文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、個人資産の最適なアセットアロケーションと次世代への不安無き移転を実現することを目標として、ファイナンシャルウェルネスを実現するためのプラットフォームを創造することをパーパスに掲げております。
この理念に基づき、1990年4月の設立以来、IT(Information Technology)とFT(Financial Technology)の統合による金融リテールビジネスの業務プロセスを最適化するためのシステムを開発・提供してまいりました。
金融リテール、すなわち個人金融市場をターゲットドメインと定義し、情報通信技術と金融ノウハウの双方のバランスを重視する金融ITブティックを目指すことを基本方針としております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。経営指標としては、事業の収益力を表す経常利益を重視し、拡大を目指してまいります。
(3) 経営環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、調達供給網制約の緩和による自動車を中心とした製造業の生産が復調したことに加え、経済活動の正常化や賃金上昇に伴う個人消費回復、訪日外国人によるインバウンド需要の復調もあり、企業収益は全体として緩やかな回復傾向が見られました。一方で、米国、欧州においては金融引き締めによる経済成長の停滞が懸念されており、ウクライナ情勢の長期化や中東における新たな地政学上のリスク要因も不安定材料として加わり、世界経済は依然として不確実性が高い環境となっております。
当社の主要顧客が属する金融分野においては、岸田政権が2023年を『資産所得倍増元年』として、貯蓄から投資へのシフトを強力に推し進めており、2024年1月からはNISAを抜本的に拡充・恒久化する制度が開始されます。これを受け当社の顧客企業であるメガバンクや大手証券会社においては、新NISAに係るサービスの拡充やコンサルティングサービスを強化する動きが高まっております。
一方、2023年初めから世に普及し始めた生成AIにより、このテクノロジーを活用した金融機関の業務プロセスの自動化、省力化、さらには個々の顧客の属性・ニーズに応じた次世代金融アドバイスサービスが、欧米の大手金融機関において先行して提供されるようになりました。日本の金融機関も生成AIを活用したサービスの高度化に高い関心を示しており、今後追随する動きが見られる可能性があります。
このような新NISAと生成AIという2つの大きな環境変化は新たな市場機会となりうるものであり、当社にとって追い風となっている状況です。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、個人資産の最適なアセットアロケーションと次世代への不安なき移転を実現するファイナンシャルウェルネスを実現するために、金融機関のレガシーシステムのDX化と日本人のゴールベースプランニングをDX化することを基本的な手段と考え、以下の経営戦略で事業を推進してまいります。
当社グループにおいては、引き続き主力顧客先である生命保険会社に対して、人生100年時代、大相続時代のための顧客ニーズに合ったシステムソリューションを提供してまいります。日本人の平均寿命が長くなる中、死亡保障、医療、がん、介護等あらゆるリスクに備え、老後資金設計等生涯にわたる資金繰りを見える化するトータルライフプランニングシステムに対しては今後も需要が見込まれ、継続的な開発を推進します。特に変額個人年金保険などの資産形成型商品を加えた生涯設計をマルチデバイスによるリモートコンサルティングにより提供するシステムに対する開発需要は高いものと予想されます。
このようなフロントエンドシステムのみならず、生命保険会社の契約管理等バックオフィスシステムのオープン言語化・クラウド化やビッグデータ解析等レガシーシステムのDX化についても、今後拡大する事業領域として継続的に注力します。
事業ポートフォリオの分散も推進し、銀行や証券会社に対するディスラプティブな提案力の強化に努めます。岸田政権による資産所得倍増プランの推進やシステムソリューション市場の競争激化など事業環境が大きく変化するなか、2024年1月からの新NISA制度の導入は当社にとり銀行・証券会社深耕の最良の機会ととらえ、生成AIを活用した証券投資提案システムをベースに今後とも銀行・証券会社向けシステムソリューションを加速してまいります。資産形成層から資産承継層といった幅広い年代に向けたゴールベースプランニングシステム、相続・財産承継システムについても、使用料課金で提供するとともに大手金融機関へオンプレ移行又は多様な機能をAPIで提供する事業の拡大を図ります。これにより、受託ビジネスと使用料課金ビジネスのバランスを調整していく方針です。
また、金融商品仲介業やファイナンシャル・プランナーのためのプラットフォームの提供活動についても推進してまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、金融リテールビジネスに必要となるシステムを金融機関等及びその顧客に提供することにより、売上高の拡大及び収益性の向上を図り、持続的かつ安定的な成長及びより強固な経営基盤の確立を目指しております。この目的を実現させるため、当社グループは以下の事項を重要な課題と認識し、その対応に引続き取り組んでまいります。
① 市場ニーズに対応したシステム開発による持続的成長
当社グループは、主に生命保険会社・銀行・証券会社をはじめとする金融機関が取り扱う金融商品の増加及び消費者ニーズの多様化に対応するため、金融商品の販売に関する業務プロセスを先進のテクノロジーを活用してDXし、顧客の業務改革に貢献していくことを市場機会として捉えています。当社グループが対象とするフロンドエンドシステム、リモートコンサルティング、バックオフィスのクラウド化等金融機関向けシステムソリューションビジネスの潜在的な市場全体規模(TAM:Total Addressable Market)は約6,000億円と推定しており、この市場においていかに事業を拡大して持続的成長を確保していくかが今後の課題であると認識しております。
現在、政府は「資産所得倍増プラン」を掲げ、「貯蓄から投資へ」を実現するべく金融機関へ個人のニーズやライフプランにあった顧客本位の業務運営を実施することを推進しています。このような状況下、生命保険会社は人生100年時代に向けて変額個人年金保険等の資産形成型新商品や引受基準緩和型医療・がん保険を市場に投入してきており、今後このような新たな市場ニーズに対応したシステム開発に注力いたします。
当社グループのビジネスはこれまでフロントエンドシステムが中心でしたが、より市場が大きいバックオフィス向け基幹系システムのクラウド化・オープン言語化やデータウエアハウス基盤の構築にも参入しており、今後もレガシ―システムのDXプロジェクトにも積極的に取り組んでまいります。
また、子会社の株式会社インフォームを通じて、生命保険システム開発の上流、要件定義工程を含む全工程業務を受託し、金融機関の長期的戦略パートナーとしての地位を獲得していく方針です。
② 事業ポートフォリオの分散と新規販売先の開拓
当社グループは、生命保険会社向けの売上比率が高く生保業界の動向や顧客の開発方針の影響を受けやすい状況にあるため、事業ポートフォリオを分散するとともに特定の販売先への売上の集中を緩和することにより、収益基盤の安定性を確保することが課題であると認識しております。
この課題に対処するため、既存販売先との取引関係を維持・強化するとともに、銀行・証券会社等非保険会社向け売上を拡大し、販売先のシステム投資予算に占める当社グループ受注比率を高めてまいります。2024年1月から新NISA制度が開始されることもあり、メガバンクや大手証券会社においては新たな個人顧客獲得と維持に向けて最新のコンサルティングサービスを強化しております。
このような大きな制度変更が行われる機会を捉え、ライフプランニング・公的年金に係る計算エンジンや金融工学系・生保年金数理系計算エンジン等当社グループが有する豊富なナレッジデータベースを活用して金融機関のニーズに沿ったシステム提案を行い、新規取引先の拡大に努めてまいります。
③ 利益率の向上
当社グループの売上高は、受託開発収入、使用許諾収入、保守運用収入及びコンサルティング収入で構成されておりますが、受託開発収入の比率が高い状況にあります。受託開発収入は、案件の獲得、失注及び納期のずれ込み等により収益が大きく変動する可能性があり、これを課題と認識しております。
当社グループではこの課題に対応していくために、より利益率の高い使用許諾収入、保守運用収入サービスといった受託開発収入以外の売上高を拡大していくことを目指しております。具体的には、当社の計算ライブラリをAPIで提供することによる大手金融機関に対する使用料課金収入、システムの使用者数及び登録資産に連動した使用許諾収入を得る収入形態の採用、自社開発した統合資産管理システムを活用したコンサルティング、クラウド上でのゴールベースプランニングシステムを利用したサブスクリプションモデルによる財産コンサルティング等により、顧客から得る収益形態の多様化を推進しております。
特に銀行・証券会社向けシステムでは、受託開発売上に加え、当社グループの得意とする相続・財産評価、相続税計算、さらには現代ポートフォリオ理論に係る計算エンジンの使用料許諾・使用料課金に基づくサービスが含まれるケースが多いため、銀行・証券会社向け業務をより拡充し、事業ポートフォリオを分散することにより、利益の確保及び利益率の向上を実現していく方針です。
④ 優秀な人材の確保と人的資本投資
当社グループが属する情報サービス産業では、企業のDX戦略拡大による開発人材への需要の高まりを受け人材の獲得競争が激化しており、優秀な人材の確保が一段と難しくなってきております。また、当社グループは金融商品の販売に係る諸問題を解決するシステムを提供しているため、当社グループ従業員はシステムだけではなく保険数理、金融知識、ポートフォリオ理論、社会保障、相続・財産承継、税務等に加え、今後は生成AIやメタバース等の最新技術を習熟していくことが求められます。
こうした中、金融レガシーシステムをDXするという中期経営戦略を実現していくために、新規採用及び中途採用を拡充して戦略的人材の補強を行うほか、リスキリング・学び直しの施策として、CAPユニバーシティという社内教育体系を確立し、総合的人材教育、特にITとファイナンスに係るフィンテックの事業領域の最新の教育を継続的に強化してまいります。
また、従業員の給与水準の向上をはじめ働きやすい職場環境にするために、在宅勤務制度の継続やオフィススペースの増床といった人的資本に係る様々な投資に力を入れてまいります。
⑤ 生成AI等先進テクノロジーに対する研究開発
オープンAIが開発したChatGPTの急速な実用化により、金融機関の業務プロセスの自動化、省力化も大幅に進化する可能性が出てきています。米国では、生成AIを活用した「仮想金融アシスタント」やビッグデータ解析により、金融ポートフォリオに対して「顧客がとるべきアクション」を自動提案するテクノロジーが浸透しつつあり、日本においてもAIを活用したシステム開発で遅れを取らないよう研究開発に注力していくことが重要課題と認識しております。
当社グループは、2023年7月に生成AIに多くの知見と実績、開発能力を有する米国のAwakApp社と業務提携・資本提携を実施し、新NISA制度に対してつみたてNISAと成長NISAの最適利用配分を決定し、さらに個別株式や投資信託の最適組合せを提案する生成AIアプリ、W2Cの開発に着手しています。これまで当社グループが開発しナレッジを蓄積してきた相続・財産承継や税務、資産分析等専門性の高い計算エンジンと生成AIを掛け合わせることで、個人の資産形成と不動産、非上場株式を含めた資産管理のためのパーソナライゼーションを追求した利便性の高い提案・支援システムを開発中です。
当社グループは、業務プロセスの効率化を志向する金融機関との取引関係の維持・強化、最新のAI、ビッグデータ解析等先進テクノロジーの動向についての情報収集及び研究開発に対する投資を強化し、市場をリードする革新性のあるシステムを開発・提供することにより、我国が他国に先んじて到来する人生100年時代、大相続時代における多様な課題を解決してまいります。
⑥ 海外展開
昨今、日本を除く東アジア地域において、日本に比べ若い世代の資産家が増加しており、特に国家による社会保障制度の整備が遅れている地域の企業家及び富裕層にとって、個人の資産管理は重要な課題となっております。また、スマートフォンによる資金決済、資金運用、ファミリーオフィスに係る統合資産運用システムは日本以上に進展しつつあり、アセットアロケーションシステムの中国本土の複数の銀行へのライセンス課金が行われています。
当社グループは、2023年7月にアジア太平洋地域のCFP基準設定ボード(Financial Planning Standards Board)の10カ国の理事長が来日した際にプレゼンテーションや交流会を行うなど、将来に向けた海外展開も視野に入れた活動を行っており、海外現地の視察も含めた情報収集や有力システム会社との提携について継続的に取り組んでまいります。
特に、中国本土及び台湾の銀行に対する富裕層向けシステムの提供、並びにベトナム、インドネシア等国民平均年齢の低い国々に対する生命保険フロントシステムからバックオフィスシステムの提供を短期的課題と位置付けております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①ガバナンス
当社グループにとってのサステナビリティとは、事業を通して社会課題の解決に寄与することであり、当社グループの持続的な成長が、社会の持続的な発展に貢献できるような世界を目指すことです。その実現のため、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、地域社会、従業員等、各ステークホルダーと良好な関係を築き、長期的視野の中でグループ企業価値の向上を目指すべく経営活動を推進しております。
②リスク管理
当社の取締役会の下にサステビリティ委員会を設置し、全社的なサステナビリティに関わる課題の取組を総括しております。サステナビリティ委員会は、各部門の責任者を中心に委員を選出し、マテリアリティの選定、KPIの設定、KPIのモニタリングと結果の報告を行っており、取締役会又は経営戦略会議に報告しております。
①戦略
当社グループの競争力の源泉は、金融(特に生命保険)という特定の事業領域に集中することにより培われてきたメンバーの知識と経験であります。また、開発スキルが多様化する中、求める開発スキルを明確にした採用活動を行うことにより、常に優秀な人材を確保していくことが、新たなサービスを開発、展開していくために必要となります。人的資本の拡充こそが、当社グループの価値創造に不可欠な要素であります。
従業員の人格、人権を尊重し、公平な処遇と安全で働きやすい職場環境を実現し、ダイバーシティ、女性活躍、テレワークなど多様な働き方を推進します。 そのために、採用活動の強化、社員のスキル転換・育成、女性が働きやすい環境の整備、開発パートナーの拡大を行います。
イ 採用方針
キャリア採用においては、性別や国籍にとらわれず、優れた人材を採用することを目指しております。また、新卒採用では情報系学生に限らず、文系学生にも門戸を開き、女性内定者3割以上を目標とするなど多様な人材の採用を目指しております。
ロ 育成方針
顧客の持続的な成長を支えるためには、ITスキルだけでなく、金融(特に生命保険)に関する幅広い業務知識や業界特有のノウハウの習得が必要であります。当社は充実した教育・研修制度のもと、全社員が多様な知識やスキルの向上に努めております。研修形式については、対面形式のほか、研修の内容や受講者層に応じてオンライン研修を用意し、様々な社員がワークスタイルに縛られることなく能力向上に取り組めるようにしております。また、PMP取得維持支援、資格取得援助制度、自己啓発支援のための補助制度などを設け、従業員の能力向上を支援しております。
ハ 環境整備
人的資本経営を本格化させるために、自己決定理論 に基づいた3つの心理的欲求「自律性」「有能感」「関係性」を意識した取り組みを実施することを支柱に人材戦略全体像を構築し、2022年10月より等級制度、評価制度、給与制度を改定しました。
エンジニア社員を中心に複数のキャリアコースを設け、短期・中長期的貢献の観点で整備された合理的な評価体系を導入することにより、レジリエンス(弾性、しなやか)なキャリア形成をはかれるようにしております。
また、女性活躍を推進すべく、女性管理職の登用を推進するほか、育児休業育児時短勤務制度を充実されるだけではなく、在宅勤務の制度化を進め、女性が働きやすい環境の整備に努めております。
②指標及び目標
当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えられる主な事項には、以下の内容が挙げられます。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、以下に開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断する主要なものであり、事業等のリスクはこれに限るものではありません。
(1) 開発プロジェクトの管理について
当社グループの受託開発事業は、請負契約による開発案件が中心であります。当該開発業務の性質上、当初の見積り以上の作業工数が必要となる場合があり、想定以上の費用負担により開発案件の採算性の悪化が生じる可能性があります。また、開発案件に対する仕様変更等による開発費用の追加発生、顧客の事業方針の変更による開発の遅延等により開発案件の採算性の悪化が生じる可能性もあります。
本書提出日現在、当社グループでは開発案件の採算性等に十分留意しつつ受注活動を行うほか、プロジェクト審査委員会を設置し、プロジェクトの状態、マネジメント状況を適時に第三者的立場で客観的に確認及び評価することで、進捗遅延等のリスクの顕在化を防止しております。このように案件管理を徹底する方針でありますが、開発遅延や仕様変更等により当初グループの見積以上の作業工数が発生し開発案件の採算性の悪化が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2) システムの不具合について
当社グループは、金融商品の販売等をサポートするためのシステムを開発・提供しておりますが、顧客の検収後にシステムの不具合(いわゆるバグ)等が発見される場合があります。当社グループにおきましては、品質管理の国際標準であるISO9001の認証を取得して、品質管理の徹底を図り、不具合等の発生防止に努めておりますが、それでもなお、製品に不具合等が発見された場合には、補修作業に伴う費用の増加、信用の低下、損害賠償などの要因により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(3) 競合について
当社グループは、金融リテール市場において、提案・要件定義・基本設計といった上流工程から開発・運用・保守に至る工程までを原則すべて自社で行う「ワンストップ・サービス」を徹底し、株式会社インフォームを連結子会社化する等の強化を行い、他社との差別化を図っております。しかしながら、金融リテール市場において、より高度な技術やノウハウを保有する競合企業が出現し、顧客のニーズをより的確に捉えたシステムを提供するようになった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(4) 顧客が特定の業界に偏っていることについて
当社グループは、売上高の大半を国内金融機関、とりわけ生命保険会社に依存しております。そのため銀行及び証券会社の顧客化、株式会社青山財産ネットワークスとの資本業務提携や、会計事務所、会計事務所ネットワーク、IFA及びFP等の非金融機関顧客に努めておりますが、生命保険業界の合併、統合などの金融再編、法令や規制の変更・強化等及び業界のIT投資の動向などの要因により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(5) 特定の販売先への依存度が高いことについて
当社グループには販売実績の10%を超える販売先が存在しております。当社グループとしましては、これらの主要顧客との取引を維持・継続するために、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ②事業ポートフォリオの分散と新規販売先の開拓」に記載した事項及び今後の金融商品の非対面による遠隔コンサルティングシステムの開発・提供等により、先端的なシステム開発や技術に係る連携を強化することに加えて、新規顧客の開拓を進め事業ポートフォリオの分散と顧客基盤のより一層の拡大等に努めております。しかし、主要顧客の営業方針の変更及びシステム投資規模の減少等、その他の理由により主要顧客との取引が終了ないし大幅に縮小した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 知的所有権について
当社グループが開発するソフトウエアの著作権等の知的所有権は、当社グループに帰属し、当社グループ独自のものであると考えております。しかし、当社グループの認識範囲外において第三者の知的所有権を侵害、または第三者が当社グループの知的所有権を侵害する可能性があります。第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7) 業績の季節変動について
当社グループの主たる事業である受託開発事業は、主要な顧客である生命保険会社等の金融機関のIT投資予算の制約を受けること、近年は生命保険会社の新商品販売時期が10月頃に偏重する傾向にあることから、売上高、営業利益、経常利益とも1月から3月(第2四半期)及び7月から9月(第4四半期)に偏重する傾向があります。また、検収基準で売上高を計上する案件があることから、何らかの理由により検収時期が翌期にずれ込んだ場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8) 人材の確保について
当社グループは金融商品取引法に準拠したシステムの開発販売及びコンサルティングを行っており、新たなサービスを開発、展開していくためには、常に優秀な人材を確保しなければなりません。開発スキルが多様化する中、求める開発スキルを明確にした採用活動を行うことにより、現時点においては必要な人材を確保しておりますが、高度な能力を持つ人材は流動化が進行しており、将来も継続して必要な人材を確保できるかどうかについては不確定であり、十分な人材を確保できない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9) 情報セキュリティ管理について
当社グループは顧客の情報システムを構築する過程において、個々の顧客業務内容等の機密情報を入手し得る立場にあることから、個人情報を含めた情報管理のため入退出管理、アクセス可能者の制限、アクセスログ取得等のセキュリティ対策を講じる等、情報管理体制の整備強化に努めており、情報セキュリティマネジメントの国際標準であるISO27001の認証を取得しております。
しかしながら、今後、当社グループの過失や第三者による不法行為等によって顧客の個人情報や機密情報、当社グループが保有する個人情報等が外部へ流出した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(10) 自然災害、事故等について
当社グループでは、自然災害、事故等に備え、バックアップサーバーの分散化、定期的バックアップ、稼働状況の監視によるシステムトラブルの事前防止又は回避に努めております。しかしながら、大地震、台風等の自然災害や事故等により、設備の損壊や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生した場合、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(11) 特定人物への依存について
当社の代表取締役社長である北山雅一(以下、同氏といいます。)は、当社の創業者であり、会社設立以来の最高経営責任者であります。経営方針や事業戦略の決定やその実行において重要な役割を果たしております。
当社グループにおいては、特定の人物に依存しない体制を構築するべく、幹部社員の情報共有や権限の委譲によって同氏に過度に依存しない組織体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社の業務を遂行することが困難になった場合、新規案件の獲得等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) ストック・オプションの権利行使による株式価値の希薄化について
ストック・オプション制度は、企業価値と役職員個々の利益を一体化し、ベクトルの共有や目標の達成等組織における職務の動機付けを向上させることを目的として導入し、今後も資本政策の中で慎重に検討しつつ、継続的に実施してまいりたいと考えております。
本書提出日の前月末における潜在株式数は81,300株であり、発行済株式総数の1.4%に相当しておりますが、権利行使された場合には、当社グループの1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(13) 業界全体の動向および法令改正等の状況について
当社グループの売上高は生命保険会社に大きく依存しております。このため、保険商品の販売動向、新商品の販売数及び保険業法等の生命保険業界に関連する法令の改正等が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、AIやメタバース等の最新技術の把握に遅れた場合は、市場ニーズを取り込めない可能性があります。
当連結会計年度におけるわが国の経済は、調達供給網制約の緩和による自動車を中心とした製造業の生産が復調したことに加え、経済活動の正常化や賃金上昇に伴う個人消費回復、訪日外国人によるインバウンド需要の復調もあり、企業収益は全体として緩やかな回復傾向が見られました。一方で、米国、欧州においては金融引き締めによる経済成長の停滞が懸念されており、ウクライナ情勢の長期化や中東における新たな地政学上のリスク要因も不安定材料として加わり、世界経済は依然として不確実性が高い環境となっております。
当社の主要顧客が属する金融分野における主なトピックスとしては、岸田政権が2023年を資産所得倍増元年とし、貯蓄から投資へのシフトを強力に進めています。2023年6月末の家計の金融資産残高は、2,115兆円と過去最高額を更新し、日本の家計金融資産に占める現預金比率は52.8%と米国に比べ非常に高く、退職後の資金枯渇の可能性が依然高いと言えます。岸田政権が推進する「資産所得倍増プラン」では、この現預金を投資に変えていくことで持続的な企業価値向上の恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも及ぶような好循環を実現させることを目指しています。
このような状況の下、岸田政権は「新NISA革命」というべき個人投資家を対象にした資産所得倍増プラン実現のための国策として、つみたてNISA枠と成長NISA枠からなる新NISA制度を2024年1月から開始します。新NISAは、株式や投資信託から発生する配当・投資損益を非課税で保有できる期間を無期限とし、保有限度額も1,800万円に拡大する制度であり、これに伴い当社顧客企業であるメガバンクや大手証券会社においては既に新たな個人顧客獲得と維持に向けて顧客本位の業務運営を実現する最新のコンサルティングサービスを強化する動きが相次いで見られます。
一方、2023年初めよりChatGPTの急速な実用化による「生成AI革命」により、金融機関の業務プロセスの自動化、省力化さらには個々の顧客属性・ニーズに合わせたパーソナリゼーションを追求するための先進のAIテクノロジーを導入する実例が欧米の大手金融機関で見られます。生成AIを活用した「仮想金融アシスタント」やビッグデータ解析により、金融ポートフォリオに対して「顧客がとるべきアクション」を自動提案するテクノロジーが米国で浸透しつつあります。2024年以降、新NISA革命と生成AI革命の2つの革命による金融資産運用立国の実現が我国における中長期的国策として劇的に加速し、当社の事業環境の拡大に対し強力な追い風となると予想されます。
このような環境の中、当社グループは当連結会計年度を2024年9月期に終了する中期経営計画の第2年度として位置づけ、資産所得倍増計画に沿いながら金融レガシーシステムのDX化と日本人のゴールベースプランニングのDX化により、個人資産の最適なアセットアロケーションと豊かな老後・円滑な相続を実現するための施策を継続的に実行してまいりました。当連結会計年度における主なトピックスは次のとおりです。
① 当連結会計年度の売上高は8,046,862千円(前年度比19.3%増)と会社設立以来過去最大の売上高を計上しました。また、営業利益は324,673千円(前連結会計年度は営業損失260,240千円)、経常利益は331,093千円(前連結会計年度は経常損失245,813千円)、親会社株主に帰属する当期純利益は221,621千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失248,375千円)となり、各段階利益ともに黒字転換を果たしました。
② 2024年1月から始まる新NISA制度に対してつみたてNISAと成長NISAの最適利用配分を決定し、さらに個別株式や投資信託の最適組合せを提案する生成AIアプリ、W2Cの開発に着手しました。この開発については、生成AIに多くの知見と実績、開発能力を有する米国のAwakApp社と業務提携・資本提携を実施し、個人の資産形成と資産管理のためのパーソナリゼーションを追求した利便性の高い提案・支援システムを開発中です。
③ 生命保険会社においては、変額個人年金保険、変額保険等の資産形成型の新商品を加えた生保設計書・申込書作成システムの開発プロジェクトやゴールベースプランニングシステムの再構築プロジェクト等の受託開発を行いました。また、基幹系システムにある顧客データ等をAWS環境でクラウド化してデータウェアハウス基盤を構築し、それらのビッグデータを解析・活用する仕組みを整備するという新たな生保DXプロジェクトに取り組んでおります。
④ メガバンク向けには、大相続時代の到来に向けて融資先企業、オーナーの相続・事業承継・財産承継コンサルティングを自動化・効率化するウェルスマネジメントプラットフォームシステムを提供しました。総資産に対する課題を分析し、実行すべきアクションプランを生成する顧客プロジェクトを支援しました。受託開発売上に加えて使用料課金も拡大し、顧客金融機関が目標とする最先端イノベーション戦略の実現を強力に支援しております。
⑤ 人生100年時代を見据えた世界分散投資による資産形成を支援するシステムとして、信託銀行向けに確定拠出年金運用アプリを提供いたしました。資産クラスの変更、投資信託の組替ロジックの提供をAPIで実現し、開発期間を短縮して直感的でわかりやすい操作性を実現しています。
また、証券会社向けには、ロボアドバイザーによりファンドラップのオンライン上での資産クラスの最適配分シミュレーション、契約締結システムを提供しました。リスク許容度診断に基づくモデルポートフォリオの提案、将来運用予測を表示し、多様な投資目標の達成可能性を確率的にシミュレーションし、ファンド選択から契約締結に至る時間を短縮し、手続きを格段に自動化するDXシステムを提供いたしました。
なお、当社グループはシステム開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。事業の売上区分別の業績は次のとおりであります。
(システム開発)
生命保険会社向けの①ライフプランシステム、②エステートプランシステム、③生保設計書システム、④生保申込書システム、⑤生命保険契約ペーパーレスシステム、⑥生保販売業務の省略化、効率化、自動化を実現するフロントエンドシステム、非金融機関向けの統合資産形成アドバイスシステム等の開発販売の結果、当連結会計年度のシステム開発売上高は7,566,903千円(前年度比19.8%増)となりました。
ライフプランシステム等で使用する、CAPライブラリ(CAP/Lib)について、使用許諾契約や保守契約は引続き堅調であり、使用許諾・保守運用売上高は450,519千円(前年度比12.8%増)となりました。
(その他)
システムプラットフォームを活用した富裕層向けの資産管理コンサルティング契約の獲得を進め、その他売上高は29,439千円(前年度比9.5%減)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて678,266千円増加し、1,866,155千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,216,480千円の収入(前連結会計年度は182,173千円の支出)となりました。これは主として税金等調整前当期純利益318,604千円、減価償却費401,553千円、売上債権の減少218,869千円を計上したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、433,676千円の支出(前連結会計年度は164,646千円の支出)となりました。これは主として無形固定資産の取得による支出302,645千円、投資有価証券の取得による支出81,248千円を計上したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、104,536千円の支出(前連結会計年度は334,996千円の支出)となりました。これは主として長期借入金の返済による支出591,678千円、配当金の支払額62,858千円を計上した一方で、長期借入れによる収入550,000千円を計上したこと等によるものであります。
当社グループは、システム開発事業の単一セグメントのため、生産、受注及び販売の状況については、売上の区分別に示しております。
当連結会計年度におけるシステム開発売上の生産実績は、次のとおりであります。なお、他の売上区分については生産に相当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
(注) 金額は、販売価格で記載しております。
当連結会計年度におけるシステム開発売上の受注実績は、次のとおりであります。なお、他の売上区分については受注生産を行っていないため、受注実績に関する記載はしておりません。
(注) 金額は、販売価格で記載しております。
当連結会計年度における販売実績を売上区分別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.「その他」は、富裕層向けコンサルティング、セミナー開催等に関する売上であります。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、それが資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。
これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」を参照ください。
生命保険会社向けには、資産形成商品である変額個人年金保険等の生保設計書・申込書作成システムの開発やゴールベースプランニングシステムの再構築プロジェクトをはじめ、基幹系システムのクラウド化やデータウェアハウス基盤構築プロジェクトにも参画しました。銀行向けでは、相続・事業承継・財産承継コンサルティングを自動化・効率化するウェルスマネジメントプラットフォームシステムの提供や人生100年時代を見据えた世界分散投資による資産形成を支援する確定拠出年金運用アプリの開発を行い、受託開発売上に加えて使用料課金も拡大しました。また、証券会社向けには、ロボアドバイザーによるファンドラップシミュレーションを提供し、国際分散投資と資産管理の自動化を支援しました。
以上のとおり、コロナ禍終息後の生命保険会社における新商品投入の復活に銀行や証券会社における新規業務開拓も加わり、当連結会計年度の売上高は8,046,862千円(前年度比19.3%増)となり、過去最高の売上高を記録しました。
当連結会計年度は、生命保険会社や銀行向けの受託開発および使用料課金の伸長により売上高が前連結会計年度に比べ2割近く増加した一方で、労務費・外注費等の採算管理の強化による売上総利益率の改善や販管費及び一般管理費の増加を抑制したことなどが奏功し、営業利益は324,673千円(前連結会計年度は営業損失260,240千円)となりました。
(経常利益)
営業外収益として、受取利息及び配当金を14,890千円計上しました。また、営業外費用として、支払利息を19,072千円計上しました。この結果、経常利益は331,093千円(前連結会計年度は経常損失245,813千円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等合計を96,983千円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は221,621千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失248,375千円)となりました。
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて450,180千円増加し、5,545,948千円となりました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産合計は、前連結会計年度末に比べて421,054千円増加し、3,557,226千円となりました。これは主として現金及び預金が678,267千円増加した一方で、売掛金及び契約資産が218,869千円減少したこと等によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産合計は、前連結会計年度末に比べて29,125千円増加し、1,988,721千円となりました。これは主としてソフトウエア仮勘定が156,135千円、投資有価証券が139,723千円増加した一方で、ソフトウエアが204,111千円、繰延税金資産が36,158千円減少したこと等によるものであります。
経営成績に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2事業の状況 3事業等のリスク」を参照ください。
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」を参照ください。
当社グループは、企業体質の強化を図りながら持続的な企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な資金を、安定的に確保することを基本方針としております。
当社グループの資本の財源は、主に営業キャッシュ・フローで生み出した資金を源泉とし、必要に応じて資金調達を行っております。
なお、当連結会計年度末における借入金の残高は1,336,283千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,866,155千円となっております。
当社グループは、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、事業の収益力を表す経常利益を重視し、拡大を目指しております。当連結会計年度におきましては、経常利益331,093千円を計上いたしました。引続き事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させてまいります。
該当事項はありません。
当連結会計年度は、オープンAIが開発したChatGPTの急速な実用化により、金融機関の業務プロセスの自動化、省力化が大幅に進化する可能性を受けて、これまで当社グループが開発しナレッジを蓄積してきた相続・財産承継や税務、資産分析等専門性の高い計算エンジンと生成AIを掛け合わせることで、個人の資産形成と不動産、非上場株式を含めた資産管理のためのパーソナライゼーションを追求した利便性の高い提案・支援システムの開発に着手しました。米国では、生成AIを活用した「仮想金融アシスタント」やビッグデータ解析により、金融ポートフォリオに対して「顧客がとるべきアクション」を自動提案するテクノロジーが浸透しつつあり、日本においてもAIを活用したシステム開発で遅れを取らないよう研究開発に注力していくことが重要課題と認識しております。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は