当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営方針、経営環境
当社グループは、先進・独自の技術をもって、最高品質の製品やサービスを提供することにより、「事業を通じた社会課題の解決」に取り組み、持続的な社会に貢献する企業であり続けることを目指しています。
2017年8月に長期CSR計画「サステナブル バリュー プラン(Sustainable Value Plan)2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定し、2021年4月15日に発表した中期経営計画「VISION2023」を「SVP2030」の目標を実現するための具体的なアクションプランとして位置づけ、事業活動を通じて「新たな価値」を創出することで、社会課題の解決に取り組んでいます。
「VISION2023」では、「事業ポートフォリオマネジメント」と「キャッシュフローマネジメント」の強化等により、成長投資原資の確保と、重点・新規/将来性事業への経営資源の集中投下の循環の加速・強化を図ることで、事業を通じて「環境」「健康」「生活」「働き方」の課題に取り組み、「ヘルスケア・高機能材料の成長加速と、持続的な成長を可能とする強靭な事業基盤の構築」を進めていきます。
中期経営計画2年目の2022年度は、「売上高」「営業利益」「税金等調整前当期純利益」「当社株主帰属当期純利益」で過去最高を記録し、「VISION2023」で掲げた2023年度売上高2兆7,000億円、営業利益2,600億円を1年前倒しで達成しました。中期経営計画の最終年度である2023年度においては、「売上高」「営業利益」「税金等調整前当期純利益」「当社株主帰属当期純利益」いずれも過去最高の更新を計画し、これを達成することで「VISION2023」を結実させます。
2023年度は、日本での新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」と記載します。)に関する感染症法上の分類見直しや米国での「国家非常事態」の解除等、世界各国で新型コロナ対策に伴う規制の撤廃が進み、「ウィズコロナ」のもとでの正常化の歩みが進んでいくとみています。一方で、世界的な物価高と金融引き締めによる金融不安に加え、ロシア・ウクライナ情勢や米中対立等による地政学的分断とサプライチェーンの混乱による世界経済の減速が懸念されています。この様な状況下で、当社グループは全事業の収益力向上に努め、安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、「ヘルスケア・高機能材料の成長加速と、持続的な成長を可能とする強靭な事業基盤の構築」を実現することによって、この難局を乗り越えていきます。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。
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(単位:億円) |
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2022年度 |
2023年度 (次期の見通し) |
対前年度 |
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2023年度 (中期経営計画) |
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売上高 |
28,590 |
29,500 |
910 |
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27,000 |
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営業利益 |
2,731 |
2,900 |
169 |
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2,600 |
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当社株主帰属当期純利益 |
2,194 |
2,250 |
56 |
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2,000 |
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ROE |
8.3% |
8.0% |
0.3ポイント減 |
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8.4% |
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ROIC |
6.1% |
5.9% |
0.2ポイント減 |
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6.1% |
(2)対処すべき課題
「ヘルスケア部門の成長戦略」
ヘルスケア部門では、引き続きメディカルシステム事業が売上成長を牽引し、増収・増益を確保します。ライフサイエンス分野では、中長期的に高い成長が見込めるバイオCDMO事業・ライフサイエンス事業の設備投資を継続するとともに、最先端のバイオ治療薬創出を支援する企業としてワンストップで価値を提供し、事業拡大を目指します。
メディカルシステム事業では、富士フイルムヘルスケア㈱とのグループ内再編、クロスセル等の各種シナジー効果の発出を進めていきます。2023年4月には、富士フイルム㈱のカセッテサイズデジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Flow(カルネオ フロー)」Cシリーズのフラットパネルセンサを採用した、1台で動画と静止画の撮影が可能な透視機能付きX線画像診断システム「CALNEO Beyond(カルネオ ビヨンド)」を富士フイルムヘルスケア㈱より発売しました。また当社は独自の画像処理技術やAI技術を生かした「REiLI(レイリ)」ブランドの下、医療現場のワークフローを支援するAI技術の開発と実用化を進め、AI・ITソリューションビジネスのさらなる事業拡大を図っていきます。2022年12月には、デジタル病理診断用ソフトウェア等の開発・販売を行っているInspirata, Inc.のデジタル病理部門を買収し、米国、欧州市場を中心にグローバルでデジタル病理事業に本格参入しました。世界トップシェアを誇る当社の医用画像診断システム(PACS)と本デジタル病理診断用ソフトウェアを組合わせて院内検査画像の一元化を実現し、病理診断ワークフローの効率化を支援します。2023年6月には、低線量・高画質とAI技術によるワークフロー向上を実現したデジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY(アミュレット ソフィニティ)」を発売します。女性向け医療ソリューションを「INNOMUSE(イノミューズ)」のブランド名で広く展開し、女性の健康維持増進に貢献していきます。
バイオCDMO事業では、デンマーク拠点で、2023年度後半に原薬製造設備の増設や製剤製造ラインの新設を予定する他、米国・欧州の拠点で、抗体医薬品や遺伝子治療薬、ワクチン等様々なバイオ医薬品の生産プロセス開発から製剤化・包装までを、少量から大量生産まで一貫して受託できる「ワンストップサービス」体制の整備を進め、成長するバイオ医薬品市場を上回る成長率で事業を拡大していきます。
ライフサイエンス事業では、創薬支援材料分野において、細胞・培地・サイトカイン・試薬等のセット販売等により、研究開発から製造プロセスまでワンストップショップで価値提供していきます。バイオ医薬品製造用の需要が旺盛な培地については、米国2拠点目となる製造施設を新設する等、米国・欧州・日本のグローバル生産体制の拡充を進めるとともに、高品質・高機能な培地を開発・提供することで事業拡大を図っていきます。また、iPS細胞技術・ノウハウを生かした細胞治療薬の開発・製造受託ビジネスも拡大していきます。
医薬品事業では、国内では当社初となるバイオCDMO拠点の新設(富士フイルム富山化学㈱の既存工場の敷地内にて2026年稼働予定)を2022年10月に決定した他、ナノ分散技術や解析技術、プロセス技術等の当社独自技術や、既設の脂質ナノ粒子製剤の製造設備等も活用しながら、次世代医薬品の核酸医薬品、mRNAワクチン、抗体医薬品等のプロセス開発・製造受託ビジネスを拡大していきます。
コンシューマーヘルスケア事業では、当社独自のリポソーム技術を化粧品分野に応用した高機能美容液「アスタリフト ザ セラム」シリーズ(2022年8月発売)を始め、独自性の高い化粧品・サプリメントの新製品を逐次投入して、事業を継続的に拡大していきます。
「マテリアルズ部門の成長戦略」
マテリアルズ部門では、「高機能材料戦略本部」の下、高機能材料領域における中長期視点での新規事業開発と、同領域の顧客アプリケーション軸での事業ポートフォリオの構築・戦略マネジメントにより事業拡大を進めていきます。
電子材料事業では、AI、IoT、5Gの普及やDXの加速等により半導体需要は拡大し、半導体の高性能化に必要な微細化・高集積化がさらに進むとみられています。当社はこうした市場ニーズに応えるために、高性能化を支える材料開発や安定供給を目的とする積極的な設備投資をタイムリーかつ継続的に実施していきます。また、半導体製造の多様な工程に対応する当社の広範な製品ラインアップを、新製品開発によりさらに拡充するとともに、CMPスラリーとポストCMPクリーナー等補完し合う材料を有する強みを生かし、単一材料では解決できない複雑な顧客課題を解決していく等、「ワンストップソリューション」を提供することで、事業成長を加速させます。
ディスプレイ材料事業では、液晶パネル向けのタック製品における強いマーケットポジションの維持に加え、薄膜・積層塗布技術を活用した差別化製品の開発と導入を進め、有機EL向け材料の高シェア維持、車載ディスプレイやAR/VRスマートグラス向けの部材等新規用途材料のビジネス拡大を推進していきます。
産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」や、データセンター等で使用されるデータテープ等、当社独自技術を活用した高機能製品の拡販を継続するとともに、二次電池、光センサー、通信関連材料等、積極的に新規ビジネスの開拓を行い、事業を拡大します。
ファインケミカル事業では、特に成長性の高いライフサイエンス、エレクトロニクス、環境・エネルギーの3分野を重点化し、「フロー合成」や「高純度化」等の当社が有する技術による差別化製品を創出し、事業を拡大していきます。
グラフィックコミュニケーション事業では、2021年7月に発足した「グラフィックコミュニケーション事業部」の下、当社グループ内でシナジー創出を加速し、顧客に対してさらなる価値をグローバルに提供することにより、事業拡大を進めてきました。2023年度は、商業印刷・パッケージ印刷を中心に富士フイルム㈱が有するグローバルな顧客基盤と、富士フイルムビジネスイノベーション㈱の販売力、技術・製品力を組合せ、デジタル印刷機(Print On Demand)の全世界での拡販、ブランドオーナー・印刷業向け各種DXソリューションの提供、及び刷版材料分野でも販売や生産の効率化を進め、さらなる収益性の改善を加速していきます。
「ビジネスイノベーション部門の成長戦略」
ビジネスイノベーション部門では、「FUJIFILM」ブランド新製品の拡充とグローバルでの拡販をさらに進めていきます。加えて、DXソリューション・サービス拡販、BPOビジネスでのDX戦略展開等によって、継続的な成長と事業ポートフォリオの変革を加速します。具体的には、オフィスでの顧客基盤を生かした在宅勤務需要の取り込みと文書管理等に役立つソリューション・サービスの提供、中小企業向けのIT/セキュリティサービス強化を軸とした提供価値の拡大、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン㈱と富士フイルムRIPCORD合同会社による紙文書の電子化・処理を基盤としたデジタル業務プロセスサービスの拡大、及び富士フイルムデジタルソリューションズ㈱と2023年3月に買収したFUJIFILM MicroChannel Services による、「Microsoft Dynamics 365」を主力とした基幹システムの販売・導入支援等を通じて、顧客企業のDXに貢献していきます。
「イメージング部門の成長戦略」
イメージング部門では、魅力的なインスタントフォトシステムやミラーレスデジタルカメラの新製品の発売、富士フイルムビジネスイノベーション製プリンター機の展開拡大、プロジェクター・遠望多目的カメラ等BtoB新規分野への展開等、イメージングビジネスの拡大を進めます。また、インスタントフォトシステムのBtoBビジネス本格立ち上げやINSTAX“チェキ”の新たな楽しみ方を体験できるスマートフォン用アプリ「INSTAX UP!」の投入、画像点検ソリューションビジネス等の新しい商材も展開していきます。
「SVP2030の下での重点分野と取組み」
当社は、「SVP2030」の下、「事業を通じた社会課題の解決」と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」との2つの側面から、4つの重点分野「環境」「健康」「生活」「働き方」と、事業活動の基盤となる「サプライチェーン」「ガバナンス」における各分野で設定した目標達成に向けた取組みを進めています。
「環境」においては、気候変動への対応や水資源を含む資源循環の促進等を環境分野における重点課題として取り組んでいます。脱炭素化については、パリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合した目標「自社の製品ライフサイクル全体でのCO2排出を2030年度までに50%削減(2019年度比)」を掲げています。本目標の達成に向け、富士フイルムグループ環境戦略「Green Value Climate Strategy」を策定し、環境負荷の少ない生産活動や、優れた環境性能を持つ製品・サービスの創出・普及を推進していきます。さらにインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)を導入し、国際社会の喫緊の課題である気候変動への対応を強化しています。水資源管理については、「富士フイルムグループによる水投入量の30%削減(2013年度比)」を数値目標として掲げ、効率的な水使用や自社工場内での排水処理等、水資源保全に取り組んでいます。このような活動が評価され、当社は国際的な非営利団体CDPが実施する企業調査において「気候変動」「水セキュリティ」の2分野で最高評価である「Aリスト企業」に認定されました。また、2022年12月23日には、富士フイルム㈱と㈱CO2資源化研究所(以下、「UCDI社」と記載します。)が二酸化炭素を主原料に有機物を産生する水素酸化細菌の量産化技術開発に関する共同研究契約を締結しました。有機物の生産プロセスにおいて二酸化炭素を吸収することで、二酸化炭素の排出量よりも吸収量が多いカーボンネガティブが可能となることから、国際社会の喫緊の課題である脱炭素社会の実現に向けた有用な手段の一つとして期待されており、富士フイルム㈱とUCDI社は、早期に本技術の確立を図り、社会実装を目指します。
「健康」においては、2022年度に約93ヶ国まで拡大した医療AI技術を活用した製品・サービスの導入国を、2030年度には世界196の全ての国と地域に導入することを目標にしています。内視鏡システム、超音波診断装置、デジタルマンモグラフィ、CT、MRIといった診断用の医療機器製品を提供することで、疾病の早期発見に取り組む医師をサポートし、人々の健康維持増進に貢献しています。また、従業員の健康に対する意識向上やがん対策、喫煙対策等が評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に3年連続で選ばれました。また、経済産業省と日本健康会議より、優良な健康経営®*1を実践している法人として「健康経営優良法人ホワイト500」に7年連続で認定されました。今後もヘルスケア事業を通じた社会課題の解決に取り組み、健康長寿社会の実現に貢献していきます。
「働き方」においては、ビジネスに革新をもたらす当社のソリューション・サービスの利用を通じて、働く人の生産性向上と創造性発揮を支援する働き方を2030年度まで累計5,000万人に提供していきます。
「ガバナンス」においては、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置づけ、その強化に取り組んでいます。当社は誠実かつ公正な事業活動を通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的発展に貢献することを目指していきます。
*1 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
「2023年度グループ基本方針」
当社グループの2023年度の経営方針は「“All-Fujifilm”でたゆまぬ挑戦を! 変化の激しい時代を勝ち抜くスピードとアジリティ(機敏性)をさらに磨き、一人ひとりが強い信念を持って、富士フイルムグループの未来を創ろう」です。新規市場創出・拡大に向け、マーケットニーズを的確に捉えることで新たな価値を持つ製品・サービスの開発・提供を推進します。社会課題の解決を事業成長の機会と捉え、持続可能な社会の発展に貢献するために、NEVER STOPの精神の下、当社グループ全ての会社・組織・従業員の力を結集した“All-Fujifilm”で挑戦していきます。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりであります。
(1) 気候変動への対応
当社グループは、脱炭素社会の実現に向け、2021年12月に新たなCO2排出削減目標を設定しました。新たな目標では、2040年までに、エネルギー利用効率の最大化と再生可能エネルギーの導入を両輪で進めることで、自社が使用するエネルギー起因※1のCO2排出を実質的にゼロとすること(カーボンゼロ)を目指すとともに、原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの自社製品のライフサイクル全体において、2030年度までにCO2排出量を50%削減(2019年度比)します。今回当社グループが策定した新たな脱炭素目標は、パリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合したものです。
当社グループでは本目標達成に向け、当社グループ環境戦略「Green Value Climate Strategy※2」を新たに策定しました。電力のみならず合成メタンや水素等のCO2排出を実質伴わない燃料の導入と実装による環境負荷の少ない生産活動や、優れた環境性能を持つ製品・サービスの創出・普及を推進していきます。また、これら施策の遂行を加速させるために、インターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)制度の運用を2022年度より開始しました。当社グループはこれら戦略や施策を通じて、国際社会の喫緊の課題である気候変動への対応を強力に推進していきます。
※1 製品の製造段階における自社からの直接排出(Scope1)と他社から供給された電気・蒸気の使用に伴う間接排出(Scope2)。
※2 Green Value Climate Strategyについては下記をご覧ください。
「2022年4月13日 環境戦略説明会」
https://ir.fujifilm.com/ja/investors/ir-materials/presentations/main/0118/teaserItems1/0/tableContents/
019/multiFileUpload2_0/link/ff_presentation_20220413_001j.pdf
① ガバナンス
当社グループの気候変動に対する活動は、社長を委員長として定期的に開催されるESG委員会で審議・決定され、取締役会に報告されます。取締役会はESG委員会からの報告に対し指示・助言を行い、そのプロセスの有効性を担保します。気候変動対応に関する課題は、その他のコンプライアンスやリスク課題とともに重点リスクとしてESG委員会で審議されます。これまで、CO2排出削減目標や再生可能エネルギー導入目標設定のほか、TCFD提言への賛同、RE100加盟やSBT認定取得等気候変動に関するイニシアチブへの参加の意思決定がなされています。
近年のESG委員会では、インターナルカーボンプライシング制度の導入やTCFD提言に準拠した情報開示について審議・決定されるとともに、取締役会に報告・議論がなされました。また脱炭素目標達成率の中期業績連動役員報酬への反映についても、ESG委員会での審議を経て、取締役会にて決定しました。
② リスク管理
当社グループでは、気候変動に対するパフォーマンスをグローバルで監視するシステムを導入しています。本システムにより、CO2排出量・フロン等の温室効果ガスの排出量や、使用エネルギー量等を各国・地域の拠点毎に監視し、リスクの抽出に活用しています。これらリスクはエネルギー戦略推進委員会で要因分析を行い、重要なリスクについてはESG委員会に報告がなされ適切な対応が決定されます。気候変動に対するリスク評価のために、インターナルカーボンプライシングを活用し、想定される影響と今後の対応を検討しています。また、TCFD提言に準拠したシナリオ分析を行うことで、自社の環境パフォーマンスに起因するリスクに加え、サプライチェーンや事業場の所在地域で発生するリスクも特定し、必要事項について対策がなされます。
③ 戦略
TCFDシナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書の中で示された代表濃度経路(Representative Concentration Pathways:RCP)2.6~8.5をもとに、脱炭素社会に向けた厳しい対策がなされ2100年までの気温上昇が産業革命時期比で1.5℃に抑えられる「1.5℃シナリオ」と、現状を上回る対策が講じられず産業革命時期比で3.2~5℃上昇する「4℃シナリオ」を設定し、評価しました。
ⅰ)シナリオ分析結果
「4℃シナリオ」
現状を上回る対策が講じられず、2100年までに平均気温が産業革命時期比で3.2~5℃上昇する
・事業リスク(物理リスク)
4℃シナリオでは異常気象による生産設備への影響や製品原材料の供給停止、停電による工場停止等のリスクがあることが分かりました。これらリスクに対しBCPの策定による生産拠点や原材料調達先の分散化、安定電源の確保等の対策を進めています。特に近年、異常気象に起因する台風や豪雨により、重要なライフラインである送電網の寸断による被害が各地で発生しています。当社グループは安定的な電源確保のために、1960年代から主要生産拠点に自家発電設備を順次導入することで、停電による操業停止リスクを回避しています。
その他気温や降水パターンの変化により動植物の生息地域の変化、個体数の減少や死滅が発生するリスクがあります。これらの影響により、植物由来原料の不安定化・価格高騰が発生するほか、化石燃料の枯渇により石油由来原料の供給不安定化や価格高騰も想定されます。当社グループでは植物由来の原材料を使用するフィルムの薄手化、またビジネスイノベーション領域では複合機の再生活用(リユース)を進める等、原材料使用量の削減によりこれらリスクの低減を図っています。
・事業機会
気温の上昇に伴い極端な高温、海洋熱波、大雨、干ばつ、熱帯性低気圧の発生頻度や強度が増します。このような異常気象や、異常気象に伴う生態系や健康への影響に対して、社会が適応するための製品・サービスの需要が高まると予測しています。
『社会インフラの強靭化』
異常気象が頻発する状況において、社会インフラの強靭化は重要な課題の一つです。当社グループは、レンズの高精度加工製造技術を活用し、夜間や荒天時でも河川や海面を監視できる高感度カメラの提供や、高精度画像解析・AI技術を用いた橋梁、堤防等の劣化診断技術により、気候変動への適応に貢献できると考えています。また、災害発生時における自治体の罹災対応プロセスのデジタル化により、自治体業務と住民の早期生活再建支援に貢献するソリューションはその必要性が高まると予測しています。
『飲料水と農業用水の確保』
気候・生態系の変化により飲料水と食料の確保が困難になり、飲料水製造や植物工場での生産が増加すると想定しています。世界的なリスクとなりつつある水不足の問題に対しては、イオン交換膜等のフィルトレーション技術により、かん水や海水の淡水化等飲料水や農業用途の確保に貢献できるものと考えています。
『医療従事者の負担軽減及び医療アクセスの向上』
気温上昇は人々の健康にも大きな影響を与えます。感染症等想定外の疾病拡大による医療従事者の負担増加や、台風や集中豪雨、熱波の発生頻度の増加により患者や医療従事者の往来が困難になり、医療従事者が少ない国地域において医療崩壊につながる可能性があります。当社グループは、医療IT技術や医用画像診断・AI技術をグローバルで展開することで、医療従事者の負担軽減や遠隔診断等の医療アクセス向上に貢献していきます。
「1.5℃シナリオ」
脱炭素社会に向けた厳しい対策が講じられ、2100年までの気温上昇が産業革命時期比で1.5℃に抑えられる
・事業リスク(移行リスク)
1.5℃シナリオでは、脱炭素社会へ移行する過程で、化石燃料の使用を制限し技術革新を促す政策としての炭素税や、各国・地域の炭素税額格差による産業移転を抑制するための炭素国境調整措置の導入による財務リスクがあります。2021年度に当社グループが直接及び間接排出したCO2は1,053千トンでした。炭素税額を2022年度上期に設定した社内炭素価格11,000円/トン-CO2とした場合、約116億円の財務リスクとなります。
当社グループは2021年12月に、CSR計画「SVP2030」の気候変動対応目標を引き上げ、2040年度に自社で使用するエネルギーによるCO2排出量ゼロを目標とし、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの導入を両輪で推進しています。2021年度に自社で直接排出するCO2排出量については、省エネや再生可能エネルギーの導入により、本目標の基準年である2019年度に対し、3%削減しました。
・事業機会
人為的に排出されるCO2は主にエネルギー起因であるため、エネルギー利用効率を究極的に高め、CO2排出を伴わない自然エネルギー(風力・太陽光・水力等)を主に利用する社会に移行することが予想されます。
『省エネルギー』
社会全体のエネルギー利用効率を高めるためには、まず製品やサービスにおいてエネルギー効率の高い方式が優先して採用されます。当社グループは、データ保存時のCO2排出を削減する大容量磁気テープによるデータアーカイブストレージシステムや、省電力性能を高めた複合機を提供することで、お客様使用先でのCO2削減に貢献しています。
『創エネルギー』
自然エネルギーを利用するために様々なインフラ整備が進みます。そのうち海上も含め世界的に設置拡大が予想される風力発電設備は、高所や遠隔地等点検が困難な環境に設置されるため、設備の劣化診断や点検に対する技術向上が必要となります。当社グループは、撮像技術や精密成型技術を活用した高性能防振・超望遠カメラと、高精度画像解析・AI技術の組み合わせにより、風の強い海岸や洋上等の過酷な環境下でも、風力タービンのブレード欠陥を稼働中に点検診断可能な技術開発を風力エネルギー供給会社と協働で進めており、風力発電設備の普及・安定稼働に貢献していきます。
『蓄エネルギー』
自然エネルギーを利用する場合、電力の供給量が天候・時間・季節により変動するため、電力の安定供給のために蓄エネルギー技術が必須となります。当社グループの分散・塗布技術や素材技術を活かし、従来の液体リチウムイオンバッテリーに対して低コスト・高容量化が期待できる準固体電池の開発を他社と連携して進めることで、電気自動車や定置用蓄電池での実用化に貢献できるものと考えています。
『CO2の回収・固定化』
脱炭素社会に移行する過程では、CO2を排出する化石燃料の使用が避けられない産業においてCO2捕捉や大気中のCO2固定化が必要になります。この領域ではバイオエンジニアリング技術によるCO2を原料とした有用物質のバイオ生産が貢献できると考えています。
『分散型社会に適応したソリューション・サービス』
自然エネルギーとの親和性を高めるためには、大都市への集中型社会から地方への分散型社会へ移行することが求められ、分散型社会での生活や事業活動を支えるソリューションが普及すると考えています。
当社グループが提供している業務プロセスのデジタル化・自動化、ペーパーレス化を促進するソリューション・サービスは、リモートワークやハイブリッドワークといったビジネス面での分散型社会への対応と、省移動・省時間・省スペースによるCO2排出削減の両面で必要となり、今後さらに需要は高まるものと思われます。
また、生活を支える医療の側面では、4℃シナリオと同様、「医療IT、医療画像診断・AI技術活用による医療従事者支援や医療アクセス向上に貢献するソリューション」が地域毎に必要不可欠であり、大きな事業機会になると考えています。メディカルシステム事業(2030年度売上目標1兆円)を通じて、分散型社会に対応した地域医療への貢献を行っていきます。
当社グループは、今後もコア技術を磨き、レジリエントなエネルギー社会の実現に必要となる様々な製品・サービスの開発を進めていきます。
ⅱ)シナリオ分析結果詳細
「4℃シナリオ」
※1 環境配慮製品の社内認定制度(Green Value Products)を活用し、気候変動の緩和・適応に貢献する製品を開発・提供。
※2 アイコンは、当社保有技術を支える独自のコア技術を示す。
「1.5℃シナリオ」
※1 炭素税額を2022年度上期に設定した社内炭素価格11,000円/トン-CO2とした場合、2021年度製造段階で排出したCO2は1,053千トンであり、1,053千トン×11,000円/トン≒116億円/年となる。
※2 2021年度製造段階でのCO2排出量は1,053千トン。SVP2030による製造段階での2030年CO2排出目標は542千トンでありこの目標を達成すると、2030年には2021年に対し(1,053-542)千トン×11,000円/トン(※1同等)≒56億円/年の炭素税削減となる。
※3 環境配慮製品の社内認証制度(Green Value Products)を活用し、気候変動の緩和・適応に貢献する製品を開発・提供。
※4 アイコンは、当社保有技術を支える独自のコア技術を示す。
④ 指標と目標
当社グループは、SVP2030にて気候変動に対する上記目標を設定し、省エネルギーと再生可能エネルギーの導入を推進するほか、環境負荷低減に優れた製品・サービスを社内認定する「Green Value Products」制度を運用し、社会でのCO2排出削減貢献を今後も進めていきます。
なお、最新の実績値については2023年7月発行予定の「サステナビリティレポート2023」にて公表いたします。
ⅰ)製品ライフサイクル全体でのCO2排出削減目標と進捗
長期: 目標:2030 年度末までにCO2排出量50%削減(2019年度比)
進捗:2021年度末時点で7.5%削減(2019年度比)
ⅱ)自社が使用するエネルギー起因CO2排出削減目標と進捗
長期: 目標:2030年度末までにCO2排出量50%削減(2019年度比)
進捗:2021年度末時点で3%削減(2019年度比)
短期: 目標:2023年度末までにCO2排出量11%削減(2019年度比)
ⅲ)再生可能エネルギーの導入目標
•2030年度までに購入電力の50%を再生可能エネルギー由来の電力に転換
•2040年度までには全ての購入電力を再生可能エネルギー由来電力に転換し、さらに水素等のCO2排出を伴わない燃料を使用する自家発電システムへの切り替え等により、当社が使用する全てのエネルギーでCO2排出量ゼロを目指す
•本目標は、RE100の趣旨に沿った取組みとしてRE100を運営するNPO「The Climate Group」より認められ、当社は2019年4月にRE100に加盟しました。
ⅳ)製品・サービスを通じた社会でのCO2排出削減貢献の目標
•2030年度までに社会でのCO2排出削減累積量90百万トンに貢献
(2) 人的資本
当社グループでは、イノベーションの源泉は従業員の力と位置づけ、経営戦略と連動した人事戦略を進めています。長期CSR計画(SVP2030※1)、中期経営計画の実現に向け、「人材育成」「多様性」「健康経営®※2」の3つを人材戦略の重点領域と位置付け各種施策を推進しています。また、本重点領域での施策をさらに加速させていくため、エンゲージメントサーベイを活用し継続的にエンゲージメントを高める取組みを進めています。
「人材育成」
仕事の基盤となる課題形成力を強化するための「See-Think-Plan-Do(STPD)※3」の浸透と、従業員の自己成長の基盤となる「+STORY(プラストーリー)※4」の展開。さらに、多種多様な教育プログラムによる人材育成を行っており、特にDX人材を強化しています。
「多様性」
多様な従業員一人ひとりが個性や能力を最大限発揮することが変化を作り出す企業のイノベーションの源泉です。管理職に占める女性比率の向上や外国籍従業員の基幹ポストへの登用等、目標値を設定し推進しています。
「健康経営®」
従業員が心身ともにいきいきと働ける健康増進は経営の重要な課題です。健康推進施策の展開を通じて、5つの重点領域のKPIの実現に向け7つの健康行動を実践し、ワークエンゲージメントの向上に繋げます。
※1 2017年8月発表の長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」
※2 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※3 富士フイルム独自のマネジメントサイクル「S(See:情報収集)-T(Think:分析)-P(Plan:計画)-D(Do:実行)」
※4 自己成長の基盤を身に付けるための支援プログラム
①人材育成 ~変化を成長のチャンスと捉えて、挑戦し、主体的に成長する意欲の高い従業員の育成~
「オープン、フェア、クリア」な企業風土のもと、従業員の成長と組織の成長がスパイラルアップし、従業員エンゲージメントが向上することを目指しています。そのために仕事の基盤と自己成長の基盤をしっかり身に付けていることを重視しています。
ⅰ)仕事の基盤となる課題形成力を強化する「See-Think-Plan-Do(STPD)」の浸透
当社グループでは、すべての事業、機能において仕事をしていくうえで大事にする共通の基盤をFFメソッドと定め、展開しています。具体的には事実情報を大切にして(SEE)、深く考えて本質を見抜き(THINK)、計画をたてて(PLAN)、実行する(DO)というSTPDという業務サイクルです。新入社員から海外現法の社員までFFメソッドを身に着ける教育を行い浸透させています。
ⅱ)従業員の自己成長の基盤となる+STORY(プラストーリー)展開
当社グループでは、従業員一人ひとりが「変化を成長のチャンス」と捉えて挑戦し、主体的に成長する意欲を高めることを目的に自己成長支援プログラム「+STORY」を展開しています。本プログラムのひとつである「+STORY対話」では、すべての経験を自分の糧としながら自分のストーリーを積み重ねることを大切にするために、一年に一度、上長との対話を通じて経験を振り返ります。上長は対話を通じて部下の+STORYをサポートし挑戦意欲を引き出します。100人いれば100通りの+STORYが紡がれ、従業員の多様な+STORYが当社グループの原動力になると考えています。
ⅲ)DX人材育成強化
当社グループでは、基幹人材育成プログラムやグローバル人材育成プログラム等、多種多様な教育プログラムによる人材育成に力を入れています。特に、2022年度はDX人材の育成に力を入れ、育成体系を整備し体系的な人材育成に取り組みました。当社がDXに取り組む必要性を理解し、知識武装やスキル習得を通して、成果を創出するという段階を踏むことで、一人ひとりが自らの仕事にDXを取り込むことを目指しています。基盤領域の施策として、DX基礎教育を展開し、「DXリテラシー講座」及び「セルフBI初級講座」をそれぞれ約4万人の従業員が受講終了しました。専門人材育成としては、新規ビジネスを立案する「ビジネスプランナー」や「アーキテクト」の育成のため、3か月間実課題に集中的に取り組み、学びと実践のサイクルを回すブートキャンプを実施しています。DXの実践を担うコア人材として活躍を促し、変革のスピードアップにつなげていきます。
②多様性 ~多様な従業員が活躍できるための仕組み・職場づくり~
当社グループは、多様な従業員一人ひとりが個性や能力を最大限発揮できる環境づくりに取り組んでいます。2022年11月に人事部に「DE&I推進グループ」を立ち上げ、「多様な+STORYを認め合い、支援し合う」というコンセプトのもとで、女性社員の活躍推進、仕事と育児・介護の両立支援・男性の育児参画などの施策を展開しています。育休明けの従業員とその上長を対象にした「仕事と育児の両立セミナー」や、従業員同士の交流の場「+STORY子育てサロン」等の施策を展開し、従業員のDE&Iへの理解を深め、多様性推進の風土醸成を目指します。
2022年度のグループ全体の基幹ポストにおける外国籍従業員比率は28%です。また、グループ全体で管理職に占める女性比率は17%です。国籍や性別を問わない登用の機会を設けることを推進し、2030年度までに基幹ポストにおける外国人比率を35%、管理職に占める女性比率を25%まで増やす目標を設定しています。
③富士フイルムグループならではの健康経営を推進
従業員が心身ともにいきいきと働ける健康づくりを目指し、当社グループでは、2019年に健康経営宣言を制定し、社長を「健康経営最高責任者」、人事部長を「健康経営責任者」とする推進体制を構築して、健康経営を推進しています。健康増進の取組みは、多岐にわたっています。例えば、グループ全社の従業員を対象とした健康づくりのために、生活習慣病、喫煙、がん、メンタルヘルス、長時間労働の5つの重点領域を設け、KPIを設定しています。その実現のため、健康増進の具体的な活動を推進しています。また、健康な生活習慣を身につけるために取り組むべき行動として「富士フイルムグループ7つの健康行動」を設定し、従業員一人ひとりに実践を促しています。
2022年4月には富士フイルムグループ健康保険組合が、従業員向けの健康診断を実施する健診施設として、「富士フイルムメディテラスよこはま」を開設しました。当社グループの最新の内視鏡やマンモグラフィ等の医療機器や、AI技術を活用した医療ITシステムを導入する等従業員に高品質な健康診断サービスを提供しています。「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に認定される等、積極的な取組みは社外からも高く評価いただいています。
富士フイルムグループ 健康課題におけるKPI、中期目標と実績
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重点領域 |
KPI |
中期目標 2025年度 |
実績 |
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2021年度 |
2022年度 |
||||
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生活習慣病対策 |
BMI値25以上(比率) |
21% |
26.9% |
26.8% |
|
|
HbA1c6.0以上(比率) |
6% |
7.7% |
7.9% |
||
|
喫煙対策 |
喫煙率 |
12% |
19.6% |
18.3% |
|
|
がん対策 |
受診率 |
肺 |
100% |
99.4% |
99.3% |
|
胃 |
100% |
81.9% |
80.0% |
||
|
内)胃内視鏡 |
90%+ |
59.9% |
64.1% |
||
|
大腸 |
100% |
88.8% |
89.6% |
||
|
乳 |
90%+ |
77.5% |
80.1% |
||
|
子宮 |
90%+ |
65.9% |
67.2% |
||
※対象:富士フイルムグループ国内従業員(胃・大腸がん検診受診率は40歳以上)
④エンゲージメント
当社グループは、従業員が会社の理念やビジョンに共感し、主体的に行動しているエンゲージメントの高い組織を維持していくことが、企業の成長に繋がると考えています。2022年12月に、グループ全体でのエンゲージメント状況を測るため、グローバルで約7万6千人の従業員を対象に「従業員エンゲージメント調査」を実施しました。調査の回答率は90%と高い水準であり、エンゲージメントスコア※5も80%で、「全体として良好である」という結果が得られました。
今後、調査を毎年実施し、グループ全体の課題を継続的に把握するとともに、調査結果をもとに、自組織の強みや改善課題について職場でディスカッションすることで、グループ全体の従業員エンゲージメントの向上と、従業員と組織の双方の成長の実現に繋げていきます。
※5 各設問の選択肢のうち「肯定的回答(5段階の上位2つ)」を選んだ割合。この数値が高いほど、従業員の
主体性や貢献意欲が高いことを示す。
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|
回答率 |
回答数 |
エンゲージメントスコア |
|
富士フイルムグループ全体 (日本含むグローバルの結果) |
90% |
68,485 |
80% |
当社グループは、グループ全体のリスクマネジメントの基本方針及びリスクマネジメント体制を「リスクマネジメント規程」において定め、その基本方針及び体制に基づき、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行っております。また、当社及びその子会社は、個別の業務遂行において発生するリスク案件についてリスクマネジメント規程に基づいて適切に判断・対処するとともに、重要なリスク案件については、定められた手続きに従い、ESG委員会に報告され、リスク重点課題の設定及びリスク事案発生時の対応を議論し、リスク発生の回避及びリスク発生時の影響の極小化に努めております。さらに、当社グループとしての企業行動憲章・行動規範を定め、法令及び社会倫理に則った活動、行動の徹底を図っております。
当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識している主なリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経済情勢・為替変動による業績への影響に係るリスク
当社グループは、世界の様々なマーケットにおいて製品及びサービスを提供しており、連結ベースでの海外売上高比率は当連結会計年度において約64%です。当社の連結財務諸表は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成していることから、世界各地の経済情勢、とりわけ為替レートの変動は業績に大きく影響を及ぼすリスクがあります。
為替レートの変動が連結営業利益に与える影響は、米ドルに対して円が1円変動した場合は年間約6億円、ユーロに対して円が1円変動した場合は年間約8億円と試算しております。
当社グループでは、為替変動による業績への影響を軽減するため、米ドル、ユーロにおいて先物予約を中心としたヘッジを行う等で対策を行っておりますが、為替の変動の程度によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、設備投資に関わる建築資材や人件費及びエネルギー関連の費用等、経済情勢によって左右される費用の変動も、程度によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)ヘルスケア領域における環境変化・競合に係るリスク
ヘルスケア領域においては、高齢化の進展や医療従事者の不足等による、診療支援や業務効率化に貢献するソリューションニーズや、がんや希少疾患、遺伝子治療等を中心としたアンメットメディカルニーズが高まっており、事業機会が拡大している一方で、医療制度改革による予測できない大規模な医療行政の方針変更や医療機器における法規制の強化、技術革新によるバイオ医薬品のプロセス開発・製造受託市場の競争激化等を主なリスクと考えております。その環境変化に対応できない場合や、事業活動に必要な各国の許認可を適時に取得することができない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、高度な画像処理技術・AI技術、化合物合成・設計力やナノテクノロジー、一定条件製造技術や品質管理技術を保有しているという競争優位性を活かして、今後も技術に裏付けされた新たな製品・サービスの研究開発と、これをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)マテリアルズ領域における環境変化・競合に係るリスク
マテリアルズ領域においては、車載用途等TV・モニター以外でのディスプレイ関連材料や有機EL向け材料の需要拡大や、5G・自動運転の普及等による半導体市場が拡大している一方で、資源価格高騰に伴う原材料費の高騰、高機能材料市場での競合会社との競争激化による製品販売単価の下落や、新技術の開発・実用化による代替製品の出現等を主なリスクとして考えております。
当社グループでは、機能性分子技術や高度な製膜・塗布技術等の先進・独自の技術を保有しているという競争優位性を活かして、今後も技術に裏付された新たな製品・サービスの研究開発とこれをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)ビジネスイノベーション領域における環境変化・競合に係るリスク
ビジネスイノベーション領域においては、働く場所の分散化等に対応した、セキュリティを強化したネットワークやソリューション・サービス等、ビジネス環境の変化による新たな需要が生まれている一方で、リモートワークの定着や業務プロセスのデジタル化の進展に伴うプリントボリュームの減少や、オフィス機器市場の成熟化に伴う、成長の鈍化・収益性の低下を主なリスクとして考えております。
当社グループでは、日本及びアジア・オセアニア地域における強固な直販体制を強みに構築した優良な顧客基盤、お客様の複雑化・多様化する経営課題の解決を支援できる強力な営業力、課題解決のためのソリューション・サービスのラインアップと、それを支えるドキュメント関連の独自技術、大手市場からSMB(Small to Medium Size Business)市場までの幅広いお客様との強固な信頼関係という競争優位性を活かしてまいりますが、こうした市場動向に対応した製品やサービスを提供できない場合、売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)イメージング領域における環境変化・競合に係るリスク
イメージング領域においては、スマートフォンの普及による画像ショット数の増加とプリントニーズの拡大やインスタントフォトシステムの需要拡大、IoT化や映像の4K、8K化によるレンズ需要の増加により事業機会が拡大している一方で、ハイエンドミラーレスデジタルカメラ市場の競争環境の激化、競合他社の技術向上による高性能産業用レンズ市場の競争環境の激化、スマートフォンのカメラ性能の向上等をリスクとして考えております。
当社グループでは、入力(撮影)から出力(プリント)までのサービスを提供できる総合力や、高度な光学技術・精密加工・組立技術等を保有しているという競争優位性を活かして、ユーザーのニーズをとらえたイノベーティブな新たな製品・サービス等を提供してまいりますが、その成否によっては、製品販売単価の下落、代替製品の出現等による売上の減少、製品ライフサイクルの短縮化による研究開発コストの増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)生産活動に係るリスク
当社グループでの生産に必要な原材料・部品等について、急激な価格高騰や、自然災害又は人災、サプライヤーの不測な事態による製造中止等をリスクとして考えております。
当社グループでは、急激な原材料価格高騰時には適切な売価への反映を検討するとともに、製品開発及び量産化検討時において、代替材料の探索や可能な限り複数調達先の検討を行うことでリスク分散化の対策を行っておりますが、想定を上回る市況の変化や不測の事態が発生した場合には、収益性の低下や販売機会の消失等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)製品品質・製造物責任に係るリスク
当社グループは、厳しい品質管理基準に従い各種製品を生産しておりますが、将来にわたり製品に欠陥が発生する可能性がないとは言えず、重大な製品事故や製品に対する安全性や環境問題において懸念が発生するリスクがあります。
当社グループでは、新製品開発にあたっては、品質の到達度だけでなく、法規制を遵守し、環境・安全に配慮した製品開発を行うとともに、製品安全情報のお客様への周知や製品安全に関する従業員への教育を徹底する等の対策を図り、万一、製品事故等が発生した場合の体制構築等を整えておりますが、実際にこうした事態が発生した場合には、その対応費用が発生するだけでなく、企業ブランドや製品ブランドが毀損され当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)医薬品事業・再生医療事業に係るリスク
当社グループにおける一部のグループ会社では、医薬品及び再生医療等製品の研究開発及び製造販売を行っております。新規の医薬品及び再生医療等製品の開発・薬効追加等には多額の研究開発投資を行う必要があり、承認・販売までには長期間を要するとともに、研究開発が計画通りに進行せず、開発の遅延や中止等のリスクがあります。また、販売後に予期せぬ重大な副作用その他の安全性に関する問題が発生する可能性もあります。
当社グループでは、開発の不確実性のリスクに対しては、複数のパイプラインを保有することによりリスクの分散化を図っております。また、医薬品は開発段階において必要な安全性の試験を実施し、監督官庁の審査を経て承認されておりますが、万一、販売後に予期せぬ重大な副作用等が見つかった場合には、損害賠償の負担や社会的信頼の失墜等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)物流に係るリスク
当社グループの事業活動において、原油価格の高騰等を原因とする運賃の高騰は、当社グループの物流コストの増加をもたらす可能性があります。また、地震・津波・洪水等の大規模災害の発生、ロシア・ウクライナ情勢緊迫化や国際的な政治・経済の状況等により、人的・物的被害や物流機能の麻痺、インフラ機能断絶等が生じ、当社グループの生産・販売活動に支障が生じるリスクがあります。
当社グループでは、生産拠点を複数の地域に分散化する等の対策を図り、不測の事態により一部の地域で生産・販売活動が停止した場合でも影響を軽減できるような体制をとっておりますが、完全に影響をゼロにすることはできず、こうした事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)特許及びその他の知的財産権に係るリスク
当社グループは、様々な特許、ノウハウ等の知的財産権を保有し、競争上の優位性を確保していますが、将来、特許の権利存続期間の満了や代替技術等の出現に伴って、優位性の確保が困難となることが起こり得ます。
当社グループが関連する幅広い事業分野においては、多数の企業が高度かつ複雑な技術を保有しており、また、かかる技術は著しい勢いで進歩しています。事業を展開する上で、他社の保有する特許やノウハウ等の知的財産権の使用が必要となるケースがありますが、このような知的財産権の使用に関する交渉が成立しないことのリスクがあります。
当社グループでは、他社の知的財産権の調査を行い、他社の権利を侵害することがないよう常に注意を払って事業展開をしておりますが、訴訟に巻き込まれるリスクを完全に回避することは困難であります。このような場合、係争費用や敗訴した場合の賠償金等の負担により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)企業買収・業務提携等に係るリスク
当社グループは、持続的な成長のため、これまでに複数の企業買収を実施しており、今後も実施する可能性があります。また、業務提携、合弁事業、戦略的投資といった様々な形態で、他社との関係を構築しております。これらの活動は、当社グループの成長のための施策として重要なものであります。
当社グループでは、企業買収にあたって慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ企業買収を実行するとともに、重要な投資案件に対しては業績が当初計画から大きく乖離していないかを確認し、必要に応じて業績改善のための対策を講じておりますが、景気動向の悪化や政情不安、法令や規則の変更、対象会社もしくはパートナーの業績不振、業務統合に想定以上の時間を要する等により、期待していた買収効果や利益を実現することができなくなる可能性があります。また、当社グループは、企業買収に伴う営業権及びその他の無形固定資産を貸借対照表に計上しておりますが、予測される将来キャッシュ・フローの低下により、投資に対する回収可能性が低下した場合には減損損失を認識することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人材の確保に係るリスク
当社グループの将来の経営成績は、有能な人材の継続的な会社への貢献に拠るところが大きく、それらの人材を採用・育成し、良好な関係を維持していくことが重要になります。一方、当社グループの事業領域での労働市場における人材獲得競争は、近年ますます激しさを増してきており、研究開発、製造、マーケティング及び販売、ICT、マネジメント分野等に関する高度な専門性を持った人材を確保していく必要がありますが、そのような人材には高い需要があり、必要な人材を確保できない可能性があります。
当社グループでは、人材を企業価値の源泉の一つと位置付け、社会の変化に対応し、自らイノベーションを起こすことのできるグローバル人材や基幹人材の育成に長期的な視点で注力するとともに、多様な人材が能力を発揮できる環境作りに努めておりますが、そうした人材が育成できなかった場合や社外に流出してしまった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)内部統制に係るリスク
当社グループは、財務報告の適正性と信頼性並びに業務の有効性と効率性を確保するため、内部統制体制を構築・整備し、運用するとともに、継続的な改善を図っています。また、「人権の尊重」を企業が果たすべき概念と認識し、自社及びビジネス・パートナーに対して、人権への悪影響の防止、軽減に努めております。しかしながら、想定外の問題が発生して内部統制が有効に機能しなかった場合、従業員等の悪意あるいは重大な過失に基づく行動等、様々な要因により内部統制システムが適切に機能しない可能性があります。
当社グループでは、富士フイルムグループ企業行動憲章・行動規範を定め、法令及び社会倫理に則った活動、行動の徹底を図るとともに、当社グループ内外にコンプライアンスに関連した相談・連絡・通報を受ける窓口を設置して、違反行為の早期発見に努めております。また、内部監査体制を整え、自ら問題の早期発見を行っておりますが、このような対策が適切に機能しなかった場合、法令違反や当社グループの財務報告に関する投資家の信頼低下による当社株価の下落、当社グループの社会的信用の失墜により事業に悪影響が生じる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)情報システムに係るリスク
当社グループは、様々な情報システムを使用して業務を遂行しており、適切なシステム管理体制の構築やICT人材の確保、セキュリティ対策等を行っておりますが、サイバー攻撃等による不正アクセス、従業員等の悪意あるいは重大な過失に基づく行動や、停電、災害等の要因により、データの改ざん、破壊、個人情報の漏洩、情報システムの障害、事業活動に支障をきたす等の事態が起こる可能性があります。
当社グループでは、ソフトウェアや機器によるセキュリティ対策の実施や、定期的に従業員への教育及び訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないよう努めておりますが、万一、こうした事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)公的規制に係るリスク
当社グループが事業を展開している地域においては、事業・投資等の許認可、輸出入、通商、公正取引、知的財産、消費者保護、租税、為替管理、環境、薬事等の法規制の適用も受けており、万一、規制に抵触した場合、制裁金等が課される可能性があります。
当社グループでは、国内外の法的規制に関する情報収集を行うとともに、事業活動に係る法規制の遵守を徹底すべく各種ガイドライン・マニュアル等を制定し、定期的な従業員への教育等を通じてコンプライアンス徹底を図っておりますが、今後規制が強化・大幅な変更等なされた場合、当社グループの活動の制限や、規制遵守のため、あるいは規制内容の改廃に対応するためのコストが発生する等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)環境規制に係るリスク
当社グループは、気候変動対策、製品リサイクルを含む資源保全、有害物質の使用制限、土壌・地下水・大気汚染防止及び廃棄物処理等に関する様々な環境関連法令の適用を受けており、これらの規制により法的又は社会的責任の観点から、環境に関する費用負担や賠償責任が発生するリスクがあります。
当社グループでは、製品の企画・開発の段階から環境負荷の低減を考慮し、生産、物流、使用、リサイクル又は廃棄に至るライフサイクル全体を対象とし、CO2の排出削減、資源循環の促進、製品・化学物質の安全確保等に取り組んでおります。さらには、各事業場において環境マネジメントシステムを活用し、所在国・地域の法規制遵守、環境汚染の防止、化学物質の適正使用、生物多様性の保持を徹底しております。しかし、将来、環境に関する規制の厳格化や義務の拡大等の変化が生じた場合、あるいは社会的な環境意識の高まりに伴い当社グループが環境問題への取組みをより一層推進する場合には、かかる取組みへの支出の増加や、当社グループの事業活動への制限等を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)気候変動に係るリスク
気候変動に伴う移行リスクとして、今後各国・地域における脱炭素社会に向けた政策の強化、炭素排出に関連する法令等の改定・新規制定が想定外の短期間で実施された場合に、かかる取組みへの支出の増加や、当社グループの事業活動への制限等を受ける可能性があります。
当社グループは、パリ協定に代表される脱炭素社会への動き等、気候変動への対応に対して世界的に関心が高まるなか、いち早くその重要性を受け止め、1990年代から生産プロセスでエネルギー利用効率を高める活動を開始しました。現在も、「2040年度までに当社が使用するエネルギーによるCO2排出実質ゼロ」を目標に掲げ、エネルギー利用効率の最大化及び再生可能エネルギーの導入・活用によるCO2排出削減を進めております。
さらに、当社グループは、2018年12月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明し同提言に則った情報開示を進めており、2019年4月には事業活動での100%再生可能なエネルギー利用を目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しております。
また、当社グループでは、気候変動が顕在化した場合の物理リスクへの対応として、調達・生産拠点の分散、BCP(事業継続計画)の策定等の対策を行っているものの、異常気象による原材料・部品の供給停止・価格高騰や、工場操業停止、サプライチェーンの寸断による製品サービスの中止等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(18)大規模災害・感染症等に係るリスク
当社グループは、世界各地で生産・販売等の事業活動を行っております。このため、地震、津波、洪水等の大規模な自然災害に見舞われた場合や、火災、テロ、戦争、感染症の蔓延といった要因により、事業活動に支障をきたすリスクがあります。
当社グループでは、自然災害が発生した際にいち早く従業員の安否を確認できるよう安否確認システムを導入するとともに、定期的に地震・火災に備えた訓練を実施しております。また、実際に災害が発生した際には早急に被災地の被害状況を把握した上で対策を講じられるように事業継続への影響を軽減できる体制を整えておりますが、事業活動の復旧までに長期の時間を要した場合や施設等の改修に多額の費用が発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、COVID-19は日本における感染症法上の分類見直しや米国での「国家非常事態」の解除等、世界各国で規制の撤廃が進み、正常化の歩みが進んでいくとみていますが、上記仮定に変化が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における連結売上高は、メディカルシステム、電子材料、ビジネスイノベーション、イメージング等を中心に売上を伸ばし、2,859,041百万円(前年度比13.2%増)となりました。営業利益は、273,079百万円(前年度比18.9%増)となりました。税金等調整前当期純利益は282,224百万円(前年度比8.4%増)、当社株主帰属当期純利益は219,422百万円(前年度比3.9%増)となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
(事業セグメント別の連結売上高)
|
セグメント |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減額 (百万円) |
増減率 (%) |
|
ヘルスケア |
801,743 |
917,945 |
116,202 |
14.5 |
|
マテリアルズ |
630,718 |
692,723 |
62,005 |
9.8 |
|
ビジネスイノベーション |
759,949 |
838,080 |
78,131 |
10.3 |
|
イメージング |
333,363 |
410,293 |
76,930 |
23.1 |
|
連結合計 |
2,525,773 |
2,859,041 |
333,268 |
13.2 |
ヘルスケア部門の連結売上高は、前年度の801,743百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより116,202百万円増加し、917,945百万円となりました。マテリアルズ部門の連結売上高は、前年度の630,718百万円に対し、電子材料事業、グラフィックコミュニケーション事業等で売上を伸ばしたことにより62,005百万円増加し、692,723百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の連結売上高は、前年度の759,949百万円に対し、オフィスソリューション事業、ビジネスソリューション事業で売上を伸ばしたことにより78,131百万円増加し、838,080百万円となりました。イメージング部門の連結売上高は、前年度の333,363百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより76,930百万円増加し、410,293百万円となりました。
(事業セグメント別の営業利益)
|
セグメント |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減額 (百万円) |
増減率 (%) |
|
ヘルスケア |
100,536 |
100,507 |
△29 |
△0.0 |
|
マテリアルズ |
68,380 |
67,729 |
△651 |
△1.0 |
|
ビジネスイノベーション |
57,920 |
69,491 |
11,571 |
20.0 |
|
イメージング |
36,977 |
72,876 |
35,899 |
97.1 |
|
全社費用及び セグメント間取引消去 |
△34,111 |
△37,524 |
△3,413 |
- |
|
連結合計 |
229,702 |
273,079 |
43,377 |
18.9 |
ヘルスケア部門の営業利益は、前年度の100,536百万円に対し、部材・エネルギー価格高騰等の影響により29百万円減少し、100,507百万円となりました。マテリアルズ部門の営業利益は、前年度の68,380百万円に対し、部材・エネルギー価格高騰等の影響により651百万円減少し、67,729百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の営業利益は、前年度の57,920百万円に対し、オフィスソリューション事業、ビジネスソリューション事業で売上を伸ばしたことにより11,571百万円増加し、69,491百万円となりました。イメージング部門の営業利益は、前年度の36,977百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより35,899百万円増加し、72,876百万円となりました。
当連結会計年度末では、総資産は建設仮勘定の増加等により179,031百万円増加し、4,134,311百万円(前年度末比4.5%増)となりました。負債は社債及び短期借入金の減少等により83,889百万円減少し、1,346,451百万円(前年度末比5.9%減)となりました。純資産は当社株主帰属当期純利益の計上等により262,920百万円増加し、2,787,860百万円(前年度末比10.4%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末より217,720百万円減少し、当連結会計年度末において268,608百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により得られた資金は210,452百万円となり、前連結会計年度と比較して113,482百万円減少(△35.0%)しておりますが、これは未払法人税等及びその他負債が減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に使用した資金は323,225百万円となり、前連結会計年度と比較して169,683百万円増加(110.5%)しておりますが、これは有形固定資産の購入額の増加等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に使用した資金は123,695百万円となり、前連結会計年度と比較して18,511百万円増加(17.6%)しておりますが、これは長期債務の返済額の増加等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。
販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(連結キャッシュ・フロー指標)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
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株主資本比率(%) |
63.3 |
66.8 |
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時価ベースの株主資本比率(%) |
76.0 |
65.0 |
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キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.4 |
1.8 |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
139.9 |
42.0 |
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(注)株主資本比率 |
:株主資本/総資産 |
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時価ベースの株主資本比率 |
:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産 *自己株式を除く |
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キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フロー |
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インタレスト・カバレッジ・レシオ |
:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息) |
ⅱ)財務政策
当社グループの資金需要には、運転資金需要及び投資を目的とした資金需要、株主還元のための資金需要が含まれます。
運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用、製造費用、販売費及び一般管理費、研究開発費等の営業費用によるものであり、投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収を含む投融資等によるものであります。また、株主還元の方針は次のとおりであります。
(株主還元方針)
配当につきましては、連結業績を反映させるとともに、成長事業のさらなる拡大に向けたM&A、設備投資、研究開発投資等、将来にわたって企業価値を向上させていくために必要となる資金の水準等も考慮した上で決定いたします。また、その時々のキャッシュ・フローを勘案し、株価推移に応じて自己株式の取得も機動的に実施していきます。株主還元方針については、配当を重視し、配当性向30%以上を目標としております。
これらの資金は、主として内部資金により充当し、必要に応じ金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。
なお、当連結会計年度末における短期の社債及び借入金の残高は106,093百万円、長期の社債及び借入金の残高は270,060百万円であります。
② 経営成績
ⅰ)売上高、営業費用及び営業利益
当連結会計年度の売上高は、前年度の2,525,773百万円に対し、333,268百万円増加し、2,859,041百万円(前年度比13.2%増)となりました。国内売上高は1,026,295百万円(前年度比3.5%増)、海外売上高は1,832,746百万円(前年度比19.5%増)となりました。実績為替レートは136円/米ドル(前年度比23円安)、141円/ユーロ(前年度比10円安)となりました。
販売費及び一般管理費は、前年度の652,995百万円に対し、57,707百万円増加し、710,702百万円(前年度比8.8%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は24.8%となりました。
研究開発費は、前年度の150,527百万円に対し、3,620百万円増加し、154,147百万円(前年度比2.4%増)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は5.4%となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
「ヘルスケア部門」
本部門の連結売上高は、917,945百万円(前年度比14.5%増)となりました。営業利益は、100,507百万円(前年度比0.0%減)となりました。
メディカルシステム事業では、内視鏡、医療IT、超音波診断等の分野を中心に販売が好調に推移したことや為替影響等により、売上が増加しました。X線画像診断分野では、東南アジア、中南米、中東・アフリカを中心にデジタルマンモグラフィシステム「AMULET Innovality」の販売が伸長したことに加え、X線撮影装置「FDR Smart X」、回診用X線撮影装置「FDR Go Plus」の販売が欧州を中心に好調に推移し、売上が増加しました。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」や3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」を中心としたシステム・サービス販売に加え、病理分野への参入も寄与し、米国、欧州、日本の主要市場を中心に伸長し、売上が大幅に増加しました。超音波診断分野では、POC(Point of Care)向け超音波診断装置 「Sonosite PX」や据置型超音波診断装置の新製品「ARIETTA 850DI」「ARIETTA 650DI」が寄与し、米国を中心に売上が増加しました。内視鏡分野では、粘膜の僅かな色の違いを強調し、内視鏡観察をサポートするLCI(Linked Color Imaging)をはじめとする画像強調機能を搭載した「7000システム」等の販売が欧州を中心に伸長し、売上が増加しました。体外診断(IVD)分野では、血液生化学検査「富士ドライケム」機器・スライドや、富士フイルム和光純薬㈱の生化学試薬及び免疫関連の検査機器の販売が好調に推移しました。加えて、国内でのCOVID-19の流行拡大により、COVID-19関連の検査機器・各種試薬の販売が伸長し、売上が増加しました。CT・MRI分野では、半導体等部品不足の影響から回復傾向にあったことや、国内ではデジタルX線透視撮影システム「CUREVISTA Open / CUREVISTA Apex」や全身用X線CT診断装置「Supria Optica」、北米では超電導オープンMRI「OASIS Velocity」等の新製品の販売が好調に推移し、売上が増加しました。2023年3月には、富士フイルムヘルスケア㈱が、AI技術の活用により検査ワークフローの効率化と検査時間の大幅な短縮を実現したワイドボア1.5テスラ超電導MRIシステム「ECHELON Synergy」を発売しました。当社は、効率的な検査ワークフローや読影しやすい撮像の提供等、医療従事者が注力できる検査環境を実現し、検査の効率化と医療の質の向上を図ることで、人々の健康維持増進に貢献していきます。
バイオCDMO事業では、バイオ医薬品の製造受託がデンマーク拠点で堅調に推移したことや為替影響等により、売上が増加しました。2022年4月には、米国バイオベンチャー Atara Biotherapeutics, Inc.の細胞治療薬製造拠点の買収が完了しました。今後、遺伝子改変細胞治療薬をはじめとする細胞治療薬の受託ビジネスを本格的に展開し、バイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大を図っていきます。2022年6月には、抗体医薬品の旺盛な製造受託ニーズに対応するデンマーク拠点への大型設備増強、及び培養から精製まで原薬の一貫生産が可能な商業用連続生産システムによるGMP製造設備の米国テキサス拠点への導入を、総額2,000億円を投じて行うことを発表しました。当社は、幅広いバイオ医薬品を対象に生産プロセスの開発受託、小規模生産から大規模生産、原薬から製剤・包装までの製造受託ニーズに応えていきます。また、バッチ生産方式のみならず、連続生産方式による新たな製造手法の商用化をいち早く実現し、製薬企業等からの受託サービスをさらに拡充していきます。
ライフサイエンス事業では、COVID-19用ワクチン・治療薬向け培地の需要が一巡した一方で、試薬と細胞の売上が伸長したことや、為替影響等により、事業全体の売上は増加しました。2022年11月には、米国ノースカロライナ州に培地の生産拠点を新設することを発表しました。抗体医薬品の需要増や、細胞治療・遺伝子治療といった先端医療の発展に伴い、培地のグローバル市場は成長が続いています。当社は米国・欧州・日本のグローバル生産体制で、バイオ医薬品の研究開発・製造を強力にサポートしていきます。
医薬品事業では、2022年3月に富士フイルム富山化学㈱の放射性医薬品事業をペプチドリーム㈱へ譲渡したこと等により、売上が減少しました。2022年10月には、平時はバイオ医薬品を製造し、パンデミック時はワクチン製造に切り替えられるデュアルユース対応の設備を富士フイルム富山化学㈱が導入することを発表しました。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託サービスを製薬会社に提供し、パンデミック時には、受託サービスを通じて製薬企業による国産ワクチンの迅速開発・供給をサポートしていきます。
コンシューマーヘルスケア事業では、ダイエット需要が堅調であった前年度に対してサプリメントの販売が減少したこと等により、売上が減少しました。2023年3月には、当社独自のリポソーム技術を化粧品分野に応用した高機能美容液シリーズ「ASTALIFT THE SERUM (アスタリフト ザ セラム)」から、紫外線や空気の乾燥等による肌への刺激ダメージを防ぎ、シミの根本原因であるメラニンの生成を抑える薬用シミ予防美容液「ASTALIFT THE SERUM BRIGHTENING(アスタリフト ザ セラム ブライトニング)」(医薬部外品)の販売を開始しました。今後も顧客のニーズを捉えた独自性の高い製品を提供し、人々の美容と健康に貢献していきます。
「マテリアルズ部門」
本部門の連結売上高は、692,723百万円(前年度比9.8%増)となりました。営業利益は、67,729百万円(前年度比1.0%減)となりました。
電子材料事業では、CMPスラリー、ポストCMPクリーナー、ポリイミド等の販売が伸長し、売上が大幅に増加しました。5Gや自動運転の発展に伴い需要が伸びていく先端半導体向けに、幅広い製品を安定的に供給していくことで成長を加速させていきます。2022年9月には当社国内初のCMPスラリー生産設備を熊本に建設すること、12月にはイメージセンサー用カラーフィルター材料の工場を韓国に新設することを発表しました。今後もグローバルな生産体制の下、高い品質基準の材料を安定的に生産・提供するとともに、顧客ニーズにあった新規製品の市場導入を加速させ、さらなるビジネス拡大を図っていきます。
ディスプレイ材料事業では、前年度にCOVID-19の流行下でモニター、タブレット及びTV需要が増加したことの反動や、サプライチェーン全体での生産調整の影響を受け、売上が減少しました。
産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルム「エクスクリア」が主用途である業務用PCの需要低迷により減収となったものの、非破壊検査用機器・材料で、中国・インドを中心にオイルガス業界向けの販売が好調に推移したことや、為替影響等により、売上は前年度並みを維持しました。
ファインケミカル事業では、重合材料等の化成品の販売が伸長したことにより、売上が増加しました。
記録メディア事業では、世界的な景気後退リスクが顕在化する中、大手IT企業によるデータセンター建設への投資が抑制されたことで、データアーカイブ用のテープ需要が停滞したものの、為替影響等により売上が増加しました。
グラフィックコミュニケーション事業では、刷版材料分野において、各地域で販売価格の見直しを実施したこと等が寄与したことに加え、デジタル印刷分野において、プロダクションプリンターの欧米向け出荷が市況回復に伴い伸長したこと等により、売上が増加しました。
インクジェット事業では、産業用インクジェットヘッドにおいて、ラベル市場向けインクジェットヘッドの販売が伸長したことに加え、インクにおいても、商業印刷市場向けの顔料分散液を中心に堅調に推移し、事業全体で売上が増加しました。
「ビジネスイノベーション部門」
本部門の連結売上高は、838,080百万円(前年度比10.3%増)となりました。営業利益は、69,491百万円(前年度比20.0%増)となりました。
オフィスソリューション事業では、複合機・プリンター及び消耗品の国内販売と欧米向け輸出の増加、東南アジアでの販売増加、及び為替影響等により、売上が増加しました。2023年1月には、様々なクラウドサービスとの連携や、コンパクトなサイズで設置場所の自由度を向上させたデジタルカラー複合機「Apeos C4030 / Apeos C3530」とデジタルモノクロ複合機「Apeos 5330」の3機種、及び当社が販売するA4デジタルカラー・モノクロの複合機・プリンターラインアップで最小・最軽量モデルとなる「ApeosPort / ApeosPort Print」6機種を発表しました。今後も複合機・プリンターのマーケティングを一層強化し、お客様の要求に迅速に対応していきます。また、海外市場に対しては、地域毎のニーズに対応した商品戦略を構築し、競争優位性を確保するとともに、OEM供給を含むビジネスの拡大を積極的に進めていきます。
ビジネスソリューション事業では、ソリューション・サービス売上が国内で増加したことや海外でのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業の伸長、及び為替影響等により、売上が増加しました。2022年5月には、業種別・業務別にお客様のDX課題解決を強力に支援し、中堅・中小企業のDXを加速する新ソリューション「Bridge DX Library」の提供を開始し、2023年3月には、合計146種類のソリューションにラインアップを拡大しました。また、2023年3月には、基幹システムの販売・導入支援事業のさらなる成長加速に向けて、豪州ITサービス企業MicroChannel Servicesを買収しました。今後当社は、MicroChannel Servicesの豊富な経験を有するIT人材と高度な技術力を生かし、当社の既存事業とも連携する等、お客様への価値提供を拡大するとともに、ビジネスソリューション事業の成長を加速していきます。
「イメージング部門」
本部門の連結売上高は、410,293百万円(前年度比23.1%増)となりました。営業利益は、72,876百万円(前年度比97.1%増)となりました。
コンシューマーイメージング分野では、インスタントフォトシステム、カラーペーパー、ドライプリント機器及び材料の販売が好調に推移し、売上が増加しました。インスタントフォトシステムは、デバイスとフィルムともに販売が好調に推移し、前年度を上回る売上となりました。2023年3月には、INSTAX“チェキ”の最新エントリーモデル「INSTAX mini 12」の発売、及びチェキプリントをデジタル化してスマホで楽しむことができるスマートフォン用アプリ「INSTAX UP!」の提供開始を発表しました。INSTAX“チェキ”は今後もアナログとデジタルの技術を掛け合わせ、世界中の人々に「新たな価値」を提供していきます。
プロフェッショナルイメージング分野では、デジタルカメラ「Xシリーズ」にて、第5世代となる最新デバイスを搭載した新製品「X-H2S」「X-H2」「X-T5」の販売が好調に推移し、売上が増加しました。2023年3月には、4Kを超える光学性能を有し、2つの大型センサーに対応するデュアルフォーマット方式を採用した箱型タイプの放送用ズームレンズ「FUJINON HZK25-1000mm」の販売を開始しました。近年、放送業界で利用が進む大型センサー搭載のシネマカメラでの撮影に対応し、浅い被写界深度によるボケ味を生かしたシネマライクな映像表現を、スポーツ中継やライブ・コンサート中継等で実現します。今後も、当社は高性能なカメラ、レンズ、アクセサリー等を開発・提供し、多様化するコンテンツ制作現場のニーズに応えていきます。
ⅱ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益
営業外収益及び費用は、前年度30,744百万円の営業外収益に対し21,599百万円減少し、9,145百万円の営業外収益となりました。
税金等調整前当期純利益は、前年度の260,446百万円に対し21,778百万円増加し、282,224百万円となりました。
ⅲ)法人税等
法人税等は、前年度の57,129百万円に対し8,077百万円増加し、65,206百万円となりました。
ⅳ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益
持分法による投資損益は、前年度13,128百万円の利益に対し8,472百万円減少し、4,656百万円の利益となりました。
非支配持分帰属損益は、前年度の5,265百万円に対し3,013百万円減少し、2,252百万円となりました。
ⅴ)当社株主帰属当期純利益
当社株主帰属当期純利益は、前年度の211,180百万円に対し8,242百万円増加し、219,422百万円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の527.33円に対し、547.21円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の526.11円に対し、546.41円となりました。
③ 次期の見通し
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(単位:億円) |
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2023年度 (次期の見通し) |
2022年度 (実績) |
増減率・増減額 |
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売上高 |
29,500 |
28,590 |
3.2% |
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営業利益 |
2,900 |
2,731 |
6.2% |
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税金等調整前当期純利益 |
2,950 |
2,822 |
4.5% |
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当社株主帰属当期純利益 |
2,250 |
2,194 |
2.5% |
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ROE(%) |
8.0 |
8.3 |
0.3ポイント減 |
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ROIC(%) |
5.9 |
6.1 |
0.2ポイント減 |
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為替レート(円/米ドル) |
135円 |
136円 |
△1円 |
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為替レート(円/ユーロ) |
145円 |
141円 |
4円 |
2023年度業績は、連結売上高は2兆9,500億円(前年度比3.2%増)、営業利益は2,900億円(前年度比6.2%増)、税金等調整前当期純利益は2,950億円(前年度比4.5%増)、当社株主帰属当期純利益は2,250億円(前年度比2.5%増)を予想しております。
通期での対米ドル円為替レートを135円、対ユーロ円為替レートを145円で想定しております。
④ 重要な会計上の見積り
当社の連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす見積り及び仮定を行う必要があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。
COVID-19の影響については、今後の当社への影響は限定的であるとの仮定に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、上記仮定に変化が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅰ)企業結合
企業結合は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての資産及び引き受けた全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
企業結合の処理における公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化に伴い公正価値が修正され、取得した資産の将来における減損損失の計上、引き受けた負債の増加につながる可能性があります。
なお、当事業年度に実施した事業買収については、連結財務諸表注記「22 事業売却」に記載しております。
ⅱ)営業権の減損
営業権は償却せず、毎年1月1日時点で減損の有無を検討しております。営業権の減損テストは、当社の報告単位毎に見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値に基づいて行われており、使用される割引率は、報告単位のWACC(加重平均資本コスト)に基づいて算出しております。また、客観的事実や状況の変化により当該資産の公正価値が帳簿価額を下回る可能性がある場合には、その都度減損の有無を検討しております。
見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値の算定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
営業権の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において営業権の減損損失を認識することになる可能性があります。
なお、事業セグメント毎の営業権の残高については、連結財務諸表注記「8 営業権及びその他の無形固定資産」に記載しております。
ⅲ)長期性資産の減損
営業権及び耐用年数を確定できないその他の無形固定資産を除く、保有及び使用予定の長期性資産について、客観的事実や状況の変化により当該資産の帳簿価額の回収可能性に疑いのある場合には、減損の有無を検討しております。減損の兆候があると判断されるときは、その資産に関連する見積割引前将来キャッシュ・フローとその資産の帳簿価額を比較し、帳簿価額の減額が必要かどうかを検討しております。この結果、帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを超過すると判断される場合は、当該資産の帳簿価額を見積公正価値へ減額処理しております。公正価値を決定するにあたり、当社は市場取引価格又はその他の評価方法を使用しております。市場取引価格を利用できない場合には、主に資産の使用や最終的な処分から生じる見積将来キャッシュ・フローに基づく割引現在価値法、ロイヤルティ免除法又は超過収益法を使用しております。
これらの手法は、将来見積利益又はキャッシュ・フローの予測及び割引率等の、重要な見積りを伴います。
長期性資産の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において長期性資産の減損損失を認識することになる可能性があります。
ⅳ)退職給付引当金及び退職給付費用
当社の一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しており、当該制度に係る退職給付引当金及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待収益率、予想再評価率、退職率、死亡率等が含まれております。
数理計算上の仮定は、最善の見積りにより決定しておりますが、見直しが必要となった場合には、退職給付引当金及び退職給付費用が増加する可能性があります。
なお、数理計算上の仮定については連結財務諸表注記「10 退職給付制度」に記載しております。
ⅴ)貸倒引当金
営業債権、リース債権及びその他の債権に対する貸倒引当金は、過去の貸倒実績、延滞状況及び問題が生じている取引先の財政状態に基づき決定しております。裁判所による決定等によって、回収不能であることが明らかになった場合は、その時点で帳簿価額を直接減額しております。
貸倒引当金は、過去の実績や評価時点で利用可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で見積りを行っていますが、相手先の財政状態が悪化した場合等見積りの根拠となる仮定又は条件等が変化した場合には、貸倒引当金を積み増すことになる可能性があります。
なお、貸倒引当金の残高については、連結財務諸表注記「20 金融債権の状況」に記載しております。
ⅵ)繰延税金資産
資産及び負債の財務会計上の金額と税務上の金額の差異に基づいて繰延税金資産及び負債を認識しており、その算出にあたっては差異が解消される年度に適用される税率及び税法を適用しております。また、繰延税金資産のうち回収されない可能性が高い部分については、評価性引当金を計上しております。
回収可能性の検討にあたっては、評価時点で利用可能な情報に基づいた最善の見積りを行っておりますが、見積りの前提とした仮定や条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。
なお、繰延税金資産の残高については、連結財務諸表注記「11 法人税等」に記載しております。
ⅶ)棚卸資産
棚卸資産については、原則として移動平均法による低価法により評価しております。また、当社は定期的に陳腐化、滞留、又は過剰在庫の有無を検討し、該当する場合には正味実現可能価額まで評価減しております。
評価損の見積りにあたっては、過去の出荷実績や評価時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、市場環境が予測より悪化して正味実現可能価額が下落する場合には、追加の評価損計上が必要となる可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長を一段と加速させるため、バイオCDMO事業の中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)の欧米拠点に、総額約2,000億円の大規模投資を行います。本投資は、バイオ医薬品市場で高いウエイトを占める抗体医薬品の生産能力増強を目的に、FDBのデンマーク拠点と米国テキサス拠点に対して実施するものです。今回、当社は、抗体医薬品の旺盛な製造受託ニーズを受け、最短で生産設備の立ち上げが可能なデンマーク拠点に、20,000リットル培養タンク8基を追加導入する第二弾大型設備投資を行います。本投資により、2026年までに、同サイズのタンク保有数を、デンマーク拠点で20基、全世界で合計28基に拡大させます。また、世界最大のバイオ医薬品市場である米国にも戦略的投資を行い、欧米両市場で連続生産システムによる原薬製造体制を確立します。今回、英国拠点に続き、米国テキサス拠点に連続生産システムによるGMP製造が可能な設備を導入します。新薬開発を行う顧客との協働のみならず規制当局との連携で早期商用化を目指し、連続生産システムを用いた製造受託のグローバルな市場形成を図ります。
また、細胞培養に必要な培地の事業成長を加速させるため、米国子会社のFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(以下、「FISI」と記載します。)に約260億円の設備投資を行い、培地の生産拠点を米国ノースカロライナ州に新設します。今回の設備投資により、当社グループとして世界5拠点を有する、培地のグローバル生産体制を構築し、バイオ医薬品の研究開発・製造を強力にサポートしていきます。なお、新設する拠点は、2025年に稼働を開始する予定です。
このほか、デジタル病理診断用ソフトウェア等の開発・販売を行っている、Inspirata, Inc.のデジタル病理部門を買収しました。これにより、当社グループはデジタル病理事業に本格参入し、メディカルシステム事業の成長をさらに加速させます。世界トップシェアを誇る当社グループの医療用画像情報システム(PACS)と本デジタル病理診断用ソフトウェアを組み合わせて院内検査画像の一元化を実現し、病理診断ワークフローの効率化を支援していきます。
当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。
(1)ヘルスケア セグメント
メディカルシステム事業では、国立がん研究センターと共同で開発したAI技術開発の研究基盤システムを用いて、プログラミング等の専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発することが可能な「SYNAPSE Creative Space」を開発しました。上部消化管の内視鏡検査時に胃腫瘍性病変や食道扁平上皮癌が疑われる領域をリアルタイムに検出し、胃がん・食道がんの早期発見をサポートする内視鏡診断支援ソフトウェア「EW10-EG01」について、薬機法に基づく医療機器製造販売承認(薬事承認)を取得しました。また、乳房の断層画像を生成し内部構造の3次元的な観察を可能にするトモシンセシス機能を搭載し、低線量・高画質とAI技術によるワークフロー向上を実現したデジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY」を発売しました。富士フイルム㈱と地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターは、AI技術を活用した新たな認知症スクリーニング検査手法の共同研究を開始しました。本研究では、高精度センサーを搭載した眼鏡型ウェアラブルデバイスを用いて患者の視線移動、まばたきの回数、頭部の傾き、歩行時の左右バランス等のデータを、AI技術を用いて解析することで、認知症疑いの判定に有効なデータ指標を見出すことを目指します。また、富士フイルムヘルスケア㈱と国立大学法人千葉大学は、次世代CT装置「フォトンカウンティングCT」(以下、「PCCT」と記載します。)の臨床有用性を評価する共同研究を開始しました。本研究は、富士フイルムヘルスケア㈱が開発したPCCTを用いて撮影した組織のデータを収集・検証し、組織内出血やがんの早期発見の可能性等を検討するものです。
バイオCDMO事業では、当社グループ国内初のバイオCDMO拠点を富山県富山市に新設します。新拠点は、富士フイルム富山化学㈱による設備投資を通じて設立するもので、2026年度の稼働を予定しています。本拠点には、海外で培ってきた高度なバイオ関連技術やデュアルユース設備等を導入します。バイオ医薬品のプロセス開発・製造受託サービスを製薬企業に提供し、事業成長を加速させていきます。また、パンデミック時には、受託サービスを通じて、製薬企業による国産ワクチンの迅速開発・供給をサポートします。
ライフサイエンス事業では、米国子会社のFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.(以下、「FCDI」と記載します。)が、グローバルに事業展開するヘルスケア企業Novo Nordisk社と、治療用iPS細胞を利用できる権利を同社に供与する契約を締結しました。本契約は、FCDIがNovo Nordisk社に対して、細胞治療薬の研究開発や治験薬製造・商業生産を対象にFCDIの治療用iPS細胞を利用できる権利を供与するものです。今後も、FCDIは、製薬企業等パートナーとの連携強化を図り、iPS細胞を用いた細胞治療薬の創出に貢献していきます。
コンシューマーヘルスケア事業では、皮膚の正常なターンオーバー※2を維持する表皮幹細胞の情報伝達物質であるcAMPが、加齢に伴い減少することを発見しました。また、カフェインに、cAMPを増加させ“若々しい肌”へ導く効果があることを見出しました。さらにカフェインを、独自開発した単層リポソーム※3に含有することで、その作用が高まることを確認しました。当社は、本研究により「cAMPを増加させることで皮膚のターンオーバーを正常化し、“若々しい肌”へ導く」という新しいアプローチを見出しました。今後、本研究成果を化粧品開発に生かしていきます。
本部門の研究開発費は、
※1 患者自身の滑膜組織から採取した間葉系幹細胞。間葉系幹細胞は、生体内に存在し、一定の分化能・増殖能を有する細胞。
※2 表皮の最も下に位置する表皮幹細胞が、分裂を繰り返しながら最上層の角層へ達し、垢となって剥がれ落ちるサイクル。
※3 細胞膜の構成成分であるリン脂質を用いて、ナノサイズ(1mの10億分の1サイズ)に微細化されたカプセル状の微粒子。
当社グループにおける新薬開発状況は次のとおりであります。(2023年6月現在)
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開発番号 |
薬効・適応症 |
剤形 |
地域 |
開発段階 |
|
T-705 |
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬 |
経口 |
日本 |
PhⅢ |
|
T-817MA |
アルツハイマー型認知症治療薬 |
経口 |
米国 日本 欧州 |
PhⅡ PhⅡ PhⅡ |
|
脳卒中後のリハビリテーション効果促進薬 |
経口 |
日本 |
PhⅡ |
|
|
T-4288 |
新規フルオロケトライド系抗菌薬 |
経口 |
日本 |
承認申請中 |
|
FF-10502 |
進行・再発固形がん治療薬 |
注射 |
米国 |
PhⅡ |
|
FF-10832 |
進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム) |
注射 |
米国 |
PhⅠ |
|
FF-10850 |
進行性固形がん治療薬(トポテカンリポソーム) |
注射 |
米国 |
PhⅠ |
(2)マテリアルズ セグメント
電子材料事業では、生産子会社の富士フイルム九州㈱に、約20億円の設備投資を行い、半導体製造プロセスの基幹材料であるCMP※4スラリーを生産する最新鋭設備を導入します。当社は、米国・台湾・韓国にCMPスラリーの生産拠点を有し、安定供給と品質に対する高い顧客要求に応え続けることで、同製品の市場伸長を大きく上回る売上成長を達成しています。今後、世界4拠点の生産体制の下、CMPスラリーの安定・迅速供給を実現することで、さらなるビジネス拡大を図っていきます。また、FUJIFILM Electronic Materials Korea Co., Ltd.は韓国平澤市にイメージセンサー用カラーフィルター材料を生産する新工場を建設します。今後、日本・台湾・韓国の3拠点の生産体制の下、高い品質基準のイメージセンサー用カラーフィルター材料を安定的に生産・提供しトップメーカーとしての供給責任を果たすとともに、顧客ニーズにあった新規製品の市場導入を加速させることで、「Wave Control Mosaic」※5の売上拡大を目指します。
産業機材事業では、圧力測定フィルム「プレスケール」の専用アプリとして、圧力画像解析アプリ「プレスケールモバイル」を発売しました。「プレスケール」での目視判定によるばらつきを低減し、圧力検査の品質をさらに向上させます。今後、「プレスケールモバイル」で集約した圧力検査データを管理・保存するクラウドシステムや新たな分析機能を導入する等、本アプリをさらに進化させて、新たな価値を提供していきます。
ファインケミカル事業では、化粧品用増粘剤「ソルトレラ®Neo」を新たに開発しました。「ソルトレラ®Neo」は、高い耐塩性と滑らかなチキソトロピー性※6を両立した化粧品用増粘剤「ソルトレラ®」シリーズの新製品で、現行品の約1.5倍の増粘性を実現し、医薬部外品原料規格※7にも適合したもので医薬部外品への配合が可能。塩系成分のビタミンC誘導体※8を高濃度で配合した美容ジェル、汗で有効成分が流されずに効果が持続する日焼け止めや制汗剤等、高機能・高付加価値製品の開発の応用が期待できます。
グラフィックコミュニケーション事業では、業界トップクラスの印刷速度と高濃度印字を両立したトランザクション市場向け高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「Jet Press 1160CF」を発売しました。また、印刷物の検品を自動化し、生産性向上と品質維持を支援する「検査マネジメントシステム」の提供を開始しました。
インクジェット事業では、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の新色として、オレンジ(PO71)・グリーン(PG7)・バイオレット(PV23)の3色を発売しました。顔料分散液には、当社独自の「Reactive Dispersant」技術を用いており、インク製造時に溶剤や機能性材料等が加わっても、その影響を受けずに顔料分散の安定性が維持されるため、インクに使用する材料の選択肢の幅が広がり、様々な分野のインク製造が可能です。
本部門の研究開発費は、
※4 Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
※5 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサー等のイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。
※6 かき混ぜる等一定の力を加えると粘度が下がって液体のようになる一方で、放置すると粘度が上がり元の固体のように戻る性質。
※7 医薬部外品、化粧品の原料として配合することが認められている成分のうち、日本薬局方、食品添加物公定書及び日本産業規格に収載されている成分規格以外のもの。
※8 ビタミンCを肌に吸収しやすくするために、ビタミンCの一部構造を改良した化合物。
(3)ビジネスイノベーション セグメント
オフィスソリューション事業では、最小クラス・最軽量の容積※9と高速プリントを実現したA3モノクロプリンター「ApeosPrint 4560 S/3960 S/3360 S」を発売しました。中速機では、最大75枚/分の高速出力に加え、セキュリティの強化と環境負荷を低減したA3モノクロ複合機「Apeos 7580/6580/
5580」を発売しました。
ビジネスソリューション事業では、社内申請業務のさらなる効率化を支援する「DocuWorks Cloud Connector for X-point Cloud」を提供開始しました。また、中堅・中小企業向けDXを加速するソリューション「Bridge DX Library」のラインアップを146種類に拡大し、業種別・業務別にお客様のDX課題解決を強力に支援します。このほか、経理業務のDXとインボイス制度・電子帳簿保存法への対応を支援する請求書受領クラウドサービス「TOKIUMインボイス」を提供開始しました。
今後も、当社グループのシナジーを加速し、革新的な製品やサービスをさらに多くのお客様にお届けします。
本部門の研究開発費は、
※9 2022年11月2日発表時点。モノクロ毎分連続プリント速度30枚以上(A4片面)のA3モノクロプリンター ApeosPrint 3960 S/3360 Sの容積において。当社調べ。
(4)イメージング セグメント
フォトイメージング事業では、スマホの画像をカードサイズのチェキフィルムにプリントできる“チェキ”「INSTAX mini Link 2」や、スクエアフォーマットのチェキフィルムに出力できる“チェキ”「INSTAX SQUARE Link」を発売しました。また、任天堂㈱の「Nintendo Switch」の全てのゲームから、お気に入りのシーンやキャラクターのベストショットを、スマホプリンター“チェキ”「INSTAX mini Link」シリーズでプリントできる専用アプリ「INSTAX mini Link for Nintendo Switch」のバージョンアップ版をリリースしました。ゲーム画面をプリントできることに加え、スマホで友人や自分を撮影する際に「スプラトゥーン3」のエフェクトを重ね合わせてデコレーションしたり、撮影した後の画像にお気に入りのキャラクターデザインのステッカーを追加できる等、楽しい機能を充実させました。このほか、撮ったその場ですぐにプリントが楽しめるインスタントカメラINSTAXシリーズの最新エントリーモデルとして、“チェキ”「INSTAX mini 12」を発売しました。
光学・電子映像事業の電子映像分野では、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」のフラッグシップモデルとして、高剛性ボディに強力な手ブレ補正機構を採用し、豊富なインターフェースも備えプロの幅広いニーズに応えるミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2S」や、約4020万画素センサーを搭載し、高画素を生かした写真撮影と8K/30Pの映像撮影が可能なミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-H2」を発売しました。また、「Xシリーズ」の最新モデルとして、質量約557gの小型軽量ボディに約4020万画素センサー、天面部3ダイヤル、3方向チルト液晶モニターを装備したミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T5」を発売しました。光学デバイス分野では、世界初の「屈曲型二軸回転機構レンズ」を搭載した超短焦点プロジェクター「Zシリーズ」の新たなラインアップとして、高輝度6000ルーメンの明るい映像投写とクラス最小・最軽量※10を実現した「FUJIFILM PROJECTOR Z6000」を発売しました。
本部門の研究開発費は、
※10 2022年5月9日発表時点。レーザー光源を搭載し6000ルーメン以上の明るさの映像を投写できる、超短焦点プロジェクター(TR値0.4以下)として。当社調べ。