当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
近鉄百貨店グループは、
1.創造と革新の姿勢をもって、積極果敢に目標と取組む
2.顧客第一の精神に徹し、まごころと感謝の念をもって奉仕する
3.よりよき生活の提案者を目指し、魅力ある店づくりに努める
4.相互信頼を基盤として、取引先との共存共栄をはかる
5.理解と協調にもとづく人間関係を樹立し、働きがいのある職場環境をつくる
ことを経営方針としております。そして、お客様の生活のさまざまな場面で、より素敵な暮らしづくりを応援し、幅広い品揃えときめ細かなサービスの提供を通じて、すべてのステークホルダーの皆様の期待に応えるとともに、地域の発展に貢献する企業であり続けることを目指しております。
(2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末に当社グループが判断したものであります。
経営者が認識している今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類感染症へ移行したことにより、経済活動が正常化に向かい、持続的な賃上げや雇用情勢の改善を背景に景気は緩やかに回復すると想定しているものの、物価高やエネルギーコストの上昇、中国経済の減速など、海外における経済政策の不確実性や地政学的リスクの影響等により依然として予断を許さない状況が続くものと予想されます。また、環境問題をはじめとする社会問題がより拡大、複雑化するなかで、地域とそこに暮らす人々に対する企業の社会的責任はますます大きくなり、「地域社会の発展」と「持続可能な社会の実現」に対する取組みを推進していくことは、企業として目指すべき姿であります。
このような状況の下、当社グループは最終年度を迎える中期経営計画に基づき、引き続き「豊かなくらしと価値ある生活文化の創造」に邁進いたします。また、2021年4月に策定したESG方針に基づき、経営戦略の柱としてESG推進に取り組み、社会課題の解決と地域社会及び企業の持続的成長を目指してまいります。
なお、「中期経営計画(2021-2024年度)」は以下の内容を骨子としております。
・新たな飛躍に向けた長期戦略
同計画では、長期的に2030年の当社の目指す姿を設定し、その実現に向けて、2024年度までの中期的に行うべき構造改革のための諸施策を策定しました。
1.長期ビジョン
2030年の日本は、健康寿命の延伸やデジタル技術の浸透、価値観とライフスタイルの変化により、“豊かで持続可能な社会”の構築が進むものと思われます。そのような社会を踏まえ、当社の目指す姿として、「くらしを豊かにするプラットフォーマー」をビジョンとして掲げます。
当社の目指す「プラットフォーマー」とは、沿線生活経済圏に「暮らす・働く・訪れる」顧客と、当社及び当社が連携する取引先・近鉄グループ各社・外部アライアンス先等が提供する「モノ・コト・サービス」を、当社が持つ顧客接点である「店舗」や「外商」、「EC」、「アプリ・SNS」などを通じて「つなぐ場」を提供する事業者になることを意味します。
当社は生活者のための“くらしのプラットフォーム”を構築し、持続可能な社会実現に向けて、生活にまつわるサービスを総合的に提供することで、「豊かなくらしと価値ある生活文化」を創造することを目指します。
2.ESG経営の推進
地域産業である小売業として、地域社会の課題解決に取り組み、「豊かで持続可能な社会」の実現に貢献するため、「地域に寄り添い、地域と活きる」を方針に、ESG経営を推進します。
3.事業ポートフォリオの変革
2030年に向け、さらなる成長を目指して事業ポートフォリオの変革を進め、百貨店事業を商業ディベロッパー事業へと変革するとともに、百貨店の強みを自立・収益事業化し、既存事業の構造改革による安定化と、新規事業の戦略的拡大を図ります。
事業構成は、新たな成長事業の占めるシェアを2030年には50%程度まで伸ばし、2020年度は百貨店事業単体で80%のシェアですが、商業ディベロッパー事業で50%程度とする計画です。
・「中期経営計画(2021-2024年度)」の概要
事業戦略
― くらしを豊かにする共創型マルチディベロッパーへの変革 ―
百“貨”店 から 百“価”店へ
私たちは、顧客の暮らし方が大きく変わっていく中で、その変化に寄り添い、新たな価値を創造し提供する事業者となる
基本的な考え方
2021-2024年度を構造改革と事業ポートフォリオの変革による「新たなビジネスモデル」を創造する期間と位置づけます。お客さまの満足度を生涯にわたって高め、沿線の生活経済圏での当社消費シェア最大化を目指します。
基本方針1.あべの・天王寺エリア「ハルカスタウン」の魅力最大化
当社最大の収益拠点である「あべの・天王寺エリア」の魅力を最大化するため、あべのハルカス近鉄本店の強化や街づくり事業を推進します。長期的には西日本の国際化の玄関口として「あべの・天王寺エリア」のグローバル化を目指します。
基本方針2.地域中核店・郊外店のタウンセンター化
タウンセンター化とは、今後地方・郊外においてコンパクトシティ化が進む中、駅前立地の強みを活かし、生活機能・商業機能・コミュニティ機能を融合した複合商業サービス施設への転換を目指すものです。地域生活に「なくてはならない存在」を目指すとともに、地域産業である小売業として、地域共創事業に取り組みます。
基本方針3.百貨店の強みの収益事業化
百貨店の強みを収益事業化するとともに、新たな事業創造にも取り組み、事業ポートフォリオの変革を進めます。具体的には、自主(フランチャイズほか)事業の進化、EC事業の強化、外商機能の顧客サービス事業への変革、法人外商機能の商社機能への取り組み、商業開発事業の拡大に取り組みます。
基本方針4.成長を支える機能と基盤強化
以上の成長を支えるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略、人財戦略、財務戦略、グループ会社の成長戦略を推進します。
(3)目標とする経営指標
上記の基本方針に則り、「中期経営計画」の最終年度である2024年度の連結経営目標数値は以下のとおりです。
①連結営業利益 65億円
②連結当期純利益 40億円
③ROE 10.0%以上
④ROA(営業利益ベース) 5.0%以上
なお、当社グループの中核となる百貨店業では、業界の売上高が減少する中、他の競合に打ち勝つため、財務基盤の安定・強化を図るとともに、売場改装などの設備投資並びに新業態開発に向けた先行投資が必要不可欠であります。
また、株主に対する安定的かつ継続的な利益還元の実現も重要な課題であります。
これらを踏まえ、中期経営計画の4年間で総額200億円の設備投資を効率的に行うとともに継続的かつ安定的に配当できるよう最終年度の連結ROE目標を10.0%以上としております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
①ガバナンス
当社グループは、コーポレート・ガバナンスの充実を重要な経営課題の一つと捉え、ステークホルダーとの間に良好な関係を築くとともに、経営の透明性と公正性を高め、経営監督機能の強化、コンプライアンスの推進を柱とするコーポレート・ガバナンスの充実を図ります。その一環で、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを強化し、持続可能な社会の実現を目指した企業経営を行うための諸施策の策定及び推進を図ることを目的として、ESG推進委員会を設置しております。同委員会は、当社社長執行役員を委員長として、当社専務執行役員及び常務執行役員により構成し、定期的に開催、サステナビリティを巡る諸課題について検討しております。
②戦略
環境問題をはじめとする社会問題がより拡大、複雑化するなかで、地域とそこに暮らす人々に対する企業の社会的責任はますます大きくなり、「地域社会の発展」と「持続可能な社会の実現」に向けて、ESGを推進していくことは、企業として目指すべき姿であります。当社は、中期経営計画(2021-2024年度)策定にあたり、ESGに関する当社の取り組みを議論し、2021年4月の中期経営計画発表時に、「ESG方針」と取り組むべき3つの重要課題についても公表いたしました。ESGの推進は、「誰ひとり取り残さない」、「持続可能な社会の実現」を目指すSDGsの目標とも結びついており、経営戦略の柱として取り組むことにより、SDGsの目標達成に貢献し、社会課題の解決と地域社会及び企業の持続的成長を目指してまいります。「ESG方針」と3つの重要課題、主な取り組み内容は以下のとおりです。
重要課題の「地域共創の実現」については、地域とともに成長・発展する地域共創型の百貨店として、地域の皆さまとの交流、地域産業の発展、活性化に寄与する取り組みを実施しています。今後も地域の持続的な発展を目指し、地域への社会貢献を推進してまいります。なお、
③リスク管理
当社グループは、ESG経営を推進しておりますが、取り組みの遅れにより、ステークホルダーからの信用失墜、気候変動リスクの対応の遅れ、炭素税規制による増税等のリスクを有しております。当社グループでは、これらのリスクへの対応として、ESG推進委員会で諸リスクについて検討しております。また、ESGの推進及び取り組み状況の開示等を実施しております。
④指標及び目標
重要課題ごとに、指標(KPI)や目標を設定し、進捗を把握しながら取り組んでおります。
(2)人的資本
■全体方針
当社は百貨店の枠を超えた事業の多角化を加速しています。そのような中、それぞれの事業運営を担える資質・能力を備えた人財を育成し、合わせて従業員の多様な働き方に対応できる労働環境整備に取り組みます。
新しい人事戦略としては、人財コンセプト『自律した百“価”店人の創出』に基づき、人財の活性化に取り組みます。
また、人事理念である「社員の自主・自律を尊重し、新たな価値創造に挑戦する企業風土を創る」に基づき、自律した百“価”店人を創出するため、6つの分野(①個人の成長、②報酬・評価、③学び、④コミュニケーション、⑤ワークスタイル、⑥健康管理・増進)を設定し、取り組みを進めています。
<具体的取り組み>
〇以下6つの分野の考え方に基づき、人事制度における改善項目を設定し、取り組みを進めます。
①個人の成長…多様な価値観が尊重され、自分の成長のために自らが選択する
②報酬・評価…メリハリのある評価、仕事の価値に見合う適性賃金
③学び…自ら学びたいものを自由に選択、学びたい意欲を支援する
④コミュニケーション…知りたいこと、困ったこと、会社のことを知るコミュニケーション
⑤ワークスタイル…働き方の多様性と、みんなで助け合う企業文化
⑥健康管理・増進…心とカラダの健康の充足、仕事もプライベートも活き活きと
■人財の多様性確保を含む人財育成の方針
百貨店の枠を超えた事業開発を進めていく中で、従業員の多様性を尊重し人財価値を高めることで、持続的な企業価値向上を目指します。
①採用
・様々な事業展開に貢献できる、柔軟な発想の人財を採用します。
・情報開示を強化し、入社後のミスマッチを軽減することで離職率の低下に努めます。
・新たな事業開発を推進するための専門人財のキャリア採用を積極的に進めます。
・新卒一括採用に限定せずに、多様な人財の採用に取り組みます。
②人財育成
・選択式の教育メニューを導入することで自ら学ぶ意欲を醸成すると同時に社員が望むキャリア形成を支援します。
・入社から10年間は、ジョブローテーションを通じ、現場力を身に付けます。また、管理・監督職を目指すうえで基盤となるヒューマンスキルを身に付ける機会を創出します。
・管理・監督職は、会社の方向性や注力する事業を理解し実現するために、部下育成と業務変革を担う人財として育成しています。
・管理職昇格後は、経営層を目指すマネジメント人財と、専門性を高めて業績を上げるプロフェッショナル人財の育成に取り組みます。
(単体)
指標 |
2022年度 |
2023年度 |
目標 |
新卒正社員採用数 |
14人 |
15人 |
― |
女性採用比率 |
57.1% |
88.0% |
― |
女性管理職比率 |
8.6% |
10.0% |
2030年度25.0% |
正規雇用労働者の中途採用比率 |
33.3% |
40.0% |
― |
■社内環境整備方針
従業員にとって働きやすく、働きがいをもって能力を如何なく発揮し活躍できる環境整備を目指します。
〇働きやすい環境づくりについて
・福利厚生、諸制度の充実に努めています。(短時間勤務制度、休職制度、評価の透明性等)
・フレックスタイム制の導入、副業の解禁を実施しております。
・管理・監督職を対象としたハラスメント研修、女性活躍推進セミナー、部下育成・指導研修等の実施により、従業員の個が活きる職場環境創出に取り組みます。
・公正かつ適正な評価と配置、優秀かつ意欲ある人財の積極的な管理職登用により、如何なく能力を発揮できる環境を整備します。
・健康経営の推進の取り組みとして、健康経営優良法人(大規模法人部門)に2年連続で認定されています。
(単体)
指標 |
2022年度 |
2023年度 |
目標 |
平均勤続年数 |
22.6年 |
22.8年 |
― |
障がい者雇用率 |
2.50% |
2.59% |
法定雇用率以上を維持 |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。
当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境
当社グループの主力セグメントである百貨店業は、主に一般消費者を対象とするため、地方・郊外の人口減少等の社会情勢や景気動向、消費動向等の経済情勢に大きく影響を受けるほか、流通業界における競争激化も予想されます。さらに、消費行動・生活様式の変容、デジタル化の進行、衣料品・アパレルの低迷、インバウンド需要の減退等、今まで以上に変化のスピードが加速しており、これらの環境変化が当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、このような環境変化に対応するため、店舗構造改革、コスト構造改革を推し進め、事業モデルの抜本的な改革に取り組んでおります。また、今後持続的な成長を続けるため、最終年度を迎える中期経営計画に基づき、新たなビジネスモデルの構築に邁進いたします。同計画については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題」に記載しております。
(2)商品取引
当社グループの主力セグメントである百貨店業は、消費者向け取引を行っております。当社グループが製造・販売する商品の品質や食品の安全性に対して信用毀損が生じた場合、売上高の減少等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは百貨店業の外商部門をはじめとして、法人向け等の掛売取引を行っております。取引先の倒産による売掛金の回収不能等による損失の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
商品の品質や食品の安全性については、関係法令の遵守状況の確認や品質・衛生管理のチェックなどを定期的に実施し十分留意しております。また、法人向け等の掛売取引については与信管理を十分に行っております。
(3)法律の規制、制度の変更
当社グループは事業展開するにあたり、出店等については大規模小売店舗立地法、商品仕入面においては独占禁止法・下請法等、商品販売面においては景品表示法・JAS法・食品衛生法・製造物責任法(PL法)等、その他、環境・リサイクル関連法規など様々な法律による規制を受けております。万一これに違反する事態が生じた場合は、社会的信用が失墜するとともに、企業活動が制限される可能性があります。
当社グループでは、関係法令・規則の制定、改正等の動向について常にモニタリングしており、必要に応じて顧問弁護士への相談や意見聴取を行うとともに、社員教育等を通じて法令遵守の重要性を社内に周知徹底しております。
(4)新規事業
当社グループでは、企業の成長、競争力を高めるため従来の枠組みにとらわれることなく新規事業への取組みをおこなってまいります。新規事業においては不確実な要素が多く、事業環境や市場ニーズの変化等により新規事業の確立が困難となり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすほか、法律や規制に対する事前確認の不足により、社会的信用が失墜するとともに、企業活動が制限される可能性があります。
当社グループでは、新規事業において想定されるあらゆるリスクを事前に洗い出し、評価し、対策を講じるための体制を強化するため、当社にコンプライアンス推進本部を新設し、様々なリスクに対する検証を行ってまいります。
(5)災害
当社グループの主要な店舗・事業所の所在地は、東南海・南海地震の対策強化地域に含まれており、地震発生の可能性が比較的高い地域であります。想定を超える大規模な地震が発生した場合は、店舗等の事業所が甚大な被害を受け、復旧に多額の費用と時間を要するなどの直接的な影響があります。さらに、仕入先の被災による商品調達の停滞、さらには日本経済全体の消費マインドが冷え込むなど間接的な影響を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、大規模な火災が発生した場合、被害者への損害賠償責任、商品・建物への被害が考えられ、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、これら災害等の影響により、電気・水道・ガスの使用制限、道路・空港・港湾施設の閉鎖、通信機能の不具合等社会インフラ機能の低下が生じた場合、当社、協力会社及び取引先の事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、緊急地震速報の受信装置を主要店舗に設置しているほか、危機管理マニュアルを作成・配布し、地震発生時の対応の周知徹底を図っております。火災については、消防法に基づき定期的に検査・訓練等を実施し、万一の火災に備え、予防又は被害を最小限にとどめる努力をしております。
さらに、当社グループは、災害等の発生に備えた危機管理体制の整備に取り組んでおり、平時から、老朽化したインフラへの投資、施設の定期的な点検、損害保険の付保等の対策を講じているほか、店舗等が被災した場合でも、お客様・従業員の安全確保を前提として、早期の営業再開、営業の継続による商品供給を通じて、社会インフラとしての役割、社会的責任を果たすことを目的とした事業継続計画(BCP)を策定しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症へ移行されたことに伴い、経済活動が正常化に向かってはいるものの、今後新たな感染症が流行した場合は、当社グループの業績及び財政状態に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。そういった場合においても、これまでの経験を活かし、関係各所と連携を図りながら影響の最小化に向けた取り組みを実施し、営業の継続に努めてまいります。
(6)情報管理
①情報システムの機能不全
当社グループは、POSシステム、経理システム、商品受発注システム、顧客情報管理システム等多くの情報システムを有しております。想定した以上の自然災害の発生、従業員の過誤によるシステム障害やコンピュータウィルスの感染等が起こった場合、営業活動に大きな支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらの情報システムの機能不全を防ぐため、電源の二重化、バックアップシステム構築、不正侵入防止プログラム等の対策を講じております。
②個人情報の漏洩
当社グループは、外商顧客、ギフト顧客、友の会会員など多数の個人情報を保有しております。万一、情報が外部に漏洩した場合は、当社グループの社会的信用が失墜するなどして、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、個人情報保護法その他の関係法令等を遵守し、お客様からお預かりしている個人情報の保護に万全を期すため個人情報保護方針を定めるとともに、個人情報管理規程などの社内規程等の整備や情報システムのセキュリティ向上、従業員教育の充実などにより万全を期しております。また保険を付保することにより業績への影響に備えております。
(7)資金調達・金利変動のリスク
当社グループは、主に金融機関からの借入れによって資金調達を行っておりますが、消費環境の悪化及び競争の激化などによって当社グループの中長期的な経営計画に不安が生じた場合や、急激な金利変動が生じた場合、当社グループの業績、財政状態及び資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、金利変動による影響を軽減するため、状況に応じて一定程度の金額を長期固定金利で調達しているほか、取引金融機関との間で情報交換を密にし、相互の信頼関係を築くとともに、銀行取引以外の資金調達方法についても研究しております。また、金融環境変化について状況把握に努め、安定的・効率的な資金繰りの実践に取り組んでおります。
(8) ESG経営への取り組みの遅れ
当社グループは2030年に向けての長期戦略において「地域に寄り添い、地域と活きる」というESG方針を掲げESG経営を推進しておりますが、取り組みの遅れにより、ステークホルダーからの信用失墜、気候変動リスクへの対応の遅れ、炭素税規制による増税等のリスクを有しております。
当社グループでは、これらのリスクへの対応として、ESGの推進及び取り組み状況の開示等を実施しております。
(9)スタンダード市場上場維持基準
当社は、株式会社東京証券取引所にて2022年4月適用の新市場区分について、スタンダード市場を選択しておりますが、移行基準日時点(2021年6月30日)において、上場維持基準のうち、流通株式比率については基準を充たしていないことから、2021年12月24日に「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出し、2027年2月末までに上場維持基準を充たすために各種取組を進める旨開示しております。これまでに、2021年8月20日に立会外分売を実施、2022年5月26日及び2023年8月22日に流通株式比率向上を目的とする株式需給緩衝信託®を設定しましたが、2024年2月末時点で流通株式比率は21.3%であり、上場維持基準25%以上を充たしておりません。
2023年3月31日に株式会社東京証券取引所から「上場維持基準に関する経過措置の取扱い等に係る有価証券上場規程等の一部改正について」が公表され、当社におきましては、上場維持基準の経過措置の終了時期が2026年2月末、改善期間の終了時期が2027年2月末となり、2027年2月末時点で上場維持基準を充たしていない場合、整理銘柄へ指定され、2027年8月末までに上場維持基準を充たしていない場合は上場廃止となります。2027年2月末までに上場維持基準を充たすため、今後も各種取組を進めてまいりますが、計画通り進捗しない場合、当社株式の上場を維持することができない可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当期のわが国経済は、昨年5月に新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に移行したことにより、社会経済活動が正常化に向かうとともに、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな景気回復基調のうちに推移しました。百貨店業界におきましては、行動制限の緩和等による外出機会の増加などから消費マインドの回復がみられ、さらには円安効果と入国制限の終了を背景としたインバウンド需要の伸びが売上を押しあげるなど、全国百貨店売上高は大都市を中心に好調に推移いたしました。
このような状況の下、当社グループは、「中期経営計画(2021-2024年度)」において長期ビジョンとして掲げた「くらしを豊かにするプラットフォーマー」を目指し、あべの・天王寺エリアの魅力最大化など4つの基本方針に基づく諸施策を強力に推進するとともに、各事業における収益力向上に懸命の努力を払いました。
この結果、当社グループの業績につきましては、売上高は113,506百万円(前期比5.2%増)、営業利益3,902百万円(同149.2%増)、経常利益は3,864百万円(同98.6%増)となりました。これに政策保有上場株式の売却益を特別利益に計上し、過年度消費税等及び固定資産除却損等を特別損失に計上し、法人税等を差し引きした結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,777百万円(同46.7%増)となりました。
事業のセグメント別業績は、次のとおりであります。
<百貨店業>
百貨店業におきましては、収益力及び集客力の強化に注力するとともに、企業価値向上にも努めてまいりました。まず、旗艦店であるあべのハルカス近鉄本店については、さらなる特選ブランドの強化を図るため、タワー館1階に「バーバリー」を導入するとともに、タワー館5階婦人服売場に、衣・食・住・サービスを集積させた売場である「スクランブルMD」の第三弾として、美容と健康に対する意識が高い「オトナ女子」をターゲットとした「美sion Terrace(ビジョンテラス)」を新設いたしました。また、収益力向上の一つとして強化しているフランチャイズ事業においては、ウイング館地下2階に、不二家との共同開発により誕生した洋菓子の新ブランド「Pekolicious(ペコリシャス)」の第一号店を導入するとともに、当社フランチャイズ事業では初となる本格的なレストラン事業として「ベビーフェイス スカイテラス あべのハルカス店」をタワー館14階レストランフロアに、さらには同フロア及び12階レストランフロアに西日本初出店となる「洋食屋 伊勢十」「TOKYO MERCATO(トウキョウメルカート)」を導入いたしました。また、2025年に開催される「大阪・関西万博」に向けた機運醸成を図るため、タワー館2階に、オフィシャルストアの第一号店を導入し、公式ライセンス商品を販売するほか、万博に関する様々な情報発信も行っております。さらには、ESG経営を推進するため、地域の事業者や生産者、行政、団体と結びつきをより深め、当社グループ沿線地域の活性化につながる新たな価値を創出する事業として、大阪府河南町でいちごの自社栽培をスタートさせ、昨年12月に「はるかすまいる」として販売を開始し、ご好評をいただいているほか、「地方創生」の一環として、ウイング館2階に高知県産品の販売や食・文化・観光の情報発信を行う期間限定アンテナショップ「まるごと高知 in あべのハルカス」を導入し、多くのお客様にご来店いただきました。
次に、地域中核店・郊外店においては、地域生活に「なくてはならない存在」を目指し、生活機能、商業機能、コミュニティ機能を融合した「タウンセンター化」への変革を推進するため、上層階へは専門店を導入するとともに、低中層階にはフランチャイズ運営売場を積極的に拡充するなど、さらなる収益構造改革を進めてまいりました。上本町店、橿原店においては、ハンズとの協業による「Plugs Market(プラグスマーケット)」を導入し、地域共創に取り組みました。
一方、越境EC事業につきましては、中国の景気動向に鑑み、本年2月末に撤退いたしました。撤退に伴い商品の評価や在高の見直し等を行いましたが、諸施策による来店客数の増加や外商売上が好調に推移した結果、売上高は92,480百万円(前期比3.4%増)、営業利益2,542百万円(同327.9%増)となりました。
<卸・小売業>
卸・小売業におきましては、株式会社シュテルン近鉄において、輸入車販売が好調に推移したため、売上高は13,539百万円(前期比6.3%増)であったものの、株式会社ジャパンフーズクリエイトにおいて、サーモンの価格上昇等により減益となったため、営業利益327百万円(同26.6%減)となりました。
<内装業>
内装業におきましては、株式会社近創で大口工事受注があったことにより、売上高は3,839百万円(前期比100.6%増)、営業利益は893百万円(同299.9%増)となりました。
<不動産業>
不動産業におきましては、賃貸収入により、売上高は295百万円(前期比2.7%増)、営業利益223百万円(同7.6%増)となりました。
<その他事業>
その他事業におきましては、売上高は3,351百万円(前期比2.5%減)、営業利益は108百万円(同38.1%減)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、減価償却による建物及び構築物の減少や繰延税金資産の減少などにより、前期末に比べ2,979百万円減少し115,364百万円となりました。
負債は、借入金の減少などにより、前期末に比べ5,710百万円減少し78,046百万円となりました。
純資産は、自己株式が増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前期末に比べ2,731百万円増加し37,317百万円となりました。この結果、自己資本比率は32.3%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ485百万円増加し3,728百万円となりました。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、仕入債務の増加額は減少したものの、税金等調整前当期純利益の計上や退職給付信託の一部返還に加え、売上債権の増加額の減少などにより、10,170百万円の収入(前期 7,564百万円の収入)となりました。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、政策保有上場株式の売却による収入はあったものの、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出などにより、2,194百万円の支出(前期 3,022百万円の支出)となりました。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、借入金の返済による支出などにより7,490百万円の支出(前期 5,403百万円の支出)となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
||
品名 |
売上高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
百貨店業 |
衣料品 |
15,066 |
96.0 |
身回品 |
6,824 |
99.9 |
|
家庭用品 |
1,801 |
92.7 |
|
食料品 |
30,500 |
102.7 |
|
食堂・喫茶 |
739 |
134.1 |
|
雑貨 |
26,972 |
105.8 |
|
サービス |
1,256 |
115.2 |
|
その他 |
9,396 |
114.1 |
|
消去 |
△78 |
110.0 |
|
計 |
92,480 |
103.4 |
|
卸・小売業 |
食料品 |
3,633 |
97.3 |
自動車関連 |
10,671 |
109.1 |
|
消去 |
△765 |
97.5 |
|
計 |
13,539 |
106.3 |
|
内装業 |
内装 |
6,404 |
152.9 |
消去 |
△2,564 |
112.7 |
|
計 |
3,839 |
200.6 |
|
不動産業 |
賃貸 |
352 |
102.3 |
消去 |
△57 |
100.0 |
|
計 |
295 |
102.7 |
|
その他事業 |
運送 |
4,187 |
96.0 |
その他 |
2,704 |
93.5 |
|
消去 |
△3,539 |
92.8 |
|
計 |
3,351 |
97.5 |
|
合計 |
113,506 |
105.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この作成にあたり、当連結会計年度末の資産及び負債並びに当連結会計年度に係る収益及び費用の報告金額に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況等に応じた合理的な判断に基づき見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載しております。
このうち、当連結会計年度において特に留意すべき要因については次のとおりであります。
・経営環境
b.経営成績の分析・検討内容
経営成績に重要な影響を与える要因を踏まえた当連結会計年度の経営成績の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、社会経済活動の正常化により消費マインドの回復がみられたことで、当社グループの売上高は113,506百万円(前期比5.2%増)、営業利益は3,902百万円(同149.2%増)となりました。
百貨店業では、収益構造及びコスト構造改革を推し進め、安定した利益を獲得できる体制づくりに注力し、さらに外商売上やインバウンド売上が好調に推移したことにより、百貨店業全体の売上高は92,480百万円(前期比3.4%増)となり、営業利益は2,542百万円(同327.9%増)となりました。
卸・小売業では、株式会社シュテルン近鉄で、フルモデルチェンジした新型「Cクラス」の販売効果が一巡したものの、車両単価の上昇により好調に推移しました。また、車点検等のアフターセールスに丁寧に取り組んだことで、部品売上や修理といったアフターサービスも堅調に推移しましたが、株式会社ジャパンフーズクリエイトでは、主力商品であるノルウェーサーモンの価格高騰により商品価格が高止まりし、主力販売先の量販店への卸売りが減少しましたため、卸・小売業全体の売上高は13,539百万円(前期比6.3%増)、営業利益は327百万円(同26.6%減)となりました。
内装業では、株式会社近創で、ホテルや商業施設などの内装工事及びサイン工事が好調に推移するとともに、コスト削減に努めた結果、内装業全体の売上高は3,839百万円(前期比100.6%増)、営業利益は893百万円(同299.9%増)となりました。
不動産業では、賃貸収入により、不動産業全体の売上高は295百万円(前期比2.7%増)、営業利益は223百万円(同7.6%増)となりました。
当社グループの経常利益は、前年の雇用調整助成金などが営業外収益から減少したものの、上記の要因により3,864百万円(前期比98.6%増)となりました。これに政策保有上場株式の売却益を特別利益に計上し、過年度消費税等及び固定資産除却損等を特別損失に計上し、法人税等を差し引きした結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,777百万円(同46.7%増)となりました。
c.経営判断のために採用している経営指標とその達成状況及びその理由
当社グループは、「中期経営計画(2021-2024年度)」に基づき、百貨店事業の収益力を強化しつつ、さらなる成長に向けての新たな収益の柱になる事業モデルの強化期間と位置付けて、様々な施策を実行してきました。
「中期経営計画(2021-2024年度)」において、当社グループは、「営業利益」、「親会社株主に帰属する当期純利益」、「ROE」、「ROA(営業利益ベース)」を重要な指標と位置付けております。
|
2022年2月期 |
2023年2月期 |
2024年2月期 |
経営数値目標 (2025年2月期) |
営業利益 |
△13億円 |
15億円 |
39億円 |
65億円 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
△7億円 |
18億円 |
27億円 |
40億円 |
自己資本当期純利益率(ROE) |
△2.3% |
5.6% |
7.7% |
10.0%以上 |
総資産営業利益率 (ROA) |
△1.2% |
1.3% |
3.3% |
5.0%以上 |
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
主な内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、商品の仕入や営業費用などの運転資金に加え、店舗物件の改装や修繕などに伴う設備資金であります。
これらの資金需要に対応すべく、主に自己資金及び金融機関からの借入金により必要な資金を調達しております。
なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。
|
2020年2月期 |
2021年2月期 |
2022年2月期 |
2023年2月期 |
2024年2月期 |
自己資本比率(%) |
29.8 |
27.3 |
27.9 |
29.2 |
32.3 |
時価ベースの自己資本比率 (%) |
78.0 |
108.0 |
85.4 |
80.3 |
82.3 |
キャッシュ・フロー対 借入金比率(年) |
1.5 |
4.0 |
6.7 |
1.7 |
0.6 |
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) |
100.8 |
41.9 |
27.0 |
93.6 |
150.1 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対借入金比率:借入金/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利息の支払額
※ 各指標の算出は、連結ベースの財務数値によっております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
なお、期末発行済株式数より控除する自己株式に、株式需給緩衝信託Ⓡが保有する当社株式443,300株が含まれております。
当社は、2023年8月22日開催の取締役会において、当社の流通株式比率向上を目的とする第2回目の株式需給緩衝信託Ⓡ(以下「本信託」という。)の設定を決議し、野村信託銀行株式会社と本信託に関する契約を締結いたしました。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。