第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「人と企業の笑顔が見たい」という経営理念のもと、当社事業モデル「社会人学校」を通じて、技術人材と企業様に最大の貢献とサービスとお役立ちを提供することを使命とし、ステークホルダーの皆様に信頼され、より一層のサービス拡充、企業価値の向上、永続的発展、及び社会に貢献できる企業となるように努めてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、成長性と収益性を評価する指標として、売上高成長率、売上高経常利益率、自己資本利益率(ROE)、当社の中核事業であるソリューション事業の成長性を評価する指標として、エンジニア一人当たり売上高増加率、在籍エンジニア数の増減を重視しております。

 

(3) 外部環境

 今後のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に景気が持ち直していくことが期待されているものの、円安の進行やウクライナやイスラエル情勢などの地政学リスクの高まり等による原油価格や原材料価格の高騰、インフレに対する金融引き締め等による景気の下振れリスク等もあり、依然として先行きの不透明な状況が続いております。

 このような状況の中、当社グループの中核事業であるソリューション事業において、国内市場は引き続き拡大傾向と予想され、主要取引先である国内製造業及びIT関連企業におきましては、慢性的な技術者不足の状況は変わらず、特に第4次産業(AR/VR、MR、AI、IoT等)人材に対するニーズのさらなる高まりから、今後も最先端技術分野の技術者需要の増加が見込まれます。

 

(4) 会社の経営戦略

 上記のような環境の中で、当社グループのソリューション事業におきましては、中長期における安定成長基盤を早期に確立するため、及び需要増加が見込まれる最先端技術分野での成長を図るためにも、採用の強化と教育研修によるエンジニアの高付加価値化に引き続き注力し、IT分野及びEVへシフトする自動車業界への取組みを強化することで、取引先の新規開拓を実施してまいります。コンサルティング事業におきましては、SAP S/4 HANAを中心にERPパッケージへの参画を積極的に実行いたします。

 また、ソリューション事業に大きく依存する現状において、経営の拡大及び安定化のために、第二第三の柱となる新たな収益基盤の確保が必要であるとも考えており、成長戦略に向けて積極的に事業創出にも取り組んでまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① ソリューション事業の積極的拡大

 当社のソリューション事業は、IT分野、機械分野、電気・電子分野、化学・バイオ分野の領域を中心に展開しております。人材ニーズにつきましては、慢性的な技術者不足の状況は変わらず、今後も最先端IT技術分野を中心に人手不足が懸念される状況は継続するものと想定しております。

 このような状況の中、当社グループは、多様なIT分野のエンジニアを多数抱える強みを活かし、差別化を図ってまいります。AR/VR、AI等の最先端分野の教育研修メニューの充実と強化等により、エンジニアの付加価値向上を促進し、加えてEVへシフトする自動車業界への取組み強化に注力することで、エンジニア一人当たりの売上高及び稼働率の向上を図ってまいります。さらに、AR/VR、AI等の教育研修を積んだエンジニアによる、IT請負等の請負業務も積極的に拡大してまいります。また、新卒採用体制の強化、企業ブランディング施策の強化等により、引き続き優秀層及び経験者を中心にエンジニア採用の取組みに努めるとともに、エンジニアサポート体制強化により、稼働率向上、退職率低減を図ってまいります。

 これらにより、事業の積極的拡大を図ってまいります。

 

② コンサルティング事業の拡大

 コンサルティング事業におきましては、引き続き堅調に推移すると予測される市場動向を踏まえ、SAP S/4 HANAを中心にERPパッケージへの参画を積極的に実行いたします。そのためにも人材確保、育成は重要な課題であり、抜本的な人事制度の変更による人材確保に取り組んでまいります。また、パートナーの積極的なアサインを継続的に行い、プロフェッショナルな人員によるモジュール別組織体制を構築することによって、チーム体制での案件対応、請負案件の機会を増加させ、経験・ノウハウの蓄積及びプロジェクトを率いる人材育成を行ってまいります。

 

③ 事業創出への積極的取り組み

 また、当社は、事業の創出により第二第三の柱となる新たな収益基盤の確保へ向けて積極的に注力してまいります。

 AR/VR事業におきましては、自社商品開発及び受託開発を展開し、売上拡大及び黒字化に向けた取組みを推進いたします。さらに、VRエンジニアの教育、確保によりVRエンジニア派遣等を拡大し、VRエンジニア派遣のTOPシェア獲得を目指してまいります。AR/VR事業拡大に向けて、株式会社クロスリアリティ(連結子会社)が運営するVRIA京都(VRイノベーションアカデミー京都)にて当社エンジニアに最先端の教育を行い、3年で300名のVRエンジニアの育成を目指します。

 AI関連におきましては、最先端AI研究の第一人者であり、AIデータサイエンティストである研究所長のもと、AI技術の研究を進め、AIの技術とソリューション事業で培ったプロエンジニア集団としてのエンジニアの技術を組み合わせることで、自社製品・技術・サービスの開発、AI受託を推進いたします。また、研究実績や生成AIを活用したAI研修プログラムを行い、3年で100名のAI人材の育成を目指します。

 

④ 経営システムの継続的構築

 さらなる成長を支える盤石な組織の構築と働きやすい職場作りに向けて、引き続き組織改編、処遇改善等の諸制度の導入、生成AIの活用を含めたITインフラの整備等を行ってまいります。これらにより、洗練された経営管理システムと意思決定メカニズムを構築し、経営の透明性と健全性を確保するとともに、組織力及び経営力、効率性の向上、労働環境及び処遇の改善に努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本的な考え方

当社グループは、地球環境への影響や、地域・国際社会との繋がり、そしてステークホルダーである人々の安心と健康に配慮した活動を行うことが事業活動の継続と企業の成長を図るうえで重要であると考えております。

そのため当社グループでは、人的資本を重要な資源と位置付け、事業活動の継続と企業の成長において不可欠な要素として認識しており、社員の心身の健康づくりを重視した環境整備や、最先端技術を含む教育体制の拡充による学びの機会の創出等、サステナビリティに関する取組の強化に努めることで、優秀な人材の育成、獲得、維持を通じて企業価値向上に努めてまいります。

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組については、当社ウェブサイトもご参照ください。

なお、ウェブサイトの情報は、今後更新される可能性がございます。

(URL https://www.sus-g.co.jp/sustainability/)

 

(2)ガバナンス

取締役会を経営の基本方針、重要課題並びに重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、サステナビリティの観点を含めた戦略決定、経営上の重要事項を審議、意思決定するとともに、グループ各社の事業執行状況の報告を受け、監督を行っております。また、取締役会に加えて、監査役会及びリスクマネジメント委員会を設置しており、これら各機関の相互連携によって、経営の健全性・効率性・透明性の確保に努めています。コーポレート・ガバナンスの状況については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(3)戦略

(人材の育成及び社内環境整備に関する方針)

当社では「人と企業の笑顔が見たい」という経営理念のもと、社員とその家族の心身の健康を重要な経営資源の一つとしてとらえ、健康で快適な職場環境の形成を目的として、健康保持・増進や社員のQOL(生活の質)向上に積極的に取り組み、健康づくりを推進することで「優秀な人材の獲得、人材の定着率の向上」を通じて「業績向上・企業価値の向上」へつなげていきたいと考えております。

そのために、当社は2022年に「健康経営宣言」を制定し、代表取締役社長が自ら健康経営の責任者となり、経営的な視点から全体の健康経営を推進しております。健康経営の取り組みとして、健康診断結果やストレスチェック結果に基づいた産業医面談や健康意識向上のためのセミナーの実施、その他運動を促進するためのアプリやイベントの案内等を通して、社員の心身の健康増進を行っております。

こうした取り組みの評価として、当社は「健康経営優良法人2023(大企業法人部門)」に認定されており、今後も積極的に健康経営を推進し、引き続きトップクラスの健康経営優良法人を目指してまいります。

健康経営に関する詳細な情報につきましては、当社ウェブサイトをご参照ください。なお、ウェブサイトの情報は、今後更新される可能性がございます。(URL https://www.sus-g.co.jp/about/health/)

人材の多様性の確保の面では、とくに女性社員がより活躍していただける環境を整備し、キャリアアップを目指しやすい仕組み作りを行っております。具体的には、女性社員の健康管理支援(子宮頸がん検診、乳がん検診等)、育児休業制度の周知徹底、育児休業後の職場復帰及び育児支援の強化、フレックスタイム制度の導入、テレワークの導入等により柔軟な働き方を可能とすることで、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすい社内環境を構築するとともに、各種福利厚生制度の拡充等、常に心身ともに健やかに日々を過ごし、少しでもスキルアップや知見を広げる意欲が高まるよう検討、制度化を推進しております。

 

人材育成においては、当社の競争力の源泉は「人材」であり、人材の「材」は「財」であるという認識のもと、エンジニアの技術スキルアップ、キャリア形成のため、障がい者の就労支援も含め一人ひとりに適した教育プランを提供し、プランに基づいた教育を実施しております。そのために社内研修や勉強会に加え、社外の研修機関と連携し各技術分野の専門技術はもちろんのこと、複合技術や応用技術、最新技術等、幅広い技術領域でサポートを実施しております。

とくに当社の強みであるIT分野への人材の強化及び知見の深耕のために、常に新たな知識の習得、情報の発信に努めており、近年、急速に発展しているAR/VR、AIなどの最先端技術領域の開発に、当社はいち早く着手し、事業化推進に取り組むことで得られる最新トレンドを教育プログラムに反映し、AR/VR事業の拡大に向けたVRエンジニア育成及びAI人材育成を行うことで、早期のエンジニア育成を実施しております。

また、当社では「人」と「技術」をキーワードに一人ひとりのエンジニアが持つポテンシャルやスキル、知識、経験値、そしてそれぞれが目指す「未来」を把握し、全社で可視化・共有していくことを重視しております。そのために「社会人学校」という事業モデルを制定し、エンジニア一人ひとりに対して、キャリアパスプランの設定を行い、キャリアパスの実現に向け、テクニカルスキルだけではなく、ヒューマンスキルの育成においても力を注いでおります。

このような一人ひとりに合わせた教育体制を整備することで、質の高い教育を提供し、市場価値ある人材を育成することを追求してまいります

 

(4)リスク管理

当社では、事業環境の変化に伴い複雑化・多様化するリスクに適切かつ迅速に対応するため「リスクマネジメント規程」を定め、事業上のリスク管理の体制及び基本的事項を明確にするとともに、実効性のあるリスク管理及びコンプライアンスの徹底を図るため、代表取締役社長を委員長としたリスクマネジメント委員会を設置しております。リスクマネジメント委員会がサステナビリティの観点を含めたリスク管理活動の主体となることで、事業運営から生じる損失の危険を平時より網羅的・体系的に収集し、その動向をモニタリングすることで可能な限り未然の防止を図り、リスクが現実のものとして顕在化した場合には迅速な対応により影響を最小化する体制を構築しております。また、リスクマネジメント委員会での議論の内容については定期的に取締役会に報告することで、取締役会が当社の状況や対応を適切にモニタリングできる体制を整備しております。

なお、当社の認識するリスクについては、「第2 事業の状況、3事業等のリスク」をご参照ください。

 

(5)指標及び目標

当社では、上記「(3)戦略」において記載した人材の育成及び社内環境整備に関する方針のとおり、サステナビリティ戦略において人的資本を重要視しております。社員がその能力を発揮し、仕事と生活の調和を図り、結果的に社員と会社がともに成長し続けることができる雇用環境を実現するため、女性活躍推進及び次世代育成支援のための行動計画(計画期間:2022年7月1日~2025年6月30日)で以下の当社目標を設定して取り組んでおります。

なお、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、当社グループに属するすべての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。

指標

目標

実績(当事業年度)

エンジニアに占める女性社員の割合

2025年6月までに15%以上

12.2%

内勤社員に占める女性役職者(主任以上)の割合

2025年6月までに15%以上

12.5%

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開においてリスク要因となる可能性があり、経営成績、財政状態及び投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。

当社グループは、下記リスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、当社株式に関する投資判断は、本項目及び本項目以外の記載内容も併せて慎重に検討した上で行われる必要性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、発生可能性については不確実性が伴います。なお、以下の記載は事業活動上、または投資判断上の全てのリスク要因を網羅したものではありませんので、この点にご留意下さい。

 

(1) 人材の確保について

当社グループの事業は、意欲と技術的専門性を有したエンジニアにより支えられており、優秀な人材の確保と育成、また定着率が最も重要な命題となります。当社グループでは、企業ブランディング施策の強化及び採用チャネルを多様化かつ最適化することで、採用経費の効率化と人材の質の向上等を目指しながら、即戦力となるエンジニアの確保に努めています。しかしながら、人材の確保については、少子高齢化による労働人口の減少、理系離れ等による専門教育を受けた新規学卒者数の減少により、中長期的には人材の確保が困難になることが予測され、またインターネットへの悪意ある書き込みといった風評被害等が起こった場合、採用に影響を及ぼす懸念があります。採用において計画どおり必要とする人材を確保できない場合や離職によりエンジニアが大幅に減少した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) エンジニア派遣業界を取り巻く環境について

当社グループの属するエンジニア派遣業界は、派遣先となる大手製造業やIT関連企業の業績動向に大きく影響を受けます。当社グループでは、エンジニアに対して、顧客企業のニーズに適応するため及び付加価値向上のための教育研修を実施し、それに加えて新たな顧客企業の開拓等を通じて、常に就業先が確保できるよう努めております。しかしながら、長期にわたる景気低迷や経済環境の変化等により、取引先企業業績の悪化に伴う設備投資の抑制や研究開発の削減が長期に続いた場合、大規模な自然災害や事故等で事業活動の停止もしくは事業継続に支障をきたす事態が発生した場合、また取引先企業の開発拠点につき海外移転等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 同業他社との競合について

当社グループの属するエンジニア派遣業界は、市場に多数の事業者が存在しますが、将来、社会情勢の変化などにより労働者派遣法及び関係諸法令の変化に伴って業界再編が予測されます。当社グループでは、市場における競争力及び専門性を高めるため、エンジニアの付加価値向上を目指して教育研修に努めております。しかしながら、このような環境下において、景気後退、同業他社間における価格競争の結果として取引単価が低迷した場合、また多くのエンジニアの待機状況が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 法的規制について

当社グループの主要事業であるエンジニア派遣は、労働者派遣法に基づいて事業を営んでおり、労働者派遣法及び関係諸法令による法的規制を受けております。当社グループでは、コンプライアンスを徹底し、リスクマネジメント委員会、内部監査室により関係諸法令の遵守状況の把握・監視等に努め、必要に応じて対策指示を関係部門に実施しております。しかしながら、労働者派遣法に定める派遣事業主としての欠格事由に該当した場合や、法令に違反する事由が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来これらの法令ならびに関連諸法令が社会情勢の変化などに伴って、改正や解釈の変更等があり、それらが当社グループの事業運営に不利な影響を及ぼすものであった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

会社名

許認可の名称

監督官庁

許可番号

取得年月日

有効期限

株式会社

エスユーエス

労働者派遣事業

厚生労働省

派26-020056

2002年3月1日

2025年2月28日

有料職業紹介事業

厚生労働省

26-ユ-020044

2002年3月1日

2025年2月28日

 

なお、上記の許可について、事業停止、許可取り消しとなる事由は労働者派遣法第14条及び職業安定法第32条の9に定められております。当連結会計年度末現在において、当社グループにはこれら事業停止、許可取り消しの事由に該当する事実はありませんが、該当した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 労務管理について

当社グループの主要事業であるエンジニア派遣は、労務管理が最も重要な命題となります。そのため当社グループはコンプライアンス遵守に基づき、衛生委員会及びリスクマネジメント委員会による労働状況のモニタリングを行い、必要に応じて対策指示を関係部門に実施しております。また、社内規程・マニュアル等の整備・運用及び管理の徹底を図っております。しかしながら、これらの管理不備による法令違反、従業員の不祥事等による損害賠償請求、従業員との紛争、信用の失墜、不正や違反等による行政処分等が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 情報管理について

当社グループの事業、特にソリューション事業においては、顧客企業の製品開発やシステム開発業務に従事しており、多くの個人情報・機密情報を扱っております。当社はプライバシーマークの取得により、個人情報保護マネジメントシステムの構築を行っております。合わせて、規程の整備と共に全従業員に対して入社時及び定期的に個人情報・機密情報の取扱いに関する啓発・教育研修・周知徹底を行い、また内部監査を実施することにより情報管理の強化を行っております。しかしながら、取引先内(顧客企業内)にて勤務するエンジニアが知り得た顧客情報や個人情報が故意又は過失により外部へ流出し、当社グループの管理責任問題、法律的リスク(訴訟等)、風評被害等が生じた場合、当社グループの社会的信用等の失墜や多額の賠償金支払い等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 新規事業立ち上げについて

当社グループは、主力事業であるソリューション事業、コンサルティング事業に加え、AR/VR事業、AI関連等、新たな収益基盤として、またエンジニアのキャリアパスの場として今後も新規事業の立ち上げや運営を計画しております。当社グループでは、設備投資等の資金が伴う案件の場合、投資判断基準に沿って経営会議での十分な審議、取締役会での決議という手続きを経て実行可否判断を行い、加えて事業計画に対しての予実管理、定期的報告を行っております。しかしながら、計画どおりに進捗せず当初期待した収益が得られない場合や事業採算性等を勘案し、当該新規事業からの撤退あるいは規模縮小等の経営判断をする場合があります。

このような場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 資本・業務提携について

当社グループは、事業規模の拡大や競争力強化のための手段の1つとして、資本・業務提携を行っております。出資等の投資が伴う場合、投資判断基準に沿って経営会議での十分な審議、取締役会での決議という手続きを経て、今後も資本・業務提携を行うことにより新規事業の立ち上げや新規製品・サービスの開発、また当社エンジニアのキャリアパスの場の1つとすることで当社グループの企業価値向上をさせるべく努めてまいりますが、デューデリジェンスの不備、投資先の固有リスク等にて当初期待した収益や効果が得られないことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大防止に係る活動制限が緩和されたこと等に伴い、経済活動の回復へ向けた動きが見られました。一方、物価上昇や金利の引き上げ、長期化するウクライナ情勢等、国内外における経済見通しは依然として先行きが不透明な状況が続いております。

 このような中、当社のソリューション事業においては、派遣業務、IT請負業務の受注が増加しました。さらに、コンサルティング事業、AR/VR事業においても受注が増加し、当社グループは全セグメントで増収となりました。一方で、新卒エンジニアを中心とした稼働の遅れ及びエンジニアの報酬水準の引き上げ等により売上総利益率が低下しました。また、エンジニアの積極採用等による採用広告費及び人件費、東京オフィスの移転コストを中心に販売費及び一般管理費が増加しました。営業外損益では、雇用調整助成金等の助成金収入が減少しました。特別損益では、前年同期に計上した減損損失等の発生はありませんでした。

 これらの結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高11,501百万円(対前年同期比9.9%増)、営業利益608百万円(対前年同期比16.9%減)、経常利益623百万円(対前年同期比22.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益461百万円(対前年同期比46.1%増)となりました。

 当社グループが成長性と収益性の評価として重視している経営指標は、売上高成長率は9.9%の増加、売上高経常利益率は5.4%、自己資本利益率(ROE)は14.6%となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(ソリューション事業)

 派遣業務は、主要取引先である国内製造業及びIT関連企業におきまして、慢性的な技術者不足の状況は変わらず、技術者需要が堅調に推移しました。このような状況の中、継続的にエンジニアの教育等による高付加価値化に取り組み、派遣単価が上昇しました。さらに、継続的なIT分野の強化に取り組み、IT分野の売上及び売上構成比がともに増加しました。エンジニア数につきましては、採用を強化したこと等により在籍エンジニア数が増加し、稼働人数が増加しました。

 請負業務は、製造請負において半導体関連顧客で発生した部品供給不足等により取引が減少したものの、IT請負においてリーダー人材の育成に注力し、プロジェクト単位及びチームでの受注体制を強化した結果、新規取引及び既存取引の受注が堅調に推移し、売上増加に寄与しました。

 一方で、人員増強による採用体制の強化及び企業ブランディング施策の強化等による積極的採用に取り組んだ結果、想定を上回る数の新卒エンジニアを採用できたものの、長期の最先端教育研修を実施する新卒エンジニアを戦略的に増やしたことやより高い派遣単価を狙った配属先の選定を行ったため、稼働率を押し下げました。また、昨今の物価上昇への対応及び人材確保を目的として、エンジニアの報酬水準の引き上げを行いました。

 これらの結果、ソリューション事業の売上高は10,339百万円(対前年同期比8.3%増)、セグメント利益は542百万円(対前年同期比27.0%減)となりました。当社の中核事業であるソリューション事業の成長性の評価として重視している経営指標は、2023年9月末時点の在籍エンジニア数は1,719人となり、前連結会計年度末に比べ173人の増加、エンジニア一人当たり売上高増加率は4.2%の増加となりました。

 

(コンサルティング事業)

 ITコンサルティングサービス市場は、SAPをはじめとした既存の大規模基幹システムにおいてIT基盤の統合・再構築に関連する需要が旺盛であり、当社が携わるクラウド系基幹システムであるSAP S/4 HANA及びSAP以外のERPの導入案件において拡大傾向となりました。こうした案件状況に対して、自社ITコンサルタントに加えて協力会社の外注要員を活用し、各モジュール別のコンサルティングチーム及び開発チームの体制を整えました。さらに、需要が高い首都圏においては、より上位工程であるコンサルティング領域の案件へリソースを集中し、売上拡大に努めてまいりました。その結果、ITコンサルティングは前年同期比で増収増益となりました。

 これらの結果、コンサルティング事業の売上高は809百万円(対前年同期比17.1%増)、セグメント利益は126百万円(対前年同期比32.2%増)となりました。

 

(AR/VR事業)

 AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)、メタバース、AI(人工知能)等の最先端IT市場におきましては、多種多様な商品及びサービスが需給ともに増加しており、その成長性が期待されております。このような状況の中、当社は大型展示会への出展やニュースリリース、ダイレクトメール配信等の発信型の営業活動を組み合わせて行い、アフターコロナにおいても、特にAR、VR、MRにニーズを持つ企業様からの引き合いが増加しております。

 当連結会計年度においては、アプリ開発、教育機関向けのメタバース、展示会や会社説明会等の企業向けのメタバース、360°VRツアー、AI関連の受託開発、AI教育等の受注を獲得し、売上高は前年同期比で増加し、赤字幅が縮小しました。

 これらの結果、AR/VR事業の売上高は273百万円(対前年同期比62.7%増)、セグメント損失は54百万円(前年同期は87百万円の損失)となりました。

 

(その他)

 障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社である株式会社ストーンフリーの売上高は、就労移行支援事業の利用者が増加したこと等により、前年同期比で増加しました。また、再生医療導入支援事業を行うプライムロード株式会社は、再生医療コンサルティングサービスの受注が増加しました。

 これらの結果、売上高は78百万円(対前年同期比41.1%増)、セグメント損失は百万円(前年同期は19百万円の損失)となりました。

 

 なお、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向に留意し、市場のニーズにあったサービス展開を行い、さらなる成長を支える盤石な組織の構築と働きやすい職場作りに向けて、経営システムの継続的構築に努めることにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

 生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。

① 生産実績

該当事項はありません。

 

② 受注実績

当社グループは、提供するサービスの大部分がエンジニア派遣であるため、受注実績については記載を省略しております。

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ソリューション事業

10,339

+8.3

コンサルティング事業

809

+17.1

AR/VR事業

273

+62.7

その他

78

+41.1

合計

11,501

+9.9

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

2.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の販売先がないため、省略しております。

 

(2)財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は5,008百万円となり、前連結会計年度末より338百万円の増加となりました。流動資産合計は4,233百万円となり、前連結会計年度末より51百万円の増加となりました。これは主に現金及び預金が116百万円減少した一方、売掛金が162百万円増加したことによるものであります。固定資産合計は775百万円となり、前連結会計年度末より286百万円の増加となりました。これは主に東京オフィスの移転等により有形固定資産が249百万円増加したことによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は1,697百万円となり、前連結会計年度末より81百万円の増加となりました。流動負債合計は1,666百万円となり、前連結会計年度末より83百万円の増加となりました。これは主に未払法人税等が214百万円減少した一方、未払金が267百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は3,311百万円となり、前連結会計年度末より256百万円の増加となりました。これは主に剰余金の配当132百万円、自己株式の取得83百万円を行った一方、親会社株主に帰属する当期純利益461百万円を計上したことによるものであります。

 

(3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ116百万円減少し、2,615百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、445百万円の増加(前連結会計年度は635百万円の増加)となりました。資金の増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益623百万円の計上、未払金の増加261百万円によるものであります。資金の減少の主な要因は、法人税等の支払額392百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、347百万円の減少(前連結会計年度は100百万円の減少)となりました。資金の減少の主な要因は、東京オフィスの移転等に伴う有形固定資産の取得による支出295百万円によるものであります。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、213百万円の減少(前連結会計年度は78百万円の減少)となりました。資金の減少の主な要因は、配当金の支払額132百万円、自己株式の取得による支出83百万円によるものであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金需要のうち主なものは、派遣エンジニアに対する人件費のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要の主なものは、IT基盤整備や事業創出への取り組みに伴う設備投資であります。

 運転資金及び投資資金においては、主に自己資金により賄っておりますが、状況に応じて、金融機関からの借入により資金調達することとしております。

 当連結会計年度末における有利子負債の残高は8百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,615百万円となっております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた重要な会計方針等は、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項  (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」等に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。