第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

1. 経営の基本方針

 当社グループは、情報技術の力で全ての人に無限の可能性を提供する「UPDATE THE WORLD」をミッションに掲げ、『人類は、「自由自在」になれる』というビジョンの実現を目指しています。

 情報技術の発展により、人々はインターネットを介してあらゆる知識・情報の取得と、世界中に向けた情報発信が可能になりました。今後も人々は情報技術の活用によって様々な制約から解放されるとともに、新たな未来を創っていくと当社グループは考えます。

 常にユーザーファーストの視点を貫き持続的成長に向けたサービスの向上に努め、人々や社会の課題を解決することに貢献し、当社グループの企業価値向上を目指します。

 

2. 目標とする経営指標

 当社グループは主要財務指標として、全社の売上収益、調整後EBITDA(注1)を重視しています。これらの指標を設定した理由としては以下のとおりです。

 
  売上収益:全ての収益の源泉となるものであり、成長性および収益性、並びに事業規模も表すことができる指標として採用しました。

 調整後EBITDA:減価償却費及び償却費、並びに減損損失および企業結合に伴う再測定損益等の一過性の損益等の非現金収益および費用を除外することにより、経常的な収益性を把握できる指標であることから当該指標を採用しました。

 

 全社共通指標として、ヤフー(株)は月間ログインユーザーID数やログインユーザー利用時間等、LINE(株)は月間アクティブユーザー数、デイリーアクティブユーザー数(DAU)/月間アクティブユーザー数(MAU)率等を設定しています。メディア事業の指標は、広告関連売上収益に加えて、LINE公式アカウント数等となります。コマース事業ではeコマース取扱高等、戦略事業ではPayPay(株)の「PayPay」取扱高、「PayPay」決済回数、PayPayカード(株)のPayPayカード クレジットカード取扱高、PayPay銀行(株)の銀行口座数等を指標としています。

 

(注1)調整後EBITDA:調整後EBITDAは、IFRSにおいて定義された財務指標ではありませんが、当社グループの業績に対する理解を高め、現在の業績を評価する上での重要な指標として用いることを目的として当該指標を採用しています。そのため、他社において当社グループとは異なる計算方法または異なる目的で用いられる可能性があります。

 

3. 中長期的な会社の経営戦略

(1)経営環境

 近年、情報技術が発達し社会のあらゆる領域でオンラインとオフラインの境目は急速に失われています。インターネットの可能性が飛躍的に広がる中で、期せずして生じた新型コロナウイルス感染症拡大により、かつてない大きな変革期を迎えています。オンラインとオフラインの融合により、ビッグデータの価値が加速度的に高まっています。日本政府が提唱する「Society5.0」にあるとおり、データを用いて経済発展と社会課題の解決を両立するサービスや事業を創り出す企業が求められています。

 さらに世界中でキャッシュレスやIoT、ビッグデータ等、インターネットを介し、革新的で高い利便性を持つサービスが次々と生み出され、生活の新しいスタンダードになりつつあります。加えて、海外のIT企業が日本に進出し、その存在感は年々高まっています。他方、国内でもベンチャー企業が次々と現れており、激しい競争が続くインターネット市場では今後もめまぐるしい環境変化が予想されます。

 当社グループの展開する事業はメディア事業、コマース事業、並びに戦略事業に大別されます。当社グループが創業期から事業を展開しているメディア事業では、(株)電通の発表によると、2021年における日本の総広告費は通年で6兆7,998億円となりました。そのうちインターネット広告費は、「マスコミ四媒体広告費」を初めて上回る2兆7,052億円となり、広告市場全体の成長を牽引しています。インターネット広告費から「インターネット広告制作費」および「物販系ECプラットフォーム広告費」を除いた「インターネット広告媒体費」は、動画広告やソーシャル広告の伸びが成長を後押しして、2兆1,571億円と成長を続けています。広告種別では、検索連動型広告とディスプレイ広告の2種で全体の約7割を占め、ビデオ(動画)広告は前年から伸長し全体の約2割を占めています。

また、コマース事業では、経済産業省の調査によると、2020年のBtoC-EC市場規模は約19.2兆円、物販系分野におけるEC化率は、8.08%となりました。日本のEC化率は年々右肩上がりに上昇しており、さらなる上昇余地があると考えられます。特に新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出自粛要請を契機にeコマースの利用が拡大し、日本のEC化率がさらに上昇することが予想されます。

さらに、戦略事業では、キャッシュレス決済の領域で今後も拡大が期待される一方、経済産業省の発表によると日本の2020年のキャッシュレス決済比率は約3割と海外に比べて低い水準にあります。経済産業省は2018年3月、「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、「支払い方改革宣言」において、2025年にキャッシュレス決済比率を4割にまで引き上げることを目標としています。このようにコマース事業および戦略事業の市場は拡大するとともに、ビッグデータやテクノロジーの活用、モバイルペイメントといった決済手段により、オンラインとオフラインの融合が進むことが予想されます。

 

(2)経営戦略

 当社グループは創業以来、「ユーザーファースト」を信念としてサービスを展開してきました。規模や組織が変化したいまも、サービスの利便性をさらに高め、人々の生活を豊かにしていきたいという想いは変わりません。その実現にはユーザーへのより多角的かつ深い理解が不可欠との考えから、「データの蓄積・活用を通じて利用者を最も理解する存在」、ひいては「日本の利用者を最も理解する国産プラットフォーマー」となるべく取り組んでいます。日本に住む人々を最も理解し、最高の体験を提供することで社会課題を解決し、未来を創り出すための中核となるのが「横断的なマルチビッグデータの利活用」です。2018年度から「第三の創業期」と位置付け、マルチビッグデータを活かした事業モデルを展開する「データドリブンカンパニー」への変革を目指し、積極的に成長投資を行ってきました。

当社グループは、メディア、コマース、戦略という異なる事業において、メディア、eコマース、Fintechを中心とした多様なサービスを展開しています。オンラインからオフラインまで一気通貫でサービスを提供する、世界的にもユニークな企業グループです。当社グループの提供する多様なサービスから得られる豊富なデータは、当社グループならではのサービスを創り出すための重要な競争優位性となります。各サービスから得られるデータを横断的に活用することで、利用者一人ひとりに最適化されたサービスを提供し、さらに質の高い利用者体験の提供を目指します。

 その実現に向けた施策の1つが、ソフトバンク(株)との連携強化です。従来からeコマースやモバイルペイメント事業等の分野で事業連携を進めてきましたが、2019年6月に当社グループはソフトバンク(株)の連結子会社になりました。世界的にも類を見ない規模の「情報通信グループ」として、両者の多様なサービス群と国内最大級の顧客基盤、およびそこから得られる膨大な量と種類のマルチビッグデータを活用し、さらなる成長と企業価値の向上を目指します。

 さらに、これらの取り組みを強力に推進し日本・アジアを代表する企業グループになるべく、当社グループは2021年3月1日にLINE㈱との経営統合を完了しました。当社グループはLINE(株)との統合により、サービスを提供する国と地域は大幅に広がりました。またLINEのアジア主要国と地域における1億7,400万人の利用者基盤を活かし、各事業でのシナジー創出に向け取り組み、当社グループにしか創れない未来を力強く創造していきます。

 また、このように多様なサービス・グループ会社を展開する経営を進めることは、安定的な収益創出にもつながります。新型コロナウイルスの感染拡大等、有事の際でも収益源やビジネスモデルが多様性に富むことで影響を分散化できるため、経営基盤の安定に寄与すると考えています。

 これらの競争優位性や強みを活かし、利用者のニーズに合致したより質の高いサービスから、新たな利用者体験を創り出していきます。こうした取り組みを通じ、2023年度に売上収益2兆円、調整後EBITDA3,900億円の達成を中期目標として掲げています。

 豊富なデータ量と多様性あふれるデータ資産を持ち合わせた国内最大級のデータ所有者として、その能力を最大限に引き出し、社会全体の価値を向上させる企業を目指します。

 

(3)主要セグメントの基本方針

メディア事業

メディア事業では、日常に欠かせない多様なメディアサービスを提供することで多くの利用者を集め、広告により収益を上げています。特に新型コロナウイルスの感染拡大のような有事の際には、求められている情報やサービスを適切かつ迅速に提供することが重要です。我々が創業以来掲げてきた「ユーザーファースト」の理念に基づき、必要とされるサービスを適切なタイミングで提供することがメディアとしての信頼性を高め、結果として中長期的なユーザー数の拡大、ひいては広告売上収益の拡大につながると考えています。

サービス利用に関する重要指標であるYahoo! JAPANの月間ログインユーザーID数は当期末時点で約5,500万ID、またLINEの日本国内の月間アクティブユーザー数は約9,200万人と順調に拡大を続けており、2021年の第三者機関による国内トータルデジタルリーチにおいてYahoo! JAPANが1位、LINEが3位となりました。またLINE(株)との統合により、競合他社にはないユニークなアセットが拡充されました。今後もNAVER CorporationのAI技術やLINE(株)のアセットを活用しながら、認知から興味・関心といった「新規顧客獲得のためのファネル」に加えて、購入からCRMの「優良顧客化のためのファネル」まで一気通貫で支援する、新たなマーケティングソリューションを実現していきます。さらに、蓄積されたデータをPayPay、LINE公式アカウント等と組み合わせて活用し、コンバージョンにコミットするソリューションを提供していきます。その結果、一人ひとりに最適な提案をする「1:1」のマーケティングを実現し、利用頻度の増加を目指します。加えて、オフラインへの進出を新たなチャンスと捉え、オフライン上の利用者の生活も便利にする取り組みを進めています。「PayPay」によるオフライン決済のデータを活用することで、「認知」から「購買」までを一気通貫で可視化することにより、販促市場でのシェア拡大に取り組んでいます。

 

コマース事業

コマース事業では、eコマース関連サービスや会員向けサービス等を提供しています。ソフトバンク(株)、PayPay(株)、(株)ZOZO等との連携が奏功し、ショッピング事業取扱高は毎期堅調な成長を維持し、2021年度は約1.6兆円を超える規模に拡大しました。2019年度にサービスを開始したプレミアムなオンラインショッピングモールである「PayPayモール」では実店舗の在庫をオンライン上で購入できる「X(クロス)ショッピング」を開始しており、約140兆円規模のオフライン消費市場でのシェア獲得を目指します。加えて、LINE(株)との統合による取り組みとして、各社のロイヤリティプログラムを統合し、ヤフー、PayPay、LINEの3つの起点を活用させることで、サービス間のクロスユースを促し、経済圏を一層拡大していきます。また、中・長期的な取り組みとして、LINEのコミュニケーション機能を活用したギフト、共同購買、ライブコマース等の「ソーシャルコマース」および最短15分で商品を受け取ることができる「クイックコマース」を展開していきます。グループ連携を活かした新たな施策の一つが、NAVER Corporationの知見を活かした「MySmartStore」の展開です。これらの取り組みを通じ、企業のECサイト構築から売上最大化までを支援するサービスを2022年度に本格展開する予定です。「クイックコマース」事業に於いては、アスクル(株)が販売する食料・日用品をグループ会社である(株)出前館の配達員が配達する「Yahoo!マート by ASKUL」の本格展開を開始しました。2022年度中に東京都内全エリアをカバーすることを目標にし、事業を展開してまいります。今後も2020年3月に発表したヤマトホールディングス(株)との物流・配送の強化に関する業務提携による物流サービスの改善、ロイヤリティプログラムの強化、およびソーシャルコマース、クイックコマース等の我々の強みやグループ全体のアセットを活かした便利でお得なサービスを展開することにより、eコマース取扱高の持続的な成長を実現してまいります。

 

戦略事業

戦略事業では、「PayPay」と「LINE Pay」の国内のQR・バーコード決済事業について、2022年度内を目標に統合すべく準備を進めています。2021年8月から「LINE Pay」で「PayPay」のQRコードの読み取りが可能になりました。また2021年12月にPayPayカードをローンチし、更に、2022年2月にあと払いサービスを提供開始する等、決済手段を多様化することにより、グループ経済圏の拡大を目指します。今後もPayPay(株)、LINE(株)との連携により、「PayPay」「LINE Pay」を起点とする決済を中心としたオフライン上での生活における様々なデータの蓄積と活用により、ユーザーのニーズに即した証券、保険等の金融サービス、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)やO2O(Online to Offline / 送客)ビジネス等を展開し、多様な収益事業へと成長させてまいります。

また、LINE(株)では、2021年12月にグローバルNFTのエコシステムを本格的に構築するため、LINE NEXT Corporationを韓国に、LINE NEXT Inc.を米国に設立しました。LINE NEXT Corporationは、グローバルNFTプラットフォーム事業の戦略企画を行い、LINE NEXT Inc.は、グローバルNFTプラットフォーム事業を運営します。2022年3月には、LINE NEXT Inc.が、グローバルNFTエコシステムの実現に向け様々なパートナー企業26社とパートナーシップを締結し協力していくことを発表しました。各社の有名なIPコンテンツを基盤にNFTを開発し、ユーザーが簡単な決済方法でNFTの取引ができる環境を提供予定です。

 

 

4. 優先的に対処すべき課題

 3.(2)の経営戦略を実行するにあたり、当社グループでは、常にユーザーファーストの視点を貫き持続的成長に向けたサービスの向上のため、個人情報の保護を筆頭にセキュリティの強化を最優先に取り組んでいます。横断的なマルチビッグデータの利活用を進める上で、最も大切な基本姿勢は利用者の方のプライバシーを尊重することと考えています。プライバシーポリシーを策定した上で、日本国の法令に基づいて運用しています。

  なお、当社は、当社の連結子会社であるLINE(株)の日本国内ユーザーの日本国外での個人情報の取扱い等に関して、2021年3月に、当社グループにおけるデータの取り扱いをセキュリティ観点およびガバナンス観点から外部有識者にて検証・評価する特別委員会「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」を設置しました。同委員会は、同年10月に「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会最終報告書」を取りまとめています。当社は、同報告書で示された提言を受け、当社グループ全体でのデータガバナンス改善に向けた取り組みをさらに推進してまいります。デジタルプラットフォーム事業者の社会的責務を果たすため、当社は今後もお客さまや有識者および監督官庁等のご意見・ご指摘と真摯に向き合い、透明性を高め安心してご利用いただける環境作りのため、継続的な改善を行っていきます。また、インターネットは生活やビジネスに欠かせないインフラであり、その中で当社グループの担う公共的な責任も増しているため、突発的な事故や自然災害等に対する施設面・業務面でのリスクマネジメントの徹底に努めています。特に、当社グループはコーポレート・ガバナンスを「中長期的な企業価値の増大」を図るために必要不可欠な機能と位置付けています。少数株主を含む全株主の利益に適う経営が実現できるようガバナンス体制の強化に努めてまいります。また、企業の社会的責任を果たすための取り組みや、企業経営のリスクに対応するための内部統制システムの構築および運用についても、さらに強化していきます。

 加えて、当社グループの価値創造の源泉である人財のパフォーマンス最大化も重要な課題です。そのため、仕事に対する社員の意識や仕事の質のスタンダードを向上させていく仕組み・制度の整備を進めています。当社グループでは、働く人の心身のコンディションを最高の状態にすることが最大のパフォーマンスにつながり、働く人自身とその家族の幸せにつながると考えており、当社代表取締役社長Co-CEOの川邊健太郎が健康宣言を行っています。当社は、2022年3月に経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄2022」と、日本健康会議による「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」通称「ホワイト500」に選定されました。また当社グループ企業のヤフー(株)は「健康経営優良法人2022(ホワイト500)」に2017年より6年連続で認定を受けています。今後も全ての社員が心身ともに最高の状態で仕事に向き合えるような環境整備に継続して取り組んでまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

Zホールディングス(株)(以下「当社」という。)および子会社・関連会社(以下「グループ会社」という。また、当社と併せて「当社グループ」という。)は、持株会社である当社がグループ会社を統括して管理する一方、グループ会社が、国内外において多岐にわたる事業を展開しています。これらの企業活動の遂行にはさまざまなリスクを伴います。2022年3月31日現在において、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主なリスクは以下の通りです。なお、これらは当社グループで発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。また、将来に関する事項については別段の記載のない限り、2022年3月31日現在において判断したものです。

 

 1. 事業の競争力維持・運営に関わるリスク

 2. サービスの品質維持等に関わるリスク

 3. 人材獲得等に関わるリスク

 4. ガバナンス・内部統制等に関わるリスク

 5. 法規制や法的紛争等に関わるリスク

 6. 産業や社会倫理、意識の変化に関わるリスク

 7. 安全保障や国際関係に関わるリスク

 8. 自然災害等のインシデントに伴う事業継続に関わるリスク

 

 

1. 事業の競争力維持・運営に関わるリスク

 当社グループが展開する各種事業の伸び悩みや新規事業の収益化の遅れなどでグループの成長が遅滞しステークホルダーの要求に応えられなくなる、グローバル企業を目指す上での自覚や意識の不足により不適切な戦略や行動をとってしまう、近年のプラットフォーマー批判などが更に拡大しグループ全体の戦略に影響する、グループの規模や活動に見合う事業推進体制等を整えることができなくなる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 事業戦略に関わるリスク

当社グループの事業戦略として、中核企業であるヤフー(株)およびLINE(株)を中心とした「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」を「根幹領域」と定め推進するとともに、特に課題が大きくインターネットでその解決が見込める領域である「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech(フィンテック)」「社会」の4つを「集中領域」と定め、取り組んでいます。さらに、それらの領域にデータやAI技術を掛け合わせることでシナジーを強固に創出するとともに、ユーザーの日常生活、企業活動、そして社会自体をアップデートするサービスを提供していきます。しかしながら、これらのサービスの事業性は、そのユーザー数、利用頻度、収益化能力等に大きく依存しています。さらに、ユーザーの嗜好の変化は激しい為、市場の変動やニーズの的確な把握、ニーズに対応する開発・提供等ができない可能性があります。また、当社グループは「Clova」等のクラウドAIプラットフォーム事業やFintech事業、NFT(非代替性トークン)関連事業等にも注力していますが、これらの新規事業が全て将来的に収益性を確保できるかは定かではありません。さらに、当社グループで提供する事業における課金ユーザーの数や利用頻度の低下が業績に影響する可能性があります。これらに加えて、ブランドイメージの毀損等の外部要因や適切な判断能力の不足、技術革新に適切に対応する技術力の不足等の内部要因により、事業の目的が十分に達成できなくなる可能性があります。主な例としては、当社グループのLINE(株)およびその子会社・関連会社(以下「LINEグループ」という。)の収益はLINE GAMEにおけるユーザーからの課金、LINEスタンプの販売、および広告主からの広告料が大半となっていますが、LINE GAMEは少数のヒット作から大部分の収益が生じる傾向にあり、今後においてヒット作を継続的に出せなくなる可能性があります。また、LINEスタンプの販売は、今後人気作品を提供できない場合、低下する可能性があります。さらに、ユーザー数や利用頻度、市場変化や景気変動により広告料が低下する可能性があるほか、新たな広告商品が受け入れられない、パートナーシップを維持できない、等によっても収益が低下する可能性があります。

当社グループはこのような可能性の顕在化を低減させるべく、マーケティング、技術開発および教育への投資、インテリジェンスおよび計数管理の機能強化といった総合的な施策を継続して行っています。

 

(2) プラットフォームに関わるリスク

当社グループのヤフー(株)、LINE(株)をはじめ、グループ会社がインターネットを通して提供するサービスは、他社が開発したOS、ブラウザーなどのプラットフォーム上で展開しているため、これらの技術仕様やガイドラインの変更をうけ、サービスが提供できなくなるなどのリスクがあります。そのため、当社グループでは、他社の技術動向や各種ガイドライン等の動向を常に把握し、最新の変更に合わせて変更していくなど、影響を最小限にするよう努めています。

 

(3) パートナーシップに関わるリスク

当社グループでは、他のサイトとパートナーシップを組むことで当社グループ以外のサイトのユーザーとの接点を増やし、パートナーサイトを含めたネットワーク全体としての利用度を拡大するために、法人および個人のインターネットメディアとのパートナーシップの構築を積極的に進めていますが、パートナーの売上収益およびトラフィックが期待値に満たない、もしくは他社との競合の結果、パートナーシップの構築が遅滞する可能性や、パートナー獲得における費用の増加を余儀なくされる可能性、また、パートナーシップ契約を解除される可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。

当社グループのパートナーへのサービスは、当社グループの関連会社、提携会社のシステムにより提供していますが、これらシステムの障害などによりパートナーが損害を被った場合、当社グループのブランドイメージが低下したり、損害賠償を請求されたりする可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。また、パートナーのサービスの品質や評判が、当社グループの評判や信用に影響し、当社グループのブランドイメージに影響を及ぼす可能性があります。当社グループはこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、契約前および契約後の継続的な信用調査や数値管理、必要となる設備投資の強化などに努めています。

当社グループは、ニュース、気象情報、株価等の情報サービスや、映像、ゲーム等のコンテンツをユーザーに提供していますが、その確保に想定以上の費用がかかったり、他社に起因する諸要因により予定通り情報やコンテンツが集まらなかったりした場合、ユーザーによる当社グループのサービスの利用度が低下し、期待通りの業績を上げられない可能性があります。当社グループはこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、マネジメントプロセスの強化などに努めています。

 

(4) グーグル・インクに関わるリスク

当社グループであるヤフー(株)は、検索エンジン(技術)や検索連動型広告配信システム(技術)等のサービスを提供するために、グーグル・アジア・パシフィック・プライベート・リミテッドとの間で契約を締結しています。検索サービスはヤフー(株)の重要な業績の柱の一つであるため、当該契約内容が変更され、または終了した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) データ事業に関わるリスク

当社グループのヤフー(株)は、保有するビッグデータやインフラストラクチャー、データサイエンス、組織を活用し企業や自治体、研究機関の課題解決に資するべくデータソリューション事業を展開しています。同社は同事業を将来に向けた新たな収益の柱の一つとすべく注力し、同事業は現在の所順調に拡大しています。また、LINE(株)においても、データ活用戦略を統括する専門組織の下で同社の事業展開に資するよう、保有するビッグデータの分析等を行っています。しかしながら将来、ビッグデータの取得源となっている当社グループが提供するサービスのシェアの低下や、プライバシーに関わる規制・ルールの変更のような外的要因に基づくデータの不足・不備、インフラストラクチャーの障害、データサイエンスの誤用、組織の人員不足等により、当初の想定通りに事業展開等ができなくなる可能性があります。当社グループはこのような可能性の顕在化を低減させるべく、事業継続に必要な投資およびその効果検証を継続し、各領域における高品質化に努めています。

 

(6) 銀行事業に関わるリスク

当社グループのPayPay銀行(株)が保有する金融資産は、主として有価証券(国債・地方債・財投債・社債・投資信託等)であり、そのほかにも短期のコールローンおよび買入金銭債権を保有しています。これらには、それぞれの発行体の信用リスク、金利の変動リスク、為替の変動リスクおよび市場価格の変動リスクがあります。貸出金については、個人向け非事業性ローンは全て保証会社の保証付貸出金であり直接的な信用リスクは低減されていますが、事業性ローンについてはお客様の契約不履行によってもたらされる信用リスクがあります。同社の金融負債は、主として預金であり、また、コールマネーによる資金調達を行う場合もあります。いずれの負債も、金利の変動リスクがあります。これらのリスクに対応するため、同社では、資産および負債の総合的管理(ALM)を行っており、資産・負債に対するリスク量上限の設定、その順守状況のモニタリング等により、その適切なコントロールに努めています。

PayPay銀行(株)では、短期もしくは期間の定めのない預金の受け入れにより資金を調達し、これを様々な期間の貸出金および有価証券の購入等により運用を行っていますが、何らかの理由によりお客様の預金の引き出しが集中するようなことで、調達と運用の期間ギャップが発生する可能性(流動性リスク)を負っています。これに対して同社では、短期の要資金調達額に対して閾値を設定し、その順守状況を適時モニタリングするとともに、資金化が可能な運用資産の残高状況についてもモニタリングを行い、資金流動性に問題を来たさないよう十分な管理を行なっています。

 

(7) FX事業に関わるリスク

当社グループのLINE証券(株)が取扱う外国為替証拠金取引は、お客様が当社グループの定める所定の金額以上の証拠金を当社グループに預け入れることにより、取引を行うことができます。これにより、お客様は実際に預け入れた資金以上の金額の外国為替証拠金取引を行うことができることから、高い投資収益が期待できる半面、多大な投資損失を被る可能性があります。お客様が預け入れた資金以上の損失が発生し、お客様が不足分を支払うことができない場合、お客様に対する債権の全部または一部について貸倒損失を負う可能性がありますが、当社グループは、取引証拠金が所定の維持率を下回った際に、当社グループの所定の方法により強制的にお客様の保有するポジション(建玉)の全部を反対売買して決済する制度を設け、お客様の資産の保護および当社グループの損失の拡大防止に努めています。

当社グループが取扱う外国為替証拠金取引は、お客様と当社グループの相対取引ですが、お客様との取引から生じるリスクの減少を目的として、実績のある銀行、証券会社等複数の金融機関との間でカバー取引を行っています。当該金融機関の業務・財務状況の悪化等によりカバー取引が困難となった場合、お客様に対するポジションのリスクヘッジができない可能性があります。また、当該金融機関の経営破綻等により、当社グループが担保金として差し入れている資金の回収ができない可能性があります。このような場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(8) カード事業に関わるリスク

当社グループのPayPayカード(株)が発行する「PayPayカード」等において、クレジットカード会員がカード決済した代金について、クレジットカード加盟店に対し立替払いを行います。クレジットカード会員からの資金回収が月1回であるのに対し、クレジットカード加盟店に対しては月2回程度の立替払いを行っています。また、クレジットカード会員がその支払方法として、分割払い、リボルビング払いを指定した場合には、クレジットカード会員からの資金回収が約定の期間を通じて行われることから、それらの期間の立替資金の調達が必要となります。事業の拡大に備え調達方法の多様化を進めていますが、立替払いに必要な資金を適切なコストで調達できない可能性があります。さらに、経済状況の悪化等により、クレジットカード会員に対する立替金や貸付金が予定通り回収できず貸倒となる可能性があります。これに対して同社では審査機能やモニタリングを強化し利用枠等を制限することや適切な延滞管理を行うこと等により、その低減を図っています。

 

(9) その他決済・金融事業に関わるリスク

当社グループの決済・金融事業において、何らかの要因によりシステム障害や不正アクセスが発生し、約款等に定める免責事項では補完できない損失がお客様に発生した場合、お客様の機会損失、当社グループの信用低下や損害賠償義務の負担等により、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

例えば、当社グループのヤフー(株)の持分法適用会社であるPayPay(株)は2018年10月に電子決済サービスの提供を開始しましたが、2022年1月19日には登録ユーザー数が4,500万人を突破しています。LINE Pay(株)が2014年12月から提供している電子決済サービス(今後、PayPay電子決済サービスと統合を予定)と共に、現在国内有数の決済事業者・資金移動業者に成長しており、上述のような事象が発生した場合には当社グループも一定の影響を受けることが見込まれます。当社グループはこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、システムの常時安定稼働および強化に努めています。

 

(10) 海外における事業展開に関わるリスク

当社グループは、LINEグループを中心に、対象国のスマートフォンの普及・拡大に合わせて海外展開を図っていますが、その収益性は対象国の文化・制度・環境・競合等により不確実です。また、対象国の政府による検閲・アクセス制限が生じる可能性、海外展開の費用が増加する可能性があるほか、当社グループは海外展開において特定国に対する国際的な制裁に従う意向ですが、過失等により違反が生じ制裁を受ける可能性があります。さらに、海外事業においては会計・決算時における為替変動リスクがあります。当社グループは、事前のリサーチ、対応・対策のシミュレーション、対象国の状況および変化の正確な把握、対象国と日本との円滑な情報連携と意思決定の迅速化、などを合理的な費用を投じて推進・遂行することにより、それらの可能性の影響の最小限化に努めています。

 

2. サービスの品質維持等に関わるリスク

 サービスを提供する上で、社内のリソース不足や開発運用面での継承の断絶などからオペレーションミスが生じたり外部からの侵入を招きやすくなったりすることにより、個人情報漏洩等の事故や障害が発生する、組織の想像力が衰え利用者や社会の反応を見誤り対外コミュニケーション等で失敗することにより品質の適切な維持ができなくなる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) サイバーセキュリティに関わるリスク

当社グループでは、安心して利用できる安全なサービスをユーザーに提供するため、中長期的な視点で全社を挙げて情報セキュリティの向上に取り組んでいます。しかしながら、これらの取り組みが及ばず、業務上の人為的ミスや故意による不法行為、災害などによるシステム障害、マルウェア感染や標的型攻撃などのサイバー攻撃、システムや製品等の脆弱性などにより、情報漏洩、データの破壊や改ざん、サービスの停止などの被害等が発生した場合、当社グループの業績に影響を与えるだけでなく、当社グループの信用失墜につながる可能性があります。

当社は、グループ会社の情報セキュリティを支援しています。具体的には、情報セキュリティ対策の仕組みの共有や導入支援、脆弱性情報など情報セキュリティに関する情報の共有、各社の求めに応じて情報セキュリティ対策の相談対応などを行っています。また、グループ会社に対しては当社と同等の情報セキュリティ対策を行うための規程の提供や第三者認証取得支援などの支援を行っています。さらに、当社グループでは、日々高度化するサイバー攻撃などの脅威に備え、必要かつ前衛的な対策を取るべく必要十分な費用の確保に努めています。しかしながら、想定以上のサイバー攻撃などの脅威が発生した場合には追加費用が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 「Yahoo! JAPAN ID」「LINEアカウント」等のIDに関わるリスク

当社グループのヤフー(株)やLINE(株)は、「Yahoo! JAPAN ID」や「LINEアカウント」による利用者のアクセス管理を行っています。悪意ある第三者が、他人のIDとパスワードをフィッシングやダークウェブ等で不正に入手して乗っ取ったり、身元を偽って取得したりすることで、当社グループ、パートナーサイトの各種サービスを不正に利用されてしまう可能性があります。当社グループではそれらのIDを守る機能の提供や、ユーザーを含む日本のインターネットユーザーへ安全なID管理についての啓発を行ったり、IDの取得時には身元の確認をとる手段を講じたりしつつ、一定の不正利用を事前に想定した対策や、不正利用されたり不正利用が懸念されたりするIDの利用停止措置を継続的に行なっています。しかしながら、不正利用により立替金の回収に支障をきたす可能性や不正利用の被害に対する想定外の補償や再発防止対策費用により、業績に影響を及ぼしたり、当社グループのブランドイメージが低下・失墜したりする可能性があります。

 

(3) 通信の秘密に関わるリスク

当社グループのLINE(株)やヤフー(株)は、「LINE」「Yahoo!メール」等のサービスにおいて、通信内容等の通信の秘密に該当する情報を取り扱っています。これらの取扱いの際は電気通信事業法に則り、情報セキュリティに対する取り組みのもと、適切な取扱いを行っています。しかしながら、これらの情報が「LINE」「Yahoo!メール」等のサービスを提供するシステムの不具合や、マルウェア等の影響、通信設備等への物理的な侵入、当社グループの関係者や業務提携・委託先などの故意または過失等によって侵害された場合、当社グループのブランドイメージの低下や法的紛争に発展し、ユーザーの減少やサービスの停止や縮退に伴う損害賠償や売上収益減少などによる業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他サービス品質・イメージに関するリスク

当社グループのサービスを通じて使用されるアプリケーションやリンク先のウェブサイトによって、当社の保有するブランドのブランド力が悪影響を受ける可能性があります。また、ユーザー数の多い「LINE」を通じて、ユーザー間のいじめ、誹謗中傷、わいせつ、詐欺等のトラブルが生じ、LINEブランドや当社グループ全体のブランドが毀損される可能性があります。さらに、当社グループのサービスに関する報道や情報の流布により経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

3. 人材獲得等に関わるリスク

技術者の不足や意識の変化などにより、サービス開発・運用が滞り、事業の成長が阻害される、データプロテクションやAIなどの中長期的な成長を担う人材を適切に確保できない、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 従業員や雇用に関わるリスク

当社グループの事業は、業務に関して専門的な知識、技術を有している役職員、いわゆるキーパーソンに依存している部分があり、これらのキーパーソンが当社グループを退職した場合、事業の継続、発展に一時的な影響が生じる可能性があります。また、各グループ会社において、今後の中長期的な業務拡大を目的とする体制の強化や各種サービスの運用、品質向上のための増員が必要となりえますが、労働市場や社会意識の変化により、それが適切になされない可能性があります。適切に増員がなされる場合にも、費用が増大し、業績に影響を与える可能性があります。そのため当社グループでは、業界水準を参考にした適正賃金テーブルの把握や目標評価制度等の実施による賃金レベルの相当性の確保、要員計画等での人員規模の適正性の確認に努めています。さらに、各グループ会社の事業特性および業種・職種を考慮した働き方の多様性を拡大することにより、より多様な人材の活躍を見込むとともに、各個人および組織の生産性やエンゲージメントの向上に結び付けています。

 

4. ガバナンス・内部統制等に関わるリスク

 多様かつ多軸な当社グループにおいて、各社へのガバナンスの実効性が及ばず事故や問題が生じる、体制の不備により問題や事故が生じる一方で、ボトルネックが生じサービスのリリースの遅れなどにつながる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 経営統合の推進・進捗におけるリスク

当社は2021年3月1日付でLINE(株)との経営統合を行いました。これにより当社グループは日本国内で200超のサービスを提供し、国内総利用者数は3億超、国内総クライアント数は約1,500万、自治体との総連携案件数は3,000超となり、グループ従業員2.3万人を擁する国内最大規模のインターネットサービス企業グループとなりました。この経営統合の効果によって当社グループの売上収益及び営業利益も増大していますが、今後、当初に期待した経営統合の効果を十分に発揮できない場合には、各グループ会社が展開するサービスの連携の不調・遅れが発生し、統合戦略やシナジーに影響が出る、グループ会社間のストレスや統合に起因する混乱が問題発生の一因となる、などのリスクが生じる可能性があります。それらにより、当社グループの業務運営や業績、財政状態に影響を与える可能性があります。経営統合効果の進展を妨げる主たる要因として以下が考えられますが、これらに限定されるものではありません。

・業務面での協調体制の強化や経営資源の相互活用が、組織体系や業務プロセスの相違等から奏功せず、コスト削減・戦略的マーケティング・新規研究開発等の統合によるシナジーが十分に発揮できないリスク

・経営統合に伴う諸経営インフラの整備・統合・再編等により、想定外の追加費用が発生するリスク

当社は、これらを含むグループの事業等のリスクの全般に関して「リスクマネジメントに関する規程」を定め、代表取締役を委員長とするリスクマネジメント委員会を定期的に開催し、リスクの調査、分析、判断、対応計画、対応の推進を図っています。なお、特にリスクの高いサイバーセキュリティや金融事業、人権等の課題については、委員会の下に当社グループの企業で構成する「データガバナンス分科会」、「アンチマネーロンダリング分科会」、「人権分科会」を設置し、グループ会社横断のリスクマネジメントを行っています。

 

(2) データガバナンスに関わるリスク

LINE(株)との経営統合に伴い、当社グループが個人情報をはじめとするデータを取り扱う量も飛躍的に増大しています。データの取り扱いに際して当社は「分かりやすい説明」「国内法に基づく運用」「有識者による助言・評価」「プライバシー&セキュリティファースト」の4点を重視しつつ、その利活用を合理的・効率的にするためにデータガバナンス(データ資産管理の統制)の確立を図っています。当社グループのヤフー(株)とLINE(株)とのデータ連携にあたっては、同意取得を前提とした分かりやすい説明に努めるほか、各種の国際基準への準拠を前提とするなど、安全安心の確保に努めています。今後も個人情報の適切な取り扱いに関して当社グループ全体のガバナンスの強化に取り組んでいきますが、かかる対策やガバナンス強化の施策が有効に機能しないことによる当局から当社グループへの行政処分、当社グループの信用の毀損、当社グループのサービスへの需要の減少、追加の対策の策定・実施、また、データの漏洩やその恐れとなる事象の発生等により、当社グループの社会的信用や業績等に影響を与える可能性があります。
 

(3) 主要株主等に関わるリスク

当社グループは、主要株主であるAホールディングス(株)を連結子会社に持つソフトバンク(株)をはじめとするソフトバンクグループ内の各企業やAホールディングス(株)の主要株主であるNAVER Corporationおよびそのグループ企業との間で取引を行っています。ソフトバンクグループ(株)やソフトバンク(株)、また、NAVER Corporationは、その保有株数の構造上、当社の意思決定に影響力を及ぼしうる立場にあります。当社は社内規程や独立社外取締役4名で構成されるガバナンス委員会、その顧問弁護士による確認などによる監督の仕組みを整備・運用していますが、こうした仕組みが機能しない場合に、当社とそれらの親会社との間で利益相反が生じ、当社の利益が損なわれる可能性があります。また、ソフトバンクグループ各社やNAVER Corporationの事業戦略方針の変更等に伴い、当社グループのサービスや各種契約内容への影響や、関係の変化が生じる可能性があり、その場合、当社グループのビジネスに影響を与える可能性があります。

 

(4) その他コーポレート・ガバナンスに関わるリスク

当社グループでは、業務上の人為的ミスやその再発、意思決定プロセスの潜脱等が起きることのないよう関連する規程を定めているほか、取締役会内でも監査等委員4名全員を独立社外取締役として、経営の意思決定・業務執行の監督を強化しています。また、Co-CEO直属の内部監査部を設置し運営することにより、適法かつ適正なコーポレート・ガバナンスの強化を図っています。しかしながら、このようなガバナンス機能が想定通りに機能せず、ガバナンス不全に陥った場合、当社グループのブランドイメージや業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 内部通報・コンプライアンスに関わるリスク

当社グループでは、企業価値の持続的な増大を図るにはコンプライアンスが重要であると認識しています。そのため当社グループでは、コンプライアンスに関する諸規程を設け、全役員および全従業員が法令、定款などを順守するための規範を定め、その徹底を図るため、イントラネット上に諸規程を明示し、定期的な社内研修を実施しています。また、内部通報制度を設けており、従業員がコンプライアンス違反やその疑いのある事実について相談できる通報窓口を作るとともに、その通報者を保護しています。しかしながら、これらの取り組みにもかかわらず法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループのブランドイメージならびに業績に影響を与える可能性があります。

 

(6) 社内経営情報に関わるリスク

会社の経営・財務など投資判断に影響を及ぼすような未公表の重要事実(インサイダー情報)や非公開の社内経営情報の情報セキュリティが侵害された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、出願前の特許情報、公開前のM&Aや業務提携に関わる情報、取引先・株主・従業員の個人情報、監査資料、およびその他の営業資料などの社内経営情報をユーザーからお預かりしたパーソナルデータなどとは分離し、適切なアクセス制御のもとで管理しています。しかしながら、これらの情報が漏洩・改ざんまたは利用できない事態が発生した場合、株主・取引先・従業者などの利害関係者への直接的な影響、市場優位性の低下、法令違反に発展した場合の業務停止、ブランドイメージの低下などの可能性があります。

 

(7) 財務に関わるリスク

当社グループによる投資、融資の結果、十分な利益が得られない場合や、資金の回収が滞る可能性があります。また、投資先の業績の悪化や株価の下落、市場動向の悪化等による損失の発生や関連する減損処理などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、大小合わせ様々な事業取引を行うグループ会社で構成されていますが、中には与信管理が不十分な取引先と取引を行い、債権に基づいた金銭の支払を受けられないグループ会社が発生する可能性があり、これを積算することで、当社グループの業績にも影響を与える可能性があります。また、当社グループの事業の拡大に伴って資金需要も増大します。

当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行、債権の流動化等、資金調達方法の多様化等についての検討および対応を進めていますが、金利の上昇や信用格付の引き下げなどの条件の悪化により調達コストが増加する、一時的に資金が適切に調達できなくなる等の可能性があります。また、一部の借入には財務制限条項が附帯されており、経営成績や財務状況の悪化により財務制限条項に抵触する場合には、期限の利益を喪失し、借入金の一部または全額の返済を求められ、または新規借入が制限される可能性があります。

 

5. 法規制や法的紛争等に関わるリスク

法規制対応へのグループ会社間の足並みが揃わずにグループとしての責任を問われる、改正個人情報保護法等への対応が不十分なものとなる、クッキーなど利用履歴情報への規制がグループ会社の広告やECビジネスの根幹に影響を及ぼす、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 個人情報・プライバシーに関わるリスク

当社グループではプライバシーポリシーをユーザーに公開し、サービスを通じ取得したパーソナルデータをプライバシーポリシーに準拠し利用しています。パーソナルデータは、アクセス権限を持つ担当者を必要最小限に絞るなど複数の対策を組み合わせ、保護しています。しかしながら、これらの対策が及ばず、情報セキュリティが侵害された場合、サービスの停止または縮退により、当社グループの業績に影響を与えるだけでなく、当社グループの信用失墜につながる可能性があります。

パーソナルデータでも氏名や住所、電話番号等の「個人情報」の情報セキュリティが侵害された場合、上記リスクに加え、法的紛争に発展する可能性があります。一部についてはユーザー自身の個人情報の照会・変更・削除等をユーザー自身がシステムから行える機能を提供しており、問い合わせに回答するためにやむを得ない場合等に限り、必要最小限の情報を隔離された居室のみで取り扱うなどの対策を講じ、その他の役員、従業者等が個人情報を参照できない対策を導入しています。

個人情報の取り扱いを社外に業務委託する場合は、個人情報委託先選定基準を定め、一定水準以上の情報セキュリティ対策を実施できる業務委託先に限定して委託し、委託中は委託先の監督・監査を定期的に行っています。しかしながら、これらの対策が及ばず、情報漏洩、情報破壊や改ざんなどの被害等が発生した場合、信用の低下や損害賠償請求等の法的紛争が発生する可能性があります。加えて、ユーザーにおけるパーソナルデータへの関心の高まりを受け、当社グループより適法に個人情報の提供を受けたパートナーが、個人情報を漏洩したような場合において、当社グループに法的な責任はないとしても、社会的な責任を問われ、当社グループの信用失墜につながる可能性があります。

銀行口座番号、クレジットカード番号等が漏洩した場合、ブランドイメージが低下したり、法的紛争に発展したりする可能性があります。当社グループでは「PayPay」「LINE Pay」「Yahoo!ウォレット」などの決済金融系サービスやユーザーの本人確認のために銀行口座番号、クレジットカード番号等をお預かりし、または利用しています。これらの情報が第三者に悪用された場合、ユーザーに経済的被害を直接与える可能性があるとの認識のもと、さらに隔離したシステムでこれらの情報を機微な個人情報として厳重に管理しています。

個人情報が当社グループの提供するサービスの出店ストアから情報漏洩した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループであるヤフー(株)が提供する、「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」などのB to C取引では、購入者が入力した個人情報は、商品を販売したストアに送られ、各ストアが個人情報の収集主体として責任を持って管理しています。また、購入者の個人情報や購入情報がストアから別の個人や団体に開示されることがないように、ストアに対して、購入者の個人情報およびプライバシー情報について商品の送付や販促目的以外に利用をすることを固く禁じており、適切な管理をするよう適宜指導を行っています。なお、ストアのクレジットカード決済にあたっては、ストアにて当社グループの運営する決済手段を利用するか、直接カード会社と決済契約を締結するかいずれかの方法をとっています。当社グループの決済サービスを利用しているストアの場合、購入者が入力したクレジットカード番号等は当社グループを通じてカード会社に送信されますので、各ストアに保存されることはありません。一方、直接カード会社と決済契約をしているストアについては、購入者が入力したクレジットカード番号等の管理に関して、他の個人情報と同様に厳重な指導と注意喚起を行っています。しかしながら、これらの対策が及ばず、情報漏洩の被害等が発生した場合、当社グループの責任の有無にかかわらず、信用失墜によるユーザーの減少に伴い、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 金融事業の法規制に関わるリスク

当社グループで外国為替証拠金取引業や証券業を営むLINE証券(株)、銀行業を営むPayPay銀行(株)などは、それぞれ金融商品取引法、銀行法、その他の関連法令・諸規則等に従って業務を行っています。しかしながら、これらの規制に抵触する事態が発生した場合は、業務停止、登録抹消等の行政処分を受ける可能性があります。今後これらの規制が強化された場合にはコンプライアンス体制やシステム対応の強化、再整備等による費用の増加、他方でサービスの業績の低下などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

また、犯罪による収益の移転防止に関する法律は、テロ資金や犯罪収益の追跡のための情報確保とテロ資金供与およびマネー・ロンダリング等の利用防止を定め、事業者に義務を課していますが、当社グループは、お客様との間で外国為替証拠金取引や銀行取引を行うに際し、同法に基づき所定の書類等をお客様から徴収し、本人確認を実施するとともに本人確認記録および取引記録を保存しています。しかしながら、当社グループの業務管理が同法に適合していない事態が発生した場合や今後新たな法的規制が設けられた場合には、当社グループの業績および今後の事業展開に影響を与える可能性があります。

当社グループではこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、インテリジェンス機能や内部監査体制等の強化に取り組んでいます。

 

(3) デジタルプラットフォーム関連の法規制に関わるリスク

当社グループのヤフー(株)は、同社が提供するサービスである「Yahoo!ショッピング」について、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律に基づき特定デジタルプラットフォーム提供者としての指定を受けています。同法により義務付けられる情報開示や自主的体制の整備に関しては、外部有識者の意見も聴取し、一部は法施行に先行する形で積極的に対応するほか、2022年春の政府への報告書提出に向けて、外部有識者の意見も聴取しながら対応を進めています。また、2021年4月に内閣官房デジタル市場競争本部より公表されたデジタル広告市場競争評価最終報告の課題についても、ヤフー(株)に加えLINE(株)においても、高い透明性や公正性を意識し、継続的な改善を行っていきます。しかしながら、万が一取組が不十分であると政府から認定され同法に基づく行政措置の対象となった場合や、同法に基づき政府に提出する報告書が低い評価を受け、その評価結果が公表された場合、当社グループに対する取引先及び一般ユーザーからの評価や社会的評価が低下する可能性もあります。さらに、デジタルプラットフォームを提供する企業に対して、より一層厳しい規制の対象としていくという諸外国の動向に鑑み、仮に日本国内でも規制が強化され、当社グループ企業がその対象となった場合、当該企業の円滑な事業遂行が困難となる可能性があります。

 

(4) 法規制一般に関わるリスク

当社グループの事業は様々な法規制の影響を受けています。国内外を問わず、事件や事故の発生に対し報道等がなされ、社会の関心が高まった場合などに何らかの法規制がかけられるという動きがあります。特に、独占禁止法、電気通信事業法、個人情報保護法、銀行法、貸金業法、利息制限法、資金決済法、旅行業法、プロバイダー責任制限法、労働者派遣法、下請法などの法令の執行状況や改正、デジタルプラットフォーム事業者の透明性・公正性を図る新法制定による情報開示などの新たな対処、また、各種会計基準や税制等の変更などが当社グループの経営に影響を与える可能性があります。そのため、当社グループは各種法令を順守するとともに、関係各所と協力して、法規制や法改正の動向に注意し、様々な施策や啓発活動等を実施しています。

 

(5) 訴訟等に関わるリスク

当社グループは、その事業活動を遂行する過程において、個人ユーザー、法人顧客、その他の利害関係者から、当社グループが提供するサービスの不備、個人情報や機密情報の漏洩、知的財産の侵害、従業員の労務管理等に関する訴訟等の法的手続を提起されたり、当局による捜査や処分等の対象となったりする可能性があります。これらの法的手続に対応する費用の支出や、事業活動に支障をきたす可能性があります。

このような法的手続は、長期かつ多額、また、結果の予測が困難となる場合があり、当社グループに不利な判断がなされた場合には、ブランドイメージの毀損や賠償金の支払いなど、当社グループの社会的信用や業績等に影響を与える可能性があります。

 

(6) 知的財産権に関わるリスク

当社グループの事業において、他者の保有する特許権、著作権等の知的財産を侵害したとして、クレームや損害賠償を請求される可能性があります。特許権の範囲の不明確性により特許紛争の回避のために行う当社グループ自身の特許管理の費用が増大し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。インターネット技術に関する特許権の地域的な適用範囲については不明確であり、国内の特許のみならず、海外の特許が問題となる可能性もあります。また、当社グループが提供するサービスの内容や業務で使用するソフトウェアの利用が他者の著作権等の知的財産権を侵害したりする問題が生じる可能性があります。その場合、損害賠償請求等の訴訟を起こされたり、多額のロイヤルティの支払を余儀なくされたり、サービスの一部を提供できなくなる可能性があります。そのため、専門の部署を設置し特許の調査や出願、ソフトウェアライセンスの確認、社内への啓発活動、社内規則の制定や社内教育を実施するなど、発生防止に努めています。

 

6. 産業や社会倫理、意識の変化に関わるリスク

 産業構造の変化やゲームチェンジ等によりコア事業の収益性や成長性が低下する、主要サービスでの競争優位性を維持できずチャレンジャーに市場を奪われる、世の中の意識・時代の変化に適切に対応できないことにより社会からの信頼を失う、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 市場動向に関わるリスク

当社グループの事業はインターネット全体の利用規模、景気の動向、有料会員数、有料サービスの利用状況の変動等に影響を受ける可能性があります。そのため当社グループでは、利用者にとって正確で有益なサービスの提供、安心・安全な利用体験、広告媒体としての価値を向上させる調査研究および活動、啓発、有料会員向けの魅力的な特典やコンテンツの提供等を通じ、利用者の維持および拡大に努めています。

 

(2) 競合環境に関わるリスク

当社グループが提供する各サービスには国内外に競合が存在するため、今後もインターネット業界において優位性を発揮し続けられるかどうかは不確実です。当社グループではインターネットサービスや、スマートフォン向けアプリケーションを通じて、情報提供サービス、コマースサービス、決済サービス、コミュニケーションサービス等を提供していますが、それぞれのサービスには多数の競合が存在します。また、他企業の提供する新しいサービスがユーザーの支持を急速に集め、競合となる可能性があります。そのため、常に競合を意識し、既存サービスにおける新たな機能の追加、新規サービスの開発等を実施しています。しかし、これら競合への競争優位性を発揮するための研究開発費用等が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 自然環境・気候変動に関わるリスク

当社グループが気候変動問題等の国際的な意識変化のスピードや潮目の変化に適切に対応できない可能性があります。電力を中心としたエネルギー消費はCO2排出という形で環境に負荷を与えており、産業全体の拡大とともにその負荷も増大しています。当社グループでは、事業活動にともなう環境負荷の低減に向け、最新技術を活用した温暖化対策を実施し、継続的に設備の入れ替え、新規設備投資などを行うことによりエネルギー使用効率の改善を図っています。一方で、気候変動に伴う被害の激甚化・頻発化が当面は見込まれる情勢であり、事業運営に影響が出る可能性があります。また、Eコマース事業においては法令順守に基づく運営姿勢を貫徹していますが、生物由来製品の売買など、「生物多様性の保全」に対する影響への一部の見方が顕在化することで、ブランドイメージへの被害や、社会的「操業許可」が認められない状態になる可能性があります。

なお、当社グループは「未来世代に向けた地球環境への責任」を重点課題(6つのマテリアリティ)の一つとして位置づけ、環境負荷の低減や生態系に配慮し、電力の再生可能エネルギー化など脱炭素社会の実現を目指しています。また、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識し、2020年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)賛同表明を行いました。TCFD提言を参照し、気候変動に関わるリスクを移行リスクと物理的リスクに大別し開示しています。移行リスクの一つとして、炭素税導入を想定しています。CO2排出量に応じた炭素税導入やその規制・罰則が厳格化される場合、税負担が将来において増すなど財務面での影響を受ける可能性があります。当社グループは事業を運営するために、データセンター、オフィス、物流センターなどにおいて電力を使用しています。データセンターによる消費電力量は当社グループ全体の約90%であることから、データセンターの効率性を高めることと再生可能エネルギー化とがリスク回避につながると考えます。2030年度までにグループ全社の事業活動での温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをコミットし、低炭素社会への移行を促進し、移行リスクの低減を図ります。

 

 (4) 人権・倫理に関わるリスク

人権や多様性に関して、当社グループが提供するサービスの内容や経営陣や従業員の発言・行動・意思決定が社会的な批判を受ける、柔軟性や想像力の不足によりAI倫理、生物多様性などの新たな倫理・価値観の変化に適切に対応できないことにより社会からの信頼を失う、などの可能性があります。これに対し当社グループは、リスクマネジメント委員会の下に「人権分科会」を設置し、グループ会社横断の認識・知識の共有、およびリスクマネジメントに取り組んでおり、これらの可能性の顕在化の低減に努めています。

 

7. 安全保障や国際関係に関わるリスク

経済安全保障関連における対応の失敗、安全保障事案へのサービスの悪用などにより信用・評判の低下を招く、当社グループの拠点や事業が国際紛争などに巻き込まれる蓋然性が高まる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 有事に関わるリスク

一般的な紛争、クーデター、テロ等の発生、近時の経済安全保障体制の進行により、これまでの政治、経済の枠組みを大きく変える事態が発生した際、適切な対応を行わなかった場合は当社グループの事業に大きな影響があります。たとえば、当社グループのサービス運営が制限される、事業の継続に間接的に必要となる設備やサービス等をサプライヤーやメーカーから適切に調達できなくなる、ネットワーク回線の断絶により、ユーザーがサービスを利用できなくなる、広告掲載の取りやめ、広告掲載量の減少、有料サービス利用者の減少などにより、収益が減少する可能性があります。また、海外での通信や交通に支障が発生した場合は、海外関係者および海外に在住する当社グループ従業員との連絡・連携に支障が生じ、事業運営に影響を与える可能性があります。

なお、近時のウクライナ情勢や東アジアにおける国家間の情勢の変化に関連して、我が国においても資源・エネルギー価格の高騰や為替の急激な変動、サイバー攻撃の増加等の不確実性の影響が生じえます。これらの影響を最小限のものにすべく、当社グループでは従前より、事業を展開している各国・各地域における有事に関わるリスクに係る情報の収集およびモニタリングを継続的に実施しており、地政学的要素を勘案しながら、安定的な事業運営に取組んでいます。また、グローバルな事業基盤の強化及び拡充を図り、複数の利益の創出が継続的に可能となる市場を確保することで、特定の国・地域においてリスクが顕在化した場合でも業績への影響が最小限になるよう努めています。

 

8. 自然災害等のインシデントに伴う事業継続に関わるリスク

当社グループの主要拠点や物流拠点、データセンターが集中する首都圏が地震等で被災する、大規模停電や大規模通信障害で事業継続や意思決定・伝達が大きな影響を受ける、グループ全体での拠点被災想定や影響度評価が未整備で非常時対応が十分にできない、新型コロナウイルス感染症の状況が長引くことで他のリスクと複合して未知のリスクに発展する、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 自然災害に関わるリスク

当社グループの事業は、地震等の自然災害、火災等の事故、昨今の新型コロナウイルス感染症など、広範囲な感染症の発生、それらによる、建造物の破壊、ライフラインの停止、回線障害、都市機能の停止、入館禁止措置等の影響を受けます。また当社グループの物的、人的資源の大部分は東京に集中しています。当社グループでは、システムの冗長化やデータセンターの多重化、分散化などの環境整備を進めるとともに、こうした災害等の発生時には、速やかにかつ適切に全社的対応を行うよう準備しています。しかしながら、事前の想定を大きく超える事故等である場合、業務継続、復旧計画がうまく機能しない可能性があります。さらに、当社グループが所有する建物に起因する火災等の災害が発生した場合には、被害の収束、再建、周辺への補償等を含む対策により、業績等に影響がでる可能性があり、当社グループの事業、業績、ブランドイメージ等に影響が出る可能性があります。

2019年12月より発生の報告が続いていた新型コロナウイルス感染症の流行は拡大を続け、世界的な規模で経済活動に影響を及ぼしています。現時点においてもその収束は見通せない状況ですが、当社グループでは、各種の報道機関が同感染症の拡大について報じ始めた2020年1月より事象の重大性・深刻度についての認識を深めており、同感染症の流行拡大による事業への影響度を測り、関連して生じうる不確実性を低減させるべく、代表取締役社長の主導のもと、総合的なリスク評価、および対応方針を策定して参りました。リスク評価および対応方針を策定した代表的なものとしては、従業員の罹患、各事業拠点や施設の入館停止、リモートワークの推進に伴う生産性の変化などがあります。ただし、現時点での収束が見通せないこともあり、上記の事前想定を超えた内的要因(生産性の低下や設備投資の増加など)、外的要因(売上収益の減少など)により、通期連結業績にも影響が出る可能性があります。それらへの対応のため、当社グループは引き続き本件への管理体制を強化していき、感染対策の徹底等、従業員の安心・安全の確保に努めながら、グループ一丸となってリスク管理に不断に取り組んで参ります。

また、物理的リスクの一つとして、データセンターの機能停止、機能低下を想定しています。気候変動がもたらす自然災害、火災等によりデータセンターが建造物の破壊、回線障害の影響による機能の停止ないし低下により主要サービスを安定的に提供できなくなることから、財務面での影響を受ける可能性があります。影響を緩和するため、システムの冗長化やデータセンターの多重化、分散化などの環境整備を進めています。データセンターは日本国内においては北九州DC(福岡県)と白河DC(福島県)に東西分散させており、海外はアメリカ(ワシントン州)に構築し、リスク分散を図っています。気候変動をグループの重点リスクと位置づけ継続して必要な対策を実施し、リスクの低減に努めていますが、想定を超える大規模な自然災害等により被害を受け、サービスの継続に支障を期した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(2) インシデントに関わるリスク

 グループ会社のオフィスや倉庫、店舗などに対する外部からの襲撃や火災等の想定にグループとして把握や対策が不十分である、グループ会社各社での事故やインシデントへのグループとしての態勢が未熟で把握・対応が十分にできない、サービス提供において使用しているクラウドコンピューティングサービスの障害などの影響が事業継続にも影響を与える、データセンターやシステム構成の冗長性の未担保を一因として不具合発生時に影響が拡大する、などのインシデント発生および事業継続に関わるリスクが生じる可能性があります。これらに対して当社グループは、正確な現状認識に基づく実効性のあるBCP(事業継続計画)の確立と、拠点や依存対象の分散化、冗長性の担保等の施策により、リスクが顕在化した場合でも業績への影響が最小限になるよう努めています。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1. 財政状態の状況

 

当社は、第2四半期連結会計期間において企業結合に係る暫定的な会計処理を確定し、暫定的に測定された公正価値の修正を行ったため、前連結会計年度の財務数値を修正しています。これに従い、遡及修正後の数値で前期比較を行っています。

 

(1) 資産
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて419,057百万円(6.3%増)増加し、7,110,386百万円となりました。

 

主な増減理由は以下のとおりです。

 ・現金及び現金同等物の主な増減理由は、「3.キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

  ・営業債権及びその他の債権は、主にワイジェイFX(株)(現 外貨ex byGMO(株))の連結除外により前連結会計年度末と比べて減少しました。

  ・銀行事業の貸付金は、主に住宅ローン債権が増加したことにより前連結会計年度末と比べて増加しました。

  ・無形資産は、ヤフー(株)が主にYahoo!およびYahoo! JAPANに関連する日本での商標権を取得したことにより前連結会計年度末と比べて増加しました。

 

(2) 負債

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べて426,457百万円(11.5%増)増加し、4,128,188百万
 円となりました。

 

主な増減理由は以下のとおりです。

  ・営業債務及びその他の債務は、主にワイジェイFX(株)(現 外貨ex byGMO(株))の連結除外により前連結会計年度末と比べて減少しました。 
・銀行事業の預金は、顧客からの預金の増加により前連結会計年度末と比べて増加しました。
・有利子負債は、主に借入金の増加、社債発行による増加およびコマーシャル・ペーパー発行による増加により前連結会計年度末と比べて増加しました。 

 

(3) 資本

当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末と比べて7,400百万円(0.2%減)減少し、2,982,197百万円となりました。

 

主な増減理由は以下のとおりです。

 ・資本剰余金は、主に自己株式の消却により前連結会計年度末と比べて減少しました。 
・利益剰余金は、配当の支払があったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により前連結会計年度末と比べて増加しました。 
・自己株式は、自己株式の消却があったものの、自己株式の取得により前連結会計年度末と比べて増加しました。

 

2. 経営成績の状況

 (1) 事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況

当連結会計年度の売上収益は、2021年3月にLINE(株)と経営統合したことにより連結子会社化したことに加え、広告事業の売上収益が増加したこと等により、過去最高となる1兆5,674億円(前年同期比30.0%増)となりました。

調整後EBITDAは、上記増収に加え、ワイジェイFX(株)(※1)の株式売却益や「ヤフージャパン ライセンス契約」の終了に伴うロイヤルティ支払い解消等により、過去最高となる3,314億円(12.4%増)となりました。

 

(※1) ワイジェイFX(株)は、2021年9月27日に外貨ex byGMO(株)へ商号変更しました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりです。なお、各事業の成長フェーズに合わせ、第1四半期連結会計期間より、報告セグメントを変更しています。変更後の報告セグメントは以下のとおりです。

 

報告セグメント

 

主な事業内容

メディア事業

メディア・広告、検索、マーケティングソリューション、バーティカル、コンテンツ、スタンプ

コマース事業

ショッピング、リユース、アスクル、O2O、LINE FRIENDS

戦略事業

決済、金融、AI、ヘルスケア

 

(注) 1 戦略事業は、メディア事業やコマース事業に次いで新たな収益の柱となるよう取り組んでいく、Fintechを中心とした事業が含まれます。

2  取扱商品の詳細は、168ページ「各セグメントの主なサービス・商品」に掲載しています。

 

① メディア事業

メディア事業の売上収益は、2021年3月にLINE(株)を経営統合により連結子会社化したことに加え、広告の需要回復、プロダクト改善施策等により、前年同期比で大きく増加しました。

ヤフー(株)では、市場全体における需要回復の取込み、プロダクト改善等により、広告関連売上収益は前年度比で2013年度以来の2桁成長となりました。また、LINE(株)ではディスプレイ広告におけるトークリスト常時表示化、新商品の投入及び広告主の拡大、またアカウント広告における開設アカウント数の順調な拡大等により、広告関連売上収益は前年同期比で大きく増加しました。

以上の結果、当連結会計年度のメディア事業の売上収益は6,395億円(前年同期比74.3%増)、調整後EBITDAは2,661億円(前年同期比63.7%増)となりました。なおメディア事業の売上収益の全売上収益に占める割合は40.8%となりました。

 

② コマース事業

 コマース事業の売上収益は、2021年3月にLINE(株)を経営統合により連結子会社化したことに加え、ZOZOグループおよびアスクルグループの増収等により、前年同期比で増加しました。

また、eコマース取扱高(※2)は3兆5,788億円(前年同期比10.9%増)となり、うち物販系取扱高は、2兆9,525億円(前年同期比10.5%増)となりました。

以上の結果、当連結会計年度におけるコマース事業の売上収益は8,109億円(前年同期比8.7%増)、調整後EBITDAは1,315億円(前年同期比13.7%減)となりました。なおコマース事業の売上収益の全売上収益に占める割合は51.7%となりました。

 

(※2)eコマース取扱高は、168ページ「各セグメントの主な商品」に掲載している「物販EC」、「サービスEC」およびメディア事業の「その他」の有料デジタルコンテンツ等における取扱高の合算値です。

 

③ 戦略事業

 戦略事業の売上収益は、2021年3月にLINE(株)を経営統合により連結子会社化したことに加え、Fintech領域が成長したことにより、前年同期比で増加しました。

また、PayPay取扱高は、ユーザー数の拡大や利用頻度の増加に伴い決済回数が増加したことにより、5兆4,436億円(前年同期比67.2%増)と好調に推移し、PayPayカード(株)(※3)のクレジットカード取扱高は2兆9,081億円(前年同期比19.8%増)、PayPay銀行(※4)の口座数は602万口座(前年同期比17.6%増)と着実に増加しました。

以上の結果、当連結会計年度における戦略事業の売上収益は1,161億円(前年同期比32.9%増)となりました。なお戦略事業の売上収益の全売上収益に占める割合は7.4%となりました。

 

(※3) PayPayカード(株)は、2021年10月1日にワイジェイカード(株)から商号変更しました。

(※4) PayPay銀行(株)は、2021年4月5日に(株)ジャパンネット銀行から商号変更しました。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループはインターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、また受注生産形態をとらない事業も多いため、セグメント毎に生産の規模および受注の規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
 なお、販売の状況については、「2 経営成績の状況 (1) 事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況」における各セグメントの業績に関連づけて示しています。

 

(3) 経営指標に関する分析・検討

当社は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の各指標を主要な経営指標としています。当連結会計年度における当該指標の推移のうち、全社の売上収益、調整後EBITDA、広告関連売上収益、eコマース取扱高、「PayPay」取扱高、「PayPay」決済回数については、「2.経営成績の状況」に記載のとおり堅調に推移しています。

その他の経営指標に関しましては、メディア事業ではヤフー㈱の月間ログインユーザーID数及びログインユーザー利用時間、LINE㈱の月間アクティブユーザー数及びデイリーアクティブユーザー数(DAU)/月間アクティブユーザー数(MAU)率はいずれも堅調に増加しています。また、戦略事業ではキャッシュレス推進や「PayPay」との連携等により、PayPayカード(株)のクレジットカード取扱高やPayPay銀行(株)の銀行口座数が順調に増加しており、これらの増加は当連結会計年度における業績の堅調な成長に寄与していると判断しています。

なお、新型コロナウイルス感染症の各経営指標への影響については、セグメントごとに影響の内容及び大きさは異なるものの、グループ全体で多種多様なサービスを提供していることなどから、当連結会計年度における主要指標は堅調に推移しています。

 

3. キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ61,796百万円増加し、1,127,523百万円となりました。このうち銀行事業に関する日銀預け金は320,403百万円です。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、銀行事業の貸付金の増加があったものの、主に銀行事業の預金の増加および税引前利益の計上により266,314百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、銀行事業の有価証券の売却による収入があったものの、主に無形資産および銀行事業の有価証券、株式の取得により303,899百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済および自己株式の取得による支出、配当金の支払があったものの、主に長期借入れおよび社債の発行による収入、コマーシャル・ペーパーの発行・償還により91,630百万円の収入となりました。

 

 流動性および資金の源泉

流動性リスクとその管理方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29. 金融商品」に記載しています。

当連結会計年度における資金の主な増減要因については、上記に記載していますが、子会社株式の取得に関わる資金は、主に借入により調達しました。また、恒常的な支出であるサーバー等ネットワーク設備への設備投資等につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローを源泉としています。

 

4. 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.見積り及び判断の利用」に記載しています
 

 

4 【経営上の重要な契約等】

1.ヤフージャパン ライセンス契約買取に関する最終契約

概要

ヤフー㈱は、2021年9月7日付「『ヤフージャパン ライセンス契約』買取に関するOath Inc. 及びOath Holdings Inc. との最終契約締結のお知らせ」でWebサイト掲載にてプレスリリースしたとおり、2021年9月7日付で「ヤフージャパン ライセンス契約」に係る最終契約(以下、「本契約」という。)を締結しました。

 本契約に基づき、2021年9月22日をもって「ヤフージャパン ライセンス契約」は終了しました。また、2021年7月5日付「ヤフージャパン ライセンス契約」に係る基本契約締結のお知らせでWebサイト掲載にてプレスリリースした基本契約において合意済みの以下の条件等についても変更はございません。

 ■本契約の概要

・Yahoo!およびYahoo! JAPANに関連する日本での商標権の取得

・従来の技術ライセンスの対象一式を永久に利用する権利と関連するサポートの取得

・ZHDグループ内での日本におけるブランド使用および技術の利用

・「ヤフージャパン ライセンス契約」の終了

・上記に対する対価は1,785億円

 

 

※参考 契約終了したヤフージャパン ライセンス契約の内容

契約会社名

 ヤフー株式会社(以下、「ヤフー㈱」)

契約相手先

 オース・ホールディングス・インク(2018年1月1日にヤフー・ホールディングス・インクより商号変更)

締結年月日

 1996年4月1日

契約期間

 1996年4月1日~(期限の定めなし)

  但し、(i)当事者の合意による場合、(ii) 一方当事者の債務不履行、若しくは破産等を原因として本契約が解除される場合、(iii)オース・ホールディングス・インクが競合するとみなす企業等によりヤフー㈱の株式の3分の1以上が買収された場合、または(ⅳ)ヤフー㈱につき合併、買収等される場合において、その合併、買収等される前のヤフー㈱の株主が合併、買収等された後の会社の議決権の過半数を維持できない場合(但し、オース・ホールディングス・インクの同意がある場合を除く)においては本契約は終了する。

主な内容

 ヤフージャパン ライセンス契約(YAHOO! JAPAN LICENSE AGREEMENT)

 ① オース・ホールディングス・インクのヤフー㈱に対する下記のライセンスの許諾

・日本市場のためにカスタマイズされローカライズされたオース・ホールディングス・インクの情報検索サービス等(以下、日本版情報検索サービス等という)の使用複製等に係る非独占的権利

・オース・ホールディングス・インクの商標等の日本における利用等にかかる非独占的権利

・オース・ホールディングス・インクの商標等の日本における出版に関する利用等にかかる独占的権利

・日本版情報検索サービス等の開発、商業利用、プロモーション等に係る全世界における独占的権利

 

 ② ヤフー㈱が追加する日本固有のコンテンツのオース・ホールディングス・インク に対する全世界における利用にかかる非独占的権利の許諾(無償)

 

③ ヤフー㈱のオース・ホールディングス・インクに対するロイヤルティの支払い

(注)ロイヤルティの計算方法は、売上総利益から販売手数料を差し引いた金額の3%を支払金額としていましたが、2005年1月から、計算方法の見直しにより、下記に記載の計算式により支払金額を算定しています。

 ロイヤルティの計算方法

{(売上収益)-(広告販売手数料*)-(取引形態の異なる連結子会社における売上原価等)}×3%

*広告販売手数料は連結ベース

 

 

2. サービス提供契約

契約会社名

ヤフー株式会社

契約相手先

グーグル・アジア・パシフィック・プライベート・リミテッド

締結年月日

2020年5月29日(当初契約日2010年7月27日)

契約期間

2025年3月31日まで

主な内容

サービス提供契約(GOOGLE SERVICES AGREEMENT)

① 相手方による検索技術および検索連動型広告配信技術の非独占的提供

相手方は、検索技術および検索連動型広告配信技術を非独占的にヤフー㈱に提供し、ヤフー㈱は、これらを用いて自らのブランドにてサービスを提供する。

 

② 検索サービスの差別化

 両者は、検索サービスによる検索結果について差別化するための付加的な機能を自由に開発・運用することができる。
ヤフー㈱は、相手方が提供する検索結果を自らの判断で表示するか否かを決定することができる。

 

③ ヤフー㈱の相手方に対するサービスフィーの支払い
ヤフー㈱が提供を受けたサービスの対価は、ヤフー㈱のサイトから得られる金額を基準に年次に応じて定められた計算式によって算出される金額とする。ヤフー(株)がパートナーのサイトで利用したサービスの対価は、パートナーのサイトから得られる売上収益に年次毎に定められたレートを乗じた金額とする。

 

 

3. 金銭消費貸借契約

 当社は、(株)ZOZO株式公開買付に関わる資金調達に係る借入の借換えのため、2020年9月30日付で取引金融機関5行との間で金銭消費貸借契約を締結し、2020年10月30日に借入を実施しました。

 

主な契約内容は、以下のとおりです。

 ① 借入金額

   150,000百万円

 ② 借入利率

   全銀協TIBOR運営機関が公表する日本円TIBOR+スプレッド

   なお、スプレッドは契約書においてあらかじめ定められた数値が適用されます。

 ③ 返済期限

   2025年9月30日

 ④ 担保状況

   無担保

 ⑤ 連帯保証人

   ヤフー(株)

 ⑥ 借入人の主な義務

a. 多数貸付人の承諾がない限り、第三者への保証の提供、当社の連結子会社以外の第三者への貸付および当社連結子会社以外の第三者への投融資資金に充てることを目的とする当社の連結子会社に対する貸付を行わないこと。また、ソフトバンクグループ(株)およびソフトバンク(株)の債務を保証する保証提供、貸付その他与信行為、出資その他の投資を行わないこと。

b. 財務制限条項

(a)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における決算期の各末日時点における当社の貸借対照表に表示される純資産の部の金額が、前年同期比75%を下回らないこと。

(b)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における第2四半期と決算期の各末日時点における当社グループの連結財政状態計算書に表示される資本の金額が、前年同期比75%を下回らないこと。

(c)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における決算期の各末日時点における当社の貸借対照表において債務超過とならないこと。

(d)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における第2四半期と決算期の各末日時点における当社グループの連結財政状態計算書において債務超過とならないこと。

(e)2021年3月決算期以降の各決算期における決算期末日時点における当社の損益計算書に表示される営業損益又は当期純損益に関して2期連続して損失とならないこと。

(f)2021年3月決算期以降の各決算期における決算期末日時点における当社グループの連結損益計算書に表示される営業損益又は当期損益に関して2期連続して損失とならないこと。

(g)2020年9月期(第2四半期)以降の各決算期における第2四半期と決算期の各末日時点におけるネットレバレッジ・レシオ(ⅰ)が一定の数値以下であること。

(ⅰ)ネットレバレッジ・レシオ=ネットデット(ⅱ)÷調整後EBITDA(ⅲ)

(ⅱ)当社グループの連結財政状態計算書に示される有利子負債から現金及び現金同等物を控除した金額をいう。なお、ここでいう有利子負債には資産流動化(証券化)の手法による資金調達取引から生じた有利子負債を含めない、PayPay銀行(株)の有利子負債および現金及び現金同等物は、有利子負債および現金及び現金同等物に含めない等の一定の調整あり。

(ⅲ)EBITDAは営業利益に減価償却費および営業費用に含まれる除却損等、金融機関との契約で定められた一定の調整を加えたもの。

 

4. 債務保証に関する契約

 当社は、LINE(株)(以下、LINEという。)との経営統合に係る一連の取引に関連して、LINEが発行する新株予約権付社債の繰上償還に関わるLINEによる資金調達につき連帯保証を提供するため、2020年9月30日付で、LINE、NAVER Corporation、取引金融機関22行との間で、債務保証に関する契約を締結していましたが、貸付契約および保証契約は借入人が全額弁済したことに伴い、2021年9月30日をもって終了しました。

 

     終了した主な契約内容は、以下のとおりです。

  (1)  LINEによる資金調達の概要

 LINEの下記「シンジケートローン契約締結に関するお知らせ」をご参照ください。

  https://d.line-scdn.net/stf/linecorp/ja/ir/all/LINE_20200928_2_JP.pdf

  (2) 保証の範囲

 当社は、LINEのトランシェB(686億円)およびトランシェD(57億円)に係る借入債務につき、それぞれの取引金融機関に対して連帯保証を提供しています。なお、当社は、上記資金調達においてNAVER Corporationが提供する保証に関連して、経営統合完了において当社の連結子会社となったLINE(旧・LINE分割準備(株)であり、LINEの資金調達に関する権利義務を含むLINEの事業を承継した法人)がNAVER Corporationに対して負担する可能性のある求償債務につき、NAVER Corporationに対して連帯保証を提供しています。

  (3)  保証人の主な義務

 当社は、LINEとの経営統合の完了日以降、LINEが借入に関する全ての債務の履行を完了するまでの間、LINEおよびヤフー(株)を当社の連結子会社として維持し、かつ、当社のLINEおよびヤフー(株)に対する持株比率が50.1%を下回らない状態を保持し続けることを確約しています。

 

 

5 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発費は30,042百万円です。LINE(株)との経営統合により、主にAIやFintechの研究開発費が増加しています。