文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
「独創と融合」を当社の経営理念としております。これは、個々の独自性と創造性を尊重し、それらをあらゆる次元で発展的に融合させることにより、新しい価値を継続的に生み出していく、という意味があります。当社に関わる全てのステークホルダーに価値を提供できるよう事業展開を行っております。
当社グループ理念としては、「環境に優しい空気のソリューションを届ける。」をパーパスとし、また「クライメイト・ニュートラルな未来実現のため、空気処理技術のイノベーション・リーダーであり続ける。」をビジョンに掲げ、世界各国で社会課題の解決の一助となり得る製品・サービスを提供しております。また、コアバリューを次のとおりに定め、パーパス及びビジョンの実現を目指す上でこれらの価値観を意識し、日々の業務に取り組んでおります。
① お客様の信頼を得るため、常に高品質の製品とサービスをお届けする。
② 前向きで協力的な職場環境をグローバルに創造する。
③ 創造的思考を巡らせ、責任ある行動をとる。
④ 率直にそして誠実に行動する。
当社グループのデシカント除湿機により、製薬、食品製造工程だけでなく、近年ではリチウムイオン電池等の製造に必要不可欠なドライ環境を提供することで、製造途中で発生するロスを削減し、製品自体の品質を維持することが可能であります。また、自動車製造、造船、半導体製造の工程で排出される有害なVOC(注1)のみを吸着・濃縮する当社のVOC濃縮装置(注2)により、排出ガスを効率的に浄化処理することが可能であるため、処理過程で排出されるCO2を抑えながらの大気汚染防止に貢献しております。更に、電池製造工程で使われる溶剤を回収し再利用する用途にも使われており、顧客のサーキュラーエコノミー実現にも寄与しております。このように、当社グループは、顧客の抱える環境に関する課題、ひいては地球環境全体の課題を解決する一助となる製品・サービスを提供し、また当該製品・サービスの更なる改良や環境保全に貢献する新製品の開発をとおして、クライメイト・ニュートラルの実現に寄与することを目指しております。
(注1)VOCとは、Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略語で、浮遊粒子状物質(SPM)、光化学オキシダント、悪臭等を発生する大気汚染物質のひとつであります。
(注2)VOC濃縮装置は、塗装、印刷、コーティング等の過程や、VOCを含む化学物質や原材料を使用する製造工場から主に排出されるベンゼンやトルエンといった有害なVOCのみを吸着・濃縮し、効率的な処理を行い、排ガスを浄化させるための、環境保全に貢献する装置であります。
(2) 経営環境
当社グループが属する業界の市場データが存在しないため、「デシカント除湿機」及び「VOC濃縮装置」に絞って記載をしております。
(デシカント除湿機)
デシカント除湿機が使われる用途は多岐にわたり、食品や医薬、倉庫や輸送を含むロジスティック関連、発電所、及び近年特にEV用リチウムイオン電池といった急進産業で必要とされております。
2023年の世界人口は約80億人であり、2030年には85億人、2050年には97億人にまで増加すると予測されております。また、それに占める65歳以上の高齢者の割合は2022年の10%から、2050年には16%にまで増加するとされております(注1)。これらの人口動態のトレンドにより、食品及び医薬品産業の安定的な伸びが見込まれます。また、リチウムイオン電池を含む蓄電池は、2019年の世界市場規模は約5兆円であり、2030年には約40兆円、更に2050年までに約100兆円に成長(注2)することが見込まれております。また、2018年に54兆円であった半導体関連の世界市場規模は、2030年には約100兆円に成長する見込みであります(注3)。これらの各産業において今後も積極的な設備投資が期待されており、各産業の成長と共に、当社グループのデシカント除湿機の需要増加が期待されております。これらの産業の中でも特に近年はEV用リチウムイオン電池産業におけるデシカント除湿機の採用が増えており、当社グループのデシカント除湿機販売においても最重要市場として位置付けております。同産業の最も大きい市場は中国であり、アメリカがそれに続き、各市場においてEV自動車への移行と共に更なる投資が見込まれております。今後も当社グループにとって需要拡大の機会であると認識しております。
(注1)United Nations『World Population Prospects 2022』
(注2)経済産業省『「次世代蓄電池・次世代モータの開発」プロジェクトに関する研究開発・社会実装の方向性
2021年7月』
(注3)経済産業省『半導体戦略(概略)2021年6月』
(VOC濃縮装置)
VOC濃縮装置が使われる用途も多岐にわたっております。自動車や船の塗装、半導体の製造、及びグラビア印刷の工程等で発生する揮発性有機化合物(VOC)やVOCを含む原材料を扱う生産拠点等で必要とされております。日本国内ではVOC排出に関して厳格に規制されていないものの、近年では特に、厳格なVOC排出規制が施行された中国や韓国において、施行前の対策措置として需要が急増する傾向がありました。現在、中国が最大の市場であり、韓国、ヨーロッパ、台湾、アメリカがそれに続きます。今後もこれらの市場において、本装置に使われている主要部品であるロータの交換需要が継続して発生すると認識しております。また今後は、インドや東南アジア諸国等、大気汚染が問題視されているにもかかわらず、これらの法規制が制定されていない国での需要増加を見込んでおります。
(3) 経営戦略
上記のような経営環境のもと、当社グループは2024年12月期を初年度とする3か年を対象とした中期経営計画を策定し、その実現に向けて取り組んでまいります。中期経営計画の概要は以下のとおりであります。
① 基本方針
当社グループのパーパスの実現を通し、あらたな価値を提供することで、企業価値と社会価値の両立を図ることを目指し、また、2030年の当社グループビジョンの実現に向けての第1フェーズとして、持続的成長の土台づくりを目的として、以下の3つを2024年~2026年中期経営計画の基本方針としております。
1. コア事業で市場シェア拡大
2. 成長事業の本格始動
3. グループガバナンスの強化
② 数値目標
中期経営計画の最終年度である2026年12月期には、売上高375億円、営業利益率14%、EBITDAマージン18%、及びROE 14%を達成することを目標としております。
③ 戦略的方向性
電池領域
1. デシカント除湿機の安定供給継続とともに、海外サービス事業を拡充する
2. 車載用電池製造の最適環境創出のトータルエンジニアリングを提供する
半導体領域
1. 現在売上全体の7%を占める海外サービス売上を2026年から本格拡充し、安定的収益確保
2. 半導体材料製造に最適なクリーン環境のソリューション提案
その他の市場領域
1. 既存事業:既存の販売網を通じて継続的に伸ばす
2. 新規事業: 2027年に年間10億円の事業規模を目指す
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な成長を果たし、すべてのステークホルダーの利益増大と企業価値の向上を目指し、営業利益率、EBITDAマージン、及びROE(自己資本利益率)を重要な経営指標としております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ウクライナ情勢等による原油価格をはじめとするエネルギー価格の高騰、米国による対中投資規制の影響等、複数の不確実要素が混在する中で、先行きは極めて不透明な状況であります。また、景気低迷に直面する中国市場をはじめ、企業間競争が激しくなることが予想されます。このような状況の中、当社グループを取り巻く状況も予断を許しませんが、引き続き、原材料価格や物流コスト上昇に対処すべく、生産効率化、業務効率化に注力、製品の安定供給を継続し、また、継続的に収益を確保できるサービス事業の海外展開により収益確保に繋げてまいります。
① 人材の育成
当社グループにとって、顧客の声に耳を傾け、顧客起点の製品開発を推進するための人材育成は最重要課題の一つと位置づけており、従業員のモチベーションの向上やスキルアップに取り組んでおります。さらに、世界各国で事業展開をしているため、グローバルに活躍できる人材の育成にも取り組んでおります。
また、全社的な労務管理を行うとともに、働き方の多様性を推進し、より良い労働環境の整備、運用に努めてまいります。
② 高品質、安全・安心な製品の安定供給
当社グループは、社会や業界を取り巻く法律や規制への対応に積極的に取り組むとともに、大規模な事故・災害等の発生に備えて、事業継続計画(以下「BCP」という。)を策定し、社員教育や災害訓練等によりBCPの周知徹底及び実効性の向上を図っております。
一方、経営環境に大きな影響を及ぼす、物流コストや原材料の価格と安定的な調達も大きな課題ととらえております。
③ 顧客ニーズに沿った製品開発と新しいマーケットの開拓
当社グループは、デシカント除湿機及びVOC濃縮装置を主力としております。
VOC濃縮装置については、当社がパイオニアということもあり世界市場でも認知度が高く、世界30か国以上の顧客に選ばれております。しかし、中国においては現地メーカーによる安価な製品が多く上市されており、競争が増しております。このような状況の中、当社グループは品質と性能で高く評価されており、現地の廉価な製品よりも高付加価値製品として市場でポジショニングが形成されており、売上を伸ばしております。また、新たな用途開拓のため、引き続き製品開発にも取り組んでおります。
一方、デシカント除湿機については、近年のEV普及に伴うリチウムイオン電池製造投資の急増により、当社グループのデシカント除湿機の売上は好調であります。しかし、当下期からの中国の景気悪化に伴い、同市場での競争が益々激化しております。中国現地メーカーに対しては性能等で製品の優位性を維持しているものの、当社と同様にグローバル市場で競合する他社においては、様々な製品やサービスを精力的に展開しており、世界市場での地位を維持しております。当社グループにおいては、引き続き顧客ニーズを満たす製品を提供するとともに、海外主要拠点での24時間のサービス体制を構築し柔軟に対応することで、顧客と良好な関係を築き、当社グループのプレゼンスを高める取り組みを進めております。
また、中長期的な視点から、将来的にリチウムイオン電池産業の伸びが緩やかになる可能性、又は、VOCを含まない代替塗料等が普及する可能性に備え、今から次世代製品の開発を進めておく必要があります。そのため、CO2濃縮技術を農業用途に実用化させ、2024年の販売開始に向けて現在準備を進めております。
④ 生産性の向上
世界的なEVシフト加速に伴い、高まるデシカント除湿機への需要に応えるために、経営資源を最適活用し、組織・業務・生産活動の効率化に努めてまいります。当期は、欧米での今後の需要増加を見込み、Seibu Giken DST Poland SP. ZO.O.(グディニャ)の既存のデシカント除湿機工場、Seibu Giken America,Inc.のデシカント除湿機工場を増設しました。また、福岡県宗像市に除湿ロータを生産する新工場の建設を予定しております。生産能力を上げることで収益力の向上に繋げてまいります。
⑤ グループ経営における社会的責任
当社グループの経営につきましては、社会的責任を果たすために、環境保全に積極的に取り組んでおります。当社グループの製品を使って頂くことで大気汚染防止に繋がり、顧客の製造過程で排出されるロスを削減し、また顧客におけるCO2排出量の削減にも繋がることから、当社グループの事業そのものが、2015年9月に国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」の「12 つくる責任 つかう責任」及び「13 気候変動に具体的な対策を」等を達成することに繋がると考えております。
また、当社では2018年より企業主導型保育施設として「はにかむほいくえん」を運営しております。従業員の福利厚生としての側面だけでなく、地域の皆様の仕事と育児の両立をサポートできるよう、また、子どもたちの未来を地域で育むことを目標にしております。
さらに、「公益財団法人隈科学技術・文化振興会」への寄付を通して、科学技術に関する分野を専攻する大学院生に対する奨学金の給付及び日本文芸の伝統等の活動を行う団体等に対する支援を行っております。意欲ある若手研究者の独創的、先駆的な研究開発、実用化に対する助成及び起業家の育成、また日本文化の発展と伝承に寄与することは、持続可能な社会の発展につながると考えております。
今後も事業活動を通じ、SDGsを始めとする社会課題の解決に貢献できるよう努めてまいります。また、適切な企業情報の開示やコンプライアンスを一層推進するため、コーポレート・ガバナンス体制の強化及び内部統制の充実に全力を投入致します。
⑥ 収益力の向上
グループ各社をあげて、高付加価値製品の受注拡大を図り、製造時間の短縮や製造経費のさらなる削減を継続して進め、利益確保に努めてまいります。また、利益率の高いサービス事業の海外展開を推進することで収益力の向上を目指してまいります。
さらに、Seibu Giken DST East Africaの早期黒字化及び債務超過の解消に向けて取り組んでまいります。
⑦ グローバルなグループ経営
国内外拠点の自立と連携を図り、各製造拠点の生産技術力の向上に努め、顧客に満足いただける品質、価格、納期及び製品開発をも含めた生産競争力の強化・充実に努めてまいります。
また、グループガバナンスの向上に向けた強固なグループ体制の構築に努めてまいります。海外のグループ子会社については、現地トップと当社経営陣が日常的に電話やweb会議等で頻繁に情報交換することで、課題やトラブル等に対して協議しながら解決に当たっております。それに加えて2023年より、グループ会社の経営陣によるGlobal Management Councilを開催することとし、グループとしての方針や戦略の策定と進捗管理、予算管理、共有課題の抽出と解決を図っております。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、グループの経営理念に基づく事業活動により、環境及び社会の課題を解決し、社会や環境との融合を図りながら、サステナブルな社会の実現に寄与することを目指しております。
サステナビリティに関する基本的な考え方
・事業活動を通し、クライメイト・ニュートラルな未来実現に向けて貢献します。
・独創的な空気処理技術のイノベーションによりステークホルダーそして社会に向けての価値創造を目指します。
・世界中のステークホルダーと連携し、公正・誠実に業務を遂行します。
(1) 環境方針
当社では、日々の業務で環境負荷を低減し、クライメイト・ニュートラルな未来実現を目指しております。
① 環境配慮型製品・ソリューションのグローバル展開
地球規模での環境負荷低減に向けて、独自の技術や多様なイノベーションを活かした製品開発を行い、お客様の環境負荷低減に貢献できるソリューションをグローバルに提供します。
② バリューチェーン全体で環境負荷を低減
循環型社会の形成に向けて、責任ある調達をはじめ、資源や製品の3R (Reduce, Reuse, Recycle)及び有効利用を通し、バリューチェーン全体での環境負荷の低減に努めます。
③ 社会とのコミュニケーション
持続可能な社会の実現に向けて、環境関連の各国法規制やグローバルな社会的規範を遵守するとともに、社会とのコミュニケーションや連携を推進します。
④ 生物多様性保全
生物多様性を育む社会づくりに向けて、社内外の意識向上のための自主的な活動に取り組みます。
(2) 人権に関する基本方針
当社では「リスク・コンプライアンス規程」及び「コンプライアンス・マニュアル」を定めております。その中で、職場指針として、「人権尊重・差別禁止」及び「ハラスメントの禁止」を掲げております。あらゆる差別及びハラスメントを禁止し、個人の人権を尊重することで、一人ひとりの個性を尊重する企業風土の確立を目指します。
(3) ダイバーシティに関する基本方針
多様な人材が相互理解と尊重に基づいて組織力を最大化することにより、経営理念である「独創と融合」の実現を目指します。そのため、当社では、社員一人一人がそれぞれの働き方やライフステージ、性別や国籍などの属性やコンディションにかかわらず、誰もが最大限にパフォーマンスを発揮できる状態をつくることに取り組んでおります。
当社では、ステークホルダーの皆さまに提供する価値の向上に資する経営資源の配分や戦略の実行が適正になされているか、経営会議等で確認した内容を取締役会へ報告し、審議することで監督をしております。
(1) 環境
当社では「西部技研『環境アクション2030』」として、2050年のクライメイト・ニュートラル実現に向け、当社の重点項目として3つの活動目標を定めております。これらの活動を通し、 2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のうち、「目標12:持続可能な生産消費形態を確保する」のターゲット「12.5: 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」、及び「目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」のターゲット「13.3: 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。」の実現に寄与することを目指しております。
① アクション1. 電力消費由来CO2排出量の削減
② アクション2. 当社製品・サービスの開発及び提供による環境貢献量の拡大
③ アクション3.バリューチェーン全体での環境負荷把握と削減
また、上記の直接的なエネルギー対策以外にも、PRTR対象物質の把握・削減の取組みや、使用溶剤をより低負荷な物質に切り替えるといった取組みも進めております。
(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社は、人材活躍方針として、経営理念「独創と融合」の実現を目指すことを根幹として掲げています。
個を活かす=個人の独自性と創造性の尊重、チームワーク重視=組織としての成果をあげることを重視しています。相反するこの二つの視点を高次元でバランスすることにより、ダイバーシティ&インクルージョンを実践し、付加価値の向上を図っております。
① 人材育成に関する方針及び取り組み
当社の人材育成は、業務を通じて学ぶOJTを中心として位置づけ、これを補完するOff-JT(教育研修)と自己啓発とで構成しております。
教育研修については、直近では以下の内容を重点施策として取り組んでおります。
・従業員が自ら必要なスキルを手挙げ式で選ぶスキル研修
・グローバルでの活躍を見据えた英会話研修
・プロフェッショナルとしての製品・業務品質担保のためのQC教育
・飽くなき挑戦や改善を創出するための改善提案活動
自己啓発は、会社が対象と認めた研修・資格取得につき、一部会社が援助を行います。
また、多様な人材が活躍するための採用施策として、新卒採用時の男女比や外国人採用を意識した採用活動を行っております。
② 社内環境整備に関する方針及び取り組み
当社では、ワークライフバランス(仕事とプライベートの適切な調和)から、ワークライフシナジー(仕事とプライベートの相乗効果の最大化)へと働き方をシフトしていくことを目指しています。
一人一人が働きやすさと働きがいを高めていくため、直近では以下の内容を重点施策として取り組んでおります。
・多様な働き方の推進(テレワーク制度、フレックス勤務制度の導入、男性育児休業の推進)
・ポジティブオフ休暇の推進(有給休暇5日間連続取得の推奨)
・労働安全衛生に関する表彰及び水平展開
・健康経営の推進(長時間労働者へのフォロー、健診の充実)
・エンゲージメントサーベイの実施(2024年度より)
リスク管理
気候変動をはじめとした環境配慮を行うことは事業においてのリスクを低減するとともに新たなビジネス機会や経営体力の強靭化にもつながると考えております。当社ではリスクの最小化と機会の最大化を目指して取り組みを推進して参ります。
(1) 環境
西部技研『環境アクション2030』に基づき、各アクションにおいて以下の指標及び目標を掲げております。なお、当社においては活動目標の達成を目指し具体的な取組が行われているものの、連結グループに関するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
①アクション1.電力消費由来CO2排出量の削減
(イ)中長期的な温室効果ガス排出量の削減目標
脱炭素社会の要請が高まる中、当社としての中長期的な目標を設定しました。2030年までは再生可能エネルギーの導入と省エネ活動を進めることで電力由来の排出量の削減に取り組んで参ります。その後、技術発展と歩調を合わせて2050年に向けて燃料由来の削減に取り組んで参ります。
●中期的対策活動
- 再生可能エネルギー導入
- 省エネルギー設備活動推進
●長期的対策活動
- 電化推進
- 水素等最新技術への適合
- 工場レイアウト等を含めた効率化
(ロ)現状のCO2排出量とその構成
当社の2022年の温室効果ガス排出量は約4,755tです。そのうちの約半分は化石燃料利用由来に伴うもの、残り半分は電力利用に伴う排出であります。短期的には電力由来の排出削減に対してのアプローチを推進して参ります。太陽光発電設備などの再生可能エネルギーの導入、工場における断熱や運用改善によるエネルギー効率向上に向けた取り組みを進めることが必要であると考えております。
温室効果ガス排出量の内訳(2022年1月~2022年12月)
(ハ)2030年までの温室効果ガス排出量削減計画
まず自社での直接的な排出削減活動を進めることでエネルギーコストの低減や安定化を目指します。
当社では国内に5つの工場を稼動しております。これらの工場及び研究開発を行うイノベーションセンターにおける排出削減に向け、各拠点で日々の省エネ活動を推進するだけでなく、再生可能エネルギー導入等の検討を進めております。また、社会の要請に応じて非化石証書等を活用した再生可能エネルギー電力の調達についても検討して参ります。
②アクション2. 当社製品・サービスの開発及び提供による環境貢献量の拡大
当社は、当社製品利用先企業様の環境負荷削減に寄与する製品をご提供しております。これは相手先企業様のScope1又はScope2の削減の貢献につながるものであり、当社ではScope3の中で評価される項目となります。このような当社製品ごとの削減貢献量やライフサイクルでの排出量を定量化する為の取り組みを進めて参ります。
③アクション3.バリューチェーン全体での環境負荷把握と削減
環境配慮は様々な領域にわたり、当社の事業活動のバリューチェーン全体を通して様々な側面で環境への影響があると考えております。当社は製品の機能や便益を損なうことない無理のない形で低減を図ることの重要性や製造業者としての社会的な要請として求められるであろうことを考え、以下のような取り組みについて推進や検討を進めております。
(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標
及び目標
上記方針及び取り組みに関する主な指標と目標は以下のとおりです。
なお、当社においては活動目標の達成を目指し具体的な取組が行われているものの、連結グループに関するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。ただし、以下の事項は、当社グループに係る全ての事業等のリスクを網羅的に記載したものではなく、記載された事項以外にも予測し難い事業等のリスクが存在するものと考えます。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資判断、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な開示の観点から記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境の変化に関するリスク
(2)当社グループの事業活動に関わるリスク
(3)法的規制・訴訟等に関するリスク
(4)自然災害等に関するリスク
(5)財務状況に関わるリスク
(6)代表者への依存のリスク
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は28,377百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,198百万円増加致しました。これは主に、現金及び預金の増加(9,803百万円から11,638百万円へ1,835百万円の増加)、売上の増加に伴う受取手形、売掛金及び契約資産の増加(5,970百万円から8,309百万円へ2,338百万円の増加)及び受注増加に伴う仕掛品の増加(841百万円から1,929百万円へ1,088百万円の増加)、原材料及び貯蔵品の増加(2,208百万円から3,086百万円へ877百万円の増加)等によるものです。固定資産は10,957百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,031百万円増加致しました。これは主に在外連結子会社の製造工場の拡張に伴う建設仮勘定の増加(191百万円から1,980百万円へ1,789百万円の増加)等によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は10,629百万円となり、前連結会計年度末に比べ95百万円増加致しました。これは主に、売上原価の増加に伴う支払手形及び買掛金の増加(1,839百万円から2,962百万円へ1,123百万円の増加)、電子記録債務の増加(1,961百万円から2,154百万円へ192百万円の増加)、受注高の増加に伴う契約負債の増加(1,628百万円から1,985百万円へ357百万円の増加)、新株の発行及び自己株式の処分による調達資金の一部を返済に充当したことによる短期借入金の減少(1,690百万円から50百万円へ1,640百万円の減少)によるものです。一方で、固定負債は1,910百万円となり、前連結会計年度末に比べ911百万円減少致しました。これは主に、長期借入金の減少(2,045百万円から1,142百万円へ902百万円の減少)、リース債務の減少(456百万円から430百万円へ26百万円の減少)等によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末と比べ9,046百万円増加し、26,795百万円となりました。これは主に、新株の発行及び自己株式の処分により資本金が611百万円、資本剰余金が3,536百万円増加したこと、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が3,422百万円、円安の進行により為替換算調整勘定が906百万円増加したこと等によるものであります。
② 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、経済活動の持ち直しが見られ、景気は緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、円安傾向の継続やロシア・ウクライナ情勢に起因する資源・原材料価格の高騰、中国における景気悪化や米国による対中投資規制の影響等、複数の不確実要素が存在し、その先行きは依然として不透明な状況にあります。
このような中、当社グループは、EV普及に伴うリチウムイオン電池業界での設備投資需要の高まりを背景に、特に日本や北米向けを中心にデシカント除湿機のシェア拡大に繋げるべく受注活動の強化を進めました。
その結果、当連結会計年度の売上高は28,725百万円(前連結会計年度比15.4%増)となりました。一方、利益面につきましては、営業力の強化及びグループ内の管理体制の整備に伴う人件費等の計上に加えて世界的な物流費高騰等があり、営業利益は4,298百万円(同6.7%減)となりました。受取利息及び配当金を83百万円計上したこと等により、経常利益は4,361百万円(同8.8%減)となりましたが、特別損失として訴訟関連損失を27百万円計上したこと等から税金等調整前当期純利益は4,314百万円(同9.4%減)となりました。法人税等合計で882百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,431百万円(同12.2%減)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、11,417百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,900百万円増加致しました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られたキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,349百万円減少し、2,000百万円となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益4,314百万円、減価償却費893百万円、仕入債務の増減額1,313百万円、契約負債の増減額271百万円であり、支出の主な内訳は、売上債権の増減額2,082百万円、棚卸資産の増減額1,006百万円、法人税等の支払額1,108百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出したキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,744百万円増加し、2,340百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が2,405百万円あったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られたキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ2,620百万円増加し、1,801百万円となりました。これは株式の発行による収入が1,222百万円、自己株式の処分による収入が3,494百万円、短期借入金の純減が1,640百万円、長期借入金の返済による支出が1,158百万円あったこと等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは空調事業の単一の報告セグメントであるため、製品別に記載しております。
(a)生産実績
(注)生産金額は販売価格により表示しております。
(b)受注実績
(c)販売実績
(注) 総販売額に対する割合が10%以上の主要な販売先がないため、相手先別の記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 財務状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況 ②経営成績の状況」に記載しておりますが、その主な要因は以下のとおりとなります。
(売上高、売上原価及び売上総利益)
当連結会計年度における売上高は、28,725百万円(前連結会計年度比15.4%増)となりました。これは、EV普及に伴うリチウムイオン電池業界での設備投資需要の高まりを背景に、特に日本や北米向けを中心にデシカント除湿機のシェア拡大に繋げるべく受注活動の強化を進めたことによるものであります。
当連結会計年度における売上原価は、17,556百万円(前連結会計年度比18.3%増)となりました。これは主に、売上高の増加によるものであります。
この結果、売上総利益は11,168百万円(前連結会計年度比11.1%増)となりました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、6,870百万円(前連結会計年度比26.2%増)となりました。これは主に、営業力の強化及びグループ内の管理体制の整備に伴う人件費の計上に加えて世界的な物流費高騰に伴い運賃が増加したこと等によるものであります。
この結果、営業利益は4,298百万円(前連結会計年度比6.7%減)となりました。
(売上高営業利益率)
当社グループでは売上と売上を獲得するために費やしたコストを管理するために売上高営業利益率を主要なKPIとして管理しております。
デシカント除湿機販売注力による主力市場での売上拡大戦略等が奏功し、売上高が15.4%(前連結会計年度は43.0%)増加した一方、営業力の強化及びグループ内の管理体制の整備に伴う人件費や世界的な物流費高騰に伴い運賃が増加したこと等により販売費及び一般管理費が26.2%(前連結会計年度は23.7%)増加したため、当連結会計年度における売上高営業利益率は、15.0%(前連結会計年度は18.5%)となりました。
(営業外損益、経常利益及び経常利益率)
当連結会計年度の営業外損益の主な内訳は、営業外収益として受取利息及び配当金が83百万円、営業外費用として支払利息が40百万円、上場関連費用が40百万円となり、経常利益は4,361百万円(前連結会計年度比8.8%減)となりました。売上高経常利益率は15.2%(前連結会計年度は19.2%)となりました。
(特別損益及び当期純利益)
当連結会計年度の特別損益の主な内訳は、特別損失として訴訟関連損失が27百万円となりました。
法人税、住民税及び事業税は937百万円、法人税等調整額は△54百万円となりました。この結果、当期純利益は3,431百万円(前連結会計年度比12.2%減)となりました。
(EBITDAマージン及びROE)
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおり、当社グループでは、EBITDAに対する売上高の比率であるEBITDAマージン及びROE(自己資本利益率)を重要な経営指標としております。当連結会計年度におけるEBITDAマージンは前連結会計年度の22.1%から4.0ポイント下降し18.1%に、ROEは前連結会計年度の24.5%から9.1ポイント下降し15.4%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a) キャッシュ・フロー
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(b) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要のうち主なものは、製品製造のための費用、販売費及び一般管理費等の営業費用や、生産能力拡大のための生産設備や生産性を向上させるための情報処理システム等への設備投資であります。
これらの資金需要に対応するための財源は、営業活動によるキャッシュ・フローで得られる自己資金により調達することを基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの借入等により調達していく考えであります。
なお、現金及び現金同等物の残高は、当連結会計年度末において11,417百万円であり、当社グループの事業を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発活動は、長期的なクライメイト・ニュートラルの実現を目指し、環境保全や省エネルギ
ーを目的とした顧客に信頼される製品開発、及び産官学連携による新技術開発を中心に進めております。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
りであります。
①グリーンハウス向け全熱交換装置「Green-SAVE」製品化
グリーンハウスと全熱交換装置を組み合わせたクローズドグリーンハウスの実現を進めております。病害虫の外気からの侵入低減や、雨風による収穫量の変動低減、C-SAVE Greenと組み合わせることでの施工の簡素化や収穫量UPなどが期待されます。年間を通した空調の可能性も新たに見い出されており、特許出願も並行して進めております。2024年から大型の実証試験を進めてデータを蓄積して、中期的な実用化・製品化を目指しております。
②燃焼排ガスからのCO2回収装置「C-SAVE」の開発
2023年から大学等と連携した実証試験を継続中です。CO2濃度10%程度の排ガスからCO2を分離する技術開発を、オープンイノベーションで進めて、2030年の製品化を目指しております。
③酸素濃縮装置の開発
空気中に含まれる酸素をハニカムロータを用いて直接濃縮する先導研究を産学官連携で実施しております。酸素濃度の高い空気を燃焼器に導入することで、燃焼効率を向上させ、燃料投入量を減らすことで、CO2の削減を目的としております。次世代技術開発として、産学官連携で研究開発を続けております。