の売上高の主なものは、通信販売及び卸売上等によるものであります。

2 単位当たり国内店舗売上実績は以下のとおりであります。

 

項目

前連結会計年度

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

国内店舗売上高(百万円)

176,615

215,697

1㎡当たり
売上高

平均売場面積(㎡)

289,559.46

306,931.71

1㎡当たり年間売上高(千円)

609

702

1人当たり
売上高

平均従業員数(人)

4,982

5,386

1人当たり年間売上高(千円)

35,450

40,047

 

(注) 1 平均売場面積は、店舗の稼働日数を基礎として算出しております。

2 平均従業員数は、アルバイト・契約社員を含み、役員を除いております。なお、アルバイト・契約社員は期中加重平均(1日8時間換算)で算出し、加算しております。

 

(仕入実績)

 

区分

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

前期比(%)

仕入高

165,015

167,080

1.3

 

(注) 上記金額は、国内及び海外の合計で表示しております。

 

 

② 当連結会計年度の財政状態の概況及び分析

流動資産合計は、前連結会計年度末に比べ272億36百万円増加し、2,886億27百万円となりました。主な要因は、店舗売上の増加による現金及び預金の増加282億89百万円等によるものであります。

固定資産合計は、前連結会計年度末と比べ42億48百万円増加し、987億8百万円となりました。主な要因は、有形固定資産の増加20億11百万円及び敷金保証金の増加10億30百万円等によるものであります。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ8億5百万円増加し、456億81百万円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ306億80百万円増加し、3,416億54百万円となりました。主な要因は、利益剰余金の増加254億41百万円及び円安による為替換算調整勘定の増加37億96百万円等によるものであります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ245億37百万円増加し、1,727億62百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金収支は、512億30百万円の収入(前期比403億47百万円収入増)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益572億57百万円、減価償却費57億83百万円、棚卸資産の減少額28億78百万円、受取利息及び受取配当金11億13百万円、及び法人税等の支払額159億64百万円等を反映したものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金収支は、114億5百万円の支出(前期比24億1百万円支出増)となりました。この主な要因は、定期預金の預入による支出41億7百万円、新規出店及び店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出63億65百万円、無形固定資産の取得による支出12億18百万円、敷金及び保証金の差入による支出13億94百万円等を反映したものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金収支は、185億87百万円の支出(前期比92億28百万円支出増)となりました。この主な要因は、輸入仕入に係る短期借入金の減少額45億59百万円及び配当金の支払による支出140億27百万円等を反映したものであります。

 

② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金及び設備投資は、主に自己資金により充当しております。当連結会計年度末現在、1,727億62百万円の現金及び現金同等物の残高を保有しており、将来資金に対して十分な財源及び流動性を確保しております。

今後の資金使途については、販売体制を強化するためのITを含めた設備投資、店舗用不動産の投資や海外事業の拡大への投資を目的といたします。また将来の企業買収や企業提携なども視野に入れて財源の確保をしてまいります。また株主様への利益還元として安定的な配当政策の実施は元より、配当性向を意識した増配が毎期実現できるよう努めてまいります。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。