第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

1. 経営の基本方針

当社グループは、情報技術の力で全ての人に無限の可能性を提供する「UPDATE THE WORLD」をミッションに掲げ、『人類は、「自由自在」になれる』というビジョンの実現を目指しています。

情報技術の発展により、人々はインターネットを介してあらゆる知識・情報の取得と、世界中に向けた情報発信が可能になりました。今後も人々は情報技術の活用によって様々な制約から解放されるとともに、新たな未来を創っていくと当社グループは考えます。

当社グループは、常にユーザーファーストの姿勢を貫き、サービスの向上に努め、人々や社会の課題解決に貢献することで、持続的成長および企業価値向上を目指します。

 

2. 目標とする経営指標

当社グループは主要財務指標として、全社の売上収益および調整後EBITDA(注1)を重視しています。これらの指標を設定した理由は以下のとおりです。

売上収益:全ての収益の源泉となるものであり、成長性および収益性、事業規模を表す指標として採用しました。

調整後EBITDA:減価償却費及び償却費に加え、減損損失や企業結合に伴う再測定損益などの非経常かつ非現金の取引損益を除外することにより、経常的な収益性を把握できる指標として採用しました。

 

 財務以外の主要指標として、ヤフー(株)は月間ログインユーザーID数やログインユーザー利用時間等、LINE(株)は月間アクティブユーザー数(MAU)、デイリーアクティブユーザー数(DAU)/月間アクティブユーザー数(MAU)率等をそれぞれ重視しています。そのほか、事業別の主要指標は以下のとおりです。

メディア事業:広告関連売上収益、「LINE公式アカウント」アカウント数等

コマース事業:eコマース取扱高等

戦略事業:PayPay(株)の「PayPay」取扱高、「PayPay」決済回数、PayPayカード(株)の「PayPayカード」クレジットカード取扱高、PayPay銀行(株)の銀行口座数等

 

(注1)調整後EBITDAは、IFRSにおいて定義された財務指標ではありませんが、当社グループの業績に対する理解を高め、現在の業績を評価する上での重要な指標として用いることを目的として当該指標を採用しています。そのため、他社において当社グループとは異なる計算方法または異なる目的で用いられる可能性があります。

 

3. 中長期的な会社の経営戦略

(1)経営環境

近年、情報技術が発達し社会のあらゆる領域でオンラインとオフラインの境目は急速に失われています。インターネットの可能性が飛躍的に広がる中で、期せずして生じた新型コロナウイルス感染症拡大により、かつてない大きな変革期を迎えています。オンラインとオフラインの融合により、ビッグデータの価値が加速度的に高まっています。日本政府が提唱する「Society5.0」にあるとおり、データを用いて経済発展と社会課題の解決を両立するサービスや事業を創り出す企業が求められています。

さらに世界中でキャッシュレスやIoT、ビッグデータ等、インターネットを介し、革新的で高い利便性を持つサービスが次々と生み出され、生活の新しいスタンダードになりつつあります。加えて、海外のIT企業が日本に進出し、その存在感は年々高まっています。他方、国内でもベンチャー企業が次々と現れており、激しい競争が続くインターネット市場では今後もめまぐるしい環境変化が予想されます。

当社グループの展開する事業はメディア事業、コマース事業、並びに戦略事業に大別されます。

 メディア事業では、多様なメディアサービスを提供し、企業などの広告を掲載することで収益を上げています。(株)電通の発表によると、2022年の日本の総広告費は通年で前年比4.4%増の7兆1,021億円で、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大、ウクライナ情勢、物価高騰など国内外の様々な影響を受けつつも、1947年に同社が推定を開始して以降、過去最高となりました。中でもインターネット広告費は前年比14.3%増の3兆912億円と、社会のデジタル化を背景に継続して高い増加率を保っており、日本の総広告費全体の成長をけん引しています。また、インターネット広告費の約8割を占めるインターネット広告媒体費は、検索連動型広告やビデオ(動画)広告の成長により、前年比15.0%増の2兆4,801億円となりました。インターネット広告媒体費は、検索連動型広告とディスプレイ広告の2種が全体の約7割を占め、ビデオ(動画)広告は前年比15.4%増で全体の2割強を占めています。

コマース事業では、eコマースを中心とした多様なサービスを展開しています。経済産業省の調査によると、2021年のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は前年比7.35%増の約20.7兆円、物販系分野におけるEC化率は8.78%となりました。日本のEC化率は年々右肩上がりに上昇しており、特に2020年は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり消費の影響で大幅な上昇が見られました。2021年は消費者の間で徐々に外出機会が回復したにもかかわらず、eコマースの市場規模は引き続き増加しています。これは、消費者の間でECの利用が定着しつつあることの証左と考えられ、日本のEC化率は今後もさらに上昇することが予想されます。

戦略事業では、Fintechを中心とした多様なサービスを展開しています。経済産業省の調査によると、2022年の日本のキャッシュレス決済比率は前年比3.5ポイント増の36.0%と着実に上昇している一方で、諸外国との比較では依然として低水準にとどまっています。経済産業省はキャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目標としているため、日本のキャッシュレス決済市場は今後も拡大が予想されます

 

(2)経営戦略

当社グループは、オンラインからオフラインまで一気通貫でサービスを提供する、世界的にもユニークな企業グループです。当社グループの提供する多様なサービスから得られる豊富なデータは、当社グループならではのサービスを創り出すための重要な競争優位性となります。各サービスから得られるデータを横断的に活用することで、利用者一人ひとりに最適化されたサービスを提供し、さらに質の高い利用者体験の提供を目指します。また、豊富なデータ量と多様性あふれるデータ資産を持ち合わせた国内最大級のデータ所有者として、その能力を最大限に引き出し、社会全体の価値を向上させる企業を目指します。

 

(3)主要セグメントの基本方針

メディア事業

メディア事業では、日常に欠かせない多様なメディアサービスを提供することで多くの利用者を集め、広告により収益を上げています。ユーザーファーストの理念に基づき、必要とされるサービスを適切なタイミングで提供することに日々努めています。メディアとしての信頼性を高めることが、結果として中長期的なユーザー数の拡大、広告売上収益の拡大につながると考えています。

また当社は、NAVER CorporationのAI技術やLINE(株)のアセットを活用しながら、認知から興味・関心といった「新規顧客獲得のためのファネル」に加えて、購入からCRMの「優良顧客化のためのファネル」まで一気通貫で支援する、新たなマーケティングソリューションを実現していきます。さらに、蓄積されたデータを「PayPay」、「LINE公式アカウント」等と組み合わせて活用し、コンバージョンにコミットするソリューションを提供していきます。その結果、一人ひとりに最適な提案をする「1:1」のマーケティングを実現し、利用頻度の増加を目指します。

加えて、オフラインへの進出を新たなチャンスと捉え、オフライン上の利用者の生活も便利にする取り組みを進めています。「PayPay」によるオフライン決済のデータを活用することで、認知から購買までを一気通貫で可視化することにより、販促市場でのシェア拡大に取り組んでいます。

 

コマース事業

コマース事業では、eコマース関連サービスや会員向けサービス等を提供しています。国内最大級のユーザー基盤を持つ、「LINE」、「ヤフー」、「PayPay」の3つの起点をつなげ、グループサービス間のクロスユースを促進し、グループ経済圏を拡大することで、収益の持続的な成長を目指します。クロスユースの促進に向けて、サービスごとに異なるロイヤルティプログラムの統一を進めているほか、「Yahoo!ショッピング」と「LINE公式アカウント」のクロスセルも推進しています。「LINE」、「PayPay」ユーザーを対象としたロイヤルティプログラムを拡充することで、「PayPayカード」や「PayPay」などの会員数および取扱高増加につなげるとともに、eコマース取扱高の拡大を図っています。

また、中長期的な取り組みとして、「LINE」のコミュニケーション機能を活用した「ソーシャルコマース」および最短15分で商品を受け取ることができる「クイックコマース」を展開していきます。

 

戦略事業

戦略事業では、Fintechを中心とした多様なサービスを展開しています。国内のQRコード決済市場において6割以上のシェアを占めるキャッシュレス決済サービス「PayPay」を起点に、クレジットカード、銀行、証券、保険などの様々な金融サービスの拡大を図ります。

また、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)やAI、ヘルスケアなど、今後さらなる市場拡大が期待される領域において、新規プロダクト・サービス開発を積極的に行います。これらの新規事業への投資実施にあたっては、事業環境・市況などを勘案し、投資の内容・規模などを柔軟に意思決定するとともに、サービス開始から3~5年をめどに継続・撤退を判断します

 

 

4. 優先的に対処すべき課題

当社グループは、3.(2)の経営戦略を実行するにあたり、最優先課題として個人情報の保護を筆頭にしたセキュリティの強化に取り組んでいます。横断的なマルチビッグデータの利活用を進める上で、最も大切な基本姿勢は利用者の方のプライバシーを尊重することです。当社グループは、プライバシーポリシーを策定し、日本国の法令に基づいたサービス運用を行っています。

なお、当社は、当社の子会社であるLINE(株)の日本国内ユーザーの日本国外での個人情報の取扱い等に関して、2021年3月に、当社グループにおけるデータの取扱いをセキュリティ観点およびガバナンス観点から外部有識者にて検証・評価する特別委員会「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」を設置しました。同委員会は、同年10月に「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会最終報告書」を取りまとめております。当社は、同報告書で示された提言を受け、当社グループ全体でのデータガバナンス改善に向けた取り組みを実施し、その取り組みの状況について外部の弁護士事務所に検証を依頼し、2022年12月にフォローアップレポートを取りまとめております。当社は、引き続き当社グループ全体でのデータガバナンス改善に向けた取り組みを推進してまいります。デジタルプラットフォーム事業者の社会的責務を果たすため、当社は今後もお客さまや有識者および監督官庁等のご意見・ご指摘と真摯に向き合い、透明性を高め安心してご利用いただける環境作りのため、継続的な改善を行っていきます。

加えて、当社グループは突発的な事故や自然災害等に対する施設面・業務面でのリスクマネジメントの徹底に努めています。現代社会において、インターネットは生活やビジネスに欠かせないインフラであり、その中で当社グループの担う公共的な責任も年々増していると考えるためです。

また当社グループは、コーポレートガバナンスを中長期的な企業価値の拡大に必要不可欠な機能と位置付けています。少数株主を含む全株主の利益に適う経営が実現できるよう、ガバナンス体制の強化に努めています。加えて、企業の社会的責任を果たすための取り組みや、企業経営のリスクに対応するための内部統制システムの構築および運用についても、一層の強化を図ります。

企業の価値創造の源泉である人財のパフォーマンス最大化も、重要な課題のひとつです。そのため当社グループは、仕事に対する社員の意識や仕事の質のスタンダードを向上させていく仕組み・制度の整備を進めています。当社グループでは、働く人の心身のコンディションを最高の状態にすることが最大のパフォーマンスにつながり、働く人自身とその家族の幸せにつながると考えており、2018年6月に当社代表取締役社長(現 代表取締役会長)の川邊健太郎が健康宣言を行っております。これらの取り組みの結果、当社および子会社のヤフー(株)は2023年3月に経済産業省および日本健康会議による「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」、通称「ホワイト500」に認定されました。特にヤフー(株)は、2017年より7年連続で同認定を受けています。今後も、全ての社員が心身ともに最高の状態で仕事に向き合えるような環境整備に、継続して取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

1.サステナビリティ全般

 

(1)ガバナンス

当社グループは、自らの社会的責任を果たし、社会・環境の持続的な発展を目指すために、代表取締役社長を最終責任者としグループCFOをオーナーとする「ESG推進コミッティ」を設置しています。「ESG推進コミッティ」では、各グループ会社のCSR推進部門、コーポレート部門、事業部門と連携し、重点課題(マテリアリティ)やESG施策を推進しています。

「ESG推進コミッティ」のオーナーであるグループCFOは、ESG関連課題にコミットし、代表取締役社長と定期的に会合を持ち、必要に応じ最高経営会議・取締役会等に提言を行っています。また、独立社外取締役で構成された「ガバナンス委員会」においても、「ESG推進コミッティ」で検討・審議された課題への対応方針等を確認し、取締役会への報告を行っています。さらに当社は、代表取締役社長が委員長をつとめ、専務執行役員、常務執行役員等で構成されるリスクマネジメント委員会に連なる組織として、「環境分科会」および「人権分科会」を設置しています。これらの分科会では、グループ各社の環境・人権責任者が委員に就任し、当社グループとしての方針・施策検討や、グループ各社における施策の推進等を進めています。また、役員報酬にサステナビリティ評価(社会的貢献の達成度等)を組み込むことで、ESG推進における経営層の関与の深化を図っています。

 


 

 

(2)戦略

当社グループは、「UPDATE THE WORLD-情報技術のチカラで、すべての人に無限の可能性を。」をミッションとしています。私たちは事業を通じて社会にポジティブなインパクトをもたらすと共に、地球環境や人権等を含めた社会課題に向き合い、未来世代に責任を持ったサステナビリティ経営を推進していきます。推進にあたって、以下のサステナビリティ基本方針と6つのマテリアリティ(重要課題)を定めています。

 

 1.サステナビリティを社会、事業の両軸で捉え推進する

 2.グループ各社の特性を活かしながら、一丸となってサステナビリティに取り組む

 3.前例に捉われずにチャレンジし、イノベーションを継続的に生む努力をする

 

 

① マテリアリティ策定プロセス

当社グループは、誰もが安心して「もっと自由に」「もっと自在に」インターネットのチカラを利活用できる未来を、ステークホルダーと共に創っていく意志を持って、重点課題(マテリアリティ)を策定しています。

 


 

② 評価マップ

ステークホルダーの期待と、当社内での分析を踏まえ、GRIスタンダード、主要なESG評価項目等を参考に、社会からの要請に照らして自社の活動を整理し、ステークホルダーと当社の双方にとって重要性の高い項目を抽出しました。

 


 

③ 特定マテリアリティ

評価マップを踏まえ、当社グループのミッション・ビジョンを実現する「6つのマテリアリティ」を特定しました。

 


 

④ サステナビリティに関するリスクと機会

当社は、グループ各社の重要なリスク等を考慮の上リスクカテゴリーを設定し、サステナビリティに関するリスクを含め網羅的にリスクを捉えています。内部環境や外部環境の分析、経営層や実務責任者による認識を踏まえ、特に重要度が高いリスクをグループトップリスクと位置づけています。グループトップリスクは、環境変化等による影響を考慮しながら適宜見直し、優先度をつけて対応策を実行し、進捗のモニタリングを行っています。リスクカテゴリーおよびグループトップリスクは「3 事業等のリスク」をご参照ください。なお、当社ならびに中核完全子会社であるLINE(株)およびヤフー(株)を中心に2023年10月1日を効力発生日としてグループ内再編を予定しており、機会については新会社における経営戦略とも連動させながら、開示を検討してまいります。その他、気候変動に関するリスクと機会については、サステナビリティに関する考え方及び取組内の「3.  気候変動に対する取り組み」をご参照ください。

 

 

 

(3)リスク管理

当社は、リスクマネジメント最高責任者を代表取締役社長としたリスクマネジメント体制を構築し、リスクの特定、分析、評価、対応等のERMプロセスを円滑に実施することにより、リスクの低減、未然防止等を図っています。リスク管理の詳細は「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

(4)指標と目標

当社グループは特定したマテリアリティ毎に「実現に向けた取り組み」と「評価指標」※をまとめました。今後も評価指標の実績や具体的な事例等、サステナビリティサイトにおいて開示の拡充に努めます。「実現に向けた取り組み」と「評価指標」は、事業環境や社会情勢の変化に応じてUPDATEしていきます。ステークホルダーの皆さまとの対話を続けながら、インターネットのチカラを利活用できる未来の実現に向けて努めてまいります。なお、当社ならびに中核完全子会社であるLINE(株)およびヤフー(株)を中心に2023年10月1日を効力発生日としてグループ内再編を予定しており、目標に関しては新会社における経営戦略とも連動させながら、開示を検討してまいります。

※「評価指標」は取り組みの進捗をグループ内で把握し、更なる施策を検討する目的で設定しているため非開示情報を含みます。

※主な開示実績は以下サイトよりご覧ください。

https://www.z-holdings.co.jp/sustainability/stakeholder/01/#anc6

 

 

① データ/AIを活用した新たな体験(WOW/!)の提供

便利で感動的なユーザー体験は、新たな機能や優れたUI/UXの提供に加え、データ/AIを駆使したアプローチから生まれます。当社の存在意義は、多様なサービスのクロスユースを促進し、データ連携によりデータの質を高めた上でAI解析を行うという手順を効果的に繰り返し、新たな体験を生み出すことにあります。そのために体制構築・技術投資・教育等を推進してまいります。

実現に向けた取り組み

評価指標

データ連携の推進とクロスユースの促進

・国内総利用者数
・Yahoo! JAPANログインユーザーID数
・LINE月間アクティブユーザー数
・PayPay累計登録者数
・グループID連携率
・PayPayとヤフーショッピングのクロス利用者数
・クロスユース率

データAI活用方針と体制の構築(UPDATE)

・AI倫理基本方針の適切な内容への見直し
・取り組みに向けた体制のUPDATE

AIのサービス開発促進に向けた技術投資・教育の推進

・パテントスコア(特許の注目度を指標化)
・AI領域の出願件数
・技術投資内容(金額・概要)
・AIモデルリリース数
・トップカンファレンス論文採択数
・データガバナンスEラーニング受講率

 

 

② 安心・安全なデジタルプラットフォームの運営

安心・安全なITサービスの提供は、社会のニーズであり、信頼、評価につながります。そのためには、事故ゼロを目指したグループ横断的な教育の実施が不可欠であると考えます。また、デジタルプラットフォーマーとしての責任として健全な運用の仕組みを構築し、その取り組み内容を透明性を持って開示してまいります。

実現に向けた取り組み

評価指標

健全な運用の仕組みを構築

[内部統制]
・データプロテクション基本方針(適宜必要な検証と改善)の開示
・基本方針に基づく実施体制(情報セキュリティマネジメント体制)の更新と開示(DPOの設置等)

・開発工程チェックリストの作成と運用の徹底
・重要インシデント再発防止策、管理プロセスの構築
・違法有害情報対策事例の開示
・メディアサービスにおける表現の自由に関する方針と取り組みの開示

・透明性レポートの開示

[外部連携]
・有識者からの提言活用
・省庁等による先進実証や取組みの採択数
・セキュリティ関連団体との連携体制の更新と開示

セキュリティ・プライバシー保護関連の教育や技術の向上

・セキュリティ・プライバシー関連教育の実施(受講者数、受講率、実施回数)
・Yahoo! JAPANパスワードレスログイン数

セキュリティ関連事故の低減・防止

・セキュリティ関連の第三者認証
・主要子会社での行政処分や一定の行政指導の件数

 

 

③ しなやかで強靭な社会基盤の構築

不確実が増す世界は、社会のレジリエンスを高める必要に迫られています。デジタライゼーションにより新たな顧客体験の提供や新たな事業価値を創造してきた当社グループは、より長期的、より広い視野に立ち、社会基盤の構築に貢献していきたいと考えます。そのために、「防災・減災と復興支援」「3R推進」「DX推進」「情報格差の是正」を重点領域とし、社会と連携して取り組んでまいります。

実現に向けた取り組み

評価指標

情報技術を活用した防災・減災の推進と復興時までの社会支援

・自治体との支援協定数による人口カバー率
・寄付額・寄付件数、助成額・助成件数
・防災関連の情報提供サービス数

リデュース・リユース・リサイクル(3R)の推進

・リユース事業取扱高
・環境省等実証事業への採択
・紙リサイクル

DX推進

・LINE公式アカウント数
・PayPay累計登録者数
・PayPay加盟店数
・自治体連携数
・産学連携数
・オンライン行政手続き導入自治体数

サービスの継続提供と情報格差是正に向けた社会的アプローチを推進

・BCP関連指標(BPO、RTO、RLO等)によるマネジメント
・情報モラル教育(児童・生徒、保護者、教員)、デジタルデバイド対策(高齢者)

上記リテラシー向上プログラムそれぞれの受講者・採用自治体の

人口カバー率

 

 

 

④ 人財の強化

「採用」「多様性」「学び・経験」「Well-being」という4つの視点から、人財の育成・強化に取り組み、新たな価値創造、成長戦略の実現に貢献してまいります。

実現に向けた取り組み

評価指標

各社・グループの成長戦略実現に寄与する採用・人財獲得の推進

・新卒採用人数
・中途採用人数
・新規採用男女比率

新たな価値創出につながる多様性の確保

・男女管理職比率、男女管理職登用人数比率
・外国人比率
・障がい者雇用率
・男女の平均年間給与(中央値)比率
・育児休業取得率(男女)

学び・経験機会の創出

・研修時間
・研修費用
・アカデミア活用満足度
・AIアカデミア累計受講者数等
・TECH系研修時間、費用、累計受講者数等

Well-beingの向上

・健康診断受診率
・ストレスチェック受験率
・ハラスメントチェック受講率
・有給休暇取得率
・新しい働き方の浸透度(在宅勤務利用者数等)

 

 

⑤ 未来世代に向けた地球環境への責任

事業活動にともなう環境負荷の低減、廃棄物対策、水資源、生物多様性の保全に取り組み、国際環境イニシアチブに賛同し国際社会と協調した中長期的目標を定め地球環境対策を推進します。

実現に向けた取り組み

評価指標

気候変動への取り組み(脱炭素)
 スコープ1&2:CO2排出量を2030年度までに実質ゼロ(RE100コミットメントの履行)
 スコープ3:2050年ネットゼロの達成(SBT ネットゼロスタンダード)を念頭にスコープ3の把握と削減に取り組みSBT認定を目指す

・スコープ1&2のCO2排出量
・スコープ3のCO2排出量
・スコープ3カバレッジ

自然資本の持続的な活用への取り組み
 資源循環:廃棄物リサイクルの取り組み推進
 水資源 :水資源枯渇エリアでの使用量把握、水利用表示項目の向上

・リサイクル率
・売上あたり廃棄物量
・売上あたりの水使用量

環境領域への継続的な投資

・再エネ電力調達(再エネプラン、非化石証書、グリーン電力証書費)
・環境投資額
・ふるさと納税を通した地域カーボンニュートラル投資
・グリーンボンドおよびソーシャルボンド発行による調達金額

 

 

 

⑥ グループガバナンスの強化

業界・事業のスピード・成長に合わせた当社らしいグループガバナンスの体制を構築・向上させてまいります。特に人権やデータガバナンス等、中長期にわたる継続的な取り組みが必要な領域は、リスクマネジメント委員会(分科会)を中心に、取り組みを推進していきます。また、コーポレート・ガバナンスの強化を目的として取締役会の実効性をさらに高め、当社グループの企業価値向上を図ることを目指します。

実現に向けた取り組み

評価指標

グローバルな水準のデータガバナンス体制の構築

・データガバナンス分科会の活動実態・充実化
・データプロテクション基本方針の推進
・データ領域のグループトップリスクの洗い出し、インシデントの把握

人権に関する基本方針(人権ポリシー)の遵守と推進

・サプライチェーンを含む人権デューデリジェンスの実施

「当社らしさ」のあるコーポレート・ガバナンス体制の構築・向上

・取締役会実効性評価の内容(コーポレート・ガバナンス報告書等での報告)
・情報開示(質・量)の継続的改善
・企業価値向上(市場・機関投資家、ESG評価機関等からの評価含む)
・外国人/女性取締役比率の向上

 

 

2.人的資本・多様性に対する取り組み

 

(1)戦略

AI人財をはじめとした「多様な価値を生み出す人財の育成・強化」は、当社グループの競争力の源泉と考え、「採用(人財獲得)」「多様性」「学び・経験」「Well-being」という4つの視点から、人財の育成・強化を進め、新たな価値創造、成長戦略の実現を目指し取り組んでいます。

例えば、「学び・経験」の側面では、より多くの学びや経験機会を創出するため、企業内大学「Zアカデミア」や社内のAI人材を育成する「Z AIアカデミア」を開設し、グループ全体のAIに関するナレッジ・実践力の底上げ・人材育成を図ってきました。ヤフー(株)では、複数の技術研修や各種人事制度を通じて優秀なIT人材の採用・育成を行っており、プログラミング未経験の社員へITに関する教育を行う取り組みも行っています。2022年11月には、IT人材不足の課題に向き合い、プログラミング未経験者からエンジニアへのリスキリングを支援する「Yahoo!テックアカデミー」も開設しました。またLINE(株)では、LINE流のプロダクトの作り方やチームで働くことを体感するプログラムとして職種横断のハッカソン型のプロダクト開発を実施しています。

また、従業員ひとりひとりの心身の健康とパフォーマンスを引き出すための多様な働き方の実現やWell-beingの向上にも積極的に取り組んでいます。

その結果、当社は、経済産業省および日本健康会議による「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」通称「ホワイト500」に5年連続で認定を受けています。

これらの方針の実現を進めるにあたっては、「採用・人財獲得」「多様性」「学び・経験」「Well-being」4つの視点から、それぞれ評価すべき指標を特定し、その状況をモニタリングしています。

 

 

(2)指標と目標

 

実現に向けた取り組み

評価指標

2021年度※

各社・グループの成長戦略実現に寄与する採用・人財獲得の推進

新卒採用人数

553名

中途採用人数

2,221名

新規採用男女比率

女性

34.7%

男性

65.3%

新たな価値創出につながる多様性の確保

男女管理職比率

女性

21.9%

男性

78.1%

男女管理職登用人数比率

女性

27.4%

男性

72.6%

外国人比率

19.0%

障がい者雇用率

2.1%

男女の平均年間給与(中央値)比率

1.21:1

育児休業取得率(男女)

女性

100%

男性

41.8%

学び・経験機会の創出

従業員一人あたりの研修時間

37時間

従業員一人あたりの研修費用

132,358円

Well-beingの向上

健康診断受診率

91.6%

ストレスチェック受験率

86.1%

ハラスメントチェック受講率

79.4%

有給休暇取得率

64.4%

新しい働き方の浸透度(テレワーク利用者数等)

91.0%

 

※2021年度の集計数値となります。2022年度数値は2023年6月末日までにサステナビリティサイトにて公開予定です。

https://www.z-holdings.co.jp/sustainability/stakeholder/esg/#anc2

 

当社ならびに中核完全子会社であるLINE(株)およびヤフー(株)を中心に2023年10月1日を効力発生日としてグループ内再編を予定しており、今後の方針や指標ならびに目標に関しても、改めて新会社における経営戦略とも連動させながら、見直しを進めていくこととしています。

 

 

3.気候変動に対する取り組み

 

(1)ガバナンス

当社グループは取締役会の監督のもと、代表取締役社長が最終責任者となり、グループCFO(最高財務責任者)をオーナーに任命した「ESG推進コミッティ」を設置し、気候変動対応・水資源の保全・生物多様性保全・資源循環社会の構築等を推進しています。「ガバナンス委員会」においても、「ESG推進コミッティ」で検討・審議された環境課題への対応方針等を確認し、取締役会への報告を行っています。環境領域は全社ERMの観点からも重要な領域と認識し、リスクマネジメント委員会に連なる「環境分科会」を2022年に発足し、気候変動に伴う大規模自然災害、感染症の拡大等のリスクを想定し、環境負荷、環境影響へのリスクアセスメントを実施しています。経営リスクを分析するリスクマネジメント委員会と連携し、グループのESG推進に取り組んでいます。

気候変動対策への取り組みは、重要な経営課題と認識しておりマテリアリティ(未来世代に向けた地球環境への責任)に特定しています。また、「環境基本方針」を制定しています。

 

<環境基本方針>

私たちZホールディングスおよびZホールディングスのグループ会社で構成されるZホールディングスグループは、情報技術の活用により、未来世代に向けた地球環境保全への取り組みを継続的に実践します。

 

1. 脱炭素社会の実現

 環境負荷低減の中期目標を設定し、その達成に向けサプライチェーンと共に取り組みます

2. 自然資本の保全

・事業による生態系への影響に配慮し、持続可能な調達、廃棄物対策および

  水資源・生物多様性の保全に努めます

・地球環境保全の取り組みを支援します

3. 法令遵守と国際的責任の遂行

・環境問題を重要視し、リスク低減に努めます

・環境保全に関わる国内法令を遵守します

・国際環境イニシアチブに賛同し、国際社会と協調して気候変動対策に取り組みます

4. サービスを通じた、社会との連携

・気候変動にともなう自然災害に対して、自治体との連携や防災・減災サービスなどを通じ

  社会と連携します

・持続可能な社会の実現に向け、循環型サービスを拡充します

5. 未来を創る、教育・啓発活動

社員の一人ひとりが、環境問題の重要性を理解し、環境に配慮したサービスの改善や

イノベーションの創出ができるよう、教育・啓発活動を行います

 

 

(2)戦略

気候変動は重要な経営課題と認識しておりマテリアリティ(未来世代に向けた地球環境への責任)に特定しています。実現に向けてITのチカラを活用し、当社グループおよびサプライチェーンと共に電力の再エネ化等脱炭素社会の実現をめざしていきます。また、これら自然資本への配慮を、社会の幅広いステークホルダーの皆様と連携を深める事業機会としても捉え、チャレンジし続けていきます。

 

緩和へ向けた移行計画:

当社グループはグループ全社の事業活動での温室効果ガス排出量を2030年度までに実質ゼロにする「2030カーボンニュートラル宣言」を2022年2月に発表しました。データセンターで利用する電力を再生可能エネルギーに切り替える等、100%再生可能エネルギー化に取り組んでいます。2030年度の達成に向けて、まずは2025年度頃までに、80%以上を再生可能エネルギー化し、その後の5年間で100%再生可能エネルギー化および電気自動車の導入を進めます。

 

短期・中期・長期のリスクと機会:

気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識し、2020年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)賛同表明を行いました。TCFD提言を参照し、短期:2022~2025年、中期:2025~2030年、長期:2030~2050年、と期間を区切って特定し、短期・中期・長期のリスクと機会を分類し開示しています。

 

 

リスクと機会

※短期:2022~2025年、中期:2025~2030年、長期:2030~2050年

TCFD提言に基づくリスクと機会の分類

想定される主なリスクと機会 ● は重要度が高い項目

時間軸

リスク

移行リスク

法や規制に関するリスク

● 炭素税・排出量取引の開始

<当社グループのリスク>

・炭素税や排出量取引の導入によるコスト増加

短~中期

テクノロジーリスク

電力・エネルギー価格の推移

<当社グループのリスク>

・火力発電廃止に伴う電力不足や電力価格の高騰に伴うコスト増加

短~中期

消費電力・エネルギーの増加

<当社グループのリスク>

・消費電力やエネルギーが増えることによるコスト増加

・非常用電源の必要性が高まることによるコスト増加

・車両の脱炭素化に伴うコスト増加

短~中期

市場リスク

● ビジネス自粛や消費者心理の冷え込み

<当社グループのリスク>
・特に広告領域における売上減少

・コマース領域をはじめ個人購買行動の減少

・イベント中止の頻発による売上減少

短~中期

顧客の行動変化

<当社グループのリスク>

・生活必需品等における正常な流通がなされなくなるリスク

・プラットフォーマーとしてのオペレーションコスト増加

短~中期

レピュテーションリスク

気候変動対策への遅れ

<当社グループのリスク>

・ステークホルダーからの信頼低下とブランド力の低下

・取引先対象として選定される機会低下に伴う売上減少

・気候変動意識が高い将来世代の人財獲得の困難化

短期

気候変動対策に遅れている企業との取引

 <当社グループのリスク>

・ステークホルダーからの信頼低下とブランド力の低下

・該当する企業との取引停止に伴う売り上げ減少

短期

物理的リスク

急性リスク

● 異常気象の激甚化

<当社グループのリスク>

・データセンターのダウンによる機能低下やデータ欠損の発生

・アクセスの過負荷や集中が発生する頻度の上昇リスク

・事業所やデータセンターの機能停止に伴うサービスの停止

・事業所やデータセンターの高所または高緯度への移設

・施設の損壊による改修等に係るコストの発生

・水冷に頼らないデータセンターの新設

・物流サービスの停止リスク

・取引先の事業停止リスク

短~中期

慢性リスク

気候パターンの変化

平均気温の上昇

<当社グループのリスク>

・屋外での活動を低下または停止せざるをえないリスク

・メディア等主要サービスの人員分散化

・傷病者の増加による業務遂行への影響

・通勤規制による業務遂行への影響

・サプライチェーン調達コストの上昇

・生活に適した地域の地価高騰

・水利用に関する上流下流の追跡、確認

・災害BCPの強化

中~長期

 

 

TCFD提言に基づくリスクと機会の分類

想定される主なリスクと機会 ● は重要度が高い項目

時間軸

機会

資源効率

● 技術革新

<当社グループの機会>

・省エネ、水利用量の削減、廃棄物処理等資源効率の向上によるコスト削減

長期

● 環境配慮

<当社グループの機会>

・物流における輸送配送手段および梱包資材のエコ化促進

短~中期

エネルギー

技術革新

<当社グループの機会>

・発電系の事業推進

・自社での再生可能エネルギーの確保

長期

製品と

サービス

ビッグデータ

<当社グループの機会>

・ビッグデータ/IT×気候変動ビジネス

・ビッグデータ/IT×生物多様性

・ビッグデータ/IT×在宅医療サービス等

・既存のインターネットサービス×気候変動対策機能の提供

・データやAIを活用した、在庫適正化や在庫廃棄の削減・個人情報法制の改定によるレコメンド精度向上

中期

サプライチェーン

<当社グループの機会>

・サプライチェーンにおける自前領域の拡大

・水資源の確保と販売

・グループのスケールメリットを活かした取組結果としてのCO2排出量削減

中期

● サービス 

<当社グループの機会>

・コマースにおける売れ筋の変化

・災害対応サービスの強化

・環境に優しい企業からの広告出稿増加

・回収スキームを実現した新たな資源循環型サービスの構築

短~中期

市場

技術革新

<当社グループの機会>

・労働力の機械化

・イベントのバーチャル化

・気候変動に左右されない農作物育成と販売、またはその支援

・地下開発の進展

長期

● ライフスタイル

<当社グループの機会>

・保険(生保、損保)ビジネスの需要増

・健康経営

・コマースでの宅配需要の増加

・募金や寄付等、メディアを通じた社会貢献

短~中期

行動変容

<当社グループの機会>

・気候変動対策が盛り込まれた商品やサービスを選択する購入者層の獲得

・人のつながりを大切にする文化

・居住地域の流動化

・地域のリスク分析ビジネス

・室内での活動を中心とする生活

中~長期

レジリエンス

事業の安定稼働

<当社グループの機会>

・多岐にわたるサービスによる事業の安定化

短~中期

 

 

戦略のレジリエンス:

メディア事業、コマース事業、Fintech事業等、多様なインターネットサービスを展開する当社グループでは、データセンター、オフィス、物流センター等において事業を運営するための電力を使用しています。特に、データセンターによる消費電力量は当社グループ全体の90%以上を占めていることからも、データセンターの効率性向上と再生可能エネルギー化がリスク回避につながると考えます。カーボンニュートラルに向けた取り組みを加速することを目的に、環境問題の解決に貢献する事業に対する資金調達手段として、2021年国内インターネットセクターにおいては初となるグリーンボンドを発行しました。調達された資金(200億円)は、当社グループで利用するエネルギー効率の高い(PUE1.5未満)データセンターの建設や改修等、データセンターへの投資およびデータセンター運営に必要な再生可能エネルギーの調達資金に充当しています。 早期にカーボンニュートラル化を達成することで移行リスクによる炭素税の負担を回避できるものと考えます。

 

 

(3)リスク管理

リスクを特定するプロセス:

当社グループとしてのリスクと機会は、マテリアリティを特定していく議論の中で、グループ各社各部門が事業・サービスの特性に応じた検討内容から抽出し、有識者と担当役員を交えた意見交換によるブラッシュアップを経て、ガバナンス委員会での確認と取締役会での決議をもって策定しています。併せて、ERMの観点から当社グループの各社で気候変動に伴うリスク分析を行い、気候変動をグループの重点リスクと位置づけました。

 

シナリオとメソドロジー:

シナリオ分析は、国際的な認知度や信頼性を考慮し、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)および国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が策定したシナリオを参照しています。産業革命以前からの気温上昇を+1.5℃以内に抑えるシナリオとしてNZE(Net Zero Emissions by 2050)とSSP1-1.9を、+2℃相当のシナリオとしてAPS(Announced Pledges Scenario)とSSP1-2.6を、+4℃を上回るシナリオとしてSTEPS(Stated Policies Scenario)とSSP5-8.5を用いました。

 

 

 

(4)指標と目標

当社グループは持続可能な社会の実現に向けて、気候変動問題への取り組みを推進するとともに、「緩和」と「適応」の両面から目標を定め、取り組んでいます。「緩和」面では、気候変動や地球温暖化の原因となっている温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けて、様々な取り組みを行っています。「適応」面では、温暖化傾向が当面続くことを見越した対応を実施しています。中でも激甚化している災害への対応は、重点領域と定めて取り組んでおり、事業のBCP対応とともに進めています。

 

気候変動の「緩和」に関する目標:

2030年度までに、GHGプロトコルのスコープ1およびスコープ2におけるCO2排出量の実質ゼロを実現(t-CO2)

 

気候変動への「適応」に関する目標:

2025年度までに、災害協定を締結している自治体人口カバー率90% (2022年度98.3%達成済)

マテリアリティ(未来世代に向けた地球環境への責任)に関する評価指標と主な実績を開示しています。

 

実現に向けた取り組み

評価指標

2021年度※

気候変動への取り組み(脱炭素)

 スコープ1&2:CO2排出量を2030年度までに実質ゼロ(RE100コミットメントの履行)

 スコープ3:2050年ネットゼロの達成(SBT ネットゼロスタンダード)を念頭にスコープ3の把握と削減に取り組みSBT認定を目指す

スコープ1&2のCO2排出量

142,063 t-CO2

スコープ3のCO2排出量

2,743,708 t-CO2

スコープ3カバレッジ

69.3%

自然資本の持続的な活用への取り組み
 資源循環:廃棄物リサイクルの取り組み推進
 水資源 :水資源枯渇エリアでの使用量把握、水利用表示項目の向上

リサイクル率

82.9%

売上あたり廃棄物総排出量

(t/百万円)

0.018

売上あたり水消費量

(m3/百万円)

0.386

気候変動への取り組み(脱炭素)
 スコープ1&2:CO2排出量を2030年度までに実質ゼロ(RE100コミットメントの履行)

 スコープ3:2050年ネットゼロの達成(SBT ネットゼロスタンダード)を念頭にスコープ3の把握と削減に取り組みSBT認定を目指す

環境投資額

47億5,150万円

グリーンボンドおよびソーシャルボンド発行による調達金額

200億円

 

※2021年度の集計数値となります。2022年度数値は2023年6月末日までにサステナビリティサイトにて公開予定です。

https://www.z-holdings.co.jp/sustainability/stakeholder/esg/#anc1

 

TCFD参照表:

TCFD提言に基づく気候変動関連情報の開示に努めています。

当社サステナビリティサイトのTCFD参照表をご覧ください。

https://www.z-holdings.co.jp/sustainability/stakeholder/gri/#anc3

 

 

 

3 【事業等のリスク】

 Zホールディングス(株)(以下、当社という。)および子会社・関連会社(以下、グループ会社という。また、

当社と併せて、当社グループという。)は、持株会社である当社がグループ会社を統括して管理する一方、グルー

プ会社が、国内外において多岐にわたる事業を展開しています。これらの企業活動の遂行には様々なリスクを伴いま

す。2023年3月31日現在において、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主なリスクは以下のとおり

です。なお、これらは当社グループで発生し得る全てのリスクを網羅しているものではありません。また、将来に関

する事項については別段の記載のない限り、2023年3月31日現在において判断したものです。

 

・リスクマネジメント体制

 当社は、リスクマネジメント最高責任者を代表取締役社長としたリスクマネジメント体制を構築し、リスクの特

定、分析、評価、対応等のERMプロセスを円滑に実施することにより、リスクの低減、未然防止等を図っています。ま

た、2023年4月より、Co-CEO体制から単独CEO体制へ移行しています。

 グループ全体のリスクマネジメントの基本方針は取締役会で決定します。取締役会で決定された基本方針に基づ

き、リスクマネジメント委員会、リスクマネジメント統括組織、特定リスク所管部門等からなる執行機関でERM体制を

構築し、各グループ会社とも連携することでグループ全体によるリスクマネジメント活動を推進しています。また、

特にリスクの高いサイバーセキュリティや金融事業、人権、環境等の課題については、委員会の下に当社グループの

企業で構成する「データガバナンス分科会」、「アンチマネーローンダリング分科会」、「人権分科会」、「環境分

科会」を設置し、グループ会社横断のリスクマネジメントを行っています。

Zホールディングスのリスクマネジメント体制

 


 

・リスクマネジメントプロセス

 リスクマネジメントに関する規程に基づき、グループ各社におけるERM活動を推進するとともに、リスクマネジメン

ト委員会や各種分科会における活動を実施しています。また、当社グループにおけるリスクを網羅的に捉えるべくリ

スクカテゴリーを設定し、内部環境や外部環境の分析、経営層や実務責任者による認識を踏まえ、特に重要度が高い

リスクを「グループトップリスク」と位置づけています。「グループトップリスク」は、環境変化等による影響を考

慮しながら適宜見直し、優先度をつけて対応策を実行し、進捗のモニタリングを行います。

 


 

・リスクカテゴリー

「戦略系リスク」

リスクカテゴリー

概要

事業戦略リスク

組織の事業戦略および戦略目標に影響を与える、またはそれらによって生じるリスク

 

「非戦略系リスク」

リスクカテゴリー

概要

市場リスク

様々な市場のリスク・ファクターの変動により財務的影響を被るリスク

信用リスク

信用供与先の財務状況の悪化等により財務的損失を被るリスク

流動性リスク

必要な資金が確保できず資金繰りがつかなくなるリスク、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされるリスク

システムリスク

システムダウン又は誤作動、不備等に伴い損失を被るリスク

情報セキュリティリスク

情報システムやデータの破損および改ざん、または情報漏洩等で損害を受けるリスク

コンプライアンスリスク

社内規程や企業行動憲章に反する行動により影響を被る・訴訟に巻き込まれるリスク

法令リスク

各種取引上の契約等における順守違反や契約違反等に伴い罰則適用や損害賠償の影響を被るリスク、ZHDグループ企業もしくは従業員が法令違反を犯すリスク

金融犯罪・マネーローンダリングリスク

サービスがマネーローンダリングに利用されるリスク、またはマネーローンダリング対策の不手際により監督官庁から指摘を受けるリスク

投資リスク

企業間の投融資、M&Aにおいて投資した資産の価値が変動し影響を被るリスク

経済安全保障リスク

事業に関連する特定の国や地域の政治・経済・社会情勢等の変化により影響を被るリスク

環境・社会リスク

事業が環境や社会に悪影響を与えてしまうリスク、または外的な社会環境の影響により事業が影響を被るリスク

コーポレートガバナンスリスク

自社又はグループ会社における重要な意思決定に関するガバナンスの枠組みが十分に整備されず、自社およびグループにおいて適時適切な意思決定が行われないリスク

内部統制リスク

社内の統制が不十分で適正な業務遂行が行えないリスク、過剰な統制を敷くことにより事業スピードを停滞させるリスク

データガバナンスリスク

保有するデータの管理や利活用に関連するリスク

事業継続リスク

自然災害やその他外的要因により事業やサービスの継続提供が困難となるリスク

事務・品質リスク

サービスの運営や維持に必要なオペレーションや設計においてミスが発生する、または提供するサービスや商品において品質管理が行き届かずユーザーに影響を与えるリスク

コンダクトリスク

ZHDグループ企業もしくは従業員が、法令違反ではないものの社会規範や商習慣に反する、またはユーザー視点の欠如した行為を犯すことにより財務的・社会的影響を被るリスク

不正リスク

ZHDグループ企業もしくは従業員が不正を働く、または取引先企業・従業員の不正により財務的・社会的影響を被るリスク

知的財産リスク

知的財産権を侵害する・されるリスク、保有する産業財産権が後日無効化されるリスク、職務発明に関し従業員とトラブルになるリスク

人的リスク

人材リソースに関連するリスク、または従業員の生命・健康を脅かすリスク

レピュテーションリスク

悪評や風評の拡大により影響を被るリスク、またはメディア対応を失敗するリスク

依存リスク

業務運営において特定の外部取引先に過度に依存するリスク、それにより自社におけるノウハウの空洞化が起きるリスク

業務委託リスク

不適切な委託先の選定をするリスク、委託先において事故や不祥事が発生するリスク、偽装請負が発生するリスク

有形資産リスク

有形資産の毀損や執務環境等の質の低下等により損失を被るリスク

 

 

・グループトップリスク

1.事業戦略リスク

2.システムリスク

3.情報セキュリティリスク

4.経済安全保障リスク

5.コーポレートガバナンスリスク

6.内部統制リスク

7.データガバナンスリスク

8.事業継続リスク

9.人的リスク

 

 

1.事業戦略に関わるリスク

(1)市場優位性の失墜、業績悪化のリスク

   当社グループの事業戦略として、中核企業であるLINE(株)およびヤフー(株)を中心とした「検索・ポータル」

  「広告」「メッセンジャー」を「根幹領域」と定め推進するとともに、特に社会的課題が大きくインターネット

  でその解決が見込める領域である「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech(フィンテック)」「社会」

  の4つを「集中領域」と定め、取り組んでいます。そのうち、社会的な重要度の高い「Fintech(フィンテック)」

  の領域における戦略投資の一つとして、2022年10月にPayPay(株)を当社の連結子会社としました。さらに、それ

  らの領域にデータやAI技術を掛け合わせることでシナジーを強固に創出するとともに、ユーザーの日常生活、企

  業活動、そして社会自体をアップデートするサービスを提供していきます。しかしながら、これらのサービスの

  事業性は、そのユーザー数、利用頻度、収益化能力等に大きく依存しています。さらに、ユーザーの嗜好の変化

  は激しい為、市場の変動やニーズの的確な把握、 ニーズに対応する開発・提供等ができない可能性があります。

  当社グループはこのような可能性の顕在化を低減させるべく、マーケティング、技術開発および教育への投資、

  インテリジェンスおよび計数管理の機能強化といった総合的な施策を継続して行っています。また、事業の選択

  と集中を推進し、グループ内重複事業の集約を推進しています。

(2)規制や制度変更により事業展開スピードへ影響するリスク

   当社グループのヤフー(株)は、同社が提供するサービスである「Yahoo!ショッピング」および「Yahoo!広告」

  について、特定デジタルプラットフォームの透明性および公正性の向上に関する法律に基づき特定デジタルプラ

  ットフォーム提供者としての指定を受けています。同法により義務付けられる情報開示や自主的体制の整備に関

  しては、外部有識者の意見も聴取し、一部は法施行に先行する形で積極的に対応しています。また、ヤフー(株)

  に加えLINE(株)においても、高い透明性や公正性を意識し、継続的な改善を行っていきます。しかしながら、取

  組が不十分であると政府から認定され同法に基づく行政措置の対象となった場合や、同法に基づき政府に提出す 

  る報告書が低い評価を受け、その評価結果が公表された場合、当社グループに対する取引先および一般ユーザー

  からの評価や社会的評価が低下する可能性もあります。さらに、デジタルプラットフォームを提供する企業に対

  して、より一層厳しい規制の対象としていくという諸外国の動向に鑑み、仮に日本国内でも規制が強化され、当

  社グループ企業がその対象となった場合、当該企業の円滑な事業遂行が困難となる可能性があります。

(3)合併により期待される効果が得られないリスク

   当社は、2022年度後半に入り市場環境が急速に悪化していること、業績を牽引してきた広告収益が急激に減退

  していること等を踏まえ、グループ経営の意思決定の更なる迅速化を図ることを目的に、2023年度中を目途に当

  社・LINE(株)・ヤフー(株)を中心とした合併方針を決定し、2023年4月よりCo-CEO体制から単独CEO体制へ移行し

  ています。今後、当初に期待した合併の効果を十分に発揮できない場合には、展開するサービスの連携の不

  調・遅れが発生し、戦略やシナジーに影響が出る、グループ会社間のストレスや合併に起因する混乱が問題発生

  の一因となる等のリスクが生じる可能性があります。それらにより、当社グループの業務運営や業績、財政状態

  に影響を与える可能性があります。

 

2.システムに関わるリスク

   当社グループのサービスは、当社グループの関連会社、提携会社のシステムと連携して提供しており、一部の

  システムの障害等により影響範囲が多岐に及ぶものが数多く存在します。大規模な障害発生により、当社のブラ

  ンドイメージ低下や損害賠償を請求される可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。

  このようなリスクを低減するために、ソフトウェア品質の強化、システム可用性の向上、システムオペレーショ

  ン訓練等の安定したサービス提供への取り組み強化に努めています。

 

3.情報セキュリティに関わるリスク

(1)サイバーセキュリティに関わるリスク

   当社グループでは、安心して利用できる安全なサービスをユーザーに提供するため、中長期的な視点で全社を

  挙げて情報セキュリティの向上に取り組んでいます。しかしながら、これらの取り組みが及ばず、業務上の人為

  的ミスや故意による不法行為、災害等によるシステム障害、マルウェア感染や標的型攻撃等のサイバー攻  

  撃、システムや製品等の脆弱性等により、情報漏洩、データの破壊や改ざん、サービスの停止等の被害等が発生

  した場合、当社グループの業績に影響を与えるだけでなく、当社グループの信用失墜につながる可能性があ  

  ります。当社は、グループ会社の情報セキュリティを支援しています。具体的には、情報セキュリティ対策の仕

  組みの共有や導入支援、脆弱性情報等情報セキュリティに関する情報の共有、各社の求めに応じて情報セキュ

  リティ対策の相談対応等を行っています。また、グループ会社に対しては当社と同等の情報セキュリティ対策

  を行うための規程の提供や第三者認証取得支援等の支援を行っています。さらに、当社グループでは、日々高

  度化するサイバー攻撃等の脅威に備え、必要かつ前衛的な対策を取るべく必要十分な費用の確保に努めていま

  す。しかしながら、想定以上のサイバー攻撃等の脅威が発生した場合には追加費用が発生し、当社グループの

  業績に影響を与える可能性があります。

(2)通信の秘密に関わるリスク

   当社グループのLINE(株)やヤフー(株)は、「LINE」「Yahoo!メール」等のサービスにおいて、通信内容等の通

  信の秘密に該当する情報を取り扱っています。これらの取扱いの際は電気通信事業法に則り、情報セキュリティ

  に対する取り組みのもと、適切な取扱いを行っています。しかしながら、これらの情報が「LINE」「Yahoo!メー

  ル」等のサービスを提供するシステムの不具合や、マルウェア等の影響、通信設備等への物理的な侵入、当社グ

  ループの関係者や業務提携・委託先等の故意または過失等によって侵害された場合、当社グループのブランド

  イメージの低下や法的紛争に発展し、ユーザーの減少やサービスの停止や縮退に伴う損害賠償や売上収益減少等

  による業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.経済安全保障に関わるリスク

   当社グループは経済安全保障推進法の制度運用の開始を見据えて2022年10月に経済安全保障部を新たに設置

  し、国内外の経済安全保障に関する情報収集、専門家との意見交換、経済安全保障リスクの抽出、特定等を進

  め、当社グループ会社が経済安全保障推進法の適用対象となった場合には適切な対応ができるよう必要な準備を

  しています。しかしながら、かかる対策や準備が有効に機能しない、あるいは取り組みが十分ではないと当局に

  認定される等、経済安全保障推進法が定める国による審査に適切な対応ができなかった場合、当局からの当社

  グループ会社に対する是正や中止の勧告、命令等の行政措置、それに伴う事業の一時停止、遅延、追加の設備

  投資並びに追加の対策やコスト、当社グループ会社の信用の毀損が生じる可能性があります。その場合、当社グ

  ループの事業、業績、社会的信用に影響を与える可能性があります。

 

5.コーポレートガバナンスに関わるリスク

(1)親会社の経営判断がビジネスへ影響を与えるリスク

   当社グループは、主要株主であるAホールディングス(株)を連結子会社に持つソフトバンク(株)をはじめとす

  るソフトバンクグループ内の各企業やAホールディングス(株)の主要株主であるNAVER Corporationおよびそのグ

  ループ企業との間で取引を行っています。ソフトバンクグループ(株)やソフトバンク(株)、また、NAVER

  Corporationは、その保有株数の構造上、当社の意思決定に影響力を及ぼし得る立場にあります。当社は社内規程

  や独立社外取締役4名で構成されるガバナンス委員会等による監督の仕組みを整備・運用していますが、こうし

  た仕組みが機能しない場合に、当社とそれらの会社との間で利益相反が生じ、当社の利益が損なわれる可能性

  があります。また、ソフトバンクグループ各社やNAVER Corporationの事業戦略方針の変更等に伴い、当社グルー

  プのサービスや各種契約内容への影響や、関係の変化が生じる可能性があり、その場合、当社グループのビジネ

  スに影響を与える可能性があります。

(2)グループ内企業文化の違い等によりシナジー創出に影響が生じるリスク

   当社グループでは、子会社の機能や重要性等に応じた適切な報告制度を整備することとし、上場をしていない

  子会社(但し、金融持株会社等経営の独立性維持が必要な子会社を除く)との間では、関係会社管理に関する  

  社内規程に基づき、会社運営に関する協定書を締結し、当該子会社における重要な事項について、当社の承認ま

  たは当社への報告を原則として事前に求めることとしています。しかしながら、グループ会社間の企業文化の違

  い等により、このような仕組みが十分に機能しない場合、当社が子会社に関する重要な事項を適時に把握するこ

  とが出来なくなることによって、的確な意思決定を行うことが出来ず、当社グループにおけるシナジーの創出が

  阻害されるリスクがあります。

 

6.内部統制に関わるリスク

   当社グループでは、業務上の人為的ミスやその再発、意思決定プロセスの潜脱等が起きることのないよう関連

  する規程を定めているほか、取締役会内でも監査等委員4名全員を独立社外取締役として、経営の意思決定・業

  務執行の監督を強化しています。また、代表取締役社長CEO直属の内部監査統括部を設置し運営することにより、

  適法かつ適正な コーポレートガバナンスの強化を図っています。しかしながら、このようなガバナンス機能が想

  定通りに機能せず、ガバナンス不全に陥った場合、或いは過剰な統制が整備されることにより事業展開スピード

  を損なった場合、当社グループのブランドイメージや業績に影響を与える可能性があります。

 

7.データガバナンスに関わるリスク

   多様かつ多軸な当社グループにおいて、各社へのガバナンスの実効性が及ばず事故や問題が生じる、体制の不

  備により問題や事故が生じる一方で、ボトルネックが生じサービスのリリースの遅れ等につながる、等のリ

  スクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。LINE(株)との経営統合に伴い、当社グル

  ープが個人情報をはじめとするデータを取り扱う量も飛躍的に増大しています。データの取り扱いに際して当社

  は「分かりやすい説明」「国内法に基づく運用」「有識者による助言・評価」「プライバシー&セキュリティフ

  ァースト」の4点を重視しつつ、その利活用を合理的・効率的にするためにデータガバナンス(データ資産管理

  の統制)の確立を図っています。2022年度においてZホールディングスグループとしてデータプロテクション基

  本方針を策定・公表するとともに、これにかかる取り組みをグループ会社に対して継続的に進めています。ま

  た、2023年2月2日に公表したとおり、当社は当社ならびに当社の完全子会社であるLINE(株)およびヤフー(株)

  を中心とした合併を行う方針であり、合併後の新会社において、事業会社たる当該新会社のデータガバナンスお

  よび当該新会社のグループ会社全体のデータガバナンスが円滑かつ適切に機能するよう体制を整え、その強化に

  取り組んでいきます。今後も個人情報の適切な取り扱いに関して当社グループ全体のガバナンスの強化に取り組

  んでいきますが、かかる対策やガバナンス強化の施策が有効に機能しないことによる当局から当社グループへの

  行政処分、当社グループの信用の毀損、当社グループのサービスへの需要の減少、追加の対策の策定・実施、ま

  た、データの漏洩やその恐れとなる事象の発生等により、当社グループの社会的信用や業績等に影響を与える可

  能性があります。

 

8.事業継続に関わるリスク

   当社グループの事業は、地震等の自然災害、火災等の事故、広範囲な感染症の発生、それらによる、建造物の

  破壊、ライフラインの停止、回線障害、都市機能の停止、入館禁止措置 等の影響を受けます。また当社グループ

  の物的、人的資源の大部分は東京に集中しています。当社グループで は、システムの冗長化やデータセンターの

  多重化、分散化等の環境整備を進めるとともに、こうした災害等の発生時には、速やかにかつ適切に全社的対応

  を行うよう準備しています。しかしながら、事前の想定を大きく超える事故等である場合、業務継続、復旧計画

  がうまく機能しない可能性があります。さらに、当社グループが所有する建物に起因する火災等の災害が発生し

  た場合には、被害の収束、再建、周辺への補償等を含む対策により、業績等に影響がでる可能性があり、当社グ

  ループの事業、業績、ブランドイメージ等に影響が出る可能性があります。

 

9.人材に関わるリスク

   技術者の不足や意識の変化等により、サービス開発・運用が滞り、事業の成長が阻害される、データプロテ

  クションやAI等の中長期的な成長を担う人材を適切に確保できない等、従業員や雇用に関わるリスクが生じる

  可能性があります。当社グループの事業は、業務に関して専門的な知識、技術を有している役職員、いわゆる

  キーパーソンに依存している部分があり、これらのキーパーソンが当社グループを退職した場合、事業の継続、

  発展に一時的な影響が生じる可能性があります。また、各グループ会社において、今後の中長期的な業務拡大を

  目的とする体制の強化や各種サービスの運用、品質向上のための増員が必要となりえますが、労働市場や社会意

  識の変化により、それが適切になされない可能性があります。適切に増員がなされる場合にも、費用が増大し、

  業績に影響を与える可能性があります。そのため当社グループでは、業界水準を参考にした適正賃金テーブルの

  把握や目標評価制度等の実施による賃金レベルの相当性の確保、要員計画等での人員規模の適正性の確認に努め

  ています。さらに、各グループ会社の事業特性および業種・職種を考慮した働き方の多様性を拡大するととも

  に、グループ会社間での異動等各個人の活躍機会を創出すること等により、より多様な人材の活躍と、各個人お

  よび組織の生産性やエンゲージメントの向上に結び付けています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1. 財政状態の状況

 

(1) 資産

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて1,478,336百万円(20.8%増)増加し、8,588,722百万円となりました。

 

主な増減理由は以下のとおりです。

・現金及び現金同等物の主な増減理由は、「キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

・営業債権及びその他の債権は、主にPayPay(株)の連結子会社化により前連結会計年度末と比べて増加しました。

・カード事業の貸付金は、主にクレジットカード事業の取扱高増加により前連結会計年度末と比べて増加しました。

・銀行事業の貸付金は、主に住宅ローン債権が増加したことにより前連結会計年度末と比べて増加しました。

・のれんは、主にPayPay(株)の連結子会社化により前連結会計年度末と比べて増加しました。

 

(2) 負債

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べて1,142,633百万円(27.7%増)増加し、5,270,822百万円となりました。

 

主な増減理由は以下のとおりです。

・営業債務及びその他の債務は、主にPayPay(株)の連結子会社化により前連結会計年度末と比べて増加しました。

・有利子負債は、主に借入金の増加により前連結会計年度末と比べて増加しました。

 

(3) 資本

当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末と比べて335,703百万円(11.3%増)増加し、3,317,900百万円となりました。

 

主な増減理由は以下のとおりです。

・利益剰余金は、配当金の支払いがあったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上及びPayPay(株)の連結子会社化に伴いその他の包括利益累計額から利益剰余金への振替により前連結会計年度末と比べて増加しました。

 

2. 経営成績の状況

 (1) 事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況

当連結会計年度の売上収益は、2022年10月にPayPay(株)を連結子会社化したことに伴う戦略事業における増収や、コマース事業の増収等により、過去最高となる1兆6,723億円(前年同期比6.7%増)となりました。

調整後EBITDAは、前年度第2四半期のワイジェイFX(株)((現) 外貨ex byGMO(株))売却益による反動減、2022年10月のPayPay(株)連結子会社化、広告市況悪化の影響等があったものの、上記増収やコマース事業を中心としたコスト最適化により、過去最高となる3,326億円(前年同期比0.3%増)となりました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりです。なお、2023年3月期第1四半期より、戦略事業に区分されていたヤフー(株)の金融サービスをメディア事業に移管しています。また、LINE(株)において、調整額に区分されていたサービスを各セグメントに移管しています。これに伴い、過去のデータおよび比較については現在のセグメントに合わせて遡及修正しています。

 

① メディア事業

メディア事業の売上収益は、6,420億円(前年同期比0.1%増)、調整後EBITDAは2,620億円(前年同期比0.8%増)となりました。なおメディア事業の売上収益が全売上収益に占める割合は38.4%となりました。

LINE(株)では、「LINE公式アカウント」における大手顧客の配信メッセージ数増加や、中小加盟店の有償アカウント数増加により、アカウント広告の売上収益が前年同期比で18.3%増加しました。ディスプレイ広告は、市況悪化の影響に加えて、「LINE VOOM」のリニューアル影響等により、前年同期比で減収となりました。

また、ヤフー(株)では、検索広告が引き続き堅調に推移したものの、(株)イーブックイニシアティブジャパンの非連結化による影響や、ディスプレイ広告における市況悪化の影響および予約型での出稿減等により、売上収益が前年同期比で減収となりました。

 

② コマース事業

 コマース事業の売上収益は、アスクルグループやZOZOグループにおける増収や、経済活動の再開に伴い、トラベル事業が好調に推移したこと等により、前年同期比で増加しました。

 eコマース取扱高(※1)は、トラベル事業を中心とした国内サービス系ECの成長に加えて、リユース事業も安定的に成長したことにより、4兆1,143億円(前年同期比7.4%増)となり、うち国内物販系取扱高は、2兆9,880億円(前年同期比1.2%増)となりました。

 以上の結果、当連結会計年度におけるコマース事業の売上収益は、8,364億円(前年同期比3.1%増)となりました。また、調整後EBITDAは、上記増収に加えて、成長と収益性をバランスさせる方針に転換し事業のコスト最適化を進め、収益性が大幅に改善した結果、1,536億円(前年同期比16.8%増)となりました。なおコマース事業の売上収益が全売上収益に占める割合は50.0%となりました。

 

(※1)eコマース取扱高は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 32. 売上収益 (1) 売上収益の分解 各セグメントの主な商品」に掲載している「物販EC」、「サービスEC」およびメディア事業の「その他」の有料デジタルコンテンツ等における取扱高の合算値です。

 

③ 戦略事業

 戦略事業の売上収益は、2022年10月のPayPay(株)連結子会社化に伴い、前年同期比で大きく増加しました。

 PayPay取扱高は急速に成長しており、PayPayカード(株)の取扱高を含む連結取扱高は、前年同期比で3割を超えて増加(※2)し、PayPayのサービス開始から僅か4年6カ月で10兆円を超えました。また、PayPay銀行の貸出金残高は6,244億円(前年同期比49.8%増)と着実に増加しました。

 以上の結果、当連結会計年度における戦略事業の売上収益は1,920億円(前年同期比73.3%増)となりました。なお戦略事業の売上収益が全売上収益に占める割合は11.5%となりました。

 

(※2)PayPayカード(株)の取扱高を含む連結取扱高の増減率

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループはインターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、また受注生産形態をとらない事業も多いため、セグメント毎に生産の規模および受注の規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
 なお、販売の状況については、「2 経営成績の状況 (1) 事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況」における各セグメントの業績に関連づけて示しています。

 

(3) 経営指標に関する分析・検討

当社は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の各指標を主要な経営指標としています。当連結会計年度における当該指標の推移のうち、全社の売上収益、調整後EBITDA、「LINE公式アカウント」アカウント数、eコマース取扱高、「PayPay」取扱高、PayPayカード(株)のクレジットカード取扱高については、「2.経営成績の状況 (1) 事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況」に記載のとおり堅調に推移しています。

その他の経営指標に関しては、メディア事業において、広告関連売上収益が主に広告市況の悪化を背景に前年同期比微増にとどまりました。ヤフー(株)の月間ログインユーザーID数が前年同期比微減となった一方、ヤフー(株)のログインユーザー利用時間、LINE(株)の月間アクティブユーザー数(MAU)、デイリーアクティブユーザー数(DAU)/月間アクティブユーザー数(MAU)率が前年同期比で堅調に推移しました。また、戦略事業ではキャッシュレスの推進等により、「PayPay」の決済回数やPayPay銀行(株)の銀行口座数が順調に増加しました。これらの増加は、当連結会計年度における同事業の堅調な成長に寄与していると判断しています。

 

3. キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ524,327百万円増加し、1,651,851百万円となりました。このうち銀行事業に関する日銀預け金は344,767百万円です。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、銀行事業の貸付金の増加、カード事業の貸付金の増加および法人所得税の支払があったものの、主に税引前利益、営業債務及びその他の債務の増加および銀行事業の預金の増加の計上により93,051百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、銀行事業の有価証券の取得による支出、有形固定資産の取得による支出および無形資産の取得による支出があったものの、主に子会社の支配獲得による収入および銀行事業の有価証券の売却または償還による収入により319,786百万円の収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出、長期借入金の返済による支出、配当金の支払およびリース負債の返済による支出があったものの、主に長期借入による収入、短期借入金の純増および社債の発行による収入により105,791百万円の収入となりました。

 

 流動性および資金の源泉

流動性リスクとその管理方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29. 金融商品」に記載しています。

当連結会計年度における資金の主な増減要因については、上記に記載していますが、子会社株式の取得に関わる資金は、主に借入により調達しました。また、恒常的な支出であるサーバー等ネットワーク設備への設備投資等につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローを源泉としています。

 

4. 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.見積り及び判断の利用」に記載しています
 

 

5 【経営上の重要な契約等】

1. サービス提供契約

契約会社名

ヤフー株式会社

契約相手先

グーグル・アジア・パシフィック・プライベート・リミテッド

締結年月日

2020年5月29日(当初契約日2010年7月27日)

契約期間

2025年3月31日まで

主な内容

サービス提供契約(GOOGLE SERVICES AGREEMENT)

① 相手方による検索技術および検索連動型広告配信技術の非独占的提供

相手方は、検索技術および検索連動型広告配信技術を非独占的にヤフー㈱に提供し、ヤフー㈱は、これらを用いて自らのブランドにてサービスを提供する。

 

② 検索サービスの差別化

 両者は、検索サービスによる検索結果について差別化するための付加的な機能を自由に開発・運用することができる。
ヤフー㈱は、相手方が提供する検索結果を自らの判断で表示するか否かを決定することができる。

 

③ ヤフー㈱の相手方に対するサービスフィーの支払い
ヤフー㈱が提供を受けたサービスの対価は、ヤフー㈱のサイトから得られる金額を基準に年次に応じて定められた計算式によって算出される金額とする。ヤフー(株)がパートナーのサイトで利用したサービスの対価は、パートナーのサイトから得られる売上収益に年次毎に定められたレートを乗じた金額とする。

 

 

2. 金銭消費貸借契約

 当社は、(株)ZOZO株式公開買付に関わる資金調達に係る借入の借換えのため、2020年9月30日付で取引金融機関5行との間で金銭消費貸借契約を締結し、2020年10月30日に借入を実施しました。

 

主な契約内容は、以下のとおりです。

 ① 借入金額

   150,000百万円

 ② 借入利率

   全銀協TIBOR運営機関が公表する日本円TIBOR+スプレッド

   なお、スプレッドは契約書においてあらかじめ定められた数値が適用されます。

 ③ 返済期限

   2025年9月30日

 ④ 担保状況

   無担保

 ⑤ 連帯保証人

   ヤフー(株)

 ⑥ 借入人の主な義務

a. 多数貸付人の承諾がない限り、第三者への保証の提供、当社の連結子会社以外の第三者への貸付および当社連結子会社以外の第三者への投融資資金に充てることを目的とする当社の連結子会社に対する貸付を行わないこと。また、ソフトバンクグループ(株)およびソフトバンク(株)の債務を保証する保証提供、貸付その他与信行為、出資その他の投資を行わないこと。

b. 財務制限条項

(a)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における決算期の各末日時点における当社の貸借対照表に表示される純資産の部の金額が、前年同期比75%を下回らないこと。

(b)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における第2四半期と決算期の各末日時点における当社グループの連結財政状態計算書に表示される資本の金額が、前年同期比75%を下回らないこと。

(c)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における決算期の各末日時点における当社の貸借対照表において債務超過とならないこと。

(d)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における第2四半期と決算期の各末日時点における当社グループの連結財政状態計算書において債務超過とならないこと。

(e)2021年3月決算期以降の各決算期における決算期末日時点における当社の損益計算書に表示される営業損益又は当期純損益に関して2期連続して損失とならないこと。

(f)2021年3月決算期以降の各決算期における決算期末日時点における当社グループの連結損益計算書に表示される営業損益又は当期損益に関して2期連続して損失とならないこと。

(g)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における第2四半期と決算期の各末日時点におけるネットレバレッジ・レシオ(ⅰ)が一定の数値以下であること。

(ⅰ)ネットレバレッジ・レシオ=ネットデット(ⅱ)÷調整後EBITDA(ⅲ)

(ⅱ)当社グループの連結財政状態計算書に示される有利子負債から現金及び現金同等物を控除した金額をいう。なお、ここでいう有利子負債には資産流動化(証券化)の手法による資金調達取引から生じた有利子負債を含めない、PayPay銀行(株)の有利子負債および現金及び現金同等物は、有利子負債および現金及び現金同等物に含めない等の一定の調整あり。

(ⅲ)EBITDAは営業利益に減価償却費および営業費用に含まれる除却損等、金融機関との契約で定められた一定の調整を加えたもの。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発費は39,054百万円であり、主にAIやFintechの研究開発活動に係るものです。