文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「革新創造」を社是とし、「世界に誇れる独創的建物サービスで社会と感動を分かち合う」というグループ理念に基づき、「全ての建物に“キャンディル”」というグループビジョンを実現すべく、健全かつ適切な業務運営を通じて、持続的な事業の成長とさらなる企業価値の向上を目指しており、お客様や地域社会からの長期にわたる揺るぎない信頼の確立を図らなければならないものと考えております。
当社グループは、持続的な事業の成長とさらなる企業価値の向上を実現するため、収益力の拡大が最重要課題と認識しており、特に安定的な企業価値の向上につながる営業利益とその成長率、及び営業活動によるキャッシュ・フローの増加を最重要指標として、収益性の向上・財務体質の充実に取り組んでまいります。
当社グループの主力事業を取り巻く外部環境としては、新型コロナウイルス感染症が第5類感染症に位置づけられたことで一層社会活動の制限は緩和されてきており、概して個人消費マインドも持ち直しの動きが見受けられました。また円安や賃上げなどの影響による全体的な商品・サービスの価格上昇が続いており、インフレ傾向で推移いたしました。一方、実質賃金の継続的低下による足元での消費マインド停滞の兆しや、コスト上昇に見合った価格転嫁の実施割合が芳しくない現状など、経済下振れリスクを抱え、先行きの不透明な側面も見受けられました。
建築業界における市場環境としては、人口減少や技術者の高齢化、労働市場における需給バランスの崩れなどの影響もあり、今後の人手不足の深刻化が懸念されております。そして人々の生活スタイルは働き方改革やコロナ禍等を経て大きく変わってきており、オフィスや商業施設、住宅に対するニーズも日々変化しております。
商環境市場においては、インバウンド需要や国内旅行の増加、再開発や建物の老朽化による建て替え・メンテナンスの必要性により、需要は好調に推移すると見込んでおります。また住宅市場においては、新築市場は人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少により将来的に下降トレンドとなる見通しですが、一方で今ある建物を長く快適に住まうために手直しするといったメンテナンス・リフォーム市場は堅調に推移すると見込まれます。
建物を取り巻く環境や建物に対するニーズが大きく変化する中で、主力サービスを安定成長させながら、市場の需要拡大が見込まれる分野のサービスをしっかりと伸長できるように施工体制・経営基盤の強化に一層注力する必要があると認識しております。具体的には、①「労働力の確保と早期戦力化」、②「アライアンスの推進」、③「人的資本経営の推進」の3点を重要課題として取り組んでまいります。
①「労働力の確保と早期戦力化」については、当社グループは労働集約型のビジネスモデルであり、人材は当社グループの事業にとってなくてはならない重要なファクターであると捉えております。採用環境は厳しくなっており、自社技術者の採用だけでなく社外の労働力の活用が必要不可欠であります。前期に引き続き、今後も自社技術者・協力業者の双方から労働力を確保することでサービス提供網の拡充を図り、自社技術者・協力業者を早期に戦力化できるよう教育体制を強化することで着実に市場の需要を取り込んでまいります。
②「アライアンスの推進」については、これまでも様々な企業と業務提携に関するアライアンスを進め、受注機会の創出、相互送客の推進、提供サービスの多様化などを追求してまいりました。今後も広い視野で異業種を含む様々な業界とのシナジー効果を積極的に検討し、進めてまいります。
③「人的資本経営の推進」については、前述のとおり、当社グループは労働集約型のビジネスモデルであるため、新規の労働力を確保していくだけではなく、既存の労働力を可能な限り維持し生産性を向上させていくことが非常に重要だと捉えております。前期は人事制度改定や年間休日の増加等による待遇改善の実施や教育・研修体制の強化を当社グループ全体で推し進めてまいりました。今後は、ワーク・ライフ・バランスの推進や、多様な人材の確保に向けた社内体制整備にも注力することで、長く働き続けられる組織風土の醸成の実現を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①ガバナンス
当社グループでは、2023年11月22日付でサステナビリティ推進チームを発足し、各事業会社と連携しながら当社グループ全体としてサステナビリティへの取組みを推進しております。
サステナビリティ推進チームは、当社全部署の部長、各事業会社からの選抜者で構成されており、各社の特性を把握し、多様な経験や視点を持った人員で、サステナビリティに関するリスク・機会の評価を検討し、サステナビリティ方針や取組みについて協議・推進する主体であります。
サステナビリティ推進チームが協議した事項・取組みの進捗は、年に2回程度取締役会に報告・議案付議し、取締役会が適宜指示・指摘または決議いたします。
②リスク管理
当社グループの事業特性や状況、また社会情勢を勘案し、サステナビリティ推進チームがサステナビリティ関連のリスク・機会について識別、評価を行い、その協議事項を、当社グループの総合的リスク管理を実施しているリスク管理委員会に報告し、リスク管理委員会の指示等を反映し取締役会に最終報告いたします。
リスク・機会への管理対応については、サステナビリティ推進チームで検討・議論したものを、取締役会にて決議し、その後の対応措置の実行・進捗状況のモニタリングを適宜サステナビリティ推進チームが行うことでリスク低減・機会創出の実現に努めます。
③戦略
当社グループは、「世界に誇れる独創的建物サービスで社会と感動を分かち合う」というグループ理念、また「全ての建物に"キャンディル"」というグループビジョンのもと、世の中に必要とされるサービスを生み出し、提供し続け、企業価値を向上することを目指しております。当社グループとして、より蓋然性をもって理念・ビジョンに基づいた形で持続的に成長・存続していけるよう、多角的な視点で本格的にサステナビリティ事項に関して検討・推進していく必要性を認識しておりますが、足元では、サステナビリティ推進チームを中心として事業に直接的に関連する事項から始めるという方針であります。そして当社グループ全体としての調和を図りながらも、各社の特性に十分配慮した対応をとり、それぞれの理解を深めながらグループが一丸となってサステナビリティへの取組みを推進する姿勢を大事にしてまいります。具体的には、まずは労働集約型サービスを提供している当社グループの事業状況や特性を踏まえ「人的資本・多様性」を重点的に取り組むところから始めてまいります。また、「環境」については、従前から関心の高いテーマであり、シックハウス症候群に対応するために「人にも環境にもやさしいオリジナル材料の開発」をするなど、前向きに取り組んでまいりました。現在もリペア・コーティングによる廃棄物の抑制や、環境にもやさしいリペア材料の開発・使用に努めるなど、持続可能な社会に向けて環境関連の対応を着実に実施しております(注)。今後も社会情勢等を注視しながら、当社グループにできることを適宜進めてまいります。
「人的資本・多様性」に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
(注)取組みの詳細は、当社ウェブサイトの「
①戦略
全国に拠点を張り巡らせた労働集約型ビジネスを展開しており、建物に関する様々なストレスを解消するサービスを提供しております。当社グループの事業の根幹は人であり、提供するサービスはAIなどのシステムでは代替できないものも多く、従業員はなくてはならない存在だと考えております。そのため、サステナビリティ課題の中でも特に人的資本課題は重要であると位置づけております。今後も「やりがいを感じながら、個々人がしっかりと成長していける職場づくり」「働きやすい職場づくり」という2つの視点をもち「従業員が長くいきいきと働き続けられる」企業を目指すことで、組織の生産価値の最大化を実現してまいります。
ⅰ.多様性に関する取組み
厚生労働省の女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく認定制度に係る基準における平均値によると、2023年の建設業界の女性就業比率は14.1%と全産業平均の26.8%を大きく下回っておりますが、当社グループの女性従業員比率は36.3%と、建設業界の中でも女性就業率が高く、男女関係なく活躍できる職場づくりを行っております。一方で、管理職に占める女性労働者の割合がグループ全体で低い傾向にあるため、今後は性別に関係なくキャリアプランを自由に描ける育成・研修を推進することで、女性の管理職への昇進意欲増進に取り組んでまいります。また、時間外労働管理の徹底、有給休暇の取得推進、女性も男性も取得しやすい育休制度の推進、時短勤務・在宅勤務制度や副業制度などを駆使しながら、介護や出産子育て、働く地域や場所など、多様な働き方のニーズに対応することで従業員のワーク・ライフ・バランスの実現を目指しております。このような職場づくりを継続的に進めることで、従業員のライフプランとキャリアプランが調和できる環境を整えてまいります。
ⅱ.研修制度の拡充とリスキリングの促進
当社グループが今後成長していくためには新規採用を進めるだけでなく、既存の従業員のスキルアップは必要不可欠であると捉えております。世代別の研修、管理職研修、また法務や税務といったテーマ別の社内研修などを実施してまいりましたが、社会の変化や社内の多様化に併せて今後さらに研修を充実させ、従業員のリスキリングに取り組んでまいります。
ⅲ.仕事の成果を実感できる職場環境
当社グループでは、毎年期初に前期の事業取組みの振り返りと今期の事業方針を共有する方針勉強会を開催することで、全従業員に会社全体の事業活動や目標数値などを共有し会社全体として目指すべき方向性を揃える機会を設けております。またキャンディルアワードという表彰制度を実施しており、年に1度、新人を含めて業績に貢献した従業員や長年勤務した従業員などを敬意を込めて表彰し、グループ全体で互いに褒めあう文化を醸成し、モチベーションの向上につなげております。
②指標及び目標
当社グループでは、働く人・働き方の多様性を実現するための指標として管理職に占める女性労働者の割合と男性労働者の育児休業取得率の向上を目指してまいります。
当社グループの事業内容その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項を以下に記載しております。ただし、全てのリスクを網羅したものではなく、業績に影響を与え得るリスク要因はこれらに限定されるものではありません。
なお、文中の将来に関する事項については、本書提出日現在において入手可能な情報に基づいて、当社グループが判断したものであります。
(1)業績の季節的変動について
当社グループが行うリペアサービス、住環境向け建築サービス、商環境向け建築サービスにおいては、戸建住宅、集合住宅、商業施設等の引渡しが集中する3月、9月及び12月に売上が拡大する傾向があります。当該時期に、何らかの事由により売上が減少した場合は、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(2)建築関連の市場環境の変化について
当社グループは、戸建住宅及び集合住宅向けのリペア(補修)業務や点検業務、商業施設向けの施工業務等、建築関連向けのサービスを主たる事業領域としております。当該事業は、景気動向、金利、地価、税制及び政策等に大きく影響を受けます。
今後の景況感の悪化、所得の低下、金利の上昇、地価の上昇、政策の変更及び税制の変更があった場合は、市場環境が変化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)自然災害や感染症等の発生について
地震、台風等の大規模な自然災害やウイルス等による感染拡大により、工事の中断や大幅な遅延が発生し、あるいは当社グループの事業所等が大規模な被害を受けた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)競合について
当社グループの提供する建築サービス関連業界は、個人事業主でも技術を身に付ければ容易に事業を開始できる等、参入障壁が低くなっております。当社グループは、人材の採用、教育及び協力業者網の整備といった点で新規参入者に対して優位にあると考えておりますが、今後、新規参入者の増加により競争が激化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)のれんについて
当社グループは、過去のM&A及びグループ再編の結果、多額ののれんを計上しております。当該のれんについては、将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、当社グループの対象となる事業において将来の収益力が低下した場合には、当該のれんについて減損損失を計上するため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)多額の借入金について
当社は本書提出日現在、複数の金融機関から多額の資金を借入れており、当該金融機関と締結している金銭消費貸借契約等の中には、連結経常損失を計上しないこと、連結純資産額の水準を一定以上に維持すること、純有利子負債が0を上回らないことなど、財務制限条項が定められているものがあります。
今後、当社では借入金を減少させるべく取り組んでまいりますが、金利が上昇した場合、事業計画の未達成等により借入金の返済計画に変更が生じた場合、財務制限条項に抵触したことにより借入金を一括返済する必要が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)人材について
当社グループにおいては、人材の安定的な確保及び育成が事業継続のために不可欠でありますが、人材の確保及び育成が計画どおりに進まない場合や退職者が増加した場合、不祥事により損害が発生した場合や士気が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)外注先の確保について
当社グループでは、受注したサービスの一部を協力業者に発注しております。協力業者については、事前に面談の上、企業規模、法令遵守、保険加入状況、サービス品質、反社チェックなどを行い、安全・品質管理の徹底等に最善を期しておりますが、個別の作業現場においてトラブルが発生した場合、また今後、受注件数の増加に適した形で協力業者を確保できなかった場合は、当社グループの業務の停滞につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)労働環境の変化について
当社グループには、正社員のほか有期契約社員、登録スタッフ等、様々な雇用形態の社員が業務に従事しております。当社グループでは、長時間労働の抑制や社会保険の適用拡大等、労働環境の変化や法改正に対応しておりますが、今後、労働関連法規制への違反等が発生した場合には、当社グループの社会的信用、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、人手不足等による人件費の高騰や外注費の増加が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法令違反、法的規制に関するリスク
当社グループは、労働基準法等労働法のほか、建設業法、労働者派遣法など関連法令による規制を受けております。当社グループでは、関連法令を遵守して事業を展開しており、本書提出日現在において、法令違反による許認可の取消しなど事業運営に支障を来すような事象は発生しておりませんが、それらの法令が改正された場合や当社グループ又は当社グループ従業員が関連法令違反を犯した場合には、当社グループの社会的信用、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループ各社が取得している許認可等の状況は以下のとおりであります。
(11)訴訟等に関するリスク
当社グループは広範な事業活動を行っており、知的財産権、環境、労務等に関連した訴訟等の対象となるリスクがあります。重大な訴訟等が提起された場合には、当社グループの社会的信用、事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)重大な事故の発生について
当社グループが手掛けるサービスの中には、建設現場における重量物の搬出入や高所での作業等、危険を伴うサービスがあります。当社グループでは、従業員への教育や指導を通じ、従業員の安全確保に努めておりますが、それらへの対応が不十分であった場合には、重大な事故につながり、当社グループの社会的信用、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)個人情報保護について
当社グループでは、取引先及び住宅オーナー等に係る個人情報を有しております。子会社の株式会社バーンリペアでプライバシーマークを取得している等、個人情報保護に対する適切な対応を行うための体制を整備しておりますが、今後、個人情報の漏洩事故等が発生した場合には、当社グループの社会的信用、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)情報システムへの依存について
当社グループは、受発注、作業日程管理、請求等に関する業務を情報システムを利用して行っております。プログラムの不具合やコンピュータ・ウイルス、外部からのサイバー攻撃等により、当社グループの情報システムに重大な障害が発生した場合には、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15)内部管理体制について
当社グループは、建築サービスを手掛ける企業同士がM&Aにより経営統合し、形成されてきたため、独自の企業文化や経営管理手法を有する企業によりグループが構成されておりました。当社は、グループ各社の内部管理体制を整備しており、今後も強化していく予定でありますが、事業の急速な拡大等により内部管理体制の構築が追いつかないという事態が生じる場合には、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16)その他の関係会社との関係について
当社は2022年8月に株式会社サカイ引越センターと資本業務提携契約を締結し、同社は当社の主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社に該当しております。株式会社サカイ引越センターによる当社株式の保有方針が変更された場合は、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。また、同社との業務提携内容に変更が生じた場合には、当社の今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2022年10月1日~2023年9月30日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が第5類感染症に位置づけられたことで一層社会活動の制限は緩和されてきており、概して個人消費マインドも持ち直しの動きが見受けられました。また円安や賃上げなどの影響による全体的な商品・サービスの価格上昇が続いており、インフレ傾向で推移いたしました。一方、実質賃金の継続的低下による足元での消費マインド停滞の兆しや、コスト上昇に見合った価格転嫁の実施割合が芳しくない現状など、経済下振れリスクを抱え、先行きの不透明な側面も見受けられました。
建設業界としては、慢性的な人手不足という課題に加え、2024年問題に向け人員体制の整備もしていく必要があり、人員確保のため各企業で賃上げや福利厚生の充実など雇用環境改善の動きが高まっており、企業間での人材獲得競争は激しさを増しております。また円安進行や物価上昇に伴い資材価格も引き続き高騰しているといった厳しい状況下にあります。
他方、当社グループ事業に関係の深い住宅業界におきましては、国土交通省発表による2022年10月~2023年9月累計の新設住宅着工戸数は、戸建てが前年同期比90.8%、分譲マンションが前年同期比99.4%、住宅市場全体としては前年同期比96.5%と弱含みで推移いたしましたが、商環境に関しましては、インバウンド需要や個人消費が回復傾向で推移いたしました。
このような状況のもとで、当社グループは「世界に誇れる独創的建物サービスで社会と感動を分かち合う」というグループ理念に基づき、「全ての建物に“キャンディル”」というグループビジョンを実現すべく、持続的な事業の成長とさらなる企業価値の向上を目指して、激しく移り変わるお客様のニーズや時代の変化に寄り添いながら、2021年に新しく閣議決定されました「住生活基本計画」に沿ったサービスの拡充に取り組み、住宅関連・商業施設関連サービスの売上拡大に努めてまいりました。また、グループが保有する経営資源を有効活用し、経営の合理化・効率化を推進するため、2023年4月1日付けで当社の連結子会社間にて会社分割(吸収分割)を行い、株式会社キャンディルテクトの「リペアサービス」「住環境向け建築サービス」を、株式会社キャンディルデザインへ承継いたしましたが、事業の最適化に向けて各種調整を行い、順調な滑り出しとなりました。
資材・エネルギー価格の高騰、人材獲得競争の激化などの厳しい経営環境の中、社会活動の緩やかな回復、また営業施策の奏功や業務提携効果により、当社グループのサービス提供機会は増加し、売上高は一段と回復傾向を示し、売上総利益の増加などにより営業利益は大幅に増加いたしました。
この結果、当連結会計年度末における資産合計は6,225,228千円となり、前連結会計年度末に比べ255,170千円の減少となりました。負債合計は3,519,141千円となり、前連結会計年度末に比べ444,406千円の減少となりました。純資産合計は2,706,086千円となり、前連結会計年度末に比べ189,236千円の増加となりました。
当連結会計年度における売上高は12,309,603千円(前年同期比109.2%)、営業利益は452,365千円(前年同期比134.1%)、経常利益は441,661千円(前年同期比145.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益は224,550千円(前年同期比212.8%)となりました。なお、当社グループでは組織再編及びM&Aの実施に伴い発生したのれん償却費を販売費及び一般管理費に192,223千円計上しており、これを加えたのれん償却前経常利益は633,885千円(前年同期比127.8%)、のれん償却前親会社株主に帰属する当期純利益は416,774千円(前年同期比140.0%)となりました。
当社グループは、建築サービス関連事業の単一セグメントとしておりますが、サービス分野別の状況は以下のとおりであります。
(リペアサービス)
当連結会計年度におけるリペアサービスの連結売上高は4,338,797千円(前年同期比103.7%)となりました。
株式会社バーンリペアは主に戸建てを中心にリペアを提供しておりますが、住宅市場の需要を積極的に取り入れたことで、同社のリペアサービスの売上高は3,516,619千円(前年同期比103.6%)と堅調に推移いたしました。株式会社キャンディルテクトに所属しておりました集合住宅を中心とするリペア部門は、2023年4月1日付けの会社分割により株式会社キャンディルデザインへ承継いたしました。株式会社キャンディルテクトの第2四半期連結累計期間のリペアサービスの売上高は410,037千円、株式会社キャンディルデザインの第3四半期連結会計期間と第4四半期連結会計期間合計のリペアサービスの売上高は412,140千円であり、当該2社を合算した当連結会計年度のリペアサービス売上高は822,177千円(前年同期比103.8%)とこちらも堅調に推移いたしました。
(住環境向け建築サービス)
当連結会計年度における住環境向け建築サービスの連結売上高は3,014,409千円(前年同期比106.4%)となりました。
株式会社バーンリペアは主に戸建てを中心に定期点検、検査、小型修繕、各種施工、リコール対応を提供しておりますが、定期点検数の増加や単価上昇などにより、同社の住環境向け建築サービスの売上高は2,398,603千円(前年同期比108.2%)となりました。株式会社キャンディルテクトに所属しておりました集合住宅を中心とする検査部門は、2023年4月1日付けの会社分割により株式会社キャンディルデザインへ承継いたしました。株式会社キャンディルテクトの第2四半期連結累計期間の住環境向け建築サービスの売上高は305,951千円、株式会社キャンディルデザインの第3四半期連結会計期間と第4四半期連結会計期間合計の住環境向け建築サービスの売上高は309,854千円であり、当該2社を合算した当連結会計年度の住環境向け建築サービスの売上高は615,806千円(前年同期比100.2%)となりました。
(商環境向け建築サービス)
当連結会計年度における商環境向け建築サービスの連結売上高は3,862,558千円(前年同期比111.9%)となりました。
商環境向け建築サービスは主に商業施設等の内装工事、家具組立て、揚重を提供しておりますが、商環境の市場回復に伴うオフィスや商業施設、店舗の改修案件やメンテナンス案件などを取り込んだ結果、増収となりました。
(商材販売)
当連結会計年度における商材販売の売上高は639,890千円(前年同期比106.4%)となりました。
商材販売は主にリペア材料やメンテナンス商材を販売しており増収となりました。
(抗ウイルス抗菌サービス)
当連結会計年度における抗ウイルス抗菌サービスの売上高は453,946千円(前年同期比231.3%)となりました。
抗ウイルス抗菌サービスは室内の壁面・天井、水まわり、床などの各種コーティングを提供しておりますが、資本業務提携効果や家電量販店などとの協業により水まわりコーティング案件が好調に推移し、大幅に増収いたしました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)の残高は1,616,235千円と、前連結会計年度末に比べ276,176千円の減少となりました。
当連結会計年度末における各活動によるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は、595,460千円(前年同期は467,772千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益441,661千円を計上したこと、のれん償却額192,223千円、売上債権が170,404千円増加したこと、仕入債務が119,393千円増加したことなどによるものであります。
投資活動の結果使用した資金は、41,215千円(前年同期は33,741千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出22,895千円、無形固定資産の取得による支出18,200千円などによるものであります。
財務活動の結果使用した資金は、830,421千円(前年同期は1,141,982千円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の純減額358,335千円、長期借入れによる収入300,000千円、長期借入金の返済による支出721,663千円などによるものであります。
当社グループは、生産活動を行っていないため、生産実績は記載しておりません。
当社グループは、建築サービス関連事業の単一セグメントであり、提供するサービスの性質上、受注実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.当社グループの報告セグメントは単一であるため、サービス毎に記載しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上の相手先が存在しないため、主な相手先別の販売実績等の記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
ⅰ.財政状態の分析
(総資産)
当連結会計年度末における資産合計は6,225,228千円となり、前連結会計年度末に比べ255,170千円の減少となりました。
流動資産は3,662,290千円となり、前連結会計年度末に比べ87,290千円の減少となりました。これは、主に現金及び預金が276,176千円減少したこと、受取手形及び売掛金が170,404千円増加したことなどによります。
固定資産は2,562,938千円となり、前連結会計年度末に比べ167,879千円の減少となりました。これは、主に工具、器具及び備品が9,515千円増加したこと、のれんが192,223千円減少したこと、ソフトウェアが32,656千円減少したことなどによります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は3,519,141千円となり、前連結会計年度末に比べ444,406千円の減少となりました。
流動負債は2,782,480千円となり、前連結会計年度末に比べ13,088千円の減少となりました。これは、主に買掛金が119,393千円増加したこと、短期借入金が358,335千円減少したこと、未払消費税等が18,615千円増加したこと、賞与引当金が19,880千円減少したこと、未払費用が86,295千円増加したことなどによります。
固定負債は736,661千円となり、前連結会計年度末に比べ431,317千円の減少となりました。これは、主に長期借入金が431,663千円減少したことなどによります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は2,706,086千円となり、前連結会計年度末に比べ189,236千円の増加となりました。これは、主に利益剰余金が169,473千円増加したことなどによります。この結果、自己資本比率は43.5%(前連結会計年度末比4.6ポイント上昇)となりました。
ⅱ.経営成績の分析
当社グループのサービス別売上高は前連結会計年度に比べ、リペアサービスは前年同期比103.7%の4,338,797千円、住環境向け建築サービスは前年同期比106.4%の3,014,409千円、商環境向け建築サービスは前年同期比111.9%の3,862,558千円、商材販売は前年同期比106.4%の639,890千円、抗ウイルス抗菌サービスは前年同期比231.3%の453,946千円となり、連結売上高は前年同期比109.2%の12,309,603千円となりました。全サービス、前連結会計年度に比べて売上高は伸長いたしましたが、連結売上高の増加要因としては、特に住環境向け建築サービスと商環境向け建築サービスの好調が大きく影響しております。住環境向け建築サービスは、契約者数の増加と契約単価の高水準での推移により「定期点検」が大きく成長し、売上高増加に貢献いたしました。商環境向け建築サービスは、コロナ禍から順調に回復している商環境市場の需要を着実に取り込み、売上高は伸長いたしました。
販売費及び一般管理費に関しましては、前連結会計年度に比べ230,729千円の増加となりました。これは、労働力の強化を図るための採用費、人員増加・待遇改善に連動する人件費、またコロナ禍明けの実営業活動が活発化したことによる費用、その他にも通信環境の整備・セキュリティ対策の強化のためのITインフラ関連の費用が増加したことが主な要因となっております。売上高伸長に伴う売上総利益の増加が、販売費及び一般管理費の増加を上回り、結果として前連結会計年度に比べ営業利益は前年同期比134.1%の452,365千円、経常利益は前年同期比145.4%の441,661千円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比212.8%の224,550千円となりました。
当社グループのキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要は、主に人件費及び外注費の支払い、リペア材料・メンテナンス商材の仕入資金であります。当社グループは、事業活動に必要な資金を確保するため、内部資金を活用するほか、金融機関からの借入を行っております。また、資金使途に応じて最適な資金調達手法を検討し、適切なコストで安定的に資金を確保することを基本方針としております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債および収益・費用に影響を与える見積りを必要とする箇所があります。これらの見積りにつきましては、経営者が過去の実績や取引状況を勘案し、会計基準の範囲内でかつ合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なる可能性があることにご留意下さい。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(3)経営者の問題意識と今後の方針について
現在のわが国経済は、コロナ禍からの経済持直しの動きが強まる一方で、円安進行等による物価の高騰、人口減少、外国人労働者の日本離れなどの景気の下押しリスクに留意が必要な状況であり、時代の情勢に合わせて、常に方針をアジャストさせていく必要があります。また「労働集約型」のビジネスを展開している当社グループにとって、「人材」は欠かせない成長ファクターだと考えているため、人材の確保や、従業員が長くいきいきと働き続けられる環境を整備することは、非常に重要な課題であると認識しております。このような状況の中、まずは前期に引き続き、自社技術者・協力業者・フランチャイズ加盟店といった全方向から労働力を確保し、しっかりと市場の需要を逃さずに取り込める施工体制の構築に努め、2024年9月期に過去最高の売上高、営業利益を目指してまいります。そして、将来の成長に向け、加速度的に変わる社会情勢や世の中のニーズを機敏に察知し、社会から求められるサービスの拡充を進め、研修やリスキリングの充実などといった人材への投資やDXへの投資も行うことで、より一層お客様から選ばれ、社会に貢献していける企業となり、2028年9月期に目標売上高200億円を達成できるよう、力を尽くしてまいります。
当社は、株式会社サカイ引越センターとの間で、資本業務提携契約を締結しております。
(1)業務提携の目的・理由
建物のメンテナンス(修繕・改修・維持・管理)事業における強みを有する当社グループと、引越運送事業における強みを有する株式会社サカイ引越センターが、それぞれの経営資源を相互に活用し、次世代サービスの構築につながる中長期的な取組みを進めることによる両社の事業拡大と発展を図ることを目的としております。
(2)業務提携の内容
両グループが保有する経営資源やノウハウを相互に活用し、両グループが展開する事業の拡大及び発展を図ることを主たる目的として、主に以下の事項について業務提携を行ってまいります。
① 当社グループによる株式会社サカイ引越センターの引越運送事業に対する成長に向けた取組み
② 株式会社サカイ引越センターによる当社グループのリペア事業及びリフォーム事業に対する成長に向けた取組み
③ その他、株式会社サカイ引越センター及び株式会社サカイ引越センターの関連会社と当社グループの企業価値向上に向けた取組み
(3)株式会社サカイ引越センターによる当社普通株式の取得
株式会社サカイ引越センターは、2022年8月に新生クレアシオンパートナーズ2号投資事業有限責任組合が保有する当社普通株式2,521,200株を市場外の相対取引により取得し、当社の主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社に該当しております。
(4)提携推進委員会の設置
業務提携の具体化、深化その他さらなる発展の可能性等について継続的に検討及び協議を行うことを目的として、提携推進委員会を設置しております。
(5)役員の派遣
株式会社サカイ引越センターは当社に対し取締役候補者1名を推薦することができ、当社は当社株主総会において、当該取締役候補者を含む取締役選任議案を付議することについて合意しております。
該当事項はありません。