文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
この度、当社グループは新たな長期経営計画「SANYO VISION 2028」を策定し、中核となる経営理念体系を再構築いたしました。従来からの経営理念である「堅実と進取の精神、自由闊達な社風のもと、柔軟かつ迅速に最適解を提供し、国際社会の永続的な発展と従業員の幸福を共創する」をミッションとし、「世の中の課題解決に貢献し、人と地球の笑顔をつくる」を当社が目指すあり姿、即ちビジョンとしました。更に、当社グループの新たな理念体系をステークホルダーの皆様にご理解いただけるよう、ロゴやスローガンなどを含むコーポレートブランドを刷新いたしました。
当社グループは、長期経営計画「SANYO VISION 2028」を推進していくと共に、新たなコーポレートスローガンとして掲げた「Quest for Next」を合言葉に、全社一丸となって事業展開を推進してまいります。事業環境の変化が激しい今日においては、事業の選択と集中をタイムリーに実現し企業価値の増大を図る一方、企業の社会的責任としての企業統治、法令遵守、気候変動を含む環境問題、社会貢献などにも積極的に取り組んでまいります。
(2) 目標とする経営指標
株主価値創出の観点から、2028年9月期にROE10~12%、営業利益90億円を目標として定め、また、連結業績及び財務状況を勘案し、長期安定的な株主還元を実施してまいります。
成長と財務規律の観点では、営業キャッシュ・フローの黒字、自己資本比率50%以上を維持しつつ、5年間で累計200~300億円を事業投資、DX投資、人的資本に投資にする計画となっております。また、営業利益率としては5.1%以上を目標としており、成長性・収益性・安定性をバランス良く実現し、適切に市場から評価いただくことで、PBR1倍超を実現し向上してまいります。

(3) 中期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題
当社グループを取り巻く事業環境については、気候変動問題、外国為替市場の変動などの不透明要因が存在しています。これらの要因は、当社の事業に影響を及ぼす可能性があり、予測不確実な状況を生み出しています。
当社グループでは、これらのリスクを単なる脅威として捉えるのではなく、新たな事業機会を見出すチャンスとしても捉えています。盤石な財務基盤と永年培った強みと経験を活かし、外部環境の変化に対して柔軟かつ迅速に対応することが課題と認識しています。
当社グループは、2023年9月期を最終年度とする長期経営計画「VISION 2023」で得られた成果を継承し、持続的な成長と企業価値の向上に向け、新長期経営計画「SANYO VISION 2028」を策定しました。
長期経営計画「SANYO VISION 2028」
「SANYO VISION 2028」では、「収益基盤の強化」、「企業体質の改善」の重点施策を推進していきます。また、「世の中の課題解決に貢献し、人と地球の笑顔をつくる」をあるべき姿に掲げ、環境への配慮と社会的責任を重視した事業活動を通じて、利益のみならず、社会の課題解決に貢献することを目指します。
<収益基盤の強化>
① 既存事業の成長
市場の変化を捉え、プロダクトアウトとマーケットインのハイブリッド戦略で市場のニーズに応じた製品開発と効果的なマーケティング戦略を推進します。
② 新規ビジネスの開拓
新規事業への投資においては、市場の成長性と競争状況を分析し、将来的な収益性を見据えた戦略的な投資を行います。また、新規事業を育成するために、新たな技術の研究、人材及び情報の獲得にも注力します。
③ 連結経営体制の強化
グローバル事業部制の深化と連結経営体制の強化により、グループ間のシナジー極大化を目指します。
④ 投資案件の推進
収益性が高く、長期的な成長が期待できる案件に対して積極的に投資します。迅速かつ柔軟な意思決定により、市場の変化に素早く対応し、事業の強化および多様化を図ります。
<企業体質の改善>
A 企業文化
自由闊達な企業文化を醸成し、従業員が自身の能力を最大限に発揮できる環境を提供することで創造性とイノベーションを促進します。
B 人的資本
従業員の成長を促進するため、継続的な教育プログラムやキャリア開発の機会を提供します。また、多様な人材が長くいきいきと働ける職場環境を構築します。
C サステナビリティ
ESG(環境、社会、ガバナンス)経営を中心に据え、環境への配慮、社会的な責任、適切なガバナンスの確立を推進します。
D IT利活用
システム開発の内製化と攻めと守り両面でのデジタイゼーションとデジタライゼーション、そしてデジタルトランスフォーメーションを推進し、業務プロセスの効率化と革新を図ります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
① 基本方針
三洋貿易は「堅実と進取の精神、自由闊達な社風のもと、柔軟かつ迅速に最適解を提供し、国際社会の永続的な発展と従業員の幸福を共創する」を果たすべきミッションに、そして「世の中の課題解決に貢献し、人と地球の笑顔をつくる」を目指すべきビジョンに掲げています。これらのミッション、ビジョンを推進する上で、三洋貿易グループは、サステナビリティへの取り組みを経営の重要課題と位置付けています。持続可能な国際社会の実現と中長期的な企業成長の両立を目指し、環境負荷低減等の社会課題解決に取り組んでまいります。
② マテリアリティ
当社グループは、さまざまなステークホルダーの期待に応え、ミッションに掲げる「国際社会の永続的な発展」に貢献するための重要課題(マテリアリティ)を下図のとおり、特定しています。
当社グループは、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組むため、SDGsとマテリアリティを関連付けて企業活動を推進しており、事業活動を通じて「環境負荷の低減」、「心豊かな暮らしの提供」に取り組むとともに、事業活動を支える経営基盤として「盤石な経営体制の強化」および「意欲ある多様な人材の活躍」に取り組んでまいります。

③ガバナンス
当社では気候変動に関わる経営の基本方針、事業活動やコーポレートの方針・戦略は2022年4月に設置した社長直轄の「サステナビリティ委員会」が企画・立案・提言を行っています。
サステナビリティ委員会では、代表取締役社長が指名するサステナビリティ担当役員が委員長を務め、サステナビリティ委員長は管理部門、事業部門並びに経営企画部等の社長直轄組織から委員を任命します。また、委員長が必要と認めた場合、グループ会社からの出席を求めることができるとともに、外部専門家との意見交換も行います。委員長は、サステナビリティ委員会で協議した内容を最終承認します。
サステナビリティ委員会は原則として3ヵ月に1回定例会を開催し、必要に応じ、臨時にも委員会を開催することができます。委員会では、気候変動を含むサステナビリティ課題に対応する各種施策の方針及び企画の承認や決定した施策に対するモニタリングを行います。経営企画部と管理部門及び事業部門から選出された部員で構成されるサステナビリティ委員会事務局がサステナビリティに係る課題の取り纏め、施策の企画立案、施策の実行状況の把握を行い、グループ全体のサステナビリティ活動を推進しています。
サステナビリティ委員長は、サステナビリティ委員会で承認された方針や活動結果等を年1回以上、取締役会に報告しています。また、重要事項については、取締役会に付議しています。
また、サステナビリティ委員会の活動状況は毎月開催される執行役員会に適宜報告し、執行役員会メンバーはその内容を各事業部・各室の定例会で報告することで、全社で共有される体制を構築しています。
取締役会はサステナビリティ委員会からの付議・報告を受け、指示・監督を行うとともに、気候変動に係る委員会の活動を監督し、気候変動を含むサステナビリティ課題を考慮した経営方針・年度予算等の重要事項を審議・決定しています。



④リスク管理
(気候変動リスク)
当社グループでは、サステナビリティ委員会において、事業部門、管理部門及び社長直轄組織から任命された委員が、気候変動リスクの特性に応じ長期的視点でシナリオ分析を行い、「発生可能性」と「財務インパクト」の2軸で重要度を評価・分析し、気候変動に関連する規制要件を考慮し、リスクの特定及び対応を行っています。また、サステナビリティ委員会は、リスクの対応状況の進捗を適時取締役会へ報告し、取締役会が同委員会を直接モニタリングする体制が整えられています。加えて、後述するリスク管理委員会においても、サステナビリティ委員会のリスクの対応状況をモニタリングするものとしています。
(グループ全体のリスク管理)
当社グループは、「リスク管理規程」を制定し、グループ全体のリスク管理体制を整備運用しています。当社グループのリスク管理を統括する機関として、取締役会がリスク管理担当役員を指名するほか、リスク管理担当役員を委員長とし、事業部門、管理部門及び社長直轄組織から任命された委員で構成される「リスク管理委員会」を設置しています。また、緊急事態発生時の行動指針や連絡・初動体制、事業継続計画等について整備、運用しています。
(リスク管理委員会)
「リスク管理委員会」は、原則として6ヶ月に1回定例会を開催し、グループ全体のリスクを横断的に検討し、環境リスク(気候変動リスクを含む)、信用リスク、財務リスク等を重要なリスクとして特定しています。また、各リスク担当部署からリスクアセスメント報告をうけることを通じ、リスク及びその管理状況をモニタリングし、その結果を取締役会に報告しています。グループ全体のリスク管理を行う一環として、グループ会社の各代表等から、聞き取り調査を行う取組みも実施しています。また、社会情勢の変化等に応じて、対応すべきリスク項目や内容の見直しを定期的に行っています。
以上のとおり、当社グループでは、取締役会、リスク管理担当役員、リスク管理委員会を中心にグループ全体のリスクを管理する体制を整備し、リスクを回避するための諸施策やコントロールするための様々な取組みを行っています。
⑤ 指標及び目標
気候変動、人的資本に関して、それぞれ目標を設定しています。詳細は「(2)気候変動に関する取組み」、「(3)人的資本に関する取組み」をご参照ください。
(2)気候変動に関する取組み
①気候変動に関する基本的な考え方
気候変動はグローバル社会が直面する最も重大な課題の一つであり、気候変動の影響は、環境・社会及び人々の生活・企業活動に深刻な影響を及ぼすようになっています。国際社会が協調し温室効果ガスの排出削減を進めていくパリ協定が2015年に締結され、民間セクターが果たすべき役割への期待も高まっています。当社グループは、気候変動対応をマテリアリティ「環境負荷の低減」の中に位置付けており、 2022年12月にTCFD※提言への賛同を表明しました。当社はTCFD提言に基づき、気候変動関連のリスク・機会の評価を行い、経営戦略に反映させるとともに、推奨されている開示項目について、適切な情報開示の充実を図ってまいります。
※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
G20の要請を受け、2015年に金融安定理事会(FSB)により設立されました。気候変動によるリスクおよび機会が経営に与える財務的影響を評価し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示することを推奨しています。
②ガバナンス
(1)サステナビリティ全般 - ③ガバナンスをご参照ください。
③戦略
シナリオ分析
当社は、気候変動に伴う様々な外部環境の変化の要因を「移行リスク」と「物理的リスク」に分類の上、当社グループの事業におけるリスクと機会を評価・特定しています。
事業への影響については、影響が大きい要素を選定してシナリオ分析しました。移行リスクでは、「規制・技術・市場・評判」、物理的リスクでは、「急性・慢性」を、機会では「製品とサービス・資源の効率」を考慮しました。
気候変動に関する「リスク」に対応し、「機会」に向けた取組みを強化していくことで、環境負荷の低減と中長期的な企業成長の両立を目指してまいります。
参照シナリオ
気候変動に起因して、当社の事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネスの機会及び事業レジリエンスを評価し、事業への影響を分析することを目的として、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)及びIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの下記シナリオを参照しています。


④リスク管理
(1)サステナビリティ全般 - ④リスク管理をご参照ください。
⑤指標と目標
社会のカーボンニュートラルへの貢献同様に、自社のカーボンニュートラルは不可欠と考えております。当社は、脱炭素社会移行に貢献するための具体的方針として、2022年9月期比で2050年までに温室効果ガス(以下「GHG」排出量(Scope1,2))をネットでゼロとする目標を策定しました。また、2030年には、2050年に向けたプロセスとして、2022年9月期比でネットでのGHG排出量半減(Scope1,2)を目指します。
なお、Scope1におけるサプライチェーン全体の排出量の算出については、一部のカテゴリについて、2023年9月期から算定を開始する予定にしており、今後の情勢を踏まえ算定領域の拡大を検討してまいります。
当社はGHG排出量削減目標を設定するにあたり、2022年9月期を基準としてGHG排出量の算出を行いました。今後、定期的にGHG排出量を算定するとともに、GHG排出量の削減に向けて、当社はエネ ・再エネ推進(LED化、再生可能エネルギー購入、環境負荷の少ない車への社有車切り替え等)を実施します。また、環境配慮型商材や木質バイオマス発電事業に代表される商材・サービス提供を通じたGHG排出削減貢献を強力に推進することで、この目標の実現を目指すとともに、ネットゼロ社会の達成に貢献します。

(3) 人的資本に関する取組み
新長期経営計画「SANYO VISION 2028」において、重点施策のひとつに「人的資本」を掲げており、社員の自律的なキャリア形成を支援する教育・研修の充実、多様な人材・多様な働き方の推進、安全・健康の促進など、人への投資の強化を掲げております。
商社である私たちにとって、社員一人ひとりが最大の財産です。すべての社員が継続的にキャリアアップしながら長く安心して活躍できるような諸施策に取り組むことにより、経営基盤を強靭化し、企業価値向上に努めてまいります。
① ガバナンス
社員一人ひとりの心と身体の健康が重要であるとの考えの元、「健康経営」をESGの中の人事管理をテーマとするS(Social)領域に位置付けています。
「健康経営」を推進するために、三洋貿易健康経営宣言を定めるとともに、サステナビリティ委員会の分科会である健康経営推進委員会を定期的に開催し、社員の健康管理に対する方針や課題を検討しています。
② 戦略
当社は社員の成長のための基本戦略としてShared Value(共通の価値観)、System(人事制度・評価・報酬)、Strategy(人材戦略)の「Sanyo人材3S」を整備し、社員に対して成長のための機会と舞台を提供しています。
当社が求める自ら考え、学び、挑戦できる人材を多数育成するために「Sanyo人材3S」の整備を推進し、多様な人材・知の集結を実現します。

1) 人材育成方針
A) Sanyoアカデミー
全社員が学び続け、自律的にキャリア形成する人材育成システム「Sanyoアカデミー」を整備し、①各部門にて専任者を定めて実施するOJT、②階層別・選抜・選択・年代別研修等のOff-JT、③資格取得支援および公募・キャリア面談等の各種制度を提供しています。
B) 多様な人材のキャリア開発
女性活躍に関する管理職の意識の把握・女性社員個々のキャリア要望の把握のためのアンケートを実施しているほか、女性社員のキャリアプランやアンコンシャスバイアスをテーマとした研修を実施しています。また、総合職・エリア総合職に職種転換意向がある業務職に対しては、職種転換を選択できるよう職種転換基準を設けており、女性社員のキャリア構築に努めています。
総合職においては組織運営を担うマネジメント職と高度な専門性・スキルを発揮するスペシャリスト職2種類のキャリアを提供しており、本人の意思でいずれかのキャリアを選択できるようにしています。
C) 女性の積極採用
女性の新卒総合職の採用を強化するため、採用担当者、リクルーター、採用ホームページ等に女性総合職を起用し、女性が働きやすい職場環境をアピールすることにより、母集団の増加につなげています。
2) 社内環境整備方針
A) 妊娠・出産・育児や介護と仕事の両立支援
時差出勤、テレワークを導入しているほか、子の看護休暇、介護休暇を全日・半日・時間単位で取得できるなど、妊娠・出産・育児や介護と仕事が両立できる環境を整備しています。
子がいる社員に対しては、ベビーシッター利用にかかる費用を会社が補助しており、子の家庭内における保育や世話および保育所送迎の負担を軽減しています。
また、社内のプロジェクト活動の一環として、公募で集まった委員で構成するD&I推進委員会を定期的に開催しています。性別・年齢を問わず、多様な人材の多様な働き方を実現するための制度・施策を企画検討し、経営に提案する場を設けています。経営に承認された制度・施策については、所管部署である人事総務部が運用定着をはかり、実行性を担保しています。
B) 多様な働き方の推進
時間・場所を問わない働き方を実現するため時差出勤、テレワークを導入しているほか、本店においては、フリーアドレスを前提としたオフィスレイアウトを導入しております。フリーアドレスについては、テレワークで希薄になる社員間のコミュニケーションを深化し、時にイノベーション創出につながる会話の機会を増やすことにも役立っています。
C) 企業文化の醸成
社員と会社が選び選ばれる関係にあることは、変化する市場環境を勝ち抜くための重要な形であります。両者の関係の現在地を知るために、77期より、以下調査項目を指標とするエンゲージメント調査を毎期実施することとしています。
調査結果は経営陣と共有し、重要課題に対しては適宜、改善施策を検討します。
エンゲージメント調査を活用し、社員にとって働きがいのある会社を目指し、良質な企業文化を醸成してまいります。
③ 職場の安全、衛生および社員の健康に関するリスク管理
サステナビリティ委員会の分科会である健康経営推進委員会を定期的に開催し、職場環境の安全、衛生面の課題を抽出し、改善施策の検討へ適宜反映しているほか、長時間労働者に対しては本人に対し、必要に応じて産業医の面談受診を勧奨しています。
また、部門ごとの平均の時間外労働時間、有給休暇取得日数、定期健康診断未受診者数を毎月の執行役員会で経営陣、各部門長に共有し、社員全員の過重労働の防止や健康維持、健康状態の把握を徹底して行っています。
④ 指標及び目標
当社では、上記「①ガバナンス」「②戦略」において記載した内容に関する指標として、次の指標を用いています。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりです。
※「選択式研修の年間延べ受講回数」を除く指標の実績の対象期間は2022年4月~2023年3月、目標の対象期間は2025年4月~2026年3月としています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
①主要市場の経済動向について
当社グループは、広範な産業分野に対して商品を販売していますが、特に自動車、家電・情報機器関連向けが大きな割合を占めています。従って、これら業界の市況が悪化した場合には、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
②商品価格の変動について
当社グループの取扱商品には、需給バランスにより仕入価格が大きく変動するものが含まれており、変動に応じた販売価格の設定および適正在庫の管理に努めています。しかし、価格転嫁が十分にできない場合、あるいは在庫の価値が下落し評価損の計上を余儀なくされる場合には、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③競合のリスクについて
当社グループは、多岐にわたる商品を取り扱っており、国内外の様々な企業と競合しています。これら競合相手の戦略変更や、新興国企業等価格競争力の強い競合相手の新規参入があった場合には、当社グループの優位性が維持できずに、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
④仕入先に係るリスクについて
当社グループは、国内外の数多くの取引先から商品を仕入れており、商品の安定確保のため、仕入先との良好な関係の維持・強化に努めています。しかし、これら仕入先の事業再編や業績悪化、代理店政策の見直し等により、商権を喪失・縮小した場合には、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑤新規事業開拓に伴う投資について
当社グループは、新規事業の開拓に向けてM&A等に積極的に取り組んでいます。投資の決定に際しては、対象となる企業や事業につきまして財務、法務等の各側面からデュー・ディリジェンスを実施し、十分な精査、検討を行うことによってリスク回避を図っています。しかしながら、投資先企業・事業の価値が低下した場合には、のれんの減損処理等によって当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥海外事業展開に伴うリスクについて
当社グループは、多くの輸出入取引、米国・アジアにおける事業拠点の設置等、幅広く海外活動を展開しており、今後更に注力していく所存です。しかし、関係する各国・地域において、予期し得ない政治・経済情勢の悪化などのカントリーリスクが顕在化した場合には、取引の継続あるいは当社グループが計画とおりの事業活動を行うことに支障をきたし、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑦債権管理について
当社グループの総資産に対する売上債権の割合は、当連結会計年度末現在36.2%(24,794 百万円)と高い水準にあります。債権の管理につきましては、取引先別の業績・財務内容に応じた与信設定を行い、信用状態の継続的な把握をするなど、不良債権の発生が極力少なくなるよう努めています。また、不測の事態に備え、過去の実績率や個別の回収可能性等の見積りに基づき貸倒引当金を計上していますが、実際に回収不能となった債権額がこれを超過した場合には、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑧為替変動の影響について
当社グループは、商社として欧米およびアジアを中心とした輸出入取引にも積極的な営業を推進しています。外貨建ての取引については先物為替予約等を行うことによりヘッジを行っていますが、取引先との価格交渉等において為替変動の影響は避けられず、急激な為替変動が生じた場合には、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、海外連結子会社の財務諸表は現地通貨建てとなっており、円換算する際の為替レートによっては、為替換算調整勘定を通じて当社グループの純資産が減少するリスクを有しています。
⑨株式相場の変動について
当社グループは、事業上の関係緊密化を図るため金融機関や取引先の株式を保有しています。その多くは市場に流通する時価のある株式であり、今後の株式相場の変動によっては、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑩自然災害による影響について
当社グループは、地震、台風、洪水等による災害が発生した場合に備えて、BCP(事業継続計画)を策定し、その一環で安否確認システム導入等の対策を講じています。しかしながら、被害を完全に回避することは困難であり、更には仕入先や得意先が被害を受けることもあります。そのような場合、当社グループの各事業拠点における活動に支障をきたし、業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑪コンプライアンス等に関するリスクについて
当社グループは、日本および諸外国で事業活動を行っており、関連する法的規制は広範囲にわたっています。これらの法的規制を遵守するために、当社ではコンプライアンス委員会を設けコンプライアンス体制の強化を図っています。しかしながら、このような対策を行っても事業活動におけるコンプライアンス等に関するリスクを完全に排除することはできません。関係する法的規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが行われた場合には、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりです。
①経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、コロナ禍からの経済活動の再開により景気回復が進んでいる一方、長期化するウクライナ情勢の悪化に伴う地政学的リスクの高まり、資源価格の高騰、金利上昇による世界経済の減速が懸念される状況となっています。
当社グループがビジネスを展開する地域を概観しますと、米国では、インフレの影響による企業のコスト増と、インフレ抑制のための金融引き締めにより、景気は緩やかに減速しました。中国では、昨年末のゼロコロナ政策解除以降、設備投資や個人消費が回復したものの、低調な不動産投資や高止まりする失業率等が懸念材料となり、景況感は悪化しました。アセアンでは、米国の利上げによる通貨安に伴って輸入物価が上昇するといったマイナス要因はありますが、個人消費が拡大し景気は堅調に推移しています。
日本では、原材料やエネルギーコスト上昇分の価格転嫁によるインフレ傾向がみられるものの、内需の活性化やコロナ制限の緩和及び円安の影響によるインバウンド需要の回復等、景気は回復基調にあります。
このような事業環境のもと当社グループでは、最終年度を迎えた長期経営計画「VISION 2023」に沿って、強みを活かした付加価値の高いビジネスを追求・深化させ、既存事業の強化に加え、新規ビジネスの開発、グローバル展開の更なる加速、新規投資の推進などに継続して取り組み、グループを挙げて業績の向上に努めてまいりました。
新規投資としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)が益々進展する中、ビジネス環境の変化や顧客のデジタル化ニーズ及びグループ内のデジタル化への対応を迅速に進めるため、㈱コスモ・コンピューティングシステムをグループ会社化することで、システム開発を内製化し、ビジネスにより近いところで迅速にデジタルサービスを提供する体制を構築しました。また、KOTAIバイオテクノロジーズ㈱(以下「KOTAI」)をグループ会社化することで、2022年2月にグループ会社化した㈱スクラムによるバイオ研究支援機器・試薬の販売に加え、KOTAIによる遺伝子解析受託サービスから創薬研究支援までを行うことにより、バイオ関連事業を強化しました。
新規事業開発を担う事業開発室の取組みとしては、太陽光を利用した冷却効果に基づくコーティングフィルムを研究開発するイスラエルのスタートアップ企業SOLCOLD LTDに投資を行ったほか、スタートアップ企業との交流及び最先端技術の情報収集、並びにシナジー効果を追求し、注力領域であるファインケミカル、ライフサイエンス、サステナビリティ分野における次世代事業創出に取り組むため、ユニバーサルマテリアルズインキュベーター㈱が設立した UMI3号脱炭素投資事業有限責任組合に出資を行いました。
この結果、当連結会計年度の売上高は122,596百万円(前連結会計年度比10.2%増)、営業利益は6,740百万円(前連結会計年度比26.7%増)、経常利益は7,149百万円(前連結会計年度比13.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,830百万円(前連結会計年度比12.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
ゴム関連商品は、販売単価上昇や戦略商品の拡販などで売上は前期比増加したものの、円安による仕入価格高騰や販売先の在庫調整などで利益は減少しました。
化学品関連商品は、新規取扱商材の拡販などが進み、売上は前期比増加しましたが、市場の需要鈍化や円安による仕入価格高騰の影響を受け、利益は前期並みとなりました。
ライフサイエンス関連商品は、香料、染料などが好調を維持したものの、電材、機能性食品原料などが低調でした。
この結果、化成品の売上高は38,298百万円(前連結会計年度比1.5%増)、営業利益は2,185百万円(前連結会計年度比12.9%減)となりました。
産業資材関連商品は、日系自動車メーカーの生産回復が進んだことで、売上、利益ともに好調に推移しました。
機械・環境関連商品は、大型設備投資が控えられた影響などで低調でしたが、保守・部品サービスの強化に努めました。
科学機器関連商品は、耐候性・腐食試験機、粒子分散測定機器などが堅調に推移しました。
コスモス商事㈱が取扱う資源開発関連商品は、地熱関連機材が好調で、石油・ガス関連機材も堅調でした。㈱スクラムが取扱うバイオ関連機器は好調に推移しました。
㈱ワイピーテックが取扱う機能性飼料原料は復調しました。なお、当期より新東洋機械工業㈱を連結の範囲に含めています。
この結果、機械資材の売上高は47,044百万円(前連結会計年度比29.5%増)、営業利益は4,450百万円(前連結会計年度比40.3%増)となりました。
Sanyo Corporation of Americaは、フィルム関連は堅調でしたが、自動車関連は低調でした。三洋物産貿易(上海)有限公司は、リチウムイオン電池関連は堅調に推移したものの、自動車関連は低調でした。Sanyo Trading Asia Co., Ltd.(タイ)は、自動車関連が好調でした。Sun Phoenix Mexico, S.A. de C.V.は、自動車関連が堅調でした。Sanyo Trading India Private Limitedは、ゴム関連が好調でした。Sanyo Trading (Viet Nam) Co., Ltd.は、景気の落込みの影響を受け、低調でした。PT. Sanyo Trading Indonesiaは、ゴム関連が好調でした。
この結果、海外現地法人の売上高は36,039百万円(前連結会計年度比2.6%減)、営業利益は1,347百万円(前連結会計年度比9.0%増)となりました。
②財政状態の状況
(資産)
流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べ2,155百万円増加し、57,288百万円となりました。
固定資産は、投資有価証券の時価評価額の増加等により、前連結会計年度末に比べ3,522百万円増加し、11,248百万円となりました。
(負債)
流動負債は、賞与引当金の増加等により、前連結会計年度末に比べ648百万円増加し、22,661百万円となりました。
固定負債は、長期借入金や繰延税金負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ351百万円増加し、1,985百万円となりました。
(純資産)
親会社株主に帰属する当期純利益の計上による株主資本の増加や、その他有価証券評価差額金の増加等によるその他の包括利益累計額が増加しました。
この結果、前連結会計年度末に比べ4,678百万円増加し、43,890百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、6,900百万円(前連結会計年度末比1,182百万円の増加)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、5,917百万円の収入(前連結会計年度比9,312百万円の増加)となりました。税金等調整前当期純利益が増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、2,914百万円の支出(前連結会計年度比1,105百万円の減少)となりました。㈱コスモ・コンピューティングシステムやKOTAIの株式取得に係る支出等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,867百万円の支出(前連結会計年度比3,731百万円の減少)となりました。これは主に親会社の配当金支払いによる支出です。
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
受注実績と販売実績の差異が僅少の為、記載を省略しています。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1. セグメント間の取引は相殺消去しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に有価証券の評価、固定資産の評価、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る負債等であり、継続して評価を行っています。
見積りおよび判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づいて行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。
a.経営成績の分析
(売上高)
売上高は122,596百万円となり、前連結会計年度に比べ11,346百万円の増収となりました。日系自動車メーカーの生産が回復したことや過去に実施したM&Aが着実に成長に貢献したことにより売上高が大きく増加しました。
(営業利益)
売上の増加に伴い、売上総利益は20,473百万円と前連結会計年度に比べ3,328百万円の増益となりました。販売費及び一般管理費は人員増による人件費の増加や販売費の増加等により13,732百万円と前連結会計年度に比べ1,907百万円増加しました。この結果、営業利益は6,740百万円となり、前連結会計年度に比べ1,421百万円の増益となりました。
(税金等調整前当期純利益)
税金等調整前当期純利益は7,380百万円と前連結会計年度に比べ856百万円の増益となりました。当連結会計年度の特別損益は、投資有価証券売却益の計上により、230百万円の利益となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は4,830百万円と前連結会計年度に比べ533百万円の増益となりました。
b.財政状態の分析
財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりです。
c.経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりです。
d.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、運転資金および投資等の資金需要に対して、自己資金で賄うことを基本方針としつつ、不足分は金融機関からの短期/中長期借入金で調達しています。
また、売掛/手形/電子記録債権の流動化による資金調達手段の多様化や、当社および国内子会社間で導入しているキャッシュ・マネジメント・システムによりグループにおける余剰資金を効率的にグループ内で活用するなど、安定的な流動性の確保と金融費用の削減を図っています。
なお、キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発活動費は、
主に、機械資材セグメントにおいて医療機器の研究開発活動を行っています。