当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営理念及び経営方針
当社は、名南コンサルティングネットワークの創業者である佐藤澄男が掲げた「私達は自利利他の精神に基づき、お客様の明日への発展のために今日一日を価値あるものとします」という経営理念のもと東海地方を中心に中堅中小企業の皆様にM&Aの支援を行ってまいりました。
近年、後継者不在による事業承継のニーズの高まりにより、以前は一般的ではなかったM&Aも、今では経営戦略のひとつとして認知されております。当社は、東海地方におけるM&Aの先駆者としての自負とともに、激変する経営環境に対応すべく、名南コンサルティングネットワークの様々なリソースを統合したM&A支援を通じ、お客様の明日への発展のための参謀となることを目指しております。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 人材の確保・育成
当社の成長戦略においては、人的資本の強化、即ちM&Aアドバイザーの確保・育成を最重要課題として位置付けております。
この課題を解決すべく、まず人材確保の観点では、M&A業務経験者に限定した採用とせず、金融機関や会計事務所等での勤務経験を通じて、M&Aアドバイザリー業務に資する経験を有している人材を中心に、幅広く積極的な採用を展開しております。その上でインセンティブに偏らない報酬制度、テレワークの導入、男性の育休取得の支援などの働きやすい環境づくりにも注力することで、人材流出の抑止にも取り組んでおります。
また育成の観点では、属人化しがちなM&Aアドバイザリー業務を構造化し、キャリアマップと連動することで、入社間もない未経験者から実務経験を数年間積み上げたプレイヤーまで網羅的に対応可能な育成モデルを構築しております。これにより、未経験者は当人の有する経験に応じて必要な部分から中心に学ぶことで早期の戦力化を、経験者は「医療・介護」業界を筆頭とした高度な専門的ノウハウの共有を受けることで、当社の強みである高難易度案件に対応できる付加価値の高いプレイヤーへの成長を促します。
② M&Aを中心とした事業領域の拡充
中小企業のM&A市場は依然として活況が維持されており、中でも後継者問題を理由とした事業承継M&Aは、未だに高い需要を維持しております。しかしながら、当社としてはこれに限定せず、スタートアップ企業のイグジット、成長過程にある企業の事業拡大、事業再編など、時代の変化に応じたニーズに対応することが課題であると認識しております。
この課題を解決すべく、2022年10月にJ-Adviser資格取得しTOKYO PRO Marketへの上場支援を行うIPO支援事業の立ち上げ、金融機関やスタートアップ支援拠点等と連携してスタートアップ企業への投資実行を行うベンチャーキャピタル事業の運営など、M&Aを中心とした事業領域の拡充にも取り組んでおります。
また、これらの事業領域の拡充においては、各事業にかかる専門性の高い多様なノウハウが必要であることから、グループの税理士法人・弁護士法人との連携を強化することにより、より適切なコンサルティングができる体制の整備を進めております。
これらにより、同業他社との差別化を図り、経営者や提携先に選ばれるM&Aコンサルティング会社としての価値提供ができるよう取り組んでおります。
③ 提携先の開拓及び関係性の強化
当社の事業モデルは、いわゆるDM等を用いない提携営業であるため、当社の成長戦略においては、提携先の関係性の強化、開拓、及び、同業他社との差別化は重要課題の一つであると認識しております。
現在、東海地方に本店を置いているすべての地方銀行及びほぼ全ての信用金庫と業務提携をしておりますが、事業承継を中心に多種多様なM&Aニーズの発掘を促進する勉強会やセミナーを定期的に実施することで、さらなる関係性の強化を図ります。
また、大阪オフィス・静岡オフィスにおきましては、地域人材を中心にアドバイザーの採用が順調に進みました。これにより、当社の持つ提携先の開拓及び関係性の強化ノウハウを展開することで、東海地方以外での営業基盤の確立に取り組んでまいります。
また、名南コンサルティングネットワークのグループ会社である株式会社名南経営ソリューションズが全国の会計事務所向けに情報共有及び各種経営ツールを提供するインターネットサービスを展開しておりますので、これらのサービスのユーザーである会計事務所と連携してM&A案件の発掘に取り組む等、営業活動における関係性を強化していく方針であります。
④ 社会的信用力の向上
新規参入が盛んなM&A専門業者の市場において、当社がお客様から選ばれるためには、業務領域における他社との差別化のみならず、当社の社会的信用力の向上も課題であると認識しております。
2023年9月、中小企業庁から中小M&Aガイドライン(第2版)が発表されました。中小M&Aガイドライン(初版)策定から3年が経過し、中小企業庁は、中小M&Aの定着に一定の成果を認めながらも、M&A専門業者に対しては様々な課題があると認識しており、当該ガイドラインは、M&A専門業者に向け基本事項の遵守が強く求められるものとなっております。
中小M&Aガイドライン(第2版)において説明が義務化された重要事項の説明においては、当社は、中小M&Aガイドライン(初版)に強く賛同し、「重要事項説明書」によりその明確な説明を実施し、その遵守に積極的に取り組んでおります。このように、お客様から信頼され対等な関係において意思決定をいただくよう、信頼関係の構築に時間をかけて取り組んでおります。
これに限らず、当社は名南コンサルティングネットワークの理念である「自利利他」の精神を念頭に、お客様に寄り添う高品質なサービス提供の追求が、社会的信用力の向上に繋がり、ひいては業界全体の健全な発展に資すると考えておりますので、引き続きM&A専門業者の中でも特に高い遵法意識を保ち、中小企業庁を中心に官民との連携にも取り組んでまいります。
⑤ 案件マッチング力の強化
収益力向上においては、成約件数の増加が重要課題であると考えております。成約件数の増加においては、その案件の成約までのプロセスの管理だけでなく、関係者の意向の汲み取りが必要となります。特に、案件の特性が多岐に亘る状況においては、その特殊性、専門性等にかかる見極めが重要であり、適切に幅広くマッチングを実施し成約の合意を得る力を高めることが課題であると考えております。
この課題に対しては、提携先金融機関や会計事務所等の紹介のみではなく、当社内でのシステム化された仕組みを活用することや、案件毎の特徴に応じて進捗管理のノウハウを活用して効率的なマッチングを図ります。また、スキル研修によるインプット、案件を通じたそのノウハウのアウトプットの繰り返しにより、アドバイザー個々のコンサルティング能力を向上させ、成約までの過程を経営者とともに伴走し最適な解決策を模索し提案し続けることにより、その成約率の向上を図ります。
(3) 目標とする客観的な指標等
当社では、競合他社と同様に、成約件数とM&Aアドバイザー数を重要な指標と捉えております。これは、M&Aアドバイザー数の増加に比例し、案件成約件数の増加が見込まれ、売上高の増加につながるためであります。
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第8期 2022年9月期 |
第9期 2023年9月期 |
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売上高 |
1,382,854千円 |
1,453,440千円 |
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成約件数 |
73件 |
92件 |
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M&Aアドバイザー数 |
41名 |
47名 |
(注)M&Aアドバイザー数は、M&Aにのみ従事するものを表示し、別にVC事業・J-Adviser事業専任のコンサルタントが2名在籍しております。
当社は「中堅中小企業の成長発展に、M&Aコンサルティングを通じて貢献します」の企業ビジョンのもと、公正かつ透明な企業運営を通じて地域社会へ貢献することを目指しており、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方として、経営の透明性、健全性を高めるとともに、環境の変化に対応できる体制の構築に努めております。また、リスク管理の一環としてコンプライアンス委員会を設置し、リスク発生の蓋然性を調査、把握するとともに、必要に応じて関係者に対して注意喚起や勧告などを行っております。当社の危機を事前に回避すること、および万一危機が発生した場合の当社被害の最小化を図ることを目的としたリスク管理体制を構築しております。
当社では、現状においてサステナビリティに係る基本方針を定めておりませんが、前述のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方に則して、当社が具体的に対処すべき課題を明確にし、開示できるような取り組みを継続的に検討してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社では、中長期的な企業価値の向上のために、サステナビリティに関連するリスク及び機会に対処するためのガバナンス体制の構築は重要な課題と認識しております。今後、サステナビリティを巡る課題に適切に対応する体制整備や基本方針の策定に努めてまいります。
なお、当社は現段階においてサステナビリティ関連とその他のコーポレート・ガバナンス体制の区分はしておりません。現状のコーポレート・ガバナンス体制の概要については
(2)戦略
当社では、現状においてサステナビリティ及び人的資本に関する戦略を定めていないことから、サステナビリティ関連の戦略における、リスク及び機会に対処するための重要な取り組みは検討中であります。
(3)リスク管理
当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別・評価・管理するためのプロセスを個別に定めておりませんが、現状のリスク管理体制の詳細は、
(4)指標及び目標
当社では、現状において人材の育成及び社内環境整備に関する方針の指標及び当該指標を用いた目標を定めておりませんが、当社が中長期的に成長を続けていくためには、様々な価値観の存在は会社の持続的な成長を確保する上での強みとなることを十分に認識しており、国籍や性別、障がいの有無に関係なく、様々な価値観や考え方を有した多様な人材が個性や能力を発揮し活躍できる企業を目指しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 事業環境について
① 同業者との競合
M&A仲介業務は、必要な許認可や資格等が存在するわけではなく、設備投資等の大規模な投資も必要ないため、参入障壁が比較的低い事業であり、中堅中小企業のM&Aニーズの拡大に呼応して、競合他社の新規参入が増加しておりましたが、中小企業庁によるM&A支援機関の登録制度が始まって以降、その増加率は収束し淘汰の様相が窺える状況となりつつあります。当社の東海地方における充実した営業基盤やこれまでの実績、名南コンサルティングネットワーク各社との連携から獲得した専門的なノウハウ等は短期間に模倣することはできないと認識しておりますが、提携先金融機関の取組方針の変化(M&A専業会社との協業から自社単独で仲介業務を実行等)や競合他社の営業方針の転換により競争環境が激化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 人材の獲得・育成
M&A仲介業務は、人材に依る部分が大きく、人材の獲得と育成は、最も重要な経営課題の一つであると考えております。しかしながら、雇用情勢の変化等により人材を適時に獲得できない場合、人材が大量に社外流出してしまった場合、育成が計画通り進展しない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 事業エリア
当社はこれまで東海地方を中心に営業活動を行っており、顧客や提携先等の営業基盤が東海地方に集中しております。今後、東海地方において自然災害やテロ等が発生した場合、当社の事業活動に支障が生じ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 業績の変動
当社のビジネスモデルは、報酬の大部分を案件成約時に受領する成功報酬型のビジネスモデルであり、また、案件の規模により成功報酬の金額が大きく異なります。そのため、大型案件の成約や破談、期間ごとの成約案件数の偏り等により、期間ごとの業績が大きく変動する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ M&A市場の低迷
M&A市場は、政府主導による中小M&A推進計画の策定を始めとする経営資源集約化の推進施策や、後継者不在企業を中心とした事業承継型M&Aの認知度向上、ベンチャー企業を対象としたEXIT型M&Aの増加、国内市場の縮小に伴う業界再編型M&Aに対するニーズ拡大により、今後も拡大していくものと考えております。しかしながら、景気の悪化や自然災害等により、買収ニーズが著しく縮小する場合には、M&A市場が低迷し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容について
① 単一事業
当社は、M&A仲介事業の単一セグメントです。今後も国内人口の減少に伴う国内市場の縮小を背景に、事業承継型M&Aや業界再編型M&Aのニーズは、ますます高まるものと考えております。しかしながら、M&A業務をとりまく経営環境が著しく悪化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② クレーム・訴訟
当社は、コンプライアンス体制の構築に努めております。また、社内チェック体制の整備により、サービス品質向上とクレームへの適切な対応を図っており、本書提出日現在において提起されている訴訟、その他の請求が発生している事実はありません。しかしながら、何らかの要因により訴訟を提起される可能性があり、この結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 組織体制について
① 小規模であることについて
当社は、取締役4名(うち社外取締役1名)、監査役3名(うち社外監査役2名)、従業員61名(2023年9月30日現在)の小規模な組織であります。今後の事業拡大に備え、人材の増強及び内部管理体制の一層の充実を図る方針ですが、計画通り進展しない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 情報セキュリティ管理
当社は、法人の機密情報を扱うことが多いため、顧客との間で秘密保持契約を締結しており、守秘義務を負っております。当社では、顧客情報が漏洩しないように社内規程を整備し、情報管理を徹底しております。しかしながら、不測の事態によって守秘義務の対象となる顧客情報が漏洩した場合、損害賠償請求や信用の失墜により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 個人情報の管理
当社は、セミナーの開催等において個人情報を取得する場合があります。当社では、個人情報の保護に関する法律及びその関連法令に基づき、個人情報保護に関する規程等を定めることで、個人情報を厳正に管理しております。しかしながら、このような対策にも関わらず、不測の事態により、個人情報の漏洩や不正利用等が生じた場合には、当社の信用の失墜により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 親会社グループとの関係について
当社は株式会社名南経営ホールディングスを中心とした企業集団(以下、「親会社グループ」という。)に属しており、同社は本書提出日現在において当社発行済株式総数(自己株式を除く)の56.46%を保有しております。
なお、株式会社名南経営ホールディングスのいわゆる財産保全会社である一般社団法人名南経営は、当社株式を間接的に保有する主要株主でありますが、財務諸表等規則上の親会社には該当いたしません。
親会社グループは、経営コンサルティング事業、会計事務所支援事業、海外進出支援事業、不動産仲介事業、M&A仲介事業を主な事業内容としております。
① 親会社グループにおける当社の位置づけについて
当社は、M&A仲介事業を展開しております。親会社グループにおいて、当社以外にM&A仲介事業を行っている会社はなく、現時点において、親会社グループとの間に競合関係は生じておりません。また、今後競合関係に発展するような事象はないものと認識しております。
しかしながら、将来において親会社の事業戦略や当社の位置づけ等に著しい変化が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 取引関係について
当社と親会社グループとの取引について、親会社グループの主催する教育研修の利用等の取引を行っておりますが、取引条件は一般の利用者と同条件の取引であります。また、親会社グループで共用している商品やサービスに係る費用に関しては、各法人が単独で利用するよりも親会社グループ(又は当社)が代表して一括で利用、購入することが合理的である取引に係る費用について、立替支払後に、各法人間で精算しております。各法人の負担金額は所属人員数等を基準として按分計算しております。その結果、2023年9月期における親会社グループとの取引金額は58,884千円となっております。
なお、親会社グループとの重要な取引については、取締役会決議を経ることで、取引の健全性及び適正性確保の仕組みを整備しております。
③ 親会社の影響力について
当社は、親会社グループから独立した事業経営を行っております。しかしながら、親会社は本書提出日現在、当社の発行済株式総数(自己株式を除く)の56.46%を保有しております。将来的には持分を減少させていくことを予定しているものの、このような影響力を背景に、親会社は当社の株主総会における取締役の任免等を通じて当社の経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、議決権の行使にあたり、親会社の利益は、当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。
(5) その他
① M&Aに関する法的規制
現在、M&A仲介業務を直接規制する法令等はありませんが、昨今の中小企業庁によるM&Aにかかるガイドラインの改定等その動向は注視する必要があります。今回のガイドライン改定にかかる事項については当社は既に営業活動において取組み済みの事柄でこの影響は得にありませんでしたが、今後、法令等の制定・改定により、M&A仲介業務に何らかの規制が導入されることになった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、税法や会社法等の改正により、M&Aに対するニーズが変化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 調達資金の使途
当社の株式上場及び市場変更時に実施した公募増資等による調達資金の使途につきましては、人材採用、広告宣伝、システム投資に充当する予定であります。しかしながら、調達した使途のすべてが必ずしも当社の成長に寄与するとは限らず、期待通りの成果をあげられない可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行され、経済社会活動が正常化する中で緩やかな回復傾向が続いております。労働需要の高まりからの名目賃金の増加や原価高騰による物価上昇など経済活動にかかる投資増が見込まれる状況ではあるものの、企業の投資意欲は前向きであり、今後の経済成長は堅調に継続するものと見込まれます。しかしながら、長期化するウクライナ情勢、社会経済の回復基調の一服感など、先行き不透明な状況も続いております。
中小M&A市場におきましては、後継者不在率が57.2%(帝国データバンク 全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)より)と半数を超過しており、事業承継問題が顕在化した状態が継続しております。政府は「事業再生・M&Aを含む事業承継の促進」などを「重点3本柱の取り組み方針」の中で大方針として明示しており、国の事業承継・引継ぎ支援センターが支援する中小M&Aの件数は右肩上がりに増加しております。さらに2023年9月には、中小企業庁が3年ぶりに「中小M&A推進計画」に基づく「中小M&Aガイドライン(第2版)」にて改定の発表をするなど、中小M&A市場に対する政府の注目度は高い状態が続いております。
また、中小M&Aガイドラインにおきましては、中小企業の経営者が安心してM&Aに取り組める基盤の構築が求められております。そこで、中小企業庁が創設したM&A支援機関に係る登録制度に加えて、自主規制団体である「一般社団法人M&A仲介協会」が当社を含む民間のM&A仲介事業者によって設立されました。同協会は中小企業庁との密な連携を通じ、官民一体での中小M&A支援事業者のモラル向上に努めております。
このような情勢のなか、当社においては、金融機関や会計事務所等を始めとする提携先との一層の関係強化への注力を続けております。提携先の規模、習熟度、地域特性に合わせた柔軟な対応を行うことにより、高難易度から小型案件までニーズに応じた対応を可能としました。また、当社の強みの一つである「お客様の創業期から出口戦略までの支援コンサルティングの実施」においてはスタートアップ企業への投資・支援を実現、さらに2022年10月には東海地方では初のJ-Adviser資格を取得、TOKYO PRO Marketへの上場を支援するIPO支援部を立ち上げております。
これらのサービスを地域密着して実現するため、2023年8月には静岡オフィスを移転し、人員の拡充に努めたほか、大阪オフィスを拠点として東海地方のみならず関西地方の地域経済活性化のために尽力しております。
なお、当社の成長には人的資本の強化が不可欠であるため、積極的な採用活動を継続して行った結果、当事業年度においてはアドバイザー人員数が8名増員となりました。
この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当事業年度末における流動資産の残高は、前事業年度末に比べ168,595千円減少し、1,383,357千円となりました。これは主として現金及び預金が178,842千円減少したことによるものであります。
当事業年度末における固定資産の残高は、前事業年度末に比べ240,060千円増加し、428,023千円となりました。これは主として金銭の信託が100,000千円、投資有価証券が69,327千円及びその他の関係会社有価証券が41,829千円増加したことによるものであります。
当事業年度末における流動負債の残高は、前事業年度末に比べ23,724千円減少し、270,768千円となりました。これは主として買掛金が51,107千円増加し、未払法人税等が41,593千円及び未払消費税等が18,204千円減少したことによるものであります。
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ95,189千円増加し、1,540,612千円となりました。これは主として利益剰余金が93,192千円増加したことによるものであります。
b.経営成績
当事業年度においては計92件の案件が成約し(対前期19件増)、売上高は1,453,440千円(前期比5.1%増)、営業利益は186,221千円(同47.1%減)、経常利益は176,556千円(同49.5%減)、当期純利益は108,935千円(同52.8%減)となりました。
(売上高)
当事業年度の売上高は1,453,440千円と、前事業年度に比べ70,586千円の増加(前期比5.1%増)となりました。これは主として成約件数の増加によるものであります。
(売上総利益)
当事業年度の売上原価は835,546千円と、前事業年度に比べ203,340千円の増加(前期比32.2%増)となりました。これは主として案件紹介料が145,316千円増加(同57.0%増)、人件費が46,631千円増加(同13.5%増)したことによるものであります。
この結果、当事業年度の売上総利益は617,893千円と、前事業年度と比べ132,754千円の減少(同17.7%減)となりました。
(営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は431,672千円と、前事業年度に比べ33,136千円の増加(前期比8.3%増)となりました。これは主として人件費が31,298千円増加(同24.7%増)、地代家賃が13,097千円増加(同26.6%増)したことによるものであります。
この結果、当事業年度の営業利益は186,221千円と、前事業年度と比べ165,890千円の減少(同47.1%減)となりました。
(経常利益)
当事業年度の営業外収益は1,658千円と、前事業年度に比べ1,209千円の増加(前期は448千円)となりました。これは、主として受取手数料が863千円増加したことによるものであります。営業外費用は11,323千円と、前事業年度に比べ8,275千円の増加(前期は3,048千円)となりました。これは主として投資事業組合運用損が8,271千円増加したことによるものであります。
この結果、当事業年度の経常利益は176,556千円と、前事業年度と比べ172,956千円の減少(前期比49.5%減)となりました。
(当期純利益)
当事業年度の法人税等合計は67,167千円となり、前事業年度に比べ44,696千円の減少(前期比40.0%減)となりました。
この結果、当事業年度の当期純利益は108,935千円と、前事業年度と比べ122,046千円の減少(同52.8%減)となりました。
なお、当社はM&A仲介事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末に比べ178,842千円減少し、1,353,510千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は74,233千円(前事業年度は428,106千円の収入)となりました。これは主として税引前当期純利益176,102千円、法人税等の支払額132,803千円及び仕入債務の増加51,107千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は237,348千円(前事業年度は124,109千円の支出)となりました。これは主として金銭の信託の取得による支出100,000千円、投資有価証券の取得による支出75,000千円及びその他の関係会社有価証券の取得による支出44,600千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は15,727千円(前事業年度は15,699千円の支出)となりました。これは配当金の支払額15,727千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績は次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
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販売高(千円) |
前年同期比(%) |
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M&A仲介事業 |
1,453,440 |
105.1 |
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合計 |
1,453,440 |
105.1 |
(注)1.当社はM&A仲介事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
2.前事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお顧客との契約において秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせていただきます。当事業年度においては、当該割合が100分の10以上の相手先が存在しないため、記載を省略しております。
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相手先 |
前事業年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
当事業年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
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販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
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譲渡企業 国内事業会社A社 |
300,000 |
21.7 |
― |
― |
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譲受企業 国内事業会社B社 |
159,291 |
11.5 |
― |
― |
3.最近2事業年度におけるM&A成約件数の実績は次のとおりであります。
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分類の名称 |
前事業年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
当事業年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
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M&A成約件数 |
73件 |
92件 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、資産・負債及び収益・費用に影響を与える見積り及び判断を必要としております。
当社は、財務諸表の基礎となる見積りを過去の実績を参考に合理的と考えられる判断を行ったうえで計上しておりますが、これらの見積りは不確実性を伴うため、実際の結果とは異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成において採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症による重要な影響はないものとして見積りを行っております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
当社の経営成績等については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、資金需要のうち主なものは、効果的に事業拡大していくための採用費、人件費等であります。また、資金の源泉は主として営業活動によるキャッシュ・フローによって確保しております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析
当社が今後事業を拡大し、継続的な成長を遂げるために、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するために、営業基盤を拡充するために必要な人材の採用と育成、内部管理体制の強化を進めることにより、企業価値の持続的な向上に取り組んでまいります。
また、当社ではアドバイザー数と成約件数が業績判断上の重要な指標と捉えており、引き続きアドバイザーの計画的な増員と成約件数増加に取り組んでまいります。目標とする客観的な指標等についての分析については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする客観的な指標等」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。