第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「生販両層にとって最も価値ある存在」として、食品の安全性の追求及び流通の効率化の推進を通じて、「豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること」をミッションとし、その実現に向けてグループ各社が専門分野における機能を十分に発揮し、また効果的に連携してグループ全体の価値の最大化を図ることを基本方針としております。

そして、いかなる経営環境の変化に対しても常に迅速かつ適切に対応し、最適な流通サービスをローコストで実現できる企業体質及び体制を作り上げ、収益力の向上に努めるとともに、積極的な経営施策を展開して成長を継続することにより、株主の皆様・お取引先・従業員・地域社会など広く関係者のご期待に応えてまいりたいと考えております。

(2)経営戦略等

今後の食品流通業界におきましては、国内人口の減少、少子高齢化により市場規模の拡大が見込めないなか、消費者の生活スタイルの変化等によって食生活や購買行動の多様化も見られ、企業を取り巻く競争が広範囲にわたっております。また、労働環境の変化や原材料価格及びエネルギー価格の高騰等によって人件費や物流費を中心とした諸経費の増加など、厳しい経営環境が予想されます。

このような状況に対して、当社グループは「豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること」をミッションとし、そのミッションを達成するために、3つの長期ビジョン(食のインフラになる・食のプロフェッショナルになる・食のプロデューサーになる)を掲げ、企業グループの成長を目指しております。

・食のインフラになる

商品、情報、ロジスティクスの総合力を発揮して、生活者の豊かな食生活を支える基盤を作る

・食のプロフェッショナルになる

食品流通に携わるプロとして知識を蓄え、スキルを磨き、生活者に豊かな食生活を提供する

・食のプロデューサーになる

生活者が豊かな食生活を実現するために、「つなぎ」を実現し、「食」が持つ価値を創造する

 

(3)経営環境

(2)経営戦略等に包括して記載しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループが、自主独立の経営を維持し成長を続けるためには、卸売業の基本機能の充実とともに、環境の変化に即した対応策を実行することにより、年度業績目標を着実に達成し、成果を積み上げることが重要な課題と認識し、鋭意取り組んでおります。

直面する課題として、食品流通業界におきましては、消費者の食生活や購買行動の多様化が進むとともに、小売業の業種・業態を超えた競争が激しくなっております。さらに、コロナ禍からの経済活動の正常化の中で、原材料価格も含めた仕入価格や人件費・エネルギー価格等のコストアップに、円安の影響も加わり、商品の値上げが断続的に実施される状況が続いております。また、商品の値上げ等により家計への負担感がさらに増すことで、日常の生活関連消費については生活防衛意識が一層強くなると予想されます。そして、コロナ禍からの行動制限解除により外食関連需要に回復が見られる一方、家庭内消費に関連する需要は堅調ではあるものの、物価上昇に伴う節約志向の進行による消費マインドの冷え込みが顕在化してまいりました。

このような状況に対して当社グループは、卸売業としての基本機能である営業と物流が連携を取りながら総合力を発揮して、デジタル技術の活用も含めて取引先との取組み関係をより一層強化し、強みである提案型営業をさらに推進するなど、営業機能を強化してまいります。加えて、自社ブランド商品については、商品開発や販促施策、消費者との接点作りなどにおいてブランド価値を上げながら拡売し、収益の確保を図ってまいります。一方、物流費をはじめとした諸経費に関しては、物流関連企業との連携強化や機械化・デジタル化の推進等により、全ての業務を見直して生産性を向上させ、コストの抑制及び経営の効率化を進めてまいります。今後の当社グループの成長戦略の一つである海外事業では、特にマレーシアにおいては同国最大級、ベトナム及びシンガポールにおいても同国で有力な卸売業グループとして、引き続き日本を含めたアジア地域における食品流通事業の一層の強化を進めてまいります。

 

社員教育につきましては、組織の強化に向けたマネジメント層を対象とした研修、営業力強化のための営業研修、当社グループの次代を担う若手人材の教育等に引き続き力を注いでまいります。また、与信管理につきましては、与信区分及び信用取引限度額を与信管理システムにより定期的に見直し、不良債権の発生防止に努めてまいります。

そして、自然災害等の緊急事態発生時において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするためのBCP(事業継続計画)を策定・整備し、緊急時に備えての教育・訓練等を継続的に実施してまいります。

なお、「企業の社会的責任」につきましては、本業を誠実に遂行することを基本として、内部統制システムの整備・運用を維持しつつ、さらに統制レベルの向上を目指すとともに、コンプライアンスをはじめ、企業に求められる様々な社会問題への対応にも真摯に取り組んでまいります。

また、サステナビリティに関する取り組みに関しましては、サステナビリティ基本方針を定めるとともにサステナビリティ委員会を設置し、「脱炭素」「フードロス&ウェイスト」「資源循環」「多様な人財の活躍」の4つのマテリアリティ(重要課題)の解決に取組むことで、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、当社グループの持続的成長を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(サステナビリティ基本方針)

加藤産業グループは、「豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること」というミッションを通して、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自らの持続的な成長を目指します。 そのために、4つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、これらの解決に取組むことで、持続的な企業価値の向上を図ってまいります。

 

(マテリアリティ)

マテリアリティは、「脱炭素」、「フードロス&ウェイスト」、「資源循環」、「多様な人財の活躍」の4つを特定しております。

 

サステナビリティ

(1)ガバナンス

当社は、事業活動を通じてサステナビリティに関する取り組みを推進するにあたり、マテリアリティとして特定した課題の解決に取り組むために、2022年3月に取締役会の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置しております。

代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ委員会」には、マテリアリティごとに、「脱炭素分科会」、「フードロス&ウェイスト分科会」、「資源循環分科会」、「多様な人財の活躍分科会」の4つの分科会を設置しております。これらの分科会では、取り組み項目やマイルストーン等の検討及び進捗状況を管理し、その内容を「サステナビリティ委員会」で審議・決定し、その後、年2回の取締役会に付議・報告し、取締役会による監督体制を構築しております。

 

<サステナビリティ推進体制図>

0102010_001.png

 

 

(2)戦略及びリスク管理

当社は、「豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること」という、グループミッションを達成するうえで、サステナビリティを組み込んだ経営が重要であると考えております。そのために、ISO26000やGRI等の各種国際的なガイドラインを参考に社会課題をリストアップし、「社会がサステナブルであるための重要度」及び「当社がサステナブルであるための重要度」の観点からマッピングを作成し、優先課題について経営会議で議論を重ね、マテリアリティの候補を設定致しました。これらのマテリアリティ候補について、重要性や影響度の再検討・見直しを行い、取締役会に諮り4つのマテリアリティを特定致しました。

0102010_002.png

この特定した4つのマテリアリティに関するリスク及び機会を認識し、マテリアリティごとに目標を設定し、その進捗状況を「サステナビリティ委員会」において確認し、その内容を年2回の取締役会に報告しております。

 

(3)指標及び目標

サステナビリティに関する指標及び目標は、以下の通りです。

マテリアリティ

目指す姿

脱炭素

●サプライチェーン全体の脱炭素のために、生産者から消費者までの全体最適を実現する

●省エネルギー、創エネルギー、非化石エネルギーの調達、カーボンオフセットの活用により、カーボンニュートラルを達成する

フードロス&ウェイスト

●家庭用食品の廃棄量を削減するために、サプライチェーン全体を最適化するプラットフォームを構築する

資源循環

●環境負荷を低減するために、石油から新たにつくられるプラスチックや、適切に管理されていない森林由来の紙資源を使用しない流通システムを構築する

多様な人財の活躍

●多様な能力、価値観を持った人財が、それぞれの立場で活躍できる会社となる

 

マテリアリティ

指標

2030年目標

脱炭素

CO2排出量

(Scope1及び2)

2021年度比30%削減

フードロス&ウェイスト

廃棄金額

2021年度比50%削減

返品金額

ゼロ

資源循環

プラスチックの再資源化

再資源化率100%

自社ブランド商品におけるサステナビリティへの配慮

全ての自社ブランド商品へのサステナビリティの配慮

多様な人財の活躍

男女の固定的な役割分担意識や処遇における不平等を解消し、男女ともに安心して働き続けられる職場環境を全員で作り上げる

 

 

人的資本関係

(1)人財育成の基本方針

当社グループは、国籍・信条・性別・社会的身分によって差別することのない公平な雇用を基本としております。

また、卸売業にとって持続的に企業を成長させる上で、人財こそが最も重要な資本であると考えております。そのため、多様な人財が活躍できる職場環境を整備することにより、会社・従業員双方の持続的な成長を目指しております。

当社は、社員のキャリア支援のため、オンデマンド型自主学習ツールや外部研修受講によるリスキリングの実施、またOFF-JTの積極的な活用を促進しております。

またRPA稼働率を高め業務生産性向上や業務効率化を推進するため、研修によりデジタル人財の育成に取り組んでおります。

 

① 自律的なキャリア形成の支援

自律的な学びを支援するためにオンデマンド型自主学習ツールの活用によるリスキリングの実施をしております。

従業員が自身のキャリアを主体的に考え、継続的に学び、社内外で通用する人材へと自身の価値を高めていくことが重要と考え、社員の誰もが教育を受けられる機会を提供することで、会社の目指す方向性と個人の主体的なキャリア形成をすり合わせながら、各自のキャリア形成を支援していきます。

自発的な学習で従業員が学び続ける会社を目指しております。

 

② デジタル人財育成

マクロ機能を使用し、ペーパーレス化による業務効率化を図り、RPAを活用した業務改善を実施し、またRPA稼働率を高め、業務生産性を向上するため、デジタル人財への研修教育実施による育成に取り組んでおります。

 

(2)社内環境整備の基本方針

当社グループは、卸売業にとって持続的に企業を成長させる上で、人財こそが最も重要な資本であると考えております。

多様な人財が活躍できる職場環境を整備することにより、会社・従業員双方の持続的な成長を目指しております。

 

① ダイバーシティ&インクルージョン

当社は、2030年目標として「男女の固定的な役割分担意識や処遇における不平等を解消し、男女ともに安心して働き続けられる職場環境を全員で作り上げる」を掲げています。多様な能力、価値観を持った人財が、それぞれの立場で活躍できる会社となるように目指しております。

多様な考え方、バックグラウンドを持つ従業員が、「役職・性別関係なく意見を言い合える職場」のため、心理的安全性を確保し、傾聴・対話のできる環境を構築していきます。

ライフスタイルに応じた多様で柔軟な働き方ができる職場環境及び人の成長を大切にする職場環境を整備していきます。

また、女性活躍推進にも取り組んでおります。

2023年度 女性管理職数 5人 管理職に占める女性労働者の割合 2.0%

2023年度 新入社員数 49人(男性27人・女性22人)

また、障がい者雇用においては、社会的責務を果たすべく、法定雇用率の常時達成に向けて、継続的な採用と定期支援を実施し、多様な働き方により、長期に活躍できる環境を整えております。

 

② 働き方改革

従業員の働き方や価値観の多様化に合わせて、働く場所や働く時間の選択肢を増やし、生産性の向上と様々な働き方を推進するため、在宅勤務、育児短時間勤務、介護短時間勤務、時間単位有休制度を導入しております。

またワークライフバランスの実現のため、従業員一人ひとりが生き生きと働ける会社を目指し、適切な労務管理及び業務分担により過重労働の防止に努めております。

 

③ 健康経営

当社は、年1回外部機関によるストレスチェックを実施し、その結果をもとに組織分析し、従業員の不調に早期に気づく事により、様々なメンタルヘルス対策をしております。従業員とその家族の心の健康の保持増進のために、外部にメンタルヘルス相談窓口を設置しております。専門家のカウンセリングにより、メンタルヘルス不調の予防と早期回復を図っております。

 

サステナビリティ関連に関する指標及び目標は、以下の通りです。

施策

指標

目標

ダイバーシティ&インクルージョン推進

女性管理職比率

2030年度までに

4%

職場環境の整備

男性育児休業取得率

2030年度までに

50%

上記は連結グループにおいて主要な事業を営む当社においては指標のデータ管理とともに具体的な取組みを進めている一方、全ての連結グループでは行われておらず連結グループにおける記載が困難であることから、提出会社である当社単体の指標及び目標を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクには下記のようなものがあり、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と認識しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 当社グループは、グループ全体のリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」に定め、リスク管理を統括する役割と責任を有する危機管理委員会を設置し、事業を取り巻く様々なリスクに対する未然防止を図っており、その内容を定期的に取締役会へ報告しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業環境について

 当社グループは、国内での食品卸売事業を主たる事業としており、景気の動向や人口減少による消費の低迷及び市場の縮小、新型感染症等の影響による生活様式や消費動向の変化、業界内での競争激化による当社グループの競争力低下等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 それらのリスクに対して当社グループは、グループ各社の事業環境及び経営状況を常に把握し、必要に応じて当社取締役会等にて検討してモニタリングを行うなど、安定した業績及び健全な財政状態の維持に努めております。

 

(2)食品の安全性について

 当社グループは、食品卸売事業として取り扱う商品及び当社グループで保有している食品製造工場又は委託製造先で生産した自社ブランド商品において、偶発的な事由によるものも含めて安全性や品質確保に問題が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 それらのリスクに対して当社グループは、食の安全・安心と品質向上を経営の重要課題と捉え、品質向上を推進する専門部署を中心に法令等の各種情報共有を行いながら、商品の鮮度管理等の徹底や事故の発生防止、表示の適正化への取り組みなど、商品の品質管理体制の強化に努めております。

 

(3)法的規制等について

 当社グループは、国内での事業の遂行にあたり、食品衛生法、食品表示法、製造物責任法、労働関連法規制、下請代金支払遅延等防止法、環境関連法規制等の法的規制の適用を受けております。当社グループといたしましては、法令順守の徹底に努めておりますが、これらの法的規制の強化や改正、法令に違反する事由が生じて当社グループの事業活動が制限された場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 それらのリスクに対して当社グループは、専門部署を中心に法的規制に関する情報を収集して対応を検討し、必要に応じて研修や指導を行うなど法的規制の順守に努めております。

 

(4)災害危機等について

当社グループは、全国に営業及び物流の拠点を有しており、想定を超える大規模かつ広域に亘る自然災害の発生や新型感染症の流行等により、拠点の一時的な閉鎖や事業活動の停滞・遅延が余儀なくされ、それらの復旧が長期化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

それらのリスクに対して当社グループは、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、BCP(事業継続計画)を策定・整備して定期的な訓練を実施し、また、局地的な災害及び障害等の発生時には他拠点からの業務のフォローアップを可能にする体制を整備しております。

 

(5)システムダウンについて

 当社グループは、全国に有する営業及び物流拠点の商流・物流等の情報をデータセンターで集中管理するネットワークシステムを構築しており、予測が不可能な事態等によりシステム障害が発生して基幹システムが安定的に稼働せず業務処理が滞った場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 それらのリスクに対して当社グループは、システムの安定稼働を維持するため、メンテナンスの実施や適切なセキュリティ対策を講じるなど、運用上のトラブルの防止や不正アクセス及び予測不能なウイルスの侵入防止に努めております。また、サーバの二重化やデータのバックアップ等の対策を行っており、緊急時においても事業を継続できるよう定期的な訓練を実施しております。

 

(6)海外事業展開について

当社グループは、マレーシア・シンガポール・ベトナム・中国に子会社及び関連会社を有しており、各国において政治・経済情勢の変化、為替相場の変動、法的規制の変更、自然災害やテロ又は新型感染症の流行等による社会的・経済的な混乱、商習慣等に起因する予測不可能な事態等が発生するなど事業が計画通りに進まなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

それらのリスクに対して当社グループは、専門部署及び経営陣として現地に派遣している当社従業員を中心に各社の事業環境及び経営状況を常に把握し、必要に応じて当社取締役会等にて検討してモニタリングを行うなど、安定した業績及び健全な財政状態の維持に努めております。

 

(7)債権回収について

当社グループは、販売先に対して信用供与を行っており、経済情勢の悪化や消費動向の変化等により販売先の財政状態が悪化して債権回収が滞った場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

それらのリスクに対して当社グループは、販売先への与信区分及び信用取引限度額を定期的に見直し、不良債権の発生防止に努めております。

 

(8)固定資産について

当社グループは、事業の継続及び成長等に向けた設備投資やシステム投資、M&A投資等を行っておりますが、事業環境の変化等によりそれらの資産が十分なキャッシュ・フローを生み出さない状況に至った場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

それらのリスクに対して当社グループは、投資判断に際しては十分な検討・審議を行った上で取締役会等で機関決定を行い、その後も必要に応じてモニタリングを行うなど、リスクの低減に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、コロナ禍が収束して社会経済活動が平常に向かう中、政府による政策効果等により景況感は緩やかに回復しておりますが、世界的な金融引き締め政策の長期化による海外景気の下振れリスクや中国経済の先行き懸念、為替相場の見通し、今後の日銀による金融政策の動向など、国内景気の先行きは不透明な状態が続いております。

食品流通業界におきましては、消費者の食生活や購買行動の多様化が進むとともに、小売業の業種・業態を超えた競争が激しくなっております。さらに、コロナ禍からの経済活動の正常化の中で、原材料価格も含めた仕入価格や人件費・エネルギー価格等のコストアップに、円安の影響も加わり、商品の値上げが断続的に実施される状況が続いております。また、商品の値上げ等により家計への負担感がさらに増すことで、日常の生活関連消費については生活防衛意識が一層強くなると予想されます。そして、コロナ禍からの行動制限解除により外食関連需要に回復が見られる一方、家庭内消費に関連する需要は堅調ではあるものの、物価上昇に伴う節約志向の進行による消費マインドの冷え込みが顕在化してまいりました。

このような状況に対して当社グループは、グループミッションである『豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること』を目指して、デジタル技術の活用も含めた取引先との取組み強化、業務の見える化・見直し及び生産性向上に取り組み、付加価値を高める営業活動・業務活動を進めてまいりました。そして、2023年10月には、当社のジャム類等の製造事業を株式会社グリーンウッドファクトリー(兵庫興農株式会社より商号変更)へ承継し、グループ内で卸売事業と製造事業に特化する体制へ変更することにより、製造機能の充実と事業の成長を目指してまいります。また、菓子卸売事業の中間持株会社である加藤菓子ホールディングス株式会社を設立し、管理業務の集約化・一元化等を通してさらなる生産性の向上と営業力の強化を進め、今後の菓子卸売事業拡大の基盤を構築してまいります。

海外事業におきましては、今後の当社グループの成長戦略の一つとして位置づけ、マレーシア・ベトナム・シンガポール・中国国内での食品卸売事業の展開を図っており、日本を含めたアジア地域における食品流通事業の強化を進めてまいりました。そして、2023年4月にはベトナムの食品卸売会社であるNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock Companyの株式を取得、2023年10月にはシンガポールの食品卸売会社であるTeo Soon Seng Pte.Ltd.の株式を取得して、両社を連結子会社として両国での確固たる卸売業グループとなることを目指し、今後も東南アジアを中心に海外事業全体のさらなる拡大を図ってまいります。

以上の結果、当連結会計年度における営業収益は、既存得意先を中心とした取引の増大に加えて、外食関連需要の回復による取引の増加もあり、前期に比べて6.2%増加して1兆993億91百万円となり、営業利益は167億31百万円(前期比24.7%増)、経常利益は185億1百万円(前期比20.2%増)となりました。そして、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に固定資産売却益等を計上したこともあり、前期に比べて6.4%増加の120億2百万円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

なお、各セグメントの業績数値につきましては、セグメント間の内部取引高を含めて表示しております。

 

<常温流通事業>

当社グループの主力事業であります常温流通事業につきましては、家庭内消費に関連する需要は堅調であるものの、原材料価格も含めた仕入価格や人件費・エネルギー価格等のコストアップに、円安の影響も加わり、商品の値上げが断続的に実施される状況が続いております。また、商品の値上げ等により家計への負担感がさらに増すことで、日常の生活関連消費については生活防衛意識が一層強くなることが予想され、厳しい経営環境で推移いたしました。

このような状況に対して、価格だけに頼らない価値の提供に向けて、提案型営業の一層の推進や卸売業としての役割・機能の進化を通して、仕入先との取組み強化及び得意先との関係強化を図るとともに、自社ブランド商品の開発・販売においても、新ブランド「カンピー ザ・プレミアム」の販売を開始し、ブランド価値・商品価値の訴求を進めてまいりました。加えて、業務の見える化と見直し及び生産性向上に努めてまいりました。

以上の結果、営業収益は6,815億37百万円(前期比3.8%増)となり、営業利益は130億44百万円(前期比14.4%増)となりました。

 

<低温流通事業>

低温流通事業につきましては、行動制限の撤廃など経済活動の正常化に向けた動きが加速するものの、エネルギー価格の高止まりや円安・物価上昇等の不安から、消費者の生活防衛意識はより高まっており、今後も先行きは不透明な状況が続いております。

このような状況に対して、取引先のニーズに応じた付加価値商品を積極的に提案することで関係強化を図るとともに、さらなるローコストオペレーションに取り組んでまいりました。

以上の結果、営業収益は1,125億67百万円(前期比3.6%増)となり、営業利益は10億1百万円(前期比92.3%増)となりました。

 

<酒類流通事業>

酒類流通事業につきましては、飲酒人口の減少や若年層のアルコール離れ等により消費の規模は縮小傾向が続いている中、原材料やエネルギー価格の上昇、物流面におけるコストアップもあり、今後の消費者の購買動向によっては企業間の競争が一層激しさを増す厳しい経営環境で推移いたしました。家庭内需要は2022年10月から値上げとなったビールの駆け込み需要の反動により減少いたしましたが、外食関連需要やインバウンド需要の回復もあり、酒類市場全体としては回復基調にあります。市場の傾向としては、健康志向に対応した機能性商品の需要拡大や価格と価値が伴った商品への消費移行が見られ、低価格志向との消費の二極化がより一層鮮明になっております。

このような状況に対して、主要取引先との取組み強化及び自販力・提案型営業の強化を進めるとともに、商品毎の利益管理を徹底し、さらに業務の効率化や生産性の向上を図ることでローコストオペレーションに取り組んでまいりました。

以上の結果、営業収益は、既存得意先との取引増大に加えて外食需要の回復も寄与し、2,270億72百万円(前期比9.4%増)となり、営業利益は17億84百万円(前期比98.7%増)となりました。

 

<海外事業>

海外事業につきましては、マレーシア・ベトナム・シンガポール・中国国内での食品卸売事業の展開を図っており、既存の海外卸売業としてのベースに加え、日本国内で培ってきた営業力の浸透及び経営管理の定着と、各国でのプロモーションの強化、現地企業間でのシナジーの創出を図ってまいりました。

以上の結果、営業収益は、コロナ禍からの経済活動及び市場の回復や、2023年4月に株式を取得したNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock Companyの連結化に加えて、為替変動の影響もあり、747億14百万円(前期比25.4%増)となり、営業利益は、2億94百万円(前期比659.9%増)となりました。

 

<その他>

その他の事業につきましては、物流関連事業がその主な内容であり、営業収益は、物量の増加等により109億82百万円(前期比6.5%増)となりましたが、営業利益は物流関連事業以外における諸経費の増加により4億98百万円(前期比1.6%減)となりました。

 

② 財政状態の状況

流動資産の残高は、3,113億77百万円となり前期に比べて397億55百万円増加いたしました。

その主な要因は、現金及び預金、売上債権及び棚卸資産が増加したことによるものであります。(なお、現金及び預金に係る内容の詳細につきましては、連結キャッシュ・フロー計算書をご参照下さい。)

固定資産の残高は、1,414億89百万円となり前期に比べて123億19百万円増加いたしました。その主な要因は、工場の新設工事による建物及び構築物の取得及び投資有価証券の時価評価額の上昇等によるものであります。

これにより、資産合計は、4,528億67百万円となり前期に比べて520億75百万円増加いたしました。

流動負債の残高は、2,722億52百万円となり前期に比べて350億13百万円増加いたしました。その主な要因は、未払消費税等が減少した一方で、仕入債務及び短期借入金が増加したことによるものであります。

固定負債の残高は、249億5百万円となり前期に比べて15億41百万円増加いたしました。その主な要因は、投資有価証券の時価評価額の増加等により繰延税金負債が増加したことによるものであります。

これにより、負債合計は、2,971億58百万円となり前期に比べて365億54百万円増加いたしました。

純資産の部については、親会社株主に帰属する当期純利益120億2百万円を計上し、かつ、その他有価証券評価差額金が前期に比べて50億81百万円増加したこと等により、純資産合計は、1,557億9百万円となり前期に比べて155億21百万円増加いたしました。

なお、1株当たり純資産額は、4,452円56銭となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて12億82百万円増加し、834億91百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは146億79百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べて収入が4億4百万円減少いたしました。当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益188億9百万円、仕入債務の増加340億26百万円、減価償却費45億99百万円等により資金が増加した一方で、売上債権の増加338億57百万円、法人税等の支払額61億30百万円、棚卸資産の増加35億96百万円等により資金が減少したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは90億5百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べて支出が27億37百万円増加いたしました。その主な要因は、投資有価証券の償還により資金が増加した一方で、投資有価証券、有形固定資産及び無形固定資産を取得したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは44億58百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べて支出が37億56百万円減少いたしました。その主な要因は、前連結会計年度に比べて自己株式の取得による支出が減少したことによるものであります。

 

④ 仕入及び販売の実績

a.仕入実績

当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

常温流通事業          (百万円)

628,922

103.5

低温流通事業          (百万円)

103,438

102.9

酒類流通事業          (百万円)

217,777

109.4

海外事業            (百万円)

69,941

127.9

報告セグメント計       (百万円)

1,020,079

106.0

その他             (百万円)

5,290

138.6

     合計          (百万円)

1,025,370

106.2

(注)1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 金額は仕入価格及びその他の原価によっております。

3 海外事業セグメントの仕入実績に著しい変動がありますが、これは主にマレーシアにおける販路拡大及び為替変動の影響によるものであります。

 

b.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

 前年同期比(%)

常温流通事業          (百万円)

681,160

103.8

低温流通事業          (百万円)

112,304

103.6

酒類流通事業          (百万円)

227,028

109.4

海外事業            (百万円)

74,714

125.4

報告セグメント計       (百万円)

1,095,206

106.2

その他             (百万円)

4,184

101.2

     合計          (百万円)

1,099,391

106.2

(注)1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 金額は営業収益によっております。

3 海外事業セグメントの販売実績に著しい変動がありますが、これは主にマレーシアにおける販路拡大及び為替変動の影響によるものであります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品仕入費用及び物流センター運営費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は物流機能の充実、情報システムの高度化及び新規事業投資等によるものであります。

また、当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することとしております。

なお、運転資金及び設備投資資金については、原則内部資金、借入及びリースにより資金調達することとしております。借入及びリースによる資金調達に関しては、運転資金として短期借入金を一部の連結子会社が、運転資金又は設備投資資金として当社及び一部の連結子会社が長期借入金又はリースにより調達しております。その一部はグループ内資金の効率化を目的としグループ会社間で融資を行っております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

当社は、2023年1月21日開催の取締役会において、ベトナム社会主義共和国に本社を置くNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock Companyの株式を取得することについて、株式譲渡契約を締結することを決議し、2023年2月6日に同社株主との間で株式譲渡契約を締結いたしました。

なお、2023年4月3日に株式の取得を完了しております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 企業結合等関係」をご参照下さい。

 

当社は、2022年10月3日開催の取締役会において、2023年10月1日を効力発生日として、当社の事業の一部を当社の完全子会社である兵庫興農株式会社に吸収分割により継承させることを決議いたしました。

なお、2023年10月1日付で、兵庫興農の社名を株式会社グリーンウッドファクトリーへ変更しております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な後発事象」をご参照下さい。

 

当社は、2023年8月26日開催の取締役会において、シンガポールに本社を置くTeo Soon Seng Pte.Ltd.の株式を取得することについて、株式譲渡契約を締結することを決議し、2023年8月29日に同社株主との間で株式譲渡契約を締結いたしました。

なお、2023年10月17日に株式の取得を完了しております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な後発事象」をご参照下さい。

 

6【研究開発活動】

 記載すべき事項はありません。