第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営戦略等は次のとおりであります。

また、次の文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営理念及び経営方針

当社は、「グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む」を経営理念(ミッション)として掲げ、研究開発事業とライセンス・製品販売事業の2つのビジネスモデルを軸として、世界中のバイオリファイナリープラントにおいて当社の技術が使われ、「創造的な技術力、提案力でバイオリファイナリー分野を牽引し、常識を変革する企業になる」ことを目指しております。

 

(2) 経営戦略等

当社の成長は、次の事項により実現してまいります。

 

① 3つの収益化手法での事業展開

当社の強みは、バイオリファイナリーの事業について、菌体開発から商用生産まで全体を通した知見と経験を有していることであります。したがって、バイオリファイナリーにかかる様々な課題に対して、その解決法を考え、提供していくことで、バイオ化学品の上市を実現していくことが弊社の事業のコアとなります。

当社がバイオ化学品の上市を実現するための収益化の形として、次の3つの手法が挙げられます。

・ライセンス

・自社販売

・テクノロジーパッケージ

 

いずれの手法についても、市場規模の大きい重厚型、かつ継続的な収入が得られる長大型の案件に集中し、事業を展開してまいります。

 

② バイオリファイナリー分野におけるプラットフォームの構築

世界の脱炭素の流れにおいて、欧米を中心に、化学品のバイオ化の要請が強まりつつありますが、まだ、日本においては、バイオリファイナリーという分野は未成熟であり、バイオリファイナリー事業という産業が確立されている状況ではありません。そうした状況を危惧し、国内においても、ようやく政府が、従来の脱炭素の目標に加え、安全保障の観点からも、バイオ燃料やグリーン化学品の社会実装に力を入れはじめています。

そうしたなかで、当社は、バイオリファイナリー事業のプラットフォームの形成に貢献していくべく、国等のプロジェクトを中心に、次のような事業に取り組んでまいります。

スケールアップやサンプル生産等のバイオリファイナリー分野の企業の多くが必要とするサービスの提供

バイオ燃料のような社会のインフラとなるバイオリファイナリー製品の国内生産が可能となる技術の開発、提供

二酸化炭素を原料とするようなバイオリファイナリー分野の新しい基盤技術の開発

 


 

※1 出典:化学工業日報社「17221の化学品(2021年版)」

※2 本資料におけるフェーズは、ビジネスの類型を示すものであり、フェーズを追ってビジネスが進捗してゆくことを表すものではない

 

 

 

(3) 経営環境

近年、米国や欧州等では、バイオテクノロジーと経済活動を一体化させた「バイオエコノミー」という概念に基づく総合的な戦略のもとに技術開発や政策が推進されております。

2022年9月に、米国で発表された「National Biotechnology and Biomanufacturing Initiative」のFACT SHEET(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/09/12/fact-sheet-president-biden-to-launch-a-national-biotechnology-and-biomanufacturing-initiative/)では、バイオものづくりが今後10年以内に製造業の世界生産の3分の1を置き換え、金額換算で約30兆ドル(約4,000兆円)に達するという分析がなされています。

また、経済協力開発機構(OECD)の公表する「The Bioeconomy to 2030(2009年)」によれば、世界のバイオエコノミーの市場規模は2030年にOECD加盟国のGDPの2.7%にあたる約1.6兆ドルに到達するとし、2000年代半ばと比較して約3倍の成長が予想されております。

一般的に「バイオ」で連想されるのは健康、医療及び農業でありますが、2030年に向けては燃料や樹脂等の工業用途が増加し、市場規模のうち工業分野の比率は最も大きい39%(農業分野36%、健康、医療分野25%)、6,000億ドルと予測されております。

日本においては、内閣府(統合イノベーション戦略推進会議)による「バイオ戦略2019(2019年6月11日)」、「バイオ戦略2020(基盤的施策)(2020年6月26日)」、「バイオ戦略2020(市場領域施策確定版)(2021年1月19日)」が公表され、「高機能バイオ素材・バイオプラスチック」や「有機廃棄物・有機排水処理」、「持続的一次生産システム」、「生活習慣改善ヘルスケア、機能性食品等」等の市場領域ごとの市場規模目標が設定され、2030年のバイオ市場規模総額92兆円が掲げられております。

 


(参照:「バイオ戦略フォローアップ説明資料」

内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局(2021年6月))

 

これらのうち、市場領域①、②、④、⑦、⑧については、バイオものづくりの実践にあたり、品種開発から実用化に至るまでのスケールアップの課題が存在するとされており、民主導・産学連携によるバイオ製造実証拠点の整備を行い、バイオ製造基盤技術の確立に取り組むとされております。

この施策の一環として、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」という。)は「「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」基本計画」を策定し、バイオものづくりプロジェクトを2020年度より始動しています。

当社は本プロジェクトの研究開発項目②「生産プロセスのバイオファウンドリ基盤技術開発」のバイオファウンドリ事業に採択され、2021年度よりバイオものづくりのプラットフォーマーとなることを目指して、三井化学株式会社茂原分工場内において、バイオファウンドリ研究所を建設し、2023年春から本格的に稼働し始めました。

(参考:NEDOニュースリリース

(https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101654.html))

 

このような背景のもと、米国及び欧州を中心に微生物利用の工業化の競争が激化しておりますが、現在において微生物の効率的、安定的な利用が可能な微生物を使ったものづくり市場は、世界においてもいまだ未成熟であり、当社のバイオリファイナリー事業はこの新興市場へ先駆的に乗り出すものであります。

日本においては、国際民間航空機関(ICAO(International Civil Aviation Organization))が掲げる2050年時点での航空業界の二酸化炭素排出量半減の目標を受けて、経済産業省や国土交通省により2030年にはジェット燃料の10%はSAFにすることが義務付けられようとしています。また、世界の廃プラスチックの受け皿となっていた中国における2017年からの段階的な廃プラスチックの輸入制限、海洋プラスチック問題に端を発し、欧州を主体に広がりつつある使い捨てプラスチックの規制の潮流が樹脂を取り扱う業界各社に及んでいるところであります。

また、「バイオエコノミー」と並行して、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という概念が取り上げられ、これまでは廃棄物としてみなされていたものを有用物に変換することが求められています。当社は、非可食バイオマスを原料として、バイオリファイナリー技術により、バイオ化学品に変換する技術、ノウハウを有しており、これらを使った新しいソリューションを提供してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

優先的に対処すべき財務上の課題として、設立時より研究開発のための設備や人件費等を先行投資しており、2023年9月期までにおいては継続的な営業損失を計上しております。研究開発サービスを提供する、当社のような技術開発型ベンチャーにおいては、商用化可能な技術基盤の確立のための設備投資を含む研究開発費用が先行して計上されるに伴って、赤字計上となることに特徴があります。

今後も、技術基盤の強化のための研究開発活動への投資を継続するとともに、次の事業上の課題である「開発から商用化というビジネスモデルの確立」及び「成長を支える体制の確立」に取り組むことで、更なる売上高の拡大を目指し、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。

また、優先的に対処すべき事業上の課題は次のとおりであります。

 

① 開発から商用化というビジネスモデルの確立と実績作り

当社は、バイオリファイナリーという新しい市場で生き残り、成長していくために、自社で開発、生産、販売するという単純なビジネスモデルではなく、様々なニーズや課題を抱える他社との研究開発を実施し、事業化可能な技術レベルまで発展させ、最適な商用化の形(ライセンス契約、自社販売又はテクノロジーパッケージ)を選択し、収益を確保してまいります。

また、いずれの選択についても、市場規模の大きい重厚型、かつ継続的な収入が得られる長大型の案件に集中し、事業を展開してまいります。

そのため、中期目標とし、今後3年間において、次の項目を実施してまいります。

 

a 国内外企業との研究開発の推進

社会が求めるバイオ化学品を選び出して、その開発のために最適なパートナー企業を探し出し、研究開発を進めております。特に最近では、地球環境問題等に対する関心が高まり、非石油由来のバイオ樹脂や生分解性のバイオ樹脂に対するニーズが強まっているものと考えております。また、バイオマスを原料とする場合、原料調達費、人件費、物流コスト、供給安定性等から、低コスト化のためには、海外での商用化がカギを握っております。さらに、近年、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」ということが叫ばれ、廃棄物の有効利用が求められており、当社が有している非可食バイオマスの利用とバイオリファイナリーの知見を使ったソリューションを提供してまいります。

こうした状況を踏まえ、今後3年間において、バイオ燃料生産技術の確立、バイオ樹脂原料の研究開発、海外企業とのバイオ化学品の研究開発、食品残渣・農業残渣由来のバイオ化学品の事業化に向けた取組みを展開してまいります。

 

b 開発製品の商用化

継続的かつ安定的な収益の確保のためには、研究開発による一時的な売上だけではなく、開発した技術及び製品の商用化(ライセンス契約、共同出資会社による生産及び販売、自社販売又はテクノロジーパッケージとしての技術開発)が重要であります。製品の価格、用途、市場規模、パートナー企業の有無、技術の特性等の状況に応じて、どの形態が最適かを判断し、商用化を進めてまいります。

具体的には、今後3年間において、既に開発に着手している、バイオ燃料、新規アミノ酸、非可食バイオマス利用及び食品向け素材のパイプラインの商用化を計画しております。

 

c 商用化済製品の収益拡大

当社は、既に5種類のアミノ酸のライセンス、並びに化粧品用エタノールの自社販売という形で商用化を実現しており、これらの商用化済製品からの収益の拡大にも取り組む必要があります。

具体的には、今後3年間において、改良技術の提供等を通じたライセンシー企業の製品の売上高拡大によるロイヤリティ収益の拡大を図ります。

 

 

② 成長を支える体制の確立

当社が「バイオリファイナリー産業における技術プラットフォームを提供する企業」となるためには、短期間で大きな成長を実現していく必要があります。そのためには、事業の拡大を支える体制を確立する必要があります。そのため、中期目標として今後3年間において、次の項目を実施してまいります。

 

a 内部統制システムの構築

規程類の整備とその適正な運用、必要となる組織の新設及び変更並びに適切な人員の採用及び配置、予実管理及び決算体制の整備、会計システムのワークフローの確立及び人的作業からシステム制御への移行、内部監査の実施、リスク及びコンプライアンス管理の実施等を実行して、法令に準拠し、また当社の事業構造に適応した内部統制システムの適時の改定及び運用を継続してまいります。

 

b 人材の確保

世界的な石油資源からバイオマスへの転換の波による、大企業におけるバイオプロセスの研究開発への投資や少子化による研究者の絶対数の減少等により、研究者は現在売り手市場であると考えております。当社は技術開発型ベンチャーであり、独自の技術開発が事業の根幹となることから、優秀な研究者の確保が必要不可欠であります。

また、上述の内部統制システムの構築や、適時開示及びIR等、付加的業務への対応のため、企画、管理部門についても増員が必要であり、適時の採用活動を行っていきます。

 

c 研究施設及び設備の充実

当社のビジネスモデルの特徴として、自ら大規模な製造設備を持たないことで、大きな設備投資を必要としないことにありますが、成長のためには、多くの製品の開発を行う必要があり、人員の拡大に伴う研究施設の拡張、発酵槽等の研究開発設備への追加投資が必要であります。

 

d 当社の認知度及び信用力の向上

研究開発は、必ずしも目標値を達成し、成果を確約するものではなく、また新規技術は市場における実績も少ないことから、取引先の拡張にあたっては、当社の認知度及び信用力を向上させ、当社の技術に対しても信用を持たせることが重要であります。

当社は、商用化実績を着実に積み上げるとともに、上場企業としての知名度の上昇及び信頼の獲得を目指します。

 

③ SDGsへの取組み

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年9月開催の国連サミットで加盟国により採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標であり、17のゴール(目標)と169のターゲットから構成されます。

当社の事業は、17のゴールのうち次の6つの達成に寄与するものと考えており、当社の事業成長が持続可能な社会の実現に繋がることを志しております。

 


 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、バイオリファイナリー事業により、今まさに新たな市場を作りだしている過渡期であります。

市場成長の初期段階において先駆者として実績を積むことは、当該市場において高い優位性に繋がることから、第一に売上高を経営指標とし、パイプラインの拡大を基盤とする販売実績の増加を目指しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、「グリーンテクノロジーを育み、地球と共に歩む」を経営理念(ミッション)として掲げ、世界中のバイオリファイナリープラントにおいて当社の技術が使われ、創造的な技術力、提案力でバイオリファイナリー分野を牽引し、常識を変革する企業になることを目指して事業を展開しております。当社にとってのサステナビリティとは、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことであり、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントが重要であると認識しております。具体的な当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

取締役会を経営の基本方針や重要課題並びに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則として月1回定期的に開催するとともに、監査役会により業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の遵守状況、業務活動の適正性かつ有効性等を確認しております。また独立した組織である内部監査室による、業務執行の有効性、適法性の確認及び評価を通して、組織の健全化に取り組んでおります。

詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2) 戦略

① サステナビリティ関連のリスク及び機会に対処する取組み

当社の実施するバイオリファイナリー事業は、資源の枯渇や人口増加といった地球環境問題より、世界的に脱石油化の流れが加速し、カーボンニュートラルが目標とされる昨今の経済状況に鑑みて、サステナビリティ、SDGsとの関連が非常に高いと考えております。そのため、事業活動に真摯に取り組み、顧客課題や社会課題の解決を通じて、当社の持続的な成長を実現してくことそのものが、社会の持続的な発展の貢献に直結するものと考えております。

当該取組みの詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ③ SDGsへの取組み」に記載しております。

 

② 人的資本

当社では、人的資本に関して、以下のとおり「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を設定しております。

a 人材育成方針

当社においては、事業活動の担い手となりうる多様なバックボーン、経験等をもった人材を積極的に採用し、業務に必要な知識習得に向けた研修の実施、自己研鑽を促進することで、継続的な人材育成に取り組んでおります。

b 社内環境整備方針

リモートワーク勤務等により柔軟な働き方を可能とするとともに、ストック・オプションによる従業員インセンティブの充実、各種福利厚生制度の設定等、多様な人材が健康で、高いモチベーションを保ちつつ、また働きやすい環境の整備に取り組んでおります。

 

(3) リスク管理

当社は、経営企画室長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置し、原則として四半期に1回定期的に開催し、研究所における労働安全衛生体制や苦情又は内部通報等のリスク、及び法令順守体制や社内規程の整備等のコンプライアンスにかかる重要事項を審議、対応施策を決定しております。

 

(4) 指標及び目標

当社では、(2) 戦略において記載した人材育成及び社内環境整備にかかる指標について、具体的な取組みを行っているものの、本報告書提出日現在においては、当該指標についての具体的な目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示を検討してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は次のとおりであります。

また、必ずしもリスク要因には該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しておりますが、当社に関するすべてのリスクを網羅するものではありません。

また、次の文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 経済動向等の変動

当社事業は、基本的には企業向けにアミノ酸や樹脂原料等の原材料に関する研究開発及びライセンスの付与を実施するものであることから、一般的な製造業や小売業と比較して、景気の変動の影響を受けにくい特徴を有しますが、景気の急速な悪化により、事業者の新規事業や研究開発活動への投資が減速した場合、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) ライセンシーにおける販売

当社は、収益化手法の1つとしてライセンス契約に取り組んでおります。ライセンス契約においては、主として自社において技術を使用した製品の生産、販売を行わないことにより、設備投資及び販路確保や在庫の保有、広報等の販売活動にかかる費用やリスクを最小限にすることができます。

一方、ライセンス契約の事業構造上、製品の販売活動はライセンシー(ライセンス契約の締結先)に依拠し、当社において販売の計画、実行を行わないことから、特に短期的な業績予測と実績の乖離が生じる可能性があります。

当社としては、期待するロイヤリティ収入を保持できるよう、ライセンシーの販売計画を精査のうえ、ライセンス契約の条件を個々に設定しており、今後は既存のライセンス契約の条件やロイヤリティ収入の実績の知見をもって、さらに業績予測の精度を高める方針でありますが、ライセンシーの事業状況に変動が生じた場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) カントリーリスク

当社は、アジア地域において事業展開を行っており、当該地域における事業活動には次のようなリスクがあります。

・予期し得ない法律、規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

・不利な政治的要因の発生及びそれに伴う為替の変動

・常識、文化、社会的慣習の違いによる契約違反や技術流出等の発生

 

当社は、今後事業開拓活動により、研究開発の対象製品、提携先(取引先)の多様化を進め、研究開発に続くライセンス契約も、複数の地域、取引先に展開していく計画でありますが、上述のアジア地域に特有のリスクが発生した場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 商用化における特定の対象製品にかかるリスク

当社の1つの大きなパイプラインにおける対象製品(当社がライセンスした技術によりライセンシーにおいて商用生産される製品)である飼料添加物用のアミノ酸については、畜産業界における病気の蔓延等により、その需給に大幅な変動が生じることがあります。例えば、2018年から中国を中心に拡大した豚コレラの蔓延により、中国国内での養豚数が激減し、豚向けの主要な飼料添加物であるバリンの売上が想定値より大幅に減少するという事態が生じました。

当社は、複数のパイプラインに取り組むことで、特定の1つのパイプラインのリスクが当社の経営全体に与える影響を最小限に抑えるような事業構造を構築してまいりますが、特定製品にかかる需給リスクが発生した場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) パイプラインの進捗にかかるリスク

各パイプラインはStageごとの複数の契約の締結、遂行により進捗していくものであり、研究開発の目標達成状況やパートナー企業の方針等により、契約が締結されない、あるいは進捗が遅延又は停滞する可能性があります。

計画数値の策定にあたっては、既に契約が締結されているもの、あるいはほぼそれと同様の確度で収益が見込まれるものを中心に売上高に計上することで予算未達のリスクを抑えることとしております。それでも、ライセンス契約の締結時期の遅延や大型の研究開発契約の開発期間の長期化等のパイプラインの進捗に遅れが生じる事象が生じた場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 技術革新への対応に関するリスク

バイオリファイナリー技術については、商用化可能な技術基盤の確立のために中長期的な研究開発期間及び先行投資が必要であり、IT技術のように革新が早く入れ替わりがあるような業界ではありませんが、対象製品について当社技術より優位性の高い技術が第三者により商用化された場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社においては、技術基盤の強化のための研究開発活動を継続するとともに、「(4) 商用化における特定の対象製品にかかるリスク」に記載のとおり、商用化の対象製品を複数とすることで、特定の1つのパイプラインのリスクが当社の経営に与える影響を最小限に抑えるような事業構造を構築してまいります。

 

(7) 大株主である公益財団法人地球環境産業技術研究機構との関係について

当社は、公益財団法人地球環境産業技術研究機構で開発された技術を事業化したことから設立されており、同機構は当事業年度末において当社の株式1,800,000株を保有する大株主であります。

当社では、同機構の保有するRITE Bioprocess®に関連するものを始めとする特許権の実施許諾を受け事業展開を行ってきており、その使用にあたっては同機構(ライセンサー)に対しロイヤリティを支払うものであります。また、当社の研究開発拠点であるGreen Earth研究所の建物は同機構より借り受けるものであります。

同機構は公益財団法人として、開発した技術を世の中に広め、もって地球環境の保全及び世界経済の発展に資することを理念としており、当社の事業成長を推進する立場にあることから、これまで同機構とは協力的な提携関係を維持しており、その継続性にかかるリスクは僅少でありますが、万が一これらの特許権及び建物賃貸にかかる契約の継続が困難となった場合には、現在時点において当社の業績及び財務状況等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

なお、特許権については、大規模な設備投資や販売活動を必要としない事業形態を活かして研究開発へ注力し、当社の特許権の取得を進めつつ、できる限り多くの企業との協業を実現することにより、外部の特許権に依存しない事業展開を進める方針であり、現状、当該依存度は減少傾向にあります。

 

(8) 災害等

当社の研究開発拠点は、Green Earth研究所とバイオファウンドリ研究所の2ヵ所であり、大規模災害等が発生し、当該研究所が損壊又は当該研究所の研究開発設備が破損、紛失した場合、研究開発が停止することとなります。

研究開発は当社の事業の核となる活動であることから、研究開発設備について、地震保険をかけ、損壊時における新規設備購入のための手元資金を確保しております。また、事業継続上作成に期間がかかる菌株については、独立行政法人製品評価技術基盤機構が提供する、安全保管(生物遺伝資源の保管委託)サービスを利用して保管しておりますが、不測の災害等が発生した場合、当事業年度においては売上高の約70%を占める研究開発契約にかかる業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

なお、2023年4月にバイオファウンドリ研究所が稼働を始めたことで、災害等にかかるリスクの影響は分散、軽減されております。

 

(9) 知的財産権

当社は事業展開において様々な特許権等の知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、又は他者より適法に実施許諾を受けた権利であると認識しております。これらの知的財産権について、これまで第三者の知的財産権を侵害した、又は当社が侵害を受けた事実はなく、今後も侵害を防止するため、適切な管理を行っていく方針でありますが、当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性や新たに第三者の知的財産権が成立する可能性もあり、当該侵害のリスクを完全に排除することは困難であります。

今後、当社が第三者との間の知的財産権を巡る法的紛争等に巻き込まれた場合、顧問弁護士や弁理士と協議のうえ、当該知的財産権によってはライセンサーとも協力し、対応する方針でありますが、当該紛争に対応するために多くの人的及び資金的負担が発生するとともに、当社のライセンサーから特許権の実施の差止請求や、損害賠償等の請求を受けることがあり、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報セキュリティ

当社の提供する技術は、特殊な設備を要することなく導入できることが強みでありますが、一方で技術つまりはノウハウにかかる情報資産につき、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入等による漏洩リスクが存在します。

これに対し、VPN(Virtual Private Network)及びUTM(Unified Threat Management)を導入し、プライベートネットワークによる拠点間接続を行い、セキュリティの高い環境を構築しております。また、当社の情報資産はVPNで接続されたLAN(Local Area Network)上に保存し、適切なアクセス権限の設定を行うことにより、情報資産を一元管理し、情報漏洩リスクへの対策を講じておりますが、不法な侵入等を受けた場合は、企業が不正にその技術を利用して当社に競合する、又は当社へライセンスされた特許権にかかる情報資産の漏洩につき、当社のライセンサーから特許権の実施の差止請求や、損害賠償等の請求を受けることがあり、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11) 先行投資に伴う財務影響

技術開発ベンチャーである当社においては、商用化可能な技術基盤の確立のための、研究開発にかかる投資が重要と考えており、先行的に研究開発設備の導入及び研究開発用消耗品の購入、並びに研究員の増員のための人件費等の費用を先行的に投下しており、2023年9月期までにおいて継続的な営業損失を計上しており、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

当社においては、今後も、技術基盤の強化のための研究開発活動への投資を継続するとともに、新たな研究開発契約やライセンス契約の締結及びそれに伴う収益の計上に努めてまいりますが、これらの先行投資が想定どおりの成果に繋がらなかった場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 社歴、業歴が浅いことによる業績の不確実性

当社は、2011年9月の設立より、近年までは商用化のための研究開発を事業活動の中心とし、収益も行政機関等からの助成金を主体としておりましたが、2018年9月期より本格的な商用化に至っております。

技術自体は商用化段階に達しており、当該技術を使用して製造する製品も既存の市場が存在し、その規模、市場価格等の指標となるデータが入手できます。そのため、業績予測については一定程度の蓋然性があるとの認識であり、今後は実績の積み重ねにより、さらに業績予測の精度を高める方針であります。

ただし、当事業年度までは赤字決算であり、過年度の業績のみでは期間比較を行う充分な材料とはならず、今後の業績については当社において合理的と考えられる方法により予測、算定したものでありますが、判断指標が不十分であり、当社の業績予測と実績に乖離が生じる可能性があります。

 

(13) 人材の獲得及び育成について

技術基盤の継続的な強化のための研究開発活動、及び収益の最大化のための事業活動にあたっては、優秀な人材の確保が必要不可欠であります。当社においては、事業規模に応じて採用活動を行ってきており、これまでのところ適時に必要な人材の採用に至っておりますが、今後、大企業の採用市場の動向や少子化による就活者の募集の減少等により、採用活動が円滑に進まない場合は、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) その他のリスク

① 配当政策

当社は、株主に対する利益還元については重要な経営課題と認識しておりますが、現時点においては、新興市場であるバイオリファイナリー業界において先駆者優位性を獲得するためにも、事業成長への投資を優先しており、これはひいては株主への利益還元に繋がると考えております。

将来的には、業績及び財務状況等を勘案しながら配当実施について検討していく方針でありますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については、提出日現在において未定であります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化

当社は、主として、取締役及び従業員に対し、経営目標や業績の達成の意識向上又は優秀な人材の採用を目的としたインセンティブとして、新株予約権の付与を行っております。

提出日現在におけるこれらの新株予約権にかかる潜在株式数は639,800株であり、当社の発行済株式総数及び潜在株式数の合計11,917,500株の5.37%にあたり、今後新株予約権が行使された際には、既存株主の株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 市場状況並びに経営成績の概要及び分析

2023年は欧米の物価高や金融引締めにより、経済成長は鈍化しているものの、日本においては新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられ、景気は緩やかな回復傾向にあります。一方、ロシア・ウクライナ情勢や米国の金利及び日本の金利政策に関連した急激な円安の進行、原材料価格やエネルギー価格の上昇により、依然として先行き不透明な状況が続くことが見込まれます。

このような状況下であるものの、2022年度のバイオファウンドリ事業においては、バイオファウンドリ研究所の構築にあたって追加的な予算が交付されました。また、国内大手企業とのバイオ樹脂原料にかかる研究開発契約の締結やオイルパーム廃木にかかる調査契約の締結に至っております。

 

以上の結果、当事業年度は売上高897,422千円(前年同期比53.4%増)、営業損失106,917千円(前期営業損失99,065千円)、経常損失108,156千円(前期経常損失113,873千円)となりました。当期純損失については、112,215千円(前期当期純損失234,324千円)となりました。

なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

② 財政状態の分析
a 資産

当事業年度末における流動資産は2,637,473千円となり、前事業年度末に比べ746,832千円減少いたしました。これは主に売上高に紐づく研究開発活動にかかる仕掛品が49,187千円増加した一方、バイオファウンドリ事業における設備投資のうちNEDOの所有分による立替金が353,580千円、現金及び預金が339,908千円、売掛金が87,640千円減少したことによるものであります。固定資産は34,624千円となり、前事業年度末に比べ34,624千円増加いたしました。これは主にリース資産が14,385千円増加したことによるものであります。この結果、総資産は2,672,098千円となり、前事業年度末に比べ712,207千円減少いたしました。

 

b 負債

当事業年度末における流動負債は396,223千円となり、前事業年度末に比べ578,623千円減少いたしました。これは主に未払金が34,636千円増加した一方、バイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算額の入金による仮受金が636,829千円、前受金が46,050千円減少したことによるものであります。固定負債は165,385千円となり、前事業年度末に比べ26,301千円減少いたしました。これは主にリース資産の賃貸借により長期リース債務が9,897千円増加した一方、借入金の返済等により長期借入金が44,810千円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は561,609千円となり、前事業年度末に比べ604,924千円減少いたしました。

 

c 純資産

当事業年度末における純資産合計は2,110,488千円となり、前事業年度末に比べ107,283千円減少いたしました。これは新株予約権行使により資本金が3,906千円、資本準備金が3,906千円増加した一方、利益剰余金が112,215千円減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は78.9%(前事業年度末は65.5%)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、本項目において「資金」という。)については、前事業年度末より339,908千円減少し、2,401,060千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

a 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果、支出した資金は321,199千円(前事業年度においては337,564千円の獲得)となりました。これは主にバイオファウンドリ事業における設備投資のうちNEDOの所有分による立替金の減少額353,580千円、売掛金の回収に伴う売上債権の減少額87,640千円の増加要因があったものの、主としてバイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算払いによる仮受金の減少額636,829千円、税引前当期純損失108,156千円、売上高に紐づく研究開発活動にかかる仕掛品を含む棚卸資産の増加額48,488千円、前受金の減少額46,050千円の減少要因によるものであります。

 

b 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果、支出した資金は13,410千円(前事業年度においては36,477千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出12,956千円の減少要因によるものであります。

 

 

c 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果、支出した資金は5,299千円(前事業年度においては1,612,812千円の獲得)となりました。これは主に新株予約権行使による株式の発行による収入2,772千円の増加要因があったものの、リース債務の返済による支出4,567千円、及び長期借入金の返済による支出4,070千円の減少要因によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況
a 生産実績

当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

b 受注実績

当社が提供する役務の性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

c 販売実績

当事業年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

バイオリファイナリー事業

897,422

153.4

 

注1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2021年10月1日

 至 2022年9月30日)

当事業年度

(自 2022年10月1日

 至 2023年9月30日)

販売高
(千円)

割合(%)

販売高
(千円)

割合(%)

国立研究開発法人

新エネルギー・産業技術総合開発機構

248,069

42.4

607,111

67.7

Ningxia Eppen Biotech

Co., Ltd.

100,404

17.2

6,446

0.7

DIC株式会社

65,511

11.2

1,350

0.2

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。

また、次の文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、過去の実績や市場動向を勘案し、合理的に判断しておりますが、不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があります。

当社の財務諸表にかかる重要な会計方針の詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

特に次の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

 

(固定資産の減損処理)

当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当社の将来の事業計画を基に、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。

将来の事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失を計上する可能性があります。

 

(繰延税金資産)

繰延税金資産については、当社の将来の課税所得見込みや想定実効税率等、現状入手可能な将来情報に基づき、合理的に将来の税金負担を軽減する効果を有し、回収可能性があると考えられる範囲内で計上することとしております。

繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響する可能性があります。

 

② 経営成績の分析
a 売上高

当事業年度における売上高については、前事業年度より312,260千円増加し、897,422千円となりました。これは主にバイオリファイナリー事業のインフラ整備を目的として受託しているバイオファウンドリ事業等の国のプロジェクト、並びに石油資源の枯渇、CO2削減又は使い捨てプラスチックにかかる法的及び業界の規制を見据えた企業の、石油由来の化学品からバイオマス由来の化学品への転換の需要の伸長による、研究開発契約の締結によるものであります。

 

b 売上原価

当事業年度における売上原価については、前事業年度より222,666千円増加し、478,080千円となりました。これは主に当事業年度において、バイオファウンドリ事業を始めとする研究開発契約に紐づき発生する外注費及び間接原価が前事業年度と比較して増加したことによるものであります。

 

c 販売費及び一般管理費及び営業損失

当事業年度における販売費及び一般管理費については、事業規模の拡大に伴う増員及び増員に伴う各種経費の増加の結果、前事業年度より97,446千円増加し、526,259千円となりました。以上の結果、営業損失は106,917千円となりました。

 

d 営業外収益、営業外費用及び経常損失

当事業年度における営業外収益については、前事業年度より11,781千円減少し、684千円となりました。また、営業外費用については、前事業年度より25,350千円減少し、1,924千円となりました。これは主に上場関連費用19,569千円の減少等によるものであり、以上の結果、経常損失は108,156千円となりました。

 

e 特別利益、特別損失及び当期純損失

当事業年度においては、特別利益の発生はなく、固定資産除却損0千円の特別損失が発生しました。また、法人税、住民税及び事業税2,025千円、及び法人税等調整額2,032千円を計上した結果、当期純損失は112,215千円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性の分析

当社は、自らは製品の生産設備を保有せず、研究開発に必要な設備のみを有し、技術を提供する事業形態であることから、資金需要の主なものは、菌体及びバイオプロセスの基礎開発にかかる研究開発費その他人件費等の事業活動費でありますが、2022年9月期より、バイオファウンドリ事業において、インフラ整備のための新たな研究施設の建設、発酵槽や自動化機器等の研究開発設備への大規模な追加投資を行っております。ただし、これらの固定資産は事業期間中においては、NEDOが所有するものとなり、事業終了後に簿価買取となります。

運転資金については、2020年9月期においては新型コロナウイルス感染症による経済の低下の可能性を鑑み、融資により60,000千円を調達しており、2021年9月期においても100,000千円の融資及び第三者割当増資による株式発行により550,000千円を調達しております。

さらに、2022年9月期においては上場に伴う株式発行の有償一般募集及び有償第三者割当により1,617,875千円を調達しております。

上述の大規模投資についてはバイオファウンドリ事業の事業予算及び上場に伴う株式発行による調達資金を充当いたします。なお、それ以降は現時点において大規模な資金需要の計画はなく、基本的に流動性の高い銀行預金により賄う方針であります。

 

⑤ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析

当社は、新興市場であるバイオリファイナリー業界においては、当面、売上高の拡大が同業界における企業成長を示すものと考えており、目標とする経営指標として売上高を掲げております。

売上高実績については、国等のプロジェクトの契約の締結による受託収入、並びに研究開発契約の締結による研究開発収入及びライセンス契約の締結によるライセンス一時金等の計上により、前事業年度は585,161千円(前年同期比16.4%増)、当事業年度は897,422千円(前年同期比53.4%増)であります。売上高は、現時点において上述の方針どおりの進捗となっており、堅調に推移しているものと認識しております。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因

当社は、当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、経済動向、世界市場を対象としたライセンス契約による製品の市場展開、特定の第三者の技術を基盤とする事業展開、技術の損失、漏洩及び知的財産権の侵害等によるリスクを認識しております。

これらのリスクに対応するため、当社は、製品の市場動向を見据え、ライセンシーとの密な提携により、予算や各種計画の精度を上げるとともに、研究開発活動への投資を拡大して、当社単独による特許権の取得や多様な製品を対象とした研究開発を推進し、併せて情報セキュリティの拡充を含む内部統制の向上により、情報資産の管理、保全に取り組んでまいります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社の事業運営にかかる重要な契約は次のとおりであります。

 

(1) 事業提携契約

 

契約締結先

契約締結日

契約期間

契約内容

公益財団法人地球環境産業技術研究機構

2011年9月1日

期間の定めなし

同機構が開発したバイオプロセスの事業化を目的とした共同研究及び特許権の実施許諾にかかる基本合意

 

 

(2) 公的助成

 

契約締結先

契約締結日

契約期間

契約内容

NEDO

2021年8月12日

自 2021年8月12日

至 2023年3月31日

注1

スマートセル(高度に機能が設計、制御された生物細胞)を活用したバイオエコノミー社会の発展における、バイオ生産プロセスの商用化を促進させるためのバイオファウンドリ拠点の確立

2023年3月24日

自 2023年4月1日

至 2025年3月31日

注1

環境省

2022年9月2日

自 2022年9月2日

至 2023年3月31日

注2

木質バイオマス由来のエタノールからのバイオジェット燃料の生産実証の実施

2023年4月3日

自 2023年4月1日

至 2024年2月29日

注2

 

注1.2021年度~2026年度の6ヶ年計画にて申請し、採択されておりますが、2023年度以降は2年度(4月1日~3月31日)ごとそれぞれ契約締結されます。

2.2022年度~2023年度の2ヶ年計画にて申請し、採択されておりますが、2023年度においては別途契約締結しております。

 

(3) 建物賃貸借契約

 

契約締結先

契約締結日

契約期間

契約内容

公益財団法人地球環境産業技術研究機構

2013年11月1日

自 2013年11月1日

至 2023年10月30日

同機構が保有する研究施設の賃貸借及びこれにかかる賃料、使用目的、禁止事項、修繕等義務の条件の決定

 

注.契約期間終了日については、2023年11月1日付で、2052年3月31日に更新しております。

 

6 【研究開発活動】

(1) 研究開発活動の状況

当社は、設備投資等の投資リスクを最小化し、既に需要の存在する製品を対象に着実な市場展開を進める方針であります。

そのため、研究開発活動については、研究開発契約にて受託した、又は研究開発を打診する案件にかかる、食品添加物又は飼料添加物用途のアミノ酸やバイオジェット燃料の原料となるエタノールやイソブタノール、樹脂原料や化粧品原料となるバイオ化学品の生産菌を対象としております。また、体制としては、研究開発部門の研究員が中心となり、パートナー企業の要望を踏まえるため営業部門とも連携しつつ、菌体の対糖収率や生産性(反応時間、終濃度)の向上や、生産に最適な培養条件、酵素選択、精製方法等の検証、要件化を行っております。

その成果として、先進的なバイオプロセスや改良菌体等について、特許の出願及び登録を成しております。

 

(2) 研究開発費の金額

当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は211,780千円となりました。

研究開発費の主な内訳は、研究員等の人件費、基礎研究開発にかかる外注費、研究開発設備にかかる減価償却費及び研究開発に使用する各種消耗品費であります。

 

なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。