社会の中長期的な動向として、持続可能な社会を目指した脱炭素社会や資源循環社会への移行が進むとともに、また同時に、成長減速や高インフレ、地政学的リスクの高まりといった問題があり、変動性と不確実性が一層増大すると見込まれます。
このような状況下で、当社グループはサステナビリティ方針の大元の目標である「持続可能な社会の実現に貢献するコト作り企業として、創造的な発想と技術で人と社会の為に必要なカタチを提供する」企業を目指し、このビジョンを具現化するために、2022年2月期から2024年2月期にかけて3年間を事業再構築期間と位置づけ、「中期経営計画2024」を策定し、諸課題への対応を進めてまいりました。
計画初年度の2022年2月期では、拠点の集約などの組織改革を進め、全社的なコスト削減策を実行した結果、黒字化を実現しましたが、続く2023年2月期では、電力料金や購入品の価格上昇などにより、収益面で大きな課題が残ることとなりました。それを受け、最終年度である2024年2月期は、引き続き組織改革を進めるとともに、不採算受注の削減と販売・購入価格の見直しなど収益性の向上に努め、今後の事業展開のための土台作りを推進し、収益を回復することができました。しかしながら、金型やガソリン車用自動車部品の需要減少、ガスタービン部品等の増産に伴う製造課題など、乗り越えるべき課題はまだ残っております。
こうした状況を踏まえ、当社グループは2027年2月期までの3か年を対象とする「中期経営計画2027」を策定しました。
「中期経営計画2027」では、「中期経営計画2024」で行った改革をさらに推し進め、当社グループの長期的な成長と企業価値の向上を図るべく、100年企業となるための基盤を構築してまいります。
長期ビジョン
サステナブル社会に必要なものづくり技術を提供し続けて100年企業となるための基盤を構築する。
中期重点方針
「改革の推進」
◇成長への組織改革と人的資本投資の推進及び体制の整備
当社グループは、経営の健全化及び新しいチャレンジをするための体制の整備を促進し、「中期経営計画2024」で進めていた市場の変化に合わせた組織改革及び人的資本投資をさらに推進させて、新たな成長を実現するための経営基盤を構築してまいります。
「収益基盤の強化」
◇事業ポートフォリオの再設定
当社グループは、収益性・成長性等の観点から事業ポートフォリオを再設定するべく、投資配分の最適化を行い、リソースの有効活用と効率化を促進し、企業価値の向上を図ってまいります。
◇標準化と自動化による業務改革の推進
当社グループは、製造現場の効率化とものづくり改革を促進するべく、製造部門とは独立したエンジニアリング部門を新たに設立いたしました。本部門では、製造現場における課題のデジタルツールによる可視化と分析を強化し、迅速な問題解決と改善サイクル(PDCA)の加速を図ってまいります。加えて作業プロセスの標準化を進めて業務改革を推進し、生産性の向上に寄与してまいります。
「成長基盤の強化」
◇長期ビジョンを背景とした技術開発への取り組み
当社グループは、当社長期ビジョンを実現すべく、サステナブル社会に必要なモノづくりとして、カーボンニュートラル社会を実現するための新しい市場分野に事業展開をしております。今後はさらなる技術開発をもって新しい社会への新製品実装に貢献できる企業を目指してまいります。
◇海外展開を拡大し、成長事業の国際競争力強化
当社グループは、成長事業の国債競争力の強化に努めており、特に欧米市場におけるガスタービン事業の受注が拡大しております。今後は、エネルギーミックスへの対応力をさらに高め、海外展開を拡大してまいります。
「経営基盤の強化」
◇ESG経営の体制構築
当社グループは、SDGsを積極的に推進し、E(環境)・S(社会)・G(企業統治)及びサステナビリティを巡る課題に対応するために、マテリアリティの実現に向けて全社員が一丸となって取り組む体制を構築し、サステナビリティへの取り組みを推進してまいります。
◇ステークホルダーから安心・信頼される会社
当社グループは、ステークホルダー(当社グループに関わる全ての人々)との対話を通じ、皆様から安心・信頼される健全経営を推進し、人権に関する規範の遵守や多様性の尊重などに努め、ステークホルダーとの健全で良好な関係の構築と維持に尽力してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス、戦略及び指標と目標、リスク管理について
当社グループでは、サステナビリティへの対応を、重要なリスク管理の一部として、また企業の重要な社会的責任として位置づけており全社が一丸となって積極的に推進しております。
そのための体制として、当社グループは、代表取締役社長を委員長とし、常勤取締役及び委員長が指名した者により構成しているたサステナビリティ委員会を設置し、年3回開催しております。当該委員会では、当社のサステナビリティ経営全体の方針の検討、重要なサステナビリティ課題(マテリアリティ)特定の検討やモニタリングなどを行っております。
当社グループは、中長期的な企業価値の向上の観点から以下の「サステナビリティ基本方針」及び「カーボンニュートラル宣言」を制定しました。また、サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)を以下のとおり設定いたしました。
◇サステナビリティ基本方針
当社グループは、「持続可能な社会の実現に貢献するコト作り企業として、創造的な発想と技術で人と社会の為に必要なカタチを提供する」という基本的な考えのもと、企業理念の実践を通じて、持続的な社会の実現と企業価値の向上を目指します。
◇カーボンニュートラル宣言
当社グループは、事業活動によって排出されるCO2について、2040年度までに排出量を2020年度比で50%削減し、2050年までにCO2排出量ネットゼロの実現を目指してまいります。また、世界が直面する気候変動問題の解決に向けた脱炭素・資源循環型社会の実現に貢献する製品・技術の開発に真摯に取り組んでまいります。
◇重要課題(マテリアリティ)
①脱炭素・資源環境型社会への貢献
②社会及び環境に資する高品質な製品・技術の開発提供
③健康で快適な職場環境づくりの推進
④コンプライアンスの徹底
⑤安定した収益と経営基盤の強化
この方針のもとに、ESG・SDGsをはじめとしたサステナビリティに関する内外の情勢を踏まえて、今後ともサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)に対してより一層取り組んでまいります。
当社グループは、持続的な成長を確保するため「リスク管理規程」を制定し、全社的なリスク管理体制の強化を図っております。執行役員を委員長とするBCP・リスク管理委員会を設置し、原則半期に1回開催し、リスクの評価、対策等、広範なリスク管理に関し協議を行い、具体的な対応を検討しております。また、必要に応じて弁護士等の外部専門家の助言を受けられる体制を整えており、リスクの未然防止と早期発見に努めております。
また、当社の内部監査部署である監査室が、リスク管理体制全般の適切性、有効性を検証しております。
(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針
当社グループは、社員のために安全で衛生的な職場環境や中核人材の登用等における多様性を確保し、研修と教育に努め、社員が豊かな人生を築いていくことを支援することを方針としております。
当社グループは、労働者人口の減少に対応し、新たな成長を実現するためには、取締役会や経営陣を支える管理職層においてジェンダー・国際性・職歴・年齢などの多様性が確保され、それらの中核人材が経験を積みながら、取締役や経営陣に登用される仕組みを構築することが極めて重要であると認識しております。こうした多様性の確保に向けて取締役会が主導的にその取り組みを促進し監督を行い、以下の施策を実施してまいります。
ア.中核人材の登用などにおける多様性の確保についての考え方と測定可能な目標
・ダイバーシティ&インクルージョンを推進しており、性別、年齢、国籍や職歴に囚われない人材の採用方針、有期雇用から正社員への登用を行っております。特に女性役員、女性管理職の登用は急務と考えており、「一般事業主行動計画」のポジティブアクションとして、2025年までに女性役員を1名、女性管理職を全管理職の2.5%の割合で登用することを目標としております。なお、取締役については、2023年5月開催の株主総会において女性社外取締役1名が選任されましたが、女性の管理職登用が遅れておりますので、女性社員を対象とした「キャリア開発プログラム」を実施し、計画的に女性管理職登用に向けた準備を進めております。他にも、若手人材の管理職への積極的な登用及び、教育プログラムの充実を図っており、様々な業務経験の提供と、心の成長促進を教育プログラムの中に取り入れております。
イ.多様性に向けた人材育成方針、社内環境整備方針
・多様性確保に向けて「従業員の満足度の向上」、「個人のキャリア開発の推進」、「プロジェクト活動による成功体験の提供」などを推進しております。具体的には、従業員アンケートの実施、キャリア開発面談の実施、部門を横断したプロジェクト活動の推進など、会社と従業員がコミュニケーションできる仕組みを導入しております。また、現在の人事制度をより「働き方の多様性とマッチング」できるように、人事制度についても大幅改定を進め、2024年3月から新人事制度を開始いたしました。今後はさらなる人材育成に向けて社内環境を整備してまいります。
ウ.教育研修・人材開発方針
・企業の持続的な成長及び、企業理念の継承、サクセッションプランの推進を行うため、従業員教育の拡充を行っております。当社グループの優秀人材を定義し、「人間性(利他の精神)」「能力(知識・経験・実績)」「姿勢(HSKマインド)」の3つを向上し、自ら学ぶ姿勢を持った付加価値の高い人材を育成していきます。業務ローテーション、OJTによる経験学習、階層教育やEラーニングによるビジネススキル、資格取得支援、外部出向などによる技術・技能習得、シニアキャリア教育、リスキリング教育などを実施してまいります。
(3) 従業員エンゲージメントの状況
当社グループは、2024年3月より人事制度を大幅改定し、「職能資格等級制度」から「役割等級制度」へ変更し、今までの単一職種から、「マネジメント職、技術企画職、スタッフ職、テクニカル職」の4種類に拡充しました。また、福利厚生の充実や、家庭と仕事の両立に向けた各種施策を実施することで、従業員の多様なキャリアニーズに答え、エンゲージメントの向上に努めてまいります。
定着率(離職者数÷期初の従業員数×100)の推移
(4) 女性活躍推進法に基づく、女性管理職比率、男性の育児休業等取得率、男女間賃金格差の数値
対象期間:2023年3月~2024年2月
※1.正規雇用労働者は、正社員及び無期雇用契約に転換した時給労働者
※2.非正規雇用労働者とは、有期雇用契約の労働者
当社グループでは、発生しうるリスクの未然防止及び発生したリスクの低減をするための管理体制を整備し、業務の円滑な運営に資することを目的としてリスク管理規程を制定しております。
リスク管理体制は、代表取締役社長を委員長とする「BCP・リスク管理委員会」を設置してグループ全体のリスクを総括的に管理することとしており、定期的にリスクの洗い出し及び評価を行っております。
当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性のあるリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。なお、本項に含まれている将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度における売上高の64.2%が三菱重工業グループ、日本碍子グループ、川崎重工業グループ、LIXILグループの主要得意先4社グループで占められております。三菱重工業グループからは、主に産業用ガスタービン部品の放電加工及び、表面処理の業務並びに航空機エンジン部品を、日本碍子グループからは、自動車排気ガス浄化用のセラミックスハニカム担体を成形するためのセラミックスハニカム押出用金型を、川崎重工業グループからは、航空機エンジン部品の表面処理業務等を、LIXILグループからは、アルミサッシ等を成形するためのアルミ押出用金型をそれぞれ受託しております。
従って、これらの主要得意先の受注・生産動向や外注政策が大きく変動した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応として、顧客基盤拡大の取り組みや提供サービスの多様化などによりリスク顕在化の影響の緩和に継続的に努めてまいります。
当社グループは国際的品質管理基準であるISO9001などに基づいて品質の安定に努めております。しかし、すべての製品について欠陥が無く、将来に製造物責任賠償などが発生しないという保障はありません。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、大規模な製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、品質システム管理室及び品質管理部門を中心として品質マニュアルを定義して、社員向け教育など継続的な改善を進め、品質の徹底管理に取り組んでおります。
地震や台風等の自然災害によって、当社グループの生産拠点に甚大な被害を被る可能性があります。
当社グループの生産拠点は神奈川県に3箇所、愛知県に3箇所、岡山県、千葉県、福井県に各1箇所、また、海外においてはタイ国に1箇所、中国に1箇所あり、それぞれ定期的な災害防止活動や設備点検等を行っておりますが、これらの災害による影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。特に生産拠点が関東地区から中部地区に集中しており、大規模な東海地震などが発生した場合は、生産能力に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、当社グループでは、有事の際、代表取締役社長を本部長とする対策本部を設置し、被災状況の把握と対応の指示命令を行います。また、火災保険等に加入し、自然災害による損失リスクに備えております。顧客、取引先、従業員等の人命尊重を最優先とした上で、営業の継続又は早期の営業再開に向けて対応してまいります。
当社グループは、加工技術・加工治具・専用機の開発などによって生産性の向上、コスト削減に努めておりますが、有能な人材の流出や原材料の高騰等があった場合に開発が進まず生産性の向上が図られない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、原材料高騰については、販売価格への適正な反映や調達ルートの多様化に取り組んでおります。人材流出については、当社グループでは新卒採用だけでなく、専門性の高い人材の中途採用を進めております。また、結婚や育児、介護等の理由により退職した人材を再度雇用する「ジョブリターン制度」の採用など多様な働き方に対応できる仕組みの整備にも努めております。
当社グループは、将来見通しも含めた金利動向を勘案して資金調達を実施しており、低利・安定資金の確保に努めておりますが、金利の大幅な変動をはじめとする金融市場の状況変化は、将来における当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、金利スワップ契約などにより固定金利と変動金利の変動に対応しております。
(6)財務制限条項について
コミットメントライン契約及び借入金のうち、タームローン及びシンジケートローンには一定の財務制限条項が付されております。これらに抵触した場合、該当する借入金の一括返済及び契約解除の恐れがあり、当社の資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、安定的な業績を確保するため、利益率の向上に努めてまいります。
当社グループは、事業の遂行を通して顧客等の機密情報に多数接しているほか、当社グループの技術・営業・その他事業に関する機密情報を保有しており、安全管理に努めておりますが、コンピュータウィルスの感染や不正アクセスその他不測の事態により、機密情報が滅失若しくは社外に漏洩した場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、「情報セキュリティ規程」に基づく積極的な情報セキュリティ活動(教育訓練含む)を展開するとともにセキュリティ関連の情報収集に努めてまいります。
(8)減損損失
当社グループの資産の時価が著しく下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により減損損失が発生し、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、有形・無形固定資産について減損の兆候判定と減損損失の認識及び測定を行うための手続きを整備・運用するとともに、投資時の投資回収等の検証やその後のモニタリングを通じて早期の兆候把握に努めてまいります。
(9)繰延税金資産の計上
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおり、前提条件である利益計画が達成できないなど将来の課税所得の見積りについて見直しとなり繰延税金資産の減少が必要となる場合は、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応として、将来の課税所得については、経営環境の変化などを踏まえ適宜見直しを行っておりますが、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり、基準とした利益計画の実現可能性について慎重に検討を行い、合理的に見積もった課税所得についてのみ繰延税金資産を計上することとしております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度(2023年3月1日~2024年2月29日)におけるわが国経済は、インバウンドを含む人流の回復や新型コロナウイルス感染症の5類移行も重なり経済活動が好転した一方で、長期化するロシア・ウクライナ情勢に伴う資源費やエネルギー費高騰などを主としたインフレの高止まりの影響により、依然として景気の先行きは不透明な状況で推移しました。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く業界動向は、住宅需要の鈍化や自動車業界の在庫調整の影響により住宅分野及び交通・輸送分野は低調に推移しましたが、コロナ禍で低迷していた航空旅客需要が回復、また世界の電力需要増加などにより航空・宇宙分野や環境・エネルギー分野は堅調に推移しました。
このような環境の中、当社グループにおきましては、採算を意識した受注及び経費管理強化などの利益創出策に注力し、事業活動を継続してまいりました。
その結果、当連結会計年度における業績は、住宅関連においては、海外子会社のタイ国内向けアルミ押出用金型が生産計画の見直しの影響を受けたこと、交通・輸送関連においては、セラミックスハニカム押出用金型が自動車業界の在庫調整の影響を受けたこと、機械設備関連においては、プレス機及びプレス付帯設備の販売台数が減少したことなどが減収要因となりましたが、航空・宇宙関連の航空機エンジン部品及び環境・エネルギー関連のガスタービン部品と遠心圧縮機部品の需要が回復したことから、売上高は12,160百万円(前年同期比4.1%増)となりました。利益につきましては、資源費やエネルギー費高騰などによる影響がありましたが、価格改定を始めとしたさまざまな利益創出策を実行した結果、営業利益は230百万円(前年同期は311百万円の営業損失)、経常利益は169百万円(前年同期は322百万円の経常損失)となりました。なお親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に繰延税金資産の取り崩しに伴う法人税等調整額を計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は231百万円(前年同期は1,288百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントの概況は、次のとおりであります。
なお、各セグメントの営業利益は、各セグメントに配賦することが困難な本社管理部門に係る営業費用等を控除する前のものであります。
①放電加工・表面処理
放電加工・表面処理は、航空・宇宙関連の航空機エンジン部品及び環境・エネルギー関連のガスタービン部品と遠心圧縮機部品の受注が回復し、前年同期比で増収となりました。利益面では、生産量回復による採算改善に加え価格転嫁や製造・販管固定費削減などにより、増益となりました。
その結果、売上高は7,326百万円(前年同期比13.0%増)、営業利益は735百万円(同246.3%増)となりました。
②金型
金型は、住宅関連では、国内向けのアルミ押出用金型は価格改定により売上高は前期並みで推移しましたが、海外子会社のアルミ押出用金型は生産計画の見直しの影響を受け、前年同期に比べ減収となりました。また、交通・輸送関連では、セラミックスハニカム押出用金型が自動車業界の在庫調整の影響を受け、前年同期に比べ減収となりました。利益面では、減収も価格転嫁や製造固定費削減などにより増益となりました。
その結果、売上高は3,600百万円(同5.1%減)、営業利益は452百万円(同5.4%増)となりました。
③機械装置等
機械装置等は、機械設備関連で計画していたプレス機及びプレス付帯設備の販売が減少したことから、前年同期に比べ減収となりました。利益面では減収も製造経費削減により増益となりました。
その結果、売上高は1,233百万円(同12.0%減)、営業利益は62百万円(前年同期は25百万円の営業損失)となりました。
(2) 財政状態に関する分析
財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ2,732百万円増加し、9,030百万円となりました。その主な要因は、現金及び預金の増加2,455百万円、売掛金の増加320百万円、原材料及び貯蔵品の増加146百万円によるものであります。固定資産は、前連結会計年度末に比べ412百万円増加し、8,944百万円となりました。その主な要因は、土地の増加272百万円、機械装置及び運搬具の増加115百万円、リース資産の増加105百万円、建設仮勘定の減少47百万円によるものであります。
当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末に比べ647百万円増加し、6,730百万円となりました。その主な要因は、支払手形及び買掛金の減少712百万円、電子記録債務の増加824百万円、短期借入金の増加394百万円、未払法人税等の増加81百万円によるものであります。固定負債は、前連結会計年度末に比べ150百万円増加し、4,014百万円となりました。その主な要因は、長期借入金の増加67百万円、リース債務の増加39百万円によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ2,346百万円増加し、7,229百万円となりました。その主な要因は、資本金の増加1,000百万円、資本剰余金の増加998百万円、利益剰余金の増加89百万円によるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ2,445百万円増加し、3,975百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、1,015百万円(前年同期は129百万円の使用)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益210百万円、減価償却費667百万円、売上債権の増加額297百万円、棚卸資産の増加177百万円、仕入債務の増加206百万円、及び未払消費税等の増加156百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、782百万円(前年同期は806百万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出831百万円、投資有価証券の売却による収入70百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、2,127百万円(前年同期は550百万円の獲得)となりました。これは主に株式の発行による収入1,945百万円、短期借入金の増加額(純額)400百万円、配当金の支払額142百万円、リース債務の返済による支出123百万円によるものであります。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率=自己資本÷総資産
時価ベースの自己資本比率=株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率=有利子負債÷営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ=営業キャッシュ・フロー÷利払い
(注) 1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
(注) 2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
(注) 3.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
(注) 4.2023年2月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは営業キャッシュ・フローがマイナスであるため記載しておりません。
(4) 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は、販売価格によって表示しております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。
2. 最近2連結会計年度の主な相手先別販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は次のとおりであります。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。将来や想定に関する事項には、不確実性を内包しており、あるいはリスクを含んでいるため、実際の結果と大きく異なる可能性もあります。
売上高は、前連結会計年度に比べ4.1%増の12,160百万円となりました。放電加工・表面処理セグメントでは、航空・宇宙関連の航空機エンジン部品及び環境・エネルギー関連のガスタービン部品と遠心圧縮機部品の受注が回復したことなどから増収となりました。金型セグメントでは、住宅関連で国内向けのアルミ押出用金型は価格改定により前期並みで推移しましたが、海外子会社のアルミ押出用金型が生産計画の見直しの影響を受けました。また、交通・輸送関連では、セラミックスハニカム押出用金型が自動車業界の在庫調整に影響を受けたことなどから減収となりました。機械装置等セグメントでは、機械設備関連で計画していたプレス機及びプレス付帯設備の販売が減少したしたことで減収となりました。以上にように金型及び機械装置等セグメントが減収ではありましたが、放電加工・表面処理セグメントの増収でカバーした結果となり、全体で増収となりました。
売上原価及び販売費及び一般管理費を合計した営業費用は、前連結会計年度に比べ0.5%減の11,930百万円となりました。売上高が前連結会計年度と比べて4.1%増に対して営業費用が減少したその主な要因は、資源費やエネルギー費高騰などによる影響もありましたが、価格改定をはじめとした様々な利益創出策を実行したことで売上原価が減少いたしました。その結果、営業利益230百万円(前連結会計年度は311百万円の営業損失)となりました。
なお、セグメント別の当連結会計年度の経営成績等は(経営成績等の状況の概要)(1)経営成績の状況に記載のとおりです。
営業外収益は35百万円(前連結会計年度比10.1%増)、営業外費用は95百万円(同123.1%増)となっております。営業外収益増加の主な要因は、受取損害賠償金などが増加したことによるものです。営業外費用増加の主な要因は、第三者割当増資に伴う株式交付費が発生したことなどによるものです。
特別利益は41百万円(前連結会計年度は53百万円)、特別損失は1百万円(前連結会計年度は71百万円)となっております。特別利益減少の主な要因は、政策保有株式の売却が減少したことによるものであります。特別損失減少の主な要因は前連結会計年度に飯山事業所閉鎖に伴う成田事業所移転に係る工場移転費用が発生したことによるものです。
法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額を合計した税金費用は、△16百万円(前連結会計年度は900百万円)となりました。税金費用減少の主な要因は繰延税金資産の回収が想定を上回ったことによるものであります。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益231百万円(前連結会計年度は1,288百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。なお、売上高当期純利益率は1.86%(前連結会計年度は△10.62%)となっております。
イ.事業環境要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「事業等のリスク」にも記載いたしましたとおり、主要得意先4社グループで当社グループの売上高の64.2%(2024年2月期)を占めており、これら主要得意先の受注・生産動向や外注政策が大きく変動した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当社といたしましては、主要4社グループ以外の得意先や、自社製品でありますデジタルサーボプレス「ZENFormer」「ZENFormer nano」、クロムフリー塗料、混合溶融機の拡販を進め、相対的にこれら主要4社の比率を下げていく所存であります。
ロ.収益変動要因
当社グループには多数の事業所があり、且つ多数の事業を営んでいることから、これらに係る土地、建物及び生産設備等の固定資産について減損会計の適用による減損損失の計上が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(経営成績等の状況の概要) (3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の財源を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金については、自己資金を基本としており、設備投資については、自己資金の他に、金融機関からの借入金等による資金調達を基本としております。
なお、資本の財源につきましては以下のような分析をしております。
イ.財政政策
当社グループは、売上債権及び棚卸資産の圧縮を図ることによって内部資金を生み出し、借入金の返済を進めるなどにより財務体質の健全化を進めてまいります。
売上債権については、債権流動化のスキームを得意先及び金融機関の協力を得て実施しておりますが、更に拡大していく計画です。
ロ.財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ3,144百万円増加し、17,974百万円となりました。この主な変動要因は、流動資産が2,732百万円増加し、固定資産が412百万円増加したことによるものであります。負債については、流動負債が647百万円増加し、固定負債は長期借入金の増加67百万円、リース債務の増加39百万円などにより150百万円増加しました。なお、純資産は、資本金の増加1,000百万円、資本剰余金の増加998百万円、利益剰余金の増加89百万円などにより、前連結会計年度末より2,346百万円増加して7,229百万円となり、自己資本比率は7.94ポイント増加して35.82%となりました。
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するように努めております。当連結会計年度では、経営基盤を強化するために、拠点集約、組織改革、人事制度改革などを推進してまいりました。新年度(2025年2月期)より新たな経営体制でさらなる改革を推進し、持続的な成長を目指してまいります。
なお、経営成績・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、当社グループは環境の変化への迅速な対応を基本とし、目標とすべき経営指標は営業利益率10%以上を従来から掲げて経営しておりましたが、当連結会計年度におきましては、価格改定を始めとしたさまざまな利益創出策を実施しましたが、資源費やエネルギー費高騰などの影響により営業利益率は1.89%となりました。
新年度(2025年2月期)におきましては、欧米経済の減速、インフレの進行、地政学的リスク等先行き不透明であるため、国内製造業は正確な需要予測を立てることが困難な状況が継続するものと予測されます。そのため当社グループは、引き続き市場動向を注視し、需要に合わせた生産体制の維持やサプライチェーン強化を推進してまいります。
セグメント別にみますと、放電加工・表面処理は、交通・輸送関連は引き続き市場を厳しく見ていることから減収を見込んでおりますが、航空・宇宙関連の航空機エンジン部品や環境・エネルギー関連の産業用ガスタービン関連部品は新規アイテムの量産を開始することからセグメント全体では増収増益となる見込みであります。
金型は、住宅関連及び交通・輸送関連ともに前期に引き続き市場環境は厳しいものと見ており、減収となる見通しですが、生産性向上策によって、収益の改善を図り増益を見込んでおります。
機械装置等は、機械設備関連が既存市場への拡販により増収となる見通しであることや、交通・輸送関連が需要に合わせた製造コストの最適化により収益を確保することから、増収、増益を見込んでおります。
以上のことから、2025年2月期の営業利益は前年同期に比べ増益となり、営業利益率は2.71%となる見込みです。短期的にはまだ、目標利益率に届きませんが、中長期的には「営業利益率10%以上」を客観的な指標として掲げ、様々な施策に取組んでまいります。
また、売上高の94.1%(2024年2月期)を受託加工が占めていることから、自社製品でありますデジタルサーボプレス機「ZENFormer」「ZENFormer nano」、クロムフリー塗料、混合溶融機の拡販を推し進め、受託加工の売上高に占める主要得意先4社グループの比率を相対的に下げることでリスクの軽減を図り、景気動向に左右されないバランスの取れた事業内容の構築を目指し、業容の拡大を図ってまいります。
中期経営計画2024(2022年2月期~2024年2月期)では、計画初年度の2022年2月期では、拠点の集約などの組織改革を進め、全社的なコスト削減策を実行した結果、黒字化を実現できましたが、続く2023年2月期では、電力料金や購入品の価格上昇などにより、収益面では大きな課題が残ることとなりました。それを受け、最終年度である2024年2月期は、引き続き組織改革を進めるとともに、不採算受注の削減と販売・購入価格の見直しなど収益性の向上に努め、今後の事業展開のための土台作りを推進し、収益を回復することができました。しかしながら、金型やガソリン車用自動車部品の需要減少、ガスタービン部品等の増産に伴う製造課題など、乗り越えるべき課題はまだ残っております。
こうした状況を踏まえ、当社グループは、2027年2月期までの3か年を対象とする「中期経営計画2027」を策定したしました。「中期経営計画2027」では、「中期経営計画2024」で行った改革をさらに推し進め、当社グループの長期的な成長と企業価値の向上を図るべく、100年企業となるための基盤を構築してまいります。
(2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、重要な見積りや仮定を行う必要があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要な判断を要し、財政状態及び経営成績に影響を与える項目は下記のとおりであります。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しておりますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現できないと判断した場合には、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上いたします。
当社グループは、従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務及び年金資産見込額に基づき計上しております。
退職給付費用は、割引率、昇給率及び期待運用収益率等のさまざまな仮定によって算出しております。割引率及び期待運用収益率は、金利の変動を含む現在の市場動向などを考慮して決定しております。昇給率の見積りは、実績及び直近の見通しを反映しております。
当社グループは、退職給付債務に関する会計上の見積りを「重要な会計上の見積り」と認識しております。それは仮定の変化が、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があるためであります。仮定の変化による実際の退職給付債務の差額は将来の期間にわたって償却されます。現在使用している仮定は妥当であると考えておりますが、仮定の変化により退職給付費用及び退職給付債務に影響を与える可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損の兆候の有無を事業所ごとセグメント単位で判定しており、結果、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
なお、減損損失の認識及び測定にあたっては、市場環境の見通し等を踏まえた事業計画に基づいて慎重に検討しております。
当社グループは、社会環境の変化及び顧客ニーズの多様化や要求性能の高度化に伴い、研究開発主導型経営を基本に高付加価値製品並びに効率的なアプリケーション技術を主体に開発するものであり、当社が主体となって行っております。
研究開発体制といたしましては、事業部により技術内容が異なることから、各事業部において研究開発活動を行っております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は