第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営方針

当社グループは、企業理念として「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げております。「私たちは、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。」このような思いを企業活動の基本方針とし、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。

 

(2) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題

当社グループを取り巻く事業環境としましては、エネルギー価格の高騰や労働力の不足等を背景にした物価の上昇が継続している状況でありますが、当社はそれらに起因した電力や配送に関わるコストの上昇に対して、グループ全体で生産性向上に取り組み、また販売価格のマネジメントを推進する等の施策を積極的に行っております。

足元では、新型コロナウイルス感染症の収束に伴う景気の回復が見られる一方、地政学リスクやサプライチェーンの混乱などについては引き続き注視し、適切に対処してまいります。また、コロナ禍収束後の行動様式の変化、気候変動リスクに対応した産業界全体での脱炭素化への取組みの加速、デジタル化のさらなる進展なども想定され、中長期的視点に立った新たな事業機会の獲得やガバナンス体制整備にも対処していく必要があります。

以上のような環境認識のもと、当社では当期から2026年3月期までの4ヵ年を対象期間とする新中期経営計画「NS Vision 2026 - Enabling the Future」(以下「NS Vision 2026」という。)に基づいた事業運営を行っております。NS Vision 2026は、2020年10月の純粋持株会社体制移行後、はじめての中期経営計画であり、NS Vision 2026では財務KPI目標のみならず、非財務KPI目標を新たに定め、以下5点を重点戦略として設定いたしました。

 

① サステナビリティ経営の推進:当社は、当期より国連グローバルコンパクトのグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのワーキング活動に参加しております。引き続き、環境分野では、当社グループの事業活動で排出される温室効果ガス削減に努めるほか、顧客への環境貢献製商品、サービス拡充に注力してまいります。また、保安安全の確保、製品・サービスの品質向上、さらに社会から信頼される企業であり続けるための人権尊重の取組みや人材の多様性確保、コンプライアンス推進活動の充実と浸透に努めます。

 

② 脱炭素化社会に向けた新事業の探求:当社は、環境貢献製商品やソリューションの提供により、顧客の温室効果ガス排出削減に貢献いたします。当期は、ガラス溶解炉向けの酸素-水素バーナーや炭酸ガス回収装置等の自社の技術開発を促進するとともに、技術パートナーとの戦略的な関係構築に向けた出資等を行っております。さらに、昨年10月には、当社の取組みをまとめた専用のウェブサイトを立ち上げ、対外発信力のさらなる強化に努めております。

 

③ エレクトロニクス事業の拡大:地政学リスクの高まりによる半導体のサプライチェーン見直しの動きに対応するため、半導体材料ガス生産拠点の見直しと生産能力の拡充を行っております。また、旺盛な大規模半導体工場の新設の動きを受けて、高純度空気分離装置の製品化に向けた取組みを進めております。

 

④ オペレーショナル・エクセレンスの追求:当期においては、想定以上のコスト上昇圧力に見舞われましたが、その影響を緩和すべく、それぞれの業務の生産性向上を図ることによるコスト削減をグループ一丸となって強力に進めました。また、それら各事業会社の取組みを発表する活動を通じて、グループ内でのベストプラクティスの共有を図っております。

 

⑤ 新しい価値創出へとつながるDX戦略:各事業会社では、デジタルデータを活用した事業モデルの高度化の取組みに加えて、顧客満足度、生産性、従業員満足度を向上する取組みを推進しております。また、昨今急増しているフィッシング詐欺をはじめとする情報セキュリティリスクに対応できる体制の整備を進めております。

 

 

4極の産業ガス事業では上記5つの重点戦略に共通して取り組む一方、地域固有の経営課題にも取り組みます。

 

・日本:収益力の強化に向けた事業ポートフォリオの見直しとともに、エレクトロニクス向けを中心とした新規商品・サービスを強化してまいります。また、ガス利用を基点としたイノベーションを実現し、新たな事業領域の探索・拡大を目指してまいります。

・米国:生産拠点の整備やオンサイト事業拡大、ディストリビューターのM&Aによる事業密度向上を目指します。また、再生可能燃料を原料とする大規模水素製造プラントの建設等、環境関連に対する取組みも推進してまいります。

・欧州:食品、医療などのレジリエンス市場に注力するとともに、域内における環境関連でのビジネス機会獲得を目指しております。その一環として、当期は、欧州でのバイオメタン市場の拡大における戦略的パートナーへの出資を行いました。

・アジア・オセアニア:大型オンサイト案件の獲得や空気分離装置の能力増強、HyCO(※)案件の獲得、新商材や事業エリアの拡大に注力するとともに、各事業会社の収益力強化に向けて、生産性向上活動の浸透を図ってまいります。また、本年4月から、市場に一層密着した事業運営を目指し、東南アジア+インド事業、東アジアエレクトロニクス事業、東アジア産業ガス事業、オセアニア事業の4サブセグメント体制をスタートしました。

(※)天然ガス等から水蒸気改質装置(SMR)で分離される水素(H2)と一酸化炭素(CO)を石油精製・石油化学産業にパイプラインを通じて大規模供給する事業

 

また、当社グループ唯一のB to Cビジネスであるサーモス事業では、新商品を積極的に投入するとともに、機動的な広告宣伝並びに店頭プロモーションを実施することにより需要の底上げを目指します。また、販売チャネルの多角化を図るため、直営店拡大と電子商取引を拡大しております。

 

財務目標

 

実績

(2023年3月期)

NS Vision 2026最終年度目標

(2026年3月期)

売上収益

11,866億円

9,750~10,000億円

コア営業利益

1,231億円

1,250~1,350億円

EBITDAマージン(注1)

グループ:19.3%

各セグメント:12.1~25.7%

グループ:≧24%

各セグメント:≧17~33%

調整後ネットD/Eレシオ(注2)

0.81 倍

≦0.7 倍

ROCE after Tax(注3)

5.4%

≧6%

(注)1.EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)

コア営業利益に減価償却費及び償却費を加えて算出される利益です。国・地域により、金利水準、税率、減価償却費などに差異がありますが、この指標ではその差異を最小限に抑え、利益額を表示します。

   2.調整後ネットD/Eレシオ

財務の安全性を示す指標であり、(純有利子負債-資本性負債)/(親会社の所有者に帰属する持分+資本性負債)で算出する比率です。

資本性負債とは、格付機関により、ハイブリッドファイナンスで調達した金額(2,500億円)の50%を「資本」として認められている部分の当社内呼称です。

   3.ROCE after Tax (Return on Capital Employed after Tax:使用資本税引き後利益率)

[NOPAT: 税引き後コア営業利益(+受取配当金)]((コア営業利益-コア営業利益に含まれる持分法による投資損益)×(1-実効税率)+コア営業利益に含まれる持分法による投資損益+受取配当金)/[使用資本](有利子負債+親会社の所有者に帰属する持分)で算出する収益性指標です。

 

 

非財務目標

 

NS Vision 2026最終年度目標

(2026年3月期)

ご参考:長期目標

(2031年3月期)

GHG総排出量削減(注4)

18%

32%

GHG排出量に関する考え方

当社グループが販売する環境貢献製商品によるGHG削減量>当社グループGHG総排出量

休業度数率(連結)(注5)

≦1.6

女性従業員比率

≧22%

25%

女性管理職比率

≧18%

22%

コンプライアンス研修受講率

100%

(注)4.欧州事業買収が完了した2019年3月期の実績を補正し基準年度として該当年度の削減目標を設定しま

す。

   5.休業度数率

労働災害の発生頻度を表す指標であり休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間で算出します。

 

当社はグループ理念に「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げており、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現に貢献することを目標にしています。その実現の第一歩として、上記に掲げた課題に取り組んでまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、「革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。」というビジョンのもと、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを大切にし、サステナブルな成長及び企業価値のさらなる向上をめざしていきます。

 

(1)サステナビリティ全般

① ガバナンス

 当社グループは、取締役会の決議により、当社グループが社会から信頼され、持続的に発展していけるよう、サステナビリティに関わる各種方針を制定し、開示しています。代表取締役社長 CEOは、取締役会の決議にもとづき設置されたグローバル戦略検討会議・グローバルリスクマネジメント会議の議長を務め、これらの会議を通じて、各種方針に基づいたサステナビリティに関わる当社グループの具体的な対応を検討しています。

 

≪グローバル戦略検討会議≫

 グローバル戦略検討会議は原則年1回開催され、代表取締役社長 CEOを議長とし、執行役員、室長、監査役及び議長が指名する者で構成されています。当社グループの次年度予算の決議を行う前に、グローバル戦略検討会議にて、各事業会社の戦略について詳細を確認するとともに、当社グループ全体での最適な資源配分についての審議を行っています。また、当社グループの経営戦略の策定及び進捗管理を行います。中期経営計画を策定し、当該計画達成のため、定量的・定性的目標を設定し、四半期ごとにモニタリングを通じて業績管理を行います。グローバル戦略検討会議で決定された事項のうち技術リスクに関する事項については、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議などで具体的な対応策が決定され、グローバルに展開しています。

 

≪グローバルリスクマネジメント会議≫

 グローバルリスクマネジメント会議は原則年1回開催され、代表取締役社長 CEOを議長とし、取締役、監査役、グループCCO、執行役員、室長、各事業会社社長、及び地域リスクマネジメント推進担当者で構成され、当社グループの重要リスクの選定、対応に関する事項、全社的なリスクマネジメントの基本方針、規程及び計画に関する事項などについて審議を行います。グローバルリスクマネジメント会議の詳細については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (2)リスクマネジメントのプロセス」に記載しております。

 

≪サステナビリティ統括室≫

 当社グループでは、CSO(Chief Sustainability Officer)の統括の下、サステナビリティ活動を推進してきましたが、2021年11月に「サステナビリティ統括室」を設置し、戦略やリスクの審議・策定をはじめ、サステナビリティに関わる活動全般について推進しています。

 サステナビリティに関する取組みなどの活動については、取締役会で適宜、報告しております。

 当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制図は、以下のとおりです。

 

(図表1)サステナビリティに関する「ガバナンス体制図」

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② 戦略

 地球規模での環境問題やさまざまな社会課題の解決が求められる中で、企業活動においてもSDGsに代表されるようなサステナビリティへの取組みの重要性が増しています。このような状況の下、当社は2022年4月にスタートした中期経営計画「NS Vision 2026 - Enabling the Future」(以下「NS Vision 2026」という。)の策定にあたり、企業存立の前提となる人権の尊重、保安安全、企業倫理という3項目を含め、24項目の新たなマテリアリティ(重要課題)を特定しました。当社グループは、革新的なガスソリューションの提供により、人と社会と地球の心地よい未来の実現に向け、新しいマテリアリティを踏まえた取組みを推進していくことで、サステナブルな成長及び企業価値のさらなる向上をめざしていきます。

 当社グループのマテリアリティは、以下のとおりです。

 

(図表2)マテリアリティ

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③ リスク管理

 当社グループでは、当社グループ全体でリスク管理体制を構築し、サステナビリティ関連リスクを特定・評価し、マネジメントしています。具体的には、年1回開催するグローバル戦略検討会議及びグローバルリスクマネジメント会議において、サステナビリティ関連リスクの特定・評価を行い、サステナビリティ統括室が事務局を担当する、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議などで具体的な対応策が決定され、グローバルに展開しています。

 

 

会議体

リスクの特定・評価、マネジメントのプロセス

• グローバル戦略検討会議

• グローバルリスクマネジメント会議

• 技術リスク連絡会議

• 長期リスクの早期発見とその顕在化の防止、また顕在化したときに迅速な対応ができるよう、当社グループ各社でリスク管理体制を構築

• リスクの重要度は、発生頻度×財務又は戦略面への影響度により決定

• 年1回開催のグローバル戦略検討会議(議長:CEO)により、事業に関する財務又は戦略面での影響を決定

• グローバル戦略検討会議で決定された事項は、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議で具体的な対応策が決定され、グローバルに展開

 

④ 指標及び目標

 当社グループは、特定したマテリアリティに対して、当社グループ全体で取り組む8つの非財務プログラムを策定しました。「NS Vision 2026」において、これら8つのプログラムの推進による取組みの強化、充実を図っていくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。この取組みを進めるにあたり、非財務目標を設定し、各指標について毎年の進捗をモニタリングすることで、マテリアリティへの取組みを着実に推進してまいります。

 2023年3月期実績は、2023年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する「統合報告書2023」をご参照ください。

 

非財務目標

 

NS Vision 2026最終年度目標

(2026年3月期)

2022年3月期実績

GHG総排出量削減(注1)

18%

9%

GHG排出量に関する考え方

当社グループが販売する環境貢献製商品によるGHG削減量>当社グループGHG総排出量

6,865>5,921千t-CO2e

休業度数率(連結)(注2)

≦1.6

2.1

女性従業員比率

≧22%

20.5%

女性管理職比率

≧18%

14.8%

コンプライアンス研修受講率

100%

(注)1.欧州事業買収が完了した2019年3月期の実績を補正し基準年度として、該当年度の削減目標を設定します。

   2.休業度数率

     労働災害の発生頻度を表す指標であり、休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間で算出します。

 

(2)気候変動への対応とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への取組状況

 当社グループは、人と社会と地球の心地よい未来の実現に向け、環境負荷低減や省エネルギー活動の推進、GHG排出量削減に貢献する製商品の拡大に取り組んできました。そして、2019年11月にTCFDへの賛同を表明し、情報開示を進めてまいりました。今後も、新しいマテリアリティの一つである「気候変動の緩和と適応」を推進し、TCFDの提言に沿った情報開示を実施していきます。

 

〔TCFDに沿った情報開示〕

① ガバナンス

 気候変動への対応にかかわるガバナンスに関しては、「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループでは、気候変動の事業への影響を把握し、気候変動の機会・リスクに対する当社グループ戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。

 「移行シナリオ(2℃未満シナリオ)」、「物理的気候シナリオ(4℃シナリオ)」による短期(~2025年)・中期(2025~2030年)・長期(2030~2050年)の時間軸を考慮し、機会・リスクの洗い出しを行い、各リージョンでの主にガスビジネスにおけるこれらの機会・リスクに対して〔影響を受ける可能性〕×〔影響の大きさ〕の指標を基に評価を行いました。当社グループにとって財務的に大きなインパクトを与えるマイナスの影響をリスクととらえ、プラスの影響を機会ととらえています。

 「移行シナリオ」では、国際エネルギー機関(IEA)のSustainable Development Scenario(SDS)、「物理的気候シナリオ」では、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)による地球温暖化シナリオ(RCP8.5)を参考にし、インパクト分析を行いました。

 なお、シナリオ分析により特定した事業機会を獲得していくために、代表取締役社長 CEOを議長としたカーボンニュートラルステアリングコミッティを組織し、グローバルメンバーで構成されたカーボンニュートラルエグゼクティブチームのもと、各事業会社がカーボンニュートラル社会の実現に向けた取組みを推進しています。

 当社グループの機会・リスクを整理し、調達、操業、製品・サービスにおいて考えられるインパクトを分析、統合化した結果は「図表3 TCFDシナリオ分析」のとおりです。

 

(図表3)TCFDシナリオ分析

タイプ

気候変動
リスク項目

評価

事業リスク

事業機会

当社の対応

移行

政策規制

カーボンプライシング制導入

〈中長期〉

・税負担の増加による収益減少

〈中長期〉

・早期対応の差別化による事業機会獲得

・PPAやグリーン電力証書による再生可能エネルギーの導入拡大

技術

低炭素な代替製品への置換・省エネの進展

〈中長期〉

・低炭素製品選別による既存商材の売上減少

〈短中期〉

・省エネによる収益幅増大

・低炭素化に資する既存製品の需要拡大

〈中長期〉

・低炭素化に寄与する環境貢献商材の事業機会拡大

・環境貢献商材の開発促進

・DX技術の導入などの生産性改善による省エネルギー化促進(SAITEKI導入、 配送最適化)

市場

市場ニーズの変化

顧客の事業活動の変化

〈長期〉

・既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少

・水電解プロセスの需要拡大に伴う副生O2ガスを活用した新規参入による売上減少

〈中長期〉

・ブルー/グリーンH2需要の拡大

・グリーン燃料の需要拡大

・CCUSに向けたCO2回収需要の拡大

・カーボンフリー(H2、 NH3)燃焼技術の導入推進/拡大

・酸素燃焼の利用拡大

・CCUSに対応した中規模CO2回収需要の獲得

・HyCO事業によるH2供給事業の拡大

・環境貢献商材の拡販

評判

業界批判

〈中長期〉

・GHG排出企業への投資家評価低下

〈中長期〉

・GHG削減貢献を示すことで安定した資金調達の継続

統合報告書などによるGHG削減貢献の定量データの開示

・非財務情報の開示促進

物理

急性

災害の激甚化

台風頻発

豪雨・干ばつ

〈中長期〉

・異常気象に伴う災害による工場の操業停止

・支払保険料の増加

・災害対策の推進

・保険の活用

慢性

海面上昇

平均気温の上昇

〈長期〉

・気温上昇に伴う空気分離装置のランニングコスト増による収益幅縮小

〈中長期〉

・疾病治療に対する医療製品の需要拡大

・老朽化の進んだ空気分離装置のリプレースによるランニングコスト低減

・医療用酸素などの提供

 

③ リスク管理

 気候変動への対応にかかわるリスク管理に関しては、「(1)サステナビリティ全般 ③ リスク管理」をご参照ください。

 

 

④ 指標及び目標

 当社グループは、カーボンニュートラル社会の実現を目指し、2050年までに当社グループのGHG総排出量の実質ゼロに取り組んでいます。「NS Vision 2026」では、2019年3月期を基準値とした当社グループのGHG総排出量削減目標を設定し、カーボンニュートラル社会への移行を推進しています。

 2023年3月期実績は、2023年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する「統合報告書2023」をご参照ください。

 

 

Scope1・2

単位

2019年3月期

(基準年)

2022年3月期

(実績)

2026年3月期

(目標)

2031年3月期

(目標)

GHG総排出量実績

千t-CO2e

6,511(注)

5,921

GHG量削減率

(基準年対比)

△9

△18

△32

Scope1:事業者が所有又は管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出

Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出

(注)基準値である2019年3月期のGHG排出量は、統合報告書での報告済みGHG総排出量実績に、2019年3月期において連結非対象であった①欧州ガス事業、及び②米国HyCO事業の2019年3月期実績を推計加算。

 

 また、当社グループでは、2026年3月期までに当社グループが排出するGHG排出量を上回るGHG削減貢献量を計上する目標に取り組んでいます。

〔目標〕(環境貢献製商品(※)によるGHG削減貢献量)>(当社グループのGHG総排出量実績)

(※)SF6回収サービス、燃焼式排ガス処理装置、SCOPE-Jet、エムジーシールド、レーザー加工用窒素ガス供給システム(PSA)、サーモスシャトルシェフ、水素ステーション、新冷媒、高炉/電炉の酸素富化燃焼、Ar溶接

 

 集計範囲:日本、欧州、アジア・オセアニアの連結子会社のほか、一部の関連会社
「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン(経済産業省2018年3月)」等に基づいて算定。

 

単位

2022年3月期

(実績)

GHG総排出量実績

千t-CO2e

5,921

GHG削減貢献量実績

千t-CO2e

6,865

 

(3)人的資本に関する開示

 当社グループの事業は、世界各地で活躍する約2万人の社員一人ひとりの能力発揮により営まれています。世界4極で展開する産業ガス事業グループ各社とサーモスグループに企業理念とグループビジョンのさらなる浸透を図り、グローバルで共通の価値観を持った人財を育成していくことで、当社グループのさらなる発展と「NS Vision 2026」の実現を目指しています。

 

① 基本的な価値観

 当社グループは、2021年2月に当社グループすべてに適用される「人権の尊重と地域社会への貢献並びに雇用・労働・健康に関するグローバル方針」を制定しました。当社グループでは、すべてのグループ役員・従業員が本方針並びにグループ行動規範の下で、人権の尊重や適切な労働環境の整備などに関与し、企業の社会的な責任を果たす意識を土台に持った上で事業活動による社会への貢献に取り組むよう、社内研修等の機会を通して意識付けを行っています。

 また、当社グループはグループ理念タグラインとして「The Gas Professionals」を掲げています。社会や地球に貢献したいという使命感を持つ人財を育成する際に大切にしている資質が「体・徳・知」です。これは当社の前身、旧大陽日酸㈱の時代から脈々と受け継がれてきたものでサーモス事業にも共通する価値観です。グローバルに同じ事業を展開するグループ会社においても、「体・徳・知」のエッセンスを踏まえて各社独自の価値観を加味するなど理解しやすい形で共有されています。

 

 

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② 持続的成長のための人財育成戦略

 「NS Vision 2026」では、5つの重点戦略の一つであるサステナビリティ経営の推進における施策の一つとして、持続的成長のための以下3点の人財育成戦略を当社グループ全体で取り組む人財戦略として掲げて推進しています。

 

1. 多様な人財の受入れ及び働きやすさの確保

 変化の激しい事業環境や労働市場等に対応し、「NS Vision 2026」で掲げた5つの重点戦略やセグメント別戦略等を実現していくためには、性別や国籍に関係なく、また様々な経験を持つキャリア採用者など多様な人財の確保とその能力を十分に発揮できるよう働きやすい環境の整備が必要です。

 多様な人財の受入れのうち、女性活躍については、主に勤務形態を含む職場・就業環境に起因する要因から日本を含む一部の地域で取組みが遅れていることを踏まえ、「NS Vision 2026」の最終年度(2026年3月期)の当社グループ全体の定量的な目標値を定めて取組み(※)を進めています。

 

2022年3月期

(実績)

2026年3月期

(目標)

当社グループ女性従業員比率

20.5%

22%以上

当社グループ女性管理職比率

14.8%

18%以上

(※)取組み具体例

 相対的に女性活躍が進んでいる欧州では、2021年から将来的に経営幹部の役割を担う意欲のある女性管理職の社内認知度向上や能力開発を支援するメンターシッププログラムを開始するとともに、女性間の社内ネットワーク活動を推奨・支援する取組み等を推進しています。

 一方、取組みが遅れている日本では、女性がそれぞれの価値観や職業観、ライフスタイルに基づいたキャリア形成を実現できる風土の醸成を目指しており、大陽日酸㈱では2022年10月に女性活躍推進プロジェクトを設立し、具体的な施策の検討を現在進めています。

 

 また、あらゆる人財が能力を十分に発揮できる働きやすい環境であるか、企業理念やグループビジョンは浸透しているかなど、当社グループ従業員と会社との間のエンゲージメントの強さを測定する手段として、2022年11~12月にグループエンゲージメント調査を初めて実施しました。調査によって当社グループ全体及びグループ各社別に集計されて、現状のエンゲージメントレベルや他社と比較した強みや改善領域を今回「社員の声」として定量的に把握することができました。本調査は今後定期的に実施していく計画であり、他社や時系列等での比較・分析に基づいて改善アクションを継続的に実施していくことで、エンゲージメントレベルのさらなる向上に繋げてまいります。

 

 

2. 地域を超えた人財交流の促進

 イノベーションを生み、仕事の生産性を向上させるためには、人財交流は非常に有効な手段といえます。消費地立地のビジネスモデルである産業ガス事業では、長い間それぞれの国・地域で続けてきた仕事のやり方をより良い方向に転換していくためには、異なる価値観や経験を持った人が互いに意見を出し合い、新たな気付きを持つことが必要です。当社グループでは、すでに各事業会社の優れた取組みを他の国・地域の事業会社へ共有して生産性向上によるグループ総合力強化に大きな成果を出しています。

 また、当社グループ全体で取り組むべき共通の課題への対応には、事業会社の枠を超えて、それぞれの分野で専門的な知見や経験を持つ世界中の優秀な人財が集まって施策に繋げることができるように、ネットワークや組織を構築することが有効です。当社グループでは、すでにグローバルITセキュリティ分野やカーボンニュートラル等のプロジェクトにおいてこのような体制を組んでいます。

 さらに、地域を超えた人財交流はこのような事業面の効果のみならず、当社グループを将来牽引していくべきグローバル人財に必要なコミュニケーション力・主体性・積極性・異文化理解等のスキルやマインドを会得・醸成する機会としても非常に有効であると認識しており、あらゆる形態で人財交流を積極的に推進してまいります。

 

3. 後継者育成計画の強化

 当社グループのガバナンス体制において、次世代経営者の育成は重要な課題であると認識しています。現在、指名・報酬諮問委員会で次世代経営者の育成計画について議論を重ねており、当社グループに必要となる次世代経営者の資質や育成計画について検討しています。当社グループはグローバルに事業を展開しており、日本だけではなく海外においても経験を有し、事業に精通している人財を育成していく必要があることから、当社グループ各社の育成計画とも連携させて次世代経営者の育成に取り組んでいきます。

 

③ 人財育成戦略を実現するための体制

 上記グループ全体で取り組む人財戦略を推進するため、グローバル戦略検討会議等においてグループ会社に施策を共有して理解を得ながら一体となって取組みを進めていきます。

 また、世界各地に展開するグループ会社は、展開する国・地域ごとの労働関係法規や文化・慣習に沿ってそれぞれが直面しているさまざまな人事課題に対応しながら、各社の人事施策に関する先進事例や取組みをグループ内で共有する機会を通してグループ総合力の強化に貢献をしております。

 

3【事業等のリスク】

(1)当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループは、2020年10月の純粋持株会社体制への移行を機に、よりグローバルな視点に基づく、全社的なリスクマネジメント体制を構築いたしました。当社グループでは、リスクを経営的、中長期的な視点で評価し、グループにおける役割と責任を明確化し、リスクマネジメント活動の最適化を図ってまいります。

代表取締役社長 CEOは、「グローバルリスクマネジメント統括責任者」として、全社的なリスクマネジメント体制の整備・運用に関する最終的な責任を担います。また、各事業会社社長等は「地域リスクマネジメント統括責任者」として、所管する地域のリスクマネジメント体制の整備・運用に関する責任を担います。地域リスクマネジメント統括責任者のもとには、「地域リスクマネジメント推進担当者」をおき、各地域のリスクマネジメントを推進いたします。

全社的なリスクマネジメント体制のもと、リスクに対するマネジメントの実効性を高め、リスク低減に向けた活動を推進してまいります。当社グループのリスクマネジメントの体制図は、図表1をご参照ください。

 

(図表1)当社グループのリスクマネジメント体制図

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(2)リスクマネジメントのプロセス

当社グループでは、事業を取り巻く外部環境・内部環境の変化をリスクと機会の両面から特定・評価します。リスク評価にあたっては、様々な国・地域・領域で事業を展開する事業会社のリスクと、持株会社としての当社のリスクをグループ共通の枠組み(リスクカテゴリ、リスク定義、リスク評価基準)で評価します。

グループ全体のリスク評価結果に基づき、「グローバルリスクマネジメント会議」にて、リスク認識、リスク対応を共有し、当社グループの重要リスクを選定します。経営トップの判断のもと、リスクの優先順位、対応方針を定め、重要リスク低減に向けた活動をグループ全体で推進してまいります。

リスクマネジメントプロセスは、「当社及び事業会社におけるリスクマネジメントプロセス」と、当社グループとして特に優先して組織的な対応が必要である「重要リスクに関するリスクマネジメントプロセス」があり、いずれもリスクの特定、リスクの評価、リスク対応方針の決定、リスク対応策の決定、リスクへの対応、モニタリング・見直しで構成されます。

また、事業環境の変化が著しい昨今は、変化に応じたリスク対応の強化・見直しが必要となります。当社グループでは、各事業会社とグローバルリスクマネジメント推進事務局が「リスクマネジメント連絡会」を定期的に開催し、事業環境の変化や、それに応じたリスク対応の強化・見直し等のモニタリングを実施し、リスク情報とベストプラクティスの共有を図っております。

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(3)グローバルリスクマネジメント会議

当社グループは「グローバルリスクマネジメント会議」を年1回開催します。グローバルリスクマネジメント会議は、当社代表取締役社長 CEOを議長とし、取締役、監査役、グループCCO、執行役員、室長、各事業会社社長、及び地域リスクマネジメント推進担当者が出席し、当社グループの重要リスクの選定、対応に関する事項、全社的なリスクマネジメントの基本方針、規程、及び計画に関する事項等について審議を行います。また、同時期に開催される「グローバル戦略検討会議」とも連携し、経営陣がグループ全体の事業戦略をリスクと機会の両面から捉えることを目指します。

当社グループの重要リスクの選定にあたっては、グループ共通のリスク評価基準である「発生頻度」(5段階)「影響度」(5段階)とともに、以下図表2の考え方を踏まえて検討します。

 

(図表2)当社グループの重要リスク選定の考え方

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2022年度のグローバルリスクマネジメント会議では、昨年度の重要リスクテーマ、そしてこの1年間の環境変化を踏まえ、以下を当社グループの重要リスクテーマとして選定し、活発な議論がなされました。

 

1.外部環境・内部環境の変化

  地政学リスク、サプライチェーン、エネルギー・電力、カーボンニュートラル

2.基盤事業の維持・強化

  設備老朽化、ガバナンス・コンプライアンス・腐敗防止

3.上記を支える人材の確保・育成

  人材不足、ダイバーシティ、後継者計画

 

また、重要リスクテーマごとに、各事業会社、NSHD各室におけるリスク認識、リスク対応策を比較し、共有しました。それぞれの事業環境により、リスク認識、リスク対応策は異なりますが、その背景と違いを理解し、リスクを多面的に捉えることにより、当社グループにおけるリスクマネジメント活動の更なる向上に繋げてまいります。

また、この1年間で急速に顕在化し、深刻さを増している「地政学リスク」等についても、会議出席者で議論し、経営トップの方針のもと、当社グループ全体としてリスク対応を推進していくことを確認いたしました。

 

今後も当社と各事業会社が連携しながら、重要リスクテーマの対応状況の確認や、リスク低減に向けた取組みを進めてまいります。上記を踏まえた当社グループの「事業等のリスク」は以下のとおりです。

 

(4)事業等のリスク

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

 (1) 経営戦略・事業に関するもの

① グローバル事業展開について

当社グループは、現在、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極で、グローバルに事業を展開しております。各国における事業運営は、これらの国・地域における市場動向、政治、経済、慣習、宗教、テロ、紛争、大規模災害その他の要因によって、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は各地域を統括する事業会社との意思疎通と情報共有を進め、迅速な意思決定に努めております。

 

② 設備投資について

当社グループは、各国に工業ガスの製造拠点を有しており、大口顧客向けには、顧客の敷地・隣接地に空気分離装置等を設置し、パイピングによるガス供給(オンサイトプラント方式)を行っております。また、新たな分野を含め、今後ともビジネスチャンスの獲得に向けた投資を進めてまいりますが、産業構造、及び需要動向の変化による鉄鋼、化学、石油精製、半導体、自動車等、主力顧客の操業率の低下や、生産拠点の統廃合や移転などにより、当社グループの製造設備の稼働率が低下し、或いは設備の全部又は一部が不要になり、かつ、契約による補償でカバーできない場合には、設備の除却損等の発生により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 製造コストについて

主力の酸素、窒素、アルゴンの製造コストのうち大きな割合を占める電力コストは、原油やLNG価格の世界的な高騰を受けて大幅に上昇しており、主力製品の製造コストは大幅な上昇を余儀なくされております。それに対し、販売価格への転嫁を実施しておりますが、製造コストの上昇が継続し、転嫁が充分に行えない場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、各国の電力エネルギー市場は、電源構成の大幅な変動による大きな影響を受け、製造コストへの影響は予測が困難であり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ サプライチェーンについて

当社グループが取り扱う産業ガス製品には、各種成分を混合させて製造する半導体特殊材料ガスや、産出される天然ガス田の大半を北米や中東が占めるヘリウムガスなど、グローバルなサプライチェーンが不可欠な製品があります。これらの製品は、生産状況の変動や生産国における地政学リスクの高まりによって、また近年の世界的なコンテナ不足や海上輸送状況の変動によって、お客様への安定供給に支障が生じるリスクがあり、支障が生じた場合、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 情報セキュリティについて

当社グループは、営業・技術に関する重要情報、顧客情報その他関係者の個人情報等を保有しております。

これら重要情報・個人情報を含む業務上の情報は、サイバーセキュリティ対策や、事業拠点の防犯・盗難対策の推進を通じて、情報漏洩のリスク低減に努めております。また、情報セキュリティに関する規程・基準類の整備、情報管理に関する責任者・担当者の配置、社員への継続的な教育等を通じて管理体制の強化を図っております。

さらに、サイバー攻撃対策への重要性の高まりに鑑み、サイバーセキュリティリスクの管理を目的として、2021年10月に「グローバル情報セキュリティ評議会」を設置しております。

しかしながら、不測の事態により情報漏洩が起きた場合や、サイバー攻撃により被害を受けた場合は、企業価値の毀損、社会的信用の失墜、流出の影響を受けた顧客その他関係者への補償、市場競争力の低下等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 気候変動について

地球温暖化等環境課題に関する取組みや気候変動等のリスクを開示する要請が高まっています。当社グループは、全社的に環境マネジメントを推進し、2019年11月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」賛同を表明しました。TCFD推奨事項に沿った開示を拡充していくことで、気候変動等に関するリスク及び機会の分析を進めております。

例えば、炭素税や排出権取引に代表される温室効果ガス排出にかかわる規制及び制度が導入された場合、間接的な温室効果ガス排出量が多い事業における税負担により利益が減少する可能性があります。また、環境負荷低減にかかわる商材への切り替えや、鉄鋼・化学セクターによる低環境負荷な製造プロセスへの変更は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

気候変動に関する当社の取組みについては、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」にて、詳細に記載しております。

 

⑦ 法規制等について

当社グループは、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアにおいて事業を展開しておりますが、各国において予想外の法規制の変更、法律・規則の制定や行政指導があった場合、対応コストの発生により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、国内外において環境に配慮した事業活動を行っておりますが、環境関連法規の改定によって規制強化が図られた場合には、対応コストの増大により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは各国において輸出を規制する法律・規則の対象となる製品・サービスの輸出を行っております。国際情勢の変化により各国の輸出規制が強化された場合には、特定の国もしくは企業への製品・サービスの輸出が減少する可能性があります。この場合には輸出の減少により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、国際情勢の変化により、当社グループが製品を輸入している特定の国もしくは企業が各国の法律により制裁対象となることがあります。その場合には当該製品の輸入を行うことができず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは、国内外において事業を遂行する上で、産業ガス事業を規制する法律・規則だけでなく、競争法や環境保護又は輸出規制等に関する法規を担当する規制当局による調査を受けるリスクを有しており、調査の結果、罰金の支払命令、事業の停止命令、許認可の取消等の当社グループに不利益な決定がなされた場合、当社グループの事業展開、経営成績、財政状態及び信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 人財確保について

当社グループは現在、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極で、グローバルに事業を展開しております。各地域の事業運営には安定的に労働力を確保することが不可欠であり、目標達成には、生産、エンジニアリング、マーケティング、販売、物流、管理等の各機能や経営全般を担う有能な人財が必要です。また、事業運営を行う上で、関連法規で要求される資格や技能を有した人財の確保が必要となります。さらに、グループ全体の経営や戦略的施策の推進、並びにグループ総合力の強化の取組みを促進するためにはグローバルで活躍できる人財が必要です。雇用情勢や労働需給の変化により、こうした人財の確保が計画どおりに進まない場合は、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 技術開発について

当社グループは、積極的な技術開発活動を行い、今後の事業拡大を目指しておりますが、新製品・新技術の開発にはリスクが伴います。例えば、商品化や事業化までに長い期間を要するような場合、関連市場の状況の大きな変化により、市場投入のタイミングを逸してしまう可能性や、他社の新技術・新製品、代替製品により当社グループ製品の競争力が低下する可能性があります。また、産学官協同や企業間による共同開発では、連携がうまく進展しない場合には、期待していた成果が得られない可能性があります。

 

 (2) 技術・保安に関するもの

当社グループは、保安、環境、品質・製品安全、知的財産に係るリスクを技術リスクとして定義し、年1回開催する「グローバル戦略検討会議」の中で、各事業会社の取組み状況を確認し、持株会社としての取組み方針を決定しています。また、当社と各事業会社の保安、環境、品質保証、知的財産の責任者を委員とする「技術リスク連絡会議」を年2回開催し、会議の決定事項に取り組み、技術リスクの低減に努めています。

 

① 保安について

当社グループは、高圧ガスの製造・販売等を行っており、これらの製品については、高圧力や極低温による危険性のほか、液晶や半導体関連向け製品等の毒性・可燃性を有するガスも含まれております。これら製品の製造・供給については、取り扱う従業員に対して階層別の教育や、応募型の教育を行っています。特に、安全文化の醸成への取組みとして、テクニカルアカデミーでの危険体感講習により、設備事故だけではなく労働災害事故の撲滅を目指した教育を徹底しています。特に、休業労災につながりやすいベテラン向けや、アジア・オセアニア地域の海外現地法人向けにも拡充し、保安の確保に万全を期しています。万が一、漏洩・発火・爆発等で人身や設備に多大な損害が生じた場合には、操業停止などにより当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 環境について

当社グループの事業は、大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理など、事業展開する各国の環境規制に従って、業務を遂行しております。当社グループが現在及び将来の環境規制を遵守できなかった場合や当社グループが責任を負う汚染が発見された場合、罰金、汚染物質の除去費用又は損害賠償を含む費用や、施設及び設備を改良する投資が必要となる可能性があります。また、将来的に環境に対する法規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。

 

③ 品質・製品安全について

当社グループは、高圧ガス及び関連する機器類の製造・販売等の事業を行っており、これらの製品については、法令やお客様の要求事項を確実に満たすために品質管理を実施し、また、販売開始前に安全審査を行い、製品に起因するリスクを適切に管理しております。製品に万が一欠陥や品質不良、故障が生じた場合には、お客様からの信頼の低下や損害賠償の負担などにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 知的財産について

当社グループは、知的財産を企業の競争力を高めるための経営資源と位置づけており、必要な知的財産権の取得及び保護を推進しておりますが、第三者が当社グループの知的財産権を侵害して不正に使用する可能性があります。また、当社グループが事業展開している分野については、第三者の知的財産権を常に調査監視して、第三者の知的財産権に対する侵害予防に努めております。第三者の有効な知的財産権は、代替技術の開発又は技術的な回避策を講じることにより使用しない、当該第三者から使用する権利を得るなどの対策をとることで、これまで当社グループが第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟を提起された例は非常に少ない状況にあります。しかしながら、訴訟を提起された場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 財務に関するもの

① 為替レートの変動について

当社グループは、特殊ガス、機器・装置関連で原材料等の海外からの調達や製品の輸出を行っております。当該取引に関連しては、外貨建てで行っている取引があることから、為替予約などにより為替レートの変動リスク回避に努めておりますが、急激な為替の変動に対処できない場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、在外連結子会社の外貨建財務諸表金額は、連結財務諸表作成過程において円換算されるため、為替レートが予想を超えて大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 金利の変動について

当社グループは、事業戦略に基づき設備投資、M&Aを実施し、その資金を主に金融機関からの借入や社債によって調達しております。当社グループは主に固定金利による借入を行っておりますが、2019年3月期に実施した米国Praxair, Inc.の欧州事業の買収のための調達は、大部分を変動金利による借入もしくは一定年数後に固定金利から変動金利に変更されるハイブリッドファイナンスで行っており、今後の金利変動によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 三菱ケミカルグループ㈱との資本関係について

三菱ケミカルグループ㈱は当社発行済株式数の50.59%の株式を所有しております。また、同社は、2014年5月13日付けで締結いたしました資本業務提携関係のさらなる強化及び企業価値の向上を目的とした基本合意書の中で、当社に対する持株比率の維持について合意しており、現状において持株比率を増減させる方針はないと認識しております。

しかしながら、今後、同社グループとの資本関係に変更が生じた場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ のれん及び無形資産について

当社グループは、企業買収等に伴い、のれん及び無形資産(以下、「のれん等」という。)を連結財政状態計算書に計上しております。当社グループが将来新たに企業買収等を行うことにより、新たなのれん等を計上する可能性があります。当社グループは、のれん及び耐用年数の確定できない無形資産について毎期減損テストを実施し評価しております。経済の著しい悪化等により対象事業の成長率が大幅に低下した場合や、市場利率等の上昇により処分コスト控除後の公正価値及び使用価値の計算に用いられている割引率が大きく上昇した場合などには、回収可能価額が著しく減少して減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他

大規模自然災害、感染症等について

大規模自然災害が発生した場合、当社グループの事業拠点が甚大な被害を受ける可能性があります。大規模な各種自然災害によって大型の製造拠点が被災した場合、労働力や生産機能の大幅な低下、巨額の復旧費用等の発生は避けられず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、予期せぬ事態や複合的災害、感染症などが発生した場合は、当社グループの事業活動、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらの緊急事態発生に備え、当社グループでは、平時において事業継続計画(BCP)に必要となる発災直後の迅速な情報収集体制を整え、役職員の人命と安全を守る活動と、中核となる事業の継続や早期復旧に必要な取組みを進めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

① 業績全般

 当連結会計年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)における当社グループの事業環境は、ウクライナの地政学的問題、米中貿易摩擦、世界的なエネルギーコストの高騰や物価上昇、円安の進行など、先行きを見通すことが困難な状況でした。この結果、主力製品であるセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は、前期比で減少しました。一方で、コスト増加分の販売価格への転嫁等の価格マネジメント、さまざまな生産性向上への取組みに、グループ全体で注力しました。

 このような状況の下、当連結会計年度における業績は、売上収益1兆1,866億83百万円(前連結会計年度比 24.0%増加)、コア営業利益1,231億24百万円(同 19.9%増加)、営業利益1,195億24百万円(同 18.1%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益730億80百万円(同 14.0%増加)となりました。

 為替の影響については、期中平均レートが前連結会計年度に比べ、米ドルで113円4銭から136円0銭へと22円96銭(同 20.3%円安)、ユーロで131円11銭から141円62銭へと10円51銭(同 8.0%円安)、豪ドルで83円33銭から92円67銭へと9円34銭(同 11.2%円安)となるなど、売上収益は全体で約796億円、コア営業利益は全体で約99億円多く表示されています。

 なお、コア営業利益は営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

売上収益

957,169

1,186,683

229,514

24.0

コア営業利益

102,710

123,124

20,413

19.9

  非経常項目

△1,526

△3,599

△2,073

営業利益

101,183

119,524

18,340

18.1

  金融収益

2,192

2,182

△10

  金融費用

△11,765

△16,203

△4,438

税引前利益

91,611

105,503

13,891

15.2

  法人所得税

△24,973

△29,538

△4,564

当期利益

66,637

75,965

9,327

14.0

 親会社の所有者に帰属する当期利益

64,103

73,080

8,977

14.0

 非支配持分に帰属する当期利益

2,534

2,884

349

 

② セグメント業績

 セグメント業績は、次のとおりです。

 なお、当連結会計年度より、従来、「日本ガス事業」「米国ガス事業」「欧州ガス事業」「アジア・オセアニアガス事業」「サーモス事業」としていた報告セグメントの名称を、「日本」「米国」「欧州」「アジア・オセアニア」「サーモス」に変更しておりますが、セグメント情報に与える影響はありません。

 また、セグメント利益はコア営業利益で表示しております。

 

〔日本〕

 産業ガス関連の売上収益は、主力製品であるセパレートガス及びLPガスにおいて出荷数量は減少したものの、コスト上昇に伴う販売価格の上昇により増収となりました。また、エレクトロニクス関連での電子材料ガスの販売は好調で増収となりました。機器・工事では、産業ガス関連、エレクトロニクス関連共に、前期に比べ増収となりました。一方で、エネルギー価格や物価上昇の影響に伴う製造コスト及び物流費等の上昇が続いており、販売価格の上昇との間に時間差があることからセグメント利益を押し下げる要因となりました。

 以上の結果、日本セグメントの売上収益は、4,204億52百万円(前連結会計年度比 13.0%増加)、セグメント利益は、316億80百万円(同 2.4%増加)となりました。

 

〔米国〕

 産業ガス関連では、主力製品であるセパレートガスの出荷数量は前期並みでしたが、売上収益はコスト上昇に伴う販売価格の上昇により増収となりました。また、炭酸ガスの販売が好調でした。機器・工事では、溶接・溶断関連機材で前期に比べ大幅に増収となりました。一方で、エレクトロニクス関連は減収でした。

 以上の結果、米国セグメントの売上収益は、3,030億90百万円(前連結会計年度比 34.8%増加)、セグメント利益は、370億74百万円(同 35.7%増加)となりました。なお、円安の影響で売上収益及びセグメント利益は多く表示されています。

 

〔欧州〕

 主力製品であるセパレートガスは、顧客の稼働状況により出荷数量が減少しましたが、エネルギー価格と物価上昇の影響等による大幅なコスト上昇を販売価格の上昇で吸収できた結果、売上収益は大幅な増収となりました。また、生産性向上とコスト低減の取組みによる寄与がありました。

 以上の結果、欧州セグメントの売上収益は、2,728億88百万円(前連結会計年度比 30.1%増加)、セグメント利益は、349億4百万円(同 32.7%増加)となりました。なお、円安の影響で売上収益及びセグメント利益は多く表示されています。

 

〔アジア・オセアニア〕

 産業ガス関連では、主力製品であるセパレートガスの出荷数量は堅調に推移し、売上収益は増収となりました。主に豪州地域での販売が多くを占めるLPガスでは、引き続き仕入れ価格の上昇による販売単価の上昇と堅調な販売数量の推移により増収となりました。エレクトロニクス関連では、ガス・機器ともに好調に推移し、増収となりました。

 以上の結果、アジア・オセアニアセグメントの売上収益は、1,599億65百万円(前連結会計年度比 29.5%増加)、セグメント利益は、154億65百万円(同 20.5%増加)となりました。なお、円安の影響で売上収益及びセグメント利益は多く表示されています。

 

〔サーモス〕

 日本では、2022年春に政府による外出等の制限が緩和されたことから、ケータイマグやスポーツボトルの販売は増加し、加えてフライパンなどの調理用品も好調に推移し、売上収益は大幅な増収となりました。海外での販売も順調でした。セグメント利益は、物価上昇による原材料価格の上昇と円安による製造コストの増加で減益となりました。

 以上の結果、サーモスセグメントの売上収益は、301億90百万円(前連結会計年度比 12.4%増加)、セグメント利益は、60億21百万円(同 6.5%減少)となりました。

 

 各セグメントの売上収益及びセグメント利益の状況は以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

売上収益

セグメント利益

売上収益

セグメント利益

売上収益

増減率(%)

セグメント利益

増減率(%)

日本

372,033

30,939

420,452

31,680

48,419

13.0

740

2.4

米国

224,801

27,314

303,090

37,074

78,288

34.8

9,759

35.7

欧州

209,778

26,303

272,888

34,904

63,110

30.1

8,600

32.7

アジア・

オセアニア

123,533

12,837

159,965

15,465

36,431

29.5

2,627

20.5

サーモス

26,849

6,441

30,190

6,021

3,341

12.4

△420

△6.5

調整額

173

△1,127

95

△2,021

△77

△894

合計

957,169

102,710

1,186,683

123,124

229,514

24.0

20,413

19.9

  (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

③ 経営成績

 当連結会計年度における売上収益は1兆1,866億83百万円となり、前連結会計年度に比べ2,295億14百万円の増収となっております。為替の影響については、期中平均レートが前連結会計年度に比べ米ドルで22円96銭の円安、ユーロで10円51銭の円安、豪ドルで9円34銭の円安となるなど、売上収益は全体で約796億円多く表示されております。

 売上原価は7,480億53百万円(前連結会計年度比 1,494億56百万円増加)、販売費及び一般管理費は3,151億91百万円(同 559億86百万円増加)、その他の営業収益は51億82百万円(同 29億41百万円増加)、その他の営業費用は126億50百万円(同 87億12百万円増加)、持分法による投資利益は35億53百万円(同 41百万円増加)となっております。以上の結果、営業利益は1,195億24百万円となり、前連結会計年度比で183億40百万円の増益となりました。また営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いたコア営業利益は1,231億24百万円となっており、前連結会計年度比で204億13百万円の増益となりました。非経常的な要因により発生した損益の主な内容は、仲裁裁定に伴う損失35億20百万円、固定資産売却益6億15百万円などとなっております。

 金融収益は21億82百万円(同 10百万円減少)、金融費用は162億3百万円(同 44億38百万円増加)、これにより税引前利益は1,055億3百万円となり、前連結会計年度に比べて138億91百万円の増益となりました。主な内容は、為替差益が5億1百万円(同 6億67百万円減少)、受取利息が7億42百万円(同 5億37百万円増加)、支払利息が161億65百万円(同 45億63百万円増加)などとなっております。

 これらの結果、法人所得税と非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は730億80百万円となり、前連結会計年度比で89億77百万円の増益となりました。

 

(2) 財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は2兆1,589億50百万円で、前連結会計年度末比で1,819億24百万円の増加となっております。為替の影響については、前連結会計年度末に比べ期末日レートが米ドルで11円14銭の円安、ユーロで9円2銭の円安となるなど、約1,061億円多く表示されております。

 なお、当連結会計年度では、価格改定活動等による増収効果で営業債権が増加したほか、財務健全性を意識した有利子負債の計画的な返済を進めました。不透明な事業環境下においても、債券市場や金融機関との適切なコミュニケーションを続け、資金流動性と調達力を向上していきます。

 また、2019年1月及び同年3月に調達したハイブリッドファイナンスは合計2,500億円であり、格付機関(㈱日本格付研究所及び㈱格付投資情報センター)から、この調達額の50%を「資本」として認められており、当社では資本性負債と呼称しています。このハイブリッドファイナンスを考慮した財務安全性指標として、当社では調整後ネットD/Eレシオ(※)を重要業績指標の1つとして定めており、負債及び資本の最適な構成を意識しています。なお、調整後ネットD/Eレシオは0.81倍で前連結会計年度末に比べ0.13ポイント改善しております。

(※)調整後ネットD/Eレシオ:(純有利子負債-資本性負債)/(親会社の所有者に帰属する持分+資本性負債)

 

〔資産〕

 流動資産は、現金及び現金同等物や営業債権の増加、米ドルやユーロ等の主要通貨で円安が進んだこと等により、前連結会計年度末比で1,045億81百万円増加し、5,270億74百万円となっております。非流動資産は、有形固定資産やのれんの増加、主要通貨で円安が進んだこと等により、前連結会計年度末比で773億43百万円増加し、1兆6,318億75百万円となっております。

〔負債〕

 流動負債は、その他の金融負債や社債及び借入金の増加、主要通貨で円安が進んだこと等により、前連結会計年度末比で935億61百万円増加し、4,251億57百万円となっております。非流動負債は、社債及び借入金の減少や繰延税金負債の増加、主要通貨で円安が進んだこと等により、前連結会計年度末比で84億95百万円減少し、9,757億96百万円となっております。

〔資本〕

 資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による増加や、利益剰余金の配当による減少、在外営業活動体の換算差額の増加等により、前連結会計年度末比で968億59百万円増加し、7,579億96百万円となっております。

 なお、親会社所有者帰属持分比率は33.5%で前連結会計年度末に比べ1.7ポイント高くなっております。

 

(3) キャッシュ・フロー

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

 税引前利益、減価償却費及び償却費、法人所得税の支払額又は還付額等により、営業活動によるキャッシュ・フローは1,879億59百万円の収入(前連結会計年度比 26.4%増加)となりました。

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

 有形固定資産の取得による支出等により、投資活動によるキャッシュ・フローは980億73百万円の支出(前連結会計年度比 38.4%増加)となりました。

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

 長期借入金の返済による支出、長期借入れによる収入、コマーシャル・ペーパーの純増減額等により、財務活動によるキャッシュ・フローは544億30百万円の支出(前連結会計年度比 30.2%減少)となりました。

 これらの結果に、為替換算差額等を加えた当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、1,322億17百万円(前連結会計年度比 41.1%増加)となりました。

 

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

 親会社所有者帰属持分比率(%)

23.0

23.4

27.9

31.8

33.5

 時価ベースの親会社所有者

 帰属持分比率(%)

41.2

39.6

49.6

51.1

47.8

 債務償還年数(年)

10.2

6.7

6.4

6.2

5.0

 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

15.3

12.8

12.9

13.7

14.7

 (注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/資産合計
    時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計
    債務償還年数:有利子負債/キャッシュ・フロー
    インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数により算出しております。

3.キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

 セグメントごとの販売実績については、「(1) 経営成績 ②セグメント業績」に記載のとおりであります。

 なお、当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、また、受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定により国際会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 及び 3.重要な会計方針」に記載しております。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金又は金融機関からの借入金、社債等により調達しております。また、当社グループとしての資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。

 資金の流動性については、安定的な営業活動によるキャッシュ・フローに加え、金融機関とのコミットメント・ライン契約の締結やコマーシャル・ペーパー発行枠の設定等により十分な手元流動性を確保しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)では、「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を企業理念として、産業ガス事業の拡大を進め持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

技術開発において、独自のガステクノロジーを基盤とした、ガスアプリケーション、エレクトロニクス、ガス分離精製、医療・ライフサイエンス、ファインマテリアル、環境、先端技術分野に向けた新商品・新技術の開発に取り組むことで収益拡大に貢献しています。またオープンイノベーションによる海外を含めたベンチャー企業との事業提携を通じ、成長分野における先端技術の取り込みと、コア技術を最大限に利用した商材開発を促進しています。

当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は3,515百万円であり、各セグメントの内訳は、日本で3,054百万円、米国で429百万円、サーモスで31百万円となっております。主な技術開発活動の概要は次のとおりです。

 

〔日本〕

日本セグメントにおいては、大陽日酸株式会社つくば事業所、山梨事業所、SIイノベーションセンター、メディカル・テクニカル・サービスセンター及び京浜事業所の5拠点が連携して技術開発を実施しています。事業部門と開発部門の連携を強化し、工業ガスビジネス、エレクトロニクスガスビジネス、プラントビジネス、メディカルビジネス、新規事業開発に向けた基盤事業を支える技術開発を推進しています。カーボンニュートラルについてはグループ共通の重点課題として取り組んでいます。

 

カーボンニュートラルに向けた取り組み

当社グループが所有する酸素燃焼技術をベースに、カーボンフリー燃料を利用する新たな酸素燃焼技術を開発しカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

・カーボンフリー燃料である水素ガスに注目し、工業炉分野でのCO2排出削減への貢献に取り組んでいます。日本電気硝子株式会社と水素-酸素バーナを共同開発し、水素100%燃焼によるガラス溶融の実証試験に成功しました。大手自動車用鋳物メーカーと誘導炉向け水素-酸素バーナを共同開発しました。

・カーボンフリー燃料であるアンモニア(NH3)を用いた溶融・球状化技術を、大陽日酸株式会社が球状シリカメーカーである株式会社アドマテックスと共同開発しました。アンモニア-酸素燃焼を用いることで、カーボンを含まない高品質な球状シリカの製造を可能にすると共に、製造プロセスにおけるCO2排出削減に貢献できることを示しました。

・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「燃料アンモニア利用・生産技術開発/工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術開発」に参画し、アンモニア-酸素燃焼技術の開発を進めています。

・石灰製造炉などの高濃度CO2排出源をターゲットとして、10t/日規模のCO2回収装置(回収CO2濃度98%)を開発・商品化しました。中小規模排出源(排ガス量1,000Nm3/hクラス)向けの装置であり、ユニット化して導入・設置が容易に行えます。

工業ガス分野

産業ガスの使用に関する様々な工業製品を開発しています。

<溶接技術>

・配管の自動溶接に関する市場ニーズに対応し、大陽日酸株式会社と日酸TANAKA株式会社は、溶接状態を可視化するカメラ「サンアークアイ」シリーズを共同で開発し、2019年4月より販売しています。新たに商品化した「モノクロタイプ」は比較的長い奥行き範囲に渡ってピントを合わせられ、高精細な観察に有効です。

<低温利用技術>

液化窒素の冷熱を利用した機器について新機種を追加しました。

・液化窒素式プログラムフリーザの新製品として、細胞凍結保存用バイアル(10cc)を最大1,575本処理できる、庫内容量300Lの「クライオセルマスターTM」CM-300を商品化しました。当社グループの従来装置3台分の容器を1台で処理できるため、装置設置スペースが60%に抑えられます。

・金属熱処理に用いられるサブゼロ処理装置の新製品として、当社グループの従来装置と比較して温度適用範囲が広いワイドレンジ型液化窒素式サブゼロ装置(-150~+200℃)を商品化しました。超サブゼロから低温焼戻しまでの幅広い作業内容に適用でき、作業効率向上とランニングコスト低減に貢献します。

 

エレクトロニクス分野

社会のデジタル化の加速的な普及、カーボンニュートラルな社会を支えるエレクトロニクス産業の発展に貢献するために、電子材料ガスや関連機器の販売やサービスのグローバルな提供とともに、技術開発を強化しています。

・大陽日酸株式会社とRASIRC, Inc.社は共同でALD成膜技術の開発に取り組んでいます。窒化膜ALDには無水ヒドラジンが、酸化膜ALDには過酸化水素ガスがそれぞれ既存の窒化材、酸化材よりも良好なプロセスを実現できることを実証しています。反応メカニズム推定結果と合わせて学会で報告しました。また、無水ヒドラジン供給ソース(BRUTE-Hydrazine)の高純度化を実現し、気相中水分濃度仕様を<10ppbおよび<100ppbの2種としました。

・当社グループが製造しているジボランガスは、ロジック(演算素子)、メモリ(記憶素子)など幅広い半導体デバイスの製造において不可欠な材料です。2023年末までに日本、韓国、中国での製造能力を順次増強するため、製造システムを進化(深化)させています。

・当社グループが開発したインテリジェント・ガス・サプライングシステム(IGSS)は、IoTやRPAを活用したデジタル革新技術と、長年蓄積した当社グループのガスハンドリング・ノウハウを融合した次世代ガス供給システムです。人とロボットが共に働く協働社会の実現、新たなサービスの付加提供によって、お客様の業務効率化、省力化に貢献するべく、改良改善を進めています。

・導電性ペースト・インク用途向け表面改質銅ナノ粒子を開発しました。銅ナノ粒子が有機溶媒中に均一に分散するため、小型電子部品の電極薄膜やセラミック基板の微細配線を実現するための銅ペーストの製造に有効です。

プラント分野

深冷空気分離プラントについては当社グループのコア技術の深化(高性能・高品質・低コスト)に取り組むとともに、プラント製作、工場操業、ロジスティックスに革新を起こすため、DXを推進しています。

・DX推進によって保安や品質管理、生産性の向上に努め、遠隔監視システムやプラント運転条件制御システムを深化させました。産業ガスを生産する大型空気分離装置の生産性向上と人的資源有効活用を実現する工場運営体制の目途が立ち、リモートオペレーションセンター(仮称)の2023年度開設を計画しています。

メディカル分野

高品質の医療用ガスの安定供給を行うとともに、在宅酸素療法のためのさまざまな機器の開発・製造、機器の定期点検や遠隔監視システム、医療用ガスの24時間体制の緊急配送など、トータルサポートに貢献しています。さらに、当社グループの持つガステクノロジーを応用し、生体試料の凍結保存をはじめとするバイオ分野、SI(Stable Isotope 安定同位体)や特殊ガスを利用した高度診断・治療分野にも取り組んでいます。

・医療ガス供給設備の容器(O2、N2、Air)内ガス残量などを遠隔地で監視するシステムの最新版となる次世代医療ガス監視システムTerm-3を開発しました。通信規格をLTE(4G)とし、サーバ機能をクラウド化することで、手持ちの端末による監視データの閲覧を可能にしました。信頼性の向上、ガス安定供給の強化、異常発生時の重大事故回避に貢献しています。

新規事業分野

当社グループでは、自社開発技術やオープンイノベーションにより獲得した製品・技術の事業化を加速しています。アディティブ・マニュファクチャリング(AM)事業、化合物半導体製造装置やSI(Stable Isotope 安定同位体)をはじめ、今後市場の発展が見込まれる分野の事業拡大を推進しています。

・アディティブ・マニュファクチャリング(AM)事業では技術の開発と造形物品質安定化に寄与するソリューション「3DProシリーズ製品」の拡充に注力しています。当連結会計年度においては、従来のパウダードライキャビネット、超高純度窒素発生装置に加え、アドオン型循環精製装置「3DProPrintPure」及び統合遠隔モニタリングシステム「MiruGas For AM」を開発・商品化しました。

・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「次世代パワーデバイス向け酸化ガリウム用の大口径量産型エピ成膜装置の研究開発」において、原料となる三塩化ガリウム(GaCl3)を供給するGaCl3ジェネレータを開発しました。また、同GaCl3ジェネレータを採用した6インチ枚葉式HVPE装置を用いて、サファイア基板上へのβ-Ga2O3成膜に成功しました。6インチ基板上へのβ-Ga2O3成膜は世界初です。

・世界初の酸素蒸留による酸素安定同位体(17O、18O)濃縮技術を開発し、水や酸素ガス、それらを使用した同位体標識化合物を製造・販売しています。品質保証、製造装置性能評価の改善を目的とした開発に取り組み、TOF-MS (time of flight mass spectrometer)を用いて酸素ガス同位体成分を正確に分析する技術を開発しました。

・原子力エネルギー分野において窒化物燃料として注目されている窒素安定同位体(15N)について、窒素蒸留による分離シミュレーションを実施しました。プラント規模及びコストについて、実現可能なレベルであることを学会にて報告しました。

 

 

〔米国〕

米国セグメントは、技術対応力の強化、顧客へのより良いサービスの提供、及び既存ガス商権とエレクトロニクス向け事業の拡大を目指して、コロラド州ロングモントにあるAdvanced Technology Centerにて技術開発活動に取り組んでいます。半導体市場は長期的にも強靭な経済状態が維持されており、電子チップの需要増大が続いています。あらゆるデバイスの需要が増加していますが、特に、FinFET、GAA(Gate All Around)トランジスタ、3D-NANDメモリ、DRAMなどの最先端デバイスの需要増大が顕著です。これら3次元集積デバイスの製造には、より多くのプロセスステップが必要であることから、不活性ガス、エッチング、成膜、洗浄、ドーピングガスなどプロセス材料の消費量も増えています。

このような中で、米国セグメントは、エレクトロニクス顧客との密接な関係を構築し、グローバル市場で日々変化する顧客の要望に応えております。研究開発においても、顧客の技術課題に協力して対応し、得られた知見を既存商品の改善や新商品の開発に活用しております。米国セグメントはこれらの活動を通して、製造からロジスティクスまでの最適化されたサプライチェーンに基づき、高品質・高付加価値商品の開発企業としての地位を確立しています。とりわけ、研究開発活動では、事業、技術、安全、環境に関するリスクを最小限に抑えつつ、最大限の財務貢献が見込めるプロジェクトに重点を置いています。

当連結会計年度において、次世代デバイス製造企業からの要望に基づいた新商品及び新技術の開発と、その分析評価技術の開発を進めました。例えば、高純度硫化水素ガス等の太陽電池製造プロセス向け新材料開発、産業廃棄物削減のための除害技術、ガス純度保証並びにポイントオブユース精製器評価のための新規分析技術を開発しました。

シックス・シグマアプローチによる混合ガスの成分分析や最適な分析技術及び装置の探索・開発、超微量成分分析設備及び分析手法の導入にも継続的に取り組んでいます。成果として不活性ガス中の炭化水素をppqレベル(10-15)まで精製除去できていることを実証しました。

また昨年度と同様に、各生産拠点において、ガス製造プロセスの品質向上に貢献するとともに、新規機器の技術開発により商品の安全性を向上してきました。

 

〔サーモス〕

サーモスセグメントにおいては「人と社会に快適で環境にもやさしいライフスタイルを提案します」という理念に従い、断熱技術を利用することで省エネルギーに貢献するとともに、快適なライフスタイルを実現すべく、積極的な商品開発を推進しております。

当連結会計年度においてはコロナ禍で見直されつつある家中需要をつかむため、キッチンシリーズを拡充するとともに、ティーポットやタンブラー、シャトルシェフといった家庭で使用できる新商品を数多く開発しました。一方、コロナ後の回復需要もつかむため、ケータイマグやスポーツボトルでも新しいシリーズを開発しました。

フライパンや調理器具からなるキッチンプラスシリーズでは、中の圧力が下がってフタが開かなくなった時に通気できる弁を一体化した角形保存容器と、パッキン付き丸形保存容器を開発しました。調理なべではデュラブルコートを片手鍋にも施したクックパンKNA/KNCシリーズを開発しました。レードル等が取っ手に載る設計でこびりつきにくい内面処理と合わせて調理の利便性が向上した商品となっております。

家庭でのティータイムをゆっくりと楽しめる新商品として、真空断熱ティーポットTTEシリーズを開発しました。TTEシリーズは茶葉を直接入れられるストレイナー付きで、お茶を作ってそのまま保温・保冷することができます。また、フタを片手で押さえて注げる構造にして利便性も高めています。

真空断熱タンブラーシリーズとして、同容量帯の製品比で約35%軽量化したJDWシリーズを開発しました。携帯用まほうびんで培った軽量化技術をタンブラーにも応用することで、既存モデルであるJDEシリーズと比較して約35%軽量化しております。

 電気代の高騰によりキッチン用品にも省エネ性能が求められています。そこで、デザインを一新、保温容器を丸洗いできる真空保温調理器シャトルシェフシリーズ“KBKシリーズ”を開発しました。

 携帯用まほうびんケータイマグシリーズとして、洗浄性を高めた食洗機対応モデルJOQシリーズを開発しました。本商品は『まる洗(あら)ユニット』を搭載、パッキン一体構造によりパッキンの着脱を不要とし、フタをスライドして分解することで細かい溝まで洗える新構造を採用し、洗浄性を向上させつつもできる限り部品点数を増やさないよう設計されています。

 スポーツボトルシリーズとして、ハンドルの持ちやすさを改善した大容量スポーツジャグFJQシリーズを開発しました。本商品は『ラク持ちハンドル』を搭載、ハンドルや底を両手でしっかりと握って本体を支えられる構造により水分補給時の負担を軽減します。

 このように、引き続き積極的に新商品を投入し、お客様に快適なライフスタイルを提案しております。