第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

近年における国内のBtoB卸売市場は300兆円規模と推定(※1)されており、非常に大きな市場にも関わらずEC化率は未だ34.9%(EDI(※2)による取引を含む)と、オンライン化されていないBtoB市場は200兆円以上あると考えられます。また、海外市場に目を向けると、BtoB卸売市場規模は数千兆円以上と想定されます。

オークファングループはこの課題に真正面から向き合い解決すべく、コーポレートアイデンティティを「RE-INFRA COMPANY」と定義し、社会の様々な「RE」を統合した唯一無二の再流通インフラを構築し、卸売市場におけるSMB(中小企業・個人事業主)を中心としたDX化に取り組んでまいりました。

 

具体的には、創業来培った700億件を超える売買データとAI技術により商品の時価を可視化、価格と販路を最適化する在庫価値ソリューション、SMB(中小企業・個人事業主)を中心とした小売・流通業向けに流通を支援する商品流通プラットフォームを展開しております。

 

※1 経済産業省2023年8月31日発表 電子商取引に関する市場調査、BtoB-EC市場規模の業種別内訳より推察

※2 電子的データ交換(Electronic Data Interchange)の略称。受注や発注、出荷や納品などの流通に関わる一連の取引を電子データでやりとりする仕組み

 

当社グループが対処すべき課題は、次のとおりです。

 

① 卸売市場のDX化

当社グループでは、オークション等価格比較メディア「オークファン(aucfan.com)」をはじめとする在庫価値ソリューション及びBtoBマーケットプレイス「NETSEA」をはじめとする商品流通プラットフォームの提供により、卸売市場におけるDX化を含む市場の発展を推進してまいりましたが、なお、卸売市場におけるDX化の遅れを再認しており、その推進が急務となっています。

そのため、当社グループでは、その強みがあるSMB(中小企業・個人事業主)向け事業への選択と集中を進め、更なるDX化の推進及び市場の発展のため、サービス及び利用者の拡大並びに利便性の向上を図ってまいります。

 

② オフライン卸売市場への進出

当社は、2022年4月より当社グループに加わったオーエスアールネット株式会社により、卸売市場におけるオンラインとオフラインの取引をシームレスにすることにより、当社グループでのGMV(流通額)の成長、並びにBtoB卸売市場におけるDX化を推進しています。

さらには当社の保有する売買データにオフラインの卸売データを取り込むことで、卸価格/小売価格、オンライン/オフラインの4象限において、最適な価格と販路の選択が可能になります。これにより、在庫流動化支援における流通インフラをデータ面でも強化することで、社会の課題である廃棄ロス削減に取り組んでまいります。

 

③ 中長期の事業拡大に向けた海外BtoB卸売市場の開拓

当社グループでは、これまで国内BtoB卸売市場を中心に取組んでおりましたが、中長期の事業拡大に向けては数千兆円規模以上と想定される海外BtoB卸売市場への進出が必要と考えております。

2022年6月より中国海南省に現地子会社「傲可凡(海南)网絡科技有限公司」を設立し、人口14億人以上の中国バイヤー、さらにはそこから世界各国への流通インフラ構築に向け現地調査を進め、海外向けサービス開始の準備を進めております。

 

 

④ システム技術・情報セキュリティの継続的な強化

当社グループの事業は、インターネット上でのサイト運営を中心としており、サービス提供に係るシステムを安全・安定に稼働させることが重要な課題であると認識しております。そのため、利用者数増加に伴う負荷分散や利用者満足度の向上を目的とした新規サービス・機能の開発等に備え、引き続き設備の先行投資を継続的に行ってまいります。

 

⑤ 多様な売買データの整備・拡充

当社グループが保有するネットオークション・ネットショッピングを中心とする約10年分の売買データは、分析・加工を経て当社グループユーザに利用されております。これらのデータは個人・法人を問わず、利用者の増加とともに、その利用方法も多岐にわたってきております。当社グループでは、これらのユーザニーズの多様化に応えられる分析ノウハウ・加工技術を加速度的に向上させるため、引き続き専門部署においてこれらのデータの整備を積極的に進めてまいります。

 

⑥ 内部管理統制機能の強化

当社は連結子会社である株式会社SynaBizにおいて、2022年9月期を含む複数事業年度にわたって不適切な取引及び不適切な会計処理が行われていた疑念があることを認識し、取引内容の詳細及び影響額等の事実関係の確認等を目的として、外部の専門家により構成される特別調査委員会を設置し、調査を実施いたしました。2023年1月13日付で受領した特別調査委員会からの調査報告書の内容を踏まえ、2019年9月期から2022年9月期第3四半期における有価証券報告書等の訂正報告書を提出するとともに、過年度の決算短信等の訂正を行っております。

当社は特別調査委員会の調査結果及び再発防止策の提言を真摯に受け止め、具体的な再発防止策を2023年3月8日に公表いたしました。再発防止策はもれなく実行しておりますが、適正な内部統制の整備及び運用のさらなる強化に取り組み、内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの一層の充実を図るため、引き続き再発防止に努め、上場企業に相応しいコンプライアンス体制の維持・強化を行ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループではサステナビリティ関連のリスク及び機会についても、その他の経営上のリスク及び機会と同様に捉えております。そのため、サステナビリティ関連のリスク等に対するガバナンス体制についても、その他の経営上のリスク及び機会と同じく、上記体制のもとでリスク及び機会を監視し、総合的なリスクマネジメントを行っております。

今後は、社会情勢や経営環境の変化に中長期的に適応すべく、サステナビリティに関する取り組みについての議論を取締役会及びコンプライアンス委員会で増やしていく方針です。

 

(2)戦略

当社グループは、サステナビリティに関する取組みのうち、特に優秀な人材確保及び定着に関する取組みを経営上重要な課題であると考えております。

特に従業員は事業の成長を支える重要な存在であるとの認識のもと、性別や国籍、新卒・中途採用の区別なく、経験、能力、多様な視点や価値観を有する社員を積極的に採用しております。また既存従業員に対しても、職場定着率の向上のため、従業員の家庭環境に応じて柔軟な働き方をサポートするべく、選択的時差出勤制度、リモートワーク制度等の施策を構じております。また若い従業員が積極的にチャレンジできる体制づくりも進めております。

また人事評価にコンプライアンス項目を設定し、コンプライアンス意識を高くもつ人材を積極的に重用することにより、コンプライアンス意識が根付いた企業風土を構築し、各種ハラスメントなどが起きないより働きやすい環境整備に努めております。

今後も、人的資本投資の重要性の認識を一層高め、サステナビリティの観点でエンゲージメント・人材育成等の人材投資を増強してまいります。

 

(3)リスク管理

サステナビリティ関連のリスク等の管理に関しては、企業が持続可能な発展を遂げることに対するリスクとして他の事業上のリスク全般と同様に、代表取締役の指揮のもと、事業側と管理側の責任者で組成される執行報告会において事業におけるリスクの特定、分析、評価、対応といったリスクマネジメントを実施し、重要と認識されたものについては、取締役会へ報告されます。

また毎月開催されるコンプライアンス委員会においては、サステナビリティ関連のリスクを含む全社的なリスク項目やコンプライアンスリスクについて、審議、検討及びモニタリングを行っています。同委員会の活動内容を毎月取締役会に報告し、必要に応じて取締役会で適切な対策を審議・決定しております。

 

(4)指標及び目標

サステナビリティに係る指標及び目標については、当社グループとしても中長期的な経営課題と考え、今後、取締役会やコンプライアンス委員会等で議論を重ね定めて参ります。

人材育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標及び目標について、上記「(2)戦略」において記載したとおり、家庭と仕事の両立をサポートし、職場の定着性を向上させるため、まずは「男性従業員の育児休業取得率」を重要な具体的な指標の一つであると認識しております。2022年10月1日から2023年9月30日の集計期間において、当社に在籍する男性従業員の育児休暇取得率は25%となっております。

本報告書提出日現在において、具体的な数値目標は設定しておりませんが、継続的な改善を目指していくとともに、定量的な数値指標や目標の設定要否についても引き続き検討してまいります。

また当該指標のみならず、人的資本投資の重要性の認識から、働きやすさにつながる施策を行ってまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書の本項以外の記載内容も併せて慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項につきましては、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) インターネット関連市場に関するリスクについて

① インターネット及びインターネットオークション市場の動向

当社グループは、インターネットを活用したEC関連市場及びインターネットメディア事業を主たる事業領域としていることから、インターネットの急激な普及に伴う弊害の発生や利用に関する新たな規制の導入、その他予期せぬ要因等によって、インターネット市場環境の変化があった場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社はヤフー株式会社等が運営するインターネットオークション市場の商品情報及び価格情報の提供をユーザー向けに行っており、課金による収入を主たる事業としております。したがって、インターネットオークション市場運営者の動向により当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 技術革新について

インターネット業界は、技術革新や顧客ニーズの変化のサイクルが極めて早いことが特徴の一つであり、新たなテクノロジーを基盤としたサービスの新規参入が相次いで行われております。当社グループは、このような急速に変化する環境に柔軟に対応すべく、オープンソースを含む先端的なテクノロジーの知見やノウハウの蓄積、更には高度な技能を習得した優秀な技術者の採用を積極的に推進していく方針であります。

しかしながら、先端的なテクノロジーに関する知見やノウハウの蓄積、技術者の獲得に困難が生じる等、技術革新に関する適切な対応が遅れ、当社グループの技術的優位性やサービス競争力の低下を招いた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容及び当社サービスに関するリスクについて

① 特定のサービスへの依存について

当社グループは、複数のマーケットプレイスの運営をしており、主たる収益はマーケットプレイスの収入であります。2023年9月期における売上高(5,145,856千円)に占める比率は39.8%(2,046,765千円)であり、マーケットプレイス収入への依存度が高い状況にあります。今後、新たな法的規制の導入や予期せぬ事象の発生等により、サイトの利便性の低下による利用者数の減少や、サイト運営が困難となった場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② サイト機能の充実について

当社グループは、利用者のニーズに対応するため、当社グループが運営する各サイトの機能の拡充を進めております。

しかしながら、今後、有力コンテンツの導入や利用者のニーズの的確な把握が困難となり、十分な機能の拡充ができず利用者に対する訴求力が低下した場合には、サイト利用者数の減少により、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 検索エンジン・インターネット広告への対応について

当社グループが運営するサービスの利用者の多くは、特定の検索エンジンからの集客、又はインターネット広告からの訪問であり、今後も検索エンジンからの集客施策及びインターネット広告の配信を実施していく予定です。

しかしながら、検索結果を表示する検索エンジンのアルゴリズムが大幅に変更される等の事象が発生した場合、検索エンジンからのユーザー集客が減少すること及び適切なインターネット広告の配信が出来なくなる可能性が発生し、これらに対応するため追加的な費用等の発生や当社グループが運営する各サイトへの集客数が減少し、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 課金サービス利用料金における決済について

当社グループの課金サービスについては、その利用料金の回収を回収代行業者に委託しております。当社は特定の回収代行業者に依存しているわけではありませんが、特にGMOペイメントゲートウェイ株式会社への委託が大きく、売上に占める割合も高くなっているため、今後取引条件等に変更があった場合、委託先のシステムトラブルにより決済に支障が生じた場合、委託先の経営状況や財政状態が悪化した場合、その他何らかの理由により委託先との取引関係が継続できない場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 『aucfan.com』で提供する商品情報及び価格情報について

『aucfan.com』において利用者に提供している価格等の商品情報及び価格情報は、各ECサイトから公開されている商品情報及び価格情報を整理統合し、統計学的補正を施したものです。当社では、各ECサイトとは良好な関係を築いており本書提出日現在当社との関係において問題はないと認識しておりますが、今後、各ECサイトの戦略方針の変更等何らかの理由により商品情報及び価格情報の取得が困難になる場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 競合について

当社グループは、インターネットメディア事業やEC事業を展開しておりますが、当該分野においては、大手企業を含む多くの企業が事業展開していることもあり、競合が現れる可能性があります。今後、十分な差別化や機能向上等が図られなかった場合や、新規参入等により競争が激化した場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 海外の事業展開について

当社グループは、中国を中心とした海外BtoB卸市場の開拓及び越境ECプラットフォーマーサービスの構築に取り組んでおり、現時点では中国における事業展開を計画・実行しております。今後はサービスを段階的に実施するとともに、日本及び中国の双方向での卸商品の流通を促進していく計画となっております。

しかしながら、各国の政治的・経済的要因により、輸出入管理・投資規制・収益の本国送金規制・移転価格税制等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) システムに関するリスクについて

① システム障害・通信トラブルについて

当社グループのサービス提供では、サーバーを経由して当社グループが運営するサイトの利用者にサイト機能やサービスを提供しております。また、サーバー運用に際しては、国内大手データセンターへホスティングを中心とした業務を外部に委託するとともに、クラウド上のサーバーを併用しております。

しかしながら、自然災害、火災、コンピュータウィルス、通信トラブル、第三者による不正行為、サーバーへの過剰負荷、人為的ミス等あらゆる原因によりサーバー及びシステムが正常に稼働できなくなった場合、あるいは当社グループが過去に蓄積してきた商品情報及び価格情報が消失した場合、当社グループのサービスが停止する可能性があります。

当社グループでは上記のような場合に備え、当社内においても商品情報及び価格情報を保存しており、当社及びデータセンターで保存することで対策を図っております。

当社グループでは上記のような対策を行っておりますが、それにもかかわらず何らかのシステム障害・通信トラブルにより当社グループのサービスが停止した場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 事業拡大に伴う設備投資について

当社グループは、今後の利用者数及びアクセス数の拡大に備え、継続的なサーバー等のシステムインフラへの設備投資が必要であると認識しております。設備投資によりシステムインフラを増加したものの、想定していた利用者数及びアクセス数を下回った場合には、稼働率の低下となり、減価償却費等の費用の増加を吸収できず、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 法的規制及び知的財産等に関するリスクについて

① 法的規制について

当社グループは、インターネット上の事業展開において各種法的規制等を受けており、その主な内容は以下のとおりであります。

 

a.不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)

同法におけるアクセス管理者として、努力義務ながら不正アクセス行為からの一定の防御措置を講ずる義務が課されております。

 

b.特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

営利団体等が、個人(送信に同意した者等を除く。)に対し、広告・宣伝の手段として電子メールを送信する場合に、一定の事項を表示する義務等が課されております。当社グループは、会員向けメールマガジン等の配信においては、その送信につき事前に同意した会員等に対してのみ配信する方針を取っております。

 

c.特定商取引に関する法律

当社グループの事業に関わる法的規制として、消費者保護に関して「特定商取引に関する法律」があり、規制を受けております。

 

d.青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境等に関する法律(青少年ネット規制法)

同法における関係事業者の責務として、青少年有害情報の閲覧をする機会をできるだけ少なくするための措置を講ずるとともに、青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得に資するための措置を講ずるよう努めることが課せられております。

 

上記以外にも、一般消費者を対象とした「消費者契約法」の適用を受けるほか、有料会員の募集及び広告の取扱いに際して「不当景品類及び不当表示防止法」の適用を受けております。

近年、インターネット上のトラブル等への対応として、インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されている状況にあり、今後、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等による規制や既存法令等の解釈変更等がなされた場合には、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 個人情報の取扱いについて

当社グループは、事業運営に際して、当社グループのサービスを利用する会員にIDの登録を依頼しており、当社グループのデータベースサーバーには、個人情報がデータとして蓄積されております。

これらの情報については、当社グループにおいて守秘義務があります。このため当社においては個人情報の保護の徹底を図るべく、個人情報に関する個人情報管理基本規程を作成し、当社が取得・保有する個人情報の取扱方法、個人情報データベースへのアクセス制限及びアクセスログの管理について定めるとともにISMSの取得を行うなど、個人情報の漏出を防止するための方策を実施しております。具体的には、当社が知り得た情報については、当社のシステム部門を中心に、データへアクセスできる人数の制限等の漏洩防止策が講じられております。

しかしながら、当社が実施している上記方策にもかかわらず、当社からの個人情報の漏出を永久かつ完全に防止できるという保証はありません。

今後、当社グループの保有する個人情報データベースへの不正侵入や人為的ミス等を原因として、当社グループが保有する個人情報が万が一社外に漏出した場合には、当社グループの風評の低下による当社グループを経由した売買件数及び会員数の減少、当該個人からの損害賠償請求等を招く可能性があり、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 当社グループにおける知的財産権について

当社グループは、知的財産権の保護をコンプライアンスの観点から重要な課題であると認識しております。

当社では管理部門である経営管理部により、知的財産権の管理体制を強化しておりますが、当社グループの知的財産権が侵害された場合、解決までに多くの時間及び費用が発生する等、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの属する市場がさらに成長し、ITの進展とあいまって、事業活動が複雑多様化するにつれ、競合も進み、知的財産権をめぐる紛争件数が増加する可能性があります。このような場合、当社グループが第三者の知的財産権等を侵害したことによる損害賠償請求や差止請求、又は当社グループに対するロイヤリティの支払い要求等を受けることにより、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 事業運営体制に係わるリスクについて

① 内部統制に関することについて

当社及び当社連結完全子会社において、複数事業年度に渡って不適切な取引及び不適切な会計処理が行われていたことが判明しました。そのため当社は、調査を行った特別調査委員会からの提言を踏まえ、再発防止策を策定し、2023年3月8日付で「再発防止策及び関係者の処分に関するお知らせ」を公表しております。公表しました再発防止策については既に実行しております。今後も上場企業に相応しいコンプライアンス体制の構築を図り、内部統制体制の強化に努めてまいります。

ただし、これらの再発防止策の着実な実行及びコンプライアンス体制の構築・強化が適切になされない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、その他内部統制の整備上の欠陥や運用上の認識不足等の不備により財務報告等に重大な誤りが生じた場合にも、当社の信用が失墜すると共に、当社グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材の確保及び育成について

当社グループにおいて優秀な人材の確保、育成及び定着は今後の業容拡大のための重要課題であります。新入社員及び中途入社社員に対する研修の実施をはじめ、リーダー層となる中堅社員への幹部教育を通じ、将来を担う優秀な人材の確保・育成に努めております。また選択的時差出勤制度やリモートワーク制度など柔軟な働き方を積極的に活用できる風土を醸成するとともに、社内研修等を通じて役職員間のコミュニケーションを図ることで、定着率の向上を図っております。しかしながら、これらの施策が効果的である保証はなく、必要な人材を採用できない場合、また採用し育成した役職員が当社の事業に寄与しなかった場合、あるいは育成した役職員が社外流出した場合には、優秀な人材の確保に支障をきたし、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 社歴が浅いことについて

当社は2007年6月に設立され、未だ業歴が浅く成長途上にあります。したがって過去の財務情報だけでは今後の事業及び業績を予測するうえで十分な判断を提供しているとは言えない可能性があります。

 

④ 特定人物への依存について

当社代表取締役である武永修一は、事業の立案や実行等会社運営において重要な役割を果たしております。当社グループといたしましては、同氏に過度に依存しない事業体制の構築を目指し、人材の育成及び強化に注力しておりますが、今後不慮の事故等何らかの理由により同氏が当社の業務を執行することが困難になった場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) その他

① 資金使途について

当社の調達資金の使途については、主に運営するBtoBサイトにおける仕入れ、プロモーション活動等による広告宣伝費、データ・ユーザー数増加のためのサーバー機器等の増設、サイト機能向上のためのソフトウエア開発、及び事業の拡大にかかる人材採用費等に充当する計画となっております。しかしながら、インターネット関連業界その他事業環境の変化に対応するために、調達した資金が計画どおり使用されない可能性があります。また、計画どおりに使用された場合でも、想定どおりの効果を得られず、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 配当政策について

当社では、利益配分につきましては、経営成績及び財政状態を勘案して、株主への利益配当を実現することを基本方針としております。しかしながら、当社は本書提出日現在、成長過程にあり、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先して、創業以来2023年9月期まで無配当としてまいりました。

現在は内部留保の充実に努めておりますが、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しながら株主への利益の配当を実施する方針であります。ただし、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。

 

③ 新株予約権の行使並びに譲渡制限付株式の発行に伴う株式価値の希薄化について

当社グループは、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。

これらの新株予約権が行使された場合には、当社グループの1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは今後も新株予約権の付与を行う可能性があり、この場合、さらに1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

また、2019年11月28日開催の取締役会において、当社取締役(社外取締役を除く)、当社執行役員及び従業員並びに当社子会社の取締役、執行役員及び従業員に対して譲渡制限付株式報酬制度を導入することを決議いたしました。

譲渡制限付株式報酬制度は、現時点において株式を割当てておりませんが、これらの株式が新株式発行により付与された場合、ストックオプション制度と同様に当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

新株予約権の詳細については「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」に記載のとおりであります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

近年における国内のBtoB卸売市場は300兆円規模と推定(※1)されており、非常に大きな市場にも関わらずEC化率は未だ34.9%(EDI(※2)による取引を含む)と、オンライン化されていないBtoB市場は200兆円以上あると考えられます。また、海外市場に目を向けると、BtoB卸売市場規模は数千兆円以上と想定されます。

オークファングループはこの課題に真正面から向き合い解決すべく、コーポレートアイデンティティを「RE-INFRA COMPANY」と定義し、社会の様々な「RE」を統合した唯一無二の再流通インフラを構築し、卸売市場におけるSMB(中小企業・個人事業主)を中心としたDX化に取り組んでまいりました。

 

具体的には、創業来培った700億件を超える売買データとAI技術により商品の時価を可視化、価格と販路を最適化する在庫価値ソリューション、SMB(中小企業・個人事業主)を中心とした小売・流通業向けに流通を支援する商品流通プラットフォームを展開しております。

 

当期においては、商品流通プラットフォーム事業の中核であるNETSEA、NETSEAオークションのGMV(流通額)の拡大を狙い、積極的なプロモーションを行ってまいりました。

一方、中長期の事業拡大に向けては、オフラインの取り込み・海外BtoB卸市場への進出が必要と考えており、2022年4月にはオーエスアールネット株式会社及び大阪船場流通マート株式会社の株式を取得し子会社化することにより、オンラインとオフライン取引のシームレス化に着手しております。

また、海外市場に関しては、2022年6月より中国海南省に現地子会社「傲可凡(海南)网絡科技有限公司」を設立し、人口14億人以上の中国バイヤー、さらにはそこから世界各国への流通インフラ構築に向け現地調査を進めておりました。調査並びにパートナー企業の選定を経た上で、今後の事業拡大のために海外BtoB卸売市場への展開が不可欠であることを改めて認識し、海外向けサービス開始の準備を進めております。

 

「在庫価値ソリューション事業」は、データを基にAI技術を活用し在庫の価値を可視化することにより、企業が保有する在庫価値の可視化・最適化等を推進するソリューションを提供しております。主なサービスとしては当社が保有する流通相場データを活用した『aucfan.com(オークファンドットコム)』となり、主たる収益源は有料課金収入及びネット広告収入となります。その他、ネットショップ一元管理サービス『タテンポガイド』の提供、専門知識がなくても直感的に操作できるRPAツール『オークファンロボ』、副業・複業として物販ビジネスを行う事業主を対象とするスクール形式の副業支援サービス『good sellers(グッドセラーズ)』、Amazonセラー専用アプリ『Amacode(アマコード)』、その他広告運用サービス等を提供しています。

当連結会計年度においては広告運用サービス等が好調に推移しました。一方、『good sellers(グッドセラーズ)』は、法規制にともないスクール開講数の減少がありました

 

これらの結果、売上高2,724,056千円(前年同期比14.9%増)、営業利益575,886千円(前年同期比16.4%増)となりました。

 

「商品流通プラットフォーム事業」は、企業の在庫・滞留商品等の流通を支援しており、オンライン及びオフラインにて複数のマーケットプレイスを運営しております。主なサービスとしては、BtoB卸モール『NETSEA(ネッシー)』、滞留在庫・返品・型落ち品などの流動化支援を行う『NETSEAオークション(旧 ReValueBtoBモール)』がございます。主たる収益源は、NETSEAでは流通手数料収入及び有料課金収入、NETSEAオークションでは商品販売収入となります。『NETSEA(ネッシー)』及び『NETSEAオークション』では流通額最大化を狙った営業・開発体制の強化及びプロモーションを継続的に実施しております。

また、2022年4月より、大阪・船場を拠点とするオフラインの展示・商談会事業『OSR(オーエスアール)展示商談会』の提供をM&Aにより開始しています。OSR(オーエスアール)展示商談会の主たる収益源は、決済手数料収入及び出店料収入となります。

一方、非注力事業であった法人向け卸販売取引については、2022年9月期で事業から撤退しており、当連結会計年度では売上高は発生しておりません。

 

これらの結果、売上高2,073,183千円(前年同期比29.8%減)、営業損失31,609千円(前年同期は521,320千円の営業損失)となりました。

 

「インキュベーション事業」は、事業投資及び投資先企業の支援を通じて、当社が中長期にわたり競合優位性を構築・維持していくための知見とネットワークを得ることを目的とした事業セグメントであります。主たる収益源は、営業投資有価証券の売却益・配当収益、投資先企業へのコンサルティング収益となります。なお、当セグメントでは将来成長の基盤となる新規事業の開発等も実施しております。

当連結会計年度においては営業投資有価証券の売却収入及び配当収益がありましたが、前年同期水準の収益額には至りませんでした。

 

これらの結果、売上高518,667千円(前年同期比52.9%減)、営業利益185,964千円(前年同期比76.6%減)となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度における売上高は5,145,856千円(前年同期比17.8%減)、営業利益は304,229千円(前年同期比5.6%減)、経常利益は341,702千円(前年同期比9.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は17,076千円(前年同期比69.8%減)となりました。当連結会計年度の自己資本当期純利益率に関しましては0.4%(前年同期比0.7ポイント減)となりました。

 

※1 経済産業省 2023年8月31日発表 電子商取引に関する市場調査、BtoB-EC市場規模の業種別内訳より推察

※2 電子的データ交換(Electronic Data Interchange)の略称。受注や発注、出荷や納品などの流通に関わる一連の取引を電子データでやりとりする仕組み

 

② 財政状態の状況

資産の部

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産は6,170,637千円(前連結会計年度末は6,443,928千円)となりました。

主な要因といたしましては、営業投資有価証券が176,086千円増加、未収入金が125,029千円増加、売掛金が72,637千円増加したものの、現金及び預金が552,113千円減少、その他(流動資産)が73,007千円減少、貸倒引当金が10,764千円増加、商品が10,485千円減少した結果であります。

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産は、929,601千円(前連結会計年度末は906,094千円)となりました。

主な要因といたしましては、ソフトウエア仮勘定が108,610千円減少、のれんが76,778千円減少、長期未収入金が30,500千円減少したものの、ソフトウエアが147,820千円増加、建物が39,797千円増加、工具、器具及び備品が34,399千円増加、貸倒引当金が30,385千円減少した結果であります。

 

負債の部

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債は、2,295,529千円(前連結会計年度末は2,595,197千円)となりました。

主な要因といたしましては、未払金が37,098千円増加したものの、未払法人税等が147,497千円減少、1年以内返済長期借入金が108,423千円減少、買掛金が47,037千円減少、契約負債が34,177千円減少した結果であります。

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債は、173,889千円(前連結会計年度末は197,739千円)となりました。

主な要因といたしましては、繰延税金負債が68,290千円増加したものの、長期借入金が103,330千円減少した結果であります。

 

純資産の部

当連結会計年度末における純資産は、4,630,819千円(前連結会計年度末は4,557,085千円)となりました。

主な要因といたしましては、自己株式の取得により136,675千円減少したものの、利益剰余金が17,076千円増加、その他有価証券評価差額金が191,374千円増加した結果であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より552,113千円減少し、3,280,940千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益31,331千円、減価償却費198,608千円、特別調査費用等及び過年度決算訂正関連費用196,744千円、構造改革費用127,316千円、営業投資有価証券の減少額94,408千円、のれん償却額76,778千円、減損損失36,238千円などの計上に対し、法人税の支払額254,587千円、特別調査費用等及び過年度決算訂正関連費用の支払額196,744千円、構造改革費用の支払額118,264千円、売上債権の増加額72,866千円などにより営業活動の結果獲得した資金は109,909千円(前年同期は1,079,054千円の獲得)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

差入保証金の回収による収入158,388千円、預り保証金の受入による収入18,750千円、貸付金の回収による収入9,965千円などの計上に対し、無形固定資産の取得による支出264,706千円、差入保証金の差入による支出161,696千円、有形固定資産の取得による支出129,028千円などにより、投資活動の結果使用した資金は376,045千円(前年同期は263,404千円の使用)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

短期借入れによる収入1,060,000千円、非支配株主からの払込みによる収入20,000千円などの計上に対し、短期借入金の返済による支出1,060,000千円、長期借入金の返済による支出211,753千円、自己株式の取得による支出136,675千円などにより、財務活動の結果使用した資金は332,178千円(前年同期は82,975千円の使用)となりました。

 

なお、当社グループの運転資金及び設備投資資金は自己資金並びに借入金等により充当しております。当連結会計年度末の有利子負債残高は1,270,422千円となり、前連結会計年度末に比べ212,190千円減少しており、自己資本比率は65.1%と依然として高い水準を維持しております。

資金の流動性に関しましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は3,280,940千円と十分な流動性を確保しております。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループの主たる事業は、インターネットを利用したサービスの提供であり、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。

 

b.受注実績

当社グループでは概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年10月1日

至  2023年9月30日)

前年同期比(%)

在庫価値ソリューション(千円)

2,580,423

113.0

商品流通プラットフォーム(千円)

2,046,765

71.3

インキュベーション(千円)

518,667

47.1

合計(千円)

5,145,856

82.2

 

(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

みずほ証券株式会社 (注)1.2

828,146

13.2

 

(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。

2.営業投資有価証券の売却による売上金額を記載しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析

当連結会計年度における売上高は5,145,856千円(前年同期比17.8%減)、営業利益は304,229千円(前年同期比5.6%減)、経常利益は341,702千円(前年同期比9.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は17,076千円(前年同期比69.8%減)となりました。

なお、詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性について

当社グループにおける運転資金需要の主なものは、仕入費用、販売費及び一般管理費の営業費用による営業資金及び設備投資資金であります。当社グループの資金の源泉は主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入による資金調達となります。

 

③ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループの事業に関連するEC市場規模については、好調な拡大が今後も継続的に見込まれるものと思われます。特に、近年における国内のBtoB卸売市場は300兆円規模と推定(※1)されており、非常に大きな市場にも関わらずEC化率は未だ34.9%(EDI(※2)による取引を含む)と、オンライン化されていないBtoB市場は200兆円以上あると考えられます。また、海外市場に目を向けると、BtoB卸売市場規模は数千兆円以上と想定されます。

そのような中、2023年9月期においては、商品流通プラットフォーム事業の中核であるNETSEA、NETSEAオークションのGMV(流通額)の拡大を狙い、積極的なプロモーションを行ってまいりました。

一方、中長期の事業拡大に向けては、オフラインの取り込み・海外BtoB卸市場への進出が必要と考えており、2022年4月にはオーエスアールネット株式会社及び大阪船場流通マート株式会社の株式を取得し子会社化することにより、オンラインとオフライン取引のシームレス化に着手しております。

また、海外市場に関しては、2022年6月より中国海南省に現地子会社「傲可凡(海南)网絡科技有限公司」を設立し、人口14億人以上の中国バイヤー、さらにはそこから世界各国への流通インフラ構築に向け現地調査を進めておりました。調査並びにパートナー企業の選定を経た上で、今後の事業拡大のために海外BtoB卸売市場への展開が不可欠であることを改めて認識し、海外向けサービス開始の準備を進めております。

今後もサプライヤー成長コンサルティング、海外バイヤーとの連携による新市場の開拓、物流や決済関連業務の提供、グループ間シナジーの強化及び在庫流動化ソリューションサービスの提供により、更なる成長を図ります。また、創業来オークファンが蓄積し続けてきた膨大な商品実売データも活用し、企業のもつ滞留在庫・余剰在庫の価値を可視化し、より積極的に市場再流通を促すことで、当社グループ経由の流通額の拡大を図ってまいります。

 

商品流通プラットフォームにおきましては各サービスにおける流通高の増加をKPIとしており、掲載商品数の増加(サプライヤーの開拓)を図るべく各種プロモーション強化施策を展開することにより、更なる成長を図ります。

在庫価値ソリューションにおきましては月額課金額を重要指標としております。メディア『aucfan.com』においては、有料会員の潜在顧客となるUV(ユニーク・ビジター)及び会員数をKPIとしております。今後も引き続きプロモーション強化施策、SEO対策、ECサイト各社とのアライアンス強化などによるユーザー(オークファンプロPlus会員数含む)の拡大、運営ノウハウの提供により更なる成長を図ります。

各種商品関連データ蓄積においては、取得件数と対応マーケットプレイス数がKPIであります。今後も引き続きクローリング/スクレイピング技術、データマイニング技術、機械学習などを活かした分析ツールの提供により、更なる成長を図ります。

インキュベーション領域では投資利回り及び情報収集がKPIであります。今後もベンチャー企業を中心とした投資を進めるとともに、当社グループを取り巻く市場環境の最新テクノロジー等の情報を収集してまいります。

 

④ 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループは「RE-INFRA COMPANY」をコーポレートアイデンティティとし、社会の様々な「RE」を統合した唯一無二のインフラを構築していくという考えのもと、事業を推進しております。「RE」とは、すでにあるものを捉え直し、より良く組み替え、再構成するという意味を含んでおり、当社グループは「RE」に関する様々な機能を繋げ統合することで、モノとそれに関わるヒトの価値を、再配分・最適配分し、廃棄ロスという深刻な社会問題を解決することにより、当社グループのサービス利用者及び顧客の満足度向上を図り、企業価値・株主価値の向上を目指しております。

 

※1 経済産業省 2023年8月31日発表 電子商取引に関する市場調査、BtoB-EC市場規模の業種別内訳より推察

※2 電子的データ交換(Electronic Data Interchange)の略称。受注や発注、出荷や納品などの流通に関わる一連の取引を電子データでやりとりする仕組み

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

在庫価値ソリューション事業は、700億件を超える「商品売買の実売価格」に基づく多面的なデータ解析を行なっており、ユーザーにとって有益な情報を提供するため、日々研究を続けております。

また、インキュベーション事業において、海外BtoB卸売市場への進出に向け現地調査・事業展開の準備を進めております。

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発活動に関わる費用の総額は、83,575千円であります。