第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、「解き尽くす。未来を引きよせる。」というミッションのもと、テクノロジーを活かしながら既存のビジネスを柔軟に組み合わせ、新しいサービスを生み出すことで、新しい価値を提供し続けていくとともに、成果を積み重ねていくことの連鎖でより大きな課題に立ち向かい、未来を引きよせたいと考えております。

 このようなミッションのもと、多様な産業領域のデジタルトランスフォーメーションを推進しております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、より高い成長性及び収益性を確保する視点から、売上高成長率及び営業利益率を重要な経営指標と捉えております。

 

(3)経営戦略等

(基本戦略)

 当社グループは、次の3つの活動に注力することを基本的な戦略としております。

① 事業発展による単価・収益性向上

 顧客企業のデータ資産を収集・統合を行った上で分析を行い、そのデータを利活用するサービスを複数提供することで、顧客企業の成果を最大化し、これによって単価を高め・収益性向上に努めます。また、この活動を通じて、データの利活用に関する専門的なノウハウの獲得・蓄積を進めます。

② 事業開発による顧客数増加

 前項を通じて得たノウハウを元に、バリューチェーンの非効率が取り残されやすい状態になっている、産業としての歴史が長い領域に対して、デジタル化やデータの利活用によって業務のデジタル置換を推進し、業界全体の生産性を高めつつユーザーへの提供価値の向上を進めております。不動産DX事業のサービス群はこのような取り組みに該当するものであります。

③ 新規事業開発

 次世代の収益の柱となる事業の育成を目指し、Data Platform事業等新たな事業領域の開拓・投資を行っております。

 

(当社グループの強み)

 当社グループの強みは、①事業開発全体へのデータの活用、②独自システムを利用したオペレーションの最適化、③人材及び組織、であります。

① 事業開発全体へのデータの活用

 当社グループでは、事業の運営を通じて以下のようなデータ蓄積を行っております。

ⅰ.不動産DX事業において、不動産売買仲介・リフォーム契約の仲介を通じた、査定仲介データや見込み顧客データの蓄積

ⅱ.マーケティングDX事業において、マーケティング関連プロジェクトを通じた、検索データやサイトのコンテンツに関するデータの蓄積

 

これらのデータを用いることで、施策成果の事前予測や自動最適化プログラムを構築し、マッチングアルゴリズムの精度向上等によって事業価値・生産性向上につなげるとともに、独自データを用いることで、新たな市場機会の発見にもつなげております。

 

② 独自システムを利用したオペレーションの最適化

 事業間で共通の基盤をベースに、領域ごとの用途に特化させた独自システムを構築しており、これによって、顧客満足度をあげるとともに、オペレーションを最適化させることで工数負担の軽減を実現しております。

 

③ 人材及び組織

 当社グループでは、継続的な事業成長のために、人材の増強、組織体制の充実に注力しております。バックオフィスを除く正社員のうち、約3分の1がプロダクト開発に関わる専門職種、約3分の1がデータ分析・利活用に関わる専門職種、約3分の1がビジネス系職種となっております。当社グループで は、データ分析と利活用、分析を元に得た知見や企画のプロダクト(サービス)化、そしてサービスを顧客に届ける活動までを一貫してバランスよく行うことが重要であると考えており、これらの比率の維持、及び各職種の専門性の深化に注力してまいります。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 優秀な人材の採用と育成・活用

 今後の成長を推進するにあたり、優秀で熱意のある人材を適時に採用することが重要な課題と認識しているため、採用の強化及び従業員が高いモチベーションをもって働ける環境や仕組みの整備・運用を進めてまいります。今後も優秀な人材の採用とさらなる育成に投資を行っていく方針であります。

 

② 高い専門性を有する人材の確保

 当社グループの継続的な事業拡大には、当社グループの経営理念に合致した志向性を持ち、かつ高い専門性を有する人材の確保と育成が重要であると認識しております。特にエンジニアやデータサイエンティストなどの採用においては、獲得競争が激化し、今後も人材確保には厳しい状況が続くものと予想されます。当社グループでは、採用方法の多様化をはじめ、教育や人材育成制度の確立などにより、人材の採用から定着に至るまでの体制準備を進めてまいります。

 

③ 技術革新への対応

 当社グループは、データ分析技術を基盤として事業を展開しておりますが、新たなインターネット関連の技術革新やデータ分析技術の進歩に対してタイムリーに対応することが、今後の事業展開上重要な要素であると認識しております。そのために、Google LLCなどインターネット・サービス事業者の動向を把握し、その技術情報(動画広告技術やAI応用技術など)をいち早く入手すると同時に、それに対抗する独自の技術を開発することで、自社サービスの先進性やユニーク性を確保してまいります。

 

④ 内部管理体制の強化

 当社グループは、急速な事業環境の変化に適応し、継続的な成長を維持していくために、内部管理体制の強化が重要であると認識しております。このため、事業規模や成長ステージに合わせバックオフィス機能を拡充していくとともに、経営の公正性・透明性を確保するための内部管理体制強化に取り組んでまいります。具体的には、事業運営上のリスク管理や定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化、社外役員の登用、内部統制システムを活用した監査の実施によるコーポレート・ガバナンス機能の充実等を行ってまいります。

 

⑤ 情報セキュリティのリスク対応の強化

 当社グループは、ウィルスや不正な手段による外部からのシステムへの侵入、システムの障害及び役職員・パートナー事業者の過誤による損害を防止するために、引き続き優秀な技術者の確保や、職場環境の整備及び社内教育による情報セキュリティの強化を図ってまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、「解き尽くす。未来を引きよせる。」をコーポレートミッションとして、社会に潜在する課題を、事業を通じて解決することで成長してきました。今後も持続的に発展していくために、環境と社会との調和を重視しながら、事業を通じた社会課題の解決に取り組み続けることが現代社会において不可欠であると考えております。私たちは、企業の業務や産業をデジタルトランスフォーメーション(DX)させることの目的を、単なる効率化という狭義的な枠では捉えていません。DX化を通じて、消費者が本来得ることができる豊かな消費体験が損なわれることなく、享受し続けることができるエコシステムの創造を目指しています。また、そのエコシステムを作ることで、デジタルと人の適切な役割分担、すなわち、デジタルに任せられる仕事はデジタルに任せ、人がそれぞれのライフスタイルに応じた働きがいを感じられる環境をつくることも、当社が考えるDXの重要な役割の一つであると捉えています。そして、そのような環境の実現が、単に個別主義の積み重ねによる多様性ではなく、真に統合的な多様性が認められる社会への発展に通じると信じています。

 当社はDXを加速させる事業を通じて、「誰もが豊かなデジタル体験を享受でき、自らの仕事に働きがいを感じることのできる多様な社会を実現する」ことを目指してまいります。当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティへの取り組みを推進するため、経営管理管掌取締役を委員長としたサステナビリティ委員会を設置し、適宜協議を行っております。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する方針や考え方の整備、サステナビリティ推進体制の構築、取り組み状況のモニタリングを行っております。サステナビリティ委員会で検討、協議された方針や課題において、特に重要な事項については取締役会に報告され決定しております。

 

(2)戦略

a.当社グループのマテリアリティとその選定方法について

 当社グループは、ステークホルダーの期待や要請にこたえていくため、優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。当社グループのビジョンを実現する重要課題の特定プロセスは下記のとおりであります。

①.候補となる課題の抽出

 ESG・SDGsやSASBスタンダードなどの国際的なコンセンサスや各種ガイドラインを社会課題の主な根拠として参照し、当社事業と強く関連し得る課題を経営陣と従業員を代表した社員複数名で検討を重ね、マテリアリティ要素を抽出しました。

②.重要度の評価

 マテリアリティ要素案について、社外有識者を交えて当社経営陣と意見交換を行い、その妥当性を検証するとともに経営課題との関連性を踏まえ、各要素について経済性と社会性の2軸で評価しました。

③.マテリアリティの特定

 当社の経営会議において、経営陣における協議と承認を得て、マテリアリティとして決定しました。

 

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 現時点において指標及び目標について設定はしておりませんが、今後特定したマテリアリティにおける具体的な取り組みを推進し、指標及び目標について検討を進めてまいります。

 

b.人材の育成及び社内環境整備に関する方針

 当社は、人的資本への投資を重要なものと認識しており、人材の育成に関する取り組みを強化することが中長期的な企業価値の向上に寄与するものと考えております。そのため、当社では人材の育成及び社内環境整備に積極的に取り組んでまいります。

 社内環境整備に関しては、社員の労働意欲が高まる働きやすい職場環境を整備します。多様化する働き方、変化する社会情勢・ニーズといった様々な状況に対応すべく、社員が自身の裁量で働ける体制の構築やスキルアップに積極的に取り組める制度・環境を整えております。また、待遇面についても社員の労働意欲が高まるように努めてまいります。

 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に係る指標ついて、具体的な目標は設定しておりませんが、今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標及び開示項目を検討してまいります。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、経営に対して大きな影響を及ぼすリスクに適切かつ迅速に対応するため、リスク管理委員会を設置し、事業活動を行う上で対処すべきリスクを認識・特定して、対策を協議しております。サステナビリティ委員会で特定した重要なリスクについては、リスク管理委員会と連携し、リスクの低減、未然防止等を図っております。主な重要リスクは「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループのサステナビリティに関する指標及び目標は現時点では設定しておりません。今後、企業価値向上に向けたサステナビリティに関する指標及び目標については、社内で議論を深めてまいります。

 また、女性管理職比率においては厚生労働省による令和4年度雇用均等基本調査結果における全国の企業平均を上回っており、今後も継続して当該指標を超えることを目標に職場環境の整備を推進してまいります。

 なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」で記載のとおりです。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避、発生した場合の対応に努める方針であります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(1)事業環境に関するリスク

① インターネット広告・関連市場について

 2022年の日本の総広告費は通年で前年比104.4%の7兆1,021億円で、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大、ウクライナ情勢、物価高騰など国内外の様々な影響を受けつつも、1947年に推定を開始して以降、過去最高となりました。その中でインターネット広告市場は、引き続き数字を伸ばし、2022年において前年比114.3%となっております。(出典:株式会社電通「2022年 日本の広告費」)

 このようにインターネット広告市場は拡大しておりますが、景気の動向や広告主の広告戦略の動向に左右されるため、当社グループにおける業績もこれらの要因に影響を受け、当社グループが想定しない業績の変動が生ずる可能性があります。
 また、インターネット広告市場が何らかの要因によって、市場成長が阻害されるような状況が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 技術革新について

 当社グループが属する複数の市場において、急速な技術変化に伴い、クライアントのニーズも著しく変化しております。当社グループではこれらに対応すべく新しい技術習得に対し人的・資本的投資を継続しておりますが、新たな技術やサービスへの対応が遅れた場合や、競合する他社において革新的な技術が開発された場合、当社グループの競争力が低下する要因となり、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 競合他社について

 当社グループは、不動産DX事業及びマーケティングDX事業を主たる事業領域としておりますが、当該分野は歴史が浅く、参入企業が増加する傾向にあります。今後、当社グループのサービスが十分な差別化や機能向上等ができなかった場合や、さらなる新規参入により競争が激化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 法的規制について

 現在のところ当社グループの事業継続に著しく重要な影響を及ぼす法的規制はありませんが、インターネットを規制する国内の法律として「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「個人情報の保護に関する法律」等が存在しております。また、インターネット上のプライバシー保護の観点からクッキー(ウェブサイト閲覧者のコンピュータにインストールされ、ユーザーのウェブ閲覧履歴を監視するテキストファイル)に対する規制など、インターネット利用の普及に伴って法的規制の在り方等については検討が引き続き行われている状況にあります。

このため、今後、インターネット関連分野において新たな法令等の制定や、既存法令等の改正等により規制強化等がなされた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 自然災害等の発生について

 当社グループでは、自然災害や大規模な事故に備え、Amazon Web Services等のクラウドサービスの利用、定期的なバックアップ及び稼働状況の監視によりシステムトラブルの事前防止又は回避に努めておりますが、当社グループの本社は東京都内にあり、当地域内における地震、津波等の大規模災害の発生や事故により本社及びデータセンターが被害を受けた場合、事業を円滑に運営できなくなる可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業に関するリスク

① 新規事業について

 当社グループは今後も引き続き、積極的に新サービスないしは新規事業に取り組んで参りますが、これによりシステムへの先行投資や、認知度向上のための広告宣伝費の投下、人件費等の追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、当初の予測とは異なる状況が発生し、新サービス、新規事業の展開が計画通りに進まない場合、減損損失の計上が必要になる等、投資を回収できなくなる可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 継続的な事業投資について

 当社グループは、継続的な成長のため、事業に対する投資を積極的に実施していくことが必要であると考え、今後も事業成長のための投資を進めていく方針であります。

 不動産DX事業において、事業拡大のため、オンライン広告等を活用してユーザーの集客を行っております。費用対効果を検討の上、広告宣伝活動を行っておりますが、当初想定した費用対効果が得られない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 Data Platform事業については、ブロックチェーン技術自体が黎明期であるため、積極的に投資を強化しつつ協業や業務提携等についても検討を実施していく方針であります。

 しかしながら、投資期間が想定よりも長期に及ぶ場合や計画通りの収益が得られない場合等には、減損損失の計上が必要になる等、投資を回収できなくなる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ システムについて

 当社グループは、システムトラブルの発生可能性を低減するために、安定的運用のためのシステム強化、セキュリティ強化を徹底しており、万が一トラブルが発生した場合においても短時間で復旧できるような体制を整えております。

 しかしながら、システムへの一時的な過負荷や電力供給の停止、ソフトウエアの不具合、コンピュータウィルスや外部からの不正な手段によるコンピュータへの侵入、自然災害、事故など、当社グループの予測不可能な様々な要因によってシステムがダウンした場合、当社グループの信頼が失墜し取引停止等に至る場合や、当社グループに対する損害賠償請求等が発生する場合も想定され、このような場合には当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 広告及びメディアに対する審査について

 当社グループでは広告主による広告(提供物・サービスそのものだけでなく広告宣伝の文言を含みます。)、メディア(広告媒体)について、法令に則ったものであり、公序良俗に反しないものであることが重要であると考えております。

 このため当社グループでは、ネイティブ広告配信サービスを提供する際に、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)等の法律の他、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が定める「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン」、当社グループ独自のガイドライン等に則って審査をすることにより、法令や公序良俗に反する広告やメディアに掲載されているコンテンツを排除するよう管理をしております。しかしながら、当社グループが取り扱う広告や掲載メディアが法令や公序良俗に反し、速やかに改善がなされないなどの事態が頻繁に発生した場合には、当社グループの信用が低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)会社組織に関するリスク

① 人材の確保及び育成について

 当社グループは、今後想定される事業拡大や新規事業の展開に伴い、継続した人材の確保が必要であると考えております。特に、新規事業を立ち上げ、拡大・成長させていくための事業開発力・マネジメント能力を有する人材や、システム技術分野のスキルを有する人材、及び高度な専門性を持つコーポレート人材の確保に努めるとともに、教育体制の整備を進め人材の定着と能力の底上げに努めております。

 しかしながら、当社グループの求める人材が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人材の流出が進んだ場合には、経常的な業務運営及び新規事業の拡大等に支障が生じ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 事業体制及び内部管理体制について

 当社グループは成長途上にあり、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社グループの事業体制及び内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した事業体制及び内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し、運用しておりますが、内部統制システムの下で当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来に渡って常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。

 さらに、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

③ 個人情報の管理について

 当社グループが運営する各サービスにおいては、氏名、電話番号、メールアドレス等の利用者個人を特定できる情報を取得しております。これらの個人情報については、「個人情報保護方針」に基づき適切に管理するとともに、社内規程として「個人情報取扱規程」を定め、社内教育の徹底と管理体制の構築を行っております。

 当社グループは、利用者の個人情報の保護に最大限の注意を払い、適切な情報管理を行っておりますが、何らかの理由で利用者の個人情報が漏えいする可能性や不正アクセス等による情報の外部への漏えいやこれらに伴う悪用等の可能性は皆無とは言えず、そのような事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループが事業を運営する各領域における利用者の個人情報の保護に係る法規制に改正等があった場合にも、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 特定の人物への依存について

 当社グループの代表取締役大塚英樹及び当社創業者である取締役久田哲史は、経営戦略、事業戦略の決定及び新規事業開発において、重要な役割を果たしております。当社グループでは取締役会等において役員及び社員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、経営体制の整備を進めており、経営に対するリスクを最小限にすることを努めております。

 しかしながら、現状では両氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他のリスク

① 投資に関するリスクについて

 当社グループでは、投資事業有限責任組合への出資を通してインターネット関連の企業に対して投資を実施しております。これらの投資は、それぞれの投資先企業と当社グループとの事業上のシナジー効果等を期待して実行しておりますが、投資先企業の今後の業績の如何によっては、これらの投資が回収できなくなること及び減損会計適用による評価損が発生することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置付けておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながるものと考えております。

 このことから創業以来配当は実施しておらず、今後においても当面は内部留保の充実を図る方針であります。

 内部留保資金については、財務体質の強化と人員の拡充・育成をはじめとした収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に活用する方針であります。

 将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社グループでは、株主価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、当社の役職員に対して新株予約権を付与しております。

 2023年9月30日現在における新株予約権による潜在株式数は243,797株であり、発行済株式総数10,466,000株の2.3%に相当いたします。

 これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化し、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当社グループは「解き尽くす。未来を引きよせる。」をミッションとし、創業以来培ってきた、データ分析能力とテクノロジーを活かして、多様な産業領域のデジタルトランスフォーメーションを推進しております。具体的には、デジタル化が進んでこなかった市場において、デジタル化を通じて生活者(消費者)と事業者を最適な形でマッチングすることを目指す不動産DX事業、データの利活用によって企業のマーケティングを高度化することを目指すマーケティングDX事業を運営しております。

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス拡大による社会経済活動の制約が解消され、国内経済は徐々に持ち直しが期待されております。一方、世界的な情勢不安や物価上昇などにより国内外の経済的な見通しは不透明な状況が続いております。当社グループを取り巻く事業環境においては、多くの企業におけるDXを活用した業務改善などが活発化した影響もあり、当社サービスに対するニーズが高まりました。ビジネスにおける営業及びコンサルティング活動のオンライン化が定着したことにより事業機会が拡大しております。

この結果、当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高13,605,291千円(前年同期比21.1%増)、営業利益810,231千円(前年同期比48.1%減)、経常利益846,962千円(前年同期比46.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損失1,042,023千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益1,082,511千円)となりました。

なお、当社グループでは、事業基盤の強化や拡大を積極的に目指していく中、各国の会計基準の差異にとらわれることなく企業比較が可能なEBITDA(税金等調整前当期純利益+支払利息+減価償却費+のれん償却費)を経営指標として重視しており、当連結会計年度のEBITDAは△884,020千円(前年同期はEBITDA 1,663,643千円)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。また、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。

 

(不動産DX事業)

不動産DX事業は、デジタル化が進んでこなかった市場において、デジタル化を通じて生活者(消費者)と事業者を最適な形でマッチングすることを目指しており、「イエウール」「ヌリカエ」「ケアスル 介護」が属しております。

営業活動が堅調であることに加え、自社サービスの拡充及び提携先メディア等とのアライアンスの強化を行った結果、加盟業者数、ユーザ数ともに順調に増加しており、高い売上成長率を実現しました。また今後の持続的な成長のため、各領域における新規事業(サービス)の展開へ向けて、ソフトウエア開発等に関する投資を強化しております。

この結果、売上高は9,410,533千円(前年同期比37.3%増)、セグメント利益は1,134,351千円(前年同期比33.3%増)となりました。

 

(マーケティングDX事業)

マーケティングDX事業は、顧客企業のデータ資産を利活用し、マーケティング活動を高度化することを目指しており、「コンサルティングサービス」「広告運用」の2形態からなるサービスを提供しております。「コンサルティングサービス」においては、顧客企業におけるデジタルマーケティングの強化及びデータ活用意欲の高まりにより、案件獲得が堅調に推移しました。「広告運用」においては、顧客企業のデジタルマーケティング予算の増加はあったものの、社会環境の変化に伴う広告市況感の悪化を受けております。

この結果、売上高は4,117,866千円(前年同期比4.7%減)、セグメント利益は2,060,936千円(前年同期比20.7%減)となりました。

 

(その他)

その他には、「Data Platform事業」「WorQ事業」が属しており、サービス拡販に向けて取り組む一方、引き続きサービス開発に注力しました。「Data Platform事業」においては、複数の異なるブロックチェーン間のインターオペラビリティ(相互運用性)の実証実験を重ね、クロスチェーンブリッジの課題解決に向け研究開発を進めてまいりました。

この結果、売上高は76,890千円(前年同期比17.7%増)、セグメント損失は315,876千円(前期は206,067千円のセグメント損失)となりました。

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は9,658,102千円となり、前連結会計年度末に比べ1,506,238千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が968,705千円、受取手形及び売掛金が510,437千円増加したことによるものであります。固定資産は1,637,637千円となり、前連結会計年度末に比べ866,463千円増加いたしました。これは主に、敷金が423,147千円、繰延税金資産が193,810千円、建物附属設備が237,314千円増加したことによるものであります。

 この結果、総資産は、11,295,740千円となり、前連結会計年度末に比べ2,372,701千円増加いたしました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は4,919,741千円となり、前連結会計年度末に比べ2,375,497千円増加いたしました。これは主に、未払金が1,458,252千円、信託型ストックオプション関連損失引当金が682,540円増加したことによるものであります。固定負債は1,331,757千円となり、前連結会計年度末に比べ893,347千円増加いたしました。これは、長期借入金が499,951千円、長期未払費用が162,331千円、長期預り金が116,374千円、資産除去債務が106,060千円増加したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、6,251,499千円となり、前連結会計年度末に比べ3,268,844千円増加いたしました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は5,044,241千円となり、前連結会計年度末に比べ896,142千円減少いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が1,042,023千円減少したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は44.6%(前連結会計年度末は66.6%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は6,643,260千円となり、前連結会計年度末に比べ968,705千円増加いたしました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、477,734千円(前年同期は1,042,867千円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失1,000,747千円の計上、信託型ストックオプション関連損失の増加1,847,710千円、法人税等の支払額637,748千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、565,199千円(前年同期は100,075千円の使用)となりました。これは主に、敷金及び保証金の差入による支出423,147千円、有形固定資産の取得による支出257,325千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は、1,056,170千円(前年同期は30,841千円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,800,000千円、長期借入金の返済による支出812,083千円によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績及び受注実績

 当社グループはインターネット上での各種サービスの提供を主たる事業としており、また、受注生産形態をとらない事業も多いため、生産実績及び受注実績の記載を省略しております。

 

b.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自2022年10月1日

至2023年9月30日)

前年同期比(%)

不動産DX事業(千円)

9,410,533

37.3

マーケティングDX事業(千円)

4,117,866

△4.7

その他(千円)

76,890

17.7

合計(千円)

13,605,291

21.1

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上を占める相手先がいないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 また、連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

 当連結会計年度における売上高は、13,605,291千円(前年同期比21.1%増)となりました。これは不動産DX事業で加盟社数及び利用者数の増加に伴い売上高が伸長したことによるものであります。

b.売上原価

 当連結会計年度における売上原価は、2,143,348千円(前年同期比23.4%増)となりました。これは主に社員数増加に伴う人件費及びサービス開発に関連するエンジニアの業務委託費の増加によるものであります。

c.販売費及び一般管理費、営業利益

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、10,651,711千円(前年同期比34.1%増)となりました。これは主に人件費及び広告宣伝費の増加によるものであり、この結果、営業利益は810,231千円(前年同期比48.1%減)となりました。

d.営業外収益、営業外費用、経常利益

 当連結会計年度における営業外収益は66,715千円となりました。これは主に受取手数料によるものであります。一方で、営業外費用は29,984千円となりました。これは主に投資有価証券評価損、支払利息によるものであります。この結果、経常利益は846,962千円(前年同期比46.7%減)となりました。

e.特別損益、親会社株主に帰属する当期純損失

 当連結会計年度における特別損失は1,847,710千円となりました。これは信託型ストックオプション関連損失によるものであります。当連結会計年度において、税金等調整前当期純損失は△1,000,747千円(前連結会計年度は税金等調整前当期純利益1,589,451千円)となりました。法人税等合計41,276千円の計上により、親会社株主に帰属する当期純損失は△1,042,023千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益1,082,511千円)となりました。

 

③キャッシュ・フローの分析

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

④資本の財源及び資金の流動性について

当社グループは、中長期的に持続的な成長を図るため、従業員等の採用にかかる費用、人件費及び広告宣伝費等の販売費及び一般管理費等の営業費用への資金需要があります。

当社グループの運転資金及び設備資金等の財源については、自己資金及び金融機関からの借入により賄っております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、6,643,260千円であり、充分な流動性を確保しております。

 

⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

具体的な指標として、売上高成長率、営業利益率を高い水準で確保していくことを目標としております。

当連結会計年度を含む、直近2連結会計年度の指標の推移は以下のとおりであります。

(単位:%)

 

2022年9月期

2023年9月期

売上高成長率

21.1

営業利益率

13.9

6.0

(注)2022年9月期の期首より収益認識会計基準等を適用しております。このため、2022年9月期の売上高成長率については記載しておりません。

 

⑥経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

⑦経営者の問題認識と今後の方針について

 経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。