第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは創業以来、ITサービスのプロフェッショナルとして、高度な技術と高い品質によるシステム開発を通じて、お客様の経営戦略の実現に貢献することを経営の基本方針とし、組織の技術力の向上のためCMMI®レベル5の取得、個人の技術力向上のためPMP®の取得率の向上に取り組んでまいりました。今後とも、CMMI®とPMP®をベースとした品質管理の強化に取り組むことで、お客様の顧客満足度向上に努めてまいります。

また、「中期経営計画(2021年10月-2026年9月)」を策定し、DX(注)により新たな価値を創出するとともにESGへの取組みを通じて、社会的価値・経済的価値を創出し、持続可能な社会の実現に寄与することをVISIONとして掲げております。

 

(注)DX(デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略)

経済産業省では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しております。

 

 

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(2)目標とする経営指標

当社グループは、事業規模の拡大による売上高の増加及び品質管理の強化による利益率の維持、向上を経営課題としております。「中期経営計画(2021年10月-2026年9月)」において、「連結売上高180億円以上(年間平均成長率6%以上)」を目指すべき指標として掲げております。また、内部強化のための積極的な投資でDX提供価値の向上や新技術の獲得を目指しつつ、「営業利益率12.0%以上」を確保してまいります。

 

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、「中期経営計画(2021年10月-2026年9月)」にて、VISION達成に向けた3つの基本方針及び5つの重点施策を策定しております。

<基本方針>

①DX Solution Partnerへの進化

DX(デジタル・トランスフォーメーション)に適応し、社会課題や顧客課題を解決できるDX Solution Partnerへの進化を目指してまいります。

②高付加価値人材の創出

DX(変革の時代)に適応可能な、付加価値の高い人材の創出を目指し、研修や育成制度の改革、働き方改革の推進を行ってまいります。

③持続可能な社会の実現

中期経営VISION「Value Engagement Partner」を基にした経営を通じ、社会的価値・経済的価値を創出し、持続的な企業価値向上だけでなく、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

<重点施策>

①営業力・技術力の強化

②新規事業の創出

③エコシステムの確立

④研修・育成改革の実現と社会への還元

⑤働き方改革の実現

詳細につきましては、(4)会社の対処すべき課題に記載しております。

 

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(4)会社の対処すべき課題

① 営業力・技術力の強化

当社では、システム開発で培った長年の経験を土台として、2021年9月に4度目の達成となったCMMI®レベル5、PMBOK®にアジャイル開発のコンセプトを加えた当社独自の開発標準SICPをシステム開発における品質管理の大きな柱としております。現在進行中の中期経営計画のVISION“Value Engagement Partner”では「DXによる新たな価値の提供」を掲げており、その施策の一つとして、新たなSICP Advancedの確立をプロジェクトマネジメントの更なる強化の柱としております。システム設計概念として、従来は、ウォーターフォールとアジャイルという開発手法の分類で進めておりましたが、DX Solution Partnerとしてお客様と「技術による付加価値の創出」を目指し、ファシリテーションの発想を加えて、SoR(System of Record)、SoE(System of Engagement)といったシステムの主目的の分類で新たな領域への拡張を行ってまいります。

 

② 新規事業の創出

DX Solution Partnerとしての地位確立には、デジタルビジネスへの適応と創出が不可欠なものとなります。DXに適応した組織への変革を目指すことにより、コア事業を拡大し、新規事業の創出を図ってまいります。

<DX専門組織の新設>

・DX推進を目的とした専門組織の本格稼働によりDX関連ビジネスの拡大を加速してまいります

・従来と異なる開発プロセスやマネジメント、CAMBRIC(注)等の技術領域を習得し、ビジネスを確立してまいります

<DX人材の育成・確保>

・若手、未経験者のポテンシャル人材の採用枠を拡大し、社内に設立したDX Expert Academyの活用により、従来型SIの技術者育成だけではなく、CAMBRIC技術領域に対応するDX人材を内部育成し、中長期的にコア事業の拡大を推進してまいります

・先端デジタル技術、サービスオファリング能力やDXケイパビリティを保有する人材を育成してまいります

・知識の習得のみならず、実践的な経験を積むためDX案件を優先受注し、開発力にとどまらず共創型のデジタル人材を確保してまいります

 

(注)CAMBRIC

DXの本格展開に向けて避けては通れないCloud Computing, AI, Mobility, Big Data, Robotics, IoT, Cyber Securityの7領域を指しております。

 

③ エコシステムの確立

当社では、業種・業態の垣根を越えるエコシステムの確立が、DX関連ビジネスの創出、拡大を後押しするものと考えております。急速に変化・多様化する顧客や一般消費者のニーズに柔軟に対応するため、多様な産業のプレーヤーが参画するネットワークを構築し、ケイパビリティ補完型のエコシステムを形成してまいります。

 

④ 高付加価値人材の創出

情報サービス産業は“人が全て”であり、ヒューマン・キャピタルが当社の持続的な企業価値向上に寄与すると考えております。変革のDX時代に適応可能な、付加価値の高い人材の創出を目指し、年齢・性別・中途採用を問わずに優秀な人材の確保・育成に努め、ダイバーシティを組織力の最大化に繋げてまいります。

<研修・育成改革の実現>

・デジタル対応力を強化してまいります

・変革へのチャレンジが評価される人事制度の見直しなど、多様な人物像に合わせた制度設計を行ってまいります

・社員エンゲージメント向上を図ります

<働き方改革の実現>

・ワークスタイルの変革を支援してまいります

・デジタル技術を活用したナレッジ共有などの業務プロセス変革を図ります

・SICP Advancedの確立を中心に据えた次世代生産技術による開発プロセス変革を行ってまいります

<IT教育を通じた社会への還元>

・児童・学生向けIT教育などを通して、質の高い教育を社員だけでなく社会に普及させていくことを実現してまいります

 

⑤ 持続可能な社会の実現

当社グループは中期経営VISION“Value Engagement Partner”を基にした経営を通じて、社会的価値・経済的価値を創出し、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現という好循環を創っていくことに、積極的に取り組んでまいります。

<ESG/SDGsに関するマテリアリティ>

・質の高いITサービスを提供し、社会に安全を

・多様なプロフェッショナルを育成し、活躍できる社会を

・コーポレートガバナンスを高め、責任ある企業活動を実行し、社会から信頼を

 

⑥ M&Aへの取組み

当社グループの持続的な事業価値向上のためには、内部成長だけでなく、エコシステムの確立も含めた技術・ノウハウの獲得や共同事業推進が必要不可欠であります。他企業との資本業務提携やM&Aなど外部成長にも積極的に取り組んでまいります。

 

⑦ 新型コロナウイルス対策

新型コロナウイルス感染拡大を契機に、当社においてもリモートワーク体制の確立などにより、従業員だけでなくステークホルダー各位の安心安全確保に努めてまいりました。また、社会が新型コロナウイルス感染拡大を経験したことで、ITの重要性が一段と高まり、リモートワークの導入や事業継続への対応としてクラウドに関連するビジネスは急速に拡大しております。DXの加速、リモートワーク、事業継続対策といった視点から、クラウドに求められる機能や運用は多様化・高度化しており、当社もグループで保有するクラウド関連の技術を結集させ、既に高い評価をいただいているマルチクラウドなど技術知見も大いに活かしてお客様の期待に応えてまいります。

 

⑧ 事業上のセキュリティリスク発生の防止

情報セキュリティにつきましては、プライバシーマーク、ISMS(ISO/IEC27001)等の認証を取得しており、従業員に対するセキュリティ教育にも力を入れております。セキュリティ事故発生リスクの回避・低減に努めることは経営の重要課題と認識し、今後も事業上のセキュリティリスク発生の防止に努めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは創業以来、ITサービスのプロフェッショナルとして、高度な技術と高い品質によるシステム開発を通じて、お客様の経営戦略の実現に貢献することを経営の基本方針とし、組織の技術力の向上のためCMMI®レベル5の取得、個人の技術力向上のためPMP®の取得率の向上に取り組んでまいりました。今後とも、CMMI®とPMP®をベースとした品質管理の強化に取り組むことで、お客様の顧客満足度向上に努めてまいります。

 また、「中期経営計画(2021年10月-2026年9月)」を策定し、DXにより新たな価値を創出するとともにESGへの取組みを通じて、社会的価値・経済的価値を創出し、持続可能な社会の実現に寄与することをVISIONとして掲げております。

 

(1)サステナビリティ

①ガバナンス

 当社においては、取締役会がサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、その対応方針及び実行計画等に関する経営上の重要事項を審議・監視いたします。詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

②リスク管理

 当社では、代表取締役を委員長とする業務執行取締役で構成するリスク管理委員会を設置し、全社的リスクの識別・評価及びリスク対応策を決定するとともに、リスクの発生の兆候を把握し、対応策実施の必要性判断を行っております。

 リスク管理委員会は四半期に1回定例で開催し、事業環境の変化等による新たなリスクの可能性が生じた場合やリスク発生の兆候を把握した場合は随時開催しております。リスクを積極的に予見することにより、会社に及ぼす影響を最小限に抑えるための体制作りを推進しております。

 また、安全衛生委員会、ISMS(注1)推進委員会、EMS(注2)推進会議など各種社内委員会・会議体を設置し、情報セキュリティや環境などの各種マネジメントシステムを構築・運用し、リスクの的確な把握、適正な対処、監視・責任体制を明確にしております。

 なお、重要度の高いリスクについては代表取締役及びリスク管理委員会に報告されるほか、リスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては取締役会に報告されます。

(注1)ISMS(Information Security Management System)

情報マネジメントシステムの略で、情報の機密性、完全性、可用性を保護するための体系的な仕組みをいいます。

(注2)EMS(Environmental Management System)

環境マネジメントシステムの略で、組織や事業者が、その運営や経営の中で自主的に環境保全に関する取組を進めるにあたり、環境に関する方針や目標を自ら設定し、これらの達成に向けて取り組んでいくための組織や事業者の体制・手続き等の仕組みをいいます。

(2)人的資本

①戦略

 当社グループは、2021年10月から2026年9月まで(第43期~第47期)の5ヶ年の中期経営計画において、“Value Engagement Partner”として、DXにより新たな価値を提供すること、ESG経営により新たな価値を創出することをVISIONとしております。

 また、VISION達成に向けて、当社がDXに適応し、社会課題や顧客課題を解決できる「“DX Solution Partner”へ進化」すること、そのためにDXに適応可能な「高付加価値人材の創出」を目指すこと、更には中期経営VISIONを基にした経営を通じて社会的価値・経済的価値を創出し、持続的な企業価値向上の実現、ひいては「持続可能な社会の実現」に貢献していくことを基本方針として掲げております。

 

②指標及び目標

 情報サービス産業は“人が全て”であり、ヒューマン・キャピタルが当社グループの持続的な企業価値向上に寄与すると考えております。

 当社の中期経営計画(2021年10月-2026年9月)において、変革のDX(デジタルトランスフォーメーション)時代に適応可能な、付加価値の高い人材の創出を目指し、年齢・性別・中途採用を問わずに優秀な人材の確保・育成に努め、ダイバーシティを組織力の最大化に繋げていくことを目標に掲げ、従業員の採用を積極的に行っておりますが、多様性の確保に向けた議論と検討の中で、現時点において国外のステークホルダーがほとんど存在していないこと、また年齢や性別による技能の差が認められる事業ではないことから、採用や中核人材の登用等の人材戦略としては適材適所を重視して、中途採用者・女性・外国籍といった特定区分について、本報告書提出日現在において、具体的な指標及び目標を設定しておりません。今後、関連する指標及び目標のデータ収集と分析を進め、開示項目を検討してまいります。

 なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項を以下に記載しております。

あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資家の判断にとって重要であると考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。

なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。

当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

本項における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

① 経営環境の変化について

情報サービス産業においては、顧客企業のIT投資への姿勢が経済情勢や景気動向の変化によって影響を受ける傾向があります。国内外の経済情勢の低迷や景気の悪化により顧客のIT投資が減少した場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

② 価格競争について

顧客企業のコスト圧縮姿勢は継続しており、価格、品質両面で同業他社との価格競争リスクにさらされております。こうした状況下、当社グループはプロジェクト管理ノウハウを活かし、より付加価値の高いサービスを提供することで他社との差別化を図り、価格競争のリスクを低減しておりますが、今後もさらなる価格低下圧力を受けた場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

③ 不採算プロジェクトの発生について

当社独自のシステム開発標準(SICP)に基づき、PMP®を保有するプロジェクトリーダがプロジェクト管理を徹底し、また毎週定期的に開催しているプロジェクトレビュー等により、原価が受注額を上回る、いわゆる不採算プロジェクトの発生を未然に防止するよう努めておりますが、予測できない要因により、不採算プロジェクトが発生した場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

④ 特定顧客への依存について

当社グループの主要顧客上位3社(グループ企業含む)向け売上高は全体の41.6%(前連結会計年度は41.6%)と高くなっております。当該顧客の事業方針や経営状況に大幅な変化が生じた場合は、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 人材の確保について

プロジェクト管理能力を有するリーダクラスの従業員を中心に人材の採用を積極的に行っており、また従業員の教育にも力を入れておりますが、今後計画どおりに必要な人材が確保できない場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 長時間労働と過重労働について

システム開発プロジェクトにおいては、当初計画にない想定外の出来事が発生し、品質や納期を厳守するため長時間労働や過重労働が発生することがあります。当社グループでは毎週定期的に開催されるプロジェクトレビュー等において、問題の早期把握、解決に努めておりますが、やむを得ない事情によりこのような事象が発生した場合には、システム開発での労働生産性の低下等により当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 情報セキュリティについて

当社グループは、自ら個人情報を収集する業務を行っておりませんが、取引の中で個人情報・機密情報を取り扱う場合があります。当社グループは、全社的にセキュリティ対策に取組み、プライバシーマークやISMS(ISO/ IEC27001)等の認証を取得し、従業員のセキュリティ教育にも力を入れております。しかしながら、これらの対策にもかかわらず、外部からの不正アクセスや社内管理体制の不手際等により、万一当社グループから情報漏洩が発生した場合は、社会的信用の失墜、顧客との取引停止や損害賠償請求等が発生し、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

⑧ M&Aについて

当社グループは、事業基盤拡大のために他企業との資本業務提携やM&Aを行う可能性があります。これらM&A等を行う際には事前に十分調査、検討を行いますが、想定したシナジー効果や収益が得られない場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

⑨ 技術革新について

情報サービス産業においては技術革新のスピードが速く、当社グループでは組織を挙げて最新の技術情報を収集、分析しておりますが、技術革新への対応が遅れた場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

⑩ コンプライアンスについて

当社グループは、法令遵守の徹底を図るべく、企業行動規範を始めとした関連諸規程を定め、コンプライアンス教育に力を入れておりますが、法令などに抵触する問題が発生した場合には、社会的信用の失墜、顧客との取引停止や損害賠償請求等により、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症対策として在宅勤務を推進しており、規程等の社内制度やインフラの整備に万全を期しておりますが、同様に法令などに抵触する問題が発生した場合には、社会的信用の失墜、顧客との取引停止や損害賠償請求等により、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

⑪ 自然災害等の発生について

当社グループの業績は、地震・台風などの自然災害、紛争・暴動・テロなどの人為的災害、新型コロナウイルスなどの感染症の流行などにより事業活動の継続に支障をきたす可能性があります。このような予期せぬ事態が発生した場合に備え、当社グループは事業継続のための対応を実施、検討しておりますが、災害の状況によっては、業務の全部又は一部が停止し当社グループの業績に影響する可能性があります。

 

⑫ 新型コロナウイルスについて

世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大により、事業を取り巻く環境は先行き不透明な状況にあります。
当社グループにおいては、一部プロジェクトの開発期間延伸や、新規プロジェクトの立ち上げ見送り、対面での営業活動自粛等、受注獲得にも少なからず影響が出ているものの、当連結会計年度の業績に与える影響については限定的であると認識しております。しかしながら、新型コロナウイルスの影響が長期化した場合や、当社グループの従業員や就業先のお客様、協力会社等の関係者が新型コロナウイルスに感染した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、当社グループでは、新型コロナウイルス感染防止対策として、在宅勤務、時差出勤の推進、リモート会議の活用、マスクの着用、アルコ―ルでの手指消毒を行い、感染リスクの低減に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」へと移管されたことで、各種政策に加えてインバウンド需要が順調に回復するなど、経済活動が正常化し企業収益にも緩やかな改善がみられております。一方で、地政学リスクの増大と、それに伴う資源価格の高騰、加えて円安による原材料価格の高騰が企業収益や家計へ大きな影響を与えており、物価の上昇に収束が見えないことから、先行き不透明な状況になっております。

当社グループが属する情報サービス産業においては、前年度に引き続き企業の設備投資意欲は旺盛で、2023年9月の日銀短観でも、2023年度はソフトウェア投資計画で10%以上の伸びとなっております。

このような環境下、当社グループ売上高の4割を占める金融セクター(保険を含む)だけでなく、デジタル化とDX推進によるビジネス拡大意欲が旺盛な流通・小売セクターやサービス産業向けのシステム開発案件が好調だったことで、売上高は過去最高となりました。一方で、新卒や第二新卒の採用強化、業容の拡大に伴うオフィス増床、既存社員の待遇改善、リスキリングを含む技術者教育などに注力した結果、経費の増加が、売上高の増加を上回る結果となりました。採用や人材育成の強化が利益を圧迫する主要因となりましたが、各企業が来春新卒採用において、想定の採用人数を満たさず採用の再募集や延長などを行っている現状を考え合わせると、適切な人材獲得を行えたものと考えており、中期経営計画の基本方針のひとつである「高付加価値人材の創出」の一環としての人材強化は、高度領域案件の受注獲得、高付加価値人材の価格転嫁による受注単価の上昇といった先につながる効果も生み出してきております。

また、教育投資による直接的な効果だけではなく、6月に当社社員の山田豊が、Google社の「2023 Google Open Source Peer Bonus」を受賞、当社社外取締役鷲﨑弘宜及びフェロー小林浩が、情報処理学会ソフトウェア工学研究会主催の「ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2023」にて最優秀論文賞を受賞するといった当社の技術力の高さの発信も、ブランド力強化による受注環境の後押しをしております。

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高15,327,359千円(前年同期比4.6%増)、営業利益1,692,248千円(同6.8%減)、経常利益1,716,935千円(同6.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,163,025千円(同6.4%減)となりました。

なお、当社グループは単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べて503,617千円増加し、4,141,310千円となりました。

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は1,171,903千円(前年同期は956,583千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,703,237千円の収入があったこと、棚卸資産の増加額64,125千円、法人税等の支払額610,634千円があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は190,345千円(前年同期は171,473千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出71,918千円、長期前払費用の取得による支出52,140千円、保険積立金の積立による支出49,625千円があったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は477,939千円(前年同期は819,105千円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額438,438千円等によるものであります。

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループはソフトウェアの開発・保守等に係るサービスの提供を行っており、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ソフトウェア開発サービス

15,460,907

105.0

1,336,949

110.0

合計

15,460,907

105.0

1,336,949

110.0

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

ソフトウェア開発サービス

15,327,359

104.6

合計

15,327,359

104.6

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

(株)エヌ・ティ・ティ・データ

1,675,720

11.4

2,199,881

14.4

第一生命情報システム(株)

1,781,130

12.2

1,689,318

11.0

(注)株式会社エヌ・ティ・ティ・データは2023年7月1日付で株式会社NTTデータグループに商号変更しております。なお、当連結会計年度における販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合には、国内事業会社である株式会社NTTデータとの取引も含まれております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りによる不確実性のため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

当連結会計年度における売上高は、15,327,359千円(前年同期比4.6%増)となりました。主な販売先は株式会社エヌ・ティ・ティ・データ2,199,881千円(売上高に対する割合14.4%)、第一生命情報システム株式会社1,689,318千円(同11.0%)、日鉄ソリューションズ株式会社1,183,185千円(同7.7%)であります。

なお、株式会社エヌ・ティ・ティ・データは2023年7月1日付で株式会社NTTデータグループに商号変更しております。また、売上高には国内事業会社である株式会社NTTデータとの取引も含まれております。

 

b.売上原価、売上総利益

売上原価は外注費や人件費の増加等により前期比5.6%増の12,174,787千円となり、売上高に対する割合は79.4%となりました。

売上総利益は売上高の増加及びプロジェクト管理の強化により、前期比0.8%増の3,152,571千円となり、売上高に対する割合は20.6%となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

販売費及び一般管理費は事務所増床による地代家賃や積極的な新卒及び中途採用による給与手当及び教育費の増加等により前期比11.4%増の1,460,323千円となり、売上高に対する割合は9.5%となりました。

営業利益は、前期比6.8%減の1,692,248千円となり、売上高に対する割合は11.0%となりました。

 

d.営業外損益、経常利益

営業外収益は前期比39.9%増の33,829千円、営業外費用は前期比11.8%減の9,142千円となりました。

経常利益は前期比6.1%減の1,716,935千円となり、売上高に対する割合は11.2%となりました。

 

e.親会社株主に帰属する当期純利益

法人税等合計が前期比6.3%減の540,211千円となったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比6.4%減の1,163,025千円となり、売上高に対する割合は7.6%となりました。

 

なお、経営成績等の状況の概要については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 当連結会計年度の財政状態の分析

a.資産の部

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度と比べて793,787千円増加し、8,589,592千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末と比べて619,276千円増加し、6,758,485千円となりました。これは主に、現金及び預金が503,617千円、売掛金が68,889千円、仕掛品が64,125千円増加したこと等によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末と比べて174,510千円増加し、1,831,106千円となりました。これは主に、投資その他の資産が191,457千円増加したこと、無形固定資産が41,747千円減少したこと等によるものであります。

b.負債の部

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末と比べて22,189千円増加し、2,417,028千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末と比べて14,907千円減少し、2,083,937千円となりました。これは主に、賞与引当金が54,171千円増加したこと、未払法人税等が71,290千円、1年内返済予定の長期借入金が58,332千円減少したこと等によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末と比べて37,096千円増加し、333,091千円となりました。これは主に、長期借入金が29,166千円増加したこと等によるものであります。

 

c.純資産の部

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末と比べて771,598千円増加し、6,172,563千円となりました。これは主に、利益剰余金が724,088千円増加したこと等によるものであります。

 

⑤ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当社グループのキャッシュ・フローの状況の概要については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資金需要のうち主なものは、外注費、労務費、販売費及び一般管理費等に係る運転資金であります。これらの所要資金については、自己資金により充当しております。

ただし、①大規模プロジェクトなどの案件によって立替が先行する場合、②M&Aによる買収資金の手当てが必要な場合や、③緊急時の対応等を鑑みて金融機関との良好な関係を維持することを目的とした場合には、金融機関からの調達を行うこととしております。

なお、当連結会計年度末における借入金の残高は307,500千円、現金及び現金同等物の残高は4,141,310千円であり、当面の資金需要に十分対応できる資金を保有しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、内部強化のための積極的な投資により、DX提供価値を向上させることや新技術を獲得することを目的としております。

そのために、まずは、DX人材を育成していくことが重要であり、中長期的なコア事業の拡大を推進すべく、若手・未経験者のポテンシャル人材の採用枠を拡大し、従来型SIの技術者育成だけではなく、CAMBRIC技術領域に対応するDX人材を内部育成しております。また、DX提案力の強化策として、アーキテクチャの標準化やベストプラクティスを整備し、パターン化することにより、DX関連のナレッジマネジメント強化を推進しております。迅速かつ効果的な提案を推進し、ビジネス創出型のスタイルを確立していく狙いであります。

なお、OJTによる育成や、品質管理活動の一環として行っていることもあり、当連結会計年度に研究開発費として区分経理されている金額としては15,900千円であります。