第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、環境事業を通して永続的に社会に貢献し続けるとともに、全てのステークホルダー(顧客、取引先、近隣社会、株主、従業員等)を意識した経営と社会的責任を果たすことにより、当社グループ及び業界全体の地位の向上を目指します。

当社グループの中核事業である土壌汚染調査・処理事業は、2000年6月より開始以降、土壌汚染問題を解決するため様々なサービスを提供してきております。また、土壌汚染による国民の健康被害を防止する目的で施行された「土壌汚染対策法」により、土壌汚染リスクに対する社会的認識はますます深まっております。同事業の拡大とともに、廃石膏ボードリサイクル事業、災害廃棄物処理事業等、その他の環境事業にも、積極的に取り組んでまいります。

 

(2) 経営戦略等

コンサルティング能力及び土壌処理能力の強化と処理方法の多様化を進めることにより、「土壌汚染対策のトータルソリューション企業」としての確固たる地位を確立します。

また、一方では、廃石膏ボードリサイクル事業やPCB(ポリ塩化ビフェニル)事業、BDF(バイオディーゼル燃料)事業、災害廃棄物処理事業に続き、多様化する環境問題に対応する新規事業の開拓を模索してまいります。

 

(3) 経営環境

今後の経済環境の見通しにつきましては、新型コロナウイルス禍の収束にともない社会経済活動の正常化が進む一方、欧米を中心とした金融引締めやウクライナ情勢・中東情勢の緊迫化を背景とした資源高に対する懸念等、依然として先行きが不透明な状況が続くものと想定しております。

当社を取り巻く環境としては、資源価格の動向、人手不足、輸送コストや外注コストの上昇等の不安材料はありますが、引き続き堅調さが見込める国内製造業の動向を背景として、当社グループを取り巻く事業環境は安定して推移することが期待されます。さらには、社会の環境に対する意識や、自然災害発生時等における緊急対応へのニーズの高まりなど、当社グループへの期待はさらに高まっている状況にあります。

当社グループは、引き続きその事業の推進が「環境」への貢献となるものであると確信し、地域の皆様や顧客の皆様からの期待に応えるべく、法令遵守の徹底を図り、また積極的な技術開発や設備投資を実行し、社会から信頼される企業を目指し、事業の拡大を図ってまいる所存です。

 

環境に対する社会的な関心は、ますます多面的に広がることが予想されており、同時に地球温暖化問題をはじめとした環境保護の考えは世界共通の認識として捉えられ、我が国においても様々な面での法制化が進展しております。また、「土壌汚染対策法」の改正を受けて、今後は規制強化の効果が浸透するなかで、それに対応する事業展開を求められています。

今後につきましては、受注活動の更なる広域化を図るとともに土壌汚染調査・処理技術の向上に努め、顧客のニーズに的確に対応するとともに、以下のような課題と諸策に取り組み、他社との差別化をより一層進展させ、業容の拡大を図ってまいります。加えて、限りある資源の有効活用が求められている今、環境問題に対応していく企業として、土壌汚染調査・処理事業とともに、廃石膏ボードや廃食油のリサイクル、古紙・段ボールの回収といった「資源リサイクル事業」についても推進していきます。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 人材の育成

当社グループの主たる業務は、「土壌汚染対策法」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」等の法的規制を受けております。従って、コンプライアンス及び専門的知識に基づいた適切な対策を顧客に提言することが当社グループの使命であり、また、それに対して管理体制を強化していくことが当社グループが成長するための重要な要素であると認識しております。

そのような認識のもとで、社内勉強会、社外講習会の受講及び各種資格取得の奨励等により、法令遵守及び専門知識の習得に重点を置いた人材育成を積極的に進めるとともに、人材の確保を進めてまいります。

 

② 事業所展開

当社では、全国の営業エリアを、本社、東京本社及び関西支社の3営業拠点と、名古屋リサイクルセンター、弥富リサイクルセンター、横浜生麦リサイクルセンター、横浜恵比須リサイクルセンター、大阪リサイクルセンター、岐阜リサイクルセンターを主たる活動拠点として対応しております。今後の当社グループの成長には、さらに地域に密着した営業展開と、3営業拠点以外の地域の需要の開拓が重要な要素になると考えております。

当社グループとしては、関東地区、関西地区、東海地区を重点営業エリアと考え事業展開を行う一方、中国・九州地区を含め、各地区での営業強化のための人員、設備の充実を順次積極的に進めているところであります。

 

③ 多様化する環境問題への対応

環境問題に関する規制は、今後も強化される傾向にあり、新たな環境問題が顕在化する可能性も否定できません。今後発生する環境問題であっても、「現状認識のための調査・分析」と「リサイクル技術の応用」は、問題解決のための重要な要素になると考えております。従って、当社グループは、自社の保有する調査・分析機能及びリサイクル処理のノウハウを駆使し、多様化する環境問題に対する的確なソリューションを提供することにより、事業分野の多角化を図ってまいります。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、当事業の社会的意義に鑑み、成長性と利益率の向上を重視し、株主資本利益率(ROE)を経営指標の重要な目標として、企業価値の最大化を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループは「環境リバリューストラクチャー」創造企業として、社会的に不要になり、負の環境負荷を与えるものに対し、工夫を凝らし、再び価値を付ける仕組みを創造して様々な環境問題の解決を図っていくことを通じて、持続可能な社会の実現を目指しております。

  その目的を達成し、今後の発展を続けるための重要課題として「環境」「人」「安全」「地域・社会」「ガバナンス」をマテリアリティとして設定し、以下のような考えのもと改善に取り組んでおります。

 

・環境については、環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献するべく土壌リサイクル量の拡大やリサイクル率の向上に取り組み続けます。

・人については、最大の経営資源であると考え、社員が働く幸せを感じながら能力を最大限に発揮できるよう、福利厚生・働き方改革・教育制度を拡充してまいります。また多様な価値観を職場に取り入れることでイノベーションを実現するため、ダイバーシティ経営を推進しています。

・安全については、「安全は全てにおいて優先する」を安全基本方針に掲げ、全員で事故0を目指し安全文化の醸成に努めています。

・地域・社会については、当社を支えてくださる地域・社会の皆さまに貢献するため、ボランティア活動や寄附などの足元の取り組みに加え、産業廃棄物を扱う企業だからこそできる災害廃棄物対応にも精力的に取り組んでおります。

・ガバナンスについては、執行役員制度を導入し、「経営意思決定・監督機能」と「執行機能」の分離を行い、より実効性のあるガバナンス体制としています。

 

(1) ガバナンス

  当社グループは、事業活動そのものが環境問題を解決するもので、サステナビリティの取組みと大きく係ることと考え、ガバナンスの強化を図っております。

  そのため当社では執行役員制度を導入して、「経営意思決定・監督機能」の独立性を高めつつ、業務遂行の機動性を促進したガバナンス体制を整備しております。

  また、当社グループでは社会からの信頼を確保するため「コンプライアンス基本規程」を定め、代表取締役社長を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設置し、コンプライアンス違反があった場合の調査や再発防止に取り組んでおります。

 

(2) 戦略

 ① 気候変動対策に関する方針、戦略

  気候変動によって自社が被るリスクと機会の特定及び評価と対応策の検討にあたり、当社グループではIPCCやIEAが公表するシナリオを用いて、産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年頃までに4℃上昇する4℃シナリオと、パリ協定並びにCOP26での世界的合意を踏まえた1.5℃目標の達成を前提として、気温上昇が抑制される1.5℃シナリオの2つのシナリオを設定し、当社への影響について分析を実施しております。

 〇 4℃シナリオ

温室効果ガス排出規制も現状通り強化がされず、対策が大きく進みません。そのため、エネルギーコストも現状のままで、事業活動からの温室効果ガスの削減意識も高まらず、事業内容も変わりなく継続されます。化石燃料も使用され続けるため、環境意識の高い企業からのBDF(バイオディーゼル燃料)のニーズに大きな変化はなく、BDF事業は当社の成長に合わせて、緩やかに拡大されていきます。台風などの自然災害の増加や激甚化が顕著になり、当社グループでも罹災に備えた対策を行うことと、災害復旧支援事業の体制の増強を促進します。気温の上昇によって工場や現場などでの労働環境の悪化が深刻化し、当社グループへの就職希望者の減少や熱中症などの労働災害が増加するため、労働環境の改善や採用活動の強化などが必要になります。

 〇 1.5℃シナリオ

カーボンプライシング制度や炭素税などの温室効果ガス排出規制が導入されてエネルギーコストが増大するため、再エネ電力や温室効果ガス排出量の少ない設備を導入していきます。温室効果ガス排出量の削減活動では、CO₂排出量の少ない浄化処理等のニーズが高まる一方で、セメント処理などのニーズが減少するため、LCCO₂の低い処理方法の開発を進めます。

また、化石燃料から水素など別のクリーンエネルギーへ移行することで、カーボンニュートラルとして脚光を浴びたBDFのニーズも衰退するため、マテリアルリサイクル事業への転換を行います。気温の上昇が1.5℃以内に抑えられることで、自然災害や海面上昇、労働環境も現状通りで特に対策が必要とはなりません。

 

(リスク)

分類

リスク要因と財務的影響

4℃

1.5℃

対応策

短期

中期

長期

短期

中期

長期

移行リスク

カーボンプライシング制度によるエネルギーコスト増加

再生可能エネルギーへの切替、業務効率化や生産性向上を含めた省エネ活動の継続

再生燃料販売によるBDF売上減少

マテリアルリサイクル事業への転換

物理リスク

自然災害に伴う工場の操業停止や物流ネットワークの混乱などによる一時的な売上高の減少や、設備の修繕コスト増加

災害時のBCP対応力強化

ヒートストレスによる労働生産性低下と採用活動費増大

現場の作業環境改善に向けた技術開発や熱中症対策の実施

 

 

(機会)

分類

機会要因と財務的影響

4℃

1.5℃

対応策

短期

中期

長期

短期

中期

長期

機会

再生燃料販売によるBDF売上増加

BDF品質向上による売上増加

セメントリサイクルによるCO2排出規制に伴う利益増加

LCCO2の低い処理方法の開発

脱炭素新規事業、防災・減災・国土強靭化対策による売上増加

罹災に備えた対策実施及び災害復旧支援事業の体制の増強促進

 

 

 

 ② 人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループの人的資本への方針は、『私たちは、日本を代表する「環境リバリューストラクチャー」創造企業を目指します。』とのミッションを果たすため、ビジョンのひとつである「価値観を共有し、社員一丸で動ける組織の構築」を達成しつつ、「社員一人ひとりが働きがいをもって働き、成長し、会社を通して社会貢献できる職場環境を実現する」ことです。

 

 ○ 人財育成

当社グループでは、現在の事業に留まらず新たな事業を展開し、企業価値を高めていくためには、持続的成長を支える人財の育成が重要と考えており、研修制度の拡充や個人の希望を尊重したキャリア形成を推進しています。

 

 a. 階層別研修の実施

 当社グループでは、すべての社員が自ら学び、プロフェッショナルとして成長し続ける機会を創造するため、スキルマトリックスによるスキルの見える化や階層とスキルに応じた研修の実施を推進しています。

 b. 社会の状況に応じた研修プログラム

当社グループでは、社会の価値観の変化や情勢に柔軟に対応できるよう、管理職に対する「ハラスメント研修」、ジェンダー差別をなくすため全社員に対する「ジェンダー研修」、50代に対する「キャリアデザイン研修」を実施しています。

 c. 機動的な人事戦略

当社グループでは、個人の能力を最大限に発揮するためには社員のキャリア形成に対する希望を尊重することが重要と考えており、役員や上司、人事部門に自身の希望を伝える機会を制度としても設けています。年1回実施している「キャリアサーベイ」において、今後の希望職種や希望勤務地を伝えることが可能となっているだけでなく、希望者は役員と面談する機会も設けています。また、将来のキャリア形成の一助となることも目的に、短期間で他部署の仕事を経験できる「社内インターンシップ制度」も導入しています。

 

 ○ Well-being推進&ダイバーシティの実現

当社グループでは、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、個人の幸せを会社の成長、ひいては社会への貢献に繋げるため、すべての社員が、健康・安心・安全に働ける、平等で多様性を活かせる職場環境づくりを推進しています。

 

 a. 健康経営の推進

当社グループでは、社員の心身が健康であることが第一と考えており、健康診断の追加健診補助制度や配偶者健康補助制度、メンタルヘルス研修、ストレスチェックにおけるアクションプランの作成とフォローの実施などにより、社員の健康の増進、働くことへの意欲や仕事への満足度を向上できる制度の拡充を進めます。

 b. 女性の活躍推進

当社グループでは、女性のキャリアに対する志向の多様化に対応するため、「グレード制度のステージ拡充」や「コース転換制度」を導入しています。

また、2023年9月には、女性の活躍促進に向けた採用拡大や職域拡大、WLB推進等の取組を行っている企業が認定される「あいち女性輝きカンパニー」に認定されました。今後、このような認定取得も含め、女性が活躍できる体制を拡充していきます。

 c. 育児・介護との両立支援

当社グループでは、育児では男女問わず「育児時短勤務制度」の利用を、また、介護支援では「介護休業」「介護休暇」の利用に加えて、状況によっては雇用形態の選択も可能とするなど、社員一人ひとりが仕事と子育てや介護を両立できる制度を整備しています。

 d. 働きがいの向上

当社グループでは、社員が能力を最大限に発揮し、会社を通して社会に貢献することが働きがいにつながると考えており、2024年2月には、現状把握を目的として、㈱働きがいのある会社研究所の「働きがいのある会社サーベイ」を実施しました。今後は、サーベイの結果も踏まえて、社員が働きがいを持てる環境の整備を推進していきます。

 

(3) リスク管理

    当社グループでは、気候変動や地震などの自然災害、労働災害、情報漏洩など、サステナビリティを含めた様々なリスクに対応するため、2006年に「リスク管理規程」を制定し、リスク分類に基づく評価をしています。また、リスクマップを作成し、リスク分類ごとに責任部門を定めて対応する体制を整えています。

    リスクマネジメントを円滑に進めるため「リスク管理委員会」を置き、代表取締役社長を委員長とし、当社グループのリスクを網羅的・総括的に管理しています。重要度の高いリスクについては対応策を決定し、リスクコントロールに努めるとともに、リスクマップを毎年見直し、新たに発生したリスクについても、速やかに担当部門を定めて対応します。部門ごとのリスク管理状況は内部監査室が監査し、その結果を定期的にリスク管理委員会と取締役会に報告し、改善策を審議・決定しています。

 

(4) 指標及び目標

 ① 気候変動

当社グループでは環境方針を定めて環境マネジメントシステム(EMS)を構築し、環境負荷低減に取り組んでいます。また当社親会社である㈱ダイセキによるグループ全体における温室効果ガス排出量の削減及びエネルギー使用量の削減については、①SOCPE1+SCOPE2を2027年度までに34%削減(2021年度比)、②SCOPE3を2027年度までに20%削減(2021年度比)、③2030年度までに再生可能エネルギー由来電力100%に切替の3つの方針を定めており、当社グループにおいてもその方針に沿った活動を進めてまいります。

CO₂排出量(SCOPE1・2・3)

区分

単位

2023年2月期

実績

SCOPE1

t-CO₂

2,169

SCOPE2

2,247

SCOPE3

36,898

合計

41,314

 

 

 ② 人財の育成及び社内環境整備

  当社グループでは下表のとおり、人的資本・多様性に関する目標を設定し、進捗管理を行っております。

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年2月までに13%

9.3%

男性労働者の育児休業取得率

2030年2月までに100%

80.0%

労働者の男女の賃金の差異

2030年2月までに65%

56.0%

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 法的規制リスク

当社グループの事業に係る主要な法的規制は以下のとおりであります。当社グループでは、コンプライアンス勉強会を定期的に実施するなど、法的規制の遵守を徹底しておりますが、これらの規制に抵触することがあった場合には、営業の停止命令や許可取消し等の行政処分を受ける可能性があります。

 

① 建設業関係法令

当社グループの土壌汚染処理事業は、原位置での処理の場合と、土壌を掘削し、掘削除去した土壌を処理する場合があり、原位置での処理と土壌の掘削については、土木工事に該当するため、「建設業法」の規制を受けます。

当社グループは、土木工事業等について「特定建設業」の許可を取得しておりますが、万一、「建設業法」に抵触し、当該営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。

 

② 産業廃棄物処理業関係法令

当社グループは、産業廃棄物の中間処理を主たる業としており、当該事業は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、「廃掃法」という。)及びその関連法令等の規制を受けます。基本法である「廃掃法」では、廃棄物の適正処理のための様々な規制があります。当該事業を実施するには、基本的に、各都道府県知事又は政令市長の許可が必要とされ、また、産業廃棄物の処理施設の新設・増設に関しても各都道府県知事又は政令市長の許可が必要となります。

当社グループは、「廃掃法」に基づいて、産業廃棄物の中間処理を行うために必要な許可を取得しておりますが、万一、「廃掃法」に抵触し、当該営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。

 

③ 土壌汚染調査関係法令

当社グループの土壌汚染調査事業は、工場跡地等の不動産の売買時や、同土地の再開発時等に汚染の有無を確認するための調査ですが、「土壌汚染対策法」で土壌汚染状況調査を義務付けられた区域の調査は、環境大臣による指定を受けた「指定調査機関」が調査を行うこととされております。

当社グループは、「指定調査機関」の指定を受けております。当社グループは過去において行政処分を受けた事実はありませんが、万一、「土壌汚染対策法」に抵触し、「指定調査機関」の指定を取り消された場合は、「土壌汚染対策法」で土壌汚染状況調査及び第16条第1項の調査(以下、「土壌汚染状況調査等」という。)を義務付けられた区域の調査を受注することができなくなるため、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。

 

④ 計量証明関係法令

当社グループの計量証明事業は、土壌中の有害物質の分析や、廃棄物の成分分析を主に行っており、当該事業は「計量法」の規制を受けます。当社グループは、「計量証明事業」の認定を受けております。当社グループは過去において行政処分を受けた事実はありませんが、万一、「計量法」に抵触し、「計量証明事業」の認定を取り消された場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。

 

⑤ PCB事業関係法令

当社グループのPCB事業は、微量PCB廃棄物の撤去処分に係る一連の業務を行っておりますが、当該事業は主として「PCB特別措置法」及び「廃掃法」の規制を受けます。万一、「PCB特別措置法」及び「廃掃法」に抵触し、当該事業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。

 

⑥ BDF事業関係法令

当社グループのBDF事業は、主にBDFの製造販売を行っておりますが、当該事業は主として「消防法」及び「廃掃法」の規制を受けます。当社グループは、「消防法」及び「廃掃法」に基づいて、BDFの製造販売を行うために必要な許可を取得しておりますが、万一、「消防法」及び「廃掃法」に抵触し、当該営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。

 

(2) 市場ニーズの変化

当社グループの営業収入のうち、重要な部分を占める土壌汚染調査・処理の需要は、企業の環境投資や「土壌汚染対策法」及び各地方自治体により施行される条例等の影響を受けます。

例えば、土壌汚染調査が必要な場合は、有害物質使用特定施設の使用が廃止された場合や、3,000㎡以上の土地の形質変更を届け出て都道府県知事等に汚染の恐れがあると判断された場合(土壌汚染対策法)等、法令や条例等により具体的に決められており、その際の調査方法、浄化対策等もそれぞれ法令や条例等で基準が設定されております。

今後、法令や条例等が新設又は改正される場合、その内容によっては、調査、処理の機会が増加し、調査方法、浄化対策等の基準もさらに厳しくなると考えられます。その結果、土壌汚染調査・処理の需要が拡大する可能性がありますが、法規制の強化に当社グループが対応できない場合は、拡大する需要を受注に結びつけられず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 競争の状況

土壌汚染調査・処理事業に参入している業者は増加しており、競争は激化しております。これは土壌汚染調査・処理事業の市場が、2003年2月に施行された「土壌汚染対策法」を契機に拡大した新しい市場であり、多くの業種からの新規参入者があったためです。当該事業には、地質調査会社(現地ボーリング調査)、計量証明事業者(土壌の有害物質分析)、建設業者(原位置浄化、掘削除去)、産業廃棄物処理業者(土壌処理)等の多くの業種が、それぞれの得意分野(( )内は各社の得意分野を示す。)を活かして参入しております。当社グループは、ある特定の得意分野だけではなく、調査計画を立案するコンサルティング業務から、現地調査、サンプリングした土壌の分析、汚染土壌の処理まで、幅広く自社で対応できる「土壌汚染対策のトータルソリューション企業」として、他社との差別化を図っておりますが、競合他社との受注競争が激化する中で、厳しい条件で受注する傾向が進みますと、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 売上計上時期が計画から遅れる可能性

土壌汚染調査・処理は多くの場合、工場閉鎖、土壌調査、工場解体、土壌処理、新しい建築物(マンション等)の建設という一連の工程の中で実施されます。したがって、何らかの事情で工場閉鎖時期が遅れる、又は解体工事の着工が遅れる等、当社グループに起因しない事情により、土壌汚染調査・処理の実施時期が遅れる場合があります。また、汚染の状況によっては、追加調査が必要な場合があります。このような場合は、調査期間が長引く若しくは土壌汚染処理の実施時期が遅れることもあるため、結果として売上計上時期が計画から遅れる可能性があります。

 

(5) 汚染の状況によって処理費用が変動する可能性

汚染土壌の処理費用は、事前に土壌のサンプルをもとに積算し、処理価格を決定しますが、実際の処理土壌が土壌のサンプルと状況が違う場合は、処理費用が変動する可能性があります。その場合は、顧客へ説明し、処理価格の変更を行いますが、例えばリサイクル処理か、それ以外の処理かによって利益率が異なるため、利益率の低い処理方法を選択せざるを得ない場合は、予定の利益を確保できない可能性があります。

 

(6) セメント工場での汚染土壌受入態勢に変化がある可能性

国内のセメント工場は、当社が汚染土壌を加工して生産したリサイクル原料を継続的に受入れる態勢をとっております。しかしながら、各工場では、設備の定期修理等で、半月から1ヶ月程度、セメント生産を全部又は一部停止する場合があります。その期間中は、原料の受入を中断、又は受入量を減らすため、汚染土壌の受入態勢に変化があります。停止時期は、各工場でまちまちであるため、当社グループは、全国規模で、受入先の工場を確保することでリスクを回避しており、他社との差別化を図っておりますが、万一、セメント工場の受入態勢の変化に対応できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) コストの不安定化

当社グループの主要コストは外注費や運賃であり、原油価格、需給バランス、為替、地政学リスク等の影響により、これらの価格が急激に変動することによって、高騰した原価を販売価格に十分に転嫁できない場合や、高騰した原価の販売価格への転嫁により当社グループのサービスに対する需要が減少する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) M&A等の実施による影響

当社グループは、将来に向けて持続的な成長を図るため、M&A(企業買収や資本提携)を通じた事業領域及び展開エリアの拡大を推進し、企業価値の向上を目指しております。しかしながら、M&A後における想定外の事象の発生や、市場動向の大きな変動等が原因で事業計画が当初計画通りに進捗しない場合、のれんの減損処理を行う必要が生じた場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 親会社との関係

ダイセキグループ内における当社の位置付けは「第1 企業の概況 3 事業の内容 [事業系統図]」に記載しておりますが、このダイセキグループの経営方針等に変更が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が発生する可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い、社会経済活動は一層の正常化に向かい、日経平均株価が史上最高値を更新するなど景気は緩やかに回復いたしました。一方で、インフレと金融引き締めによる影響や中国経済の先行き懸念が増し、国内では円安に伴う物価上昇が消費に影響を及ぼす等、国内外の景気の先行きは不透明な状況が続いております。

当社グループの属する建設業界におきましては、外部環境の回復基調を受けた民間設備投資の持ち直しや、堅調な公共投資により、建設投資全体は増加基調を維持しておりますが、継続した労働者不足や建設資材価格の高騰などの影響により、注視が必要な状況が続いております。

このような状況の中、土壌汚染調査・処理事業については、継続して高付加価値案件の受注やコンサルティング営業に注力したことにより、各エリアの大規模土壌処理案件が当社グループの業績に大きく貢献しました。また、資源リサイクル事業については、廃石膏ボードリサイクル事業が堅調に推移したことに加え、連結子会社化した株式会社杉本商事及びその子会社の業績が第2四半期連結会計期間より寄与しております。その結果、売上高24,150百万円(前年同期比47.1%増)、営業利益2,792百万円(同103.2%増)、経常利益2,818百万円(同99.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,781百万円(同145.8%増)となりました。

 

 セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。なお、当連結会計年度より、セグメントの名称と区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等) セグメント情報 4.報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。

 

[土壌汚染調査・処理事業]

中京エリアの工場再開発案件、関東エリアの大規模工場地中埋設廃棄物・汚染土壌撤去工事案件及び関西エリアの大規模工場廃棄物撤去コンサル案件等の高付加価値案件が当社グループ全体の売上及び利益を牽引する等、コンサル営業やグループ会社との連携により採算性が向上し、土壌汚染調査・処理事業の利益率の向上に寄与しました。その結果、売上高19,418百万円(前年同期比45.5%増)、営業利益2,732百万円(同97.1%増)となりました。

[資源リサイクル事業]

ポリ塩化ビフェニル(PCB)事業及びバイオディーゼル燃料(BDF)事業は、取扱量の減少及びコスト高の影響等により利益は悪化しましたが、株式会社グリーンアローズ中部及び株式会社グリーンアローズ九州の廃石膏ボード入荷量は底堅く推移し、また、第2四半期連結会計期間より株式会社杉本商事及びその子会社の業績が反映されたことにより、売上高4,961百万円(同48.1%増)、営業利益1,006百万円(同37.1%増)となりました。

 

財政状態については、以下のとおりであります。
(資産の部)

当連結会計年度末における流動資産の残高は7,930百万円(前連結会計年度末は5,094百万円)となり、2,835百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金及び受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことによるものであります。

固定資産の残高は19,421百万円(前連結会計年度末は16,860百万円)となり、2,561百万円増加しました。主な要因は、のれん及び顧客関連資産が増加したことによるものであります。

この結果、総資産は27,351百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,397百万円増加しました。

 

 

(負債の部)

当連結会計年度末における流動負債の残高は5,737百万円(前連結会計年度末は4,520百万円)となり、1,217百万円増加しました。主な要因は、短期借入金及び未払法人税等が増加したことによるものであります。

当連結会計年度末における固定負債の残高は3,939百万円(前連結会計年度末は1,488百万円)となり、2,450百万円増加しました。主な要因は、長期借入金及び繰延税金負債が増加したことによるものであります。

この結果、負債合計は9,677百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,668百万円増加しました。

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産は17,674百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,728百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益によるものであります。

この結果、自己資本比率は59.9%(前連結会計年度末67.8%)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローにつきましては、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて1,562百万円増加し、2,448百万円となりました。

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益、減価償却費、売上債権の増加額及び法人税等の支払額により、総額で3,225百万円の収入(前連結会計年度は1,118百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出により、総額で3,184百万円の支出(前連結会計年度は659百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、主に長期借入れによる収入及び長期借入金の返済による支出により、総額で1,521百万円の収入(前連結会計年度は217百万円の支出)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比(%)

土壌汚染調査・処理事業

(百万円)

19,508

146.4

資源リサイクル事業

(百万円)

4,655

153.8

合計

(百万円)

24,163

147.8

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

土壌汚染調査・処理事業

16,759

126.0

2,270

46.1

資源リサイクル事業

4,658

145.3

127

61.7

合計

21,417

129.8

2,397

46.7

 

(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比(%)

土壌汚染調査・処理事業

(百万円)

19,413

146.0

資源リサイクル事業

(百万円)

4,736

151.7

合計

(百万円)

24,150

147.1

 

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年3月1日

  至 2023年2月28日

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

  至 2024年2月29日

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社フィールド・

パートナーズ

1,713

10.4

大和ハウス工業株式会社

3,833

15.8

株式会社東芝

2,588

10.7

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析

当連結会計年度における経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

 

b.財政状態の分析

当連結会計年度末における財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社グループの運転資金需要は、土壌汚染調査・処理に係る外注費や労務費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、設備投資資金需要は、リサイクルセンター新設及び改修等に係る投資資金によるものであります。

運転資金や設備資金は、自己資金により調達することを基本とし、必要に応じてグループ会社及び銀行等の金融機関からの借入により調達していく考えであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、財政状態及び経営成績に影響を与える会計上の見積りを行う必要があります。当社はこの見積りを行うに当たり、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業の成長及び収益力の向上、並びに資産の効率的な運用の観点から、自己資本利益率(ROE)を、重要な経営指標と位置付け、ROEの改善及び向上を行うことを目標としております。

ROEは目標を10%以上としており、当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度と比較して6.4ポイント増加の11.3%となっております。

今後も引き続き、更なる企業価値向上のために、財務基盤を強化し事業投資に対する適正な評価と最適な資本構成を実現し、徹底した経営効率の改善により、資本効率をさらに高め、経営の安定性及び株主還元を重視して参ります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(取得による企業結合)

当社は、2023年3月31日開催の取締役会において、株式会社杉本商事の全株式を取得することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しました。当該株式譲渡契約に基づき、2023年4月5日に同社の全株式を取得しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。